JP7435902B2 - 植物性チーズ様食品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、植物性チーズ様食品の製造法に関する。
チーズは、牛,水牛,羊,山羊,ヤクなどから採取した乳を原料とし、凝固や発酵などの工程を経て製造される乳製品の一種であり、そのまま食する以外に、他の食品と組み合わせて用いられることも多く、例えばピザやパスタ、グラタン、リゾット、チーズフォンデュ等々、様々な料理に用いられ、その需要は年々増加している。
一方、地球温暖化に代表される気候変動、環境意識の高いミレニアル世代以降の購買に与える影響力の拡大、動物愛護の意識、植物性蛋白質を使用した場合コレステロールが低下する等の健康上の特性、そして感染症予防の観点から、乳代替として豆乳などに代表される植物乳を取り入れる動きがミレニアル世代以降を中心に拡大している。
更に、上記傾向は乳のみならず一般的な乳製品であるチーズやヨーグルトなど加工食品にも広がっており、例えば、豆乳や分離大豆蛋白、大豆粉などの大豆素材を使用した製品が挙げられる(特許文献1~3)。
特開2006-135089号公報 特開2014-233270号公報 特開2015-8691号公報
しかしながら、植物性チーズ様食品は概して乳を原料としたチーズに比べてうま味が少ない傾向にある。上記対策として、例えばうま味調味料を加える方法もあるが、天然志向の高まりから化学調味料の使用は敬遠される場合があるなどの問題もある。
上記状況から、本発明は、動物性原料のチーズらしいうま味が増強された植物性チーズ様食品の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題解決に向けて鋭意検討した結果、大豆たん白質などに代表される植物性蛋白質を含有する原料に対し、グルタミナーゼ及び/またはアスパラギナーゼによる処理と酸性化処理を併用することにより、上記課題を解決できるという知見を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)植物性蛋白質を含有する原料に、グルタミナーゼ及び/又はアスパラギナーゼを作用させる工程と酸性化する工程を含むことを特徴とする、植物性チーズ様食品の製造法、
(2)植物性蛋白質を含有する原料にたん白質分解酵素を作用させる工程をさらに含むことを特徴とする、(1)記載の植物性チーズ様食品の製造法、
(3)植物性蛋白質を含有する原料が豆類由来である、(1)又は(2)に記載の植物性チーズ様食品の製造法、
(4)酸性化が発酵であることを特徴とする、(1)記載の植物性チーズ様食品の製造法、
(5)酸性化が発酵であることを特徴とする、(2)記載の植物性チーズ様食品の製造法、
(6)酸性化が発酵であることを特徴とする、(3)記載の植物性チーズ様食品の製造法、
(7)該植物性チーズ様食品中における、遊離アミノ酸中に占めるアルギニンの割合が55重量%以下であることを特徴とする、(4)記載の植物性チーズの製造法、
(8)該植物性チーズ様食品中における、遊離アミノ酸中に占めるアルギニンの割合が55重量%以下であることを特徴とする、(5)記載の植物性チーズの製造法、
(9)該植物性チーズ様食品中における、遊離アミノ酸中に占めるアルギニンの割合が55重量%以下であることを特徴とする、(6)記載の植物性チーズの製造法、
である。
本発明により、チーズらしいうま味が増強された植物性チーズ様食品の提供が可能となった。
本発明の植物性チーズ様食品は、植物性蛋白質を含有する原料に対し、グルタミナーゼ及び/又はアスパラギナーゼを作用させる工程と酸性化する工程を含むことを特徴とするものである。以下、本発明を詳細に説明する。
(植物性チーズ様食品)
本発明における植物性チーズ様食品は、植物性蛋白質と水、その他必要により植物性油脂、澱粉などの植物原料をベースとして製造されるチーズ様の製品形態、風味及び食感を持つ食品であり、チーズの代替食品としても用いられる。製品形態としては、ブロック状、シュレッド状、粉末状、顆粒状、シート状又はペースト状等の任意のチーズ様の製品であり得る。ここで、「植物性」とは動物性原料が全く含まれないことを意味せず、具体的には動物由来原料が全原料中50重量%未満以下であることを意味する。より好ましい態様としては動物由来原料が全原料中40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下又は0重量%であり得る。
(植物性蛋白質)
本発明の植物性チーズ様食品は、蛋白質として植物性蛋白質を少なくとも含有する。該植物性蛋白質を含有する原料として、濃縮蛋白や分離蛋白などの粉末状蛋白質や、植物乳、豆粉などを使用することができる。植物の種類は限定されないが、大豆、えんどう豆、小豆、インゲン豆、ささげ、花豆、緑豆、ソラマメ、たけあずき、レンズ豆、うずら豆、らい豆、ヒヨコ豆に代表される豆類、アーモンド、へーゼルナッツ、カシューナッツ、クルミ、落花生、ピスタチオなどに代表される種子類、米、オーツ麦に代表される穀物類などが挙げられる。また、これらを適当な割合で混合して使用することも可能である。
ある態様では、植物性チーズ様食品中の植物性蛋白質含量は0.1~25重量%であることが、該食品調製時における粘度の点において適当であり、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.3~10重量%、更に好ましくは0.5~7重量%である。
(植物乳)
植物原料を基本原料として得られるミルク(乳濁状の液体)である植物乳を使用する場合、植物乳から不溶性画分(オカラ)を除去したもののみならず植物乳から不溶性画分(オカラ)を除去せずに不溶性画分(オカラ)を微粉砕したスラリー状のものも使用することができる。
例えば大豆では、丸大豆や脱脂大豆から水で抽出し、不溶性繊維であるオカラを除去して得られる、一般的な豆乳を使用することができ、その際に風味がより良好な豆乳を得るために適宜改良された製法を適用することができる。
また、他の例示として、大豆粉を水に分散させて得られる大豆スラリーも使用できる。
(グルタミナーゼ)
本発明の植物性チーズ様食品では、一つ態様では、植物性蛋白質を含有する原料にグルタミナーゼを作用させることが重要である。グルタミナーゼは、グルタミンに作用してグルタミンの有するアミド基を加水分解して、グルタミン酸とアンモニアに分解する。グルタミナーゼとしては、動物組織、植物組織、または微生物界に分布するもの、あるいは市販品を用いることが可能である。市販品としては特に起源を限定せず、また、その製造法や精製法も問わないが、精製あるいは部分精製品が好ましい。また、遊離のグルタミンをグルタミン酸に変換するグルタミナーゼ活性を有する酵素であれば、その他のアミラーゼ活性、プロテアーゼ活性、ペプチダーゼ活性など、いかなる酵素活性を持ち合わせていてもよい。
また、グルタミナーゼ活性単位は、例えば、グルタミナーゼ活性を示す1unitは、pH6.0、37℃の条件下で、基質とするL―グルタミン(最終濃度1%)に酵素を作用させて1mmolのグルタミン酸を生成する酵素量で示す。
グルタミナーゼによる加水分解の処理条件は特に限定しないが、好ましくはグルタミナーゼの至適温度、至適pHにて行う。具体的には、20~80℃、好ましくは25~75℃、より好ましくは30~70℃である。pHは、pH2~10、好ましくは3~9、より好ましくはpH4~8、更に好ましくはpH4~5.5である。
加水分解後、必要に応じてグルタミナーゼ失活工程を加えてもよい。失活条件は、グルタミナーゼが失活する温度以上であれば特に限定されない。
(アスパラギナーゼ)
本発明の植物性チーズ様食品では、別の態様では、植物性蛋白質を含有する原料にアスパラギナーゼを作用させることが重要である。アスパラギナーゼは、アスパラギンに作用してアスパラギンの有するアミド基を加水分解して、アスパラギン酸とアンモニアに分解する。アスパラギナーゼとしては、動物組織、植物組織、または微生物界に分布するもの、あるいは市販品を用いることが可能である。市販品としては特に起源を限定せず、また、その製造法や精製法も問わないが、精製あるいは部分精製品が好ましい。また、遊離のアスパラギンをアスパラギン酸に変換するアスパラギナーゼ活性を有する酵素であれば、その他のアミダーゼ活性、プロテアーゼ活性、ペプチダーゼ活性など、いかなる酵素活性を持ち合わせていてもよい。
また、アスパラギナーゼ活性単位は、例えば、アスパラギナーゼ活性を示す1unitは、基質とするL-アスパラギンから,1分間にアンモニア1μmol を遊離させる酵素量で示す。
アスパラギナーゼによる加水分解の処理条件は特に限定されないが、好ましくはアスパラギナーゼの至適温度、至適pHにて行う。具体的には、20~80℃、好ましくは25~75℃、より好ましくは30~70℃である。pHは、pH2~10、好ましくは3~9、より好ましくはpH4~8、更に好ましくはpH4~5.5である。
加水分解後、必要に応じてアスパラギナーゼ失活工程を加えてもよい。失活条件は、アスパラギナーゼが失活する温度以上であれば特に限定されない。
グルタミナーゼ、及び/またはアスパラギナーゼの添加時期は特に限定されないが、例えば、植物性蛋白質を含有する原料を酸性化する工程の前、該酸性化工程と同時、または該酸性化工程の後があげられ、好ましくは、該酸性化工程と同時、または該酸性化工程の後である。酸性化行程が同時または後にある方が、酸味のバランスに優れる傾向がある。
(たん白質分解酵素)
ある態様では、風味強化の観点から、植物性蛋白質を含有する原料に、蛋白質分解酵素であるプロテアーゼをさらに作用させてもよい。プロテアーゼは、たん白質またはペプチドに作用してペプチド結合を加水分解し、対象とする基質によりたん白質を加水分解するエンド型プロテアーゼと分子量の小さなペプチドを加水分解するエキソ型プロテアーゼ(ペプチターゼ)に大別される。プロテアーゼの種類は特に限定されないが、例えば、1種以上のエンド型プロテアーゼ単体、1種以上のペプチダーゼ単体、または1種以上のエンド型プロテアーゼと1種以上のペプチダーゼを組み合わせて用いてもよい。プロテアーゼを作用させると、植物性チーズ様食品のうまみを増強する傾向がある。
プロテアーゼとしては、動物組織、植物組織、または微生物界に分布するもの、あるいは市販品を用いることが可能である。市販品としては特に起源を限定せず、また、その製造法や精製法も問わないが、精製あるいは部分精製品が好ましい。また、プロテアーゼ活性を有する酵素であれば、その他のアミダーゼ活性など、いかなる酵素活性を持ち合わせていてもよい。
プロテアーゼによる加水分解の処理条件は特に限定されないが、好ましくはプロテアーゼの至適温度、至適pHにて行う。具体的には、20~80℃、好ましくは25~75℃、より好ましくは30~70℃である。pHは、pH2~10、好ましくは3~9、より好ましくはpH4~8、更に好ましくはpH4~5.5である。

加水分解後、必要に応じてプロテアーゼ失活工程を加えてもよい。失活条件は、プロテアーゼが失活する温度以上であれば特に限定されない。
プロテアーゼの添加時期は、特に限定されず、例えば、植物性蛋白質を含む原料にグルタミナーゼ及び/またはアスパラギナーゼを作用させる酵素処理の前、該酵素処理と同時、または該酵素処理の後があげられるが、好ましくは、該酵素処理の前または同時である。
(酸性化)
本発明の植物性チーズ様食品は、植物性蛋白質を含む原料に、上記のグルタミナーゼ及び/またはアスパラギナーゼ酵素を作用させる工程と、植物性蛋白を含む原料を酸性化する工程を経ることにより得られる。酸性化のpHは、pH3.5~5.7、好ましくはpH4~5.5にすることが適当である。pHが5.7以下になるとより日持ちが良くなる傾向を示し、pHが3.5以上では酸味が良好で、植物蛋白質含有チーズ様食品として使用したときに、食品全体としてのバランスがより良くなる場合があるため、上記範囲内に調整するのが適当である。
酸性化は、ある態様では有機酸を用いて行うことができる。有機酸としてはクエン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、フィチン酸等を用いることができる。
酸性化は、ある態様では発酵によって行うのが好ましい。発酵に際しては、発酵原料に、微生物の栄養源として資化性糖類を添加することが好ましい。例えばグルコース、ショ糖、マルトース、ガラクトース、ラクトース、ラフィノース、トレハロース、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖等を用いることができる。これら糖原料は単独や2種類以上の組み合わせてもよい。
発酵に使用する微生物としては、一般的に発酵食品の製造に利用されている微生物であれば特に限定されることはなく、例えば乳酸菌やビフィズス菌などを単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。また、それらに加えて、酵母、麹菌、納豆菌、テンペ菌などを併用することも出来る。
例えば乳酸菌としては、通常のヨーグルト・チーズに使用されている菌種を用いればよく特に限定されない。例えばラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・ガッセリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ラクチス、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ガリナラム、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ブレビス・ブレビス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・マリ、ラクトバチルス・デルブルッキィ、ラクトバチルス・サンフランシスエンシス、ラクトバチルス・パネックス、ラクトバチルス・コモエンシス、ラクトバチルス・イタリカス、ラクトバチルス・ライキマニ、ラクトバチルス・カルバタス、ラクトバチルス・ヒルガルディ、ラクトバチルス・ルテリ、ラクトバチルス・パストリアヌス、ラクトバチルス・ブクネリ、ラクトバチルス・セロビオサス、ラクトバチルス・フルクティボランス等のラクトバチルス属、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・ジアセチラクチス等のストレプトコッカス属、ラクトコッカス・ラクチス・ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス・クレモリス等のラクトコッカス属、ロイコノストック・メセンテロイデス・クレモリス、ロイコノストック・ラクチス等のロイコノストック属等の乳酸菌を特に限定なく用いることができる。
ビフィズス菌としては、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・アンギュラータム、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラータム、ビフィドバクテリウム・デンティウム、ビフィドバクテリウム・グロボズム、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・クニキュリ、ビフィドバクテリウム・コエリナム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム、ビフィドバクテリウム・ボウム、ビフィドバクテリウム・マグナム、ビフィドバクテリウム・アステロイデス、ビフィドバクテリウム・インディカム、ビフィドバクテリウム・ガリカム、ビフィドバクテリウム・ラクチス、ビフィドバクテリウム・イノピナータム、ビフィドバクテリウム・デンティコレンス、ビフィドバクテリウム・プローラム、ビフィドバクテリウム・スイス、ビフィドバクテリウム・ガリナーラム、ビフィドバクテリウム・ルミナンティウム、ビフィドバクテリウム・メリシカム、ビフィドバクテリウム・サーキュラーレ、ビフィドバクテリウム・ミニマム、ビフィドバクテリウム・サブチル、ビフィドバクテリウム・コリネフォルメ等を限定なく用いることができる。
酵母としては、パンの発酵などに使用されるイースト菌(サッカロミセス・セレビジエ)の他、例えばパン種として使用されるサワー種(サンフランシスコサワー種、ライサワー種、パネトーネ種など)、ホップス種、ビール種、酒種、果実種(ブドウ果実種、リンゴ果実種など)由来の酵母を使用することができる。
麹菌としては、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ等のアスペルギルス属、モナスカス・アンカ、モナスカス・パーパレウス等のモナスカス属、ノイロスポア属、リゾプス・ジャパニカス等のリゾプス属、ムコール・ルキシー等のムコール属等を限定なく用いることができる。
テンペ菌としては、リゾプス・オリゴスポラス、リゾプス・オリゼー等のリゾプス属を用いることができる。
発酵は、用いる微生物が増殖できる温度であれば特に限定されることはなく、例えば、乳酸菌スターターを用いた場合、10~50℃で、上記pH範囲になるまで行えばよい。また、途中まで発酵した後、最終的にアルカリ又は有機酸や無機酸等で上記pH範囲に調整してもよい。
発酵後、必要に応じて加熱殺菌により発酵を停止させ、微生物の生物的活性を不活性化することもできる。かかる場合の殺菌条件としては、使用した微生物を死滅させる温度と時間で処理すれば足りる。
ある好ましい態様では、植物性チーズ様食品中の遊離アミノ酸中のアルギニン含量は55重量%以下であり、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは45重量%以下である。アルギニン含量が55重量%以下になるような処理をした場合、動物性原料のチーズらしいうま味が増強された植物性チーズ様食品が得られる傾向がある。
遊離アミノ酸の測定は、サンプルを5%TCA(トリクロロ酢酸)溶液で沈殿除去し、可溶化された成分をアミノ酸分析計にて測定した。
(他の原料)
本発明の植物性チーズ様食品には、求める製品の品質に応じて植物性蛋白質以外の他の原料を加えることができ、また加えなくてもよい。
(油脂)
油脂としては、食用として使用できるもので融点20~50℃程度のものを広く採用することができ、例えばナタネ油、大豆油、ひまわり油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂及び乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独または混合油あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂が例示できる。
本発明の植物性チーズ様食品は油脂を加える場合、10~50重量%、好ましくは15~45重量%、さらに好ましくは20~40重量%含有することが適当である。
(増粘剤)
本発明の植物性チーズ様食品は、さらに増粘剤を含有させることにより、植物性チーズ様食品に、より粘りを付与でき、シュレッドなどの成形加工適性が、さらに向上するので好ましい。増粘剤としては、ヒドロキシプロピル化澱粉などの加工澱粉、ローカストビーンガム、グアガム等を用いることが好ましい。
(乳化剤)
本発明の植物性チーズ様食品は、風味を害しない程度の乳化剤を使用することができる。乳化剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の乳化剤を使用することができ、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、プロプレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酢酸酒石酸混合モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド等各種有機酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが例示できる。
以上の他、本発明の植物性チーズ様食品には、風味付与の目的でミルクフレーバー、チーズフレーバー、豆乳フレーバーなどの香料、各種香辛料、フルーツピューレやジャム類、甘味付与の目的でスクラロース、アスパルテーム、ステビアなどの甘味料、また着色の目的でベータカロチンやパプリカ色素、アナトー色素などの着色料を使用することができる。また、日持ち向上の目的で、グリシン、酢酸ナトリウム、卵白リゾチームなどの日持ち向上剤を使用することもできる。
(製造態様)
本発明の植物性チーズ様食品の製造態様としては、ある態様では、油脂、植物性蛋白質を含有する原料、澱粉、食塩、色素および水等が混合された水中油型乳化物を予備乳化し、均質化した後、殺菌及び冷却の工程を経て製造することができる。そして例えば予備乳化の際に酵素処理と酸性化を行えば良い。加熱殺菌は澱粉を糊化させる目的もあり、好ましくは70~95℃にて実施する。
また、別のある態様では、予め、植物性蛋白質を含有する原料および水等が混合された水中油型乳化物を、予備乳化して均質化後、酵素処理、酸性化をした物に、バッチ式殺菌法、または間接加熱方式、あるいは直接加熱方式によるUHT滅菌処理法にて殺菌と冷却をして、油脂、澱粉、食塩、色素等を混合、均質化した後、2次殺菌及び冷却の工程を経て製造することができる。2次加熱殺菌は澱粉を糊化させる目的もあり、好ましくは70~95℃にて実施する。
以下に実施例を示し、本発明の詳細をより具体的に説明する。なお、例中、「部」あるいは「%」はいずれも重量基準を表すものとする
(実施例1~3)
低脂肪豆乳(不二製油(株)製、固形分:9.8%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)に対し、表1記載の酵素と作用条件を用い、酵素処理を行った。酵素処理後、90℃、1分の加熱処理を行い、冷却し酵素処理液を得た。
得られた各反応液80部に対し、ブドウ糖1部、水19.99部を加え、乳酸菌(Streptococcus thermophilus)0.01部を添加し40℃でpH4.6に到達するまで乳酸発酵し、遊離アミノ酸含有量と遊離グルタミンの含有量の分析、並びに官能評価を行った。
官能評価はチーズの風味評価に熟練したパネラー5名に依頼し、下記の評価基準を用いて合議により1~5点の点数を付して行った。なお、「うま味」についてはチーズの風味に適した質を有するかどうかについても考慮して評価し3以上を合格とした。結果を表1に示した。
<評価基準>
1:比較例1よりうま味が全く向上していない
2:比較例1よりうま味があまり向上していない
3:比較例1よりうま味が向上している
4:比較例1よりうま味がかなり向上している
5:比較例1よりうま味が顕著に向上している
(比較例1)
低脂肪豆乳80部に対し、ブドウ糖1部、水19.99部を加え、乳酸菌(Streptococcus thermophilus)0.01部を添加し40℃でpH4.6に到達するまで乳酸発酵し、遊離アミノ酸含有量と遊離グルタミンの含有量の分析、並びに官能評価を行った。
(表1)
Figure 0007435902000001
表1に示すとおり、グルタミナーゼ及び/またはアスパラギナーゼにて処理することにより、遊離アルギニンの割合が低下し、チーズに適した顕著なうま味が向上する効果がみられた。
(実施例4)
低脂肪豆乳(不二製油(株)製、固形分:9.8%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)に対し、プロテアーゼとして「プロチンSD-NY10」(プロテアーゼ、天野エンザイム(株))0.01部、及び「グルタミナーゼSD-100NA」を0.1部添加し50℃、30分の反応条件にて1次酵素処理を行った後に、65℃、30分の反応条件にて2次酵素処理を行った。酵素処理後、90℃、1分の加熱処理を行い、冷却し酵素処理液を得た。
得られた各反応液80部に対し、ブドウ糖1部、水19.99部を加え、乳酸菌(Streptococcus thermophilus)0.01部を添加し40℃でpH4.6に到達するまで乳酸発酵し、遊離アミノ酸含有量と遊離グルタミンの含有量の分析、並びに官能評価を行った。官能評価は実施例1の評価方法に従い行った。
(表2)
Figure 0007435902000002
表2に示すとおり、プロテアーゼ処理とグルタミナーゼ処理を併用することで、より遊離アルギニンの割合が低下し、チーズに適した顕著なうま味が向上する効果がみられた。
(実施例5)
低脂肪豆乳80部に対し、ブドウ糖1部、水19.99部を加え、乳酸菌(Streptococcus thermophilus)0.01部を添加し40℃でpH4.6に到達するまで乳酸発酵した。発酵液に対し、「グルタミナーゼSD-100NA」を 0.1部添加し、65℃、30分の反応条件にて酵素処理を行った。酵素処理後、90℃、1分の加熱処理を行い、冷却し、遊離アミノ酸含有量と遊離グルタミンの含有量の分析、並びに官能評価を行った。官能評価は実施例1の評価方法に従い行った。
(表3)
Figure 0007435902000003
表3に示すとおり、発酵による酸性化後、グルタミナーゼ処理を行うことで、より遊離アルギニンの割合が低下し、チーズに適した顕著なうま味が向上する効果がみられた。
(実施例6~9)
植物性蛋白質を含有する原料として、以下を用意した。
・豆乳クリーム(不二製油(株)製、固形分:19.0%、蛋白質:5.6%、脂質:12.3%)
・スゴイダイズ(大豆スラリー)(大塚製薬(株)製、固形分:8.8%、蛋白質:3.9%、脂質:1.9%)
・アーモンドミルク(筑波乳業(株)製、固形分9.9%、蛋白質含量2.9%、脂質含量5.6%)
・オーツドリンク(ブリッジ社製、固形分12.2%、蛋白質含量0.7%、脂質含量1.9%)
上記各原料に、グルタミナーゼとして「グルタミナーゼSD-100NA」を0.1部添加し、55℃、30分の反応条件にて酵素処理を行った。酵素処理後、90℃、1分の加熱処理を行い、冷却し酵素処理液を得た。
得られた各反応液80部に対し、ブドウ糖1部、水19.99部を加え、乳酸菌(Streptococcus thermophilus)0.01部を添加し40℃でpH4.6に到達するまで乳酸発酵し、官能評価を行った。
官能評価はチーズの風味評価に熟練したパネラー5名に依頼し、下記の評価基準を用いて合議により1~5点の点数を付して行った。なお、「うま味」についてはチーズの風味に適した質を有するかどうかについても考慮して評価し3以上を合格とした。結果を表4に示した。
<評価基準>
1:反応前よりうま味が全く向上していない
2:反応前よりうま味があまり向上していない
3:反応前よりうま味が向上している
4:反応前よりうま味がかなり向上している
5:反応前よりうま味が顕著に向上している
(表4)
Figure 0007435902000004
表4の通り、何れの原料においても、グルタミナーゼによる反応前よりもうま味が向上する効果がみられた。
(実施例10)
実施例6で調製した、酵素処理及び乳酸発酵を行った豆乳クリームを用い、以下の通り植物性チーズ様食品を製造した。
パーム油中融点画分(上昇融点30℃/SFC:10℃で90%、20℃で80%)36部、実施例6で得られた酵素処理及び発酵後の豆乳クリームを30部、タピオカ由来の加工澱粉11部、食塩1部、水22部、乳酸を含むpH調整剤1.1部、色素0.002部を、55℃で10分間調合して予備乳化した。
さらに該予備乳化液を100kg/cmの圧力下で均質化した。該均質化液を掻きとり式連続熱交換機に通し、80~90℃で加熱殺菌、充填し、トンネルフリーザーにて急冷後、冷蔵庫でエージングを行い、大豆蛋白質含有チーズ様食品を得た。
該植物性チーズ様食品の風味は、実施例6の簡易評価系と同様に、酵素処理を加えることで、うま味はより増強される傾向にあった。また、そのうま味はチーズの風味に適した質を有していた。

Claims (1)

  1. 植物性蛋白質を含有する原料に、アスパラギナーゼを作用させる工程と発酵で酸性化する工程を含むことを特徴とする、植物性チーズ様食品の製造法。
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