JP7435153B2 - プロピレン系樹脂シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プロピレン系樹脂シートの製造方法に関し、詳しくは、配向性が低い延伸プロピレン系樹脂シートの製造方法に関する。
近年の環境問題などへの意識の高まりとともに、ポリ塩化ビニル樹脂に変わる新しい樹脂シートが要求されている。このようなシートとして、プロピレン系樹脂シートが注目されている。
ポリプロピレンは結晶性樹脂であるために、様々な手法で製造されるポリプロピレンシートは、通常、球晶のα晶を含むものである。
一方で、ポリプロピレンシートの透明性を阻害する要因として、ミクロンサイズの球晶が考えられており、このような球晶が生じ難いよう、ポリプロピレン溶融物を急速冷却することが知られている。
特許文献1には、従来にない高剛性を有した高透明性のポリプロピレン成形品の製造方法として、アイソタクティックペンタッド分率が95%モル以上の立体規則性を有するポリプロピレン溶融物を流動させる流動工程と、この流動工程で得られた前記流動させたポリプロピレン溶融物を、温度範囲が-200℃以上50℃以下に冷却し、かつ0.1秒以上100秒以下で維持して、中間相もしくは単斜晶(α晶)のドメインおよび非晶相を主要組成とする急冷ポリプロピレンを得る急冷工程と、この急冷工程で得られた前記急冷ポリプロピレン高次構造体を、吸熱性転移を示す温度域かつポリプロピレンの融解温度以下の温度に昇温し、かつ0.1秒以上1,000秒以下で維持する熱処理を実施する熱処理工程とを実施することが記載されている。
しかしながら、特許文献1のような製造方法から得られるポリプロピレン成形品には、球晶あるいはラメラ構造の集合体など大きな結晶構造体が含まれているとされている(非特許文献1)。
また、特許文献1には、前記製法で製造されるポリプロピレン成形品を延伸することは、一切記載されていない。
特開2009-13357号公報
次世代ポリオレフィン総合研究、三恵社、2018年12月10日初版発行、Vol.12、p.137
球晶のα晶を含むポリプロピレンシートは、安定で製造が容易であるが、シートを延伸した際に、様々な問題を抱えていた。従来の、球晶のα晶を含むポリプロピレンシートを延伸すると、ラメラが強く配向して、延伸中に切れや破れが発生しやすかった。また、従来の延伸後のポリプロピレンシートは、配向性が強く、加熱後収縮してしまい、寸法安定性が悪かった。
そこで、本発明は、配向性が低い延伸プロピレン系樹脂シートを製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、まず、スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aを製造し、当該プロピレン系樹脂膜aを特定温度で加熱することによりα晶を含むプロピレン系樹脂膜bを製造し、当該プロピレン系樹脂膜bを冷却後、低温で延伸することにより、配向性が低い延伸プロピレン系樹脂シートを製造できることを見出した。
本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法は、以下の工程1~3を順次経ることを特徴とする。
工程1:プロピレン系樹脂Aを用いて、スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aを得る工程
工程2:前記プロピレン系樹脂膜aを、110℃以上140℃以下の温度で加熱することにより、α晶を含むプロピレン系樹脂膜bを得る工程
工程3:前記プロピレン系樹脂膜bを20℃以上30℃以下の範囲に冷却後、20℃以上30℃以下の温度で延伸することにより、プロピレン系樹脂シートを得る工程
本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法においては、前記工程1が、プロピレン系樹脂Aを用いて、X線回折においてスメクチック晶の回折パターンを示し、且つ、下記式(1)により求められるスメクチック晶の割合の指標(XSI)が1.300以上であるプロピレン系樹脂膜aを得る工程であることが、配向性が低い延伸プロピレン系樹脂シートを製造する点から好ましい。
式(1)
XSI=スメクチック晶に由来する回折の寄与が強い21度~22度の回折強度の平均値(Ism)/非晶に由来する回折の寄与が強い18.5度~19.5度の回折強度の平均値(Iamo
本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法においては、前記工程1が、プロピレン系樹脂Aを用いて、10μm以上の球晶を含まず、スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aを得る工程であることが、延伸中に切れや破れが発生し難く、配向性が低い延伸プロピレン系樹脂シートを製造する点から好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法においては、前記工程2が、前記プロピレン系樹脂膜aを、110℃以上140℃以下の温度で加熱することにより、X線回折においてα晶の回折パターンを示し、且つ、下記式(2)により求められるα晶の割合の指標(XAI)が1.500以上であるプロピレン系樹脂膜bを得る工程であることが、配向性が低い延伸プロピレン系樹脂シートを製造する点から好ましい。
式(2)
XAI=α晶に由来する回折の寄与の強い13.9度~14.2度の回折強度の平均値(Ial)/非晶に由来する回折の寄与が強い18.5度~19.5度の回折強度の平均値(Iamo
本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法においては、前記工程1が、プロピレン系樹脂Aを熱プレスした後、急冷することにより、スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aを得る工程であることが、配向性が低い延伸プロピレン系樹脂シートを製造する点から好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法においては、前記プロピレン系樹脂Aが、プロピレン単独重合体またはエチレン含量10質量%以下のエチレンプロピレン共重合体であることが、一定の結晶化度を保ち、かつ、工程1においてスメクチック晶を形成しやすく、配向性を低くする点から好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法においては、前記プロピレン系樹脂シートが、厚み1mm以下のシートであることが、工程1においてよりスメクチック晶率の高いプロピレン系樹脂膜aを作製可能であり、配向性を低くする点から好ましい。
本発明によれば、配向性が低い延伸プロピレン系樹脂シートを製造する方法を提供することができる。
図1は、引張試験における応力―ひずみ曲線におけるレジリエンスを説明する図である。 図2は、実施例1における(1)プロピレン系樹脂膜a、(2)プロピレン系樹脂膜b、及び(3)延伸プロピレン系樹脂シートのX線回折測定結果を示す図である。 図3は、比較例1における(1)プロピレン系樹脂膜、(2)当該樹脂膜を延伸して得られた比較延伸プロピレン系樹脂シートのX線回折測定結果を示す図である。 図4は、比較例2における(1)プロピレン系樹脂膜、(2)当該樹脂膜を延伸して得られた比較延伸プロピレン系樹脂シート、及び(3)当該延伸プロピレン系樹脂シートを加熱して得られた比較延伸プロピレン系樹脂シートのX線回折測定結果を示す図である。 図5は、比較例3における(1)比較プロピレン系樹脂膜、(2)当該比較プロピレン系樹脂膜を延伸して得られた比較延伸プロピレン系樹脂シートのX線回折測定結果を示す図である。
以下、本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法について、工程ごとに詳細に説明する。また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
なお、本発明において、「シート」とは、JIS-K6900の定義におけるシートとフィルムを含む意味である。JIS-K6900での定義では、シートとは薄く一般にその厚さが長さと幅のわりには小さい平らな製品をいい、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう。したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、シートとフィルムの境界は定かではなく、明確に区別しにくいので、本発明では、厚みの厚いもの及び薄いものの両方の意味を含めて、「シート」と定義する。
本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法は、以下の工程1~3を順次経ることを特徴とする。
工程1:プロピレン系樹脂Aを用いて、スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aを得る工程
工程2:前記プロピレン系樹脂膜aを、110℃以上140℃以下の温度で加熱することにより、α晶を含むプロピレン系樹脂膜bを得る工程
工程3:前記プロピレン系樹脂膜bを20℃以上30℃以下の範囲に冷却後、20℃以上30℃以下の温度で延伸することにより、プロピレン系樹脂シートを得る工程
I.工程1
工程1は、プロピレン系樹脂Aを用いて、スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aを得る工程である。
工程1は、プロピレン系樹脂Aを溶融させる工程と、溶融したプロピレン系樹脂Aを溶融状態のプロピレン系樹脂膜とする工程と、溶融状態のプロピレン系樹脂膜を冷却することにより、スメクチック晶を含む固体状態のプロピレン系樹脂膜aを得る工程を有することが好ましい。
本発明に用いられるプロピレン系樹脂Aとしては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとの共重合体が挙げられ、これらの混合物であってもよい。
プロピレン系共重合体の場合、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーの含量は10質量%以下であることが、一定の結晶化度を保ち、かつスメクチック晶の形成しやすさの点から、好ましい。
上記のα-オレフィンとしては、炭素数4~12のα-オレフィンがより好ましく、例えば、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、2-メチル-1-ヘキセン、2,3-ジメチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ペンテン、1-オクテン、2-エチル-1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ヘキセン、2-プロピル-1-ヘプテン、2-メチル-3-エチル-1-ヘプテン、2,3,4-トリメチル-1-ペンテン、2-プロピル-1-ペンテン、2,3-ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等が挙げられる。特に共重合性の観点から、好ましくは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンであり、より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセンである。
プロピレン系樹脂Aの例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。より具体的には、プロピレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体等が挙げられ、プロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体等が挙げられる。
本発明に用いられるプロピレン系樹脂Aとしては、中でも一定の結晶化度を保ち、かつスメクチック晶が形成されやすい点から、プロピレン単独重合体またはエチレン含量10質量%以下のエチレンプロピレン共重合体であることが好ましい。
プロピレン系樹脂Aを溶融させる工程においては、使用するプロピレン系樹脂Aの融点以上の温度に加熱を行う必要がある。溶融させるための加熱温度は、使用するプロピレン系樹脂Aの融点以上かつ120~350℃の温度で行うことが可能であり、樹脂のMFRや量によって任意に変更する事が可能である。加熱温度が350℃を超えるとプロピレン系樹脂Aが分解する恐れがあり、また、120℃以下ではプロピレン系樹脂Aが十分に溶融しない恐れがある。加熱温度は、中でも160~300℃が好ましく、180~280℃がより好ましく、190~250℃がさらに好ましい。
また、プロピレン系樹脂Aを溶融させる工程はプロピレン系樹脂Aが十分に溶融するまで行う必要があり、溶融させるための加熱時間は、10秒~1時間の範囲で選ぶ事が出来る。時間が短すぎるとプロピレン系樹脂Aが十分に溶融しない恐れがあり、また、時間が長すぎるとプロピレン系樹脂Aが分解してしまう恐れがある。加熱時間は15秒以上45分未満が好ましく、30秒以上30分未満がより好ましく、1分以上20分未満がさらに好ましく、1分以上10分未満がよりさらに好ましい。
溶融したプロピレン系樹脂Aを溶融状態のプロピレン系樹脂膜とする方法としては、押出成形、熱プレス成形等が挙げられる。中でも、流動結晶化が起こり難い、熱プレス成形を用いることが好ましい。熱プレス成形は、従来技術の押出成形のように剪断応力がかからず、流動結晶化が起こり難く、分子の配向が残留し難いため、球晶あるいはラメラ構造の集合体など大きな結晶構造体が含まれ難くなる。
熱プレス成形に用いられるプレス装置としては、大きさや種類は適宜選択されればよく、特に限定されるものではない。プレス装置としては、例えば、東洋精機(株)製プレス装置mini TESTPRESS-10が挙げられるが、アズワン社製小型熱プレス機AH2001の様に小型なプレス装置から1000トンの圧力をかけることが可能な超大型プレス機も使用可能である。このようなプレス装置は、通常、圧力をかけずに樹脂を加熱することが可能であり、前記プロピレン系樹脂Aを溶融させる工程を行うことができる。
圧力をかけ溶融状態のプロピレン系樹脂膜を得る工程においては、十分に加圧を行い溶融状態のプロピレン系樹脂Aをシート状に薄く広げる必要がある。プロピレン系樹脂Aが溶融している状態で行う必要があるので、加圧時の温度は、プロピレン系樹脂Aを溶融させる温度と同じ温度範囲で任意に選ぶことが可能である。溶融状態のプロピレン系樹脂Aに圧力をかける際に、圧力が大きすぎると樹脂膜が薄くなりすぎて破損する恐れがあり、圧力が小さすぎると所望の厚みの膜を得られない恐れがある。
加圧時の圧力は、0.001~100,000MPaまでの範囲で任意に選択する事が可能であるが、0.01~1,000MPaであることが好ましく、0.1~100MPaであることがより好ましく、0.5~50MPaであることがさらに好ましく、1~40MPaであることがよりさらに好ましい。また、加圧時間は長すぎると樹脂が劣化する恐れがあり、短すぎると溶融樹脂が十分に押し広げられない恐れがある。加圧時間は、1秒以上60分未満が好ましく、10秒以上30分未満がより好ましく、30秒以上20分未満がさらに好ましく、1分以上10分未満がよりさらに好ましい。
溶融状態のプロピレン系樹脂膜の厚みとしては、特に限定されないが、均一に冷却しやすく、スメクチック晶を形成しやすい点から、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。
溶融状態のプロピレン系樹脂膜を冷却することにより、スメクチック晶を含む固体状態のプロピレン系樹脂膜aを得る。溶融状態のプロピレン系樹脂膜を冷却してスメクチック晶を含む固体状態にすることができれば冷却手段は特に限定されない。溶融状態のプロピレン系樹脂膜を加熱プレス装置から取り出し、冷却プレス装置を使用しても良いし、液体に浸漬しても良い。
溶融状態のプロピレン系樹脂膜を急冷することにより、スメクチック晶を含む固体状態のプロピレン系樹脂膜aを得ることが好ましい。
冷却温度は、-200℃以上20℃以下にすることが好ましく、-50℃以上10℃以下にすることがより好ましい。冷却時間は、適宜選択されればよいが、0.1秒以上300秒以下にすることが好ましく、1秒以上120秒以下にすることがより好ましい。
液体に浸漬する場合の液体としては、固体を含んでいても良く、それらの種類は特に限定されない。例えば、水、エタノール等の有機溶媒、液体窒素、ドライアイスや氷、あるいはそれらの混合物が挙げられる。
溶融状態のプロピレン系樹脂膜を急冷する方法としては、中でも、冷却速度を高くし試料全体を均一に素早く冷却できる点から、液体に浸漬する方法が好ましく、例えば氷水に浸漬する方法が好適に挙げられる。
スメクチック晶を含む固体状態のプロピレン系樹脂膜aの厚みとしては、特に限定されないが、最終的に得られる延伸プロピレン系樹脂シートの加工性、取り扱いやすさの点から、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。
スメクチック晶を含む固体状態のプロピレン系樹脂膜aは、スメクチック晶を多く含む点から、X線回折においてスメクチック晶の回折パターンを示し、且つ、下記式(1)により求められるスメクチック晶の割合の指標(XSI)が1.300以上であるプロピレン系樹脂膜aであることが好ましい。
式(1)
XSI=スメクチック晶に由来する回折の寄与が強い21度~22度の回折強度の平均値(Ism)/非晶に由来する回折の寄与が強い18.5度~19.5度の回折強度の平均値(Iamo
前記スメクチック晶の割合(XSI)としては、1.310以上がより好ましく、1.320以上がさらに好ましく、1.330以上がよりさらに好ましく、高ければ高いほどスメクチック晶を含む割合が高くなり好ましい。前記スメクチック晶の割合(XSI)の上限値(非晶の割合が下限値で、結晶中におけるスメクチック晶の割合が100%)は1.4程度が挙げられる。
XSIを求めるX線回折測定は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
また、工程1で得られるスメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aは、10μm以上の球晶を含まないことが、延伸中に切れや破れが発生し難く、配向性が低い延伸プロピレン系樹脂シートを製造する点から好ましい。このような球晶を含まないことは、光学顕微鏡や電子顕微鏡によって確認することができる。
2.工程2
工程2は、前記プロピレン系樹脂膜aを、110℃以上140℃以下の温度で加熱することにより、α晶を含むプロピレン系樹脂膜bを得る工程である。
スメクチック晶を含む前記プロピレン系樹脂膜aを、α晶を含むプロピレン系樹脂膜bとするために、スメクチック晶からα晶へ転移するための条件を十分に満たす点から110℃以上で加熱し、プロピレン系樹脂膜bの融解を抑制する点から140℃以下の温度で加熱する。
α晶を含むプロピレン系樹脂膜bを得る工程における加熱手段としては、α晶を含むプロピレン系樹脂膜bを得ることができれば特に限定されない。加熱手段としては、例えば、熱風加熱、スチーム加熱、IR加熱、金属との接触加熱など、任意の方式の任意の組み合わせが挙げられる。例えば、1℃単位で温度コントロール可能な温風循環式熱乾燥機内に静置することが樹脂膜を傷つけず膜全体を均一に加熱する事が出来る点から好ましい。
加熱手段を所定の温度に昇温し、その温度で所定の時間加熱する。加熱時間としては、適宜選択されればよいが、1秒以上2時間以下にすることが好ましく、10秒以上1時間以下にすることがより好ましい。
工程2で得られるα晶を含むプロピレン系樹脂膜bとしては、スメクチック晶から全てα晶に転移していると考えられるため、X線回折においてα晶の回折パターンを示し、且つ、下記式(2)により求められるα晶の割合の指標(XAI)が1.500以上であるプロピレン系樹脂膜bであることが好ましい。
式(2)
XAI=α晶に由来する回折の寄与の強い13.9度~14.2度の回折強度の平均値(Ial)/非晶に由来する回折の寄与が強い18.5度~19.5度の回折強度の平均値(Iamo
前記スメクチック晶の割合(XAI)としては、2.000以上がより好ましく、2.500以上がさらに好ましく、高ければ高いほどα晶を含む割合が高くなり、安定性が高い点から好ましい。
XAIを求めるX線回折測定は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
また、工程2で得られるα晶を含むプロピレン系樹脂膜bは、スメクチック晶を経てα晶に転移されたものであるため、10μm以上のような大きさの球晶を含まないものであることが好ましい。このような球晶を含まないことは、光学顕微鏡や電子顕微鏡によって確認することができる。
3.工程3
工程3は、前記プロピレン系樹脂膜bを20℃以上30℃以下の範囲に冷却後、20℃以上30℃以下の温度で延伸することにより、プロピレン系樹脂シートを得る工程である。
まず、前記プロピレン系樹脂膜bを20℃以上30℃以下の範囲に冷却することにより、α晶への転移を完了させる。転移を完了させ、ポリプロピレン分子の運動性が安定した状態で延伸すると、延伸後に結晶化度等が変化することが抑制される。その結果、品質変化がほとんど起こらない力学的に安定したプロピレン系樹脂シートを製造することができる。冷却しない場合、ポリプロピレン分子の運動性をパルスNMRで測定すると、運動性が安定するまでに数時間~数日かかることが分かっている。
前記プロピレン系樹脂膜bを20℃以上30℃以下の範囲に冷却後、20℃以上30℃以下の温度で延伸する。このような低温での延伸は、延伸時に加熱されていないので、延伸前後でポリプロピレン分子の運動性が安定した状態が維持されることから、結晶化度等の変化が抑制され、品質変化がほとんど起こらない力学的に安定したプロピレン系樹脂シートを製造することができる。加熱延伸すると、ポリプロピレン分子が熱により運動性をもつため、延伸後にも徐々に結晶化が進行し、プロピレン系樹脂シートの保管条件により力学物性値が異なる恐れがある。また、冷却後に、20℃以上30℃以下という室温で延伸する場合は、当該延伸工程を樹脂膜形成後に連続的に行う必要がなく、プロピレン系樹脂の溶融から延伸までの一連の工程を行う大型の装置を必要としない。一連の工程を行う大型の装置では、不具合のあった際には全工程が行えず生産停止となるが,延伸工程を別途行える本発明では、不具合箇所のみ代替を用いることででき,生産を継続できることから生産効率が高いとも言える。
延伸工程では、延伸を実施する前の初期の寸法を100%とした時に100.1%以上1000%以下延伸する工程を、20℃以上30℃以下の温度で行うことが好ましい。
プロピレン系樹脂シートの延伸倍率は、用途に応じて適宜選択されればよく、特に限定されるものではない。プロピレン系樹脂シートの延伸倍率は、110%以上であってよいが、本願の効果を得やすい点からは、130%以上であってよく、さらに150%以上であってよい。一方で、フィルム全体が延伸される点から、500%以下であってよく、300%以下であってよく、200%以下であってよく、150%以下であってもよい。
従来の球晶のα晶を含むプロピレン系樹脂シートは延伸すると破断しやすく、延伸倍率を挙げることが困難であったが、本発明の前記プロピレン系樹脂膜bを延伸するため、従来よりも高倍率延伸が可能である。
延伸時におけるプロピレン系樹脂シートの固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用いて延伸することも可能である。プロピレン系樹脂シートは、一方向のみに延伸(縦延伸または横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、もしくは逐次2軸延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。
このように、前記プロピレン系樹脂膜bを20℃以上30℃以下の範囲に冷却後、20℃以上30℃以下の温度で延伸して得られる延伸プロピレン系樹脂シートは、配向性が低く、従来よりも熱収縮が小さい延伸シートを製造することが可能である。
本発明の製造方法で得られる延伸プロピレン系樹脂シートの厚みは特に限定されるものではないが、シートの加工性、取り扱いやすさの点から厚み1mm以下のシートであることが好ましく、更に厚み0.5mm以下のシートであることがより好ましい。
4.延伸プロピレン系樹脂シートの特性
本発明の製造方法で得られる延伸プロピレン系樹脂シートは、延伸シートでありながら、配向性が低い。
具体的には、本発明の製造方法で得られる延伸プロピレン系樹脂シートは、下記X線測定において、α晶(110)面の半値幅が5度以上であることが好ましく、10度以上であることがより好ましく、15度以上であることがより更に好ましい。
配向性の指標とされるα晶(110)面の半値幅は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
図1は、引張試験における応力―ひずみ曲線におけるレジリエンスを説明する図である。引張試験における応力―ひずみ曲線においてプロピレン系樹脂材料は延伸に伴い応力が増加し、その後降伏点に達する。降伏点を経るとひずみ増加に伴い応力は減少するが、特定のひずみにおいて応力に変化が無くなり、それ以上応力は減少せず一定の値を保つプラトー部と呼ばれる部分が現れる。ここで延伸開始点よりプラトー部に移るまでの応力―ひずみ曲線の面積値をレジリエンスとして算出した。
本発明の製造方法で得られる延伸プロピレン系樹脂シートは、前記レジリエンスが400MPa%以上であることが好ましく、500MPa%以上であることがより好ましく、700MPa%以上であることがさらに好ましい。
レジリエンスを求める引張試験は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
5.延伸プロピレン系樹脂シートの用途
本発明で製造される延伸プロピレン系樹脂シートは、延伸シートでありながら、配向性が低いので、例えば、偏光フィルムや位相差フィルムといった光学系フィルム全般や、寸法特性が求められる容器等に用いることができ、特に熱湯に触れる機会の多い飲料用容器に好適に用いることができる。
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[評価法]
1.X線回折によるスメクチック晶の割合の指標(XSI)及びα晶の割合の指標(XAI)
スメクチック晶やα晶の割合の指標を求めるX線回折測定は、以下の装置及び条件で行った。測定サンプルは、樹脂膜から20mm×20mmのサイズを切り出して使用した。以下の測定条件においてX線回折角と回折光強度を求めた。
<X線回折測定>
装置:リガク製SmartLab
線源:Cu-kα 50kV,40mA
測定範囲:2θ=5度~40度
検出間隔:2θ=0.1度
α晶に由来する回折プロファイルとは、散乱角(2θ)が10度~28度の範囲でのX線回折測定において観測される、14.2度付近、16.7度付近、18.5度付近および21.4度付近の4つのシャープな回折ピークからなるものである。スメクチック晶に由来する回折プロファイルとは、14.6度付近と21.2度付近の2つのブロードなピークからなるものである。また、非晶に由来する回折プロファイルとは18.5度付近の1つのブロードなピークである。回折プロファイルの大部分がα晶かスメクチック晶に由来するプロファイルであるかは、回折角が13度~15度の範囲に現れるピークがブロードであるか否かで判定し、このピークがブロードであるとき、回折プロファイルの大部分がスメクチック晶に由来するプロファイルとする。具体的に次のように判定する。X線回折プロファイルにおいて、回折角が13度~15度の範囲で最も回折強度が高いピークの強度をCとするとき、そのピークの、C×0.8のレベルにおけるピーク幅Dが1度以上である場合に、その回折プロファイルの大部分はスメクチック晶に由来するプロファイルであると判定する(特開2008-276162号公報参考)。X線回折プロファイルの全体面積中に占めるスメクチック晶の割合の指標は下記のようにして算出する。
<1>回折プロファイルから空気散乱に寄与する回折プロファイルを引く。
<2>プロファイルの大部分がα晶かスメクチック晶に由来するかを上記の方法で判定する。
<3>回折プロファイルの大部分がスメクチック晶に由来すると判定されたとき、下記式(1)によりスメクチック晶の割合の指標(XSI)を求める。
式(1):XSI=スメクチック晶に由来する回折の寄与が強い21度~22度の回折強度の平均値(Ism)/非晶に由来する回折の寄与が強い18.5度~19.5度の回折強度の平均値(Iamo
同様にして、X線回折プロファイルの全体面積中に占めるα晶の割合の指標は下記のようにして算出する。
<1>回折プロファイルから空気散乱に寄与する回折プロファイルを引く。
<2>プロファイルの大部分がα晶かスメクチック晶に由来するかを上記の方法で判定する。上記の方法において、X線回折プロファイルにおいて、回折角が13度~15度の範囲で最も回折強度が高いピークの強度をCとするとき、そのピークの、C×0.8のレベルにおけるピーク幅Dが1度未満である場合に、その回折プロファイルの大部分はα晶に由来するプロファイルであると判定する。
<3>回折プロファイルの大部分がα晶に由来すると判定されたとき、下記式(2)によりα晶の割合の指標(XAI)を求める。
式(2):XAI=α晶に由来する回折の寄与の強い13.9度~14.2度の回折強度の平均値(Ial)/非晶に由来する回折の寄与が強い18.5度~19.5度の回折強度の平均値(Iamo
2.X線回折を用いた配向測定
延伸プロピレン系樹脂シートの配向測定のためのX線回折測定は、以下の装置及び条件で行った。測定サンプルは、延伸プロピレン系樹脂シートから2mm×40mmのサイズを切り出して使用した。
<X線回折測定>
装置:放射光施設(SPring-8)のBL03XU
波長:0.1nm
ビーム径:30μm×30μm
測定温度:室温(23℃)
なお、この測定は、SPring-8の課題番号2017A7218、2017B7269、2018A7219、2018B7269、2019A7217にて行った。
データの解析は市販のソフトウェアIgor pro version 8.03(WaveMetrics社製)を用いて行った。ビーム中心よりポリプロピレンα晶の(110)面に該当する回折光強度の方位角依存性を求め、延伸垂直方向に現れたピークの方位角に対する強度分布を得た。その後、得られたピークの半値幅を求め、半値幅に該当する方位角の量を配向の指標とした。
3.レジリエンスの算出
延伸プロピレン系樹脂シートのレジリエンスを算出するための引張試験は、以下の装置及び条件で行った。測定サンプルは、プロピレン系樹脂シートをJIS K7162-5Aに記載の試料形状に打ち抜いて使用した。
引張試験における応力-ひずみ曲線においてポリプロピレン系材料は延伸に伴い応力が増加し、その後降伏点に達する。降伏点を経るとひずみ増加に伴い応力は減少するが、特定のひずみにおいて応力に変化が無くなり、それ以上応力は減少せず一定の値を保つプラトー部と呼ばれる部分が現れる。ここで延伸開始点よりプラトー部に移るまでの応力-ひずみ曲線の面積値をレジリエンスとして算出した。
<引張試験>
装置:島津社製引張圧縮試験機AG-X plus
延伸速度:10mm/分
延伸倍率:150%
延伸温度:25℃
試験室:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室
チャック間距離:50mm
標線間距離:25mm
4.球晶の有無の評価
樹脂膜における球晶の有無については樹脂膜を光学顕微鏡で直接観察する方法により判断した。観察用樹脂膜をスライドガラスに貼り付け、オリンパス社製光学顕微鏡(BX31)を用いてクロスニコル下、20倍の対物レンズを用いて試料を観察した。10μm以上の球晶が存在している樹脂膜を球晶あり、10μm以上の球晶の存在が確認できなかった樹脂膜を球晶なしとした。
5.樹脂膜又は樹脂シートの厚み
樹脂膜又は樹脂シートの厚みは、直進式デジマチックミクロンマイクロメーター(株式会社ミツトヨ製OMV-25MX)を用いて測定した。
(実施例1)
プロピレン系樹脂Aとしてホモポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、グレード名:FY4)1gを用いて、以下の条件にて各工程を順次実施した。
(1)工程1
前記ホモポリプロピレンを、プレス装置(東洋精機(株)製プレス装置mini TESTPRESS-10)を用いて、加圧せずに、温度210℃で3分間加熱して、溶融させた。
溶融させたホモポリプロピレンを、前記プレス装置を用いて、10MPaの圧力で加圧しながら、温度210℃で1分間加熱して、溶融状態のプロピレン系樹脂膜とした。
溶融状態のプロピレン系樹脂膜を氷水中にて1分間冷却することでスメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aを得た。プロピレン系樹脂膜aの厚みは0.100mmであった。
スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aが形成されていることは、前記X線回折測定により確認した。表2にスメクチック晶の割合の指標を示す。
スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aでは球晶は確認されなかった。
(2)工程2
工程1にて得られたプロピレン系樹脂膜aを、加熱温度110℃に設定した1℃単位で温度コントロール可能な温風循環式熱乾燥機(ISUZU製、Model.2-2023)内に、15分間静置することにより、α晶を含むプロピレン系樹脂膜bを得た。プロピレン系樹脂膜bの厚みは0.100mmであった。
α晶を含むプロピレン系樹脂膜bが形成されていることは、前記X線回折測定により確認した。表2にα晶の割合の指標を示す。
α晶を含むプロピレン系樹脂膜bでは球晶は確認されなかった。
(3)工程3
工程2にて得られたプロピレン系樹脂膜bを、室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24時間以上放置することにより冷却し、プロピレン系樹脂膜bの状態を調節した。調節後のプロピレン系樹脂膜bを、JIS K7162-5Aに記載の試料形状に打ち抜き、試験片を作製した。
試験片を、引張試験機を用いて下記条件にて延伸することにより、延伸プロピレン系樹脂シートを得た。得られた延伸プロピレン系樹脂シートの厚みは0.050mmであった。
<延伸条件>
装置:島津社製引張圧縮試験機AG-X plus
延伸速度:10mm/分
延伸倍率:150%
延伸温度:25℃
試験室:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室
実施例1で得られた延伸プロピレン系樹脂シートでも球晶は確認されなかった。
延伸プロピレン系樹脂シートの配向測定とレジリエンス測定結果を表2に示す。
また、図2に、実施例1における(1)工程1で得られたプロピレン系樹脂膜a、(2)工程2で得られたプロピレン系樹脂膜b、及び(3)工程3で得られた延伸プロピレン系樹脂シートのX線回折結果を示す。
図2(3)にも、実施例1の延伸プロピレン系樹脂シートは配向性が低いことが示されている。
(実施例2)
工程2における加熱温度を120℃に設定した以外は、実施例1と同様にして、延伸プロピレン系樹脂シートを得た。得られた延伸プロピレン系樹脂シートの厚みは0.072mmであった。
実施例1と同様にして、上記評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例3)
工程2における加熱温度を130℃に設定した以外は、実施例1と同様にして、延伸プロピレン系樹脂シートを得た。得られた延伸プロピレン系樹脂シートの厚みは0.054mmであった。
実施例1と同様にして、上記評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例4)
工程2における加熱温度を140℃に設定した以外は、実施例1と同様にして、延伸プロピレン系樹脂シートを得た。得られた延伸プロピレン系樹脂シートの厚みは0.059mmであった。
実施例1と同様にして、上記評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例1)
工程2を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較延伸プロピレン系樹脂シートを得た。得られた比較延伸プロピレン系樹脂シートの厚みは0.051mmであった。
スメクチック晶を含む比較延伸プロピレン系樹脂シートが形成されていることは、前記X線回折測定により確認した。
比較延伸プロピレン系樹脂シートのレジリエンス測定結果を表2に示す。比較例1の比較延伸プロピレン系樹脂シートは、α晶を含んでいなかったため、実施例と同じ配向測定法で配向度を求めることができず、表2では半値幅を「-」で示した。
また、図3に、比較例1における(1)工程1で得られたプロピレン系樹脂膜、(2)当該樹脂膜を延伸して得られた比較延伸プロピレン系樹脂シートのX線回折結果を示す。
図3(2)に、比較例1のスメクチック晶を含む比較延伸プロピレン系樹脂シートは、配向性が高いことが示されている。
(比較例2)
比較例1と同様にして、工程2を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較延伸プロピレン系樹脂シートを得た。得られた比較延伸プロピレン系樹脂シートを、加熱温度120℃に設定した前記温風循環式熱乾燥機内に、60分間静置することにより、α晶を含む比較延伸プロピレン系樹脂シートを得た。得られた比較延伸プロピレン系樹脂シートの厚みは0.051mmであった。
α晶を含む比較延伸プロピレン系樹脂シートが形成されていることは、前記X線回折測定により確認した。なお、比較延伸プロピレン系樹脂シートのα晶の割合の指標は2.99であった。
比較延伸プロピレン系樹脂シートの配向測定とレジリエンス測定結果を表2に示す。
また、図4に、比較例2における(1)工程1で得られたプロピレン系樹脂膜、(2)当該樹脂膜を延伸して得られた比較延伸プロピレン系樹脂シート、及び(3)当該延伸プロピレン系樹脂シートを加熱して得られた比較延伸プロピレン系樹脂シートのX線回折結果を示す。
図4(2)にも、比較例2のα晶を含む比較延伸プロピレン系樹脂シートは、配向性が高いことが示されている。
(比較例3)
実施例1の工程1において溶融状態のプロピレン系樹脂膜を作製した後、別途用意した室温流水を通ずることで冷却する冷却専用プレス機にて10MPa、3分間冷却する事でα晶を含む比較プロピレン系樹脂膜を得た。
α晶を含む比較プロピレン系樹脂膜が形成されていることは、前記X線回折測定により確認した。表2にα晶の割合の指標を示す。更に比較プロピレン系樹脂膜では球晶も確認された。
α晶を含む比較プロピレン系樹脂膜を用い、工程2を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてα晶を含む比較延伸プロピレン系樹脂シートを得た。
得られた比較延伸プロピレン系樹脂シートの厚みは0.049mmであった。α晶を含む比較延伸プロピレン系樹脂シートが形成されていることは、前記X線回折測定により確認した。
比較延伸プロピレン系樹脂シートの配向測定とレジリエンス測定結果を表2に示す。
また、図5に、比較例3における(1)比較プロピレン系樹脂膜、(2)当該比較プロピレン系樹脂膜を延伸して得られた比較延伸プロピレン系樹脂シートのX線回折結果を示す。
図5(2)にも、比較例3のα晶を含む比較延伸プロピレン系樹脂シートは、配向性が高いことが示されている。
(結果のまとめ)
実施例1~4により、本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法によれば、配向性が低く、レジリエンスが高い延伸プロピレン系樹脂シートを製造することができることが明らかにされた。実施例の中では、α晶を含むポリプロピレン系樹脂膜bを作製する際の加熱温度が高いほど、非晶に比べて結晶の割合が高くなり、XAIの指標も大きくなり、配向性が低く、レジリエンスは高くなる傾向がみられた。
それに対して、スメクチック晶のプロピレン系樹脂膜を低温延伸した、比較例1のスメクチック晶を含む延伸プロピレン系樹脂シートは、図3(2)で示されるように配向性が高く、レジリエンスも劣っていた。
また、スメクチック晶のプロピレン系樹脂膜を低温延伸した延伸プロピレン系樹脂シートを更に加熱した、比較例2のα晶を含む延伸プロピレン系樹脂シートは、配向性が高く、レジリエンスも劣っていた。
また、通常の球晶を含むα晶のプロピレン樹脂膜を低温延伸した、比較例3のα晶を含む延伸プロピレン系樹脂シートは、配向性が高く、レジリエンスも低かった。
本発明によれば、配向性が低く、レジリエンスが高い延伸プロピレン系樹脂シートを製造することができる。本発明のプロピレン系樹脂シートの製造方法は、前記のような特性を活かせる分野への応用に有用であり、産業上、利用可能性が高いものである。

Claims (7)

  1. 以下の工程1~3を順次経ることを特徴とする、プロピレン系樹脂シートの製造方法。
    工程1:プロピレン系樹脂Aを用いて、スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aを得る工程
    工程2:前記プロピレン系樹脂膜aを、110℃以上140℃以下の温度で加熱することにより、α晶を含むプロピレン系樹脂膜bを得る工程
    工程3:前記プロピレン系樹脂膜bを20℃以上30℃以下の範囲に冷却後、20℃以上30℃以下の温度で延伸することにより、プロピレン系樹脂シートを得る工程
  2. 前記工程1が、プロピレン系樹脂Aを用いて、X線回折においてスメクチック晶の回折パターンを示し、且つ、下記式(1)により求められるスメクチック晶の割合の指標(XSI)が1.300以上であるプロピレン系樹脂膜aを得る工程であることを特徴とする、請求項1に記載のプロピレン系樹脂シートの製造方法。
    式(1)
    XSI=スメクチック晶に由来する回折の寄与が強い21度~22度の回折強度の平均値(Ism)/非晶に由来する回折の寄与が強い18.5度~19.5度の回折強度の平均値(Iamo
  3. 前記工程1が、プロピレン系樹脂Aを用いて、10μm以上の球晶を含まず、スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aを得る工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂シートの製造方法。
  4. 前記工程2が、前記プロピレン系樹脂膜aを、110℃以上140℃以下の温度で加熱することにより、X線回折においてα晶の回折パターンを示し、且つ、下記式(2)により求められるα晶の割合の指標(XAI)が1.500以上であるプロピレン系樹脂膜bを得る工程であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂シートの製造方法。
    式(2)
    XAI=α晶に由来する回折の寄与の強い13.9度~14.2度の回折強度の平均値(Ial)/非晶に由来する回折の寄与が強い18.5度~19.5度の回折強度の平均値(Iamo
  5. 前記工程1が、プロピレン系樹脂Aを熱プレスした後、急冷することにより、スメクチック晶を含むプロピレン系樹脂膜aを得る工程であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂シートの製造方法。
  6. 前記プロピレン系樹脂Aが、プロピレン単独重合体またはエチレン含量10質量%以下のエチレンプロピレン共重合体であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂シートの製造方法。
  7. 前記プロピレン系樹脂シートが、厚み1mm以下のシートであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂シートの製造方法。
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