JP7430669B2 - 透析患者に適用される注射用医薬組成物 - Google Patents

透析患者に適用される注射用医薬組成物 Download PDF

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Description

本発明は、医薬、とりわけジフェリケファリン又はその薬理学的に許容される塩を含有する透析患者に適用される医薬組成物に関する。
透析患者におけるそう痒症の原因は十分に解明されておらず、難治性とされている。そう痒症の発現には複数の因子が関与しており、皮膚の乾燥をはじめ、内因性物質の蓄積、ヒスタミンやサブスタンスP等のケミカルメディエータの過剰産生などが挙げられる。さらに、免疫機能の変化やオピオイドバランスの崩壊も原因の一つであり、そう痒症を有する透析患者では、かゆみを誘発するμオピオイド系がかゆみを抑制するκオピオイド系より優位になっていると考えられている。
透析患者におけるそう痒症の治療には、乳液やクリームといった保湿剤やステロイド剤による外用治療、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬による外用又は内服治療、広波長の紫外線を用いた光線療法等がある。
日本では外用治療や内服治療等の既存治療では効果不十分な患者に対し、経口剤のκオピオイド受容体(KOR)作動薬であるナルフラフィン塩酸塩が使用されている。
ジフェリケファリンは、海外においてそう痒症の改善薬として開発が行われているペプチド性の新規KOR作動薬である(非特許文献1)。国内においても同様に開発されている。ジフェリケファリンのペプチド構造は、これまでに開発された中枢神経(CNS)作用の低分子ヘテロ環化合物のKOR作動薬と大きく異なっており、その物理化学的性質により膜透過性が低くCNSへの移行は限定的である。そのため、κオピオイド受容体の選択性が高く、他のオピオイド受容体への作用が弱いため、CNSへ容易に移行せず、安全性及び忍容性に優れた薬剤として、早期上市が望まれている。
特許第5807140号公報 特許第5244810号公報
Steven Fishbaneら、「Kidney International Reports」 2020年、 第5巻、 p.600-610.
本件発明は、医療現場における用量調製に伴う人的過誤を低減し、かつ、労力を軽減することができる、ジフェリケファリンを含有する注射用医薬組成物を提供することを課題とする。
ジフェリケファリン注射剤は、透析終了時の返血時に透析回路より投与する注射剤である。しかし、現在、臨床開発が先行している外国において、ジフェリケファリン注射剤は、医療現場において、個々の患者の体重ごとに1kg単位で厳密に投与量を調整することとされている(非特許文献1)。そのため、用量調製の何らかの過程(例えば、場合に応じて、フリー体換算濃度、体重、希釈度に基づく用量の計算自体や実際の計量など)において、人間がするものとしてミス(インシデント)が不可避的に生じてしまうリスクが存在する。また、そのようなミスが二重三重のチェック体制により十分に防ぐことができるとしても、医療現場において、毎回そのような用量調製を行うことは大変な労力や費用や困難を伴うことになり、結果として、患者の治療に貢献するための投与が敬遠されてしまうことにもなりかねない。
そこで、医療現場において、個々の患者の体重ごとに1kg単位で厳密に投与量を調整することを不要とし、医療現場における用量調製に伴う人的過誤を低減し、かつ、労力を軽減することができる新規医薬製剤が実現できれば非常に有益である。
しかしながら、実臨床に適したジフェリケファリン医薬製剤の提供には、様々な克服すべき課題が存在する。まず、医療現場に提供される医薬製剤の数(規格数)が医療現場において許容可能でなければならない。また、患者の体重ごとに1kg単位で厳密に投与量を調整しない新規医薬製剤の可能性に関する知見は何ら存在しておらず、有効性・安全性の予測は困難である。したがって、そのような新規医薬製剤を果たして提供することができるのかさえ、不明であった。即ち、新規医薬製剤の用法・用量により、透析患者のそう痒症に対し、有効性及び安全性を有し、かつ各規格間における有効性及び安全性への影響が大きく異ならないことが求められる。
本発明者らは、まず、ジフェリケファリンの注射製剤の規格数が3~4規格程度とすることができれば、とりわけ本邦の実臨床において好適に適用可能ではないかと着想し、実際に該注射製剤を念頭に本邦の医療機関への丹念なヒアリング結果の解析から、透析領域においては、使い切り型の医薬製剤であり、かつ最大でも3~4規格とすることが望ましいとの知見を得た。そこで、当該規格数を実現可能な医薬製剤について鋭意検討した結果、驚くべきことに特定のドライウェイト区分と規定量のジフェリケファリンを組み合わせた用法・用量により、透析患者におけるそう痒症に対し、有効性と安全性を有し、かつ各ドライウェイト区分間における有効性及び安全性に大きな差が認められないことを発見するに至り、本発明を完成させた。
本発明は、前記課題を解決するために、一つの態様として、次の構成を有する。
すなわち、透析患者のそう痒症治療用の、ジフェリケファリン又はその薬理学的に許容される塩を含有する注射用医薬組成物であって、
前記注射用医薬組成物は、医療現場における用量調製に伴う人的過誤を低減し、かつ、労力を軽減するための注射用医薬組成物であり、
前記注射用医薬組成物は、ジフェリケファリンのフリー体換算で17.5μg、25.0μg、35.0μg又は42.5μgの量のジフェリケファリン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、それぞれ対応して、45kg未満、45kg以上65kg未満、65kg以上85kg未満又は85kg以上のドライウェイト体重の透析患者に投与されるための注射用医薬組成物であり、
前記注射用医薬組成物は、1回投与で使い切るための単位用量においてプレフィルドシリンジに封入されている、
注射用医薬組成物。
本発明は、医療現場における用量調製に伴う人的過誤を低減し、かつ、労力を軽減するための注射用医薬組成物を提供する。
血液透析患者のNRSスコア変化量(NRS Score)を示す。縦軸は治療期8週時におけるA群(A)、B群(B)、C群(C)及びプラセボ群(Placebo)のNRSスコアの変化量(Adjusted Mean±SE)を示す。 ドライウェイト区分毎のNRSスコア変化量(NRS Score)を示す。縦軸は、治療期4週時におけるドライウェイト(DW)区分毎のB群(B)のNRSスコアの変化量(Mean±SD)を示す。 ドライウェイト区分毎のNRSスコア変化量(NRS Score)を示す。縦軸は、治療期4週時におけるドライウェイト(DW)区分毎のC群(C)のNRSスコアの変化量(Mean±SD)を示す。
以下、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
本発明において、各用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
ジフェリケファリン(difelikefalin, INN)は、下記式で表される化合物である。
Figure 0007430669000001
本発明において、ジフェリケファリンは、必要に応じて常法に従い、その薬理学的に許容される塩にすることもできる。このようなジフェリケファリンの塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などのような無機酸由来の塩、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などのような有機酸由来の塩が挙げられる。好ましくは、ジフェリケファリン酢酸塩(JAN)が挙げられる。
本発明において、「ジフェリケファリンの薬理学的に許容される塩」には、水、エタノール等の医薬品として許容される溶媒との溶媒和物も含まれる。
本発明のジフェリケファリンは、公知の方法で製造することができる。例えば、特許文献1及び2に記載の方法又はそれに準じた方法でそれぞれ製造することもできる。
本発明の注射用医薬組成物の一つの態様は、注射剤であり、好ましくは、投与時に医療現場における用量調製に伴う人的過誤を低減し、かつ、労力を軽減することができる、使い切り型の注射剤である。このような注射剤としては、例えば、予め充填された薬液を全て使い切る注射剤、充填された薬液を注射器で全て吸い切った後、該薬液を全て使い切って使用する注射剤が挙げられる。このような使用が可能な注射剤の形態としては、例えば、プレフィルドシリンジ製剤、バイアル製剤、アンプル製剤等が挙げられる。
本発明の注射用医薬組成物は、バイアルあるいはプレフィルドシリンジに充填される薬液量を一定とし、ジフェリケファリンの濃度が異なる複数規格の注射剤として提供することができる。また、一つの態様としては、ジフェリケファリンの濃度を一定とし、薬液量が異なる複数規格の注射剤として提供することができる。充填される薬液量は、注射剤に充填することのできる薬液量であれば特に限定されないが、好ましくは0.3 mL~2.5 mLの範囲である。封入されるジフェリケファリンの量はフリー体換算で17.5μg、25.0μg、35.0μg又は42.5μgの量であり、それぞれ対応して、45kg未満、45kg以上65kg未満、65kg以上85kg未満又は85kg以上のドライウェイト体重の透析患者に投与されるためのものである。
本発明の注射用医薬組成物は、有効成分としてのジフェリケファリン又はその薬理学的に許容される塩、及び少なくとも1つの製薬学的に許容される担体を用いて調製される。本発明の注射用医薬組成物は、製剤学的に公知の手法により、製薬学的に許容される担体と適宜混合、希釈又は溶解することにより調製することもできる。そのような製薬学的に許容される担体としては、例えば等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコールなどが挙げられる。好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カリウムが挙げられる。緩衝剤としては、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、ホウ酸、リン酸、炭酸及びその塩を挙げることができる。より具体的には、酢酸及び酢酸ナトリウム、クエン酸及びクエン酸三ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウム等が挙げられる。好ましくは、酢酸及び酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムが挙げられる。保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等が挙げられる。好ましくは、パラオキシ安息香酸エステル類、塩化ベンザルコニウムが挙げられる。増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。好ましくは、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸が挙げられる。pH調整剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等が挙げられる。好ましくは、塩酸、水酸化ナトリウムが挙げられる。
本発明の注射用医薬組成物に用いる溶媒は注射剤に使用可能なものであれば特に限定されず、水性溶媒であることが好ましく、例えば、注射用水又は生理食塩水などが挙げられる。
本発明の注射用医薬組成物のpHは特に限定されないが、例えば、好ましくはpHを5.0以下にすることが好ましく、より好ましくは4.0~5.0の範囲である。
本発明の注射用医薬組成物は、通常、ジフェリケファリンの含量が異なる複数の規格を有する注射剤として提供される。本発明の一つの態様として、患者のドライウェイト区分に応じて規定量のジフェリケファリンが予め充填された複数の含量規格を有する注射剤として医療機関に提供される。含量規格数(規格数)は、医療現場で許容される規格数であれば、特に限定されないが、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。規格数は、通常、患者のドライウェイト区分の数と同数となるが、低含量規格の注射剤を組み合わせて高含量規格の注射剤を代替することが可能である場合、前記患者のドライウェイト区分の数より少ない規格数の注射剤として提供することもできる。
「ドライウェイト」という用語は、血液透析治療において、個々の患者の状態に応じた治療計画の指標として設定される、除水後の目標体重であり、日本透析医学会では「体液量が適正で、透析中に過度の血圧低下を生ずることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」を意味する用語として定義されている。すなわち、過剰な体液貯留状態にない体重である。ドライウェイトは、通常医師により決定され、例えば、正常な腎機能を有する患者の排尿後の体重にできるだけ近くなるように設定される。したがって、ドライウェイトは、痙攣等の除水過多に伴う血圧低下症状を示すことなく、血液透析後に安全に到達することのできる最も低い体重を意味することもある。
ドライウェイトは、一般に採用されている設定指標に従い設定することができる。指標としては、例えば、透析中の著明な血圧低下がない、透析終了時血圧は開始時血圧より高くなっていない、末梢に浮腫がない、胸部X線で胸水や肺うっ血がなく、心胸郭比が50%以下(女性では53%以下)であるなどが用いられる。
本発明の注射用医薬組成物は、患者のドライウェイト区分に基づいて規定量のジフェリケファリンを投与するために用いられる。これにより、薬剤の毎投与時に体重1kg単位で投与量を調整する複雑な投与方法を回避でき、医療現場における用量調製に伴う人的過誤を低減し、かつ、労力を軽減することができる。本発明において、患者のドライウェイト区分に基づくジフェリケファリンの規定量は、例えば、成人の場合、ドライウェイト45kg未満の患者に対して17.5μg、ドライウェイト45kg以上65kg未満の患者に対して25.0μg、ドライウェイト65kg以上85kg未満の患者に対して35.0μg、ドライウェイト85kg以上の患者に対して42.5μgであり得る。
また一つの態様として、ドライウェイト85kg以上の患者は、ドライウェイト85kg以上100kg未満、ドライウェイト85kg以上105kg未満、ドライウェイト85kg以上110kg未満又はドライウェイト85kg以上115kg未満の患者であってもよい。
本発明の注射用医薬組成物を透析患者に適用する場合は、例えば、該医薬組成物を週3回、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入して用いることができる。透析回路のトラブルなどで透析回路から投与できない場合は、静脈内注射による投与によることもできる。臨時で週4回目の透析を実施する場合は、週4回投与を行うこともできる。
本発明の注射用医薬組成物は、そう痒症の治療に有用である。本発明において、そう痒症は、かゆみを伴う疾患であれば限定されないが、例えば、血液透析患者や腹膜透析患者のそう痒症の改善等が挙げられる。本発明の注射用医薬組成物は、KOR 作動薬であるため、気分変動、鬱症状の改善、術後疼痛、変形性関節症、及び透析に関連して生じる睡眠障害の治療等にも使用することができる。
本発明において、そう痒症の治療効果は、当業者に公知の、対象が感じる痒みの程度をスコア化する評価方法を用いて評価することもできる。例えば、Numerical Rating Scale(NRS)、Visual Analogue Scale(VAS)、白取の重症度基準、Skindex-10、Skindex-16、5-D Itch Scale、Patient Global Impression of Change(PGIC)等が挙げられる。
最も代表的な指標であるといえるNRSは、1日の中で最も強く感じたかゆみに対して、「かゆみなし」を0、「考えられる最大のかゆみ」を10として、0から10までの整数で評価する。一般に、NRSは、1以上4未満が軽度、4以上7未満が中等度、7以上が高度のかゆみと評価される。VASは、100mmの線の左端を「かゆみなし」、右端を「考えられる最大のかゆみ」として、1日の中で最も強く感じたかゆみの程度を表す位置に印を付け、線の左端からの長さを測定して評価する。NRSとVASの評価は相関性が認められるが、より簡便な評価方法としてはNRSである。かゆみに対するNRSスコアは、そう痒症の評価方法として臨床試験で広く使用されている。
白取の重症度基準は、「症状なし」から「激烈な痒み」までをそれぞれ0から4までのスコアとして、日中及び夜間のそれぞれの症状を被験者自身で判定し、評価する。白取の重症度基準は、国内の皮膚科領域でかゆみの程度を評価する際に汎用されており、日常生活への影響を重症度判断の基準として用いている。
Skindex-16は、「まったく悩まされなかった」から「いつも悩まされた」までをそれぞれ0から6までのスコアとして評価する。Skindex-16は、皮膚疾患に関連するQOL 評価に応用されている。
5-D Itch Scaleは、かゆみの5つの構成要素(持続、程度、傾向、悪影響、分布)を判定する。
PGICは、かゆみの全般的症状を「非常に良くなった」、「良くなった」、「少し良くなった」、「変わらなかった」、「少し悪くなった」、「悪くなった」及び「非常に悪くなった」の7段階で評価する。
薬剤のかゆみに対する有効性は、上記評価方法においてスコアの変化量を評価することにより確認することもできる。具体的には、薬剤の投与前(ベースライン)のかゆみの程度と、薬剤の投与後のかゆみの程度を比較して、かゆみの程度が改善している場合、かゆみが減弱されていると評価することもできる。本発明において、かゆみに対する有効性は、患者のQOLを向上させるという観点において、NRSもしくはVASスコアの改善に加えて、QOLスコア(白取の重症度基準、Skindex-16、5-D Itch Scale、PGIC)の改善をも認められることが好ましい。
本発明において、本発明の注射用医薬組成物の有効性・安全性は各ドライウェイト区分間において著しい差が認められないことが好ましい。具体的には、いずれのドライウェイト区分においてもそう痒症の改善効果が認められるか、透析前トラフ値(投与直前の血漿中薬物濃度(血漿中ジフェリケファリン(未変化体)濃度))に大きな変動が認められない、またはその両方を満たすことが好ましい。ジフェリケファリンの血漿中濃度は、一般的な手法により測定することができるが、例えば、LC-MS/MS法により測定することができる。
本発明の注射用医薬組成物の一つの態様として、(a)本発明の注射用医薬組成物;及び(b)容器に添付又は付属された1個以上のラベル又は添付文書を含むキットが挙げられる。本発明において、「添付文書を含む」とは、説明書が同封されている場合に加えて、添付文書の内容が記載されている情報を利用可能とする手段が明示されている場合も含む。添付文書の内容が記載されている情報を利用可能とする手段が明示されている場合とは、当該内容を確認できる手段であれば、限定されないが、例えば、電子通信回線を通じて当該情報を利用可能とする手段が挙げられる。具体的には、市販用医薬製剤にQRコード(登録商標)、URLが記載されている場合が挙げられる。
以下に、本発明を実施例にもとづいてさらに詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。実施例において、ジフェリケファリンの量の記載については、ジフェリケファリン酢酸塩として投与される、フリー体としての量(フリー体換算値)を意味する。
実施例1
そう痒症を有する血液透析患者を対象とした臨床試験(二重盲検並行群間比較試験)
1.試験方法
(1)投与方法
患者247例を対象として、A群(61例)、B群(61例)、C群(62例)及びプラセボ群(63例)に、各治験薬を週3回、8週間、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入し、投与した。試験期間は、前観察期(治療期移行前2週間)、治療期(8週間)、後観察期(治療期終了後2週間)の順序とし、前観察期と後観察期には治験薬は投与しなかった。
(2)治験薬
A群:0.04M等張緩衝酢酸溶液(pH4.5)にジフェリケファリンを0.025 mg/mLで溶解した注射液
B群:0.04M等張緩衝酢酸溶液(pH4.5)にジフェリケファリンを0.05 mg/mLで溶解した注射液
C群:0.04M等張緩衝酢酸溶液(pH4.5)にジフェリケファリンを0.1 mg/mLで溶解した注射液
プラセボ群:0.04M等張緩衝酢酸溶液(pH4.5)
(3)投与量
各投与群の治験薬の投与液量及びジフェリケファリンの投与量は下表に従い、投与日の各患者のドライウェイト区分に基づき決定した。
Figure 0007430669000002
2.有効性及び安全性に関する評価項目
有効性については、以下のかゆみに関する自覚症状等により評価した。以下の各スコアにおいて、治療期0週時をベースラインとし、ベースラインとの差を変化量とした。
(1)NRSスコア
1日の中で最も強く感じたかゆみに対して、「かゆみなし」を0、「考えられる最大のかゆみ」を10として、0から10までの整数で評価した。
(2)白取の重症度基準に基づくかゆみスコア
1日1回、評価前日の起床時から当日の起床時まで(就寝中を含む)のかゆみの程度を、「症状なし」から「激烈な痒み」までをそれぞれ0から4までのスコアとして、日中及び夜間のそれぞれの症状を評価した。
(3)Skindex-16スコア
週はじめの来院時(治験薬投与前)に過去1週間のかゆみによって悩まされた頻度を判定した。「まったく悩まされなかった」から「いつも悩まされた」までをそれぞれ0から6までのスコアとして評価した。
(4)5-D Itch Scaleスコア
週はじめの来院時(治験薬投与前)に過去2週間のかゆみの状況を振り返り、かゆみの5つの構成要素(持続、程度、傾向、悪影響、分布)を判定した。
(5)PGICスコア
週はじめの来院時に前観察期と比較したかゆみの全般的症状を「非常に良くなった」、「良くなった」、「少し良くなった」、「変わらなかった」、「少し悪くなった」、「悪くなった」及び「非常に悪くなった」の7段階で評価した。
解析方法としては、平均NRSスコア及び白取の重症度基準に基づくかゆみスコアには、反復測定混合効果モデル(Mixed effects model for repeated measures; MMRM)を用いた。具体的には、平均NRSスコアでは、スコアの変化量を目的変数、群、観測時点及び群と観測時点の交互作用を固定効果、ベースラインの平均スコア、かゆみに対する前治療薬の使用の有無及び前観察期に確認する特定の徴候又は症状の有無を共変量、被験者を変量効果として解析を行った。また、白取の重症度基準に基づくかゆみスコアでは、スコアの変化量を目的変数、群、観測時点及び群と観測時点の交互作用を固定効果、ベースラインの平均スコアを共変量、被験者を変量効果として解析を行った。
安全性については、有害事象及び副作用の発現件数、発現例数及び発現率等を評価した。
3.結果
(1)治療期8週時のNRSスコアの変化量を図1に示した。
治療期8週時のNRSスコアの変化量は、プラセボ群-2.86に対して、A群-2.97、B群-3.65及びC群-3.64であり、B群 及びC群でプラセボ群に比して有意な改善を示した(MMRM 、P<0.05)。
(2)B群およびC群における、ドライウェイト区分毎のNRSスコアの変化量について、有効性が最大化された治療期4週時の変化量を図2および図3に示した。図2および図3に示す通り、B群及びC群において、いずれのドライウェイト区分においても、NRSスコアの改善が確認された。
(3)治療期8週時の白取の重症度基準に基づくかゆみスコアの変化量(日中、夜間いずれかのうちスコアが大きい方の変化量)は、プラセボ群-1.00に対し、A群-1.14、B群-1.31及びC群-1.31であり、B群及びC群でプラセボ群に比して有意な改善を示した(MMRM、P<0.05)。
(4)治療期8週時のSkindex-16総合スコアの変化量は、プラセボ群-24.04に対し、A群-24.25、B群-27.79及びC群-22.69であり、B群で改善傾向が認められた。
(5)治療期8週時の5-D Itch Scale合計スコアの変化量は、プラセボ群-5.8に対し、A群-6.6、B群-6.5及びC群-6.8であり、A群以上の用量で改善傾向が認められた。
(6)治療期最終評価時のPGICが「良くなった」及び「非常によくなった」であった被験者の割合は、プラセボ群24.2及び17.7%に対し、A群34.4及び19.7%、B群28.8及び37.3%、C群38.3及び31.7%であり、B群及びC群でプラセボに比して有意な改善を示した(2標本Wilcoxon 検定、P<0.01)。
(7)治療期の有害事象の発現率は、プラセボ群66.7%、A群72.1%、B群77.0%及びC群85.5%と用量依存的に増加し、C群の発現率はプラセボ群に比して有意に高かった(Fisherの正確検定、P<0.05)。
治療期の副作用の発現率は、プラセボ群11.1%、A群14.8%、B群14.8%及びC群27.4%と用量依存的に増加し、C群の発現率はプラセボ群に比して有意に高かった(Fisherの正確検定、P<0.05)。
以上の結果から、B群及びC群において、血液透析患者のそう痒症の有意な改善効果が示された。一方で、A群においては有意な改善効果は示されなかった。また、B群における治療期の有害事象及び副作用の発現率は、プラセボ群との間に有意な差は示されず、B群は安全性及び忍容性に優れた用量であることが確認された。
4.薬物動態に関する評価項目
(1)測定方法:B群及びC群において、「血漿中薬物濃度:血漿中ジフェリケファリン(未変化体)濃度」は、LC-MS/MS法により測定した。
(2)結果:B群(45kg未満(4例)、45kg以上65kg未満(32例)、65kg以上85kg未満(15例)、85kg以上(1例))のドライウェイト区分での7週時の透析前トラフ値(透析前血漿中ジフェリケファリン濃度)の幾何平均値は、それぞれ順に0.5903 ng/mL、0.5826 ng/mL、0.5275 ng/mL及び0.7480 ng/mLであった。C群(45kg未満(3例)、45kg以上65kg未満(32例)、65kg以上85kg未満(15例)、85kg以上(2例))のドライウェイト区分での7週時の透析前トラフ値(透析前血漿中ジフェリケファリン濃度)の幾何平均値は、それぞれ順に0.9306 ng/mL、0.9700 ng/mL、1.0671 ng/mL及び1.0396 ng/mLであった。
以上の結果から、B群内の各ドライウェイト区分間において、血漿中ジフェリケファリン濃度の変動範囲には大きな差は認められなかった。C群においても同様の結果であった。
実施例の結果から、B群は、個々の患者の体重1kg単位で投与量を調整することを要することなく、様々な体重の血液透析患者のそう痒症に対して有効性及び安全性を示した。
したがって、本発明の注射用医薬組成物により、医療現場における用量調製に伴う人的過誤を低減し、かつ、労力を軽減することが可能となることが示された。
本発明の注射用医薬組成物は、透析患者に適用される医薬として極めて有用である。

Claims (1)

  1. 透析患者のそう痒症治療用の、ジフェリケファリン又はその薬理学的に許容される塩を含有する注射用医薬組成物であって、
    前記注射用医薬組成物は、医療現場における用量調製に伴う人的過誤を低減し、かつ、労力を軽減するための注射用医薬組成物であり、
    前記注射用医薬組成物は、ジフェリケファリンのフリー体換算で17.5μg、25.0μg、35.0μg又は42.5μgの量のジフェリケファリン又はその薬理学的に許容される塩を含有し、それぞれ対応して、45kg未満、45kg以上65kg未満、65kg以上85kg未満又は85kg以上のドライウェイト体重の透析患者に投与されるための注射用医薬組成物であり、
    前記注射用医薬組成物は、1回投与で使い切るための単位用量においてプレフィルドシリンジに封入されている、
    注射用医薬組成物。
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