JP7445430B2 - 吸収性物品本体及び吸収性物品 - Google Patents

Description

本発明は、吸収性物品本体及び吸収性物品に関するものである。

吸収性物品（いわゆる、使い捨ておむつ）には、装着体に吸収体が内蔵されたものや、装着体に吸収体が着脱自在に装備されるものがある。また、装着体に吸収体が内蔵されたものにおいて、さらに吸収体を着脱自在に装備可能なものもある。

このような吸収性物品として、吸収体の長さ方向に沿って複数のスリットを設けて、着用時には各スリットの周辺部分で屈曲し、幅方向中央が肌面側に突出したＷ字状に変形するように構成されたものが開示されている（特許文献１参照）。

また、吸収体に肌面側に突出するように誘導する誘導線を設け、誘導線を含まない部分や誘導線を含む部分の剛軟度（JIS L 1085）の下限値を規定して、誘導線に沿って折れ曲がり易くした構成も開示されている（特許文献２参照）。

特許第５４８６３４８号公報 特開２０１６－１８９８５２号公報

特許文献２の技術ではJIS L 1085に規定された剛軟度の下限値を規定することにより、誘導線の部分以外では折れ曲がらず誘導線に沿って折れ曲がり易くすることを狙っているが、吸収性物品の折れ曲がり線の部分を数値的に規定するには、かかる剛軟度よりもより実態に即した剛性パラメータによる設定が求められている。また、所定の箇所で折れ曲がった吸収体は、装着者の肌への密着性が高まる一方で装着者に圧迫感を与えるおそれも発生するため、装着時に折れ曲がることによって密着性を高めるとともに良好な装着感を与えられるようにすることも必要である。

本発明は、このような課題に着目して創案されたもので、装着時に吸収体の幅方向への折れ曲がりが行なわれて密着性を高めるとともに良好な装着感を与えることができるようにした、吸収性物品本体及び吸収性物品を提供することを目的としている。

（１）本発明の吸収性物品本体は、互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有する吸収性物品に配備され、吸収体の両面にシートが配置されてなる吸収性物品本体であって、前記吸収性物品本体の幅方向の中心で長手方向に稜をなし、肌面側に突出するように折り曲げ、さらに幅方向の中心の両側で長手方向に稜をなし、非肌面側に突出するように折り曲げ、前記吸収性物品本体の厚さＴｍｍに対して、４×Ｔ×１．２５ｍｍまで圧縮したときの前記吸収性物品本体の反力が、２．０Ｎ以下であることを最も主要な特徴としている。
（２）前記吸収体は、長手方向に延びる二本の溝状部を有し、前記溝状部において、幅方向の中心の両側で長手方向に稜をなし、非肌面側に突出するように折り曲げることが好ましい。

（３）本発明のもう一つの吸収性物品本体は、前身頃、股下部、後身頃を長手方向に順に備えて、長手方向が着用者の股下の前後方向に沿うように配置される吸収性物品に配備され、吸収体の両面にシートが配置されてなる吸収性物品本体であって、前記着用者の股下位置を含んで長手方向に延び、着用時に横断面が中央部を肌面側に突出させたＷ字状の断面形状をなす折れ曲がり形状となるように案内する案内構造を有し、前記Ｗ字状の折れ曲がり形状を変形するように幅方向の両端を、前記吸収性物品本体の断面厚さＴｍｍに対して、４×Ｔ×１．２５ｍｍまで圧縮したときの前記吸収性物品本体の反力が、２．０Ｎ以下であることを特徴としている。

（４）前記案内構造には、長手方向に延びる一対の溝状部が含まれていることが好ましい。
（５）前記吸収性物品本体の反力が１．５Ｎ以下であることが好ましい。
（６）前記吸収性物品本体の反力が１．０Ｎ以上であることが好ましい。

（７）本発明のさらにもう一つの吸収性物品本体は、互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有する吸収性物品に配備され、吸収体の両面にシートが配置されてなる吸収性物品本体であって、前記吸収性物品本体の幅方向の中心で長手方向に稜をなし、肌面側に突出するように折り曲げ、前記吸収性物品本体の厚さＴｍｍに対して、２×Ｔ×１．２５ｍｍまで圧縮したときの前記吸収性物品本体の反力が、２．０Ｎ以下であることを特徴としている。

（８）本発明の吸収性物品は、前身頃、股下部、後身頃を長手方向に順に備え、前記長手方向が着用者の股下の前後方向に沿うように配置される装着体と、長手方向が前記着用者の股下の前後方向に沿うように前記装着体に配置される、（１）～（７）の何れか１つに記載の吸収性物品本体と、を有することを特徴としている。

本発明によれば、Ｗ字状の折れ曲がり変形するように幅方向の両端を、吸収性物品本体の断面厚さＴｍｍに対して、４×Ｔ×１．２５ｍｍまで圧縮したときの吸収性物品本体の反力が２．０Ｎ以下であるため、装着時に吸収体の幅方向への折れ曲がりが行なわれて密着性を高めるとともに良好な装着感を与えることができるようにすることができる。

図１は一実施形態に係る紙おむつ（吸収性物品）を展開状態で示す平面図である。 図２は図１の紙おむつの斜視図である。 図３は図１の紙おむつを分解して示す斜視図である。 図４は図１の紙おむつの要部断面図（図１のα－α断面図）である。 図５は装着状態の紙おむつの装着状態における溝状部が配置された箇所の断面図である。 図６Ａ及び図６Ｂは吸収体反力の特性に係る数値を得るための試験について説明する図であって、図６Ａは試験用サンプルの正面図、図６Ｂは試験用サンプルの試験時の状態を示す側面図である。

以下、図面を参照して、実施形態としての吸収性物品について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。

本実施形態の吸収性物品は、着用者に装着され、尿や経血といった液体を吸収する衛生用品である。この吸収性物品としては、テープ型やパンツ型の紙おむつ（いわゆる「使い捨ておむつ」）、尿パッド、生理用ナプキン、パンティーライナーなどが挙げられる。以下の実施形態では、吸収性物品としてテープ型の紙おむつを例示する。

「紙おむつ（或いは、使い捨ておむつ）」等の吸収性物品には、着用者に装着するための装着体に液体を吸収する吸収体を装備しているが、本実施形態では、装着体に吸収体が予め内装されていると共に、装着体に対して別体の吸収体を着脱できるようになっているものを例示する。

このように、吸収性物品は装着体と吸収体とが必須であり、吸収性物品は装着体と吸収体とから構成され、本実施形態では、吸収性物品から吸収体を除いたものが装着体となっている。
なお、本実施形態では、男性用紙おむつを例示する。

本実施形態では、紙おむつについて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃（長手方向の一側）と後身頃（長手方向の他側）との間（長手方向の中央）には、着用者の股下に配置（股間に対向して配置）される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態（以下「装着状態」と略称する）において、着用者の肌に向かう側（装着された状態で内側）を肌面側とし、肌面側の反対側（装着された状態で外側）を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。

［Ｉ．一実施形態］
［１．紙おむつ］
［１－１．基本的な構成］
まず、図１～図３を参照して、紙おむつ１の基本的な構成を説明する。この紙おむつ１は、幅方向の中心線Ｃを基準として左右対称に形成されている。なお、図３では、各部材における幅方向の中心線を示す符号について、各部材を示す符号を符号「Ｃ」に下付きで追記している。
紙おむつ１は、長手方向に沿って前身頃１Ａ、股下部１Ｂ及び後身頃１Ｃの三つの領域に大別される。

この紙おむつ１には、後身頃１Ｃで幅方向に突出する止着テープ２が設けられ、前身頃１Ａの最も非肌面側にフロントパッチ３（図１では破線で示す）が設けられている。止着テープ２がフロントパッチ３に止め付けられることで、紙おむつ１が着用者に装着される。
また、股下部１Ｂの幅方向寸法は、一般的な着用者の両脚部の付け根間の寸法よりもやや大きく設定されている。そのため、装着状態では、幅方向に挟まれた股下部１Ｂが折り曲げられた状態となる。この状態では、長手方向に折れ目が延びる。

つぎに、図１～図３を参照して、紙おむつ１を構成するシート類について述べる。
紙おむつ１には、前身頃１Ａ、股下部１Ｂ及び後身頃１Ｃに亘って長手方向に延びる装着体１００と、吸収体１２（図１では太破線で示す）とが設けられている。図１～図３では、前身頃１Ａ及び後身頃１Ｃよりも股下部１Ｂのほうが幅方向寸法の小さい、即ち、股下部１Ｂで幅方向両縁部が抉られた正面視形状の吸収体１２を例示する。ただし、幅方向寸法が一定の吸収体１２を用いてもよい。なお、前記のように、紙おむつ１から吸収体１２を除いたものが装着体１００である。

吸収体１２は、着用者から排泄される液体を吸収して保持する部材である。この吸収体１２については、この例ではマット状であるため、以下の説明では「マット１２」と呼ぶが、吸収体の形状については、マット状に限らず当技術分野で知られる種々の形状のものを採用することができる。

たとえば、粉砕あるいは解繊されたパルプ（いわゆる「フラッフパルプ」）に高吸水性樹脂（いわゆるＳＡＰ〈Superabsorbent polymer〉、高吸水性高分子あるいは高吸水性ポリマーとも称される）が混合されたコアをラップシート（コアラップ）で被包（ラップ）したものがマット１２に用いられる。ここでは、ラップシートにティッシュが用いられている。

このマット１２に対して肌面側及び非肌面側には、以下に述べる種々のシートが積層されている。
マット１２の肌面側には、肌面側シートの一つとしてトップシート１１がマット１２の幅方向両側縁部（耳部）を除いた広い領域に重なるように配置され積層されている。トップシート１１がマット１２の全域を覆ってもよい。
トップシート１１は、紙おむつ１で最も肌面側に配置される。このトップシート１１は、着用者から排泄された液体をマット１２に吸収させるために、液体を透過させる性質（液透過性）をもつ。そして、トップシート１１は、マット１２の肌面側を被覆する。

さらに、トップシート１１及びマット１２に対して幅方向側方のそれぞれには、肌面側シートの一つとしてサイドシート１０が設けられている。
サイドシート１０は、トップシート１１と同様に紙おむつ１で最も肌面側に配置される。このサイドシート１０は、排泄された液体の漏れを防止するために、液体を透過させ難い性質（疎水性）をもつ。

マット１２の非肌面側には、マット１２に近い側に非肌面側シートの一つとしてバックシート（第１非肌面側シート）１３が積層されている。このバックシート１３の非肌面側、（マット１２から遠い側）には非肌面側シートの一つとしてカバーシート（第２非肌面側シート）１４が積層されている。
バックシート１３は、マット１２からの液漏れを防ぐために、液不透過性をもつ。このバックシート１３は、マット１２を非肌面側から被覆する。たとえば、ポリエチレン（PE）やポリプロピレン（PP）といった熱可塑性の樹脂シートがバックシート１３に用いられる。

図１～図３に示すように、カバーシート１４は、紙おむつ１の股下部１Ｂ及び後身頃１Ｃで最も非肌面側に配置される。このカバーシート１４は、バックシート１３を補強するとともに触感（たとえば手触り）を向上させるために設けられ、バックシート１３を非肌面側から被覆する。
なお、カバーシート１４は、単層構造に限らず、インナカバーシート及びアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。

なお、マット１２は、紙おむつ１の幅方向の外側の両縁部１Ｓを除いて配置される。つまり、紙おむつ１の幅方向の外側の両縁部１Ｓでは、マット１２及びトップシート１１は配置されず、サイドシート１０，バックシート１３，カバーシート１４のみが重ねられて配置されている。また、幅方向外側の両縁部１Ｓの最も外側では、バックシート１３は配置されず、サイドシート１０，カバーシート１４のみが重ねられて配置されている。
このように、マット１２の肌面側にはトップシート１１が積層配置され、マット１２の非肌面側にはバックシート１３及びカバーシート１４が積層配置される部分、即ち、マット１２の両面にシート１１，１３，１４が配置されてなり、紙おむつ（吸収性物品）１の主体構造をなす部分を、紙おむつ本体（吸収性物品本体）１２０とする。

また、サイドシート１０，バックシート１３，カバーシート１４のそれぞれの幅方向両縁部の正面視形状は、マット１２の幅方向両縁部と同様に股下部１Ｂで抉られた形状になっている。ただし、マット１２や各シート１０，１３，１４は、このように抉られた形状に限定されず、それぞれ矩形であってもよい。サイドシート１０，カバーシート１４の幅方向両縁部は最も外側に延びて紙おむつ１の幅方向両縁部を構成し、マット１２と厚み方向に重なるように配置されるトップシート１１の幅方向両縁部は、バックシート１３の幅方向両縁部よりもさらに内側に位置する。

カバーシート１４の非肌面側には、フロントパッチ３が貼着されている。
このフロントパッチ３は、ファスニング機構によって止着テープ２が結合されるものであり、止着テープ２は、後身頃１Ｃの幅方向両端部のそれぞれに設けられる。図１～図３では、後身頃１Ｃの幅方向両側に二つずつ設けられた止着テープ２を例示する。ただし、少なくとも幅方向両側に一つずつの止着テープ２が設けられていればよく、個数は限定されない。これらの止着テープ２は、後身頃１Ｃの両縁部１Ｓのそれぞれから幅方向外側へ延設される。なお、フロントパッチは必須ではなく、例えば、カバーシート１４がファスニングテープを引っかけられる素材であればよい。

本実施形態では、止着テープ２とフロントパッチ３とを結合し前身頃１Ａの両側部に後身頃１Ｃの両側部を固定するファスニング機構として、フック材（雄部材）とループ材（雌部材）との機械的結合により固定する面状ファスナーが用いられる。
面状ファスナーは、表面に多数の突起（たとえば鉤状やきのこ状など）が形成されたフック材と、表面にループ状の繊維が配置されたループ材との組み合わせにより構成される。すなわち、止着テープ２及びフロントパッチ３のうちの何れか一方にフック材が設けられ、他方にループ材が設けられる。面状ファスナーを用いることで、フック材及びループ材を剥離可能な状態としつつ強固に固着させることができ、繰り返しの使用も可能となる。
ただし、粘着剤や粘着テープなどをファスニング機構に用いてもよい。

［１－２．詳細な構成］
つぎに、図１～図３を参照して、紙おむつ１の詳細な構成を説明する。
ここでは、装着状態において、股下部１Ｂを所定形状に折り曲げて保持するための構造（以下「折曲保持構造」という）を述べる。なお、股下部１Ｂの不規則な折れ曲がりや捩れが着用者の快適性を低下させることから、股下部１Ｂを所定形状に折り曲げることで着用者の快適性を確保するために、折曲保持構造が紙おむつ１に設けられている。

この折曲保持構造として、股下部１Ｂの形状をＷ字状の断面形状をなす折れ曲がり形状となるように案内する案内構造としてエンボス部２０（溝状部、単にエンボスともいう）が設けられている。また、所定形状に折り曲げられた股下部１Ｂの形状を保持するためのズレ止めギャザー（サポートギャザー）３２が設けられている。さらに、エンボス部２０によって股下部１Ｂを所定形状へ確実に折り曲げるための構成がマット１２に設けられている。

紙おむつ１には、このズレ止めギャザー３２と共に、レッグギャザー３１及び立体ギャザー３３も設けられている。本実施形態では、これらのギャザー３１，３２，３３は、何れも幅方向の中心線Ｃに対して左右対称に長手方向に沿って設けられている。ズレ止めギャザー３２については、レッグギャザー３１よりも幅方向の中心線Ｃ寄り（内側寄り）にそれぞれ配置されるため、内側ギャザーとも呼ぶ。

なお、紙おむつ１において、レッグギャザー３１，ズレ止めギャザー３２及び立体ギャザー３３がそれぞれ形成される形成領域を、レッグギャザー領域３１Ａ，ズレ止めギャザー領域３２Ａ及び立体ギャザー領域３３Ａという。これらの各ギャザー領域３１Ａ，３２Ａ，３３Ａは、紙おむつ１における幅方向及び長手方向でそれぞれ規定される。
また、図２に示すように、後身頃１Ｃの両サイドの止着テープ２，２の相互間には幅方向に沿ってウェストギャザー３４が設けられている。

〈エンボス部〉
エンボス部２０は、股下部１Ｂにおいて長手方向に延びて凹設された、少なくとも一対（二本）の溝状の部位である。本実施形態では、エンボス部２０は一対設けられている。なお、前身頃１Ａや後身頃１Ｃにはエンボス部２０が設けられていない。

ここでは、トップシート１１及びマット１２にエンボス部２０が設けられている。すなわち、紙おむつ１の肌面側にエンボス部２０が配置される。なお、エンボス部２０は、少なくともマット１２に設けられていればよく、トップシート１１には設けられていなくてもよい。

このエンボス部２０は、少なくともトップシート１１が積層されたマット１２を部分的にプレス（圧搾）することで凹設（エンボス加工）することができる。この場合には、エンボス部２０の設けられたマット１２が圧搾（圧密化）された状態をなしている。
また、このエンボス加工をする前に、少なくともエンボス形成箇所に水をスプレーする水スプレー工程を設けることで、水分の粘性や表面張力によってマット１２を構成するパルプの繊維同士が一時的にくっつきやすくなり、プレス加工によりエンボスを形成しやすくなる。水スプレー工程は、マット１２のコアが下ティシュと上ティシュとで挟まれる前に、コアにスプレーで水を散布することで行う。その後、コアがティシュで挟まれて形成されたマット１２に対して所要箇所をプレスするエンボス加工によってエンボス部（溝）２０を形成する。

図１～図３に示すように、本実施形態では、エンボス部２０の一例として、幅方向の中心線Ｃを基準として左右対称に配置され、互いに平行であって二本で一対をなす直線状のエンボス部２０を例示する。ただし、エンボス部２０は、長手方向に延びるライン状に延びるエンボス（ラインエンボス）であればよく、直線状のラインエンボスに限らず、波線状のラインエンボスや、弧状などその他の曲線状のラインエンボスであってもよい。

また、本実施形態では、左右の各エンボス部２０が中心線Ｃと平行であるが、左右の各エンボス部２０は、長手方向の一方から他方に向かうにつれて離間あるいは接近する形状であってもよい。さらに、エンボス部２０は、本実施形態のように左右に１本ずつ設ければよいが、左右にそれぞれ複数本ずつ設けてもよく、各本数も限定されない。また、左右対称なエンボス部２０以外に、エンボス部２０を設けてもよく、三本以上のエンボス部２０を設けてもよい。

〈レッグギャザー〉
レッグギャザー３１は、着用者の脚部への追従性を高めるために設けられている。このレッグギャザー３１は、幅方向には、紙おむつ１の幅方向の外側の両縁部１Ｓの領域（レッグギャザー領域）３１Ａに設けられている。レッグギャザー３１は、長手方向には、股下部１Ｂの全域と、前身頃１Ａの股下部１Ｂ寄りの部分及び後身頃１Ｃの股下部１Ｂ寄りの部分とに亘って長手方向に延びるように設けられている。また、レッグギャザー領域３１Ａは、股下部１Ｂにおいては、紙おむつ１の幅方向外側の両縁部１Ｓのマット１２の配置されない領域に、前身頃１Ａ及び後身頃１Ｃにおいては、マット１２の外縁部やマット１２と隣接する領域に、それぞれ設けられている。

レッグギャザー３１は、長手方向に収縮力を発揮する第１伸縮手段としての弾性部材（第１弾性部材）４１によって長手方向に収縮して皴を付けられて形成される。第１弾性部材４１は、図１に破線で示すように、２本の線状弾性体（第１線状弾性体）４１ａ，４１ｂによって構成される。第１弾性部材４１は、幅方向には、股下部１Ｂにおいては、紙おむつ１の両縁部１Ｓに、前身頃１Ａ及び後身頃１Ｃにおいては、マット１２の外縁部やマット１２と隣接する領域に、それぞれ配置される。また、第１弾性部材４１は、股下部１Ｂの全域と、前身頃１Ａの股下部１Ｂ寄りの部分及び後身頃１Ｃの股下部１Ｂ寄りの部分とに亘って長手方向に延びるように設けられている。

〈ズレ止めギャザー〉
ズレ止めギャザー３２は、装着状態において、マット１２を肌面側に持ち上げて支持すると共にマット１２がずれないようにするために設けられている。このズレ止めギャザー３２は、幅方向には、レッグギャザー３１よりも幅方向内側で且つエンボス部２０よりも幅方向外側で、マット１２の幅方向両縁部付近（縁部寄り）に対応するように配置された領域（ズレ止めギャザー領域又は内側ギャザー領域）３２Ａに設けられている。ズレ止めギャザー領域３２Ａは、長手方向には、股下部１Ｂを中心に、マット１２の前身頃１Ａの股下部１Ｂ寄りの部分から後身頃１Ｃの股下部１Ｂ寄りの部分に亘って、長手方向に延びるように配置されている。

また、ズレ止めギャザー領域３２Ａは、股下部１Ｂの領域内において、厚み方向において（平面視で）マット１２と重なる位置に配置される。ここでは、ズレ止めギャザー３２の長手方向位置がマット１２の長手方向領域において、その内部に設定されている。このようにズレ止めギャザー３２の長手方向位置がマット１２の領域の内部に設定されることは必須ではないが、ズレ止めギャザー３２の全てがマット１２と重なる位置に配置されていることが好ましい。この場合、ズレ止めギャザー３２がマット１２の長手方向全領域まではカバーしない構成を含むが、ズレ止めギャザー３２は無駄なくマット１２に作用することになる。また、ズレ止めギャザー３２の配置はこれに限定されず、ズレ止めギャザー３２の少なくとも一部がマット１２と重なる位置に配置されていればよい。

ズレ止めギャザー３２も、長手方向に収縮力を発揮する第２伸縮手段としての弾性部材（第２弾性部材）４２によって長手方向に収縮して皴を付けられて形成される。第２弾性部材４２は、図１に破線で示すように、何れも長手方向に沿って配置された３本の線状弾性体（第２線状弾性体）４２ａ～４２ｃによって構成される。

第２弾性部材４２は、幅方向には、レッグギャザー３１の第１弾性部材４１よりも幅方向内側で且つエンボス部２０よりも幅方向外側で、マット１２の幅方向両縁部付近に対応するように配置されている。第２弾性部材４２は、長手方向には、その有効範囲（弾性力を発揮する範囲）を、股下部１Ｂを中心に、マット１２の前身頃１Ａの股下部１Ｂ寄りの部分から後身頃１Ｃの股下部１Ｂ寄りの部分に亘って長手方向に延びるように配置されている。

当然ながら、第２弾性部材４２の長手方向への有効範囲もズレ止めギャザー３２と対応しており、第２弾性部材４２の長手方向への有効範囲はマット１２の長手方向範囲の内側に位置している。第２弾性部材４２の有効範囲がマット１２の長手方向範囲の内側に位置することは必須ではないが、第２弾性部材４２の有効範囲の全てがマット１２と重なる位置に配置されていることが好ましい。この場合、第２弾性部材４２がマット１２の長手方向全領域まではカバーしない構成を含むが、第２弾性部材４２は無駄なくマット１２に作用することになる。また、第２弾性部材４２の有効範囲の配置はこれに限定されず、第２弾性部材４２の有効範囲の少なくとも一部がマット１２と重なる位置に配置されていればよい。

〈立体ギャザー〉
立体ギャザー３３は、排泄された液体が幅方向外側に漏れることを防ぐために設けられる。この立体ギャザー３３の基端は、幅方向には、ズレ止めギャザー３２よりも幅方向外側でレッグギャザー３１よりも幅方向内側に配置された領域（立体ギャザー領域）３３Ａに設けられている。立体ギャザー領域３３Ａは、長手方向には、紙おむつ１の長手方向端部（この端部は、固定部とされ伸縮機能はない）を除くほぼ全長に亘って長手方向に延びるように配置されている。

サイドシート１０の幅方向内側は、図４，図５に示すように、サイドシート１０が接合されるトップシート１１の縁部から肌面側に離隔可能に延設された内側延設部１０Ｓを有している。この内側延設部１０Ｓは、サイドシート１０の全長にわたって形成されており、この内側延設部１０Ｓに立体ギャザー３３が形成される。上記の立体ギャザー３３の基端は、この内側延設部１０Ｓの基端側の縁部、即ち、内側延設部１０Ｓがトップシート１１から離隔を開始する部分に相当する。

立体ギャザー３３は、長手方向に収縮力を発揮する第３伸縮手段としての弾性部材（第３弾性部材）４３によって長手方向に収縮して皴を付けられて形成される。図４～図６（図６Ａ，図６Ｂ）に示すように、内側延設部１０Ｓの先端側の縁部は折り返されて接合された二重構造になっており、この二重構造部分の内部に、第３弾性部材４３が配置されている。

第３弾性部材４３は、図１に破線で、図４，図５に断面で示すように、２本の線状弾性体（第３線状弾性体）４３ａ，４３ｂによって構成される。第３弾性部材４３は、長手方向には、紙おむつ１の長手方向端部（この端部は、固定部とされ伸縮機能はない）を除くほぼ全長に亘って長手方向に延びるように配置される。
また、左右の立体ギャザー３３の間のトップシート１１よりも肌面側の空間には、別体のマット（図示略）を追加して装着できるようになっている。

〈各ギャザーの特徴〉
レッグギャザー３１，ズレ止めギャザー３２，立体ギャザー３３は、何れも弾性部材４１，４２，４３によって長手方向に収縮して皴を付けられて形成される。これらの弾性部材４１，４２，４３は、何れも装着されるシート間に伸長状態で連続的に接合されて装着される。これらの弾性部材４１，４２，４３が収縮力を発揮する。

本実施形態では、各弾性部材４１，４２，４３は何れも複数の線状弾性体４１ａ，４１ｂ，４２ａ～４２ｃ，４３ａ，４３ｂにより構成されているが、各線状弾性体としては、例えば、天然ゴムや合成ゴムを用いた糸ゴム（糸状のゴム）や、糸状の伸縮フィルムを適用することができる。これらの線状弾性体４１ａ，４１ｂ，４２ａ～４２ｃ，４３ａ，４３ｂで構成される弾性部材４１，４２，４３は、それぞれ、紙おむつ１を構成する各シートの層間に配置されている。

つまり、レッグギャザー３１の第１弾性部材４１は、股下部１Ｂではサイドシート１０とバックシート１３との層間に配置される。また、レッグギャザー３１は、主として固定端となる前身頃１Ａ及び後身頃１Ｃではサイドシート１０とバックシート１３との層間に、それぞれ配置されるが、前身頃１Ａ及び後身頃１Ｃではサイドシート１０とカバーシート１４との層間や、バックシート１３とカバーシート１４との層間に配置されてもよい。

ズレ止めギャザー３２の第２弾性部材４２は、その全域においてバックシート１３とカバーシート１４との層間に配置される。ズレ止めギャザー３２の第２弾性部材４２の有効範囲は、その全てがマット１２と重なる位置に配置されているため、第２弾性部材４２の線状弾性体４２ａ～４２ｃが伸縮変形すると、線状弾性体４２ａ～４２ｃとこれに接触するシートとの間で擦れが生じる。線状弾性体４２ａ～４２ｃがマット１２に直接接触していると、線状弾性体４２ａ～４２ｃとマット１２との間で擦れが生じて、マット１２が破れたり崩れたりして、マット１２の吸収性が低下するおそれが発生する。特に、ラップシートにティッシュが用いられていると、線状弾性体４２ａ～４２ｃとティッシュとが擦れるため、ティッシュが破れやすい。

これに関し、第２弾性部材４２の線状弾性体４２ａ～４２ｃをバックシート１３とカバーシート１４との層間に配置することにより、線状弾性体４２ａ～４２ｃとマット１２との接触を回避しながら、バックシート１３を通じて第２弾性部材４２の収縮力をマット１２に伝えるようにして、マット１２の破れや崩れを招くことなく、ズレ止めギャザー３２により、マット１２を肌面側に持ち上げて支持すると共にマット１２がずれないようにすることができるようにしている。

また、図１～図５に示すように、レッグギャザー３１の第１弾性部材４１は２本の線状弾性体４１ａ，４１ｂが、ズレ止めギャザー３２の第２弾性部材４２は３本の線状弾性体４２ａ～４２ｃが、立体ギャザー３３の第３弾性部材４３は２本の線状弾性体４３ａ，４３ｂが、それぞれ設けられるが、各弾性部材４１，４２，４３や各線状弾性体４１ａ，４１ｂ，４２ａ～４２ｃ，４３ａ，４３ｂは、各ギャザー３１，３２，３３に対する要求に応じた弾性特性のものが適用されている。

レッグギャザー３１の第１弾性部材４１とズレ止めギャザー３２の第２弾性部材４２との間では、第１弾性部材４１の方が第２弾性部材４２よりも低い弾性率を有するものが適用されている。つまり、幅方向の内側の弾性部材４２よりも幅方向の外側の弾性部材４１の方が低い弾性率を有するように構成されている。
言い換えれば、同じ伸び量（伸び率）を与えた場合には、幅方向の内側の弾性部材４２よりも幅方向の外側の弾性部材４１の方が弱い即ち緩やかな弾性力（伸縮力）を発揮するように構成されている。

なお、ここで言う「弾性率」とは、主として紙おむつ１の長手方向への伸縮に着目した弾性係数あるいは弾性定数であり、以下に示すヤング率Ｅに相当し、バネ定数ｋにも対応させることができる。
Ｅ＝σ／ε
σ：弾性部材の伸張による応力
ε：弾性部材の伸張による歪み
したがって、第１弾性部材４１のヤング率（弾性率）をＥ１、第２弾性部材４２のヤング率（弾性率）をＥ２とすると、Ｅ１，Ｅ２は次式（Ａ）の関係となる。
Ｅ１＜Ｅ２ ・・・（Ａ）

［２．装着状態の紙おむつ］
つぎに、図５を参照して、装着状態の股下部１Ｂを説明する。
装着状態では、股下部１Ｂが所定形状に折り曲がった状態となる。具体的には、エンボス部２０が配置されている箇所では、股下部１Ｂの幅方向断面が、図５に示すように、エンボス部２０の相互間が幅方向中心を頂点に肌面側に盛り上がって、更に、エンボス部２０の外側も肌面側に盛り上がるため、「Ｗ」字状の所定形状に折り曲げられる。この「Ｗ」字状をなす部分を二つの並んだＶ字に準えて、一方のＶ字部分及び他方のＶ字部分をＶ字部５１，５２と呼ぶ。また、折れ目の位置が肌面側であれば山折りと呼び、非肌面側であれば谷折れと呼ぶ。

この装着状態では、エンボス部２０が折れ目となって股下部１Ｂの谷折れを案内している。具体的に言えば、二つのエンボス部２０を折れ目として股下部１Ｂを谷折りすることで、二つの谷折りが案内される。そして、Ｖ字部５１、５２のそれぞれの角部に対応する部位に二つのエンボス部２０が位置する。このときの股下部１Ｂでは、二つのエンボス部２０の幅方向中間部が逆Ｖ字状に山折りされ、幅方向中心が折れ目となる。

このように所定形状に折り曲げられた股下部１Ｂでは、Ｖ字部５１，５２のそれぞれの幅方向外側に、第２弾性部材４２で形成されるズレ止めギャザー３２が位置する。これらの第２弾性部材４２で収縮するズレ止めギャザー３２によって、マット１２が長手方向に収縮され、全体的に股下部１Ｂが肌面側に持ち上げられる。

ところで、本実施形態のマット１２は、エンボス部２０によって、前記のように、Ｗ字状の折れ曲がり形状に変形するが、このときのマット１２を主体とする紙おむつ本体（吸収性物品本体）１２０の幅方向への剛性を以下の特性に設定している。

つまり、図６Ａに示すように、紙おむつ本体１２０を所定の形状に切ったサンプル１２´を用意する。サンプル１２´は紙おむつ本体１２０と同一材料を所定の大きさの矩形形状にカットしたものである。サンプル１２´の厚みは紙おむつ本体１２０と同一の厚みＴであり、ここでは、Ｔ＝７ｍｍである。また、サンプル１２´には、中心線Ｃ（中心）に対して対称にエンボス部２０に相当する溝２０´（折れ曲がり形状となるように案内する案内構造）が一対設けられている。

また、サンプル１２´は所定のサイズ、つまり、横幅Ｌａ（＝１７６ｍｍ）、縦長さＬｂ（＝１５０ｍｍ）を有し、溝２０´は中心線Ｃから距離Ｌｃ（＝３８ｍｍ）のところに設けられている。したがって、サンプル１２´の溝２０´から幅方向端縁までの距離Ｌｓは横幅Ｌａと距離Ｌｃとから５０ｍｍとなる。

そして、図６Ｂに示すように、このようなサンプル１２´の幅方向の両端を、紙おむつ本体１２０の断面厚さＴｍｍに対して、所定厚さ４×Ｔ×１．２５ｍｍまで圧縮し、このときの紙おむつ本体１２０の反力（この反力は主に吸収体に依存するため、以下、吸収体反力とも言う）が、２．０Ｎ以下で且つ１．０Ｎ以上になるように設定されている。ここでは、Ｔｍｍ＝７ｍｍであるので、所定厚さ３５ｍｍまで圧縮する。

吸収体反力が２．０Ｎよりも大きいと、装着者に圧迫感を与え装着感を低下させるおそれが高まる。なお、この観点から、吸収体反力は１．５Ｎ以下であることがより好ましい。一方、吸収体反力が１．０Ｎよりも小さいと、Ｗ字状の折れ曲がり形状に適正に変形しないおそれが高まる。

なお、上記の吸収体反力の値は、引張圧縮試験機（ストログラフＶＧ１Ｅ）を用いて各測定サンプルについて以下に説明するような圧縮試験を実施して、これにより得られた測定値に基づいて得ている。

ここで、圧縮試験による紙おむつ本体１２０の反力測定の手順について説明する。
（１）まず、紙おむつ１の股下部分を１７６ｍｍ（幅方向）×１５０ｍｍ（長手方向）の大きさにカットし、測定サンプルを用意する。ただし、それぞれの長さに満たない場合は、最大長でカットする。ここでは、下記の表１に示すように、サンプルナンバー１～１３の１３種類のサンプルを用意した。
（２）測定に当たっては、それぞれの測定サンプルを幅方向の中心で長手方向に稜をなし、肌面側に突出するように折り曲げる。
（３）さらに、それぞれの測定サンプルの幅方向の中心の両側であって、中心から８０ｍｍ以内で長手方向に稜をなし、非肌面側に突出するように折り曲げる。ただし、溝状部を有している場合は、溝状部で折り曲げることとする。
（４）そして、引張圧縮試験機（ストログラフＶＧ１Ｅ）のチャック間に折り曲げたサンプルを配置し、圧縮時の値を測定する。
圧縮試験の条件は、ロードセルを１００Ｎ、試験速度を４０ｍｍ／ｍｉｎ、荷重レンジを×２０（５Ｎ）とした。

サンプルナンバー１～５は、折れ曲がりを案内する構造（案内構造）として、エンボス部に対応する箇所にスリットを備えたものであり、これらは、パルプ目付けが一定（３００ｇ／ｍ^２）で且つスリットの長さが一定（１００ｍｍ）であるが、スリットの幅とスリット部の厚みとの組み合わせが異なっている。なお、パルプ目付けは主にマット１２の目付けである。
サンプルナンバー６は、案内構造が設けられない（スリットもエンボスも備えない）ものであり、パルプ目付けは３１５ｇ／ｍ^２となっている。

サンプルナンバー７～１３は、折れ曲がりを案内する構造（案内構造）として、エンボスを備えたものであり、これらは、パルプ目付けとエンボス幅とエンボス長さとエンボス部の厚みとの組み合わせが異なっている。
サンプルナンバー７，９，１１，１３は、パルプ目付けがサンプルナンバー６と等しい標準的な値（３１５ｇ／ｍ^２）であるのに対して、サンプルナンバー８はパルプ目付けが小さく（１９６ｇ／ｍ^２）、サンプルナンバー１０，１２はパルプ目付けが大きく（３３０ｇ／ｍ^２，３５０ｇ／ｍ^２）なっている。
また、サンプルナンバー７～１０，１２，１３はエンボス幅が何れも３ｍｍであるが、サンプルナンバー１１はエンボス幅が７ｍｍである。
エンボス長さについては、サンプルナンバー７，８は１７０ｍｍであり、サンプルナンバー９～１３は１９５ｍｍである。
エンボス部の厚みについては、サンプルナンバー７～１０，１２，１３は０．４６～０．７８ｍｍであるが、サンプルナンバー１１はこれらよりも大きく２．１である。

圧縮試験によって、各サンプルに対して、以下の表１に示すように、吸収体反力が得られた。また、各サンプルに応じた紙おむつ１をそれぞれ実装して、Ｗ字状への変形のしやすさと、装着感とを評価した。各評価は、１～５の５段階で評価しており、数字が大きいほど高評価となっている（１＜２＜３＜４＜５、５が最高評価）。

表１に示すように、スリットやエンボスを設けることで吸収体反力を低下させることができる。ただし、エンボスを設けても、マット１２のパルプ目付けが高い場合やエンボス部の厚みが大きい場合には、吸収体反力が高くなる傾向がある。
また、Ｗ字状への変形のしやすさの点では、吸収体反力が低い方が、高評価となるが、装着感の点では、吸収体反力が高過ぎても低過ぎても、評価が低くなる傾向にある。

これらから、Ｗ字状への変形のしやすさ及び装着感の双方を高評価のものにするには、パルプ目付けは、３４０以下が好ましく、３２５以下がより好ましく、２００以上が好ましい。また、吸収体反力は、３．４以下が好ましく、２．５以下がより好ましく、２．０以下が更に好ましく、１．５以下がより一層好ましい。また、吸収体反力は、１．０以上が好ましい。

スリットを設ける場合は、長さを１００ｍｍ程度とすると、スリット幅は１～３０ｍｍが好ましく、１～２０ｍｍがより好ましい。また、スリット部の厚みは、０（貫通）よりも微小量（５．０ｍｍ以下）だけあった方が好ましい。
エンボスを設ける場合は、長さを１７０～２００ｍｍ程度とし、エンボス幅は１～１０ｍｍが好ましく、１～６ｍｍがより好ましい 。また、エンボス部の厚みは、０．２～３．０ｍｍが好ましく、０．２～２．０ｍｍがより好ましい 。

また、エンボス加工工程の前に水スプレー工程を設ける場合、スプレーする水分量（水スプレー量）がエンボス部２０の形状保持に影響することが考えられる。ここでは、形状保持能力を判定するパラメータとして剥離強度に着目し、同一のサンプルに対して水スプレー量の異なるものを複数用意して、剥離強度試験を行った。

ここで、剥離強度の測定手順について説明する。
（１）紙おむつ１の股下の中央部分を１７６ｍｍ（幅方向）×５０ｍｍ（長手方向）の大きさにカットし、測定サンプルを用意する。それぞれの長さに満たない場合は、最大長でカットする。この測定サンプルには、Ｗ字状への変形のしやすさ及び装着感の双方が何れも高評価であるサンプルナンバー７を適用し、以下の表２に示すように、水スプレー量がそれぞれ異なるものを用意した。
具体的には、水スプレーを実施しない（水スプレー量０〔ｇ/ｍ^２〕）サンプルナンバー７、水スプレー量が１０〔ｇ/ｍ^２〕のサンプルナンバー７Ａ、水スプレー量が２０〔ｇ/ｍ^２〕のサンプルナンバー７Ｂ、水スプレー量が４０〔ｇ/ｍ^２〕のサンプルナンバー７Ｃを用意した。
（２）次に、測定サンプルの幅方向端において、吸収体を挟む肌面側ティシュと非肌面側ティシュとの間で剥がす。
（３）次に、幅方向端で剥がしたそれぞれの端を剥離試験機（ストログラフ）のチャックの上下に挟み、エンボス部分の剥離強度を測定する。

この結果、以下の表２に示すような結果が得られた。

剥離強度は高いほうが使用時にエンボス加工により形成される溝を維持できる。表２に示すように、サンプルナンバー７、サンプルナンバー７Ａ、サンプルナンバー７Ｂは、子音順に水スプレー量が０→１０→２０(いずれも単位は〔ｇ/ｍ^２〕）と水スプレー量が増えるほど剥離強度が高くなっている。しかし、サンプルナンバー７Ｂよりも水スプレー量をさらに増やしたサンプルナンバー７Ｃは水スプレー量が増えているにもかかわらず剥離強度が低下している。

水スプレー量を増加させていくと水分の粘性や表面張力によってマット１２を構成するパルプの繊維同士が一時的にくっつきやすくなりエンボス加工したエンボス部（溝）の剥離強度は増加するが、水スプレー量を増加させ過ぎると、マット１２内のＳＵＰが水を吸収してしまうために剥離強度が低下するものと考えられる。

このような結果から、製造工程の水スプレー工程において、１～６０〔ｇ/ｍ^２〕の範囲で水をスプレーで付与する場合において、水スプレー量は１～３５〔ｇ/ｍ^２〕が好ましく、１２～３５〔ｇ/ｍ^２〕がより好ましい。
なお、水スプレーと併せてエンボス部分にホットメルト接着剤を付与してもよい。

［３．作用及び効果］
上述したように紙おむつが構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
エンボス部２０が形成されることにより、図５に示すように、股下部１Ｂにおいて、マット１２の横断面が「Ｗ」字状に屈曲してマット１２の幅方向中央を肌面側に突出する。このため、着用者の肌面とマット１２との密着性が高まって、排泄物の吸収性を高めることができる。また、マット１２の幅方向端縁部も肌面側に突出するため、マット１２の幅方向端縁部からの排泄物の漏出を抑制することもできる。

本実施形態の場合、ズレ止めギャザー３２の第２弾性部材４２によってマット１２が長手方向に収縮されることで、マット１２が肌面側に持ち上げられ、エンボス部２０でのマット１２の折り曲げを確実に保持することができる。
よって、装着状態において紙おむつ１の股下部１Ｂが所定形状に折り曲げて保持され、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を向上させることができる。

吸収性物品本体１２０の剛性特性（主としてマット１２の剛性特性）として、Ｗ字状の折れ曲がり形状を変形するように幅方向の両端を、吸収性物品本体１２０の断面厚さＴｍｍ（＝７ｍｍ）に対して、４×Ｔ×１．２５ｍｍ（＝３５ｍｍ）まで圧縮したときの吸収体反力（吸収性物品本体１２０の反力）が、２．０Ｎ以下とされているので、装着者に圧迫感を与え装着感を低下させるおそれが回避され、良好な装着感を得られるようになる。

さらに、吸収体反力が１．５Ｎ以下とされていれば、より良好な装着感を得られるようになる。
また、吸収体反力が１．０Ｎ以上とされているので、Ｗ字状の折れ曲がり形状に適正に変形させることができる。

なお、マット１２の剛性特性の設定基準としては、サンプル１２´に替えて本実施形態と同様の縦サイズで且つ中心線の片側半部のＶ字状の折れ曲がり形状サンプルを用意して、これを吸収性物品本体１２０の断面厚さＴｍｍに対して２×Ｔ×１．２５ｍｍまで圧縮したときの吸収体反力が、２．０Ｎ以下（好ましくは、１．５Ｎ以下）で且つ１．０Ｎ以上に設定するようにしてもよい。

［ＩＩ．その他］
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態を以下のように変形して実施してもよい。
例えば上記実施形態では、レッグギャザー３１とズレ止めギャザー３２と立体ギャザー３３の３つのギャザー及びウェストギャザー３４を装備しており、これらによる効果を得られるが、こられのギャザーは必須ではない。

また、上記実施形態では、マット１２の折れ曲がり形状となるように案内する案内構造としてエンボス部２０を設けているが、案内構造としてはマット１２を部分的に薄肉化したり材料構成を変えたりして剛性を低下させればよい。

また、本実施形態では、マット（吸収体）１２を内蔵し、別体のマット（吸収体）５０を着脱できる吸収性物品用装着体（吸収性物品）を例示したが、本発明は、マット（吸収体）１２を内蔵し、別体のマット（吸収体）を着脱できない吸収性物品用装着体（吸収性物品）にも適用できる。

１ 吸収性物品用装着体としての紙おむつ（吸収性物品）
１Ａ 前身頃
１Ｂ 股下部
１Ｃ 後身頃
１Ｓ 紙おむつ（吸収性物品）１の幅方向の外側の縁部
２ 止着テープ
３ フロントパッチ
１０ サイドシート（肌面側シート）
１０Ｓ サイドシート１０の内側延設部
１１ トップシート（肌面側シート）
１２ マット（吸収体）
１３ バックシート（第１非肌面側シート）
１４ カバーシート（第２非肌面側シート）
２０ エンボス部（溝状部）
３１ レッグギャザー
３１Ａ レッグギャザーの形成領域（レッグギャザー領域）
３２ 内側ギャザーとしてのズレ止めギャザー（サポートギャザー）
３２Ａ 内側ギャザーとしてのズレ止めギャザーの形成領域（ズレ止めギャザー領域）
３３ 立体ギャザー
３３Ａ 立体ギャザーの形成領域（立体ギャザー領域）
４１ 第１弾性部材
４１ａ，４１ｂ 第１線状弾性体
４２ 第２弾性部材
４２ａ，４２ｂ，４２ｃ 第２線状弾性体
３３ 立体ギャザー
３４ ウェストギャザー
４３ 第３弾性部材
４３ａ，４３ｂ 第３線状弾性体
５１，５２ Ｖ字部
１００ 装着体
１２０ 吸収性物品本体（紙おむつ本体）
Ｃ 幅の中心線（幅方向の中心）

Claims (4)

1. 互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有する吸収性物品としての紙おむつに配備され、吸収体の両面にシートが配置されてなる吸収性物品本体であって、
   前記吸収体は、前記吸収性物品の前記幅方向の中心線の部分を除き且つ前記中心線に対して対称の位置の肌面側に、前記長手方向に延びる二本の溝状部を有し、
   前記吸収性物品本体の前記中心線の部分で前記長手方向に稜をなし、前記肌面側に突出するように折り曲げ、
   さらに前記溝状部で前記長手方向に稜をなし、非肌面側に突出するように折り曲げ、
   前記吸収性物品本体の厚さＴｍｍに対して、４×Ｔ×１．２５ｍｍまで圧縮したときの前記吸収性物品本体の反力が、２．０Ｎ以下であり、
   前記吸収性物品本体の反力は、所定のサイズの前記吸収性物品本体のサンプルを圧縮試験して得られた測定値であり、
   前記圧縮試験の条件は、ロードセルを１００Ｎ、試験速度を４０ｍｍ／ｍｉｎ、荷重レンジを×２０（５Ｎ）とされる
   ことを特徴とする吸収性物品本体。
2. 前記吸収性物品本体の反力が１．５Ｎ以下である
   ことを特徴とする請求項１に記載の吸収性物品本体。
3. 前記吸収性物品本体の反力が１．０Ｎ以上である
   ことを特徴とする請求項１又は２に記載の吸収性物品本体。
4. 前身頃、股下部、後身頃を長手方向に順に備え、
   前記長手方向が着用者の股下の前後方向に沿うように配置される装着体と、
   前記長手方向が前記着用者の股下の前記前後方向に沿うように前記装着体に配置される、請求項１～３の何れか１項に記載の吸収性物品本体と、を有する
   ことを特徴とする吸収性物品。

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