JP7448925B2 - AlN単結晶の製造方法、AlN単結晶、およびAlN単結晶製造装置 - Google Patents

AlN単結晶の製造方法、AlN単結晶、およびAlN単結晶製造装置 Download PDF

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本発明は、AlN単結晶の製造方法、AlN単結晶、およびAlN単結晶製造装置に関する。
紫外発光素子は、殺菌光源や蛍光体と組み合わせた高輝度白色光源、高密度情報記録光源、樹脂硬化光源など、幅広い用途での使用が期待される次世代光源である。この紫外発光素子は、AlGaN系窒化物半導体から成っている。
このAlGaN系窒化物半導体の基板材料の候補に、AlGaNとの格子整合性の高さから、SiC、GaN、およびAlN(窒化アルミニウム)が挙げられる。しかし、SiCやGaNは、それぞれ波長380nm、365nmよりエネルギーの高い光を吸収するため、取り出せる波長領域が制限されてしまう。一方、AlNは、AlGaNよりも広いバンドギャップを有し、SiCやGaNのような波長領域の制限がないため、基板材料として最も優れていると考えられる。しかし、AlNは、高温において高い解離圧を示すため、常圧下では融液状態にはならない。このため、シリコン単結晶のように、自身の融液からAlN単結晶を作製することは、極めて困難である。
そこで、従来、AlN単結晶を作製するために、ハイドライド気相成長(HVPE)法や液相成長法、昇華法などの製造方法が試みられている。例えば、高圧下でIII族元素とアルカリ金属とを含む融液に基板を接触させることにより、III族窒化物結晶を成長させる方法(例えば、特許文献1参照)や、III族金属元素の融液に、窒素原子を含有するアンモニアガスを注入して、III族元素の融液内でIII族窒化物微結晶を製造する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかし、これらのAlN単結晶の製造方法では、高圧や高温が必要となり、サイズ、品質およびコストに対して、実用化に耐えうる結晶を製造することは困難であった。
この問題を解決するために、本発明者らは、低温、常圧下で、安価かつ良質なAlN単結晶を得る方法として、Alを含む合金の融液の表面に、窒素を含む気体を接触させることにより、融液の表面に結晶を成長させるAlN単結晶の液相成長法を開発している(例えば、特許文献3参照)。
特開2004-224600号公報 特開平11-189498号公報 特開2019-194133号公報
特許文献3に記載のAlN単結晶の液相成長法は、非常に良質なAlN単結晶を安価に製造することができるものの、融液の表面を被覆するように結晶成長が進むため、AlN単結晶が形成された液面からは窒素の供給が遮断される。そのため、成長速度に改善の余地がある。特許文献3では、融液表面から窒素を供給し続けるため、融液形成とは別に、加熱用レーザーにより局所的に加熱する態様を提案しているが、融液の表面以外の箇所でAlN単結晶を連続的に成長させることができれば、安定してAlN単結晶を連続的に成長させることができる。特に、融液形成以外の付加的な加熱なしに融液の表面から連続的に窒素を供給することが可能になれば、より低い消費エネルギーでのAlN単結晶成長を実現すると期待できる。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、安価かつ連続的にAlN単結晶を製造することができるAlN単結晶の製造方法、AlN単結晶、およびAlN単結晶製造装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るAlN単結晶の製造方法は、Alを含む合金の融液の一部を冷却して融液に温度勾配を設ける。そして、融液の高温部では融液への窒素の取り込みを継続しつつ、融液の低温部にてAlN種結晶又は結晶成長用の基板(以下では単に成長用の基板と呼ぶ)にAlN単結晶を析出させて、AlN単結晶を連続的に成長させる。すなわち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)Alを含む合金を加熱、融解して前記合金の融液を形成する融液形成工程と、前記融液の一部を冷却して前記融液に温度勾配を設けつつ、AlN単結晶を析出させる析出工程と、を含むAlN単結晶の製造方法であって、前記析出工程では、前記融液内の高温部に窒素含有ガスを接触させるとともに、前記融液内の低温部にて単結晶のAlN種結晶又は結晶成長用の基板を保持することにより、前記高温部における前記融液への窒素の取り込みを継続しながら、前記低温部で前記AlN種結晶又は前記基板に前記AlN単結晶を析出させて、前記AlN単結晶を連続的に成長させることを特徴とするAlN単結晶の製造方法。
(2)前記窒素含有ガスがNガスを含み、下記式(A)で表される前記AlN単結晶の形成の反応が平衡しているときの前記融液中のAlの活量をaeq .Al、前記式(A)の平衡定数をK、ボルツマン定数をk、絶対温度をTとし、析出時の前記窒素含有ガスのNの分圧を N2 とすると、下記式(B)で表される前記AlN単結晶の成長の駆動力Δμの値が0となるときの温度をTとしたときに、前記高温部の温度をTよりも高くし、前記低温部の温度を前記合金の液相線の温度以上かつTよりも低くする、(1)に記載のAlN単結晶の製造方法。
2Al(l)+N(g)→2AlN(s) (A)
(3)前記融液形成工程は、前記高温部をT+30K以上の温度に加熱する高温加熱工程を含む、(2)に記載のAlN単結晶の製造方法。
(4)前記融液形成工程は、前記高温加熱工程の後、前記高温部をTよりも高くかつT+30K未満の温度に加熱する低温加熱工程を含む、(3)に記載のAlN単結晶の製造方法。
(5)前記単結晶のAlN種結晶又は前記結晶成長用の基板を保持するホルダーが冷却機構を備え、前記析出工程では、前記ホルダーを前記融液に接触させることにより前記融液に前記温度勾配を設ける、(1)~(4)のいずれかに記載のAlN単結晶の製造方法。
(6)前記結晶成長用の基板が、サファイア単結晶上にAlN単結晶をエピタキシャル成長させたAlNテンプレート基板である、(1)~(5)のいずれかに記載のAlN単結晶の製造方法。
(7)前記AlNテンプレート基板が、C面サファイア単結晶上にC面AlN単結晶をエピタキシャル成長させたAlNテンプレート基板であり、前記C面AlN単結晶の(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が300arcsec以下である、(6)に記載のAlN単結晶の製造方法。
(8)前記Alを含む合金がNi-Al合金である、(1)~(7)のいずれかに記載のAlN単結晶の製造方法。
(9)単結晶のAlN種結晶又は結晶成長用の基板の上に形成されたAlN単結晶であって、不純物としてFe、Ni、Cu、Coのいずれか一種以上を8×1016~1×1021/cm含有するAlN単結晶。
(10)単結晶のAlN種結晶又は結晶成長用の基板の上に形成されたAlN単結晶であって、不純物としてNiを8×1016~1×1021/cm含有するAlN単結晶。
(11)炭素濃度が2×1017cm-3以下である、(9)又は(10)に記載のAlN単結晶。
(12)窒素含有ガスを内部に供給可能な反応容器と、Alを含む合金の融液を保持できるるつぼと、前記融液の加熱装置と、AlN種結晶又は成長用の基板のホルダーと、を有し、前記ホルダーは、昇降機構と冷却機構とを有し、前記ホルダーを前記融液に接触させることにより前記融液と前記成長用の基板との間に温度勾配を設けることが可能な、AlN単結晶の製造装置。
本発明によれば、安価かつ、連続的にAlN単結晶を製造することができるAlN単結晶の製造方法、AlN単結晶、およびAlN単結晶製造装置を提供することができる。
図1は、本発明の実施の形態のAlN単結晶の製造方法に係るAlN単結晶成長装置の概要を示す概略図である。 図2は、Ni-Al合金の各組成でのAlN単結晶の成長の駆動力Δμと温度(T)との関係を示すグラフである。 図3は、本発明の実施の形態のAlN単結晶の製造方法に係るAlN単結晶成長装置の全体構成の一態様を示す正面図である。 図4は、本発明の実施の形態のAlN単結晶の製造方法に係るAlN単結晶成長装置の全体構成の別の態様を示す正面図である。 図5は、本発明の実施の形態のAlN単結晶の製造方法に係るAlN単結晶成長装置の全体構成の別の態様を示す正面図である。 図6は、実施例1~5で結晶成長用の基板として使用したAlNテンプレート基板の断面SEM像である。 図7は、実施例1におけるAlN単結晶成長後のAlNテンプレート基板の断面SEM像である。 図8は、実施例1におけるAlN単結晶成長後のAlNテンプレート基板上に成長した単結晶部分のSEM-EDXプロファイルである。 図9は、実施例2におけるAlN単結晶成長後のAlNテンプレート基板の断面SEM像である。 図10は、実施例3におけるAlN単結晶成長後のAlNテンプレート基板の断面SEM像である。 図11は、実施例4におけるAlN単結晶成長後のAlNテンプレート基板の断面SEM像である。 図12Aは、実施例2におけるAlNテンプレート上のAlN単結晶の、N(窒素)及びNi(ニッケル)についてのSIMS測定結果である。 図12Bは、実施例2におけるAlNテンプレート上のAlN単結晶の、O(酸素)及びC(炭素)についてのSIMS測定結果である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書において単に「窒素」と記載する場合はNとNの両方を意味するものとする。
(AlN単結晶の製造方法)
本実施形態に係るAlN単結晶の製造方法は、Alを含む合金を加熱、融解して合金の融液を形成する融液形成工程と、融液の一部を冷却して融液に温度勾配を設けつつ、AlN単結晶を析出させる析出工程と、を含む。本製造方法は、析出工程では、融液内の高温部に窒素含有ガスを接触させるとともに、融液内の低温部にて成長用の基板を保持することにより、高温部における融液への窒素の取り込みを継続しながら、低温部で成長用の基板にAlN単結晶を析出させて、AlN単結晶を連続的に成長させる。
各工程の詳細を説明するに先立ち、図1に概略的に図示した本発明方法に適用可能なAlN単結晶製造装置100を説明する。このAlN単結晶製造装置100のるつぼ170は、窒素含有ガス中に設置されている。るつぼ170内にはAl含む合金を補充することができ、この合金を加熱すると融液180が得られる。融液180には、成長用の基板190を保持したホルダー195を含浸させることができる。
成長用の基板190を保持するホルダー195に二重管構造などを設けると、その内側の管には冷却ガス又は冷却液を導入可能な冷却機構の設けることができ、この冷却物質を利用して、融液180の一部を冷却することができる。こうすることで、融液180内に温度勾配を付けて高温部181と低温部182を設けることが可能である。このAlN単結晶製造装置100を用いると、融液180の高温部181には窒素含有ガスを接触させ続ける一方で、融液180の低温部182に成長用の基板190を保持したホルダー195を含浸させることができる。なお「窒素含有ガス」とは、融液180への窒素の供給源とすることができるガスであればよく、窒素ガス(Nガス)のほか、窒素原子を含むガス(例えば、アンモニアガス等)を含んでもよい。以下、図1を引き続き参照しながら、成長用の基板および各工程の詳細について順次説明する。
<成長用の基板>
成長用の基板190は、表面にAlN単結晶を成長させることができる基板であり、基板表面にAlN単結晶を有することが好ましい。特に、サファイア基板上にAlN単結晶をエピタキシャル成長させたAlNテンプレート基板を用いることが好ましい。成長用の基板190は、結晶成長用の基板に代えてAlN単結晶そのもの(単結晶のAlN種結晶)を用いてもよい。図1では基板の態様を図示した。
AlNテンプレート基板は、C面サファイア単結晶上にC面AlN単結晶をエピタキシャル成長させたAlNテンプレート基板を用いることが好ましく、C面AlN単結晶の(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が300arcsec以下であることが好ましい。さらに、C面サファイア単結晶上のC面AlN単結晶の膜厚は0.3μm以上1.2μm以下であることがより好ましく、C面AlN単結晶の(0002)面のX線ロッキングカーブの半値幅が150arcsec以下であることがより好ましい。
C面サファイア単結晶上に成長させたC面AlN単結晶の(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が300arcsec以下であるAlNテンプレート基板を用いることにより、本発明の製造方法で作製するAlN単結晶の結晶品質を向上させることができる。また、AlNテンプレート基板を融液に浸漬させてAlNを液相成長させる際にAlNテンプレート基板の表面のAlN単結晶がエッチングにより分解及び消失することを抑制することができる。融液180に接触するAlNが多結晶である場合や、単結晶であっても、(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が300arcsecより大きい場合では分解しやすく、融液180に浸漬する際にそのAlN結晶が無くなってしまう場合がある。単結晶のAlN種結晶を用いる場合でも、同じ理由によりAlN単結晶の(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が300arcsec以下の品質であることが好ましい。
AlNテンプレート基板に用いるサファイア基板は、C面が0.05°以上0.55°以下のオフ角で傾斜した面であることが好ましい。サファイアの代わりC面SiC単結晶を用いることもできる。
C面サファイア単結晶上にC面AlN単結晶をエピタキシャル成長させ、AlN単結晶の(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が300arcsec以下である、AlNテンプレート基板の製法としては、MOCVD法で成長したAlNテンプレート基板を、窒素雰囲気中で、1823K以上(例えば1873K)でアニールすることによる低転位化処理を施すことで得ることができる。
なお、AlNの成長方法としては、原料ガスとして、トリメチルアルミニウム(TMA)とアンモニアを用いるMOCVD法とすることが好ましいが、HVPEやスパッタを用いることも可能である。
<融液形成工程>
融液形成工程では、Alを含む合金を加熱、融解して、この合金の融液180を形成する。融液180となる合金の組成は特に限定されないが、AlとAlよりも窒化物を形成しにくい金属元素とを主成分としていることが好ましく、その合金の液相線温度は熱力学的にAlNが分解する温度よりも低いことが好ましい。Al以外の合金成分は、主成分としてFe、Ni、Cu、Co、Siのうちの少なくとも一種の元素を含むことが好ましい。これらの合金の融液180を用いることで、効率よくAlN単結晶を製造することができ、中でもNi-Al合金を用いることが最も好ましい。それらの合金の中でも、後述するAlN単結晶の成長の駆動力Δμの値がゼロをなるときの温度(T)が、1700K以上2100K以下である合金組成とすることが好ましく、1750K以上2000K以下の間にある合金組成とすることがより好ましい。Ni-Al合金ではAl組成を15mol%以上35mol%以下とすることが好ましい。なお、装置保全の観点からは、合金の融液180を構成する元素にはGaのような侵蝕性の強い元素は用いないことが好ましい。
融液180を収納するるつぼ170の材質は、いかなるものであってもよい。るつぼ170自体や、るつぼ170の内面に窒素を含む焼結体が設けられていることが好ましい。また、窒素を含む焼結体は、AlN又はAlNよりも熱力学的に不安定な材質から作製されることが好ましい。合金の融液180を収納するるつぼ170自体や、るつぼ170の内面にAlN又はAlNよりも熱力学的に不安定な材質を用いることで、その焼結体自体を融液180への窒素(AlNの場合は窒素およびAl)の供給源とすることができる。また、るつぼ170の材質をCSZ製やBN製とすることも好ましい。るつぼ170の材質をCSZ製やBN製とする場合、結晶成長に伴い低下する融液180内のAl量の補充を行うために、AlN焼結片やAlN多結晶などのAlを含む材料の添加を別途行っても良い。
<析出工程>
析出工程では、上記の融液形成工程の後に、融液180の一部を冷却して融液180に温度勾配を設けつつ、AlN単結晶を析出させる。そして、この析出工程では、融液180内の高温部181に窒素含有ガスを接触させるとともに、融液180内の低温部182にて成長用の基板190をホルダー195で保持する。こうすることで、高温部181における融液180への窒素の取り込みを継続しながら、低温部182で成長用の基板190にAlNを析出させて、AlN単結晶を連続的に成長させる。すなわち、合金の融液180内に溶解した窒素を合金の融液180の低温部182へ輸送し、低温部182に保持した成長用の基板190の表面上で融液180中のAlと反応させることで、AlN単結晶を連続的に成長させることができる。本発明ではこのように融液形成工程と析出工程を並列して行いながら、合金の融液180への窒素の供給及び溶解した窒素と合金中のAlとの反応によるAlNの析出の両方を同時に実現することができ、連続的にAlN単結晶を成長させることができる。その際、高温部181をAlNが熱力学的に不安定となる温度(AlNが析出せず分解する温度)範囲に維持しながら、低温部182をAlNが熱力学的に安定となる温度まで冷却することが好ましい。
<AlN単結晶の成長の駆動力Δμ>
ここで、AlN単結晶の成長の駆動力Δμについて説明し、本実施形態のより好ましい態様を説明する。本発明に係るAlN単結晶の製造方法では、融液180中のAlと融液180中に供給された窒素とが反応してAlN単結晶が形成される。窒素供給源の窒素含有ガスがNガスを含む場合、このときの反応式は下記(1)式で示される。
2Al(l)+N(g)→2AlN(s) (1)
このとき、上記(1)式の反応が平衡しているときのAlNの活量をaeq .AlN、融液180中のAlの活量をaeq .Al、Nの分圧を eq N2 とすると、上記(1)式の平衡定数Kは、下記(2)式で表される。
ここで、AlNはほぼ純粋な固体であるため、AlNの活量aeq .AlNは1となる。また、AlN単結晶の成長の駆動力Δμは、雰囲気中のNの分圧を N2 とすると、雰囲気中のNの化学ポテンシャルと、上記(1)式が平衡しているときのNの化学ポテンシャルとの差により与えられ、下記(3)式で表される。さらに上記(2)式の平衡関係を用いれば、最終的にAlN単結晶の成長の駆動力Δμは下記(4)式で表すことができる。(3)、(4)式中のkはボルツマン定数、Tは絶対温度を表す。
上記(4)式より、融液180中でのAlN単結晶の成長の駆動力Δμは、雰囲気中のN分圧 N2 、平衡定数K、ボルツマン定数k、絶対温度Tおよび融液180中のAlの活量aeq .Alで表されることがわかる。このことから、雰囲気中のN分圧、温度、および融液180の合金組成により、融液180中でのAlN単結晶の成長の駆動力Δμを制御することができる。AlN単結晶の成長の駆動力Δμの値がゼロをなるときの温度をTとする。このとき、融液180内の高温部181の温度(以下、T1とする)をTよりも高く、低温部182の温度(以下、T2とする)を、融液180を構成する合金の液相線の温度以上かつTよりも低くすることが好ましい。融液180の高温部181の温度T1を、Δμが負となる温度(すなわちT1>T)に保持しながらその高温部181にNガスを接触させることで、融液180へ窒素をより確実に溶解させることができる。また、合金の融液180がより高温であるほど、合金の融液へ窒素を多く溶解させることができるため、融液形成工程は、高温部181をT+30K以上の温度に加熱する高温加熱工程を含むことが好ましい。
例として、融液180がAlとNiとを主成分として含むNi-Al合金から得られている場合を説明する。ここで、融液180中のAlの活量aeq. Alは、温度1873KにおけるNi-Al中のAlの活量の組成依存性が、Desai PD. Thermodynamic properties of selected binary aluminum alloy systems.J Phys Chem Ref data. 1987;16:109-24.で報告されており、その組成依存性のデータを用いることができる。また、Ni-Alが正則溶体であるとして、1873K以外の温度におけるNi-Al中のAlの活量を求めることができる。雰囲気中のNの分圧 N2 を1barとしたとき、上記(4)式から、Ni-Al合金の各組成におけるAlN単結晶の成長の駆動力Δμと温度(T)との関係を求めることができる。そのようにして求めた各合金組成における関係を、図2に示す。なお、図2に示す各合金組成に対応する線での低温側の端点は、その合金組成における液相線の温度を示している。液相線の温度は、Adachi M, Sato A, Hamaya S, Ohtsuka M, Fukuyama H. Containerless measurements of the liquid-state density of Ni-Al alloys for use as turvine blade materials. SN Appl Sci. 2019;1:18-1-7.のデータを用いることができる。
各合金組成において、AlN単結晶の成長の駆動力Δμ=0となる温度が、(1)式の反応が平衡する温度であり、Δμ>0のときAlNが析出し、Δμ<0のときAlNが分解する。図2から分かるように、各合金組成において、融液180の温度を制御することによってAlN単結晶の成長の駆動力Δμの値を調整することができ、AlNを析出させるか(Δμ>0)、AlNを分解させるか(Δμ<0)を制御することができる。例えば、融液180がNi-20mol%Alの合金組成のとき、Tの値は1832Kである。この場合、1832Kより高い温度ではΔμが負となるため、AlNは融液180中に分解する一方、1832Kより低い温度ではΔμが正となるため、AlNが析出する。窒素供給源の窒素含有ガスがNガスを含む場合、融液180の高温部181をΔμ=0となる温度よりも高い温度で保持しながら窒素含有ガスを融液に接触させることで、融液180とガスとの接触面にAlN単結晶を析出することなく窒素が合金の融液180に溶解するため、連続的に融液180中に窒素を供給することができる。別の例では、合金の融液180の組成がNi-30mol%Alの合金組成のとき、Tの値は1998Kである。融液180となる合金の組成は、Tの値が1700以上2000K以下となるような組成を選択することが好ましい。
融液180の低温部182をΔμ=0となる温度よりも低い温度で保持しながら、その低温部182に成長用の基板190を保持することが好ましい。こうすることで、高温部181で合金中に溶解した窒素が低温部182に保持した成長用の基板190の表面上で合金の融液180中のAlと反応し、より安定してAlN単結晶を連続的に成長させることができる。
より具体的に説明する。融液180内では温度勾配が設けられているため、高温部181(T1)ではΔμ<0となるために融液180中に窒素が供給される。この窒素供給と同時に、低温部182(T2)ではΔμ>0となるために低温部182では窒素が過飽和となる。こうして、より確実にAlN単結晶を連続的に成長させることができる。また、低温部182に保持される成長用の基板190の表面の温度は、少なくとも成長用の基板190のAlN単結晶が分解されない温度で保持することが好ましく、AlN種結晶又は結晶成長用の基板をΔμ<0となる高温の融液180に浸漬した直後において結晶成長の起点となるAlN単結晶が無くなってしまう前に、AlN単結晶の表面がΔμ>0となる低温まで低下することが好ましい。そのため高温部181をTよりも高くT+30K未満の温度に加熱することが好ましい。さらに、成長用の基板190を融液180に浸漬する前に、高温部181の温度をT+30K以上に加熱して融液180中に窒素をより多く溶解させてから、高温部181の温度をTよりも高くT+30K未満にすることで、結晶成長の起点となるAlN単結晶を保持しながら、より効率的にAlN単結晶を成長させることができる。
このように、本発明の実施形態に係るAlN単結晶の製造方法は、冷却により合金の融液180に温度勾配を設けつつ、高温部181から窒素を取り込み続けることができる。合金の種類、組成、雰囲気、N分圧などを適切に選ぶことにより、昇華法よりも低い温度で、安価にAlN単結晶を連続的に製造することができる。
なお、析出工程においてAlN単結晶を連続的に成長させていくと、融液180中のAlが消費されるため融液180の合金組成は変化しうる。例えば、Ni-Al合金においてAl割合が減少すると、当該組成における温度Tは小さくなるため、低温部182と高温部181の温度が、Al割合が減少する前と同じ温度である場合に、低温部182においてはΔμの絶対値が減るため、よりAlNが析出し難くなり、高温部181ではΔμの絶対値が増えるため、気相から液相への窒素の供給が多くなる。そこで、融液180の温度を融液180の組成変化に追従させるように、析出工程の途中で融液180の温度を調整することが好ましい。融液180全体の加熱条件を調整してもよいし、低温部182と高温部181の温度を共に下げるようにしても良いし、低温部182の温度のみを下げるよう冷却してもよいし、高温部181の温度を部分的に上げてもよいし、これらを組み合わせて行うことも好ましい。他にも、AlN単結晶を連続的に成長させていくときの融液内の窒素の消費と、融液への窒素の供給とのバランスを補うように、高温部181における気相から液相への窒素の供給を効率よく行うために、析出工程中に気相部分のN分圧を大きくしてもよい。
次に、本発明の実施形態に係るAlN単結晶の製造方法に適用可能な、AlN単結晶成長装置の一例について、さらに詳細を説明する。以下では、符号の下二桁が既述の構成と重複する場合、説明簡略化のため重複する説明を省略する。AlN単結晶成長装置の構成は以下で説明する構成は例示に過ぎず、限定されるものではない。
<AlN単結晶成長装置>
図3を参照する。本発明に用いるAlN単結晶の製造装置は、窒素含有ガスを内部に供給可能な反応容器210と、反応容器210の内部に格納され、Alを含む合金の融液280を保持可能なるつぼ270と、るつぼ270を加熱することにより、融液280を加熱可能な加熱装置と、融液280の液面上方から液面の下方まで延在するホルダー295とを少なくとも有する。ホルダー295には、AlN種結晶又は結晶成長用の基板290が取り付けられている。ここで、ホルダー295には、昇降機構と冷却機構が設けられ、昇降機構を用いてホルダー295を融液280に接触させつつ、冷却機構を用いることにより融液280とAlN種結晶又は結晶成長用の基板290との間に温度勾配を設けることが可能となる。
図3に本発明の実施形態に係るAlN単結晶成長装置の一例を示す。AlN単結晶成長装置200は、反応容器210と高周波コイル220とサセプター230と断熱材240とガス給気管250とガス排気管255とを備える。サセプター230は、内側にるつぼ270を収納し、収納したるつぼ270の側面を覆うよう、反応容器210の内部に設けられている。高周波コイル220に通電することで、サセプター230が加熱され、るつぼ270を加熱することができる。るつぼ270は、合金の融液280を保持できる材料であれば良く、AlNやCSZ(カルシア安定化ジルコニア)などが例示される。断熱材240は、サセプター230およびるつぼ270の周囲を覆うよう、反応容器210の内部に設けられている。ガス給気管250は、反応容器210の内部に雰囲気ガスを供給可能に設けられ、ガス排気管255は、反応容器210の内部の雰囲気ガスを排出可能に設けられている。
AlN単結晶成長装置200には、反応容器210の上部からるつぼ270の内部まで伸びる成長用の基板290のホルダー295が設けられている。ホルダー295の下端部に取り付けた成長用の基板290を昇降させることで、融液280に成長用の基板290を浸漬でき、融液280から成長用の基板290を引き上げて回収することができる。融液280の一部を冷却するため、ホルダー295が冷却機構を備えていることが好ましく、ホルダー295を二重管構造とすることも好ましい。ホルダー295の内側の管に冷却ガス又は冷却液を導入することで、ホルダー295及びその周囲の温度を低下させることができ、融液280に温度勾配を設けることができる。また、融液280の一部を冷却して融液280に温度勾配を付けるためには二重管構造以外を採用することも可能である。例えば、ホルダー295の内側に放熱性の高い材料を用いてもよいし、るつぼ270の形状および高周波コイル220や断熱材240などの配置又は出力調整により、融液280の目的とする位置に所望の温度勾配を形成するようにしてもよい。
図3では成長用の基板290をホルダー295の側面(ホルダー軸方向と水平)に配置したため、結晶成長はホルダー295の軸方向と垂直方向である。成長用の基板290の配置は図3のように軸方向と垂直方法でなくともよく、例えばLEC法(融液封止引き上げ法)を応用して、図4で示すようにホルダー395の先端に成長用の基板390を配置して、軸方向と同じ方向に結晶成長させてもよい。また他にもVGF法(垂直温度勾配凝固法)を応用して、図5に示すように、成長用の基板490をるつぼ470の底部に配置して、るつぼ470の底部から上面方向に結晶成長させても良い。
<AlN単結晶>
単結晶のAlN種結晶又は結晶成長用の基板の上に形成された、本発明のAlN単結晶は、不純物としてFe、Ni、Cu、Coのいずれか一種以上を8×1016~1×1021/cm含有し、1.5×1017/cm以上含有することが好ましい。ここで、AlN単結晶に含まれる不純物の濃度とは、SIMS分析プロファイルにおいて、AlN単結晶の厚さ範囲に相当する領域の中央を中心とした厚さ半分の範囲(すなわち、AlN単結晶の厚さ方向における両端部分1/4の厚さを除いた中央部分1/2の厚さ範囲)の平均値であるものとする。これらの不純物が含まれるのは、上記の融液(Al以外の合金成分は、主成分としてFe、Ni、Cu、Coのうちの少なくとも一種の元素を含む)にこれらの元素が含まれるためである。特に、AlN単結晶には、不純物としてNiを8×1016~1×1021/cm含有することが好ましく、1.5×1017/cm以上含有することがより好ましい。
本発明により得られるAlN単結晶中の炭素濃度は、2×1017cm-3以下であることが好ましい。炭素濃度が2×1017cm-3以下であることで、高い透過率が得られる可能性が高いためである。
以下、実施例を用いて、本発明によるAlN単結晶の製造方法について詳細に説明する。
(実施例1)
まず、AlNテンプレート基板を作製した。AlNテンプレート基板表面のAlN単結晶は、直径2インチ、厚み430μmのC面サファイア基板上(M面方向のオフ角0.11°)に、原料ガスとしてトリメチルアルミニウム(TMA)とアンモニアを用いるMOCVD法で形成した。このとき、成長温度は1613K、成長圧力は13.3mbarであり、C面サファイア基板上には、C面AlN単結晶が0.5μm成長した。さらに、前記MOCVD法でAlN単結晶成長させた後、窒素雰囲気中で1873K、4時間アニールすることにより低転位化処理を施した。作製された当該AlNテンプレート基板表面のAlN単結晶の(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅を測定したところ、265arcsecであった。同様に測定したAlN単結晶の(0002)面のX線ロッキングカーブの半値幅は49arcsecであった。
そして、図3を参照して上述したAlN単結晶成長装置と同様の構造の装置において、AlN焼結体製のるつぼにNi-20mol%Al合金を入れ、反応容器の内部を真空排気した後、ガス供給管からNガスを供給することで反応容器内をNで置換し、反応容器を1barのNガス雰囲気とした。結晶成長用の基板として、上記の0.5μmの膜厚のAlN単結晶を有するAlNテンプレート基板を用い、このテンプレート基板を、冷却機構を備えた二重管構造のホルダーの側面に配置した。次に、AlNテンプレート基板を保持した二重管からなるホルダーを融液と接触しないように保持した状態で、高周波コイルに通電してサセプターを加熱することで、るつぼと合金の融液の界面の温度が1852Kとなるまで合金の融液を加熱した。Ni-20mol%Al合金の液相線温度は1669Kである。このときの融液の高温部の上面温度は1852Kであり、Ni-20mol%Al合金のTの値は1832Kであるため、高温部の温度T1はT+20Kである。合金の融液を加熱する間、AlNテンプレート基板のAlNが分解しないようにホルダーの内側の管には冷却ガスを流し続けた。そして、ホルダーの内側の管に冷却ガスとしてArガスを10L/minの流量で内側の管に導入して冷却させながら、ホルダーを合金の融液に浸漬させ、高温部の温度T1を維持しつつホルダー周辺を低温部とするようにして7時間保持し、AlNテンプレート基板上にAlNを析出させた。その後、合金の融液からホルダーを引き出し、室温まで冷却した。
AlNが析出する前のAlNテンプレート基板の断面SEM像を図6に示し、AlNが析出した後のAlNテンプレート基板の断面SEM像を図7に示す。また、析出した結晶のSEM-EDXプロファイルを図8に示す。図8のSEM-EDXプロファイル中の0.28keVおよび2.12keVに現れているピークはそれぞれ試料のコンタミの炭素およびSEM観察時のコート剤である金を表しており、成長(析出成長)した結晶由来のピークではない。図7より、サファイア上に厚さ4.2μmの膜があることが確認され、また図8よりその膜がAlN結晶であることが確認された。また、特許文献3と同様に、成長(析出成長)したAlN結晶に対し、ND、TD、RDの各方向での電子線後方散乱回折(EBSD)による逆極点図結晶方位マップ(図示せず)を確認した結果から、成長(析出成長)したAlN結晶は単結晶であることを確認した。結晶成長(析出成長)前のAlNテンプレート基板のAlN単結晶の膜厚が0.5μmであったことから、本実施例でAlN単結晶の膜が3.7μm成長していることがわかった。
(実施例2)
析出工程の前に予め高温で加熱する高温加熱工程を実施した以外は、実施例1と同様の条件でAlNテンプレート基板上にAlNを析出させた。高温加熱工程では、ホルダーを合金の融液に浸漬させる前に、予めるつぼと合金の融液の界面の温度が1886Kとなるように合金の融液を加熱して1時間保持した後、るつぼと合金の融液の界面の温度が1852Kとなるように冷却した。融液の高温部の上面温度は1852Kであり、高温部の温度T1はT+20Kであり、高温加熱工程の温度はT+54Kである。
AlNが析出した後のAlNテンプレート基板の断面SEM像を図9に示す。図9より、サファイア上に8.0μmのAlN単結晶があることが確認された。成長(析出成長)前のAlNテンプレート基板のAlN単結晶の膜厚が0.5μmであったことから、本実施例でAlN単結晶の膜が7.5μm成長していることがわかった。
実施例1より、AlNテンプレート基板上に連続的にAlN単結晶が成長することが確認された。また、実施例1と実施例2の比較により、ホルダーを合金の融液に浸漬させる前に、予めるつぼと合金の融液の界面を高温に加熱しておくことで、AlNテンプレート基板上に形成されるAlN単結晶の成長量を増大できることがわかった。
(実施例3)
ホルダーを合金の融液に浸漬した後の保持時間を1時間としたこと以外は、実施例2と同様の条件でAlNテンプレート基板上にAlNを析出させた。その後、合金の融液からホルダーを引き出し、室温まで冷却した。
AlNが析出した後のAlNテンプレート基板の断面SEM像を図10に示す。図10より、サファイア上に厚さ0.7μmのAlN単結晶の膜とその上に高さ0.8μmの島状のAlN単結晶があることが確認された。成長(析出成長)前のAlNテンプレート基板のAlN単結晶の膜厚が0.5μmであったことから、実施例3ではAlN単結晶の膜が0.2μm成長(析出成長)し、かつその上に島状のAlN単結晶が成長していることがわかった。
図9と図10とを比べると、ホルダーを合金の融液に浸漬させた後の保持時間を1時間としたときは表面に島状のAlN単結晶が成長(析出成長)しているが、保持時間を7時間としたときは、島状のAlN単結晶は確認されず、膜状のAlN単結晶のみが確認された。このことから、成長(析出成長)初期では島状のAlN単結晶が析出し、その後それらが合体することで膜状のAlN単結晶が析出(成長)すると考えられる。
(実施例4)
CSZ製(ZrO-4.5mass%CaO)のるつぼを使用した以外は、実施例1と同様にしてAlNテンプレート基板上にAlN単結晶を成長(析出成長)させた。AlNが析出した後のAlNテンプレート基板の断面SEM像を図11に示す。図11より、サファイア上に厚さ8.8μmの膜があることが確認された。単結晶成長(析出成長)前のAlNテンプレート基板のAlN単結晶の膜厚が0.5μmであったことから、本実施例でAlN単結晶の膜が8.3μm成長していることがわかった。
実施例4の結果においても実施例1~3と同様にAlNテンプレート基板上にAlN単結晶が成長していることが確認された。実施例1~3の結果では、るつぼ中及び雰囲気中の窒素が融液に溶解したことでAlNテンプレート基板上にAlN単結晶が析出したと考えられるが、実施例4の結果からは、気相からの窒素の供給のみでもAlN単結晶を製造できることが確認できた。
以上のようにして、本発明の実施の形態のAlN単結晶の製造方法は、Δμが負となる温度領域まで合金の融液の高温部を加熱することで連続的に、合金の種類、組成、雰囲気、N分圧を適切に選べば、昇華法よりも低い温度で、安価にAlN単結晶を製造することができる。
実施例2のAlN単結晶のNi(ニッケル)についてのSIMS分析結果を図12Aに示し、O(酸素)及びC(炭素)についてのSIMS分析結果を図12Bに示す。SIMS分析は、以下の条件にて行った。Ni分析は、SIMS測定装置(CAMECA IMS-7f)を用いて、一次イオン種をO2+、一次加速電圧を8.0kVとし、検出領域を直径30μmとして分析を行った。C、O、B分析は、SIMS測定装置(CAMECA IMS-6f)を用いて、一次イオン種をCs、一次加速電圧を15.0kVとし、検出領域を直径30μmとして分析を行った。なお、AlN標準試料を用いて定量を行った。
図12Aで示されるSIMS分析の結果から、Ni濃度が急激に下がる位置からN(二次イオン強度)が急激に下がる位置までの領域が、AlNテンプレート基板のMOCVDで成長されたAlN単結晶を示す領域であると考えられ、その領域におけるNi濃度は5×1016cm-3程度であった。一方、Ni濃度が急激に下がる位置未満の浅い領域がNi-20mol%Al合金中で結晶成長したAlN単結晶を示す領域であると考えられ、この領域におけるNi濃度の値は1.5×1017cm-3~3×1018cm-3の範囲内であり、AlN単結晶の厚さ方向における両端部分1/4の厚さを除いた中央部分1/2の厚さ範囲(以降、「AlN単結晶の厚さ中央部における厚さ半分の範囲」という)の平均値は2×1017cm-3であった。この結果から、Ni-20mol%Al合金中で結晶成長した、本発明のAlN単結晶には、不純物としてNiが多く含まれていることが確認された。
また、同様に実施例4のAlN単結晶のNi(ニッケル)及びZr(ジルコニウム)についてのSIMS分析した結果、実施例4においては、Ni-20mol%Al合金中で結晶成長したAlN単結晶のNi濃度は、AlN単結晶の厚さ中央部における厚さ半分の範囲の平均値は1×1018cm-3であり、実施例2と比べてさらに多いという結果であった。Zrは検出限界以下であった。
以上から、本発明の製造方法で作製されたAlN単結晶には、Alを含む合金を成すAl以外の合金成分が、不純物として多く含まれることが分かった。Niは、AlN単結晶内でのp型伝導の作用も期待できる。
また、図12Aと図12Bで示されるSIMS分析の結果から、MOCVD法で製造されたAlNテンプレート基板のAlN層と考えられる領域では、酸素と炭素の濃度が共に高くなっており、MOCVD法で製造されたAlN層の炭素濃度は4×1017cm-3程度であるのに対し、Ni-20mol%Al合金中で結晶成長したAlN単結晶の炭素濃度はAlN単結晶の厚さ中央部における厚さ半分の範囲の平均値は1.3×1017cm-3であった。
昇華法やMOCVD法を用いて製造されるAlN単結晶では、炭素の混入によって深紫外域での透過率が低下するといわれていたところ、合金に含まれるAl以外の合金成分(例えばNi)がドーピングされている本発明のAlN単結晶では、このように結晶の透過率を低下させる炭素濃度の混入を抑制することが可能となることも分かった。
本発明によれば、安価かつ、連続的にAlN単結晶を製造することができるAlN単結晶の製造方法、AlN単結晶、およびAlN単結晶製造装置を提供することができる。
100 AlN単結晶製造装置
170 るつぼ
180 融液
181 高温部
182 低温部
190 成長用基板
195 ホルダー

Claims (12)

  1. Alと、Fe、Ni、Cu、Co、Siのうちの少なくとも一種の元素とを含む合金を加熱、融解して前記合金の融液を形成する融液形成工程と、
    前記融液の一部を冷却して前記融液に温度勾配を設けつつ、AlN単結晶を析出させる析出工程と、
    を含むAlN単結晶の製造方法であって、
    前記析出工程では、前記融液内の高温部に窒素含有ガスを接触させるとともに、前記融液内の低温部にて単結晶のAlN種結晶又は結晶成長用の基板を保持することにより、前記高温部における前記融液への窒素の取り込みを継続しながら、前記低温部で前記AlN種結晶又は前記基板に前記AlN単結晶を析出させて、前記AlN単結晶を連続的に成長させることを特徴とするAlN単結晶の製造方法。
  2. 前記窒素含有ガスがNガスを含み、
    下記式(A)で表される前記AlN単結晶の形成の反応が平衡しているときの前記融液中のAlの活量をaeq .Al、前記式(A)の平衡定数をK、ボルツマン定数をk、絶対温度をTとし、析出時の前記窒素含有ガスのNの分圧を N2 とすると、
    下記式(B)で表される前記AlN単結晶の成長の駆動力Δμの値が0となるときの温度をTとしたときに、前記高温部の温度をTよりも高くし、前記低温部の温度を前記合金の液相線の温度以上かつTよりも低くする、請求項1に記載のAlN単結晶の製造方法。
    2Al(l)+N(g)→2AlN(s) (A)
  3. 前記融液形成工程は、前記高温部をT0+30K以上の温度に加熱する高温加熱工程を含む、請求項2に記載のAlN単結晶の製造方法。
  4. 前記融液形成工程は、前記高温加熱工程の後、前記高温部をT0よりも高くかつT0+30K未満の温度に加熱する低温加熱工程を含む、請求項3に記載のAlN単結晶の製造方法。
  5. 前記単結晶のAlN種結晶又は前記結晶成長用の基板を保持するホルダーが冷却機構を備え、
    前記析出工程では、前記ホルダーを前記融液に接触させることにより前記融液に前記温度勾配を設ける、請求項1~4のいずれか1項に記載のAlN単結晶の製造方法。
  6. 前記結晶成長用の基板が、サファイア単結晶上にAlN単結晶をエピタキシャル成長させたAlNテンプレート基板である、請求項1~4のいずれか1項に記載のAlN単結晶の製造方法。
  7. 前記AlNテンプレート基板が、C面サファイア単結晶上にC面AlN単結晶をエピタキシャル成長させたAlNテンプレート基板であり、前記C面AlN単結晶の(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅が300arcsec以下である、請求項6に記載のAlN単結晶の製造方法。
  8. 前記Alを含む合金がNi-Al合金である、請求項1に記載のAlN単結晶の製造方法。
  9. 単結晶のAlN種結晶又は結晶成長用の基板の上に形成されたAlN単結晶であって、不純物としてFe、Ni、Cu、Coのいずれか一種以上を8×1016~1×1021/cm含有するAlN単結晶。
  10. 単結晶のAlN種結晶又は結晶成長用の基板の上に形成されたAlN単結晶であって、不純物としてNiを8×1016~1×1021/cm含有する、請求項9に記載のAlN単結晶。
  11. 炭素濃度が2×1017cm-3以下である、請求項9又は10に記載のAlN単結晶。
  12. 窒素含有ガスを内部に供給可能な反応容器と、
    前記反応容器の内部に格納され、Alと、Fe、Ni、Cu、Co、Siのうちの少なくとも一種の元素とを含む合金の融液を保持可能なるつぼと、
    前記るつぼを加熱することにより、前記融液を加熱可能な加熱装置と、
    前記融液の液面上方から前記液面の下方まで延在するホルダーと、を有し、
    前記ホルダーには、AlN種結晶又は結晶成長用の基板が取り付けられており、
    前記ホルダーには、昇降機構と冷却機構が設けられ、
    前記昇降機構を用いて前記ホルダーを前記融液に接触させつつ、前記冷却機構を用いることにより前記融液と前記AlN種結晶又は前記結晶成長用の基板との間に温度勾配を設けることが可能な、
    AlN単結晶の製造装置。
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