JP7435200B2 - 多層構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、エチレン-ビニルアルコール系共重合体層と、接着性樹脂層と、環状オレフィン系樹脂層とを備えた多層構造体に関し、とりわけレトルト直後から優れたガスバリア性を発揮する多層構造体に関するものである。
従来、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(以下「EVOH」と略すことがある)は、酸素に対する優れたガスバリア性と透明性を有することから、食品の包装材として多用されており、その多くは、接着性樹脂層を介して他の樹脂層と積層され、耐水性や強度といった機能が付加された多層構造体として用いられている。
このような多層構造体を用いて包装された食品に対し、常温で長期保存を可能とするために、レトルト処理(高温加圧殺菌処理)や熱水処理を施すことが多く行われているが、これらの処理を施す際に、熱水や水蒸気がEVOH層に浸入してEVOH層の白化やガスバリア性の低下を招くおそれがあることから、これを防止するために、例えば、EVOH層に積層される外層等の水蒸気透過量を特定の値に調整することが提案されている(特許文献1を参照)。
また、同様に、EVOH層の白化の抑制とガスバリア性低下の抑制を目的として、EVOH層の少なくとも一面に、水蒸気透過度の低い環状オレフィン系樹脂層を設けて、レトルト処理時に水がEVOH層まで浸入しないようにすることが提案されている(特許文献2を参照)。
特開2018-62141号公報 特開2016-7754号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術では、外層を含む特定の層の水蒸気透過量を調整することにより、レトルト処理時の水の浸入を防ぐ一方、レトルト処理後にはEVOH層に浸入した水を外部に逃がすことを特徴としており、多層構造体全体でみると、水蒸気透過度が比較的高く、とりわけレトルト処理時等にEVOH層に水が浸入することを完全には防止できないため、さらなる改善が求められている。
一方、上記特許文献2の技術では、EVOH層の外側に配置される環状オレフィン系樹脂層の水蒸気透過度がごく低いため、EVOH層に対する水の浸入を効果的に阻止することができる。しかし、レトルト処理時等にEVOH層にわずかでも水が浸入すると、その状態から水が抜けにくく、EVOH層のガスバリア性が低下した状態から回復するのに時間を要するという問題があることから、さらなる改善が求められている。
そこで、本発明は、レトルト処理等の処理直後からEVOH層が水の浸入によって影響を受けにくく、多層構造体全体として優れたガスバリア性を示す、優れた多層構造体の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ガスバリア層であるEVOH層と、低水蒸気透過度を示す環状オレフィン系樹脂層とを備えた多層構造体において、上記EVOH層に乾燥剤を含有させると、上記の課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、EVOH層(A)と、接着性樹脂層(B)と、環状オレフィン系樹脂層(C)とを備え、上記環状オレフィン系樹脂層(C)が、上記EVOH層(A)の少なくとも一方の面に、上記接着性樹脂層(B)を介して積層された多層構造体であって、上記EVOH層(A)が乾燥剤(D)を含む多層構造体であることを、その要旨とする。
本発明の多層構造体によれば、ガスバリア層であるEVOH層(A)の少なくとも一方の面に、水蒸気透過度の低い環状オレフィン系樹脂層(C)が、接着性樹脂(B)を介して積層されており、酸素および水蒸気に対するガスバリア性に優れている。しかも、レトルト処理(熱水処理を含む)時に水分がEVOH層(A)に浸入したとしても、上記EVOH層(A)に含まれる乾燥剤(D)が、上記水分を吸収するため、EVOH層(A)本来のガスバリア性が損なわれることがない。そして、レトルト処理後も、上記水分は、乾燥剤(D)に吸収された状態で留まるため、EVOH層(A)のガスバリア性が低下することがなく、レトルト処理直後から直ちに優れたガスバリア性を示し、これが長く維持される。
なお、上記のように、EVOH層(A)に乾燥剤を含有させておき、多層構造体内に浸入した水分を乾燥剤に吸収させることは、当業者が容易に想起しえないことである。すなわち、レトルト処理時に浸入する水分を、EVOH層(A)に含有される乾燥剤(D)に吸収させた場合、環境の変化によって、その水分が乾燥剤(D)から放出されると、上記EVOH層(A)に接着性樹脂層(B)を介して積層される、水蒸気透過度の低い環状オレフィン系樹脂層(C)が、外部への水分の排出を遮断するため、上記接着性樹脂層(B)と環状オレフィン系樹脂層(C)の界面に水分が留まって水泡となり、多層構造体の表面からみると、粒状の膨れとして表れて外観が悪くなる、という懸念がある。このため、当業者は、接着性樹脂層(B)を介して環状オレフィン系樹脂層(C)を積層したEVOH層(A)に乾燥剤(D)を含有させようとは思わないのが技術常識である。
これに対し、本発明者らは、このような技術常識を打破し、EVOH層(A)と、水蒸気透過度の低い環状オレフィン系樹脂層(C)とを、接着性樹脂層(B)を介して積層してなる多層構造体において、上記EVOH層(A)に乾燥剤(D)を含有させたところ、すでに述べたとおり、レトルト処理時にEVOH層(A)に水分が浸入しても、上記乾燥剤(D)がこれを吸収して、優れたガスバリア性が低下しないのみならず、レトルト処理後、環境変化を受けても、懸念されたような水泡の膨れが生じて外観が悪くなるような不具合を生じることがないことを見出したのである。
これは、上記構成において、環境変化等によって、上記乾燥剤(D)から水分が放出されたとしても、その水分は、環状オレフィン系樹脂層(C)内に分散して広がり、局在して膨れ等を生じることがないためと思われる。
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の多層構造体は、EVOH層(A)と、接着性樹脂層(B)と、上記接着性樹脂層(B)を介して上記EVOH層(A)に積層される環状オレフィン系樹脂層(C)とを備え、上記EVOH層(A)に乾燥剤(D)を含むものである。以下、各層について、順に説明する。
[EVOH層(A)]
本発明の多層構造体を構成するEVOH層(A)は、EVOHのみ、もしくはEVOHを主成分とする樹脂からなる樹脂組成物(以下「EVOH系樹脂組成物」ということがある)によって形成される層であり、後述する乾燥剤(D)がこの層に含有されている。上記EVOHは、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体であるエチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。上記ビニルエステル系モノマーとしては、経済的な面から、一般的には酢酸ビニルが用いられる。
上記エチレンとビニルエステル系モノマーとの重合法としては、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いて行うことができ、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン-ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行うことができる。
このようにして製造されるEVOHは、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、通常、ケン化されずに残存する若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場入手性や製造時の不純物処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。他のビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等があげられ、通常炭素数3~20、好ましくは炭素数4~10、特に好ましくは炭素数4~7の脂肪族ビニルエステルを用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記EVOHは、通常はナフサなど石油由来の原料が用いられているが、シェールガス等の天然ガス由来の原料や、さとうきび、テンサイ、トウモロコシ、ジャガイモ等に含まれる糖、デンプン等の成分、または、稲、麦、キビといった植物等に含まれるセルロース等の成分から精製した植物由来の原料を用いてもよい。
上記EVOHにおけるエチレン構造単位の含有量は、ビニルエステル系モノマーとエチレンとを共重合させる際のエチレンの圧力によって制御することができ、20~60モル%であることが好ましい。より好ましくは25~50モル%、特に好ましくは25~35モル%である。かかる含有量が低すぎる場合は、高湿下のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に高すぎる場合は、ガスバリア性が低下する傾向がある。
なお、上記エチレン構造単位の含有量は、例えば、ISO14663に基づいて測定することができる。
また、EVOHにおけるビニルエステル成分のケン化度は、エチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化する際のケン化触媒(通常、水酸化ナトリウム等のアルカリ性触媒が用いられる)の量、温度、時間等によって制御することができ、通常90~100モル%、好ましくは95~100モル%、特に好ましくは99~100モル%である。上記ケン化度が低いとガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向があり、好ましくない。
上記EVOHのケン化度は、JIS K 6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液として用いる)に基づいて測定することができる。
また、上記EVOHのメルトフローレート(MFR、JIS K 7210にもとづく)(210℃、荷重2160g)は、通常0.5~100g/10分であり、好ましくは1~50g/10分、特に好ましくは3~35g/10分である。上記MFRが大きすぎると成形性が不安定となる傾向があり、小さすぎると粘度が高くなりすぎて溶融押出しが困難となる傾向がみられる。
上記MFRは、EVOHの重合度の指標となるものであり、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合する際の重合開始剤の量や、溶媒の量によって調整することができる。
また、EVOHには、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、EVOHの10モル%以下)で、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。
上記コモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類、3-ブテン-1-オール、3-ブテン-1,2-ジオール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1,2-ジオール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物等の誘導体;2-メチレンプロパン-1,3-ジオール、3-メチレンペンタン-1,5-ジオール等のヒドロキシアルキルビニリデン類;1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチリルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシアルキルビニリデンジアセテート類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはアルキル基の炭素数が1~18であるモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、アルキル基の炭素数1~18であるN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類;メタアクリルアミド、アルキル基の炭素数が1~18であるN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類;アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;アルキル基の炭素数が1~18であるアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類;トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類;酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類;アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類;トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
特に、本発明で用いるEVOHとして、側鎖に1級水酸基を有するEVOHを用いると、ガスバリア性を保持しつつ二次成形性が良好になる点で好ましく、なかでも、ヒドロキシ基含有α-オレフィン類を共重合したEVOHが好ましく、特には、1,2-ジオール構造を側鎖に有するEVOHが好ましい。
そして、側鎖に1級水酸基を有するEVOHを用いる場合、当該1級水酸基を有するモノマー由来の構造単位の含有量は、EVOHの通常0.1~20モル%、さらには0.5~15モル%、特には1~10モル%のものが好ましい。
また、本発明で用いるEVOHは、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたものであってもよい。
さらに、本発明で使用されるEVOHは、2種以上のEVOH、例えば、エチレン構造単位の含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、重合度が異なるもの、共重合成分が異なるもの等の混合物であってもよい。
なお、本発明の多層構造体に用いられるEVOH層(A)を、EVOHをベース樹脂とし、他の熱可塑性樹脂を含有するEVOH系樹脂組成物で形成する場合、樹脂成分全体に対する上記EVOHの含有量は、通常50~99重量%であり、好ましくは60~95重量%であり、特に好ましくは70~90重量%である。上記EVOHの量が少なすぎる場合には、ガスバリア性が不充分になるおそれがある。
[他の熱可塑性樹脂]
上記EVOH系樹脂組成物において、上記EVOHとともに用いることのできる他の熱可塑性樹脂としては、例えば具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独または共重合体、ポリ環状オレフィン、あるいはこれらのオレフィンの単独または共重合体を不飽和カルボン酸またはそのエステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等があげられる。
上記他の熱可塑性樹脂も、通常はナフサなど石油由来の原料が用いられているが、前記EVOHと同様、シェールガス等の天然ガス由来の原料や、さとうきび、テンサイ、トウモロコシ、ジャガイモ等などに含まれる糖、デンプン等の成分、または、稲、麦、キビといった植物等に含まれるセルロース等の成分から精製した植物由来の原料を用いてもよい。
特に、本発明の多層構造体を食品の包装材として用いた場合、上記該包装材のレトルト処理後に、包装材端部にてEVOH層(A)のEVOHが溶出することを防止する点で、ポリアミド系樹脂を配合したEVOH系樹脂組成物を用いることが好ましい。すなわち、上記ポリアミド系樹脂は、アミド結合がEVOHのOH基およびエステル基の少なくとも一方との相互作用によりネットワーク構造を形成することが可能であり、これにより、レトルト処理時のEVOHの溶出を防止することができる。
上記ポリアミド系樹脂としては、公知のものを用いることができる。
例えば具体的には、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーがあげられる。また共重合ポリアミド系樹脂としては、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドや、ポリ-p-フェニレン・3-4’ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド、非晶性ポリアミド、これらのポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペート等があげられる。あるいはこれらの末端変性ポリアミド系樹脂であってもよく、好ましくは末端変性ポリアミド系樹脂である。
末端変性ポリアミド系樹脂とは、例えば具体的には、炭素数1~22の炭化水素基で変性された末端変性ポリアミド系樹脂であり、市販のものを用いてもよい。より詳細には、例えば末端変性ポリアミド系樹脂の末端COOH基の数[X]と、末端CONR12基(ただし、R1は炭素数1~22の炭化水素基、R2は水素原子または炭素数1~22の炭化水素基)の数[Y]が、下記の式(1)を満足する末端変性ポリアミド系樹脂が好ましく用いられる。
[Y/(X+Y)]×100≧5 …(1)
上記末端変性ポリアミド系樹脂は、通常の未変性ポリアミド系樹脂のカルボキシ基を末端調整剤によりN-置換アミド変性したものであり、変性前のポリアミド系樹脂が含有していたカルボキシ基の総数に対して5%以上変性されたポリアミド系樹脂である。かかる変性量が少なすぎると、ポリアミド系樹脂中のカルボキシ基が多く存在することとなり、かかるカルボキシ基が溶融成形時にEVOHと反応してゲル等が発生し、得られる多層構造体成の外観が悪くなりやすい傾向がある。かかる末端変性ポリアミド系樹脂は、例えば特公平8-19302に記載の方法によって製造することができる。
上記末端調整剤としては、ポリアミド系樹脂中のカルボキシ基量を減少させるために、カルボキシ基と反応することが可能なアミンが用いられる。かかるアミンとは、HNR12で表わされるモノ置換アミン(R2が水素原子)またはジ置換アミンである。HNR12の、R1およびR2の少なくとも一方が有機基の場合、カルボキシ基を有さない炭化水素基であればよく、本発明の趣旨を阻害しない範囲において水酸基、アミノ基、カルボニル基等、他の官能基を有していても構わないが、好ましくは脂肪族炭化水素基である。具体的には、R1およびR2は炭素数1~22の炭化水素基であり、好ましくは炭素数5~20の炭化水素基である。R1およびR2は同じ基であっても異なっていてもよい。
上記末端変性ポリアミド系樹脂の変性されていない末端のカルボキシ基の含有量は、少ないことが好ましい。上記含有量は、このポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解し、0.1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液にて滴定して算出した値(ポリマー1gに対するモル当量)として求めることができ、通常0~50μeq/ポリマー1gであり、好ましくは0~30μeq/ポリマー1gであり、特に好ましくは0~25μeq/ポリマー1gである。かかる値が大きすぎると、溶融成形時にゲル等を発生し外観不良となりやすく、レトルト性が低下する傾向にある。かかる値が小さすぎると、物性の面からは不都合はないが、生産性が低下する傾向があるので、ある程度は残存していても構わない。この場合、通常5~50μeq/ポリマー1g、さらには10~30μeq/ポリマー1g、特には15~25μeq/ポリマー1gであることが望ましい。
また、未変性ポリアミド系樹脂の末端NH2基についても末端カルボキシ基の場合と同様に、炭素数1~22の炭化水素基で変性されていることが好ましい。したがって、このときに用いる末端調整剤としては、ポリアミド系樹脂中のアミノ基量を減少させるため、アミノ基と反応することが可能なカルボン酸、具体的には、RCOOHで表わされるモノカルボン酸(式中、Rは炭素数1~22の炭化水素基)が用いられる。
以上のような末端変性ポリアミド系樹脂の融点は、通常200~250℃、好ましくは200~230℃である。
上記他の熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂を用いる場合、EVOH/ポリアミド系樹脂の含有比は、重量比で、通常99/1~70/30であり、好ましくは97/3~75/25、特に好ましくは95/5~85/15である。ポリアミド樹脂の比率が大きすぎる場合には、ロングラン成形性およびガスバリア性が不足する傾向がある。ポリアミド樹脂の比率が小さすぎる場合には、熱水処理後のEVOHの溶出抑制効果が不充分になる傾向にある。
[乾燥剤(D)]
本発明に用いられる乾燥剤(D)は、EVOH層(A)におけるEVOHが吸水してガスバリア性が低下することを防止する作用を果たすものである。
上記乾燥剤(D)としては、一般に公知の吸湿性化合物、水溶性乾燥剤を用いることができる。好ましくは水溶性乾燥剤、より好ましくは水和物形成性の金属塩である。水溶性乾燥剤、特に水和物形成性の金属塩を用いた場合に、水分子を結晶水として取り込む性質を有することから、熱水処理により樹脂組成物層に浸入した水分を、結晶水として吸収して、EVOHにおける分子間の水素結合の崩れを防止し、これにより、EVOH層(A)のガスバリア性能の低下を抑制することができると考えられる。
上記吸湿性化合物としては、例えばシリカゲル、ベントナイト、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、高吸水性樹脂等があげられる。
また、上記水溶性乾燥剤としては、例えば、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、砂糖、リン酸三リチウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムや、各種水和物形成性の金属塩等があげられる。
上記水和物形成性の金属塩とは、結晶水として水分を吸収しうる塩で、その製造法は限定されないが、例えば、水和物として合成し、それを乾燥脱水したものを用いることができる。乾燥脱水により、完全脱水物(無水物)となっていることが吸湿性の点で好ましいが、部分脱水物(飽和量未満の水和物)であってもよい。
上記水和物形成性の金属塩を構成する金属としては、1価、2価、または3価の金属であり、1価の金属としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属があげられる。また、2価の金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、銅、亜鉛、鉄等の2価イオンを形成しうる遷移金属があげられる。さらに、3価の金属としては、アルミニウム、鉄等があげられる。これらのなかで好ましい金属は、ナトリウム、マグネシウムであり、特に好ましい金属は、マグネシウムである。
また、上記水和物形成性の金属塩を構成する酸としては、例えば硫酸、カルボン酸、リン酸、ホウ酸、硝酸、炭酸、亜硫酸等があげられる。これらのなかで好ましい酸は、硫酸、カルボン酸、リン酸であり、特に好ましい酸は、硫酸、カルボン酸である。
上記水和物形成性の金属塩の具体例としては、例えば塩化コバルト、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩化物;リン酸二水素一ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム等のリン酸塩;コハク酸二ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、ジクエン酸三マグネシウム等のカルボン酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩があげられる。これらのうち、レトルト処理後のガスバリア性回復の点から、硫酸塩や、コハク酸塩、クエン酸塩等のカルボン酸塩が好ましく、特に硫酸マグネシウム、およびジクエン酸三マグネシウムの部分脱水物または完全脱水物が好ましく用いられる。
上記のような水和物形成性の金属塩は、吸湿して結晶水を有する水和物を形成する。例えば、結晶水を持つ硫酸金属塩としては、例えば硫酸ナトリウム(Na2SO4・10H2O)、硫酸カリウム(K2SO4・1H2O)などの1価金属塩;硫酸ベリリウム(BeSO4・4H2O)、硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O)、硫酸カルシウム(CaSO4・2H2O)等のアルカリ土類金属塩;硫酸銅(CuSO4・5H2O)、硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)、硫酸鉄(FeSO4・7H2O)等の遷移金属塩;硫酸アルミニウム(Al2(SO43・16H2O)等があげられる。
また、結晶水を有するカルボン酸塩水和物としては、具体的には、例えば1価カルボン酸塩として酢酸ナトリウム(CH3COONa・3H2O)、酢酸カルシウム((CH3COO)2Ca・H2O)等の酢酸塩;乳酸カルシウム((CH3CH(OH)COO)2Ca・5H2O)等の乳酸塩;グルコン酸亜鉛((CH2(OH)CH(OH)CH(OH)CH(OH)CH(OH)COO)2Zn・3H2O)、グルコン酸カルシウム((CH2(OH)CH(OH)CH(OH)CH(OH)CH(OH)COO)2Ca・H2O)等のグルコン酸塩;安息香酸マグネシウム((C65COO)2Mg・4H2O)、安息香酸カルシウム((C65COO)2Ca・3H2O)等の安息香酸塩;リンゴ酸ナトリウム(NaOOCCH(OH)CH2COONa)・3H2O)、リンゴ酸カルシウム(OOCCH(OH)CH2COO)Ca・H2O)等のリンゴ酸塩;2価カルボン酸塩としてシュウ酸カリウム((COONa)2・H2O)、シュウ酸アンモニウム((COONH42・H2O)等のシュウ酸塩;コハク酸二ナトリウム((CH2COONa)2・6H2O)、コハク酸二カリウム((CH2COOK)2・3H2O)等のコハク酸塩;L-グルタミン酸水素カリウム(HOOCCH(NH2)CH2CH2COOK・H2O)、L-グルタミン酸水素ナトリウム(HOOCCH(NH2)CH2CH2COONa・H2O)、L-グルタミン酸マグネシウム((OOCCH(NH2)CH2CH2COO)Mg・4H2O)等のグルタミン酸塩;L-アスパラギン酸ナトリウム(HOOCCH2CH(COOH)NH2・H2O)等のアスパラギン酸塩;L-酒石酸水素ナトリウム(HOOCCH(OH)CH(OH)COONa・H2O),L-酒石酸二ナトリウム(NaOCOCH(OH)CH(OH)COONa・2H2O)等の酒石酸塩;3価カルボン酸塩としてクエン酸三カリウム(KOCOCH2C(OH)(COOK)CH2COOK・H2O)、クエン酸三ナトリウム((C35O(COO)3)Na3・2H2O)、ジクエン酸三マグネシウム((C35O(COO)3)2Mg3・14H2O)、ジクエン酸三カルシウム((C35O(COO)32Ca3・4H2O)等のクエン酸塩;4価カルボン酸塩としてエチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム(Ca(OOCCH2)2NCH2CH2N(CH2COONa)2・2H2O)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム((HOOCCH2)2NCH2CH2N(CH2COONa)2・2H2O)等のエチレンジアミン四酢酸塩等があげられる。
なお、上記カッコ内で示した化学式は、各金属塩の飽和水和物の化学式である。本発明で乾燥剤(D)として用いる水和物形成性の金属塩は、上記のような水和物を形成できる部分脱水物または完全脱水物である。金属塩の飽和水和物が有する結晶水量を重量基準にて100%とした場合、部分脱水物は、飽和水和物の結晶水の一部が脱水されたもので、通常、結晶水量が90%未満の結晶水を有する該金属塩の水和物が該当する。常温で、飽和水和物の方が安定に存在できるような部分脱水物を用いることが好ましいことから、結晶水量が70%未満にまで脱水された部分水和物を用いることが好ましく、より好ましくは完全脱水物である。
なお、上記乾燥剤(D)の融点は、吸水効果の点から300℃以上であることが好ましい。かかる融点が低すぎると、溶融成形後において、乾燥剤としての機能が低下するおそれがある。そして、上記乾燥剤(D)は、1種類で、または2種以上を併用して用いることができる。
上記乾燥剤(D)の含有量は、EVOH層(A)を形成するためのEVOH系樹脂組成物において、EVOH100重量部に対し、通常、1~50重量部であることが好ましく、なかでも3~25重量部であることがより好ましく、5~15重量部であることがさらに好ましく、7~12重量部であることが特に好ましい。上記乾燥剤(D)の含有量がEVOHに対して多すぎると、得られるEVOH層(A)の透明性が損なわれたり、成形時に樹脂組成物が凝集して成形機のスクリーンメッシュが閉塞しやすくなったりする傾向がある。また、上記含有量が少なすぎると、EVOH層(A)に浸入した水分を吸収する効果が低下し、レトルト処理後のガスバリア性が低下する傾向がある。
[板状無機フィラー]
上記EVOH系樹脂組成物は、さらに板状無機フィラーを含有してもよい。上記板状無機フィラーとしては、例えば、含水ケイ酸アルミニウムを主成分とし、粒子が板状となっているカオリン、層状ケイ酸鉱物である雲母やスメクタイト、水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなるタルクなどがあげられる。これらのうち、カオリンが好ましく用いられる。カオリンの種類としては、特に限定せず、焼成されていても、いなくてもよいが、好ましくは焼成カオリンである。
これらの板状無機フィラーの添加により、樹脂組成物のガスバリア性が一層向上する。板状無機フィラーは、多層構造をしていることから、板状フィラーの板状面が樹脂組成物層の面方向に配向されやすく、面方向に配向した板状無機フィラーが樹脂組成物層の酸素遮断に寄与するのではないかと思われる。
このような板状無機フィラーの添加量は、特に限定しないが、EVOH100重量部に対して、通常1~20重量部であり、好ましくは3~20重量部であり、より好ましくは5~15重量部である。
[酸素吸収剤]
本発明に用いられるEVOH系樹脂組成物には、レトルト処理後のガスバリア性をさらに改善する目的で、酸素吸収剤を含有してもよい。上記酸素吸収剤とは、包装される内容物よりも素早く酸素を捕捉する化合物または化合物系である。具体的には、無機系の酸素吸収剤、有機系の酸素吸収剤、無機触媒と有機化合物を組み合わせて用いる複合型酸素吸収剤等があげられる。
上記無機系酸素吸収剤は、金属および金属化合物があげられ、これらと酸素が反応することにより酸素を吸収するものである。上記金属としては、水素よりもイオン化傾向の大きい金属(Fe、Zn、Mg、Al、K、Ca、Ni、Sn等)が好ましく、代表的には鉄である。これらの金属は、粉末状で用いられることが好ましい。鉄粉としては、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉等、従来公知のものを、特に限定されることなくいずれも使用可能である。また、鉄を使用する場合、鉄は、一旦酸化された鉄を還元処理したものであってもよい。そして、上記金属化合物としては酸素欠損型金属化合物が好ましい。ここで、酸素欠損型金属化合物としては、酸化セリウム(CeO2)や、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)等があげられ、これらの酸化物が還元処理により結晶格子中から酸素が引き抜かれて酸素欠損状態となり、雰囲気中の酸素と反応することにより酸素吸収能を発揮するものである。以上のような金属および金属化合物は、反応促進剤としてハロゲン化金属等を含有することも好ましい。
上記有機系酸素吸収剤としては、水酸基含有化合物、キノン系化合物、二重結合含有化合物、被酸化性樹脂があげられる。これらに含まれる水酸基や二重結合に酸素が反応することにより、酸素を吸収することができる。有機系酸素吸収剤としては、ポリオクテニレン等のシクロアルケン類の開環重合体や、ブタジエン等の共役ジエン重合体およびその環化物等が好ましい。
上記複合型酸素吸収剤とは、遷移金属触媒と有機化合物の組み合わせをいい、遷移金属触媒によって酸素を励起し、有機化合物と酸素が反応することにより酸素を吸収するものである。包装の内容物である食品等よりも早く、複合型酸素吸収剤中の有機化合物が酸素と反応することにより、酸素を捕捉、吸収する化合物系である。遷移金属系触媒を構成する遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ルテニウム、パラジウムから選ばれる少なくとも一種であり、なかでも樹脂との相溶性、触媒としての機能性、安全性の点でコバルトが好ましい。有機化合物としては、有機系酸素吸収剤であるポリオクテニレン等のシクロアルケン類の開環重合体や、ブタジエン等の共役ジエン重合体およびその環化物等が好ましく、その他の有機化合物としては、MXDナイロン等の窒素含有樹脂、ポリプロピレン等の三級水素含有樹脂、ポリアルキレンエーテルユニットを有するブロック共重合体等のポリアルキレンエーテル結合含有樹脂、アントラキノン重合体が好ましい。
このような酸素吸収剤の含有量は、特に限定しないが、EVOH100重量部に対して、通常1~30重量部であり、好ましくは3~25重量部であり、より好ましくは5~20重量部である。
また、遷移金属系触媒と有機化合物を組み合わせて用いる場合、その含有比率(重量比)は、特に限定しないが、有機化合物の重量を基準として、上記遷移金属系触媒は、金属元素換算で0.0001~5重量%、より好ましくは0.0005~1重量%、より好ましくは0.001~0.5重量%の範囲で含有される。
[さらに他の添加物]
本発明に用いられるEVOH系樹脂組成物には、上記成分のほか、必要に応じて、本発明の効果を損なわない限り(例えば、樹脂組成物全体の5重量%未満にて)、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等の可塑剤;飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500~10000程度の低分子量ポリエチレン、または低分子量ポリプロピレン)等の滑剤;熱安定剤;アンチブロッキング剤;酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;抗菌剤;不溶性無機塩(例えば、ハイドロタルサイト等);充填材(例えば無機フィラー等);結晶核剤(例えばタルク、カオリン等);界面活性剤、ワックス;分散剤(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸モノグリセリド等);共役ポリエン化合物、アルデヒド化合物(例えばクロトンアルデヒド等の不飽和アルデヒド類等)等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
本発明の、EVOH層(A)に用いられるEVOH系樹脂組成物の調製は、通常溶融混錬または機械的混合法(ペレットドライブレンド)にて、前記EVOHと、乾燥剤(D)と、EVOHに組み合わせて用いることのできる各種任意成分とを混合することにより行い、好ましくは溶融混練法にて行う。
上記溶融混練に用いる機械は特に限定せず、公知の溶融混練機を用いることができる。例えば、ニーダールーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミル、押出機等があげられる。なかでも、押出機の場合、単軸または二軸の押出機等があげられ、必要に応じて、ベント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリーン装置等を設けることも好ましい。上記溶融混練における温度は、通常150~300℃、好ましくは170~250℃である。
[接着性樹脂層(B)]
つぎに、本発明の多層構造体を構成する接着性樹脂層(B)について説明する。この接着性樹脂層(B)は、上記EVOH層(A)と、後述する環状オレフィン系樹脂(C)とを接着するための層であり、以下の接着性樹脂を用いて得ることができる。
上記接着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸またはその無水物を付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシ基を含有する変性ポリオレフィン系重合体をあげることができる。上記カルボキシ基を含有する変性ポリオレフィン系重合体としては、例えば、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリ環状オレフィン系樹脂、無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂等の無水マレイン酸変性高分子があげられる。
これらは単独で用いても2種以上の混合物として用いてもよい。
上記接着性樹脂としては、樹脂の接着性だけでなく、溶融加熱時のゲル発生の抑制効果と、透明性の低下抑制効果にも寄与する点で、とりわけ、無水マレイン酸変性ポリエチレンや、無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体等の無水マレイン酸変性高分子が好適である。
上記無水マレイン酸変性高分子の酸価は、通常50mgKOH/g以下であり、好ましくは30mgKOH/g以下であり、特に好ましくは20mgKOH/g以下である。酸価が高すぎると、EVOH中の水酸基との反応点が増え、溶融混練過程において高重合度化物が生成して、押出加工時の安定性が低下し、良好な成形物を得られにくい傾向がある。なお、酸価の下限は、通常1mgKOH/gであり、好ましくは2mgKOH/gである。また、上記酸価は、JIS K 0070に基づいて測定される。
上記無水マレイン酸変性高分子として、無水マレイン酸変性ポリエチレンを用いる場合のMFR(190℃、荷重2160g)は、通常0.01~150g/10分であり、好ましくは0.1~50g/10分であり、より好ましくは1~25g/10分であり、さらに好ましくは3~10g/10分である。
また、無水マレイン酸変性高分子として、無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体を用いる場合のMFR(230℃、荷重2160g)は、通常0.1~150g/10分であり、好ましくは0.5~100g/10分であり、より好ましくは1~50g/10分であり、さらに好ましくは5~35g/10分である。上記MFRが大きすぎても小さすぎても、多層構造体を成形する際に、成形不良となる傾向があり、好ましくない。
なお、上記接着性樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の添加剤を適宜配合することができる。このような添加剤としては、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、中和剤、防錆剤、顔料等をあげることができる。
そして、上記接着性樹脂と、任意の添加剤とを用いて、本発明を構成する接着性樹脂層(B)を得るための樹脂組成物を調製することができる。調製は、前記EVOH系樹脂組成物と同様にして行われる。
[環状オレフィン系樹脂層(C)]
つぎに、本発明の多層構造体において、上記接着性樹脂層(B)を介して前記EVOH層(A)に積層される環状オレフィン系樹脂層(C)について説明する。この環状オレフィン系樹脂層(C)は、水蒸気透過度が低い特性を備えており、内側のEVOH層(A)に水分が浸入することを抑制する作用を果たすものである。
上記環状オレフィン系樹脂層(C)は、環状オレフィン構造を主鎖および側鎖の少なくとも一方に有する重合体である環状オレフィン系樹脂を用いて得ることができる。
上記環状オレフィン構造を主鎖に有する重合体としては、例えば下記の化学式(1)に示す重合体があげられる。また、上記環状オレフィン構造を側鎖に有する重合体としては、例えば下記の化学式(2)に示す重合体があげられる。
Figure 0007435200000001
Figure 0007435200000002
上記化学式(1)に示すような重合体は、環状オレフィン構造内に不飽和結合を有するモノマー(例えば、ノルボルネン等)を重合することによって得られる。また、上記化学式(2)に示すような重合体は、環状オレフィン構造外に不飽和結合を有するモノマー(例えば、ビニルノルボルネン等)を重合することによって得られる。
なかでも、耐候性および防湿性等の観点から、環状オレフィン構造を主鎖に有する重合体が好ましい。そして、上記環状オレフィン構造を構成する炭素原子数は、特に制限はないが、4~30個が好ましく、5~20個がより好ましく、5~15個がさらにより好ましい。炭素原子数が多すぎる場合、小さすぎる場合ともに耐湿性や成形加工性が低下する傾向がある。
上記環状オレフィン構造内に不飽和結合を有するモノマーとして具体的には、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン(ノルボルネン)誘導体、トリシクロ[4,3,0,12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-ウンデセン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン誘導体、ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン誘導体およびペンタシクロ-4,10-ペンタデカジエン誘導体等をあげることができる。
上記ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン(ノルボルネン)誘導体としては、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、5-メチル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5,5-ジメチル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-エチル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-ヘキシル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-オクチル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-オクタデシル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-プロペニル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-メトキシカルボニル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-シアノ-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-メトキシカルボニル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン;5-メトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-エトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-メトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-エトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エニル-2-メチルプロピオネイト、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エニル-2-メチルオクタネイト、5-ヒドロキシメチルビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシ-i-プロピルビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5,6-ジカルボキシビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン;5-シアノビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸イミド;5-シクロペンチル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキセニルビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、5-フェニル-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エンがあげられる。
上記トリシクロ[4,3,0,12,5]デカ-3,7-ジエン誘導体としては、トリシクロ[4,3,0,12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4,3,0,12,5]デカ-3-エン;トリシクロ[4,3,0,12,5]ウンデカ-3,7-ジエン; トリシクロ[4,3,0,12,5]ウンデカ-3,8-ジエン;トリシクロ[4,3,0,12,5]ウンデカ-3-エンがあげられる。
また、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン誘導体としては、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、2-メチル-トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、5-メチル-トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセンがあげられ、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-ウンデセン誘導体としては、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-ウンデセン、10-メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]-3-ウンデセンがあげられる。
そして、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)誘導体があげられ、具体的には、8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-ビニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-プロペニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-ヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン;8-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-シクロヘキシル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-シクロヘキセニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エン、8-フェニル-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-ドデカ-3-エンがあげられる。
また、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン誘導体としては、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン、12-メチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン、1,6,10-トリメチル-ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン等があげられる。
オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン誘導体としては、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン、15-メチル-オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセンがあげられる。
ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン誘導体としては、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン、1,3-ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン、15,16-ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセンがあげられる。
ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体としては、ヘプタシクロ-[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-エイコセン、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体としては、ヘプタシクロ-[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]-ヘンエイコセンがあげられる。
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン誘導体としては、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン、1,3-ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン、1,6-ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセンがあげられ、ペンタシクロ-4,10-ペンタデカジエン誘導体としては、ペンタシクロ[6,5,1,13,6,02,7,09,13]ペンタデカ-4,10-ジエンがあげられる。
また、環状オレフィン構造外に不飽和結合を有するモノマーとして、具体的にはビニルノルボルナン、ビニルノルボルネン等があげられる。
これらの環状オレフィン系モノマーは、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでも、市場入手性の点からビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン(ノルボルネン)誘導体が好ましく、特に好ましくはビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン(ノルボルネン)である。
そして、これらの環状オレフィン系モノマーを2種類以上組み合わせて使用する場合、全環状オレフィン系モノマーに対する、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン(ノルボルネン)誘導体の含有量を、10重量%以上とすることが、耐候性の観点から好ましい。
また、上記環状オレフィン系樹脂には、環状オレフィンモノマーのホモポリマーや、後述する環状オレフィンモノマーと共重合可能な他のモノマーとのコポリマーも含まれる。また、環状オレフィン構造を主鎖および側鎖の少なくとも一方に有する重合体の水素添加物も含まれる。
上記環状オレフィンモノマーと共重合可能な他のモノマーは、環状オレフィン系モノマーと共重合可能なものであれば特に制限はない。
例えば、非環状オレフィンがあげられ、具体的にはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数2~20
のα-オレフィン;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ジエン等があげられる。
これらの共重合可能なモノマーは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、反応性や汎用性の点から好ましくは炭素数2~20のα-オレフィンであり、より好ましくは炭素数2~4のα-オレフィンであり、特に好ましくはエチレンである。
このようなモノマーを重合して得られる環状オレフィン系樹脂が、かかる他の共重合可能なモノマーを共重合したものである場合、環状オレフィン構造を有する構造単位の割合は、通常1~99モル%であり、好ましくは20~70モル%であり、特に好ましくは40~50モル%である。環状オレフィン構造を有する繰り返し単位の割合が少なすぎる場合、耐候性および耐熱性が不充分となるおそれがある。また、多すぎる場合、溶融成形性が低下する傾向がある。
すなわち、他の共重合可能なモノマーの含有量は通常1~99モル%であり、好ましくは10~90モル%であり、特に好ましくは30~70モル%である。
なお、上記のモノマーによっては二重結合が残存するものがあり、かかる二重結合が残存する場合、環状オレフィン系樹脂が着色することがある。したがって、上記環状オレフィン系樹脂は、水素添加して用いることが好ましい。
本発明で使用される環状オレフィン系樹脂を水素添加して用いる場合は、上記のようにして得られた重合体を、常法に従って水素添加触媒の存在下に水素により水素化する方法により得ることができる。
その水素添加率は、耐候性および防湿性の観点から、通常95%以上、98%以上がより好ましく、99%以上がさらにより好ましい。ここで水素添加率とは、水素添加前の炭素-炭素二重結合の全モル数に対する、水素添加されたもののモル数の割合で表される。
上記環状オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)は、JIS K 7121にて測定される値を示し、通常、120℃以上、好ましくは125~210℃、より好ましくは130~180℃、特に好ましくは130~150℃である。
すなわち、ガラス転移温度が低すぎる場合、レトルト処理時に樹脂が融着する傾向がある。一方、高すぎる場合、加工温度が高くなって加工しにくくなる傾向がある。
上記環状オレフィン系樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン換算の重量平均分子量で通常5000~500000、8000~200000がより好ましく、10000~100000がさらにより好ましい。重量平均分子量が大きすぎる場合、加工温度が高くなって加工しにくくなる場合があり、小さすぎる場合、多層構造体の強度が不足する傾向がある。
上記環状オレフィン系樹脂のMFR(230℃、2160g荷重)は、通常、0.5~100g/10分、より好ましくは5~50g/10分である。MFRが小さすぎる場合、成形温度がより高温となり、成形不良となる傾向がある。また、大きすぎる場合、成形時にバリ等の成形不良が発生する傾向がある。
上記環状オレフィン系樹脂の密度(kg/m3)は、ISO1183に基づく測定において、通常700~1300kg/m3、より好ましくは900~1100kg/m3、特に好ましくは950~1050kg/m3である。
これらの環状オレフィン系樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、上記環状オレフィン系樹脂としては、ガラス転移点(Tg)が120℃以上である環状オレフィン系樹脂を主成分とすることが望ましく、その含有量は、環状オレフィン系樹脂全体の、通常60~100重量%であり、好ましくは70~100重量%、より好ましくは80~100重量%、さらに好ましくは90~100重量%である。そして、ガラス転移点(Tg)が120℃以上である環状オレフィン系樹脂のみからなることが、最も好ましい。
このような環状オレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、日本ゼオン社製の「ZEONEX」、ポリプラスチック社製の「TOPAS」、三井化学社製の「アベル」等があげられる。
本発明で用いる環状オレフィン系樹脂は、例えば上記環状オレフィン系樹脂に不飽和カルボン酸またはその誘導体を公知の方法で変性した不飽和カルボン酸変性環状オレフィン系樹脂を用いてもよい。
かかる変性とは、環状オレフィン系樹脂に対して、不飽和カルボン酸またはその誘導体を混合して変性する方法、共重合して変性する方法、グラフト変性する方法等、公知の方法があげられる。
上記混合方法としては、溶融混合法や溶液混合法があげられる。共重合法としては、上記不飽和カルボン酸またはその誘導体を公知の方法にて環状オレフィン系樹脂に共重合する方法が一般的である。また、上記グラフト変性する方法としては、例えば、環状オレフィン系樹脂と不飽和カルボン酸またはその誘導体を有機溶剤に分散あるいは溶解し、加熱撹拌して反応させる方法や、溶剤を使用せずに環状オレフィン系樹脂と不飽和カルボン酸またはその誘導体を押出機で溶融混練して反応させる方法がある。後者のほうが簡便であり経済的に有利である。
上記不飽和カルボン酸とは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸およびナジック酸TM(エンドシス- ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)等の不飽和ジカルボン酸類をあげることができる。
また、上記の不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミドおよび不飽和カルボン酸のエステル化合物をあげることができる。具体的な例としては、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートをあげることができる。これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体は、単独で使用することもできるし、また複数を組み合わせて使用することもできる。
なかでも、不飽和カルボン酸またはその誘導体の炭素数は、取り扱い性の点から通常3~20、好ましくは3~15、特に好ましくは3~10である。さらに、不飽和カルボン酸またはその誘導体の融点は、取り扱い性の点から通常0~200℃であり、好ましくは30~100℃であり、特に好ましくは40~80℃である。
また、上記環状オレフィン系樹脂には、必要に応じて他の樹脂や各種の配合剤を、環状オレフィン系樹脂全量に対して10重量%以下にて含有していてもよい。
各種の配合剤としては、通常用いられる配合剤、例えば、老化防止剤、安定剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、塩酸吸収剤、帯電防止剤、無機フィラー、滑剤、ブロッキング防止剤等があげられる。また、着色剤、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリレート系、サリチレート系等)等を配合することにより、遮光性をもたせるようにしてもよい。
そして、上記環状オレフィン系樹脂と、任意の他の樹脂や配合剤とを用いて、本発明を構成する環状オレフィン系樹脂層(C)を得るための樹脂組成物を調製することができる。調製は、前記EVOH系樹脂組成物や接着性樹脂と同様にして行われる。
[多層構造体]
つぎに、本発明の多層構造体について説明する。
本発明の多層構造体は、EVOH層(A)と、接着性樹脂層(B)と、この接着性樹脂層(B)を介して上記EVOH層(A)に積層される環状オレフィン系樹脂層(C)を備えたもので、この積層構造からなる積層ユニットを含む多層構造体である。
本発明の多層構造体では、上記積層ユニットが、少なくとも1つ含まれていればよく、例えば、EVOH層(A)の片方の面に、接着性樹脂層(B)を介して環状オレフィン系樹脂層(C)が積層された構造(A/B/C)や、EVOH層(A)の両面に、それぞれ接着性樹脂層(B)を介して環状オレフィン系樹脂層(C)が積層された構造(C/B/A/B/C)があげられる。もちろん、上記積層ユニットが、繰り返し重なった形で構成されていてもよく、その場合、上記積層ユニットと積層ユニットの間に、他の樹脂層が介在していてもよい。
上記積層ユニットを得る積層方法としては、公知の方法にて行うことができる。例えば、EVOH層(A)となるフィルムやシート等に、接着性樹脂層(B)および環状オレフィン系樹脂層(C)を溶融押出ラミネートする方法や、逆に接着性樹脂層(B)や環状オレフィン系樹脂層(C)に、EVOH層(A)となる樹脂組成物を溶融押出ラミネートする方法、あるいは、(A)、(B)、(C)の三層を共押出する方法があげられる。また、接着性樹脂層(B)を設けた環状オレフィン系樹脂層(C)の上に、EVOH層(A)となる樹脂組成物の溶液を塗工し、その後溶媒を除去する方法等があげられる。これらのなかでも、コストや環境の観点から考慮して共押出しする方法が好ましい。
[他の層(E)]
本発明の多層構造体には、上記積層ユニット(ユニットが単数であっても複数繰り返すものであってもよい)の片方の面もしくは両面に、他の層(E)が少なくとも1層、積層されていてもよい。他の層(E)としては、上記積層ユニットに強度等を付加するための基材層(E1)や、この基材層(E1)と積層ユニットとの接合、あるいは積層ユニット同士の接合のための接着剤層(E2)等があげられる。
<基材層(E1)>
上記基材層(E1)に用いられる材料としては、各種の熱可塑性樹脂(以下「基材樹脂」という)が用いられる。また、本発明の多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られるリサイクル樹脂を用いてもよい。このようなリサイクル樹脂には、EVOH層(A)、接着性樹脂層(B)、環状オレフィン系樹脂層(C)、および他の層(E)の溶融混合物を含む。
上記基材層(E1)に用いられる基材樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン等の(未変性)ポリオレフィン系樹脂や、これらのポリオレフィン類を不飽和カルボン酸またはそのエステルでグラフト変性した不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等の変性オレフィン系樹脂を含む広義のポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、芳香族または脂肪族ポリケトン類等があげられる。
<接着剤層(E2)>
上記基材層(E1)と積層ユニットとの接合等のための接着剤層(E2)に用いられる接着剤としては、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を使用することができ、上記基材層(E1)を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。また、基材層(E1)と積層ユニットとの接合、あるいは積層ユニット同士の接合のための層は、接着剤層(E2)の他、前記接着性樹脂層(B)を用いてもよい。
なお、上記基材層(E1)に用いられる熱可塑性樹脂や、接着剤層(E2)に用いられる接着剤には、本発明の趣旨を阻害しない範囲(例えば、30重量%以下、好ましくは10重量%以下)において、従来知られているような可塑剤、フィラー、クレー(モンモリロナイト等)、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、ワックス等を配合することができる。
本発明の多層構造体が、他の層として、上記基材層(E1)、接着剤層(E2)等の他の層(E)を少なくとも1層含む場合、例えば、以下のような製造方法をあげることができる。
(i)EVOH層(A)/接着性樹脂層(B)/環状オレフィン系樹脂層(C)の積層ユニットとなる樹脂と他の層(E)となる樹脂とを共押出しすることにより全ての層を積層形成する方法:
(ii)別途形成した他の層(E)となるフィルム、シート等を、上記積層ユニット(A/B/C)とドライラミネートすることにより形成する方法;
(iii)別途形成した他の層(E)となるフィルム、シート等、あるいはこれらを適宜組み合わせた積層体表面に、上記積層ユニット(A/B/C)となる樹脂を溶融共押出しすることによりラミネートする方法;
(iv)上記積層ユニット(A/B/C)に、他の層(E)となる樹脂の溶液を塗工してから溶媒を除去する方法;
なかでも、生産性の観点から、(i)の、積層ユニット(A/B/C)となる樹脂と他の層(E)となる樹脂とを共押出しする方法が好ましい。
また、他の層(E)を用いることなく、例えば、EVOH層(A)の両側に接着性樹脂層(B)を介して環状オレフィン系樹脂層(C)を積層した、3種5層構造のものを得る場合も、すでに述べたとおり、これらの層を一括で共押出しする方法が好ましい。
共押出成形の場合、樹脂組成物の押出成形温度(押出機のバレル温度)は、通常150~300℃(さらには160~250℃)の範囲で適宜設定される。
本発明において、押出機のバレル温度とは、押出機のバレルの表面温度を意味する。押出機のバレルが複数のセクションを有しており、個々のセクションが異なる温度に設定されている場合は、そのうちの最高温度をバレル温度とする。
得られた多層構造体に対して、必要に応じて(加熱)延伸処理を施してもよい。延伸処理は、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、二軸延伸の場合は同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。また、延伸方法としてはロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。延伸温度は、多層構造体近傍の温度で、通常40~170℃、好ましくは60~160℃程度の範囲から選ばれる。延伸温度が低すぎた場合は延伸性が不良となり、高すぎた場合は安定した延伸状態を維持することが困難となる。
なお、延伸後に寸法安定性を付与することを目的として、さらに熱固定を行ってもよい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、例えば上記多層構造体(形態は延伸フィルム状)を、緊張状態を保ちながら通常80~180℃、好ましくは100~165℃で通常2~600秒間程度熱処理を行う。
このようにして得られた本発明の多層構造体は、ガスバリア層であるEVOH層(A)の少なくとも一方の面に、水蒸気透過度の低い環状オレフィン系樹脂層(C)が、接着性樹脂(B)を介して積層されており、酸素および水蒸気に対するガスバリア性に優れている。しかも、レトルト処理時に水分がEVOH層(A)に浸入したとしても、上記EVOH層(A)に含まれる乾燥剤(D)が、上記水分を吸収するため、EVOH層(A)本来のガスバリア性が損なわれることがない。そして、レトルト処理後も、上記水分は、乾燥剤(D)に吸収された状態で留まるため、EVOH層(A)のガスバリア性が低下することがない。したがって、レトルト処理直後から直ちに優れたガスバリア性を示し、外観上の問題を生じることもなく、良好な品質を長く維持することができる。
なお、上記多層構造体(延伸したものを含む)の厚み、さらには多層構造体を構成するEVOH層(A)、接着性樹脂層(B)および環状オレフィン系樹脂層(C)の厚みは、層構成、各層の樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性などにより一概にいえないが、多層構造体全体の厚みは、通常10~5000μm、好ましくは30~3000μm、特に好ましくは50~2000μmである。そして、上記EVOH層(A)の厚みは、通常1~500μm、好ましくは3~300μm、特に好ましくは5~200μmであり、上記接着性樹脂層(B)の厚みは、通常0.5~250μm、好ましくは1~150μm、特に好ましくは3~100μmである。また、上記環状オレフィン系樹脂層(C)の厚みは通常1~300μm、好ましくは5~200μm、特に好ましくは10~100μmである。
そして、上記EVOH層(A)の厚みと上記接着性樹脂層(B)の厚みの比(共に単層の厚み)A/Bは、通常1/10~10/1、好ましくは1/5~5/1、特に好ましくは1/3~3/1である。上記A/Bが小さすぎる場合、ガスバリア性が不充分となるおそれがあり、逆に大きすぎる場合、接着性が不充分になるおそれがある。
また、上記EVOH層(A)の厚みと上記環状オレフィン系樹脂層(C)の厚みの比(共に単層の厚み)A/Cは、通常1/50~10/1、好ましくは1/30~5/1、特に好ましくは1/10~3/1である。上記A/Cが小さすぎる場合、レトルト処理により悪化したEVOH樹脂のガスバリア性の回復速度が低下するおそれがあり、逆に大きすぎる場合、レトルト処理時に多層構造体中に水が浸入しやすくなり、ガスバリア性や接着強度の低下を引き起こすおそれがある。
[多層構造体の用途]
本発明の多層構造体は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器、包装用フィルム等の包装材料のガスバリア層として好適に用いることができる。
特に、本発明の多層構造体は、熱水処理後のガスバリア性が優れるため、熱水処理を行う食品の包装材料として特に有用である。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特にことわりのない限り、以下「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
実施例に先立って、以下の成分を準備した。
<EVOH層(A)用の樹脂組成物>
A-1:EVOH[エチレン含有量29モル%、ケン化度99.6モル%、MFR3.8g/10分(210℃、荷重2160g)、溶融粘度2200Pa・s(250℃、剪断速度25/秒)、揮発分0.2%]90部と、乾燥剤(D)であるジクエン酸三マグネシウム無水物(Jungbunzlauer社製)10部とを、ミキシングゾーンを2箇所有する二軸押出機にて、溶融混練してなるEVOH系樹脂組成物
A-2:EVOH[エチレン含有量29モル%、ケン化度99.8モル%、MFR3.8g/10分(210℃、荷重2160g)]
<接着性樹脂層(B)用の樹脂組成物>
B-1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン[三井化学社製、「Admer QF551」、融点135℃、溶融粘度926Pa・s(210℃、剪断速度25/秒)]
<環状オレフィン系樹脂層(C)用の樹脂組成物>
C-1:環状オレフィン系ポリマー[日本ゼオン社製、「ZEONEX 690R」、ガラス転移温度(Tg)135℃、溶融粘度1600Pa・s(250℃、剪断速度25/秒)]
[実施例1~6、比較例1~3]
上記の各成分を用い、3種5層型フィードブロック、多層構造体成形用ダイ、および引取機を有する共押出多層構造体成形装置により、下記条件で共押出を実施し、冷却水の循環するチルロールにより冷却して3種5層の多層構造体(環状オレフィン系樹脂層(C)/接着性樹脂層(B)/EVOH層(A)/接着性樹脂層(B)/環状オレフィン系樹脂層(C)のフィルム)を作製した。各層の構成と厚みは、後記の表1に示すとおりである。
<押出成形条件>
・環状オレフィン系樹脂層(C):40mmφ単軸押出機(バレル温度:240℃)
・EVOH層(A):40mmφ単軸押出機(バレル温度:240℃)
・接着性樹脂層(B):32mmφ単軸押出機(バレル温度:240℃)
・ダイ:4種5層型フィードブロックダイ(ダイ温度:240℃)
・冷却ロール温度:80℃
そして、得られた各多層構造体から10cm×10cmの大きさの試験片を切り出し、
高温高圧調理殺菌装置(日阪製作所社製、「Flavor Ace RCS-40RTGN」)を用いて、100℃で30分間、レトルト処理を行った後、以下のとおり、各試験片のガスバリア性(酸素透過度)について評価した。
<ガスバリア性の評価>
上記レトルト処理後の各試験片に対し、装置から取り出した直後に両表面に付着した水分を完全に取り除いた後、酸素透過率測定装置(MOCON社製、「Ox-Tran2/21」)を用いて、各試験片の酸素透過度(cc/m2.day.atm)を測定し、測定開始から2時間後の値を評価した。したがって、本発明において、「レトルト処理を行った直後」とは、レトルト処理を終えて2時間後のことをいう。
なお、測定条件は、試験片に対し、内側湿度90%RH、外側湿度50%RH、温度23℃、とした。そして、各試験片の厚みが異なるため、厚みの影響をなくすために、測定値は、いずれも厚み20μmでの値に換算した。
これらの結果を、下記の表1に併せて示す。
Figure 0007435200000003
上記の結果から、実施例1~6品はいずれも、比較例1~3品に比べて、レトルト処理後の酸素透過度が低く抑えられており、高いガスバリア性を発揮することがわかる。
本発明は、乾燥剤(D)を含むEVOH層(A)と、上記EVOH層(A)に接着性樹脂層(B)を介して積層される環状オレフィン系樹脂層(C)とを備えた多層構造体であり、レトルト処理直後から優れたガスバリア性を発揮する包装材料等として、広く利用することができる。

Claims (3)

  1. エチレン-ビニルアルコール系共重合体層(A)と、接着性樹脂層(B)と、環状オレフィン系樹脂層(C)とを備え、上記環状オレフィン系樹脂層(C)が、上記エチレン-ビニルアルコール系共重合体層(A)の少なくとも一方の面に、上記接着性樹脂層(B)を介して積層された多層構造体であって、上記エチレン-ビニルアルコール系共重合体層(A)が乾燥剤(D)を含み、上記環状オレフィン系樹脂層(C)が、ガラス転移温度が120℃以上の環状オレフィン系樹脂からなることを特徴とする多層構造体。
  2. 上記環状オレフィン系樹脂層(C)の厚みが10μm以上であることを特徴とする請求項1載の多層構造体。
  3. 100℃で30分間レトルト処理を行った直後の酸素透過度が、多層構造体の厚みを20μmとして、16cc/m2.day.atm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の多層構造体。
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