JP7448806B2 - 波長変換焼結体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、波長変換焼結体の製造方法に関する。
発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下「LED」ともいう。)やレーザーダイオード(Laser Diode、以下「LD」ともいう。)の発光素子を用いた発光装置は、光源である発光素子と、発光素子からの発光の一部を吸収して異なる波長に変換する波長変換部材とを備える。このような発光装置は、例えば、車載用や室内照明用の発光装置、液晶表示装置のバックライト光源、イルミネーション、プロジェクター用の光源装置などの広範囲の分野で利用されている。
そのような発光装置に用いられる蛍光体として、例えば、希土類アルミン酸塩蛍光体や、特許文献1に開示された波長変換部材に含まれるα-サイアロン蛍光体などの蛍光体が知られている。また、蛍光体を含む波長変換部材として、例えば、特許文献2には、ガラスと蛍光体とを混合し、ガラスを溶融させ固化させた焼結体からなる波長変換部材も開示されている。
国際公報第2015/133612号 特開2014-234487号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示される波長変換部材は、発光装置を構成したとき、蛍光体からの放熱性が不十分となる場合がある。また、特許文献2に開示されている波長変換部材は、ガラス成分が焼結体の形成時に蛍光体の組成に作用して、蛍光体の発光に悪影響を及ぼす場合がある。これらの事情により、波長変換部材の発光強度の低下が懸念される。
そこで本発明は、所望の発光強度が得られる波長変換焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、α-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウム粒子とを含み、Gaの含有量が15質量ppm以下である混合物の成形体を準備することと、前記成形体を、1370℃以上1600℃以下の範囲内の温度で一次焼成し、第一の焼結体を得ることを含む、波長変換焼結体の製造方法である。
本発明によれば、所望の発光強度が得られる波長変換焼結体の製造方法を提供することができる。
図1は、波長変換焼結体の製造方法を示すフローチャートである。 図2は、波長変換焼結体の製造方法を示すフローチャートである。 図3は、実施例7に係る波長変換焼結体の外観写真である。 図4は、比較例1に係る波長変換焼結体の外観写真である。 図5は、比較例2に係る波長変換焼結体の外観写真である。
以下、本発明に係る波長変換焼結体の製造方法の一実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の波長変換焼結体の製造方法に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。
波長変換焼結体の製造方法
波長変換焼結体の製造方法は、α-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウム粒子とを含み、必要に応じて希土類アルミン酸塩を含んでいてもよい、Gaの含有量が15質量ppm以下である混合物の成形体を準備することと、前記成形体を、1370℃以上1600℃以下の範囲内の温度で一次焼成し、第一の焼結体を得ることを含む。第一の焼結体からなる波長変換焼結体は、少なくともα-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウムとを含むが、これらに加え、さらに希土類アルミン酸塩蛍光体を含んでいてもよい。第一の焼結体からなる波長変換焼結体は、熱伝導率が比較的高い材料である酸化アルミニウムを含むため、例えばガラス成分を含むものよりも放熱性を向上させることができる。
α-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウム粒子とを含み、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体を含んでいてもよい混合物を成形し、この成形体を焼結して焼結体を得る。このとき、混合物中に酸化ガリウム(Ga)が極微量含まれていると、酸化ガリウムが酸化アルミニウム粒子の焼結を阻害して、焼結体中に空隙が形成され、第一の焼結体の相対密度が低くなる場合がある。相対密度が低い焼結体は、励起光が焼結体中の空隙で散乱し、又は、空隙によって入射された励起光が焼結体から抜け出てしまい、蛍光体によって波長変換される効率が低下し、発光強度が低下する場合がある。また、混合物中に酸化ガリウムが含まれていると、酸化物中のGaとα-サイアロン蛍光体が反応して、α-サイアロン蛍光体の体色がくすみ、波長変換焼結体から発する光の色度が変化する場合がある。混合物中に酸化ガリウムが含まれる場合に、酸化アルミニウム粒子の焼結が阻害され、α-サイアロン蛍光体の体色が変化する理由は明らかではない。例えば酸化ガリウムは1700℃から1900℃と比較的融点が低い。混合物中に酸化ガリウムが含まれる場合には、比較的融点が低い酸化ガリウムによって、酸化アルミニウム粒子の焼結が阻害され、酸化物中のGaとα-サイアロン蛍光体が反応しやすくなると推測される。成形体を一次焼成する温度が、1370℃以上の場合には、混合物中に微量の酸化ガリウムが含まれている場合であっても、酸化アルミニウム粒子と反応する前に、融点の低い酸化ガリウムが蒸散する。そのため、酸化ガリウムによる酸化アルミニウム粒子の焼結阻害が抑制され、酸化ガリウム中のGaとα-サイアロン蛍光体との反応が抑制されやすい傾向がある。成形体を一次焼成する温度が、例えば1370℃未満の場合には、混合物中に、微量の酸化ガリウムが含まれていても、酸化ガリウムが蒸散せずに酸化アルミニウム粒子の焼結を阻害する場合があり、得られる第一の焼結体に空隙が多く存在することで、焼結体中で光の散乱が大きくなり過ぎて、発光強度が低下する傾向がある。本明細書において、微量の酸化ガリウムが含まれている場合とは、混合物中のGaの含有量(以下、「Ga量」とも称する。)が15質量ppm以下であることをいう。α-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウム粒子とを含み、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体を含む混合物中のGa量は、より好ましくは12質量ppm以下であり、さらに好ましくは10質量ppm以下であり、0.01質量ppm以上であってもよく、0.1質量ppm以上であってもよい。
成形体を構成する混合物に含まれるGaの含有量が15質量ppm以下であり、一次焼成の温度が1370℃以上であれば、一次焼成における酸化アルミニウム粒子の焼結阻害が起こり難くなる。これにより、第一の焼結体は、相対密度が高くなり、励起光からの光を所望の色度に波長変換することのできる波長変換焼結体を構成することができる。混合物に含まれるGaは、例えば誘導結合プラズマ発光分析装置(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES)を用いて、混合物に含まれる元素の元素分析を行い、得られた元素分析の結果によって、Gaの含有量を測定することができる。または、原料となるα-サイアロン蛍光体、酸化アルミニウム粒子、又は希土類アルミン酸塩蛍光体に含まれるGa量をICP-AESによって測定し、各原料中に含まれるGa量と、各原料の混合物中の配合比率から混物に含まれるGa量を算出することもできる。
第一の焼結体は、α-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウム粒子とを含み、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体を含んでいてもよく、Gaの含有量が15質量ppm以下である混合物の成形体を一次焼成して得られる。そのため、α-サイアロン蛍光体は、結晶構造の一部が分解されることなく、α-サイアロン蛍光体の結晶構造を維持する。また、α-サイアロン蛍光体は、酸化ガリウムに含まれるGaと反応して体色がくすむことなく、酸化アルミニウム粒子及び希土類アルミン酸塩蛍光体と共に焼き固まり、励起光によって所望の発光ピーク波長を有する光を発する波長変換焼結体を得ることができる。
α-サイアロン蛍光体のような酸窒化物蛍光体は、酸化アルミニウム粒子とともに焼成すると、酸窒化物蛍光体の組成に含まれる窒素と酸化物中の酸素が反応しやすい。そのため、α-サイアロン蛍光体の結晶構造が変化してしまい、実用可能な程度に発光する蛍光体を含む焼結体が得られないと推測されていた。しかしながら、酸化アルミニウムは、比較的熱による組成変化を受け難く、酸化アルミニウムが分解して酸素を発生することが少なく、α-サイアロン蛍光体が悪影響を受け難い。そのため、酸化アルミニウム粒子を用いて焼結体を形成してもα-サイアロン蛍光体の発光に悪影響を及ぼし難い。さらに混合物中のGaの含有量も15質量ppm以下であるため、酸化アルミニウム粒子の焼結も阻害されず、励起光を所望の色度に波長変換し、発光強度の高い波長変換焼結体を得ることができる。
酸化アルミニウムに含まれるアルミニウムは、ガリウムと同じ第13族元素であり、酸化アルミニウム中には、微量のガリウムが例えば酸化物又は複合酸化物となって含まれている場合がある。また、希土類アルミン酸塩蛍光体は、その組成や製造方法によって、Gaを含む場合がある。成形体を構成する混合物中に酸化アルミニウムを含み、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体を含む場合であっても、混合物中のGaの含有量が15質量ppm以下であれば、α-サイアロン蛍光体の体色がくすむことなく、酸化アルミニウムの焼結が阻害されることなく、α-サイアロン蛍光体、酸化アルミニウム粒子及び希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第一の焼結体を得ることができる。
α-サイアロン蛍光体
α-サイアロン蛍光体は、下記式(I)で表される組成を有することが好ましい。
Si12-(m+n)Alm+n16-n:Eu (I)
(式(I)中、Mは、Li、Mg、Ca、Sr、Y及びランタノイド元素(但し、LaとCeを除く。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、k、m、nは、0<k≦2.0、2.0≦m≦6.0、0≦n≦1.0を満たす数である。)
α-サイアロン蛍光体は、下記式(II)で表される組成を有してもよい。
Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu (II)
(式(II)中、vは0<v≦2を満たす数である。)
なお、本明細書において、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を構成する元素及びそのモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。また、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これら複数の元素のうち少なくとも一種の元素を組成中に含有していることを意味する。組成式中のカンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、組成中にカンマで区切られた複数の元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、前記複数の元素から2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
第一の焼結体の原料として用いるα-サイアロン蛍光体は、粉体であることが好ましい。α-サイアロン蛍光体は、組成中にGaと同族の第13族元素であるアルミニウム(Al)を含んでいるが、α-サイアロン蛍光体は、上述のとおり微量の酸化ガリウム中のGaと反応して体色がくすみやすいため、α-サイアロン蛍光体中にGaを含むことは少なく、例えば酸化物としてGaを含む場合であっても、そのGa量は、例えばICP-AESによって測定されるGa量が、検出限界未満であり、20質量ppm未満である。α-サイアロン蛍光体のレーザー回折粒度分布測定法によって測定した体積メジアン径は、好ましくは2μm以上30μm以下の範囲内であり、より好ましくは3μm以上25μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは4μm以上20μm以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは5μm以上15μm以下の範囲内である。α-サイアロン蛍光体の体積メジアン径が2μm以上であると、α-サイアロン蛍光体を混合物中で略均一に分散させて、成形体中においてもα-サイアロン蛍光体を略均一に分散させることができる。α-サイアロン蛍光体の体積メジアン径が30μm以下であると、波長変換焼結体中の空隙が少なくなるので発光強度を高くすることができる。本明細書において、α-サイアロン蛍光体の体積メジアン径とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準の粒度分布における小径側からの体積累積頻度が50%に達する粒径(体積メジアン径)をいう。レーザー回折粒度分布測定法には、例えばレーザー回折粒度分布測定装置(製品名:MASTER SIZER3000、MALVERN社製)を用いて測定することができる。
成形体を構成する混合物100質量%に対して、α-サイアロン蛍光体の含有量は、仕込みの質量割合で、好ましくは0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であり、より好ましくは0.5質量%以上38質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.8質量%以上35質量%以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは1質量%以上30質量%以下の範囲内である。成形体を構成する混合物100質量%に対して、α-サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であると、発光強度が高い波長変換焼結体を得ることができる。成形体を構成する混合物中のα-サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%未満であると、所望の発光強度を有する波長変換焼結体を得ることができない。また、成形体を構成する混合物中のα-サイアロン蛍光体の含有量が40質量%を超えると、相対的にアルミナ粒子の含有量が少なくなり、得られる波長変換焼結体の密度が低くなり、機械的な強度が低下する場合がある。また、α-サイアロン蛍光体の含有量が40質量%を超えると、例えば所望の色調及び発光強度を得るために、波長変換焼結体の厚さを薄くしなければならず、波長変換焼結体として所望の強度が得られず、取り扱いが困難となる場合がある。
酸化アルミニウム粒子
第一の焼結体の原料として用いる酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウムの純度が、好ましくは99.0質量%以上であり、より好ましくは99.5質量%以上である。酸化アルミニウムの純度が99.0質量%以上である酸化アルミニウム粒子を含む混合物からなる成形体を焼成して得られる第一の焼結体又は後述する第二の焼結体は、透光性が高くなることによって発光強度が高い波長変換焼結体を得ることができる。酸化アルミニウム粒子の純度が高いほど、例えば酸化ガリウム等のGaを含む量が少なくなり、α-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウム粒子とを含み、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体を含んでいてもよい混合物に含まれるGa量を少なくすることができる。市販の酸化アルミニウム粒子を用いた場合には、酸化アルミニウムの純度は、カタログに記載された酸化アルミニウムの純度の値を参照することができる。酸化アルミニウムの純度が不明である場合には、酸化アルミニウム粒子の質量を測定した後、酸化アルミニウム粒子を800℃で1時間、大気雰囲気で焼成し、酸化アルミニウム粒子に付着又は吸着されている有機分や水分を除去し、焼成後の酸化アルミニウム粒子の質量を測定し、焼成後の酸化アルミニウム粒子の質量を焼成前の酸化アルミニウム粒子の質量で除すことによって、酸化アルミニウム粒子の純度を測定することができる。酸化アルミニウム粒子の純度は、例えば、以下の計算式(1)によって算出することができる。
Figure 0007448806000001
酸化アルミニウム粒子の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.3μm以下の範囲内であり、より好ましくは0.2μm以上1.0μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.3μm以上0.8μm以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは0.3μm以上0.6μm以下の範囲内である。酸化アルミニウム粒子の平均粒径が、0.1μm以上1.3μm以下の範囲内であると、α-サイアロン蛍光体の粉体と、酸化アルミニウム粒子と、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体とを、均一に混合することができ、空隙が少なく密度の高い焼結体からなる波長変換焼結体を製造することができる。本明細書において、酸化アルミニウム粒子の平均粒径とは、フィッシャーサブシーブサイザー法(Fisher Sub-Sieve Sizer、以下「FSSS法」ともいう。)により測定した平均粒径(Fisher Sub-Sieve Sizer’s number)をいう。FSSS法は、空気透過法の一種であり、空気の流動抵抗を利用して比表面積を測定し、粒径を求める方法である。
成形体を構成する混合物100質量%に対して、酸化アルミニウム粒子の含有量は、100質量ppm(0.01質量%)以下の範囲で含まれる物質を除き、仕込みの質量割合で混合物中のα-サイアロン蛍光体を除く残部であり、好ましくは60質量%以上99.9質量%以下の範囲内であり、より好ましくは62質量%以上99.5質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは65質量%以上99.2質量%以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは70質量%以上99.0質量%以下の範囲内である。成形体を構成する混合物100質量%に対して、酸化アルミニウム粒子の含有量は、100質量ppm(0.01質量%)以下の範囲で含まれる物質を除き、仕込みの質量割合で混合物中のα-サイアロン蛍光体及び希土類アルミン酸塩蛍光体を除く残部であり、好ましくは30質量%以上99.9質量%以下の範囲内であり、より好ましくは35質量%以上99.5質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは40質量%以上99.2質量%以下の範囲内であり、特に好ましくは50質量%以上98質量%以下の範囲内である。
酸化アルミニウム粒子を構成する酸化アルミニウムの種類は、特に限定されず、酸化アルミニウムの結晶形態としては、α、γ、δ、θが挙げられるが、いずれの結晶形態の酸化アルミニウムも用いることができる。酸化アルミニウムは、入手しやすく、α-サイアロン蛍光体と酸化アルミニウム粒子とを混合しやすく、成形体を形成しやすいため、α-アルミナを用いることが好ましい。
希土類アルミン酸塩蛍光体
成形体を構成する混合物は、希土類アルミン酸塩蛍光体を含んでいてもよい。希土類アルミン酸塩蛍光体は、イットリウムアルミニウムガーネット系の結晶構造を有する蛍光体(以下、「YAG系蛍光体」とも称する。)又はイットリウムをルテチウムに置き換えたルテチウムアルミニウムガーネット系の結晶構造を有する蛍光体(以下、「LAG系蛍光体」とも称する。)を用いることができる。YAG系蛍光体は、例えば(Y,Gd,Tb,Lu)Al12:Ceで表される組成を有する蛍光体を用いることができる。
YAG系蛍光体は、下記式(III)で表される組成を有することが好ましい。
(Y1-a-bGdCeAl12 (III)
(式(III)中、a及びbは、0≦a≦0.500、0<b≦0.030を満たす数である。)
LAG系蛍光体は、下記式(IV)で表される組成を有することが好ましい。
(Lu1-cCeAl12 (IV)
(式(IV)中、cは、0<c≦0.100を満たす数である。)
第一の焼結体の原料として用いる希土類アルミン酸塩蛍光体は、粉体であることが好ましい。希土類アルミン酸塩蛍光体は、Gaを含んでいないことが好ましい。希土類アルミン酸塩蛍光体が、Gaを含む場合であっても、例えばICP-AESによって測定される希土類アルミン酸塩蛍光体を含む混合物中のGa量が、検出限界以下の20質量ppm未満となる量であることが好ましい。希土類アルミン酸塩蛍光体に含まれるGa量を少なくするためには、Ga量が少ない原料を用いて、Ga量が20質量ppm未満の希土類アルミン酸塩蛍光体を製造することが好ましい。市販の希土類アルミン酸塩蛍光体を使用する場合には、例えばICP-AESによって測定されるGa量又はカタログ値のGa量が20質量ppm未満の希土類アルミン酸塩蛍光体を使用することが好ましい。希土類アルミン酸塩蛍光体の平均粒径は、好ましくは1μm以上50μm以下の範囲内であり、より好ましくは1μm以上40μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは2μm以上30μm以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは2μm以上20μm以下の範囲内であり、特に好ましくは2μm以上15μm以下の範囲内である。希土類アルミン酸塩蛍光体の平均粒径が1μm以上であると、希土類アルミン酸塩蛍光体を混合物中に略均一に分散させて、成形体中に希土類アルミン酸塩蛍光体を略均一に分散させることができる。希土類アルミン酸塩蛍光体の平均粒径が50μm以下であると、波長変換焼結体中の空隙が少なくなるので発光強度を高くすることができる。本明細書において、希土類アルミン酸塩蛍光体の平均粒径とは、FSSS法により測定した平均粒径をいう。
成形体を構成する混合物100質量%に対して、α-サイアロン蛍光体の含有量、又は、α-サイアロン蛍光体と希土類アルミン酸塩蛍光体との合計の含有量が、仕込みの質量割合で、好ましくは0.1質量%以上70質量%以下の範囲内であり、より好ましくは0.5質量%以上65質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.8質量%以上60質量%以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは1質量%以上55質量%以下の範囲内であり、特に好ましくは2質量%以上50質量%以下の範囲内である。成形体を構成する混合物100質量%に対して、α-サイアロン蛍光体の含有量、又は、α-サイアロン蛍光体と希土類アルミン酸塩蛍光体との合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲内であれば、発光強度が高い波長変換焼結体を得ることができる。成形体を構成する混合物100質量%に対して、α-サイアロン蛍光体の含有量、又はα-サイアロン蛍光体と希土類アルミン酸塩蛍光体との合計の含有量が0.1質量%未満であると、所望の発光強度を有する波長変換焼結体を得ることができない。また、成形体を構成する混合物100質量%に対するα-サイアロン蛍光体の含有量、又はα-サイアロン蛍光体と希土類アルミン酸塩蛍光体との合計の含有量が70質量%を超えると、相対的に第一の焼結体中に含まれる蛍光体の含有量が多くなるため、所望の発光強度を得るために、又は、所望の色調を得るために、第一の焼結体の厚さを薄くして用いる必要がある。所望の色調を得るために薄くした第一の焼結体では、波長変換焼結体として所望の強度が得られず、取り扱いが困難となる場合がある。また、成形体を構成する混合物100質量%に対するα-サイアロン蛍光体の含有量、又は、α-サイアロン蛍光体と希土類アルミン酸塩蛍光体との合計の含有量が70質量%を超えると、成形体中に含まれる蛍光体の量が多くなり、相対的に酸化アルミニウムの量が少なくなり、得られる第一の焼結体又は後述する第二の焼結体からなる波長変換焼結体の相対密度を高くすることが難しくなる場合がある。
混合物中に希土類アルミン酸塩蛍光体を含む場合には、成形体を構成する混合物中のα-サイアロン蛍光体と希土類アルミン酸塩蛍光体との配合割合は、所望の発光強度が得られ、所望の色調の光を発する第一の焼結体が得られる量であればよく、混合物100質量%に対して、α-サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であり、α-サイアロン蛍光体及び希土類アルミン酸塩蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲内であればよい。成形体を構成する混合物100質量%に対する、α-サイアロン蛍光体及び希土類アルミン酸塩蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲内であり、α-サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であれば、例えばα-サイアロン蛍光体と希土類アルミン酸塩蛍光体の質量比(α-サイアロン蛍光体:希土類アルミン酸塩蛍光体)は、仕込みの質量比で、好ましくは1:99から99:1の範囲内であり、より好ましくは2:98から98:2の範囲内であり、さらに好ましく3:97から95:5の範囲内であり、よりさらに好ましくは4:96から90:10の範囲内であればよい。
成形体を構成する混合物100質量%に対して、α-サイアロン蛍光体及び希土類アルミン酸塩蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲内であり、α-サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内の場合に、希土類アルミン酸塩蛍光体の含有量は、仕込みの質量割合で、好ましくは0.1質量%以上69.9質量%以下の範囲内であり、より好ましくは0.5質量%以上60質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.8質量%以上50質量%以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは1質量%以上40質量%以下の範囲内であり、特に好ましくは1質量%以上30質量%以下の範囲内である。成形体を構成する混合物100質量%に対して、希土類アルミン酸塩蛍光体の含有量が0.1質量%以上69.9質量%以下の範囲内であれば、所望の色調が得られる波長変換焼結体を得ることができる。
図1は、波長変換焼結体の製造方法のフローチャートである。図1を参照して、波長変換焼結体の製造方法の工程を説明する。波長変換焼結体の製造方法は、成形体準備工程S102と、一次焼成工程S103とを含む。波長変換焼結体の製造方法は、成形体準備工程S102の前に、粉体混合工程S101を含んでいてもよく、一次焼成工程S103の後に、波長変換焼結体を加工する加工工程S105を含んでいてもよい。
粉体混合工程
粉体混合工程では、成形体を構成する粉体として、α-サイアロン蛍光体の粉体と、酸化アルミニウム粒子と、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体の粉体とを混合する。粉体の混合は、乳鉢及び乳棒を用いて混合することができる。粉体の混合には、ボールミルなどの混合媒体を用いて混合してもよい。また、粉体の混合を行いやすくし、さらに混合後の粉体を成形しやすくするために、成形助剤を用いてもよい。成形助剤は、水又はエタノールが挙げられる。成形助剤は、後の焼成工程において揮発しやすいものが好ましい。成形助剤を用いなくてもよい。成形助剤を加える場合は、混合物100質量部に対して、成形助剤が10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
成形体準備工程
成形体準備工程では、α-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウム粒子と、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体と、を含む混合物を、所望の形状に成形し、成形体を得る。混合物の成形方法は、プレス成形法などの知られている方法を採用することができ、例えば金型プレス成形法、JIS Z2500:2000、No.2109で用語が定義されている、冷間静水等方圧加圧法(Cold Isostatic Pressing、以下、「CIP処理」ともいう。)等が挙げられる。成形方法は、成形体の形状を整えるために、2種の方法を採用してもよく、金型プレス成形をした後に、CIP処理を行ってもよい。CIP処理では、水を媒体として成形体をプレスすることが好ましい。
金型プレス成形時の圧力は、好ましくは3MPa以上50MPa以下の範囲内であり、より好ましくは4MPa以上20MPa以下の範囲内である。金型プレス成形時の圧力が3MPa以上50MPa以下の範囲内であれば、成形体を所望の形状に整えることができる。
CIP処理における圧力は、好ましくは50MPa以上250MPa以下の範囲内であり、より好ましくは100MPa以上200MPa以下の範囲内である。CIP処理における圧力が前記範囲内であると、成形体の密度を高め、全体が略均一な密度を有する成形体を得ることができ、後の一次焼成工程及び二次焼成工程において、得られる焼結体の密度を高めることができる。
一次焼成工程
一次焼成工程は、α-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウム粒子と、必要に応じて希土類アルミン酸塩蛍光体とを含む混合物の成形体を1370℃以上1600℃以下の範囲内の温度で一次焼成し、第一の焼結体を得る工程である。一次焼成工程によって、成形体に含まれるα-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウム粒子と、必要に応じて含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体との焼結密度を高め、空隙による光の散乱を抑制し、透光性が高まることによって励起光を発するとともに、励起光によって所望の発光ピーク波長を有する光を発する波長変換焼結体を得ることができる。
一次焼成の温度は、1370℃以上1600℃以下の範囲内である。一次焼成の温度が1370℃未満であると、混合物中に微量の酸化ガリウムが含まれていると、酸化ガリウムが酸化アルミニウム粒子の焼結を阻害して、焼結体中に空隙が形成され、第一の焼結体の相対密度が低くなる場合がある。相対密度が低い焼結体は、光が焼結体中の空隙で散乱し過ぎて、光が焼結体から抜け出し難くなり、波長変換焼結体の発光強度が低下する場合がある。一次焼成の温度が1600℃を超えると、成形体中でα-サイアロン蛍光体と酸化アルミニウム粒子が反応し、α-サイアロン蛍光体の結晶構造が分解されて、得られた第一の焼結体は、励起光を照射しても発光しない。一次焼成の温度は、好ましくは1380℃以上1590℃以下の範囲内であり、より好ましくは1400℃以上1580℃以下の範囲内であり、さらに好ましくは1400℃以上1560℃以下の範囲内である。
一次焼成は、加圧や荷重をかけずに非酸化性雰囲気のもとで焼成を行う雰囲気焼結法、非酸化性雰囲気のもと加圧下で焼成を行う雰囲気加圧焼結法、ホットプレス焼結法、放電プラズマ焼結法(Spark Plasma Sintering、以下、「SPS」とも称する。)が挙げられる。
一次焼成は、窒素ガスを含む雰囲気のもとで行なうことが好ましい。窒素ガスを含む雰囲気は、少なくとも99体積%以上の窒素ガスを含む雰囲気である。窒素ガスを含む雰囲気中の窒素ガスは、99体積%以上であることが好ましく、より好ましくは99.5体積%以上である。窒素ガスを含む雰囲気中には、窒素ガスの他に、酸素等の微量のガスが含まれていてもよい。窒素ガスを含む雰囲気中の酸素の含有量は、1体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5体積%以下、さらに好ましくは0.1体積%以下、よりさらに好ましくは0.01体積%以下、特に好ましくは0.001体積%以下である。一次焼成の雰囲気が窒素ガスを含む雰囲気であると、一次焼成におけるα-サイアロン蛍光体の結晶構造の劣化が抑制され、結晶構造を維持したα-サイアロン蛍光体を含む第一の焼結体を得ることができる。
一次焼成の雰囲気圧力は、0.2MPa以上200MPa以下の範囲内であることが好ましい。雰囲気圧力は、ゲージ圧をいう。一次焼成は、0.2MPa以上200MPa以下の範囲内の雰囲気圧力下で行うことが好ましい。酸窒化物であるα-サイアロン蛍光体は高温になるほど分解しやすくなるが、一次焼成を0.2MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧雰囲気で行うことにより、α-サイアロン蛍光体の分解がより抑制されて、高い発光強度を有する第一の焼結体が得られる。雰囲気圧力はゲージ圧として、より好ましくは0.2MPa以上1.0MPa以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.8MPa以上1.0MPa以下の範囲内である。
二次焼成工程
波長変換焼結体の製造方法において、一次焼成の後に得られた第一の焼結体を二次焼成して、第二の焼結体を得る工程(二次焼成工程S104)を含むことが好ましい。図2は、波長変換焼結体の製造方法のフローチャートである。
二次焼成は、JIS Z2500:2000、No.2112で用語が定義されている、熱間等方圧加圧(Hot Isostatic Pressing、以下「HIP」とも称する。)処理により、1000℃以上1600℃以下の範囲内の温度で行うことが好ましい。二次焼成の温度が1000℃未満であると、二次焼成を行っても第一の焼結体よりも高い相対密度を有する第二の焼結体を得ることができない。二次焼成の温度が1600℃を超えると、α-サイアロン蛍光体と酸化アルミニウム粒子が反応し、α-サイアロン蛍光体の結晶構造の一部が分解されてしまい、得られた第二の焼結体の発光強度が低くなる。二次焼成の温度は、より好ましくは1100℃以上1580℃以下の範囲内であり、さらに好ましくは1200℃以上1570℃以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは1300℃以上1560℃以下の範囲内であり、特に好ましくは1350℃を超えて1550℃以下の範囲内である。
二次焼成は、不活性ガス雰囲気のもとで行なうことが好ましい。不活性ガス雰囲気とは、アルゴン、ヘリウム、窒素等を雰囲気中の主成分とする雰囲気を意味する。ここでアルゴン、ヘリウム、窒素等を雰囲気中の主成分とするとは、雰囲気中に、アルゴン、ヘリウム及び窒素からなる群から選択される少なくとも1種の気体を50体積%以上含むことをいう。不活性ガス雰囲気中の酸素の含有量は、1体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5体積%以下、さらに好ましくは0.1体積%以下、よりさらに好ましくは0.01体積%以下、特に好ましくは0.001体積%以下である。不活性ガス雰囲気は、一次焼成における窒素ガスを含む雰囲気と同様の雰囲気であってもよく、窒素ガスを含む雰囲気中に含まれる窒素ガスの含有量は、好ましくは99体積%以上、より好ましくは99.5体積%以上である。二次焼成の雰囲気が不活性ガス雰囲気であると、二次焼成におけるα-サイアロン蛍光体の結晶構造の劣化が抑制され、結晶構造を維持したα-サイアロン蛍光体を含む第二の焼結体を得ることができる。
二次焼成をHIP処理によって行う場合は、HIP処理における圧力は、好ましくは50MPa以上300MPa以下の範囲内であり、より好ましくは80MPa以上200MPa以下の範囲内である。HIP処理における圧力が50MPa以上300MPa以下の範囲内であると、α-サイアロン蛍光体の結晶構造を劣化させることなく、焼結体の全体を均一に、より高い密度にすることができる。
二次焼成をHIP処理によって行う場合は、HIP処理の時間は、例えば0.5時間以上20時間以内であり、1時間以上10時間以内であることが好ましい。
二次焼成工程において、第一の焼結体をさらに二次焼成することによって、さらに密度を高めた第二の焼結体を得ることができる。第二の焼結体は、第一の焼結体よりも密度が低くなる場合もある。二次焼成の温度や、第一の焼結体中のα-サイアロン蛍光体の含有量によっては、二次焼成によって第一の焼結体に含まれる閉空孔(クローズドポア)が潰れるとともに、第一の焼結体中に含まれるα-サイアロン蛍光体が一部分解、蒸散して第二の焼結体に開空孔(オープンポア)が生成される場合があり、第一の焼結体の方が第二の焼結体よりも密度が高くなる場合もある。第一の焼結体の方が第二の焼結体よりも密度が高くなる場合には、二次焼成を行う必要はない。成形体を構成する混合物中にGaが15質量ppm以下含まれている場合であっても、一次焼成によって微量に含まれているGaはほぼ蒸散していると推測され、二次焼成では、混合物中に微量に含まれていたGaの影響を受けないと考えられる。
加工工程
波長変換焼結体の製造方法において、得られた第一の焼結体又は第二の焼結体からなる波長変換焼結体を加工する加工工程を含んでいてもよい。加工工程は、得られた波長変換焼結体を所望の厚さや大きさに切断加工する工程である。波長変換焼結体の切断方法は、例えば、ブレードダイシング、レーザーダイシング、ワイヤーソー等の公知の方法から選択することができる。これらのうち、切断面が高精度に平らになる点からワイヤーソーが好ましい。波長変換焼結体の厚さは特に制限されないが、機械的強度や発光強度を考慮して、好ましくは1μm以上1mm以下の範囲内であり、より好ましくは10μm以上800μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは50μm以上500μm以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは100μm以上400μm以下の範囲内である。
第一の焼結体の相対密度
第一の焼結体の相対密度は、好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは94%以上である。第一の焼結体の相対密度は100%であってもよく、第一の焼結体の相対密度は、99%以下であるか、98%以下であってもよい。微量のGaによる酸化アルミニウム粒子の焼結阻害に起因する空隙の形成が抑制され、第一の焼結体の相対密度が90%以上となることによって、励起光の照射によって所望の発光ピーク波長を有する波長変換焼結体として用いることができる。また、一次焼成後に二次焼成を行う場合には、第一の焼結体の相対密度が90%以上であることによって、一次焼成後の二次焼成においてさらに第二の焼結体の密度を高めることができ、波長変換焼結体の空隙が少なくなり、空隙内での光の散乱が抑制されるため、発光強度の高い波長変換焼結体を製造することができる。
第一の焼結体の相対密度は、第一の焼結体の見掛け密度及び第一の焼結体の真密度から求めることができる。相対密度は、下記計算式(2)により求めることができる。
Figure 0007448806000002
第一の焼結体の真密度は、下記計算式(3)によって求められる。
Figure 0007448806000003
第一の焼結体の見掛け密度は、第一の焼結体の質量及びアルキメデス法によって求められる第一の焼結体の体積から求められる。第一の焼結体の見掛け密度は、下記計算式(4)により求めることができる。
Figure 0007448806000004
第二の焼結体の相対密度
二次焼成後に得られる第二の焼結体は、相対密度が、好ましくは92%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上、特に好ましくは95%以上である。これによって、波長変換焼結体の空隙は少なく、発光強度を高くすることができる。また、空隙が少ないことで、例えば加工工程において、加工を行っても欠けたりすることなく、加工した第二の焼結体からなる波長変換焼結体を得ることができる。第二の焼結体の相対密度は100%であってもよく、第二の焼結体の相対密度は、99.9%以下であるか、99.8%以下であってもよい。
第二の焼結体の相対密度は、第一の焼結体の相対密度を求める前記計算式(2)から(4)における第一の焼結体を、第二の焼結体に置き換えて求めることができる。
波長変換焼結体
得られた第一の焼結体又は第二の焼結体を波長変換焼結体として用いることができる。第一の焼結体又は第二の焼結体からなる波長変換焼結体は、少なくともα-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウムとを含み、これらに加え、さらに希土類アルミン酸塩蛍光体とを含んでいてもよい。第一の焼結体又は第二の焼結体からなる波長変換焼結体は、α-サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であることが好ましい。波長変換焼結体中のα-サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であると、所望の発光強度が得られる。波長変換焼結体中のα-サイアロン蛍光体の含有量は、ICP-AESを用いて、α-サイアロン蛍光体を構成する元素の元素分析を行い、得られた元素分析の結果から波長変換焼結体に含まれるα-サイアロン蛍光体の含有量を測定することができる。波長変換焼結体に含まれるα-サイアロン蛍光体は、前記式(I)又は(II)で表される組成を有することが好ましい。
波長変換焼結体は、希土類アルミン酸塩蛍光体を含む場合は、α-サイアロン蛍光体及び希土類アルミン酸塩蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲内であることが好ましい。波長変換焼結体中のα-サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であって、α-サイアロン蛍光体及び希土類アルミン酸塩蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲内であると、励起光の照射によって所望の色調の発光が得られる。波長変換部焼結体中の希土類アルミン酸塩蛍光体は、ICP-AESによって元素分析を行い、得られた元素分析の結果から波長変換焼結体に含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体の含有量を測定することができる。希土類アルミン酸塩蛍光体は、(Y,Gd,Tb,Lu)Al12:Ceで表される組成を有することが好ましく、前記式(III)又は(IV)で表される組成を有することが好ましい。
波長変換焼結体中のα-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウムと、必要に応じて含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体とは、それぞれ結晶構造が異なるため、粒界によって区別される。波長変換焼結体は、第一の焼結体又は第二の焼結体からなり、相対密度は90%以上であることが好ましく、より好ましくは91%以上、さらに好ましくは92%以上、よりさらに好ましくは94%以上、特に好ましくは95%以上である。波長変換焼結体の相対密度は、前記計算式(2)から(4)において、それぞれ第一の焼結体を波長変換焼結体に置き換えて求めることができる。
波長変換焼結体は、LEDやLDの発光素子と組み合わせることによって、発光装置を構成することができる。波長変換焼結体は、発光素子から発せられた励起光を変換して、所望の発光ピーク波長を有する光を発し、発光装置は、発光素子からの光と波長変換焼結体で波長変換された光との混色光を発する。発光素子は、例えば、350nm以上500nm以下の波長範囲内の光を発する発光素子を用いることができる。発光素子には、例えば、窒化物系半導体(InAlGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた半導体発光素子を用いることができる。励起光源として半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
発光素子は、LDを用いてもよい。LDから出射された励起光を、波長変換焼結体に入射させ、励起光を波長変換させた光を集光させて、レンズアレイ、偏向変換素子、色分離光学系などの複数の光学系によって赤色光、緑色光、及び青色光に分離して、画像情報に応じて変調し、カラーの画像光を形成してもよい。発光素子として、LDから出射された励起光は、ダイクロイックミラー又はコリメート光学系等の光学系を通じて波長変換焼結体に入射させてもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
LAG蛍光体1の製造
酸化ルテチウム(Lu)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)を目的の組成となるように、それぞれ計量し、混合して、原料混合物を得た。フラックスとしてフッ化バリウム(BaF)を原料混合物に添加し、原料混合物とフラックスをボールミルでさらに混合した。この混合物をアルミナルツボに入れ、還元雰囲気下、1500℃で10時間、熱処理して焼成物を得た。焼成物を純水中に分散させ、ふるいを介して振動を加えながら、溶媒(純水)を流して、湿式ふるいを通過させ、次いで、脱水、乾燥して、乾式ふるいを通過させて、分級し、ルテチウムアルミニウムガーネット(以下、「LAG」ともいう。)蛍光体1を得た。後述するFSSS法により、LAG蛍光体1の平均粒径(Fisher Sub-Sieve Sizers’s number)を測定した。LAG蛍光体1の平均粒径は23μmであった。後述する方法によってLAG蛍光体の組成分析を行った。LAG蛍光体1は、Lu2.984Ce0.016Al12で表される組成を有していた。LAG蛍光体1中のGa量は20質量ppm未満であった。
LAG蛍光体2の製造
LAG蛍光体1と同様の方法で、LAG蛍光体2を製造した。LAG蛍光体2のFSSS法により測定した平均粒径は23μmであった。LAG蛍光体2は、Lu2.984Ce0.016Al12で表される組成を有していた。LAG蛍光体2中のGa量は58質量ppmであった。
YAG蛍光体の製造
酸化イットリウム(Y)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)を目的の組成となるように、それぞれを秤量し、混合して原料混合物とした。フラックスとしてフッ化バリウム(BaF)を原料混合物に添加し、原料混合物とフラックスをボールミルでさらに混合した。この混合物をアルミナルツボに入れ、還元雰囲気下、1500℃で10時間、熱処理して焼成物を得た。焼成物を純水中に分散させ、ふるいを介して振動を加えながら、溶媒(純水)を流して、湿式ふるいを通過させ、次いで、脱水、乾燥して、乾式ふるいを通過させて、分級し、イットリウムアルミニウムガーネット(以下、「YAG」ともいう。)蛍光体を得た。YAG蛍光体のFSSS法により測定した平均粒径は5μmであった。YAG蛍光体は、(Y0.575Gd0.400Ce0.025Al12で表される組成を有していた。YAG蛍光体中のGa量は20質量ppm未満であった。
FSSS法による平均粒径の測定
各実施例に用いた希土類アルミン酸塩蛍光体(LAG蛍光体1、LAG蛍光体2及びYAG蛍光体1)と酸化アルミニウム粒子をFisher Sub-Sieve Sizer Model95(Fisher Scienetific社製)を用いて、FSSS法により、平均粒径を測定した。
組成分析
測定対象となる蛍光体について、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-AES)により、酸素を除く各元素の質量百分率(質量%)を測定し、各元素の質量百分率から蛍光体の組成における各元素のモル比を算出した。各LAG蛍光体及びYAG蛍光体について、Alのモル比5を基準として他の元素のモル比を算出した。また、各LAG蛍光体及びYAG蛍光体のGa量を測定した。LAG蛍光体1及びYAG蛍光体は、Ga量が検出限界以下の20質量ppm未満であった。
後述する各実施例及び比較例の波長変換焼結体(第一の焼結体又は第二の焼結体)を以下のように測定した。結果を表1から4に示す。
レーザー回折粒度分布測定法による体積メジアン径
各実施例に用いたα-サイアロン蛍光体は、レーザー回折粒度分布測定装置(製品名:MASTER SIZER3000、MALVERN社製)を用いて、レーザー回折粒度分布測定法による体積基準の粒度分布における小径側からの累積頻度が50%に達する粒径(体積メジアン径)を測定した。
酸化アルミニウム粒子の純度の測定
実施例及び比較例に用いた酸化アルミニウム粒子の純度を測定した。実施例及び比較例に用いた酸化アルミニウム粒子の質量を測定した後、酸化アルミニウム粒子を800℃で1時間、大気雰囲気で焼成し、酸化アルミニウム粒子に付着している有機分や酸化アルミニウム粒子が吸湿している水分を除去し、焼成後の酸化アルミニウム粒子の質量を測定した。焼成前後の酸化アルミニウム粒子の質量から、前記計算式(1)を用いて、酸化アルミニウム粒子の酸化アルミニウムの純度を求めた。
第一の焼結体及び第二の焼結体の相対密度の測定
各実施例及び比較例の第一の焼結体の相対密度を、前記計算式(2)から(4)に基づき求めた。前記計算式(3)において、α-サイアロン蛍光体の真密度は3.29g/cm、酸化アルミニウム粒子の真密度は3.98g/cm、LAG蛍光体1及びLAG蛍光体2の真密度は6.48g/cm、YAG蛍光体の真密度は4.77g/cmとした。前記計算式(2)から(4)において、第一の焼結体を第二の焼結体に置き換えて、第二の焼結体の相対密度を、前記計算式(2)から(4)に基づき求めた。前記計算式(3)において希土類アルミン酸塩蛍光体を、LAG蛍光体1、LAG蛍光体2及びYAG蛍光体と置き換えて、第一の焼結体又は第二の焼結体の真密度を求めた。
相対発光強度の測定
各実施例又は比較例において、第一の焼結体又は第二の焼結体からなる波長変換焼結体を、ワイヤーソーを用いて厚さ500μmに切断し、サンプルを形成した。発光ピーク波長が455nmである窒化物半導体からなるLEDチップを励起光源として用いて、このLEDチップから波長変換焼結体のサンプルに光を照射し、光源からの光を受けて各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲内にある発光ピーク波長の発光強度を、分光蛍光光度計(日亜化学工業株式会社製)を用いて測定した。後述する実施例1から6に関しては、実施例1の波長変換焼結体のサンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲内にある発光ピーク波長の発光強度を100%として、相対発光強度(%)を表した。実施例7、比較例1及び2に関しては、実施例7の波長変換焼結体のサンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲内にある発光ピーク波長の発光強度を100%として、相対発光強度(%)を表した。後述する実施例8から13及び比較例3及び4に関しては、実施例10の波長変換焼結体のサンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲内にある発光ピーク波長の発光強度を100%として、相対発光強度(%)を表した。後述する実施例14から19に関しては、実施例17の波長変換焼結体のサンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲内にある発光ピーク波長の発光強度を100%として、相対発光強度(%)を表した。
色度x、y
各実施例及び比較例の波長変換焼結体のサンプルについて測定した発光スペクトルのデータから、CIE(国際照明委員会:Commission International de l’eclarirage)1931表色系におけるxy色座標上の色度x、色度yを求めた。
外観写真
背景に黒板を配置して、市販のカメラを用いて、実施例7、比較例1及び比較例2の波長変換焼結体の外観写真を得た。図3から図5に、それぞれ実施例7、比較例1及び比較例2に係る波長変換焼結体のサンプルの外観写真を示す。
実施例1
粉体混合工程
レーザー回折粒度分布測定法により測定した体積メジアン径が13.0μmのα-サイアロン蛍光体(品名:アロンブライト 品種YL―600、デンカ株式会社製)を1質量部(成形体用の混合物100質量%に対してα-サイアロン蛍光体を1質量%)と、FSSS法により測定した平均粒径が0.5μmの酸化アルミニウム(α-アルミナ)粒子(品名:AA03、住友化学工業株式会社製、酸化アルミニウムの純度99.5質量%)99質量部(成形体用の混合物100質量%に対して酸化アルミニウム粒子を99質量%)と、を計量し、乳鉢及び乳棒を用いて混合し、成形体用の混合物を準備した。表1において、α-サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合物100質量%に対する仕込みの質量割合を示す。成形体用の混合物100質量%に対して、酸化アルミニウム粒子の含有量は、100質量ppm(0.01質量%)以下の範囲で含まれる物質を除き、仕込みの質量割合で混合物中のα-サイアロン蛍光体を除く残部である。表1において、各実施例における酸化アルミニウム粒子の含有量は、成形体用の混合物100質量%からα-サイアロン蛍光体(質量%)を減じた残部である。混合物中のGa含有量(表において「混合物中のGa量」と表す。)は、混合物中に含まれるα-サイアロン蛍光体及び酸化アルミニウム粒子の配合比率から算出した。ICP-AESにより測定したα-サイアロン蛍光体に含まれるGaの含有量は検出限界未満の20質量ppm未満であり、α-サイアロン蛍光体の体色がくすんでいないことから、Gaは含んでいないと推測されたため、α-サイアロン蛍光体に含まれるGaの含有量は0質量ppmとして、混合物中のGa量を算出した。また、ICP-AESにより測定した酸化アルミニウム粒子に含まれるGaの含有量は、検出限界以下の5質量ppm未満であり、酸化アルミニウム粒子に含まれるGaの含有量を0質量ppmとして混合物中のGa量を算出した。各表中のppmは、質量ppmである。
成形体準備工程
成形体用の混合物を金型に充填し、圧力1.8MPa(200kgf/cm)で直径17.0mm、厚さ10mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方圧加圧(CIP)装置(神戸製鋼(KOBELCO)社製)により、圧力媒体に水を用いて、176MPaでCIP処理を行った。
一次焼成工程
得られた成形体を焼成炉(富士電波工業株式会社製)、窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)で、0.9MPa、1500℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得た。得られた第一の焼結体中のα-サイアロン蛍光体及び酸化アルミニウムの各含有量(質量%)は、成形体用の混合物100質量%に対するα-サイアロン蛍光体及び酸化アルミニウム粒子の各仕込みの質量割合とほぼ等しい。得られた第一の焼結体を波長変換焼結体とした。
実施例2から5
混合物中のα-サイアロン蛍光体、及び酸化アルミニウム粒子の配合比率を、表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を波長変換焼結体とした。
実施例6
一次焼成の温度を、表1に示すように1550℃に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を波長変換焼結体とした。
Figure 0007448806000005
表1に示すように、実施例1から6に係る波長変換焼結体は、α-サイアロン蛍光体及び酸化アルミニウム粒子共に、Gaを含まない(Gaが0質量ppmである)ものを用いて第一の焼結体を形成したため、相対密度が90%以上と高くなった。また、実施例2から6に係る波長変換焼結体の相対発光強度は、いずれも実施例1の相対発光強度よりも高くなった。
実施例7
粉体混合工程
FSSS法により測定した平均粒径が23μmであり、Ga含有量が20質量ppm未満のLAG蛍光体1を15質量部(成形用の混合物100質量%に対して15質量%)と、レーザー回折粒度分布測定法により測定した体積メジアン径が13.0μmのα-サイアロン蛍光体(品名:アロンブライト 品種YL―600、デンカ株式会社製)を3質量部(成形体用の混合物100質量%に対してα-サイアロン蛍光体を3質量%)と、FSSS法により測定した平均粒径が0.5μmの酸化アルミニウム(α-アルミナ)粒子(品名:AA03、住友化学工業株式会社製、酸化アルミニウムの純度99.5質量%)82質量部(成形体用の混合物100質量%に対して酸化アルミニウム粒子を82質量%)と、を用い、一次焼成の温度は、表2に示す温度としたこと以外は、実施例1と同様にして、成形体準備工程及び一次焼成工程を経て、第一の焼結体を得た。成形体用の混合物100質量%に対して、酸化アルミニウム粒子の含有量は、100質量ppm(0.01質量%)以下の範囲で含まれる物質を除き、仕込みの質量割合で混合物中のα-サイアロン蛍光体及びLAG蛍光体を除く残部である。混合物中のGa含有量(表において「混合物中のGa量」と表す。)は、混合物中に含まれるα-サイアロン蛍光体、LAG蛍光体1及び酸化アルミニウム粒子の配合比率から算出した。ICP-AESにより測定したα-サイアロン蛍光体に含まれるGaの含有量は0質量ppmであった。また、ICP-AESにより測定した酸化アルミニウム粒子に含まれるGaの含有量は、検出限界以下の5質量ppm未満であった。実施例1と同様に、αサイアロン蛍光体及び酸化アルミニウム粒子に含まれるGaの含有量をそれぞれ0質量ppmとして混合物中のGa量を算出した。LAG蛍光体1に含まれるGa量が20質量ppm未満であった。LAG蛍光体1を15質量%含む混合物中のGa量は3質量ppm未満と算出した。
二次焼成工程
得られた第一の焼結体を用い、熱間等方圧加圧(HIP)装置(神戸製鋼(KOBELCO)社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、温度が1450℃、圧力が195MPaで、2時間、HIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体を得た。この第二の焼結体を波長変換焼結体とした。得られた第二の焼結体中のα-サイアロン蛍光体、LAG蛍光体1及び酸化アルミニウムの各含有量(質量%)は、成形体用の混合物100質量%に対するα-サイアロン蛍光体、LAG蛍光体及び酸化アルミニウム粒子の各仕込みの質量割合とほぼ等しい。
比較例1
粉体混合工程において、混合物中のGaの含有量が50質量ppmとなるように酸化ガリウム(Ga)を添加したこと以外は、実施例7と同様にして、第二の焼結体を得て、第二の焼結体を波長変換焼結体とした。
比較例2
粉体混合工程において、混合物中のGaの含有量が200質量ppmとなるように酸化ガリウム(Ga)を添加したこと以外は、実施例7と同様にして、第二の焼結体を得て、第二の焼結体を波長変換焼結体とした。
Figure 0007448806000006
表2に示すように、実施例7に係る波長変換焼結体は、第一の焼結体の相対密度が95%以上であり、第二の焼結体の相対密度が99.9%であった。一方、比較例1及び2に係る波長変換焼結体は、相対発光強度が実施例7と比較してかなり低くなった。比較例1及び2の波長変換焼結体は、15質量ppmを超えてGaを多く含む混合物を用いた。そのため、混合物に含まれるGaがα-サイアロン蛍光体と反応することで、本来とは異なるα-サイアロン蛍光体に変化して、波長変換焼結体の体色がくすみ、相対密度は比較的に高いものの、体色の変化が大きく影響することで、波長変換焼結体の発光強度が低下したと推測される。また、実施例7の波長変換焼結体の色度x、yと比べて、比較例1及び2の波長変換焼結体の色度x、yは、特に色度xが異なる数値となっており、所望の色度が得られていなかった。
図3は、実施例7に係る波長変換焼結体、図4は、比較例1に係る波長変換焼結体、図5は、比較例2に係る波長変換焼結体を、それぞれワイヤーソーで切断したサンプルの外観写真である。比較例1及び比較例2に係る波長変換焼結体の外観は、実施例7の波長変換焼結体の外観と比べて白っぽくなっており、波長変換焼結体の体色が変化していた。
実施例8から10
混合物中のLAG蛍光体1、α-サイアロン蛍光体、酸化アルミニウム粒子の配合比率を、表3に示すように変えて、一次焼成を1450℃で行い、二次焼成を1400℃で行ったこと以外は、実施例7と同様にして、第二の焼結体を得て、第二の焼結体を波長変換焼結体とした。
実施例11から13
FSSS法により測定した平均粒径が23μmであり、Ga含有量が58質量ppmであるLAG蛍光体2を用いて、混合物中のLAG蛍光体2、α-サイアロン蛍光体、酸化アルミニウム粒子の配合比率と、一次焼成の温度と、二次焼成の温度を表3に示すように変えたこと以外は、実施例7と同様にして、第二の焼結体を得て、第二の焼結体を波長変換焼結体とした。
比較例3及び4
FSSS法により測定した平均粒径が23μmであり、Ga含有量が58質量ppmであるLAG蛍光体2を用いて、混合物中のLAG蛍光体2、α-サイアロン蛍光体、酸化アルミニウム粒子の配合比率と、一次焼成の温度と、二次焼成の温度を表3に示すように変えたこと以外は、実施例7と同様にして、第二の焼結体を得て、第二の焼結体を波長変換焼結体とした。
Figure 0007448806000007
表3に示すように、実施例8から13に係る波長変換焼結体は、第一の焼結体の相対密度が94%以上であり、第二の焼結体の相対密度が、第一の焼結体よりも高く、相対密度の高い波長変換焼結体が得られた。実施例10に係る波長変換焼結体は、第二の焼結体の相対密度が、実施例8から9及び実施例11から13よりも低くなった。実施例10に係る波長変換焼結体は、混合物中のGa含有量が12質量ppmであり、実施例8から9及び実施例11から13よりもGaの含有量が多いため、酸化アルミニウム粒子の焼結がGaにより阻害されて、より多くの空隙が形成されていると推測された。実施例13に係る波長変換焼結体は、第一の焼結体の相対密度が、実施例11から12よりも低くなった。実施例13に係る波長変換焼結体は、一次焼成の温度が実施例11から12よりも低いため、実施例11及び12よりも酸化アルミニウムの焼結が進むことがなかったので、第一の焼結体の相対密度が低く、HIP処理により二次焼成を行っても、相対密度を高くすることができず、相対密度が低くなったと推測される。実施例13に係る波長変換焼結体は、相対密度が低いため、入射した光が散乱し、相対発光強度が、実施例11及び12よりも低くなったと推測される。
比較例3に係る波長変換焼結体は、混合物中のGaの含有量が17質量ppmと多く、一次焼成の温度が実施例8から12によりも低いため、酸化アルミニウムの焼結が阻害され、二次焼成の温度が実施例8から13と同じ温度で二次焼成を行った場合であっても、得られた第二の焼結体の相対密度が90%未満と低くなった。比較例4に係る波長変換焼結体は、一次焼成の温度が1350℃と比較例3の一次焼成の温度よりも低いため、酸化アルミニウム粒子の焼結が混合物中に6質量ppm含まれる微量のGaにより阻害されることで、得られた第一の焼結体に空隙が多く形成された。そのため、HIP処理による二次焼成を行っても、相対密度が高くならず、第一の焼結体及び第二の焼結体の相対密度が同じになった。比較例3及び4に係る波長変換焼結体は、相対密度が90%未満と低いため、励起光が焼結体中の空隙で散乱し、又は、空隙によって入射された励起光が焼結体から抜け出てしまう。そのため、蛍光体によって波長変換される効率が低下し、実施例8から13に係る波長変換焼結体と比べて、相対発光強度が50%未満とかなり低くなった
実施例14から19
LAG蛍光体1又はLAG蛍光体2の代わりに、FSSS法により測定した平均粒径が5μmであり、Ga含有量が20質量ppm未満であるYAG蛍光体を用いて、混合物中のYAG蛍光体、α-サイアロン蛍光体、及び酸化アルミニウム粒子の配合比率、及び一次焼成の温度を、表4に示すように変えたこと以外は、実施例7と同様にして、第一の焼結体を得て、第一の焼結体を波長変換焼結体とした。成形体用の混合物100質量%に対して、酸化アルミニウム粒子の含有量は、100質量ppm(0.01質量%)以下の範囲で含まれる物質を除き、仕込みの質量割合で混合物中のα-サイアロン蛍光体及びYAG蛍光体を除く残部である。
Figure 0007448806000008
表4に示すように、実施例14から19に係る波長変換焼結体は、第一の焼結体の相対密度が90%以上であり、相対密度の高い波長変換焼結体が得られた。
本開示に係る波長変換焼結体は、LEDやLDから発せられた光の波長を変換することができる波長変換部材として利用できる。

Claims (15)

  1. α-サイアロン蛍光体と、酸化アルミニウム粒子とを含み、Gaの含有量が15質量ppm以下である混合物の成形体を準備することと、
    前記成形体を、1370℃以上1600℃以下の範囲内の温度で一次焼成し、第一の焼結体を得ることを含む、波長変換焼結体の製造方法。
  2. 前記混合物に含まれるGaの含有量が、10質量ppm以下である、請求項1に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  3. 前記混合物が希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、請求項1又は2に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  4. 前記第一の焼結体を熱間等方圧加圧(HIP)処理により1000℃以上1600℃以下の範囲内の温度で二次焼成し、第二の焼結体を得ることを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  5. 前記α-サイアロン蛍光体のレーザー回折粒度分布測定法で測定した体積メジアン径が2μm以上30μm以下の範囲内である、請求項1から4のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  6. 前記酸化アルミニウム粒子のフィッシャーサブシーブサイザー法で測定した平均粒径が0.1μm以上1.3μm以下の範囲内である、請求項1から5のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  7. 前記希土類アルミン酸塩蛍光体のフィッシャーサブシーブサイザー法で測定した平均粒径が1μm以上50μm以下の範囲内である、請求項3から6のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  8. 前記混合物が、前記混合物100質量%に対して、前記α-サイアロン蛍光体を0.1質量%以上40質量%以下の範囲内で含み、前記混合物100質量%から前記α-サイアロン蛍光体を除く残部が、前記酸化アルミニウム粒子であり、前記酸化アルミニウム粒子を60質量%以上99.9質量%以下の範囲内で含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  9. 前記混合物が、前記混合物100質量%に対して、前記α-サイアロン蛍光体及び前記希土類アルミン酸塩蛍光体の合計量を0.1質量%以上70質量%以下の範囲内で含み、前記混合物100質量%から前記α-サイアロン蛍光体及び前記希土類アルミン酸塩蛍光体を除く残部が、前記酸化アルミニウム粒子であり、前記酸化アルミニウム粒子を30質量%以上99.9質量%以下の範囲内で含む、請求項3から7のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  10. 前記α-サイアロン蛍光体は、下記式(I)で表される組成を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
    Si12-(m+n)Alm+n16-n:Eu (I)
    (式(I)中、Mは、Li、Mg、Ca、Sr、Y及びランタノイド元素(但し、LaとCeを除く。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、k、m、nは、0<k≦2.0、2.0≦m≦6.0、0≦n≦1.0を満たす数である。)
  11. 前記希土類アルミン酸塩蛍光体が、下記式(III)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体、及び、下記式(IV)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3から10のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
    (Y1-a-bGdCeAl12 (III)
    (式(III)中、a及びbは、0≦a≦0.500、0<b≦0.030を満たす数である。)
    (Lu1-cCeAl12 (IV)
    (式(IV)中、cは、0<c≦0.100を満たす数である。)
  12. 金型プレスを用いて、3MPa以上50MPa以下の圧力で前記混合物を成形して前記成形体を得る、請求項1から11のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  13. 50MPa以上250MPa以下の圧力で、前記混合物を冷間等方圧加圧処理して前記成形体を得る、請求項1から12のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  14. 前記酸化アルミニウム粒子の酸化アルミニウムの純度が99.0質量%以上である、請求項1から13のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
  15. 前記第一の焼結体の相対密度が90%以上である、請求項1から14のいずれか1項に記載の波長変換焼結体の製造方法。
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