JP7441263B2 - 無電解Co-Wめっき皮膜、および無電解Co-Wめっき液 - Google Patents

無電解Co-Wめっき皮膜、および無電解Co-Wめっき液 Download PDF

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Description

本発明は無電解Co-Wめっき皮膜、および無電解Co-Wめっき液に関する。
半導体の製造工程では、基板に形成した配線パッドなどの導体を構成する金属材料に溶融はんだが拡散することを防止するために、はんだ処理前に導体上に例えば無電解Niめっき処理が行われている。しかしながらはんだ材料の鉛フリー化に伴ってはんだ処理温度が高温化しているため、溶融はんだが金属材料に拡散し、配線パッドの導電性が著しく低下するなどはんだ接合部の接続信頼性が悪化していた。
上記問題の対策として例えば高リンタイプのNi-Pめっき液を用いて基板の金属材料上に厚さ10μm程度の無電解Ni-Pめっき皮膜が形成されている。
また無電解Ni-Pめっき皮膜とはんだとの濡れ性を改善する技術として例えば基板の金属材料上に無電解Ni-Pめっき皮膜と、膜厚0.05μm程度の無電解Auめっき皮膜を積層させる技術が汎用されている(Ni/Au皮膜)。
しかしながら鉛フリーはんだを使用するとリフローの繰り返しによりNiめっき皮膜が消失したり、密着性が低下して接合部の接続信頼性が低下することが指摘されており、その対策として例えば特許文献1には、Ni/Au皮膜の金めっき層の厚みを制御することが開示されている。また特許文献2にはNi/Au皮膜のNiめっき皮膜表面のNiを除去してPリッチな表層を形成することが開示されている。
特開2002-327279号公報 特開2010-147245号公報
近年、半導体基板の高密度実装への要求から導体の狭ピッチ化や微配線化が進んでおり、はんだ接合部も薄膜化が求められている。しかしながら無電解Ni-Pめっき皮膜を薄膜化すると熱履歴によって溶融はんだが導体を構成する金属材料に拡散してしまうため無電解Ni-Pめっき皮膜の薄膜化は難しかった。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、溶融はんだが導体を構成する金属材料に拡散することを防止できる新たな無電解めっき皮膜、および該無電解めっき皮膜に適した無電解めっき液を提供することである。
上記課題を解決し得た本発明の無電解Co-Wめっき皮膜は以下の構成を有する。
[1]無電解Co-Wめっき皮膜であって、前記無電解Co-Wめっき皮膜中のW含有量が35~58質量%、且つ前記無電解Co-Wめっき皮膜の膜厚は0.05μm以上である無電解Co-Wめっき皮膜。
[2]前記無電解Co-Wめっき皮膜は、非晶質である[1]に記載の無電解Co-Wめっき皮膜。
[3]さらにBを含む[1]または[2]に記載の無電解Co-Wめっき皮膜。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の無電解Co-Wめっき皮膜を含む積層めっき皮膜であって、
電気Niめっき皮膜、または無電解Ni-Pめっき皮膜を含むものである積層めっき皮膜。
[5]前記無電解Ni-Pめっき皮膜中のP含有量が10~13質量%である[4]に記載の積層めっき皮膜。
[6]前記電気Niめっき皮膜、または前記無電解Ni-Pめっき皮膜の膜厚は、0.5~5μmである[4]または[5]に記載の積層めっき皮膜。
[7]被めっき物表面に接して[1]~[3]のいずれかに記載の無電解Co-Wめっき皮膜が形成されているめっき基材。
[8]被めっき物に[4]~[6]のいずれかに記載の積層めっき皮膜が形成されためっき基材であって、
前記無電解Co-Wめっき皮膜は前記被めっき物表面に接して形成されており、
前記電気Niめっき皮膜、または無電解Ni-Pめっき皮膜は前記無電解Co-Wめっき皮膜表面に接して形成されているめっき基材。
[9][1]~[3]のいずれかに記載の無電解Co-Wめっき皮膜を形成するためのめっき液であって、
水溶性コバルト塩、および水溶性タングステン塩と;
ジアルキルアミンボランと;
を含む無電解Co-Wめっき液。
[10]前記無電解Co-Wめっき液中の
前記水溶性コバルト塩濃度(Co換算)は0.2g/L以上、5g/L以下;
前記水溶性タングステン塩濃度(W換算)は1g/L以上、23g/L以下;
である[9]に記載の無電解Co-Wめっき液。
[11]前記無電解Co-Wめっき液中の前記ジアルキルアミンボラン濃度は1.7~8.4g/Lである[9]または[10]に記載の無電解Co-Wめっき液。
本発明の無電解Co-Wめっき皮膜を用いれば、溶融はんだが導体を構成する金属材料(以下、導体という)に拡散することを防止できる。また本発明によれば該無電解Co-Wめっき皮膜に適した無電解Co-Wめっき液を提供できる。
図1は本発明のめっき基材の概略断面図である。 図2は本発明のめっき基材の概略断面図である。 図3は実施例1の試料断面の図面代用写真である。
本発明者らは溶融はんだが導体に拡散することを防止できるバリア効果を発揮する無電解めっき皮膜について検討を重ねた。その結果、下記条件を満足する無電解Co-Wめっき皮膜は、溶融はんだに対するバリア効果を発揮することを見出した。また本発明者らが検討した結果、無電解Co-Bめっき皮膜など、無電解Co-Wめっき皮膜以外の無電解めっき皮膜ではバリア効果が得られないことがわかった。無電解Co-Wめっき皮膜以外の無電解めっき皮膜ではバリア効果が得られない理由は様々考えられるが、例えば無電解めっき皮膜の形成過程で発生する水素ガスなどに起因して無電解めっき皮膜に生じた欠陥などから溶融はんだが浸入すること等が挙げられる。
優れたバリア効果を発揮する本発明の無電解Co-Wめっき皮膜は、
無電解Co-Wめっき皮膜中のW含有量が35~58質量%であり、無電解Co-Wめっき皮膜の膜厚が0.05μm以上である。
以下、本発明の無電解Co-Wめっき皮膜について説明する。
無電解Co-Wめっき皮膜の組成:W含有量35~58質量%
本発明の無電解Co-Wめっき皮膜中のW(タングステン)含有量は35~58質量%である。W含有量を上記範囲にするとバリア効果に加えて被めっき物との密着性向上効果が得られる。W含有量が35~58質量%を外れるとバリア効果が得られず、また密着性向上効果も得られない。特にW含有量が少なすぎると緻密、且つ均一な無電解Co-Wめっき皮膜であってもバリア効果が得られない。
無電解Co-Wめっき皮膜中のW含有量は好ましくは55質量%以下、より好ましくは53質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下であって、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。
本発明の無電解Co-Wめっき皮膜中のCo含有量は特に限定されず、Co含有量は上記W含有量を除いた残部、または上記W含有量と第三成分を除いた残部であってもよく、好ましくは37質量%以上、より好ましくは42質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上、よりさらに好ましくは50質量%以上であって、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。第三成分を含む場合はこれら数値から下記第三成分含有量を除いた値が好ましい。
本発明の無電解Co-Wめっき皮膜には、バリア効果を阻害しない範囲でCo(コバルト)、W(タングステン)以外の合金成分(第三成分)が含まれていてもよい。第三成分としては例えばB(ボロン)などが挙げられる。
本発明では第三成分を積極的に添加しない場合でも、めっき液などに由来してめっき皮膜中に含まれることがある。例えばBは、無電解Co-Wめっき皮膜の形成に使用する無電解Co-Wめっき液中の還元剤に由来して含まれることがある。
第三成分含有量が多くなりすぎるとめっき皮膜の性質が変化してバリア効果が得られなくなることがあるため、第三成分含有量は、好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0質量%(含まない)である。
無電解Co-Wめっき皮膜の膜厚:0.05μm以上
バリア効果を発揮するためには緻密な無電解Co-Wめっき皮膜を所定の膜厚で被めっき物に均一に形成する必要がある。膜厚が0.05μm未満の場合、拡散防止効果が得られない。膜厚が薄すぎると例えば緻密な無電解Co-Wめっき皮膜を均一に形成できず、被めっき物の一部に無電解Co-Wめっき皮膜で被覆されていない空隙(ボイド)が生じて溶融はんだが導体に拡散する。また膜厚が薄すぎると導体などの被めっき物の表面に疵や凹部などの欠陥があった場合、該欠陥部分は被覆されず、溶融はんだが拡散する。また例えば膜厚が薄すぎると密着性向上効果も得られない。
無電解Co-Wめっき皮膜の膜厚は0.05μm以上必要であり、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上である。無電解Co-Wめっき皮膜の上限はバリア効果の観点からは限定されないが、はんだ接合部の薄膜化を考慮すると好ましくは0.6μm以下、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.25μm以下である。
無電解Co-Wめっき皮膜の膜質
本発明の無電解Co-Wめっき皮膜の膜質は結晶質、非晶質いずれでもよいが、好ましくは非晶質である。非晶質膜は結晶粒界からの溶融はんだの浸入がないため結晶質の無電解Co-Wめっき皮膜よりも一層優れたバリア効果を発揮する。
電気Niめっき皮膜、または無電解Ni-Pめっき皮膜
本発明は、上記無電解Co-Wめっき皮膜と、電気Niめっき皮膜、または無電解Ni-Pめっき皮膜とを含む積層めっき皮膜としてもよい。電気Niめっき皮膜、または無電解Ni-Pめっき皮膜(以下、両者をまとめてNiめっき皮膜ということがある)を形成するとはんだ濡れ性を向上できる。めっき皮膜の形成順序は、基板側から順に無電解Co-Wめっき皮膜、Niめっき皮膜である。Niめっき皮膜ははんだと接する最表面に形成することで積層めっき皮膜は優れためっき濡れ性を発揮する。
無電解Ni-Pめっき皮膜中のP含有量は所望の効果が得られるように適宜調整すればよく、低リンタイプ(P含有量:8質量%以下)、中リンタイプ(P含有量:8質量%超~10質量%未満)、高リンタイプ(P含有量:10~13質量%)のいずれでもよい。本発明では結晶構造がアモルファスとなる高リンタイプの無電解Ni-Pめっき皮膜が好ましい。無電解Ni-Pめっき皮膜がアモルファス構造を有すると良好な耐食性や耐酸性が得られる。中リンタイプの無電解Ni-Pめっき皮膜は微結晶構造とアモルファス構造とを有するため耐食性に劣ることがある。また低リンタイプの無電解Ni-Pめっき皮膜は微結晶構造であり、耐食性に劣ることがある。なお、本発明では無電解Ni-Pめっき皮膜の耐食性を向上する観点から硫黄を含まないことが好ましい。
Niめっき皮膜の膜厚は限定されないが、膜厚を厚くするとNiめっき皮膜の上記効果が向上する。一方、Niめっき皮膜の膜厚を過剰に厚くしても得られる効果は飽和する。本発明ではバリア効果を有する無電解Co-Wめっき皮膜を被めっき物側に形成しているため、Niめっき皮膜の膜厚が従来よりも薄くても溶融はんだが導体に拡散しない。
Niめっき皮膜の膜厚は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.7μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上、よりさらに好ましくは2.0μm以上であって、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。
めっき基材
本発明には被めっき物表面に接して無電解Co-Wめっき皮膜が形成されているめっき基材も含む。本発明の無電解Co-Wめっき皮膜はバリア効果によって溶融はんだが無電解Co-Wめっき皮膜を透過することを防止できる。図1に示す様に無電解Co-Wめっき皮膜3は基板1上に形成された導体2表面に接して形成されていてもよいし、図示しないが必要に応じて導体表面に任意のめっき皮膜を形成した場合は、該任意のめっき皮膜表面に接して形成されていてもよい。
導体表面に本発明の無電解Co-Wめっき皮膜を形成すると、バリア効果に加えて導体に対して無電解Co-Wめっき皮膜の高い密着性が得られるため好ましい。上記所定の要件を満足する本発明の無電解Co-Wめっき皮膜は導体を構成する金属材料、特にAl、Al基合金、Cu、Cu基合金との密着性に優れた効果を有する。
また本発明の好ましい構成として、さらに上記Niめっき皮膜が形成されためっき基材も含む。積層めっき皮膜とする場合、基板側から順に上記無電解Co-Wめっき皮膜と、該無電解Co-Wめっき皮膜表面に接して形成されたNiめっき皮膜との2層構成が好ましく、本発明では必要に応じて任意のめっき皮膜を含む3層以上としてもよい。2層構成とする場合は、図2に示す様に基板1上に形成された導体2表面に接して無電解Co-Wめっき皮膜3が形成されており、該無電解Co-Wめっき皮膜3の表面に接してNiめっき皮膜4が形成されている構成が好ましい。
任意のめっき皮膜は、無電解Co-Wめっき皮膜の下層(導体側)、無電解Co-Wめっき皮膜とNiめっき皮膜の間、Niめっき皮膜の上層(導体と反対側)など、任意の位置に1層以上設けてもよい。
任意のめっき皮膜としては、例えば無電解Auめっき皮膜、および/または無電解Pdめっき皮膜などが挙げられる。無電解Auめっき皮膜ははんだと接する最表層に設けるとはんだ濡れ性を向上できる。また無電解Pdめっき皮膜は無電解Auめっき皮膜の下層に設けると無電解Pdめっき皮膜の下層側で溶融金属が生じても該溶融金属が上層側のめっき皮膜、例えば無電解Auめっき皮膜に拡散することを防止できる。
本発明のめっき基材は、めっき皮膜全体の膜厚が従来よりも薄いため、例えばプリント基板、半導体チップなどの各種電子部品における薄膜化に寄与する。
以下、本発明の無電解Co-Wめっき皮膜の形成方法について説明する。
本発明では被めっき物に必要に応じて脱脂や活性化などの前処理を行った後、無電解Co-Wめっき皮膜を形成することが望ましい。
被めっき物としては、例えば基板の表面に形成された例えば電極や配線などの導体を構成する金属材料;導体に形成された任意のめっき皮膜が挙げられる。
導体に形成された任意のめっき皮膜は、例えばAl、Al基合金などのAlめっき皮膜、Cu、Cu基合金などのCuめっき皮膜、Ni、Ni基合金などのNiめっき皮膜が挙げられる。
導体を構成する金属材料としては、無電解Co-Wめっき皮膜を形成できるものであればよく、例えばAlやAl基合金、CuやCu基合金など各種公知の金属材料が挙げられ、好ましくはCu、またはCu基合金である。合金成分としては、例えばZn、Sn、Al、Cu、Be、Fe、Mnなど各種公知の合金成分が例示される。合金成分は1種、または2種以上併用してもよい。
基板としては例えば樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板、ウエハ基板などの各種公知の絶縁基板が挙げられる。
前処理としては、被めっき物の材質に応じた公知の前処理を採用できる。前処理としては例えば脱脂処理、ソフトエッチング処理、酸洗処理、プレディップ処理等が例示され、必要に応じて適宜選択することができる。また上記処理後は必要に応じて水洗処理をしてもよい。各前処理には各種公知の処理方法、処理条件を採用できる。
無電解Co-Wめっき処理
無電解Co-Wめっき処理は、被めっき物を無電解Co-Wめっき液に浸漬して無電解Co-Wめっき皮膜を形成する。被めっき物の浸漬時間は特に限定されず、上記所定の膜厚の無電解Co-Wめっき皮膜を形成できればよい。無電解Co-Wめっき処理では、必要に応じてめっき液の撹拌や被めっき物の揺動を行ってもよい。
無電解Co-Wめっき液
本発明の無電解Co-Wめっき液は水溶性コバルト塩と水溶性タングステン塩を必須成分として含む。本発明の無電解Co-Wめっき液を用いて被めっき物に無電解Co-Wめっき処理を施すと、被めっき物表面に上記無電解Co-Wめっき皮膜を形成できる。本発明では無電解Co-Wめっき皮膜によるバリア効果を得るためには、処理時の無電解Co-Wめっき液の組成、温度、pH、処理時間などを適切に制御して上記各要件を満足する無電解Co-Wめっき皮膜を形成する必要がある。
水溶性コバルト塩
水溶性コバルト塩は、コバルトイオン供給源である。コバルトイオンはタングステンイオンと共にバリア層として機能するめっき皮膜成分である。
コバルトイオンの供給源は、コバルトイオンを放出する水溶性コバルト化合物であればよく、好ましくは水溶性コバルト塩である。
水溶性コバルト塩としては、例えば硫酸コバルト、塩化コバルトなどの無機の水溶性コバルト塩;炭酸コバルト、酢酸コバルトなどの有機の水溶性コバルト塩が例示される。好ましいコバルト化合物は、無機の水溶性コバルト塩であり、より好ましくは硫酸コバルトである。これらは1種、あるいは2種以上併用できる。
無電解Co-Wめっき液中の水溶性コバルト塩の濃度(Co換算)は、水溶性コバルト塩の濃度を高くすることによってめっき速度を向上できると共に、得られる無電解Co-Wめっき皮膜がより一層優れたバリア効果を発揮する。水溶性コバルト塩の濃度が高すぎると無電解Co-Wめっき液の安定性低下の原因になることがある。
無電解Co-Wめっき液中の水溶性コバルト塩の濃度(単独で含むときは単独の濃度であり、2種以上併用するときは合計濃度である:Co換算)は、好ましくは0.2g/L以上、より好ましくは1.0g/L以上、さらに好ましくは1.5g/L以上であって、好ましくは5g/L以下、より好ましくは3g/L以下、さらに好ましくは2.5g/L以下である。
なお、本発明のめっき液の組成分析は、ICP発光分光分析装置を用いて行う。
水溶性タングステン塩
水溶性タングステン塩はタングステンイオン供給源である。タングステンイオンはコバルトイオンと共にバリア層として機能するめっき皮膜成分である。
タングステンイオンの供給源は、タングステンイオンを放出するタングステン化合物であればよく、好ましくは水溶性タングステン塩である。
水溶性タングステン塩としては、例えば塩化タングステン、タングステン酸、タングステン酸塩などが例示され、タングステン酸塩としては、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム等が例示される。これらは単独、または2種以上併用できる。
無電解Co-Wめっき液中のタングステン塩の濃度(W換算)は、タングステン塩の濃度を高くするとめっき析出速度を向上できると共に、得られる無電解Co-Wめっき皮膜がより一層優れたバリア機能を発揮する。タングステン塩の濃度が高すぎると無電解Co-Wめっき液の安定性低下の原因になることがある。
無電解Co-Wめっき液中の水溶性タングステン塩の濃度(単独で含むときは単独の濃度であり、2種以上併用するときは合計濃度である:W換算)は、好ましくは1g/L以上、より好ましくは3.5g/L以上、さらに好ましくは5.0g/L以上、よりさらに好ましくは7.0g/L以上であって、好ましくは23g/L以下、より好ましくは20g/L以下、さらに好ましくは15g/L以下、よりさらに好ましくは9g/L以下である。なお、水溶性タングステン塩の濃度が9g/L以下であれば、非晶質の無電解Co-Wめっき皮膜が得られるため特に好ましい。
還元剤
本発明に用いられる還元剤は、コバルトイオン、及びタングステンイオンの還元析出作用を有すればよい。還元剤としては、例えば次亜リン酸;次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸アンモニウムなどの次亜リン酸塩;炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、中性硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン塩、ヒドラジンなどのヒドラジン類;ジアルキルアミンボランなどが挙げられる。これらの中でも非晶質の無電解Co-Wめっき皮膜を形成できるジアルキルアミンボランが好ましい。
なお、無電解Co-Wめっき液を用いた無電解めっき皮膜にはジアルキルアミンボランに由来してBが含まれる。
ジアルキルアミンボランとしてはジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン等が例示され、好ましくはジメチルアミンボランである。ジアルキルアミンボランは1種、あるいは2種以上用いることができる。
無電解Co-Wめっき液中の還元剤の濃度は、還元剤の種類によって異なるが、十分な還元作用が得られる濃度に調整することが望ましい。めっき析出速度を考慮すると還元剤濃度は高くすることが望ましいが、還元剤の濃度が高くなりすぎるとめっき液の安定性が低下することがある。特にジアルキルアミンボラン、好ましくはジメチルアミンボラン濃度を高めることでスキップ現象などのめっき不良をより一層抑制して、無電解Co-Wめっき皮膜が被めっき物に緻密、すなわち未析出部分なく形成されており、またカジリなどの外観ムラがない均一な無電解Co-Wめっき皮膜を形成できる。ジアルキルアミンボランの濃度が高すぎると、浴安定性が低下することがある。
めっき液中のジアルキルアミンボランの濃度(単独で含むときは単独の濃度であり、2種以上併用するときは合計濃度である)、好ましくはジメチルアミンボランの濃度は、好ましくは1.7g/L以上、より好ましくは3.0g/L以上、さらに好ましくは4.0g/L以上であって、好ましくは8.4g/L以下、より好ましくは8g/L以下である。
錯化剤
本発明の無電解Co-Wめっき液は、錯化剤を含むことが好ましい。錯化剤はコバルトおよびタングステンの沈殿防止と、コバルトおよびタングステンの析出反応制御に有効である。
本発明では上記効果を奏する錯化剤であれば特に限定されない。錯化剤としては例えばクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、マロン酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸等の有機酸;グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸類;エチレンジアミン、トリエタノールアミン、EDTA等のアミン類が挙げられる。錯化剤は1種、または2種以上用いることができる。
無電解Co-Wめっき液中の錯化剤の濃度は低すぎるとCoやWの沈殿やめっき液の分解が生じることがある。錯化剤の濃度が高すぎると無電解Co-Wめっき皮膜が形成されない部分が生じることがある。
錯化剤の濃度は所望の効果が得られるように適宜調整すればよく、好ましくは0.001mol/L以上、より好ましくは0.005mol/L以上、さらに好ましくは0.01mol/L以上であって、好ましくは1mol/L以下、より好ましくは0.5mol/L以下、さらに好ましくは0.1mol/L以下である。
なお、めっき液調製用の原料として入手可能な水溶性コバルト塩溶液や水溶性タングステン塩溶液には予め錯化剤が含まれていることがある。原料に由来して無電解Co-Wめっき液に十分な錯化剤が含まれていれば添加不要であるが、必要に応じて調製後の無電解Co-Wめっき液に錯化剤を添加してもよい。
本発明の無電解Co-Wめっき液は、上記成分を溶媒、好ましくは水に溶解させて調製される。本発明の無電解Co-Wめっき液には必要に応じて各種公知の添加剤を含んでもよい。例えば安定剤、pH調整剤、界面活性剤などが挙げられる。なお、これら添加剤も原料に由来して無電解Co-Wめっき液に含まれることがある。
添加剤などの任意の成分の含有量は特に限定されないが、本発明の無電解Co-Wめっき液の浴安定性や形成した無電解Co-Wめっき皮膜のバリア性や密着性等を阻害しない範囲であることが望ましい。
安定剤
安定剤としては、めっき液の安定性に効果を有する各種公知の安定剤を使用できる。
安定剤としては、例えば硝酸鉛、酢酸鉛などの鉛化合物;硝酸カドミウム、酢酸カドミウムなどのカドミウム化合物;硝酸タリウム、硝酸タリウムなどのタリウム化合物;塩化アンチモン、酒石酸アンチモニルカリウムなどのアンチモン化合物;酸化クロム、硫酸クロムなどのクロム化合物などが挙げられる。
安定剤は単独、または2種以上併用できる。
無電解Co-Wめっき液中の安定剤濃度は特に限定されず、安定性向上効果が得られる程度であればよい。安定剤の濃度(単独で含むときは単独の濃度であり、2種以上併用するときは合計濃度である)は好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上であって、好ましくは100mg/L以下、より好ましくは10mg/L以下である。
pH調整剤
pH調整剤としては、めっき液のpHを所定の値に調整する効果を有する各種公知のpH調整剤を使用できる。
pH調整剤としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等のアルカリを用いることができる。
無電解Co-Wめっき液のpHは低すぎるとコバルト、タングステンの析出速度が低下して無電解Co-Wめっき皮膜の成膜性が低下すると共に、皮膜表面にポアなどの欠陥が生じることがある。一方、pHが高すぎるとコバルト、タングステンの析出速度が過度に早くなって膜厚制御が困難になることがある。
無電解Co-Wめっき液のpHは、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは9以上であって、好ましくは12以下、より好ましくは11以下、さらに好ましくは10以下である。
界面活性剤
界面活性剤としては、例えばノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性などの各種公知の界面活性剤を単独、または2種以上併用できる。
無電解Co-Wめっき液中の界面活性剤濃度は特に限定されず、添加効果が得られる程度であればよい。界面活性剤の濃度(単独で含むときは単独の濃度であり、2種以上併用するときは合計濃度である)は好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上であって、好ましくは100mg/L以下、より好ましくは10mg/L以下である。
温度
無電解Co-Wめっき液の処理時の液温は、所望の膜厚を形成できるように処理時間を考慮しながら適宜設定すればよい。液温が低すぎると析出速度が遅くなることがある。一方、液温が高すぎると析出速度が過剰になったり、めっき液からの水分蒸発量が多くなって液組成が変動することがある。
無電解Co-Wめっき液の液温は、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは50℃以上、よりさらに好ましくは60℃以上であって、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは75℃以下である。
上記無電解Co-Wめっき処理によって、被めっき物表面に本発明の無電解Co-Wめっき皮膜を形成できる。
後処理
無電解Co-Wめっき処理後の被めっき物には必要に応じて、各種公知の後処理を施してもよい。
例えば、必要に応じて酸洗処理、水洗処理を施し、無電解Co-Wめっき皮膜に残存する不要なめっき成分等を除去してもよい。酸洗処理には各種公知の酸洗方法、酸洗条件を採用できる。
Co-Wめっき皮膜を形成した被処理物には、さらに無電解Ni-Pめっき皮膜、または電気Niめっき皮膜を形成してもよい。無電解Ni-Pめっき皮膜、または電気Niめっき皮膜を形成するとはんだ濡れ性を向上させることができる。
無電解Ni-Pめっき処理
無電解Ni-Pめっき処理を行うと無電解Co-Wめっき皮膜表面にニッケルが析出すると共に、リンが共析されて無電解Ni-Pめっき皮膜が形成される。無電解Ni-Pめっき処理条件は、各種公知の無電解Ni-Pめっき液、めっき処理条件を採用できる。
無電解Ni-Pめっき液
無電解Ni-Pめっき液の組成は、用途に応じた組成を使用でき、特に限定されない。無電解Ni-Pめっき液は例えば水溶性ニッケル塩と、還元剤とを含むめっき液が好ましい。
水溶性ニッケル塩は、ニッケルイオン供給源であってニッケルイオンを放出する各種公知の水溶性ニッケル塩を使用できる。水溶性ニッケル塩は、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル等の無機の水溶性ニッケル塩、及び酢酸ニッケル、リンゴ酸ニッケル等の有機の水溶性ニッケル塩等が挙げられる。これらは1種、あるいは2種以上併用できる。
無電解Ni-Pめっき液中の水溶性ニッケル塩の濃度は、用途に応じて適宜選択できる。水溶性ニッケル塩の濃度を高くすることによって無電解Ni-Pめっき皮膜の析出速度を向上できる。水溶性ニッケル塩の濃度が高すぎるとめっき液の安定性が低下したり、形成した皮膜にピットが生じてしまうことがある。
無電解Ni-Pめっき液中の水溶性ニッケル塩の濃度(Ni換算)の下限は、0.5g/L以上、1g/L以上、2g/L以上、3g/L以上の順に濃度が高い程好ましい。また水溶性ニッケル塩の濃度の上限は20g/L以下、15g/L以下、10g/L以下の順に濃度が低い程好ましい。
還元剤
還元剤は、公知の無電解ニッケルめっき液用のリン含有還元剤を使用できる。還元剤は例えば、次亜リン酸ナトリウム(次亜リン酸ソーダ)、次亜リン酸カリウム等の次亜リン酸塩が挙げられる。
還元剤の濃度を適切に調整すると、めっき液中でのニッケルイオンの還元が遅くなり、成膜に時間がかかってしまうことやめっき液の分解等をより効果的に防止できる。
例えば次亜リン酸塩の濃度は、好ましくは10g/L以上であって、好ましくは40g/L以下、より好ましくは35g/L以下である。
無電解Ni-Pめっき液中のリン濃度は低リンタイプ(P含有量:1~4質量%)、中リンタイプ(4質量%超~10質量%未満)、高リンタイプ(10質量%~13質量%)のいずれも使用可能であり、用途に応じて適宜選択すればよい。
錯化剤
錯化剤は、ニッケル化合物の沈殿を防止すると共に、ニッケルの析出反応を適度な速度とするために有効な成分であり、公知の無電解ニッケルめっき液において用いられている各種公知の錯化剤を用いることができる。錯化剤としては、例えばグリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸;乳酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸等のモノカルボン酸;酒石酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸等のジカルボン酸;クエン酸等のトリカルボン酸などが挙げられ、これら例示の塩も含まれる。また塩としては、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩;カルシウムなどのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩が例示される。なお、これらは1種、または2種以上併用できる。
錯化剤の濃度を適切に調整すると、水酸化ニッケルの沈殿、酸化還元反応が速すぎることによるめっき液の分解等を防止できる。またニッケルめっき皮膜の析出速度が遅くなることや、めっき液の粘度が高くなることによる均一析出性の低下等を防止できる。
錯化剤の濃度は、好ましくは0.001mol/L以上、より好ましくは0.002mol/L以上であって、好ましくは2mol/L以下、より好ましくは1mol/L以下である。
なお、めっき液調製用の原料として入手可能な水溶性ニッケル塩溶液には予め錯化剤が含まれていることがある。原料に由来して無電解Ni-Pめっき液に十分な錯化剤が含まれていれば添加不要であるが、必要に応じて調製後の無電解Ni-Pめっき液に錯化剤を添加してもよい。
添加剤
本発明の無電解Ni-Pめっき液には、必要に応じて、無電解Ni-Pめっき液に配合されている公知の各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、反応促進剤、光沢剤、界面活性剤、機能付与剤、pH調整剤、安定化剤、界面活性剤等が挙げられる。
なお、本発明では無電解Ni-Pめっき液には添加剤として硫黄系の添加剤を含まないことが好ましい。
pH
無電解Ni-Pめっき液のpHは低すぎるとニッケルの析出速度が低下して成膜性が低下すると共に、皮膜表面にポアなどの欠陥が生じることがある。一方、pHが高すぎるとニッケルの析出速度が過度に早くなって膜厚制御が困難になることがある。pHは各種公知のpH調整剤を用いて調整できる。
無電解Ni-Pめっき液のpHは、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは4.5以上であって、好ましくは8以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下である。
温度
無電解Ni-Pめっき液の処理時の液温は、所望の膜厚を形成できるように処理時間を考慮しながら適宜設定すればよい。液温が低すぎると析出速度が遅くなることがある。一方、液温が高すぎると析出速度が過剰になったり、めっき液からの水分蒸発量が多くなって液組成が変動することがある。
無電解Ni-Pめっき液の液温は、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは50℃以上であって、好ましくは95℃以下、より好ましくは93℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
電気Niめっき処理
はんだ濡れ性を向上させるために無電解Co-Wめっき皮膜表面に電気Niめっき皮膜を形成してもよい。電気Niめっき処理を行うと無電解Co-Wめっき皮膜表面にニッケルが析出されて電気Niめっき皮膜が形成される。電気Niめっき処理条件は、各種公知の電気Niめっき液、めっき処理条件を採用できる。
電気Niめっき液
電気Niめっき液の組成は、用途に応じた組成を使用でき、特に限定されない。電気Niめっき液として、例えば水溶性ニッケル塩と、緩衝剤とを含む電気Niめっき液を使用でき、例えば硫酸Niを主成分とするワット浴やスルファミン酸Niを主成分とするスルファミン酸浴などの各種公知の電気Niめっき液を使用できる。
水溶性ニッケル塩は、例えば硫酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケルなどが例示される。これらは1種、または2種以上併用できる。
水溶性ニッケル塩の濃度は高い程、電流密度を向上できるため好ましいが、高すぎるとめっき不良になることがある。
電気Niめっき液中の水溶性ニッケル塩の濃度(Ni換算)は、好ましくは5g/L以上、より好ましくは7g/L以上であって、好ましくは100g/L以下、より好ましくは50g/L以下である。
緩衝剤
緩衝剤は、電気Niめっき液に用いられる各種公知の緩衝剤を用いることができる。緩衝剤は、例えばホウ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸などの水溶性有機カルボン酸やその塩を使用できる。塩としては、アンモニウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などが例示される。これらは1種、または2種以上併用できる。
電気Niめっき液中の緩衝剤の濃度は、適宜調整すればよく、例えば好ましくは20g/L以上、より好ましくは40g/L以上であって、好ましくは100g/L以下、より好ましくは80g/L以下である。
なお、めっき液調製用の原料として入手可能な水溶性ニッケル塩溶液には予め錯化剤が含まれていることがある。原料に由来して電気Niめっき液に十分な錯化剤が含まれていれば添加不要であるが、必要に応じて調製後の電気Niめっき液に錯化剤を添加してもよい。
添加剤
電気Niめっき液には、光沢剤、平滑剤、補助電解質剤、ピット防止剤などの各種公知の添加剤を含むことができる。
pH
電気Niめっき液のpHは適切な電流効率が得られるように適宜調整すればよく、例えばpH3~6の間で制御することが好ましい。
温度
電気Niめっき液の処理時の液温は、所望の膜厚を形成できるように処理時間を考慮しながら適宜設定すればよい。液温が低すぎると析出速度が遅くなることがある。一方、液温が高すぎると析出速度が過剰になり、めっき不良の原因となることがある。
電気Niめっき液の液温は、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは50℃以上であって、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは75℃以下である。
電流密度
陰極電流密度は析出速度を向上させると共に、均一なめっき皮膜を形成する観点から適切に制御すればよく、好ましくは0.01A/dm以上、より好ましくは0.1A/dm以上であって、好ましくは100A/dm以下、より好ましくは50A/dm以下である。
陽極
陽極としては電気Niめっきの陽極として用いる各種公知のニッケル板を用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
被めっき物
被めっき物としてハルセル銅板(山本鍍金試験器社製B-60-P05)を使用し、該銅板に下記前処理を行ってから無電解Co-Wめっき処理を行った。
前処理
上記被めっき物に対し、まずクリーナー(上村工業社製ACL-007)による脱脂処理(50℃、5分)を行った。次に、100g/Lの過硫酸ナトリウム溶液(SPS)と10g/Lの硫酸(H2SO4)溶液にてソフトエッチング処理(25℃、1分)を行った。続いて、10%硫酸(H2SO4)溶液でエッチング残渣を除去する酸洗処理(25℃、1分)、3%硫酸(H2SO4)溶液でプレディップ処理(25℃、1分)を行った。
無電解Co-Wめっき処理
前処理後、被めっき物を表1に示す無電解Co-Wめっき液(上村工業社製エピタスHWB-31)に浸漬し、無電解Co-Wめっき処理をした。
実施例1、4、5、6の無電解Co-Wめっき処理液は、容器に硫酸コバルト含有液(上村工業社製エピタスHWB-31-M)500mL、イオン交換水200mL、水溶性タングステン塩含有液(上村工業社製エピタスHWB-31-W)40mL、ジメチルアミンボラン含有液(上村工業社製エピタスHWB-31-R)80mLを順次添加、攪拌した。表に示すpHとなるように20%水酸化ナトリウム溶液、または10%硫酸溶液を加えて調整した。その後、攪拌しながら表1に示す浴温になるまで加熱した。
なお、他の実施例、比較例についても表の濃度になるように各液中の濃度や添加量を調整してめっき液を作製した。
無電解Co-Wめっき処理後、得られた無電解Co-Wめっき皮膜の析出量を原子吸光光度計(日立ハイテクサイエンス社製 偏光ゼーマン原子吸光光度計 ZA3300)を用いて測定した。
無電解Co-Wめっき皮膜の膜厚は試料を膜厚方向にCP加工(イオンミリング加工)で切断し、該皮膜断面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM:日本電子社製JSM-7800F)を用いて測定した。
FE-SEMの観察条件は以下の通りである。
・測定倍率:1000~50000倍
・加速電圧:10kv
・照射電流番号:8
・検出器:BED-C
無電解Co-Wめっき皮膜の膜質はX線回折装置(リガク社製RING-2500V)を用いて薄膜法によってX線回折スペクトル測定をした。測定は任意の3箇所を測定し、3箇所全てが非晶質の場合を「非晶質」とし、結晶質が1箇所でもあれば「結晶質」と記載した。
X線回折条件は以下の通りである。
・X線
X線源:CuKα線
X線出力電圧:50kV
X線出力電流:150mA
走査範囲:20~120°
スキャンステップ幅:0.02°
スキャンスピード:3°/min
無電解Co-Wめっき皮膜の組成
無電解Co-Wめっき皮膜の組成について、X線光電子分光分析法(XPS:X-ray photoelectron spectroscopy)に基づいてX線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ社製PHI Quantera II)を用いて膜厚方向(Depth方向)に膜組成分析を行った。
測定条件は以下の通りである。
測定領域:直径100μm
エッチングレート:0.8nm/min
解析レート:3nm毎
また上記無電解Co-Wめっき皮膜の膜厚を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて断面観察した際に、エネルギー分散型X線分光器(EDS、日本電子社製JED-2300F)を用いて断面から組成分析を行った。なお、組成はXPSに基づいて判断し、EDSは確認のための参考値とした。
測定条件は以下の通りである。
モード:定性分析
点分析:Co、W
加速電圧:10kV
照射電流番号:10~12番
なお、無電解Co-Wめっき皮膜以外のめっき皮膜も同様にして測定した。
無電解Ni-Pめっき処理
実施例6以外は、上記無電解Co-Wめっき皮膜を形成した被めっき物を表1に示す条件で高リンタイプの無電解Ni-Pめっき液(上村工業社製ニムデンDX)中に浸漬して、無電解Co-Wめっき皮膜表面に厚さ1μmの無電解Ni-Pめっき皮膜を形成した試料を作製した。
得られた無電解Ni-Pめっき皮膜の析出量、及び膜厚は無電解Co-Wめっき皮膜と同様の装置を用いて測定した。
比較例3
無電解Co-Wめっき液に代えて表1の無電解Coめっき液を用いて無電解Coめっき処理を行った以外は上記実施例と同様にして無電解Coめっき皮膜、無電解Ni-Pめっき皮膜を順次形成した試料を作製した。無電解Coめっき液は上村工業社製エピタスHWB-31-MとエピタスHWB-31-Rを使用して上記無電解Co-Wめっき液と同様にして調製した。
比較例4
無電解Co-Wめっき皮膜を形成せず、被めっき物表面に上記無電解Ni-Pめっき皮膜を直接形成した試料を作成した。
各試料について、以下の特性を評価した。
(1)無電解Co-Wめっき皮膜の析出性
無電解Co-Wめっき皮膜の析出性については、試料を切断して露出させた無電解Co-Wめっき皮膜の断面を上記FE-SEMによって観察し、以下の基準で評価した。なお、測定倍率は10,000~30,000倍とした。
緻密:基材が無電解Co-Wめっき皮膜で被覆されており、未着率は0%である。
粗 :基材に無電解Co-Wめっき皮膜で被覆されていない箇所が少なくとも一部存在した(未着率0%超)。
(2)無電解Ni-Pめっき析出性
無電解Ni-Pめっき皮膜の析出性については、試料を切断して露出させた無電解Ni-Pめっき皮膜の断面を上記FE-SEMを用いて測定倍率10,000~30,000倍で観察し、以下の基準で評価した。
緻密:無電解Co-Wめっき皮膜が無電解Ni-Pめっき皮膜で被覆されており、未着率は0%である。
粗 :無電解Co-Wめっき皮膜に無電解Ni-Pめっき皮膜で被覆されていない箇所が少なくとも一部存在した(未着率0%超)。
(3)無電解Co-Wめっき皮膜外観性
無電解Co-Wめっき皮膜の外観性は金属顕微鏡(オリンパス社製BX51M)、および上記FE-SEMを用いて測定倍率1,000~30,000倍で無電解Co-Wめっき皮膜断面(任意の3箇所)を観察して以下の基準で評価した。
均一 :めっき皮膜の膜厚が均一である。
不均一:無電解Co-Wめっき皮膜の膜厚が不均一な箇所がある。
(4)無電解Ni-Pめっき皮膜外観性
無電解Ni-Pめっき皮膜の外観性は金属顕微鏡、および上記FE-SEMを用いて測定倍率1,000~30,000倍で無電解Ni-Pめっき皮膜断面を観察して以下の基準で評価した。
均一 :無電解Ni-Pめっき皮膜の膜厚が均一である。
不均一:無電解Ni-Pめっき皮膜の膜厚が不均一な箇所がある。
(5)バリア性能
・バリア層評価
各試料に、リフロー装置(UniTemp社製RSS-450-210)を用い、表1に示すリフロー温度(TOP温度)ではんだ実装処理(フォーミングガス(H23%)による還元リフロー)を施した。はんだ材料には千住金属社製M725:Sn-Cu-Niはんだを用いた。はんだを実装した後、試料をCP加工(イオンミリング加工)で切断し、切断面を上記FE-SEMを用いて測定倍率1,000~30,000で観察して、バリア層、およびCu基材へのはんだ材料の拡散状態を評価した。
(バリア効果)有り:はんだ実装処理後のCu基材に溶融はんだの拡散がなく、バリア効果が認められる。
(バリア効果)無し:はんだ実装処理後のCu基材の少なくとも一部に溶融はんだの拡散が認められ、バリア効果が認められない。
・拡散状態評価
バリア層評価に加えて拡散状態も評価した。拡散状態の評価は、上記切断面を上記FE-SEMを用いて断面観察した際に、上記EDSを用いて断面から組成分析を行ってCu基材へのはんだ材料の拡散有無を再確認した。なお、測定倍率は1,000~30,000倍とした。
拡散状態は以下の基準で評価した。
◎:Cu基材中にはんだ材料の拡散が確認できなかった。
×:Cu基材中にはんだ材料の拡散が確認できた。
(6)密着性
試料の無電解Ni-Pめっき皮膜表面にM5ナットを大気リフローではんだ付けした後、表1に記載の強度(N)で引張強度試験機(アイコーエンジニアリング社製1311VC)によって密着強度を測定した。
◎:破断箇所がはんだ-はんだ間である。
△:破断箇所がはんだ-はんだ間であったが、一部がはんだ(めっき)-基材間で破断
しており、基材が見える。
×:破断箇所がはんだ(めっき)-基材間であり、基材が見える。
以上の結果から以下のことが考察できる。
実施例1~10は本願発明の要件を満足する無電解Co-Wめっき皮膜を形成した例である。これらはいずれも優れたバリア性能を示した。また密着性向上効果も得られており、基材と無電解Co-Wめっき皮膜間で剥離することがなかった。図3にバリア性能評価時の実施例1の評価写真を示す。
また無電解Ni-Pめっき皮膜を積層させた実施例1~5、7~10ははんだ濡れ性が向上しており、密着性評価において、無電解Ni-Pめっき皮膜とはんだ間で剥離することはなかった。
無電解Ni-Pめっき皮膜を形成しなかった実施例6は、はんだ濡れ性が悪く、密着性を評価できなかった。
なお、実施例1~5、8、9(300℃)は実施例7、10(280℃)より厳しいリフロー温度でも優れたバリア性能を示した。
比較例1は無電解Co-Wめっき皮膜の膜厚が薄い例である。比較例1では膜厚が薄すぎたためバリア効果が得られず、基材に溶融はんだの拡散が確認された。また十分な密着性が得られず、無電解Co-Wめっき皮膜の一部が剥離した。なお、比較例1はリフロー温度280℃でも同様にバリア性に劣っていた。
比較例2はCo-Wめっき皮膜中のW含有量が少ない例である。比較例2ではW含有量が少ないため基材に溶融はんだの拡散が確認された。また比較例1同様、十分な密着性が得られなかった。なお、比較例2はリフロー温度280℃でも同様にバリア性に劣っていた。
比較例3は無電解Co-Wめっき皮膜に代えて無電解Co-Bめっき皮膜を形成した例である。比較例3ではバリア効果は得られなかった。なお、比較例3ははんだ濡れ性が著しく悪いため密着性試験に必要なM5ナットのはんだ付けができなかった。
比較例4は無電解Ni-Pめっき皮膜のみを形成した例である。比較例4ではバリア効果が得られなかった。また密着性が低いためはんだ基材間で破断した。
1 基板
2 導体
3 無電解Co-Wめっき皮膜
4 Niめっき皮膜
5 はんだ

Claims (10)

  1. 無電解Co-Wめっき皮膜であって、
    前記無電解Co-Wめっき皮膜中のW含有量が35~58質量%、B含有量が0.7質量%以下;且つ
    前記無電解Co-Wめっき皮膜の膜厚は0.05μm以上;
    である無電解Co-Wめっき皮膜。
  2. 前記無電解Co-Wめっき皮膜は、非晶質である請求項1に記載の無電解Co-Wめっき皮膜。
  3. 請求項1または2に記載の無電解Co-Wめっき皮膜を含む積層めっき皮膜であって、
    電気Niめっき皮膜、または無電解Ni-Pめっき皮膜を含むものである積層めっき皮膜。
  4. 前記無電解Ni-Pめっき皮膜中のP含有量が10~13質量%である請求項に記載の積層めっき皮膜。
  5. 前記電気Niめっき皮膜、または前記無電解Ni-Pめっき皮膜の膜厚は、0.5~5μmである請求項4に記載の積層めっき皮膜。
  6. 被めっき物表面に接して請求項1または2のいずれかに記載の無電解Co-Wめっき皮膜が形成されているめっき基材。
  7. 被めっき物に請求項に記載の積層めっき皮膜が形成されためっき基材であって、
    前記無電解Co-Wめっき皮膜は前記被めっき物表面に接して形成されており、
    前記電気Niめっき皮膜、または無電解Ni-Pめっき皮膜は前記無電解Co-Wめっき皮膜表面に接して形成されているめっき基材。
  8. 請求項1または2のいずれかに記載の無電解Co-Wめっき皮膜を形成するためのめっき液であって、
    水溶性コバルト塩、および水溶性タングステン塩と;
    ジアルキルアミンボランと;
    を含む無電解Co-Wめっき液。
  9. 前記無電解Co-Wめっき液中の
    前記水溶性コバルト塩濃度(Co換算)は0.2g/L以上、5g/L以下;
    前記水溶性タングステン塩濃度(W換算)は1g/L以上、23g/L以下;
    である請求項に記載の無電解Co-Wめっき液。
  10. 前記無電解Co-Wめっき液中の前記ジアルキルアミンボラン濃度は1.7~8.4g/Lである請求項に記載の無電解Co-Wめっき液。
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