本発明の態様に係る基板処理装置(パターン形成装置)、および、基板処理方法(パターン形成方法)について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態による基板処理装置として、基板(被照射体)Pにパターンを転写するパターン形成装置(パターン描画装置)EXの概略構成を示す斜視図であり、その構成は、国際公開第2017/191777号、国際公開第2018/061633号に開示されているものと同じである。なお、以下の説明においては、特に断わりのない限り、重力方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定し、図に示す矢印にしたがってX方向、Y方向、およびZ方向を設定する。
パターン描画装置EXは、基板P上に塗布されたフォトレジスト等の感光性機能層に電子デバイス用の微細パターンを露光して、電子デバイスを製造するデバイス製造システムで使われる。デバイス製造では、例えば、フレキシブル・ディスプレイ、フィルム状のタッチパネル、液晶表示パネル用のフィルム状のカラーフィルター、フレキシブル配線、または、フレキシブル・センサ等の電子デバイスを製造する為に、パターン描画装置以外にも複数種の製造装置が使われる。デバイス製造システムは、フレキシブル(可撓性)のシート状の基板(シート基板)Pをロール状に巻いた図示しない供給ロールから基板Pが送出され、送出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板Pを図示しない回収ロールで巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の生産方式を有する。そのため、少なくとも製造処理中の基板P上には、最終製品となる単位デバイス(1つの表示パネル等)に対応したパターンが、基板Pの搬送方向に所定の隙間を空けて多数連なった状態で配列される。基板Pは、その長尺方向が基板Pの移動方向(搬送方向)となり、長尺方向と直交した短尺方向が基板Pの幅方向となる帯状である。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、デバイス製造システムやパターン描画装置EXの搬送路を通る際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板Pの母材として、厚みが25μm~200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ30~100μm程度の極薄ガラスの単層体、その極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、金属箔等を貼り合わせた積層体、或いは、ナノセルロースを含有して表面を平滑処理した紙片であってもよい。
基板Pの表面に塗布される感光性機能層は、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジスト(液状またはドライフィルム状)であるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)または半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、薄膜トランジスタ(TFT)等を構成する電極、半導体、絶縁、或いは接続用の配線となるパターン層を形成することができる。
感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分(或いは非露光とされたパターン部分)にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬する無電解メッキによって、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(加算式)のプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(減算式)のプロセスとしてのエッチング処理を前提にしてもよい。その場合、パターン描画装置EXへ送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものとされる。
図1に示したパターン描画装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるスポット走査方式の露光装置であり、前工程のプロセス装置から搬送されてきた基板Pを後工程のプロセス装置(単一の処理部または複数の処理部を含む)に向けて所定の速度で長尺方向に搬送する。その搬送に同期して、パターン描画装置EXは、基板Pの感光性機能層に電子デバイスを構成する信号線や電源ラインの配線パターン、TFTを構成する電極、半導体領域、スルーホール等のいずれかのパターン形状に応じた光パターンを、描画データに応じて強度変調されるスポット光のY方向への高速走査(主走査)と基板Pの長尺方向への移動(副走査)とによって形成する。
図1において、パターン描画装置EXは、副走査のために基板Pを支持して長尺方向に搬送する回転ドラムDRと、回転ドラムDRで円筒面状に支持された基板Pの部分ごとにパターン露光を行う複数(ここでは6個)の描画ユニットUn(U1~U6)とを備え、複数の描画ユニットUn(U1~U6)の各々は、露光用のパルス状のビームLB(パルスビーム)のスポット光を、基板Pの被照射面(感光面)上でY方向にポリゴンミラーPM(走査部材)で1次元に走査(主走査)しつつ、スポット光の強度を描画データに応じて高速に変調(オン/オフ)する。これにより、基板Pの被照射面に電子デバイス、回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンが描画露光される。また、基板Pが長尺方向に沿って連続して搬送されるので、パターン描画装置EXによってパターンが露光される基板P上の被露光領域(デバイス形成領域)は、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔(余白)をあけて複数個を設定可能である。本実施の形態では、6つの描画ユニットU1~U6の各々、又は全体によって、パターン形成機構が構成される。
図1のように、回転ドラムDRは、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有する。回転ドラムDRは、その外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に円筒面状に湾曲させて支持(密着保持)しつつ、中心軸AXoを中心に回転して基板Pを長尺方向に搬送する。回転ドラムDRは、複数の描画ユニットUn(U1~U6)の各々からのビームLB(スポット光)が投射される基板P上の領域(部分)をその外周面で支持する。なお、回転ドラムDRのY方向の両側には、回転ドラムDRを中心軸AXoの回りに回転させるようにベアリングで支持される不図示のシャフトが設けられる。そのシャフトには、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられ、回転ドラムDRは中心軸AXo回りに一定の回転速度で回転する。
光源装置(パルス光源装置)LSは、パルス状のビーム(パルスビーム、パルス光、レーザ)LBを発生して射出する。このビームLBは、基板Pの感光性機能層に対する感度を有し、410~200nmの波長帯域にピーク波長(例えば、405nm、365nm、355nm、344nm、308nm、248nm等のいずれかの波長)を有する紫外線光である。光源装置LSは、ここでは不図示の描画制御装置の制御に従って、例えば、100MHz~400MHzの範囲のいずれかの周波数(発振周波数、所定周波数)FPLでパルス状のビームLBを射出する。本実施の形態では、光源装置LSを波長変換素子によって紫外線光を発生するレーザ光源装置とする。具体的には、赤外波長域のパルス光を発生する半導体レーザ素子、ファイバー増幅器、および、増幅された赤外波長域のパルス光を紫外波長域のパルス光に変換する波長変換素子(高調波発生素子)等で構成されるファイバーアンプレーザ光源とする。このように光源装置LSを構成することで、1パルス光の発光時間が十数ピコ秒~数十ピコ秒以下の高輝度な紫外線のパルス光が得られる。光源装置LSをファイバーアンプレーザ光源とし、描画データを構成する画素ビットの状態(論理値で「0」か「1」)に応じてビームLBのパルス発生を高速にオン/オフする(スポット光を強度変調する)構成については、国際公開第2015/166910号、国際公開第2017/057415号に開示されている。なお、光源装置LSから射出されるビームLBは、そのビーム径が約1mm、若しくはその半分程度の細い平行光束になっているものとする。
光源装置LSから射出されるビームLBは、複数のスイッチング素子としての選択用光学素子OSn(OS1~OS6)と、複数の反射ミラーM1~M12と、複数の落射ミラー(選択ミラーとも呼ぶ)IMn(IM1~IM6)と、吸収体TR等で構成されるビーム切換部を介して、描画ユニットUn(U1~U6)の各々に選択的(択一的)に供給される。選択用光学素子OSn(OS1~OS6)は、ビームLBに対して透過性を有するものであり、超音波信号で駆動されて、入射したビームLBの±1次回折光の一方のみを効率的に発生するように、ブラック回折条件で配置される音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)で構成される。複数の選択用光学素子OSnおよび複数の落射ミラーIMnは、複数の描画ユニットUnの各々に対応して設けられている。例えば、選択用光学素子OS1と落射ミラーIM1は、描画ユニットU1に対応して設けられ、同様に、選択用光学素子OS2~OS6および落射ミラーIM2~IM6は、それぞれ描画ユニットU2~U6に対応して設けられている。
光源装置LSからのビームLBは、反射ミラーM1~M12によってその光路がXY面と平行な面内でつづらおり状に曲げられて、吸収体TRまで導かれる。以下、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)がいずれもオフ状態(超音波信号が印加されずに、1次回折光が発生していない状態)の場合で詳述する。なお、図1では図示を省略したが、反射ミラーM1から吸収体TRまでのビーム光路中には複数のレンズによるリレー系が設けられる。リレー系は、詳しくは、国際公開第2017/057415号に開示されているように、光源装置LSからビームLBの光路に沿って直列に並ぶ選択用光学素子OS1~OS6の各々の間に配置され、6つの選択用光学素子OS1~OS6の各々を光学的に互いに共役関係(結像関係)にする。さらに各リレー系は、6つの選択用光学素子OS1~OS6の各々の位置ではビームLBの直径を1mm~0.5mmの細い平行光束に維持しつつ、各リレー系内の中間位置では直径が0.2mm以下のビームウェストとなるように収斂する。落射ミラーIM1~IM6の各々は、各リレー系の光路中のビームウェストの位置に配置される。
図1において、光源装置LSからのビームLBは-X方向に進んで反射ミラーM1で-Y方向に反射され、反射ミラーM2に入射する。反射ミラーM2で+X方向に反射されたビームLBは、選択用光学素子OS5をストレートに透過して反射ミラーM3に至る。反射ミラーM3で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM4で-X方向に反射されて、選択用光学素子OS6をストレートに透過して反射ミラーM5に至る。反射ミラーM5で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM6で+X方向に反射され、選択用光学素子OS3をストレートに透過して反射ミラーM7に至る。反射ミラーM7で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM8で-X方向に反射された後、選択用光学素子OS4をストレートに透過して反射ミラーM9に至る。反射ミラーM9で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM10で+X方向に反射された後、選択用光学素子OS1をストレートに透過して反射ミラーM11に至る。反射ミラーM11で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM12で-X方向に反射された後、選択用光学素子OS2をストレートに透過して吸収体TRに導かれる。この吸収体TRは、ビームLBの外部への漏れを抑制するためにビームLBを吸収する光トラップであり、光エネルギーの吸収による発熱が低減されるように温調(空冷又は水冷)機構を備えている。
各選択用光学素子OSnは、超音波信号(高周波信号)が印加されると、入射したビームLB(0次光)を、高周波の周波数に応じた回折角で回折させた1次回折光を射出ビーム(ビームLBn)として発生する。従って、選択用光学素子OS1から1次回折光として射出されるビームがLB1となり、同様に選択用光学素子OS2~OS6の各々から1次回折光として射出されるビームがLB2~LB6となる。このように、各選択用光学素子OSn(OS1~OS6)は、光源装置LSからのビームLBの光路を偏向する機能を奏する。また、本実施の形態では、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)のうちの選択された1つだけが一定時間だけオン状態(高周波信号が印加された状態)となるように、不図示の描画制御装置によって制御される。選択された1つの選択用光学素子OSnがオン状態のとき、その選択用光学素子OSnで回折されずに直進する0次光が10~20%程度残存するが、それは最終的に吸収体TRによって吸収される。
選択用光学素子OSnの各々は、偏向された1次回折光であるビームLBn(LB1~LB6)を、入射するビームLBの進行方向に対して-Z方向に偏向するように設置される。選択用光学素子OSnの各々で偏向されて射出するビームLBn(LB1~LB6)は、選択用光学素子OSnの各々から所定距離だけ離れた位置(ビームウェストの位置)に設けられた落射ミラーIMn(IM1~IM6)に投射される。各落射ミラーIMnは、入射したビームLBn(LB1~LB6)を-Z方向に反射することで、ビームLBn(LB1~LB6)をそれぞれ対応する描画ユニットUn(U1~U6)に導く。
各選択用光学素子OSnの構成、機能、作用等は互いに同一のものであり、複数の選択用光学素子OSnの各々は、描画制御装置からの駆動信号(高周波信号)のオン/オフによって、入射したビームLBを回折させた回折光(ビームLB1~LB6)の発生をオン/オフさせるスイッチング(ビーム選択)動作を行う。このような各選択用光学素子OSnのスイッチング動作により、光源装置LSからのビームLBをいずれか1つの描画ユニットUnに導くことができ、且つ、ビームLBnが入射する描画ユニットUnを切り換えることができる。このように、複数の選択用光学素子OSnをビームLBの光路に直列(シリアル)に配置して、対応する描画ユニットUnに時分割でビームLBnを供給する構成は、国際公開第2015/166910号に開示されている。
ビーム切換部を構成する選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々が一定時間だけオン状態となる順番は、描画ユニットUn(U1~U6)の各々に設定されるスポット光による走査開始タイミングの順番によって定められる。本実施の形態では、6つの描画ユニットU1~U6の各々に設けられるポリゴンミラーPMの回転速度の同期とともに、回転角度の位相も同期させることで、描画ユニットU1~U6のうちのいずれか1つにおけるポリゴンミラーの1つの反射面が、基板P上で1回のスポット走査を行うように、時分割に切り替えることができる。そのため、描画ユニットUnの各々のポリゴンミラーの回転角度の位相が所定の関係で同期した状態であれば、描画ユニットUnのスポット走査の順番はどの様なものであってもよい。図1の構成では、基板Pの搬送方向(回転ドラムDRの外周面が周方向に移動する方向)の上流側に3つの描画ユニットU1、U3、U5がY方向に並べて配置され、基板Pの搬送方向の下流側に3つの描画ユニットU2、U4、U6がY方向に並べて配置される。
この場合、基板P上の1つの被露光領域に対するパターン描画は、上流側の奇数番の描画ユニットU1、U3、U5から開始され、基板Pが一定長送られたら、下流側の偶数番の描画ユニットU2、U4、U6もパターン描画を開始することになるので、描画ユニットUnのスポット走査の順番を、U1→U3→U5→U2→U4→U6→U1→・・・に設定することができる。従って、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々が一定時間だけオン状態となる順番も、OS1→OS3→OS5→OS2→OS4→OS6→OS1→・・・の順に定められる。
図1に示すように、描画ユニットU1~U6の各々には、入射してきたビームLB1~LB6を主走査するためのポリゴンミラーPMが設けられる。本実施の形態では、各描画ユニットUnのポリゴンミラーPMの各々が、同一の回転速度で精密に回転しつつ、互いに一定の回転角度位相を保つように同期制御される。これによって、描画ユニットU1~U6の各々から基板Pに投射されるビームLB1~LB6の各々の主走査のタイミング(スポット光の主走査期間)を、互いに重複しないように設定することができる。したがって、ビーム切換部に設けられた選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々のオン/オフ切り替えを、6つのポリゴンミラーPMの各々の回転角度位置に同期して制御することで、光源装置LSからのビームLBを複数の描画ユニットUnの各々に時分割で振り分けた効率的な露光処理ができる。6つのポリゴンミラーPMの各々の回転角度の位相合わせと、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々のオン/オフ切り替えタイミングとの同期制御についても、国際公開第2015/166910号に開示されている。
図1のように、パターン描画装置EXは、同一構成の複数の描画ユニットUn(U1~U6)を配列した、いわゆるマルチヘッド型の直描露光方式である。描画ユニットUnの各々は、回転ドラムDRの外周面(円周面)で支持されている基板PのY方向(主走査方向)に区画された部分領域ごとにパターンを描画する。各描画ユニットUn(U1~U6)は、ビーム切換部からのビームLBnを基板P上(基板Pの被照射面上)に投射しつつ、基板P上でビームLBnを集光(収斂)する。これにより、基板P上に投射されるビームLBn(LB1~LB6)は直径が2~4μmのスポット光となる。さらに各描画ユニットUnのポリゴンミラーPMの回転によって、基板P上に投射されるビームLBn(LB1~LB6)の各々のスポット光が主走査方向(Y方向)に走査される。このスポット光の走査によって、基板P上に、1ライン分のパターンの描画のための直線的な描画ライン(走査ライン)SLn(なお、n=1、2、・・・、6)が規定される。描画ラインSLnは、ビームLBnのスポット光の基板P上における走査軌跡である。
複数の描画ユニットUn(U1~U6)の各描画ラインSLn(SL1~SL6)は、回転ドラムDRの中心軸AXoを含むYZ面と平行な中心面を挟んで、回転ドラムDRの周方向に2列に千鳥配列で配置され、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5は、中心面に対して基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)の基板Pの被照射面上に位置し、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6は、中心面に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板Pの被照射面上に位置し、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。そのため、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5と、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6とは、XZ平面内で見る(Y方向から見る)と、中心面に対して対称に設けられている。
X方向(基板Pの搬送方向)に関しては、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5と偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6とが互いに離間しているが、Y方向(基板Pの幅方向、主走査方向)に関しては、基板P上に描画されたパターン同士が互いに分離することなく継ぎ合わされるように設定されている。描画ラインSL1~SL6は、基板Pの幅方向、つまり、回転ドラムDRの中心軸AXoとほぼ平行になるように設定されている。なお、描画ラインSLnをY方向に継ぎ合わせるとは、描画ラインSLnの端部同士のY方向の位置を隣接または一部重複させるような関係にすることを意味する。描画ラインSLnの端部同士をY方向に重複させる場合は、例えば、各描画ラインSLnの長さに対して、描画開始点、または描画終了点を含んでY方向に1~5%の範囲で重複させるとよい。
複数の描画ユニットUn(U1~U6)は、全部で基板P上の露光領域(パターン形成領域)の幅方向の寸法をカバーするように、Y方向の走査領域(主走査範囲の区画)を分担している。例えば、1つの描画ユニットUnによるY方向の主走査範囲(描画ラインSLnの長さ)を30~60mm程度とすると、6個の描画ユニットU1~U6をY方向に配置することによって、描画可能な露光領域のY方向の幅を180~360mm程度まで広げている。なお、各描画ラインSLn(SL1~SL6)の長さ(描画範囲の長さ)は、原則として同一とする。つまり、描画ラインSL1~SL6の各々に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査距離は、原則として同一とする。
各描画ユニットUn(U1~U6)は、ポリゴンミラーPMの各反射面RPで反射されて主走査方向に偏向されるビームLBnを入射するテレセントリックなfθレンズ系(描画用走査光学系)FTを備え、fθレンズ系FTから射出して基板Pに投射される各ビームLBnは、XZ平面内でみたとき、回転ドラムDRの中心軸AXoに向かって進むように設定される。これにより、各描画ユニットUn(U1~U6)から基板Pに向かって進むビームLBnの主光線は、XZ平面において、基板Pの湾曲した表面上の描画ラインSLnの位置での接平面に対して常に垂直となるように基板Pに向けて投射される。すなわち、スポット光SPの主走査方向、並びに副走査方向(回転ドラムDRの外周面に沿った周方向)に関して、基板Pに投射されるビームLBn(LB1~LB6)はテレセントリックな状態で走査される。
図2は、図1に示したパターン描画装置EXの回転ドラムDRと6つの描画ユニットU1~U6の配置と、基板Pに形成されたアライメントマークや回転ドラムDRの表面に形成された基準パターン等を検出する複数のアライメント系ALGn(nは2以上の整数)の配置とを具体的に示した図であり、図2中の直交座標系XYZの設定は図1と同じである。図2に示した回転ドラムDR、描画ユニットU1~U6、アライメント系ALGnの基本的な配置は、例えば、国際公開第2016/152758号、国際公開第2017/199658号に開示されている。
基板Pを約180度の角度範囲で支持する回転ドラムDRのY方向の両側には、中心軸AXoの回りを回転するように環状のベアリングで支持されるシャフトSftが設けられ、シャフトSftは不図示の回転駆動源の回転軸と接合されている。また、中心軸AXoを含んでYZ面と平行な面を中心面CPoとする。Y方向(基板Pの幅方向)から見たとき、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5と偶数番の描画ユニットU2、U4、U6とは中心面CPoを挟んで対称的に配置される。図2のように、直交座標系XYZのXZ面と平行な面内では、描画ユニットU1(及びU3、U5)は中心面CPoから反時計回りに一定の角度θcだけ傾けられ、描画ユニットU2(及びU4、U6)は中心面CPoから時計回りに一定の角度θcだけ傾けられる。描画ユニットU1~U6の各々の構成は同一であるので、代表して描画ユニットU1の構成を図3に示す。
図3は、図1に示した落射ミラーIM1から供給されるビームLB1(描画データに応じて強度変調された直径1mm~0.5mm程度の平行光束)を、最終的に基板P上にスポット光SPとして集光するfθレンズ系FTと、スポット光SPをY方向に主走査して描画ラインSL1を形成するポリゴンミラーPM等を含む描画ユニットU1の詳細構成を示す斜視図であり、例えば国際公開第2019/082850号に開示されている。描画ユニットU1(並びにU2~U6)のポリゴンミラーPMからfθレンズ系FTを通る光軸AXf1は、図2のように直交座標系XYZ内では傾くので、描画ユニットU1(並びにU2~U6)内では、直交座標系XYZに対して傾いた直交座標系XtYtZtを設定する。その直交座標系XtYtZtにおいて、Yz方向はY方向と同じであり、Zt方向は、落射ミラーIM1から描画ユニットU1に入射するビームLB1の主光線(中心光線)の進行方向、若しくは描画ラインSL1の位置で基板Pの法線方向とし、Xt方向はfθレンズ系FTを通る光軸AXf1の方向とする。なお、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々のfθレンズ系FTの光軸は光軸AXf2とする。
図3において、描画ユニットU1(並びにU2~U6)内には、ミラーM30、レンズL6、レンズL7、石英製の傾斜可能な平行平板HVP、レンズL8、L9、ミラーM31、偏光ビームスプリッタPBS、開口絞りAP、1/4波長板QW、ミラーM32、第1シリンドリカルレンズCYa、レンズL10、ミラーM33、レンズL11、ミラーM34、M35、M36、8面のポリゴンミラーPM、fθレンズ系FT、ミラーM37、第2シリンドリカルレンズCYbが、その順に配置される。ミラーM30は、入射するビームLB1の進行方向が-Xt方向になるようにビームLB1を90度に反射させる。ミラーM30で反射されたビームLB1の光路に沿って配置されるレンズL6、L7、L8、L9は、ミラーM30で反射された細いビームLB1(直径が1mm~0.5mm程度)を、数mm以上(5~10mmの範囲)の直径の平行光束に拡大するビームエキスパンダー系を構成する。
平行平板HVPは、ビームエキスパンダー系のレンズL6~L9の間の光路中に設けられ、Zt軸と平行な回転軸AXhの回りに回転(傾斜)可能に構成される。平行平板HVPの傾斜量を変えることにより、基板P上に投射されるスポット光SPの位置を副走査方向(Xt方向、基板Pの移動方向である副走査方向)に、スポット光SPの実効的な直径φpの数倍~十数倍の距離範囲でシフトさせることができる。偏光ビームスプリッタPBSは、レンズL9を通って拡大されてミラーM31で-Yt方向に反射されるビームLB1(平行光束)を入射する。ビームLB1を直線P偏光とすると、偏光ビームスプリッタPBSは、ビームLB1を偏光分離面で99%以上の強度で反射させて、後段の開口絞りAPに向かわせる。開口絞りAPの円形開口を透過したビームLBは、1/4波長板QWを透過する際に直線偏光から円偏光に変換される。
1/4波長板QWを透過したビームLB1(平行光束)は、ミラーM32によって-Zt方向に反射され、第1シリンドリカルレンズCYa(母線がYt軸と平行)に入射し、空間中の面PvにおいてXt方向の幅が極めて小さく、Yt方向に数mm(開口絞りAPの開口径と同じ)の長さで延びたスリット状の強度分布に集光される。面Pvで一次元方向のみ収斂されたビームLB1は、2枚組の球面レンズ系の初群の球面レンズL10を通って、ミラーM33で+Xt方向に反射された後、2枚組の球面レンズ系の後群の球面レンズL11を通って+Xt方向に進む。球面レンズL11から射出した後のビームLB1は、ミラーM34によって+Zt方向に反射された後、ミラーM35によって+Yt方向に反射される。ミラーM34とミラーM35は、ミラーM35から+Yt方向に進むビームLB1の主光線(中心光線)とfθレンズ系FTの光軸AXf1とがXtYt面と平行な面内で互いに直交するように配置されている。ミラーM35から+Yt方向に進むビームLB1は、fθレンズ系FTの光軸AXf1を挟んでミラーM35の反対側に配置されるミラーM36によって反射され、ポリゴンミラーPMの反射面RPaに投射される。
第1シリンドリカルレンズCYaと2枚組の球面レンズ系の作用によって、球面レンズL11を通った直後でミラーM34に入射するビームLB1は、Zt方向に関してはほぼ平行光束の状態となり、Yt方向に関しては収斂光束の状態となる。なお、図3では球面レンズ系を主点間距離の調整の為に球面レンズL10、L11の2枚で構成したが、1枚の球面レンズだけで構成しても良い。
ミラーM36の反射面は、Zt軸と平行であると共にXtZt面と平行で光軸AXf1を含む面に対して22.5°の挟角で配置される。これにより、ミラーM36からポリゴンミラーPMの反射面RPaに向かうビームLB1の主光線(中心光線)、即ち第1シリンドリカルレンズCYaや球面レンズ系(レンズL10、L11)の光軸の延長で、ミラーM36からポリゴンミラーPMまでの光軸は、XtYt面と平行な面内で、fθレンズ系FTの光軸AXf1に対して45°の角度に設定される。また、図3において、ミラーM36で反射してポリゴンミラーPMの反射面RPaに向かうビームLB1は、Zt方向に関してはポリゴンミラーPMの反射面RPa上で集光するように収斂光束の状態となり、XtYt面と平行な面内ではほぼ平行光束の状態となり、反射面RPa上では主走査方向、即ちポリゴンミラーPMの回転中心軸AXpを中心とする内接円の接線方向にスリット状に延びた強度分布となるように集光される。
ポリゴンミラーPMの反射面RPaで反射されたビームLB1は、テレセントリックなfθレンズ系FTを通った後、ミラーM37で-Zt方向に直角に反射されて、第2シリンドリカルレンズCYb(母線の方向はYt方向)に入射し、基板P上にスポット光SPとして集光される。本実施の形態では、ミラーM37で-Zt方向に直角に折り曲げられて、基板Pの表面(回転ドラムDRの外周面)と垂直になるfθレンズ系FTの光軸AXf1と、ミラーM30に向けて-Zt方向に入射するビームLB1の中心光線とが、Zt軸と平行な線分LE1(他の描画ユニットU2~U6の各々については線分LE2~LE6とする)と同軸となるように設定されている。そのような設定によって、描画ラインSL1を基板P(XtYt面と平行な面)内で微少量傾ける際に、図3に示したミラーM30~第2シリンドリカルレンズCYbまでの各光学部材を一体的に支持する筐体(ユニット支持フレーム)の全体を、線分LE1を中心に微少回転させることが可能となる。このように、描画ユニットU1(他のユニットU2~U6も同様)の支持フレーム全体を線分LE1(LE2~LE6)の回りに微少回転可能とする機構については、例えば国際公開第2016/152758号に開示されている。
また、本実施の形態では、被走査面に設置される被照射体(基板P、又は回転ドラムDRの外周面)の表面にスポット光SPを投射した際に発生する反射光の強度を検出する為に、光電センサDTRとレンズ系GFとが設けられる。被照射体の表面からの反射光(特に正規反射光)は、第2シリンドリカルレンズCYb、fθレンズ系FT、ポリゴンミラーPMの反射面RPa、ミラーM36、M35、M34、球面レンズL11、ミラーM33、球面レンズL10、第1シリンドリカルレンズCYa、ミラーM32、1/4波長板QW、開口絞りAPを介して、偏光ビームスプリッタPBSまで戻ってくる。被照射体の表面に投射されるスポット光SPは円偏光であり、その反射光も円偏光成分を多く含んでいる為、反射光が1/4波長板QWを透過して偏光ビームスプリッタPBSに向かうとき、その偏光特性は直線S偏光に変換される。その為、被照射体の表面からの反射光は偏光ビームスプリッタPBSの偏光分離面を透過してレンズ系GFに入射する。レンズ系GFによって被照射体からの反射光が光電センサDTRの受光面に集光されるように、光電センサDTRの受光面は被走査面上のスポット光SPと光学的に共役な関係に設定される。
なお、図3では図示を省略したが、国際公開第2015/166910号、又は国際公開第2016/152758号に開示されているように、描画用のビームLB1が投射されるポリゴンミラーPMの反射面RPaの回転方向の1つ手前の反射面RPbには、ポリゴンミラーPMの各反射面が描画開始直前の角度位置になったことを表すパルス状の原点信号を出力する為の原点センサ用の送光ビームが投射される。また、図3に示した描画ユニットU1の内部の詳細構成は、他の描画ユニットU2~U6でも同一であるが、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々は、図3の描画ユニットU1の全体を、線分LE1を中心に180度回転させた向きに設置される。
ここで、再び図2を参照して、パターン描画装置EXの構成を更に説明する。図3に示した描画ユニットU1を含む奇数番の描画ユニットU3、U5は、線分LE1、LE3、LE5の各々の延長線(即ち、fθレンズ系FTの光軸AXf1の延長線)が、図2のY方向から見て回転ドラムDRの回転中心軸AXoに向かうと共に、線分LE1、LE3、LE5が中心面CPoに対して角度-θcだけ反時計方向に傾くように設置される。一方、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6は、線分LE2、LE4、LE6の各々の延長線(即ち、fθレンズ系FTの光軸AXf2の延長線)が、図2のY方向から見て回転ドラムDRの回転中心軸AXoに向かうと共に、線分LE2、LE4、LE6が中心面CPoに対して角度+θcだけ時計方向に傾くように設置される。角度±θcは、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5と偶数番の描画ユニットU2、U4、U6とが空間的に干渉しない(ぶつからない)範囲で、なるべく小さくなるように設定される。
本実施の形態において、複数のアライメント系ALGnはY方向に所定間隔で並べられて、それぞれ基板P上のマーク等を検出する対物レンズ系を備える。それらの対物レンズ系を介して基板P上に設定される検出領域(観察視野)は、基板Pの移動方向(回転ドラムDRの外周面の周回方向)に関して、描画ユニットU1~U6の各々による描画ラインSL1~SL6の位置よりも上流側に配置される。その検出領域(観察視野)の中心を通る対物レンズ系の各々の光軸AXsの延長線は、回転ドラムDRの回転中心軸AXoに向かうと共に、検出領域(観察視野)の位置で基板Pの表面又は回転ドラムDRの外周面と垂直になるように設定される。アライメント系ALGnの先端付近には基準マーク(基準指標マーク)を形成した基準指標部材としての基準バー部材RBが付設されている。基準バー部材RBの基準マークは、対物レンズ系の各々による検出領域(観察視野)の相互の位置関係、又は描画ユニットU1~U6の各々による描画ラインSL1~SL6の相互の位置関係をキャリブレーションする際、或いは描画ラインSL1~SL6の位置と複数の検出領域の各位置との周方向(基板Pの移動方向)の間隔(ベースライン長)や位置関係を計測する際に使われる。アライメント系ALGnの各々の光軸AXsは、XZ面と平行な面内で見ると、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の各々による描画ラインSL1、SL3、SL5の角度θcよりも大きい角度θaだけ中心面CPoから反時計方向に傾くように設定される。
図4は、図2に示した回転ドラムDRとアライメント系ALGnと基準バー部材RBとの配置関係を示す斜視図であり、直交座標系XYZは先の図1又は図2の直交座標系XYZと同じに設定される。本実施の形態では、4つのアライメント系ALG1~ALG4がY方向に所定の間隔で直線的に配置され、アライメント系ALG1の対物レンズ系OBLの光軸AXsは、対物レンズ系OBLと基板P(回転ドラムDRの外周面)との間に配置された平面ミラーMbとキューブ型のビームスプリッタBS1によって折り曲げられ、基板P上の検出領域(観察視野)AD1の中心点を通るように設定される。図4では符号を省略したが、他のアライメント系ALG2、ALG3、ALG4の各々にも、同様の対物レンズ系OBL、平面ミラーMb、キューブ型のビームスプリッタBS1(合成光学部材)が設けられ、アライメント系ALG2、ALG3、ALG4の各々の光軸AXsも、それぞれ基板P上に設定される検出領域(観察視野)AD2、AD3、AD4の中心点を通るように設定される。なお、本実施の形態では、アライメント系ALG1を第1のアライメント系とし、アライメント系ALG4を第2のアライメント系とするが、4つのアライメント系ALG1~ALG4のうちの任意の1つを第1のアライメント系とし、残りの3つのアライメント系のうちの任意の1つを第2のアライメント系としても良い。
基準バー部材RBは、低熱膨張係数の材料(インバー、セラミックス、石英等)でY方向に細長く成型され、4つのアライメント系ALG1~ALG4の各々のビームスプリッタBS1の近傍に付設される。基準バー部材RBの材料としては、軽量化も可能なセラミックスにすることが望ましく、特に、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)の3成分で構成されるコージライト系セラミックスにすると良い。基準バー部材RBのビームスプリッタBS1と対向する参照面RBa上には、アライメント系ALG1の基板P上の検出領域AD1と対応した位置に検出領域AR1が設定される。参照面RBaの検出領域AR1内には、ビームスプリッタBS1と平面ミラーMbとを介して対物レンズ系OBLで観察可能な基準マーク(基準パターン)が形成されている。従って、本実施の形態におけるアライメント系ALGnは、対物レンズ系OBLの先端側に配置されたビームスプリッタBS1を介して、検出領域AD1内に現れる基板P上のアライメントマーク(又は回転ドラムDRの外周面上に形成された基準パターン)と、検出領域AR1内に設定される基準バー部材RBの参照面RBa上の基準マークとを、同時に、又は択一的に観察することが可能となる。
図5は、アライメント系ALGnの対物レンズ系OBL、平面ミラーMb、立方体状のキューブ型のビームスプリッタBS1、及び基準バー部材RBの配置関係を、図4のXY面と平行な面内で見た図である。なお、直交座標系XYZは図4、又は図2中の直交座標系XYZと同じに設定される。対物レンズ系OBLから延長される光軸AXsは、平面ミラーMbによって、斜め下方(-Z方向)に折り曲げられる。平面ミラーMbの反射面は、XZ面内で見ると、対物レンズ系OBLから延びる光軸AXsと垂直な面に対して角度θkだけ反時計回りに傾いている。本実施の形態の場合、アライメント系ALGnを図2のように奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の下方空間に配置する関係から、対物レンズ系OBLを通る光軸AXsはXZ面内において一定の角度だけXY面に対して傾いたものとなる。図2で説明したように、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の各線分LE1、LE3、LE5は、中心面CPoに対して角度-θcだけ傾けてある為、それに合わせて、対物レンズ系OBLを通る光軸AXsも、XY面に対して角度-θcだけ傾けられている。従って、XZ面内で見たとき、平面ミラーMbの反射面は、YZ面と平行な面に対して角度-(θk+θc)だけ反時計回りに傾いたものとなる。
平面ミラーMbで折り返されてビームスプリッタBS1に向かう光軸AXsは、元の光軸AXsに対して-Z方向に角度2θkだけ傾いたものとなり、直交座標系XYZのXY面と平行な面に対しては、角度-(θc+2θk)だけ傾いたものとなる。ビームスプリッタBS1は2つの直角プリズム(例えば石英製)の斜面同士を接合した光分割面Bspを有し、XZ面内で見る断面形状は全体でほぼ正方形に成型されている。ビームスプリッタBS1の平面ミラーMb側の面PBaと基準バー部材RB側の面PBcとは互いに平行であると共に、それぞれ光分割面Bspに対して45度に成型されている。更に、ビームスプリッタBS1の基板P(回転ドラムDR)と対向する側の面PBbは、面PBaと面PBcの各々と直交し、光分割面Bspに対しても45度に成型されている。そして、ビームスプリッタBS1の面PBbは基板Pの表面(接平面)と平行に設定され、面PBcは基準バー部材RBの参照面RBaと平行に設定される。
また、ビームスプリッタBS1の面PBaを垂直に通る光軸AXsは、面PBcを垂直に通って基準バー部材RBの参照面RBaと垂直になるように設定される。さらに、ビームスプリッタBS1の面PBaを垂直に通って光分割面Bspで90度に反射された光軸AXsは、面PBbを垂直に通って基板Pの表面(接平面)と垂直になるように設定される。対物レンズ系OBLの先端面から基板Pの表面までの光路長と、対物レンズ系OBLの先端面から基準バー部材RBの参照面RBaまでの光路長とは等しく設定され、ビームスプリッタBS1は、対物レンズ系OBLから平面ミラーMbの間の光路を遮蔽しないように配置される。図5から明らかなように、対物レンズ系OBLの先端から基板Pの表面、又は参照面RBaまでの作動距離(ワーキングディスタンス)は、平面ミラーMbとビームスプリッタBS1を介在させるので、長く設定される。その作動距離は、一例として10cm以上に設定される。
次に、アライメント系ALGn(ALG1~ALG4)の全体的な概略構成を、図6の斜視図を参照して説明する。図6の直交座標系XYZは、図4、図5の直交座標系XYZと同じに設定される。アライメント系ALGnには、対物レンズ系OBLの光軸AXsと同軸に配置されるレンズ系Gb、ビームスプリッタBS2、撮像部IMS、照明系ILUが設けられている。照明系ILUからの照明光ILbは、ミラーMaで反射されてビームスプリッタBS2の下方(-Z方向)の面から入射し、光分割面で反射されてレンズ系Gbを透過して対物レンズ系OBLに入射する。照明光ILbは、対物レンズ系OBLを通して、基板P側の検出領域ADn(AD1~AD4)、並びに基準バー部材RBの参照面RBa側の検出領域ARn(AR1~AR4)を一様な照度分布で照明する。照明光ILbの波長範囲は、基板P上に形成された感光性機能層(フォトレジスト等)の感光波長域から外れた長波長側に設定され、例えば470nm~650nmに設定される。
基板Pの移動に伴って、検出領域ADn(AD1~AD4)内に基板P上のアライメントマーク(基板マーク)MKn(MK1~MK4)が現れると、マークMKnを含む検出領域ADn内からの反射光の2次元的な強度分布が変化する。検出領域ADnからの反射光は、ビームスプリッタBS1、平面ミラーMb、対物レンズ系OBL、レンズ系Gb、ビームスプリッタBS2を順に通って撮像部IMSで受光される。撮像部IMSは、CCD又はCMOS等の2次元撮像素子を有しており、マークMKnの像を撮像する。また、基準バー部材RBの参照面RBa上の検出領域ARnも照明光ILbによって照明されているので、参照面RBa上の検出領域ARnからの反射光も、ビームスプリッタBS1、平面ミラーMb、対物レンズ系OBL、レンズ系Gb、ビームスプリッタBS2を順に通って撮像部IMSで受光される。
なお、アライメントマークMK1は基板Pの幅方向(Y方向)の一方の端側に、基板Pの長尺方向に沿って一定の間隔(例えば、5~20mm)で形成され、アライメントマークMK4は基板Pの幅方向(Y方向)の他方の端側に、基板Pの長尺方向に沿って一定の間隔(例えば、5~20mm)で形成される。アライメントマークMK2、MK3は、基板Pの幅方向の内側であって、長尺方向に一定間隔で並ぶ複数の被露光領域の間の余白部、或いは、被露光領域内でデバイス用のパターンが形成されない空白領域に形成される。
基板P上に設定される矩形状の検出領域ADnの大きさと、基準バー部材RBの参照面RBa上に設定される矩形状の検出領域ARnの大きさとを揃えた場合、撮像部IMSの撮像素子の撮像面内には、基板P上のアライメントマークMKn(MK1~MK4)の像と、参照面RBa上の検出領域ARn内に形成された基準マークRMn(RM1~RM4)の像とが同時に結像するタイミングが存在するので、撮像面内ではアライメントマークMKnの像と基準マークRMnの像とが互いに重ならないように、アライメントマークMKnと基準マークRMnの各々の配置や形状が設定されている。アライメントマークMKn(MK1~MK4)や基準マークRMn(RM1~RM4)の配置や形状の詳細は後述する。
図7は、図4に示した描画ユニットU1~U6の各々による描画ラインSL1~SL6とアライメント系ALG1~ALG4の各々の検出領域AD1~AD4との配置関係と、回転ドラムDRの回転角度の変化(基板Pの周方向の位置変化)を計測するエンコーダ計測系の配置とを、直交座標系XYZのXY面と平行な面内で見た図である。回転ドラムDRのY方向の両端のシャフトSftの各々には、中心軸AXoと同軸にスケール円盤SDa、SDb(同一直径)が回転ドラムDRと一緒に回転するように固定されている。スケール円盤SDa、SDbの直径は回転ドラムDRの直径と同じことが望ましいが、直径の相対差が±20%以内であれば良い。スケール円盤SDa、SDbの円筒面状の外周面には、周方向に一定のピッチで刻線された回折格子状の目盛Gmが形成されている。なお、目盛Gmは回転ドラムDRのY方向の両端側の各々の外周面に直接形成しても良い。
スケール円盤SDaの周囲には、目盛Gmの周方向の移動量を計測する光学式の3つのエンコーダヘッドEHa1、EHa2、EHa3がスケール円盤SDaの外周面の周方向に並んで設けられ、スケール円盤SDbの周囲には、目盛Gmの周方向の移動量を計測する光学式の3つのエンコーダヘッドEHb1、EHb2、EHb3がスケール円盤SDbの外周面の周方向に並んで設けられる。一対のエンコーダヘッドEHa1、EHb1による目盛Gmの周方向の読取り位置は、アライメント系ALG1~ALG4の各々のY方向に一列に並ぶ検出領域AD1~AD4の周方向の角度位置と同じになるように設定される。同様に、一対のエンコーダヘッドEHa2、EHb2による目盛Gmの周方向の読取り位置は、Y方向に一列に並ぶ奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の周方向の角度位置と同じになるように設定され、一対のエンコーダヘッドEHa3、EHb3による目盛Gmの周方向の読取り位置は、Y方向に一列に並ぶ偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6の周方向の角度位置と同じになるように設定される。このようなエンコーダヘッドの配置を持つエンコーダ計測システムは、例えば国際公開第2013/146184号に開示されているが、計測のアッベ誤差を最小にすることができる。
また、図7において、6つの描画ラインSL1~SL6によって継ぎ露光可能なY方向の最大寸法をWAy、基板Pの幅方向(Y方向)の寸法(短尺長)をLPyとすると、基板Pの短尺長LPyは、回転ドラムDRの外周面のY方向の寸法よりも小さく、且つY方向の両端側に設定されるアライメント系ALG1、ALG4の各々の検出領域AD1、AD4のY方向の間隔寸法よりも大きくなるように設定される。基板P上の-Y方向の端部にX方向(副走査方向)に一定間隔(例えば、5~20mm)で形成されるアライメントマークMK1は、アライメント系ALG1の検出領域AD1内に現れるような位置に形成され、基板P上の+Y方向の端部にX方向(副走査方向)に一定間隔(例えば、5~20mm)で形成されるアライメントマークMK4は、アライメント系ALG4の検出領域AD4内に現れるような位置に形成される。さらに、アライメント系ALG1、ALG4の各検出領域AD1、AD4のY方向の間隔寸法は、最大寸法WAyの範囲内に設定される。なお、本実施の形態では、描画ラインSL1~SL6の各々による線状の領域、又は描画ラインSL1~SL6の全体で囲まれる長方形の領域がパターン形成領域に相当する。
図8は、描画ユニットU1~U6、スケール円盤SDa、エンコーダヘッドEHa1、EHa2、EHa3、基準バー部材RBの配置関係と支持構造の一例を示し、図8Aは、図2と同様に直交座標系XYZの-Y方向側から+Y方向側に向けてスケール円盤SDaの周囲を見た図であり、図8Bは、図8A中の中心面CPoに沿って図8Aの構造を破断したときの端面を+X方向側から-X方向側に向けて見た部分断面図である。
図8A、図8Bにおいて、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5と偶数番の描画ユニットU2、U4、U6とは、中心面CPoを挟んで対向するように支持フレーム部100に取り付けられる。支持フレーム部100は回転ドラムDRの中心軸AXoと平行にY方向に延びた棒状に形成され、パターン描画装置EXの本体フレームに固定されている。支持フレーム部100は、描画ユニットU1~U6の各々をそれぞれの線分LE1~LE6の回りに微小回転可能に軸支する。このような構造は国際公開第2016/152758号に開示されている。
支持フレーム部100の-Y方向側の端部側(スケール円盤SDa側)には、3つのエンコーダヘッドEHa1、EHa2、EHa3と基準バー部材RBとが固定される円弧状の支持板部103Aと、その支持板部103Aを支持フレーム部100の-Y方向側の端部側に固定する支持板部102Aとが設けられる。不図示ではあるが、支持フレーム部100の+Y方向側の端部側(スケール円盤SDb側)には、同様に、エンコーダヘッドEHb1、EHb2、EHb3と基準バー部材RBとが固定される円弧状の支持板部103Bと、その支持板部103Bを支持フレーム部100の+Y方向側の端部側に固定する支持板部102Bとが設けられる。さらに、Y方向に離れて平行に位置する2つの円弧状の支持板部103A、103Bを連結する為に、Y方向に延設された連結バー部材104a、104b、104cが円弧に沿った3ヶ所の各々に設けられる。以上の構成において、支持フレーム部100と、支持板部102A、102B、103A、103Bと、連結バー部材104a、104b、104cとは、低熱膨張係数の金属材料やセラミックス材料を用いて一体化するように組み立てられ、機械的な剛性が高く温度変化による構造変形が極めて小さいメトロロジー・フレーム(計測フレーム)として構成される。
基準バー部材RBは、直交座標系XYZ内で、先の図4~6に示したような姿勢で、Y方向に離れた2つの円弧状の支持板部103A、103Bの各々に橋渡しされるように固定される。支持板部103A、103Bの各々に設けられる微調整機構106は、基準バー部材RBのXZ面内での2次元的な位置やXZ面内での傾き等の姿勢を数ミクロン以下のオーダーで微調整する。支持板部103A側の微調整機構106と支持板部103B側の微調整機構106とを個別に調整することによって、基準バー部材RBの参照面RBaのYZ面内での傾き調整や参照面RBaの中心軸AXoとの平行度の調整等を行うこともできる。その微調整機構106は、主に装置のキャリブレーション時や保守作業時に使われる。
次に、図9を参照してアライメント系ALGn(ALG1~ALG4)の光学系の詳細について説明する。図9Aに示すアライメント系ALGnは、先の図6に示した構成と同じであるが、説明を簡単にする為、図6中の平面ミラーMbを省略して対物レンズ系OBLから先の光路を展開してある。アライメント系ALGnの照明系ILUには、対物レンズ系OBLによって規定される基板P(又は回転ドラムDRの外周面)上の検出領域ADn(AD1~AD4)と、基準バー部材RBの参照面RBa上の検出領域ARn(AR1~AR4)との各々と光学的に共役な関係(結像関係)に設定され、検出領域ADn、ARnの各々に適した照明範囲を設定する為に、交換可能な複数の照明視野絞りFAnが設けられている。その照明視野絞りFAnは、図9Bに示すように、例えば照明視野絞りFA1、FA2、FA3の3種類で構成される。典型的な照明視野絞りFA1は、検出領域ADn(AD1~AD4)と検出領域ARn(AR1~AR4)との全体を同時に照明光ILBで照明するように、検出領域ADn、ARnの双方と相似形の矩形の開口部を有する。
図9Aにおいて、照明視野絞りFA1の開口部を透過した照明光ILbは、キューブ型のビームスプリッタBS2で反射されて、レンズ系Gb、対物レンズ系OBLを通ってビームスプリッタBS1で振幅分割され、基板P上の検出領域ADn内を一様の強度分布で照明すると共に、基準バー部材RBの参照面RBa上の検出領域ARn内を一様の強度分布で照明する。参照面RBa上の検出領域ARn内には、基準マークRMn(RM1~RM4)が定常的に所定位置に形成されているので、検出領域ARnからの反射光(基準マークRMnからの正反射光、散乱光、回折光を含む)はビームスプリッタBS1を透過した後、対物レンズ系OBL、レンズ系Gb、ビームスプリッタBS2を通って、結像光束Bmaとなって撮像部IMSに入射する。撮像部IMSは、レンズ系Gcと2次元の撮像素子DISとを備え、撮像素子DISの撮像面は、基板Pの表面(又は回転ドラムDRの外周面)と基準バー部材RBの参照面RBaとの各々と光学的に共役な関係(結像関係)に設定される。
図9Cに示すように、撮像素子DISの撮像面での撮像領域DIS’は実質的に検出領域ADn、ARnと相似形であって、対物レンズ系OBLとレンズ系Gbとによって規定される円形の像側視野範囲Imc内に包含される矩形に設定される。検出領域ARnからの反射光によって、撮像領域DIS’内の特定の位置に基準マークRMnの拡大像RMn’が形成される。本実施の形態では、基準バー部材RBの参照面RBaに形成される基準マークRMnは、検出領域ARn(撮像領域DIS’)内の4隅の各々に配置されるL字状の線状パターンで構成される。なお、図9Cにおいて、撮像領域DIS’を縦方向に二分する線と横方向に二分する線との交点を中心点CCnとする。中心点CCnは撮像面の中心部に位置する特定の撮像画素としても良い。
一方、照明視野絞りFA1の開口部を透過した照明光ILbによって、基板P上の検出領域ADn内が一様の強度分布で照明された状態で、検出領域ADn内にアライメントマークMKnが現れると、アライメントマークMKnからの正反射光、散乱光、回折光を含む反射光がビームスプリッタBS1を透過した後、対物レンズ系OBL、レンズ系Gb、ビームスプリッタBS2を通って結像光束Bmaとなって撮像部IMSに入射する。撮像部IMSの撮像素子DISの撮像面と基板Pの表面とが結像関係になっているので、撮像素子DISの撮像領域DIS’内には、アライメントマークMKnの拡大像MKn’が形成される。基板Pが一定の速度で一方向に移動し続けているので、アライメントマークMKnの拡大像MKn’は、撮像領域DIS’内を矢印Xpの方向(X方向)に通過していく。また、撮像領域DIS’内での基準マークRMnの拡大像RMn’の位置と、アライメントマークMKnの拡大像MKn’の位置とは、互いに重ならないように設定されている。図9Cでは、アライメントマークMKn(拡大像MKn’)の形状を、先の図7のアライメントマークMKnの形状に合わせて十字状の線パターンとしたが、その形状は、撮像素子DISからの映像信号を画像解析する画像処理装置によって認識可能な形状であれば、矩形(正方形)、三角形(楔形)、円形等のいずれであっても良い。
また、照明系ILUの照明視野絞りFAnを、図9Bに示した照明視野絞りFA2に切り替えると、基準バー部材RBの参照面RBa上に設定される検出領域ARn中の4隅に位置する基準マークRMnに向かう照明光が遮蔽され、撮像素子DISの撮像領域DIS’内には基板P上のアライメントマークMKnの拡大像MKn’のみが現れる。さらに、照明系ILUの照明視野絞りFAnを、図9Bに示した照明視野絞りFA3に切り替えると、基板P上に設定される検出領域ADn内の中央部分でアライメントマークMKnが通過し得る部分に向かう照明光が遮蔽され、参照面RBa上の検出領域ARn中の4隅の部分に位置する基準マークRMnに照明光が照射されるので、撮像素子DISの撮像領域DIS’内には基準マークRMnの拡大像RMn’のみが現れる。
図10Aは、基準バー部材RBの参照面RBa上のY方向の4ヶ所に形成される基準マークRM1~RM4(RM3は省略)の配置の一例を示す図である。図10Aでは、参照面RBaと平行な平面を直交座標系X’Y’Z’のX’Y’面とし、参照面RBaの法線と平行な軸線をZ’軸とする。ここでも、直交座標系X’Y’Z’のY’軸は直交座標系XYZのY軸と平行である。基準バー部材RBの参照面RBa上には、Y’方向(Y方向)に延びた仮想的な直線CRyに沿って、基準マークRM1~RM4がY’方向に所定の間隔寸法で形成されている。即ち、基準マークRM1~RM4の各々の中心点CR1、CR2、CR3、CR4は、仮想的な直線CRy上に精密に位置決めされている。本実施の形態では、基準マークRM1の中心点CR1と基準マークRM2の中心点CR2とのY’方向(Y方向)の間隔寸法をLBS12とすると、他の基準マークRM3の中心点CR3と中心点CR2とのY’方向(Y方向)の間隔寸法LBS23と、基準マークRM4の中心点CR4と中心点CR3とのY’方向(Y方向)の間隔寸法LBS34とのいずれもが間隔寸法LBS12と等しく設定されるものとする。しかしながら、間隔寸法LBS12、間隔寸法LBS23、及び間隔寸法LBS34は、それぞれ異なった値に設定しても構わない。
図10Bは、アライメント系ALG1の撮像素子DISの撮像領域DIS’と、基準バー部材RB上の基準マークRM1とのX’Y’面内での配置関係の一例を誇張して表したものであり、図10Cは、アライメント系ALG2の撮像素子DISの撮像領域DIS’と基準バー部材RB上の基準マークRM2とのX’Y’面内での配置関係の一例を誇張して表したものである。図10Bにおいて、2次元の撮像領域DIS’のX’方向とY’方向との中心点(基準点)をCC1とすると、基準バー部材RBとアライメント系ALG1との相対的な取付け誤差によって、基準マークRM1のX’、Y’方向の中心点CR1と撮像領域DIS’の中心点CC1とは、所定の設置誤差ΔC1だけずれたものとなっている。図10Bでは、その設置誤差ΔC1は、基準マークRM1の中心点CR1を基準(原点)にして、X’方向に+ΔXC1(μm)、Y’方向に+ΔYC1(μm)となっている。
同様に、図10Cにおいて、2次元の撮像領域DIS’のX’方向とY’方向との中心点(基準点)をCC2とすると、基準バー部材RBとアライメント系ALG2との相対的な取付け誤差によって、基準マークRM2のX’、Y’方向の中心点CR2と撮像領域DIS’の中心点CC2とは、所定の設置誤差ΔC2だけずれたものとなっている。図10Cでは、その設置誤差ΔC2は、基準マークRM2の中心点CR2を基準(原点)にして、X’方向に-ΔXC2(μm)、Y’方向に-ΔYC2(μm)となっている。なお、撮像領域DIS’の中心点CC1、CC2とは、撮像面に2次元のマトリックス状に分布する多数の撮像画素のうちの中央に位置する特定の1つの撮像画素に対応したものとするが、厳密に撮像領域DIS’の真の中心点である必要は無く、例えばX’方向又はY’方向に真の中心点から数個分~十数個分だけずれた特定の撮像画素の位置を中心点(基準点)CC1、CC2としても良い。
また、他のアライメント系ALG3、ALG4の各々についても、同様に、撮像領域DIS’の中心点CC3、CC4の各々と基準マークRM3、RM5の中心点CR3、CR4との間に、設置誤差ΔC3、ΔC4があるものとする。それらの設置誤差ΔC1、ΔC2、ΔC3、ΔC4に関する情報は、装置の組み立て時、装置稼働中の適当なタイミングで実施される調整(キャリブレーション)作業時、或いは装置の保守点検(メンテナンス)の作業時に、アライメント系ALG1~ALG4の各々の撮像素子DISからの映像信号の画像解析によって求められ、適宜更新することができる。
図11は、本実施の形態によるパターン描画装置EXに設けられる制御装置の一部分の概略的な構成を示すブロック図である。図11において、先の各図で説明した部材や部品と同じものには同一の符号を付してあるが、回転ドラムDRの外周面DRsと、スケール円盤SDa(SDb)の外周面に刻設された目盛Gmとを、説明を簡単にする為に平面に展開した状態で表す。その為、図11では、回転ドラムDRの外周面DRsと目盛Gmとが、矢印arxのように水平方向(X方向)に一緒に直進するものとする。また、回転ドラムDRの外周面DRsには、周方向に沿って一定の間隔で基準パターンFMa、FMb、FMc・・・が形成されている。基準パターンFMa、FMb、FMc・・・の各々は、アライメント系ALGn(ALG1~ALG4)の各々による検出領域ADn(AD1~AD4)内に現れるように、Y方向(回転ドラムDRの中心軸AXoの方向)の位置や寸法が設定されて、回転ドラムDRの外周面DRsに形成されている。回転ドラムDRに形成する基準パターンFMa、FMb、FMc・・・の構成については、例えば国際公開第2014/034161号に開示されている。
なお、図11では、支持フレーム部100の軸支される奇数番の描画ユニットU1、U3、U5のみを示し、先の図7、図8で示したエンコーダヘッドEHa1(EHb1)、EHa2(EHb2)、EHa3(EHb3)のうち、アライメント系ALGnの検出領域ADnの周方向の方位と奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の描画ラインSL1、SL3、SL5(露光位置)の周方向の方位とに配置されるエンコーダヘッドEHa1(EHb1)、EHa2(EHb2)のみを示す。また、基準バー部材RBは、図8に示したように、支持板部102A、102B、103A、103Bを介して、描画ユニットU1~U6を支持する支持フレーム部100と堅牢に結合されている。
そのエンコーダヘッドEHa1(EHb1)の各々からの計測信号(例えば、位相が90度の2相信号)はカウンタ回路部200Aに入力され、カウンタ回路部200Aは、目盛Gmの格子ピッチの1/32~1/128の分解能で目盛Gmの移動量(即ち、回転ドラムDRの外周面DRs又は基板Pの移動量)に対応したデジタル計数値を計測情報ESa1(ESb1)として逐次出力する。同様に、エンコーダヘッドEHa2(EHb2)の各々からの計測信号(例えば、位相差が90度の2相信号)はカウンタ回路部200Bに入力され、カウンタ回路部200Bは、目盛Gmの格子ピッチ(例えば、20.48μm)の1/32、1/64、或いは1/128の分解能で目盛Gmの移動量(即ち、回転ドラムDRの外周面DRs又は基板Pの移動量)に対応したデジタル計数値を計測情報ESa2(ESb2)として逐次出力する。また、スケール円盤SDa、SDbの各々の目盛Gmには、1回転ごとに起点(ゼロ点位置)を表すゼロ点信号を、エンコーダヘッドEHa1(EHb1)、EHa2(EHb2)、EHa3(EHb3)の各々から発生させる為の原点パターンZZoが形成されている。
図11に示したカウンタ回路部200Aは、エンコーダヘッドEHa1(EHb1)が原点パターンZZoを検出した瞬間にデジタル計数値をゼロリセットし、カウンタ回路部200Bは、エンコーダヘッドEHa2(EHb2)が原点パターンZZoを検出した瞬間にデジタル計数値をゼロリセットする。スケール円盤SDa側の原点パターンZZoと、スケール円盤SDb側の原点パターンZZoとは、回転ドラムDRの回転方向(周方向)に関して、必ずしも厳密に同一の方位である必要は無く、概ね同じ方位、例えば角度差で±数度の範囲内に設定されていれば良い。一例として、レニショー製の光学式ロータリーエンコーダシステムを用いると、外周面にピッチ20μmでスケール目盛Gmが刻設されたスケール円盤SDa、SDbとしてのステンレス製リングとエンコーダヘッドとにより、スケール目盛Gmの周方向の移動量を0.1μm以下の分解能で計測することができる。即ち、カウンタ回路部200A、200B内のデジタルカウンタの最下位ビット(LSB)の変化を、基板Pの0.1μm程度の移動量に対応させることができる。
なお、スケール円盤SDa、SDbのスケール目盛Gmが刻設された外周面の半径をφgm、回転ドラムDRの外周面の半径をφdrとすると、回転ドラムDRの外周面に直接的にスケール目盛Gmを刻設しない限り、半径φgmと半径φdrを厳密に一致させることは難しい。そこで、カウンタ回路部200A、200B内には、エンコーダヘッドEHa1、EHb1、EHa2、EHb2、・・・の各々からの信号に基づいて最初にデジタル計数されるカウンタ値のLSBに対応した単位移動量(計測分解能)をΔLxとしたとき、回転ドラムDRの外周面の周方向の単位移動量ΔLxaを、ΔLxa=ΔLx・(φdr/φgm)の演算で換算する機能が設けられている。従って、図11に示したカウンタ回路部200A、200Bの各々から出力される計測情報ESa1、ESb1、ESa2、ESb2、・・・は、そのような換算によって、回転ドラムDRの外周面の周方向の移動量(又は移動位置)を直接的に表す値にすることができる。
また、基板Pの円筒面状に湾曲した表面の周方向の移動量や移動位置を精密に計測する必要もあるので、カウンタ回路部200A、200B内には、基板Pの厚みTpに基づいて、基板Pの表面の周方向の単位移動量ΔLxbを、ΔLxb=ΔLx・〔(φdr+Tp)/φgm〕の演算で換算する機能も設けられ、カウンタ回路部200A、200Bの各々は、計測情報ESa1、ESb1、ESa2、ESb2、・・・として、単位移動量ΔLxaの他に単位移動量ΔLxbに基づいて計測される移動量や移動位置を同時に出力する。一例として、回転ドラムDRの外周面の半径φdrを134.00mm、基板Pの厚みTpを100μmとし、回転ドラムDRを丁度1回転させた場合の回転ドラムDRの外周面の移動量(外周面の全周長距離)と、基板Pの表面の移動量とを比較してみる。
回転ドラムDRの外周面の移動量(全周長距離)は841.946mm〔=2π・φdr〕となり、基板Pの表面の移動量は848.229mm〔=2π・(φdr+Tp)〕となり、その差分(誤差長)ΔLfは約628.3μmとなる。その誤差長ΔLfは、回転ドラムDRの外周面の単位移動量ΔLxaに基づいて計測される移動量に対しては、+0.746%〔=ΔLf/(2π・φdr)〕と言った大きな誤差になる。従って、回転ドラムDRに基板Pが通紙される前の状態であって、回転ドラムDRの外周面上の基準パターンFMa、FMb、FMc・・・を検出するキャリブレーション等の段階では、回転ドラムDRの外周面に対応した単位移動量ΔLxaに基づいて計測される移動量や移動位置が用いられ、回転ドラムDRに基板Pが通紙された後の状態で、基板P上にパターンを露光したり、アライメントマークMKn(MK1~MK4)を検出したりする段階では、基板Pの表面に対応した単位移動量ΔLxbに基づいて計測される移動量や移動位置が用いられる。
奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の各々に設けられる光電センサDTRからの各光電信号(アナログ電圧)は、3つのアナログ/デジタル変換回路を含むADC部202Aに入力される。ADC部202Aは、描画ユニットU1(U3、U5)の光電センサDTRからの光電信号の強度を、描画ラインSL1(SL3、SL5)に沿ってY方向に走査されるスポット光の単位走査移動量ΔYsp(μm)毎にクロックパルスを発生するクロック信号LTCに基づいてデジタルサンプリングする。その単位走査移動量ΔYspは、図1に示した光源装置LSが周波数FPL(Hz)でパルス発振するファイバーアンプレーザ光源で、連続したパルス発振毎のスポット光が主走査方向(Y方向)に関してスポット光の直径の1/2以上で重なるようにスポット光の走査速度Vsp(μm/秒)を設定した場合、ΔYsp≧Vsp/FPLの関係になるように設定される。この関係において、ΔYsp=Vsp/FPLとした場合、単位走査移動量ΔYspはスポット光の直径の1/2程度となり、クロック信号LTCの周波数は光源装置LSの周波数FPLと同じになる。また、光源装置LSのパルス発振の為の周波数FPLの発光クロック信号を分周回路等で1/2の周波数にしてクロック信号LTCとして生成する場合は、ΔYsp=2・Vsp/FPLの関係となり、単位走査移動量ΔYspはスポット光の直径と同じになる。
ADC部202Aは、描画ラインSL1(SL3、SL5)に沿ったスポット光の1回の走査中に単位走査移動量ΔYsp毎にデジタルサンプリングされる多数のデジタルデータを画像処理部204Aに逐次転送する。画像処理部204Aは、ADC部202Aによってデジタルサンプリングされた奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の各々の光電センサDTRからの光電信号のデジタル波形データを、内部の画像メモリに逐次個別に記憶する。その際、画像メモリは、スポット光の1回の走査中に得られるデジタルデータの記憶アドレスを、カウンタ回路部200Bからの計測情報ESa2(又はESb2)の変化に基づいて逐次更新する。
これによって、画像処理部204A内の画像メモリには、描画ラインSL1、SL3、SL5の各々に沿ったスポット光の走査範囲で、回転ドラムDRの外周面DRsに形成された基準パターンFMa、FMb、FMc・・・等からの反射光や、基板P上に形成された反射率の異なる微細なパターン形状等からの反射光による2次元的な明暗画像データ(輝度情報)が生成される。
偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々に対しても、同様に、光電センサDTRからの光電信号をデジタル波形データに変換する不図示のADC部202Bと、画像メモリ内に偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々の光電センサDTRからの光電信号のデジタル波形データを個別に記憶する不図示の画像処理部204Bとが設けられる。ADC部202Bによる各光電センサDTRからの光電信号のデジタルサンプリングは、図11中のクロック信号LTCに基づいて行われるが、画像処理部204B内の画像メモリに一時的に記憶すべきデジタル波形データの記憶アドレスは、図11中のカウンタ回路部200Bからの計測情報ESa2(又はESb2)ではなく、図8A中のエンコーダヘッドEHa3(又はEHb3)からの計測信号(例えば、位相差が90度の2相信号)を計数する不図示のカウンタ回路部200Cからの計測情報(ESa3又はESb3とする)の変化に基づいて逐次更新される。なお、不図示のカウンタ回路部200Cも、エンコーダヘッドEHa3(EHb3)が原点パターンZZoを検出した瞬間にデジタル計数値をゼロリセットする。
以上の画像処理部204A(及び204B)において、画像メモリ内に記憶される2次元の画像データの主走査方向(Y方向)に関する画像中の位置(画素位置)は、デジタルサンプリング開始からのクロック信号LTCのクロックパルスの計数値によって決定され、副走査方向(X方向)に関する画像中の位置(画素位置)は、カウンタ回路部200B(及び200C)からの計測情報ESa2、ESb2(及びESa3、ESb3)によって決定される。それにより、画像処理部204A(及び204B)は、画像メモリ内に記憶される2次元の画像データに基づいて、回転ドラムDRの基準パターンFMa、FMb、FMc・・・、の2次元的な位置、即ち、スポット光による描画ラインSLn(SL1~SL6)に対する基準パターンFMa、FMb、FMc・・・、の相対的な位置を画像解析処理によって計測する。
回転ドラムDRの基準パターンFMa、FMb、FMc・・・、基準バー部材RBの基準マークRM1~RM4、或いは基板P上のアライメントマークMKn(MK1~MK4)を検出するアライメント系ALGn(ALG1~ALG4)の各々の撮像素子DISからの映像信号Vsgは画像解析部206に送られる。画像解析部206は、各撮像素子DISで撮像されて逐次送られてくる撮像領域DIS’の画像データ(例えば、1/30秒毎、又は1/60秒毎にリフレッシュされる1画面分のデータ)を、カウンタ回路部200Aからの計測情報ESa1(又はESb1)が指定されたトリガ位置に対応した計測値になった瞬間に画像メモリに一時的に記憶する。トリガ位置は、撮像対象が基準パターンFMa、FMb、FMc・・・、の場合、撮像領域DIS’内のほぼ中央に基準パターンFMa、FMb、FMc・・・、が位置するような回転ドラムDRの回転位置のときにカウンタ回路部200Aが出力する計測情報ESa1(又はESb1)を予め記憶することで設定される。
また、図7に示したように、アライメント系ALG1、ALG4が基板P上のアライメントマークMK1、MK4を撮像対象とする場合、設計上でアライメントマークMK1、MK4の副走査方向に関する間隔(例えば、5~20mm)が決まっているので、トリガ位置は、カウンタ回路部200Aからの計測情報ESa1(又はESb1)が、その間隔値に対応した計数値分だけ増加した回転ドラムDRの回転位置毎に設定される。
画像解析部206は、アライメント系ALGnによってアライメントマークMKnの位置を計測する場合は、画像メモリに記憶された画像データに基づいて、先の図9Cに示したように、撮像領域DIS’内の中心点CCnに対するアライメントマークMKnの拡大像MKn’の中心点の2次元的な位置ずれ量、或いは、撮像領域DIS’内に同時に現れている基準バー部材RBの基準マークRMnの拡大像RMn’に対するアライメントマークMKnの拡大像MKn’の中心点の2次元的な位置ずれ量を画像解析処理によって計測する。また、画像解析部206は、アライメント系ALGnによって回転ドラムDRの基準パターンFMa、FMb、FMc・・・、の位置を計測する場合も、先の図9Cと同様に、撮像領域DIS’内の中心点CCnに対する基準パターンFMa、FMb、FMc・・・、の拡大像の中心点の2次元的な位置ずれ量、或いは、撮像領域DIS’内に同時に現れている基準バー部材RBの基準マークRMnの拡大像RMn’に対する基準パターンFMa、FMb、FMc・・・、の拡大像の中心点の2次元的な位置ずれ量を画像解析処理によって計測する。
さらに画像解析部206は、先の図10B、図10Cで説明したように、アライメント系ALGnの各撮像領域DIS’内の中心点CCn(CC1~CC4)の各々と、基準バー部材RBの基準マークRMnの中心点CRn(CR1~CR4)の各々との設置誤差ΔCn(ΔC1~ΔC4)の情報を、画像メモリに記憶された画像データの画像解析処理によって計測する。
図11の計測制御部(演算処理部)210は、画像処理部204A(204B)で計測された描画ラインSLn(SL1~SL6)に対する基準パターンFMa、FMb、FMc・・・、の相対的な位置関係の情報と、画像解析部206で計測される各種の位置ずれ量の情報とに基づいて、アライメント系ALGnで検出されるアライメントマークMKnの位置に基づいて、描画ラインSLnの各々に沿ったスポット光による描画タイミングの調整量(遅延時間の設定)、描画ユニットUnの各々の微小回転による描画ラインSLnの各々の傾きの調整量、描画ラインSLn自体を副走査方向に微小量だけシフトさせる為の平行平板HVP(図3参照)の傾斜の調整量等を高速に演算する。それらの調整量の演算に当たって、計測制御部(演算処理部)210は、アライメント系ALGn(ALG1~ALG4)で検出される基板PのアライメントマークMKn(MK1~MK4)の位置情報(実測情報とする)を、図10で説明したアライメント系ALGn(ALG1~ALG4)の設置誤差情報ΔC1~ΔC4に応じて補正された補正位置情報を使う。
〔動作シーケンス〕
図12は、第1の実施の形態における較正(キャリブレーション)シーケンス、アライメントシーケンス、露光シーケンスの一連の動作の一例を説明するフローチャート図である。図12において、ステップ300、302、304は、装置の立ち上げ時、又は装置稼働中の適当な時期に実行される各種のキャリブレーションシーケンスであり、ステップ306は装置内の搬送機構(各種ローラ)や回転ドラムDRに感光性機能層が形成された基板Pを所定のテンションで掛け回す通紙作業である。図12のステップ308~314は、通紙された基板Pの感光性機能層に第1層用のパターンを露光するファースト露光(1st露光)のシーケンスであり、ステップ316、318、320、322、324は、基板Pの感光性機能層に第2層以降のパターンを第1層のパターン上に重ね合わせ露光するセカンド露光(2nd露光)のシーケンスと、その重ね合わせの為のアライメントシーケンスである。
また、本実施の形態では、図13に示すように、1ロールから供給される基板Pの長尺方向の全長に亘って複数の表示パネル用の被露光領域DPAが配列されるものとする。図13は、基板Pを平面上に引き伸ばした状態を示し、パターン描画装置EXの回転ドラムには、基板Pが先端Paから矢印arxの方向に通紙され、回転ドラムDRの回転により終端Pbまで搬送される。基板Pの先端Paからの最初の領域F0は、基板Pをパターン描画装置EXに通紙して所定テンション、所定速度で搬送できる状態になるまでの余白部である。基板P上の次の領域F1には、図7に示した4つのアライメント系ALG1~ALG4の各検出領域AD1~AD4で検出可能なように、4つのアライメントマークMK1~MK4が基板Pの幅方向に配置される。幅方向に並ぶ4つのアライメントマークMK1~MK4は、長尺方向に一定の間隔(例えば、5mm~10mm)で複数列が形成される。基板P上の次の領域F2から領域Fn-1には、被露光領域DPAとその周囲に付随したアライメントマークMK1~MK4とが一定長の余白部を挟んで長尺方向に多数形成される。基板P上の最後の領域Fnは、回転ドラムDRに基板Pが掛け回された状態でも正常なテンションを維持できないことから、被露光領域DPAが形成されない余白部となる。
なお、図13に示したアライメントマークMK1~MK4は、被露光領域DPAに第1層のパターンを露光する1st露光処理のときに同時に露光され、露光処理の後に実施されるエッチング処理やメッキ処理、他の成膜処理によって、第1層用のパターンと共に形成される。その為に、1st露光処理が施される基板Pの表面には、第1層用のパターンとなる金属薄膜(銅、アルミニウム、ニッケル)、或いは不透明な絶縁膜が全面に成膜され、更にその金属薄膜や絶縁膜の表面に感光性機能層を成膜しておくのが良い。
〔ステップ300〕
再び、図12のフローチャート図の説明に戻り、装置起動後の通紙前の状態で、ステップ300にてエンコーダ計測系のキャリブレーションが実行される。図12において、ステップ300の横に付記した[DR]は、所定の回転速度で回転ドラムDRを回転駆動することを意味し、[EH]は、エンコーダ計測システムのエンコーダヘッドEHa1~EHa3、EHb1~EHb3の各々を利用することを意味する。先の図7、図11に示したように、回転ドラムDRの両端のスケール円盤SDa、SDbの外周面(目盛Gmの形成面)は、加工上の精度で決まる真円誤差(回転角度位置に応じて中心軸AXoからの半径が設計値から微少に変化する誤差)や、中心軸AXoに対する取付時の微少な偏心誤差等を含む。更に、スケール円盤SDa、SDbの外周面に刻設される目盛Gmの周方向のピッチにも、僅かではあるがムラ(ピッチ誤差)が生じ得る。
ステップ300では、それらの真円誤差、偏心誤差、ピッチ誤差を精密に把握して、エンコーダ計測時の誤差補正マップを作成する。それらの誤差の求め方や補正マップの作成については、例えば、国際公開第2016/013417号、特開2017-090243号公報に開示されている。誤差補正マップは、図11に示した原点パターンZZoを起点として、スケール円盤SDa、SDbの1周分(360度)を一定角度(例えば、5度)で分割した回転位置毎の誤差補正量として記憶される。エンコーダヘッドEHa1~EHa3(EHb1~EHb3)の各々で実計測される目盛Gmの角度位置情報(移動量)は、それぞれのヘッド毎に用意されたカウンタ回路部(図11中のカウンタ回路部200A、200B等)で計測される。そこで、各カウンタ回路部(200A、200B等)は、作成した誤差補正マップ(誤差補正量)によって実測値を補正した値を計測情報(図11中のESa1、ESb1、ESa2、ESb2等)として出力する。エンコーダ計測系のキャリブレーションが完了すると、次のステップ302でアライメント系のキャリブレーションが実行される。
〔ステップ302〕
図12において、ステップ302の横に付記した[DR]、[EH]は、ステップ300と同様に、回転ドラムDRの回転駆動と、エンコーダ計測系(エンコーダヘッドEHa1~EHa3、EHb1~EHb3)による計測とを利用することを意味し、[RB]は、先の図4~図6、図8~図11に示した基準バー部材RBを利用することを意味し、[ALGn]は、先の図6、図9、図11に示した4つのアライメント系ALG1~ALG4を用いることを意味する。
ステップ302では、4つのアライメント系ALG1~ALG4の各々によって、図10Aに示した基準バー部材RB上の対応する基準マークRM1~RM4の各位置を、図11中の画像解析部206で計測し、図10B、図10Cで説明したように、アライメント系ALG1の(検出領域AD1)撮像領域DIS’(検出領域AD1)の中心点CC1と基準マークRM1の中心点CR1との設置誤差ΔC1、アライメント系ALG2の撮像領域DIS’(検出領域AD2)の中心点CC2と基準マークRM2の中心点CR2との設置誤差ΔC2、アライメント系ALG3の撮像領域DIS’(検出領域AD3)の中心点CC3と基準マークRM3の中心点CR3との設置誤差ΔC3、アライメント系ALG4の撮像領域DIS’(検出領域AD4)の中心点CC4と基準マークRM4の中心点CR4との設置誤差ΔC4を計測する。その際、回転ドラムDRを回転させた状態にすると、外周面DRs上の基準パターンFMa、FMb、FMc・・・の像も、アライメント系ALG1~ALG4の各々の撮像領域DIS’内に現れる為、図9Aに示したアライメント系ALG1~ALG4の各々の照明系ILUに設けられている照明視野絞りFAnを、図9Bに示した照明視野絞りFA3に切り替えても良い。
以上のシーケンスにより、図14に模式的に示すように、4つのアライメント系ALG1~ALG4の各々の設置誤差ΔC1~ΔC4の情報が求まる。図14は、図10Aに示した基準バー部材RB上の基準マークRM1~RM4の各中心点CR1~CR4を基準とした設置誤差ΔC1~ΔC4を誇張して表したものである。基準バー部材RB上の各基準マークRMn(n=1~4)の各中心点CRn(n=1~4)の相互の配置精度(間隔誤差)は、基準マークRMnを形成する加工装置(パターニング装置)の位置決め精度に依存するが、レーザ干渉計付の位置決めステージ等を備えた加工装置であれば、設計上の位置に対する配置精度(配置誤差)を±0.2μm以下にすることができる。従って、画像解析部206で計測された設置誤差情報ΔCn(n=1~4)は、アライメント系ALGnの各々の設計上の位置からの取り付け誤差にも相当し、±数μm程度、大きい場合は十数μm程度になる。
なお、ステップ302では、回転ドラムDRの外周面DRsに形成された基準パターンFMa、FMb、FMc・・・の像を、アライメント系ALGnで検出することにより、基準バー部材RB上のY’方向(Y方向)に延びた直線CRyと、回転ドラムDRの回転中心軸AXoとの平行度を確認することができる。図15は、平面状に展開された回転ドラムDRの外周面DRs上に形成される基準パターンFMa、FMb、FMc・・・とアライメント系ALG1~ALG4の各々の検出領域AD1~AD4との配置関係の一例を示す図である。図15において、基準パターンFMa、FMb、FMc・・・は、外周面DRs上の周方向に沿った45°度の位置毎の8ヶ所に設けられる。基準パターンFMa~FMhの各々は、回転ドラムDRの回転の中心軸(中心線)AXoと平行にY方向に直線的に刻設された直線パターンFyoと、直線パターンFyoと直交した周方向に延びて、検出領域AD1~AD4の各々のY方向の位置に対応して刻設された線条パターンFx1、Fx2、Fx3、Fx4とで構成される。4ヶ所の線条パターンFx1~Fx4のY方向の間隔は、図10Aで示した基準マークRM1~RM4の間隔寸法LBS12、LBS23、LBS34と同じに設定されている。
回転ドラムDRの回転に伴って、例えば、アライメント系ALG1の検出領域AD1内(撮像領域DIS’内)には、基準パターンFMa~FMhの各々の直線パターンFyoと線条パターンFx1との交点部分が、回転ドラムDRの1回転中に8回現れる。基準パターンFMa~FMhの各々がアライメント系ALGnの検出領域ADn中に現れるタイミングは、スケール円盤SDa、SDbの目盛Gmの原点パターンZZoの周方向位置と、基準パターンFMa~FMhの各々の周方向位置との関係が予め固定されたもの(既知)であることから、エンコーダ計測系で計測される回転ドラムDRの回転角度位置から特定できる。そこで、アライメント系ALGnの周方向位置に対応して配置したエンコーダヘッドEHa1(EHb1)からの計測信号を入力する図11中のカウンタ回路部200Aからの計測情報ESa1(ESb1)に基づいて、アライメント系ALGnの各々の検出領域ADn内に基準パターンFMa~FMhの各々の直線パターンFyoが現れるタイミング(計測情報ESa1が特定の計測値になったタイミング)で、順次、基準バー部材RBの基準マークRMn(n=1~4)の像と、直線パターンFyoと線条パターンFxn(n=1~4)の交点部分の像とを、4つの撮像素子DISの各々で同時にサンプリングし、画像解析部206によって、その交点部分の中心点Cfmと基準マークRMn(n=1~4)の中心点CRnとの各々の位置ずれ量ΔCrf1、ΔCrf2、ΔCrf3、ΔCrf4を計測する。その際、図9Aに示したアライメント系ALGnの各々の照明系ILUに設けられている照明視野絞りFAnは、図9Bに示した照明視野絞りFA1に切り替えられる。
図11中の計測制御部(演算処理部)210は、画像解析部206からの位置ずれ量ΔCrfn(n=1~4)のうち、4つの検出領域ADnの各々の位置で計測された外周面DRsの周方向に関する位置ずれ量成分に基づいて、基準パターンFMa~FMhの各々の直線パターンFyoと基準バー部材RB上に設定される直線CRyとの相対的な傾き誤差Δθrbを演算する。演算された傾き誤差Δθrbは、間接的に回転ドラムDRの回転の中心線AXoと基準バー部材RB上の直線CRyとの周方向に関する傾き誤差(平行度誤差)とみなされる。なお、傾き誤差Δθrbは、外周面DRs上の8ヶ所の基準パターンFMa~FMhの位置毎(回転ドラムDRの45°回転毎)に計測可能であるので、8回分の傾き誤差Δθrbを平均化しても良い。
計測された傾き誤差Δθrbは、通常の装置運転時は許容範囲内に収まるように設定されているが、装置の長期運休後の稼働再開時、地震等による大きな振動を受けた後の再起動時には、傾き誤差Δθrbが許容範囲を超えている場合もある。そこで、上記のようにして傾き誤差Δθrbを計測して許容範囲を超えていた場合は、図8に示した微調整機構106によって、基準バー部材RBの傾きが調整できる。但し、微調整機構106による基準バー部材RBの傾き調整が行われた場合は、ステップ302のアライメント系キャリブレーションのシーケンスが再度実行され、アライメント系ALGnの各々の設計上の位置からの取り付け誤差である設置誤差情報ΔC1~ΔC4が再度計測される。
さらにステップ302では、4つのアライメント系ALGn(n=1~4)の各々が、回転ドラムDRの回転に伴って順次基準パターンFMa~FMhを検出可能であるので、図10に示したような各撮像領域DIS’の中心点CC1~CC4の各々の副走査方向(図10中のX’方向)の相対的な位置関係が、基準パターンFMa~FMhを基準にして決定される。この場合、例えば、基準パターンFMaの直線パターンFyoが4つのアライメント系ALGnの各々の撮像領域DIS’内に現れるタイミングで、アライメント系ALGnの各々の撮像素子DISで直線パターンFyoと線条パターンFx1~Fx4との交点部の画像を同時にサンプリングすると共に、その時にカウンタ回路部200Aから出力されている計測情報ESa1(ESb1)の値を記憶する。
図11中の画像解析部206と計測制御部210によって、サンプリングされたアライメント系ALG1~ALG4の各画像データを解析することにより、基準パターンFMaの直線パターンFyoに対する各中心点CC1~CC4の副走査方向(図10中のX’方向)に関する位置ずれ量が求まる。これにより、カウンタ回路部200Aからの計測情報ESa1(ESb1)によって規定される回転ドラムDRの外周面の座標系内での周方向(副走査方向)に関する中心点CC1~CC4の各々の座標位置と、中心点CC1~CC4の各々の相対的な位置関係(配置誤差)とが決定される。
〔ステップ304〕
次に、図12のステップ304において、描画ユニットUn(n=1~6)のキャリブレーションが実行される。ここでは、主に、描画ユニットUnの各々による描画ラインSLn(n=1~6)の各々の相対的な位置関係の誤差の計測と補正を行う描画位置調整シーケンスと、アライメント系ALGn(n=1~4)の各々の検出領域ADn(撮像領域DIS’)の中心点CCn(n=1~4)と、描画ラインSLnの各々との間の副走査方向(回転ドラムDRの外周面DRsの周方向)に関する距離関係、或いは主走査方向(Y方向)に関する距離関係に関する情報を取得するベースライン管理シーケンスと、が実行される。なお、図12のステップ304の横に付記した[DR]、[EH]は、ステップ300、302と同様に、回転ドラムDRの回転駆動と、エンコーダ計測系(エンコーダヘッドEHa1~EHa3、EHb1~EHb3)による計測とを利用することを意味し、[DTR]は、先の図3、図11に示した描画ユニットUnの各々に設けられた光電センサDTRを利用することを意味する。
描画位置調整シーケンスでは、回転ドラムDRを一定の速度で回転させつつ、描画ユニットUnの各々のポリゴンミラー(回転多面鏡)PMを回転ドラムDRの回転速度(回転ドラムDRの外周面DRsの周速度)に応じて決まる所定の回転速度で回転させる。回転ドラムDRの回転速度とポリゴンミラーPMの回転速度とが安定したら、ダミーの描画データに基づいて強度変調された描画用のビームLBn(n=1~6)を、描画ユニットUnの各々から回転ドラムDRの外周面DRs上に投射する。ダミーの描画データは、スポット光SPの走査軌跡である描画ラインSLn(n=1~6)の各々のY方向の長さに亘って、ビームLBn(n=1~6)の各々を常にOn状態に変調させるものである。
回転ドラムDRの回転に伴って、描画ユニットUnの各々から投射されるビームLBnの各スポット光は、外周面DRs上に形成された基準パターンFMa、FMb、FMc・・・の各々を順次走査する。各スポット光が、例えば基準パターンFMa(FMb、FMc・・・でも良い)を走査すると、先の図11で説明したように、描画ユニットUnの各々に設けられた光電センサDTRが反射光の光量変化に応じた光電信号を出力し、ADC部202A(202B)、画像処理部204A(204B)によって、基準パターンFMaを含む2次元的な明暗画像データ(輝度情報)が生成される。ここでは、描画ユニットUnの各々から投射されるビームLBnの各スポット光を計測プローブ光にして検出した2次元的な明暗画像データに基づいて、回転ドラムDR上の基準パターンFMa(FMb、FMc・・・でも良い)を基準にした描画ラインSLn(n=1~6)の各々の位置関係を計測する。なお、光電センサDTR、ADC部202A(202B)、及び画像処理部204A(204B)によって反射光モニター系が構成され、基準パターンFMa(FMb、FMc・・・でも良い)の明暗画像データの他に、基板P上に形成されたパターンやアライメントマークに対応した明暗画像データも取得可能である。
図16は、先の図7の構成に基づいて、6つの描画ラインSLn、4つのアライメント系ALGnの各々の撮像領域DIS’(検出領域ADn)、及び基準パターンFMaのそれぞれの配置関係の一例を、回転ドラムDRの外周面DRsの一部を平面状に展開して表した図である。ここで、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の各々を成すスポット光の主走査方向は-Y方向に設定され、偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6の各々を成すスポット光の主走査方向は+Y方向に設定されるものとする。また、描画ラインSL1~SL6の各々の主走査方向(Y方向)の中点CE1~CE6は、先の図2、図3、図8Aに示したように、描画ユニットU1~U6の各々を微小回転させる際の回転中心線になる線分LE1~LE6の延長が通るように配置されている。
なお、図16中の周方向位置CXAは、エンコーダシステム(図11中のカウンタ回路部200A)で計測されたアライメント系ALGn(n=1~4)の各々の中心点CCn(n=1~4)の副走査方向(周方向)の位置情報の平均演算によって決まる位置、或いは、アライメント系ALGn(n=1~4)のうちで、Y方向の両側に設置される2つのアライメント系ALG1、ALG4の各中心点CC1、CC4の副走査方向(周方向)の位置情報の平均演算によって決まる位置を表わす。
また、図15に示した回転ドラムDRの外周面DRs上の基準パターンFMa(FMb、FMc・・・も同じ)は、線条パターンFx1~Fx4の他に、直線パターンFyoと交差するように周方向に延びて、Y方向の複数の位置の各々に配置された多数の線条パターンが、図16のように形成されている。
図16に示すように、アライメント系ALG1の検出領域AD1としての撮像領域DIS’(中心点CC1)で検出される線条パターンFx1は、描画ラインSL1の走査範囲内の走査終了付近に配置されて、描画ユニットU1の反射光モニター系(光電センサDTR)でも検出可能な線条パターンFxe1を有する。アライメント系ALG2の検出領域AD2としての撮像領域DIS’(中心点CC2)で検出される線条パターンFx2は、描画ラインSL2の走査範囲内の走査終了付近に配置されて、描画ユニットU2の反射光モニター系(光電センサDTR)でも検出可能な線条パターンFxe2と、描画ラインSL3の走査範囲内の走査終了付近に配置されて、描画ユニットU3の反射光モニター系(光電センサDTR)でも検出可能な線条パターンFxe3とを有する。
同様に、アライメント系ALG3の検出領域AD3としての撮像領域DIS’(中心点CC3)で検出される線条パターンFx3は、描画ラインSL4の走査範囲内の走査終了付近に配置されて、描画ユニットU4の反射光モニター系(光電センサDTR)でも検出可能な線条パターンFxe4と、描画ラインSL5の走査範囲内の走査終了付近に配置されて、描画ユニットU5の反射光モニター系(光電センサDTR)でも検出可能な線条パターンFxe5とを有する。更に、アライメント系ALG4の検出領域AD4としての撮像領域DIS’(中心点CC4)で検出される線条パターンFx4は、描画ラインSL6の走査範囲内の走査終了付近に配置されて、描画ユニットU6の反射光モニター系(光電センサDTR)でも検出可能な線条パターンFxe6を有する。
さらに、基準パターンFMaは、描画ラインSL1の走査範囲内の走査開始付近に対応した位置に配置される線条パターンFxs1、描画ラインSL1の中点CE1付近に対応した位置に配置される線条パターンFxc1、描画ラインSL2の走査範囲内の走査開始付近に対応した位置に配置される線条パターンFxs2、描画ラインSL2の中点CE2付近に対応した位置に配置される線条パターンFxc2、描画ラインSL3の走査範囲内の走査開始付近に対応した位置に配置される線条パターンFxs3、描画ラインSL3の中点CE3付近に対応した位置に配置される線条パターンFxc3、描画ラインSL4の走査範囲内の走査開始付近に対応した位置に配置される線条パターンFxs4、描画ラインSL4の中点CE4付近に対応した位置に配置される線条パターンFxc4、描画ラインSL5の走査範囲内の走査開始付近に対応した位置に配置される線条パターンFxs5、描画ラインSL5の中点CE5付近に対応した位置に配置される線条パターンFxc5、並びに、描画ラインSL6の走査範囲内の走査開始付近に対応した位置に配置される線条パターンFxs6、描画ラインSL6の中点CE6付近に対応した位置に配置される線条パターンFxc6を有する。
また、線条パターンFxc1と線条パターンFxc2とのY方向の間隔YJ12、線条パターンFxc2と線条パターンFxc3とのY方向の間隔YJ23、線条パターンFxc3と線条パターンFxc4とのY方向の間隔YJ34、線条パターンFxc4と線条パターンFxc5とのY方向の間隔YJ45、及び、線条パターンFxc5と線条パターンFxc6とのY方向の間隔YJ56は、描画ラインSL1~SL6の各々の中点CE1~CE6のそれぞれの間のY方向の設計上の間隔(例えば、52.00mm)になるように設定されている。本実施の形態では、描画ラインSL1~SL6の各々の走査長は等しい値(例えば52.00mm)に設定される為、中点CE1~CE6の各々のY方向に隣り合った同士の間隔も等しくなるように設定されが、その間隔は、装置組み立て時の描画ユニットU1~U6の取付け誤差、各描画ユニットUn内の光学部材の取付け誤差、或いは環境温度の変化等によって、ミクロンオーダーで見ると多少の誤差を伴っている。
そこで、ステップ304における描画位置調整シーケンスでは、回転ドラムDR上の基準パターンFMa(他の基準パターンFMb、FMc・・・でも良い)が、描画ラインSL1~SL6の各々を周方向に横切るように所定速度で回転ドラムDRを回転移動させつつ、エンコーダヘッドEHa2(EHb2)に対応したカウンタ回路部200Bで計測される回転ドラムDRの外周面DRsの移動位置に関する計測情報ESa2(ESb2)に基づいて、描画ユニットU1~U6の各々の反射光モニター系(光電センサDTR)を使って、基準パターンFMaの対応する部分の明暗画像データを取得する。具体的には、図11に示したカウンタ回路部200Bからの計測情報ESa2(ESb2)が、図16中の周方向位置CX1となった時点で、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の各々の反射光モニター系による明暗画像データのサンプリングを開始し、計測情報ESa2(ESb2)が周方向位置CX2となった時点で、そのサンプリングを終了する。なお、反射光モニター系による明暗画像データのサンプリングについては、例えば、国際公開第2015/152217号、国際公開第2018/066285号に開示されている。
図16において、周方向位置CX1、CX2は、カウンタ回路部200Bによって、例えば0.1μmの分解能で計測される基準パターンFMaの移動位置を表し、基準パターンFMaが奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5を十分に横切れるような範囲に設定されている。さらに、周方向位置CX1、CX2は、エンコーダヘッドEHa2又はEHb2を用いたエンコーダシステムにおいて、原点パターンZZoによってカウンタ回路部200B内のデジタルカウンタがゼロリセットされてからの移動量(単位移動量ΔLxaの下で計測される周長)でもある。原点パターンZZoと基準パターンFMa(又は他の基準パターンFMb、FMc・・・)との周方向に関する角度位置の関係、即ち外周面DRs上での周方向の間隔距離は、概ね判明しているので、周方向位置CX1、CX2は数mm以下の範囲で設定される。
偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々についても同様であり、基準パターンFMaが偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6を十分に横切れるような周方向位置CX3~CX4の範囲を周方向に移動していく間に、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々の反射光モニター系による明暗画像データのサンプリングが行われる。但し、周方向位置CX3、CX4は、エンコーダヘッドEHa3又はEHb3(図7、図8参照)を用いたエンコーダシステムにおいて、カウンタ回路部200Bと同様のカウンタ回路部(200Cとする)内のデジタルカウンタが原点パターンZZoによってゼロリセットされてからの移動量(単位移動量ΔLxaの下で計測される周長)によって特定される。
また、反射光モニター系による明暗画像データの取得範囲は、描画ラインSL1~SL6の各々のY方向の長さ(例えば、52mm)×距離(CX2-CX1、又はCX4-CX3で定まる数mm)で規定される2次元の領域の全体であるのが望ましい。しかしながら、データ量(画像の記憶メモリ容量)が膨大になる為、描画ラインSL1~SL6の各々のY方向の部分的な領域(例えばY方向に数mm)に制限しても良い。例えば、描画ラインSL1に関しては、スポット光による主走査の開始位置付近に配置される線条パターンFxs1を含む数mmの領域、スポット光による主走査の終了位置付近に配置される線条パターンFxe1を含む数mmの領域、及び、スポット光による主走査の中間位置付近に配置される線条パターンFxc1を含む数mmの領域の各々についてのみ、明暗画像データを取得するようにしても良い。
図17は、一例として、描画ラインSL1を生成するスポット光SPが、回転ドラムDRの外周面DRs上の基準パターンFMa中の線条パターンFxc1を含む領域を相対的に2次元走査する様子を示す。先の図1に示した光源装置LSからのビームLBの発振周波数FPL(図11で説明したクロック信号LTCと同じ)を400MHz(周期2.5nS)、1パルスによるスポット光SPの実効的な直径φp(例えば、近似的なガウス分布におけるピーク強度の1/e2の強度になる直径)を2.5μmとした場合、2.5nS毎にパルス照射されるスポット光SPが主走査方向(Y方向)に単位走査移動量ΔYsp(直径φpの1/2の1.25μm)だけ移動するように、ポリゴンミラーPMの回転速度が設定される。また、描画ラインSL1に沿ったスポット光SPの主走査は、回転ドラムDRの外周面が副走査方向(周方向)に単位送り量ΔXspだけ移動するたびに行われ、その単位送り量ΔXspが、スポット光SPの実効的な直径φpの1/2の1.25μmになるように、回転ドラムDRの回転速度が設定される。なお、図17において、副走査方向に関して主走査方向の同一位置でパルス発光されるスポット光SPの並びを副走査ラインSL1’とする。
反射光モニター系(光電センサDTR)からの光電信号の強度レベルを、クロック信号LTCのクロックパルス毎にADC部202A(図11)によって、デジタルサンプリングすると、例えば、1本の描画ラインSL1に沿って図17の右側に示すような明暗画像データとしての信号波形Wfyが取得される。描画ラインSL1が線条パターンFxc1を横切るとき、線条パターンFxc1ではスポット光SPの照射による正反射光が周囲からの正反射光よりも低下する為、線条パターンFxc1の主走査方向(Y方向)のエッジ位置Yac1、Yac2、Yac3、Yac4の各々で信号波形Wfyのレベルが変化する。図11に示した画像処理部204Aによって、信号波形Wfyのレベルを適当な閾値Vszと比較することにより、4ヶ所のエッジ位置Yac1~Yac4が決定される。なお、描画ラインSL1に沿ったスポット光SPの位置は、描画ユニットU1内の原点センサから、ポリゴンミラーPMの各反射面が描画開始直前の角度位置になる度に出力される原点信号の1つのパルス発生時点を原点位置(ゼロ点位置)として、クロック信号LTCのクロックパルスの計数値(信号波形Wfyを記憶する波形メモリのアドレス値)で指定される。
画像処理部204Aは、決定された4ヶ所の位置Yac1~Yac4の平均的な位置PQa1y(=〔Yac1+Yac2+Yac3+Yac4〕/4)を、線条パターンFxc1の主走査方向(Y方向)の中心位置として算出する。さらに画像処理部204Aは、図17の上方に示したように、信号波形Wfy中の位置Yac2と位置Yac3の間で副走査ラインSL1’に沿って得られる信号波形Wfxを特定する。信号波形Wfxは、位置Yac2~Yac3の間の複数の副走査ラインSL1’の各々で得られる信号波形Wfxを主走査方向に加算平均したものとするのが良い。画像処理部204Aは、信号波形Wfxのレベルを適当な閾値Vszと比較することにより、直線パターンFyoの副走査方向における2ヶ所のエッジ位置Xac1、Xac2を決定し、さらに位置Xac1、Xac2の平均的な位置PQa1x(=〔Xac1+Xac2〕/2)を、直線パターンFyoの副走査方向の中心位置として算出する。位置Xac1、Xac2、PQa1xは、エンコーダシステムのカウンタ回路部200B(図11)で計測される計測情報ESa2、ESb2(例えば、分解能0.1μm)によって特定される。
以上の演算処理により、直線パターンFyoと線条パターンFxc1とが交差する部分の中心点(交点)PQa1(図15中の中心点Cfmに相当)の座標位置(PQa1x、PQa1y)が決定される。同様に、ADC部202Aと画像処理部204Aとによって、図16に示した描画ラインSL1上で左端側(走査開始側)に位置する線条パターンFxs1と直線パターンFyoとの交点PQs1の座標位置と、描画ラインSL1上で右端側(走査終了側)に位置する線条パターンFxe1と直線パターンFyoとの交点PQe1の座標位置とが決定される。同様に、他の描画ユニットU2~U6の各々に関しても、描画ラインSL2~SL6の各々に沿ったスポット光SPの主走査と回転ドラムDRの回転(副走査)とによって、線条パターンFxc2~Fxc6の各々と直線パターンFyo1との各交点PQa2~PQa6の座標位置が決定される。さらに、描画ラインSL2~SL6の各々の走査開始側に位置する線条パターンFxs2~Fxs6の各々と直線パターンFyoとの交点PQs2~PQs6の各座標位置と、描画ラインSL2~SL6の各々の走査終了側に位置する線条パターンFxe2~Fxe6の各々と直線パターンFyoとの交点PQe2~PQe6の各座標位置とが決定される。
回転ドラムDR上の直線パターンFyo、線条パターンFxc1~Fxc6、Fxs1~Fxs6、Fxe1~Fxe6の各々の配置状態(例えば、間隔YJ12、YJ23、YJ34、YJ45、YJ56等)は、図16に示したように既知であるので、計測された交点PQa1~PQa6の各座標位置に基づいて、描画ラインSL1~SL6の各々の中点CE1~CE6の2次元的な位置誤差が求められる。ここで、本実施の形態では、パターン描画時の基準を描画ラインSL1とし、その中点CE1に対して、他の描画ラインSL1~SL6の各々の中点CE2~CE6がどの程度の配置誤差になっているかを求めるものとする。勿論、基準とすべき描画ラインSL1は、その他の描画ラインSL2~SL6のいずれか1つにしても良い。
図18は、走査開始位置Yss1から走査終了位置Yse1までの間でスポット光SPが走査される描画ラインSL1を描画時の基準として、隣の描画ラインSL2との相対的な配置誤差を決定する様子を説明する図である。他の描画ラインSL3~SL6の各々については、描画ラインSL1を基準にして相対的な配置誤差を決定する場合と、描画ラインSL2を基準にした描画ラインSL3の相対的な配置誤差、描画ラインSL3を基準にした描画ラインSL4の相対的な配置誤差、描画ラインSL4を基準にした描画ラインSL5の相対的な配置誤差、及び描画ラインSL5を基準にした描画ラインSL6の相対的な配置誤差を決定する場合とがある。いずれの決定方法でも、描画ラインSL1~SL6の各々の相対的な位置誤差量(ベクトル量)を特定することができる。
図18において、描画ラインSL1、SL2はいずれも回転誤差が無く、Y軸に対して傾き無く設定されているものとする。また、直線パターンFyoと線条パターンFxc1との交点PQa1と、描画ラインSL1の中点CE1とは実際には位置ずれしているが、図18では描画ラインSL1を基準とする為、交点PQa1と中点CE1とが一致した状態で表している。また、描画ラインSL1(中点CE1)と描画ラインSL2(中点CE2)との副走査方向(周方向)の設計上の間隔を規定距離ΔLMとし、描画ラインSL1の中点CE1の交点PQa1の副走査方向(周方向)の位置PQa1x(図17)は、エンコーダシステムで計測される位置CXsとし、その位置CXsから規定距離ΔLMだけ副走査方向に進んでエンコーダシステムで計測される点を位置CXeとする。
図18では、副走査方向の位置CXeに基準パターンFMaの直線パターンFyoが位置した状態を表し、描画ラインSL2(中点CE2)は、相対的な位置誤差の為に、直線パターンFyo上に精密に重なることなく、直線パターンFyo(位置CXe)に対して副走査方向の負側にΔxx2だけ位置誤差を持っている。位置誤差Δxx2は、実測された描画ラインSL2の中点CE2の交点PQa2の副走査方向の座標位置(PQa2x)と、描画ラインSL1の中点CE1の交点PQa1の副走査方向の座標位置(PQa1x)との差分長と、規定距離ΔLMとに基づいて、Δxx2=(PQa2x-PQa1x)-ΔLMの演算によって求められる。
描画ラインSL1の中点CE1と描画ラインSL2の中点CE2との主走査方向(Y方向)の設計上の間隔は、相対的な位置誤差が無ければ、基準パターンFMaの線条パターンFxc1と線条パターンFxc2とのY方向の間隔YJ12と一致し、描画ラインSL1(中点CE1)を基準とすると、描画ラインSL2の中点CE2はY方向に関して線条パターンFxc2と重なる。しかしながら、実際には、図18に示すように、描画ラインSL2の中点CE2と線条パターンFxc2とは、Y方向に相対的な位置誤差Δyy2が発生し得る。その位置誤差Δyy2は、描画ラインSL2の走査開始位置Yss2と走査終了位置Yse2との間で、走査開始位置Yss2を始点とした線条パターンFxc2、Fxs2、Fxe2の各々のY方向位置を計測することで求められる。
以上のようにして、描画ラインSL1の中点CE1を基準とした描画ラインSL2の中点CE2の相対的な2次元の位置誤差(Δxx2、Δyy2)が決定される。そこで、描画ラインSL2の中点CE2の位置誤差をΔFS2(Δxx2、Δyy2)とし、描画ラインSL1の中点CE1を基準とした描画ラインSL3~6の各々の中点CE3~6の各々の位置誤差を、ΔFS3(Δxx3、Δyy3)、ΔFS4(Δxx4、Δyy4)、ΔFS5(Δxx5、Δyy5)、ΔFS6(Δxx6、Δyy6)とする。なお、これらの位置誤差ΔFS2~ΔFS6の各々は、装置組立の際の調整により、十数μm以下に設定することができる。描画ラインSL1~SL6の各々によるパターン描画時には、それらの位置誤差ΔFS2~ΔFS6に基づいて、描画ユニットU2~U6の各々によるパターン描画のタイミングや描画ラインSL1~SL6の副走査方向の位置を微調整することによって、描画ラインSL1~SL6の各々によって描画されるパターン同士の継ぎ誤差を、描画可能な最小線幅の数分の1以下、例えば、最小線幅が5μmの場合は継ぎ誤差量を1μm(3σで±0.5μm)以下にすることができる。
また、図18では、描画ラインSL1、SL2(並びにSL3~SL6)は、Y軸に対して傾いていないもの(傾斜誤差がゼロ)としたが、傾斜の有無や傾斜誤差量は、描画ラインSL1については、直線パターンFyoと線条パターンFxs1との交点位置と、直線パターンFyoと線条パターンFxe1との交点位置との副走査方向(周方向)の位置誤差を計測することで求められる。他の描画ラインSL2~SL6についても同様の計測により傾斜誤差の有無や量が求められる。各描画ラインSL1~SL6の傾斜誤差は、図3に示した描画ユニットU1~U6の各々を、中点CE1~CE6の各々を通る図3中の線分LE1~LE6を中心に微少回転させる回転駆動機構によって補正される。なお、初期状態では、描画ラインSL2~SL6の各々がY軸に対して許容誤差範囲内で平行になるように設定される。
図19は、以上のステップ304によって決定、又は設定されるキャリブレーション情報(配置誤差等)を模式的に誇張して表した図である。図19には、基準バー部材RBの基準マークRM1~RM4を基準にして決定されたアライメント系ALG1~ALG4の各々の撮像領域DIS’の中心点CC1~CC4の各設置誤差ΔC1~ΔC4(ベクトル)が示されている。さらに図19において、6つの描画ラインSL1~SL6のうちの描画ラインSL1(基板Pの搬送方向に関して最初に描画が行われる描画ライン)を基準としたとき、先の図16で説明したアライメント系ALGnの各々の中心点CCnに関する副走査方向(周方向)の位置CXAと、先の図18で説明した描画ラインSL1(中点CE1)に関する副走査方向(周方向)の位置CXsとの周方向の間隔は、基準長(ベースライン長)ΔBSLと呼ばれる。基準長ΔBSLは、装置環境(温度や気圧)の変化、描画ユニットU1~U6内の熱源(ポリゴンミラーPMの回転モータや光学部材等を駆動するアクチュエータ)の影響による機械部品の熱変形等により、ミクロンオーダーで変動することがある。
先に説明したように、アライメント系ALG1~ALG4の各々の中心点CC1~CC4の回転ドラムDRの外周面上での座標位置(或いは配置誤差)は、回転ドラムDR上の基準パターンFxa(或いは、Fxb~Fxh)の線条パターンFxe1、Fxe3、Fxe4、Fxe6の各々と直線パターンFyoとの交点部を基準にして求められている。さらに、描画ラインSL1~SL6の各々の中点CE1~CE6の回転ドラムDRの外周面上での座標位置は、先の図18で説明したように、描画ラインSL1の中点CE1を基準にして求めた描画ラインSL2~6の各々の中点CE2~6の各位置誤差ΔFS2(Δxx2、Δyy2)、ΔFS3(Δxx3、Δyy3)、ΔFS4(Δxx4、Δyy4)、ΔFS5(Δxx5、Δyy5)、ΔFS6(Δxx6、Δyy6)に基づいて特定される。
以上のことから、基準パターンFxa(或いは、Fxb~Fxh)を基準にして、アライメント系ALG1~ALG4の各々の中心点CC1~CC4と、描画ラインSL1~SL6の各々の中点CE1~CE6との相対的な位置関係が特定される。さらに、回転ドラムDR上の基準パターンFxa(或いは、Fxb~Fxh)と、基準バー部材RB上の基準マークRM1~RM4との2次元的な相対位置関係も、アライメント系ALG1~ALG4の各々と画像解析部206等による画像解析結果に基づいて高精度に求められる。従って、ステップ300~304までのシーケンスを実行することによって、基準バー部材RB上の基準マークRM1~RM4を基準として、描画ラインSL1~SL6の各々の座標位置(特に中点CE1~CE6の座標位置)の各配置誤差(位置ずれ誤差)が間接的に特定される。
このことは、パターン描画時に描画ラインSL1~SL6の各々によって描画されるパターン、特に1st露光用のパターンの基板P上の位置が、基準バー部材RB上の基準マークRM1~RM4の配列に精密に倣うように、描画ユニットU1~U6の各々の描画タイミングの補正や、描画ラインSL1~SL6の各々の副走査方向への微調整(図3に示した平行平板HVPの傾斜量の補正)ができることを意味する。図11に示した計測制御部210は、ステップ300~304の実行によって得られる各種のキャリブレーション情報(配置誤差ΔC1~ΔC4、位置誤差ΔFS2~ΔFS6、基準長ΔBSL、規定距離ΔLM等)を記憶する。なお、図19において、基準長ΔBSLは、奇数番の描画ラインSL1(中点CE1)、SL3(中点CE3)、SL5(中点CE5)の副走査方向の平均的な位置と、偶数番の描画ラインSL2(中点CE2)、SL4(中点CE4)、SL6(中点CE6)の副走査方向の平均的な位置との中間位置CXs’と位置CXAとの間の距離としても良い。
〔ステップ306〕
次に、図12に示した動作シーケンスのステップ306において、基板Pの通紙作業が行われる。通紙作業では、ロール・ツー・ロール方式の処理装置に装着される供給ロールに巻かれた長尺の基板P(表面に感光層が形成済み)を、処理装置内の搬送経路に沿って通した後に、基板Pの先端部を回収ロールに巻き付けた状態にし、その基板Pが所定のテンションで蛇行することなく搬送できる状態にセットアップされる。
〔ステップ308〕
次に、図12に示した動作シーケンスのステップ308において、通紙された基板Pが、ファースト(1st)露光用かセカンド(2nd)露光用かが判断され、1st露光用の基板Pの場合はステップ310に進み、2nd露光用の基板Pの場合はステップ316に進む。1st露光とは、先の図13で示したような被露光領域DPA内に何らのパターンも形成されておらず、且つアライメントマークMK1~MK4も形成されていない基板Pの感光層に、第1層用のパターンを露光することを意味する。2nd露光とは、被露光領域DPA内に何らかの下地パターンが形成されていて、且つアライメントマークMK1~MK4が形成されている基板Pの感光層に、下地パターン上に重ね合わせるべき新たなパターンを露光することを意味する。
〔ステップ310〕
ステップ308で1st露光と判断された場合、図12に示した動作シーケンスのステップ310において、描画ユニットUn(n=1~6)の各々が第1層用のパターン、並びにアライメントマークMK1~MK4を、描画ラインSL1~SL6に沿って描画するように、描画データのダウンロードや光源装置LSからのビームの強度調整等のセットアップが実行される。さらに、1st露光の際は、基板P上に基準となるアライメントマークMK1~MK4が形成されていない為、描画ラインSL1~SL6の位置が基準になってパターン描画が行われる。本実施の形態では、計測制御部210に記憶された各種のキャリブレーション情報に基づいて、描画ラインSL1~SL6の各々によって基板P上に描画されるパターンが、基準バー部材RB上の基準マークRM1~RM4を基準にして配置されるように、セットアップすることができる。なお、図12のステップ310の横に付記した[210]は計測制御部210に記憶された各種のキャリブレーション情報を利用することを意味する。
〔ステップ312〕
図12のステップ310で1st露光の為のセットアップが完了すると、基板Pが設定された速度で副走査方向に移動するように回転ドラムDRが回転駆動される。ステップ300~304と同様に、図12のステップ312の横に付記した[EH]は、エンコーダ計測系(ここでは、主にエンコーダヘッドEHa2、EHa3、EHb2、EHb3)による計測位置情報を利用することを意味する。更に、ステップ312の横に付記した[LS]は、図1に示した光源装置LSから1st露光用のパターンに対応した描画データに応じて強度変調されたビームを、描画ユニットU1~U6の各々に向けて時分割で供給することを意味する。ステップ312の1st露光によって、基板P上の感光層には、図13で示したような配置で、複数の被露光領域DPAの各々に電子デバイスの第1層用のパターンが順次露光されると共に、アライメントマークMK1~MK4が露光される。
この1st露光の際、描画ラインSL1~SL6の各々で描画されるパターンの2次元的な位置関係は、先のキャリブレーションによって、結果的に基準バー部材RB(基準マークRM1~RM4)を基準として精密に設定できる。即ち、描画ラインSL1~SL6の各々で描画されるパターンの基板P上での描画位置を、絶対的な基準となる安定な基準バー部材RBの基準マークRM1~RM4の配置に精密に倣うように配置できる。このことは、1st露光で基板P上に描画されるアライメントマークMK1~MK4の各々についても同様であり、基板P上のアライメントマークMK1~MK4の各々の絶対的な位置や相対位置関係は、基準バー部材RBの基準マークRM1~RM4の配置に精密に倣ったものとなる。
〔ステップ314〕
基板Pの感光層への1st露光の動作中にエラー又は誤差が生じた場合、描画装置の主制御部(メインコンピュータ)は、そのエラーや誤差の発生状況や状態が特定可能なログ情報を逐次収集する。供給ロールからの基板Pに対する露光が終了したら、主制御部は収集したログ情報を解析して、当初のキャリブレーション状態を再調整する必要があると判断した場合は、次の供給ロールの基板を通紙する前に、再度、キャリブレーション動作のステップ300、302のいずれかを実行する。ログ情報の解析の結果、特に再調整が不要と判断された場合でも、次の供給ロールの基板に対する露光の為に、ステップ304のキャリブレーション動作を行うのが良い。それは、次の供給ロールの基板に対する露光が1st露光であっても、基板上に製造される電子デバイスの品種が変わったり、次の供給ロールの基板に対する露光が2nd露光であったりするからである。
〔ステップ316〕
先のステップ308で、基板Pの感光層に露光すべきパターンが2nd露光用の場合は、図12に示した動作シーケンスのステップ316において、描画ユニットUn(n=1~6)の各々が第2層以降のパターンを、描画ラインSL1~SL6に沿って描画するように、描画データのダウンロードや光源装置LSからのビームの強度調整等のセットアップが実行される。ステップ316の横に付記した[210]は計測制御部210に記憶された各種のキャリブレーション情報を利用することを意味する。また、2nd露光用の基板Pは、湿式処理や加熱処理といったプロセスを受けているので、予測され得る定常的な伸縮誤差や変形誤差を伴っている場合がある。その為、ステップ316では、必要に応じて、基板Pの伸縮誤差や変形誤差に関する定常的な予測値に基づいて、描画ユニットU1~U6の各々による継ぎ露光精度や重ね合わせ精度等の低下を抑制するように描画タイミングを補正する為の情報もセットアップされる。但し、実際の2nd露光の描画動作中の描画タイミングの補正、描画ユニットU1~U6の各々の微小回転補正、図3中の平行平板HVPによる描画ラインSL1~SL6の各々の微小シフト補正、或いは描画倍率の補正等は、基板P上のアライメントマークMK1~MK4の位置計測結果に基づいて決定される。
〔ステップ318〕と〔ステップ320〕
本実施の形態では、先の図4、図7に示したように、基板P上のアライメントマークMK1~MK4の各位置をアライメント系ALG1~ALG4で検出したら、直ちに、描画ラインSL1~SL6の各々によってパターン描画が行われる。特に、基板Pの幅方向(Y方向)の両端側に形成されるアライメントマークMK1、MK4は、副走査方向に一定間隔で複数設けられているので、アライメント系ALG1、ALG4によるマーク検出動作と、描画ユニットU1~U6によるパターン描画動作とは重畳している。図12のステップ318の横に付記した[ALGn]は、アライメント系ALGn(n=1~4)によって検出されるアライメントマークMKn(n=1~4)の各々の計測位置情報を利用することを意味し、[EH]は、エンコーダ計測系(エンコーダヘッドEHa1~EHa3、EHb1~EHb3)による計測位置情報を利用することを意味する。
さらに、ステップ318の横に付記した[RB]は、アライメントマークMKnの位置計測の際に、基準バー部材RBの基準マークRMn(n=1~4)を利用することを意味するが、必ずしも利用する必要はない。アライメント系ALGnは、撮像領域DIS’内で基準となる中心点CCnを有している。その為、通常は、図9Cで示したように、アライメントマークMKnの拡大像MKn’と中心点CCnとの2次元的な位置ずれ量の計測によって、アライメント計測は完了する。しかしながら、長時間に亘る露光動作の間には、アライメント系ALGnの位置がドリフトしたり、内部の光学部材の特性が温度変化や大気圧変化によって変動したりすることで、キャリブレーション時に特定した中心点CCnの各々が相対的に位置変化することがある。その位置変化の量は、ミクロンオーダーであっても、そのままアライメントマークMKnの計測位置の誤差量となる為、継ぎ誤差や重ね合わせ誤差を悪化させる。
そのような問題を避ける為、ステップ318のアライメント計測では、アライメントマークMKnがアライメント系ALGnの各々の撮像領域DIS’内に現れたときに、撮像領域DIS’内のほぼ決まった位置に設定される基準マークRMnの拡大像RMn’と、アライメントマークMKnの拡大像MKn’とを同時に画像サンプリングし、基準マークRMnの中心点CRn(n=1~4)を基準にして、アライメントマークMKnの各々の拡大像MKn’の中心点の2次元的な位置ずれ誤差が計測される。先の図13に示したように、基板P上の被露光領域DPAの搬送方向に関する先端部分又は後端部分の余白部の各々には、1st露光のパターニングによって、4つのアライメントマークMK1~MK4が基板Pの幅方向に延びた線上に沿って、4つのアライメント系ALG1~ALG4の各々の検出領域AD1~AD4(図7参照)の各撮像領域DIS’の配置に対応した位置、即ち、基準バー部材RBの基準マークRM1~RM4の各々の配置に対応した位置に形成されている。
従って、各被露光領域DPAに対する2nd露光の直前(又は直後)に、同じタイミングで撮像される4つの基準マークRM1~RM4と4つのアライメントマークMK1~MK4との相対的な位置ずれを求めると共に、被露光領域DPAの両側のアライメントマークMK1、MK4の各位置ずれを求めることで、被露光領域DPAのY方向の伸縮誤差や変形誤差を逐次推定して、それに合わせるように描画ラインSL1~SL6の各々によるパターンの描画位置を、ステップ320の2nd露光中に逐次微調整する。その微調整では、スポット光SPによる描画タイミングの補正、平行平板HVPによる描画ラインSLnのシフト補正、描画ユニットUnの微小回転補正、描画倍率の補正が行われる。なお、図12のステップ320の横に付記した[EH]は、エンコーダ計測系(エンコーダヘッドEHa1~EHa3、EHb1~EHb3)による計測位置情報を利用することを意味し、更にステップ320の横に付記した[LS]は、図1に示した光源装置LSから2nd露光用のパターンに対応した描画データに応じて強度変調されたビームを、描画ユニットU1~U6の各々に向けて時分割で供給することを意味する。
なお、図12のステップ318、320は、基板P上の1つの被露光領域DPAに対する2nd露光を表わし、基板P上の露光すべき複数の被露光領域DPAに対する2nd露光が完了したか否かは、次のステップ322で判断される。ステップ322で、引き続き2nd露光を次の被露光領域DPAに対して行うと判断されたときは、ステップ318、320が繰り返し実行される。
〔ステップ324〕
全ての被露光領域DPAに対する2nd露光が完了したら、ステップ324において、露光動作中の各種のログ情報(エラー情報、誤差情報等)が収集され、2nd露光済みの基板Pを巻き回した回収ロール等が描画装置から取り外され、基板Pは次のプロセスに搬送される。基板Pが描画装置から取り外されると、再び、先のステップ302、304のキャリブレーション動作が実行される。但し、2nd露光した基板Pの長尺方向の長さが短く、2nd露光の動作継続時間が比較的に短時間である場合は、ステップ324の後にステップ304、或いはステップ306からの動作を実行することもできる。逆に、2nd露光の継続動作が長時間に及ぶ場合は、ステップ300からのキャリブレーション動作を実行しても良い。
なお、ステップ318のアライメント計測では、基板P上のアライメントマークMKnの一部がプロセス等の影響でダメージを受けていたり、近傍にマークの線幅寸法と同程度の異物(ゴミ)が付着していたりすることで、アライメント系ALGnで良好に画像認識されずに、検出エラーを起こすこともある。そのような検出エラーが基板Pの所定の搬送距離に亘って続く場合、2nd露光の動作(回転ドラムDRによる基板Pの順方向への搬送)を一時的に停止して、リトライ動作を行うこともできる。リトライ動作では、図11に示した画像解析部206によるアライメントマークMKnの拡大像MKn’の画像処理条件(パラメータ)や、図9に示した照明系ILUからの照明光ILbの強度の調整や波長帯域のシフト等を行った後、基板Pを一定距離だけ逆方向に戻してから、再度、順方向に搬送しながらアライメント計測と2nd露光とを行う。そのようなリトライ動作の一例は、例えば、国際公開第2018/030357号に開示されている。
以上のように、図12に示した本実施の形態による露光シーケンスのうち、特に1st露光シーケンス(ステップ310、312)では、描画ユニットU1~U6の各々による描画ラインSL1~SL6の絶対的な位置や相対的な位置関係が、搬送系としての回転ドラムDRの中心軸AXo(及び外周面DRs)に対して精密に位置設定された基準バー部材RBの基準マークRM1~RM4を基準にキャリブレーションされているので、シート状の基板P上に描画される被露光領域DPA全体の形状(長方形)が、平行四辺形状、鞍型状、或いは弓型状に変形することが低減される。
さらに、本実施の形態による露光シーケンスの2nd露光シーケンス(ステップ316、318、320)では、アライメント系ALG1~ALG4の各検出領域AD1~AD4の相対的な位置関係のドリフトに影響されずに、2nd露光中であっても、基板P上のアライメントマークMK1~MK4の各位置を、基準バー部材RBの基準マークRM1~RM4を基準にして検出することが可能となる。その為、2nd露光が継続して長時間行われて、アライメント系ALGnに温度変化や気圧変化等によるドリフトが生じ得る状況になったとしても、基板P上に並ぶ複数の被露光領域DPAの最初の被露光領域DPAから最後の被露光領域DPAまで、基板Pの位置検出精度や2nd露光の重ね合わせ精度を一定に維持することができる。
〔変形例1〕
図20は、先の図7に示した描画装置のアライメント系ALGnの配置の変形例を示し、アライメント系ALGnを4本から7本に増やした場合の様子を、直交座標系XYZのXY面と平行な面内で見た図である。図20において、図7と同じ機能の部材や構造については同じ符号を付してある。図20では、7つのアライメント系ALG1~ALG7の検出領域AD1~AD7の各々が、Y方向に所定の間隔で配置される。その為、本変形例では、基準バー部材(基準指標部材)RBの参照面RBa上に形成される基準マーク(基準指標マーク)RMnも、設計上の検出領域AD1~AD7のY方向の間隔距離に対応した7つの位置の各々に、基準マークRM1~RM7として形成されている。
図7と同様に、6つの描画ラインSL1~SL6によって継ぎ露光可能なY方向の最大寸法をWAyとしたとき、7つの検出領域AD1~AD7のうちのY方向の負側に位置する検出領域AD1は、最大寸法WAy内であって、描画ラインSL1の走査終了付近に位置し、Y方向の正側に位置する検出領域AD7は、最大寸法WAy内であって、描画ラインSL6の走査終了付近に位置する。また、Y方向の位置に関して、検出領域AD2は、描画ラインSL1の走査開始点と描画ラインSL2の走査開始点とによる継ぎ露光部分に配置され、検出領域AD3は、描画ラインSL2の走査終了点と描画ラインSL3の走査終了点とによる継ぎ露光部分に配置され、検出領域AD4は、描画ラインSL3の走査開始点と描画ラインSL4の走査開始点とによる継ぎ露光部分に配置され、検出領域AD5は、描画ラインSL4の走査終了点と描画ラインSL5の走査終了点とによる継ぎ露光部分に配置され、検出領域AD6は、描画ラインSL5の走査開始点と描画ラインSL6の走査開始点とによる継ぎ露光部分に配置される。
基板P上に形成されるアライメントマークMKnも、基板Pの幅方向(Y方向)に関して、検出領域AD1~AD7の各々の配置に対応して、7つのアライメントマークMK1~MK7が配置される。勿論、基板Pの幅方向の両側の各々に形成されるアライメントマークMK1、MK7は、基板Pの長尺方向(副走査方向)に沿って一定の間隔(例えば、10mm)で列状に多数形成されている。基板P上の長尺方向に関する被露光領域DPAと被露光領域DPAの間の余白部には、Y方向に列状に配置される7つのアライメントマークMK1~MK7が形成でき、2nd露光の直前に被露光領域DPAの変形状態を詳細に推定することが可能となる。なお、湿式処理や加熱処理による変形が小さい基板Pに対する2nd露光の場合は、図12のステップ318のアライメント計測の際に、アライメント系ALG2~ALG6のうちのいくつかについては、アライメントマークMK2~MK6の検出を省略(スキップ)することもできる。
〔変形例2〕
図21は、先の図7、図16、図20で示した描画ユニットU1~U6の各々による描画ラインSL1~SL6の基板P(或いは回転ドラムDRの外周面DRs)上での配置関係の変形例を示す。本変形例では、描画ラインSL1~SL6の各々によって基板P上に描画されるパターンの継ぎ部分が、Y方向に一定の寸法だけ重畳(オーバーラップ)するように、描画ユニットU1~U6が配置されている。描画ユニットU1~U6の各々は同じ構成であるので、描画ラインSL1~SL6の各々によるパターン描画可能な長さ(描画長)ΔMLsは同じである。その描画長ΔMLsのうちで、スポット光SPの走査開始点から一定の長さΔOLs、又はスポット光SPの走査終了点までの一定の長さΔOLsの範囲の各々を、オーバーラップ領域OL12、OL23、OL34、OL45、OL56(OL45、OL56は不図示)とする。
オーバーラップ領域OL12は、描画ラインSL1に沿ったスポット光SPの走査開始点側の長さΔOLsと、描画ラインSL2に沿ったスポット光SPの走査開始点側の長さΔOLsとが重なった範囲である。同様に、オーバーラップ領域OL23は、描画ラインSL2に沿ったスポット光SPの走査終了点側の長さΔOLsと、描画ラインSL3に沿ったスポット光SPの走査終了点側の長さΔOLsとが重なった範囲であり、オーバーラップ領域OL34は、描画ラインSL3に沿ったスポット光SPの走査開始点側の長さΔOLsと、描画ラインSL4に沿ったスポット光SPの走査開始点側の長さΔOLsとが重なった範囲である。図21では図示を省略したが、他のオーバーラップ領域OL45は、描画ラインSL4に沿ったスポット光SPの走査終了点側の長さΔOLsと、描画ラインSL5に沿ったスポット光SPの走査終了点側の長さΔOLsとが重なった範囲であり、オーバーラップ領域OL56は、描画ラインSL5に沿ったスポット光SPの走査開始点側の長さΔOLsと、描画ラインSL6に沿ったスポット光SPの走査開始点側の長さΔOLsとが重なった範囲である。
オーバーラップ領域の長さΔOLsは、描画ラインの描画長ΔMLsの0.5~2%程度にすることができる。一例として、描画長ΔMLsが50.0mmの場合、長さΔOLsは、0.25mm~1.00mm程度になる。また、オーバーラップ領域OL12、OL23、OL34、OL45、OL56内に描画されるパターンは、同じ形状で基板P上の同じ位置に精密に重なるように露光される為、そのまま描画した場合は2倍の露光量になってしまう。そこで、各オーバーラップ領域内に含まれるパターンが、例えば図22に示すように、チェッカーフラグ状(市松模様)になるように、描画データの修正が行われる。
図22は、描画ラインSL1の走査開始点側と描画ラインSL2の走査開始点側とのオーバーラップ領域OL12内で重ね合せ露光される同一パターン(2次元の描画データ上の画素配列)の状態を示す。描画ラインSL1、SL2に沿って走査されるスポット光SPの実効的な直径に応じて、描画データの1ビットの基板P上での画素PIXの寸法が設定されている。描画データは、描画可能な最小の正方形の画素PIXの集合で規定され、その画素PIXに対してスポット光SP(パルス状)を照射するか非照射にするかを、1ビットの論理値の「0」か「1」で表している。図22に示すように、オーバーラップ領域OL12内に存在するパターンに対応した描画データは、画素PIXを論理値「0」(非照射)の画素PIXa(白抜きの正方形)と、論理値「1」(照射)の画素PIXb(斜線の正方形)とによる市松模様状に分解されている。さらに、描画ラインSL1によって描画されるオーバーラップ領域OL12内のパターンと、描画ラインSL2によって描画されるオーバーラップ領域OL12内のパターンは、市松模様状に配列される画素PIXaと画素PIXbとが相補的(コンプリメンタリー)な関係で設定されている。
このように、オーバーラップ領域OL12(OL23、OL34、OL45、OL56)内に存在するパターンの描画データを、画素PIX毎に論理値を相補的な関係に分解することにより、基板P上のオーバーラップ領域に露光されるパターンは、僅かな継ぎ誤差による影響で、目立った段差状になったり、線幅の太りが目立ったりすることが緩和される。
〔第2の実施の形態〕
図23は、第2の実施の形態によるアライメント系ALGnの光学構成を示す図であり、直交座標系XYZは、先の第1の実施の形態における図2と同様に設定されている。また、図23において、第1の実施の形態における部材や構成と同じものには同じ符号を付してある。本実施の形態では、先の第1の実施の形態における図4~図6に示したように、基準バー部材RBを対物レンズ系OBLの物面側(基板P側)に設けるのではなく、アライメント系ALGnの光路中に中間像面を形成し、その中間像面に対応した位置に配置するようにした。
図23に示すアライメント系ALGnは、基板P側から配置される平面ミラーMb、第1結像光学系GLo、キューブ型の第1ビームスプリッタBS1(合成光学部材)、第2結像光学系Gd、第2ビームスプリッタBS2で構成される。不図示の照明系ILU(図6、図9参照)からの照明光ILb(非感光性の波長域の光)は、第2ビームスプリッタBS2で反射されて光軸AXsと同軸に進んで、第2結像光学系Gdに入射し、第1ビームスプリッタBS1で透過する成分と反射される成分とに分割される。第1ビームスプリッタBS1を透過した照明光ILbは、中間像面Pssを通って第1結像光学系GLoに入射し、平面ミラーMbで反射されて、基板Pの表面(又は回転ドラムDRの外周面DRs)の検出領域ADnを均一な照度で照明する。
検出領域ADn内に、基板PのアライメントマークMKn(又は、回転ドラムDRの外周面DRs上の基準パターンFMa~FMh)が現れたとき、アライメントマークMKn(又は基準パターンFMa~FMh)からの反射光が第1結像光学系GLoに入射して、第1結像光学系GLoは、中間像面PssにアライメントマークMKnの像MKn’(又は基準パターンFMa~FMhの像)を形成する。第1結像光学系GLoは、基板P側の作動距離(ワーキングディスタンス)を比較的に大きく取れるように、低倍率(例えば、1~2倍の拡大率、或いは0.75倍の縮小率)に設定されている。中間像面Pssで結像したアライメントマークMKn(又は基準パターンFMa~FMh)からの反射光は、第1ビームスプリッタBS1を透過して第2結像光学系Gdに入射する。
第2結像光学系Gdを通ったアライメントマークMKn(又は基準パターンFMa~FMh)からの反射光は、第2ビームスプリッタBS2を透過して、結像光束Bmaとなって、図示を省略した撮像素子DISの撮像面に至る。第2結像光学系Gdは、中間像面Pssと撮像素子DISの撮像面とを共役関係(結像関係)にすると共に、中間像面Pssに形成される中間像の拡大像を撮像素子DISの撮像面に再結像する。
また、第2結像光学系Gdを通って第1ビームスプリッタBS1で反射された照明光ILbは、基準バー部材RBの参照面RBaに形成された基準マークRMnを均一な照度分布で照明する。基準バー部材RBの参照面RBaは、第1ビームスプリッタBS1を挟んで、中間像面Pssと光学的に対応した面Pss’と一致するように配置される。その為、参照面RBa(面Pss’)は、第2結像光学系Gdを介して撮像素子DISの撮像面と共役関係(結像関係)になっている。従って、照明光ILbで照明された基準マークRMnからの反射光が、第1ビームスプリッタBS1と第2結像光学系Gdとを介して結像光束Bmaとなって撮像素子DISの撮像面に達すると、基準マークRMnの拡大像とアライメントマークMKn(又は基準パターンFMa~FMh)の拡大像とを、撮像面上に同時に結像させることができる。図23のアライメント系ALGnの場合も、先の図9で説明したように、照明光ILbを射出する照明系ILU内の照明視野絞りFAnを交換することで、基準マークRMnの拡大像とアライメントマークMKn(又は基準パターンFMa~FMh)の拡大像との両方の同時撮像と、いずれか一方のみの選択的な撮像とを切り替えることができる。
以上、本実施の形態でも、アライメント系ALGnはY方向に複数配列されるので、基準バー部材RBは、それらの複数のアライメント系ALGnの各々の第1ビームスプリッタBS1の下方空間をY方向に横切るように延設される。また、本実施の形態における基準バー部材RBは、先の第1の実施形態の図4に示したように、回転ドラムDRの外周面DRs(基板P)の近くに配置しなくても良い為、基準バー部材RBのXZ面内での外形寸法を大きくして剛性を高めることができると共に、基準バー部材RBを固定する為の支持機構部(図8中の支持フレーム部100、支持板部102A、102B、103A、103B、連結バー部材104a、104b、104cに相当)を大型化して、剛性を高めることができる。
〔第3の実施の形態〕
図24は、第3の実施の形態によるアライメント系ALGnの光学構成を示す図であり、直交座標系XYZは、先の図2や図23と同様に設定されている。また、図24において、第1の実施形態や第2の実施形態における部材や構成と同じものには同じ符号を付してある。本実施の形態では、アライメント系ALGnとして、作動距離(ワーキングディスタンス)が10cm以上に設定された光学顕微鏡を用いる。このような顕微鏡は、例えば、株式会社モリテックスから、マシンビジョン用レンズとして販売されており、それを利用することもできる。
本実施の形態では、図24のように、アライメント系ALGnの全体は低熱膨張係数の金属又はセラミックスによる支持ブラケット400に固定されている。支持ブラケット400は、XZ面と平行な板状に形成され、図8中の支持フレーム部100と接続された構造部分(メトロロジーフレーム)に固定される。アライメント系ALGnは、基板P(回転ドラムDRの外周面)に対向して配置される平面ミラーMb、その平面ミラーMbを支持ブラケット400に固定する保持金物401、アライメント系ALGnの対物レンズ系OBLと平面ミラーMbとの間の光路中に、光軸AXsと垂直な面に対して角度θe(θe>0)だけ傾けて配置される石英等の透過光学硝材によるプレート型(平行平板状)のビームスプリッタBS1(合成光学部材)、そのビームスプリッタBS1を支持ブラケット400に固定する保持金物402、アライメント系ALGnの検出領域ADnを落射照明するように、照明系ILUからの照明光ILbを導く光ファイバー束404、その光ファイバー束404の先端部(射出端)404aからの照明光ILbを対物レンズ系OBLに向けて反射させると共に、基板P等で反射して対物レンズ系OBLを介して入射した結像光束Bmaを透過させるビームスプリッタBS2、レンズ系Gb、及び撮像素子DISとで構成される。
本実施の形態では、対物レンズ系OBLから射出する照明光ILbの強度のうちの10~30%程度が、角度θeに依存して、プレート型のビームスプリッタBS1の表面(光分割面であって、光合成面)Bspで反射されて、基準バー部材RBに向かう。基準バー部材RBの参照面RBaは光学的に基板Pの表面と対応した位置に設定され、参照面RBa上に設定される検出領域ARnは照明光ILbの一部によって均一な照度分布で照明される。検出領域ARn内に配置される基準マークRMnで発生した反射光束Bmrは、光軸AXs’に沿ってビームスプリッタBS1に達し、表面Bspで反射されて、結像光束Bmaとなって対物レンズ系OBLに入射する。本実施の形態でも、撮像素子DISの撮像面(撮像領域DIS’)は、基板Pの表面と共役関係(結像関係)であると共に、基準バー部材RBの参照面RBaとも共役関係(結像関係)に設定されている。なお、図24の構成において、プレート型のビームスプリッタBS1は無偏光タイプとされ、石英以外の硝材でも良い。
従って、光ファイバー束404の射出端404aから照明光ILbが投射されると、基板P上に設定される検出領域ADnと基準バー部材RB上に設定される検出領域ARnとの両方が同時に照明光ILbによって落射照明される。その為、撮像素子DISの撮像領域DIS’内には、検出領域ADn内に現れる基板PのアライメントマークMKnの像、或いは回転ドラムDR上の基準パターンFMa~FMhの像と、検出領域ARn内の基準マークRMnの像とが合成されて同時に結像する。撮像素子DISで撮像されるアライメントマークMKnまたは基準パターンFMa~FMh、及び基準マークRMnの各像に応じた映像信号Vsgは、図11に示した画像解析部206に送られる。
本実施の形態では、対物レンズ系OBLとレンズ系Gbとによる顕微鏡光学系の瞳面Eppと対応した位置に、光ファイバー束404の射出端404aが位置するように設定され、ほぼ円状の外形を成す射出端404aが瞳面Epp内で2次光源像となって、テレセントリックな落射照明(ケーラー照明)が行われる。しかしながら、本実施の形態では、先の図9で示したような照明視野絞りFA1~FA3が利用できないので、基準バー部材RBの基準マークRMnを同時に撮像するか否かを選択する為に、基準バー部材RBの参照面RBaの直前に、平面上の液晶シャッター410を配置する。液晶シャッター410は、基準バー部材RB上に設定される検出領域ARnの各々(即ち、アライメント系ALGnの各々)に対して個別に設けられ、先の図11に示した計測制御部210からの駆動信号CCsに応答して光の透過率を変える。液晶シャッター410の各々は、基準バー部材RBの参照面RBaから一定の間隔となるように基準バー部材RBと平行に延設された板状の支持枠に固定されている。
液晶シャッター410は、駆動信号CCsの電圧が0Vのときに透過率がほぼ0%となり、電圧が高くなるに従って透過率が上昇し、公称の最大電圧のときに透過率が95%以上になるような特性を有する。また、液晶シャッター410の表面は、低反射率となるように反射防止膜がコートされている。従って、撮像素子DISからの映像信号Vsgに基づいて、アライメント系ALGnをキャリブレーションする段階(図12中のステップ302)等のときは、液晶シャッター410の透過率を最大にし、基準バー部材RB上の基準マークRMnの像を検出できるようにする。また、基板P上のアライメントマークMKnのみ、又は回転ドラムDR上の基準パターンFMa~FMhのみを検出する場合は、液晶シャッター410の透過率が最小(0%)に設定される。
さらに、基準バー部材RB上の基準マークRMnの像と基板PのアライメントマークMKnの像とを同時に撮像素子DISで撮像する場合、撮像領域DIS’内での基準マークRMnの像のコントラストに比べて、アライメントマークMKnの像のコントラストが大きく低下することもある。そのような場合は、液晶シャッター410の透過率を調整することで、コントラストの格差を改善することもできる。
以上、本実施の形態では、プレート型のビームスプリッタBS1を対物レンズ系OBLの光軸AXsと垂直な面に対して角度θeだけ傾けて、対物レンズ系OBLから射出される照明光ILbをアライメント系ALGnの下方空間に配置される基準バー部材RBに向かうように構成した。しかしながら、基準バー部材RBがアライメント系ALGnの上方空間に延設される場合は、光軸AXsと垂直な面に対するビームスプリッタBS1の傾きを逆向き(-θe)に設定すれば良い。また、プレート型のビームスプリッタBS1の厚みは、光学的な諸収差(アス等)の発生を少なくすると共に、面精度を悪化させる変形や歪みを生じない剛性を持つ範囲で、極力薄くするのが良い。
なお、プレート型のビームスプリッタBS1の表面に反射防止膜(ARコート)を形成しない無垢の状態にすることで、角度θeに依存して光分割面(光合成面)Bspに適度な反射率を持たせることができる。また、角度θeは、光軸AXsと光軸AXs’との成す角度2θe(XZ面内での基準バー部材RBの配置)によって決まるが、角度θeが、例えば45°以上になると、基準バー部材RBに向かう照明光ILbの強度が増大し、基板Pに向かう照明光ILbの強度が極端に低下することになるので、角度θeは0°<θe<45°の範囲、更に好ましくは、5°≦θe≦30°の範囲にするのが良い。また、プレート型のビームスプリッタBS1の厚みは1mm以下、例えば0.1mmであっても良く、角度θeを調整可能とする構造を設けても良い。
〔変形例3〕
図25は、図24に示した第3の実施の形態におけるビームスプリッタBS1(合成光学部材)の変形例を示す光学配置図であり、対物レンズ系OBLの光軸AXs、平面ミラーMb等は、図24のXYZ座標系内での配置と同じに設けられている。本変形例では、図25のように、ビームスプリッタBS1はキューブ型で構成され、対物レンズ系OBL側に位置する石英によるプリズムブロックPSMaと平面ミラーMb側に位置する石英によるプリズムブロックPSMbとの貼り合せによって、XZ面と平行な面に沿った断面の全体形状が台形(五角形)になるように構成される。プリズムブロックPSMaとプリズムブロックPSMbとの貼り合せ面Bspは、光分割面として機能し、光軸AXsと垂直な面に対して角度θeだけXZ面内で傾くように構成される。対物レンズ系OBLから射出する照明光ILbは、プリズムブロックPSMaの面BS1aから入射し、貼り合せ面(分割面)Bspを透過した照明光ILbは、プリズムブロックPSMbの面BS1bから射出して平面ミラーMbに達する。
プリズムブロックPSMaの面BS1aとプリズムブロックPSMbの面BS1bとは、互いに平行であると共に、光軸AXsと垂直に設定されている。また、分割面Bspで反射された照明光ILbは、プリズムブロックPSMaの面BS1cから、基準バー部材RBの参照面RBaと垂直に設定される光軸AXs’に沿って射出する。プリズムブロックPSMaの面BS1cは、光軸AXs’と垂直になるように形成されている。光軸AXsと光軸AXs’とが成す角度は、分割面Bspの角度θeの倍角となるので、2θeとなり、プリズムブロックPSMaの面BS1bと面BS1cとは、XZ面内で角度(180°-2θe)を成す。本変形例でも、貼り合せ面(分割面)Bspでの照明光ILbの反射率が10~30%程度になるように、貼り合せ面(分割面)Bspには誘電体膜が形成されている。
以上の本変形例によれば、照明光ILbで照明された基板PのアライメントマークMKn、又は回転ドラムDRの基準パターンFMa~FMhからの反射光(結像光束Bma)は、ビームスプリッタBS1の光軸AXsと垂直な面BS1b、BS1aを通って対物レンズ系OBLに入射するので、アライメントマークMKnや基準パターンFMa~FMhの結像時の光学的な諸収差の発生を小さくできる。同様に、照明光ILbで照明された基準バー部材RBの基準マークRMnからの反射光(結像光束Bmr)は、ビームスプリッタBS1の光軸AXs’と垂直な面BS1cから入射し、光軸AXsと垂直な面BS1aを通って対物レンズ系OBLに入射するので、基準マークRMnの結像時の光学的な諸収差の発生も小さくできる。
〔第4の実施の形態〕
図26は、第4の実施の形態による基準バー部材RBの構成を示す図であり、図26Aは、基準バー部材RBの参照面RBa上の構成を示し、図26Bは、図26A中の基準バー部材RBのCC-CC矢視断面を表わし、図26Cは参照面RBa上に形成される基準マークRMnの構成の一例を示す。本実施の形態では、基準バー部材RB上の基準マークRMnを、調整可能な照度で自発光させる構成とする。その為、図26Bに示すように、基準バー部材RBの母材RBoとなる金属製又はセラミックス製の角材の内部に、自発光用の照明光ILhを導光する為の光ファイバー束450が接続される。
先の図20に示したように、7つのアライメント系ALG1~ALG7が設けられる構成に応じて、図26Aでも、アライメント系ALG1~ALG7の各検出領域AD1~AD7に対応したY方向の位置の各々に、基準マークRM1~RM7(中心点CRn)が配置される。基準バー部材RBの母材RBoのビームスプリッタBS1側の面には、薄い石英板RBgがY方向に延設して設けられ、その石英板RBgの表面には低反射率のクロム層(遮光層)の蒸着による参照面RBaが形成されている。参照面RBa(遮光層)上の基準マークRMnの各位置には、図26Cに示すように、アライメント系ALGnの各検出領域ADnに対応した寸法で矩形状の透過窓WDn(n=1~7)が形成され、その内部に遮光層による基準マークRMnが配置される。
石英板RBgの裏面側の母材RBoには、透過窓WDnの各々を含むような直径で円柱状に穴明けされた開口部RBzが形成され、開口部RBz内には、光ファイバー束450の射出端から投射される照明光ILeを入射して、個々の透過窓WDnの全体を裏面側(石英板RBg側)から均一に照明するレンズ部材452が設けられる。また、光ファイバー束450の射出端側とレンズ部材452とは、円管状に形成された断熱性の樹脂部材454を介して、開口部RBz内に固定される。レンズ部材452は、光ファイバー束450の射出端に形成され多数の点光源の円形状の集合を2次光源として、透過窓WDnを裏側からケーラー照明する。図26Bに示したレンズ部材452の光軸AXiは、ビームスプリッタBS1を介して、先の図5、図23、図24の各々で説明した対物レンズ系OBLの光軸AXsと許容誤差内で同軸になるように設定される。
本実施の形態では、基準バー部材RBの母材RBo内に設けたレンズ部材452を介して、光ファイバー束450からの照明光ILhを透過窓WDn内に照射する構成なので、アライメント系ALGnの撮像素子DISで観察される基準マークRMnの拡大像RMn’は、明るい背景(白)の中に黒いパターンとして現れる。また、照明光ILhは、アライメント系ALGn用の照明光ILbを供給する照明系ILU(図6参照)内の光源部から供給することもできるが、別の照明系ILU’を設けて、照明光ILhの照度を可変にするようにしても良い。別の照明系ILU’を用いる場合は、アライメント系ALGn用の照明光ILbの照度とは無関係に照明光ILhの照度を調整したり、アライメント系ALGnのキャリブレーション時(図12のステップ302)のみに照明光ILhを照射し、アライメント系ALGnが基板P上のアライメントマークMKnを順次検出する期間では照明光ILhを消灯したりすることもできる。
さらに、アライメント系ALGn用の照明光ILbと、基準バー部材RBの基準マークRMn(透過窓WDn)用の照明光ILhとの波長特性を異ならせても良い。例えば、アライメント系ALGn用の照明光ILbは、基板P上のアライメントマークMKnの検出に適するように、基板P上の感光層に対しては非感光性で、ブロードな波長帯域(例えば、450nm~700nm)を有する光にし、基準バー部材RBの基準マークRMn(透過窓WDn)用の照明光ILhは、アライメント系ALGnの対物レンズ系OBL等の結像光学系で発生する色収差を小さくして像コントラストを高められる単色の光(非感光性)にすることができる。
また、本実施の形態では、図26Cに示したように、遮光層で形成される参照面RBa中に透過性の透過窓WDnを設け、その透過窓WDn内に遮光層による基準マークRMnを形成したが、透過窓WDnは設けずに、遮光層による参照面RBa中に透過性の基準マークRMnを形成しても良い。この場合、アライメント系ALGnの撮像素子DISで観察される基準マークRMnの拡大像RMn’は、暗い背景(黒)の中に明るいパターン(白)となって現れる。その為、アライメント系ALGnが基板P上のアライメントマークMKnを検出している間も、撮像領域DIS’内に現れる基板Pの表面の全体画像の中で、基準マークRMnの拡大像RMn’を高いコントラストで表示させることができる。
さらに、アライメント系ALGn用の照明光ILbの照度を、基準バー部材RBの基準マークRMn用の照明光ILhの照度とは別に調整可能にすることにより、基板Pの表面(アライメントマークMKn)の反射率が低いときには、アライメント系ALGn用の照明光ILbの照度を高め、基板Pの表面(アライメントマークMKn)の反射率が高いときには、アライメント系ALGn用の照明光ILbの照度を低めることが独立に可能となる。その為、基板Pの表面の反射率(或いは吸収率)等に変動があっても、基板P上のアライメントマークMKnの画像解析時の計測精度の劣化が抑えられ、安定な位置計測が可能となる。なお、本実施の形態による図26の基準バー部材RBは、先の図23、図24、図25の各々に示したアライメント系ALGnのいずれと組み合わせても、そのまま使用できる。
〔第5の実施の形態〕
図27は、マスクレス露光装置として、デジタル・ミラー・デバイス(DMD)を用いたパターン描画装置の概略的な構成を示し、直交座標系XYZのZ軸は重力方向に設定され、Z軸と垂直なXY面は水平面に設定される。図27において、被露光体としての基板Pは、XY面と平行な面に沿って1次元(X方向)又は2次元(X方向とY方向)に並進移動する不図示の移動ステージ上に載置される。本実施の形態では、基板Pを枚葉の平面状のガラス基板、プラスチック基板、又は金属基板とするが、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂シートであっても良い。
本実施の形態でも、Y方向に一定の間隔で一列に配置される奇数番の描画ユニット(パターン形成機構)U1、U3、U5・・・と、奇数番の描画ユニットに対してX方向に所定の間隔で離間配置されると共に、Y方向に一定の間隔で配置される偶数番の描画ユニット(パターン形成機構)U2、U4、U6・・・とが設けられる。図27において、基板P上には、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5・・・の各々による投影領域IA1、IA3、IA5・・・と、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6・・・の各々による投影領域IA2、IA4、IA6・・・とが設定される。奇数番の描画ユニットU1、U3、U5・・・と偶数番の描画ユニットU2、U4、U6・・・とは、XZ面内で見ると、YZ面と平行な中心面CPoに関して左右対称に配置されると共に、Y方向には投影領域IAnのY方向の寸法程度だけシフトして配置される。奇数番と偶数番の描画ユニットUn(n=1、2、3・・・)の各々の構成はいずれも同じなので、ここでは代表して描画ユニットU1の構成について詳しく説明する。
描画ユニットU1は、主要部材の全体を支持する低熱膨張係数の金属による支持フレーム550と、露光用の照明ビームLB1(紫外波長域の単色光)を入射する照明光学系(鏡筒)551と、照明光学系551によって均一な照度分布にされた照明ビームLB1を反射させる反射ミラー552と、反射ミラー552からの照明ビームLB1で照射されるDMDユニット553と、DMDユニット553の多数のマイクロ・ミラーの各々の角度をパターンデータに応じて逐次変化させることで変調される描画ビームを入射して、基板P上の投影領域IA1内に動的なパターンの縮小像を投影する投影光学系(鏡筒)554とで構成される。
照明ビームLB1は、レーザ光源から光ファイバー束を介して照明光学系(鏡筒)551に入射され、照明光学系551内のフライアイレンズとコンデンサーレンズ等によって均一な照度分布にされて、DMDユニット553をケーラー照明する。DMDユニット553の反射面は、XY面内で見ると、Y方向に隣り合う描画ユニットU2による投影領域IA2との継ぎ露光の為に、所定の角度だけ傾いて配置される。投影光学系(鏡筒)554は、DMDユニット553の反射面の全体を基板P上の投影領域IA1内に縮小結像するように、複数のレンズ素子で直筒状に構成された両側テレセントリックな結像光学系として構成される。
一方、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5・・・の-X方向側には、複数の奇数番のアライメント系ALG1、ALG3・・・が配置され、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6・・・の+X方向側には、複数の偶数番のアライメント系ALG2、ALG4・・・が配置される。奇数番のアライメント系ALG1、ALG3・・・は、各々の検出領域AD1、AD3・・・がY方向に所定の間隔で列状に位置するように設けられ、偶数番のアライメント系ALG2、ALG4・・・は、各々の検出領域AD2、AD4・・・がY方向に所定の間隔で列状に位置するように設けられる。奇数番のアライメント系ALG1、ALG3・・・と、偶数番のアライメント系ALG2、ALG4・・・とは、XZ面内で見ると、中心面CPoに対して対称に配置される。
アライメント系ALGn(n=1、2、3、4・・・)の構成は、いずれも同じなので、ここでは代表してアライメント系ALG1の構成について詳しく説明する。アライメント系ALG1は、先の図6や図9と同様に、照明系ILU、撮像素子DIS、対物レンズ系OBL、直方体状のビームスプリッタBS1とで構成され、対物レンズ系OBLの光軸AXsは基板Pの表面と垂直(Z軸と平行)に設定される。対物レンズ系OBLと基板Pとの間の光路中に配置されるビームスプリッタBS1の側方には、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5・・・の支持フレーム550に取り付け金具を介して固定される第1の基準バー部材RBが配置される。第1の基準バー部材RBは、奇数番のアライメント系ALG1、ALG3、ALG5・・・の近くをY方向に貫通するように細長く延設され、第1の基準バー部材RBの基準マークRMnが形成される参照面RBaはYZ面と平行に設定される。その為、ビームスプリッタBS1と基準バー部材RBとの間の光軸AXs’はXY面と平行、且つX軸と平行に設定される。
偶数番のアライメント系ALG2、ALG4、ALG6・・・も同様に、対物レンズ系OBLと基板Pとの間の光路中にビームスプリッタBS1が配置され、その側方には、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6・・・の支持フレーム550に取り付け金具を介して固定される第2の基準バー部材RBが配置される。
図28は、描画ユニットUn(n=1、2、3・・・)の各々による投影領域IAn(n=1、2、3・・・)と、アライメント系ALGn(n=1、2、3・・・)の各々による検出領域ADn(n=1、2、3・・・)とのXY面内での配置を示す。DMDユニット553をXY面内で傾けて配置したことにより、矩形状の投影領域IAnの各々は、Y軸と平行な線に対して角度θdmだけ傾くように配置される。また、投影領域IAnのY方向側の端部の各々は、隣り合う奇数番と偶数番とで2重露光されるオーバーラップ領域(継ぎ部)OL12、OL23、OL34、OL45、OL56・・・が形成されるように配置される。また、奇数番のアライメント系ALG1、ALG3・・・の各々の検出領域AD1、AD3・・・のY方向の配置に対応して、第1の基準バー部材RB上には奇数番の基準マークRM1、RM3・・・が形成され、偶数番のアライメント系ALG2、ALG4・・・の各々の検出領域AD2、AD4・・・のY方向の配置に対応して、第2の基準バー部材RB上には偶数番の基準マークRM2、RM4・・・が形成されている。なお、本実施の形態では、Y方向を長辺とする長方形の投影領域IAn(n=1、2、3・・・)の各々、或いは複数の投影領域IAn(n=1、2、3・・・)の全体を含む長方形の領域によって、パターン形成領域が形成される。
以上の構成により、本実施の形態でも、先の各実施の形態と同様に、基準バー部材RBを基準にして、複数のアライメント系ALGnのドリフトによる相対的な位置関係の変動を、露光動作中であっても逐次モニターすることが可能となる。なお、本実施の形態では、基板P上にパターン露光する際、基板Pは移動ステージによって、例えば、+X方向に一定の速度で移動される。その場合、基板P上のアライメントマークMKnは、主に奇数番のアライメント系ALG1、ALG3・・・(検出領域AD1、AD3・・・)によって検出され、その検出結果に基づいて、奇数番と偶数番の描画ユニットUnの各々の投影領域IAn内に投影されるパターン像の位置や投影タイミング(DMDユニット553に印加されるパターンデータの送り出しタイミング)が動的に微調整される。また、基板P上にパターン露光する際、移動ステージを-X方向に一定の速度で移動させても良い。その場合は、基板P上のアライメントマークMKnが、主に偶数番のアライメント系ALG2、ALG4・・・(検出領域AD2、AD4・・・)によって検出され、その検出結果に基づいて、奇数番と偶数番の描画ユニットUnの各々の投影領域IAn内に投影されるパターン像の位置や投影タイミングが動的に微調整される。
〔変形例4〕
図27、図28に示したDMDユニット553は、多数のマイクロ・ミラーの各々を反射面と垂直な方向に微動させて、隣り合ったマイクロ・ミラーとの間で反射面の高さに差を与える(位相差を与える)空間光変調素子(SLM)にしても良い。また、複数のアライメント系を有するパターン描画装置としては、マスクレス露光装置に限られず、インクジェット式のプリンタ装置であっても良い。インクジェット方式では、インクの微細な液滴を吐出する多数の微小孔が規則的に配列された吐出面を有するパターン形成機構としてのノズルユニット(描画ユニットとも呼ぶ)が、基板Pと吐出面とが一定の間隔になるように配置される。パターンの描画(印刷)時には、基板Pを一方向(副走査方向)に移動させながら、ノズルユニット(描画ユニット)の多数の微小孔の各々からパターンデータに基づいて基板P上に選択的に液滴が吐出される。
インクジェット式のプリンタ装置でも、基板P上に既に形成されているパターン層に対して、精密に位置決めされた状態で新たなパターンを描画(重ね印刷)する必要が有り、基板Pの寸法が大きくなると、その変形(面内の伸縮や歪み)を精密に計測する為に、基板P上の複数の位置に形成されたアライメントマークMKnの各位置を検出する複数のアライメント系が必要になる。その為、先の各実施の形態や変形例で説明したような基準バー部材RBと、ビームスプリッタBS1を有するアライメント系ALGnとを設けることにより、長時間に亘って連続してパターン描画(重ね印刷)する間のアライメント系ALGnのドリフトによって生じ得る重ね合わせ誤差の発生を抑制することができる。なお、本変形例では、1つのノズルユニット(描画ユニット)による液滴の吐出面の領域、或いは複数のノズルユニットを有する場合は、その複数のノズルユニットの各々の液滴の吐出面の全体を含む領域によって、パターン形成領域が形成される。
〔変形例5〕
図29は、アライメント系ALGnの構成に関する変形例を説明する図であり、図29Aは、先の図24に示したアライメント系ALGnをベースにした変形例を示す。本変形例では、アライメント系ALGn用の照明光ILbを広帯域の波長分布にし、対物レンズ系OBLと基板Pとの間に配置されるビームスプリッタBS1(合成光学部材)を、表面に誘電体多層膜を形成して波長選択性を持たせたダイクロイックミラーとして構成する。図29Bは、ビームスプリッタBS1の波長選択特性の一例を示すグラフであり、横軸は波長λ(nm)を表わし、縦軸は透過率と反射率の大きさを表す。本変形例では、アライメント系ALGnの対物レンズ系OBLから撮像素子DISまでの結像光学系が、図29Bに示す色収差補正域の波長範囲内で、良好な結像特性が得られるように収差補正されているものとする。
また、アライメント系ALGn用の照明光ILbを供給する照明系ILUは、400nm~700nm程度の波長帯域に亘って発光強度を有するハロゲンランプ等の光源HLSと、光源HLSからの光の波長分布や波長強度を調整可能にする為に、複数の波長フィルターが交換可能に収納された波長選択部WLCと、集光レンズ系Gkとを備え、集光レンズ系Gkは、図24と同様に設けられた光ファイバー束404の入射端404bに照明光ILbを照射する。光ファイバー束404の射出端404aは、アライメント系ALGnの対物レンズ系OBLの瞳位置に設定され、照明光ILbは、ビームスプリッタBS1(ダイクロイックミラー)を介して、基板P上のアライメントマークMKn、或いは基準バー部材RBの基準マークRMnを照明する。
図29AのビームスプリッタBS1(ダイクロイックミラー)は、一例として、図29Bに示すように、レジスト感光域となる波長420nmより長い波長域において、透過率特性と反射率特性とが約500nm付近でクロスオーバーするような波長選択特性を有する。即ち、波長が約550nmよりも短い波長成分の光に対しては、反射率が5%以上になり、波長が約480nmよりも長い波長成分の光に対しては、透過率が5%以上になるような特性を有する。従って、対物レンズ系OBLから射出してビームスプリッタBS1(ダイクロイックミラー)に照射される照明光ILbのうち、波長が約550nmよりも短い波長成分の光は、効率的に反射されて基準バー部材RBの基準マークRMnを照明する。また、照明光ILbのうち、波長が約480nmよりも長い波長成分の光は、効率的に透過されて基板P上のアライメントマークMKnを照明する。なお、波長選択部WLCは、典型的には、照明光ILbが色収差補正域の波長帯域に亘って強度分布を有するように波長選択する。
このように、本変形例では、基準バー部材RBの基準マークRMnを照明する照明光ILbは、色収差補正域内の短波長側の成分の光に設定され、基板P上のアライメントマークMKnを照明する照明光ILbは、色収差補正域内の長波長側の成分の光に設定されるように、波長選択が行われる。従って、基準バー部材RBに連続して照明光ILbを照射し続ける必要性が生じた場合でも、基準バー部材RBの温度を上昇させ易い長波長側の光成分が低減しているので、基準バー部材RB自体の熱変形を抑制することができる。
〔変形例6〕
さらに、上記の変形例5によれば、ビームスプリッタBS1(ダイクロイックミラー)が波長選択特性を有しているので、基板P上のアライメントマークMKnを照明する照明光ILbの照度と、基準バー部材RBの基準マークRMnを照明する照明光ILbの照度とを、個別に(独立に)調整することもできる。具体的には、図30に示すように、発光波長域が異なる2つの固体光源(LED等)LD1、LD2と、レンズ系GS1、GS2と、ミラーMcと、ビーム合成用のビームスプリッタBS3と、照明光ILbを図29に示した光ファイバー束404の入射端に集光する集光レンズ系Gkと、固体光源LD1、LD2の発光強度を個別に調整可能な制御部LCUと、を備える照明系ILUが設けられる。
レンズ系GS1によって平行光束に変換される固体光源LD1からのビームILb1は、例えば、波長420nm~500nmの間に、単一又は複数の中心波長を有する発光スペクトルを含み、レンズ系GS2によって平行光束に変換される固体光源LD2からのビームILb2は、例えば、波長500nm~630nmの間に複数の中心波長を有する発光スペクトルを含むように設定される。ミラーMcで反射されたレンズ系GS1からのビームILb1とレンズ系GS2からのビームILb2とは、ビームスプリッタBS3で同軸に合成された照明光ILbとなって集光レンズ系Gkに入射し、光ファイバー束404を介して、図29中のビームスプリッタBS2に入射する。
図30のような照明系ILUによれば、制御部LCUで固体光源LD1、LD2の各々からのビームILb1、ILb2の強度を個別に調整できるので、撮像素子DISによって、基板P上のアライメントマークMKnの拡大像と、基準バー部材RBの基準マークRMnの拡大像とを同時に撮像する際、撮像画像内でそれぞれの拡大像のコントラストや輝度を適切なバランスに調整できる。特に、基板Pの表面の照明光ILb(ILb2)に対する反射率が総じて低く、アライメントマークMknの拡大像が暗い場合、固体光源LD2(ビームILb2)の発光強度を高め、固体光源LD1(ビームILb1)の発光強度を低めると共に、撮像素子DISからの映像信号Vsgのゲイン(増幅率)を高めることで、観察画像の明暗のバランスを取ることができる。また、撮像素子DISをカラー画像が撮像可能なものにすると、基板P上のアライメントマークMKn(又は回転ドラムDR上の基準パターンFMa~FMh)と、基準バー部材RB上の基準マークRMnとを、色で識別して検出することができるので、アライメントマークMKnの像と基準マークRMnの像とが撮像領域DIS’内で近接して現れたときの誤検出が低減できる。
なお、ビームILb1、ILb2の各々を所望の波長帯域に設定する為に、固体光源LD1、LD2を高輝度の白色発光LEDにし、合成用のビームスプリッタBS3の手前のビームILb1、ILb2の各光路中に波長選択フィルター(バンドパスフィルター)を設けても良い。さらに、合成用のビームスプリッタBS3での光量損失を低減する為、ビームスプリッタBS3を偏光ビームスプリッタとし、ビームILb1はビームスプリッタBS3の偏光分離面を90%以上透過するような直線偏光にし、ビームILb2はビームスプリッタBS3の偏光分離面で90%以上反射されるような直線偏光にする波長板を、レンズ系GS1、GS2の各々の後に設けても良い。
このように、照明光ILbに偏光特性を付与できる場合は、先の図9、図23、図24、図25で示したアライメント系ALGnのビームスプリッタBS1(合成光学部材)も、光分割面(又は光合成面)Bspに偏光選択性を有する誘電体多層膜を形成した偏光ビームスプリッタにできる。また、ビームスプリッタBS1で反射されて、基準バー部材RBの基準マークRMnを照明する照明光ILbはLED等からの近赤外波長域の光とし、ビームスプリッタBS1から基板P上のアライメントマークMKnを照明する照明光ILbは、基板P上の光感応層の感光波長域(例えば、360nm以下の紫外波長域)を避けた広帯の波長域の光(いわゆる、ランダム偏光な白色光)としても良い。
〔変形例7〕
図31は、対物レンズ系OBLと基板P(回転ドラムDRの外周面DRs)との間に配置されるアライメント系ALGnのビームスプリッタBS1の構成と、基準バー部材RBの配置方向とに関する変形例を示す図である。本変形例のビームスプリッタBS1(合成光学部材)は、先の図25の構成と同様に、2つのプリズムブロックPSMa、PSMbを貼り合せ、その接触界面に光分割面Bspが形成される構成とする。但し、対物レンズ系OBLから光軸AXsに沿ってプリズムブロックPSMaに入射し、光分割面Bspで反射された一部の照明光ILbは、プリズムブロックPSMaの面BS1cを全反射面(ミラー面)とすることにより、面BS1cで対物レンズ系OBLを通る光軸AXsの方向に折り曲げられる。本変形例では、光分割面Bspから延びる光軸AXs’が面BS1c(全反射面)で折り曲げられて、光軸AXsと直交するように設定される。
図31における直交座標系XYZは、先の図23、図24と同じに設定され、対物レンズ系OBLと平面ミラーMbとの間の光軸AXsはXY面に対して傾いている。ビームスプリッタBS1は、XZ面内で見ると全体に五角形に形成され、対物レンズ系OBLと対向したプリズムブロックPSMa側の面BS1aと、平面ミラーMbと対向したプリズムブロックPSMb側の面BS1bとは、互いに平行であって、且つ光軸AXsと垂直に設定される。面BS1aと面BS1bとの間であって、プリズムブロックPSMa、PSMbの接合面である光分割面Bspは、先の図25と同様に、光軸AXsと垂直な面に対して角度θeだけ傾くように設定される。従って、光分割面Bspの位置で、光軸AXsと光軸AXs’とが成す角度はXZ面内において角度2θeとなる。
プリズムブロックPSMaの面BS1c(ミラー面)で折り曲げられて、+Z方向側に延びる光軸AXs’は、光軸AXsと直角に交わった後、プリズムブロックPSMaの上側の面BS1dを通って、基準バー部材RBの参照面RBa(基準マークRMnの中心点)に達する。面BS1dは、XZ面内で見ると、面BS1a、BS1bの各々と直角を成し、且つ光軸AXsと平行に設定され、さらに基準バー部材RBの参照面RBaとも平行に設定される。従って、XZ面内における面BS1c(ミラー面)の傾きは、面BS1c(ミラー面)の位置で折り返される光軸AXs’同士が成す角度が角度(90°-2θe)となるように設定されている。その角度θeは、理論的には0°<θe<45°の範囲で設定可能であるが、照明光ILbの太さや開口数、結像光束の太さ、対物レンズ系OBLの開口数、各部材の配置関係の制限から、5°≦θe≦35°の範囲に設定される。このことは、先の図24、図25におけるビームスプリッタBS1の配置でも同様である。なお、図31のビームスプリッタBS1の場合、光分割面Bspの角度θeを22.5°に設定すると、光軸AXsと光軸AXs’との交点、光分割面Bsp内の光軸AXsが通る点、及び、面BS1c(ミラー面)内の光軸AXs’が折り返される点の3点は、XZ面内において直角二等辺三角形の各頂点を成す。
本変形例では、アライメント系ALGn(対物レンズ系OBL、ビームスプリッタBS1等)の下方空間に基準バー部材RBを配置することが難しい場合に適用できる。また、図31のビームスプリッタBS1のように、対物レンズ系OBLを通る光軸AXsと、面BS1cから基準バー部材RBに向かう光軸AXs’とを直交した関係にすることによって、ビームスプリッタBS1の全体がXZ面内で傾いて、支持ブラケット400(図24参照)に取り付けられたとしても、ビームスプリッタBS1の面BS1bから平面ミラーMbに向かう光軸AXsと、ビームスプリッタBS1の面BS1dから基準バー部材RBに向かう光軸AXs’とは、いずれもXZ面内で横方向に僅かに平行シフトするだけで、光軸AXs、AXs’が傾くことが無い。即ち、テレセン誤差の発生が抑制された構成になっている。また、本変形例でも、プリズムブロックPSMaとプリズムブロックPSMbとの接合面である光分割面Bspには、波長選択用、或いは偏光分離用の誘電体多層膜を形成しても良い。
以上で説明した各実施の形態や各変形例において、基準バー部材RBは、その母材(RBo)を低熱膨張係数の材料(Fe-36Niからなるインバー合金、Fe29Ni-17Coからなるコバール合金、HfW2O8(又はZrW2O8)とMgWO4との混合焼結による材料、石英、コージライト系セラミックス、ガラスセラミックス等)にすることで、環境の温度変化や熱伝導による長手方向の寸法変化は無視できる。しかしながら、基準バー部材RBは、複数のアライメント系ALGnの配列方向(Y方向)に沿って棒状に延設される。その為、基準バー部材RBの長手方向(Y方向)の寸法と断面形状の寸法との関係によっては、自身の自重によって、アライメント系ALGnによるアライメントマークMKnの位置検出精度に比べて、無視し得ない程度に変形する(撓みや湾曲を発生する)ことがある。自重による基準バー部材RBの撓みは、基準バー部材RBの長手方向の支持構造と物理的な諸条件とに基づいた材料力学計算によって、その変形状態や撓み量を一義的に同定することができる。
図32は、基準バー部材RBの支持構造による変形状態の違いを示し、図32Aは、基準バー部材RBの長手方向の両端付近を線接触する梁FJ1で下方から支持する構造を示し、図32Bは、基準バー部材RBの長手方向の一方の端部付近を線接触する梁FJ1で下方から支持し、他方の端部を装置フレームFJ2に締結(固着)する構造を示し、図32Cは、基準バー部材RBの長手方向の両端部を装置フレームFJ2に締結(固着)する構造を示す。図32A~図32Cの各々に示すように、基準バー部材RBの母材や寸法が同じでも、それぞれの支持構造によって、撓み状態SV1、SV2、SV3のように変化する。
その撓み状態SV1、SV2、SV3による変形量は、材料力学計算によって容易に算出でき、基準バー部材RBの参照面RBaに形成された基準マークRMnの相対的な位置関係の誤差が事前に精密に求められる。その相対的な位置関係の誤差は、先の図12で説明したステップ302のアライメント系キャリブレーション時に、複数のアライメント系ALGnの各々による検出領域ADnの中心点CCn(撮像領域DIS’の中心点)の相対的な位置関係を決定する際の補正値として導入される。これにより、複数のアライメント系ALGnの各々は、基準バー部材RBが撓んでいたとしても、高精度にキャリブレーションされる。なお、基準バー部材RBの支持構造は、図32に示した構成以外に、基準バー部材RBの長手方向の中央付近のみを装置フレームFJ2の一部にネジ止めにより締結し、両端部は長手方向に拘束しないように自重を支持する構造としても良い。その場合でも、材料力学計算によって基準バー部材RBの撓み状態が特定できる。
〔変形例8〕
以上の各実施の形態や各変形例では、基準バー部材RBのXZ面と平行な断面形状を矩形(長方形)としたが、その断面形状は、三角形や五角形等の多角形、円形(周囲の一部を平面に切断)、或いはL字アングル状にすることができる。また、基準バー部材RBの軽量化の為に、必要な剛性が得られる範囲で、中空構造や肉抜き構造にしても良い。さらに、先の図8で説明したように、基準バー部材RBをY方向の両端側で支持部材103A、103B(103Bは不図示)によって保持する場合、基準バー部材RBをL字状のアングル部材に取り付けても良い。
図33は、先の図8で説明した支持部材103A、103Bによる基準バー部材RBの支持構造の変形例を、基準バー部材RBの中央付近から+Y方向側の支持部材103Bまでの範囲で示す部分斜視図であり、直交座標系XYZは図8と同じに設定される。また、基準バー部材RB自体の構成は、先の図10又は図26と同じであり、ここでは7つのアライメント系ALG1~ALG7の各々に対応して7つの基準マークRM1~RM7が参照面RBa上に形成されている。支持部材103A、103Bの間には、低熱膨張係数の金属材料によって構成され、断面形状がL字状のアングル部材108がY軸と平行になるように橋渡しされた状態で支持部材103A、103Bに固定されている。断面形状が矩形の基準バー部材RBは、中央付近に設けられた固定部109によってアングル部材108上に係止される。基準バー部材RBのY方向の両端側は、Y方向に関する拘束力が発生しないように係止されている。
このように、アングル部材108を介して基準バー部材RBを装置フレーム(支持部材103A、103B)に取り付けることにより、基準バー部材RBの母材として、熱膨張係数は極めて小さいが、自重による撓み量が大きくなったり、剛性が低くてせん断し易かったりする材料を利用することができる。図33のような支持構造にすれば、そのような材料であっても、XZ面内での断面積が小さくても、Y方向の寸法を数十cm以上(例えば30cm以上)にした基準バー部材RBにすることができる。なお、アングル部材108は、XZ面と平行な面での断面形状をL字状以外にしても良く、単なる矩形(長方形、台形、平行四辺形等)、三角形、半円状のいずれでも良い。また、アングル部材108の長手方向の複数ヶ所の各々に精密な温度センサー(例えば、計測分解能が0.2℃以下)を設けて、基準バー部材RBの温度分布の変化をモニターしても良い。
〔その他の変形例〕
以上の各実施の形態や各変形例では、基板PのY方向の短尺長LPy(図7、図20参照)の範囲に亘って、4つのアライメント系ALG1~ALG4、或いは7つのアライメント系ALG1~ALG7を設けたが、基板P自体の伸縮や面内での歪み変形が極めて小さい場合、或いは、短尺長LPyが小さく、マスクレスによる露光やインクジェットによる印刷の為の描画ユニットUnの数も1~2程度で済むような場合、基板P上のアライメントマークMKnは、基板PのY方向の両端側の各々にだけ形成されることもある。そのような場合は、アライメント系ALGnもY方向に離れた2ヶ所に配置されるので、基準バー部材RB上の基準マーク(基準指標マーク)RMnも2つのアライメント系ALGnの検出領域ADn(ARn)の各々に対応したY方向の2ヶ所の位置に形成しておけば良い。
基準バー部材RBの参照面RBa上で、基準マーク(基準指標マーク)RMnを含むように設定される矩形状の検出領域ARnは、先の図26で説明した自発光方式の場合を除き、アライメント系ALGnの対物レンズ系OBLからの照明光ILbの一部によって照明され、検出領域ARn内からの反射光が対物レンズ系OBLを介して撮像素子DISで撮像される構成となっている。その為、検出領域ARn内の基準マークRMn自体の反射率と、その周囲の背景となる部分(参照面RBa自体)の反射率とに大きな差を与え、撮像時の画像のコントラストを高めるのが望ましい。基準バー部材RBの母材によって、参照面RBa自体の反射率が高い場合(例えば、40%以上の場合)は、基準マークRMn自体の反射率が十分に低い値(例えば、5%以下)になるように形成され、逆に、参照面RBa自体の反射率が低い場合(例えば、20%以下の場合)は、基準マークRMn自体の反射率が十分に高い値(例えば、60%以下)になるように形成される。
また、アライメント系ALGnの各々の対物レンズ系OBLから投射される照明光ILbをランダム偏光にし、キューブ型又はプレート型のビームスプリッタBS1を無偏光タイプにすることで、基板Pに照射される照明光ILbもランダム偏光にすることができる。さらに、キューブ型又はプレート型のビームスプリッタBS1を偏光タイプにし、偏光分割により基板Pに向かう直線偏光(P偏光)の照明光ILbと基準バー部材RBに向かう直線偏光(S偏光)の照明光ILbとに分離する構成とし、照明系ILUから対物レンズ系OBLに入射する照明光ILbのP偏光成分とS偏光成分の強度比、又は円偏光の楕円率を可変できるように、回転可能な波長板等を設けて、照明光の強度を調整しても良い。
各実施の形態や各変形例で説明したアライメント系ALGnは、撮像素子DISを用いて、基板PのアライメントマークMKnや基準バー部材RBの基準マークRMnの像を画像検出方式であったが、他の検出方式であっても良い。例えば、特許第3077149号公報に開示されているように、基板P上のアライメントマークMKnを回折格子マークにし、その回折格子マーク上で交差する2つの平行ビームを照射する。そして、その2つの平行ビームの干渉で作られる干渉縞によって回折格子マークから発生する回折光をホモダイン計測又はヘテロダイン計測して、回折格子マークのピッチ方向の位置ずれを計測するアライメント系を利用することもできる。
以上のように、複数(2以上)のアライメント系ALGnを用いて検出される基板P上のアライメントマークMKnの各位置情報に基づいて、描画データやパターンデータに応じて基板P上に形成されるパターンの位置をミクロンオーダー、又はサブミクロンオーダーで微調整(補正)する必要があるパターニング装置(露光装置、描画装置、プリント装置)では、数時間以上、場合によって半日以上に亘って連続的にアライメントマークの検出動作とパターンの描画動作とが途切れることなく継続される。その為、その間に生じ得る環境の温度や湿度の変化、装置内の熱源(モータ類や光源等)からの影響等によって、アライメント系ALGn(基板P上での検出領域ADn)の装置内での設置位置が所期状態から変動(ドリフト)するおそれがある。
先の各実施の形態や各変形例で説明したアライメント系ALGnでは、検出領域ADn内を観察する対物レンズ系OBLの光路中にビームスプリッタ(合成光学部材)BS1を配置し、複数のアライメント系ALGn(検出領域ADn)が配置される方向に沿って延設された基準バー部材(基準指標部材)RB上の基準マークRMnを、ビームスプリッタBS1を介してアライメント系ALGnで適宜に観察可能とした。それにより、複数のアライメント系ALGn(検出領域ADn)の各設置位置の所期状態からの変動量や各設置位置の相対的な位置関係を、描画動作中、或いはアライメントマークMKnの検出動作中の任意のタイミングで計測できる。
基準バー部材RB上の基準マークRMnを基準にした、アライメント系ALGnの検出領域ADn(撮像素子DISの撮像領域DIS’)の各々の変動量や、相対的な位置関係を計測するシーケンスは、先の図12中のステップ302で説明したように実行され、図14に示した設置誤差情報ΔCnとして計測される。このように、複数のアライメント系ALGnの検出領域ADn(撮像素子DISの撮像領域DIS’)の各々の基準バー部材RBに対する設置誤差情報ΔCnを計測するシーケンスを第2の計測工程とする。
また、先の各実施の形態や各変形例で説明したアライメント系ALGnは、基板P上のアライメントマークMKn、或いは基板支持機構としての回転ドラムDRの外周面上の基準パターンFMa~FMhと、基準バー部材RB上の基準マークRMnとを同時に撮像素子DISによって検出できる。その為、先の図12中のステップ318で説明したように、複数の基準マークRMnの各々を基準にして、基板P上の幅方向に並んだアライメントマークMKnの各々の位置ずれ誤差を直接的に計測できる。このように、複数のアライメント系ALGnの各々によって、基準バー部材RBの基準マークRMnと基板P上のアライメントマークMKn(又は回転ドラムDR上の基準パターンFMa~FMh)との相対的な位置ずれ誤差を直接計測するシーケンスを第1の計測工程とする。
さらに、先の図12中のステップ318でも説明したが、複数のアライメント系ALGnの各々は、先の図10に示したように、撮像素子DISの撮像領域DIS’内に設定される基準点(中心点CCn)に対する基板P上のアライメントマークMKn(又は回転ドラムDR上の基準パターンFMa~FMh)の位置ずれ誤差を計測することもできる。この場合、基準点は、撮像素子DISからの映像信号Vsgを解析する画像解析部206(図11参照)内で仮想的に決められるので、画像解析部206は専ら基板P上のアライメントマークMKnの拡大像の解析だけを行えば良い。その為、位置ずれ誤差を求める為の演算処理の負荷が減り、先の第1の計測工程と比べると、アライメントマークMKnの1つの位置ずれ計測が短時間で完了すると言った利点がある。
このような計測のシーケンスを第3の計測工程とした場合、第3の計測工程で計測されるアライメントマークMKnの各々の位置ずれ誤差には、アライメント系ALGnの検出領域ADn(即ち、撮像領域DIS’)の基準バー部材RBに対する設置誤差ΔCnが含まれていない。従って、基準バー部材RBの基準マークRMnを基準にして、基板P上の被露光領域DPAの主走査方向や副走査方向(Y方向)の位置ずれ量や基板Pの面内での変形量(伸縮、歪み、傾き等)を求めるときは、第3の計測工程で計測されたアライメントマークMKnの位置ずれ誤差を、先の第2の計測工程で求められた設置誤差情報ΔCnで補正し、その補正の結果で得られる位置ずれ誤差の情報に基づいて、パターンの描画動作(図12中のステップ320)が行われる。