<概要>
本開示で例示するレーザ治療装置は、治療レーザ光源、走査部、および制御部を備える。治療レーザ光源は治療レーザ光を出射する。走査部は、治療レーザ光およびエイミング光を走査し、患者眼の組織上で治療レーザ光が照射される位置を切り替える。制御部は、パターン設定ステップおよび照射順呈示ステップを実行する。パターン設定ステップでは、制御部は、治療レーザ光を照射する複数のスポットの配列パターン、および、配列パターンに含まれる複数のスポットの各々に対する治療レーザ光の照射順を設定する。照射順呈示ステップでは、制御部は、配列パターンに含まれる複数のスポットの各々に対する治療レーザ光の照射順を、治療レーザ光の照射前にユーザに呈示する。
本開示で例示するレーザ治療装置によると、複数のスポットの各々に対する治療レーザ光の照射順が、治療レーザ光の照射前にユーザに呈示される。よって、ユーザは、実行される治療の状況を、より適切に予測することができる。
レーザ治療装置は、治療レーザ光が照射される位置を示すエイミング光を出射するエイミング光源をさらに備えていてもよい。走査部は、治療レーザ光およびエイミング光を走査し、患者眼の組織上で治療レーザ光およびエイミング光が照射される位置を切り替えてもよい。制御部は、少なくとも走査部の駆動を制御することで、設定された配列パターンに含まれる複数のスポットの各々にエイミング光を順次照射するエイミング光照射ステップをさらに実行してもよい。制御部は、エイミング光照射ステップにおいて、エイミング光を用いて照射順をユーザに呈示してもよい。この場合、ユーザは、組織に照射されたエイミング光を見るだけで、治療レーザ光が照射される複数のスポットの位置に加えて、治療レーザ光の照射順も適切に把握することができる。
ただし、照射順呈示ステップは、エイミング光を用いる方法とは異なる方法で実行されてもよい。例えば、制御部は、各種表示装置に治療レーザ光の照射順(例えば、照射順を示す数字または矢印等)を表示させることで、照射順をユーザに呈示してもよい。この場合、表示装置の構成も適宜選択できる。例えば、表示装置は、ユーザの眼前に配置されるヘッドマウントディスプレイであってもよい。ヘッドマウントディスプレイが用いられる場合、ユーザは、顔の向きを変更せずに(つまり、患者眼の組織等を見るための顔の向きを維持したまま)、治療レーザ光の照射順を把握することができる。また、表示装置は、レーザ治療装置が備えるモニタ等であってもよい。
制御部は、エイミング光照射ステップ(照射順呈示ステップ)において、配列パターンに含まれる複数のスポットのうち、1つまたは複数の第1スポットと、第1スポット以外の第2スポットとの間で、エイミング光の照射方法または照射の有無を異ならせてもよい。制御部は、エイミング光の照射中に、複数のスポット中の第1スポットを、設定されている照射順に従って順次切り替えてもよい。
この場合、配列パターン中の第1スポットと第2スポットで、エイミング光の照射方法または照射の有無が異なる。従って、ユーザは、第1スポットと第2スポットをエイミング光によって判別することができる。さらに、配列パターン中の第1スポットが、設定されている照射順に従って順次切り替えられる。つまり、制御部は、第2スポットと異なる態様でユーザが視認可能な第1スポットを、ユーザが把握可能な速度で照射順に従って順次切り替える。従って、ユーザは、第1スポットが切り替えられる順番を把握することで、その後に照射される治療レーザ光の照射順を、エイミング光によって適切に把握することができる。よって、ユーザは、実行される治療の状況を、より適切に予測することができる。
なお、第1スポットと第2スポットの各々に対してエイミング光の照射方法を変更する際の具体的な変更態様は、適宜選択できる。例えば、制御部は、第1スポットと第2スポットの一方にのみエイミング光を照射してもよい。この場合、ユーザは、より容易に第1スポットと第2スポットを判別できる。また、制御部は、エイミング光を各スポットに繰り返し走査する際の、各スポットでエイミング光を照射する照射時間を、第1スポットと第2スポットで異ならせてもよい。この場合、照射時間が長いスポットでは、照射時間が短いスポットに比べてエイミング光が明瞭に視認される。よって、ユーザは、第1スポットと第2スポットを適切に判別できる。また、制御部は、エイミング光の色、照射するエイミング光のスポットの大きさ、およびスポットの形状の少なくともいずれかを、第1スポットと第2スポットで異ならせてもよい。
制御部は、エイミング光照射ステップ(照射順呈示ステップ)において、配列パターンに含まれる複数のスポットのうち、M個(M≧1)の第1スポットを除くN個(N>M)の第2スポットの各々に、ユーザが視認できる態様でエイミング光を繰り返し照射してもよい。制御部は、第1スポット(例えば、エイミング光を照射しない第1スポット)を、設定されている照射順に従って順次切り替えてもよい。この場合、ユーザは、エイミング光が繰り返し照射されるN個の第2スポットの位置を把握することで、配列パターンに含まれる複数のスポットの位置を容易に把握することができる。さらに、ユーザは、M個の第1スポットの切替順を把握することで、治療レーザ光の照射順を適切に把握することができる。よって、実行される治療の状況がより適切に把握される。
なお、制御部は、第1スポットにも、第2スポットに対する照射態様とは異なる態様でエイミング光を照射してもよい。例えば、制御部は、配列パターンに含まれる複数のスポットのうち、M個(M≧1)の第1スポットを除くN個(N>M)の第2スポットの各々に対し、単位時間当たりのエイミング光の照射時間を第1スポットよりも長くして照射してもよい。単位時間当たりのエイミング光の照射時間が、第1スポットと第2スポットの間で変更されることで、ユーザによって視認されるエイミング光の色の濃さまたは明るさが、第1スポットと第2スポットで変化する。よって、この場合でも、ユーザは第1スポットと第2スポットを判別することが可能である。
なお、単位時間当たりのエイミング光の照射時間を変更する場合、制御部は、各スポットでエイミング光を停止させて照射する時間を、第1スポットと第2スポットで変更してもよい。また、制御部は、単位時間当たりにエイミング光を照射する回数を、第1スポットと第2スポットで変更することで、単位時間当たりにエイミング光の照射時間を変更してもよい。
制御部は、エイミング光照射ステップ(照射順呈示ステップ)において、配列パターンに含まれる複数のスポットのうち、n個(n≧2)の第2スポットを除くm個(1≦m<n)の第1スポットに、エイミング光を繰り返し、または連続して照射してもよい。制御部は、第1スポット(例えば、エイミング光を照射する第1スポット)を、設定されている照射順に従って順次切り替えてもよい。この場合、ユーザは、第2スポットの数より少ないm個の第1スポットの切替順を把握することで、治療レーザ光の照射順をより適切に把握することができる。よって、実行される治療の状況がより適切に把握される。
なお、制御部は、第2スポットにも、第1スポットに対する照射態様とは異なる態様でエイミング光を照射してもよい。例えば、制御部は、配列パターンに含まれる複数のスポットのうち、n個(n≧2)の第2スポットを除くm個(1≦m<n)の第1スポットに対し、単位時間当たりのエイミング光の照射時間を第2スポットよりも長くして照射してもよい。前述したように、単位時間当たりのエイミング光の照射時間が、第1スポットと第2スポットの間で変更されることで、ユーザは第1スポットと第2スポットを判別することが可能である。なお、単位時間当たりのエイミング光の照射時間を変更する方法には、前述した方法を採用してもよい。
エイミング光が照射される小スポットが、第1スポットの領域内にX個、第2スポットの領域内にY個(Y≠X)設定されていてもよい。制御部は、エイミング光照射ステップ(照射順呈示ステップ)において、第1スポットおよび第2スポットの各々の領域内の複数の小スポットに、エイミング光を繰り返し照射してもよい。制御部は、第1スポットを照射順に従って順次切り替えてもよい。スポットの領域内に設定する小スポットの数を変更することで、1つまたは複数の小スポットによって表現されるスポットの大きさが変化する。従って、レーザ治療装置は、第1スポットと第2スポットの各々に設定する小スポットの数を異ならせることで、第1スポットと第2スポットをユーザに適切に判別させることができる。さらに、レーザ治療装置は、第1スポットを照射順に従って切り替えることで、照射順を適切にユーザに把握させることができる。
この場合、第1スポットの数と第2スポットの数は、いずれが多くても良いし、同じ数でも良い。また、第1スポット内の小スポットの数と、第2スポット内の小スポットの数は、いずれが多くてもよい。
制御部は、エイミング光照射ステップ(照射順呈示ステップ)において、複数のスポット中の第1スポットの数を、設定されている照射順に従って順次増加させてもよい。(つまり、複数のスポット中の第2スポットの数を、設定されている照射順に従って順次減少させてもよい)この場合、ユーザは、増加していく第1スポットの順番を把握することで、治療レーザ光の照射順を適切に把握することができる。よって、実行される治療の状況がより適切に把握される。
なお、エイミング光を用いて照射順をユーザに呈示する具体的な方法は、適宜変更できる。例えば、制御部は、エイミング光を被検眼の組織上で走査し、照射順を示す矢印および数字等の少なくともいずれかを組織上に呈示してもよい。この場合でも、ユーザは、エイミング光によって、スポットの位置と照射順を共に適切に把握することができる。
第1スポットを治療レーザ光の照射順に従って次の順に切り替える時間間隔は、走査部によってエイミング光の照射位置を次の位置に切り替える時間間隔よりも長くてもよい。この場合、ユーザは、複数のスポットの位置を把握しつつ、第1スポットが切り替えられる順番を適切に把握することができる。
制御部は、エイミング光照射ステップにおいて、第1スポットおよび第2スポットの少なくともいずれかに加えて、設定された配列パターンを含む枠部の少なくとも一部にエイミング光を繰り返し照射させてもよい。この場合、ユーザは、配列パターンに含まれる複数のスポットの位置と、各々のスポットに対する治療レーザ光の照射順に加えて、複数のスポットを含む配列パターンの領域をより容易に把握することができる。
制御部は、エイミング光照射ステップにおいて、照射順表現制御と一律照射制御を選択的に実行してもよい。照射順表現制御では、第1スポットが照射順に従って順次切り替えられる。従って、ユーザは、治療レーザ光の照射順をエイミング光によって把握することができる。一律照射制御では、配列パターンに含まれる複数のスポットの全てにエイミング光が(一律で)繰り返し照射される。従って、ユーザは、全てのスポットの位置を容易に把握できる。照射順表現制御と一律照射制御が選択的に実行されることで、ユーザは、より適切に患者眼の組織を治療することができる。
制御部は、光凝固治療制御と低侵襲治療制御を選択的に実行してもよい。光凝固治療制御では、組織に凝固斑を生じさせるエネルギーで、治療レーザ光が複数のスポットの各々に照射される。低侵襲治療制御では、光凝固治療制御におけるエネルギーよりも低いエネルギーで、治療レーザ光が複数のスポットの各々に照射される。制御部は、光凝固治療制御を実行する場合と低侵襲治療制御を実行する場合で、照射順表現制御と一律照射制御を切り替えてもよい。この場合、ユーザは、エイミング光の照射態様を把握することで、光凝固治療制御と低侵襲治療制御のいずれが実行されるかを把握することができる。よって、ユーザが意図しない治療が実行される可能性が低下する。
なお、光凝固治療制御が実行される場合のエイミング光の照射態様と、低侵襲治療制御が実行される場合のエイミング光の照射態様の各々は、予め定められていてもよい。低侵襲治療制御が実行される場合には、光凝固治療制御が実行される場合に比べて、治療レーザ光の照射痕(凝固斑)が組織に残らない(または残り難い)。つまり、低侵襲治療制御では、治療の跡をユーザが目視で認識できない(または認識し難い)態様で治療が行われる。従って、複数のスポットの各々に対する低侵襲治療用のレーザ光の照射が途中で中断されてしまった場合等には、ユーザは、治療レーザ光が既に照射された部位と未だ照射されていない部位を区別し難い。よって、レーザ治療装置は、低侵襲治療制御を実行する場合にエイミング光の照射順表現制御を実行し、且つ、光凝固治療制御を実行する場合にエイミング光の一律照射制御を実行してもよい。この場合、ユーザは、低侵襲治療用のレーザ光の照射が途中で中断されてしまった場合等でも、治療レーザ光の照射順を把握することで、治療レーザ光が既に照射された部位と未だ照射されていない部位を区別し易い。
ただし、照射順表現制御と一律照射制御を切り替える方法を変更することも可能である。例えば、制御部は、光凝固治療制御を実行する場合にエイミング光の照射順表現制御を実行し、且つ、低侵襲治療制御を実行する場合にエイミング光の一律照射制御を実行してもよい。また、制御部は、ユーザによって入力される指示に応じて、照射順表現制御と一律照射制御を切り替えてもよい。この場合、ユーザは、所望の態様でエイミング光をレーザ治療装置に照射させることができる。また、制御部は、光凝固治療制御を実行する場合のエイミング光の照射態様と、低侵襲治療制御を実行する場合のエイミング光の照射態様を、ユーザによって入力される指示に応じて設定してもよい。また、制御部は、実行する治療制御に関わらず、エイミング光の照射順表現制御を実行してもよい。
制御部は、エイミング光照射ステップにおいて、第1スポットを最初の照射順から最後の照射順まで順に切り替える一連のサイクルが終了した後、次のサイクルを開始させるまでの間に、配列パターンに含まれる複数のスポットの全てにエイミング光を繰り返し照射させる制御(一律照射制御)、および、複数のスポットの全てに対するエイミング光の照射を停止させる制御(一律非照射制御)の少なくともいずれかを実行してもよい。第1スポットを次の順に切り替える時間間隔と同等の時間間隔で、一連のサイクルの終了後に次のサイクルを開始させると、ユーザは、照射順が最初のスポットと最後のスポットを把握することが困難となる。これに対し、制御部は、一連のサイクルが終了した後、次のサイクルを開始させるまでの間に、サイクル中の制御とは異なる制御(例えば、一律照射制御または一律非照射制御)を実行することで、照射順が最初のスポットと最後のスポットを適切にユーザに把握させることができる。
なお、2つのサイクルの間に一律照射制御および一律非照射制御の少なくともいずれか(以下、単に「一律制御」という)を実行する時間の長さは、ユーザが一律制御を把握することが可能な長さであればよい。例えば、制御部は、サイクル中に第1スポットを次の順に切り替える時間間隔以上の長さで、サイクル間の一律制御を実行してもよい。
<実施形態>
以下、本発明の典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施形態のレーザ治療装置1の概略構成について説明する。本実施形態のレーザ治療装置1は、光源ユニット10、照射光学系20、観察光学系38、照明光学系39、制御ユニット40、および操作部50を備える。
(光源ユニット)
光源ユニット10は、治療レーザ光源11、エイミング光源12、ビームスプリッタ13、集光レンズ14、第1シャッタ15、および第2シャッタ16を備える。
治療レーザ光源11は、患者眼Eの組織を治療するための治療レーザ光を出射する。エイミング光源12は、治療スポットの位置(つまり、治療レーザ光が照射される位置)を示すエイミング光を出射する。本実施形態では、可視のレーザ光を出射する光源が、エイミング光源12として用いられる。術者は、治療する部位にエイミング光の照準を合わせた状態で、治療レーザ光の照射指示をレーザ治療装置1に入力することで、患者眼Eの所望の部位に治療レーザ光を照射させる。
ビームスプリッタ13は、治療レーザ光とエイミング光を合波する。本実施形態のビームスプリッタ13は、治療レーザ光の大部分を反射し、且つエイミング光の一部を透過することで、治療レーザ光とエイミング光を合波する。集光レンズ14は、ビームスプリッタ13から入射するレーザ光を集光し、光ファイバ19の入射端面に入射させる。なお、レーザ治療装置1は、治療レーザ光とエイミング光を合波せずに、別々の光路から患者眼Eに照射してもよい。
第1シャッタ15および第2シャッタ16は、異常時に光路を遮断することで、患者および術者等に対する安全性を高める。第1シャッタ15は、治療レーザ光源11とビームスプリッタ13の間の光路に設けられている。第2シャッタ16は、治療レーザ光およびエイミング光が共に導光される光路に設けられている。
本実施形態の治療レーザ光源11は、患者眼Eの組織(本実施形態では眼底組織)に凝固斑を生じさせるエネルギーの治療レーザ光(光凝固治療用のレーザ光)と、凝固斑を生じさせるエネルギーよりも低いエネルギーを各スポットに加える治療レーザ光(低侵襲治療用のレーザ光)を、共に出射することができる。低侵襲治療用のレーザ光の態様は、適宜選択できる。例えば、治療レーザ光源11は、治療レーザ光の出力、および、各スポットに治療レーザ光を照射する照射時間の少なくともいずれかを、光凝固治療用のレーザ光を出射する場合に比べて小さくすることで、低侵襲治療用のレーザ光を出射してもよい。また、レーザ治療装置1は、出力および照射時間(パルス幅)の少なくともいずれかが小さい治療レーザ光を、複数のスポットの各々に断続的に複数回照射することで、低侵襲治療を実行してもよい。
なお、本実施形態では、1つの治療レーザ光源11が、光凝固治療用のレーザ光と低侵襲治療用のレーザ光を共に出射する。しかし、光凝固治療用のレーザ光を出射する治療レーザ光源と、低侵襲治療用のレーザ光を出射する治療レーザ光源が、別々に設けられてもよい。また、治療レーザ光源11のゲイン媒体には、例えばNd:YAG、Nd:YVO4、Nd:YLF、Ho:YAG、Er:YAG、Yb:YAG、Yb:YVO4等の周知の媒体を用いることができる。
<照射光学系>
照射光学系20は、光源ユニット10から入射したレーザ光(本実施形態では、光ファイバ19を経て入射した治療レーザ光およびエイミング光)を、患者眼Eの組織(例えば、眼底、線維柱帯等)に照射する。本実施形態の照射光学系20は、スリットランプ(図示せず)に装着されたデリバリである。照射光学系20は、リレーレンズ21、ズームレンズ22、ミラー23、コリメータレンズ24、走査部30、対物レンズ25、および反射ミラー26を備える。
ズームレンズ22は、リレーレンズ21から入射したレーザ光(本実施形態では治療レーザ光およびエイミング光)のスポットサイズを変更するために、レーザ光の光軸方向に移動する。ズームレンズ22の位置は、エンコーダ22Aによって検出される。後述する制御ユニット40のCPU41は、エンコーダ22Aによって検出されるズームレンズ22の位置に基づいて、組織に照射される治療レーザ光およびエイミング光のスポットサイズを検出する。なお、レーザ光のスポットサイズを変更するための構成を変更することも可能である。例えば、レーザ治療装置1は、倍率が異なる複数のレンズを備え、レーザ光の光軸に挿入するレンズを切り換えることでスポットサイズを変更してもよい。
ズームレンズ22を経たレーザ光は、ミラー23およびコリメータレンズ24を介して走査部30に入射する。走査部30は、レーザ光(本実施形態では治療レーザ光およびエイミング光)を走査することで、組織におけるレーザ光の照射位置を移動させる(切り替える)。走査部30を経たレーザ光は、対物レンズ25を通り、反射ミラー26によって反射され、コンタクトレンズCLを介して患者眼Eの組織に照射される。
走査部30について説明する。図2に示すように、本実施形態の走査部30は、第1ガルバノミラー(ガルバノスキャナ)31および第2ガルバノミラー35を備える。第1ガルバノミラー31は、ミラー32およびアクチュエータ33を備える。ミラー32の揺動軸はy軸方向に延びており、ミラー32はレーザ光をx方向に走査する。第2ガルバノミラー35は、ミラー36およびアクチュエータ37を備える。ミラー36の揺動軸はz軸方向に延びており、ミラー36はレーザ光をy方向に走査する。アクチュエータ33,37にはモータおよびポテンショメータが内蔵されている。後述するCPU41は、ポテンショメータによって検出される位置情報に基づいて、2つのミラー32,36の各々を独立して揺動させる。その結果、レーザ光が二次元で走査される。
なお、本実施形態の走査部30は、2つのガルバノミラー31,35によってレーザ光を走査させる。しかし、走査部30の具体的な構成は変更してもよい。例えば、ポリゴンミラー、MEMSスキャナ等を走査部30に用いてもよい。また、ミラーの反射等を利用する代わりに、レーザ光を偏向させるデバイス(例えば、音響光学素子(AOM)等)を走査部30に用いてもよい。また、本実施形態の走査部30は、治療レーザ光とエイミング光を共に走査させる。しかし、治療レーザ光を走査させる走査部と、エイミング光を走査させる走査部とを別々に設けることも可能である。
<観察光学系・照明光学系>
図1の説明に戻る。観察光学系38は、ユーザ(例えば術者等)が患者眼Eを観察するために用いられる。本実施形態の観察光学系38は、対物レンズ、変倍光学系、保護フィルタ、正立プリズム群、視野絞り、および接眼レンズ等を備える。照明光学系39は、患者眼Eを照明する。本実施形態の照明光学系39は、照明光源、コンデンサレンズ、スリット、および投影レンズ等を備え、スリット光によって患者眼Eを照明する。本実施形態では、観察光学系38および照明光学系39は、スリットランプである照射光学系20に搭載されている。
<制御ユニット>
制御ユニット40は、CPU(プロセッサ)41、ROM42、RAM43、および不揮発性メモリ44等を備える。CPU41は、レーザ治療装置1における各種制御を司るコントローラ(制御部)の一例である。ROM42には、各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAM43は、各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリ44は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、制御ユニット40に着脱可能に装着されるUSBメモリ、フラッシュROM等を、不揮発性メモリ44として使用することができる。一例として、本実施形態では、レーザ治療制御処理(図4~図6、図8、および図10参照)を実行するためのレーザ治療制御プログラムは、ROM42または不揮発性メモリ44に記憶されている。
制御ユニット40には、治療レーザ光源11、エイミング光源12、エンコーダ22A、アクチュエータ33,37、フットスイッチ46、および操作部50等が接続されている。フットスイッチ46は、術者によって踏み込まれることで、治療レーザ光の照射の開始指示を制御ユニット40に入力する。なお、制御ユニット40に照射開始指示を入力するための構成は変更してもよい。例えば、手で操作されるボタン、タッチパネル等を、照射開始指示の入力手段として用いてもよい。
<操作部>
操作部50は、術者がレーザ治療装置1に対して各種指示を入力するために、術者によって操作される。本実施形態では、タッチパネル式のディスプレイ52が操作されることで各種指示が入力される。しかし、キーボード、マウス、ボタン等が操作部50に用いられてもよいことは言うまでもない。図1に示すディスプレイ52の表示画面は、治療中に表示される画面の一例である。図1に示す表示画面には、配列パターン設定部53、治療モード設定部54、および枠表示設定部55等が表示されている。
配列パターン設定部53は、治療レーザ光の配列パターンおよび照射順の少なくともいずれかを設定するために、ユーザによって操作される。配列パターンとは、照射開始指示が1回入力される毎に治療レーザ光が照射されるスポットの配列のパターンである。つまり、配列パターンとは、1回の照射開始指示によって治療されるスポットの、患者眼の組織上での配置を示す。
図3は、配列パターン60および領域表示枠70(詳細は後述する)の一例を示す図である。図3では、縦3箇所×横3箇所の合計9箇所のスポット61に治療レーザ光を照射するための配列パターン60(3×3正方形パターン)が例示されている。本実施形態では、例えば、スポット61が2×2の正方形状に並ぶ配列パターン60、スポット61が4×4の正方形状に並ぶ配列パターン60、スポット61を曲線状に並べる配列パターン60、円弧状の配置をさらに径方向に複数並べて形成される扇形の配列パターン60、スポット61を直線状に並べる配列パターン60等も予め用意されている。また、スポット61が1つであるシングルパターンも用意されている。さらに、本実施形態では、ユーザは、配列パターン設定部53を操作することで、所望の配列パターン60を作成することも可能である。ユーザは、配列パターン設定部53を操作することで、用意された1または複数の配列パターン60から、治療に用いる配列パターン60を指定することができる。制御ユニット40のCPU41は、指定された配列パターン60を、治療に用いる配列パターン60として設定する。
照射順は、配列パターン60に含まれる複数のスポット61の各々に対して実行される、治療レーザ光の照射順である。照射順は、各々の配列パターン60毎に予め定められていてもよい。この場合、ユーザが配列パターン設定部53を操作して、配列パターン60を指定する指示をレーザ治療装置1に入力すると、CPU41は、指定された配列パターン60に対して予め定められている照射順を、治療の際の照射順として設定してもよい。また、ユーザは、配列パターン設定部53を操作することで、配列パターン60に対応する照射順の変更指示または指定指示をレーザ治療装置1に入力することができる。変更指示または指定指示がユーザによって入力されると、CPU41は、入力された指示に応じて照射順を設定する。
図3では、説明のために、9箇所のスポット61の各々の照射順がスポット内に便宜的に示されている。図3で例示する配列パターン60では、照射順が最初(1番目)のスポット61は、図中左上に位置する。照射順は、図中左上のスポット61から右側のスポット61へ2回移動した後、図中1段下のスポット61へ移動する。その後、照射順は左側のスポット61へ2回移動し、さらに1段下のスポット61へ移動した後、右側のスポット61へ2回移動する。従って、図3に例示する配列パターン60では、照射順が最後のスポット61は、図中右下のスポット61となっている。
治療モード設定部54は、治療を行う際のレーザ治療装置1のモードを設定するためにユーザによって操作される。本実施形態では、治療モードとして、光凝固治療モードと低侵襲治療モードを含む複数のモードが設けられている。光凝固治療モードでは、患者眼Eの組織に凝固斑を生じさせるエネルギーの治療レーザ光が、配列パターン60に含まれる各スポット61に照射される。低侵襲治療モードでは、凝固斑を生じさせるエネルギーよりも低いエネルギーの治療レーザ光が、各スポット61に照射される。ユーザが治療モード設定部54を操作して、治療モードを選択する指示をレーザ治療装置1に入力すると、CPU41は、選択された治療モードを設定する。なお、本実施形態では、前述した配列パターン60は、光凝固治療モードおよび低侵襲治療モードのいずれにも用いられる。
枠表示設定部55は、エイミング光による領域表示枠70(図3参照)の表示をレーザ治療装置1に実行させるか否かを指定するために、ユーザによって操作される。領域表示枠70は、患者眼Eの組織上で、複数のスポット61を含む配列パターン60の領域を示す。詳細は後述するが、本実施形態のレーザ治療装置1は、複数のスポット61を含む配列パターン60を囲む枠部71の少なくとも一部(本実施形態では、枠部71内に設定される複数の枠部内スポット72)にエイミング光を繰り返し照射することで、領域表示枠70をユーザに視認させることができる。ユーザが枠表示設定部55を操作して、領域表示枠70の表示の有無を選択する指示をレーザ治療装置1に入力すると、CPU41は、入力された指示に応じて、領域表示枠70の表示の有無を設定する。なお、図3に示す例では、配列パターン60に含まれるスポット61の大きさと、枠部71内に設定される枠部内スポット72の大きさが異なる。しかし、スポット61の大きさと枠部内スポット72の大きさは同一でもよい。
(レーザ治療制御処理)
図4~図11を参照して、本実施形態のレーザ治療装置1が実行するレーザ治療制御処理について説明する。メイン処理(図4参照)、エイミング光照射制御処理(図5参照)、および照射順表現制御処理(図6、図8、および図10参照)は、いずれもレーザ治療制御処理の一部である。レーザ治療制御処理は、記憶装置(例えば不揮発性メモリ44等)に記憶されたレーザ治療制御プログラムに従って、CPU41によって実行される。CPU41は、患者眼Eの治療を開始する指示がユーザによって入力されると、図4に例示するメイン処理を開始する。
図4に示すように、CPU41は、メイン処理を開始すると、エイミング光照射制御処理(図5参照)を開始する(S1)。エイミング光照射制御処理は、メイン処理と並行して実行される。エイミング光照射制御処理では、患者眼Eの組織に対するエイミング光の照射が制御される。ユーザは、組織に照射されているエイミング光の位置を、所望の位置に合わせることで、治療レーザ光の照準を適切な位置に合わせることができる。エイミング光照射制御処理の詳細については後述する。
CPU41は、治療レーザ光の配列パターン60および照射順(図3参照)の少なくともいずれかを設定する指示が入力されたか否かを判断する(S2)。入力されていなければ(S2:NO)、処理はS4へ移行する。配列パターン60および照射順の少なくともいずれかを設定する指示が入力されると(S2:YES)、CPU41は、入力された指示に応じて、治療に使用する配列パターン60および照射順を設定する(S3)。なお、S3の処理が実行されるまでは、デフォルトの配列パターン60および照射順が使用されてもよい。
次いで、CPU41は、領域表示枠70(図3参照)の表示の有無を指定する指示が入力されたか否かを判断する(S4)。入力されていなければ(S4:NO)、処理はS6へ移行する。領域表示枠70の表示の有無を指定する指示が入力されると(S4:YES)、CPU41は、入力された指示に応じて、領域表示枠70の有無を設定する(S5)。
次いで、CPU41は、治療モード(光凝固治療モードまたは低侵襲治療モード)を選択する指示が入力されたか否かを判断する(S6)。入力されていなければ(S6:NO)、処理はS9へ移行する。治療モードを選択する指示が入力されると(S6:YES)、CPU41は、実行する治療モードを、ユーザによって選択された治療モードに設定する(S7)。
次いで、治療レーザ光の照射を開始させる指示が入力されたか否かを判断する(S9)。前述したように、本実施形態では、ユーザは、フットスイッチ(図1参照)を操作することで、治療レーザ光の照射を開始させる指示を入力することができる。照射開始指示が入力されていなければ(S9:NO)、処理はそのままS14へ移行する。
治療レーザ光の照射開始指示が入力されると(S9:YES)、CPU41は、エイミング光照射制御処理(図5参照)を中断し、組織に対するエイミング光の照射を一旦停止させる(S10)。従って、ユーザは、治療レーザ光が照射される組織の状態を容易に把握することができる。次いで、CPU41は、治療レーザ光源11および走査部30の駆動を制御することで、設定されている配列パターン60に含まれる複数のスポット61の各々に、設定されている照射順に従って、治療レーザ光を順に照射する(S11)。なお、S7で光凝固治療モードが設定されている場合には、S11では、前述した光凝固治療用のレーザ光が各スポット61に照射される。また、S7で低侵襲治療モードが設定されている場合には、S11では、前述した低侵襲治療用のレーザ光が各スポット61に照射される。配列パターン60に含まれる全てのスポット61に対する治療レーザ光の照射が完了すると、エイミング光照射制御処理(図5参照)が再開される。
次いで、CPU41は、処理を終了させる指示が入力されたか否かを判断する(S14)。入力されていなければ(S14:NO)、処理はS2へ戻り、S2~S14の処理が繰り返される。終了指示が入力されると(S14:YES)、メイン処理は終了する。
図5を参照して、エイミング光照射制御処理について説明する。前述したように、エイミング光照射制御処理では、患者眼Eの組織に対するエイミング光の照射が制御される。CPU41は、エイミング光照射制御処理を開始すると、S3(図4参照)で配列パターン60および照射順の少なくともいずれかが設定されたか否かを判断する(S21)。設定されていなければ(S21:NO)、処理はS23へ移行する。配列パターン60および照射順の少なくともいずれかが設定されると(S21:YES)、CPU41は、S3で設定された内容に応じて、配列パターン60および照射順を変更する(S22)。従って、エイミング光の照射中に配列パターン60および照射順が変更されると、変更された内容に応じて、エイミング光の照射位置等も変更される。
次いで、CPU41は、S4(図4参照)で設定されている領域表示枠70の表示の有無を判断する(S23)。領域表示枠70を表示させる旨が設定されている場合(S23:YES)、CPU41は、図3に示すように、治療に使用する配列パターン60を囲む枠部71の少なくとも一部(本実施形態では、枠部71内に設定される複数の枠部内スポット72)を、エイミング光を照射させる照射位置に追加する(S24)。この場合、後述する照射順表現制御処理(図6、図8、および図10参照)および一律照射制御処理(S28)では、配列パターン60に含まれる複数のスポット61に加えて、枠部71内にもエイミング光が高速で繰り返し照射される。その結果、領域表示枠70の全体がユーザによって把握される。よって、ユーザは、配列パターン60の領域をより容易に把握することができる。一方で、領域表示枠70を表示させる旨が設定されていない場合(S23:NO)、CPU41は、エイミング光の照射位置から、配列パターン60を囲む枠部71を除外する。この場合、配列パターン60内のスポット61にのみエイミング光が照射されるので、領域表示枠70は表示されない。
次いで、CPU41は、光凝固治療モードおよび低侵襲治療モードのいずれが設定されているかを判断する(S26)。治療モードとして低侵襲治療モードが設定されている場合(S26:YES)、CPU41は、照射順表現制御処理(図6、図8、および図10参照)を実行する(S27)。詳細は後述するが、照射順表現制御処理では、配列パターン60に含まれる複数のスポット61の各々に対する治療レーザ光の照射順が、エイミング光によって表現される。一方で、治療モードとして光凝固治療モードが設定されている場合(S26:NO)、CPU41は、一律照射制御処理を実行する(S28)。一律照射制御処理では、CPU41は、配列パターン60に含まれる複数のスポット61の全てに対し、エイミング光を高速で繰り返し照射させる。この場合、ユーザは、複数のスポット61の全ての位置を容易に把握することができる。なお、前述したように、領域表示枠70を表示させる旨が設定されている場合には、全てのスポット61に加えて、枠部71内にもエイミング光が繰り返し照射される(図3参照)。
以上説明したように、本実施形態では、低侵襲治療モードで治療が実行される場合と、光凝固治療モードで治療が実行される場合で、照射順表現制御処理(S27)と一律照射制御処理(S28)が切り替えられる。従って、ユーザは、エイミング光の照射態様を把握することで、その時点で設定されている治療モードを確認することができる。よって、ユーザが意図しない治療が実行される可能性が低下する。
また、低侵襲治療モードで治療が実行される場合には、光凝固治療モードで治療が実行される場合に比べて、治療レーザ光の照射痕が組織に残らない(または残り難い)。つまり、低侵襲治療では、ユーザは、治療の跡を目視によって確認し難い。従って、複数のスポット61の各々に対する低侵襲治療用のレーザ光の照射が途中で中断されてしまった場合等には、ユーザは、治療レーザ光が既に照射された部位と未だ照射されていない部位を区別し難い。本実施形態では、CPU41は、低侵襲治療モードが設定されている場合に照射順表現制御処理(S27)を実行する。従って、ユーザは、低侵襲治療用のレーザ光の照射が途中で中断されてしまった場合等でも、治療レーザ光の照射順を把握することで、治療レーザ光が既に照射された部位と未だ照射されていない部位を区別し易い。
次いで、CPU41は、処理を終了させる指示が入力されたか否かを判断する(S29)。入力されていなければ(S29:NO)、処理はS21へ戻り、S21~S29の処理が繰り返される。終了指示が入力されると(S29:YES)、エイミング光照射制御処理は終了する。
以下、図6~図12を参照して、第1~第4照射順表現制御処理について説明する。ユーザは、第1~第4照射順制御処理のうちのいずれかを選択する指示を、レーザ治療装置1に入力することができる。CPU41は、図5のS27において、第1~第4照射順制御処理のうちユーザによって選択されている処理を実行する。
以下では、複数の配列パターン60のうち、図3に示す配列パターン60(3×3正方形パターン)および照射順(図3において数字で示された順)が設定されている場合を例示して説明を行う。また、以下では、領域表示枠70を表示させる旨が設定されていない場合を例示して説明を行う。なお、領域表示枠70を表示させる旨が設定されている場合には、前述したように、エイミング光を繰り返し照射する照射位置には、配列パターン60内のスポット61に加えて枠部内スポット72も含まれる。その結果、エイミング光によって領域表示枠70(図3参照)が表現される。
また、以下説明する第1~第4照射順制御処理では、配列パターン60に含まれる複数のスポット61のうち、1つまたは複数のスポット61が第1スポット61A(図7、図9、図11、および図12参照)とされる。第1スポット61Aは、エイミング光の照射中に、S3で設定された照射順に従って順次切り替えられる。配列パターン60に含まれる複数のスポット61のうち、第1スポット61A以外のスポット61は、第2スポット61B(図7、図9、図11、および図12参照)とされる。
図6および図7を参照して、第1照射順表現制御処理について説明する。第1照射順表現制御処理では、配列パターン60に含まれる複数のスポット61のうち、M個(M≧1)の第1スポット61Aを除くN個(N>M)の第2スポット61Bの各々に、エイミング光が高速で繰り返し照射される。さらに、第1スポット61Aの位置が照射順に従って切り替えられることで、治療レーザ光の照射順が表現される。図6および図7では、第1スポット61Aの数が1つである場合を例示する。しかし、第1スポット61Aの数は2つ以上であってもよい。
図6に示すように、CPU41は、第1照射順表現制御処理を開始すると、配列パターン60に含まれる複数のスポット61のうち、第1スポット61Aを特定するためのカウンタCを、「1」に設定する(S31)。CPU41は、設定されている治療レーザ光の照射順がC番目のスポット61(つまり、第1スポット61A)を、エイミング光の照射位置から除外する(S32)。CPU41は、走査部30およびエイミング光源12の駆動を制御することで、複数のエイミング光の照射位置(領域表示枠70を表示させない場合には、複数の第2スポット61B)の各々に、エイミング光を高速で繰り返し照射させる(S33)。なお、S33において、1つの照射位置に対するエイミング光の照射が開始されてから、次の照射位置に対するエイミング光の照射が開始されるまでの時間間隔tは、十分に短い時間に設定される。その結果、図7に示すように、ユーザには、複数の第2スポット61Bにエイミング光が略同時に照射されているように見える。一例として、本実施形態における時間間隔tは、各照射位置に対するレーザ光の照射時間(例えば約20ms)と、走査部30によって照射位置を次の位置に移動させる時間(例えば約2ms)の和となっている。
次いで、CPU41は、C番目以外の第2スポット61Bに対するエイミング光の照射が開始された以後の経過時間が、時間Tに達したか否かを判断する(S34)。時間Tの長さは、前述した時間間隔tよりも長い。時間Tが経過していなければ(S34:NO)、S33の処理が継続される。時間Tが経過すると(S34:YES)、第1スポット61Aを特定するためのカウンタCに「1」が加算される(S35)。つまり、第1スポット61Aが、治療レーザ光の照射順に従って次のスポット61に切り替えられる。
以上のように、時間Tは、第1スポット61Aを次の照射順のスポット61に切り替える時間間隔となる。本実施形態では、時間Tは、S33でエイミング光の照射位置を次の位置に切り替える時間間隔tよりも長い。従って、ユーザは、S33でエイミング光が繰り返し照射される複数の第2スポット61Bの位置を把握しつつ、第1スポット61Aが切り替えられる順番(つまり、治療レーザ光の照射順)を適切に把握することができる。一例として、本実施形態では、時間Tは約500msに設定されている。つまり、第1スポット61Aの位置は約500ms毎に移動し、第1スポット61Aの位置の移動が繰り返されることで、術者は治療レーザ光の照射順を把握できる。
次いで、CPU41は、第1スポット61Aを特定するためのカウンタCの値が、配列パターン60に含まれるスポット61の数を超えたか否かを判断する(S36)。カウンタCの値がスポット61の数を超えていなければ(S36:NO)、処理はS32へ戻り、S32~S36の処理が繰り返される。
カウンタCの値がスポット61の数を超えた場合には(S36:YES)、第1スポット61Aを最初の照射順のスポット61から最後の照射順のスポット61まで順に切り替える一連のサイクルが終了している。この場合、CPU41は、一律照射制御および一律非照射制御の少なくともいずれか(以下、単に「一律制御」という)を実行する(S37)。一律照射制御では、配列パターン60に含まれる複数のスポット61の全てに、エイミング光が高速で(例えば時間間隔tで)繰り返し照射される。一律非照射制御処理では、配列パターン60に含まれる複数のスポット61の全てに対するエイミング光の照射が停止される。S37の処理が開始された以後の経過時間が、時間W(W≧T)に到達するまで(S38:NO)、S37の処理が継続される。時間Wが経過すると(S38:YES)、処理はS31へ戻り、前述したサイクルが再び開始される。
以上のように、時間Wは、2つのサイクルの間に一律制御を実行する時間の長さとなる。時間Wの長さは、一律制御が実行されていることをユーザが把握することが可能な長さであればよい。ユーザは、2つのサイクルの間に実行される一律制御を把握することで、配列パターン60に含まれる複数のスポット61のうち、照射順が最初のスポット61と最後のスポット61を適切に把握することができる。一例として、本実施形態では、時間Wの長さは、時間Tの長さ以上に設定される。
図7を参照して、第1照射順表現制御処理が実行される場合にユーザが把握(本実施形態では、ユーザが観察光学系38に設けられている接眼レンズを覗いて観察)する、エイミング光の照射状態の推移の一例について説明する。なお、図7、図9、図11、および図12に黒色で示したスポット61は、残像効果によって、エイミング光が常に照射されているように見えるスポット61である。点線で示したスポット61には、エイミング光は照射されない。前述したように、第1照射順表現制御処理では、複数の第2スポット61Bにのみエイミング光が繰り返し照射され、第1スポット61Aにはエイミング光は照射されない。従って、ユーザは、第1スポット61Aと第2スポット61Bを、エイミング光によって容易に判別できる。第1スポット61Aは、治療レーザ光の照射順に従って順次切り替えられる。よって、ユーザは、第1スポット61Aが切り替えられる順番を把握することで、治療レーザ光の照射順を適切に把握することができる。
また、エイミング光が繰り返し照射される第2スポット61Bの数Nは、第1スポット61Aの数Mよりも大きい。従って、ユーザは、配列パターン60に含まれる複数のスポット61の位置を把握し易く、且つ、治療レーザ光の照射順も把握し易い。
図8および図9を参照して、第2照射順表現制御処理について説明する。第2照射順表現制御処理では、配列パターン60に含まれる複数のスポット61のうち、n個(n≧2)の第2スポット61Bを除くm個(1≦m<n)の第1スポット61Aに、エイミング光が繰り返し、または継続して照射される。さらに、第1スポット61Aが照射順に従って切り替えられることで、治療レーザ光の照射順が表現される。図8および図9に示す例では、第1スポット61Aの数が1つである場合を例示する。しかし、第1スポット61Aの数は、前述した第1照射順表現制御処理と同様に1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。なお、第2照射順表現制御処理に含まれる複数のステップのうち、前述した第1照射順表現制御処理と同様の処理を採用できるステップについては、説明を簡略化する。
図8に示すように、CPU41は、第2照射順表現制御処理を開始すると、配列パターン60に含まれる複数のスポット61のうち、第1スポット61Aを特定するためのカウンタCを、「1」に設定する(S41)。CPU41は、設定されている治療レーザ光の照射順がC番目のスポット61とC-1番目のスポット61(つまり、第1スポット61A)を、エイミング光の照射位置に追加する。なお、S42の処理では、「C-1」の値が「0」となる場合には、C番目のスポット61のみがエイミング光の照射位置に追加される。また、カウンタCの値が、配列パターン60に含まれるスポット61の数よりも大きい場合には、C-1番目のスポット61のみがエイミング光の照射位置に追加される。CPU41は、走査部30およびエイミング光源12の駆動を制御することで、複数のエイミング光の照射位置(領域表示枠70を表示させない場合には、複数の第1スポット61A)の各々に、エイミング光を高速で(時間間隔tで)繰り返し照射させる(S43)。
次いで、CPU41は、S43の処理を開始した以後の経過時間が時間Tに達したか否かを判断する(S44)。時間Tが経過していなければ(S44:NO)、S43の処理が継続される。時間Tが経過すると(S44:YES)、第1スポット61Aを特定するためのカウンタCに「1」が加算される(S35)。
次いで、CPU41は、C-1の値が、配列パターン60に含まれるスポット61の数を超えたか否かを判断する(S46)。C-1値がスポット61の数を超えていなければ(S46:NO)、処理はS42へ戻り、S42~S46の処理が繰り返される。
C-1の値がスポット61の数を超えた場合には(S46:YES)、第1スポット61Aを最初の照射順のスポット61から最後の照射順のスポット61まで順に切り替える一連のサイクルが終了している。この場合、CPU41は、前述した一律制御を実行する(S47)。S47の処理が開始された以後の経過時間が、時間W(W≧T)に到達するまで(S48:NO)、S47の処理が継続される。時間Wが経過すると(S48:YES)、処理はS41へ戻り、前述したサイクルが再び開始される。
図9を参照して、第2照射順表現制御処理が実行される場合にユーザが把握する、エイミング光の照射状態の推移の一例について説明する。第2照射順表現制御処理では、複数の第1スポット61Aにのみエイミング光が繰り返し照射され、第2スポット61Bにはエイミング光は照射されない。従って、ユーザは、第1スポット61Aと第2スポット61Bを、エイミング光によって容易に判別できる。第1スポット61Aは、治療レーザ光の照射順に従って順次切り替えられる。よって、ユーザは、第1スポット61Aが切り替えられる順番を把握することで、治療レーザ光の照射順を適切に把握することができる。また、ユーザは、第2スポット61Bの数よりも少ない第1スポット61Aの切替順を把握することで、治療レーザ光の照射順をより適切に把握することができる。
図10および図11を参照して、第3照射順表現制御処理について説明する。第3照射順表現制御処理では、エイミング光が照射される小スポット63(図11参照)が、第1スポット61Aの領域内にX個、第2スポット61Bの領域内にY個(Y≠X)設定される。第1スポット61Aおよび第2スポット61Bの各々の領域内に設定された複数の小スポット63に、エイミング光が繰り返し照射される。さらに、第1スポット61Aが照射順に従って切り替えられることで、治療レーザ光の照射順が表現される。
図10および図11に示す例では、第1スポット61A内に設定される小スポット63の数Xが4つ、第2スポット61B内に設定される小スポット63の数Yが1つである場合を例示する。しかし、第1スポット61Aおよび第2スポット61Bの各々の領域内に設定される小スポット63の数を変更することも可能である。例えば、第1スポット61A内に設定される小スポット63の数Xが、第2スポット61B内に設定される小スポット63の数Yよりも少なくてもよい。また、図10および図11に示す例では、第1スポット61Aが1つ設定される。しかし、第1照射順表現制御処理および第2照射順表現制御処理と同様に、第1スポット61Aおよび第2スポット61Bの数を変更することも可能である。なお、第3照射順表現制御処理に含まれる複数のステップのうち、前述した第1照射順表現制御処理および第2照射順表現制御処理と同様の処理を採用できるステップについては、説明を簡略化する。
図10に示すように、CPU41は、第3照射順表現制御処理を開始すると、配列パターン60に含まれる複数のスポット61のうち、第1スポット61Aを特定するためのカウンタCを、「1」に設定する(S51)。CPU41は、設定されている治療レーザ光の照射順がC番目のスポット61(つまり、第1スポット61A)内に、X個(図10および図11に示す例では4個)の小スポット63を設定する(S52)。CPU41は、配列パターン60に含まれる複数のスポット61のうち、C番目以外のスポット61(つまり、第2スポット61B)内に、Y個(図10および図11に示す例では1個)の小スポット63を設定する(S53)。CPU41は、走査部30およびエイミング光源12の駆動を制御することで、複数のエイミング光の照射位置(領域表示枠70を表示させない場合には、S52およびS53で設定された複数の小スポット63)の各々に、エイミング光を高速で(時間間隔tで)繰り返し照射させる(S54)。
次いで、CPU41は、S54の処理を開始した以後の経過時間が時間Tに達したか否かを判断する(S55)。時間Tが経過していなければ(S55:NO)、S54の処理が継続される。時間Tが経過すると(S55:YES)、第1スポット61Aを特定するためのカウンタCに「1」が加算される(S56)。
次いで、CPU41は、カウンタCの値が、配列パターン60に含まれるスポット61の数を超えたか否かを判断する(S57)。カウンタCの値がスポット61の数を超えていなければ(S57:NO)、処理はS52へ戻り、S52~S57の処理が繰り返される。
カウンタCの値がスポット61の数を超えた場合には(S57:YES)、第1スポット61Aを最初の照射順のスポット61から最後の照射順のスポット61まで順に切り替える一連のサイクルが終了している。この場合、CPU41は、前述した一律制御を実行する(S58)。S58の処理が開始された以後の経過時間が、時間W(W≧T)に到達するまで(S59:NO)、S58の処理が継続される。時間Wが経過すると(S59:YES)、処理はS51へ戻り、前述したサイクルが再び開始される。
図11を参照して、第3照射順表現制御処理が実行される場合にユーザが把握する、エイミング光の照射状態の推移の一例について説明する。第3照射順表現制御処理では、第1スポット61A内に設定される小スポット63の数と、第2スポット61B内に設定される小スポット63の数が異なる。従って、ユーザは、第1スポット61Aと第2スポット61Bを、エイミング光によって容易に判別できる。第1スポット61Aは、治療レーザ光の照射順に従って順次切り替えられる。よって、ユーザは、第1スポット61Aが切り替えられる順番を把握することで、治療レーザ光の照射順を適切に把握することができる。
図12を参照して、第4照射順表現制御処理について説明する。第4照射順表現制御処理では、複数のスポット61に含まれる第1スポット61Aの数が、照射順に従って順次増加される。なお、第4照射順表現制御処理と、前述した第1照射順表現制御処理(図6参照)は、S32で実行される処理内容が異なるのみである。つまり、CPU41は、第4照射順表現制御処理のS32において、設定されている治療レーザ光の照射順がC番目のスポット61(第1スポット61A)を、エイミング光の照射位置に追加する。
図12に示すように、第4照射順表現制御処理が実行されると、第1スポット61が、照射順に従って順次増加する。よって、ユーザは、第1スポット61Aが増加する順番を把握することで、治療レーザ光の照射順を適切に把握することができる。なお、図12に示す例では、第1スポット61Aにエイミング光が照射され、第2スポット61Bにはエイミング光が照射されない。しかし、第1スポット61Aと第2スポット61Bに対するエイミング光の照射方法を変更することも可能である。例えば、CPU41は、第1スポット61Aにエイミング光を照射せず、第2スポット61Bにエイミング光を照射してもよい。
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態で例示された複数の技術のうちの一部のみを実行することも可能である。領域表示枠70(図3参照)をエイミング光によって表示させる処理(図5のS23,S24)は省略されてもよい。また、照射順表現制御処理と一律照射制御処理を使い分けるための処理(図5のS26~S28)を省略することも可能である。
なお、図4のS3で配列パターン60および照射順を設定する処理は、「パターン設定ステップ」の一例である。図5、図6、図8、および図10で複数のスポット61の各々にエイミング光を照射する処理は、「エイミング光照射ステップ」の一例である。図5、図6、図8、および図10で照射順をユーザに呈示する処理は、「照射順呈示ステップ」の一例である。