JP2022083703A - 銅粉の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】結晶性の高い銅粉の製造方法を提供すること。高い焼結開始温度を有し、塗膜の平滑性に優れた銅粉の製造方法を提供すること。【解決手段】銅粉の製造方法は、銅と塩素ガスとを反応させて塩化銅ガスを生成し、塩化銅ガスと還元性ガスとを反応させ、還元反応により銅粉を生成することを含み、還元反応における塩化銅ガスの分圧は、40%超80%以下であり、還元反応において生成された銅粉は、2000℃/秒以上9000℃/秒以下の冷却速度で冷却される。【選択図】図1

Description

本発明は、銅粉の製造方法に関する。
微細な金属粒子の集合体である金属粉や金属粉を含む導電性ペーストは、低温同時焼成セラミックス(LTCC)基板の配線や端子、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の内部電極や外部電極など、各種電子部品を製造するための原材料として幅広く利用されている。特に、銅粉は、銅の高い導電性に起因し、MLCCの内部電極の薄膜化や外部電極の小型が可能であること、周波数特性の大幅な改善が可能であることから、従来多用されてきたニッケル粉や銀粉に替わる材料として期待されている(特許文献1~特許文献5参照)。
特開2015-36439号公報 国際公開第2015/137015号 特開2018-076597号公報 特開2016-108649号公報 特開2004-211108号公報
しかしながら、銅の融点(約1083℃)はニッケルの融点(約1455℃)よりも低い。また、銅粉の微細化に伴って、銅粉の比表面積が増加するため、銅粉の融点(焼結開始温度)はさらに低下する。そのため、MLCCの電極層として微細な銅粉を用いた場合、ニッケル粉よりも低温で溶融が開始されることになる。この場合、MLCCの誘電層の焼成温度と電極層の焼結開始温度との温度差が大きくなるため、降温時の電極層の収縮によって電極層にクラックが発生する問題や誘電層と電極層との剥離(デラミネーション)が発生する問題があった。したがって、銅粉をMLCCの電極層に用いるためには、電極層の焼成温度を誘電層の焼結開始温度に近づける、すなわち、焼結開始温度が高く、塗膜の平滑性に優れる銅粉が要求されていた。銅粉の焼結開始温度を高くする有効な方法の1つは銅粉の結晶性を向上させることであるが、銅粉は他の金属粉と異なる特性を有することから、微細な銅粉において結晶性を向上させることは難しかった。
また、塩化銅ガスを用いた気相成長法で得られる銅粉は、製造条件によっては塩化銅が多く生成され、MLCCの誘電層の焼成時に銅粉に含まれる塩化銅からの塩素ガスの脱離によって電極層にクラックが発生する問題があった。
本発明は、上記問題に鑑み、結晶性が高く、焼結開始温度の高い銅粉の製造方法を提供することを課題の1つとする。また、本発明は、銅粉に含まれる塩化銅を低減し、塗膜の平滑性に優れ、クラックの発生を抑制することができる銅粉の製造方法を提供することを課題の1つとする。
本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法は、銅と塩素ガスとを反応させて塩化銅ガスを生成し、塩化銅ガスと還元性ガスとを反応させ、還元反応により銅粉を生成することを含み、還元反応における塩化銅ガスの分圧は、40%超80%以下であり、還元反応において生成された銅粉は、2000℃/秒以上9000℃/秒以下の冷却速度で冷却される。
塩化銅ガスの分圧が50%以上70%以下であってもよい。また、冷却速度が3000℃/秒以上5000℃/秒以下であってもよい。
本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法によれば、結晶性が高く、焼結開始温度が高い銅粉を製造することができる。また、本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法によって製造された銅粉をMLCCの電極層に用いれば、電極層の焼結開始温度と誘電層の焼成温度との温度差が小さくなるとともに、銅粉から脱離される塩素ガスを抑制することができるため、塗膜の平滑性に優れ、電極層のクラックやデラミネーションの発生を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法に用いる金属塩化物生成装置の概略図である。 本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法に用いる還元装置の概略図である。 実施例1~実施例14の銅粉および比較例1~比較例8の銅粉の評価結果を示す表である。 塩化銅ガスの分圧に対する銅粉中の塩素量の依存性および塩化銅ガスの分圧に対する銅粉の焼結開始温度の依存性を示すグラフである。 冷却速度に対する銅粉中の塩素量の依存性を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態または実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、以下の実施形態または実施例において、銅粉の利用態様の1つとして、MLCCの電極層への適用を例示するが、本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法によって製造された銅粉は、これに限られず、その他の電子部品へ適用することも可能である。
[1.銅粉の製造方法]
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法の概要について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る銅粉の製造方法は、塩素ガスの生成工程(S100)、塩化銅の還元工程(S200)、塩素成分の低減工程(S300)、酸素成分の低減工程(S400)、および表面処理工程(S500)を含む。なお、各工程は、必ずしも明確に分離されていなくてもよく、例えば、塩素ガスの生成工程(S100)と塩化銅の還元工程(S200)とが同時に行われるような構成であってもよい。また、一部の工程を省略する構成であってもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
[1-1.塩化銅ガスの生成工程(S100)]
本実施形態に係る銅粉の製造方法では、塩化銅ガスと還元性ガスとの還元反応を利用して銅粉を生成する。ここでは、還元反応で用いる塩化銅ガスの製造方法について説明する。
塩化銅ガスは、金属銅を原料として、金属銅と塩素含有ガスとを反応させることにより生成する。具体的には、金属銅を加熱して塩素含有ガスと反応させることによって、塩化銅ガスを生成させることができる。生成された塩化銅ガスは、原料として塩化銅ではなく、塩化銅よりも安価な金属銅を用いているため、塩化銅ガスの製造コストを抑制することができる。また、金属銅を用いることで塩化銅ガスの生成量を制御することができるため、塩化銅ガスの供給量を安定化させることができる。
図2は、本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法に用いる金属塩化物生成装置10の概略図である。金属塩化物生成装置10は、塩化炉100、投入口110、導入管120、回収管130、およびヒータ140を含む。投入口110、導入管120、および回収管130の各々は、塩化炉100に連結されている。金属銅は投入口110から投入され、塩素含有ガスは導入管120から供給される。すなわち、投入された金属銅と供給された塩素含有ガスとが塩化炉100内で反応し、その反応によって生成された塩化銅ガスが回収管130を通じて回収される。
塩化炉100は、ヒータ140によって加熱することができる。塩化炉100の加熱温度は、塩化炉100内で金属銅が溶融しない温度、すなわち、銅の融点(約1083℃)以下である。
ここで、塩化炉100の加熱温度とは、加熱された塩化炉100内の温度をいうが、塩化炉100内の温度を直接測定することが困難である場合は、金属塩化物生成装置10において設定した塩化炉100の設定温度とすることもできる。
供給された塩素含有ガスは、塩化炉100に充満し、自然流によって回収管130の方向に流れる。そのため、塩素含有ガスの流量を調整することにより、塩化炉100内に滞留する塩素含有ガスの量を調整し、生成される塩化銅ガスの量を制御することができる。
塩素含有ガスは、塩素ガスのみであってもよく、塩素ガスに希釈用の不活性ガスを含有した混合ガスであってもよい。不活性ガスとしては、窒素ガスまたはアルゴンガスなどを用いることができる。また、生成される塩化銅ガスの量は、不活性ガスの量を調整することにより、塩化炉100内の塩素ガスの量を調整し、生成される塩化銅ガスの量を制御することができる。
塩素含有ガスは、加熱されて塩化炉100に導入されてもよい。塩素含有ガスの加熱は、塩素含有ガスが導入管120に供給される前に行われてもよく、塩素含有ガスが導入管120に供給された後、導入管120を加熱することによって行われてもよい。また、塩素含有ガスが塩素ガスと不活性ガスとの混合ガスである場合、加熱した不活性ガスと塩素ガスとを混合してもよい。
ここで、塩素含有ガスの加熱温度とは、加熱された塩素含有ガスの温度をいうが、塩素含有ガスの温度を直接測定することが困難である場合は、塩素含有ガスを加熱するヒータの設定温度とすることもできる。
以上、塩化銅ガスの生成工程(S100)では、塩化炉100の加熱温度、塩素含有ガスの流量、塩素含有ガスに占める不活性ガスの割合、または塩素含有ガスの加熱温度などの条件を調整することで、塩化銅ガスの生成量を精密に制御することが可能となる。
[1-2.塩化銅の還元工程(S200)]
次に、生成された塩化銅ガスと還元性ガスとを反応させて塩化銅を還元し、銅粉を生成する。
図3は、本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法に用いる還元装置20の概略図である。還元装置20は、還元炉200、第1導入管210、第2導入管220、回収管230、およびヒータ240を含む。第1導入管210、第2導入管220、および回収管230の各々は、還元炉200に連結されている。塩化銅ガスは第1導入管210から供給され、還元性ガスは第2導入管220から供給される。すなわち、供給された塩化銅ガスと還元性ガスとが還元炉200内で反応し、その反応によって生成された銅粉が回収管230を通じて回収される。なお、金属塩化物生成装置10の回収管130と還元装置20の第1導入管210とが連結され、金属塩化物生成装置10で生成された塩化銅ガスを還元装置20に直接供給することもできる。
還元炉200は、ヒータ240によって加熱することができる。
ここで、還元炉200の加熱温度とは、加熱された還元炉200内の温度をいうが、還元炉200内の温度を直接測定することが困難である場合は、還元装置20において設定した還元炉200の設定温度とすることもできる。
還元性ガスとしては、例えば、水素、ヒドラジン、アンモニア、またはメタンなどを用いることができる。
塩化銅ガスに対する還元性ガスの比率は、第1導入管210からの塩化銅ガスの流量と、第2導入管220からの還元性ガスの流量とを調整することにより可能である。
気相成長法の塩化銅ガスと還元性ガスとの還元反応において、塩化銅ガスの分圧とは、還元反応時において還元炉200に供給されるガス全体に対する塩化銅ガスの分圧のことをいう。例えば、還元炉200に供給されるガスが塩化銅ガスおよび窒素ガスである場合における塩化銅ガスの分圧は、塩化銅ガスおよび窒素ガスの合計のモル数に対して占める塩化銅ガスのモル数の割合として得られる。
塩化銅ガスの分圧は、例えば、40%超80以下であり、好ましくは50%以上70%以下である。塩化銅ガスの分圧が80%超である場合には、塩化銅ガスが十分に還元されず、還元炉200内には多くの未反応の塩化銅ガスが残留する。そのため、還元された銅粉中に未反応の塩化銅ガスが取り込まれやすく、銅粉中で塩化銅が生成され、銅粉中の塩素量が高くなる場合がある。一方、塩化銅ガスの分圧が40%以下である場合には、結晶子径が小さくなるため、焼結開始温度が低下してしまう場合がある。
一般的な銅粉の製造においては、銅粉中に残留する塩化銅を低減するため、塩化銅の還元工程(S200)後に、塩素成分の低減工程(S300)が実施される。詳細は後述するが、本実施形態に係る銅粉の製造方法によれば、塩化銅ガスの分圧を上述の範囲とすることにより、銅粉中の塩化銅の生成を抑制することができるため、塩素成分の低減工程(S300)で用いられる塩基の水溶液の塩基濃度が低い場合であっても効果的に処理することができる。
塩化銅ガスと還元性ガスとの還元反応によって生成された銅粉は回収管230を通じて回収されるが、冷却ガスを供給して銅粉を冷却してから回収してもよい。冷却ガスは、銅粉に対して不活性なガスであればよく、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス、もしくは水素ガス、またはこれらの混合ガスである。冷却ガスの温度は、通常、0℃以上100℃以下、好ましくは0℃以上50℃以下、より好ましくは0℃以上30℃以下である。
本実施形態に係る銅粉の製造方法において、銅粉中の塩素量を低減するためには、還元反応によって生成された銅粉の冷却速度が重要である。銅粉の冷却速度は、例えば、2000℃/秒以上9000℃/秒以下であり、好ましくは3000℃/秒以上5000℃/秒以下である。銅粉の冷却速度が9000℃/秒超である場合、還元反応の進行が妨げられることにより銅粉中に塩化銅ガスが取り込まれやすく、銅粉中で塩化銅が生成され、銅粉中の塩素量が高くなる場合がある。そのため、塩化銅ガスの分圧が低い場合であっても、銅粉の冷却速度が大きいと、結果として、銅粉中の塩素量が高くなってしまう。一方、銅粉の冷却速度が2000℃/秒未満である場合、還元反応の進行が遅くなるため、連結粒子または粗大粒子が多くなり、塗膜の平滑性が低下してしまう。したがって、本実施形態に係る銅粉の製造方法では、塩化銅の還元工程(S200)において、塩化銅ガスの分圧だけでなく、生成された銅粉の冷却速度も、所定の範囲内であることが重要である。
ここで、銅粉の冷却速度とは、還元反応で生成された銅粉の温度と、冷却ガスに接触させて温度が低下した銅粉の温度との温度差を、当該温度差を得るのに要した時間で除した値をいう。
以上、塩化銅の還元工程(S200)では、還元性ガスの種類、塩化銅ガスの分圧、冷却ガスの種類、または銅粉の冷却速度などの条件を調整することで、高い焼結開始温度を有する銅粉を製造することが可能となる。とくに、塩化銅のガスの分圧および銅粉の冷却速度を所定の範囲とすることで、粒径が大きく、結晶性が高いだけでなく、塩素量が低減された銅粉が得られる。
[1-3.塩素成分の低減工程(S300)]
塩化銅の還元工程(S200)においては、銅粉とともに塩化水素が生成される。また、未反応の塩素が還元性ガスと反応することによっても塩化水素が生成される。これらの塩化水素は、塩化水素に由来する塩素が塩化銅として銅粉中に残留することになり、銅粉の純度を低下させる。上述したように、塩化銅ガスの分圧と冷却速度とを所定の範囲とすることで銅粉の結晶性を制御するだけでなく、銅粉中に残留した塩化銅の生成を抑制することできる。すなわち、銅粉中の塩素量を低減することができる。銅粉中に含まれる塩化銅から脱離した塩素ガスは、MLCCの焼結時に電極層を劣化させる要因となり得る。具体的には、MLCCの電極層のクラックやデラミネーションを発生させる。そのため、塩化銅の還元工程(S200)によって得られた銅粉に対し、銅粉が含有する塩素成分をさらに低減するための処理を行ってもよい。
具体的には、銅粉を塩基の水溶液あるいは懸濁液で処理することで、塩素成分を除去することができる。塩基の水溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。通常の塩基濃度は、0.1モル/L以上、あるいは0.5モル/L以上でよく、1.5モル/L以下、あるいは1.2モル/L以下であるが、上述した範囲内の分圧と冷却速度とによって製造された銅粉は、塩化銅の生成が抑制され、塩素量が低減されている。そのため、塩基濃度は通常よりも低くすることができ、例えば、0.03モル/L以上0.09モル/Lであり、0.05モル/L以上0.07モル/L以下であってもよい。
[1-4.酸素成分の低減工程(S400)]
銅は比較的酸化されやすい金属であるため、銅粉の酸化は、銅粒子の表面だけでなく内部まで進行しやすい。酸化が進行すると銅粒子の表面に酸化銅の層が形成されるとともに、凹凸が発生する。このような酸化に起因する凹凸は、MLCCの電極層の導電性を低下させ、または電極層の表面の平坦性を低下させる要因となり得る。すなわち、酸素成分の多い銅粉を用いた電極層は、電気抵抗の増大し、接触不良を誘発する。また、銅粒子の表面に凹凸があると、電極層の焼結時において収縮率が増大するため、デラミネーションが生じやすくなる。そこで、塩素成分の低減工程(S300)によって得られた銅粉に対して、銅粉の酸素成分を低減するために、酸化銅を除去し、または酸素含有量を低減する処理を行ってもよい。
具体的には、塩素成分の低減工程(S300)によって得られた銅粉を、アスコルビン酸、ヒドラジン、もしくはクエン酸などを含む溶液、または懸濁液を洗浄液として用いて処理する。その後、銅粉を水で洗浄し、ろ過し、乾燥する。
[1-5.表面処理工程(S500)]
上述したように、銅は比較的酸化されやすい金属である。そこで、銅粒子の表面の酸化を抑制するため、酸素成分の低減工程(S400)によって得られた銅粉に対して、表面処理を行ってもよい。
具体的には、表面処理剤を含む溶液または懸濁液で銅粉を処理する。表面処理剤としては、ベンゾトリアゾールとその誘導体、トリアゾールとその誘導体、チアゾールとその誘導体、ベンゾチアゾールとその誘導体、イミダゾールとその誘導体、およびベンズイミダゾールとその誘導体などの含窒素ヘテロ芳香族化合物に例示される材料を使用することができる。
[1-6.その他の工程]
その他の任意の工程として、得られる銅粉を乾燥、分級、解砕、または篩別などの工程を行ってもよい。分級は乾式分級でも湿式分級でもよく、乾式分級では、気流分級、重力場分級、慣性力場分級、または遠心力場分級など、任意の方式を採用できる。解砕は、例えば、ジェットミルを用いて行うことができる。篩別は、所望のメッシュサイズを有する篩を振動させ、これに銅粉を通過させることで行うことができる。分級、解砕、または篩別などの工程を行うことで、銅粉の粒子径分布をより小さくすることが可能である。
以上、本実施形態に係る銅粉の製造方法によれば、上述した各工程の条件、とくに、塩化銅の還元工程(S200)における塩化銅ガスの分圧および銅粉の冷却速度を所定の範囲内とすることにより、結晶性を向上させ、塩化銅の生成が抑制された銅粉を製造することができる。すなわち、塩素量の少ない銅粉を製造することができる。また、このように製造された銅粉は、高い焼結開始温度を有し、かつ、塗膜の平滑性に優れる。したがって、本実施形態に係る銅粉の製造方法によって製造された銅粉をMLCCの電極層に用いれば、電極層の焼結開始温度と誘電層の焼成温度との温度差が小さくなり、銅粉の塩素量が低減されているため、電極層のクラックやデラミネーションを抑制することができる。
[2.銅粉の評価]
本発明の一実施形態に係る銅粉の製造方法によって製造された銅粉の評価における定義と測定方法は、以下の通りである。
[2-1.個数50%径(D50SEM)]
銅粉の個数50%径(D50SEM)とは、銅粉の粒子径ヒストグラムにおける累積頻度が50%になるときの粒子径をいう。銅粉の個々の銅粒子の粒子径は、銅粉を電子顕微鏡で観察したときに得られる個々の銅粒子の像に内接する最小円の直径、あるいは最小長方形の長辺として得られる。銅粉の個数50%径(D50SEM)は、100個から10000個、典型的には500個の銅粒子を観測した結果の粒子径ヒストグラムにおける累積頻度が50%になるときの粒子径として得られる。例えば、銅粉の個数50%径(D50SEM)は、走査型電子顕微鏡(SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU5000)の倍率15000倍におけるSEM像の一つの視野中に存在する約500個の銅粒子を、画像解析ソフト(株式会社マウンテック製Macview4.0)を用いて解析することによって得ることができる。
本実施形態に係る銅粉の製造方法によって製造された銅粉の個数50%径(D50SEM)は、例えば、400nm以上800nm以下であり、好ましくは450nm以上700nm以下である。また、個数50%径(D50SEM)の下限は400nm以上であることが必要である。個数50%径(D50SEM)の下限が小さい銅粉は、製造することが困難であるとともに、個数50%径(D50SEM)が小さすぎると、銅粒子同士が凝集し易くなり、取り扱いが困難になる場合がある。個数50%径(D50SEM)が400nm以上800nm以下の銅粉は、上述した本実施形態に係る銅粉の製造方法において、各工程の条件を適正に調整することで得られる。
[2-2.平均結晶子径]
結晶子径とは、単結晶とみなせる領域の長さを表す指標である。個々の銅粒子は、単一または複数の結晶子を有している。平均結晶子径は、個々の銅粒子の結晶子の大きさの平均値である。平均結晶子径は、銅粉に対してX線回折の測定によって得られる各種のパラメータ(使用するX線の波長λ、回折X線の広がりの半値幅β、ブラッグ角θ)を、下記の(式1)に示すシェラーの式に代入して計算することで得られる値として定義される。ここで、Kはシェラー定数である。
Figure 2022083703000002
平均結晶子径の具体的な測定条件としては、加速電圧45kV、放電電流40mAの条件を用いることができ、例えば、X線回折装置(スペクトリス株式会社製、X’PertPro)を用いて、CuKα線で銅結晶の(111)面の回折ピークの半値幅を求め、上記(式1)のシェラーの式により平均結晶子径を算出することができる。なお、本明細書においては、平均結晶子径を、(式1)に示すようにDとして記載する。
本実施形態に係る銅粉の製造方法によって製造された銅粉は、平均結晶子径Dだけでなく、個数50%径(D50SEM)に対する平均結晶子径Dの比(D/D50SEM)によっても評価する。平均粒子径Dが銅粉の結晶性を表す指標となり得るが、個数50%径(D50SEM)が小さくなると平均結晶子径Dも小さくなるため、平均結晶子径Dは、個数50%径(D50SEM)で規格化したD/D50SEMでも評価する。本実施形態に係る銅粉の製造方法によって製造された銅粉の個数50%径(D50SEM)に対する平均結晶子径Dの比D/D50SEMは、0.50以上0.70以下であることが好ましく、0.60以上0.65以下であることがさらに好ましい。D/D50SEMが0.50以上であると平均結晶子径Dが大きく、焼結開始温度が高くなる効果があるので好ましい。個数50%径(D50SEM)に対する平均結晶子径Dの比D/D50SEMが0.60以上0.65以下である銅粉は、上述した本実施形態に係る銅粉の製造方法において、各工程の条件(とくに、塩化銅の還元工程(S200)における塩化銅ガスの分圧および銅粉の冷却速度)を適正に調整することで得られる。また、気相成長法は、高温で成長させることができるため、銅粉の平均結晶子径Dが大きくなりやすい。
[2-3.連結粒子]
銅粉には、凝集のない独立した一次粒子に加え、一次粒子が凝集した二次粒子も含まれ得る。「連結粒子」とは、例えば、ジェットミル等の公知の解砕装置によって解砕してもなお、銅粉中に残留する二次粒子であり、典型的には、一次粒子同士が互いに融着してなる二次粒子をいう。このような連結粒子のなかでも、球形度(真球度ともいう)が低い粒子、特に、複数の一次粒子が一列に連なった、特定の基準の長さを超える細長い形状の連結粒子の割合は、塗膜の平滑性に大きく影響する。
なお、本明細書中では、特に説明がない限り、便宜上、「連結粒子」とは、銅粉を走査電子顕微鏡により撮影したSEM像中の粒子のうち、当該SEM像において「アスペクト比」が1.2以上であり、「円形度」が0.675以下であり、「長径」が銅粉の個数50%径の3倍以上である二次粒子をいう。
ここで、「長径」とは、銅粒子の投影像に外接する最小面積の長方形の長辺の長さであり、「アスペクト比」とは、当該長方形における長辺の長さを短辺の長さで除した値である。
また、「円形度」は、下記の(式2)により求められる値である。円形度が1のとき、粒子の投影像は真円であり、当該粒子の立体形状は真球状に近いと予想できる。また、円形度が0に近づくにつれて、撮影された粒子の立体形状には、凹凸が多く存在し、複雑な形状であると予想できる。
Figure 2022083703000003
銅粉中の連結粒子の割合(以下、「連結粒子率」と表記することもある)は、走査電子顕微鏡により銅粉のSEM像を撮影し、そのSEM像に撮影された約40,000個の銅粒子から、画像解析ソフトを使用して、アスペクト比が1.2以上であり、円形度が0.675以下であり、長径が金属粉末の個数50%径の3倍以上である銅粒子の数を計測して得られる。すなわち、連結粒子の割合は、計測した全ての銅粒子の数に対する連結粒子の数の割合を意味する。なお、銅粉のSEM像を撮影するための試料の調製条件等は、後述する実施例を参照することができる。
本実施形態において、銅粉に含まれる連結粒子の割合は、個数基準で500ppm以下であることが好ましい。連結粒子の割合がこの範囲であることにより、銅粉の電極ペースト中での分散性を改善し、電極中の銅粉の充填率を高くすることができるため、塗膜の平滑性が向上するという効果を得ることができる。銅粉の個数50%径が400nm以下の超微粉であっても、上記の効果が得られる。したがって、この銅粉を内部電極用導電ペーストのフィラーとして用いることにより、電極の欠陥によるコンデンサの容量の低下を防ぐことができる。
[2-4.粗大粒子]
銅粉には、連結粒子だけでなく、粗大粒子が含まれ得る。ここで、「粗大粒子」とは、アスペクト比が1.2未満、または円形度が0.675を超える球状または略球状粒子であって、長径が銅粉の個数50%径の3倍以上である銅粒子をいう。つまり、粗大粒子とは、アスペクト比または円形度が連結粒子の要件を満たしていないが、連結粒子と同様に長径が大きく、球形状に近い一次粒子または二次粒子である。銅粉中に含まれる粗大粒子の割合は、個数基準で15ppm以下であることが好ましい。連結粒子率が500ppm以下である銅粉において、粗大粒子の割合がこの範囲であることにより、積層セラミックコンデンサの内部電極の導電ペーストフィラーとして用いるときに、電極層を平滑にすることができ、電極間のショート等の不良を防止することができる。
銅粉中の「粗大粒子」の割合(以下、「粗大粒子率」と表記することもある)は、走査電子顕微鏡により銅粉のSEM像を撮影し、そのSEM像に撮影された銅粒子約60,000個から、画像解析ソフトを使用して、アスペクト比が1.2未満、または円形度が0.675以上であり、長径が銅粉の個数50%径の3倍以上である銅粒子の数を計測して得られる。すなわち、粗大粒子の割合は、計測した全ての銅粒子の数に対する粗大粒子の数の割合を意味する。
[2-5.焼結開始温度]
銅粉の焼結開始温度とは、銅粉を加熱し、銅粉の溶融が開始される温度をいう。銅粉の焼結開始温度は、例えば、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を用いて、1.5体積%水素-窒素の還元性ガス雰囲気下、大気圧、昇温速度5℃/分の条件で測定することができる。なお、銅粉の焼結開始温度は、銅粉の体積が5%収縮する温度としてもよい。
本実施形態に係る銅粉の製造方法によって製造された銅粉の焼結開始温度は、660℃以上であることが好ましい。銅の融点(約1083℃)はニッケルの融点(約1455℃)よりも低いことから、銅粉の焼結開始温度はニッケル粉の焼結開始温度より低くなる。そのため、可能な限りニッケル粉の焼結開始温度に近づけるため、銅粉の焼結開始温度は、好ましくは700℃以上である。焼結開始温度が660℃以上である銅粉は、上述した本実施形態に係る銅粉の製造方法において、各工程の条件(とくに、塩化銅の還元工程(S200)における塩化銅ガスの分圧)を適正に調整することで得られる。
[2-6.塩素量]
本実施形態に係る銅粉の製造方法によって製造された冷却直後の銅粉は、塩化銅の生成が抑制され、塩素量が低減されている。そのため、塩素成分の低減工程(S300)で用いる塩基の水溶液の塩基濃度を下げることができる。銅粉中の塩素量は、例えば、塩素分析装置(三菱化学株式会社製、TOX-2100H)を用いて、試料注入部の温度1000℃、反応部の温度1100℃とし、アルゴン200mL/min、酸素200mL/minのガス流量の条件で測定することができる。
本実施形態に係る銅粉の製造方法では、塩化銅の還元工程(S200)で塩化銅ガスの分圧が調整されていることにより、冷却速度が小さい場合であっても銅粉に取り込まれる塩素成分を少なくすることができる。そのため、銅粉の結晶性が向上し、焼結開始温度が高くなる。また、製造された銅粉は、塗膜の平滑性に優れ、かつ、塩素量が低減されているため、電極層のクラックやデラミネーションが発生しにくい。
以下に実施例をあげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
塩化炉に、原料として平均直径1.5cmの球状の金属銅を設置し、塩化炉の温度を900℃に加熱した。塩化炉の上部の塩素導入管から導入された混合ガスの塩素ガスと窒素ガスの体積比は29:61であった。また、塩化炉の下部の塩素導入管から導入された混合ガスの塩素ガスと窒素ガスの体積比は2:98であった。その結果、塩化炉の上部の塩素導入菅および下部の塩素導入管から導入された混合ガスの塩素ガスと窒素ガスの体積比は1:0.17であった。
生成された塩化銅ガスを1150℃に加熱した還元炉に導入した。また、塩化銅ガスに対して4600モル%の水素ガス、および塩化銅ガスに対して24600モル%の窒素ガスを還元炉に導入した。塩化銅ガスの分圧は、45%であった。塩化銅が還元され、銅を生成された。生成された銅を窒素ガスで冷却速度2000℃/秒で冷却して個々の銅粒子とし、銅粒子の集合体として銅粉を得た。
その後、表面安定化処理を行った。具体的には、アスコルビン酸水溶液で処理した銅粉に対し、室温で0.33重量%のベンゾトリアゾールを表面処理剤として含む水溶液(約300mL)を加え、得られた混合物を30分間攪拌した。攪拌終了後、混合物を静置し、上澄みを除去し、乾燥することにより、実施例1の銅粉を得た。
実施例1の銅粉の個数50%径を測定した。実施例1の銅粉を走査型電子顕微鏡(SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU5000)を用いて、倍率15000倍におけるSEM像の1つの画像の中に存在する500個の銅粒子を画像解析ソフト(株式会社マウンテック製、Macview4.0)を用いて解析した結果、個数50%径(D50SEM)は450nmであった。
実施例1の銅粉のD/D50SEMを測定した。実施例1の銅粉をX線回折装置(株式会社スペクトリス製、X’PertPro)を用いて、加速電圧45kV、放電電流40mAの条件で発生させたCuKα線で得られた銅結晶の(111)面の回折ピークの半値幅とシェラーの式により平均結晶子径(D)を算出した結果、292.5nmであった。また、D/D50SEMは0.65であった。
実施例1の銅粉中の塩素量を測定した。実施例1の銅粉60mgを、塩素分析装置(三菱化学株式会社製、TOX-2100H)を用いて、試料注入部の温度1000℃、反応部の温度1100℃とし、アルゴン200mL/min、酸素200mL/minのガス流量の条件で測定した結果、塩素量は170ppmであった。
実施例1の銅粉の焼結開始温度を測定した。実施例1の銅粉1g、樟脳3重量%、およびアセトン3重量%を混合し、この混合物を内径5mm、長さ10mmの円柱状金属容器に充填し、500MPaで圧縮して試験ペレットを作製した。この試験ペレットの熱収縮挙動を、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を使用し、1.5体積%水素-窒素の還元性ガス雰囲気下、大気圧、昇温速度5℃/分の条件で測定した。試験ペレットの体積が5%収縮した温度、すなわち、焼結開始温度は680℃であった。
実施例1の銅粉を用いて、塗膜の平滑性を評価した。実施例1の銅粉0.5gにリン酸エステル系分散剤5重量%水溶液100mlを加え、超音波分散機(株式会社ギンセン製、GSD600AT)を使用して出力600W、振幅幅30μmで60秒分散した。分散したスラリーを10分間静置して沈降させた後、上澄みを捨て、沈降したスラリー約100mgを5μmのアプリケータで石英板上に塗布した。石英板上の塗膜を、電気炉(株式会社モトヤマ製、SLT-2035D)を使用して、1.5体積%水素-窒素の還元性ガス雰囲気下、大気圧、昇温速度5℃/分の条件で昇温し、1000℃で1時間焼成した。焼成した塗膜の表面粗さ(Sz:最大高さ;最高ピークと最深谷との間の高さ)をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-1000)で測定し、塗膜の平滑性を(Sz値/銅粉の個数50%径)の値で表1のように評価した。実施例1の銅粉の(Sz値/銅粉の個数50%径)の値は1.0以上1.5未満であった。そのため、実施例1の銅粉の塗膜の平滑性は、〇(良)であった。
Figure 2022083703000004
上述のように作製された塗膜の全体を光学顕微鏡で観察し、塗膜のクラックの有無を評価した。実施例1の銅粉の塗膜は、クラックが確認されなかった。
(実施例2)
塩化銅ガスの分圧を80%とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例2の銅粉を得た。実施例2の銅粉を測定および評価したところ、個数50%径(D50SEM)は800nm、平均結晶子径(D)は520nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は200ppm、および焼結開始温度は790℃であった。また、実施例2の銅粉の塗膜の平滑性は〇(良)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例3)
塩化銅ガスの分圧を50%、冷却速度を3000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例3の銅粉を得た。実施例3の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は500nm、平均結晶子径(D)は325nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は140ppm、および焼結開始温度は700℃であった。また、実施例3の銅粉の塗膜の平滑性は◎(最良)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例4)
塩化銅ガスの分圧を70%、冷却速度を3000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例4の銅粉を得た。実施例4の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は700nm、平均結晶子径(D)は455nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は150ppm、および焼結開始温度は750℃であった。また、実施例4の銅粉の塗膜の平滑性は◎(最良)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例5)
塩化銅ガスの分圧を50%、冷却速度を4000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例5の銅粉を得た。実施例5の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は500nm、平均結晶子径(D)は325nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は150ppm、および焼結開始温度は700℃であった。また、実施例5の銅粉の塗膜の平滑性◎(最良)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例6)
塩化銅ガスの分圧を70%、冷却速度を4000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例6の銅粉を得た。実施例6の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は700nm、平均結晶子径(D)は455nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は155ppm、および焼結開始温度は750℃であった。また、実施例6の銅粉の塗膜の平滑性は◎(最良)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例7)
塩化銅ガスの分圧を50%、冷却速度を5000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例7の銅粉を得た。実施例7の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は450nm、平均結晶子径(D)は325nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は155ppm、および焼結開始温度は700℃であった。また、実施例7の銅粉の塗膜の平滑性は◎(最良)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例8)
塩化銅ガスの分圧を70%、冷却速度を5000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例8の銅粉を得た。実施例8の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は700nm、平均結晶子径(D)は455nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は160ppm、および焼結開始温度は750℃であった。また、実施例8の銅粉の塗膜の平滑性は◎(最良)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例9)
塩化銅ガスの分圧を50%、冷却速度を6000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例9の銅粉を得た。実施例9の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は500nm、平均結晶子径(D)は300nm、D/D50SEMは0.60、塩素量は170ppm、および焼結開始温度は690℃であった。また、実施例9の銅粉の塗膜の平滑性は◎(最良)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例10)
塩化銅ガスの分圧を70%、冷却速度を6000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例10の銅粉を得た。実施例10の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は700nm、平均結晶子径(D)は420nm、D/D50SEMは0.60、塩素量は180ppm、および焼結開始温度は730℃であった。また、実施例10の銅粉の塗膜の平滑性は◎(最良)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例11)
塩化銅ガスの分圧を50%、冷却速度を7000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例11の銅粉を得た。実施例11の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は500nm、平均結晶子径(D)は300nm、D/D50SEMは0.50、塩素量は175ppm、および焼結開始温度は690℃であった。また、実施例11の銅粉の塗膜の平滑性は◎(良好)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例12)
塩化銅ガスの分圧を70%、冷却速度を7000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例12の銅粉を得た。実施例12の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は700nm、平均結晶子径(D)は420nm、D/D50SEMは0.60、塩素量は180ppm、および焼結開始温度は730℃であった。また、実施例12の銅粉の塗膜の平滑性は◎(良好)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例13)
塩化銅ガスの分圧を45%、冷却速度を9000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例13の銅粉を得た。実施例13の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は450nm、平均結晶子径(D)は270nm、D/D50SEMは0.60、塩素量は250ppm、および焼結開始温度は660℃であった。また、実施例13の銅粉の塗膜の平滑性は◎(良好)であり、クラックは確認されなかった。
(実施例14)
塩化銅ガスの分圧を80%、冷却速度を9000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、実施例14の銅粉を得た。実施例14の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は800nm、平均結晶子径(D)は480nm、D/D50SEMは0.60、塩素量は300ppm、および焼結開始温度は780℃であった。また、実施例14の銅粉の塗膜の平滑性は◎(良好)であり、クラックは確認されなかった。
(比較例1)
塩化銅ガスの分圧を45%、冷却速度を1000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、比較例1の銅粉を得た。比較例1の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は450nm、平均結晶子径(D)は292.5nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は160ppm、および焼結開始温度は680℃であった。また、比較例1の銅粉の塗膜の平滑性は×(不可)であったが、クラックは確認されなかった。
(比較例2)
塩化銅ガスの分圧を80%、冷却速度を1000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、比較例2の銅粉を得た。比較例2の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は800nm、平均結晶子径(D)は520nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は170ppm、および焼結開始温度は800℃であった。また、比較例2の銅粉の塗膜の平滑性は×(不可)であったが、クラックは確認されなかった。
(比較例3)
塩化銅ガスの分圧を45%、冷却速度を10000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、比較例3の銅粉を得た。比較例3の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は450nm、平均結晶子径(D)は202.5nm、D/D50SEMは0.45、塩素量は450ppm、および焼結開始温度は600℃であった。また、比較例3の銅粉の塗膜の平滑性は◎(最良)であったが、クラックが確認された。
(比較例4)
塩化銅ガスの分圧を80%、冷却速度を10000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、比較例4の銅粉を得た。比較例4の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は800nm、平均結晶子径(D)は360nm、D/D50SEMは0.45、塩素量は500ppm、および焼結開始温度は715℃であった。また、比較例4の銅粉の塗膜の平滑性は◎(最良)であったが、クラックが確認された。
(比較例5)
塩化銅ガスの分圧を40%、冷却速度を2000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、比較例5の銅粉を得た。比較例5の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は400nm、平均結晶子径(D)は260nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は200ppm、および焼結開始温度は650℃であった。また、比較例5の銅粉の塗膜の平滑性は×(不可)であったが、クラックは確認されなかった。
(比較例6)
塩化銅ガスの分圧を90%、冷却速度を2000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、比較例6の銅粉を得た。比較例6の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は900nm、平均結晶子径(D)は585nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は370ppm、および焼結開始温度は850℃であった。また、比較例6の塗膜の平滑性は×(不可)であり、クラックも確認された。
(比較例7)
塩化銅ガスの分圧を40%、冷却速度を9000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、比較例7の銅粉を得た。比較例7の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は400nm、平均結晶子径(D)は260nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は350ppm、および焼結開始温度は650℃であった。また、比較例7の塗膜の平滑性は◎(最良)であったが、クラックが確認された。
(比較例8)
塩化銅ガスの分圧を90%、冷却速度を9000℃/秒とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、比較例8の銅粉を得た。比較例8の銅粉を評価したところ、個数50%径(D50SEM)は900nm、平均結晶子径(D)は585nm、D/D50SEMは0.65、塩素量は400ppm、および焼結開始温度は850℃であった。また、比較例8の塗膜の平滑性は◎(最良)であったが、クラックが確認された。
実施例1~実施例14および比較例1~比較例8の評価結果を図4に示す。
図4からわかるように、実施例1~実施例14の銅粉は、焼結開始温度が660℃以上と高く、冷却直後の銅粉の塩素量が300ppm以下まで低減された結果、塗膜のクラックが発生しないことがわかった。一方、比較例3および比較例4ならびに比較例6~比較例8は、銅粉の塩素量が300ppm超と多く、塗膜にクラックが発生することがわかった。また、比較例1および比較例2は、銅粉中の塩素量が少ないものの、冷却速度が小さすぎたために還元反応の進行が遅く、連結粒子または粗大粒子が生成され、塗膜の平滑性が低下した。また、比較例5も、銅粉の塩素量が少ないものの、冷却速度が小さく、塩化銅ガスの分圧が小さすぎたために、焼成開始温度が低下するとともに、塗膜の平滑性も低下した。
図5は、塩化銅ガスの分圧に対する銅粉中の塩素量の依存性(図5(A))および塩化銅ガスの分圧に対する銅粉の焼結開始温度の依存性(図5(B))を示すグラフである。図5(A)に示すように、塩化銅ガスの分圧が高くなると、銅粉の平均結晶子径(D)が大きくなることがわかった。実施例だけでなく、比較例でも同様の傾向が見られていることから、銅粉の結晶性は、塩化銅ガスの分圧の条件が最も支配的であると言える。換言すると、銅粉の結晶性は、塩化銅ガスの分圧によって制御することができる。また、図5(B)に示すように、塩化銅ガスの分圧が高くなると、銅粉の焼結開始温度が高くなることがわかった。そのため、銅粉の焼結開始温度を高くするには、塩化銅ガスの分圧を高くし、銅粉の結晶性を向上させることが有効であることがわかった。
また、同一の冷却速度で比較した場合、塩化銅ガスの分圧が高くなると、銅粉中の塩素量が増加することがわかった。例えば、実施例1と実施例2とでは、冷却速度が同一の2000℃/秒の条件で銅粉が製造されるが、実施例1よりも塩化銅ガスの分圧が高い条件である実施例2の方が、銅粉中の塩素量が多くなっている。この傾向は、他の実施例および比較例においても同様である。
したがって、塩化銅ガスの分圧が高くなると、銅粉の結晶性が向上するものの、銅粉中の塩素量が増加することになる。上述したように、銅粉中の塩素量の高い比較例3および比較例4ならびに比較例6~比較例8では、塗膜にクラックが発生していることから、銅粉中の塩素量を低減させることが好ましい。
図6は、冷却速度に対する銅粉中の塩素量の依存性を示すグラフである。図6に示すように、冷却速度を低下させると、銅粉中の塩素量が低減されることがわかった。とくに、冷却速度が9000℃/秒を境にして冷却速度が大きくなると、急激に銅粉中の塩素量が増加することがわかった。また、冷却速度が2000℃/秒を境にして冷却速度が小さくなると、塗膜の平滑性が低下することがわかった。
以上より、本実施形態に係る銅粉の製造方法によれば、塩化銅ガスの分圧を調整して銅粉の結晶性を向上させながら、併せて冷却速度を調整することで、銅粉中の塩素量を低減することができる。銅粉の結晶性が向上されるため、銅粉の焼結開始温度は高く、また、銅粉中の塩素量が低減されているため、その銅粉を用いた塗膜は、平滑性が高く、クラックの発生が抑制される。
さらに、実施例1~実施例14の銅粉は、冷却直後の銅粉の塩素量が300ppm以下まで低減されているため、塩素成分の低減工程(S300)に用いられる塩基の水溶液の塩基濃度が、通常の塩基濃度よりも低い0.09モル/L以下で処理することができた。また、特に、実施例3~8の銅粉は、冷却直後の塩素量が160ppm以下まで低減されているため、塩素成分の低減工程(S300)に用いられる塩基の水溶液の通常の塩基濃度よりも低い0.07モル/L以下で処理することができた。
本発明の一実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜構成要素を組み合わせて実施することができる。また、本発明の一実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、または工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
また、本発明の一実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
本発明による銅粉は、結晶性が高く、焼結開始温度が高い特徴を有する。また、本発明による銅粉は、塗膜の平滑性に優れ、クラックやデラミネーションが抑制される特徴を有する。

Claims (3)

  1. 銅と塩素ガスとを反応させて塩化銅ガスを生成し、
    前記塩化銅ガスと還元性ガスとを反応させ、還元反応により銅粉を生成することを含み、
    前記還元反応における前記塩化銅ガスの分圧は、40%超80%以下であり、
    前記還元反応において生成された前記銅粉は、2000℃/秒以上9000℃/秒以下の冷却速度で冷却されることを特徴とする銅粉の製造方法。
  2. 前記塩化銅ガスの分圧が50%以上70%以下である請求項1に記載の銅粉の製造方法。
  3. 前記冷却速度が3000℃/秒以上5000℃/秒以下である請求項1または請求項2に記載の銅粉の製造方法。

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