JP7430731B2 - インクジェット記録用インク組成物、及び、画像記録方法 - Google Patents

インクジェット記録用インク組成物、及び、画像記録方法 Download PDF

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Description

本開示は、インクジェット記録用インク組成物、及び、画像記録方法に関する。
一般に、株券、債券、小切手、商品券、宝くじ、定期券等の証券類には、情報を光学的に読み取り可能なコードパターンが設けられることが多い。コードパターンとしては、バーコードが主に物流管理システムで広く利用されている。近年では、より膨大なデータ容量、及び高密度の印字を可能とするデータコード、ベリコード(VeriCode(登録商標))、コードワン(CodeOne)、マキシコード(MaxiCode)及び二次元バーコード(QRコ-ド(登録商標))といった2次元コードも普及しつつある。
コードパターンとしては、可視のコードパターンが一般的である。しかし、可視のコードパターンは、画像記録物のデザイン性を損なう場合がある。また、可視のコードパターンを記録する場合には、記録領域を確保する必要がある。そのため、コードパターンの不可視化の要求が高まっている。
また、近年、多種多様な基材にコードパターンが記録されている。基材表面の性状によっては、コードパターンの基材に対する密着性が不十分であり、擦過後にコードパターンが読み取れなくなる場合がある。そのため、擦過後であってもコードパターンが読み取り可能であることが要求されている。
不可視のインク画像を得る方法として、可視光領域に吸収帯を持たないインク、例えば、赤外線を主に吸収するインクを用いる方法が知られている(例えば、特開2008-144004号公報、特開2013-189596号公報、国際公開第2017/056760号、及び国際公開第2018/034347号参照)。
しかしながら、特開2008-144004号公報、特開2013-189596号公報、国際公開第2017/056760号、及び国際公開第2018/034347号のそれぞれに開示されているインクでは、不可視のインク画像を得ることは可能であるが、耐擦後の読み取り性には着目していない。
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本開示によれば、不可視性及び擦過後の読み取り性に優れたインク画像を記録することが可能なインクジェット記録用インク組成物、及び、画像記録方法が提供される。
本開示は以下の態様を含む。
<1>赤外線吸収色素と、重合性基を有するポリマー粒子と、水とを含むインクジェット記録用インク組成物。
<2>赤外線吸収色素は、J会合体を形成し得る色素、又は、顔料である<1>に記載のインクジェット記録用インク組成物。
<3>J会合体を形成し得る色素は、下記一般式1-1及び一般式1-2で表される色素からなる群より選択される少なくとも1種である<2>に記載のインクジェット記録用インク組成物。


一般式1-1中、Y及びYはそれぞれ独立に、脂肪族環、又は、ヘテロ環を形成する非金属原子群を表し、Mはプロトン、一価のアルカリ金属カチオン、又は有機カチオンを表し、Lは5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖を表し、メチン鎖の中央のメチン基は下記式Aで表される置換基を有し、
*-S-T 式A
式A中、Sは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRL1-、-S(=O)-、-ORL2-、又は、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、RL2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表し、Tはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表し、Sが単結合又はアルキレン基を表し、かつ、Tがアルキル基を表す場合は、SとTに含まれる炭素数の総和が3以上であり、*はメチン鎖の中央のメチン基との結合部位を表す。
一般式1-2中、環A及び環Bは、それぞれ独立に、芳香環又は複素芳香環を表し、X及びXはそれぞれ独立に1価の置換基を表し、G及びGはそれぞれ独立に1価の置換基を表し、kAは0~n、kBは0~nの整数を表し、n及びnはそれぞれ環A又は環Bに置換可能なG及びGの最大の数である整数を表し、
とGは互いに結合して環を形成してもよく、XとGは互いに結合して環を形成してもよく、G及びGがそれぞれ複数存在する場合は、G同士及びG同士は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
<4>一般式1-1で表される色素は、下記一般式3で表される色素である、<3>に記載のインクジェット記録用インク組成物。

一般式3中、Mはプロトン、一価のアルカリ金属カチオン、又は有機カチオンを表し、Lは5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖を表し、メチン鎖の中央のメチン基は下記式Aで表される置換基を有し、
*-S-T 式A
式A中、Sは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRL1-、-S(=O)-、-ORL2-、又は、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、RL2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表し、Tは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表し、Sが単結合又はアルキレン基を表し、かつ、Tがアルキル基を表す場合は、SとTに含まれる炭素数の総和が3以上であり、*はメチン鎖の中央のメチン基との結合部位を表し、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、一価のヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、-ORL3、-C(=O)RL3、-C(=O)ORL3、-OC(=O)RL3、-N(RL3、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、-OC(=O)N(RL3、-NHC(=O)N(RL3、-SRL3、-S(=O)L3、-S(=O)ORL3、-NHS(=O)L3、又は、-S(=O)N(RL3を表し、RL3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、nはそれぞれ独立に、1~5の整数を表し、Xはそれぞれ独立に、O原子、S原子、又はSe原子を表す。
<5>一般式3において、R、R、R、及びRよりなる群から選ばれた少なくとも1つは水素結合性基である、<4>に記載のインクジェット記録用インク組成物。
<6>重合性基を有するポリマー粒子は、重合性基を有するポリウレタン粒子である<1>~<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物。
<7>赤外線吸収色素の含有量は、インク組成物全量に対して0.5質量%~2.5質量%である<1>~<6>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物。
<8>赤外線吸収色素の含有量に対する重合性基を有するポリマー粒子の含有量の比率は、質量基準で2~20である<1>~<7>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物。
<9>水溶性光重合開始剤をさらに含む<1>~<8>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物。
<10>350nm~400nmの波長域に吸収域を持つ水溶性増感剤をさらに含む<1>~<9>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インク組成物を、インクジェット記録方式で基材上に付与してインク画像を記録する工程と、インク画像を乾燥させる工程と、乾燥したインク画像に活性エネルギー線を照射する工程と、を含む画像記録方法。
<12>活性エネルギー線は紫外線である<11>に記載の画像記録方法。
<13>活性エネルギー線を、発光ダイオード光源を用いて照射する<11>又は<12>に記載の画像記録方法。
<14>活性エネルギー線は電子線である<11>に記載の画像記録方法。
本開示によれば、不可視性及び擦過後の読み取り性に優れたインク画像を記録することが可能なインクジェット記録用インク組成物、及び、画像記録方法を提供することができる。
以下、本開示のインク組成物、及び、画像記録方法について詳細に説明する。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念である。また、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念である。
本明細書において、「アルキル基」は、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよく、アルキル基に含まれる炭素原子の一部又は全部が環状構造を形成していてもよい。
本明細書において、一価のヘテロ環基とは、ヘテロ環式化合物から1つの水素原子を除いた基を意味し、二価のヘテロ環基とは、ヘテロ環式化合物から2つの水素原子を除いた基を意味する。
[インクジェット記録用インク組成物]
本開示のインクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」という)は、赤外線吸収色素と、重合性基を有するポリマー粒子と、水とを含む。
本開示のインク組成物は、重合性基を有するポリマー粒子を含むため、インク組成物を基材上に着弾させた後、乾燥するとフィルムを形成する。その後、活性エネルギー線を照射することにより、フィルム中で重合性基を有するポリマー同士が重合して、高分子量のポリマーが形成され、強固なインク膜が形成される。したがって、本開示のインク組成物を用いた場合には、擦過後の読み取り性に優れたインク画像を得ることができる。
強固なインク膜を形成させるために、高分子量のポリマー粒子を含むインク組成物を用いることが考えられる。しかし、インクジェット記録方式でインク組成物を基材上に付与する場合、吐出安定性の観点から、高分子量のポリマー粒子を含むインク組成物を用いることは難しい。これに対して、本開示のインク組成物は、重合性基を有するポリマー粒子を含み、インクジェット記録方式で付与することが可能であり、さらに、基材上に着弾させてから高分子量のポリマーにすることができる点で優れている。
また、重合性モノマーを含む紫外線硬化型インクの場合、硬化すると、基材上に凹凸な形状でインク膜が形成されてしまうため、人が触って画像に気づく可能性が高く、不可視の画像であってもヘイズの関係から見た目で気づく可能性が高い。これに対して、本開示のインク組成物は、重合性基を有するポリマー粒子と共に、赤外線吸収色素及び水を含むため、本開示のインク組成物を用いた場合には、不可視性に優れたインク画像を得ることができる。
以下、本開示のインク組成物に含まれる各成分について説明する。
<赤外線吸収色素>
本開示のインク組成物は、赤外線吸収色素を含む。赤外線吸収色素は、赤外域に吸収極大を持つ色素であれば特に限定されない。不可視性の観点から、赤外線吸収色素の可視域における最大吸光度は、赤外域の最大吸光度が1である場合に、0.1以下であることが好ましい。吸光度は、分光光度計を用いて、例えば、以下の方法で測定される。
上記条件を満たすかどうかの判別は以下のように、インク組成物を乾燥させ、インク乾燥物として測定する。インク乾燥物は、インク組成物をOKトップコート紙(王子製紙社製)上に打滴量7pL~10pL、解像度600dpi(dot per inch)×600dpiの条件で、網点率1%~100%で印画し、100℃の温風にて1分間乾燥させることにより得られるものである。
インク乾燥物とした場合の本開示のインク組成物の極大吸収波長は、150mmφ大形積分球付属装置LISR-3100(島津製作所社製)を備えた分光光度計UV-3100PC(島津製作所社製)を用いて反射スペクトルを測定することにより求められる。
本開示のインク組成物は、得られる赤外線吸収画像の不可視性及び読み取り性の観点から、インク乾燥物とした場合の400nm~1000nmの範囲における最大吸収波長が700nm~1000nmの範囲に存在することが好ましい。
上述のインク乾燥物とした場合の本開示のインク組成物の極大吸収波長の測定と同様の方法によって、光学濃度を400nm~1000nmの範囲において測定することにより、上記本開示のインク組成物の最大吸収波長の値を測定することが可能である。
光学濃度は、150mmφ大形積分球付属装置LISR-3100(島津製作所社製)を備えた分光光度計UV-3100PC(島津製作所社製)を用いて測定される。
本開示において、赤外域とは、800nm超2500nm以下の波長領域を意味する。また、可視域とは、380nm~800nmの波長領域を意味する。
赤外線吸収色素としては、例えば、シアニン色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、オキソノール色素、及び顔料が挙げられる。中でも、重合反応においてラジカルによって分解しにくいという観点から、赤外線吸収色素は、J会合体を形成し得る色素、又は、顔料であることが好ましい。
(顔料)
顔料は、無機顔料であってもよく有機顔料であってもよい。
有機顔料としては、例えば、フタロシアニン化合物及びシアニン化合物が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、LaB(六ホウ化ランタン)、CWO(セシウム酸化タングステン)、ITO(スズ酸化インジウム)及びATO(アンチモン酸化スズ)が挙げられる。中でも、無機顔料は、水への分散性の観点からCWO(セシウム酸化タングステン)が好ましい。
(J会合体を形成し得る色素)
色素発色団同士が特定の空間配置に、共有結合若しくは配位結合、又は種々の分子間力(例えば、水素結合、ファン・デル・ワールス力、クーロン力等)の結合力によって固定されている状態を、一般的に会合(又は凝集)状態と称している。会合体の吸収波長の観点では、モノマー吸収に対して、吸収が短波長にシフトする会合体をH会合体(中でも、2量体は特別にダイマーと呼ぶ)、長波長にシフトする会合体をJ会合体と呼ぶ。
J会合状態である色素は、いわゆるJバンドを形成するため、シャープな吸収スペクトルピークを示す。色素の会合とJバンドについては、文献(例えば、Photographic Science and Engineering Vol 18,No 323-335(1974))に詳細に記載されている。
J会合状態の色素の極大吸収波長は、溶液状態の色素の極大吸収波長よりも長波側に移動する。したがって、色素がJ会合状態であるか、非会合状態であるかは、400nm~1,000nmにおける極大吸収波長を測定することにより判断できる。
本開示においては、インク組成物を画像記録物とした場合の700nm~1,000nmの範囲における極大吸収波長と、インク組成物に含まれる赤外線吸収色素をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した溶液の極大吸収波長との差が30nm以上であれば、画像記録物とした場合の赤外線吸収色素がJ会合体であると判断する。インク画像の不可視性向上の観点から、上記差は、50nm以上であることが好ましく、70nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることがさらに好ましい。
また、赤外線吸収色素は、インク組成物中においてJ会合体を形成してもよいし、インク組成物中ではJ会合体を形成せず、液滴となって基材上に到達する過程で、又は、基材上に着弾した後に、インク画像中においてJ会合体を形成してもよい。さらに、基材上で全ての赤外線吸収色素がJ会合体を形成している必要はなく、J会合状態と分子分散状態の赤外線吸収色素が混在していてもよい。
J会合体を形成し得る色素としては、例えば、オキソノール色素及びシアニン色素(スクアリリウム色素も含む)が挙げられる。
J会合体を形成し得る色素は、下記一般式1-1及び一般式1-2で表される色素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、一般式1-1で表される色素であることがより好ましい。

一般式1-1中、Y及びYはそれぞれ独立に、脂肪族環、又は、ヘテロ環を形成する非金属原子群を表し、Mはプロトン、一価のアルカリ金属カチオン、又は有機カチオンを表し、Lは5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖を表し、メチン鎖の中央のメチン基は下記式Aで表される置換基を有する。
*-S-T 式A
式A中、Sは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRL1-、-S(=O)-、-ORL2-、又は、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表す。RL1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表す。RL2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表す。Tはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表す。Sが単結合又はアルキレン基を表し、かつ、Tがアルキル基を表す場合は、SとTに含まれる炭素数の総和が3以上である。*はメチン鎖の中央のメチン基との結合部位を表す。
〔Y及びY
及びYは同一の非金属原子群であってもよいし、異なる非金属原子群であってもよいが、合成適性上、同一の非金属原子群であることが好ましい。
及びYが形成する脂肪族環の例としては、炭素数5~10の脂肪族環が挙げられる。上記脂肪族環は置換基を有していてもよく、脂肪族環、芳香族環、又は他のヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。
及びYが形成する脂肪族環としては、例えば、1,3-インダンジオン環、1,3-ベンゾインダンジオン環、及び2,3―ジヒドロ-1H-フェナレン-1,3-ジオン環が挙げられる。
及びYが形成するヘテロ環としては、例えば、5員環又は6員環であるヘテロ環が挙げられる。ヘテロ環に含まれるヘテロ原子としては、窒素原子(N原子)、酸素原子(O原子)、硫黄原子(S原子)等が挙げられるが、N原子が好ましい。上記脂肪族環は置換基を有していてもよく、脂肪族環、芳香族環、又は他のヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。
一般式1-1中、Y及びYはそれぞれ独立に、ヘテロ環を形成する非金属原子群であることが好ましく、同一のヘテロ環を形成する非金属原子群であることがより好ましい。
及びYが形成するヘテロ環としては、例えば、5-ピラゾロン環、イソオキサゾロン環、バルビツール酸環、ピリドン環、ローダニン環、ピラゾリジンジオン環、ピラゾロピリドン環及びメルドラム酸環が挙げられる。Y及びYが形成するヘテロ環は、不可視性の観点から、バルビツール酸環が好ましい。
〔M
はプロトン、一価のアルカリ金属カチオン、又は有機カチオンを表す。得られるインク画像の耐光性及び耐湿熱性向上の観点から、Mは、一価のアルカリ金属カチオンであることが好ましい。
上記一価のアルカリ金属カチオンとしては、例えば、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウムイオン(Rb)、セシウムイオン(Cs)、及びフランシウムイオン(Fr)が挙げられる、中でも、一価のアルカリ金属カチオンは、Li、Na、K、Rb、又はCsが好ましく、Li、Na、K、Rb、又はCsがより好ましく、Li、Na、又はKがさらに好ましい。
上記有機カチオンは、一価の有機カチオンであっても多価の有機カチオンであってもよいが、一価の有機カチオンが好ましい。
上記有機カチオンの例としては、テトラアルキルアンモニウムイオン、トリアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、及び、N-メチルピリジニウムイオン、及び、N-エチルピリジニウムイオンが挙げられる。有機カチオンは、トリアルキルアンモニウムイオンが好ましく、トリエチルアンモニウムイオンがより好ましい。
また、有機カチオンとしては、分散容易性の観点から、多価の有機カチオンも使用することが可能である。多価の有機カチオンとしては、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアンモニウム、及びカチオンマスターPD-7(四日市合成社製)が挙げられる。
は対カチオンであって、Mが存在することにより一般式1-1で表される化合物全体が電気的に中性となる。
〔L
は5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖を表し、上記メチン鎖の中央のメチン基は式Aで表される置換基を有する。
は5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖を表し、5個のメチン基からなるメチン鎖を表すことが好ましい。
上記メチン鎖の中央のメチン基以外のメチン基は、置換されていてもよいが、置換されていないことが好ましい。
メチン鎖は任意の位置で架橋構造を有していてもよい。例えば、メチン基の両隣の炭素が架橋されて環構造を形成していてもよい。なお、環構造を導入することにより、本開示のインク組成物を用いて得られるインク画像の耐光性等を制御することができる。環構造については、インク組成物の使用目的に応じて適宜決定すればよい。上記環構造としては、特に限定されないが、脂肪族環が好ましく、5員環の脂肪族環又は6員環の脂肪族環が好ましい。
具体的には、Lは下記式L1-1、L1-2、L2-1、又はL2-2で表される基であることが好ましく、下記式L1-1又は式L1-2で表される基であることがより好ましい。
式L1-1、式L1-2、式L2-1、及び、式L2-2中、Aは式Aで表される置換基を表し、波線部は、それぞれ独立に、一般式1-1中のL以外の構造との結合位置をそれぞれ表す。
は脂肪族環、又は、ヘテロ環を形成する非金属原子群を表し、脂肪族環を表す非金属原子群を表すことが好ましい。Yは、アルキル基が好ましく、アルキル基としては、例えば、-CHCH-、及び-CHC(Z)-CH-が挙げられる。上記脂肪族環は、5員環の脂肪族環又は6員環の脂肪族環が好ましい。
上記式L2-1又はL2-2で表される基は、下記式L3-1~式L3-4で表される基であることが好ましい。
上記式L3-1~式L3-4中、Aは式Aで表される置換基を表し、波線部は、それぞれ独立に、一般式1-1中のL以外の構造との結合位置をそれぞれ表す。
Zはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。2つのZは結合して環構造を形成してもよい。
-式Aで表される置換基-
式A中、Sは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRL1-、-S(=O)-、-ORL2-、又は、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表す。Sは、得られるインク画像の不可視性向上の観点から、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
上記アルキレン基は、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4のアルキレン基がより好ましく、メチレン基又はエチレン基がさらに好ましい。
上記アルケニレン基は、炭素数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素数2~4のアルケニレン基がより好ましく、炭素数2又は3のアルケニレン基がさらに好ましい。
上記アルキニレン基は、炭素数2~10のアルキニレン基が好ましく、炭素数2~4のアルキニレン基がより好ましく、炭素数2又は3のアルキニレン基がさらに好ましい。
上記アルキレン基、アルケニレン基、及び、アルキニレン基は、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよく、それぞれの基に含まれる炭素原子の一部又は全部が環状構造を形成していてもよい。上記内容は、本開示におけるアルキレン基、アルケニレン基、及び、アルキニレン基の記載において、特別の記載がない限り、同様である。
上記-C(=O)O-は、炭素原子がLとの結合側に位置し、かつ、酸素原子がTとの結合側であってもよいし、その逆であってもよい。
上記-C(=O)NRL1-は、炭素原子がLとの結合側に位置し、かつ、窒素原子がTとの結合側に位置していてもよいし、その逆であってもよい。
式A中、Sが-C(=O)NRL1-である場合、RL1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表す。RL1は、水素原子、アルキル基、又はアリール基が好ましく、水素原子がより好ましい。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子(F原子)、塩素原子(Cl原子)、臭素原子(Br原子)、及びヨウ素原子(I原子)が挙げられる。ハロゲン原子は、Cl原子又はBr原子が好ましく、Cl原子がより好ましい。
上記アルキル基は、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がさらに好ましい。
上記アリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。
上記一価のヘテロ環基におけるヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。また、上記ヘテロ環は、脂肪族環、芳香族環、又は他のヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。
上記ヘテロ環におけるヘテロ原子としては、N原子、O原子、及びS原子が挙げられ、N原子が好ましい。
上記ヘテロ環としては、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、ピロリドン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環、及びチアジアゾール環が挙げられる。
式A中、Sが-ORL2-である場合、RL2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表し、アルキレン基であることが好ましい。
上記アルキレン基は、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基がさらに好ましい。
上記アリーレン基は、炭素数6~20のアリーレン基が好ましく、フェニレン基又はナフチレン基がより好ましく、フェニレン基がさらに好ましい。
上記二価のヘテロ環基は、RL1における一価のヘテロ環基からさらにもう一つ水素を除いた構造が好ましい。
式A中、Tは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表し、アリール基、一価のヘテロ環基、又はトリアルキルシリル基が好ましい。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子(F原子)、塩素原子(Cl原子)、臭素原子(Br原子)、及びヨウ素原子(I原子)が挙げられる。ハロゲン原子は、Cl原子又はBr原子が好ましく、Cl原子がより好ましい。
上記アルキル基は、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がさらに好ましい。
式A中、Tがアルキル基を表す場合、Tはメチン鎖中の他の炭素原子と環構造を形成していてもよい。上記環構造は、5員環又は6員環が好ましい。
上記アリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。アリール基は、さらに置換基を有していてもよい。アリール基に導入可能な置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、一価のヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、-ORL3、-C(=O)RL3、-C(=O)ORL3、-OC(=O)RL3、-N(RL3、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、-OC(=O)N(RL3、-NHC(=O)N(RL3、-SRL3、-S(=O)L3、-S(=O)ORL3、-NHS(=O)L3、及び-S(=O)N(RL3が挙げられる。中でも、置換基は、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、-ORL3、-N(RL3、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、又は-NHC(=O)N(RL3が好ましい。
上記一価のヘテロ環基におけるヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。また、上記ヘテロ環は、脂肪族環、芳香族環、又は他のヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。
上記ヘテロ環におけるヘテロ原子としては、N原子、O原子、及びS原子が挙げられ、N原子が好ましい。
上記ヘテロ環としては、ピリジン環、トリアジン環、ピペリジン環、フラン環、フルフラン環、メルドラム酸環、バルビツール酸環、スクシンイミド環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、チオモルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、ピロリドン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環、及びチアジアゾール環が挙げられる。
上記ヘテロ環は塩構造を形成していてもよい。例えば、ピリジン環はピリジニウム塩を形成していてもよく、ピリジニウムイオンとして存在してもよい。
上記アリール基又は一価のヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、一価のヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、-OR、-C(=O)R、-C(=O)OR、-OC(=O)R、-N(R、-NHC(=O)R、-C(=O)N(R、-NHC(=O)OR、-OC(=O)N(R、-NHC(=O)N(R、-SR、-S(=O)、-S(=O)OR、-NHS(=O)、及び、-S(=O)N(Rが挙げられる。
はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又は一価のヘテロ環基を表し、水素原子、アルキル基、又は、アリール基が好ましい。
におけるアルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
におけるアリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
における一価のヘテロ環基におけるヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。また、上記ヘテロ環は、脂肪族環、芳香族環、又は他のヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。
上記ヘテロ環におけるヘテロ原子としては、N原子、O原子、及びS原子が挙げられ、N原子が好ましい。
上記ヘテロ環としては、ピリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロリジン環、フラン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、ピロリドン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環、及びチアジアゾール環が挙げられる。
上記一価のヘテロ環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、Rで表される基が挙げられ、好ましい態様も同様である。
上記アミノ基としては、例えば、無置換アミノ基、及び置換アミノ基が挙げられ、ジアリールアミノ基、又は、ジヘテロアリールアミノ基が好ましい。
置換アミノ基における置換基としては、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基が挙げられる。上記アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基は、Tにおけるアルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基と同義であり、好ましい態様も同様である
上記トリアルキルシリル基は、アルキル基の炭素数が1~10のトリアルキルシリル基が好ましく、アルキル基の炭素数が1~4のトリアルキルシリル基がより好ましい。例えば、トリメチルシリル基、ジメチルブチルシリル基、トリエチルシリル基、及びトリイソプロピルシリル基が挙げられる。
上記トリアルコキシシリル基は、アルコキシ基の炭素数が1~10のトリアルコキシシリル基が好ましく、アルコキシ基の炭素数が1~4のトリアルコキシシリル基がより好ましい。アルコキシ基の炭素数が1~4のトリアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、及びトリエトキシシリル基が挙げられる。
が単結合又はアルキレン基を表し、かつ、Tがアルキル基を表す場合、SとTに含まれる炭素数の総和は、得られるインク画像の不可視性の観点から、3以上であることが好ましく、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
また、上記炭素数の総和は、分散容易性の観点から、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
中でも、分散性の観点から、式A中、Tは窒素原子を含むヘテロ環基、アリール基、又はハロゲン原子であることが好ましい。
上記式Aで表される置換基(置換基A)の具体例としては、下記置換基A-1~A-48が挙げられる。ただし、本開示における置換基Aは、これらに限定されるものではない。下記置換基A-1~A-48中、i-C10はイソデシル基を表し、i-Cはイソオクチル基を表し、*は一般式1-1におけるLとの結合部位を示している。
式Aで表される置換基は、下記置換基A-1~A-48のうち、分散性の観点から、A-1、A-2、A-4、A-7、A-8、A-12、A-13、A-14、A-15、A-16、A-20、A-26、A-28、A-29、A-30、A-31、A-32、A-34、A-39、A-41、A-42、A-43、A-44、A-45、A-47、又は、A-48が好ましく、A-1、A-2、A-4、A-7、A-8、A-13、A-14、A-15、A-26、A-28、A-29、A-30、A-31、A-32、A-34、A-39、又は、A-42がより好ましい。
また、式Aで表される置換基は、赤外線吸収色素の吸収波長がより長波長側となるという観点から、A-1、A-2、A-4、A-5、A-6、A-7、A-8、A-20、A-34、A-39、A-41、A-42、A-45、又は、A-48が好ましく、A-1、A-2、A-4、A-8、A-39、又は、A-42がより好ましい。
また、J会合体を形成し得る色素は、下記一般式1-2で表される色素であってもよい。
一般式1-2中、環A及び環Bは、それぞれ独立に、芳香環又は複素芳香環を表し、X及びXはそれぞれ独立に1価の置換基を表し、G及びGはそれぞれ独立に1価の置換基を表し、kAは0~n、kBは0~nの整数を表し、n及びnはそれぞれ環A又は環Bに置換可能なG及びGの最大の数である整数を表す。
とGは互いに結合して環を形成してもよく、XとGは互いに結合して環を形成してもよく、G及びGがそれぞれ複数存在する場合は、G同士及びG同士は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
及びGはそれぞれ独立に1価の置換基を表す。1価の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR1415、-NHCOR16、-CONR1718、-NHCONR1920、-NHCOOR21、-SR22、-SO23、-SOOR24、-NHSO25、又はSONR2627が挙げられる。
10~R27は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又はヘテロ環基を表す。なお、-COOR12のR12が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SOOR24のR24が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
アルキニル基の炭素数は、2~40が好ましく、2~30がより好ましく、2~25が特に好ましい。アルキニル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12がさらに好ましい。
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。アラルキル基の炭素数は、7~40が好ましく、7~30がより好ましく、7~25がさらに好ましい。
ヘテロアリール基は、単環又は縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~8の縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環又は6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がさらに好ましい。ヘテロアリール基の例には、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環基、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環、及びチアジアゾール環が挙げられる。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。
置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、及びシリル基が挙げられ、これらの置換基はさらに置換されてもよい。
及びXはそれぞれ独立に1価の置換基を表す。置換基は、活性水素を有する基が好ましく、-OH、-SH、-COOH、-SOH、-NRX1X2、-NHCORX1、-CONRX1X2、-NHCONRX1X2、-NHCOORX1、-NHSOX1、-B(OH)及びPO(OH)がより好ましく、-OH、-SH、及びNRX1X2がさらに好ましい。
X1及びRX2は、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。置換基としてはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられる。中でも、置換基は、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及び、ヘテロアリール基の詳細については、G及びGで説明した範囲と同義である。
環A及び環Bは、それぞれ独立に、芳香環又は複素芳香環を表す。
芳香環及び複素芳香環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。
芳香環及び複素芳香環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセタフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、及び、フェナジン環が挙げられる。中でも、芳香環及び複素芳香環は、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましい。
芳香族環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、G及びGで説明した置換基が挙げられる。
とGは互いに結合して環を形成してもよく、XとGは互いに結合して環を形成してもよく、G及びGがそれぞれ複数存在する場合は、G同士及びG同士は、互いに結合して環を形成していてもよい。
環は、5員環又は6員環が好ましい。環は単環であってもよく、複環であってもよい。
とG、XとG、G同士、又はG同士が結合して環を形成する場合、これらが直接結合して環を形成してもよく、アルキレン基、-CO-、-O-、-NH-、-BR-、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を介して結合して環を形成してもよい。XとG、XとG、G同士、又はG同士が、-BR-を介して結合して環を形成することが好ましい。
Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。置換基としては、G及びGで説明した置換基が挙げられる。置換基はアルキル基又はアリール基が好ましい。
kAは0~nの整数を表し、kBは0~nの整数を表し、nは、A環に置換可能な最大の整数を表し、nは、環Bに置換可能な最大の整数を表す。
kA及びkBは、それぞれ独立に0~4が好ましく、0~2がより好ましく、0~1が特に好ましい。
一般式1-2で表される化合物の好ましい一実施形態として下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(6)で表される化合物は、赤外線吸収色素として耐光性に優れるという特性を有する。
一般式(6)中、R及びRは、それぞれ独立に、1価の置換基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。置換基としては、G及びGで説明した置換基が挙げられる。
及びXは、それぞれ独立に、酸素原子、又は、-N(R)-を表し、X及びXは、それぞれ独立に、炭素原子、又は、ホウ素原子を表す。
t及びuは、X及びXがホウ素原子である場合には1を表し、X及びXが炭素原子である場合には2を表す。
は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、Y、Y、Y、及びYは、それぞれ独立に、1価の置換基を表し、YとYは互いに結合して環を形成していてもよく、YとYは互いに結合して環を形成していてもよく、
、Y、Y、及びYは、それぞれ複数存在する場合には、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基としては、G及びGで説明した置換基が挙げられる。
p及びsは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、q及びrは、それぞれ独立に0~2の整数を表す。
、R、Y、Y、Y、及びYが表す置換基は、G及びGで説明した置換基が同様に挙げられる。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Rのアルキル基の炭素数は例えば1~4、好ましくは1又は2である。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、及びイソブチル基が挙げられる。Rは、好ましくは水素原子、メチル基、又はエチル基であり、特に好ましくは水素、又はメチル基であり、最も好ましくは水素である。
及びXは、それぞれ独立に、酸素原子(-O-)、又は、-N(R)-を表す。XとXは同一であってもよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
は、水素原子、アルキル基又はアリール基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましい。Rが表すアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、無置換であってもよく、1価の置換基を有していてもよい。1価の置換基としては、上述したG及びGで説明した1価の置換基が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~2が特に好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。
アリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~12がより好ましい。
ヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がさらに好ましい。
一般式1-2で表される化合物の分子量は、100~2,000が好ましく、150~1,000がより好ましい。
上記一般式1-2で表される化合物、及びその好ましい態様である一般式(6)で表される化合物については、特開2011-2080101号公報に詳細に記載されている。特開2011-2080101号公報に記載の化合物は本開示における赤外線吸収色素として好適に用いることができる。また、上記一般式1-2で表される化合物及びその好ましい態様である一般式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、特開2011-208101号公報に記載の化合物、及び特開2018-154672号公報の段落番号0076及び段落番号0077に記載の化合物が挙げられる。しかし、一般式1-2で表される化合物の具体例は、これらの記載に限定されない。
上記一般式1-2で表される化合物の具体例(B-1~B-40)を以下に示す。但し、本開示における赤外線吸収色素は、以下の化合物に限定されるものではない。式中、「Me」はメチル基を表し、「Ph」はフェニル基を表す。
上記具体例の中では、より好ましい化合物として、化合物B-1、B-3、B-4、B-6、B-9、B-11、B-21、B-24、B-30、B-31、B-37、及びB-38が挙げられる。
<一般式2で表される色素>
上記一般式1-1で表される色素は、下記一般式2で表される色素であることが好ましい。本開示のインク組成物が一般式2で表される色素を含む場合、不可視性により優れたインク画像を得ることができる。
一般式2中、Mはプロトン、一価のアルカリ金属カチオン、又は有機カチオンを表し、Lは5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖を表し、メチン鎖の中央のメチン基は下記式Aで表される置換基を有する。
*-S-T 式A
式A中、Sは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRL1-、-S(=O)-、-ORL2-、又は、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表す。RL1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表す。RL2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表す。Tは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表す。Sが単結合又はアルキレン基を表し、かつ、Tがアルキル基を表す場合は、SとTに含まれる炭素数の総和が3以上である。*はメチン鎖の中央のメチン基との結合部位を表す。
、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表す。Xはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表す。
〔L及びM
一般式2中、L及びMは一般式1-1中のL及びMと同義であり、好ましい態様も同様である。
〔R、R、R及びR
一般式2中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、得られるインク画像の耐光性及び不可視性の観点から、水素原子又はアリール基が好ましく、水素原子又はフェニル基が好ましい。
、R、R、及びRにおけるアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
上記アルキル基は、置換基を有していることが好ましい。置換基としては、後述するアリール基における置換基の例から、アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基以外の基が挙げられ、好ましい態様も同様である。
、R、R及びRにおけるアリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
上記アリール基は、無置換でもよいが、置換基を有していることが好ましい。置換基の導入位置としては、分散性及び会合安定性の観点から、一般式2における他の構造との結合部位に対して、メタ位、又はパラ位が好ましく、メタ位がより好ましい。中でも、メタ位に極性基を有する態様がより好ましい。
アリール基に導入可能な置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、一価のヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、-ORL3、-C(=O)RL3、-C(=O)ORL3、-OC(=O)RL3、-N(RL3、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、-OC(=O)N(RL3、-NHC(=O)N(RL3、-SRL3、-S(=O)L3、-S(=O)ORL3、-NHS(=O)L3、及び、-S(=O)N(RL3が挙げられる。
赤外線吸収色素の分散性及び会合安定性をより向上させるという観点から、置換基は、極性基が好ましい。極性基としては、上記例示した置換基の中で、ニトロ基、シアノ基、-ORL3、-C(=O)RL3、-C(=O)ORL3、-OC(=O)RL3、-N(RL3、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、-OC(=O)N(RL3、-NHC(=O)N(RL3、-SRL3、-S(=O)L3、-S(=O)ORL3、-NHS(=O)L3、及び、-S(=O)N(RL3が挙げられる。中でも、極性基は、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、-OC(=O)N(RL3、-NHC(=O)N(RL3、-NHS(=O)L3、又は、-S(=O)N(RL3がより好ましい。
インク画像の耐光性及び耐湿熱性の観点から、置換基は、水素結合性基が好ましい。水素結合性基とは、水素原子を介して相互作用する基のことである。水素結合性基としては、上記例示した置換基の中で、-OH、-C(=O)OH、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、-OC(=O)N(RL3、-NHC(=O)N(RL3、-NHS(=O)L3、及び、-S(=O)N(RL3が挙げられる。中でも、水素結合性基は、-NHC(=O)ORL3がより好ましい。
L3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、水素原子、アルキル基、又は、アリール基が好ましい。
L3におけるアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
L3におけるアルケニル基は、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、炭素数2~4のアルケニル基がより好ましく、炭素数2又は3のアルケニル基がさらに好ましい。
L3におけるアリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
L3における一価のヘテロ環基におけるヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。また、上記ヘテロ環は、脂肪族環、芳香族環、又は他のヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。
上記ヘテロ環におけるヘテロ原子としては、N原子、O原子、及びS原子が挙げられ、N原子が好ましい。
上記ヘテロ環としては、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、ピロリドン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環、及びチアジアゾール環が挙げられる。
上記一価のヘテロ環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基としては、RL3で表される基が挙げられ、好ましい態様も同様である。
、R、R及びRにおける一価のヘテロ環基におけるヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。また、上記ヘテロ環は、脂肪族環、芳香族環、又は他のヘテロ環と縮合環を形成していてもよい。
上記ヘテロ環におけるヘテロ原子としては、N原子、O原子、及びS原子が挙げられ、N原子が好ましい。
上記ヘテロ環としては、ピリジン環、ピペリジン環、フラン環、フルフラン環、チオフェン環、ピロール環、キノリン環、モルホリン環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、ピロリドン環、チアゾール環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環、及びチアジアゾール環が挙げられる。
上記一価のヘテロ環基は、置換基を有していることが好ましい。置換基としては、上記R、R、R、及びRがアリール基である場合の置換基と同様の基が挙げられ、好ましい態様も同様である。
また、得られるインク画像の耐光性及び耐湿熱性向上の観点から、R、R、R、及びRよりなる群から選ばれた少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、R、R、R、及びRよりなる群から選ばれた少なくとも2つが水素原子であることがより好ましく、R、R、R、及びRよりなる群から選ばれた2つが水素原子であることがさらに好ましい。
、R、R、及びRよりなる群から選ばれた2つが水素原子である場合、R及びRの一方と、R及びRの一方とが水素原子であることが好ましい。
さらに、得られるインク画像の不可視性の観点から、R及びRの一方と、R及びRの一方とが水素原子であり、R及びRの別の一方と、R及びRの別の一方とがフェニル基であることがより好ましい。上記フェニル基は、上述のとおり、置換基を有することがさらに好ましい。
上記R、R、R、及びRの具体例としては、下記置換基R-1~R-79が挙げられる。ただし、本開示におけるR、R、R、及びRは、これらに限定されるものではない。下記置換基R-1~R-79中、波線部は一般式2における他の構造との結合部位を示している。
下記置換基R-1~R-79のうち、耐光性の観点から、R-1、R-2、R-3,R-4,R-5、R-7、R-11、R-13、R-14、R-15、R-18、R-19、R-20、R-22、R-50、R-51、R-52、R-53、R-56、R-57、R-60、R-61、R-62、R-63、R-64、R-65、R-66、R-67、R-68、R-69、R-70、R-71、R-72、R-73、R-74、R-75、R-76、R-77、R-78、又は、R-79が好ましく、R-1、R-2、R-4,R-7、R-11、R-13、R-14、R-15、R-18、R-19、R-51、R-52、R-53、R-56、R-57、R-60、R-61、R-62、R-63、R-64、又は、R-79がより好ましい。
下記置換基の構造中、Meはメチル基を表す。
〔X〕
一般式2中、Xはそれぞれ独立に、O原子、S原子、又はSe原子を表し、O原子又はS原子であることが好ましく、O原子であることがより好ましい。
<一般式3で表される色素>
上記一般式1-1で表される色素は、下記一般式3で表される色素であることが好ましい。本開示のインク組成物が一般式3で表される色素を含む場合、不可視性及び擦過後の読み取り性により優れたインク画像を得ることができる。
一般式3中、Mはプロトン、一価のアルカリ金属カチオン、又は有機カチオンを表す。Lは5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖を表す。メチン鎖の中央のメチン基はAで表される置換基を有する。
*-S-T 式A
式A中、Sは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRL1-、-S(=O)-、-ORL2-、又は、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表す。RL1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表す。RL2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表す。Tは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表す。Sが単結合又はアルキレン基を表し、かつ、Tがアルキル基を表す場合は、SとTに含まれる炭素数の総和が3以上であり、*はメチン鎖の中央のメチン基との結合部位を表す。
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、一価のヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、-ORL3、-C(=O)RL3、-C(=O)ORL3、-OC(=O)RL3、-N(RL3、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、-OC(=O)N(RL3、-NHC(=O)N(RL3、-SRL3、-S(=O)L3、-S(=O)ORL3、-NHS(=O)L3、又は、-S(=O)N(RL3を表す。RL3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、nはそれぞれ独立に、1~5の整数を表し、Xはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表す。
〔L、M、及びX〕
一般式3中、L、M及びXは一般式2中のL、M及びXと同義であり、好ましい態様も同様である。
〔R、R、R及びR
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表し、水素原子が好ましい。
及びRにおけるアルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基は、上記R及びRにおけるアルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基と同様であり、好ましい態様も同様である。
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、一価のヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、-ORL3、-C(=O)RL3、-C(=O)ORL3、-OC(=O)RL3、-N(RL3、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、-OC(=O)N(RL3、-NHC(=O)N(RL3、-SRL3、-S(=O)L3、-S(=O)ORL3、-NHS(=O)L3、又は、-S(=O)N(RL3を表し、
上記RL3は、R~RにおけるRL3と同義であり、好ましい態様も同様である。
及びRはそれぞれ独立に、水素結合性基が好ましい。水素結合性基としては、例えば、-OH、-C(=O)OH、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、-OC(=O)N(RL3、-NHC(=O)N(RL3、-NHS(=O)L3、及び、-S(=O)N(RL3が挙げられ、-NHC(=O)ORL4が好ましい。
上記RL3は、R~RにおけるRL3と同義であり、好ましい態様も同様である。
上記RL4は、アルキル基を表し、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
インクの保存安定性の観点から、一般式3で表される色素は、Rで表される基と、Rで表される基と、をそれぞれ1つずつ有することが好ましい。その場合、Rで表される基、又は、Rで表される基の結合位置は、R又はRで表される基が結合するベンゼン環において、バルビツール酸環との結合位置に対するメタ位であることが好ましい。
一般式3において、R、R、R、及びRよりなる群から選ばれた少なくとも1つが水素結合性基であることが好ましく、R、R、R、及びRよりなる群から選ばれた少なくとも2つが水素結合性基であることがより好ましい。
また、合成適性上の観点から、RとR、及び、RとRはそれぞれ同一の基であることが好ましい。
さらに、R及びRがそれぞれ水素原子であり、かつ、R及びRが同一の水素結合性基であることが好ましい。
〔n〕
nはそれぞれ独立に、1~5の整数を表し、分散容易性の観点から1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
<赤外線吸収色素の製造方法>
一般式1-1、一般式2、又は一般式3のいずれかで表される色素は、例えば、特開2002-20648号公報、及びエフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレイテッド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社-ニューヨーク、ロンドン、1964年刊に記載の方法を参考にすることにより合成することが可能である。
以下、赤外線吸収色素の具体例を、一般式2に基づいて記載する。一般式2中のL、LにおけるA、R、R、R、R、X、及びMを具体的に記載する。ただし、本開示における赤外線吸収色素は、これらに限定されるものではない。
本開示において、インク組成物における赤外線吸収色素の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.5質量%~2.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%~2.0質量%であり、さらに好ましくは1.0質量%~1.5質量%である。
本開示のインク組成物は、赤外線吸収色素を1種単独で含有してもよいし、2種以上の赤外線吸収色素を含有してもよい。
<重合性基を有するポリマー粒子>
本開示のインク組成物は、重合性基を有するポリマー粒子を含む。重合性基を有するポリマー粒子は、重合性基を1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。ポリマー粒子が重合性基を有することは、例えば、フーリエ変換赤外線分光測定(FT-IR)分析によって確認することができる。重合性基は、光重合性基又は熱重合性基が好ましい。
重合性基は、ポリマーと共有結合していてもよいし、ポリマーと共有結合していなくてもよい。重合性基を有するポリマー粒子が、ポリマーと共有結合していない重合性基を含むということは、粒子が重合性基を有する化合物(すなわち、重合性化合物)を含むことを意味する。一方、重合性基を有するポリマー粒子が、ポリマーと共有結合している重合性基を含むということは、ポリマーが重合性基を有することを意味する。
光重合性基は、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性二重結合を含む基がより好ましく、ビニル基及び1-メチルビニル基の少なくとも一方を含む基がさらに好ましい。ラジカル重合性基は、ラジカル重合反応性及び形成される膜の硬度の観点から、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
熱重合性基は、エポキシ基、オキセタニル基、アジリジニル基、アゼチジニル基、ケトン基、アルデヒド基、又はブロックイソシアネート基が好ましい。
重合性基を有するポリマー粒子の重量平均分子量は、100000以下であることが好ましく、より好ましくは50000以下であり、さらに好ましくは30000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値である。具体的に、GPCとして、東ソ-社製の製品名「HLC-8020GPC」を用い、カラムとして、東ソ-社製の製品名「TSKgel GMHHR-H」と「TSKgel GMHHR-M」を用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。測定は、試料濃度を0.45質量%、流速を1.0ml/min、サンプル注入量を100μl、測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行う。検量線は、ポリスチレン/THF(1090000, 427000, 37900, 18700, 6200, 2500, 1010, 495)から作成する。以下、他の成分の重量平均分子量も、同様の方法で測定される。
重合性基を有するポリマー粒子としては、例えば、重合性基を有するポリウレタン粒子及び重合性基を有するポリエステル粒子が挙げられる。インク画像の柔軟性、及び、基材に対するインク画像の密着性をより向上させる観点から、重合性基を有するポリマー粒子は、重合性基を有するポリウレタン粒子であることが好ましい。
また、重合性基を有するポリマーは、分散安定性の観点から、(メタ)アクリロイル基を有するポリマーであることが好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有するポリマーは、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレート、又はポリエステルアクリレートが好ましく、ウレタンアクリレートがより好ましい。なお、ウレタンアクリレートは、重合性基を有するポリウレタンの一態様であり、ポリエステルアクリレートは、重合性基を有するポリエステルの一態様である。
重合性基を有するポリマー粒子は、本開示のインク組成物を調製する際に、水分散液の形態で含有させてもよい。重合性基を有するポリマー粒子の水分散液は、市販品として入手可能である。ウレタンアクリレート粒子を含有する水分散液の市販品としては、例えば、リオデュラス(登録商標)AQ2016、リオデュラスAQ2017(以上、東洋ケム社製);
ハイドラン(登録商標)100A、ハイドラン100B、ハイドラン100S(以上、DIC社製);
タケラック(登録商標)WR-620、タケラックWR-640(以上、三井化学社製);
UT7019、UT7119(以上、三菱ケミカル社製);
UCECOAT(登録商標)7571、UCECOAT7849、UCECOAT7655、UCECOAT7770、UCECOAT7773(以上、ダイセル・オルネクス社製);
ビームセット(登録商標)EM90、ビームセットEM94(以上、荒川化学工業社製);及び
WBR-832DA(大成ファインケミカル社製)が挙げられる。
また、本開示において、重合性基を有するポリマー粒子を構成するポリマーは、下記構造単位(1)、構造単位(2)、及び親水性基を含む鎖状ポリマー(以下、「特定鎖状ポリマー」という)であることが好ましい。
-構造単位(1)、構造単位(2)-
構造単位(1)及び構造単位(2)は、以下のとおりである。
構造単位(1)及び構造単位(2)中、
Cy及びCyは、それぞれ独立に、環状構造を含む炭素数3~30の2価の有機基を表し、
及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は-NR-基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を表す。
構造単位(1)中の*1は、構造単位(1)以外の構造単位との結合位置を表し、構造単位(2)中の*2は、構造単位(2)以外の構造単位との結合位置を表す。
ここで、「構造単位(1)中の*1は、構造単位(1)以外の構造単位との結合位置を表し」とは、特定鎖状ポリマーにおいて、構造単位(1)同士が直接結合することはないことを意味する。
構造単位(1)中の*1の位置に結合する構造単位(1)以外の構造単位は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
上記構造単位(1)以外の構造単位としては特に制限はないが、例えば、構造単位(2)が挙げられる。また、特定鎖状ポリマーが後述する構造単位(3)を含む場合には、上記構造単位(1)以外の構造単位として、構造単位(3)も挙げられる。また、特定鎖状ポリマーが、構造単位(2)及び構造単位(3)以外の、ジオール化合物に由来する構造単位、ジアミン化合物に由来する構造単位、又はジチオール化合物に由来する構造単位を含む場合には、上記構造単位(1)以外の構造単位として、これらの構造単位も挙げられる。
また、「構造単位(2)中の*2は、構造単位(2)以外の構造単位との結合位置を表し」とは、特定鎖状ポリマーにおいて、構造単位(2)同士が直接結合することはないことを意味する。
構造単位(2)中の*2の位置に結合する構造単位(2)以外の構造単位は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
上記構造単位(2)以外の構造単位としては特に制限はないが、例えば、構造単位(1)が挙げられる。また、特定鎖状ポリマーが、構造単位(1)以外のイソシアネート化合物に由来する構造単位を含む場合には、上記構造単位(2)以外の構造単位として、構造単位(1)以外のイソシアネート化合物に由来する構造単位も挙げられる。
及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は-NR-基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を表す。
としては、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基がより好ましい。
及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又は-NR-基であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
Cy及びCyにおける「環状構造」は、脂肪族環、芳香族環、又は複素環を意味する。即ち、Cy及びCyで表される2価の有機基は、脂肪族環、芳香族環、及び複素環の少なくとも1つを含む。
Cy及びCyにおける「環状構造を含む」の概念には、
単環を少なくとも1つ含むこと、
2つ以上の単環を含む縮合環を少なくとも1つ含むこと、
2つ以上の単環を含む橋かけ環を少なくとも1つ含むこと、及び、
2つ以上の単環を含むスピロ環を少なくとも1つ含むことのいずれもが包含される。
Cy又はCyで表される2価の有機基の炭素数は3~30であるが、好ましくは5~30である。
上記複素環におけるヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。
Cy及びCyにおける環状構造は、少なくとも1つの置換基によって置換されていてもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルキル基、及びヘテロ原子含有基が挙げられる。
置換基としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子がより好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基は、ハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素数1~6のアルキル基が好ましい。ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子の好ましい範囲は、置換基としてのハロゲン原子の好ましい範囲と同様である。
置換基としてのアルキル基は、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
置換基としてのヘテロ原子含有基は、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましい。
また、インク組成物の経時硬化性向上の効果がより効果的に奏される観点から、Cy及びCyの少なくとも一方は、環状構造を2つ以上含むことが好ましい。
本明細書において、環状構造の数は、環(即ち単環)の数を意味する。
従って、「環状構造を2つ以上含む」の概念には、縮合環、橋かけ環、及びスピロ環の一部ではない単環を2つ以上含むことだけでなく、縮合環を1つ含むこと、橋かけ環を1つ含むこと、及びスピロ環を1つ含むことも包含される。
また、分散安定性及び密着性の効果がより効果的に奏される観点から、Cy及びCyの少なくとも一方は、脂肪族環を含むことが好ましい。
また、分散安定性及び密着性の効果がより効果的に奏される観点から、Cy及びCyの少なくとも一方は、5員又は6員の環状構造(好ましくは脂肪族環又は芳香族環、特に好ましくは脂肪族環)を含むことが好ましい。
ここで、「5員又は6員の環状構造を含む」の概念には、5員又は6員の単環を含む縮合環を含むこと、5員又は6員の単環を含む橋かけ環を含むこと、及び5員又は6員の単環を含むスピロ環を含むことも包含される。
構造単位(1)中のCyとしては、以下の基(C1-1)~基(C1-16)が挙げられるが、Cyは以下の基には限定されない。基(C1-1)~基(C1-16)において、*は、結合位置を表す。
インク画像と基材との密着性をより向上させる観点から、構造単位(1)中のCyは、基(C1-1)~基(C1-7)のうちのいずれか1つがさらに好ましく、基(C1-1)~基(C1-3)、及び基(C1-5)のうちのいずれか1つが特に好ましい。
また、インク画像の耐水性及び耐アルコール性をより向上させる観点から、構造単位(1)中のCyは、基(C1-6)、基(C1-13)、基(C1-14)、又は基(C1-15)が好ましい。
構造単位(2)中のCyとしては、以下の基(C2-1)~基(C2-22)が挙げられるが、Cyは以下の基には限定されない。基(C2-1)~基(C2-22)において、*は、結合位置を表す。
構造単位(2)中のCyは、インク画像の耐水性及び耐アルコール性をより向上させる観点から、
基(C2-10)、基(C2-11)、基(C2-12)、基(C2-13)、基(C2-15)、基(C2-16)、基(C2-18)、基(C2-19)、基(C2-20)、又は基(C2-21)が好ましく、
基(C2-10)、基(C2-11)、基(C2-12)、又は基(C2-19)がより好ましく、
基(C2-10)又は基(C2-11)が特に好ましい。
-単位(1)形成用化合物-
構造単位(1)は、ジイソシアネート化合物を用いて形成できる。
以下、構造単位(1)を形成するための化合物(以下。「単位(1)形成用化合物」又は「単位(1)用化合物」ともいう。)の具体例(例示化合物(1-1)~(1-20))を示すが、単位(1)形成用化合物は、以下の具体例に限定されない。
-単位(2)形成用化合物-
構造単位(2)は、例えば、ジオール化合物、ジアミン化合物、又はジチオール化合物を用いて形成できる。
以下、構造単位(2)を形成するための化合物(以下。「単位(2)形成用化合物」又は「単位(2)用化合物」ともいう。)の具体例(例示化合物(2-1)~(2-24))を示すが、単位(2)形成用化合物は、以下の具体例に限定されない。
特定鎖状ポリマーの全量に対する構造単位(1)及び構造単位(2)の合計量は、50質量%以上であることが好ましい。これにより、特性鎖状ポリマー中の環状構造の割合が多くなり、その結果、前述した分散安定性及び密着性の効果がより効果的に奏される。
分散安定性及び密着性の効果がより効果的に奏される観点から、特定鎖状ポリマーの全量に対する構造単位(1)及び構造単位(2)の合計量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましい。
特定鎖状ポリマーの全量に対する構造単位(1)及び構造単位(2)の合計量の上限は特に限定されないが、例えば98質量%、好ましくは95質量%である。
特定鎖状ポリマー1g中の構造単位(1)及び構造単位(2)に含まれる環状構造の合計ミリモル数を特定鎖状ポリマーの環価とした場合に、特定鎖状ポリマーの環価は、3.00mmol/g以上であることが好ましい。これにより、分散安定性及び密着性の効果がより効果的に奏される。
特定鎖状ポリマーの環価は、より好ましくは4.00mmol/g以上である。
特定鎖状ポリマーの環価の上限は、例えば9.00mmol/gである。
特定鎖状ポリマーの環価は、下記式によって求めることもできる。
特定鎖状ポリマーの環価(mmol/g)
=(((特定鎖状ポリマーの全量に対する構造単位(1)の含有量(質量%)/100)×構造単位(1)中の環状構造の数/構造単位(1)の分子量)+((特定鎖状ポリマーの全量に対する構造単位(2)の含有量(質量%)/100)×構造単位(2)中の環状構造の数/構造単位(2)の分子量))×1000
また、画像の耐水性及び耐アルコール性をより向上させる観点から、特定鎖状ポリマーにおけるCy及びCyの少なくとも一方は、下記ビスアリール構造(A)を含むことが好ましい。
ビスアリール構造(A)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、アリーレン基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表し、2つの*は、それぞれ結合位置を表す。
ビスアリール構造(A)が構造単位(1)に含まれる場合、ビスアリール構造(A)は、構造単位(1)中の窒素原子に対し、直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。連結基は、**-OCHCH-*基(ここで、**は、ビスアリール構造(A)中のアリーレン基との結合位置を表し、*は、構造単位(1)中の窒素原子との結合位置を表す)が好ましい。
ビスアリール構造(A)が構造単位(2)に含まれる場合、ビスアリール構造(A)は、構造単位(2)中のY又はYに対し、直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。連結基は、**-OCHCH-*基(ここで、**は、ビスアリール構造(A)中のアリーレン基との結合位置を表し、*は、構造単位(2)中のY又はYとの結合位置を表す)が好ましい。
ビスアリール構造(A)中、Ar及びArで表されるアリーレン基は、それぞれ、無置換のアリーレン基であってもよいし、少なくとも1つの置換基によって置換されたアリーレン基であってもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルキル基、及びヘテロ原子含有基が挙げられる。
置換基としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子がより好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基は、ハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素数1~6のアルキル基が好ましい。ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子の好ましい範囲は、置換基としてのハロゲン原子の好ましい範囲と同様である。
置換基としてのアルキル基は、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
置換基としてのヘテロ原子含有基は、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
ビスアリール構造(A)中のAr及びArの少なくとも一方は、無置換のアリーレン基、少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されたアリーレン基、少なくとも1個のハロゲン化アルキル基によって置換されたアリーレン基、又は、少なくとも1個の炭素数1~6のアルコキシ基(好ましくはメトキシ基又はエトキシ基、特に好ましくはメトキシ基)によって置換されたアリーレン基であることが好ましく、
少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されたアリーレン基、少なくとも1個のハロゲン化アルキル基によって置換されたアリーレン基、又は、少なくとも1個の炭素数1~6のアルコキシ基(好ましくはメトキシ基又はエトキシ基、特に好ましくはメトキシ基)によって置換されたアリーレン基であることがより好ましく、
少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されたアリーレン基であることが特に好ましい。
ビスアリール構造(A)中、Ar及びArで表されるアリーレン基は、フェニレン基又はナフチレン基が好ましく、画像の耐水性及び耐アルコール性をより向上させる観点から、フェニレン基がより好ましい。
ビスアリール構造(A)中、Lで表される2価の連結基は、ビスフェノール構造に含まれ得る連結基が好ましく、具体的には、スルホニル基(-SO-基)、炭素数1~10の2価の炭化水素基、又は炭素数1~10の2価のハロゲン化炭化水素基がより好ましい。
Lとしての炭素数1~10の2価の炭化水素基は、メチレン基(-CH-基)、メチルメチレン基(-CHCH-基)、ジメチルメチレン基(-C(CH-基)、エチルメチルメチレン基(-C(CH)(C)-基)、ジエチルメチレン基(-C(CH-基)、フェニルメチレン基(-CH(C)-基)、フェニルメチルメチレン基(-C(C)(CH)-基)、ジフェニルメチレン基(-C(C-基)、又は、以下に列挙する基(*は結合位置を表す)のうちのいずれか1つが好ましい。
Lとしての炭素数1~10の2価のハロゲン化炭化水素基は、以下に列挙する基(*は結合位置を表す)のうちのいずれか1つが好ましい。
Lは、画像の耐水性及び耐アルコール性をより向上させる観点から、スルホニル基(-SO-基)又はジメチルメチレン基(-C(CH-基)が好ましく、スルホニル基(-SO-基)がより好ましい。
ビスアリール構造(A)は、画像の耐水性及び耐アルコール性をより向上させる観点から、下記ビスアリール構造(A2)が好ましい。
ビスアリール構造(A2)中、R10~R17は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、Lは、単結合又は2価の連結基を表し、2つの*は、それぞれ結合位置を表す。
ビスアリール構造(A2)中、R10~R17で表される置換基は、ビスアリール構造(A)中、Ar及びArに含まれ得る置換基と同義である。
10~R17のうち、少なくとも1つは、ハロゲン原子、炭素数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基(好ましくはメトキシ基又はエトキシ基、特に好ましくはメトキシ基)であることがより好ましく、ハロゲン原子であることが特に好ましい。
ビスアリール構造(A2)中のLは、ビスアリール構造(A)中のLと同義であり、ビスアリール構造(A2)中のLの好ましい態様も、ビスアリール構造(A)中のLの好ましい態様と同様である。
画像のプラスチック基材との密着性と、画像の耐水性及び耐アルコール性と、を両立させる観点から見た場合、Cy及びCyのうちのいずれか一方が脂肪族環を含み、Cy及びCyのうちの他方がビスアリール構造(A)を含むことが好ましい。
この場合における特に好ましい態様は、Cyが脂肪族環を含み、Cyがビスアリール構造(A)を含む態様である。
また、Cy及びCyのうちの一方が脂肪族環を含み、Cy及びCyのうちの他方がビスアリール構造(A)を含む場合、画像の耐水性及び耐アルコール性をより向上させる観点から、特定鎖状ポリマーにおける、脂肪族環を含む構造単位に対するビスアリール構造(A)を含む構造単位のモル比は、0.10~1.00であることが好ましく、0.10~0.80であることがより好ましく、0.10~0.70であることがさらに好ましく、0.10~0.60であることが特に好ましい。
また、Cy及びCyのうちの一方が脂肪族環を含み、Cy及びCyのうちの他方がビスアリール構造(A)を含む場合、特定鎖状ポリマー中における脂肪族環を含む構造単位の含有量は、特定鎖状ポリマーの全量に対し、10質量%~80質量%が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましく、30質量%~50質量%がさらに好ましい。
-親水性基-
特定鎖状ポリマーは、親水性基を含む。
特定鎖状ポリマーに含まれる親水性基は、インクの分散安定性に寄与する。
親水性基は、アニオン性基又はノニオン性基が好ましく、分散安定性向上の効果に優れる点から、アニオン性基が好ましい。
例えば、同じ分子量のアニオン性基とノニオン性基とを比較した場合、アニオン性基の方が、分散安定性向上の効果に優れる。即ち、アニオン性基(特に好ましくは、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群から選択される少なくとも1種)は、その分子量が小さい場合においても、分散安定性向上の効果を十分に発揮し得る。
ノニオン性基としては、ポリエーテル構造を有する基が挙げられ、ポリアルキレンオキシ基を含む1価の基が好ましい。
アニオン性基は、中和されていないアニオン性基であってもよいし、中和されたアニオン性基であってもよい。
中和されていないアニオン性基としては、カルボキシ基、スルホ基、硫酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基が挙げられる。
中和されたアニオン性基としては、カルボキシ基の塩、スルホ基の塩、硫酸基の塩、ホスホン酸基の塩、及びリン酸基の塩が挙げられる。
本明細書中において、「カルボキシ基が中和されている」とは、アニオン性基としてのカルボキシ基が、「塩」の形態(例えば、「-COONa」)となっていることを指す。アニオン性基としての、スルホ基、硫酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基についても同様である。
中和は、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、有機アミン(例えば、トリエチルアミン等)を用いて行うことができる。
特定鎖状ポリマーに含まれ得るアニオン性基は、分散安定性の観点から、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、スルホ基、スルホ基の塩、硫酸基、硫酸基の塩、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩、リン酸基、及びリン酸基の塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上述した、カルボキシ基の塩、スルホ基の塩、硫酸基の塩、ホスホン酸基の塩、及びリン酸基の塩における「塩」は、アルカリ金属塩又は有機アミン塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましい。
アルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、K又はNaが好ましい。
また、特定鎖状ポリマーが親水性基としてアニオン性基(例えば、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群から選択される少なくとも1種)を含む場合において、特定鎖状ポリマー1g中のアニオン性基のミリモル数(例えば、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩の合計ミリモル数)を、特定鎖状ポリマーの酸価とした場合、特定鎖状ポリマーの酸価は、分散安定性の観点から、0.10mmol/g~2.00mmol/gであることが好ましく、0.30mmol/g~1.50mmol/gであることがより好ましい。
また、特定鎖状ポリマーが親水性基としてアニオン性基を有する場合、特定鎖状ポリマーのアニオン性基の中和度は、50%~100%が好ましく、70%~90%がより好ましい。
ここで、中和度とは、インクに含有される特定鎖状ポリマーにおける、「中和されていないアニオン性基(例えばカルボキシ基)の数と中和されたアニオン性基(例えばカルボキシ基の塩)の数との合計」に対する「中和されたアニオン性基の数」の比(即ち、比〔中和されたアニオン性基の数/(中和されていないアニオン性基の数+中和されたアニオン性基の数)〕)を指す。
特定鎖状ポリマーの中和度(%)は、中和滴定によって測定される。
本明細書において、特定鎖状ポリマーの中和度(%)は、以下のようにして求める。
まず、測定対象である、特定鎖状ポリマーを含む重合性基を有するポリマー粒子の水分散物(例えばインク)を準備する。
準備した水分散物50gに対し、80,000rpm(revolutions per minute;以下同じ)、40分の条件の遠心分離を施す。遠心分離によって生じた上澄み液を除去し、沈殿物(重合性基を有するポリマー粒子)を回収する。
容器1に、回収した重合性基を有するポリマー粒子を約0.5g秤量し、秤量値W1(g)を記録する。次いで、テトラヒドロフラン(THF)54mL及び蒸留水6mLの混合液を添加し、秤量した重合性基を有するポリマー粒子を希釈することにより中和度測定用試料1を得る。
得られた中和度測定用試料1に対し、滴定液として0.1N(=0.1mol/L)水酸化ナトリウム水溶液を用いて滴定を行い、当量点までに要した滴定液量をF1(mL)として記録する。滴定において複数の当量点が得られた場合は、最大滴定量での当量点の値を用いる。ここで、「最大滴定量F1(mL)」は、重合性基を有するポリマー粒子に含まれるアニオン性基のうち、中和されていないアニオン性基(例えば、-COOH)の量に相当する。
また、容器2に、回収した重合性基を有するポリマー粒子を約0.5g秤量し、秤量値W2(g)を記録する。次いで、酢酸60mLを添加し、秤量した重合性基を有するポリマー粒子を希釈することにより中和度測定用試料2を得る。
得られた中和度測定用試料2に対し、滴定液として0.1N(=0.1mol/L)過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定を行い、当量点までに要した滴定液量をF2(mL)として記録する。滴定において複数の当量点が得られた場合は、最大滴定量での当量点の値を用いる。ここで、「最大滴定量F2(mL)」は、重合性基を有するポリマー粒子に含まれるアニオン性基のうち、中和されたアニオン性基(例えば、-COONa)の量に相当する。
「F1(mL)」及び「F2(mL)」の測定値に基づき、下記の式に従って、アニオン性基の中和度(%)を求める。
F1(mL)×水酸化ナトリウム水溶液の規定度(0.1mol/L)/W1(g)+F2(mL)×過塩素酸酢酸溶液の規定度(0.1mol/L)/W2(g) = 重合性基を有するポリマー粒子に含まれるアニオン性基の全量(中和されたアニオン性基及び中和されていないアニオン性基の全量)(mmol/g)・・・(1)
F2(mL)×過塩素酸酢酸溶液の規定度(0.1mol/L)/W2(g) = 重合性基を有するポリマー粒子に含まれるアニオン性基のうち、中和されたアニオン性基の量(mmol/g)・・・(2)
中和度(%) = (2)/(1)×100
また、親水性基としてのノニオン性基は、ポリエーテル構造を有する基が好ましく、ポリアルキレンオキシ基を含む1価の基が好ましい。
-親水性基を有する構造単位-
特定鎖状ポリマーは、親水性基を有する構造単位を含むことが好ましい。
親水性基を有する構造単位は、好ましくは、後述する親水性基導入用化合物を原料として形成される。
親水性基を有する構造単位として、特に好ましくは、アニオン基を有する構造単位である、下記構造単位(3)である。
構造単位(3)中、RX1は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表し、Aは、アニオン性基を表し、*3は、構造単位(3)以外の構造単位との結合位置を表す。
ここで、「*3は、構造単位(3)以外の構造単位との結合位置を表し」とは、特定鎖状ポリマーにおいて、構造単位(3)同士が直接結合することはないことを意味する。
構造単位(3)中の*3の位置に結合する構造単位(3)以外の構造単位は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
上記構造単位(3)以外の構造単位としては特に制限はないが、例えば、構造単位(1)が挙げられる。また、特定ポリマーが、構造単位(1)以外のイソシアネート化合物に由来する構造単位を含む場合には、上記構造単位(3)以外の構造単位として、構造単位(1)以外のイソシアネート化合物に由来する構造単位も挙げられる。
Aで表されるアニオン性基の例としては、前述のアニオン性の例と同様である。
Aで表されるアニオン性基は、カルボキシ基又はカルボキシ基の塩が好ましい。
特定鎖状ポリマーは、Aがカルボキシ基である態様の構造単位(3)と、Aがカルボキシ基の塩である態様の構造単位(3)と、を含んでいてもよい。
特定鎖状ポリマーの全量に対する親水性基を有する構造単位(例えば構造単位(3))の含有量は、好ましくは3質量%~30質量%であり、より好ましくは5質量%~20質量%である。
特定鎖状ポリマーの全量に対するアニオン性基を有する構造単位の含有量は、特定鎖状ポリマーの酸価(mmol/g)を考慮して調整してもよい。
-親水性基導入用化合物-
特定鎖状ポリマーへの親水性基の導入は、親水性基導入用化合物を用いて行うことができる。
親水性基導入用化合物のうち、アニオン性基導入用化合物としては、α-アミノ酸(具体的には、リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン)等のアミノ酸が挙げられる。
アニオン性基導入用化合物としては、上記のα-アミノ酸以外にも、以下の具体例も挙げられる。
アニオン性基導入用化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;トリエチルアミンなどの有機塩基;等を用い、アニオン性基の少なくとも一部を中和して用いてもよい。
親水性基導入用化合物のうち、ノニオン性基導入用化合物は、ポリエーテル構造を有する化合物が好ましく、ポリオキシアルキレン基を有する化合物がより好ましい。
-重合性基導入用化合物-
特定鎖状ポリマーが重合性基を含む場合、特定鎖状ポリマーへの重合性基の導入は、重合性基導入用化合物を用いて行うことができる。
重合性基導入用化合物としては、重合性基及び活性水素基を有する化合物を用いることができる。ここで、活性水素基とは、ヒドロキシ基、アミノ基、又はチオール基を指す。
重合性基導入用化合物としては、1つ以上の重合性基及び2つ以上の活性水素基を有する化合物を用いることが好ましい。
特定鎖状ポリマーへの重合性基の導入方法には特に制限はないが、特定鎖状ポリマーを合成する際に、単位(1)形成用化合物(例えばジイソシアネート化合物)と、単位(2)形成用化合物(例えばジオール化合物)と、重合性基導入用化合物と、(必要に応じ親水性基導入用化合物)と、を反応させる方法が特に好ましい。
重合性基導入用化合物としては、例えば、国際公開第2016/052053号の段落0075~0089に記載の化合物を用いることもできる。
重合性基導入用化合物は、下記式(ma)で表される化合物が好ましい。
Lc (ma)
式(ma)において、Lは、m+n価の連結基を表し、m及びnは、それぞれ独立に、1~100から選ばれる整数であり、Lcは1価のエチレン性不飽和基を表し、Zは活性水素基を表す。
は、2価以上の脂肪族基、2価以上の芳香族基、2価以上の複素環基、-O-、-S-、-NH-、-N<、-CO-、-SO-、-SO-、又はこれらの組合せであることが好ましい。
m及びnは、それぞれ独立に、1~50であることが好ましく、2~20であることがより好ましく、3~10であることがさらに好ましく、3~5であることが特に好ましい。
Lcで表される1価のエチレン性不飽和基としては、アリル基、ビニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基を挙げることができる。
Zは、OH、SH、NH又はNHであることが好ましく、OH又はNHであることがより好ましく、OHであることがさらに好ましい。
以下、重合性基導入用化合物の例を示すが、重合性基導入用化合物はこれらの構造に限定されるものではない。なお、化合物(a-3)及び(a-12)におけるnは、例えば、1~90から選ばれる整数を表す。
重合性基導入用モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性基を導入したイソシアネート化合物の製造においては、ポリイソシアネート(即ち、3官能以上のイソシアネート化合物)と重合性基導入モノマーとを、重合性基導入モノマーの活性水素基のモル数がポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数の0.01倍~0.3倍(より好ましくは0.02倍~0.25倍、さらに好ましくは0.03倍~0.2倍)となる比率で反応させることが好ましい。
重合性基を有するポリマー粒子は、本開示のインクの効果を損なわない範囲で、特定鎖状ポリマー以外のその他のポリマーを含有してもよい。
その他のポリマーとしては、特定鎖状ポリマー以外の鎖状ポリマー、及び三次元架橋構造を有するポリマーが挙げられる。
但し、本開示のインクの効果をより効果的に奏する観点から、重合性基を有するポリマー粒子中の全ポリマー成分に占める特定鎖状ポリマーの割合は、80質量%~100質量%であることが好ましく、90質量%~100質量%であることがより好ましく、95質量%~100質量%であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
(重合性化合物)
重合性基を有するポリマー粒子は、重合性基(例えば、光重合性基又は熱重合性基)を有する化合物として、重合性化合物(例えば、光重合性化合物又は熱重合性化合物)を含んでいてもよい。この態様によれば、インク膜の硬化感度及びインク膜の硬度がより向上する。
重合性基を有するポリマー粒子が重合性化合物を含む場合、重合性基を有するポリマー粒子に含まれる重合性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。重合性基を有するポリマー粒子が重合性化合物を含む場合、重合性化合物の重合性基は、重合性基を有するポリマー粒子の重合性基として機能する。
なお、重合性基を有するポリマー粒子が重合性化合物を含む態様において、特定鎖状ポリマーが重合性基を有していてもよい。
重合性基を有するポリマー粒子に含まれ得る重合性化合物としては、国際公開第2016/052053号の段落0097~0105に記載された化合物を用いてもよい。
重合性基を有するポリマー粒子に含まれ得る重合性化合物は、光の照射によって重合する光重合性化合物、又は、加熱もしくは赤外線の照射によって重合する熱重合性化合物が好ましい。光重合性化合物としては、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を有するラジカル重合性化合物が好ましい。
重合性基を有するポリマー粒子に含まれ得る重合性化合物は、重合性モノマー、重合性オリゴマー、及び重合性ポリマーのいずれであってもよい。インク膜の硬化感度及びインク膜の硬度を向上させる観点からは、重合性化合物は、重合性モノマーが好ましい。中でも、より好ましい重合性化合物は、光重合性化合物の概念に包含される光重合性モノマー及び熱重合性化合物の概念に包含される熱重合性モノマーである。
重合性基を有するポリマー粒子が、重合性化合物として光重合性化合物を含む場合、重合性基を有するポリマー粒子は、さらに、後述の光重合開始剤を含むことが好ましい。
また、重合性基を有するポリマー粒子が、重合性化合物として熱重合性化合物を含む場合、重合性基を有するポリマー粒子は、さらに、光熱変換剤、若しくは熱硬化促進剤、又は、光熱変換剤及び熱硬化促進剤を含むことが好ましい。
重合性基を有するポリマー粒子に含まれ得る重合性化合物(好ましくは重合性モノマー。以下同じ。)の含有量(2種以上含む場合には合計量)は、膜の硬化感度及び膜の硬度を向上させる観点から、重合性基を有するポリマー粒子の固形分量に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、30質量%~70質量%がさらに好ましい。
画像の基材との密着性をより向上させる観点から、重合性基を有するポリマー粒子に含まれ得る重合性化合物(例えば光重合性化合物)の少なくとも1種は、環状構造を有する重合性化合物(以下、「環状重合性化合物」ともいう)であることが好ましい。
インク画像の基材との密着性をさらに向上させる観点から、重合性基を有するポリマー粒子に含まれ得る重合性化合物(例えば光重合性化合物)の少なくとも1種は、一分子中に、1つ以上の環状構造と、2つ以上の(メタ)アクリロイル基と、を含む重合性化合物(以下、「2官能以上の環状重合性化合物」ともいう)であることが好ましい。
2官能以上の環状重合性化合物としては、
トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化シクロヘキサノンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及びシクロヘキサノンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
重合性基を有するポリマー粒子が重合性化合物を含む場合、この重合性化合物全体に占める2官能以上の環状重合性化合物の割合は、10質量%~100質量%が好ましく、30質量%~100質量%がより好ましく、40質量%~100質量%が特に好ましい。
また、重合性基を有するポリマー粒子は、2官能以下の重合性化合物(好ましくは2官能以下の重合性モノマー。以下同じ。)と、3官能以上の重合性化合物(好ましくは3官能以上の重合性モノマー。以下同じ。)と、を含んでもよい。
重合性基を有するポリマー粒子が、2官能以下の重合性化合物と3官能以上の重合性化合物とを含む場合には、2官能以下の重合性化合物が、膜の基材との密着性に寄与し、3官能以上の重合性化合物が、膜の硬度向上に寄与すると考えられる。
重合性化合物の分子量(分子量が1000以上である場合には、重量平均分子量)は、好ましくは100~100000であり、より好ましくは100~30000であり、さらに好ましくは100~10000であり、さらに好ましくは100~4000であり、さらに好ましくは100~2000であり、さらに好ましくは100~1000であり、さらに好ましくは100~900であり、さらに好ましくは100~800であり、特に好ましくは150~750である。
-重合性モノマー-
重合性基を有するポリマー粒子に含まれ得る重合性モノマーとしては、光の照射によって重合硬化する光重合性モノマー、及び加熱又は赤外線の照射によって重合硬化する熱重合性モノマーを挙げることができる。
重合性化合物として光重合性モノマーを含む場合、後述の光重合開始剤を含む態様が好ましい。また、重合性化合物として熱重合性モノマーを含む場合、後述の光熱変換剤若しくは熱硬化促進剤、又は光熱変換剤及び熱硬化促進剤を含む態様が好ましい。
<光重合性モノマー>
光重合性モノマーは、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー(即ち、ラジカル重合性モノマー)及びカチオン重合可能なカチオン重合性基を有する重合性モノマー(即ち、カチオン重合性モノマー)からなる群より選択できる。
ラジカル重合性モノマーの例としては、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物、N-ビニル複素環化合物、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、及び不飽和ウレタンが挙げられる。
ラジカル重合性モノマーは、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。
重合性基を有するポリマー粒子がラジカル重合性モノマーを含む場合、重合性基を有するポリマー粒子は、ラジカル重合性モノマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
アクリレート化合物としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、トリデシルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート(PEA)、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、オリゴエステルアクリレート、エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート(IBOA)、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルヒドロフタル酸、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、ビニルエーテルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシフタル酸、2-アクリロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、ラクトン変性アクリレート、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、及び置換アクリルアミド(例えば、N-メチロールアクリルアミド、及びジアセトンアクリルアミド)等の単官能のアクリレート化合物;
ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、1,10-デカンジオールジアクリレート(DDDA)、3-メチルペンタジオールジアクリレート(3MPDDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド(EO)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド(PO)付加物ジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコキシ化ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、アルコキシ化シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、及びネオペンチルグリコールプロピレンオキシド付加物ジアクリレート等の2官能のアクリレート化合物;及び
トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能以上のアクリレート化合物が挙げられる。
メタクリレート化合物としては、メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の単官能のメタクリレート化合物;及び
ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、テトラエチレングリコールジメタクリレート等の2官能のメタクリレート化合物が挙げられる。
スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、及びp-メトキシ-β-メチルスチレンが挙げられる。
ビニルナフタレン化合物としては、1-ビニルナフタレン、メチル-1-ビニルナフタレン、β-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メチル-1-ビニルナフタレン、及び4-メトキシ-1-ビニルナフタレンが挙げられる。
N-ビニル複素環化合物としては、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルエチルアセトアミド、N-ビニルピロール、N-ビニルフェノチアジン、N-ビニルアセトアニリド、N-ビニルエチルアセトアミド、N-ビニルコハク酸イミド、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルカプロラクタム、及びN-ビニルイミダゾールが挙げられる。
その他のラジカル重合性のモノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、及び、N-ビニルホルムアミド等のN-ビニルアミドが挙げられる。
これらのラジカル重合性モノマーの中でも、2官能以下のラジカル重合性モノマーは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、1,10-デカンジオールジアクリレート(DDDA)、3-メチルペンタジオールジアクリレート(3MPDDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、3官能以上のラジカル重合性モノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロポキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
2官能以下のラジカル重合性モノマーと3官能以上のラジカル重合性のモノマーとの組み合わせとしては、2官能のアクリレート化合物と3官能のアクリレート化合物との組み合わせ、2官能のアクリレート化合物と5官能のアクリレート化合物との組み合わせ、及び、単官能のアクリレート化合物と4官能のアクリレート化合物との組み合わせが挙げられる。
ラジカル重合性モノマーは、環状構造を有するモノマーが好ましく;
前述した2官能以上の環状重合性化合物の好ましい化合物群、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、又は、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートがより好ましく;
前述した2官能以上の環状重合性化合物の好ましい化合物群、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、又は、ジシクロペンタニルアクリレートがさらに好ましく;
前述した2官能以上の環状重合性化合物の好ましい化合物群が特に好ましい。
上記に挙げたラジカル重合性モノマーの他にも、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品、並びに業界で公知のラジカル重合性及び架橋性のモノマーを用いることができる。
カチオン重合性モノマーの例としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、及びオキセタン化合物が挙げられる。
カチオン重合性モノマーは、少なくとも1つのオレフィン、チオエーテル、アセタール、チオキサン、チエタン、アジリジン、N複素環、O複素環、S複素環、P複素環、アルデヒド、ラクタム、又は環状エステル基を有する化合物が好ましい。
カチオン重合性モノマーとしては、J. V. Crivelloらの「Advances in Polymer Science」, 62, pages 1 to 47 (1984)、Leeらの「Handbook of Epoxy Resins」, McGraw Hill Book Company, New York (1967) 、及びP. F. Bruinsらの「Epoxy Resin Technology」,(1968)に記載の化合物を用いてもよい。
また、光重合性モノマーとしては、特開平7-159983号公報、特公平7-31399号公報、特開平8-224982号公報、特開平10-863号公報、特開平9-134011号公報、特表2004-514014号公報等の各公報に記載の光重合性組成物に用いられる光硬化性の重合性モノマーが知られており、これらも重合性基を有するポリマー粒子に含まれ得る重合性モノマーとして適用することができる。
光重合性モノマーとしては、上市されている市販品を用いてもよい。
光重合性モノマーの市販品の例としては、AH-600(2官能)、AT-600(2官能)、UA-306H(6官能)、UA-306T(6官能)、UA-306I(6官能)、UA-510H(10官能)、UF-8001G(2官能)、DAUA-167(2官能)、ライトアクリレートNPA(2官能)、ライトアクリレート3EG-A(2官能)(以上、共栄社化学(株))、SR339A(PEA、単官能)、SR506(IBOA、単官能)、CD262(2官能)、SR238(HDDA、2官能)、SR341(3MPDDA、2官能)、SR508(2官能)、SR306H(2官能)、CD560(2官能)、SR833S(2官能)、SR444(3官能)、SR454(3官能)、SR492(3官能)、SR499(3官能)、CD501(3官能)、SR502(3官能)、SR9020(3官能)、CD9021(3官能)、SR9035(3官能)、SR494(4官能)、SR399E(5官能)(以上、サートマー社)、A-NOD-N(NDDA、2官能)、A-DOD-N(DDDA、2官能)、A-200(2官能)、APG-400(2官能)、A-BPE-10(2官能)、A-BPE-20(2官能)、A-9300(3官能)、A-9300-1CL(3官能)、A-TMPT(3官能)、A-TMM-3L(3官能)、A-TMMT(4官能)、AD-TMP(4官能)(以上、新中村化学工業(株))、UV-7510B(3官能)(日本合成化学(株))、KAYARAD DPCA-30(6官能)、及びKAYARAD DPEA-12(6官能)(以上、日本化薬(株))が挙げられる。
その他、重合性モノマーとしては、NPGPODA(ネオペンチルグリコールプロピレンオキシド付加物ジアクリレート)、SR531、SR285、SR256(以上、サートマー社)、A-DHP(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業(株))、アロニックス(登録商標)M-156(東亞合成(株))、V-CAP(BASF社)、ビスコート#192(大阪有機化学工業(株))等の市販品を好適に用いることができる。
これらの市販品の中でも、特に環状構造を有する光重合性モノマーである、SR506、SR833S、A-9300、又はA-9300-CLが好ましく、SR833Sが特に好ましい。
<熱重合性モノマー>
熱重合性モノマーは、加熱もしくは赤外線の照射によって重合可能な重合性モノマーの群から選択できる。熱重合性モノマーとしては、例えば、エポキシ、オキセタン、アジリジン、アゼチジン、ケトン、アルデヒド、及びブロックイソシアナートが挙げられる。
上記のうち、エポキシ化合物としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、3-(ビス(グリシジルオキシメチル)メトキシ)-1,2-プロパンジオール、リモネンオキシド、2-ビフェニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’、4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エピクロロヒドリン-ビスフェノールS由来のエポキシド、エポキシ化スチレン、エピクロロヒドリン-ビスフェノールF由来のエポキシド、エピクロロヒドリン-ビスフェノールA由来のエポキシド、エポキシ化ノボラック、脂環式ジエポキシド等の2官能以下のエポキシ化合物;及び
多塩基酸のポリグリシジルエステル、ポリオールのポリグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、芳香族ポリオールのポリグリシジルエステル、ウレタンポリエポキシ化合物、ポリエポキシポリブタジエン等の3官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
オキセタン化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチル-1-オキセタン、1,4ビス[3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3-フェノキシメチル-オキセタン、ビス([1-エチル(3-オキセタニル)]メチル)エーテル、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-[(トリエトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン、及び3,3-ジメチル-2-(p-メトキシフェニル)-オキセタンが挙げられる。
ブロックイソシアナート化合物としては、イソシアナート化合物をブロック化剤(活性水素含有化合物)で不活性化した化合物が挙げられる。
イソシアナート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、トルイルジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート三量体、トリメチルへキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアナート;タケネート(登録商標;三井化学社)、デュラネート(登録商標;旭化成社)、Bayhydur(登録商標;バイエルAG社)などの市販のイソシアナート、又はこれらを組み合わせた二官能以上のイソシアナートが好ましい。
ブロック化剤としては、ラクタム[例えばε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等]、オキシム[例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)、メチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)、シクロヘキサノンオキシム等]、アミン[例えば脂肪族アミン(ジメチルアミン、ジイソピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソブチルアミン等)、脂環式アミン(メチルヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等)、芳香族アミン(アニリン、ジフェニルアミン等)]、脂肪族アルコール[例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール等]、フェノールおよびアルキルフェノール[例えばフェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、ジイソプロピルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール等]、イミダゾール[例えばイミダゾール、2-メチルイミダゾール等]、ピラゾール[例えばピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等]、イミン[例えばエチレンイミン、ポリエチレンイミン等]、活性メチレン[例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等]、特開2002-309217号公報及び特開2008-239890号公報に記載のブロック化剤、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。中でも、ブロック化剤は、オキシム、ラクタム、ピラゾール、活性メチレン、又はアミンが好ましい。
ブロックイソシアナート化合物としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、Trixene(登録商標)BI7982、BI7641,BI7642、BI7950、BI7960、BI7991等(Baxenden Chemicals LTD)、Bayhydur(登録商標;Bayer AG社)が好適に用いられる。また、国際公開第2015/158654号の段落0064に記載の化合物群も好適に用いられる。
重合性モノマーを含む重合性基を有するポリマー粒子は、例えば、特定鎖状ポリマー及び重合性モノマーを含む油相成分と、水相成分と、を混合した混合物を乳化させることによって製造できる。
重合性モノマーの分子量(分子量が1000以上である場合には、重量平均分子量)は、好ましくは100~4000であり、より好ましくは100~2000であり、さらに好ましくは100~1000であり、さらに好ましくは100~900であり、さらに好ましくは100~800であり、特に好ましくは150~750である。
本開示のインク組成物において、重合性基を有するポリマー粒子の含有量は、インク組成物の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、3質量%~40質量%であることがより好ましく、3質量%~30質量%であることがさらに好ましい。
重合性基を有するポリマー粒子の含有量が1質量%以上であると、インク画像と基材との密着性がより向上する。重合性基を有するポリマー粒子の含有量が50質量%以下であると、インク組成物の分散安定性がより向上する。
赤外線吸収色素の含有量に対する重合性基を有するポリマー粒子の含有量の比率(すなわち、重合性基を有するポリマー粒子の含有量/赤外線吸収色素の含有量)は、質量基準で2~20であることが好ましく、より好ましくは2~10である。比率が2以上であると、十分な耐擦性が得られる。比率が20以下であると、良好な吐出性が得られる。
重合性基を有するポリマー粒子の体積平均粒子径は特に限定されないが、分散安定性の観点から、0.01μm~10.0μmであることが好ましく、0.01μm~5μmであることがより好ましく、0.05μm~1μmであることがさらに好ましく、0.05μm~0.5μmがさらに好ましく、0.05μm~0.3μmが特に好ましい。
体積平均粒子径は、光散乱法によって測定される。光散乱法による体積平均粒子径の測定は、例えば、LA-960(堀場製作所製)を用いて行う。
<水>
本開示のインク組成物は、水を含む。水の含有量は特に限定されないが、インク組成物の全質量に対して、10質量%~99質量%であることが好ましく、より好ましくは20質量%~95質量%であり、さらに好ましくは30質量%~90質量%であり、特に好ましくは50質量%~90質量%である。
本開示のインク組成物は、赤外線吸収色素、重合性基を有するポリマー粒子、及び水以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、水溶性光重合開始剤、水溶性増感剤、水溶性有機溶剤、及び界面活性剤が挙げられる。
<水溶性光重合開始剤>
本開示のインク組成物は、水溶性光重合開始剤を含むことが好ましい。
水溶性光重合開始剤(以下、単に「光重合開始剤」という)としては、例えば、カルボニル化合物(例えば、芳香族ケトン;例えば、BASF社製のIRGACURE(登録商標)369、907、1173、2959等)、
アシルホスフィンオキシド化合物(例えば、BASF社製のIRGACURE 819、BASF社製のDAROCURE(登録商標)TPO等)、及び、
高分子型光重合開始剤(例えば、LAMBSON社製のOmnipol TX、Omnipol 9210;LAMBSON社製のSPEEDCURE7005、7010、7040等)が挙げられる。
また、光重合開始剤としては、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物も挙げられる。
光重合開始剤については、例えば、国際公開第2016/052053号(段落0090~段落0096、段落0131~段落0132、及び、段落0139~段落0147)、国際公開第2018/042916号(段落0169~段落0179、及び、段落0182~段落0183)等の公知文献を適宜参照できる。
インク組成物が光重合開始剤を含有する場合、インク組成物中における光重合開始剤は、重合性基を有するポリマー粒子中に内包される形態で存在していてもよいし、重合性基を有するポリマー粒子の表面に吸着する形態で存在していてもよいし、重合性基を有するポリマー粒子以外の粒子を形成した形態で存在していてもよいし、インク組成物中に溶解された形態で存在していてもよい。
また、インク組成物中における光重合開始剤は、上述した形態のうちの2つ以上を満足する形態で存在していてもよい。後述する成分のうち、水溶性有機溶剤以外の成分の存在形態についても同様である。
また、光重合開始剤は、下記一般式(X)で表される光重合開始剤であることが好ましい。
一般式(X)中、RX1、RX2、RX3、及びRX4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。一般式(X)中、nは、1以上4以下の整数を表す。
上記nが1以上であることにより、低温環境下での析出物の発生が抑制される。
上記nが4以下であることにより、感度が高く維持され、その結果、インク組成物によって形成されたインク画像の耐擦性が向上し、画像ムラが抑制される。
上記nは、1以上3以下であることがより好ましく、1以上2以下であることが特に好ましい。
また、インク組成物中の重合開始剤として上記一般式(X)で表される構造の光重合開始剤を用いることで、インク組成物中の重合性基を有するポリマー粒子が凝集する現象、及び、この凝集により吐出性が低下する現象が抑制される。
X1~RX4において、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、メルカプト基、アシル基、及びアミノ基が挙げられる。
X1~RX4において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、塩素原子、又は臭素原子がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
X1~RX4において、アルキル基の炭素原子数は、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましい。
また、RX1~RX4において、アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐鎖アルキル基であってもよい。また、アルキル基は、脂環構造を有していてもよい。
X1~RX4におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。中でも、アルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基が好ましい。
X1~RX4において、アルコキシ基の炭素原子数は、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましい。
また、RX1~RX4において、アルコキシ基は、直鎖アルコキシ基であってもよいし、分岐鎖アルコキシ基であってもよい。また、アルコキシ基は、脂環構造を有していてもよい。
X1~RX4におけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。中でも、アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、又はイソプロピルオキシ基が好ましい。
X1~RX4において、アルキルチオ基の炭素原子数は、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~4がより好ましい。
また、RX1~RX4において、アルキルチオ基は、直鎖アルキルチオ基であってもよいし、分岐鎖アルキルチオ基であってもよい。また、アルキルチオ基は、脂環構造を有していてもよい。
X1~RX4におけるアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、s-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、及びシクロヘキシルチオ基が挙げられる。中でも、アルキルチオ基は、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、又はイソプロピルチオ基が好ましい。
X1~RX4において、アシル基の炭素原子数は、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましい。
また、RX1~RX4において、アシル基は、直鎖アシル基であってもよいし、分岐鎖アシル基であってもよい。
X1~RX4におけるアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルアシル基、n-プロピルアシル基、及びイソプロピルアシル基が挙げられる。中でも、アシル基は、ホルミル基、アセチル基、又はエチルアシル基が好ましい。
X1~RX4は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基が好ましく、水素原子、アルコキシ基、又はアルキルチオ基がより好ましく、水素原子が最も好ましい。
また、一般式(X)で表される化合物の好ましい形態として、RX1~RX4のうち、2つ以上(好ましくは3つ以上、最も好ましくは4つ)が水素原子である形態が挙げられる。
以下、一般式(X)で表される化合物の具体例(例示化合物)を示すが、一般式(X)で表される化合物はこれらに限定されるものではない。
一般式(X)で表される化合物は、例えば、特開2000-186242号公報の段落0067~0071及び0112~0115に記載された方法に準じて合成できる。
本開示のインク組成物は、上記式(X)で表される光重合開始剤に加え、さらに、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンを含有することが好ましい。この化合物は、感度に優れた光重合開始剤である。
この場合、式(X)で表される光重合開始剤に対する1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンの含有量比は、質量基準で0.1~10.0であることが好ましい。
1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンの上市されている市販品としては、例えば、イルガキュア2959(BASFジャパン社製)が挙げられる。
また、本開示のインク組成物は、式(X)で表される光重合開始剤に加え、さらに、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンを含んでいてもよい。
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンの上市されている市販品としては、例えば、ダロキュア1173(BASFジャパン社製)を挙げることができる。
この場合、式(X)で表される光重合開始剤に対する2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンの含有量比は、質量基準で0.1~10.0であることが好ましい。
また、本開示のインク組成物は、式(X)で表される光重合開始剤と、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンと、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンと、を含有していてもよい。
この場合、式(X)で表される光重合開始剤に対する1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンと、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンの含有量比は、質量基準で0.1~10.0であることが好ましい。
本開示のインク組成物中における光重合開始剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.05質量%~10.0質量%が好ましく、0.2質量%~3.0質量%がより好ましく、0.5質量%~2.0質量%がさらに好ましい。
本開示のインク組成物は、光重合開始剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
<水溶性増感剤>
本開示のインク組成物は、水溶性増感剤を含んでもよい。水溶性増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン(ITX)、アントラキノン、3-アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン、3-(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン、エリスロシン等が挙げられる。水溶性増感剤は、350nm~400nmの波長域に吸収域を持つことが好ましい。
また、水溶性増感剤としては、特開2010-24276号公報に記載の一般式(i)で表される化合物、又は特開平6-107718号公報に記載の一般式(I)で表される化合物も、好適に使用できる。中でも、水溶性増感剤は、以下に示す化合物Y-1が好ましい。化合物Y-1の詳細は、JETT,39[9],p.86(1991)、越川憲一に記載されている。
本開示のインク組成物は、水溶性増感剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
<水溶性有機溶剤>
本開示のインク組成物は、水溶性有機溶剤を含んでいてもよい。
水溶性有機溶剤の具体例は、以下のとおりである。
・アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、
・多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、2-メチルプロパンジオール等)、
・多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、
・アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、
・アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、
・複素環類(例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン等)、
・スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、
・スルホン類(例えば、スルホラン等)、
・その他(例えば、尿素、アセトニトリル、アセトン等)
水溶性有機溶剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、1質量%~40質量%であることが好ましく、5質量%~35質量%であることがより好ましい。
本開示のインク組成物は、水溶性有機溶剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
<界面活性剤>
本開示のインク組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、例えば、インク組成物の表面張力を調整するための表面張力調整剤としての機能を有する。
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物が挙げられ、より具体的には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びベタイン系界面活性剤が挙げられる。中でも、界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤としては、
特開昭59-157636号公報の第37~38頁及びリサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)に、界面活性剤として挙げられた化合物;
特開2003-322926号、特開2004-325707号、特開2004-309806号の各公報に記載のフッ素系(フッ化アルキル系)界面活性剤;及び
シリコーン系界面活性剤も挙げられる。
また、界面活性剤は、フッ素系界面活性剤又はアセチレングリコール系界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤は、市販品であってもよい。
例えば、アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、オルフィンE1010(日信化学工業社製)が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.001質量%~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005~3質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%~2質量%である。
本開示のインク組成物は、界面活性剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
<添加剤>
本開示のインク組成物は、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、又はキレート剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、特開2008-144004号公報の段落0044~0050に記載の化合物が挙げられる。
<インク組成物の物性>
〔pH〕
インク組成物のpHは、吐出安定性の観点から、7~10であることが好ましく、7.5~9.5であることがより好ましい。
pHが上記範囲内であると、重合性基を有するポリマー粒子の分散性に優れるため、インク画像のドット形状及びインク組成物の吐出安定性が向上すると考えられる。
インクのpHは、pHメーター(型番:HM-31、東亜DKK社製)を用いて25℃で測定される値である。
〔粘度〕
インク組成物の粘度は、0.5mPa・s~30mPa・sが好ましく、2mPa・s~20mPa・sがより好ましく、2mPa・s~15mPa・sであることが好ましく、3mPa・s~10mPa・sであることがさらに好ましい。
粘度は、VISCOMETER TV-22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて30℃の条件下で測定されるものである。
〔表面張力〕
インク組成物の25℃における表面張力は、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、25mN/m~45mN/mであることがさらに好ましい。インクの表面張力が範囲内であると、基材におけるカールの発生が抑えられ有利である。表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学社製)を用い、プレート法によって測定されるものである。
[画像記録方法]
本開示の画像記録方法は、上記インク組成物を、インクジェット記録方式で基材上に付与してインク画像を記録する工程と、インク画像を乾燥させる工程と、乾燥したインク画像に活性エネルギー線を照射する工程と、を含む。
-インク組成物を、インクジェット記録方式で基材上に付与してインク画像を記録する工程-
本開示の画像記録方法では、まず、インク組成物を、インクジェット記録方式で基材上に付与してインク画像を記録する。
〔基材〕
基材は、インク画像を形成し得るものであれば特に制限はない。基材としては、紙、布、木材、金属板、プラスチックフィルム等が挙げられる。
紙としては、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙、インクジェット記録用紙等を特に制限なく用いることができる。
また、基材としては、非浸透性基材を用いることも可能である。基材として非浸透性基材を用いる場合、画像形成性の観点からは、処理液を基材に付与する工程を含むことが好ましい。
本開示において用いられる非浸透性基材の「非浸透性」とは、インクに含まれる水の吸収が少ない又は吸収しないことを意味し、具体的には、水の吸収量が10.0g/m以下である性質を意味する。
本開示において用いられる非浸透性基材としては、特に限定されないが、シート状の基材、フィルム状の基材等が挙げられる。
本開示において用いられる非浸透性基材は、印刷物の生産性の観点からは、シート状又はフィルム状の非浸透性基材を巻き取ることによりロールが形成可能な非浸透性基材であることが好ましい。
非浸透性基材としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム箔等)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、プラスチック、及びガラスが挙げられる。
中でも、非浸透性基材は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を含む基材が好ましい。
非浸透性基材は、表面処理がなされていてもよい。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、熱処理、摩耗処理、光照射処理(UV処理)、火炎処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、インクを付与して画像を記録する前に、予め非浸透性基材の表面にコロナ処理を施すと、非浸透性基材の表面エネルギーが増大し、非浸透性基材の表面の湿潤及び非浸透性基材へのインクの接着が促進される。コロナ処理は、例えば、コロナマスター(信光電気計社製、PS-10S)等を用いて行なうことができる。コロナ処理の条件は、非浸透性基材の種類、インクの組成等、場合に応じて適宜選択すればよい。例えば、下記の処理条件としてもよい。
・処理電圧:10kV~15.6kV
・処理速度:30mm/s~100mm/s
本工程で記録されるインク画像としては特に制限はないが、複数の要素パターン(例えば、ドットパターン、ラインパターン、等)からなるインク画像、言い換えれば複数の要素パターンの集合であるインク画像が好ましい。
ドットパターンの各ドットの直径は、25μm~70μmが好ましく、30μm~60μmがより好ましい。
〔インクジェット記録方式〕
インクジェット記録方式には特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
インクジェット記録方式としては、特に、特開昭54-59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット記録方式を有効に利用することができる。
また、インクジェット記録方式については、特開2003-306623号公報の段落0093~0105に記載の方法も参照できる。
インクジェット記録方式に用いるインクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とが挙げられる。
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に基材を走査させることで基材の全面にパターン形成を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。
また、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本開示の画像記録方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、ライン方式が好ましい。
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量は、高精細なパターンを得る観点で、1pL(ピコリットル)~20pLが好ましく、1.5pL~10pLがより好ましい。
本工程において記録されるインク画像における、赤外線吸収色素の単位面積当たりの付与量は、0.0001g/m~1.0g/mであることが好ましく、0.0001g/m~0.5g/mであることがより好ましい。
-インク画像を乾燥させる工程-
本開示の画像記録方法では、インク画像を記録した後、インク画像を乾燥させることが好ましい。
インク画像を乾燥させる方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。乾燥手段としては、例えば、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤー等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
インク画像を乾燥させる方法としては、例えば、基材の画像記録面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、基材の画像記録面に温風又は熱風をあてる方法、基材の画像記録面又は画像記録面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、及びこれらを組み合わせた方法が挙げられる。
加熱する場合の加熱温度は、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上が特に好ましい。加熱温度の上限は特に制限はないが、例えば150℃以下が好ましい。
加熱する場合の加熱時間には特に制限はないが、1秒~300秒が好ましく、1秒~30秒がより好ましい。
-乾燥したインク画像に活性エネルギー線を照射する工程-
本開示の画像記録方法では、乾燥したインク画像に活性エネルギー線を照射することが好ましい。インク画像中、重合性基を有するポリマー粒子は、活性エネルギー線の照射によって重合し、硬化する。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、及び電子線が挙げられる。中でも、活性エネルギー線は、紫外線(以下、「UV」ともいう)又は電子線が好ましい。
紫外線のピーク波長は、例えば、200nm~405nmであることが好ましく、220nm~390nmであることがより好ましく、220nm~380nmであることがさらに好ましい。
紫外線は、20mJ/cm~5J/cm、好ましくは100mJ/cm~1,500mJ/cmのエネルギーで照射されることが適当である。照射時間は、好ましくは0.01秒間~120秒間、より好ましくは0.1秒間~90秒間である。照射条件及び基本的な照射方法は、特開昭60-132767号公報に開示されている照射条件及び照射方法を適用することができる。具体的には、照射方法は、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査する方式、又は、駆動を伴わない別光源によって行われる方式が好ましい。
紫外線照射用の光源としては、水銀ランプ、ガスレーザー及び固体レーザーが主に利用されており、水銀ランプ、メタルハライドランプ、及び紫外線蛍光灯が広く知られている。また、GaN(窒化ガリウム)系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用であり、UV-LED(発光ダイオード)及びUV-LD(レーザダイオード)は小型、高寿命、高効率、かつ、低コストであり、紫外線照射用の光源として期待されている。中でも、紫外線照射用の光源は、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ又はUV-LEDが好ましい。
活性エネルギー線として電子線を用いる場合には、インク組成物に光重合開始剤を含有させなくてもよい。光重合開始剤を含まないインク組成物を用いても、乾燥したインク画像に電子線を照射することにより、不可視性及び擦過後の読み取り性に優れたインク画像を記録することができる。
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[インク組成物の調製]
後述する赤外線吸収色素(IR-1)4質量部を、超純水96質量部に添加し、ビーズミルを用いて3時間分散し、赤外線吸収色素(IR-1)の水分散液Aを得た。
赤外線吸収色素(IR-1)の含有量がインク組成物の全質量に対して1質量%、ポリマー粒子の含有量がインク組成物の全質量に対して4質量%となるように、下記成分を混合した。混合液を1時間撹拌した後、孔径が5μmのフィルターで濾過し、インク組成物を調製した。
・赤外線吸収色素(IR-1)の水分散液A(固形分濃度4質量%)
・・・25質量部
・プロピレングリコール(富士フイルム和光純薬工業社製)
・・・20質量部
・界面活性剤(製品名「オルフィンE1010」、日信化学工業社製)
・・・1質量部
・重合性基を有するポリマー粒子(製品名「リオデュラスAQ2017NPI」、東洋ケム社製、固形分濃度38質量%) ・・・10.5質量部
・表1に示す水溶性光重合開始剤X-1(製品名「L0290」、東京化成社製) ・・・1質量部
・イオン交換水・・・インク組成物の全質量を100質量部とした場合の残分(質量部)
(実施例2~実施例45、比較例1~比較例8)
実施例1のインク組成物の調製に用いた赤外線吸収色素、重合性基を有するポリマー粒子、及び水溶性光重合開始剤を、表1~表3に示す種類及び含有量に変更し、適宜、表1~表3に示す水溶性増感剤を追加したこと以外は、実施例1と同様にインク組成物を調製した。なお、比較例5~8では、重合性基を有するポリマー粒子の代わりに重合性基を有しないポリマー粒子を用いた。表中、水溶性光重合開始剤を「光重合開始剤」、水溶性増感剤を「増感剤」と記載した。また、表中、赤外線吸収色素の含有量に対するポリマー粒子の含有量を質量基準で記載した。

以下、実施例及び比較例のインク組成物の調製に用いた、表1~表3に記載の赤外線吸収色素、ポリマー粒子、水溶性光重合開始剤、及び水溶性増感剤について説明する。
(赤外線吸収色素)
・赤外線吸収色素(IR-1)~(IR-9)
赤外線吸収色素(IR-1)~(IR-9)は、下記一般式2で表される化合物である。一般式2中、L、R、R、R、R、X、及びMの詳細は、表4に記載した。
<L1-1>
表4におけるL1-1は、下記構造式で表される。
<A-1、A-4、A-8及びA-39>
表4におけるA-1、A-4、A-8及びA-39は、下記構造式で表される。
<R-1、R-7、R-11、R-19、R-60及びR-72>
表4におけるR-1、R-7、R-11、R-19、R-60及びR-72は、下記構造式で表される。
・赤外線吸収色素(IR-S)
赤外線吸収色素(IR-S)として、特開2018-154672号公報の段落番号0076に記載されているB-1を用いた。赤外線吸収色素(IR-S)は、下記構造式で表されるスクアリリウム色素である。特開2018-154672号公報の段落番号0139に記載されている方法に従い、分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いて、赤外線吸収色素(IR-S)の水分散液を調製した。調製した赤外線吸収色素(IR-S)の水分散液を用いて、インク組成物を調製した。
・CWO:セシウム酸化タングステン水分散液(製品名「YMW-D20」、住友金属鉱山社製、固形分濃度20質量%)
・シアニン色素:下記構造の化合物(製品名「T084511」、トスコ社製)
(ポリマー粒子)
-重合性基を有するポリマー粒子-
・リオデュラスAQ2017NPI:重合性基を有するポリウレタン粒子(固形分濃度38質量%、体積平均粒子径135nm、東洋ケム社製)
・WBR-832DA:重合性基を有するポリウレタン粒子(固形分濃度35質量%、体積平均粒子径100nm、大成ファインケミカル社製)
・UT7019:重合性基を有するポリウレタン粒子(固形分濃度40質量%、体積平均粒子径100nm、三菱ケミカル社製)
・UT7119:重合性基を有するポリウレタン粒子(固形分濃度30質量%、体積平均粒子径100nm、三菱ケミカル社製)
・ハイドランUV100A:重合性基を有するポリウレタン粒子、固形分量33質量%、体積平均粒子径20nm、DIC社製)
・ハイドランUV100B:重合性基を有するポリウレタン粒子、(固形分濃度36.5質量%、体積平均粒子径75nm、DIC社製)
・タケラックWR-620:重合性基を有するポリウレタン粒子(固形分濃度43質量%、体積平均粒子径110nm、三井化学社製)
・タケラックWR-640:重合性基を有するポリウレタン粒子(固形分濃度40質量%、体積平均粒子径110nm、三井化学社製)
・ビームセットEM94:重合性基を有する、(固形分濃度50質量%、ポリウレタン粒子、体積平均粒子径100nm、荒川化学工業社製)
・P-1
実施例18、実施例39及び実施例44の調製に用いたP-1は、以下の方法で作製した。
<ポリウレタンの合成>
三口フラスコに、単位(1)形成用化合物であるイソホロンジイソシアネート(73.4g)、親水性基導入用化合物であるジメチロールブタン酸(14.8g)、単位(2)形成用化合物である1,6-シクロヘキサンジメタノール(31.0g)、及び酢酸エチル(100g)を仕込み、70℃に加熱した。そこに、無機ビスマス触媒(製品名「ネオスタンU-600」、日東化成社製)を0.2g添加し、70℃で15時間撹拌した。
次に、イソプロピルアルコール(83.3g)及び酢酸エチル(150g)を添加し、70℃で3時間撹拌した。3時間の撹拌後、反応液を室温まで放冷し、次いで酢酸エチルで濃度調整を行うことにより、ポリウレタンの30質量%溶液(溶媒は、酢酸エチル/イソプロピルアルコールの混合溶液)を得た。
<水分散液の調製>
-油相成分の調製-
酢酸エチルと、ポリウレタンの30質量%溶液と、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート((製品名「SR833S」、サートマー社製)と、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(製品名「SR399E」、サートマー社製)と、光重合開始剤であるビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製)と、を混合し、15分間撹拌することにより、固形分30質量%の油相成分45.7gを得た。
油相成分の調製において、ポリウレタンの30質量%溶液の使用量は、製造される粒子の固形分に対するポリウレタンの含有量(質量%)が表1に示す値となる量とした。
油相成分の調製において、SR833S及びSR399Eの使用量は、製造される粒子の固形分に対する各々の含有量がそれぞれ28.5質量%となる量とした。
油相成分の調製において、光重合開始剤の使用量は、製造される粒子の固形分に対する含有量が3.0質量%となる量とした。
-水相成分の調製-
蒸留水(43.1g)と、中和剤である水酸化ナトリウムと、を混合し、15分間撹拌することにより、水相成分を調製した。
水酸化ナトリウムの使用量は、製造される粒子において、中和度が90%となるように調整した。
水酸化ナトリウムの具体的な量は、以下の算出式によって求めた。
水酸化ナトリウムの量(g)=油相成分の全量(g)×(油相成分の固形分濃度(質量%)/100)×(油相成分の固形分量に対するポリウレタンの含有量(質量%)/100)×ポリウレタンの酸価(mmol/g)×0.9×水酸化ナトリウムの分子量(g/mol)/1000
上記油相成分と上記水相成分とを混合し、得られた混合物を室温でホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化させ、乳化物を得た。 得られた乳化物を蒸留水(15.3g)に添加し、得られた液体を50℃に加熱し、50℃で5時間攪拌することにより、上記液体から酢酸エチルを留去した。
酢酸エチルが留去された液体を、固形分含有量が20質量%となるように蒸留水で希釈することにより、ポリウレタンと重合性モノマーとを含むポリマー粒子P-1の水分散液を得た。
-重合性基を有しないポリマー粒子-
・P-2
比較例5~比較例8の調製に用いたP-2は、以下の方法で作製した。
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。その後、別の容器において、イソボルニルメタクリレート72.0g、メチルメタクリレート252.0g、メタクリル酸36.0g、メチルエチルケトン72g、及び、重合開始剤としてジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(製品名「V-601」、富士フイルム和光純薬社製)1.44gを混合して混合溶液を調製した。メチルエチルケトンを仕込んだフラスコ内温度を75℃に保ちながら、上記で調製した混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V-601」0.72g及びメチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した。さらに「V-601」0.72g及びイソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した。その後、85℃に昇温して、さらに攪拌を2時間続け、イソボルニルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸(=20/70/10[質量比])共重合体のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は60,000であった。
次に、得られたポリマー溶液668.3gを秤量し、ポリマー溶液にイソプロパノール388.3g及び1mol/L水酸化ナトリウム水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に、水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化した後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保持した。その後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン及び水を合計で913.7g留去し、固形分濃度(ポリマー粒子濃度)28.0質量%の重合性基を有しないポリマー粒子P-2の水分散液を得た。
(水溶性光重合開始剤)
水溶性光重合開始剤(X)-1~(X)-5は、以下の一般式(X)で表される化合物である。
水溶性光重合開始剤(X)-1~(X)-5におけるn及びRX1~RX4の詳細は、以下のとおりである。
(水溶性増感剤)
水溶性増感剤Y-1は、350nm~400nmの波長域に吸収域を有し、下記構造を有する化合物である。
[インク画像の記録(1)]
板紙(製品名「アイベストW 310g/m」、日本製紙社製)に、オフセット印刷機を用いて上塗りニス(製品名「OPトップワニス」、東京インキ社製)を付与した基材に、調製したインク組成物を用いて、インクジェットプリンター(製品名「DMP-2831プリンター」、FUJIFILM Dimatix社製)により画像記録を行った。画像記録は、画像解像度600dpi×600dpi、及び打滴量10plの条件で行った。アポロジャパン社製のスクリーンコードを記録した基材と、網点率100%のベタ画像を記録した基材を得た。インク組成物として、実施例1~実施例34、実施例40~実施例45及び比較例1~8のインク組成物を用いた。
画像記録後、ドライヤーを用いて10秒間、インク組成物によって基材上に形成されたインク膜を乾燥させた。続いて、紫外線照射装置(製品名「CSOT-40」、4KWメタルハライドランプ1灯、GS日本電池社製)を用い、乾燥したインク膜に対して10m/minの搬送速度(露光時間4秒)で4回露光し、画像記録物1及び画像記録物2を得た。
画像記録物1は、アポロジャパン社製のスクリーンコードを記録したものである。スクリーンコードはアポロジャパン社製の音声ペンとリンクされており、コードが読み取れた場合には音声ペンから「コレクト」の音声が流れるように設定した。
また、画像記録物2は、網点率100%のベタ画像を記録したものである。
画像記録物1を用いて、初期の読み取り性、擦過後の読み取り性、及び不可視性の評価を行った。画像記録物2を用いて、耐光性の評価を行った。評価方法は、以下のとおりである。評価結果を表6に示す。
<初期の読み取り性>
画像記録物1について、スクリーンコードが記録されている10か所を選択し、アポロジャパン社製の音声ペンを用いて読み取り試験を行った。評価基準は以下のとおりである。A~Dは実用上問題ないレベルである。
A:すべて読み取れた。
B:8か所又は9か所読み取れた。
C:3か所~7か所読み取れた。
D:1回か所又は2か所読み取れた。
E:全く読み取れなかった。
<擦過後の読み取り性>
画像記録物1に対して、500gの加重で100往復の学振型摩擦試験を実施した。摩擦試験後に、画像記録物1について、スクリーンコードが記録されている10か所を選択し、アポロジャパン社製の音声ペンを用いて読み取り試験を行った。評価基準は以下のとおりである。A~Cは実用上問題ないレベルである。
なお、比較例1~4では、初期の読み取り性試験において全く読み取れなかったため、擦過後の読み取り性を評価することができなかった。表6中「-」と記載した。
A:100往復の摩擦試験後に読み取れた数が、初期の読み取れた数と同じである。
B:50往復の摩擦試験後に読み取れた数が、初期の読み取れた数と同じであったが、100往復の擦過試験後に読み取れた数が、初期の読み取れた数よりも少なかった。
C:10往復の摩擦試験後に読み取れた数が、初期の読み取れた数と同じであったが、50往復の擦過試験後に読み取れた数が、初期の読み取れた数よりも少なかった。
D:10往復の擦過試験後に読み取れた数が、初期の読み取れた数よりも少なかった。
<不可視性>
画像記録物1にスクリーンコードが記録されていることを知らない10人に対し、画像記録物1を提示し、スクリーンコードが記録されていることに気づくか否かについて試験を行った。気づく人数が少ないほど、不可視性に優れる。評価基準は以下のとおりである。A~Cは実用上問題ないレベルである。
なお、比較例1~4では、初期の読み取り性試験において全く読み取れなかったため、不可視性の評価を行わなかった。表6中「-」と記載した。
A:一人も気づかない
B:1名気づいた
C:5名気づいた
D:全員気づいた
<耐光性>
画像記録物2に対して、ウェザーメーター(アトラスC.I65)を用いて、キセノン光(85,000ルクス)を6日間照射した。キセノン光照射前後の画像記録物2について、極大吸収波長における光学濃度を測定し、下記式で色素残存率を算出した。色素残存率が高いほど、耐光性に優れる。評価基準は以下のとおりである。A~Cは実用上問題ないレベルである。
色素残存率(%)=(照射後の光学濃度)/(照射前の光学濃度)×100。
なお、光学濃度は、島津製作所社製150mmφ大形積分球付属装置LISR-3100を備えた分光光度計UV-3100PCを用いて測定した。
比較例1~4では、初期の読み取り性試験において全く読み取れなかったため、耐光性の評価を行わなかった。表6中「-」と記載した。
A:色素残存率が90%以上である。
B:色素残存率が75%以上90%未満である。
C:色素残存率が60%以上75%未満である。
D:色素残存率が60%未満である。
表6に示すように、実施例1~実施例34及び実施例40~実施例45のインク組成物は、赤外線吸収色素と、重合性基を有するポリマー粒子と、水とを含み、初期の読み取り性、擦過後の読み取り性、不可視性、及び耐光性に優れたインク画像を記録することができることが分かった。
実施例1は、一般式1-1で表される赤外線吸収色素を含み、実施例19と比較して不可視性に優れることが分かった。
実施例1は、一般式1-1で表される赤外線吸収色素を含むため、実施例22と比較して初期の読み取り性及び擦過後の読み取り性に優れることが分かった。
実施例1は、赤外線吸収色素の含有量が、インク組成物全量に対して0.5質量%~2.5質量%であり、実施例23と比較して初期の読み取り性及び擦過後の読み取り性に優れることが分かった。
実施例1は、赤外線吸収色素の含有量が、インク組成物全量に対して0.5質量%~2.5質量%であり、実施例24と比較して不可視性に優れることが分かった。
実施例1は、赤外線吸収色素の含有量に対する重合性基を有するポリマー粒子の含有量の比率が、質量基準で2~20であり、実施例25と比較して擦過後の読み取り性に優れることが分かった。
実施例1は、赤外線吸収色素の含有量に対する重合性基を有するポリマー粒子の含有量の比率が、質量基準で2~20であり、実施例28と比較して初期の読み取り性及び擦過後の読み取り性に優れることが分かった。
実施例1は、光重合開始剤の含有量が0.3質量%~3.0質量%であり、実施例33と比較して擦過後の読み取り性に優れることが分かった。
実施例1は、光重合開始剤の含有量が0.3質量%~3.0質量%であり、実施例34と比較して初期の読み取り性、擦過後の読み取り性及び不可視性に優れることが分かった。
比較例1~比較例4では、重合性基を有するポリマー粒子が含まれておらず、全く読み取れないことが分かった。
比較例5~比較例8では、重合性基を有するポリマー粒子を含まず、重合性基を有しないポリマー粒子を含み、擦過後の読み取り性に劣ることが分かった。
[インク画像の記録(2)]
インク画像の記録(1)と同様の方法で、調製したインク組成物を用いて、画像記録を行った。インク組成物として、実施例1、実施例11、実施例13、実施例18、実施例19、実施例40~実施例44のインク組成物を用いた。
画像記録後、ドライヤーを用いて10秒間、インク組成物によって基材上に形成されたインク膜を乾燥させた。続いて、UV-LED照射装置(製品名「GA5」、波長385nmのLED光源、京セラ社製)を用いて、乾燥したインク膜に対して紫外線を照射し、画像記録物1及び画像記録物2を得た。
インク画像の記録(1)と同様の方法で、画像記録物1を用いて、初期の読み取り性、擦過後の読み取り性、及び不可視性の評価を行った。また、画像記録物2を用いて、耐光性の評価を行った。評価結果を表7に示す。
表7より、増感剤を含むインク組成物(実施例40~実施例44)を用いた場合、増感剤を含まないインク組成物(実施例1、実施例11、実施例13、実施例18及び実施例19)を用いた場合よりも擦過後の読み取り性に優れることが分かった。
[インク画像の記録(3)]
インク画像の記録(1)と同様の方法で、調製したインク組成物を用いて、画像記録を行った。インク組成物として、実施例1、実施例11、実施例13、実施例18、実施例19、実施例35~実施例39のインク組成物を用いた。
画像記録後、ドライヤーを用いて10秒間、インク組成物によって基材上に形成されたインク膜を乾燥させた。続いて、電子線照射装置(製品名「標準EB実験機EC250/15/180L」、アイ・エレクトロンビーム社製)を用いて、乾燥したインク膜に対して電子線を照射し、画像記録物1及び画像記録物2を得た。
インク画像の記録(1)と同様の方法で、画像記録物1を用いて、初期の読み取り性、擦過後の読み取り性、及び不可視性の評価を行った。また、画像記録物2を用いて、耐光性の評価を行った。評価結果を表8に示す。
表8より、電子線を照射して画像記録物を作製した場合には、重合開始剤を含まないインク組成物(実施例35~39)を用いても、重合開始剤を含むインク組成物(実施例1、実施例11、実施例13、実施例18及び実施例19)と同様に、初期の読み取り性、擦過後の読み取り性、不可視性、及び耐光性に優れることが分かった。
以上より、本開示のインク組成物は、赤外線吸収色素と、重合性基を有するポリマー粒子と、水とを含み、不可視性及び擦過後の読み取り性に優れたインク画像を記録することができる。
なお、2019年9月30日に出願された日本国特許出願2019-180585号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (12)

  1. 赤外線吸収色素と、重合性基を有するポリマー粒子と、水とを含み、
    前記赤外線吸収色素の含有量に対する前記重合性基を有するポリマー粒子の含有量の比率は、質量基準で2~20であり、
    前記赤外線吸収色素は、下記一般式(2)又は一般式(6)で表される色素であり、
    活性エネルギー線硬化型である、インクジェット記録用インク組成物。


    一般式(2)中、Mはプロトン、一価のアルカリ金属カチオン、又は有機カチオンを表し、Lは5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖を表し、メチン鎖の中央のメチン基は下記式Aで表される置換基を有する。
    *-S-T 式A
    式A中、Sは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRL1-、-S(=O)-、-ORL2-、又は、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表す。RL1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表す。RL2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表す。Tは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表す。Sが単結合又はアルキレン基を表し、かつ、Tがアルキル基を表す場合は、SとTに含まれる炭素数の総和が3以上である。*はメチン鎖の中央のメチン基
    との結合部位を表す。
    、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又は一価のヘテロ環基を表す。Xはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表す。


    一般式(6)中、R及びRは、それぞれ独立に、1価の置換基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は、アルキル基を表す。
    及びXは、それぞれ独立に、酸素原子、又は、-N(R)-を表し、X及びXは、それぞれ独立に、炭素原子、又は、ホウ素原子を表す。
    t及びuは、X及びXがホウ素原子である場合には1を表し、X及びXが炭素原子である場合には2を表す。
    は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、Y、Y、Y、及びYは、それぞれ独立に、1価の置換基を表し、YとYは互いに結合して環を形成していてもよく、YとYは互いに結合して環を形成していてもよく、
    、Y、Y、及びYは、それぞれ複数存在する場合には、互いに結合して環を形成していてもよい。
    p及びsは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、q及びrは、それぞれ独立に0~2の整数を表す。
    前記1価の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR 10 、-COR 11 、-COOR 12 、-OCOR 13 、-NR 14 15 、-NHCOR 16 、-CONR 17 18 、-NHCONR 19 20 、-NHCOOR 21 、-SR 22 、-SO 23 、-SO OR 24 、-NHSO 25 、又はSO NR 26 27 であり、R 10 ~R 27 は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、又はヘテロ環基を表す。
  2. 前記一般式(2)で表される色素は、下記一般式(3)で表される色素である、請求項1に記載のインクジェット記録用インク組成物。

    一般式(3)中、Mはプロトン、一価のアルカリ金属カチオン、又は有機カチオンを表し、Lは5個又は7個のメチン基からなるメチン鎖を表し、メチン鎖の中央のメチン基は下記式Aで表される置換基を有し、
    *-S-T 式A
    式A中、Sは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRL1-、-
    S(=O)-、-ORL2-、又は、これらのうちの少なくとも2つを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基又は一価のヘテロ環基を表し、RL2は、アルキレン基、アリーレン基、又は二価のヘテロ環基を表し、Tは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、一価のヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、トリアルキルシリル基、又はトリアルコキシシリル基を表し、Sが単結合又はアルキレン基を表し、かつ、Tがアルキル基を表す場合は、SとTに含まれる炭素数の総和が3以上であり、*はメチン鎖の中央のメチン基との結合部位を表し、
    及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又は一価のヘテロ環基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、一価のヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、-ORL3、-C(=O)RL3、-C(=O)ORL3、-OC(=O)RL3、-N(RL3、-NHC(=O)RL3、-C(=O)N(RL3、-NHC(=O)ORL3、-OC(=O)N(RL3、-NHC(=O)N(RL3、-SRL3、-S(=O)L3、-S(=O)ORL3、-NHS(=O)L3、又は、-S(=O)N(RL3を表し、RL3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は一価のヘテロ環基を表し、nはそれぞれ独立に、1~5の整数を表し、Xはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表す。
  3. 前記一般式(3)において、R、R、R、及びRよりなる群から選ばれた少なくとも1つは水素結合性基である、請求項2に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  4. 前記重合性基を有するポリマー粒子は、重合性基を有するポリウレタン粒子である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  5. 前記赤外線吸収色素の含有量は、インク組成物全量に対して0.5質量%~2.5質量%である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  6. 水溶性光重合開始剤をさらに含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  7. 前記水溶性光重合開始剤は、前記インクジェット記録用インク組成物中に溶解された形態で存在している、請求項6に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  8. 350nm~400nmの波長域に吸収域を持つ水溶性増感剤をさらに含む請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  9. 請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物を、インクジェット記録方式で基材上に付与してインク画像を記録する工程と、
    前記インク画像を乾燥させる工程と、
    乾燥したインク画像に活性エネルギー線を照射する工程と、を含む画像記録方法。
  10. 前記活性エネルギー線は紫外線である請求項9に記載の画像記録方法。
  11. 前記活性エネルギー線を、発光ダイオード光源を用いて照射する請求項9又は請求項10に記載の画像記録方法。
  12. 前記活性エネルギー線は電子線である請求項9に記載の画像記録方法。
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