JP7448446B2 - 銅粉体 - Google Patents

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Description

本発明は、銅粉体およびその製造方法に関する。
微細な金属粒子の集合体である金属粉や金属粉を含む導電性ペーストは、低温同時焼成セラミックス(LTCC)基板の配線や端子、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の内部電極や外部電極など、各種電子部品を製造するための原材料として幅広く利用されている。特に、銅粉体は、銅の高い導電性に起因し、MLCCの内部電極の薄膜化や外部電極の小型が可能であること、周波数特性の大幅な改善が可能であることから、従来多用されてきたニッケル粉や銀粉に替わる材料として期待されている。
一方、近年、MLCCの小型化に伴い、原材料である銅粉体の微細化が進んでいる。銅粉体の微細化においては、銅粉体の粒度分布を揃えるだけでなく、銅粉体中の粗大粒子を低減させることが試みられている。これは、銅粉体中に粗大粒子が存在すると、MLCCの電極層の形成時に短絡等の問題が生じるためである。粗大粒子が低減された銅粉体の製造方法として、例えば、特許文献1~特許文献3が知られている。
特開2016-23348号公報 国際公開第2014/104032号 特開2008-50650号公報
特許文献1は、連結粒子の長径が平均粒径の4倍を超えるものがある場合を不可としている。これは、粗大粒子が銅粒子同士の連結によって形成されてしまうためと考えることができる。
特許文献2は、粗大粒子とは平均粒径の3倍以上の粒径の粒子として定義されている一方で、連結粒子については定義されていない。しかしながら、連結粒子と粗大粒子とが並列して記載されていることから、連結粒子によって生じる問題も粗大粒子と同様であり、特許文献2においても、特許文献1と同様に、銅粒子の連結によって粗大粒子が形成されてしまうことを問題にしていると考えられる。但し、粒子の連結がないとの記載もあるが、写真を掲示した図からは連結粒子の存在が認められる。
特許文献3は、銅粉体末の粒子同士には融着はほとんど見られず、単分散に近いものであった、との記載があるが、写真を掲示した図からは粗大粒子を構成する連結粒子の存在が認められる。
以上のように、従来、粗大粒子を構成する連結粒子が問題であるとの認識はあったが、連結粒子が粗大でなくても、銅粒子同士が連結していることが問題であるとの認識はなかった。そのような中で、連結粒子が粗大粒子を構成せず、銅粉体の粒径として許容範囲内であったとしても、連結粒子を構成していることが問題であることが新たに判明した。例えば、銅粉体中の連結粒子の存在は、銅粉体を溶剤等とともにペーストにした際に、分散性や充填性を低下させる要因となり得る。
したがって、本発明の目的は、粗大な粒径を有する連結粒子のみならず、長径が銅粉体の粒径として許容範囲内である連結粒子が低減された銅粉体、およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、銅粉体の気相成長において、還元反応時の塩化銅の分圧と還元反応後の冷却速度とが、連結粒子の発生に関連があることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の一実施形態に係る銅粉体は、個数50%径(D50)が100nm以上500nm以下であり、長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である粒子の個数(Z)に対する長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である連結粒子の個数(L)の比(L/Z)が1.0%以下である。
また、本発明の一実施形態に係る銅粉体は、個数50%径(D50)が100nm以上500nm以下であり、長径が個数50%径(D50)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である粒子の個数(Z)に対する長径が個数50%径(D50)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である連結粒子の個数(L)の比(L/Z)が1.0%以下である。
前記個数50%径(D50)に対する平均結晶子径(D)の比(D/D50)が0.10以上0.50以下であってもよい。
銅粉体は、銅と塩素とを反応させて塩化銅を生成し、塩化銅を還元性ガスで還元する気相成長法によって製造されてもよい。
本発明の一実施形態に係る銅粉体の製造方法は、気相成長法の塩化銅と還元性ガスとの還元反応において、塩化銅の分圧が40%以下である。
また、本発明の一実施形態に係る銅粉体の製造方法は、気相成長法の塩化銅と還元性ガスとの還元反応後に、500℃/秒以上の冷却速度で冷却する。
本発明による銅粉体は、粗大粒子の粒径に相当する粒径を有する連結粒子のみならず、長径が銅粉体の粒径として許容範囲内である連結粒子が低減された銅粉体であるため、MLCC用電極等に好適に用いることができる。
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態や実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
[1.銅粉体の製造方法]
本発明の一実施形態に係る銅粉体は、複数の銅粒子を含む銅粉体である。以下、本実施形態に係る銅粉体の製造方法について説明する。
[1-1.塩化銅ガスの生成]
本実施形態に係る銅粉体の製造方法では、塩化銅ガスを用いる。塩化銅ガスは、金属銅を原料として、金属銅と塩素ガスとを反応させることにより生成する。本製造方法を用いた塩化銅ガスは、原料として塩化銅ではなく、塩化銅よりも安価な金属銅を用いており、コストを抑制することができる。また、金属銅を用いることで塩化銅ガスの生成量を制御することができるため、塩化銅ガスの供給量を安定化させることができる。
具体的な塩化銅ガスの製造方法としては、金属銅をその融点以下(例えば800℃以上1000℃以下)で塩素ガスと反応させることによって、塩化銅ガスを生成させることができる。塩素ガスは、実質的に塩素のみを含有するものであってもよく、窒素やアルゴンなどの希釈用の不活性ガスを含有する混合ガスであってもよい。混合ガスを用いることで、金属銅と反応させる塩素の量を容易に、かつ精密に制御することが可能となる。
[1-2.塩化銅の還元]
次に、生成させた塩化銅ガスと還元性ガスとを反応させて塩化銅を還元し、銅粉体の一次粉体を生成させる。還元性ガスとしては、例えば、水素やヒドラジン、アンモニア、メタンなどを用いることができる。還元性ガスは、塩化銅ガスに対して化学量論量以上用いることができる。また、生成させた銅粉体の一次粉体は不活性ガスにより急冷する。なお、本実施形態においては、還元反応時の塩化銅の分圧と還元反応後の冷却速度とが、連結粒子の発生に関連があるため、これらの適切な条件等については後述する。
[1-3.塩素成分の低減]
塩化銅の還元においては、銅粉体とともに塩化水素も生成される。また、未反応の塩素が還元性ガスと反応することによっても塩化水素が生成される。これらの塩化水素は、銅粉体の純度低下の一因となる。塩化水素に由来する塩素が塩化銅として銅粉体に残留すると、銅粉体を用いて作製される電極や配線の劣化を加速させる要因となる。そこで、上記の製造方法によって得られた銅粉体に対し、銅粉体が含有する塩素成分を低減するための処理を行ってもよい。
具体的には、銅粉体を塩基の水溶液あるいは懸濁液で処理することで、塩素成分の除去を行うことができる。塩基の水溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。塩基濃度は、0.1モル/L以上、あるいは0.5モル/L以上でよく、1.5モル/L以下、あるいは1.2モル/L以下とすることができる。
[1-4.酸素成分の低減]
銅は比較的酸化されやすい金属であるため、銅粉体の酸化は、銅粒子の表面だけでなく内部まで進行しやすい。酸化が進行すると銅粒子の表面に酸化銅の層が形成されるとともに、凹凸が発生する。このような酸化に起因する凹凸は、銅粉体を用いて形成される配線や電極の導電性の低下や表面の平坦性低下の原因となり、その結果、電子部品における電気抵抗の増大や接触不良を誘発する。また、焼結時における収縮率が増大するため、配線や電極の剥離が生じやすくなる。そこで、上記の製造方法によって得られた銅粉体に対して、銅粉体の酸素成分の低減のために、酸化銅を除去する、または酸素含有量を低減する処理を行ってもよい。
具体的には、塩素成分の低減処理を行った後の銅粉体を、アスコルビン酸やヒドラジン、クエン酸などを含む溶液、または懸濁液を洗浄液として用いて処理する。その後、水で洗浄し、ろ過し、乾燥する。
[1-5.表面処理]
上述したように、銅は比較的酸化されやすい金属である。そこで、銅粒子の表面の酸化を抑制するため、上記の製造方法によって得られた銅粉体に対して、表面処理を行ってもよい。
具体的には、表面処理剤を含む溶液または懸濁液で銅粉体を処理する。表面処理剤としては、ベンゾトリアゾールとその誘導体、トリアゾールとその誘導体、チアゾールとその誘導体、ベンゾチアゾールとその誘導体、イミダゾールとその誘導体、およびベンズイミダゾールとその誘導体などの含窒素ヘテロ芳香族化合物に例示される材料を使用することができる。
[1-6.その他の工程]
任意の工程として、得られる銅粉体を乾燥、分級、解砕、篩別などの工程を行ってもよい。
分級は乾式分級でも湿式分級でもよく、乾式分級では、気流分級、重力場分級、慣性力場分級、遠心力場分級など、任意の方式を採用できる。解砕は、例えば、ジェットミルを用いて行うことができる。篩別は、所望のメッシュサイズを有する篩を振動させ、これに銅粉体を通過させることで行うことができる。分級、解砕、篩別処理を行うことで、銅粉体の粒子径分布をより小さくすることが可能である。
[2.銅粉体の評価方法]
本発明の一実施形態に係る銅粉体の評価における定義と測定方法は、以下の通りである。
[2-1.個数50%径(D50)]
「個数50%径(D50)」とは、銅粉体を構成する銅粒子の長径基準における粒度分布において頻度(または累積)50%に相当する粒子の径(粒径)のことを意味する。すなわち、「粒径」とは、「長径」のことを意味する。
銅粉体の個数50%径は、走査電子顕微鏡により銅粉体の写真を撮影し、画像解析ソフトを使用して、その写真から銅粒子約100個から10000個、典型的には500個の粒径を測定し、得られた銅粉体の長径基準における粒度分布より、その個数50%径を算出することができる。
この場合において、「長径」とは、銅粒子の画像解析で求められる投影像に外接する最小円の直径を意味する。なお、銅粒子の画像解析で求められる投影像が真円の場合、長径は直径に相当する。
[2-2.個数10%径(D10)]
「個数10%径(D10)」とは、銅粉体を構成する銅粒子の長径基準における粒度分布において頻度(または累積)10%に相当する粒子の径(粒径)のことを意味する。すなわち、「粒径」とは、「長径」のことを意味する。
銅粉体の個数10%径は、走査電子顕微鏡により銅粉体の写真を撮影し、画像解析ソフトを使用して、その写真から銅粒子約100個から10000個、典型的には500個の粒径を測定し、得られた銅粉体の長径基準における粒度分布より、その個数10%径を算出することができる。
[2-3.個数90%径(D90)]
「個数90%径(D90)」とは、銅粉体を構成する銅粒子の長径基準における粒度分布において頻度(または累積)90%に相当する粒子の径(粒径)のことを意味する。すなわち、「粒径」とは、「長径」のことを意味する。
銅粉体の個数90%径は、走査電子顕微鏡により銅粉体の写真を撮影し、画像解析ソフトを使用して、その写真から銅粒子約100個から10000個、典型的には500個の粒径を測定し、得られた銅粉体の長径基準における粒度分布より、その個数90%径を算出することができる。
[2-4. 平均粒径(DAVE)]
粒度径ヒストグラムにはいくつかの基準があるが、本実施形態に係る銅粉体の平均粒径DAVEの測定においては、個数基準を用いる。個数基準とは、全個数中に占める範囲別の個数%の分布である。
銅粉体の平均粒径DAVEは、走査電子顕微鏡により銅粉体の写真を撮影し、画像解析ソフトを使用して、その写真から銅粒子約100個から10000個、典型的には500個の粒径を測定した場合、得られた銅粉体の500個の粒径を合計したものを、粒子の個数(この場合は500個)で除することによって、その平均粒径DAVEを算出することができる。
[2-5.連結粒子]
連結粒子とは、2つ以上の粒子が融着等により結合して、1つの粒子を形成している粒子であって、「アスペクト比」が1.2以上であり、「円形度」が0.675以下の銅粒子のことを指す。具体的には、銅粉体を電子顕微鏡で観察し、隣接する2つの粒子の間に粒界が見えない粒子を連結粒子として判別する。
「アスペクト比」とは、個々の連結粒子の長径を短径で除した値である。ここで、連結粒子の「長径」とは、個々の連結粒子の画像解析で求められる投影像に外接する最小円の直径を意味する。また、連結粒子の「短径」とは、個々の連結粒子の投影像に内接する最大円の直径を意味する。
「円形度」Cは、以下の式によって求めることができる。ここで、AおよびBは、銅粉体の顕微鏡観察の画像から得られる値である。Aは画像中における1つの銅粒子の投影面の周囲長、Bはこの投影面の面積を有する真円の周囲長である。円形度の高い銅粉体は、高い充填性を示す。このため、本実施形態に係る銅粉体を用いることで、密度が高く、低抵抗な高い電極や配線を形成することができる。
Figure 0007448446000001
円形度が1のとき、銅粒子の投影像は真円であり、銅粒子の立体形状は真球状に近いと予想できる。また、円形度が1から小さくなるにつれて、銅粒子の立体形状には、凹凸が多く存在し、複雑な形状であると予想できる。
[2-6.平均結晶子径]
結晶子とは、単結晶とみなせる領域の長さを表す指標である。個々の銅粒子は、単一または複数の結晶子を有している。平均結晶子径は、個々の銅粒子の結晶子の大きさの平均値である。平均結晶子径は、銅粉体に対してX線回折の測定によって得られる各種のパラメータ(使用するX線の波長λ、回折X線の広がりの半値幅β、ブラッグ角θ)を、以下に示すシェラーの式(式1)に代入して計算することで得られる値として定義される。ここで、Kはシェラー定数である。
Figure 0007448446000002
平均結晶子径の具体的な測定条件としては、加速電圧45kV、放電電流40mAの条件を用いることができ、例えば、X線回折装置(スペクトリス株式会社製、X’PertPro)を用いて、CuKα線で銅結晶の(111)面の回折ピークの半値幅を求め、上記式1のシェラーの式により平均結晶子径を算出することができる。平均結晶子径は、Dとも記載される。
[3.銅粉体の特性]
上述した製造方法および測定方法によって得られた本発明の一実施形態に係る銅粉体の特性およびそれに関連する製造方法について詳細に説明する。
本実施形態に係る銅粉体の長径基準の個数50%径(D50)は、100nm以上500nm以下である。MLCCの電極層の更なる薄膜化の課題に対応するために、長径基準の個数50%径(D50)の上限は500nm以下であることが必要であり、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。個数50%径(D50)の下限は100nm以上であることが必要である。さらに、個数50%径(D50)の下限が小さい銅粉体は、製造することが困難であり、また、あまりに個数50%径(D50)が小さいと、銅粉体粒子同士が凝集し易くなって、取り扱いが困難になってしまう可能性がある。個数50%径が100nm以上500nm以下の銅粉体は、気相成長法の条件の適正化で得ることができる。
本実施形態に係る銅粉体は連結粒子が少ないことを特徴とする。特に、連結粒子の長径がさほど大きくなく、従来は問題とされなかった大きさの連結粒子の含有割合が少ないことが特徴である。具体的には、長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である粒子の個数(Z)に対する長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である連結粒子の個数(L)の比(L/Z)が1.0%以下であることが好ましい。
長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である粒子の個数(Z)についても、画像解析ソフト(株式会社マウンテック製 Macview4.0)により判別し確認する。
また、長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である連結粒子の個数(L)は、銅粉体を光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察した顕微鏡写真において、輪郭が確認された銅粒子(例えば100個から10000個、典型的には500個)中において、長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である連結粒子を、上述したアスペクト比と平均円形度とを基準に、画像解析ソフト(株式会社マウンテック製Macview4.0)で判別し確認する。
以上の結果から、長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)の範囲内である粒子の個数(Z)に対する長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である連結粒子の個数(L)の比(L/Z)を算出する。
また、本実施形態に係る銅粉体は、個数50%径(D50)が100nm以上500n
m以下であり、長径が個数50%径(D50)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である粒子の個数(Z)に対する長径が個数50%径(D50)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である連結粒子の個数(L)の比(L/Z)が1.0%以下であることが好ましい。
長径が個数50%径(D50)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である粒子の個数(Z)、あるいは、長径が個数50%径(D50)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である連結粒子の個数(L)は、上述した(L/Z)に記載と同様の算出方法で算出する。
また、本実施形態に係る銅粉体は、前記個数50%径(D50)に対する平均結晶子径(D)の比(D/D50)が0.10以上0.50以下であることが好ましい。
このような銅粉体は、気相成長法を用いて適切な成長条件によって得ることができる。気相成長法は、高温で成長させることにも起因して、平均結晶子径が大きな銅粉体を得ることができる。D/D50が0.10以上であると、焼結開始温度が高くなる効果があるので好ましい。D/D50は0.50より大きいことは好ましいが、それほどまでに結晶子径が大きな銅粉体を得ることは困難なため、平均結晶子径の上限は0.50が望ましい。
本実施形態に係る気相成長法の前記塩化銅と前記還元性ガスとの還元反応において、前記塩化銅の分圧とは、還元反応時に塩化炉から供給されるガス全体に対する塩化銅ガスの分圧のことをいう。具体的には、反応系に存在するガスが、塩化銅ガス、希釈用窒素ガスの場合、塩化銅ガスと窒素ガスとの合計のモル数に対する塩化銅ガスのモル数の比率として得られる。
本発明の前記塩化銅と前記還元性ガスとの還元反応により得られた銅粉体を冷却するときの冷却速度とは、還元反応で生成された銅粉体の温度と冷却用不活性ガスを還元反応で生成された銅粉体に接触させて、該銅粉体の温度を下げたときの温度差を、該温度差を得るのに要した時間で除した値をいう。銅粉体の温度は、銅粉体を直接測定してもよい。
気相成長法による銅粉体の製造において、連結粒子が生成するメカニズムは必ずしも明確ではないが、発明者は以下のように考えている。
気相成長法の還元反応において、銅粉体となる核が生成して、その核が成長して銅粉体となる。この際に、還元反応空間における核の存在個数が多い、つまり、核密度過剰の場合、核同士が融着等を起こし、連結粒子を形成すると考えられる。また、核の密度がさほど過剰でなくとも、生成した核の温度が高い場合は、核同士の接触により融着等が生じて連結粒子が生成されると考えられる。したがって、連結粒子の生成を抑制するためには、核密度を高くしないこと、生成した核同士を高い温度のままにしないことが有効である。そのための具体策としては、塩化銅ガスの分圧を高くしない、または、生成した核を急速冷却することが有効である。
したがって、上記メカニズムに基づけば、本発明の気相成長法の前記塩化銅と前記還元性ガスとの還元反応において、前記塩化銅の分圧が40%以下、好ましくは35%以下であることは連結粒子の抑制に有効である。また、前記塩化銅と前記還元性ガスとの還元反応により得られた銅粉体を500℃/秒以上、好ましくは1000℃/秒以上、さらに好ましくは1500℃/秒以上の冷却速度で冷却することも有効である。
以下に実施例をあげて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
塩化炉に、原料として平均直径1.5cmの球状の金属銅を設置し、塩化炉の温度を900℃に加熱した。塩化炉の上部の塩素導入管から導入された混合ガスの塩素ガスと窒素ガスの体積比は29:61であった。また、塩化炉の下部の塩素導入管から導入された混合ガスの塩素ガスと窒素ガスの体積比は2:98であった。その結果、塩化炉の上部の塩素導入菅および下部の塩素導入管から導入された混合ガスの塩素ガスと窒素ガスの体積比は1:0.17であった。このような条件の下で、金属銅と塩素ガスを反応させて、塩化銅ガスを生成させた。また、塩化銅ガスの分圧は、30%であった。
生成させた塩化銅ガスを1150℃に加熱した還元炉に導入した。また、塩化銅ガスに対して4600モル%の水素ガスおよび塩化銅ガスに対して24600モル%の窒素ガスを還元炉に導入した。塩化銅が還元され、銅を生成させた。生成させた銅を窒素ガスで、冷却速度500℃/秒で冷却して個々の銅粒子とし、銅粒子の集合体として銅粉体を得た。
その後、表面安定化処理を行った。具体的には、アスコルビン酸水溶液で処理した銅粉体に対し、室温で0.33重量%のベンゾトリアゾールを表面処理剤として含む水溶液(約300mL)を加え、得られた混合物を30分間攪拌した。攪拌終了後、混合物を静置し、上澄みを除去し、乾燥することにより、実施例1の銅粉体を得た。
表面処理された銅粉体を走査型電子顕微鏡(SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU5000)を用いて、倍率15000倍におけるSEM像の一つの視野中に存在する500個の銅粒子を画像解析ソフト(株式会社マウンテック製Macview4.0)を用いて解析した結果、個数基準の平均粒径(DAVE)は246nm、個数50%径(D50)は165nm、個数10%径(D10)は112nm、個数90%径(D90)は245nm、D50/DAVEは0.94であった。
銅粉体をX線回折装置(スペクトリス株式会社製、X’PertPro)を用いて、加速電圧45kV、放電電流40mAの条件で発生させたCuKα線で得られた銅結晶の(111)面の回折ピークの半値幅とシェラーの式により平均結晶子径Dを算出した結果、32.0nmであった。また、D/D50は、0.19であった。
また、表面処理された銅粉体を走査型電子顕微鏡(SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU5000)を用いて、倍率15000倍におけるSEM像の一つの視野中に存在する500個の銅粒子中から、(1)長径がD10以上D90以下の範囲内である連結粒子の個数(L)(個)、(2)長径がD50以上D90以下の範囲内である連結粒子の個数(L)(個)、(3)長径がD10以上D90以下の範囲内である粒子の個数(Z)(個)、(4)長径がD50以上D90以下の範囲内である粒子の個数(Z)(個)を、Macview4.0の画像解析により確認し、L/Z、L/Zを算出したところ、0.8%、0.9%であった。
(実施例2)
塩化銅ガスの分圧を35%、還元後の冷却速度を1000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件として、実施例2の銅粉体を得た。実施例2で得られた銅粉体についても、実施例1と同様の評価を行った。の評価結果について、表1に示す。
(実施例3)
塩化銅ガスの分圧を35%、還元後の冷却速度を1500℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件として、実施例3の銅粉体を得た。実施例3で得られた銅粉体についても、実施例1と同様の評価を行った。
(比較例1)
塩化銅ガスの分圧を35%、還元後の冷却速度を250℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件として、比較例1の銅粉体を得た。比較例1で得られた銅粉体についても、実施例1と同様の評価を行った。
(比較例2)
塩化銅ガスの分圧を50%、還元後の冷却速度を500℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件として、比較例2の銅粉体を得た。比較例2で得られた銅粉体についても、実施例1と同様の評価を行った。
以上、実施例1~実施例3ならびに比較例1および比較例2の評価結果を表1に示す。
Figure 0007448446000003
表1の結果から、実施例1~実施例3は、L/ZおよびL/Zが1.0%未満であったため、長径が銅粉体の粒径として許容範囲内である連結粒子が低減されたことが分かった。その中でも、実施例3は、L/Zが0.3%、L/Zが0であったため、長径が銅粉体の粒径として許容範囲内である連結粒子が最も低減されたことが分かった。
一方、比較例1および比較例2は、L/ZおよびL/Zが2.5%超であったため、長径が銅粉体の粒径として許容範囲内である連結粒子が多く存在することが分かった。
本発明の一実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜構成要素を組み合わせて実施することができる。また、本発明の一実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
また、本発明の一実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
本発明による銅粉体は、粗大な粒径を有する連結粒子、および粗大でなくその長径が銅粉体の粒径として許容範囲内である連結粒子の存在が抑制された銅粉体であるため、積層セラミックコンデンサ(MLCC)用の電極等に好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 個数50%径(D50)が100nm以上500nm以下であり、
    長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である第1粒子の個数(Z1)に対する長径が個数10%径(D10)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である、隣接する2つの粒子が融着している連結粒子の個数(L1)の比(L1/Z1)が1.0%以下であり、
    走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した倍率15000倍におけるSEM像の一つの視野中に存在する500個の粒子に対し、画像解析ソフトを用いた画像解析により計測される前記第1粒子の個数(Z1)は364個以上458個以下であり、
    粒子の表面に表面処理剤によって形成される、ベンゾトリアゾールを含む表面安定化層を含む銅粉体。
  2. 個数50%径(D50)が100nm以上500nm以下であり、
    長径が個数50%径(D50)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である第2粒子の個数(Z2)に対する長径が個数50%径(D50)以上個数90%径(D90)以下の範囲内である、隣接する2つの粒子が融着している連結粒子の個数(L2)の比(L2/Z2)が1.0%以下であり、
    走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した倍率15000倍におけるSEM像の一つの視野中に存在する500個の粒子に対し、画像解析ソフトを用いた画像解析により計測される前記第2粒子の個数(Z2)は235個以上323個以下であり、
    粒子の表面に表面処理剤によって形成される、ベンゾトリアゾールを含む表面安定化層を含む銅粉体。
  3. 前記個数50%径(D50)に対する平均結晶子径(D)の比(D/D50)が0.10以上0.50以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅粉体。
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