JP7431272B2 - 注意転導および/または妨害の存在下での認知の増強 - Google Patents

注意転導および/または妨害の存在下での認知の増強 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、参照により各々その全体が組み入れられる、2010年11月11日に出願された米国仮特許出願第61/412,738号、および、2010年11月12日に出願されたカナダ特許出願第2720892号の優先権の恩典を主張するものである。
序論
認知低下は、正常な加齢のほぼ普遍的な局面である。ある欠損は、例えば、聴覚および視覚データの処理、困難な(雑音のある、時間が制限された、注意を求められる)条件を伴う環境にある間の運動機能の統御に関するものである。
若年者の脳と老年者の脳とを区別する一つの欠損は、妨害する刺激および注意をそらす刺激の存在下で認知能力を維持することができることである。別の欠損は、同時複数課題を行うことができること、および注意転導(distraction)存在下で課題の実行に集中することができることを含み得る。
したがって、認知を増強するための方法およびツールが求められている。本開示は、高齢者、認知障害を患っている個人、または認知能力の増強を望む健康な個人の認知能力を改善するための方法およびツールを提供する。
概要
本開示の一局面は、例えば、認知機能における干渉を処理する個人の能力を改善することなどにより、個人の認知を増強するための方法およびツールに関する。訓練方法は、行われるべき課題を個人に提示する段階、干渉を個人に提示する段階、および個人から入力を受け取る段階を含み得る。干渉が注意転導である場合、個人はその干渉を無視すべきである。干渉が妨害刺激である場合、個人は2次課題として妨害刺激に応答するよう指示され、同時複数課題を行っているといわれる。この2次課題に付属して、個人からさらに入力が受け取られ得る。本方法は、様々な提示する段階および入力の受取りの反復を含む。本方法は、分析を実行する段階、および/または個人へのフィードバックを生成する段階をさらに含むことができる。分析は、各種の干渉ありまたはなしでの成績の比較を含むことができ、ある態様では、課題の難しさがこの比較の関数として変更され得る。本発明の別の局面は、増加したレベルの干渉を伴う課題の提示を提供する。また、本明細書では診断方法も提供され、本明細書で開示される訓練方法から独立して、またはこれと組み合わせて個人の認知能力を評価するのに使用される。診断方法は、基準課題の成績と、干渉と一緒に提示されるときの基準課題の成績との差異を測定する段階と、差異を分析する段階と、診断決定を下すために、または訓練計画を調整するために情報のフィードバックを提供する段階とを含むことができる。
一態様では、本開示は、入力装置を介した個人からの応答を要求する少なくとも一つの視覚課題を表示部を使用して該個人に提示する段階;個人の注意を視覚課題からそらす第1の課題と共に、少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;コンピュータ装置において、少なくとも一つの視覚課題への個人の応答を獲得する段階;および個人の認知技能を判定するために、コンピュータ装置において、少なくとも一つの視覚課題を干渉なしおよび干渉ありで行うときの個人の成績の差を分析する段階を含む、表示部と入力装置とを有するコンピュータ装置を使用して実行される、個人の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法を提供する。
関連した態様の例では、前記コンピュータにより実行される方法は、少なくとも一つの視覚課題を提示する段階と、少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階と、コンピュータ装置において個人の応答を獲得する段階とを、反復様式でさらに含むことができる。
さらなる例では、分析する段階は、個人が各視覚課題に正しく応答したかどうか判定することを含むことができる。別の例では、前記コンピュータにより実行される方法は、分析する段階に基づいて少なくとも一つの視覚課題の難しさを変更する段階をさらに含むことができる。関連した例では、少なくとも一つの視覚課題の難しさを変更する段階は、少なくとも一つの視覚課題を変更するために、少なくとも一つの前景オブジェクトもしくは後景オブジェクトまたは前景オブジェクトと後景オブジェクトの両方の視覚的強調を変更することの一つまたは複数を含むことができる。関連した例では、視覚的強調を変更することは、一つまたは複数の視覚的強調技術に従って視覚的強調の程度を調整することを含むことができる。
関連した態様の例では、一つまたは複数の視覚的強調技術の各々は対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することは場面の視覚的強調を増加させることを含み、場面の視覚的強調を増加させることは、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を増加させることを含む。関連した例では、一つまたは複数の視覚的強調技術の各々は対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することは場面の視覚的強調を増加させることを含み、場面の視覚的強調を増加させることは、第1の視覚的強調技術に従って後景の属性を減少させることを含む。関連した例では、一つまたは複数の視覚的強調技術は対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することは場面の視覚的強調を増加させることを含み、場面の視覚的強調を増加させることは、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を増加させること、および第1の視覚的強調技術に従って後景の属性を減少させることを含む。別の例では、一つまたは複数の視覚的強調技術の各々は対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することは場面の視覚的強調を増加させることを含み、場面の視覚的強調を増加させることは、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を増加させること、および第2の視覚的強調技術に従って後景の属性を減少させることを含む。別の例では、一つまたは複数の視覚的強調技術の各々は対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することは場面の視覚的強調を減少させることを含み、場面の視覚的強調を減少させることは、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を減少させることを含む。別の例では、一つまたは複数の視覚的強調技術の各々は対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することは場面の視覚的強調を減少させることを含み、場面の視覚的強調を減少させることは、第1の視覚的強調技術に従って後景の属性を減少させることを含む。別の例では、一つまたは複数の視覚的強調技術の各々は対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することは場面の視覚的強調を減少させることを含み、場面の視覚的強調を減少させることは、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を減少させること、および第1の視覚的強調技術に従って後景の属性を増加させることを含む。別の例では、一つまたは複数の視覚的強調技術の各々は対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することは場面の視覚的強調を減少させることを含み、場面の視覚的強調を減少させることは、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を減少させること、および第2の視覚的強調技術に従って後景の属性を増加させることを含む。
ある態様では、視覚課題は、個人の注意、記憶、運動性、反応、実行機能、意思決定、問題解決、言語処理、および理解の各技能からなる、およびこれらに関連した群より選択される。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉を提示することは、複数の干渉を提示することを含む。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの視覚課題の一部分のみのあいだ提示される。ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの視覚課題の全部分のあいだ提示される。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの視覚課題と同じ認知領域からのものである。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの視覚課題と異なる認知領域からのものである。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、ユーザ応答を要求しない注意転導である。ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、ユーザ応答を要求する妨害である。
ある態様では、コンピュータ装置は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータタブレット装置、スマートフォン装置、およびビデオゲーム装置からなる群より選択される。ある態様では、コンピュータ入力装置は、マウス部、スタイラスコンピュータ、キーボード部、およびタッチスクリーンディスプレイからなる群より選択される。
一態様では、本開示は、入力装置を介した個人からの応答を要求する少なくとも一つの第1の課題を該個人に提示する段階;第1の課題と共に少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;コンピュータ入力部で、少なくとも一つの第1の課題への個人の応答を獲得する段階;個人の認知機能を判定するために、コンピュータ装置において、少なくとも前記第1の課題を干渉なしおよび干渉ありで行うときの個人の成績の差を分析する段階;ならびに個人の判定された認知機能を示す、コンピュータ装置からの出力を提供する段階を含む、入力部を有するコンピュータ装置を使用して実行される、個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法を提供する。
ある態様では、分析する段階は、個人と関連付けられる疾病または病気を診断することを含む。
ある態様では、第1の課題は視覚課題である。ある態様では、第1の課題は、個人の注意、記憶、運動性、反応、実行機能、意思決定、問題解決、言語処理、および理解の各技能からなる、およびこれらに関連した群より選択される。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉を提示することは、複数の干渉を提示することを含む。ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの第1の課題の一部分のみのあいだ提示される。ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの第1の課題の全部分のあいだ提示される。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの第1の課題と同じ認知領域からのものである。ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの第1の課題と異なる認知領域からのものである。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、ユーザ応答を要求しない注意転導である。ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、ユーザ応答を要求する妨害である。
ある態様では、コンピュータ装置は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータタブレット装置、スマートフォン装置、およびビデオゲーム装置からなる群より選択される。ある態様では、コンピュータ入力装置は、マウス部、スタイラスコンピュータ、キーボード部、およびタッチスクリーンディスプレイからなる群より選択される。
一態様では、本開示は、入力装置を介した個人からの応答を要求する、難度を有する少なくとも一つの第1の課題を該個人に提示する段階;第1の課題と共に少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;コンピュータ入力装置において、少なくとも一つの第1の課題への個人の応答を獲得する段階;コンピュータ装置において、提示された各第1の課題への応答に関する個人の成績を分析する段階;反復様式で行う、少なくとも一つの第1の課題、少なくとも一つの第1の干渉を提示し、コンピュータ装置において、個人の応答を獲得する段階;分析する段階で判定された個人の成績に基づいて少なくとも一つの第1の課題の難度を調整する段階;および個人の認知機能を示す、コンピュータ装置からの出力を提供する段階を含む、入力装置を有するコンピュータ装置を使用して実行される、課題と併せて干渉を処理するように個人を訓練することによって個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法を提供する。
そのような方法のある態様では、分析する段階は、個人の成績を、行われた各課題および関連付けられた干渉に対する個人の決定された閾値成績レベルと比較することを含む。
ある態様では、難度を調整する段階は、干渉なしで課題を行うときと、干渉ありで課題を行うときとの個人の成績に依存する。
ある態様では、個人の判定された成績が規定の閾値レベルを下回るとき、課題の難しさは新しい干渉の提示によって調整される。ある態様では、新しい干渉は既存の干渉に追加されるものである。
ある態様では、分析する段階は、個人と関連付けられる疾病または病気を診断することを含む。
ある態様では、第1の課題は視覚課題である。ある態様では、第1の課題は、個人の注意、記憶、運動性、反応、実行機能、意思決定、問題解決、言語処理、および理解の各技能からなる、およびこれらに関連した群より選択される。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉を提示することは、複数の干渉を提示することを含む。ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの第1の課題の一部分のみのあいだ提示される。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの第1の課題の全部分のあいだ提示され、そのような方法の少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの第1の課題と同じ認知領域からのものである。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、少なくとも一つの第1の課題と異なる認知領域からのものである。
ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、ユーザ応答を要求しない注意転導である。ある態様では、少なくとも一つの第1の干渉は、ユーザ応答を要求する妨害である。ある態様では、コンピュータ装置は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータタブレット装置、スマートフォン装置、およびビデオゲーム装置からなる群より選択される。ある態様では、コンピュータ入力装置は、マウス部、スタイラスコンピュータ、キーボード部、およびタッチスクリーンディスプレイからなる群より選択される。
一態様では、本開示は、入力装置を介した個人からの応答を要求する少なくとも一つの視覚課題を表示部を使用して該個人に提示する段階;第1の課題内で、個人の注意を視覚課題からそらす少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;コンピュータ装置において、少なくとも一つの視覚課題への個人の応答を獲得する段階;ならびに個人の認知技能を判定するために、コンピュータ装置において、少なくとも一つの視覚課題を干渉なしおよび干渉ありで行うときの個人の成績の差を分析する段階を行うために、プログラム命令が、プロセッサにより実行可能である、訓練の課題を提示する、および個人から応答を受け取るためにコンピュータ装置を利用する個人の認知を増強するためのプログラム命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
一態様では、本開示は、入力装置を介した個人からの応答を要求する少なくとも一つの第1の課題を該個人に提示する段階;第1の課題と共に少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;コンピュータ入力部で、少なくとも一つの第1の課題への個人の応答を獲得する段階;個人の認知機能を判定するために、コンピュータ装置において、少なくとも一つの第1の課題を干渉なしおよび干渉ありで行うときの個人の成績の差を分析する段階;ならびに個人の判定された認知機能を示す、コンピュータ装置からの出力を提供する段階を行うために、プログラム命令が、プロセッサにより実行可能である、訓練の課題を提示するおよび個人から応答を受け取るためにコンピュータ装置を利用する個人の認知を増強するためのプログラム命令を記憶したコンピュータ可読媒体を提供する。
ある態様では、本開示は、入力装置を介した個人からの応答を要求する、難度を有する少なくとも一つの第1の課題を該個人に提示する段階;第1の課題と共に少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;コンピュータ入力部において、少なくとも一つの第1の課題への個人の応答を獲得する段階;コンピュータ入力装置において、提示された各第1の課題への応答に関する個人の成績を分析する段階;反復様式で行う、少なくとも一つの第1の課題、少なくとも一つの第1の干渉を提示し、コンピュータ装置において、個人の応答を獲得する段階;分析する段階で判定された個人の成績に基づいて少なくとも一つの第1の課題の難度を調整する段階;および個人の認知機能を示す、コンピュータ装置からの出力を提供する段階を行うために、プログラム命令が、プロセッサにより実行可能である、訓練の課題を提示するおよび個人から応答を受け取るためにコンピュータ装置を利用する個人の認知を増強するためのプログラム命令を記憶したコンピュータ可読媒体を提供する。
一態様では、本開示は、課題を個人に提示する段階、注意転導刺激(distractor)または妨害刺激(interruptor)のいずれかである干渉を個人に提示する段階;課題に応答するよう指示されている個人から第1の入力を受け取る段階;干渉が妨害刺激である場合に、妨害刺激に応答するよう指示されている個人から第2の入力を受け取る段階;ならびに第1の試験において前述の提示する段階および受け取る段階を連続して繰り返す段階;ならびに、(i)第1の試験での正しい入力の数が閾値に達した場合には、第2の試験は第1の試験よりも高い難度を有し、(ii)第1の試験での正しい入力の数が閾値を下回る場合には、第2の試験が上記第1の試験よりも低い難度を有する、提示する段階および受け取る段階の第2の試験を開始する段階;ならびに、(i)干渉の存在下での個人の成績の分析と、(ii)干渉の非存在下での個人の成績の分析とを含む出力を生成する段階を含み、個人の認知を増強する、個人の認知を増強するための訓練の方法を提供する。
ある態様では、干渉は、どんな試験でも干渉として注意転導刺激のみを含み、妨害刺激は含まない。ある態様では、干渉は、どんな試験でも干渉として妨害刺激のみを含み、注意転導刺激は含まない。
ある態様では、干渉の存在下での成績の分析は、注意転導刺激の存在下での成績の分析と、妨害刺激の存在下での成績の分析とを含む。
ある態様では、方法は、最初の提示する段階の前の評価を含み、そのような評価は、干渉の非存在下で個人に課題を提示することを含む。
ある態様では、第1の試験は、干渉の非存在下での課題への約80%の正答率に対応する難度での試験である。
ある態様では、干渉は一つの妨害刺激である。
ある態様では、課題を提示する段階と干渉を提示する段階とが同時に行われる。
ある態様では、干渉を提示する段階は試験全体を通して同じ頻度で行われる。
ある態様では、方法は、試験中の個人のリアルタイムの成績を示す出力としてフィードバックを生成することを含む。
ある態様では、課題および妨害刺激は視覚運動課題である。ある態様では、課題は視覚運動課題であり、妨害刺激は聴覚課題である。ある態様では、課題および妨害刺激は聴覚課題である。ある態様では、課題は標的識別課題または追跡課題である。
ある態様では、妨害刺激は標的識別課題または追跡課題である。ある態様では、追跡課題は曲がりくねった経路上に移動する車両を提示することを含み、個人の入力は経路上で車両を操縦することを含む。ある態様では、移動する車両の難度は車両の速度に基づくものである。
ある態様では、標的識別課題は複数の視覚刺激を順次に提示することを含み、個人の入力は標的刺激が画面上に現れるときにボタンを押すことを含む。ある態様では、標的刺激は特定の色の形のものとすることができる。
一態様では、本開示は、プログラム命令を含むコンピュータでアクセス可能な記憶媒体を提供し、この命令の実行により、装置は本明細書で開示される方法を実行する。
一態様では、本開示は、課題を個人に提示する段階、注意転導刺激または妨害刺激のいずれかである干渉を個人に提示する段階;課題に応答するよう指示されている個人から第1の入力を受け取る段階;干渉が妨害刺激である場合に、妨害刺激に応答するよう指示されている個人から第2の入力を受け取る段階;ならびに第1の試験において前述の提示する段階および受け取る段階を連続的に繰り返す段階;ならびに、(i)第1の試験での正しい入力の数が閾値に達した場合には、第2の試験が第1の試験よりも高い難度を有し、(ii)第1の試験での正しい入力の数が閾値を下回る場合には、第2の試験が第1の試験よりも低い難度を有する、提示する段階および受け取る段階の第2の試験を開始する段階;ならびに、(i)干渉の存在下での個人の成績の分析と、(ii)干渉の非存在下での個人の成績の分析とを含む出力を生成する段階を行うために、コンピュータシステムを使用して命令を実行することを含む、個人の認知を増強する、個人の認知を増強するための訓練の方法を提供する。
[本発明1001]
入力装置を介した個人からの応答を要求する少なくとも一つの視覚課題を表示部を使用して該個人に提示する段階;
前記第1の課題と共に、前記個人の注意を前記視覚課題からそらす少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;
コンピュータ装置において、前記少なくとも一つの視覚課題への前記個人の応答を獲得する段階;および
個人の認知技能を判定するために、コンピュータ装置において、前記少なくとも一つの視覚課題を干渉なしおよび干渉ありで行うときの前記個人の成績の差を分析する段階
を含む、
表示部と入力装置とを有するコンピュータ装置を使用して実行される、個人の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1002]
少なくとも一つの視覚課題を提示する段階、少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階、およびコンピュータ装置において、個人の応答を獲得する段階を、反復様式でさらに含む、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1003]
分析する段階が、個人が各視覚課題に正しく応答したかどうか判定することを含む、本発明1002の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1004]
前記分析する段階に基づいて少なくとも一つの視覚課題の難しさを変更する段階をさらに含む、本発明1003の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1005]
少なくとも一つの視覚課題の難しさを変更する段階が、
前記少なくとも一つの視覚課題を変更するために、少なくとも一つの前景オブジェクトおよび/または後景オブジェクトの視覚的強調を変更すること
の一つまたは複数を含む、本発明1004の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1006]
視覚的強調を変更することが、一つまたは複数の視覚的強調技術に従って視覚的強調の程度を調整することを含む、本発明1005の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1007]
一つまたは複数の視覚的強調技術の各々が対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することが場面の視覚的強調を増加させることを含み、および場面の視覚的強調を増加させることが、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を増加させることを含む、本発明1006の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1008]
一つまたは複数の視覚的強調技術の各々が対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することが場面の視覚的強調を増加させることを含み、場面の視覚的強調を増加させることが、第1の視覚的強調技術に従って後景の属性を減少させることを含む、本発明1007の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1009]
一つまたは複数の視覚的強調技術の各々が対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することが場面の視覚的強調を増加させることを含み、場面の視覚的強調を増加させることが、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を増加させること、および第1の視覚的強調技術に従って後景の属性を減少させることを含む、本発明1008の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1010]
一つまたは複数の視覚的強調技術の各々が対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することが場面の視覚的強調を増加させることを含み、場面の視覚的強調を増加させることが、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を増加させること、および第2の視覚的強調技術に従って後景の属性を減少させることを含む、本発明1009の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1011]
一つまたは複数の視覚的強調技術の各々が対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することが場面の視覚的強調を減少させることを含み、場面の視覚的強調を減少させることが、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を減少させることを含む、本発明1010の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1012]
一つまたは複数の視覚的強調技術の各々が対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することが場面の視覚的強調を減少させることを含み、場面の視覚的強調を減少させることが、第1の視覚的強調技術に従って後景の属性を減少させることを含む、本発明1011の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1013]
一つまたは複数の視覚的強調技術の各々が対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することが場面の視覚的強調を減少させることを含み、場面の視覚的強調を減少させることが、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を減少させること、および第1の視覚的強調技術に従って後景の属性を増加させることを含む、本発明1012の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1014]
一つまたは複数の視覚的強調技術の各々が対応する属性を指定し、視覚的強調の程度を調整することが場面の視覚的強調を減少させることを含み、場面の視覚的強調を減少させることが、第1の視覚的強調技術に従って少なくとも一つの前景オブジェクトの属性を減少させること、および第2の視覚的強調技術に従って後景の属性を増加させることを含む、本発明1013の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1015]
視覚課題が、個人の注意、記憶、運動性、反応、実行機能、意思決定、問題解決、言語処理、および理解の各技能からなる、およびこれらに関連する群より選択される、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1016]
少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階が複数の干渉を提示することを含む、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1017]
少なくとも一つの第1の干渉が少なくとも一つの視覚課題の一部分のみのあいだ提示される、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1018]
少なくとも一つの第1の干渉が少なくとも一つの視覚課題の全部分のあいだ提示される、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1019]
少なくとも一つの第1の干渉が、少なくとも一つの視覚課題と同じ認知領域からのものである、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1020]
少なくとも一つの第1の干渉が、少なくとも一つの視覚課題と異なる認知領域からのものである、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1021]
少なくとも一つの第1の干渉が、ユーザ応答を要求しない注意転導(distraction)である、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1022]
少なくとも一つの第1の干渉が、ユーザ応答を要求する妨害である、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1023]
コンピュータ装置が、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータタブレット装置、スマートフォン装置、およびビデオゲーム装置からなる群より選択される、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1024]
コンピュータ入力装置が、マウス部、スタイラスコンピュータ、キーボード部、およびタッチスクリーンディスプレイからなる群より選択される、本発明1001の認知技能を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1025]
入力装置を介した個人からの応答を要求する少なくとも一つの第1の課題を該個人に提示する段階;
前記第1の課題と共に少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;
コンピュータ入力部で、前記少なくとも一つの第1の課題への前記個人の応答を獲得する段階;
個人の認知機能を判定するために、コンピュータ装置において、少なくとも前記第1の課題を干渉なしおよび干渉ありで行うときの前記個人の成績の差を分析する段階;および
前記個人の判定された認知機能を示す、コンピュータ装置からの出力を提供する段階
を含む、
入力部を有するコンピュータ装置を使用して実行される、個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1026]
分析する段階が、個人と関連付けられる疾病または病気を診断することを含む、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1027]
第1の課題が視覚課題である、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1028]
第1の課題が、個人の注意、記憶、運動性、反応、実行機能、意思決定、問題解決、言語処理、および理解の各技能からなる、およびこれらに関連した群より選択される、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1029]
少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階が複数の干渉を提示することを含む、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1030]
少なくとも一つの第1の干渉が、少なくとも一つの第1の課題の一部分のみのあいだ提示される、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1031]
少なくとも一つの第1の干渉が、少なくとも一つの第1の課題の全部分のあいだ提示される、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1032]
少なくとも一つの第1の干渉が、少なくとも一つの第1の課題と同じ認知領域からのものである、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1033]
少なくとも一つの第1の干渉が、少なくとも一つの第1の課題と異なる認知領域からのものである、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1034]
少なくとも一つの第1の干渉が、ユーザ応答を要求しない注意転導である、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1035]
少なくとも一つの第1の干渉が、ユーザ応答を要求する妨害である、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1036]
コンピュータ装置が、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータタブレット装置、スマートフォン装置、およびビデオゲーム装置からなる群より選択される、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1037]
コンピュータ入力装置が、マウス部、スタイラスコンピュータ、キーボード部、およびタッチスクリーンディスプレイからなる群より選択される、本発明1025の個人の認知機能を診断するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1038]
入力装置を介した個人からの応答を要求する、難度を有する少なくとも一つの第1の課題を該個人に提示する段階;
前記第1の課題と共に少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;
コンピュータ入力装置において、前記少なくとも一つの第1の課題への前記個人の応答を獲得する段階;
コンピュータ装置において、提示された各第1の課題への応答に関する前記個人の成績を分析する段階;
反復様式で行う、前記少なくとも一つの第1の課題、前記少なくとも一つの第1の干渉を提示し、コンピュータ装置において、前記個人の応答を獲得する段階;
前記分析する段階で判定された前記個人の成績に基づいて前記少なくとも一つの第1の課題の難しさを調整する段階;および
前記個人の認知機能を示す、コンピュータ装置からの出力を提供する段階
を含む、
入力装置を有するコンピュータ装置を使用して実行される、課題と併せて干渉を処理するように個人を訓練することによって個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1039]
分析する段階が、個人の成績を、行われた各課題および関連付けられた干渉に対する個人の決定された閾値成績レベルと比較することを含む、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1040]
難しさを調整する段階が、干渉なしで課題を行うときと、干渉ありで課題を行うときとの個人の成績に依存する、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1041]
個人の判定された成績が規定の閾値レベルを下回るときに、課題の難しさが新しい干渉の提示によって調整される、本発明1040の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1042]
新しい干渉が既存の干渉に追加されるものである、本発明1041の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1043]
分析する段階が、個人と関連付けられる疾病または病気を診断することを含む、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1044]
第1の課題が視覚課題である、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1045]
第1の課題が、個人の注意、記憶、運動性、反応、実行機能、意思決定、問題解決、言語処理、および理解の各技能からなる、およびこれらに関連した群より選択される、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1046]
少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階が複数の干渉を提示することを含む、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1047]
少なくとも一つの第1の干渉が、少なくとも一つの第1の課題の一部分のみのあいだ提示される、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1048]
少なくとも一つの第1の干渉が、少なくとも一つの第1の課題の全部分のあいだ提示される、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1049]
少なくとも一つの第1の干渉が、少なくとも一つの第1の課題と同じ認知領域からのものである、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1050]
少なくとも一つの第1の干渉が、少なくとも一つの第1の課題と異なる認知領域からのものである、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1051]
少なくとも一つの第1の干渉が、ユーザ応答を要求しない注意転導である、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1052]
少なくとも一つの第1の干渉が、ユーザ応答を要求する妨害である、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1053]
コンピュータ装置が、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータタブレット装置、スマートフォン装置、およびビデオゲーム装置からなる群より選択される、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1054]
コンピュータ入力装置が、マウス部、スタイラスコンピュータ、キーボード部、およびタッチスクリーンディスプレイからなる群より選択される、本発明1038の個人の認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法。
[本発明1055]
入力装置を介した個人からの応答を要求する少なくとも一つの視覚課題を表示部を使用して該個人に提示する段階;
前記第1の課題内で、前記個人の注意を前記視覚課題からそらす少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;
コンピュータ装置において、前記少なくとも一つの視覚課題への前記個人の応答を獲得する段階;ならびに
前記個人の認知技能を判定するために、コンピュータ装置において、前記少なくとも一つの視覚課題を干渉なしおよび干渉ありで行うときの前記個人の成績の差を分析する段階
を行うために、プログラム命令が、プロセッサにより実行可能である、
訓練の課題を提示するおよび個人から応答を受け取るためにコンピュータ装置を利用する個人の認知を増強するためのプログラム命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体。
[本発明1056]
入力装置を介した個人からの応答を要求する少なくとも一つの第1の課題を該個人に提示する段階;
前記第1の課題と共に少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;
コンピュータ入力部において、前記少なくとも一つの第1の課題への前記個人の応答を獲得する段階;
個人の認知機能を判定するために、コンピュータ装置において、少なくとも前記第1の課題を干渉なしおよび干渉ありで行うときの前記個人の成績の差を分析する段階;ならびに
前記個人の判定された認知機能を示す、コンピュータ装置からの出力を提供する段階
を行うために、プログラム命令が、プロセッサにより実行可能である、
訓練の課題を提示するおよび個人から応答を受け取るためにコンピュータ装置を利用する個人の認知を増強するためのプログラム命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体。
[本発明1057]
入力装置を介した個人からの応答を要求する、難度を有する少なくとも一つの第1の課題を該個人に提示する段階;
前記第1の課題と共に少なくとも一つの第1の干渉を提示する段階;
コンピュータ入力部において、前記少なくとも一つの第1の課題への前記個人の応答を獲得する段階;
コンピュータ装置において、提示された各第1の課題への応答に関する前記個人の成績を分析する段階;
反復様式で行う、前記少なくとも一つの第1の課題、前記少なくとも一つの第1の干渉を提示し、コンピュータ装置において、前記個人の応答を獲得する段階;
前記分析する段階で判定された前記個人の成績に基づいて前記少なくとも一つの第1の課題の難度を調整する段階;および
前記個人の認知機能を示す、コンピュータ装置からの出力を提供する段階
を行うために、プログラム命令が、プロセッサにより実行可能である、
訓練の課題を提示するおよび個人から応答を受け取るためにコンピュータ装置を利用する個人の認知を増強するためのプログラム命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体。
本発明と共に使用されるコンピュータ装置の例示の態様を示す図である。 本発明の例示の態様による本開示の態様に関する課題および刺激の特定のカテゴリーを示す絵図である。 本発明の例示の態様による、干渉なしの標的識別を含む単一課題(左)、干渉なしの視覚運動追跡(中)、および標的識別と視覚運動追跡の両方を含む同時複数課題(右)を示す絵図である。 本発明の例示の態様による、課題および異なる干渉の様々な組み合わせを表す絵図である。 本発明の例示の態様による、図2で表された課題および/または干渉に関与した実験被験者の行動評価を表すグラフである。 図4Aは、本発明の例示の態様による、成人の生存期間にわたる標的識別能力に及ぼす注意転導刺激および妨害刺激(同時複数課題)の影響を示すグラフである。図4Bは、本発明の例示の態様による、成人の生存期間にわたる視覚運動追跡能力に及ぼす注意転導刺激および妨害刺激(同時複数課題)の影響を示すグラフである。 図5Aは、本発明の例示の態様による、12回の訓練セッションにわたる、若年成人(濃い線)および高齢成人(グレーの線)用の妨害設定における追跡成績を示すグラフである。図5Bは、本発明の例示の態様による、12回の訓練セッションにわたる、若年成人(濃い線)および高齢成人(グレーの線)用の妨害設定における識別成績を示すグラフである。 本発明の例示の態様による、注意転導刺激(注意転導コスト)の存在下での、または妨害刺激(同時複数課題コスト)の存在下での標的検出の訓練前と訓練後の成績、および妨害刺激(同時複数課題コスト)の存在下での視覚運動追跡の訓練前と訓練後の成績を示す図である。 本発明の例示の態様による、課題のみの対照(単一課題訓練)および練習効果対照群(非接触対照)と比較した同時複数課題干渉群(二重課題)における標的検出の訓練前と訓練後との群平均の分析を示す図である(パネルA - 単一課題成績;パネルB - 二重課題成績;パネルC - 二重課題コスト)。 本発明の例示の態様による、2つの異なる方法によって測定された干渉コストの解消を示す訓練後分析の図である。 本発明の例示の態様による、例示的課題についての訓練前と訓練後の評価の結果を示す図である。 本発明の例示の態様による、試験および訓練セッションの各段階を示す流れ図である。 本発明の例示の態様による、評価分析の各段階を示す流れ図である。 本発明の例示の態様による、全訓練工程を示す流れ図である。
例示的な態様の詳細な説明
次に、本発明の例示の態様が示されている添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。本発明はいかなる点においても例示の態様だけに限定されるものではなく、後述する例示の態様は、当業者には明らかなように、様々な形で具現化することのできる本発明の単なる例示にすぎない。したがって、本明細書で開示されるいかなる構造的、機能的詳細も、限定としてではなく、単に、特許請求の範囲についての基礎として、また、当業者に本発明を様々に用いるよう教示するための代表例として解釈すべきである。さらに、本明細書で使用される語句は、限定のためのものではなく、本発明の理解可能な説明を提供するためのものである。
以下で論じる本発明の態様は、コンピュータプロセッサを有するマシン上での実行を可能にするための制御論理を有するコンピュータ使用可能媒体上に置かれたソフトウェアアルゴリズム、プログラムまたはコードとすることができることを理解すべきである。マシンは、典型的には、コンピュータアルゴリズムまたはプログラムの実行からの出力を提供するように構成された記憶装置を含む。
次に説明のために図面を見ると、図面では複数の図にわたって類似の参照符号で類似の要素が示されており、図1Aには、本発明の例示の態様が実施され得る例示的汎用コンピュータシステムが示されている。
図1Aには本発明を具現化することのできる一般化されたコンピュータ態様が示されており、一般に、バスまたはバス群110によって相互に結合された、少なくとも一つのプロセッサ102、または処理装置もしくは複数のプロセッサと、メモリ104と、少なくとも一つの入力装置106と、少なくとも一つの出力装置108とを含む処理システム100が示されている。ある態様では、入力装置106と出力装置108とを同じ装置とすることもできる。また、処理システム100を一つまたは複数の周辺装置に結合するためのインターフェース112も設けることができ、例えばインターフェース112はPCIカードやPCカードとすることができる。また少なくとも一つのデータベース116を収容する少なくとも一つの記憶装置114も設けることができる。メモリ104は任意の形の記憶装置、例えば、揮発性または不揮発性メモリ、固体記憶装置、磁気装置などとすることができる。プロセッサ102は、例えば、処理システム100内で異なる機能を扱うために、複数の別個の処理装置を含むこともできるはずである。入力装置106は入力データ118を受け取り、例えば、キーボード、ペン様装置やマウスといったポインタ装置、マイクロフォンといった音声制御作動のための音声受け取り装置、モデムや無線データアダプタといったデータ受信機またはアンテナ、データ収集カードなどを含むことができる。入力データ118は様々なソースから、例えばネットワークを介して受け取られるデータと併せてキーボード命令などから得ることができる。出力装置108は出力データ120を作成または生成し、例えば、出力データ120が目に見える表示装置またはモニタ、出力データ120が印刷されるプリンタ、USBポートなどのポート、周辺機器アダプタ、モデムや無線ネットワークアダプタといったデータ送信機またはアンテナなどを含むことができる。出力データ120は別々に、異なる出力装置から導出することもでき、例えば、ネットワークに送信されるデータと併せたモニタ上の視覚表示などとすることができる。ユーザは、データ出力、またはデータ出力の解釈を、例えばモニタ上やプリンタを使用して見ることができるはずである。記憶装置114は、任意の形のデータまたは情報記憶手段、例えば、揮発性または不揮発性のメモリ、固体記憶装置、磁気装置などとすることができる。
使用に際して、処理システム100は、データまたは情報を、有線または無線通信手段によって、少なくとも一つのデータベース116に記憶させるように適合される。インターフェース112は、処理装置102と、専用の目的に使用され得る周辺機器との間の有線および/または無線通信を可能にし得る。一般に、プロセッサ102は入力装置106を介した入力データ118として命令を受け取ることができ、出力装置108を利用することによりユーザに処理結果または他の出力を表示することができる。複数の入力装置106および/または出力装置108を設けることもできる。処理システム100は任意の形の端末、サーバ、専用ハードウェアなどとすることができることを理解すべきである。
処理システム100はネットワークで接続された通信システムの一部であり得ることを理解すべきである。処理システム100はネットワーク、例えばインターネットやWANなどに接続することもできるはずである。入力データ118および出力データ120はネットワークを介して他の装置に送ることもできるはずである。ネットワーク上での情報および/またはデータの転送は、有線通信手段または無線通信手段を使用して行うことができる。サーバはネットワークと一つまたは複数のデータベースとの間のデータ転送を円滑に行わせることができる。サーバおよび一つまたは複数のデータベースは、情報源の一例を示すものである。
よって、図1Aに示される処理コンピュータシステム環境100は、1台または複数のコンピュータへの論理接続を使用してネットワークで接続された環境で動作し得る。リモートコンピュータは、パーソナルコンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピアデバイス、または他の一般のネットワークノードとすることができ、典型的には、前述の各要素の多くまたは全部を含む。
図1Aに示される論理接続はローカルエリアネットワーク(LAN)および広域ネットワーク(WAN)を含むが、パーソナルエリアネットワーク(PAN)といった他のネットワークも含んでいてよいことをさらに理解すべきである。そのようなネットワーク接続環境は、オフィス、企業規模のコンピュータネットワーク、イントラネット、インターネットにおいてよく見られる。例えば、LANネットワーク接続環境で使用されるとき、コンピュータシステム環境100はネットワークインターフェースまたはアダプタを介してLANに接続される。WANネットワーク接続環境で使用されるとき、コンピュータシステム環境は、典型的には、インターネットなどのWAN上で通信を確立するためのモデムまたは他の手段を含む。モデムは、内蔵されていても外付けでもよく、ユーザ入力インターフェースによって、または別の適切な機構によってシステムバスに接続されていてよい。ネットワークで接続された環境では、コンピュータシステム環境100に関連して図示されるプログラムモジュール、またはその部分がリモートの記憶装置に記憶されていてもよい。図1A の図示のネットワーク接続は例示であり、複数のコンピュータ間で通信リンクを確立する他の手段が使用されてもよいことを理解すべきである。
図1Aは、下記の本発明の態様が実施され得る、説明のための、かつ/または適切な例示的環境の簡単な一般的説明を提供するためのものである。図1Aは適切な環境の一例であり、本発明の態様の構造、使用範囲、または機能性に関していかなる制限も示唆するものではない。個々の環境は、例示的動作環境に示される構成要素の任意の一つまたはその組み合わせに関していかなる依存関係も要件を有するものとも解釈すべきではない。例えば、ある例では、環境の一つまたは複数の要素が不要とみなされ、省かれてもよい。別の例では、一つまたは複数の他の要素が必要とみなされ、加えられてもよい。
以下の説明では、いくつかの態様を、図1Aのコンピュータシステム環境100といった1台または複数のコンピュータ装置によって実行される動作の作用および記号表現を参照して説明する場合もある。したがって、そのような作用および動作は、場合によってはコンピュータで実行されるともいわれ、構造化された形のデータを表す電気信号のコンピュータのプロセッサによる操作を含むことが理解されるであろう。この操作は、データを変換し、またはデータをコンピュータのメモリシステムの各位置に維持し、データは当業者に理解されるようにコンピュータの動作を再構成し、またはそれ以外のやり方で変更する。データが維持されるデータ構造は、データのフォーマットによって定義される特定のプロパティを有するメモリの物理的位置である。しかし、態様は前述の文脈で説明されているが、これは限定のためのものではなく、以下で説明する作用および動作はハードウェアにおいても実施され得ることを当業者は理解するであろう。
各態様は、多数の他の汎用または専用のコンピュータ装置およびコンピュータシステム環境もしくは構成を用いて実施されてよい。態様と共に使用するのに適し得る周知のコンピュータシステム、環境、および構成には、パーソナルコンピュータ、ハンドヘルド装置またはラップトップ装置、携帯情報端末、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、セットトップボックス、プログラマブル家電、ネットワーク、ミニコンピュータ、サーバコンピュータ、ゲームサーバコンピュータ、ウェブサーバコンピュータ、メインフレームコンピュータ、および上記システムまたは装置のいずれかを非限定的に含む分散コンピューティング環境が含まれる。
各態様は、コンピュータによって実行される、プログラムモジュールといったコンピュータ実行可能命令の一般的文脈で説明され得る。一般に、プログラムモジュールには、特定のタスクを実行し、または特定の抽象データ型を実施するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などが含まれる。また態様は、タスクがコンピュータネットワークを介してリンクされたリモート処理装置によって実行される分散コンピューティング環境で実施されてもよい。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、記憶装置を含むローカルとリモート両方のコンピュータ記憶媒体に置かれていてよい。
一般的に図示されている前述の図1Aの例示的コンピュータシステム環境100を用いて、次に、おおむね個人の認知を増強するための方法に関連する本発明の例示の態様を説明する。本方法には、行われるべき課題を個人に提示する段階、干渉を個人に提示する段階、および個人から入力を受け取る段階が含まれることが理解し、認識されるべきである。干渉が注意転導である場合、個人はその干渉を無視すべきである。干渉が妨害刺激である場合、個人は2次課題として妨害刺激に応答するよう指示され、同時複数課題を行っているといわれる。
本発明は、認知機能における干渉を明確に測定および訓練することができるという認識、さらに、干渉の注意転導の局面と同時複数課題(妨害)の局面とは分離可能であり、別々に訓練することができるという認識に一部基づくものである。よって本開示は、注意転導に耐えることができる能力と同時複数課題を行うことができる能力とを別々に評価することを可能にし、注意転導のマイナスの影響に耐えることができる能力を訓練すること、および同時複数課題を行うことができる能力を増強することを別々に可能にする方法およびシステムを提供する。
本発明および本発明の具体的な例示的態様を説明する前に、本発明は説明される特定の態様だけに限定されるものではなく、よって当然ながら様々な態様とし得ることを理解すべきである。また、本明細書で使用される用語は特定の態様を説明するためのものにすぎず、限定するためのものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであることも理解すべきである。
値の範囲が与えられる場合、それは、その範囲の上限と下限との間の、文脈上明白に異なる解釈を要する場合を除き下限の単位の10分の1までの各介在値、およびその規定範囲内の任意の他の規定値または介在値が本発明に包含されることが理解される。これらのより狭い範囲の上限および下限は、規定範囲における任意の明確に除外される制限に従って、それらのより狭い範囲に独立に含まれていてよく、やはり本発明に包含される。規定範囲が境界値の一方または両方を含む場合、含まれる境界値のどちらかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験に際しては本明細書で説明される方法および材料と同様の、または等価の任意の方法および材料も使用され得るが、次に例示的方法および材料を説明する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、それらの刊行物が関連して引用される方法および/または材料を開示し、説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに異なる解釈を要する場合を除き、複数の指示対象を含むことに留意すべきである。よって例えば、「ある刺激(a stimulus)」という場合、これは複数のそのような刺激を含み、「その信号(the signal)」という場合、これは当業者に公知の一つまたは複数の信号および信号の均等物への言及を含み、以下同様である。
本明細書で論じる刊行物は、それらの開示が本出願の出願日に先行するものについてのみ示している。本明細書に含まれるいかなる記述も、本発明が先行発明によってそのような刊行物に先行する権利を与えられないことを認めるものとして解釈すべきではない。さらに、提示する刊行物の日付は、実際の刊行日付と異なる可能性もあり、別途確認すべき必要がある。
定義
本開示の方法および構成物を説明するときに、以下の用語は、本開示内で特に指示しない限り以下の意味を含むが、各用語はそれらに付随する意味だけに限定されると解釈すべきではなく、本発明の教示および開示と一致するあらゆる意味を包含するものと理解すべきである。
「認知」という用語は、本明細書で使用される場合、知覚、注意、記憶、運動機能、問題解決、言語処理、意思決定、および知能といった領域を非限定的に含み得る。
「標的」という用語は、本明細書で使用される場合、具体的なもの(例えば人物、記号といった視覚的焦点や、音、会話といった聴覚的焦点など)とすることもでき、抽象的なもの(例えば事象の観念や記憶や表現などといった人の思考プロセスにおける概念など)とすることもできる。
「記憶」という用語は、加えて、個人が情報を学習し、長期的または短期的に保持することができる能力も指し得る。
「知覚」という用語は、加えて、個人が刺激を受け、処理することができる能力も指し得る。
「刺激間間隔(inter-stimulus-interval)(ISI)」という用語は、連続した刺激の提示の中止と次の刺激の提示との間の、指定される時間量をいう。例えば、本開示の方法における第2次刺激は、2秒間隔で連続して繰り返し提示することができる。
「標的刺激」という用語は、本明細書で使用される場合、方法または装置により、個人に提示される異なる刺激群の中の焦点として任意に選択される刺激をいう。個人は、標的刺激を非標的刺激と区別する一つまたは複数の特性に関して指示される。標的刺激は少なくとも一つの特性において非標的刺激と異なる。
本明細書で使用される場合、「非標的刺激」という用語は、少なくとも一つ以上の異なる特性の違いにより焦点ではない刺激をいう。非標的刺激は標的刺激と異なっていてよいが、必ずしも別の非標的刺激と同じであるとは限らない。
「課題」という用語は、特定の刺激への応答を提供する個人によって達成されるべき目標および/または目的をいう。例えば、個人は特定の目標を果たすよう指示されているはずである。「課題」は、実行され、測定され、それに対する干渉が加えられる基準認知機能として使用することができる。よって、「課題」は、多くの場合、個人が干渉の存在下または非存在下で果たすよう指示される主目標をいう。
特定の機能に関連した「干渉」という用語は、本明細書で使用される場合、1次課題の実行に対し潜在的干渉を及ぼす、個人に提示される任意の刺激をいう。干渉は、視覚モード、聴覚モード、精神(内的)モード、または他のモードを含む、一つまたは複数の様々なモダリティから提示されてよい。干渉は、おおむね、個人が課題の実行に取り組んでいるときに個人に提示される注意転導または妨害刺激として分類することができる。個人が干渉を無視するよう指示される場合、その干渉は「注意転導刺激」または「注意転導」である。干渉が、個人がそれに応答するよう指示される刺激である場合、その干渉を本明細書では「妨害刺激」または「妨害」と呼ぶ。妨害刺激の存在下での課題を実行することは、個人に1次課題と2次課題の両方を実行させることになる。したがって、個人は妨害刺激の存在下で同時複数課題を行っているといわれる。
所与の機能の「干渉コスト」という用語は、本明細書で使用される場合、基準環境で果たされる機能と一つまたは複数の干渉を有する環境で果たされる機能との間の成績の差をいう。
方法
本開示の方法は、本発明のいくつかの例示の態様によれば、干渉の存在下で課題を実行するよう個人を訓練することによって認知を増強し、個人の認知機能における干渉への感受性に関して個人を評価する。干渉コスト、すなわち、単独の課題に対する一つまたは複数の干渉が適用された課題の個人の成績の差の判定は、個人を評価または診断し、ある態様で訓練の難しさおよび進行を判定するのに使用される中核となるメトリックである。干渉は、注意転導刺激または妨害刺激のどちらかとして個人に提示することができる。前述のように、注意転導刺激は個人からの応答を要求せず、妨害刺激は応答を要求する。
課題に属する刺激および干渉に属する刺激は、個人に対して同時に、または順次に提示することができる。ほとんどの場合、課題は個人に継続して取り組ませるものであり、そのため、干渉は課題と同時に発生する。しかし、干渉は、干渉の程度を調整するように、課題の最後に、または課題中の合間に(例えば、課題従事の開始に対して時間的に前後させ、または変動させて)適用することもできる。干渉は、注意転導刺激または妨害刺激のどちらかとして個人に提示することができる。前述のように、注意転導刺激は個人からの応答を要求せず、妨害刺激は応答を要求する。
図10を参照すると、本発明の例示の態様による方法は、課題に属する刺激を提示する段階(段階2)と、個人から第1の入力を受け取る段階(段階4)と、干渉を提示する段階(段階6)と、干渉が妨害刺激である場合に、任意選択で第2の入力を受け取る段階(段階8)と、前述の提示する段階および受け取る段階を繰り返す段階(段階10)とを含む。方法は、干渉の存在下または非存在下、および注意転導の存在下に対する妨害の存在下における個人の成績を評価および比較するために入力を記憶および分析する段階をさらに含むことができる。
本方法によって訓練される個人は、提示される刺激に関して以下のように指示され得ることを理解すべきである。課題に属する刺激に応答して、個人は1次課題を行うよう指示される。干渉である刺激に関しては、干渉が妨害刺激である場合、個人は2次課題を行うことにより妨害刺激に応答するよう指示される。したがって、干渉が妨害刺激である場合、2次入力が段階8で上記個人から受け取られる。干渉が注意転導刺激である場合、個人は、注意転導刺激に注意を向けないよう指示され、個人から入力が受け取られないことが期待される。次いで、これらの提示する段階および受け取る段階は、特定の持続時間にわたって続く試験18において反復される(段階10)。ある期間に2回以上の試験が行われる場合、2回以上の試験の群を本明細書では訓練セッションと呼ぶ。
図10の各段階は前の各段階が完了する前に開始することができることが理解される。例えば、ある態様では、図1Aの段階2および段階4が段階8から時間的に連続して実行される。
本発明の方法の一例示的態様では、干渉の提示6および個人からの入力8は、課題刺激2および課題についての入力の受取り4が完了される時間枠より小さく、この時間枠内に含まれる時間間隔において実行される。例には記憶成績といった認知課題が含まれ、この認知課題で個人は、刺激を覚えておく必要があり、短時間にわたって干渉を提示され、その後にその干渉を除去され、次いで1次記憶課題に関する入力を提供する。これらの場合、段階6および段階8での干渉の処理は、課題の時間枠の最中に、または課題の開始もしくは終了の近くのどちらかに実行することができる。干渉は、元の課題の時間のおおよそ1%と10%の間、または課題の時間のおおよそ5%と20%の間、または課題の時間のおおよそ10%と50%の間、または課題の時間のおおよそ25%と75%の間に提示され、かつ/または個人からの入力を要求し得る。
本発明の方法の別の例示の態様では、干渉の実行(段階6および段階8)は連続して、課題の実行(段階2および段階4)とほぼ同じタイムスケールで行われる。これらの場合、干渉は課題刺激の提示と実質的に同時に個人に提示され、課題と干渉の両方に関する個人からの入力の受取りが同時に完了される。これらの場合、刺激と課題および干渉の入力の受取りとは、試験全体を通して完全に同期していて(同時で)もよく、または試験全体を通して交互に(例えば、課題、干渉、課題、干渉などのように)行われてもよく、または試験全体を通してランダム化されていてもよい。一例は、所与の頻度で提示される標的に応答する1次課題を、経路上を連続して操縦するという干渉と共に含む。
一つまたは複数の課題および一つまたは複数の干渉が試験の間に実行され得る。課題および干渉は、課題のあいだ、同じ認知領域(知覚、注意、記憶、および運動機能を非限定的に含む)からのものとすることも、または異なる認知領域からのものとすることもでき、課題全体を通して不変のままとすることも、または課題を完了する間に変化させることもできる。同様に、課題および干渉は、同じ認知領域からのものとすることもまたは異なる認知領域からのものとすることもでき、訓練セッションの間不変のままとすることもまたは変化させることもできる。
方法は、システム100において、段階12で、受け取った入力を記憶および分析すること、および段階16で出力を生成することをさらに含む。分析および出力は多くの形を取ることができ、これについては以下でより詳細に論じる。手短にいうと、分析は、システム100によるものとすることができ、異なる種類の干渉(例えば、注意転導 対 妨害)の文脈での、かつ/または干渉の非存在下での出力の正確さに基づいて個人の成績を評価する。図11に提示されている本発明の方法の一例示的態様では、分析は、干渉に対する感受性、すなわち干渉コストの評価である。課題が提示され(段階20)、入力が受け取られ(段階22)、入力は後で比較するために記憶される(段階24)。加えて、同じ課題であるが干渉が加わったものが提示され(段階26)、入力が受け取られ(段階28)、記憶される(段階30)。次いで、基準課題からの入力と干渉ありの課題からの入力が比較および分析される(32)。さらに別の態様では、入力は、基準課題 対 干渉ありの課題の成績間の単純な差によって比較される。また、当業者に公知である、データ処理技術を用いて入力を比較し、かつ入力の有意性を確認するための代替の統計的分析も適し得ることが理解されるべきである。次いで、基準課題 対 干渉ありの課題からの入力の比較から得られたデータは、評価または診断を可能にするための個人への出力として(以下でさらに論じる)、かつ/またはシステム100によるその後の試験および/もしくは訓練セッションに関する判断を誘導するために試験または訓練セッションを管理するエンティティへの出力として(以下で論じる)生成され得る。
干渉ありの課題の評価を基準課題の評価の前に実行するように動作の順序を入れ替えることができること、および結果は同じになることが理解されるべきである。場合によっては、単独の課題または干渉ありの課題を最初にもってくる方が望ましいこともある。したがって、課題および/または干渉は、様々な種類の認知機能およびモダリティの一つまたは複数として提示することができる。
分析は、以下でより詳細に論じるように、個人に提示される次回の難しさおよび/または次の課題と妨害刺激のセットを決定するのに役立つ。一つの例示の態様では、そのような分析が、個人が受けることになる次の干渉を決定するのに使用される。個人が所与の干渉に影響されやすい場合、または前の分析から当該の干渉に対する個人の感受性が実質的に変化していない(干渉に対する感受性の最大値、すなわち干渉コストの下で個人が実行することができなかったことにより判定される)場合には、個人に提示される次の試験は、個人が行った前の試験または訓練セッションと実質的に同じ課題および干渉を含み得る。あるいは、個人が干渉に影響されない場合、または前の分析で示したよりも干渉に影響されにくい(干渉に対する感受性の定義済みの最大値、すなわち干渉コスト以内で実行したことによって判定される)場合には、干渉コストを導入するかどうかに関して評価されることになる、新しいより困難な課題および干渉が、個人に提示され得る。個人が(定義済みの値を上回る)有意な干渉コストを有すると評価されると、次いで個人はその課題および干渉に関する試験および/または訓練セッションを開始する。
個人の干渉に対する感受性、すなわち干渉コストの分析に基づいて、個人に提示される干渉を増加させる、前述のこの工程は、一旦個人が所与の課題および干渉について最小化された干渉コストを有すると判定されると、その個人は、より困難な課題および/または干渉をその所与の条件での干渉コストを最小化するまで行い、その所与の条件での干渉コストが最小化された時点で、その個人には、さらに一層困難な課題および/または干渉が、その個人がその条件でのその個人の干渉コストを最小化するまで提示され、これがほぼ無期限に、または所与の打ち切りまたは終了点まで繰り返され得る、何度も繰り返される周期的工程とすることができることが、理解および認識されるべきである。
本発明の例示の態様の本方法は、各試験間に試験間間隔をおいて、2回以上の試験として個人に提示される。各試験の難度は前の試験での個人の成績に依存するものとすることができる。前の試験での正しい入力の数が特定の閾値に達した場合には、後続の試験は前の試験よりも高い難度を有する。しかし、前の試験での正しい入力の数が閾値を下回る場合には、後続の試験は前の試験よりも低い難度を有することになるはずである。あるいは、難度は、段階的に、かつ/または山あり谷ありに設計することもできる。以下でさらに詳細を論じる。
課題および干渉
課題とは、特定の刺激への応答を提供する個人によって達成されるべき目標および/または目的を指すことが理解および認識されるべきである。課題は、知覚、注意、記憶、または運動機能といった基本的機能、および意思決定、知能などといったより高次のプロセスを非限定的に含む、任意の様々な認知または行動のモダリティの中から選択することができる。課題の一例は、個人が、提示される刺激に注意を払い、刺激の情報を処理し、指示されるように応答するものである。ある課題は、検出課題、標的識別課題、追跡課題、合図に合わせて行動すること、および質問に答えるといった他のデータ処理課題を含む。検出課題は、個人に、刺激(例えば音や画面上での対象物の出現など)の発生に応答するよう要求する。標的識別は、個人に、標的と非標的とを見分けるよう要求する。追跡課題は、方向を変える経路を追跡すること、または移動する標的を正確に特定することを含み得る。課題の他の例には、会話を続ける、キー入力する/書く、体力(ランニング、ウォーキング、自転車こぎなど)、読む、撃つ、画面上でキャラクタを制御する、運動を行う、戦略的意思決定を策定する、対象を記憶に保持する、または記憶に保持された対象について報告するなどが含まれる。
個人に一つの課題に属する刺激だけが提示される場合、個人は干渉なしで課題を行っているといわれる。個人が、第1の課題の成績を下げる可能性のある追加要素を有する同じ、またはほぼ同様の課題を行うとき、その要素を干渉と呼ぶ。課題と同様に、干渉も、知覚、注意、記憶、または運動機能といった基本的機能、および意思決定、知能などといったより高次のプロセスを非限定的に含む、当技術分野で公知の任意の様々な認知または行動のモダリティの中から選択することができる。
干渉があり、その干渉が注意転導刺激である場合、個人は課題を注意転導刺激の存在下で行い、注意転導刺激に注意を払わないよう指示される。例えば、課題は、画面の、曲がりくねった経路の上方で、試験全体を通して断続的に色のついた形が現れたり消えたりするあいだ、該経路上の自動車を操縦することであり得る。色のついた形は個人からの応答を必要としない刺激であるため、個人は、注意転導刺激である干渉の存在下で課題を行っているといわれる。反対に、課題は標的識別課題とすることもでき、標的識別課題で個人は、画面上に現れる緑色の円に応答してボタンを押すよう指示される。その場合、背景で勝手に経路上を進む自動車が、標的識別課題に対する注意転導である。
干渉が妨害刺激である場合、個人は課題に属さない刺激の存在下で課題を行い、個人は妨害刺激に応答するよう指示される。例えば、課題は、曲がりくねった経路上の自動車を操縦することであり得、画面上部に緑色の円が現れた場合、個人はボタンを押すよう要求される。色のついた形の中でも特に緑色の円は個人からの特定の応答を要求する刺激であるため、個人は、妨害刺激の存在下で課題を行っているといわれる。個人は実際には2つの課題を行っているため、一方の課題を1次、他方を2次と呼ぶ。妨害刺激は、本開示の方法では2次課題に属する刺激とみなされる。妨害刺激の存在下では、個人は、同時複数課題を行っているということもできる。妨害は、課題と性質が類似していても異なっていてもよく、同じ領域(例えば、課題焦点の前に、または課題焦点の隣に視覚的に提示されるなど)にあっても、関連のない(orthogonal)領域(例えば、個人に視覚 対 聴覚といった異なる知覚領域に係わるよう要求する信号など)にあってもよく、または、1次課題と無関係の2次運動課題(例えば言語 対 手作業など)を行うものであり得る。以下でそのような多様性の詳細を論じる。
課題の種類、および干渉として提示されるべき刺激の種類は、様々な刺激の中から、後述するように任意の組み合わせで選択することができる。特定の種類の課題の成績および/または特定の種類の刺激に対する応答は、その特定の種類に関連した認知能力の表示である。例えば、視覚運動追跡課題には視覚感覚技能および運動感覚技能が関与し、聴覚刺激には言語技能および/または聴覚技能が関与し得る。2つまたはそれ以上の試験を有する訓練セッションでは、個人に、干渉が異なる同じ課題が提示され得、あるいは、干渉が同じ異なる課題が提示され得る。例えば、方法は、1次課題としての追跡および2次課題としての標的識別を提示することができ、逆もまた同様である。別の例では、注意転導刺激は、色のついた形の出現および消失、または道路上を走行する自動車の一連の動画フレームのいずれかであり得る。異なる感覚刺激ならびに個人の運動および言語統御能力が関与する任意の他の並べ換えを組み入れることができる。
試験およびセッション
例示的態様によれば、本発明の方法は、各試験が前述の図10に示した一連の提示する段階および受け取る段階を含む2回以上の試験を個人に提示することを含み得る。図10を参照すると、試験は、参照番号18で表される一連の段階および反復であり、任意選択で出力する段階16を含む。試験の長さは提示する段階および反復する段階の反復回数に依存し、時間的に変動し得る。例えば、試験は約500ミリ秒間、約1秒間、約10秒間、約20秒間、約25秒間、約30秒間、約45秒間、約60秒間、約2分間、約3分間、約4分間、最大約5分間またはそれ以上の長さにわたって続けることができる。各試験の長さは事前に決定されていてもよく、または、柔軟で、個人により、もしくは訓練セッションを管理するエンティティによる動的判断により決定されてもよい。試験の長さが柔軟である場合、その長さは個人が望む長さによって決定されてもよい。あるいは、試験の長さは、成績レベルまたは訓練目標に達したかどうかによって決定することもできる。各試験間の時間間隔を本明細書では「試験間」間隔と呼ぶことができる。同様に試験間間隔も、事前に決定することも、個人の好みに応じて決定することもできる。例えば、試験間間隔が24時間以内である場合、この間隔は約数秒間、約500ミリ秒間、約1秒間、約5秒間、10秒間、約20秒間、約30秒間、約1分間、約5分間、約15分間、約30分間、約45分間、約1時間、最大約3時間またはそれ以上とすることができる。
前述のように、訓練セッションとは試験群である。1セッションは少なくとも2回の試験を含むことができ、約4回、約6回、約8回、約10回、約12回、約15回、約20回、約25回、約30回、最大約40回またはそれ以上の試験を含むことができる。例えば、1セッションは約20回の試験を含むことができる。1セッション内の試験回数は、ユーザまたはプログラム管理者により決定される各試験の長さによって決定され得る。セッションの長さは変動してよく、例えば、約1分間、5分間、10分間、約15分間、約20分間、約30分間、約40分間、約60分間、最大約90分間またはそれ以上とすることができる。例えば、1セッションは約60分間とすることができる。個人は2回以上のセッションを受けることができ、したがって、セッション間間隔が生じるはずである。セッション間間隔は柔軟なものとすることができ、訓練を受ける個人が選択することが可能である。あるいは、間隔を管理者が事前に決定することもできる。例としては、15分間、1時間、2時間、24時間、48時間、3日間などが含まれる。あるいは、セッション間間隔はユーザ成績に基づいて決定することもできる。
本明細書ではセッション群を訓練プログラムと呼ぶ。訓練プログラムは、ある期間にわたって少なくとも2回のセッションを含み、任意選択で、後述するように、事前評価と事後評価とを含む。
前述のように、本発明の方法により訓練される個人は、様々なルーチン、すなわち訓練プログラムに従い得る。したがって、個人は1回のセッションで全試験セットを受けてもよく、毎日指定の回数にわたる試験、指定の日数にわたるセッションを、指定された頻度で受けてもよい。言い換えると、一つの訓練プログラムにおいて、個人は、複数回の訓練セッションを、選択される頻度(例えば毎日3回の訓練セッションなど)で、ある日数または月数の期間(例えば6ヶ月間など)にわたって、認知、気分または他の関連した効果を改善するために受けてよい。
訓練プログラムの一例は、試験(各試験は約3分間続く)の1時間のセッションを、週3回ずつ、4週間にわたって実行するものである。訓練プログラムの別の例は、24時間に12回にわたる3分間の試験を、週3回ずつ、1ヶ月間にわたって実行するものである。また本発明の方法は、特定のルーチンなしのケースバイケースで実行することもできる。試験およびセッションは、規則的に(例えば頻繁にかつ/または一貫して)、または不規則に(例えば散発的にかつ/またはたまに)意のままに反復されてよい。
したがって、本発明の方法は、柔軟なセッション間間隔および/または試験間間隔のルーチンおよび/またはプログラムとして実行することができる。これらの例から、また上記に基づき、各試験/セッション/プログラムの長さ、1日、1週間、1ヶ月、または1年のいずれかの期間における試験/セッション/プログラムの頻度は、個人の必要に基づいて選択することができる。
前述のように、図10の段階10で表される任意の反復中、提示される刺激は、1セッションにおいて、もっぱら聴覚だけとすることも、もっぱら視覚だけとすることも、または聴覚と視覚両方の組み合わせとすることもできる。同様に、関与する課題も、もっぱら追跡だけ(例えば視覚運動追跡など)とすることも、もっぱら標的識別だけとすることも、もっぱら選択だけとすることも、もっぱら記憶関連だけとすることも、または異なる課題の組み合わせとすることもできる。また、運動性応答も、手作業とすることも、言語とすることも、または異なる応答の組み合わせとすることもできる。刺激および課題の種類は、1回の試験内で、複数回の試験にわたって、1回のセッション内で、または2回以上のセッションの中で同じままとすることができる。あるいは、刺激および課題の種類は、特定の時間量内(例えば、1日、1週間以内、1ヶ月以内、それ以上など)で試験ごとに、かつ/またはセッションごとに変更することもできる。
例えば妨害刺激は、応答すべき刺激の種類として各試験または各セッションにわたって変化させてよい。妨害刺激は、ある試験またはセッションでは運動性応答を要求することができ、後続の試験またはセッションでは言葉による応答を要求する言葉の指示メッセージとすることができる。そのような変化は、課題に対する個人の成績に応答して発生させることも、ランダムに発生させることも、または管理者が事前に決定することもできる。またそのような変化は、難度の変更と同時に発生させることもでき、または、難度の変化とは無関係に発生させることもできる。加えて、個人に、2種類以上の干渉を同時に提示することもできる。
また本発明の方法は、干渉が常に存在しない、または特定の種類の干渉が絶えず存在する試験も含むことができる。同様に、提示される干渉は、もっぱら注意転導刺激だけとすることも、もっぱら妨害刺激だけとすることも、または両方の組み合わせとすることもできる。試験での干渉に属するすべての刺激がもっぱら注意転導刺激だけまたはもっぱら妨害刺激だけである場合、後続の試験での干渉は、前の試験で提示されたのと異なる種類の干渉とすることもでき、または組み合わせとすることもできる。任意選択で、干渉の種類も、セッション内で(例えば試験間で)またはセッション間で同じままとすることもできる。したがって、上記およびその他のパラメータも、本開示の方法を設計するために選択され得る。
難度
システム100の制御下で、難度は、好ましくは、試験間で、かつ/またはセッション内で変化してもよく、または同じままとしてもよい。各試験および/またはセッション内の一連の試験の難度は、試験間および/またはセッション間で異なっていてもよい。個人が閾値レベルの成功(例えば所定の正答率)を達成した場合、試験の難しさを前の試験と比べて増加させてよい。逆に、個人が指定のレベルの失敗を遂げ、またはあるレベルの成功を達成することができなかった場合には、試験の難度を同じままとするか、または前の試験と比べて減少させてよい。難度は、課題、干渉、またはこれら2つの組み合わせを指し得る。また難度は、課題または干渉の実際の成績(課題もしくは干渉に対する入力により決定される)を指す場合も、または、図11に示されるように、干渉コストの分析によって決定される、より間接的なパラメータを指す場合もある。
難度は、好ましくは、以下のいくつかのやり方で増加させることができる。一般には、難しさは、3つの主要なモダリティ、すなわち、時間、空間、および識別性に沿って増加させる、または減少させることができる。時間の一例は刺激に対する応答の時間窓であり、これは刺激が提示される瞬間と個人からの入力が受け取られるべきときとの間の期間である。個人は、指示どおりに応答すべきこの時間窓を有する。したがって、刺激間間隔、刺激の持続期間、応答の時間窓、またはこれらの任意の組み合わせを減少させることが難度を増加させる方法である。空間の一例は、個人の視界内のどこで刺激が提示されるかを変化させることである。識別性の一例は、その標的が何であるか(例えば、その外観または特性)のカテゴリー化に基づく標的を選択することである。以下にさらに例を示す。
検出課題において、難度を増加させる一つのやり方は、検出されるべき刺激と雑音および/または背景との差を最小化することである。標的識別課題において、難度を増加させる一つのやり方は、非標的刺激と標的刺激との差を最小化することである。画像、グラフィック要素、または聴覚要素は、標的刺激が非標的刺激とますます類似するように(物理的/意味的属性において)、モーフィングすることができる。例えば、緑色の円の標的は、赤色の四角形と識別するよりも緑色の五角形と識別する方がより難しい。検出課題と識別課題の両方で難しさを増加させる別のやり方は、被験者がその中から選択しなければならない、順次または連続して提示される要素の数を増加させることである。例えば、被験者がその中から正しい形を選択しなければならない形の数を増加させることなどである。
曲がりくねった経路上の自動車の操縦におけるような、視覚追跡の一例では、難度は、自動車が進む速度、進路変更の角度、進路変更の頻度、経路の狭さなどを増加させることによって増加させることができる。また難しさは、経路の不確定性を増加させること、または視覚刺激を不鮮明にする(例えば、霧、経路上の障害物、急な進路変更などを示す)ことによって増加させることもできる。
難度を増加させる別のやり方は、異なる感覚(例えば視覚と聴覚など)が関与する刺激または課題を組み合わせることである。1回の試験に、または試験の1つのセッション内に1種類を超える、2種類を超える、3種類を超える、またはより多くの異なる種類の標的刺激を有することは、難しさを著しく増加させることができる。あるいは、データ処理の複雑さを増加させることもできる。例えば、発話された語に応答して語を繰り返すことを含む課題は、質問に応答することと比べて複雑度が低い。難しさを増加させるこれらのやり方のいずれか一つまたは組み合わせを本開示の方法で使用することができる。
難度は、必要な頻度で調整することができ、また、所定の目標に合わせて、もしくは個人の能力に合わせて調整することもできる。個人は、各訓練期間もしくは毎日の最初の訓練セッションの最低難度から開始することも、評価、前の訓練セッションにより決定された難度から開始することも、または彼の選択する難度から開始することもできる。個人には、ある一定レベルの成功または失敗に到達するまで同じ難度のセッションが提示され得る。難度はまた、個人の成績にかかわらず、減少させることも、増加させることも、または同じままとすることもできる。例えば、訓練は、個人に多様性、やりがい、または興味を与えるように、段階的に変化する、または山あり谷ありで増加および減少する難度を有するように設計されてもよい。これらの事前に設計された難度のプランは独立的であることも、または個人の成績に一部依存したものであることもできる。
方法はまた、個人の閾値成功率前後を維持することにより、個人に合わせて個別に調整することもできる。例えば、方法は、個人からの一定の誤り率(例えばおおよそ80%の応答精度など)を目標とするように調整することもできる。
打ち切り
例示の態様による本発明の方法の各段階は試験において繰り返すことができ、各試験は所定の目標を達成するためにセッションにおいて繰り返される。セッションは訓練プログラムを構成するようにある期間において繰り返される。所定の目標は個人の応答または訓練の長さに依存して決定されてよい。例えば、目標は、個人がある一定の頻度で特定の長さの時間(1ヶ月など)にわたって試験を受けることとすることができる。あるいは、一つまたは複数の指標によって測定されるある一定のレベルで実行するよう個人を訓練するのに、1回のセッションで、必要なだけの回数の試験を繰り返すこともでき、または、1回のプログラムで、必要なだけの回数のセッションを繰り返すこともでき、一つまたは複数の指標は、例えば、真の当たりのみで偽陽性なし、ある一定の割合の真の当たり、ある回数にわたって連続して真の当たりを入力すること、または同時複数課題コストもしくは注意転導コストの指定の低減、または訓練前に得られた別の認知尺度(作動記憶、長期記憶、課題切替え能力など)の改善などである。
打ち切り前に試験において行われる反復の回数は、いくつかの要因に基づくものとすることができる。一つは、前述のように、個人の成績である。反復は、図10の段階14に示されるように、個人が所定の時間量にわたって高率(例えば80%以上など)の正確さで実行したときに打ち切ることができる。あるいは反復は、個人がいくつかの誤りを犯したときに試験を終えるために打ち切ることもできる。別の要因は、特定の個人または平均的個人が課題の実行に集中することができる時間量である。セッションの打ち切りについて、打ち切り前のセッション内の試験回数の決定に関与する要因は、試験に関与する要因と同様である。例えば、セッションは、選択持続期間(例えば約5回の試験、約10回の試験、約15回の試験、約20回の試験、最大約30回の試験、またはそれ以上など)の後で、様々な試験における入力の正確さにかかわらず打ち切られてもよい。また打ち切りは、時間、反復回数を設定し得る、または反復回数もしくは時間とは無関係に試験を打ち切る選択肢を有する個人によって決定されてもよい。
訓練プログラムについて、訓練プログラムは、例えば、個人が、同時に標的識別課題に応答しながら、その時間の少なくとも80%にわたって経路の中央にあるよう自動車を操縦することができる技能レベルに達するのに必要なだけの回数のセッションを繰り返してもよい。注意をそらす聴覚刺激の設定での標的識別課題において、訓練セッションは、偽陽性に対する真陽性(当たり)の率が選択される閾値を達成するまで繰り返すことができる。例えば訓練は、最近5セッションにおいて真陽性/真陰性が偽陽性/偽陰性に大幅に勝ったときに打ち切られてもよい。閾値または要因の組み合わせは、訓練プログラムの持続期間およびいつ打ち切るべきかを決定するために評価において分析することができる。以下で評価の詳細を論じる。あるいは、訓練セッションは、プログラム管理者および/または個人が意のままに打ち切ることもできる。
第1のセッションの前
個人は初回として方法に参加する場合がある。初回とは、個人の生涯で初回の参加、または実験期間(例えば1ヶ月など)においての初回を指す。あるいは、初回は、個人がその日の初回として方法に参加することを指すこともあり得る。あるいは、初回は、個人が、ずっと以前にせよ直近の過去にせよ、過去において個人が参加したことがあるものと実質的に同様であるがわずかな変化を有する方法に参加することを指すこともあり得る。
また、方法が、最初の提示する段階の前に、ある段階を含み得ることも理解されるはずである。方法が個人にとって初回として実行される場合、方法は、任意選択で、閾値処理段階、評価、指示、および/または実演を含むこともできる。セッションまたは訓練プログラムの前後に評価段階を含むシステムの一例として図12を参照されたい。
閾値処理段階は、個人に1回または複数の試験において干渉なしの課題を提示することを含む。この閾値処理段階は、個人が干渉なしの課題をどのように行うか判定するのに役立つ。閾値処理の別の目的は、本方法の評価および他の段階を実行するための難度を決定することである。各個人が干渉なしの課題を行い得る基準能力が異なり得るため、特定の難度に対する閾値処理は、本方法を個人に合わせて調整する際に役立てることができる(例えば、より高齢成人は、課題の難しさが適合されると、より低い成績レベルで様々な課題を行うことができる)。閾値処理が行われない場合、干渉の存在は個人の基準レベルに応じて個人に異なる要求を提示し得る。各個人をある難度に正規化することにより、課題のレベルに対する基準成績とは独立した、標準化された干渉レベルを得ることができる。
評価または方法の他の段階を実行するための難度とは、個人が所定の割合の精度(80%など)で課題を行うレベルである。干渉なしのこの課題の難度は、まず、個人のカテゴリーについてのデフォルトの難度(例えばある年齢範囲の平均)、最低難度、または個人の前の評価に基づいて見合ったレベルで提示することができる。次いで、個人が特定の精度で実行するまで難度を変更することができる。代替の方法では、1回の訓練セッションで、個人を特定の成績レベルで迅速に閾値処理するための適応的閾値処理方法(心理測定ステアケースアルゴリズムなど)を使用することができる。
したがって、閾値レベルは個人に合わせてパーソナル化することができる。例えば、初回の閾値レベルは、個人が干渉なしの課題を、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、もしくは約90%またはそれ以上の正確さで行うことができるレベルである。閾値処理段階の後で、本発明の方法は、訓練セッションまたは訓練プログラムの前および/または後に評価を含んでいてよい。評価の詳細は後述する。
訓練セッションの開始前に、方法は、任意選択で、提示されるべき課題および刺激の種類を実演し、かつ、試験の実行に先立ち、どのようにして応答を入力するかユーザに指示することができる。指示は、刺激の提示を受ける手順、および応答を入力する手順に個人が習熟するための練習を提供することができる。指示は、刺激/課題が提示されるときに、または標的刺激の非存在下で個人から期待される応答の種類に関する詳細を含むことができる。応答は、ボタンをクリックする身体行動および/またはカーソルを画面上の正しい位置へ移動させる身体行動、頭の動き、指または手の動き、音声による応答、目の動き、足踏み、トレッドミル上でのランニング、跳躍等であり得る。本開示の方法により受け取られる個人からの入力または応答は、個人の側での行動の自発的開始を含み、個人から受動的に得られる測定を除外する。ある態様では、脳磁気図記録で得られるような、脳波といった受動入力は、本開示における個人からの入力としては除外される。別の態様では、方法は、入力として個人の側の自発的行動と一つまたは複数の受動測定の両方を受け取ることを含むことができる。受動測定は、脳波計(electroencephalograph)(EEG)/機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging)(fMRI)型測定、電気反応、心拍変動などといった任意の生理的記録を含むことができる。
応答およびフィードバック
前述のように、例示の態様による本発明の方法は、個人に、一連の刺激に応答することを含む課題を割り当てる。課題に応じて個人は、音声による、または個人の運動機能によるものを非限定的に含む様々なやり方の一つまたは複数で応答することができる。例えば、標的識別課題では、応答は、標的刺激が提示されるときにはある一定のボタンをクリックし、非標的刺激が提示されるときにはボタンをクリックしないようにすることである。他の運動性応答には、フットペダルを踏むこと、身体の別の部位を動かすこと(うなずくなど)、走ること、跳ぶことなどが非限定的に含まれ得る。あるいは、個人は、標的刺激を提示されるときに語または句を発話することにより音声で応答することもできる。
課題が動画としての一連の視覚刺激を含む場合、個人は、乗物(自動車や自転車など)といった移動オブジェクトを操縦するか、またはある特定の移動オブジェクトをクリックするよう指示され得る。これらの種類の応答は、視覚運動追跡と表現されてよく、例えば、キーボード、ジョイスティック、自転車、トレッドミルその他の運動器具を用いて行うことができる。同様に、個人が音の発生源の方向にクリックすることにより聴覚刺激を追跡する場合には、応答は、聴覚運動追跡と表現されてよい。
以下は個人から受け取ることのできる応答の種類である。当たり(真陽性):個人が一つまたは複数の標的刺激の存在または非存在を正しく表示した場合、応答は当たりであるとみなされる。応答はまた、応答の時間窓内に受け取られなければならない。例えば応答は、リモートまたはローカルでの、ユーザインターフェースを介したコンピュータへの入力とすることであり得る。個人の応答が当たりまたは真陽性であるとき、個人はフィードバックまたは出力を受け取り得る。
非応答(真陰性):個人が刺激セット中の標的刺激の存在の表示を正しく、すなわち、標的刺激の非存在が理由で避けた場合、個人の応答は非応答または真陰性である。個人は、真陽性について前述したような出力を与えられ得る。
偽陽性(フォールスアラーム):個人が非標的刺激を標的と誤って識別した場合、個人の応答は偽陽性である。この場合、個人は出力としてペナルティを受け得る。
失敗(偽陰性):個人が一つまたは複数の標的刺激の存在を誤って識別できなかった場合、個人の応答は応答の時間窓内での偽陰性である。被験者には、後述するように、ボーナスメータリセット(ボーナス方向の前進がゼロにリセットされるか、または減らされる)のようにペナルティが与えられ得る。
応答が、コンピュータまたは本方法を実行する他のツールによりカテゴリー化することができないような不明確なものであった場合、応答は、偽陽性、偽陰性へ、または単に未カテゴリー化/未確定応答としてカテゴリー化することができる。
課題が曲がりくねった経路上の自動車を操縦するといった追跡(視覚運動追跡など)を含む場合、応答は、オブジェクトが道路の中央またはその付近に留まった(当たり)時間の割合と、オブジェクトが経路の境界を越えて侵入した(失敗)時間の割合として評定することができる。
試験中に入力に応答してフィードバックが生成される場合、フィードバックは、セッション中の個人のリアルタイム成績に関係するものである。刺激が視覚的である場合、フレームパラメータが変化し得る。すなわち、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)は、標的刺激または刺激セットの周りの領域の色を、誤りを表示するように変更し得る。例えば、曲がりくねった経路上の車両といったオブジェクトの操縦を要求する課題では、車両の上方に、または車両と同じ視野に現れる、個人がどの程度うまく行っているかに応じて色を変えたり、振動したりする形(十字線など)があってよい。同様に、操縦されるオブジェクト自体も、被験者に成績に関するフィードバックを提供するために変化してよい(色を変えるなど)。車両が経路の中央にある場合、十字線は緑色で安定し得る。車両が道路の境界を侵害し、または経路から外れて走行する場合、十字線は振動し、または赤色に変化し得る。
例えば、画面の隅の「×」などの目に見える形や、ボーナスメータをリセットするなど、試験中の他のフィードバックが所望のように使用され得る。また、聴覚出力または視覚出力のいずれかにより、個人に、点数が増えた、減った、または同じままである得点を、入力が正しいか否かの表示として、知らせてもよい。
また難度をフィードバックとしてリアルタイムで変更することもできる。難しさは、課題の成績に関連して増減させることができる(例えば、課題の成績に前進があったときに自動車がコントローラ操作の影響をより受けやすく、またはより受けにくくなるなど。また自動車は、後退が生じたときにコントローラの操作の影響をより受けやすく、またはより受けにくくなってもよい。他の難度の変化には、全部または一部の画面ビューを暗くすることや、視野を明るくすることまたははっきりさせることが含まれる。課題または干渉に属する聴覚刺激についても同様の戦略が使用されてよい。これらの例、および前述の難度を変更する他のやり方は、個人へのフィードバックのモードとすることができる。
前述のように、方法は、個人に入力が正しいか否か知らせるための出力を生成することができる。出力も刺激も、もっぱら聴覚だけとすることも、またはもっぱら視覚だけとすることもできる。あるいは、混乱を回避するために、課題が視覚刺激を伴う場合に出力を聴覚とすることもでき、逆もまた同様である。以下で出力のいくつかの例を論じる。
一連の入力の後で(例えば試験または試験のセッションの打ち切り後に)、方法は、各課題がどの程度うまく行われたか判定するために入力を記憶し、かつ/または分析する。方法は、任意選択で、個人に、完了された訓練セッションの成績レベルを知らせるための出力を生成することもできる。出力は、音(例えば、前の試験と比べた成績の低下には「ドスンという音」または無音、成績レベルの向上には「キンコンカンという音」)などの聴覚フィードバック、または視覚フィードバック(例えばグラフィック表示など)とすることができる。出力は、ボーナスメータの前進、および5回連続の非応答後の、例えば視覚フィードバック(例えばグラフィックな成功表示、「チェックマーク」表示といったレベルの前進など)、追加点なし、または減点、および/または追加点を含むことができる。
完全な試験または訓練セッションの終了時の出力は、深く掘り下げた分析をさらに含むことができる。分析は、個人の成績を測定する指標の全部または一部を集約する。分析に使用されるデータは、訓練セッション自体から導出されてもよく、かつ/または以下でさらに詳細に論じる訓練後評価段階から導出されてもよい。
訓練前および訓練後の評価
前述のように、本開示の方法は、訓練前評価および訓練後評価をさらに含むことができる。これが全体の訓練プロセスの中に入った簡単なやり方が図12に示されている。また方法は、前述のようにフィードバックを提供するために訓練全体を通して断続的に(例えば試験間やセッション内で)評価の一つまたは複数を含むこともできる。
前述の本発明の方法の例示の実施形態による他の段階と同様に、評価は、個人に課題、および任意選択で干渉を提示する段階と、干渉ありおよび/または干渉なしでの個人の成績を評定する段階とを含むことができる。評価は、個人を訓練しようとするものではないという点で訓練セッションとは異なる。一態様では、訓練セッションとは異なり、評価における試験ごとの難度は変化せず、個人の成績に適合されない。そうではなく、評価試験における難度は同じまま(例えば、閾値処理段階で決定された難度などのまま)である。別の態様では、評価は、訓練セッションにおいて、参加者の能力を適応的に判定するために、ステアケース手順や最尤手順といった心理測定分析の分野で公知の方法により適合される。どちらの場合も、評価の目的は、個人の能力を訓練するのではなく、主に個人の成績を評定することである。本発明の方法の一例示的態様では、事前評価および事後評価は、一般に、前述および図11に示したように実行される。
一具体例として、評価は、妨害刺激や注意転導刺激(例えば背後において自動操縦で走行する自動車など)といった干渉の存在または非存在下で標的識別課題を提示することを含むことができる。また評価は、妨害刺激または注意転導刺激の存在下で視覚運動追跡課題を含む試験を提示してもよい。評価は、約2回、約3回、約4回、約5回、約6回、約8回、最大約10回またはそれ以上の試験を含むことができる。各試験は、提示する課題および/または干渉が異なっていてよい。評価は、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、最大約60分間またはそれ以上続く一連の試験を含むことができる。例えば、評価は、60分以内に実行される連続した5回の異なる試験とすることができる。
図11を参照すると、前述の評価は、訓練セッションまたは訓練プログラムの前および/または後に実行することができる。訓練後評価に関与する各段階は、訓練前評価ではデータが訓練前の個人の能力および/または成績を判定するのに使用されることを除いて、前述の訓練前評価の各段階と同じである。しかし、訓練セッション後には、分析されるデータは、評価自体のみならず訓練プログラムの間にも収集されたデータを含み得る。加えて、訓練後評価は、個人へのフィードバックとしても、次の訓練セッションの前進を指図するための制御としての訓練プログラムへのフィードバックとしても使用されてよい。
また分析は、訓練後の個人の成績および能力も反映する。言い換えると、訓練後評価は、個人の訓練後の成績を訓練前の成績と比較し、個人の認知能力に対する訓練の影響を評価することができる。例えば図5A~図5Bを参照されたい。
ある態様では、訓練前および訓練後の評価は、訓練される課題および/または干渉と本質的に同じである機能をテストし、よって、その特定の環境における個人の成績向上の直接的尺度を提供する。別の態様では、訓練前および訓練後の評価は課題または干渉と異なるものであり、よって、訓練セッションまたは訓練プログラムの利益の転移が達成されたかどうかをテストする。詳細は以下の効能の実証の項で示す。
本開示の方法が訓練後評価の段階を含む場合、様々なデータおよび分析を実行することができる。分析されるデータは、最近完了された試験または訓練セッションでの精度、当たり数および/または失敗数を含み得る。成績を評価するのに使用することのできる別の指標は、標的刺激の提示後に個人が応答するのに要した時間量である。別の指標には、例えば、反応時間、応答分散、正しい当たりの数、省略エラー、フォールスアラーム、学習率、および/または成績閾値などが含まれ得る。成績は、様々な課題の成績に対する2つの異なる種類の干渉(例えば注意転導や妨害刺激など)の影響を比較するためにさらに分析することができる。ある比較は、干渉なしでの成績、注意転導ありでの成績、および妨害ありでの成績を含むことができる。課題の成績レベルに関する各種の干渉のコスト(注意転導コストおよび妨害刺激/同時複数課題コストなど)が分析され、個人に報告される。例えば、個人には、個人の成績レベルが、視覚注意転導刺激の存在下では10%減少した(注意転導コスト)が、妨害刺激の存在下では(例えば個人が同時複数課題を行っているときなど)20%減少した(同時複数課題コスト)ことを知らせることができる。したがって、注意転導刺激のコストは同時複数課題のコストの半分である。
分析およびデータのいずれかまたは全部が、課題、特定の種類の干渉、および各課題に対応するそれらの干渉のコストを記載した報告書として個人に提示され得る。また方法は、任意の以前のセッションまたは一連のセッションと最新のセッションとの比較を示すグラフを有する報告書を生成することもできる。分析は、課題または干渉に関与した刺激および感覚機能の種類に基づいて成績をさらにカテゴリー化し得る。加えて分析は、別の群と比較した成績尺度も提示し得る(例えば、特定の個人がその個人の年連範囲内の他者と比較してどうかなど)。上記およびその他の分析は、表示画面上で直接報告することも、データベースに記憶することも、音声で、かつ/または電子メールおよび他の電子的手段によって伝えることもできる。
前述のように、個人の応答の正確さまたは誤りを判定することを別として、方法は、応答の反応時間、および/または個人の成績についての任意の統計的尺度を分析、記憶、および出力することができる(例えば、最後の数回の試験における、指定の持続期間にわたる、または、ある種類の非標的刺激および/もしくは標的刺激、ある特定の種類の課題等について特有の、正しいまたは誤った応答の割合)。また上記に加えて、当技術分野で公知である認知能力を評価する他の手段も、訓練後評価として、またはその一部として用いられ得る。
当技術分野で公知の認知能力の評価のいくつかの例には、知能についてのもの(例えば、コース立方体テスト(Kohs block)、ミラー類推テスト(Miller Analogies Test)、ウェクスラー成人知能テスト(Wechsler Adult Intelligence)、ワンダーリックテスト(Wonderlic Test)、または他のIQ関連のテストなど)、認知発達についてのもの(例えばノックスキューブ(Knox Cubes)、言語適性、ポルチュース迷路テスト(Porteus Maze Test)など)、精神医学/人格テスト(例えばマイヤーブリッグズ(Myer-Briggs)など)、および記憶テスト(例えば短期、長期、作動、意味など)、持続的注意テスト、選択的注意テスト、有効視野(Useful Field of View)、TOVA、フィルタテスト(Filter test)、オブジェクト追跡テスト(Object-tracking test)、二重課題テスト、注意の瞬きが含まれる。
前述の一つまたは複数の異なる出力は、各試験後に個人に提示されても、またはされなくてもよい。またいつどんな出力が生成されるかも、個人および/または訓練プログラムの運用者が決定することができる。
個人の成績および訓練の影響に関する評定を提供することに加えて、評価は、進行中の訓練プログラムを誘導するのに使用することもできる。ある期間にわたる周期的評価は、訓練についての特定の戦略を変更または維持する必要、例えば、課題、干渉、特定の種類の刺激、入力の手段などを維持/変更する必要があるかどうか判定するのに使用することができる。例えば、評価は、プログラム管理者に、個人が「ブースター」訓練を必要としていることを知らせてもよい。そのような評価は、試験間、セッション間、または2回以上の訓練プログラムを施す合間に実行することができる。進行中のプロセスの一部としてどこでも適切なところに評価を挿入する柔軟性を複数の矢印が反映している例として、図11および図12を参照されたい。訓練と評価の反復性の組み合わせは、本開示の方法のシステム手法の一例である。
また本開示の方法は、認知の増強を目指す他の方法、または体力、および健康全般を改善する方法と組み合わされてもよい。例えば、本開示の方法の訓練は、複合訓練療法になるように、第2の方法の訓練と交互に行うこともでき、同時に用いることもできる。一例は、トレッドミル上でのランニング、自転車こぎ、動作/位置センサ技術を用いた装置の使用(例えば、Sony Wii Fit(登録商標)、Playstation Move(登録商標)、Xbox(登録商標) Kinectなど)といった身体運動を伴う個人からの入力を要求することである。入力としての身体運動は、個人に提示される課題または干渉と無関係なものであってよい。あるいは、身体運動は、課題を行うための入力を受け取るための手段とすることもできる。
方法は、ゲームまたは課題の形で個人に提示されるように設計されてよく、ゲームまたは課題において個人への指示はゲームの目的を含み、個人の入力が得点される。例えば、正しい応答は得点を上げ、応答が誤りである場合には、得点は不変のままであるか、または下げられる。
本発明の方法は、訓練セッションと統合された魅力のあるゲーム要素の追加を含む。これらのゲーム要素は、ユーザまたは訓練プログラムに相当な利益を付与する。一つの利益は、ゲームコンテキストがユーザにより多くの注意資源を課題に向けるよう促すことができ、これは認知を増強させるのにきわめて重要となり得る。加えて、ゲームコンテキストは、ユーザが注意を払い、かつ/または訓練を完了するための動機付けも提供することができる。言い換えると、ゲームコンテキストによって作り出される興味および目標指向は、魅力に乏しい訓練課題自体によって一般にサポートされるはずの期間よりも長期間にわたって訓練を続けるための動機付けを提供する。個人の動機付けおよび興味を増大させることのできるゲーム特有の特徴には、ボーナスポイント、ゲーム内報償またはペナルティ、例えばそれらのグラフィック表現または聴覚的表現、難度または経過時間と共に増減する報償またはペナルティ、実生活での報償などが非限定的に含まれ得る。魅力を高めるさらに別のゲーム要素は、ビデオゲーム、ボードゲーム、認知パラダイム、フィットネス/スポーツ教育、および教育プログラムの技術分野の当業者にはよく知られている。
診断
前述のように、方法は、任意選択で、訓練前評価および/または訓練後評価を含む。訓練を目的として個人を評定するのに用いられることに加えて、評価は、診断を目的として単独で、または他の療法(健康増進や医療など)と組み合わせて使用することができる。評価が訓練プログラムに使用されるか、それとも特定の状態または臨床的疾病の診断に使用されるかにかかわらず、同じ種類の評価を使用することができる。一例が、図11に示されている種類の評価である。
前述の評価の各段階は、訓練の有効性を評定するための尺度を提供する。前述したように、(この図6の)以下の実施例の項では、個人の注意転導コストおよび同時複数課題コストを測定し、訓練の前のコストと比較することができる。
また評価は、訓練から独立に、疾病または予後を診断するために個人をその認知能力について評価するといった他の状況において使用することもできる。認知能力(例えば干渉に対する感受性、作動記憶、同時複数課題能力など)は、認知障害に関連した疾病(アルツハイマー病など)、薬物、手術、または他の医療行為の副作用、予後などの診断において重要な指標を提供する。訓練および/または診断法のための目標集団については以下でさらに詳細に説明する。
刺激
前述のように、方法は干渉に加えて課題を個人に提示する段階を含む。課題は、入力として個人からの応答を要求する刺激を提示することを含む。干渉は、無視されるべき(注意転導刺激など)、または応答を要求する(妨害刺激など)一つまたは複数の刺激を提示することを含む。
本方法により用いられる刺激は、例えば、視覚や聴覚のものとすることができる。課題は、データ処理およびある特定の感覚のコマンドを必要とし得る個人からの応答をさらに要求する。以下は、本方法で使用することのできる刺激のいくつかの例、および課題での応答生成に関与する感覚の説明である。
視覚的なもの
個人に提示される刺激は視覚的なものとすることができる。視覚刺激は可視光スペクトルの電磁波で構成されており、例えば、明るさ、色、形、表面テクスチャ、向き(格子など)、視野内での位置、綴り(テキストなどの)、質、または動き、ならびにこれらの特徴の特性を特徴とし得る。また、各刺激を本明細書ではグラフィック要素ともいう。
各グラフィック要素は個人に対して、例えば、数分の1秒間、1秒間、もしくは約1秒間と約2秒間の間の長さにわたって、または最大約2秒間またはそれ以上にわたってなど、特定の持続時間で提示され得る。例えば、視覚刺激は、幾何学的な形の円、赤色の円錐、数字の「5」などとすることができる。視覚刺激の別の例は、特定の人の顔、特定の年齢範囲の顔、異なる民族の顔、またはそれらの任意のパラメータ変異などとすることができる。
また、視覚刺激は、写真、ディジタル生成画像、または最新の映画やビデオゲームなどの動画で見られるように、複数の形、色、テクスチャなどを含むような豊富な画像とすることもできる。画像は道路上を進む車両とすることができ、その場合の道路は様々な形および幅のものとすることができる。個人が視覚刺激を動画の形で知覚することになるように一連の連続画像を提示することもできる。道路上の車両画像の例では、一連の視覚刺激は個人に、道路上を進んでいる車両を提示することができる。
視覚刺激が課題において用いられる場合、課題は例えば標的識別とすることができる。課題は個人に、画面上で緑色の円が現れる度に緑色の円に応答するよう指示することを含み得る。他の形または他の色の円が提示される場合(緑色の五角形など)、個人は応答すべきではない。個人が課題においてどのように応答し得るかは後述する。また標的視覚刺激を子供の顔とし、非標的刺激を大人の顔とすることもできる。別の例として、標的視覚刺激をある特定の種の第1の動物(人間以外の動物など)の視覚画像とすることもでき、非標的視覚刺激を第1の動物とは異なる種の動物とすることができる。標的視覚刺激は、ここから推論される任意の特性の一つまたは複数において非標的視覚刺激と異なり得る。
また視覚刺激は別の種類の識別課題において提示することもできる。個人には一連の視覚グラフィック要素が提示され、その一連のグラフィック要素における、他の非標的グラフィック要素と同じカテゴリーに属するものではない、標的グラフィック要素に応答するよう指示される。別の類似の課題では、個人は、ある一連のものにおける、個人に提示されるオブジェクトの他の部分のように正しい位置または向きにあるように見えない部分を識別するよう指示され得る。
課題に動画として提示される画像が関与する場合、課題は視覚運動制御を含み得る。個人は、色、形、または前述の任意の特性が変化する環境で移動オブジェクトを制御するよう指示される。一例は、曲がりくねった経路上で、または障害物のある経路上を移動する車両を操縦することを含む。他の例は、現れるまたは移動する特定のオブジェクトをクリックすることを含み得る。
聴覚的なもの
個人に提示される刺激は聴覚的なものとすることができる。聴覚刺激とは音を意味し、例えば、周波数、大きさ(すなわち強さ)、音色、またはこれらもしくは任意の他の音声特徴の任意のパラメータの組み合わせを特徴とし得る。聴覚刺激が個人に提示される持続時間は変化させることができる。例えば、聴覚刺激は個人に対して、例えば、数分の1秒間(約40ミリ秒間、約50ミリ秒間、約60ミリ秒間、約70ミリ秒間またはそれ以上など)にわたって、1秒間にわたって、または約1秒間と約2秒間の間の長さにわたって、または最大約2秒間またはそれ以上にわたって提示されてよい。聴覚刺激提示の持続期間の一例は約100ミリ秒間である。
また刺激は、母音、音素、音節、語、質問、または陳述のようなスペクトル複合刺激とすることもできる。また刺激は音声によって提示することもでき、したがって、提示音声(例えば特定の鳥の鳴き声など)を特徴とすることもできる。また聴覚刺激は、振幅(すなわち強さもしくは大きさ)、周波数、または任意の他の正弦波特性で定義される波形を特徴とすることもできる。
一連の視覚刺激が動画として知覚される前述の視覚刺激と同様に、一連の聴覚刺激を個人に、陳述、歌、ナレーションなどとして知覚させることもできる。
課題が標的識別を含む場合、標的聴覚刺激は、周波数、大きさ、音色といった特徴の任意の一つまたは複数、ならびにこれらの特徴の特性において、非標的聴覚刺激と異なるものとすることができる。例えば、刺激が周波数において異なる場合、周波数の差は、ヘルツ単位またはオクターブ単位で測定され得る。ヘルツ(Hz)は、音波内の毎秒のサイクル数を測定し、オクターブは周波数をピッチとして表す。非標的聴覚刺激と標的聴覚刺激との周波数の差は、約0.01%から約0.05%までの間、約0.05%から約0.1%までの間、約0.1%から約0.3%までの間、約0.3%から約0.5%までの間、約0.5%から1%までの間、約1%から約3%までの間、約3%から約6%までの間、最大約9%またはそれ以上とすることができる。
非標的聴覚刺激と標的聴覚刺激との差が大きさにおいて異なる場合、その差は、標準的な基準レベルを上回るデシベル(dB)単位で測定される音圧レベル(SPL)で表すことができる。標準的な基準レベルは約20μPaである。例えば、標的識別課題では、個人に女性の声のみに応答するよう指示することができる。
聴覚刺激が関与する別の課題では、個人に、声で尋ねられる質問に答えるよう、または発話された聴覚刺激に応答してある語または音を繰り返すよう指示することができる。
前述の音の特徴のいずれか、またはそれらの組み合わせを、標的聴覚刺激が本方法で使用され得る一つまたは複数の方法とすることができる。
組み合わせ刺激
例示の態様による本発明の方法では、異なる感覚系の刺激の組み合わせが個人に提示され得る。例えば、聴覚と視覚両方の刺激が同時に、または順次に提示され得る。またこの連続では、同期させることもまたは同期させないことも可能な一連の聴覚刺激および視覚刺激を提示することもできる。識別課題において標的セットは、標的聴覚刺激または標的視覚刺激またはその両方を含むことができる。例えば、標的刺激は、緑色の円の視覚刺激と、聴覚刺激としての「円」という発話語の組み合わせとすることができる。
提示のタイミング
反復の間に、2つ以上の干渉を提示することができ、干渉は、多種多様な順序およびタイミングで提示することができる。様々な順序および間隔の干渉を使用することにより、本発明の所望の効果を複数のやり方で訓練することができ、異なるユーザに異なる効果が及ぼされ得る。例えば、妨害刺激および/または注意転導刺激は、すばやく提示することも、ごくまばらに提示することも、ランダムな間隔で提示することもできる。妨害刺激および注意転導刺激は、規則的なパターンで交替してもよく、前の干渉、または課題に属する刺激に対してランダムな間隔をおいて変更してもよい。前述のように、干渉は課題と同時に提示することも順次に提示することもできる。例えば干渉は、課題に属する刺激間の間隔において提示することができる。個人とプログラム管理者のどちらかが、干渉と課題との間のタイミングのジッタを制御することができる。
課題または干渉に属する2つ以上の刺激を連続して(例えば動画や文などとして)提示することができる。一連の刺激が同じまたは類似の刺激間間隔(ISI)で個人に提示される。一連の刺激が同じISIで個人に提示される場合、その刺激は、セッションにおいて同じ頻度で発生しているといわれる。例えば、あるセットのISIは、3秒間、2.5秒間、2秒間、1秒間、または、数分の1秒間、例えば約600ミリ秒間、約500ミリ秒間、約400ミリ秒間、約300ミリ秒間、約200ミリ秒間、もしくは約100ミリ秒間またはそれ以下などとすることができる。あるいは、一連の刺激は同じISIを有していなくてもよく、ISIをランダムとすることもできる。
視覚刺激セットが動画として提示される場合、連続画像のISIを周波数と見なすこともでき、フレーム/秒(frames per second)(FPS)として表すことができる。例えば動画は、約40Hz、約45Hz、約50Hz、約55Hz、約60Hz、約70Hzまたはそれ以上の周波数を有するものとすることができる。
識別課題がある場合、そのセットは標的刺激を含み、そのセットはそのシーケンスに少なくとも一つの標的刺激を含む。標的刺激の割合は、提示される非標的刺激の約10%、20%、40%、50%、もしくは60%、またはそれ以上といったように変動させることができるが、これに限定されない。標的刺激の数は、合計刺激数未満とすることができる。あるいは、標的刺激の割合をランダムとすることもできる。標的刺激は、一定の頻度で提示することも、ランダムに連続して提示することもできる。例えば標的刺激には、一連の刺激内の任意の位置で現れる、または一貫して3刺激ごとに現れる等しい確率を与えることもできる。
目標集団
本発明の方法およびツールを使用することのできる個人は任意の人、特に、認知能力の増強に関心を有する人とすることができる。後述する目標集団のいずれかについては、その認知能力(障害や干渉に対する感受性など)を評価する診断法および訓練が、本開示の方法の特に有益な用途である。認知機能における干渉は、知覚、注意、および記憶を含むある範囲の機能にわたる認知能力に厳しい影響を及ぼすことが認知分野において認識されるようになってきている。したがって、干渉に対応することのできる能力を増強することに明確にねらいを定める新しい訓練方法から利益を得るであろう多くの潜在的集団が存在する。
本方法およびツールから利益を得ることができる個人には、高齢成人といった成人が非限定的に含まれる。例えば、本方法およびツールは任意の年齢の成人に役立てることができる。健康な高齢成人は認知干渉の処理においてかなりの欠損を有することは周知である。加えて、本発明の知見の示すところでは、若年成人でさえもそのような欠損の徴候を示すことがある。したがって、例えば、約30歳、約40歳、約50歳、約60歳、約70歳、最高約80歳またはそれ以上の成人を、本発明の方法に対する個人とすることができる。個人の加齢に伴う個人の認知能力の、測定可能な低下はよくあることである。この低下の経験は、様々な課題における時折の見落とし、および/または集中することがますます難しくなることとして発現し得る。この低下は、多くの場合、加齢と共により頻繁な過失へと進行し、その場合、同時複数課題を行っているまたは注意転導を回避する間の視覚または聴覚情報の抽出を要求する課題を行う際に、一時的な困難が存在する。自動車を運転しているときに危険を回避すること、人込みの中から見知った顔を探すこと、速く読むことなどがそのいくつかの例である。よって本発明は、認知能力を向上させ、または認知機能の確立された低下または低下率を改善することを望む任意の年齢の個人において特に有用である。
そうした低下は、典型的には、50歳以上およびその後の数十年間にわたって加速し、そうしてこれらの過ちは目に見えてより頻繁になる。この低下をしばしば臨床的に「老化関連の認知低下」と呼ぶ。多くの場合(特に、アルツハイマー病、パーキンソン病といったより深刻な病気と比べて)良性とみなされるが、そのような予測可能な老化関連の認知低下は、日常課題を難儀なものにすることにより、生活の質を極度に変える可能性がある。
老化関連の認知低下は、現在、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment)(MCI)として知られているより症状の重い状態につながる可能性があり、MCI患者は、認知症の公式の臨床基準は満たさないが、患者のこれまでの生涯での能力と比べて認知機能の明確な急激な低下を示す。本方法およびツールは、人、例えばMCIにかかっている、またはMCIの危険がある人におけるこの厳しい神経系疾患の発症を逆行させる、かつ/または防止する可能性を有する。
老化関連の認知低下を別として、認知障害のある、またはその危険にあるあらゆる年齢の人々が、本発明に利益を与えることができる。例えば本発明は、その認知喪失が外傷(例えば外傷性脳損傷など)、治療、慢性の神経精神病の、または未知の原因の結果として発生したものである個人を訓練するのに役立つ。そのような認知障害は、老化関連のものか否かを問わず、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、うつ、統合失調症、認知症(AIDS関連の認知症、血管性認知症、老化関連の認知症、レーヴィ小体と関連付けられる認知症、および特発性認知症を非限定的に含む)、ピック病、疲労と関連付けられる認知欠損、多発性硬化症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫性障害(OCD)およびその他を含む様々な状態の寄与因子または明らかな症候とすることができる。他の認知喪失には、感染性病原体、医療行為、アルコールまたは薬物などに起因する脳損傷が含まれ得る。よって、認知低下または認知障害は様々な悪条件に関する寄与因子またはマイナスの影響となる可能性があり、よって本発明は、不安、ストレス、パニック、うつ、身体違和感、または倦怠感の抑制、または診断に役立ち得る。加えて、認知低下は、表面上は認知と無関係であるが、上記の認知プロセスに著しく悪影響を及ぼす様々な疾病状態からの続発症状としてもたらされる場合もある。したがって、痛み、または著しい痛み、不眠、化学療法や放射線治療といった疾病治療の副作用を伴う疾病にかかっている個人も、本開示の方法に用途を見出すことができる。
本発明から利益を得られる集団には、注意欠陥障害(例えば注意欠陥多動性障害(ADHD)など)に苦しむ集団がさらに含まれる。また、一般のまたは診断未確定の発達遅延、自閉症スペクトラム障害(ASD)(例えばアスペルガーなど)を含む発達障害の子供および成人集団の認知喪失も、本方法により逆行させることができる可能性がある。
慢性の神経精神病を患っている個人については、抑制性ニューロン集団の変化、ミエリン形成、応答緩徐化、偶発性応答協調不全(emergent response dis-coordination)、空間、スペクトルおよび時間詳細における応答選択性の低下、ならびに背景刺激と標的刺激との間の区別の低下は、老化関連の認知低下の影響と非常に類似している。したがって、高齢者における認知障害の側面と対応する認知障害の側面を有する任意の年齢の個人が、本開示の方法およびツールの目標集団である。個人は、本方法で訓練された場合、相当な「矯正的」神経学的変化を経験することができる。加えて、多くの個人も、認知機能の知覚できる低下を経験していなくても、その現在の認知能力を高めたいと思う可能性がある。一例は、日常課題(例えば、同時複数課題、集中、記憶、会話技能といった社会的技能、意思決定能力、創造性、特定の課題に対する反応時間など)の能力を改善することである。別の例は、認知能力の一般的メトリックを改善すること(例えば「IQを高める」ことなど)である。人々は干渉に影響されやすく、または日常生活で干渉にさらされているため、本方法は、必ずしも認知低下または認知障害にかかっていない人々の認知能力を訓練するための効用も有する。また、上記の訓練された認知能力に依存する2次的効果も、本発明を使用した訓練の目標とすることができる。例としては、特定の問題領域(例えば数学や読書など)における学習といった学習、干渉の存在下での学習することができる一般的能力、社会的相互作用の増強などが含まれる。したがって、成績レベルを問わず、就学前児童および就学児童、ならびに10代の若者および若年成人は、本明細書で説明される干渉訓練から利益を得ることができるはずである。さらに、その活動が同時複数課題を伴う集団も、その職業上の任務または趣味を実行する際の成績を向上させることができるはずである。そのような集団の例には、アスリート、航空機パイロット、軍人、医師、コールセンタースタッフ、教師および車両の運転者が非限定的に含まれる。
効能の実証
個人の認知および関連した影響を診断し、または増強することを目的として、訓練セッションまたはプログラムの効能を実験的に判定することは望ましいと考えられる。実験的試験の適切な方法には、予備的人体研究および臨床試験を含む、認知、行動、または薬理学的介入の効能をテストするための当技術分野で公知の種類の研究が含まれる。これらの種類の実験的試験は、任意の個人群を用いて行うことができ、好ましくは、最終的な訓練セッションまたは市場製品の目標集団を表す個人群を用いて行うことができる。好ましくは、研究は、偽薬/ニセ/賦形薬比較群、被験者および実験者の盲検化、被験者の様々な群へのランダム化などといった当技術分野で公知の方法を含む、結論に強力な統計的検出力を付与するようなやり方で行われる。
上記各項で述べたように、本発明に適する一つの効能試験方法は、訓練が、評価を構成する機能の測定可能な変化をもたらしたかどうかの判定を可能にする、訓練前評価および訓練後評価の実施である。そのような試験手順の概要が図12に示されている。評価は、様々な種類の機能のうちの一つまたは複数で構成することができる。
一態様では、訓練後および訓練後評価は、健康な個人と、臨床患者集団を含む認知欠損にかかっているかまたは認知欠損にかかる危険を有する個人の両方に関係する一般的認知機能で構成される。そのような適切な試験には、知覚能力、反応および他の運動機能、視力、長期記憶、作動記憶、短期記憶、論理、意思決定などの試験を含む、認知研究または行動研究におけるある範囲の認知の任意の特定機能をテストするための当技術分野で公知の試験が含まれる。そのような測定の具体例には、TOVA、MOT(motion-object tracking(移動オブジェクト追跡))、SART、CDT(Change detection task(変化検出課題))、UFOV(有効視野)、フィルタタスク(Filter task)、WAIS数字記号、トループ(Troop)、サイモン課題(Simon task)、注意の瞬き、Nバック課題(N-back task)、PRP課題、課題切替え試験、フランカー課題(Flanker task)が非限定的に含まれる。
別の態様では、訓練後および訓練後評価は、日常生活の実際の機能的動作の改善を測定する試験で構成される。例としては、そのような結果を測定するために明確に構築され、または検証されている試験、例えば、高齢者集団の臨床試験で使用される日常生活動作や、指図された課題、読みまたは会話の理解を行うことができる能力、職場環境での効率などといった類似の単純な測定が含まれ得る。
別の態様では、訓練後および訓練後評価は、特定の疾病または状態に関連した症候または機能の改善を測定する試験で構成される。適切な種類の試験には、疾病または状態の症候の重篤さまたはバイオマーカーを客観的に測定する試験、症候の重篤さの臨床家または観察者による主観的な測定を使用する試験、および疾病状態と相関関係を有することが知られている認知機能を測定する試験が含まれる。そのような試験の例には、ミニ精神状態検査(Mini Mental State Exam)、CANTAB認知バッテリー(CANTAB cognitive battery)、神経心理学的状況の評価のための再現可能なバッテリー(Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status)、特定の状態に関連した臨床総合所見尺度(Clinical Global Impression scales relevant to specific conditions)、臨床家の問診に基づく変化の所見(Clinician's interview-Based Impression of Change)、重篤障害バッテリー(Severe Impairment Battery)、アルツハイマー病評価尺度(Alzheimer's Disease Assessment Scale)、陽性および陰性症候群尺度(Positive and Negative Syndrome Scale)、統合失調症認知評価尺度(Schizophrenia Cognition Rating Scale)、コナーズ成人期ADHD評価尺度(Conners Adult ADHD Rating Scales)、ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Rating Scale for Depression)、ハミルトン不安尺度(Hamilton Anxiety Scale)、モントゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(Montgomery-Asberg Depressing Rating scale)、ヤング躁病評価尺度(Young Mania Rating Scale)、小児うつ病評価尺度(Children's Depression Rating Scale)、ペンシルバニア州心配の自己評定式質問紙(Penn State Worry Questionnaire)、病院不安およびうつ病尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale)、異常行動チェックリスト(Aberrant Behavior Checklist)、ならびに日常生活動作尺度といった評価尺度または調査;アミロイドベータ、コルチゾルおよび他のストレス応答マーカーの検出といった疾病または健康の内部マーカーを測定する生理的試験;特定の神経的特徴の存在に基づいて状態を評価する脳イメージング研究(例えばfMRI、PETなど)が非限定的に含まれる。
別の態様では、訓練後および訓練後評価は、被験者自身の自己報告知覚を測定する調査または質問紙形式の試験で構成される。これらは、健康な機能もしくは感情、または疾病の機能もしくは症候の自己報告尺度を含むことができる。適切な自己報告試験の例には、ADHD自己報告尺度(ADHD self-report scale)、陽性および陰性情動調査表(Positive and Negative Affect Schedule)、うつ不安ストレス尺度(Depression Anxiety Stress Scales)、簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology)、PTSDチェックリスト、ならびに被験者が自分の状態の症候の一般的感情または現実世界の機能状況への満足感または改善に関して報告するために行うことができる任意の他の種類の調査が非限定的に含まれる。
エンドユーザ製品
本発明は、目標集団に属する個人によって使用されるであろう「製品」を含む、個人に訓練を行う様々な表現形態へ組み入れることができる。そのような製品は、認知科学者もしくは研究者、臨床家他の医療提供者(精神科医、心理学者、医師、看護師、専門医など)によって提供されてもよく、またはいかなる指示もなしで、単に個人によって単独で使用されるだけでもよい。また製品は、教育者によって(例えば学生のために)提供されてもよく、雇用者によって被雇用者に(例えば被雇用者の同時複数課題を行う能力を増強するために)提供されてもよい。
本発明は、ソフトウェアまたはコンピュータプログラム(ビデオゲームなど)に組み入れることができる。本発明は、様々な干渉を処理しながら進路を通ってオブジェクトを操縦することを中心とするビデオゲームといったビデオゲームの単独の焦点とすることができる。あるいは本発明は、既存のゲームに組み入れ、ゲームの主要な焦点ではない特定の部分として使用することもできる(例えば、時間的、または空間的一部分、レベルの目標、またはレベル内もしくはレベル間での断続的課題として、またはゲームプレー全体を通して控え目に提示されるものとしてなど)。
別の例では、本発明は、映画、テレビ番組、ソーシャルネットワーク内のアプリケーションといった体験へ組み入れられる。方法を実行する際の前進または成功は、この体験の「解錠」機能とすることもでき、別の体験の参加における前進とすることもできる。例えば、映画を見ているときに、本発明がゲームとして現れてもよく、ある一定のレベルの成功を遂げるユーザは映画を視聴し続けることができる。ソーシャルネットワーク体験に関しては、ある一定のレベルでの成功がソーシャルネットワーク内でのある一定の連絡先を明らかにすることに寄与してよい。ソーシャルネットワークへの統合は、FACEBOOK(登録商標)、TWITTER(登録商標)、LINKED-IN(登録商標)、GOOGLE PLUS(登録商標)、および当業者に公知の他のプログラムといったプログラムを用いてなされてよい。
あるいは、本発明は、ボードゲーム、カードゲーム、対人/ソーシャルゲームといった、個人がプレーする非電子ゲームに組み入れられる。そうしたゲームでは、干渉をゲームの有形部分(例えば特定の種類のカードなど)とすることもでき、ゲーム規則に由来する行動(例えば、第2のゲームプレーヤが、訓練を行っている第1のゲームプレーヤの注意をそらし、または妨害するなど)とすることもできる。
また本発明は、その詳細が当技術分野で公知である、Nバック作動記憶課題、応答課題に対する持続的注意(Sustained Attention to Response Task)(SART)といった、当技術分野で公知の、認知科学研究者により実施されるものと内容および実行において類似した、認知実験室方式パラダイムまたは認知訓練課題に組み入れることもできる。上記その他のパラダイムは、研究目的で使用されてもよく、個人の訓練に使用されてもよい。
さらに別の例では、本開示の方法の課題は、個人の日常生活の一部である実際の現実世界の課題とすることができる。個人はこの特定の課題での訓練を望む場合がある。その場合、注意転導または妨害が、課題の間に所与の頻度で、ゲーム、ソフトウェア、またはインターフェースを介して個人に与えられる。個人は、そのための訓練を行おうとする課題をいつ行うべきか決定し、次いで、本発明の方法を用いた注意転導/妨害製品を作動させることができる。次いで個人は、干渉の存在下で課題を行うために厳しく訓練されることになる。個人は、課題完了の成功、課題を完了した時間、または課題の製品に対する全般的満足感に関するフィードバックを提供してよい。個人からのフィードバックは、干渉インターフェースへの入力であると考えられる。非限定的な例として、注意転導/妨害アプリケーションを、様々な注意転導および妨害を含むモバイル機器(iPhone(登録商標)など)のために開発することもできる。ユーザは、例えば、仕事の報告書をキー入力している間に自分の作動記憶を向上させようとする可能性があり、したがって、作業報告書に着手するときに注意転導/妨害アプリケーションを起動すると考えられる。注意転導/妨害アプリケーションは、応答および非応答から入力を受け取るおよび登録すると共に、彼の課題での進捗を更新する。分析は、客観的尺度(完了した割合など)または主観的尺度(進捗に対する満足感など)のいずれかから報告することができる。注意転導/妨害アプリケーションは、前述のように注意転導/妨害刺激の難しさを上げることができると共に、例えば、より速いペースを(単位時間当たりで完了される課題の%で)要求することなどによって、課題の「難しさ」を上げることもできる。
また、本発明で提供される製品は、前述の診断法も包む。前述の製品のいずれも、個人が既定の期間にわたって方法に取り組む、「評価」または「診断法」として使用することができる。その場合評定者が、個人の認知障害または干渉に対する感受性を判定する。本明細書で説明される任意の種類の干渉を、その個人の正確な欠損または感受性に狙いを定めるために、製品において適用することができる。診断用製品は、個人の欠損特徴の報告書、および任意選択で、それらの特徴に対応する技能の増強のための推奨訓練療法を生成することができる。
コンピュータシステムおよびツール
本発明は、図1Aを参照して先に説明したようなプログラマブルコンピュータ上で実行された場合に本発明を実行することができる、コンピュータプログラム製品を提供する。前述のように、本明細書で説明される主題は、所望の構成に応じて、システム、装置、方法、および/または物品として具現化されてよい。特に、本明細書で説明される本方法の様々な実施態様は、ディジタル電子回路、集積回路、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはこれらの組み合わせとして実現されてよい。これらの様々な実施態様は、専用とすることも汎用とすることもでき、データおよび命令を受け取りかつデータおよび命令を送るために記憶装置、少なくとも一つの入力装置(ビデオカメラ、マイクロフォン、ジョイスティック、キーボードおよび/またはマウスなど)、ならびに少なくとも一つの出力装置(スピーカ、ヘッドフォン、および/またはモニタディスプレイなど)に結合された、少なくとも一つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能であり、かつ/または、解釈可能である一つまたは複数のコンピュータプログラムとしての実施態様を含んでいてよい。他の入力装置には、トレッドミル、エリプティカル、自転車、ステッパー、動作/位置センサリモコン(Wiiなど)といった身体運動で用いられるものが含まれる。
これらのコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、アプリケーション、コンポーネント、またはコードとも呼ばれる)は、プログラマブルプロセッサのための機械命令を含み、高水準手続プログラミング言語および/またはオブジェクト指向プログラミング言語で、かつ/またはアセンブリ/機械言語で実施されてよい。本明細書で使用される場合、「機械可読媒体」という語は、プログラマブルプロセッサに機械命令および/またはデータを提供するのに使用される任意のコンピュータプログラム製品、装置および/または機器(例えば磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラマブル論理回路(PLD)など)を指し、機械命令を機械可読信号として受け取る機械可読媒体を含む。
同様に、本発明のシステムは、CPUなどのプロセッサ、およびプロセッサに結合されたメモリも含んでいてよい。システムは、ユーザインターフェース(GUIなど)、およびこれらの構成要素を相互接続する一つまたは複数の通信バスをさらに含む。ユーザインターフェースは、少なくとも一つ以上の作動装置(ディスプレイやスピーカなど)、および一つまたは複数のセンサを含み、一つまたは複数のフィードバック装置も含んでいてよい。例えば、スピーカまたはヘッドフォンが、コンピュータプログラムの実行時に個人に聴覚的指示メッセージおよびフィードバックを提供してもよい。ジョイスティック、マウス、キーボード、動作/位置センサ技術を用いた装置(Wiiリモコンなど)を備える装置といった入力装置は、個人がコンピュータプログラムをナビゲートし、コンピュータプログラムによる視覚的または聴覚的指示メッセージの後で特定の応答を選択することを可能にする。方法が入力または療法の一部として身体運動を伴う場合、入力は、トレッドミル、自転車、ステッパー、Wii Fit(登録商標)などといった運動マシンをさらに用いることができる。
メモリは、プロセッサに本明細書で説明される方法の動作の一つまたは複数を行わせる、一つまたは複数のプログラムを含んでいてよい。メモリは、高速ランダムアクセスメモリを含んでいてよく、さらに、一つまたは複数の磁気ディスク記憶装置といった不揮発性メモリを含んでいてもよい。メモリは、中央処理装置からリモートに位置する大容量記憶を含みうる。メモリは、オペレーティングシステム(Microsoft Windows、Linux(登録商標)、UNIX(登録商標)など)、アプリケーションモジュールを記憶しており、任意選択で、ネットワーク通信モジュールを記憶していてよい。いくつかの異なるコンピュータプラットフォームが本開示に適用可能であるが、本開示の態様は、IBM互換コンピュータでもAppleコンピュータでも、あるいは、セットトップボックス、ハンドヘルド機器(携帯情報端末(PDA)、モバイル機器、スマートフォン、タブレットなど)、ゲームコンソールなどといった同様に構成されたコンピュータ装置上でも動作する。
前述のように、システムは、任意選択で、別のシステムまたは装置に試験または訓練の結果を伝えるためのネットワークインターフェースといった一つもしくは複数のネットワークまたは他の通信インターフェースも含んでいてよい。コンピュータネットワークは、サーバに接続された、前述のものと同様のコンピュータを含む。コンピュータとサーバとの間の接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)を介して行うことも、モデム接続を介して、直接、またはインターネット経由で行うこともできる。また、個人が本開示のコンピュータプログラムと関連付けられた報告書を出力することができることを示すために、プリンタがネットワークにおいてコンピュータに接続されていてもよい。コンピュータネットワークは、試験得点、ゲーム統計、個人の成績に関係する他のデータといった情報をあるコンピュータからサーバなどの別のコンピュータへ流すことを可能にする。個人の成績に関係するデータには、例えば、反応時間、応答分散、正確な当たりの数、省略エラー、フォールスアラーム、学習率、および/または成績閾値などが含まれ得る。管理者は情報を見直すことができ、次いで、特定の個人に関係する構成およびデータを個人のコンピュータへ戻すことができる。あるいは、またはこれに加えて、サーバがコンピュータプログラムを実行してもよく、個人は、個人のコンピュータを介して、例えばクライアント/サーバ関係などにおいてプログラムと対話してもよい。
前述のように、個人は、グラフィック要素および/または音を個人に提示し、個人が応答を提供するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して訓練演習を行ってよい。例えばGUIは、そこで様々な画像、例えば標的刺激などが順番に個人に表示される視野、ならびに個人が訓練演習と対話するための様々な画面上のボタンまたはコントロールを含んでいてもよい。例えばディスプレイは、個人が訓練セッションを開始し、または再開するために押す(例えばクリックする)開始ボタンを提供してもよい。また、さらに別のGUI要素が、例えば、現在の訓練ブロックの難度といった演習または課題に関する個人の進捗または状況の様々な局面を表示するために提供されてもよい。例には、連続した正しい応答の数を表示し得るボーナスメータ(または同等のもの)、明滅するグラフィック要素、音楽を再生するプログラム、および/または、ある指定の数、例えば5つの正しい応答が達成されたときにボーナスポイントを与えるプログラムなどが含まれる。
本発明を実行するアプリケーションモジュールは以下のうちの一つまたは複数を含んでいてよい。(a)本方法について前述したように、一連の刺激を生成するための、刺激生成制御プログラム、モジュール、または命令、(b)個人への刺激を作成または提示するための、作動装置または表示制御プログラム、モジュール、または命令、(c)個人の応答を示すセンサ信号内の生データを抽出することにより入力を受け取るための、センサ制御プログラム、モジュール、または命令(センサ制御プログラム、モジュール、または命令は、一つまたは複数のセンサの動作を制御するための命令も含んでいてよい)、(d)前述のように測定および分析を作成するために個人の応答を分析するための、測定分析プログラム、モジュール、または命令、ならびに(e)一つまたは複数の作動装置またはフィードバック装置を介して個人に提示すための出力としてフィードバック信号を生成するための、フィードバックプログラム、モジュールまたは命令。
アプリケーションモジュールはさらに、個人の測定データを含むデータを記憶してよく、任意選択で、分析結果などを含んでいてもよい。またアプリケーションモジュールは、個人以外の理論上のユーザまたは実際のユーザから導出されたデータを記憶していてもよい。そのようなデータは、一つまたは複数の対照個人群からの規準データとして使用されてよく、任意選択で、一つまたは複数の対照群からの測定データに基づく分析結果などを含んでいてもよい。前述のプログラムのいずれも、複数の位置、例えば複数のコンピュータ可読媒体などから記憶または実行され得る。例えば、刺激生成プログラムはネットワークを介してリモートから実行されてもよく、一方測定分析プログラムは、ローカルで記憶および/または実行され得る。
前述のように、本開示の方法は、個人の認知、例えば、干渉の存在下で課題を行う際の効率および力量などを向上させるためのコンピュータベースの演習および課題として用いることができる。以上ではいくつかの異なる形態を説明したが、他の改変または追加も可能である。特に、本明細書で示したものに加えてさらに別の特徴および/または変形が提供されてもよい。例えば、前述の実施態様は、開示の特徴の様々な組み合わせおよび部分的組み合わせ、ならびに/または前述のいくつかの別の特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせを対象としてもよい。加えて、添付の図に示され、かつ/または本明細書で説明される論理の流れは、望ましい結果を達成するために図示の特定の配列、すなわち順番を必要としない。
以下の例は本発明をさらに例示するものであり、いかなる点でも本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
方法およびツールの他の治療法および診断法との併用
本願で説明される方法は、認知を改善し、同時複数課題を行う能力を高め、気分を改善し、疾病および状態を治療することが知られている他の介入と併用することができる。介入は、薬物と、認知訓練法および精神治療法との両方を含む。セッションおよび訓練プログラムは、連続して使用されても、介入と同時に使用されてもよい。連続して使用される場合、セッションおよび訓練プログラムは、他の介入の前に使用することも、または他の介入の後に使用することもできる。セッションおよび訓練プログラムは、一つまたは複数の介入と併用されてもよい。
薬物療法には、コリンエステラーゼ阻害剤、メマンチン、抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤など)、抗不安薬(ベンゾジアゼピン、ブスピロン、バルビツレートなど)、および抗精神病薬が非限定的に含まれる。
認知訓練法には、コンピュータによる認知訓練、認知・行動訓練、認知改善療法、言語療法が非限定的に含まれる。
精神治療法には、行動療法、認知療法、力動的精神療法、精神分析療法、グループ療法、家族カウンセリング、芸術療法、音楽療法、職業療法、人間主義的療法、実存療法、トランスパーソナル療法、クライエント中心療法(人中心療法ともいう)、ゲシュタルト療法、バイオフィードバック療法、論理情動行動療法、現実療法、応答に基づく療法、箱庭療法、状況力学(status dynamics )療法、催眠および検証(hypnosis and validation)療法が非限定的に含まれる。精神療法は2つ以上の技法の組み合わせを含み得ること、および療法士は、個々の患者の必要および患者の応答に基づいて技法を選択し、調整することができることがさらに理解される。
本明細書で説明される実施例および態様は例示のためのものにすぎないこと、当業者にはこれらの実施例および態様を考慮した様々な改変または変更が示唆され、これらの改変または変更は本願の趣旨および範囲内、ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきものであることが理解される。本明細書で引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
実施例1 評価のための実験装置
研究には様々な年齢の成人が関与した(次の4つのランダム化試験群に募集した:(1)単一課題訓練、(2)同時複数課題訓練、(3)注意転導訓練、および(3)非接触対照(NCC)。各訓練群は、12時間の自宅訓練と、以下の6回の研究室訪問に取り組んだ:(1)神経心理学試験、(2および3)訓練前および訓練後の認知評価、(4および5)訓練前および訓練後の神経評価、(6)6ヶ月間の経過観察認知評定。NCC群は、(1)神経心理学試験、(2および3)非接触間隔前および非接触間隔後の認知評価、(4および5)事前および神経の評価を行った。
訓練前および訓練後の干渉能力を評定するために、参加者は、以下の3つのカテゴリーの中からの5つの実験課題に取り組む。
・単一課題(1)標的識別 - 「撃つ」、(2)視覚運動追跡 - 「運転する」;
・注意転導課題(3)追跡課題に受動的にさらされながらの標的識別 - 「道路ありで撃つ」、(4)標的識別課題に受動的にさらされながら視覚運動追跡 - 「合図ありで運転する」);
・妨害/同時複数課題(5)同時の標的識別および視覚運動追跡 - 「道路ありで撃つ」)。
各課題の、3つの5分間ブロックを、参加者全員に擬似ランダム化された順序で提示する。
(1)単一課題:標的識別(「撃つ」)。この課題では、「合図」が、ランダム化されたSOA(stimulus onset asynchrony(刺激開始時間差):2秒間、2.5秒間、および3秒間)で、中央の固定された十字印の上方2.5度の黒い背景上に現れる。スクリーンショットの一例が図1Bのパネルの左に示されている。実験の前に、参加者らは標的合図である色のついた形(緑色の円など)を知らされた。ボタン押しは、すべての標的合図に対して(左人差指で)行われるべきであったが、色または形の異なり得る非標的合図に対しては行われるべきではないとした。標的合図の当たりは、固定十字印が緑色に変わることによって表示され、応答が規定の時間窓内で行われた場合に発生した。この時間窓は、80%の精度の識別課題成績が得られる窓期間を個別に判定するステアケース閾値処理手順を使用して、実験前に定めた。閾値処理手順の詳細は以下の実施例5と併せて論じる。合図のうちの33.3%は標的であり、33.3%は付随的な非標的合図(色の特質を共有)であり、33.3%は非付随的な非標的合図(どんな特徴も共有しない)であった。記録した行動データには、当たり数、失敗数、正しい拒絶数、偽陽性数および応答時間が含まれた。参加者らは各回の終了時に正確さのフィードバックを受け取った。
(2)単一課題:視覚運動追跡(「運転する」)。参加者らに遠くまで延びる道路のある3次元環境を見せた。参加者らには、自分の「自動車」が、中央の固定十字印の下方2.5度の道路上に位置しているのが見えた。スクリーンショットの一例が図1Bおよび図1Cに示されている。セッションが開始すると、自動車は、道路が参加者に向かって進んでくるにつれて前方へ移動するように見えた。道路は進むにつれて左右にカーブし、参加者らは、右手でジョイスティックの水平軸を使用して道路の中央(グレーゾーン)に自動車を維持し、その間ずっと十字線上に固視を維持するよう指示された。道路の進路変更に加えて、道路には勾配も付いていた。参加者らは、道路上を自動車と一緒に進むインジケーター(速度計)内に自動車を保つことにより一定の速度を維持した。これは、ジョイスティックの垂直軸を使用して山と谷とから生じる速度変化を補正することによって、すなわち、上り坂を上るときには加速するために前方へ押し、下り坂を下るときには減速するために後方へ引くことによって達成された。自動車の速度は、各セッションの前に参加者ごとに、ステアケース閾値処理手順を使用して道路上での80%の時間の成績レベルを得ることにより事前に定めた。中央に対する道路上での正確な位置を記録した。道路からの逸脱についての参加者へのフィードバックは道路を外れたときの十字線の振動によって指示し、道路上での全体時間は各ブロックの終了時に提示した。
(3)注意転導課題:追跡課題に受動的にさらされながらの標的識別(「道路ありで撃つ」)。この課題では、参加者は、標的識別課題を全く前述のとおりに行ったが、単一課題で使用された黒い視界ではなく、道路が背景として提示された。スクリーンショットの一例が図1Bに示されている。また、自動車は「自動操縦」で道路に沿って進んだ。道路または自動車に対応するという目標はなく、道路または自動車はもっぱら標的識別への潜在的注意転導刺激として提示された。
(4)注意転導課題:標的識別課題に受動的にさらされながらの視覚運動追跡(「合図ありで運転する」)。これは他方の注意転導課題のミラーバージョンであった。この場合目標は、無関係な視覚的合図が潜在的注意転導刺激として提示される間に視覚運動追跡(「自動車の運転」)を行うことであった。スクリーンショットの一例は、直前に説明した注意転導課題のスクリーンショットと同様のものになる。
(5)妨害課題/同時複数課題:同時の標的識別と視覚運動追跡(「撃つおよび運転する」)。参加者は両方の単一課題を同時に行った。スクリーンショットの一例は、直前に説明した注意転導課題のスクリーンショットと同様のものになる。2つの課題の間には知覚と運動性の両方のオーバーラップが生じたことに留意されたい。
実施例2 訓練
2種類の干渉訓練(注意転導訓練および同時複数課題訓練)と一つの活性対照群(単一課題訓練)と非接触対照群(NCC)とを用い、NCCについては、自宅で4週間にわたって12回の1時間訓練セッションに取り組んだNCCを除外した。単一課題訓練は干渉評価の項で説明した2つの単一課題のランダム化された交替を含み:標的識別課題および視覚運動追跡課題が3分間ブロックとして提示された。同様に、注意転導訓練も、2つの注意転導課題のランダム化された交替を含んだ。同時複数課題訓練は、同時の標的識別および視覚運動追跡の12回のセッションを含む。最初のセッションの開始時の課題の難しさは、前の研究室訪問時に閾値処理手順によって得られた単一課題レベルに基づいて個別にカスタマイズした(すなわち、道路速度および標的識別応答時間窓を、単一課題のみで80%の成績レベルが得られるように最適化した)。訓練セッションと神経評価課題との主要な違いは、訓練は適応的であり、よって成績が改善されるにつれて、一定の正確さを維持するように、課題の難しさが上がる(すなわち、識別時間窓が減少し、道路速度が増加する)ことであった。各セッションは、次のセッションが前のセッションの終了時に達成されるレベルから開始するように関連付けた。以下の3種類のフィードバックを用いた。(1)リアルタイムフィードバック - 固定十字線の色変化(識別課題)および十字線の振動(追跡課題)。(2)断続的フィードバック - 各回の終了時に達成された、識別窓時間および道路速度に対応する「レベル」を報告する。同時複数課題訓練でもやはり、各課題の組み合わせ成績に関するフィードバックを「全体レベル」として提示した。これは低い方の実行課題を反映し、そのため、両方の課題への注意を助長した。(3)セッションの終了時に、最終セッションレベルを、この12部構成の山道に沿ってどこまで「進んだ」かを可視化するための地図と共に報告した。これを含めたのは、全12セッションの訓練療法におけるコンプライアンスを高めるためであった。
全参加者がラップトップおよびジョイスティックを使用して自宅で訓練した。訓練期間の開始時に、本明細書で提示する実験に精通した人物が参加者の自宅を訪問して、コンピュータのセットアップを手伝い、訓練に関して指示した。各セッションの開始時に指示および目標を強調する指示動画も用いた。参加者の参加期間全体を通して電話および電子メールによるサポートを提供し、参加者らは週ごとに電子メールリマインダを受け取り、2回の電話でのチェックインコールを受け取った。参加者らは、独自の訓練予定を設定することを許されたが、気晴らしなしの環境で、例えば、訓練前または訓練中のアルコール消費なしで、各週3セッションを完了するよう指示された。各セッションの間、全セットの成績データがラップトップ上で記録され、それによって実験計画とのコンプライアンスがモニターされ、学習曲線が訓練期間にわたってグラフに記入された。加えて、画面中央の真上のラップトップビデオカメラが各セッションの開始時に作動され(緑色のライトで表示され)、課題従事の視覚的評価を可能にするとともに、参加者らに指示に従うよう動機付けした。成績とビデオデータの両方が、インターネット接続を有する参加者らのための事前に設定されたドロップボックス(Dropbox)アカウントを使用してセキュアな研究室サーバへ移された。
実施例3 干渉ありでの行動評価
若年成人(20代)および高齢成人(例えば60~80歳)における干渉の影響の行動評価によれば、干渉なし状態と比べて、年齢群内と、年齢群間との両方での大きな注意転導コストおよび妨害コストがあることが明らかになった。これは、標的識別の1次課題で見られた(図2、図3)。同じ所見は、妨害での視覚運動追跡でも観察されたが、注意転導では観察されなかった。
個人(20歳~80歳まで)の成人生存期間研究によれば、標的識別の正確さに対する大きな注意転導コストおよび同時複数課題コスト(図4A)、ならびに研究された10年ごとの6つの年代各々における視覚運動追跡の正確さに対する有意な同時複数課題コストがあることが明らかになった(図4B)。どの年齢でも追跡に対する注意転導の影響は観察されなかった。これらの干渉コストは、年齢が10年増すごとに増加し、すべての干渉コストでの大幅な増加が、提案の研究で分類された、若年成人群と高齢成人群との間で観測された。この予備研究および有意な所見は、これらの干渉コストを改善するための訓練療法の使用を動機付けるものであるため、重要である。
実施例4 訓練の効果
5人の若年成人および5人の高齢成人が同時複数課題訓練の12回の1時間セッションに自宅のラップトップで参加した。この予備実験は本発明の方法の例示的態様を微調整するものであった。訓練セッションからのデータの考察により、あらゆる若年および高齢の参加者において追跡の各セッションにわたって一貫した改善が生じることが明らかになった(図5A;群データ)。注目すべきことに、高齢の参加者での学習勾配は明確に低下した。また識別成績も、参加者のうちの2人を除く全員において各セッションにわたって改善した。学習曲線は、この成績尺度では各セッションにわたってより可変的であった。また、完了された聴覚注意転導訓練によれば、若年成人および高齢成人においてここで示されたのと同じ学習パターンが明らかになった。
研究室で行った訓練前および訓練後の評定によれば、標的識別については、注意転導コスト(図6左)と同時複数課題コスト(図6中)の両方が、1人を除いて、すべての若年(黒)成人および高齢(グレー)成人において低減されることが明らかになった。追跡では、すべての個人が同時複数課題コストを解消した(図6右)。破線およびアステリスクは、干渉コストが生じないレベルを示す。
図7で干渉訓練の有益な効果をさらに証明する。干渉訓練(二重課題)を受けた者と課題だけの訓練(単一課題)を受けたものとの間でデータを分け、群内で平均すると、同時複数課題の形態の干渉訓練を受けた参加者(二重課題群)は、同時複数課題試験に関して、非干渉訓練群(単一課題)および対照群に勝った(図7、パネルB。適用された試験はグラフ中に挿入されている)。単一課題成績(図7、パネルA)は、単一課題訓練と二重課題訓練とが同程度まで寄与し、単一課題群は何時間も各個別課題をうまく行ったにもかかわらず、二重課題群だけがその干渉コストを除去することができた(図7、パネルC)。
干渉コストは、各個人の訓練プログラムの前と後に、各個人に、図11に示すようにそれぞれの目標課題の評価を行うよう指示することにより直接測定された。まず「真の」コスト解消を、参加者の目標成績をどちらも訓練後の干渉ありと干渉なしの成績と比較するという意味で評価した。したがって、コスト解消は、正の数または小さい負の数になるはずであった(訓練前の大部分の事例の同時複数課題干渉コストはおよそ10%以上であった)。図8に、干渉コストが解消されたと判定するための最小値として3%のバッファを与える場合、20人中13人の参加者がその干渉コストを解消したことを示す。しかし、訓練後に完全な評価を行うよう参加者に要求する代わりに、各参加者の訓練後の干渉ありでの目標成績を参加者の訓練前の干渉なしでの目標成績と比べて評価することも可能である。これは、参加者が干渉コストを解消せずに単にその目標成績を非常に高めただけであったおそれのある偽陽性の可能性を許容する。しかし、図8には、そのような「代用」尺度により、その真のコストを解消したすべての参加者(真陽性)を検出することができることが示されている。4人の偽陽性があったが、代用手法は、あまり時間集約的ではない訓練後評価プログラムが求められる場合には、コスト解消の評価を近似する、より合理的なやり方であることがわかる。
利益の転移、すなわち、訓練された特定の課題以外の機能に対する有益な効果を実証することができることは、現実世界での効用および任意の認知訓練プログラムの潜在的目標集団の効用を示すのに重要である。また、利益の転移の、訓練前および訓練後の評価を、被験者ごとにも実験的に試した。試験は、視覚作動記憶容量についての変化検出課題(Change Detection Task)、視覚作動記憶についてのAID、視覚作動記憶についてのフィルタタスク、言語作動記憶についての聴覚子音トリグラム(Auditory Consonant Trigrams (ACT))、抑制処理についてのストループテスト(Stroop test)、同時複数課題についてのPRP二重課題、多モード同時複数課題についての会話妨害、課題切り替えについての予測課題切り替え(Predictive Task Switching)、持続的注意および衝撃性についての注意変数テスト(TOVA)、視覚注意容量についてのMOT、選択的分割注意および処理速度についての有効視野(uFOV)、機能結果についてのtlADL、処理速度についてのWAIS数字記号、および単純な反応時間についての検出反応時間課題(Detection Reaction Time task)であった。訓練された課題とは異なる課題への利益の転移を示すこの一連の試験において複数の改善がみられた。
TOVAテストの結果の一例が図9に示されている。活性訓練を受けなかった群(試験・再試験練習効果についての対照)および単一課題、すなわち干渉なしの訓練だけを受けた群(単一)と比べて、課題+同時複数課題干渉訓練を受けた群(二重)は、持続的注意課題に関して改善およびより速い応答を示し(図9、パネルA)、持続的注意課題での応答時間の変動がより少なく(図9、パネルB)、衝撃性課題の正確さにおいて減衰なしでより速い応答を示した(図9、パネルC)。TOVA評価は、臨床家によって注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断および維持において使用されるため、これらのデータは、利益の転移研究が、健康な集団(持続的注意および衝撃性)および臨床的集団(ADHD)についての重要性を示唆し得る例を強調するものである。
利益の転移のさらに別の結果には、干渉訓練の参加者が対照群より速くより正確に応答するよう改善した、PRP二重課題同時複数課題パラダイム、および、参加者が、注意対象の標的に対しても、注意転導標的に直面しても、対照群よりより速い反応時間でより大幅に改善した、ガザリー研究所(Gazzaley lab)から適合された顔識別作動記憶パラダイムにおける、測定可能な変化が含まれる。
実施例5 閾値処理
閾値処理アルゴリズムの目的は、難度を適切に調整することにより、個人から、視覚運動追跡課題および/または標的識別(または標的検出)課題において約80%に近い成績を得ることであった。道路上の車両を操縦することを含む視覚運動追跡(道路試験)では、難しさの増分は、(1)より高い知覚道路速度、(2)自動車によるより大きい運動量(より大きな補正を必要とする)、および(3)よりすばやい応答を必要とする道路部分間のより速い遷移(より高い速度から生じる)を課すものであった。標的識別課題(合図課題)では、合図の難しさの増分は、標的刺激に応答するのに、より狭い反応時間窓を課すものであった。難度の決定に関与したアルゴリズムは、連続した12回の1分間道路試験および9回の2分間合図試験に対するステアケース閾値処理と線形外挿との組み合わせを用いた。前の試験での個人の成績に応じて、難しさを直線的に増分(80%を上回る場合)、または減分(80%を下回る場合)、または一定に保持した(80%で行った場合)。すべての閾値処理段階の完了後に、難度を、最初の3回を無視した(個人をある程度習熟させるため)80%の成績についての平均線形外挿によって計算した。この手順は、道路課題と合図課題について別々に行い、当該参加個人について2つの個人得点を得た。前述のように、80%以外の他の精度の割合も使用することができる。
道路課題および合図課題の組み合わせである練習を含む訓練プログラムは、複数セッションが個人の自宅で行われた。難度がどれほど変更されるかは、道路および合図の難しさを適応的に変更する前述のステアケースアルゴリズムに基づいた。各3分間試験に続いて、道路および合図の難度を、前回の合図および道路の成績に基づいて直線的に調整した。どちらの難度も、参加者が合図および道路で80%を超える成績であったときにのみ増加させた。どちらの難度も、参加者が両方の目的で80%を下回る成績であったときにのみ減少させた。他のすべての事例では、調整は行われず、難度は次の回でも同じままであった。参加者がそこで終了した難度は、次のセッションの最初の試験に使用した。
実施例6 干渉、再干渉訓練
すべての参加者をやる気にさせることができる長期の持続可能な訓練プログラムとする試みとして、上記の例で論じたものと同様であるが、単一の種類の干渉を使用し、そのパラダイム内で難しさを適応させる代わりに、参加者が訓練するに従って、増加する干渉課題を積み重ねるように設計された訓練プログラムを構築し、研究を行った。新しい、より複雑な課題をいつ訓練プログラムに適用し、ユーザに提示するかの判断は、参加者がいつその干渉コスト(目標課題と目標課題+干渉との差)を最小化し、または除去したかに基づいた。
研究には様々な年齢の健康成人が関与した(以下の4つのランダム化試験群へ募集した:(1)本発明で説明するように構築された独自の干渉訓練、(2)非接触対照、および(3)市販のビデオゲームの形態の対照訓練。2つの訓練群は10時間の自宅訓練に取り組み、全群が訓練前および訓練後の神経評価のために2回の研究室訪問を行った。
訓練プログラムはモバイルプラットフォーム上でのコンピュータゲーム環境からなるものであった。コンピュータプログラムはまず、最初の干渉課題、すなわち、非直線コースを操縦しながら(モバイル機器を傾けながら)、画面上に現れるオブジェクトを標的にする(モバイル機器を軽くたたく)ことに対する参加者の80%の精度を判定するために参加者の閾値を行った。訓練セッションを開始する前に、この課題の干渉コストを訓練前評価で判定した。次いで参加者は二重課題環境で訓練し、二重課題環境は、標的とし、かつ操縦するための時間領域要件を増加または減少させることにより、参加者の成績に適応させた。5回ごとの設定時間間隔で、または参加者の選択で、より早く、干渉コスト判定するためのゲーム環境で再度評価を行った。データはリモートサーバに送り、第1の訓練前評価と比較し、干渉コストの変化を分析した。干渉コストが(既定の値だけ)最小化されていないと判定された場合、ゲームはプレーヤを、同じ干渉課題の訓練セッションに戻した。干渉コストが最小化されたと判定された場合、ゲームはプレーヤの、今度は最初の干渉よりも複雑な既定の新しい干渉、すなわち、この場合もやはり非直線コースを操縦しながらの標的識別課題(特定の特徴を有する標的だけを軽くたたくこと)に関する新しい訓練前評価を開始した。
このプロセスを全参加者について繰り返し、最終的に、(識別課題、複雑な操縦課題、および画面上のより多くの視覚要素を含む)複数の課題を通しての高成績者を得た。最終結果は、干渉課題ごとの参加者の干渉コストの解消に基づいて、限定された干渉課題のセットによって参加者のためにカスタマイズされた訓練プログラム体験であった。どの時点でも、リモートデータサーバが入ってくるデータを分析し、コンピュータプログラムに、既定の訓練進行に対して、参加者を2つの経路(現在の干渉ありの課題または新しい干渉ありの課題)の一方に入れるよう指図した。
上記の発明は、理解の明確化のために例示および実施例によってある程度詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲を逸脱することなく本発明にいくつかの変更および改変が加えられ得ることが、本発明の教示に鑑みれば当業者には容易に明らかになる。

Claims (15)

  1. 表示部および入力装置を有するコンピュータ装置を用いて個人における認知を増強するためのコンピュータにより実行される方法であって、該方法が、一つまたは複数のコンピュータプロセッサを用いてコンピュータ実行可能命令を含む一つまたは複数のメモリ記憶装置に記憶された命令を実行して、
    (a)入力装置を介した個人からの第1の応答を要求する干渉なしの第1の課題を表示部を用いて個人に提示する段階と、
    (b)第1の課題と共に第1の干渉を提示する段階であって、該第1の課題が、前記入力装置を介して干渉の存在下で該第1の課題に対する個人からの第2の応答を要求し、かつ、該第1の干渉は、該第1の課題から個人の注意をそらし、かつ、注意転導(distraction)および妨害刺激(interruptor)からなる群から選択され、ここで、
    前記第1の干渉が注意転導である場合、前記個人は前記第1の課題に対して前記第2の応答を提供するとともに前記注意転導を無視するよう指示され、
    前記第1の干渉が妨害刺激である場合、前記個人は前記第1の課題に対して前記第2の応答を提供するとともに前記妨害刺激に対して2次課題として応答するよう指示される、段階と、
    (c)コンピュータ装置において、前記個人の第1の応答および第2の応答を獲得する段階と、
    (d)コンピュータ装置において、前記第1の応答と前記第2の応答の間の差を計算することにより、干渉なしおよび干渉ありで第1の課題を行う場合の個人の成績の差を分析する段階と、
    (e)個人における認知を増強するために、前記分析する段階で計算された第1の応答と第2の応答の間の差に基づいて前記第1の課題の難度を調整する段階と、
    を含む動作を行わせること
    を含む、方法。
  2. 前記第1の課題が、個人の注意、記憶、運動機能、反応時間、実行機能、意思決定、問題解決、言語処理、理解技能、またはこれらのいずれかの組み合わせに関する、請求項1記載の方法。
  3. 前記第1の課題が、連続的な視覚運動追跡課題である、請求項1または2記載の方法。
  4. 前記第1の干渉が、複数の干渉を含む、請求項1または2記載の方法。
  5. 前記第1の干渉が、標的識別干渉を含む、請求項1または2記載の方法。
  6. 前記第1の干渉が、前記第1の課題の一部分のみのあいだ提示される、請求項1または2記載の方法。
  7. 前記第1の干渉が、前記第1の課題の全部分のあいだ提示される、請求項1または2記載の方法。
  8. 前記第1の干渉が、前記第1の課題と同じ認知領域からのものである、請求項1または2記載の方法。
  9. 前記第1の干渉が、前記第1の課題と異なる認知領域からのものである、請求項1または2記載の方法。
  10. 前記第1の課題の難度を調整する段階が、視覚的強調を変更すること、聴覚的強調を変更すること、課題の時間制限を変更すること、および課題の複雑さを変更すること、のうちの1つまたは複数を含む、請求項1または2記載の方法。
  11. 前記コンピュータ装置が、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータタブレット装置、スマートフォン装置、およびビデオゲーム装置からなる群から選択される、請求項1または2記載の方法。
  12. 入力装置を含むコンピュータ装置を用いて個人における認知を増強するためのプログラム命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体であって、該プログラム命令が、請求項1~11のいずれか一項記載の方法をコンピュータ装置に行わせるために処理装置により実行可能である、コンピュータ可読記憶媒体。
  13. 個人における認知を増強するためのシステムであって、該システムが、
    表示部および入力装置、ならびに、
    一つまたは複数のプロセッサにより実行された時に、
    (a)入力装置を介した個人からの第1の応答を要求する干渉なしの第1の課題を表示部を用いて個人に提示する段階と、
    (b)第1の課題と共に第1の干渉を提示する段階であって、該第1の課題が、前記入力装置を介して干渉の存在下で該第1の課題に対する個人からの第2の応答を要求し、かつ、該第1の干渉は、該第1の課題から個人の注意をそらし、かつ、注意転導(distraction)および妨害刺激(interruptor)からなる群から選択され、ここで、
    前記第1の干渉が注意転導である場合、前記個人は前記第1の課題に対して前記第2の応答を提供するとともに前記注意転導を無視するよう指示され、
    前記第1の干渉が妨害刺激である場合、前記個人は前記第1の課題に対して前記第2の応答を提供するとともに前記妨害刺激に対して2次課題として応答するよう指示される、段階と、
    (c)コンピュータ装置において、前記個人の第1の応答および第2の応答を獲得する段階と、
    (d)コンピュータ装置において、前記第1の応答と前記第2の応答の間の差を計算することにより、干渉なしおよび干渉ありで第1の課題を行う場合の個人の成績の差を分析する段階と、
    (e)個人における認知を増強するために、前記分析する段階で計算された第1の応答と第2の応答の間の差に基づいて前記第1の課題の難度を調整する段階と、
    を含む動作を行わせる物理メモリに記憶されたコンピュータ実行可能命令
    を含む、システム。
  14. 前記第1の課題が、個人の注意、記憶、運動機能、反応時間、実行機能、意思決定、問題解決、言語処理、理解技能、またはこれらのいずれかの組み合わせに関する、請求項13記載のシステム。
  15. 前記第1の課題が、連続的な視覚運動追跡課題である、請求項13または14記載のシステム。
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