JP7446587B2 - 抗ヒトノロウイルス剤 - Google Patents

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Description

本発明は、感染症治療薬、さらに具体的には抗ヒトノロウイルス剤に関する発明である。
ノロウイルス(Norovirus)は、カリシウイルス科にある4つのウイルス属の1つであり、現時点でウイルス種としてはノーウォークウイルス(Norwalk virus)が唯一である。
ヒトノロウイルスは、主に食品(魚介類や水)を介してヒトに感染し、食品中100-1000個程度の僅かなウイルス粒子であっても感染可能であり、非常に感染力が強い。ヒトノロウイルスによる食中毒は、ウイルス性食中毒の90%以上を占めている。
ヒトノロウイルス感染症の主症状は、嘔気、嘔吐、下痢であり、発熱も認められる。嘔吐や下痢は、一日数回から酷いときには10回以上であり、吐物には胆汁や腸内物が混じることがあり、激しい苦痛に見舞われる。
北米のデータでは,年間約2000万人がヒトノロウイルス感染症を罹患し、約200万人が病院を受診、40万人が救急に運ばれ、7万人が入院、7000人が死亡している。
日本国におけるヒトノロウイルス感染による嘔吐下痢症は、国立感染症研究所の推計によると、数十年にわたり年間100-300万人に上っており、これによる深刻な社会・経済的影響が認められる。このようなことから、日本国国民からのヒトノロウイルスに対する抗ウイルス薬、ワクチンなどに対する要望は高く、行政上も開発優先順位は第4位に位置づけられている。日本国では、ヒトノロウイルス感染症が直接の死因となった死亡例はほとんど無いが、他の病気の罹患者や高齢者の場合は、長期化や重篤化の高いリスクがある。また、上記の症状が治まっても、感染力が非常に強いヒトノロウイルスの便中への排泄は7-14日間、長い場合は2ヶ月以上続き、その間の学校や職場に復帰をすることができない。さらに、全人口の数パーセントの割合で常にヒトノロウイルスの不顕性感染者が検出される。ヒトノロウイルスの不顕性感染者は、感染者自身ウイルス感染に気づかないため、例えば、当該不顕性感染者が食品従事者として働くことで、大規模食中毒を引き起こすことが報告されている。
このようにヒトノロウイルスは、罹患頻度が高く、患者の苦痛を伴う食中毒性のウイルスで、かつ、感染力が強く、不顕性感染が認められるウイルスであるが、特効薬は現状では存在しない。経口又は点滴等による水分補給により、脱水症を防ぎつつ、経過観察が基本であり、その他は制吐剤や整腸剤投与等の対処療法が行われる。止瀉剤の使用は、ウイルスを腸管内に溜めてしまい回復を遅らせることになるので、少なくとも発症当初においては消極的な指導がなされている。
2002年にフランスのグループが、ヒトの組織血液型抗原(HBGA)にヒトノロウイルスのウイルス様中空粒子(VLP)が結合することを報告し、この分子がヒトノロウイルスのレセプターである可能性が提唱された(非特許文献1)。
その後、ヒトボランティアによる検証が進み、HBGA非分泌型個体(non-secretor individual)は、ヒトノロウイルスが感染しにくく、HBGA分泌型個体(secretor individual)は、ヒトノロウイルスに感染しやすいことが明らかにされた(非特許文献2)。
しかしながら現在は、HBGA自体はヒトノロウイルスの細胞内への侵入を司るレセプターではない。これは以下の理由に依っている。
secretor status つまり、HBGAを唾液や粘膜に分泌するかどうかは、FUT2(フコース転移酵素2番、1-8番まである内の2番目)の遺伝子多型と関係があるとされている。しかしながら、HBGAが細胞表面に発現していない細胞にFUT2遺伝子を導入して、HBGAの分泌と細胞表面での発現を行っても、当該細胞へのヒトノロウイルスの感染は成立しない。従って、HBGA自体はヒトノロウイルスの細胞内への侵入を司るレセプターとはいえず、FUT2遺伝子多型とヒトノロウイルス感染感受性の間の因果関係(直接的、間接的関係)については、未だ解明されていない(非特許文献3)。
特許文献1は、後述する本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分であるフコースアナログについて、主に抗がん剤用途が開示されている先行技術文献である。特許文献1には、感染症治療用途についての一般的な記載は認められるが、実施例は開示されていない。また、特許文献1において列挙されたウイルスの中にノロウイルスとその近縁の下痢症ウイルスは開示されておらず、しかも特許文献1において記載されている対感染症における作用機序は免疫応答の亢進であり、本発明の抗ノロウイルス剤とは全く異なっている。
特許文献2には、実施例で用いた2Dオルガノイドが記載されている。
特許第5918235号公報 WO2018/038042国際公開パンフレット 特開2018-2666号公報
Marionneau,S. et al., GASTROENTEROLOGY 122:1967-1977(2002) Hutson, A. M. et al., Journal of Medical Virology 77:116-120(2005) Guix,S, et al., J.Virol., 81(22):12238-12248(2007)
本発明の課題は、ヒトノロウイルスに対する実質的な治療効果を有する抗ノロウイルス剤を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題の解決に向けて検討を行ったところ、フコーストランスフェラーゼ(FUT)による糖鎖修飾を阻害するフコースアナログの投与により、驚くべきことにヒトノロウイルスの感染細胞である腸管細胞において当該ウイルスの感染を抑制し、さらに当該細胞内におけるヒトノロウイルスの増殖を抑制し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、フコーストランスフェラーゼ(FUT)による糖鎖修飾を阻害するフコースアナログ又はそれらの塩を有効成分とする、抗ヒトノロウイルス剤(以下、本発明の抗ノロウイルス剤ともいう)を提供する発明である。ここで上記フコーストランスフェラーゼは、FUT2を含んでいることが好適である。
さらに具体的に本発明を説明すると、
本発明の抗ノロウイルス剤は、下記式(I)又は(II)のフコースアナログあるいはそれらの塩(以下、フコースアナログは、特に断らない限り、その塩を含む)を有効成分とする、抗ヒトノロウイルス剤である。なお、本明細書においては、官能基を、原子記号及び「-」で示すことがある。例えば、「-OH」は、水酸基を表す。また、炭素原子数を、例えば、C-C10(炭素原子数1-10)として示すことがある。「塩」は、薬学上又は生物学上許容されるものであり、正塩、酸性塩、塩基性塩のいずれであってもよい。
Figure 0007446587000001
[式中、式(I)又は(II)のそれぞれは、α若しくはβアノマーであり;
、R、R、及びRのそれぞれは独立に、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、-OH、-OC(O)H、-OC(O)C-C10アルキル、-OC(O)C-C10アルケニル、-OC(O)C-C10アルキニル、-OC(O)アリール、-OC(O)複素環、-OC(O)C-C10アルキレン(アリール)、-OC(O)C-C10アルケニレン(アリール)、-OC(O)C-C10アルキニル(アリール)、-OC(O)C-C10アルキレン(複素環)、-OC(O)C-C10アルケニレン(複素環)、-OC(O)C-C10アルキニレン(複素環)、-OCHOC(O)アルキル、-OCHOC(O)Oアルキル-OCHOC(O)アリール、-OCHOC(O)Oアリール、-OC(O)CHO(CHCHO)CH、-OC(O)CHCHO(CHCHO)CH、-O-トリ-C-Cアルキルシリル、及び-OC-C10アルキルからなる群から選択され、各nは0から5から独立に選択される整数であり;
2aおよびR3aのそれぞれは独立に水素原子(H)、FおよびClからなる群から選択され;
は-CH、-CHF、-CH=C=CH、-C≡CH、-C≡CCH、-CHC≡CH、-C(O)OCH、-CH(OAc)CH、-CN、-CHCN、-CHX(Xは、F、臭素原子(Br)、Cl又はヨウ素原子(I)である。)およびメトキシランからなる群から選択され;
が-CH=C=CH、-CHF又は-CHF以外である場合、R、R、R、R2aおよびR3aのうちの少なくとも一つがFまたはClである。]
上記において、本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分であるフコースアナログあるいはそれらの塩は、式(I)のフコースアナログあるいはその塩であることが好適である。また、塩形態以外に、溶媒和物形態も許容される。
上記式(I)又は(II)のフコースアナログは、当該フコースアナログの投与を行わない場合のタンパク質のフコシル化に対して、少なくとも10%のフコシル化低減効果を有していることが知られている(特許文献1)。本発明における「フコーストランスフェラーゼ(FUT)による糖鎖修飾の阻害」とは、この10%以上のフコシル化低減効果を意味するものである。
本発明の抗ノロウイルス剤の適用対象となるノロウイルスは、ヒトノロウイルスである。本発明の抗ノロウイルス剤は、ヒトノロウイルスの感染細胞である腸管細胞への当該ウイルスの感染を抑制し、さらに当該細胞内におけるヒトノロウイルスの増殖を抑制し得る。
本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分であるフコースアナログは、ヒトの細胞に対する細胞膜透過性、少なくとも腸管細胞に対する細胞膜透過性を有することが、その抗ノロウイルス効果を発揮するために好ましい。そのためには、フコースアナログとしてのFUT阻害効果を損なわない限度で、R、R、R、R2aおよびR3aのうちの1つ以上が「-OC(O)C-C10アルキル」、好適にはOアセチル(OAc)、すなわち、「-OC(O)CH」であることが好適である(特許文献3)。
本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分であるフコースアナログは、腸管細胞におけるフコーストランスフェラーゼ(FUT)による糖鎖修飾を阻害する。特に、FUT2による糖鎖修飾の阻害が、抗ノロウイルス効果と共に認められる。
上記式(I)又は(II)のフコースアナログは、下記式(III)又は(IV)のフコースアナログあるいはそれらの塩であることが好ましい。
Figure 0007446587000002
[式中、式(III)又は(IV)のそれぞれは、α若しくはβアノマーであり、
、R及びRのそれぞれは、-OH、又は-OAcであり、
は、F(フッ素原子)若しくはCl(塩素原子)であるハロゲン原子、-OH、又は-OAcであり、
は、-CH、-C≡CH、-C≡CCH、又は-CHC≡CHである。]
(1) 上記式(III)又は(IV)において、Rが、F(フッ素原子)若しくはCl(塩素原子)であるハロゲン原子の場合、R、R及びRのうち少なくとも1つが-OAcであることが好適であり、R、R及びRの2つ以上が-OAcであることがさらに好適であり、R、R及びRの全てが-OAcであるのは最も好適な態様の一つである。
また、上記式(III)又は(IV)において、Rが、F(フッ素原子)若しくはCl(塩素原子)であるハロゲン原子の場合、Rは-CHであることが好適であり、上記ハロゲン原子はF(フッ素原子)であることが好適である。
(2) 上記式(III)又は(IV)において、Rが-C≡CH、-C≡CCH、又は-CHC≡CHの場合、Rは、-OH、若しくは-OAcであることが好適である。また、R、R、R及びRのうち少なくとも1つが-OAcであることが好適であり、R、R、R及びRの2つ以上が-OAcであることがさらに好適であり、R、R、R及びRの全てが-OAcであるのは最も好適な態様の一つである。さらに上記アルキニル基は、-C≡CHであることが好適な態様の一つである。
(3) 上記(1)と(2)において、本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分であるフコースアナログあるいはそれらの塩は、式(III)のフコースアナログあるいはその塩であることが好適である。また、塩形態以外に、溶媒和物形態も許容される。
本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分である上記式(I)又は(II)、あるいは(III)又は(IV)のフコースアナログあるいはそれらの塩又は溶媒和物は、腸管細胞の内部に導入されて、代謝中間体であるGDP-フコースのフコース部分への置き換えが進むことにより、正常な糖鎖の形成を阻害し、この作用により所望の抗ノロウイルス効果を発揮すると考えられるが、その因果関係の詳細は不明である。具体的には、(a)上記作用によりヒトノロウイルスの腸管細胞内への侵入(感染)が阻止される。しかしながら、ヒトノロウイルスの細胞表面における細胞内への侵入を司るレセプターは未だ知られていないことは、上記した通りである。HIV、HCV、HBVにおいて認められるように、ヒトノロウイルスにおいても複数のレセプター分子の協調作業によってヒトノロウイルスの感染が成り立っている可能性すらあり、上記レセプターについての特定状況は混迷している。本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分であるフコースアナログは、驚くべきことに、この未知のレセプター分子もしくは、分子群(のいずれか一つもしくは、それ以上)に働きかけて、ヒトノロウイルスの腸管細胞への感染を阻害することができる。さらに驚くべきことには、(b)上記作用に伴い、腸管細胞内におけるヒトノロウイルスの増殖自体を阻害し得る。
本発明により、腸管細胞へのヒトノロウイルスの感染・増殖を抑制し、ヒトのノロウイルス感染症を、予防、治療することができる抗ノロウイルス剤が提供される。
ノロウイルスの系統[リネージ(Lineage)]を示し、特に、ノロウイルスGII(ヒトノロウイルスの頻出遺伝子型)が分類される3つのリネージ(リネージ1-3)について示した図面である。 2fpフコースの腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドに対する細胞毒性を検討した結果を示す図面である。 2fpフコース処理による、腸管幹細胞由来の2Dオルガノイド表面のHBGAの減少(a)と、VLPの吸着の減少(b)を検討した結果を示す図面である。 ノロウイルスGIIのリネージ1-3の各々に属する分離株に対する、2fpフコース処理の2Dオルガノイドにおける効果を検討した結果を示す図面である。 1-4日間の2fpフコース処理が、腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドにおけるヒトノロウイルス増殖に与える影響を検討した結果を示す図面である。 2fpフコースと他のウイルス増殖阻害剤との、腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドにおけるヒトノロウイルス増殖阻害効果を比較検討した結果を示す図面である。 オルガノイドにおける、FUT1-11までのFUTの腸管幹細胞由来の2Dオルガノイド内発現の程度を、RT-PCRによって調べた結果を示す図面である。 FUT2遺伝子をノックアウトした腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドと、野生型当該2Dオルガノイドにおける、FUT2遺伝子の発現の状態をウエスタンブロッティングで検討した結果を示す図面である。 FUT2遺伝子をノックアウトした腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドと、野生型当該2Dオルガノイドにおける、細胞表面のHBGAの状態を、両者におけるFITC(蛍光体)ラベルUEA-1の結合を指標として検討した結果を示す図面である。 FUT2遺伝子をノックアウトした腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドと、野生型当該2Dオルガノイドに対するVLPの結合試験を行った結果を示す図面である。 FUT2遺伝子をノックアウトした腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドにおいて、再びFUT遺伝子を戻した場合の2DオルガノイドにおけるVLPの付着の有無を検討した結果を示す図面である。 野生型の腸管幹細胞由来の2Dオルガノイド、FUT2遺伝子ノックアウト当該2Dオルガノイド、FUT2遺伝子を戻した当該2Dオルガノイドに、ヒトノロウイルスを感染させ、それぞれのオルガノイドの増殖率を比較検討した結果を示す図面である。 6aフコースを用いたノロウイルス増殖阻害試験の結果を示す図面である。 2fpフコース、6aフコースによるウイルス感染後の処理効果に関する検討結果を示した図面である。
[1]フコースアナログ
本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分は、上記のようにフコースアナログ(I)又は(II)[(III)又は(IV)を含む]、あるいはそれらの塩、場合によっては溶媒和物である。
、R、R、及びRのそれぞれが独立に採り得る原子又は官能基において、「アルキル基」とは、定義された範囲の炭素原子数の、置換されているか、あるいは置換されていない、飽和直鎖炭化水素基又は飽和分枝炭化水素基である。
置換されていない当該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、1-メチルベンジル基、2-メチルベンジル基、3-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基等が挙げられる。
置換されているアルキル基は、ハロゲン原子による置換が可能であり、さらに、-O-(C-Cアルキル)、-O-(C-Cアルケニル)、-O-(C-Cアルキニル)、アリール基、-C(O)R′、-OC(O)R′、-C(O)OR′、-C(O)NH、-C(O)NHR′、-C(O)N(R′)、-NHC(O)R′、-SR′、-SOR′、-S(O)R′、-S(O)R′、-OH、=O、-NH、-NH(R′)、-N(R′)、及び-CN等から選ばれる、1個以上の基、好ましくは1-3個の基による置換が可能である。ここで各R′は、-H、-C-Cアルキル、-C-Cアルケニル、-C-Cアルキニル、及びアリール基から独立に選択される。
R′が採り得るアルケニル基は、例えば、エチレンまたはビニル基、アリル基、-1ブテニル、-2ブテニル、-イソブチレニル、-1ペンテニル、-2ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、-2メチル2ブテニル、及び-2,3ジメチル2ブテニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
R′が採り得るアルキニル基は、例えば、エチニル基、プロピニル基、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンチニル、-2-ペンチニル、-3-メチル-1-ペンチニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
、R、R、及びRのそれぞれが独立に採り得る原子又は官能基において、「アルケニル基」と「アルキニル基」は、定義された範囲の炭素原子数の、置換されているか、あるいは置換されていない、不飽和直鎖炭化水素基又は不飽和分枝炭化水素基である。
アルケニル鎖は鎖における少なくとも一つの二重結合を有し、アルキニル鎖は鎖における少なくとも一つの三重結合を有する。
置換されていないアルケニル基の例としては、上記R′が採り得るアルケニル基と同様に、例えば、エチレンまたはビニル基、アリル基、-1ブテニル、-2ブテニル、-イソブチレニル、-1ペンテニル、-2ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、-2メチル2ブテニル、及び-2,3ジメチル2ブテニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
置換されていないアルキニル基の例としては、上記R′が採り得るアルケニル基と同様に、例えば、エチニル基、プロピニル基、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンチニル、-2-ペンチニル、-3-メチル-1-ペンチニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
アルケニル基及びアルキニル基は、置換されている場合、ハロゲン原子による置換が可能であり、さらに、-O-(C-Cアルキル)、-O-(C-Cアルケニル)、-O-(C-Cアルキニル)、アリール基、-C(O)R′、-OC(O)R′、-C(O)OR′、-C(O)NH、-C(O)NHR′、-C(O)N(R′)、-NHC(O)R′、-SR′、-SOR′、-S(O)R′、-S(O)R′、-OH、=O、-NH、-NH(R′)、-N(R′)、及び-CN等から選ばれる、1個以上の基、好ましくは1-3個の基による置換が可能である。ここで各R′は、上記「置換されているR′」と同様である。
、R、R、及びRのそれぞれが独立に採り得る原子又は官能基において、「アルキレン(基)」は、定義された範囲の炭素原子数の二つの1価基中心を有する、置換されている若しくは置換されていない飽和分枝炭化水素基又は飽和直鎖炭化水素基を指し、代表的な置換されていないアルキレンには、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカレン基、1,4-シクロヘキシレン基等があるが、これらに限定されるものではない。
置換されているアルキレン基は、ハロゲン原子による置換が可能であり、さらに、-O-(C-Cアルキル)、-O-(C-Cアルケニル)、-O-(C-Cアルキニル)、アリール基、-C(O)R′、-OC(O)R′、-C(O)OR′、-C(O)NH、-C(O)NHR′、-C(O)N(R′)、-NHC(O)R′、-SR′、-SOR′、-S(O)R′、-S(O)R′、-OH、=O、-NH、-NH(R′)、-N(R′)、及び-CN等から選ばれる、1個以上の基、好ましくは1-3個の基による置換が可能である。ここで各R′は、上記「置換されているR′」と同様である。
、R、R、及びRのそれぞれが独立に採り得る原子又は官能基において、「アルケニレン(基)」は、アルケニル基(上記の通り)であって、親アルケンの同一もしくは2個の異なる炭素原子から2個の水素原子の脱離によって誘導される2個の1価基中心を有する不飽和で分岐もしくは直鎖もしくは環状の炭化水素基を指す。「アルケニレン」基は置換されていないか、アルケニル基について上記のように置換されていても良い。一部の実施形態において、「アルケニレン」基は置換されていない。
「アルキニレン(基)」は、アルキニル基(上記の通り)であって、親アルキンの同一もしくは2個の異なる炭素原子から2個の水素原子の脱離によって誘導される2個の1価基中心を有する、置換されている又は置換されていない、不飽和で、分岐、直鎖若しくは環状の炭化水素基である。
、R、R、及びRのそれぞれが独立に採り得る原子又は官能基において、「アリール(基)」は、親芳香環系の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる6-20個の炭素原子の、置換されているか置換されていない1価芳香族炭化水素基を意味する。いくつかのアリール基は、例示的な構造において「Ar」と表される。代表的な置換されていないアリール基には、ベンゼン、置換ベンゼン、フェニル、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから得られる基を含むが、これらに限定されない。
置換されているアリール基は、ハロゲン原子による置換が可能であり、さらに、-O-(C-Cアルキル)、-O-(C-Cアルケニル)、-O-(C-Cアルキニル)、アリール基、-C(O)R′、-OC(O)R′、-C(O)OR′、-C(O)NH、-C(O)NHR′、-C(O)N(R′)、-NHC(O)R′、-SR′、-SOR′、-S(O)R′、-S(O)R′、-OH、=O、-NH、-NH(R′)、-N(R′)、及び-CN等から選ばれる、1個以上の基、好ましくは1-3個の基による置換が可能である。ここで各R′は、上記「置換されているR′」と同様である。
、R、R、及びRのそれぞれが独立に採り得る原子又は官能基において、「複素環」は、少なくとも1個の環原子がN、O、P又はSから選択されるヘテロ原子である、3-7個または3-10個の環原子を有する、置換されているか、置換されていない単環式環系を意味する。複素環における1個以上のN、C又はS原子は、酸化されていても良い。単環式複素環は、好ましくは3から7個の環員(例えば、2-6個の炭素原子、並びにN、O、P、及びSから独立に選択される1-3個のヘテロ原子)を有する。ヘテロ原子を含む環は、芳香族又は非芳香族であることができる。特に言及しない限り、複素環は、安定な構造をもたらすいずれかのヘテロ原子または炭素原子におけるそのペンダント基に結合している。
複素環は、Paquette, 「Principles of Heterocyclic Chemistry」(W.A. Benjamin, New York, 1968)、特に1、3、4、6、7及び9章;「The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A Series of Monographs」(John Wiley & Sons, New York, 1950年以降)、特に13、14、16、19及び28章;並びにJ. Am. Chem. Soc., 82:5566 (1960)、に記載されている。置換されていない「複素環」基の例には、ピリジル基、ジヒドロピリジル基、テトラヒドロピリジル基(ピペリジル基)、チアゾリル基、ピリミジニル基、フラニル基、チエニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、テトラゾリル基、フコシル基、アジルジニル基、アゼチジニル基、オキシラニル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
置換されている複素環基は、ハロゲン原子による置換が可能であり、さらに、-O-(C-Cアルキル)、-O-(C-Cアルケニル)、-O-(C-Cアルキニル)、アリール基、-C(O)R′、-OC(O)R′、-C(O)OR′、-C(O)NH、-C(O)NHR′、-C(O)N(R′)、-NHC(O)R′、-SR′、-SOR′、-S(O)R′、-S(O)R′、-OH、=O、-NH、-NH(R′)、-N(R′)、及び-CN等から選ばれる、1個以上の基、好ましくは1-3個の基による置換が可能である。ここで各R′は、上記「置換されているR′」と同様である。
さらに詳細な複素環基の例として、炭素結合複素環基は、次の位置:
ピリジンの2、3、4、5又は6位;ピリダジンの3、4、5又は6位;ピリミジンの2、4、5又は6位;ピラジンの2、3、5又は6位;フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール又はテトラヒドロピロールの2、3、4又は5位;オキサゾール、イミダゾール又はチアゾールの2、4又は5位;イソオキサゾール、ピラゾール又はイソチアゾールの3、4又は5位;アジリデンの2又は3位;アゼチジンの2、3又は4位;で結合させることができる。
このような炭素結合複素環基の例としては、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、5-ピリジル基、6-ピリジル基、3-ピリダジニル基、4-ピリダジニル基、5-ピリダジニル基、6-ピリダジニル基、2-ピリミジニル基、4-ピリミジニル基、5-ピリミジニル基、6-ピリミジニル基、2-ピリダジニル基、3-ピリダジニル基、5-ピリダジニル基、6-ピリダジニル基、2-チアゾリル基、4-チアゾリル又は5-チアゾリル等があり得る。
窒素結合複素環基は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン又は1H-インダゾールの1位;イソインドール又はイソインドリンの2位;およびモルホリンの4位で結合させることができる。代表的な窒素結合複素環基として、1-アジリジル基、1-アゼチジル基、1-ピロリル基、1-イミダゾリル基、1-ピラゾリル基、1-ピペリジニル基等が挙げられる。
上記の、R、R及びRのそれぞれが独立に取り得る「-OC(O)C-C10アルキル」の「C-C10アルキル」とは、炭素原子数が1-10個のアルキル基であり、当該炭素原子数の、置換されているか、あるいは置換されていない、飽和直鎖基又は分枝炭化水素基である。置換されていない当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、1-メチルベンジル基、2-メチルベンジル基、3-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基等が挙げられる。置換されていない上記アルキル基がメチル基の場合、「-OC(O)C-C10アルキル」は、Oアセチル(-OAc)、すなわち、「-OC(O)CH」であり、好適な形態として例示される。またこの場合、R、R及びRの1つ以上が-OAcであることが好適であり、2つ以上が-OAcであることがさらに好適であり、3つ全てが-OAcであることは最も好適な態様の一つである。
さらに置換されているアルキル基は、ハロゲン原子による置換が可能であり、さらに、-O-(C-Cアルキル)、-O-(C-Cアルケニル)、-O-(C-Cアルキニル)、アリール基、-C(O)R′、-OC(O)R′、-C(O)OR′、-C(O)NH、-C(O)NHR′、-C(O)N(R′)、-NHC(O)R′、-SR′、-SOR′、-S(O)R′、-S(O)R′、-OH、=O、-NH、-NH(R′)、-N(R′)、及び-CN等から選ばれる、1個以上の基、好ましくは1-3個の基による置換が可能である。ここで各R′は、-H、-C-Cアルキル、-C-Cアルケニル、-C-Cアルキニル、及びアリール基から独立に選択される。
R′が採り得るアルケニル基は、例えば、エチレンまたはビニル基、アリル基、-1ブテニル、-2ブテニル、-イソブチレニル、-1ペンテニル、-2ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、-2メチル2ブテニル、及び-2,3ジメチル2ブテニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
R′が採り得るアルキニル基は、例えば、エチニル基、プロピニル基、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンチニル、-2-ペンチニル、-3-メチル-1-ペンチニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
フコースアナログ(I)又は(II)[(III)又は(IV)を含む]、あるいはそれらの塩又は溶媒和物は、公知の方法により製造することができる。例えば、特許文献3に開示されているように、出発原料としてL-ガラクトースを用いて、そのヒドロキシル基同士をイソプロピリデン化して保護し、当該保護部分以外の側鎖を、所望の置換基(例えば、5位の炭素にアルキニル基を付加する)とするための公知の手段を施した後、上記のイソプロピリデン部分を脱保護して、脱保護されたヒドロキシル基を、所望により公知のアセチル化処理を行うことができる。
また、合成委託を含めて、市販品を用いることも可能である。
[2]医薬組成物
本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分である、フコースアナログ(I)又は(II)[(III)又は(IV)を含む]、あるいはそれらの塩又は溶媒和物(以下、この医薬組成物の単元において、フコースアナログともいう)は、これを、そのまま抗ノロウイルス用途に用いることが可能であるが、さらにこれに対して適切な製剤を施した医薬組成物(以下、組成物ともいう)とすることも可能である。組成物は、治療上有効量のフコースアナログを含有し、代表的には1以上の担体(例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物または合成由来のものを含む、水および油などの滅菌液体)を含有する。水は、組成物を静脈投与する場合の代表的な担体である。さらに生理食塩水、デキストロース及びグリセロール水溶液も、注射用溶液の液体担体として用いることができる。適切な賦形剤としては、例えば、アミノ酸、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等がある。組成物は、所望の場合、必要に応じて、湿展剤、乳化剤、pH緩衝剤、崩壊剤、甘味剤、保存剤、色素/着色剤等も含有することができる。これらの組成物は、溶液剤、シロップ剤、エキシル剤、懸濁液剤、腸溶剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤等の形態を採り得る。
組成物が、腸溶カプセル、ゼラチンカプセルのようなカプセルの形態の場合、上記の材料に加えて、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、脂肪油等の液体担体を含有してもよい。
当該組成物中のフコースアナログの含有量は、組成物に対して0.01-99質量%の範囲で、剤形、投与形態等に応じて自由に選択可能である。
ヒトに投与される、本発明の抗ノロウイルス剤によるフコースアナログの用量は、0.01-500mg/kg体重、より好適には0.1-200mg/kg体重である。
本発明の抗ノロウイルス剤の投与形態は、その目的に応じて選択することが可能である。
例えば、ヒトノロウイルスによる胃腸炎の流行時、ヒトノロウイルスに感染している可能性を否定出来ない食材(貝類等)を食べる前や、ヒトノロウイルスが流行している地域への移動前等にヒトノロウイルス感染を予防する目的で本発明のノロウイルス剤を投与する場合には、当該行為の当日-4日以上前、好ましくは3-4日前から投与を行い、投与間隔は、投与期間中は、体内のフコースアナログの濃度が経時的に極端に低下しないように設定されるべきであり、剤形や投与量によっても異なるが、少なくとも1日1回は投与することが標準的である。
例えば、ヒトノロウイルスによる胃腸炎に罹患した場合は、可能な限り早期に投与して、投与間隔は、上記と同様に、体内のフコースアナログの濃度が経時的に極端に低下しないように設定されるべきであり、剤形や投与量によっても異なるが、少なくとも1日1回は投与することが標準的である。投与期間は、ヒトノロウイルスRNAが糞便中から消失するまで投与することが好ましい。
後述するように、本発明の抗ノロウイルス剤は、腸管細胞におけるヒトノロウイルスの感染を防ぎ、投与中止後は、対象となった腸管細胞からフコース誘導体は除去され、細胞傷害性が認められず、より体に優しいという特徴があり、長期投与も容易である。本発明の抗ノロウイルス剤は、このような特徴を有するため、抵抗力の弱っている人や、免疫不全の状態に陥っている人や、老人に対して投薬しやすい。また、長期投与が可能なので、中毒症状の消失後における投与により、2次感染を防ぐことができる。
以下、本発明の実施例を開示する。本発明の範囲は、この開示には限定されない。この実施例の欄において、本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分を「フコースアナログ」ともいう。
[材料]
(1)腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドとヒトノロウイルスの培養
腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドとは、特許文献2に開示された、
「細胞外マトリクス上にヒト腸管上皮幹細胞、ヒト腸管上皮細胞、又は、これらの細胞のうち、少なくともいずれかを含む組織を立体培養し、3Dオルガノイドを得る工程1と、
前記工程1で得られた前記3Dオルガノイドを分散させて単一細胞を調製し、前記単一細胞を細胞外マトリクス上で単層培養し、分化した絨毛細胞及び杯細胞を含むヒト腸管内腔を構成する上皮細胞が単層構造となっている2Dオルガイドを取得する工程2によって得られる、ヒト下痢症ウイルス(ノロウイルスを含む)の感染・増殖培養用2Dオルガノイド。」である。当該2Dオルガノイドにより、従来は不可能であったヒトノロウイルスの培養が可能となった。
本実施例では、特許文献2の[0130]-[0139]に開示された手法により、ノロウイルス感受性のヒト腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドを調製して、各試験に用いた。
具体的な工程等は、下記の通りである。これらの工程で用いた培地や薬剤は、全て市販品から選択することができるが、必要に応じて自家製造して用いることも可能である。
(a)細胞培養培地
まず、Advanced DMEM/F-12培地(例えば、Thermo Ficher SCIENTIFIC社製)に、終濃度1μg/mLとなるようにヒト組換えR-スポンジン1(例えば、R&Dsystems社製)を添加し、終濃度100ng/mLとなるようにノギン(例えば、Peprotech社製)を添加し、終濃度500nMとなるようにA83-01(例えば、Tocris社製)を添加する(以下、NRA培地という)。
さらに、終濃度300ng/mLのWnt3a、終濃度500ng/mLのIGF1(例えば、Biolegend社製)、終濃度50ng/mLのFGF2(例えば、peprotech社製)、終濃度50ng/mLのEGF(例えば、Thermo Ficher SCIENTIFIC社製)、のそれぞれを以下の組み合わせで添加した培地を用意する。
・WNRA+IGF1+FGF2培地
・ENRA培地
これらの培地に用いた略語の意味は以下の通りである。
W:Wnt3A
E:EGF
N:Noggin
R:Rspondin1
A:A-83-01
(b)2Dオルガノイドの調製
例えば、慶應義塾大学医学部倫理委員会で承認された倫理研究計画に基づき、説明と同意を得られた健常者および消化管腫瘍患者より、消化管腫瘍から少なくとも5cm以上離れた部分を正常粘膜として採取する。採取した組織はEDTA又はリベラーゼTHにより上皮細胞を抽出し、マトリゲル(登録商標)に包埋する。
上皮細胞(以下、腸管幹細胞ともいう)を含むマトリゲル(登録商標)を48ウェルプレートに播種し、培養する。具体的には、下記の通りである。
培養した腸管幹細胞を、25μLのマトリゲル(登録商標)(BD Bioscience社製)と共に、48ウェルプレートに播種した。(a)で調製したWNRA+IGF1+FGF2培地をウェルに100μLずつ添加し、37℃で培養した。培養から、2日毎に培地交換を行い、7日間培養し、腸管幹細胞由来の3Dオルガノイドを得る。
一方、PBS(-)で希釈した2.5%マトリゲル(登録商標)を、96ウェルプレートに50μL/ウェルで添加し、37℃で1時間以上インキュベートした。その後、各ウェルをPBS(-)で3回洗い、2Dオルガノイド調製用のウェルプレートを作製する。
上記の3Dオルガノイドを、例えばTrypLE(商標)Express(Thermo Ficher SCIENTIFIC社製)を用いて崩し、単一細胞とする。この単一細胞を、ENRA培地で洗浄した後、終濃度10μMのY-27632(Rock阻害剤:例えば、和光純薬社製)入りのENRA培地に懸濁する。この細胞懸濁液を、1×10cells/ウェルで、上記ウェルプレートの各ウェルに撒き、3時間以上静置しプレートに接着させて、腸管幹細胞由来の2Dオルガノイドを作製する。以下、特に断らない限り、この「腸管幹細胞由来の2Dオルガノイド」を、「2Dオルガノイド」として記載する。
(c)ヒトノロウイルスの培養
ヒトノロウイルス感染患者の糞便は、多量の感染性ヒトノロウイルスを含んでいる。このヒトノロウイルス感染者の糞便を最終濃度が約10%になるように、蒸留水等に懸濁したものを、「10%便懸濁乳剤」とする。この10%便懸濁乳剤をENRA培地で10倍程度に希釈し、上記の各ウェルの2Dオルガノイドに、5μL/ウェルにて加えて3時間程度のインキュベートを行うことにより、ヒトノロウイルスを増殖培養することができる。検証の結果、この2Dオルガノイドを用いた培養系により、ヒトノロウイルスは当初の10万倍ほどに増殖することが確認されている。
本実施例では、過去のヒトノロウイルス感染患者の糞便から上記の要領で得られ、予めストックされた、感染患者の80-90%を占める遺伝子グループ2(GII)のノロウイルスの内、GIIに含まれる系統[リネージ(Lineage)](図1)として、「リネージ1」に分類されるGII.6、「リネージ2」に分類されるGII.3、「リネージ3」に分類されるGII.4の分離株の3種を被験対象とした(GII.6:K2017株、GII.3:TCH2004株、GII.4:K2017株)。
(2)ウイルス様中空粒子(VLP)
VLPは、ヒトノロウイルスゲノムの構造蛋白質領域をバキュロウイルスに組み込み、昆虫細胞で発現させて得られる、ヒトノロウイルス粒子と酷似した構造体である。VLPは構造がヒトノロウイルスそのものであり、ウイルス粒子と同等の抗原性を有するが、内部にゲノムRNAを持たず、中空で感染性はない。
本実施例では、ノロウイルスGII.4における構造蛋白質領域をコードする塩基配列(AB447456)をバキュロウイルスに組み込んで、これを昆虫細胞(SF9細胞)で発現させて得られたものを用いた。
(3)薬剤
本実施例で用いたフコースアナログの1つとして、(3S,4R,5R,6S)-3-フルオロ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2,4,5-トリイルトリアセテート((3S,4R,5R,6S)-3-fluoro-6-methyltetrahydro-2H-pyran-2,4,5-triyl triacetate)(メルク社製:以下、2fpフコースともいう)を用いた。2fpフコースは、式(III)のフコースアナログにおいて、R、R及びRが-OAcで、R2がFである態様である。具体的には、下記式(V)で表されるフコースアナログである。
Figure 0007446587000003
本実施例で用いたフコースアナログの他の1つとして、6-アルキニルフコース(1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-6,7-ジデオキシ-L-ガラクト-ヘプト-6-ユノピラノース(1,2,3,4-Tetra-O-acetyl-6,7-dideoxy-L-galacto-hept-6-ynopyranose)(株式会社ペプチド研究所製:以下、6aフコースともいう)を用いた。6aフコースは、式(III)のフコースアナログにおいて、R、R、R及びRが-OAcで、Rが-C≡CHである態様である。具体的には、下記式(VI)で表されるフコースアナログである。
Figure 0007446587000004
比較のための市販の抗ウイルス剤として、ソホスブビル(sofosbuvir)、ラミブジン(Lamivudine)、リバビリン(Ribavirin)、ミゾリビン(Mizoribine)を入手した。
2fpフコースを用いたヒトノロウイルスの増殖阻害試験
(1)2fpフコースの2Dオルガノイドに対する細胞毒性
7日間の継続した2fpフコース処理を、3.0-1000μMを2Dオルガノイドに対して行い、処理後の死細胞の数をトリパンブルー染色で求めた。この試験は、独立して3回行った。結果を図2に示す。図中エラーバーはSEMを示している。
図2に示すように、処理後7日間経過しても、全ての2fpフコース処理量において細胞の生存量に、非処理の場合(0μM)との有意差は認められなかった。
この結果は、2fpフコースの細胞に対する安全性を示すものである。
(2)2fpフコース処理が2Dオルガノイド表面のHBGA発現に与える影響
4日間の継続した2fpフコース処理(0、8、40、200、1000μM)を2Dオルガノイドに対して行い、細胞表面のHBGAを含むフコース修飾されているタンパク質の減少を、FITC(蛍光体)ラベルUEA-1(Ulex europaeus agglutinin-1)が結合するか否かを検討した。なおUEA-1は、フコース修飾されているタンパク質に反応する。
まず、2fpフコース処理により、2Dオルガノイド表面の、HBGAを含むαリンクフコースの発現量が、2fpフコースに対して濃度依存的に低下し、特に200μMを超えるとその傾向が明らかになることが明らかになった(図3(a))。図3(a)は、白黒の写真画像である。
一方、ノロウイルスGII.4のVLPに、AF488(アレクサフロー488;緑色蛍光体)をラベルして、精製した当該蛍光ラベルVLPを加え、VLPがどの程度、2fpフコース処理2Dオルガノイド表面に結合するかを観察した。2fpフコース処理濃度は、上記UEA-1の場合と同様に、0、8、40、200、1000μM(4日処理)である。その結果、VLPの結合量は2fpフコースに対して濃度依存的に低下し、2fpフコース濃度が40μMを超えると、2Dオルガノイド表面のVLPの吸着の明確な減少が認められた(図3(b))。図3(b)は、白黒の写真画像である。
上記のVLP(GII.4)の2Dオルガノイド表面への吸着の減少が明確に現れる2fpフコース濃度は「40μM」であり、図4に示されるノロウイルスのGII.4分離株における増殖阻害効果が明確に現れる「200μM以上」(後述)と比べると、低濃度である。これに対して、上記のUEA-1の2Dオルガノイドへの蛍光光度の明確な減少は「2fpフコース200μM超え」で生じており、上記の図4に示されるヒトノロウイルス分離株における増殖阻害効果が明確に現れる2fpフコース濃度と重なっている。これは、2fpフコース濃度が40μMの時には、2Dオルガノイド表面の未知のヒトノロウイルスレセプター(又はレセプター群)の働きは低下しつつあるものの、完全には損なわれていないことを示唆している。2Dオルガノイドの細胞表面のヒトノロウイルス粒子を吸着する構造に対してVLPは吸着して蛍光として現れているが、そうでない相当数のVLPが2Dオルガノイド内に取り込まれていると考えられるからである。2Dオルガノイド内に取り込まれたVLPは速やかに分解されて蛍光色素の存在は認められなくなり、蛍光の減少分として認識される。
他方、UEA-1は、広くフコース修飾されているタンパク質に結合する性質を有しており、2fpフコース濃度が40μMを超えて200μM程度になると、本来フコース修飾されるべき細胞内と細胞表面のタンパク質に、2fpフコースが行き渡り、それが細胞表面における明らかなUEA-1の結合阻害現象として現れると考えられる。細胞内にも多くのフコース修飾タンパク質が存在し、ヒトノロウイルス粒子取り込み後の反応に関与している筈であり、これらの細胞内フコース修飾タンパク質の働きを、200μM程度に達した2fpフコースがその生成を阻害することにより妨げ、その結果、細胞内におけるヒトノロウイルスの増殖が阻害されると考えられる。
このように本発明の抗ノロウイルス剤の有効成分であるフコースアナログは、ヒトノロウイルスの細胞内への取り込みのみならず、細胞内におけるその増殖を阻害する働きを有していることが強く示唆される。
(3)2fpフコース処理がヒトノロウイルス増殖に与える影響
2fpフコース処理がヒトノロウイルス増殖に与える影響を、そのノロウイルスのリネージ毎に調べるため、2fpフコースの3日処理後に、上記のノロウイルスGII.6、GII.3、GII.4の分離株を上記の2Dオルガノイドに感染させ、感染後3日目と6日目のウイルス増殖量を測定した(図4)。その結果、図4に示すように、GII.3分離株では、40μM以上で完全にウイルスの増殖抑制が認められた。GII.6分離株では、200μM以上で完全な増殖抑制効果が認められた。GII.4分離株では、40μMから増殖抑制効果が若干認められたが、200μM以上で完全な増殖抑制効果が認められた。この結果から、200μM以上の濃度では、これらのリネージのヒトノロウイルスにおいて完全な増殖抑制効果が認められた。
次に、事前の2fpフコース処理の日数がフコースアナログの抗ヒトノロウイルス効果に与える影響を検討するために、上記のGII.4分離株に対して、いくつかの濃度の2fpフコース処理を1-4日にわたって行った。その結果を図5に示す。図5に示すように、1日処理、2日処理では、ヒトノロウイルスは、接種後3日目に100倍以上に増殖しており、2fpフコースによる増殖阻害効果も濃度依存性も認められなかった。しかし、3日処理群では、200μM処理で増殖阻害効果が表れた効果にばらつきが認められた。4日処理群では、8μM処理から効果が表れ、200μM処理まで濃度依存的に増殖抑制効果が高くなった。一方、1000μM処理では、若干のヒトノロウイルスの増殖が認められた。従って、この2Dオルガノイドの系では、200μMの3-4日処理が最も高い増殖抑制効果が認められた。この試験は、独立して3回行った。エラーバーはSEMを示す。
(4)2fpフコースと他のウイルス増殖阻害剤との効果の比較
2Dオルガノイドに対して、(a)2fpフコースを200μM、(b)ソホスブビル(sofosbuvir)を1μM、(c)ラミブジン(Lamivudine)を1μM、(d)リバビリン(Ribavirin)を400μM、(e)ミゾリビン(Mizoribine)を100μM、の処理を3日間実施し、その後ヒトノロウイルス(上記ノロウイルスGII.4の分離株)を感染させ、増殖阻害効果を測定した(図6)。試験は独立して3回行った。エラーバーはSEMを示す。2fpフコースだけ0日目から7日目にかけてウイルスRNAタイター(力価)の上昇がほとんど認められず、ヒトノロウイルスの増殖阻害効果が認められた。他の阻害剤は、いずれも薬剤を添加していない群(No drug)と同様の高さまでウイルスRNAタイターが上昇し、全くヒトノロウイルスの増殖阻害効果を示さなかった。
2fpフコースによるヒトノロウイルス増殖抑制機序の検討
(1)FUT遺伝子発現プロファイルと2fpフコースによる細胞毒性
2fpフコースは、細胞に取り込まれた後、フコーストランスフェラーゼ(Fucose transferase:FUT)によってαフコース修飾に組み入れられる。しかし、フコースとは一部の側鎖が異なっているため、2fpフコースから次の糖鎖を伸ばすことができなくなる。2fpフコースは、このような仕組みにより完全な糖鎖修飾を阻害する、フコースのアナログである。2fpフコースは、α1-2フコース転移を行うFUT1、FUT2から、α1-3フコース転移を行うFUT3-11まで、哺乳類細胞で発見されている全てのフコーストランスフェラーゼによる糖修飾を阻害する。
ここでは、ヒトノロウイルス感受性である2Dオルガノイドにおける、FUT1-11までのFUTの細胞内発現の程度を、RT-PCRによって調べた。その結果を図7に示す。
図7に示す通り、α1-2フコース転移を担うFUT1、2の内、FUT2は良く発現していたが、FUT1の発現は、FUT2の1/200程度だった。α1-3フコース転移を行うFUT3-11では、FUT3、4、6、8、10、11の発現が認められたが、FUT5、7、9の発現はバックグラウンドレベルであった。2Dオルガノイドにおいて本来発現するべき、FUT2、3、4、6、8、10、11の機能が、2fpフコースによって阻害されても、細胞の生存性(viability)には全く影響は認められなかった。
(2)FUT2遺伝子ノックアウト細胞を用いたヒトノロウイルス増殖とHBGAの関係
2Dオルガノイドにおける、HBGAのセクレーターステータス(secretor status)とFUT2遺伝子発現が関係を検討するために、2DオルガノイドのFUT2遺伝子をノックアウトし、当該ノックアウト2DオルガノイドのFUT2遺伝子の発現を、ウエスタンブロッティングで確認した(図8)。図8において「WT」は対照となる野生の2Dオルガノイドで、「KO」は当該ノックアウト2Dオルガノイドであることを示している。マーカーは、「バイオラッド・プレシジョン Plus プロテインTM2色スタンダード1610374」を用いた。左側の泳動図はFUT2について検討した結果を示しており、右側の泳動図は、対照としてβアクチンについて検討した結果を示している。左側の泳動図において上から5番目と6番目のマーカーの間のWTのみに存在するバンドはFUT2で、右側の泳動図において上から5番目の間のWTとKOの双方に存在するバンドはβアクチンである。すなわち、当該ノックアウト2DオルガノイドにおけるFUT2の発現は、ウエスタンブロッティングで検出できないレベルに低下していた。ノックアウトされていない2Dオルガノイド(野生型)と、ノックアウトした2Dオルガノイドのβアクチン量が同じであることから、電気泳動、ウエスタンブロッティングに供された細胞の量は等しいことが確認できる。
図9は、ノックアウト2Dオルガノイドと野生型2Dオルガノイドの細胞表面のHBGAの状態を、両者におけるFITC(蛍光体)ラベルUEA-1の結合を指標として検討した結果を示している。図9において「UEA1」は、FITCラベルUEA-1と両者に接触させた場合の蛍光の分布と強度を示す白黒の写真画像であり、「Merge」は、当該「UEA1」と、Hoechst(登録商標)33342による細胞核染色(青色)の画像、を合成したものである。ここに示されているように、FUT遺伝子のノックアウトによって、ピンポイントでFUT2の発現がなくなると、2Dオルガノイド表面におけるHBGAは殆ど認められなくなった。
次に、緑色蛍光体AF488でラベルしたGII.4のVLPを、ヒトノロウイルスノックアウト2Dオルガノイドと野生型2Dオルガノイドに対して接触させて、両者の表面にVLPが結合するか否かを検討した(図10)。その結果、ノックアウト2DオルガノイドおけるVLPの結合はほとんど認められなかった。白黒の写真画像である図10中「Merge」は、当該「VLP」の画像と、Hoechst(登録商標)33342による細胞核染色(青色)したものの合成である。
次に、上記のFUT2遺伝子のノックアウト2Dオルガノイドに対して、当該FUT2遺伝子を戻して(レスキューして)、FUT2の発現の回復を試みた。ヒトノロウイルスに感染した2Dオルガノイドを抗ヒトノロウイルスVP1抗体で赤く染色したところ、一面に分布している細胞群の中において、低確率ではあるが染色細胞が認められ、VLPが表面付着した、ヒトノロウイルス感染2Dオルガノイドが、若干存在していることが認められた(白黒の写真画像である図11の明るい点)。これは、ノックアウト2Dオルガノイド表面上において、HBGAが低い効率で回復したことを示唆している。
最後に、野生型2Dオルガノイド(WT)、FUT2遺伝子ノックアウト2Dオルガノイド(FUT2KO)、FUT2遺伝子を戻した2Dオルガノイド(FUT2Res)に、ヒトノロウイルス(上記ノロウイルスGII.4の分離株)を感染させ、それぞれの2Dオルガノイドの増殖率を比較検討した(図12)。
図12に示す通り、WTは、3日目、6日目にRNAタイターの上昇が認められ、ヒトノロウイルスの増殖が確認された。しかし、FUT2遺伝子ノックアウト2Dオルガノイドは、RNAタイターの上昇が全く認められず、ヒトノロウイルス増殖は全く起きていなかった。そして、当該ノックアウト2DオルガノイドにFUT2遺伝子を戻した細胞においては、野生型(WT)に比べると上昇率は低いが、RNAタイターの上昇が認められ、ヒトノロウイルスが増殖できる状態となっていることが確認された。
FUT2Res細胞は、FUT2KO細胞にFUT2遺伝子を導入した細胞であるため、細胞内にFUT2をノックアウトするために働いていたFUT2 gRNAとCas9が常時発現し続けた状態になっている。そのため、新たに導入したFUT2遺伝子も、徐々にノックアウトされて行く。そのため、改めてFUT2遺伝子をFUT2KO細胞に導入しても、ヒトノロウイルス増殖能は野生型と同じレベルに復帰せず、増殖率もWTを下回っていると考えられる。
オルガノイドは、腸管細胞に分化する過程で、ヒトノロウイルス感染感受性になる。FUT2はその成熟過程で働き、細胞表面においてヒトノロウイルスを細胞内に引き込むヒトノロウイルス感染受容体の成熟に直接または、間接的に影響を与えていると、この試験により考えられる。しかし、前述のようにFUT2発現から、感染感受性細胞になるまでの行程を含むメカニズムは、未だ解明されていない。
6-アルキニルフコースを用いたヒトノロウイルス増殖阻害試験
2Dオルガノイドに対して、6aフコースを0μM、1.6μM、8μM、40μM、200μM終濃度となるように培地に添加し、4日間分化誘導培養を行った。培養は、96ウェルプレート上に3ウェルずつ、6aフコースのそれぞれの添加系を、被験ヒトノロウイルス毎の試験プレートとして用いた。被験ヒトノロウイルスは、上記のGII.4分離株とGII.6分離株の2種類を用いた。培養は、37℃に調整した炭酸ガスインキュベーターにおいて行った。
培養開始4日目に培地を除去し、新しい培地で洗浄後、上記のヒトノロウイルスを10RNAコピー加え3時間静置して感染させた。感染処理後、培地中のヒトノロウイルスを、培地ごと除去し、新しい培地で3回洗浄操作を行った。
洗浄後、新しい培地に、再び6aフコースを0μM、1.6μM、8μM、40μM、200μM終濃度となるように添加し、6日間培養を行った。
上記の(a)新しい培地添加直後、(b)3日後、(c)6日後、にそれぞれのウェルから10μLの培地を回収し、10000gで10分間遠心して細胞沈渣を除去し、上清1μLに含まれるヒトノロウイルスゲノムRNAの量を、リアルタイムRT-PCRで定量した。
結果を図13に示す。図13において、(a)がヒトノロウイルスのGII.4分離株、(b)がヒトノロウイルスのGII.6分離株、に対して6aフコースを用いた結果を示している。図13の縦軸はヒトノロウイルスゲノムRNAのコピー数(RNAタイター)であり、それぞれの棒グラフの群の下の数字は、試験開始時の培養時間をそれぞれ示している。
図13(a)に示したGII.4株に対する増殖阻害効果は、6aフコース濃度1.6μMから現れ、未処理群は培養6日目に培養開始時の100倍以上のRNAタイターの上昇が認められたのに対し、それぞれの濃度の6aフコース処理群は全て培養開始時の100倍以下のRNAタイターに抑えられた。詳細には、6aフコース濃度が8μMでは、上記1.6μMの場合よりもRNAタイターの上昇がさらに抑えられ、培養開始時の10倍ほどの上昇に抑えられた。6aフコース濃度が40μMでは、培養開始6日目に僅かに培養開始時の測定値を上回ったが、RNAタイターの上昇はほとんど認められなかった。6aフコース濃度が200μMでは、完全にRNAタイターの上昇は阻害された。
図13(b)に示したGII.6株に対する増殖阻害効果は、6aフコース濃度1.6μMでは認められなかった。しかし、8μMでは強くヒトノロウイルスゲノムの増殖が抑えられ、培養3日目と6日目に僅かに0日目の測定値を上回る増殖が認められた。6aフコース濃度40μM以上では、完全に増殖が阻害された。
なお、培養細胞(2Dオルガノイド)は、上記培養によって増殖が認められたウェル以外は、モノレイヤーのシートとして生存しており、6aフコースの添加による細胞毒性は、全ての処理濃度において全く観察されなかった。
2fpフコース、6aフコースによるウイルス感染後の処理効果に関する検討
(1) 試験系の説明
オルガノイドは分化誘導後、小腸上皮細胞に完全に分化するまでに約4日間を要する。その後、細胞の分裂はほぼ停止し、培地交換を行わない場合、7-9日間で死に始める。フコースアナログの効果は、上記の結果からも分かるように、添加後2日目から現れ、4日後にはプラトーに達する。一方、ヒトノロウイルスは、感染翌日には培地内への新生ウイルスの放出が始まり、増殖が観察できるようになり、感染後6日目まで増殖が続く。
一般に、ヒトの体内では、ヒトノロウイルスによる第1の感染・細胞内増殖によって小腸上皮細胞が死に、剥離すると、クリプト部分に存在する幹細胞が分裂し、正常に分化誘導された上皮細胞の補充が行われ、やがて絨毛の再生が進む。このようにして新しく供給される細胞に、第1の感染・細胞内増殖によって、上記小腸上皮細胞から腸管内に放出された新生ヒトノロウイルスが新たに感染し、再び第2のヒトノロウイルスの増殖サイクルが当該新供給細胞内で回り始める。この段階になると、通常は宿主の免疫応答によるウイルス増殖制御が始まるため、ウイルスの感染増殖は、徐々に抑えられていくと考えられている。
本発明の抗ノロウイルス剤について、上記のヒトノロウイルスの感染・増殖サイクルに適用させた効果的な投与形態をデザインするためには、上記の感染・増殖サイクルにおいて、フコースアナログがどのように作用するか、経時的にモニターすることが望ましい。
しかしながら、現在、ヒトノロウイルスの感染・増殖をモニターできる実験動物は存在せず、インビボで、ヒトノロウイルス増殖と、細胞の再生、供給、再感染、免疫応答を含めてモニターすることは困難である。
そこで、ヒトノロウイルス感染後のフコースアナログの添加の経時的な効果を、インビトロで以下の条件を用いて測定した。
(2) 試験系の内容と結果(図14)
(a) 2Dオルガノイドを96ウェルプレートに播種し、分化誘導後、5日目にフコースアナログ[2fpフコース(結果は図12(a))、6aフコース(結果は図14(b))]を、それぞれ200μMの濃度となるように添加した群(添加群)と、添加しない群(未処理群)を作成した。その後、当該2日目に培地を除去し、洗浄後、上記のGII.4分離株とGII.6分離株の2種類を感染させた。
感染処理後、培地中のヒトノロウイルスを、培地ごと除去し、新しい培地で3回洗浄操作を行った。洗浄後、新しい培地に、再び上記有効成分をそれぞれ、添加群には200μMとなるように添加し、未処理群は無添加のまま、3日間培養を行った。それぞれのウェルから10μLの培地を回収し、10000gで10分間遠心して細胞沈渣を除去し、上清1μLに含まれるヒトノロウイルスゲノムRNAの量を、リアルタイムRT-PCRで定量した。
この時点で未処理群(untreated)は、10倍以上(2fpフコース投与系)又は150倍以上(6aフコース投与系)のRNAタイターの上昇が認められたが、添加群は、両投与系共にヒトノロウイルスの増殖(RNAタイターの上昇)は認められなかった。この結果は、図14(a)(b)の左端から2つのバーに示した(untreatedそれぞれと、2f-fuc又は6a-fucのバー)。
(b) 上記の未処理群には、なおもヒトノロウイルス感染感受性細胞が残っており、ヒトノロウイルスの追加感染によって残存する感受性細胞への新たな感染増殖が起きることを示している。そこで、残存する感受性細胞に対する本発明の抗ノロウイルス剤の効果を検討するため、以下の操作を行った。
上記(a)と同様に未処理群として3日間培養を行った系のそれぞれから培地を除去し、洗浄操作後に、ヒトノロウイルスを再感染(reinfection:reinf.)させ、その後当該ウイルスを培地ごと除去し、洗浄操作後に新しい培地を添加し、さらに3日間培養し、上清に放出されたヒトノロウイルス量を、上記と同様にRNAタイターとして測定した。この再感染試験では、上記(a)の初回感染よりも高い、20倍以上のRNAタイターの上昇が認められた(図14(a)のreinfのバー)。つまり、再感染によりウイルスは新たに細胞に感染し、培地内のウイルス濃度は初回感染より増加することが示された。
(c) 次に、この再感染に対するフコースアナログの効果を検討する。通常ヒトは、ヒトノロウイルス感染後24-48時間程度で発症するため、発症直後に本発明の抗ノロウイルス剤の有効量を投与したと仮定する。この場合、上記の知見からヒトノロウイルスの初期感染から2日後以降には、抗ウイルス効果が現れることが見込まれる。また、初感染後にクリプト部分の幹細胞から分化誘導される細胞は、フコースアナログの存在下、3日後にウイルスに接触することとなる。
本試験系では、上記のフコースアナログによる処理後3日間を経過した2Dオルガノイドのうち、生き残っている細胞(その多くは、フコースアナログの効果により未だヒトノロウイルスの感染を受けていない)に対して、2回目の感染(再感染:reinfected)操作を行い、当該再感染操作に対するフコースアナログの効果を検討することで、ヒトノロウイルス感染後の本発明の抗ノロウイルス剤がもたらす効果を推定する。
具体的には、上記(a)と同様に添加群として、最初の感染からフコースアナログ(200μM)の存在下で3日間培養を行った系のそれぞれから培地を除去し、洗浄操作後に、ヒトノロウイルスを再感染させ、その後当該ウイルスを培地ごと除去し、再洗浄操作後にフコースアナログが200μM含まれている(Reinf+2f-fuc若しくはReinf+6a-fuc)、又は、含まれていない(Reinf-2f-fuc若しくはReinf-6a-fuc)培地を添加し、さらに3日間培養し、その時点で上清に放出されたヒトノロウイルス量を、上記と同様にRNAタイターとして測定した。この結果は、図14(a)(b)の右端から2つのバーに示した(Reinf+2f-fuc若しくはReinf+6a-fucのバー、又は、Reinf-2f-fuc若しくはReinf-6a-fucのバー)。
この結果により、上記再感染後にフコースアナログを添加しても、しなくても、初発のヒトノロウイルスの感染当初から当該有効成分の存在下で3日間生育した細胞は、ヒトノロウイルスの再感染を受け付けないことが明らかになった。
(3) 結論
上記の結果より、ヒトがノロウイルスに感染して、その発症時に本発明の抗ノロウイルス剤の有効量を継続的に服用した場合、初発の感染による症状の全てを避けることは難しいものの、概ね感染後2-3日後以降に起こる再感染による症状の持続的発現は効果的に抑制できることが明らかになった。これは、ヒトノロウイルス罹患者の苦痛を、質的及び期間的に和らげるという意味で非常に有益である。さらに本発明の抗ノロウイルス剤の発症後の使用により、ヒトがノロウイルスに罹患した場合に、ヒトノロウイルスの感染拡大の原因として問題になっている、便へのヒトノロウイルスの排泄期間を大幅に短縮できることが見込まれる。

Claims (1)

  1. 下記式(III)のフコースアナログ又はそれらの塩を有効成分とする、抗ヒトノロウイルス剤。
    [化1]
    Figure 0007446587000005

    [式(III)は、α又はβアノマーであり、
    式中、
    1)R 、R 及びR は、-OAcであり、R は、F(フッ素原子)であり、R は、-CH である;又は、
    (2)R 、R 、R 及びR は、-OAcであり、R は、-C≡CHである。
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