JP2016199744A - 樹脂組成物及びこれを用いた多層構造体 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、ガスバリア性を有するフィルムの両面を、強度、耐湿性に優れた保護用フィルムでサンドイッチした多層フィルム、さらにガスバリア層と保護層との接着強度を改善するために、これらの間に接着性樹脂層を介層させた多層フィルムなどが、包装用フィルムとして用いられる。
しかしながら、EVOH樹脂をガスバリア層として用いた多層フィルムで包装した包装体を、レトルト処理のように、長時間、熱水にさらされる処理に供すると、ガスバリア性能が低下することが知られている。かかるガスバリア性の低下は、熱水処理により、多層フィルムの端縁等からEVOH樹脂層内に水分が入り込み、EVOH樹脂の分子間の水素結合が崩れ、外部から酸素分子が侵入しやすくなったためと考えられている。
(α)前記アルカリ土類金属塩(B)の最大水和物中の結晶水含有量(Y)に対する、前記アルカリ土類金属塩(B)を40℃、90%相対湿度下に放置した際の5日間の、当該アルカリ土類金属塩(B)100gあたりの吸水量(X5)の割合(X5/Y)が0.2〜2.0である。
(β)前記アルカリ土類金属塩(B)を40℃、90%相対湿度下に放置した際の24時間後の100gあたりの吸水量(Z)が10g以上である。
(γ)40℃、90%相対湿度下で放置された場合に、吸水量の極大点を有している。
本発明の樹脂組成物は、(A)ベース樹脂、及び(B)特定の吸水特性を有する水和物形成性のアルカリ土類金属塩を含有する樹脂組成物である。以下、各成分について、説明する。
本発明に用いる(A)ベース樹脂は、エチレン−ビニルエステル系共重合体(EVOH樹脂)及び極性基変性重合体を除く熱可塑性樹脂である。
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、融点以上に加熱しても押出機等で成形することが可能な粘度を有する。例えば、230℃、荷重2160g条件下でのMFRが、通常0.01〜200g/10分であり、より具体的には0.01〜100g/10分であり、さらには0.1〜50g/10分である。
また、バージン樹脂に限定せず、複数種類の熱可塑性樹脂が含まれるリサイクル樹脂であってもよい。
以下、好ましく用いられるポリアミド系樹脂及びオレフィン系樹脂について、詳述する。
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーが挙げられる。また共重合ポリアミド樹脂としては、例えばポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミドや、ポリ−p−フェニレン―3,4’ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド、非晶性ポリアミド、これらのポリアミド樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペート等が挙げられる。あるいはこれらの末端変性ポリアミド樹脂であってもよく、好ましくは末端変性ポリアミド樹脂である。これらのポリアミド系樹脂は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
オレフィン系樹脂とは、炭素−炭素二重結合を含有する脂肪族炭化水素モノマーであるオレフィンを主モノマーとし、通常、分子量1万以上の高分子で、主鎖が炭素結合のみで構成される親油性ポリマーをいう。具体的には、例えば、ポリオレフィン、オレフィン−ビニルエステル共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマーが挙げられる。
オレフィンブロックコポリマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等のエチレン−αオレフィンブロック共重合体;プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等のプロピレン−αオレフィンブロック共重合体;ブテン−エチレン共重合体、ブテン−プロピレン共重合体等のブテン−αオレフィンブロック共重合体などが挙げられる。
オレフィンランダムコポリマーとしては、具体的には、上記オレフィンモノマーを2種以上ランダムに共重合したもので、例えば、エチレン−αオレフィンランダム共重合体、プロピレン−αオレフィンランダム共重合体、ブテン−αオレフィンランダム共重合体等の2種以上のαオレフィンランダム共重合体、エチレン−ノルボルネン等のオレフィン−環状オレフィン共重合体などが挙げられる。
本発明で用いる水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)とは、水分子を結晶水として取り込む性質を有するアルカリ土類金属塩であって、以下の吸水特性(α)、好ましくはさらに(β)及び/又は(γ)を充足するものである。
Y(g)=〔(最大水和物の水和数×18)/(無水物の分子量)〕×100
Y=〔(5×18)/218〕×100=約41
一方、水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)が最大水和物で最も安定しているとは限らない。最も安定して存在できる水和物(安定水和物)に含まれる結晶水の数は、最大水和物よりも少ない場合がある。例えば、ジクエン酸三マグネシウムでは、最も安定的に存在できる水和物としては、9水和物があるが、最大水和物は14水和物である。
X5=〔(5日間の吸水量)/(初期重量)〕×100
5日間の吸水量は、(放置5日後の重量−初期重量)より算出できる。
「初期重量」「5日後の重量」は、いずれも実際の測定値であり、電子天秤などの重量測定器を用いて測定できる。当該値は、アルカリ土類金属塩の化合物の種類だけでなく、当該化合物の製造方法、含有結晶水の有無、性状などによっても異なる値である。
また、(B)成分として、水和物形成性のアルカリ土類金属塩の無水物を用いる場合、理論的には含水量0gのはずであるが、ここで用いる初期重量は、例えば、熱重量測定装置(パーキンエルマー社製、熱重量測定装置「Pyris 1 TGA」)を用いて、重量が平衡に達した状態(完全脱水物の状態)の重量を採用することから、若干量の水分が含まれた重量となる。
Zは、使用する水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)100gを、40℃、90%相対湿度下で24時間放置したときの吸水量(g)であらわされる。
吸水量(Z)が少なすぎると、ベース樹脂(A)中に進入した水分の捕捉速度が小さく、多層構造体においては、結果として吸湿性が高い他の樹脂層により吸湿される傾向がある。
具体的には、放置24時間単位で測定される吸水量(X、n日後の吸水量はXn)が、さらに24時間後(n+1日後)の吸水量(Xn+1)よりも少なくなっている場合をいう。ここで、n日目の「吸水量」は、(n日後の重量−初期重量)により算出される。
従って、吸水特性(γ)は、吸水量が極大に達した後、吸水した水分の一部を放出する特性であるといえ、化合物が所定量を吸水した後は、過度の吸水が抑制されることを意味する。したがって、水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)が、自身が吸水した水により溶解してしまうことを回避できる。また、最大水和物よりも水和数が少ない安定水和物が存在する場合、最大水和物にまで吸水した後、安定水和物に近づくように、含水量を調整しているとも考えられる。
したがって、本発明の樹脂組成物において、ベース樹脂(A)/水和物形成性のアルカリ土類金属塩(無水物)(B)の含有重量比(A/B)は、通常50超/50未満〜99/1(50/50を超えて99/1以下)、さらに好ましくは70/30〜97/3、特には85/15〜92/8である。かかる比率が大きすぎる場合にはベース樹脂(A)に入り込んだ水分を除去する効果が低下し、耐湿性付与効果が低下する傾向がある。一方、小さすぎる場合には、ベース樹脂(A)に対して、アルカリ土類金属塩の含有量が多いことを意味し、樹脂組成物の流動性が低下し、ひいては押出成形性が低下する傾向にある。
本発明の樹脂組成物には、(A),(B)成分以外に、必要に応じて、以下のような化合物を、含有してもよい。
以下のような添加剤の樹脂組成物における含有率は、本発明の効果を阻害しない範囲、具体的には、添加剤総量として、樹脂組成物の30重量%以下、好ましくは10重量%以下とすることが好ましい。
アルカリ土類金属塩(B)のベース樹脂(A)中での分散性を高めるために、樹脂組成物は、さらに分散剤を含有することが好ましい。本発明で使用することができる分散剤としては、従来より樹脂組成物に用いられていた分散剤で、例えば、高級脂肪酸(例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等)、高級脂肪酸金属塩(ステアリン酸などの高級脂肪酸のアルミニウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、高級脂肪酸エステル(高級脂肪酸のグリセリンエステル、メチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等のビス脂肪酸アミド)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等、又はその酸変性品)、高級アルコール、エステルオリゴマー、フッ化エチレン樹脂等が挙げられる。
これらの添加物の中でも、相分離異物の抑制を重視する場合には、炭素数12〜20の高級脂肪酸アルカリ土類金属塩および遷移金属塩が好ましく、特にはステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩が好ましい。
上記板状無機フィラーとしては、例えば、含水ケイ酸アルミニウムを主成分とし、粒子が板状となっているカオリン、層状ケイ酸鉱物である雲母やスメクタイト、水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなるタルクなどが挙げられる。これらのうち、カオリンが好ましく用いられる。カオリンの種類としては、特に限定せず、焼成されていても、いなくてもよいが、好ましくは焼成カオリンである。
本発明の樹脂組成物に、酸素バリア機能を付与するために、さらに酸素吸収剤を含有してもよい。
酸素吸収剤とは、包装される内容物よりも素早く酸素を捕捉する化合物または化合物系である。具体的には、無機系の酸素吸収剤、有機系の酸素吸収剤、無機触媒と有機化合物を組み合わせて用いる複合型酸素吸収剤等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、上記成分のほか、必要に応じて、本発明の効果を損なわない限り(例えば、樹脂組成物全体の5重量%未満)、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等の可塑剤;飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン)等の滑剤;アンチブロッキング剤;酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;抗菌剤;不溶性無機塩(例えば、ハイドロタルサイト類等);充填材(例えば無機フィラー等);界面活性剤、ワックス;共役ポリエン化合物、エンジオール基含有物質(例えば、没食子酸プロピルなどのフェノール類など)、アルデヒド化合物(例えば、クロトンアルデヒド等の不飽和アルデヒド類など)などの公知の添加剤を適宜含有することができる。
これらの添加剤の中でも、相分離異物の抑制を重視した場合には、樹脂組成物100重量部に対し、式(H1)、式(H2)で示されるハイドロタルサイト類を0.00001〜1重量部の範囲で含有することが好ましく、特には、式(H2)で示されるハイロドタルサイト系固溶体を配合することが好ましい。
[式中、MはMg,CaまたはZn、EはCO3またはHPO4であり、x,y,zは正数、aは0または正数である。]
[式中M1 2+は、Mg,CpSrおよびBaから選ばれる金属の少なくとも1種、M2 2+は、Zn,Cd,Pb,Snから選ばれる金属の少なくとも1種、Mx 3+は3価金属、An-はn価のアニオン、x,y1,y2,mはそれぞれ0<x≦0.5、0.5<y1<1、y1+y2=1、0≦m<2で示される正数である。]
ベース樹脂(A)と水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)を混合するにあたっては、通常、溶融混錬法または機械的混合法(ペレットドライブレンド)を行ない、好ましくは溶融混錬法である。具体的には、各成分をドライブレンド後に溶融混合する方法や、溶融状態のベース樹脂(A)に水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)を混合する方法が挙げられる。
また、アルカリ土類金属塩(B)の安定水和物を、ベース樹脂(A)と混合し、溶融混練した後、アルカリ土類金属塩水和物の水和水を蒸発させて本発明の樹脂組成物を得る方法も採用可能であるが、かかる方法では樹脂組成物中に発泡が起こる傾向があるため採用し難い。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形法により例えばフィルム、シート、カップやボトルなどに成形することができる。かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法等が挙げられる。溶融成形温度は、通常150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
本発明の多層構造体は、上記本発明の樹脂組成物からなる層(樹脂組成物層)を少なくとも1層有するものである。換言すると、本発明の樹脂組成物層は、水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)を含有しない熱可塑性樹脂(又はその組成物)層(以下、アルカリ土類金属塩(B)を含有しない層を「B成分非含有層」と称して、本発明の樹脂組成物層と区別する)と組み合わせた多層構造体である。B成分非含有層は、主体となる樹脂の種類に応じて、多層構造体の強度アップ、表面保護、ガスバリア性などの他の機能の付与など、目的に応じて適宜選択される。
B成分非含有層に使用できる熱可塑性樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、環状オレフィン系樹脂(環状オレフィン構造を主鎖および/または側鎖に有する重合体)等の(未変性)オレフィン系樹脂;これらのポリオレフィン類を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性した不飽和カルボン酸変性オレフィン系樹脂等の変性オレフィン系樹脂を含む広義のオレフィン系樹脂;アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−ビニルエステル系樹脂及びそのケン化物、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、芳香族または脂肪族ポリケトン類、先に述べた炭素−炭素二重結合を含有する脂肪族炭化水素モノマー単位を有する重合体を極性基含有化合物で変性した極性基変性重合体等が挙げられる。
かかる極性基変性重合体とは、極性基含有化合物で変性してなる炭素−炭素二重結合を含有する脂肪族炭化水素モノマー単位を有する重合体である。極性基変性重合体は、極性基を有しないオレフィン系樹脂等の疎水性樹脂とEVOH樹脂等の親水性樹脂との接合強度の増大、すなわち接着性樹脂としての役割を果たすことができる。
以下、B成分非含有層を構成する熱可塑性樹脂として代表的な、ガスバリア樹脂、極性基変性重合体について説明する。
本明細書における「ガスバリア樹脂」とは、上記熱可塑性樹脂のうち、20℃,65%相対湿度下で、JIS−K7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した酸素透過度が、100mL・20μm/(m2・day・atm)以下の樹脂、好ましくは酸素透過度が、50mL・20μm/(m2・day・atm)以下、より好ましくは10mL・20μm/(m2・day・atm)以下の樹脂である。
多層構造体に、ガスバリア機能を付与したい場合、上記のようなガスバリア樹脂の層(ガスバリア層)が含まれることが好ましい。
ガスバリア樹脂は、単一の樹脂又はその組成物から構成されてもよいし、ガスバリア樹脂を含む限り、複数種類の樹脂混合物の組成物から構成されてもよい。
R1〜R3は、通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4の飽和炭化水素基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。R4〜R6は、通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4のアルキル基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。特に、R1〜R6がすべて水素であるものが最も好ましい。
極性基変性重合体とは、炭素−炭素二重結合を含有する脂肪族炭化水素モノマー単位を有する重合体が、極性基含有化合物で変性されている重合体である。
前記極性基含有化合物とは、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシル基、水酸基、アミド基、エポキシ基などの極性基を有する化合物をいう。前記カルボキシル基には、カルボキシル基の誘導体である酸無水物基も含まれる。
かかる酸価が高すぎると、EVOH樹脂などの親水性樹脂との反応性が強すぎて共押出した際に接着界面荒れによる外観不良を引き起こす傾向がある。かかる酸価が小さすぎると、EVOH樹脂などの親水性樹脂との接着力が低下する傾向にある。
ガスバリア層としてEVOH樹脂等のビニルアルコール系樹脂層を使用し、強度アップ、表面保護等のために、疎水性樹脂層と組み合わせて用いる多層構造体の場合、ビニルアルコール系樹脂層と疎水性樹脂層との間に、極性基変性重合体からなる接着性樹脂層を介在させることが好ましい。かかる用途においては、カルボキシル基又はアミノ基含有化合物による変性が好ましく、より好ましくは、カルボキシル基含有化合物による変性である。
B成分非含有層には、上記樹脂成分の他、一般に熱可塑性樹脂に配合する配合剤が適宜含有されていてもよい。例えば、乾燥剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、無機フィラー(カオリン、雲母、スメクタイト等)、酸素吸収剤(無機系酸素吸収剤、ポリオクテニレン等の二重結合含有化合物)などが含有されていてもよい。
本発明の多層構造体は、少なくとも本発明の樹脂組成物層を一層含むもので、目的とする特性に応じて、上記のようなB成分非含有層を1種又は2種以上含む。
樹脂組成物層を2層以上含む場合、異なる種類の樹脂組成物層を含んでもよい。B成分非含有層についても同様に、2層以上含まれる場合、異なる種類のB成分非含有層を含んでもよい。
B成分非含有層についても同様に、ポリプロピレン等の疎水性樹脂を用いたB成分非含有層(例えばII1)とガスバリア層(例えばII2)との組み合わせ、さらに極性基変性重合体を用いた接着性樹脂層(例えばII3)との組み合わせのように、異なる役割を有するB成分非含有層の組み合わせが可能である。
多層構造体の層の数はのべ数にて通常2〜15、好ましくは3〜10層である。
樹脂組成物層とB成分非含有層(例えば、接着性樹脂層、ガスバリア層)との積層は、公知の方法にて行うことができる。例えば、本発明の樹脂組成物のフィルム、シート等に、B成分非含有樹脂を溶融押出ラミネートする方法、B成分非含有層に本発明の樹脂組成物を溶融押出ラミネートする方法、本発明の樹脂組成物と共押出する方法、本発明の樹脂組成物(層)とB成分非含有樹脂(層)もしくはガスバリア樹脂(層)とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、B成分非含有層上に、本発明の樹脂組成物の溶液を塗工してから溶媒を除去する方法等が挙げられる。これらの中でも、コストや環境の観点から考慮して共押出しする方法が好ましい。
また、本発明の樹脂組成物から得られた多層延伸フィルムをシュリンク用フィルムとして用いる場合には、熱収縮性を付与するために、上記の熱固定を行わず、例えば延伸後のフィルムに冷風を当てて冷却固定するなどの処理を行えばよい。
多層構造体(延伸したものを含む)の厚み、更には多層構造体を構成する本発明の樹脂組成物層、およびガスバリア層、接着性樹脂層等のB成分非含有層の厚みは、層構成、層構成樹脂の種類、接着性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性などにより一概に言えないが、多層構造体(延伸したものを含む)の厚みは、通常10〜5000μm、好ましくは30〜3000μm、特に好ましくは50〜2000μmである。本発明の樹脂組成物層は、通常5〜30000μm、好ましくは10〜20000μm、特に好ましくは20〜10000μmである。B成分非含有層は通常5〜30000μm、好ましくは10〜20000μm、特に好ましくは20〜10000μmである。ガスバリア層としては、通常1〜500μm、好ましくは3〜300μm、特に好ましくは5〜200μmである。また、接着性樹脂層としては、通常0.5〜250μm、好ましくは1〜150μm、特に好ましくは3〜100μmである。
上記の如く得られたフィルム、シート、延伸フィルムからなる袋およびカップ、トレイ、チューブ、ボトル等からなる容器や蓋材は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器として有用である。
特に、本発明の樹脂組成物からなる層は、多層構造体全体に、耐熱性を付与できるので、吸湿によりガスバリア性が低下するガスバリア層を有し、しかも熱水処理が行われる食品の包装材料として特に有用である。
尚、例中「部」とあるのは、重量基準を意味する。
〔水和物形成性の金属塩の吸水特性〕
(1)水和物形成性の金属塩の含水量
熱重量測定装置「Pyris1 TGA(パーキンエルマー製)」を用いて、水和物形成性の金属塩の含水量を測定した。
なお、完全脱水物の含水量については、加熱により水分除去し、重量平衡に到達した時点での含有水分量を完全脱水物の含水量とした。
水和物形成性の金属塩を、40℃、90%相対湿度下で、6日間放置した。水和物形成性の金属塩100gあたりの、40℃、90%相対湿度下にn日間放置した後の吸水量Xnは、下記式により求められる。
Xn=〔(n日間の吸水量)/(初期重量)〕×100
「n日間の吸水量」は、放置開始からn日後(n=1〜6の自然数)の吸水後重量(g)を測定し、初期重量を差し引くことにより求めた。
なお、「初期重量」及び「n日後の重量」は、アルミカップ上に試料を載せて、電子天秤で計測した。
下記式により求めた。
Y=〔(最大水和物の水和数×18)/(無水物の分子量)〕×100
無水物の分子量は、対象とする金属塩の化学式より求められる分子量を採用した。最大水和物の水和数は、以下の化合物の[ ]に示す水和物である。
ジクエン酸三マグネシウム[14水和物]、クエン酸三ナトリウム[2水和物]
上記(2)に記載の方法で測定した放置1日後の吸水量の値(X1)をZとして採用した。
上記(2)にて測定した、40℃、90%相対湿度下で放置した場合の6日間の吸水量変化の測定に基づき、n日間の吸水量(Xn)と(n+1)日間の吸水量(Xn+1)とを比べ、Xn+1の方が少なくなっている日がある場合、吸水量の極大点が存在するとした。
(6)耐湿性
樹脂組成物ペレットを、30℃、90%相対湿度に設定した恒温恒湿槽中で3日間放置した後、目視により、ペレット外観を観察した。外観に特段の変化が見られない場合は、「良好」と判定した。
(7)レトルト処理後の酸素透過度(cc/m2・day・atm)
多層構造体のサンプル片(10cm×10cm)を、熱水浸漬式レトルト装置(日阪製作所)を用いて123℃で33分間レトルト処理した後、取り出した。このレトルト処理の3日後に、酸素ガス透過量測定装置(モコン社製、OX−TRAN 2/20)を用いて、酸素透過度(23℃、内部相対湿度:90%、外部相対湿度:50%)を測定した。
多層構造体を、40℃、90%相対湿度に設定した恒温恒湿槽中で10日間放置した後、目視により、多層構造体の外観を観察した。外観に特段の変化が見られない場合は、「良好」と判定した。
本実施例で用いた下記水和物形成性の金属塩について、上記方法にて、吸水特性を調べた。測定結果を表1に示す。
・ジクエン酸三マグネシウム(完全脱水物):Aadhunik Industries製のジクエン酸三マグネシウム(無水物)を用いた。熱重量測定装置にて測定される含水率は0.4%であった。
・クエン酸三ナトリウム(完全脱水物):磐田化学工業社のクエン酸三ナトリウム(無水物)を用いた。熱重量測定装置にて測定された含水率は0.4%であった。
ベース樹脂(A)として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社「ノバテックPP EA7AD」、MFR1.4g/10分(230℃、荷重2160g))またはポリアミド系樹脂(宇部興産株式会社の「UBEナイロン1022B」)を用いた。
・2軸押出機: 直径32mm、L/D=56(日本製鋼所製)
・押出機設定温度: C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/C9/C10/C11/C12/C13/C14/C15/C16/D=110/140/200/230/230/230/230/230/230/230/230/230/230/230/230/230℃
・スクリュー回転数: 240ppm
・吐出量: 25kg/時間
・ストランドの冷却: 水冷
・引取速度: 20m/分
一方、本発明で規定する吸水特性を満足できないアルカリ金属塩を含有する場合(P3,P4)、ペレット表面が湿っていた。金属塩を含まない樹脂単独の場合(参考例)では外観に変化がないことから、組成物中に含まれるクエン酸三ナトリウムが吸湿により潮解し、樹脂表面にブリードアウトしたものと推察される。
ベース樹脂がポリプロピレンである樹脂組成物(P1又はP3)、接着性樹脂としてマレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学株式会社”Admer QF500”、MFR3.0g/10分(230℃、荷重2160g))、ガスバリア樹脂として、エチレン構造単位の含有量29モル%、ケン化度99.6モル%、ホウ酸含有量500ppm(ホウ素分析値より換算)のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(MFR4.3g/10分(210℃、荷重2160g)を用いた。
押出機を3台有し、3種5層型フィードブロック、多層フィルム成形用ダイおよび引取機を有する共押出多層フィルム成形装置を用いて下記条件で共押出を実施し、冷却水の循環するチルロールにより冷却して、3種5層の厚さ320μmの多層構造体(樹脂組成物/接着性樹脂/EVOH樹脂/接着性樹脂/樹脂組成物、厚さ(μm):120/20/40/20/120))を得た。接着性樹脂層及びガスバリア層(EVOH樹脂層)が、B成分非含有層に該当する。
・内外層押出機(樹脂組成物):40mmφ単軸押出機(バレル温度:230℃)
・中内外層押出機(接着性樹脂):32mmφ単軸押出機(バレル温度:230℃)
・ダイ:3種5層型フィードブロックダイ(ダイ温度:230℃)
・冷却ロール温度:50℃
本発明の実施例に該当する多層構造体S1では、高湿度下で10日間保管した場合においても、外観不良が認められなかった。
Claims (10)
- (A)熱可塑性樹脂からなるベース樹脂(但し、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物及び極性基変性重合体を除く);及び
(B)下記(α)の吸水特性を充足する水和物形成性のアルカリ土類金属塩
を含有することを特徴とする樹脂組成物:
(α)前記アルカリ土類金属塩(B)の最大水和物中の結晶水含有量(Y)に対する、前記アルカリ土類金属塩(B)を40℃、90%相対湿度下に放置した際の5日間の、当該アルカリ土類金属塩(B)100gあたりの吸水量(X5)の割合(X5/Y)が0.2〜2.0である。 - 前記水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)が更に下記吸水特性(β)を充足することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物:
(β)前記アルカリ土類金属塩(B)を40℃、90%相対湿度下に放置した際の24時間後の100gあたりの吸水量(Z)が10g以上である。 - 前記水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)が更に下記吸水特性(γ)を充足することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
(γ)40℃、90%相対湿度下で放置された場合に、吸水量の極大点を有している。 - 前記アルカリ土類金属塩(B)は、乳酸、ケイ酸、リン酸、及びクエン酸からなる群より選ばれる1種の酸のアルカリ土類金属塩の混合物の完全脱水物若しくは含水量が50重量%以下の部分脱水物、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記ベース樹脂(A)と水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)の含有重量比(A/B)が、50超/50未満〜99/1であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記ベース樹脂(A)が、ポリアミド系樹脂又はオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有することを特徴とする多層構造体。
- 水和物形成性のアルカリ土類金属塩(B)を含まない熱可塑性樹脂又はその組成物の層を、さらに含むことを特徴とする請求項7に記載の多層構造体。
- 前記熱可塑性樹脂は、20℃、65%相対湿度下で、JIS−K7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した酸素透過度が、100mL・20μm/(m2・day・atm)以下である請求項8に記載の多層構造体。
- 前記熱可塑性樹脂は、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物である請求項8又は9に記載の多層構造体。
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