JP7425392B1 - 重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Al系めっき鋼板を素材として用いた場合に、重ね合わせ部の昇温速度が遅いことと、一枚部が過剰な時間加熱されることの両者を改善すること。【解決手段】本発明は、板厚d1の第一のAl系めっき鋼板と、前記第一のAl系めっき鋼板上に重ね合わされて溶接された、前記第一のAl系めっき鋼板よりも面積の小さく、かつ、前記第一のAl系めっき鋼板と接しない側の前記Al系めっき鋼板の表面に炭素系黒色被膜を有する、板厚d2の第二のAl系めっき鋼板と、を備えたホットスタンプ用重ね合わせブランクを、温度T1の加熱炉にて加熱する加熱方法であり、前記ホットスタンプ用重ね合わせブランクが、式(a)~式(c)を満足し、加熱時間をt1以上、かつ、t2+△t2以下とする。【選択図】図5

Description

本発明は、重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法に関する。
近年、自動車用鋼板の用途において、高強度と高成形性とを両立する鋼板が望まれている。高強度と高成形性とを両立する鋼板に対応するものの1つとして、残留オーステナイトのマルテンサイト変態を利用したTRIP(Transformation Induced Plasticity)鋼がある。このTRIP鋼により、成形性の優れた1000MPa級程度の強度を有する高強度鋼板を製造することは可能である。しかしながら、TRIP鋼の技術を用い、更に高強度(例えば1500MPa以上)を有する超高強度鋼で成形性を確保することは困難であり、更には、成形後の形状凍結性が悪く成形品の寸法精度が劣るという問題がある。
上記のような、室温付近で成形する工法(いわゆる冷間プレス工法)に対し、最近注目を浴びている工法が、ホットスタンプ(ホットプレス、熱間プレス、ダイクエンチ、プレスクエンチ等とも呼称される。)である。このホットスタンプは、鋼板をAc3点以上(例えば800℃以上)まで加熱してオーステナイト化した直後に熱間でプレスすることによって成形性を確保させ、下死点保持の間に金型でMs点以下(例えば400℃以下)まで急冷することで材料をマルテンサイト化させ焼き入れることで、プレス後に所望の高強度の材質を得る部品の製造方法である。本工法によれば、成形後の形状凍結性にも優れた自動車用部品を得ることができる。
一方で、自動車の車体を構成する部品に用いられる各種のプレス成形体には、静的強度、動的強度、衝突安全性、更には軽量化等の様々な観点から、多様な性能や特性の向上が要求されている。例えば、Aピラーレインフォース、Bピラーレインフォース、バンパーレインフォース、トンネルリンフォース、サイドシルレインフォース、ルーフレインフォース又はフロアークロスメンバー等の自動車部品には、それぞれの自動車部品における特定部位だけが、この特定部位を除く一般部位よりも耐衝突特性を有することが要求される。
そこで、自動車部品における補強が必要な特定部位に相当する部分だけに複数枚の鋼板を重ね合わせて溶接した後、得られた鋼板をホットスタンプ成形して、重ね合わせホットスタンプ成形体を製造する工法が、2007年頃より実際に採用されている(特許文献1および特許文献2を参照。)。この工法によれば、プレス金型数を削減しながら重ね合わせホットスタンプ成形体の特定部位だけを部分的に強化することができ、かつ、不必要に部品厚を増加することが無いために部品軽量化にも寄与できる。なお、このように重ね合わせて溶接することで作製したブランクを、重ね合わせブランクと呼ぶ(パッチワークブランクとも呼ばれる。)。
重ね合わされる鋼板が非めっき鋼板である場合、熱間プレス成形に伴う高温加熱によって、製造される重ね合わせ熱間プレス部材の表面に酸化スケールが生成する。そのため、熱間プレス成形後に、例えばショットブラスト処理によって生成した酸化スケールを除去する必要が生じたり、あるいは、製造された重ね合わせ熱間プレス部材の耐食性が低下し易かったりするといった問題がある。更に、重ね合わせブランクの素材として非めっき鋼板を用いた場合の特有の問題として、重ね合わされていない部分(以下、「一枚部」とも称する。)はショットブラスト処理が可能なものの、重ね合わされた部分(以下、「重ね合わせ部」とも称する。)の鋼板の間に形成された酸化スケールはショットブラスト処理での除去が困難であり、耐食性が特に低下し易いという問題がある。
重ね合わされる鋼板がめっき鋼板であれば、熱間プレス成形後の重ね合わせ熱間プレス部材にショットブラスト処理を行う必要性は解消される。ホットプレス用として用いられるめっき鋼板としては、一般に、Zn系めっき鋼板とAl系めっき鋼板とが挙げられる。Zn系めっき及びAl系めっきのいずれについても、Feがめっき中に拡散する合金化反応によって、ホットスタンプ加熱後に、Zn系めっきはZn-Fe系めっきとなり、Al系めっきはAl-Fe系めっきとなる。
特許文献2及び特許文献3に示すように、Zn系めっき鋼板(即ち、Znを50質量%以上含有するめっき鋼板(Znめっき、又は、Zn-Fe合金、Zn-Ni合金、Zn-Fe-Al合金などのZn系合金めっき))は、酸化スケールの生成を抑制し、ショットブラスト処理が必要となるという問題は解消される。しかしながら、重ね合わせブランク素材としてZn系めっき鋼板を用い、ホットスタンプ成形時に重ね合わせ部に曲げ成形を施す場合、地鉄に亀裂が生じて、耐衝突特性に問題が生じる場合がある。これは、比較的低融点である亜鉛が残存する場合、Znが液体金属となってめっき表面から地鉄に侵入するためであり、いわゆる液体金属脆化と呼ばれる問題によるものである。なお、曲げ成形は、耐衝突特性を形状の面から確保する手段であり、重ね合わせ部に曲げ成形を施すことは、極めて重要な重ね合わせ成形体の利用方法である。
特許文献2及び特許文献3に示すように、Zn系めっき鋼板をホットスタンプとして用いる場合に採られる液体金属脆化の対策として、一般的には、ホットスタンプ加熱時にZn-Fe合金化反応を進めてめっきを高融点化する対策、及び、ホットスタンプの曲げ成形時の成形温度を下げて亜鉛が固体化するのを待つ対策が挙げられる。しかしながら、重ね合わせブランクの素材として亜鉛系めっき鋼板を用いた場合の特有の問題として、重ね合わせ部の板厚が一枚部より厚いために昇温速度が遅く、ホットスタンプ加熱時にZn-Fe合金化反応を進行させることが困難であるという問題がある。更には、ホットスタンプ成形時の成形温度について、重ね合わせ部の板厚が一枚部より厚いため、冷却速度も遅く、重ね合わせ部が冷めるのを待つと一枚部が早く冷めてしまい、マルテンサイト組織を確保できない問題も存在する。また、一枚部では、Znは酸化亜鉛の膜となりZnの蒸発を抑制するが、重ね合わせ部の鋼板の間の雰囲気では酸素の欠乏が起こるためにZnが蒸発し、重ね合わせ部の耐食性の低下、液体金属脆化の問題が更に大きくなる。
特許文献4に示すようなAl系めっき鋼板(即ち、Alを50質量%以上含有するめっき鋼板(Alめっき、又は、Al-Si合金、Al-Fe-Si合金などのAl系合金めっき))では、Znと同様に酸化スケールの生成を抑制するため、ショットブラスト処理が必要となるという問題は解消され、更には、Znに比べ高融点であるAlでは、液体金属脆化の問題を起こさない。そのため、Al系めっき鋼板は、重ね合わせブランクの素材として用いるには好適である。
そこで、本発明者らは、近年、重ね合わせブランク用のAl系めっき鋼板や、Al系めっき鋼板を用いた重ね合わせブランクについて、鋭意検討を行い、様々な提案を行っている(例えば、以下の特許文献5~特許文献8を参照。)。
特開2011-88484号公報 特許6178301号公報 特開2016-124029号公報 国際公開第2002/103073号 特開2011-149084号公報 国際公開第2010/005121号 国際公開第2021/172379号 国際公開第2019/194308号
しかしながら、重ね合わせブランクの素材として、特許文献4に開示されているようなAl系めっき鋼板を用いた場合の特有の問題として、ホットスタンプの加熱の際に重ね合わせ部の昇温速度が遅いこと、及び、重ね合わせ部と重ね合わされていない部分(一枚部)との昇温速度に差があることにより、ホットスタンプの部品生産性が低下する問題、並びに、スポット溶接性の問題が生じる。
すなわち、重ね合わせ部をオーステナイト化温度以上に達するよう加熱時間を長くする必要があり、部品の生産性が低下する問題がある。特に、Al系めっきが無い鋼板の場合(すなわち鋼板表面がFeの場合)、Feが酸化し黒色を帯び、Zn系めっきの場合は、Al系めっきと比較して容易にZn-Feの合金化反応が進行し金属光沢が消失し、黒色を帯びる。これら鋼板に対して、Al系めっき鋼板では、銀白色の金属光沢を持った表面であることに加え、Al系めっきが耐酸化性に優れるため、金属光沢が加熱中も長く維持されることにより、昇温速度が遅くなる。その結果、ホットスタンプの部品生産性が低下する問題が生じ易い。
また、特許文献3に記載されているように、ホットスタンプの加熱で進行するAl系めっき鋼板のめっきのAl-Fe合金化反応は、めっきのスポット溶接性に重要である。ここで、ホットスタンプの加熱時間を長くした場合、鋼板一枚部において、過剰な時間加熱されるため、Al-Fe合金化反応が進み、Fe濃度の高いAl-Fe系合金めっき層が形成されてしまう。その結果、更なる問題として、鋼板一枚部において、スポット溶接性が低下してしまう問題が生じる。
そのため、以上説明したような、地鉄の酸化スケールを抑制し、かつ、液体金属脆化の問題を起こさないために、ホットスタンプ用重ね合わせブランクの素材として用いるには好適であるAl系めっき鋼板に関し、重ね合わせ部の昇温速度が遅いことと、一枚部が過剰な時間加熱されることの両者を改善する発明によって、ホットスタンプの部品生産性と一枚部のスポット溶接性の問題を解決させることが希求される。
このような、ホットスタンプの部品生産性と一枚部のスポット溶接性の問題は、上記特許文献5~特許文献8に記載した技術においても、未だ改良の余地が存在していた。例えば、上記特許文献8等では、加熱時間を管理することで、ホットスタンプ時の加熱を実施していた。より詳細には、例えば予備試験等で、重ね合わせ部の昇温速度又は昇温時間を確認していた。その上で、得られた昇温速度又は昇温時間に関する知見にバラつき等を考慮した上で、例えば10分間等といった、比較的長時間の保持時間を加味して、ホットスタンプ時の加熱を行っていた。かかる場合においても、上記のような一枚部のスポット溶接性の問題については、未だ改良の余地が存在していた。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、Al系めっき鋼板を素材として用いた場合に、重ね合わせ部の昇温速度が遅いことと、一枚部が過剰な時間加熱されることの両者を改善することが可能な、重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、Al系めっき鋼板の表面のJIS Z 8781-4:2013に定める明度Lに着目した結果、明度は低いほど、Al系めっき鋼板のホットスタンプの加熱の昇温速度が増加することを見出した。これは、明度は低い値を示すほど、Al系めっき鋼板の表面が黒色化していることを示唆することから、熱を吸収し易い特性が得られているためと考えられる。特に、パッチワークの重ね合わせ部の昇温速度が遅いことを改善するには、重ね合わせ部の明度L、板厚(すなわち2枚の鋼板の板厚の合計)、加熱温度に応じて、最小の加熱時間が存在することを見出した。
また、一枚部が過剰な時間加熱されることを抑制するには、一枚部では、逆に明度を高くすることで、熱を吸収し難い特性を得て、ホットスタンプの加熱の昇温速度を低下させることが重要である。Al系めっき鋼板を用いることで、銀白色の金属光沢を持った表面に起因して、高い明度を得ることが出来る。特に、一枚部が過剰に加熱されることを抑制するには、一枚部の明度L、板厚、加熱温度に応じて、最大の加熱時間が存在することを見出した。
また、Al系めっき鋼板の上層に炭素系黒色皮膜を用いることで、明度を下げることが出来ることを見出した。特に、炭素系黒色皮膜は、ホットスタンプの加熱中の酸化反応によって燃焼することで焼失されるため、炭素系黒色皮膜が残存することによる重ね合わせホットスタンプ成形部品のスポット溶接性の低下を抑制できることを見出した。このような炭素系黒色皮膜の燃焼による焼失効果を得るには、ホットスタンプ用重ね合わせブランクの2枚の鋼板が接しない側の面に、炭素系黒色皮膜を用いることが重要である。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
[1]板厚d1の第一のAl系めっき鋼板と、前記第一のAl系めっき鋼板上に重ね合わされて溶接された、前記第一のAl系めっき鋼板よりも面積の小さく、かつ、前記第一のAl系めっき鋼板と接しない側のAl系めっき上層に炭素系黒色被膜を有する、板厚d2の第二のAl系めっき鋼板と、を備えたホットスタンプ用重ね合わせブランクを、温度T1の加熱炉にて加熱する加熱方法であって、前記ホットスタンプ用重ね合わせブランクが、下記式(a)~式(c)を満足し、加熱時間をt1以上、かつ、t2+△t2以下とする、ホットスタンプ用重ね合わせブランクの加熱方法。
ここで、T1は加熱炉の温度であり、t1は下記式(d)の2次方程式の解のうち小さい方の値であり、t2は下記式(e)の2次方程式の解のうち小さい方の値であり、△t2は下記式(f)であり、d、d1及びd2の単位はmmとし、T1の単位は℃とし、t1、t2及び△t2の単位は分とする。
40≦Lb≦60 ・・・式(a)
(Lb+20)≦L1≦80 ・・・式(b)
2.5≦d≦4.8 ・・・式(c)
T1=A1・t1+B1・t1+C1 ・・・式(d)
T1=A2・t2+B2・t2+C2 ・・・式(e)
△t2=2.6960×1013×e(-0.03205×T1) ・・・式(f)
ただし、Lb、L1、L1a、L1b、L2b、A1、B1、C1、A2、B2及びC2は、下記とする。
b=0.5×(L1b+L2b) ・・・式(a-1)
1=0.5×(L1a+L1b) ・・・式(b-1)
d=d1+d2 ・・・式(c-1)
1a:第一の鋼板の第二の鋼板と接する側の表面の明度L
1b:第一の鋼板の第二の鋼板と接しない側の表面の明度L
2b:第二の鋼板の第一の鋼板と接しない側の表面の明度L
A1=-0.3645d+6.343d-43.822d
+151.71d-268.89d+205.68 ・・・式(d-1)
B1=2.9347d-47.313d+298.84d
-936.35d+1518.1d-1197.6 ・・・式(d-2)
C1=1381.57 ・・・式(d-3)
A2=-0.4367d1+7.3789d1-49.107d1
+161.95d1-269.2d1+188.97 ・・・式(e-1)
B2=1.8594d1-31.034d1+204.62d1
-675.11d1+1159.2d1-964.59 ・・・式(e-2)
C2=1367.39 ・・・式(e-3)
[2]前記加熱時間を、t2+△t2’以下とする、[1]に記載のホットスタンプ用重ね合わせブランクの加熱方法。
ここで、△t2’は下記式(f’)であり、その単位は分である。
△t2’=1.498×1013×e(-0.03198×T1) ・・・式(f’)
[3]板厚d1の第一のAl系めっき鋼板と、前記第一のAl系めっき鋼板上に重ね合わされて溶接された、前記第一のAl系めっき鋼板よりも面積の小さく、かつ、前記第一のAl系めっき鋼板と接しない側のAl系めっき上層に炭素系黒色被膜を有する、板厚d2の第二のAl系めっき鋼板と、を備えたホットスタンプ用重ね合わせブランクを、温度T3の加熱炉にて加熱する加熱方法であって、前記第一のAl系めっき鋼板は、前記第二のAl系めっき鋼板と接しない側の表面に炭素系黒色皮膜を有し、前記ホットスタンプ用重ね合わせブランクが、下記式(A)~式(C)を満足し、加熱時間をt3以上、かつ、t4+△t4以下とする、ホットスタンプ用重ね合わせブランクの加熱方法。
ここで、T3は加熱炉の温度であり、t3は下記式(D)の2次方程式の解のうち小さい方の値であり、t4は下記式(E)の2次方程式の解のうち小さい方の値であり、△t4は下記式(F)であり、d、d1及びd2の単位はmmとし、T3の単位は℃とし、t3、t4及び△t4の単位は分とする。
20≦Lb<40 ・・・式(A)
(Lb+20)≦L1≦60 ・・・式(B)
2.5≦d≦4.8 ・・・式(C)
T3=A3・t3+B3・t3+C3 ・・・式(D)
T3=A4・t4+B4・t4+C4 ・・・式(E)
△t4=2.6960×1013×e(-0.03205×T3) ・・・式(F)
ただし、Lb、L1、L1a、L1b、L2b、A3、B3、C3、A4、B4及びC4は、下記とする。
b=0.5×(L1b+L2b) ・・・式(A-1)
1=0.5×(L1a+L1b) ・・・式(B-1)
d=d1+d2 ・・・式(C-1)
1a:第一の鋼板の第二の鋼板と接する側の表面の明度L
1b:第一の鋼板の第二の鋼板と接しない側の表面の明度L
2b:第二の鋼板の第一の鋼板と接しない側の表面の明度L
A3=-0.5693d+9.8168d-67.002d
+228.11d-394.85d+291.77 ・・・式(D-1)
B3=3.0472d-49.829d+320.43d
-1026.6d+1706.7d-1374.3 ・・・式(D-2)
C3=1394.21 ・・・式(D-3)
A4=-0.3645d1+6.343d1-43.822d1
+151.71d1-268.89d1+205.68 ・・・式(E-1)
B4=2.9347d1-47.313d1+298.84d1
-936.35d1+1518.1d1-1197.6 ・・・式(E-2)
C4=1381.57 ・・・式(E-3)
[4]前記加熱時間を、t4+△t4’以下とする、[3]に記載のホットスタンプ用重ね合わせブランクの加熱方法。
ここで、△t4’は下記式(F’)であり、その単位は分である。
△t4’=1.498×1013×e(-0.03198×T3) ・・・式(F’)
以上説明したように本発明によれば、Al系めっき鋼板をホットスタンプ用重ね合わせブランクの素材として用いた場合に、重ね合わせ部の昇温速度が遅いことと、一枚部が過剰な時間加熱されることの両者を改善し、ホットスタンプ成形体の部品生産性と一枚部のスポット溶接性の問題を解決させることが可能となる。
本発明の実施形態に係るホットスタンプ用重ね合わせブランクを用いて、重ね合わせホットスタンプ成形体を得るための、重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法の一例を、模式的に示す説明図である。 同実施形態に係るホットスタンプ用重ね合わせブランクの、母材鋼板の表面にAl系めっき層を有するAl系めっき鋼板の構造を模式的に示す説明図である。 同実施形態に係るホットスタンプ用重ね合わせブランクの、母材鋼板の表面にAl系めっき層を有し、その上層に炭素系黒色皮膜を有するAl系めっき鋼板の構造を模式的に示す説明図である。 同実施形態に係るホットスタンプ用重ね合わせブランクの、母材鋼板の表面にAl系めっき層を有するAl系めっき鋼板の断面を示す図である。 同実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法の、Al系めっき鋼板である第一の鋼板と、Al系めっき鋼板である前記第一の鋼板よりも面積の小さな第二の鋼板とを重ね合わせスポット溶接を実施し、ホットスタンプの加熱をした時の、重ね合わせ部と一枚部の板温度を実測した、比較例を示す図である。 同実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法の、Al系めっき鋼板である第一の鋼板と、Al系めっき鋼板の上層に炭素系黒色皮膜を有する前記第一の鋼板よりも面積の小さな第二の鋼板とを重ね合わせスポット溶接を実施し、ホットスタンプの加熱をした時の、重ね合わせ部と一枚部の板温度を実測した、発明例を示す図である。 同実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法の、加熱温度T1と加熱時間t1、t2+Δt2及びt2+Δt2’の関係を示す図である。 同実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法の、加熱温度T3と加熱時間t3、t4+Δt4及びt4+Δt4’の関係を示す図である。 同実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の、母材鋼板の表面にAl-Fe系合金めっき層を有し、前記Al-Fe系合金めっき層に含む、鋼板基材と接する拡散層を有する、Al-Fe系合金めっき鋼板の構造を模式的に示す説明図である。 同実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の、母材鋼板の表面にAl-Fe系合金めっき層を有するAl-Fe系合金めっき鋼板の断面を、ナイタールエッチング後に光学顕微鏡で観察した結果を示す図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る、重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法の一例を模式的に示す説明図である。
本実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法では、ホットスタンプ用重ね合わせブランクが、重ね合わせホットスタンプ成形体の素材として用いられる。本実施形態に係るホットスタンプ用重ね合わせブランクは、テーラードブランクの一種であり、パッチワークブランクとも呼ばれる。
図1に模式的に示すように、本実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法では、ホットスタンプ用重ね合わせブランク4が、第一のAl系めっき鋼板1と、第一のAl系めっき鋼板より面積の小さい第二のAl系めっき鋼板2とを、溶接3することで構成される。このとき、ホットスタンプ用重ね合わせブランク4の中で、第二のAl系めっき鋼板2が重ね合わされた部分を、重ね合わせ部4aと呼び、重ね合わされていない部分を、一枚部4bと呼ぶ。なお、本実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法では、ホットスタンプ用重ね合わせブランク4において、第二のAl系めっき鋼板2は、図1に模式的に示したように、第一のAl系めっき鋼板1からはみ出した部分が存在しないように、第一のAl系めっき鋼板1の外縁部よりも内側に配置されることが好ましい。
また、第一のAl系めっき鋼板1の表面には、第二のAl系めっき鋼板2と接する側の面1aと、第二のAl系めっき鋼板2と接しない側の面1bの両面に対し、Al系めっき層が施されており、第二のAl系めっき鋼板2についても同様に、第一のAl系めっき鋼板1と接する側の面2aと、第一のAl系めっき鋼板1と接しない側の面2bの両面に対し、Al系めっき層が施されている。更に、本実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法では、第二のAl系めっき鋼板の、第一のAl系めっき鋼板と接しない側の面2bには、Al系めっき層の上層に、炭素系黒色皮膜(図示せず。)が設けられている。
また、本実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体のもう一つの製造方法では、第一のAl系めっき鋼板1の表面には、第二のAl系めっき鋼板2と接する側の面1aと、第二のAl系めっき鋼板2と接しない側の面1bの両面に対し、Al系めっき層が施されており、第二のAl系めっき鋼板2についても同様に、第一のAl系めっき鋼板1と接する側の面2aと、第一のAl系めっき鋼板1と接しない側の面2bの両面に対し、Al系めっき層が施されている。また、第二のAl系めっき鋼板の、第一のAl系めっき鋼板と接しない側の面2bには、Al系めっき層の上層に、炭素系黒色皮膜(図示せず。)が設けられており、第一のAl系めっき鋼板の、第二のAl系めっき鋼板と接しない側の面1bにおいても、Al系めっき層の上層に、炭素系黒色皮膜(図示せず。)が設けられている。
ホットスタンプ用重ね合わせブランク4は、本実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法として、加熱炉5でAc3点以上まで加熱されることで、鋼板はオーステナイト化され、炉から取り出した直後に金型6でプレス成形および急冷されることで、鋼板はマルテンサイト変態する。これにより、ホットスタンプ用重ね合わせブランク4は、耐衝突特性に優れた本実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体12となる。このとき、重ね合わせ部4aの少なくとも一部には、重ね合わせホットスタンプ成形体12となった際に曲げ部8となる部分が存在することが、ホットスタンプ成形体の部品の衝突特性の向上の点から好ましい。
図1では、重ね合わせホットスタンプ成形体12の一例として、ハット形状の金型を用いた成形品を図示しており、ホットスタンプ成形体12の部位の呼称を、頭頂部7、頭頂部の曲げ部8、縦壁部10、フランジ部11、フランジ部の曲げ部9とする。
なお、図1では、本実施形態に係る第二のAl系めっき鋼板2は、頭頂部7側の外側に配置されているが、第二のAl系めっき鋼板2が頭頂部7の内側に配置されることでも、本発明の目的は達成される。
(1.ホットスタンプ用重ね合わせブランク)
以下、本実施形態に係るホットスタンプ用重ね合わせブランク4について、詳細に説明する。
上記のように、本実施形態に係るホットスタンプ用重ね合わせブランク4は、第一のAl系めっき鋼板1と、第一のAl系めっき鋼板1に溶接された、第一のAl系めっき鋼板1より面積の小さい第二のAl系めっき鋼板2と、を有しており、第一のAl系めっき鋼板1及び第二のAl系めっき鋼板2それぞれの両面には、Al系めっきが施されている。すなわち、本実施形態に係る第一のAl系めっき鋼板1及び第二のAl系めっき鋼板2は、母材鋼板の双方の表面上にAl系めっき層を有する、Al系めっき鋼板である。
<Al系めっき鋼板>
本実施形態に係るホットスタンプ用重ね合わせブランク4において、第一のAl系めっき鋼板1及び第二のAl系めっき鋼板2のそれぞれにおける母材鋼板の化学組成は、特に限定されるものではない。ただし、例えば1500MPa以上の引張強さ(試験力を9.8107Nとしたときのビッカース硬さ(すなわち、JIS Z2244-1:2020におけるHV1)で400程度以上)を得ることを目的に、化学組成が、質量%で、C:0.19~0.50%、Si:0.01~1.50%、Mn:0.4~2.0%、Cr:0.01~1.00%、Ti:0.001~0.100%、B:0.0005~0.0100%、P:0.100%以下、S:0.100%以下、Al:0~1.000%、N:0~0.0100%、Nb:0~0.100%、Mo、Ni、Cu、Co、W、Sn、V、Sb:それぞれ、0~0.500%、Mg、Ca、Zr、REM、O:それぞれ、0~0.0100%、残部Fe及び不純物である母材鋼板を用いることが好ましい。また、上記の化学組成の範囲内で、第一のAl系めっき鋼板1の母材鋼板の化学組成と、第二のAl系めっき鋼板2の母材鋼板の化学組成とは、同一であってもよいし、相違していてもよい。
上記の化学組成を母材鋼板としたAl系めっき鋼板の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、常法の製銑工程、及び、製鋼工程を経て、熱延、酸洗、冷延、ゼンジミア式溶融アルミめっきの工程で製造されたものを利用することができる。
本実施形態において、第一のAl系めっき鋼板1の板厚d1(mm)と、第二のAl系めっき鋼板2の板厚d2(mm)は、選択的に、それぞれ0.5mm以上3.2mm以下であることが好ましい。板厚を0.5mm以上とすることで、熱延、冷延での工程の生産性を所望の状態に保持することが可能となる。また、板厚を3.2mm以下とすることで、ホットスタンプの金型焼き入れ時に冷却速度が低下して焼き入れ性が不足する結果、所望の引張強度が得られなくなる現象を、防止することが可能となる。
なお、第一のAl系めっき鋼板1の板厚d1及び第二のAl系めっき鋼板2の板厚d2は、例えば、JIS B7502:2016に準拠したマイクロメーターを用いて測定することが可能である。また、上記の板厚d1、d2とは、母材鋼板の板厚に加え、両面に設けられたAl系めっき層の厚みも含んだ板厚とする。
[板厚d=(d1+d2):2.5mm以上4.8mm以下]
本実施形態において、第一のAl系めっき鋼板と第二のAl系めっき鋼板が重ね合わされた部分の合計板厚d=(d1+d2)は、2.5mm以上4.8mm以下である。合計板厚の増加は、重ね合わせ部の昇温速度を遅くしてホットスタンプの加熱時の生産性を低下する。そのため、合計板厚dは、4.8mm以下とする。つまり、dは、下記式(c)を満足する。
2.5≦d≦4.8 ・・・ 式(c)
合計板厚dは、好ましくは4.6mm以下であり、より好ましくは4.4mm以下、4.2mm以下、又は、4.0mm以下である。一方、合計板厚の減少は、昇温速度の向上効果が飽和することに加え、ホットスタンプ成形体の衝突特性が低下する。そのため、合計板厚dは2.5mm以上とする。合計板厚dは、好ましくは2.8mm以上であり、より好ましくは3.2mm以上である。
<Al系めっき層>
第一のAl系めっき鋼板1の両面に施されるAl系めっき層の付着量は、第二のAl系めっき鋼板2と接する側の表面1aにおいて、W1a(g/m)であり、第二のAl系めっき鋼板2と接しない側の表面1bにおいて、W1b(g/m)である。また、第二のAl系めっき鋼板2の両面に施されるAl系めっき層の付着量は、第一のAl系めっき鋼板1と接しない側の表面2bにおいて、W2b(g/m)である。ここで、上記W1a、W1b、W2bのいずれにおいても、その値は、それぞれ独立に、片面当たり20g/m以上120g/m以下の範囲内である。
ここで、ホットスタンプ用重ね合わせブランク4における、重ね合わされていない部分(一枚部4b)の平均のAl系めっき層の付着量を、片面当たりW1(g/m)とする。第一のAl系めっき鋼板1において、第二のAl系めっき鋼板2と接している側の表面の片面のAl系めっき層の付着量がW1a(g/m)であり、第二のAl系めっき鋼板2と接していない側の表面の片面のAl系めっき層の付着量がW1b(g/m)であった場合、W1=0.5×(W1a+W1b)となる。また、ホットスタンプ用重ね合わせブランク4における、重ね合わせ部4aの平均のAl系めっき層の付着量を、片面当たりW2(g/m)とする。第一のAl系めっき鋼板1における、第二のAl系めっき鋼板2と接していない側の表面1bの片面のAl系めっき層の付着量がW1b(g/m)であり、第二のAl系めっき鋼板2における、第一のAl系めっき鋼板1と接していない側の表面の片面のAl系めっき層の付着量がW2b(g/m)であった場合、W2=0.5×(W1b+W2b)となる。
なお、第一のAl系めっき鋼板1において、第二のAl系めっき鋼板2と接する側の表面1a、第二のAl系めっき鋼板2と接しない側の表面1b、及び、第二のAl系めっき鋼板2において、第一のAl系めっき鋼板1と接しない側の表面2bは、製造された重ね合わせブランクがホットスタンプの加熱の際に、熱源に露出する面であり、ホットスタンプにおける加熱時の昇温速度を制御する上で重要な表面となる。
本実施形態に係るAl系めっき層のめっき付着量については、特に限定されるものではない。ただし、ホットスタンプ成形体に求められる特性としては、(a)ホットスタンプ加熱時のFeスケールの発生を抑制すること、(b)ホットスタンプ成形時のめっきの滑落(パウダリングとも呼ばれる。)によるめっきの欠けや押し疵を抑制すること、が好ましい特性として挙げられる。
パウダリングは、成形時に生じる曲げ部の内側の面でめっきに掛かる圧縮応力や、成形時の金型からの摺動によってめっきに掛かるせん断応力などを原因として発生する。各鋼板におけるAl系めっき層の付着量W1、W2が20g/m未満である場合には、めっきの厚みが薄くなり、Feスケールの抑制が不十分となる問題が生じる。そのため、各鋼板におけるAl系めっき層の付着量W1、W2は、それぞれ独立に、20g/m以上とすることが好ましい。各鋼板におけるAl系めっき層の付着量W1、W2は、それぞれ独立に、より好ましくは30g/m以上であり、更に好ましくは、好ましくなる順に、35g/m以上、40g/m以上、45g/m以上、50g/m以上である。
一方、各鋼板における片面あたりのめっきの付着量W1、W2が120g/mを超える場合には、パウダリングの抑制が不十分となる問題が生じる。そのため、本実施形態において、各鋼板における片面あたりのめっきの付着量W1、W2は、それぞれ独立に、120g/m以下とすることが好ましい。各鋼板における片面あたりのめっきの付着量W1、W2は、それぞれ独立に、より好ましくは110g/m以下であり、更に好ましくは、好ましくなる順に100g/m以下、95g/m以下、90g/m以下である。なお、第二のAl系めっき鋼板において、第一のAl系めっき鋼板と接する側の表面におけるAl系めっき層の付着量については、特に規定するものではない。
ただし、各鋼板における片面あたりのめっきの付着量W1、W2の差|W1-W2|は、40g/m以下であることが好ましい。めっきの付着量の差|W1-W2|が40g/m以下となることで、製造されるホットスタンプ成形体において、スポット溶接性を更に向上させることが可能となる。めっきの付着量の差|W1-W2|は、より好ましくは35g/m以下、30g/m以下、25g/m以下、又は、20g/m以下である。
なお、各鋼板におけるAl系めっき層の厚み(μm)は、めっき付着量(g/m)から概算することができ、Al系めっき層の化学組成にもよるが、おおむね、以下の式(1)により求めることができる。
(めっきの厚み)=(めっき付着量)/3 ・・・ 式(1)
図2は、本実施形態に係るAl系めっき層が母材鋼板の表面に設けられたAl系めっき鋼板13の片面側の層構造を、模式的に示したものである。本実施形態に係るAl系めっき層は、溶融めっき法によって製造された場合、Al系めっき層14の母材鋼板15との境界部付近に、アルミ-鉄系(Al-Fe系)合金層(図示せず。)が形成される。
なお、Al系めっきを母材鋼板に処理する方法として一般的な溶融めっき法によれば、溶融アルミめっき浴に母材鋼板を浸漬し、窒素や大気などでガスワイピングすることで付着量が調整されたAl系めっき鋼板を製造することができる。その結果、必然的に、図2のAl系めっき層14と母材鋼板15との界面には、溶融めっき時のFeの溶出によりアルミ-鉄系合金層が形成される。本願明細書では、図2のAl系めっき層14に、アルミ-鉄系合金層も含むものとする。
上記Al系めっき層を形成するための溶融アルミめっき浴の化学組成(つまり、Feを除き、Al系めっき層14の化学組成とほぼ同一である。)は、特に限定されない。ただし、ホットスタンプ加熱時に必要な耐熱性に優れる点で、溶融アルミめっき浴Alの含有量は、80質量%以上であることが好ましい。また、アルミ-鉄合金層の厚みの制御が容易な点で、溶融アルミめっき浴のSiの含有量は、2質量%以上であることが好ましい。Siの含有量を2質量%以上とすることで、アルミ-鉄系合金層が厚くなり過ぎて成形性が低下することを、防止することが可能となる。一方、溶融アルミめっき浴のSiの含有量を15質量%以下とすることで、ホットスタンプ加熱時の合金化反応が遅くなりホットスタンプの生産性が低下することを、防止することが可能となる。
溶融アルミめっき浴がSiを2質量%以上15質量%以下含有する場合、かかるめっき浴を用いて形成されるAl系めっき層14には、状態図に基づいてAlとSiの共晶組織が形成される。溶融めっき法による場合、不可避的に母材鋼板からの溶出成分としてFeを1質量%以上5質量%以下含むことがある。他の不可避的不純物としては、溶融めっき設備の溶出成分や溶融アルミめっき浴のインゴットの不純物に起因したCr、Mn、Zn、V、Ti、Sn、Ni、Cu、W、Bi、Mg、Caなどの元素が挙げられ、これらの元素を1質量%未満含むことがある。
すなわち、本実施形態に係るAl系めっき層14の化学組成(平均化学組成)は、質量%で、Al:80~97%、Si:2~15%、Fe:1~15%、Cr:0%以上1%未満、Mo:0%以上1%未満、Zn:0%以上1%未満、V:0%以上1%未満、Ti:0%以上1%未満、Sn:0%以上1%未満、Ni:0%以上1%未満、Cu:0%以上1%未満、W:0%以上1%未満、Bi:0%以上1%未満、Mg:0%以上1%未満、Ca:0%以上1%未満を含有し、残部は不純物であるめっき層であってもよい。ここで、前述の通り溶融アルミめっき浴では、不可避的にFeを1質量%以上5質量%以下含むことがあるのに対し、Al系めっき層にはアルミ-鉄系合金層が形成されるため、Feの割合が高まる。そのため、Al系めっき層14の化学組成はFe:1~15%であっても良い。
上記アルミ-鉄系合金層の金属組織としては、AlとFeの2元合金であるθ相(FeAl)、η相(FeAl)、ζ相(FeAl)、FeAl、FeAl、Al固溶系のBCC相(α2、α)などが挙げられ、これらのめっき相の組み合わせでアルミ-鉄系合金層が構成される。Siを含有する場合のアルミ-鉄系合金層の金属組織としては、τ1相(AlFeSi)、τ2相(AlFeSi)、τ3相(AlFeSi)、τ4相(AlFeSi)、τ5相(AlFeSi)、τ6相(AlFeSi)、τ7相(AlFeSi)、τ8相(AlFeSi)、τ10相(AlFe1.7Si)、τ11相(AlFeSi)などが挙げられ(ただし、各相は化学量論的な組成にならない場合がある。)、アルミ-鉄系合金層の金属組織は、主としてτ5相、又は、θ相で構成されることが多い。
また、上記Al系めっき層の片面当たりの付着量は、予め一方の面のAl系めっき層をシールで保護した上で、JIS G 3314:2019 JB.3の方法(水酸化ナトリウム-ヘキサメチレンテトラミン・塩酸剥離重量法)を用いて測定する。
<明度>
以下で、図1を参照しながら本願で重要な、明度について説明する。かかる明度は、JIS Z8781-4:2013の3.3に規定された、CIE1976明度指数L(CIE 1976 lightness)であり、以下、単に「明度」又は「明度L」という。
第一のAl系めっき鋼板1の表面の明度Lについて、第二のAl系めっき鋼板2と接する側の表面1aにおいてL1aと表記し、第二のAl系めっき鋼板2と接しない側の表面1bにおいてL1bと表記するものとする。更に、第二のAl系めっき鋼板2の表面の明度Lについて、第一のAl系めっき鋼板1と接しない側の表面2bにおいてL2bと表記するものとする。その上で、L1=0.5×(L1a+L1b)、L2=0.5×(L1b+L2b)と定義する。この場合に、ホットスタンプ用重ね合わせブランク4は、炭素系黒色皮膜がどのように設けられているかに応じて、以下の(A)又は(B)の何れかの条件を満足する。
(A)第二のAl系めっき鋼板において、第一のAl系めっき鋼板と接しない側のAl系めっき層の上層に炭素系黒色皮膜を有する場合、Lbが、40以上60以下であり、かつ、L1が、(Lb+20)以上80以下である。
(B)第二のAl系めっき鋼板において、第一のAl系めっき鋼板と接しない側のAl系めっき層の上層に炭素系黒色皮膜を有し、かつ、第一のAl系めっき鋼板において、第二のAl系めっき鋼板と接しない側のAl系めっき層の上層に、炭素系黒色皮膜を有する場合、Lbが、20以上40未満であり、L1が、(Lb+20)以上60以下である。
ここで、L1とは、ホットスタンプ用重ね合わせブランク4における、重ね合わされていない部分(一枚部4b)の平均のAl系めっき層の表面の明度を意味している。また、Lbとは、ホットスタンプ用重ね合わせブランクにおける、重ね合わせ部4aの平均のAl系めっき層の表面の明度を、意味している。すなわち、Lb=0.5×(L1b+L2b)であり、L1=0.5×(L1a+L1b)である。
[Lb、L1]
明度は、その値が低いほど、アルミめっき鋼板においてホットスタンプ時の加熱の際の昇温速度が増加する。これは、明度は、その値が低いほど、アルミめっき鋼板の表面が黒色化していることを示唆するため、熱を吸収し易い特性が得られているためと考えられる。逆に、一枚部では、重ね合わせ部に比べ板厚が薄いため、昇温が早く、過剰な加熱時間となる。このことから、一枚部では、明度を高くして、熱の吸収を抑制することが重要である。すなわち、板厚の厚い重ね合わせ部では、表面の明度を低くし、一枚部では、逆に表面の明度を高くすることが重要である。
更に、Al系めっき鋼板を用いることで、銀白色の金属光沢を持った表面に起因して、高い明度を得ることが出来ること、及び、Al系めっき層の厚み(Al系めっき層の付着量と考えることもできる。)を大きくすることで、めっきの合金化が表面まで到達することで生じるめっき表面の黒色化を抑制することができ、ホットスタンプの加熱中でも高い明度を維持できること、をそれぞれ見出した。また、Al系めっき鋼板の上層に炭素系黒色皮膜を用いることで、明度を下げることが出来る。このように、Al系めっき鋼板に用いるAl系めっき層と、炭素系黒色皮膜とを適切に制御することで、明度を所望の値に調整することが可能である。
(A)の場合、Lbは、40以上60以下であり、かつ、L1は、(Lb+20)以上80以下である。つまり、Lbは式(a)を満足し、L1は式(b)を満足する。
40≦Lb≦60 ・・・式(a)
(Lb+20)≦L1≦80 ・・・式(b)
bが60超である場合、重ね合わせ部におけるホットスタンプ時の加熱の際の昇温速度の改善が十分ではない。そのため、Lbは、60以下とする。Lbは、好ましくは58以下であり、より好ましくは56以下であり、更に好ましくは54以下である。
一方、Lbが40未満である場合、上記のような効果が飽和することに加え、炭素系黒色皮膜を厚く形成するために、図1の重ね合わせブランク4を製造する際のスポット溶接3でチリが発生し易くなり、ブランクを制作できない場合がある。また、炭素系黒色皮膜の膜厚が厚くなると、皮膜が剥離する場合があり、ホットスタンプ設備を汚し工業的に好ましくないことと共に、ホットスタンプの加熱後に所望の昇温速度を得られない可能性がある。そのため、Lbは、40以上とする。Lbは、好ましくは42以上であり、より好ましくは44以上であり、更に好ましくは46以上である。
また、L1が(Lb+20)未満である場合、重ね合わせ部と比較して、一枚部が過剰な加熱時間となり、スポット溶接性が低下する。そのため、L1は、(Lb+20)以上とする。L1は、好ましくは(Lb+22)以上、より好ましくは(Lb+24)以上である。
一方、L1が80超である場合、加熱時間が短くなり過ぎる結果、母材鋼板のAc3点を超えずに、衝突特性が低下する。そのため、L1は、80以下とする。L1は、好ましくは78以下であり、より好ましくは76以下である。
(B)の場合、Lbは、20以上40以下であり、かつ、L1は、(Lb+20)以上60以下である。つまり、Lbは式(A)を満足し、L1は式(B)を満足する。
20≦Lb<40 ・・・式(A)
(Lb+20)≦L1≦60 ・・・式(B)
bが40超である場合、昇温速度の改善が十分ではない。そのため、Lbは、40以下とする。Lbが40以下となることで、重ね合わせ部のホットスタンプの加熱の昇温速度が更に改善する。更には、前述の(A)の場合と異なり、第二のAl系めっき鋼板において、第一のAl系めっき鋼板と接しない側のAl系めっき層の上層に炭素系黒色皮膜を有し、かつ、第一のAl系めっき鋼板において、第二のAl系めっき鋼板と接しない側のAl系めっき層の上層に、炭素系黒色皮膜を有するため、皮膜の厚みの過剰な形成を抑制できる。その結果、前述した、図1の重ね合わせブランク4を造る際のスポット溶接3で、チリの発生を抑制できる。Lbは、好ましくは38以下であり、より好ましくは36以下であり、更に好ましくは34以下である。
一方、Lbが20未満である場合、上記のような効果が飽和することに加え、炭素系黒色皮膜を厚く形成するために、図1の重ね合わせブランク4を製造する際のスポット溶接3でチリが発生し易くなり、ブランクを制作できない場合がある。そのため、Lbは、20以上とする。Lbは、好ましくは22以上であり、より好ましくは24以上である。
また、L1が(Lb+20)未満である場合、重ね合わせ部と比較して、一枚部が過剰な加熱時間となり、スポット溶接性が低下する。そのため、L1は、(Lb+20)以上とする。L1は、好ましくは(Lb+22)以上であり、より好ましくは(Lb+24)以上である。
一方、L1が80超である場合、加熱時間が短くなり過ぎる結果、母材鋼板のAc3点を超えずに、衝突特性が低下する。そのため、L1は、80以下とする。L1は、好ましくは78以下であり、より好ましくは76以下である。
明度の測定方法としては、例えば試験片を30×30mmを切り出し、分光測色計(スガ試験機製SC-T-GV5、正反射光を含む)を用いて、測定ビームの直径φ15mmで測定することができる。
<炭素系黒色皮膜>
図3は、本実施形態に係る母材鋼板15の表面にAl系めっき層14が設けられ、更にその上層に炭素系黒色皮膜17が設けられたAl系めっき鋼板16の片面側の層構造を、模式的に示したものである。
第二のAl系めっき鋼板2において、第一のAl系めっき鋼板1と接しない側の表面2bに位置するAl系めっき層の上層に、炭素系黒色皮膜17が設けられる。Al系めっき鋼板では、銀白色の金属光沢を持った表面となるため、高い明度となる。ここで、Al系めっき鋼板の上層に炭素系黒色皮膜を設けることで、明度を下げることが出来る。特に、炭素系黒色皮膜17は、ホットスタンプ時の加熱中の酸化反応によって燃焼することで焼失され、CO等として排出される。その結果、炭素系黒色皮膜17が残存することによる重ね合わせホットスタンプ成形部品のスポット溶接性の低下を、抑制できる。
なお、炭素系黒色皮膜を用いないで、明度を下げる手段としては、約700~800℃で加熱することで、めっきを表面まで合金化する方法が挙げられる。しかしながら、母材鋼板中に炭化物が析出するため、ホットスタンプ後の衝突特性が低下し、ホットスタンプ用重ね合わせブランクの材料として用いるのは、好ましくない。また、炭素系黒色皮膜を用いないで、明度を下げる他の手段としては、Al系めっき層の上層に、Zn、Zn-Ni、Zn-Feの電気めっきを施す方法や、Al系めっき鋼板を酸洗処理する方法が挙げられる。しかしながら、いずれもホットスタンプの加熱後にAl系めっき層の表面の酸化物を増加させるため、スポット溶接でのチリ発生に繋がり、注意が必要である。
更に、第一のAl系めっき鋼板1において、第二のAl系めっき鋼板2と接しない側の表面1bに位置するAl系めっき層の上層に、炭素系黒色皮膜を設けることが好ましい。第一のAl系めっき鋼板においても明度を減少させることで、より一層、重ね合わせ部の昇温速度向上が図られる。
なお、第二のAl系めっき鋼板2において、第一のAl系めっき鋼板1と接する側の表面2aに位置する表面、及び、第一のAl系めっき鋼板1において、第二のAl系めっき鋼板2と接する側の表面1aに位置する表面には、いずれも炭素系黒色皮膜を設けないことが好ましい。鋼板と接する側では皮膜の燃焼に必要な酸素の侵入が阻害されるため、未燃焼の炭素系黒色皮膜が残存し、ホットスタンプ成形体のスポット溶接性を低下させる要因となる。
また、銀白色の金属光沢を持ったAl系めっき鋼板の明度を更に増加させる手段としては、例えば、Al系めっき鋼板を500~600℃程度に加熱することで表面を酸化することにより、白色化させることが挙げられる。これにより、Al系めっき鋼板の表面の明度を更に増加させることが可能である。
かかる炭素系黒色皮膜の膜厚は、0.3μm以上10μm以下であることが好ましい。炭素系黒色皮膜の膜厚を0.3μm以上とすることで、明度の増加を抑制して、重ね合わせ部の昇温速度を増加させることが可能となる。炭素系黒色皮膜の膜厚は、より好ましくは0.4μm以上であり、更に好ましくは、好ましくなる順に、0.5μm以上、0.6μm以上、0.7μm以上である。
一方、炭素系黒色皮膜の膜厚を10μm以下とすることで、経済性を担保しつつ明度を低下させることが可能となると共に、ホットスタンプの加熱後に皮膜を残存させずにスポット溶接性を担保することが可能となる。また、炭素系黒色皮膜の膜厚が10μmを超えると、皮膜が剥離する場合があり、設備を汚し工業的に好ましくないことと共に、ホットスタンプの加熱後に所望の昇温速度を得られない可能性がある。炭素系黒色皮膜の膜厚は、より好ましくは8μm以下であり、更に好ましくは、好ましくなる順に、6μm以下、5μm以下、4μm以下である。
炭素系黒色皮膜の膜厚は、めっきの断面を光学顕微鏡(例えば面積:100μm×100μm)で観察し(エッチング無し)、図3に示すようにアルミめっき層の上層の皮膜の厚みを測定することを3視野で実施し、3視野それぞれで測定した皮膜の厚みの平均値として求めることができる。この時、断面から皮膜を電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)で分析し、炭素含有量が30質量%以上の場合、炭素系黒色皮膜であると判断する。黒色の皮膜であることとは、表面からの明度L値が60以下であることから判断する。
[バインダー]
炭素系黒色皮膜には、Al系めっき層との密着性を高めるためのバインダーとして、選択的に、樹脂を含有することができる。樹脂の種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。
[炭素系黒色皮膜中にZn、Ti、Cu、Vの少なくとも何れか1種類以上含有]
第二のAl系めっき鋼板2の表面に施されたAl系めっき層の、更に上層に位置する炭素系黒色皮膜に対し、選択的に、Zn、Ti、Cu、又は、Vの少なくとも何れか1種類を、合計で0.1g/m以上3.0g/m以下を含有させることが好ましい。ここで示す付着量は、Zn、Ti、Cu、又は、Vとして単位面積当たりに付着する量を指す。Zn、Ti、Cu、及び、Vは、放射率を向上させることに加え、赤外線吸収が良好な酸化物を構成する元素である。そのため、かかる元素を含有する炭素系黒色皮膜を設けることで、重ね合わせブランクとして用いる場合に課題となる、昇温速度が遅い重ね合わせ部と、昇温速度が速い一枚部との昇温速度の違いを、抑制することができる。特に、上述の炭素系黒色皮膜17は、ホットスタンプ加熱中に焼失することと比較し、Zn、Ti、Cu、又は、Vは、ホットスタンプ加熱中でも残存する。そのために、かかる元素を含有する炭素系黒色皮膜は、高温での昇温速度向上に、より一層寄与することができる。また、Zn、Ti、Cu、及び、Vは、金属状態で含有させても、酸化物の状態で含有させてもいずれの状態でもよい。これは、昇温の途中仮定でいずれも酸化物となり、放射率向上に寄与するためである。
上記のような昇温速度の違いの抑制効果は、かかる元素の合計付着量を0.1g/m以上とすることで発現させることができる。そのため、炭素系黒色皮膜におけるかかる元素の合計付着量は、0.1g/m以上であることが好ましい。炭素系黒色皮膜におけるかかる元素の合計付着量は、より好ましくは、0.2g/m以上であり、更に好ましくは0.3g/m以上であり、より一層好ましくは0.5g/m以上である。
一方、炭素系黒色皮膜におけるかかる元素の合計付着量を3.0g/m以下とすることで、上記のような昇温速度の違いの抑制効果を、飽和させずに発現させることが可能となる。また、Zn、Ti、Cu、又は、Vは、ホットスタンプ加熱後でも残存するものであるが、炭素系黒色皮膜におけるかかる元素の合計付着量を3.0g/m以下とすることで、ホットスタンプ成形品のスポット溶接性を保持させることが可能となる。炭素系黒色皮膜におけるかかる元素の合計付着量は、より好ましくは2.5g/m以下、更に好ましくは2.0g/m以下である。
Zn、Ti、Cu、及び、Vの付着量(含有量)は、例えば、蛍光X線分析装置(RIGAKU社製、ZSX Primus)を用いて表面から元素分析し、Zn、Ti、Cu、及び、Vの付着量を定量することで求めることができる。
以上述べた炭素系黒色皮膜17の処理方法としては特に限定されないが、例えば、水分散型のカーボンブラック(例えば、三菱化学社製RCF#52)、亜鉛酸化物(例えば、シーアイ化成社製、Nano Tek)又はチタン酸化物(例えば、シーアイ化成社製、Nano Tek)、銅酸化物(例えば、シーアイ化成社製、Nano Tek)、バナジウム酸化物(Hongwu International Group Ltd社製)を水に分散させた水系塗装液を準備し、上記溶融アルミめっき処理を実施した後に、ロールコーターで塗装し、乾燥焼き付け処理を行うことで製造することができる。または、アルミめっき鋼板に、Zn、Ti、CuもしくはVの金属を真空蒸着させる手段を用いて製造することができる。
なお、本実施形態に係る他の様態として、Al系めっき層の上に、上記炭素系黒色皮膜17と、Zn、Ti、Cu、又は、Vの少なくとも何れか1種類(より詳細には、金属状態のこれら元素、又は、これら元素の酸化物)を有する皮膜層17’の双方を備えていてもよい。この場合に、炭素系黒色皮膜17と、Zn、Ti、Cu、又は、Vの少なくとも何れか1種類を有する皮膜層17’の配置順序についても特に限定されるものではなく、炭素系黒色皮膜17がZn、Ti、Cu、又は、Vの少なくとも何れか1種類を有する皮膜層17’の上層に位置してもよいし、Zn、Ti、Cu、又は、Vの少なくとも何れか1種類を有する皮膜層17’が炭素系黒色皮膜17の上層に位置してもよい。
なお、Zn、Ti、Cu、又は、Vの少なくとも何れか1種類を有する皮膜層17’が炭素系黒色皮膜17の下層に位置した場合であっても、本実施形態に係る炭素系黒色皮膜17の膜厚であれば、蛍光X線は容易に炭素系黒色皮膜17を透過する。そのため、Zn、Ti、Cu、又は、Vの少なくとも何れか1種類を有する皮膜層17’が炭素系黒色皮膜17の下層に位置した場合であっても、蛍光X線分析法により、Zn、Ti、Cu、及び、Vの付着量を測定することが可能である。
また、かかる炭素系黒色皮膜17や、Zn、Ti、Cu、又は、Vの少なくとも何れか1種類を含有する皮膜層17’は、母材鋼板の両面に設けられてもよいが、母材鋼板において、ホットスタンプの加熱時における熱源に露出する側の面にのみ設けられることがより好ましい。
<溶接>
第一のAl系めっき鋼板1と第二のAl系めっき鋼板2とを重ね合わせて溶接されるホットスタンプ用重ね合わせブランクにおいて、溶接の種類としては、スポット溶接、シーム溶接、ろう付け溶接、レーザー溶接、プラズマ溶接、アーク溶接などが選択できる。ここで、重ね合わせ部を良好に接触させるという点で、重ね合わせ部の内部までを複数の点で接触させ、かつ、鋼板-鋼板間に加圧を掛けて直接接合することができるスポット溶接が好ましい。
(2.重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法)
本実施形態に係るホットスタンプ成形体の製造方法では、図1に示すように、上述のホットスタンプ用重ね合わせブランク4を、加熱し、当該加熱の直後に成形するに際し、重ね合わせ部の少なくとも一部に曲げ加工の施された曲げ部を設けることで、本実施形態の重ね合わせホットスタンプ成形体12を製造する。
本実施形態において特に重要な事項として、加熱時間、及び、加熱温度を精密に制御することが挙げられる。図5の比較例に示すように、920℃でホットスタンプ用重ね合わせブランクを加熱した場合に、一枚部の昇温時間に比べ、板厚の厚い重ね合わせ部の昇温時間は遅いことが分かる。そのため、ホットスタンプでは、ブランクをオーステナイト化温度以上に加熱する目的、及び、ブランクの板温を均一化する目的から、加熱の生産性が遅いという問題が生じる。更に、重ね合わせ部の昇温時間に合わせて加熱時間を長時間確保すると、昇温の速い一枚部は、過剰に加熱時間を経ることとなる。その結果、アルミめっきの合金化反応が過剰に進み、重ね合わせホットスタンプ成形体のスポット溶接性が低下するという問題が生じる。
そのため、図6の発明例に示すように、上記と同様の920℃でホットスタンプ用重ね合わせブランクを加熱する際に、図1の重ね合わせブランクの面積の小さな第二のAl系めっき鋼板2の、重ね合わされてない側の面2bの表面に、炭素系黒色皮膜を設けることで明度を減少させ、昇温速度を向上させることが出来る。この時、昇温の速い一枚部の過剰な加熱時間も短縮され、アルミめっきの合金化反応も抑制され、重ね合わせホットスタンプ成形体のスポット溶接性が改善する。
(A)の場合、重ね合わせブランクを、温度(雰囲気温度)T1(℃)の加熱炉で加熱する際に、下記の式(d)~式(f)により算出される、t1(分)以上、(t2+△t2)(分)以下の時間で、重ね合わせブランクを加熱した後、加熱されたブランクを金型により成形すると同時に、金型(必要に応じて、成形されたブランクの冷却速度を高めるために、金型内部を通過する冷却水により、金型が冷却される。)からの抜熱などにより、成形されたブランクを冷却(急冷)する。これにより、耐衝突特性に優れた重ね合わせホットスタンプ成形体12を得る。ここで、時間t1、t2は、下記の式(d)及び式(e)のように、時間t1、t2に関する2次方程式の解として定まるものであるが、t1は下記式(d)の2次方程式の解のうち小さい方の値であり、t2は下記式(e)の2次方程式の解のうち小さい方の値である。
T1=A1・t1+B1・t1+C1 ・・・式(d)
A1=-0.3645d+6.343d-43.822d
+151.71d-268.89d+205.68 ・・・式(d-1)
B1=+2.9347d-47.313d+298.84d
-936.35d+1518.1d-1197.6 ・・・式(d-2)
C1=1381.57 ・・・式(d-3)

T1=A2・t2+B2・t2+C2 ・・・式(e)
A2=-0.4367d1+7.3789d1-49.107d1
+161.95d1-269.2d1+188.97 ・・・式(e-1)
B2=+1.8594d1-31.034d1+204.62d1
-675.11d1+1159.2d1-964.59 ・・・式(e-2)
C2=1367.39 ・・・式(e-3)
△t2=2.6960×1013×e(-0.03205×T1) ・・・式(f)
ここで、上記式(d)の2次方程式の解のうち小さい方の値として定まるt1は、より詳細には、以下の式(d’)から算出される。
t1=[-B1-{B1-(4×A1×(C1-T1))}0.5]/2×A1
・・・式(d’)
同様に、上記式(e)の2次方程式の解のうち小さい方の値として定まるt2は、より詳細には、以下の式(e’)から算出される。
t2=[-B2-{B2-(4×A2×(C2-T1))}0.5]/2×A2
・・・式(e’)
なお、上記の各関係式を得るにあたって、本発明者らは、重ね合わせブランクを構成する鋼板の板厚を変化させながら、ホットスタンプにおける加熱プロセスについて、実際の操業条件を加味しながら、輻射熱で昇温される伝熱方程式、及び、めっき合金化反応に関する拡散モデルに基づいて、数値演算シミュレーションを実施した。かかるシミュレーション結果から、昇温時間及び拡散層の形成時間に関する知見を得ることができ、得られた知見に基づき、加熱温度と加熱時間とが満たすべき条件を定式化した。その定式化の結果が、上記の各関係式である。
加熱時間tが、前述のt1(分)未満である場合には、加熱が十分で無いために、ホットプレス後の重ね合わせ部のマルテンサイト変態が十分では無くなる結果、材料硬度が低下して、部品の耐衝突特性が低下する。また、加熱時間tが、前述の(t2+△t2)(分)超である場合には、一枚部の加熱が過剰に長時間となる結果、アルミめっきの合金化反応が過剰に進み、スポット溶接性が低下する。
ここで、加熱時間を(t2+△t2)以下とすると同時に、下記式(f’)を用いて、加熱時間を(t2+△t2’)以下とすることが好ましい。これにより、よりアルミめっきの合金化反応が抑制されて、スポット溶接性がより向上する。なお、△t2’≦△t2であるため、図7のように、加熱時間が(t2+△t2’)以下であれば、加熱時間は必ず(t2+△t2)以下となる。このため、加熱時間を(t2+△t2’)以下とするのであれば、式(f)にかかわる計算等を省略してもよい。
△t2’=1.498×1013×e(-0.03198×T1) ・・・式(f’)
図7で図示する通り、加熱時間をt1(分)(下限)以上、t2+△t2(上限)以下に制御することで、ホットスタンプ生産性、スポット溶接性に優れた、重ね合わせホットスタンプ成形体を得ることができる。加熱時間tの上限を、(t2+△t2)とすることで、従来、予備試験等の結果を踏まえて安全マージンを確保しつつ定めていた加熱時間の無駄な長期化を回避して、加熱時間tの上限を論理的に決定できるようになり、ひいては、更なる生産性の向上を図ることが可能となる。また、加熱時間tの上限が(t2+△t2)と定まることで、製造されるホットスタンプ成形体においても、拡散層の厚みの増加を抑制することが可能となり、スポット溶接性の向上に寄与することとなる。
好ましくは、(B)の場合のように、図1の重ね合わせブランクの面積の小さな第二のAl系めっき鋼板2の、重ね合わされてない側の面2bの表面に対し炭素系黒色皮膜を設けることで、明度を減少させ、更に、第一のAl系めっき鋼板1の、重ね合わされていない側の面1bの表面に対しても、炭素系黒色皮膜を設けることで、明度を減少させる。これにより、ホットスタンプにおける加熱時の昇温速度を、更に向上させることが出来る。
上記の面2bにおける炭素系黒色皮膜の膜厚と、面1bにおける炭素系黒色皮膜の膜厚とは、同じでも良いし、異なっていても良い。この時、昇温の速い一枚部の過剰な加熱時間も短縮され、アルミめっきの合金化反応も抑制され、重ね合わせホットスタンプ成形体のスポット溶接性が改善する。
この場合、重ね合わせブランクを、温度(雰囲気温度)T3(℃)の加熱炉で、時間t(分)で加熱する際に、下記の式(D)~式(F)により算出される、t(分)以上、(t4+△t4)(分)以下の時間で、重ね合わせブランクを加熱した後、加熱されたブランクを金型により成形すると同時に、金型(必要に応じて、成形されたブランクの冷却速度を高めるために、金型内部を通過する冷却水により、金型が冷却される。)からの抜熱などにより、成形されたブランクを冷却(急冷)する。これにより、耐衝突特性に優れた重ね合わせホットスタンプ成形体12を得る。ここで、時間t3、t4は、下記の式(11)及び式(15)のように、時間t3、t4に関する2次方程式の解として定まるものであるが、t3は下記式(D)の2次方程式の解のうち小さい方の値であり、t4は下記式(E)の2次方程式の解のうち小さい方の値である。
T3=A3・t3+B3・t3+C3 ・・・式(D)
A3=-0.5693d+9.8168d-67.002d
+228.11d-394.85d+291.77 ・・・式(D-1)
B3=+3.0472d-49.829d+320.43d
-1026.6d+1706.7d-1374.3 ・・・式(D-2)
C3=1394.21 ・・・式(D-3)

T3=A4・t4+B4・t4+C4 ・・・式(E)
A4=-0.3645d1+6.343d1-43.822d1
+151.71d1-268.89d1+205.68 ・・・式(E-1)
B4=+2.9347d1-47.313d1+298.84d1
-936.35d1+1518.1d1-1197.6 ・・・式(E-2)
C4=1381.57 ・・・式(E-3)
△t4=2.6960×1013×e(-0.03205×T3) ・・・式(F)
ここで、上記式(D)の2次方程式の解のうち小さい方の値として定まるt3は、より詳細には、以下の式(D’)から算出される。
t3=[-B3-{B3-(4×A3×(C3-T3))}0.5]/2×A3
・・・式(D’)
同様に、上記式(E)の2次方程式の解のうち小さい方の値として定まるt4は、より詳細には、以下の式(E’)から算出される。
t4=[-B4-{B4-(4×A4×(C4-T3))}0.5]/2×A4
・・・式(E’)
なお、上記の各関係式を得るにあたっても、本発明者らは、重ね合わせブランクを構成する鋼板の板厚を変化させながら、ホットスタンプにおける加熱プロセスについて、実際の操業条件を加味しながら、輻射熱で昇温される伝熱方程式、及び、めっき合金化反応に関する拡散モデルに基づいて、数値演算シミュレーションを実施した。かかるシミュレーション結果から、昇温時間及び拡散層の形成時間に関する知見を得ることができ、得られた知見に基づき、加熱温度と加熱時間とが満たすべき条件を定式化した。その定式化の結果が、上記の各関係式である。
加熱時間tが、前述のt3(分)未満である場合には、加熱が十分で無いために、ホットプレス後の重ね合わせ部のマルテンサイト変態が十分では無くなる結果、材料硬度が低下して、部品の耐衝突特性が低下する。また、加熱時間tが、前述の(t4+△t4)(分)超である場合には、一枚部の加熱が過剰に長時間となる結果、アルミめっきの合金化反応が過剰に進み、スポット溶接性が低下する。
ここで、加熱時間を(t4+△t4)以下とすると同時に、下記式(F’)を用いて、加熱時間を(t4+△t4’)以下とすることが好ましい。これにより、よりアルミめっきの合金化反応が抑制され、スポット溶接性がより向上する。なお、△t4’≦△t4であるため、図7のように、加熱時間が(t4+△t4’)以下であれば、加熱時間は必ず(t4+△t4)以下となる。このため、加熱時間を(t4+△t4’)以下とするのであれば、式(F)にかかわる計算等を省略してもよい。
△t4’=1.498×1013×e(-0.03198×T3) ・・・式(F’)
図8で図示する通り、加熱時間をt3(分)(下限)以上、t4+△t4(上限)以下に制御することで、ホットスタンプ生産性、スポット溶接性に優れた、より好ましい、重ね合わせホットスタンプ成形体を得ることができる。加熱時間tの上限を、(t4+△t4)とすることで、従来、予備試験等の結果を踏まえて安全マージンを確保しつつ定めていた加熱時間の無駄な長期化を回避して、加熱時間tの上限を論理的に決定できるようになり、ひいては、更なる生産性の向上を図ることが可能となる。また、加熱時間tの上限が(t4+△t4)と定まることで、製造されるホットスタンプ成形体においても、拡散層の厚みの増加を抑制することが可能となり、スポット溶接性の向上に寄与することとなる。
なお、上記加熱温度とは、重ね合わせ部の鋼板の最高到達温度のことを意味する。加熱方法としては、電気炉、ガス炉、遠赤外炉、近赤外炉などによる加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱などを例示することができる。ここで、重ね合わせブランクは面積が大きくなり易く、大型のブランクを均一な温度で加熱できる点で、電気炉、ガス炉、遠赤外炉が好ましい。
上記加熱温度は、一般的に、母材鋼板がオーステナイト化されるAc3点(例えば、800℃又は840℃)以上1000℃以下の温度範囲であることが好ましい。加熱温度は、鋼板中の炭化物を溶解することで焼き入れ性を向上させるため、及び、加熱時間の短縮(生産性向上)のためから、より好ましくは860℃以上であり、更に好ましくは880℃以上、890℃以上、又は、900℃以上である。また、加熱温度は、重ね合わせ部と一枚部の昇温速度を均一化できる点で、より好ましくは950℃以下であり、更に好ましくは930℃以下である。
また、上記加熱時間とは、重ね合わせブランクを、加熱炉の中に挿入した時刻から、加熱炉から抽出される時刻までの時間を意味する。
重ね合わせブランクを加熱した後から、プレス機の金型が成形のため下降し、重ね合わせブランクと金型とが接触するまでの時間は、3秒以上20秒以下であることが好ましい。オーステナイト化温度まで加熱されたブランクが、金型や水などの冷媒を用いて冷却を行うことによりマルテンサイト変態される結果、高強度となって、耐衝突特性に優れた重ね合わせホットスタンプ成形体が得られる。そのため、重ね合わせブランクを加熱した直後に冷却することが好ましいことから、かかる時間は、0秒であっても良い。ただし、実際には、ブランクを搬送するために3秒以上の時間を要することが多い。また、かかる時間が20秒超である場合には、ブランクが冷却されてオーステナイトからフェライトへと変態が始まり、ブランクにおいて、プレス成形後にマルテンサイト組織が得られない可能性がある。
上記のような成形時には、金型や水などの冷媒を用いて冷却を行うが、その冷却の速度は、30℃/秒以上であることが好ましく、50℃/秒以上であることがより好ましい。冷却速度(℃/秒)の算出方法としては、以下のようにすればよい。すなわち、前述した重ね合わせブランクと金型とが接触した後から、金型が下死点で保持された後に金型が上昇を始めるまでの時間k(秒)を求め、重ね合わせブランクと金型とが接触する前のブランク温度C1を放射温度計で測定し、金型が下死点で保持され金型が上昇した後のブランク温度C2を放射温度計で測定する。得られた結果を用いて、平均冷却速度(C1-C2)/k(℃/秒)を算出すればよい。
(3.重ね合わせホットスタンプ成形体)
上記のようにして製造される本実施形態に係る重ね合わせホットスタンプ成形体12は、板厚がT1(mm)である第一のAl-Fe系合金めっき鋼板と、第一のAl-Fe系合金めっき鋼板上に重ね合わされて溶接されており、第一のAl-Fe系合金めっき鋼板よりも面積が小さく、かつ、板厚がT2(mm)である、少なくとも一枚の第二のAl-Fe系合金めっき鋼板と、を備える。
なお、ホットスタンプ成形体12は、上述のとおり、第一のAl系めっき鋼板1と第二のAl系めっき鋼板2とを重ね合わせて溶接されるホットスタンプ用重ね合わせブランク4が加熱された後、更に曲げ加工等が施されることにより、製造されている。このため、ホットスタンプ成形体12を構成する第一のAl-Fe系合金めっき鋼板及び第二のAl-Fe系合金めっき鋼板は、必ずしも平坦な形状でない。例えば、図1のように、第一のAl-Fe系合金めっき鋼板には、頭頂部の曲げ部8などを有し、第二のAl-Fe系合金めっき鋼板には、頭頂部の曲げ部8とフランジ部の曲げ部9等を有する。「鋼板」という名称を用いているが、必ずしも平坦な形状ではない。本実施形態においては、ホットスタンプ成形体12を構成する鋼板と、重ね合わせブランク4を構成する鋼板との区別のため、便宜的に、前者を合金めっき鋼板(例えば、Al-Fe系合金めっき鋼板)といい、後者を(「合金」が付記されない。)めっき鋼板(例えば、Al系めっき鋼板)という。
重ね合わせホットスタンプ成形体12における第一のAl-Fe系合金めっき鋼板は、第一の鋼板の両面に、両面での平均めっき厚がK1(μm)であるAl-Fe系合金めっき層を有するAl-Fe系合金めっき鋼板である。また、重ね合わせホットスタンプ成形体12における第二のAl-Fe系合金めっき鋼板は、第一のAl-Fe系合金めっき鋼板と接しない側の表面におけるめっき厚がK2(μm)であるAl-Fe系合金めっき層を有するめっき鋼板である。なお、第二のAl-Fe系合金めっき鋼板において、第一のAl-Fe系合金めっき鋼板と接する側の表面におけるAl-Fe系合金めっき層のめっき厚については、特に規定するものではない。
ここで、重ね合わせホットスタンプ成形体12の第一のAl-Fe系合金めっき鋼板におけるAl-Fe系合金めっき層の平均めっき厚K1、K2は、それぞれ独立に、25μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、35μm以上であることが更に好ましい。
一方、第一のAl-Fe系合金めっき鋼板におけるAl-Fe系合金めっき層の平均めっき厚K1、K2は、それぞれ独立に、60μm以下であることが好ましく、55μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。
第一のAl-Fe系合金めっき鋼板、第二のAl-Fe系合金めっき鋼板のAl-Fe系合金めっき層のめっき厚がそれぞれ上記のような範囲内となることで、重ね合わせホットスタンプ成形体12のスポット溶接性を、良好な状態に保持することが可能となる。
上記のめっき厚は、めっきの断面を光学顕微鏡(面積:100μm×100μm)でナイタールエッチング後に観察し、めっき厚みを測定することを3視野で実施し、3視野それぞれで測定しためっき厚みの平均値として求めることができる。なお、第一の鋼板のめっき厚については、一枚部の位置4bと第二のAl-Fe系合金めっき鋼板と接する重ね合わせ部4aの位置とがあるが、昇温速度が速くホットスタンプにおける加熱時間が最も長くなりスポット溶接性が劣化し易いという点から、第一のAl-Fe系合金めっき鋼板のめっき厚は、一枚部から測定する。
Al-Fe系合金めっき層は、ホットスタンプ時の加熱によってAl系めっき層にFeが表面まで拡散した結果形成された層(換言すれば、Al及びFeを少なくとも含有する合金めっき層)である。Al-Fe系合金めっき層は、AlとFeの化合物層であるθ相(FeAl)、η相(FeAl)、ζ相(FeAl)、FeAl、FeAl、Al固溶Feなどの相の組み合わせで構成される。また、めっき中にSiを含有する場合のAl-Fe系合金めっき層は、τ1相(AlFeSi)、τ2相(AlFeSi)、τ3相(AlFeSi)、τ4相(AlFeSi)、τ5相(AlFeSi)、τ6相(AlFeSi)、τ7相(AlFeSi)、τ8相(AlFeSi)、τ10相(AlFe1.7Si)、τ11相(AlFeSi)も含み(ただし、各相は化学量論的な組成にならない場合がある。)、Al-Fe系合金めっき層は、主としてτ1相(AlFeSi)、η相(FeAl)、FeAl、Al固溶Feの何れか又はその複数の相で構成されることが多い。
特に、ホットスタンプ時の加熱によって、Al系めっき中のAlと母材鋼板中のFeは、相互拡散する。そのため、母材鋼板中へのAlの拡散によって形成される相として、母材鋼板側から順に、Alが固溶したFeのBCC相、FeAlの相を含んだ層が形成される。これらの相を含む層は、拡散層(Diffusion Layer)とも呼ばれる。ここで、かかる拡散層は、以下で説明するように、ナイタールエッチング処理後の断面を光学顕微鏡により観察することで、特定することが可能である。また、光学顕微鏡による観察で拡散層を特定できない場合には、断面を電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)で分析することで、拡散層を特定することが可能である。この際、かかるEPMA分析結果において、Al:30質量%以下、かつ、Fe:70質量%以上である層を、拡散層20とすればよい。
具体的には、図9、図10に示すように、重ね合わせホットスタンプ成形体18において、層19は、主としてη相、τ1相、FeAl相を含む層であり、拡散層20が含まれる。Al-Fe系合金めっき層の厚みは、層19の厚みとして測定され、拡散層の厚みは、層20の厚みとして測定される。例えば、断面から光学顕微鏡で、ナイタールエッチング後に観察した例を図10に示す。
第一のAl-Fe系合金めっき鋼板の、第二のAl-Fe系合金めっき鋼板と重ね合わされていない部分の、Al-Fe系合金めっき層中に含まれる拡散層の厚みをD1(μm)と表記し、第二のAl-Fe系合金めっき鋼板の、Al-Fe系合金めっき層中に含まれる拡散層の厚みをD2(μm)と表記する。本実施形態に係るホットスタンプ成形体12では、ホットスタンプの加熱時における加熱時間の上限を、(t2+△t2)(又は、t4+△t4)という短い時間に定めているため、拡散層の厚みD1(μm)、D2(μm)を、それぞれ独立に、3μm以上10μm以下に低減することが可能となっている。拡散層の厚みが3μm以上である場合、めっきを十分に合金化させたことを意味し、表面に合金化していないAlが残存することを防止して、スポット溶接性の低下を防止することが可能となる。拡散層の厚みは、より好ましくは4μm以上であり、更に好ましは5μm以上である。一方、拡散層の厚みを10μm以下とすることで、スポット溶接性の低下を防止することが可能となる。拡散層の厚みは、より好ましくは9μm以下であり、更に好ましくは8μm以下である。これにより、本実施形態に係るホットスタンプ成形体12では、一枚部のスポット溶接性が向上している。
Al-Fe系めっき層のスポット溶接性は、Al-Feの2元系合金(FeAl、FeAl、FeAl)によって抑制されることが知られており、Al固溶Fe層が薄くなればAl-Feの2元系合金が厚くなる関係にある。
Al-Fe系合金めっき層のめっき厚K1、K2、及び、拡散層の厚みD1、D2の特定方法としては、めっき断面を100μm×100μmの視野にてナイタールエッチング処理を実施し、光学顕微鏡によりその断面を観察する。図10に示すように、光学顕微鏡によりめっき厚及び拡散層の厚みを測定する。より詳細には、少なくとも3箇所において、めっき断面を上記の方法により観察し、各観察箇所のAl-Fe系合金めっき層19の厚みや拡散層20の厚みを特定する。その後、得られた厚みの平均値を算出して、得られた平均値を、Al-Fe系合金めっき層19や拡散層20の厚みとすればよい。ただし、光学顕微鏡による観察で拡散層を特定できない場合、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)による分析を行い、Al:30質量%以下、かつ、Fe:70質量%以上である層の厚さを、少なくとも3箇所で測定し、その平均値を拡散層20の厚さとする。
なお、上記のような拡散層は、Al系めっき層内での内方拡散により形成される層であるため、拡散層の厚みD1、D2は、ほぼホットスタンプの加熱条件の影響だけが強く反映され、初期めっき厚の影響を受けない。また、たとえ第二のAl系めっき鋼板のめっき付着量を多くしたとしても、加熱速度が遅い第二のAl-Fe系合金めっき鋼板の拡散層の厚さD2を、第一のAl-Fe系合金めっき鋼板の拡散層の厚さD1とほぼ同じ値にすることはできない。
また、Al-Fe系合金めっき層のめっき厚K1、K2は、ホットスタンプ前のめっき付着の影響だけでなく、ホットスタンプの加熱条件(加熱温度、保持時間)の影響を受ける。また、Al-Fe系合金めっき層のめっき厚K1、K2は、これらの影響のみならず、高温での加熱時間に影響を及ぼす板厚と、明度の影響も受けるため、初期めっき厚のみに影響するわけではない。
本実施形態の重ね合わせホットスタンプ成形体12を自動車部品として用いる際には、一般的に、溶接、リン酸系化成処理、電着塗装などが施されて使用される。従って、例えば、リン酸系化成処理によるリン酸亜鉛皮膜及びリン酸皮膜、並びにその表面に電着塗装による5μm以上50μm以下の有機系皮膜などがホットスタンプ成形体12の表面に形成される場合がある。電着塗装の後に外観品位や耐食性向上のため、中塗り、上塗り等の塗装が更に施されることもある。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
表1に示す第一のAl系めっき鋼板1、第二のAl系めっき鋼板2を以下に述べる方法で作製し、図1の通りスポット溶接3することで、ホットスタンプ用重ね合わせブランク4を作製した。第一のAl系めっき鋼板1として、通常の熱延工程及び冷延工程を経た冷延鋼板(化学組成:質量%で、C:0.23%、Si:0.30%、Mn:1.2%、P:0.010%、S:0.002%、Cr:0.25%、Ti:0.020%、Al:0.042%、N:0.0030%、B:0.0020%、残部:Fe及び不純物)を供試材料として、ゼンジミア式溶融アルミめっき処理ラインにてアルミめっき処理を両面に行った。めっき後、ガスワイピング法により、めっき付着量を片側当たり80g/mに調整し、その後冷却して、第一のAl系めっき鋼板1を作製した。この際のめっき浴組成は、89質量%Al-9質量%Si-2質量%Feであった。
水準A15については、第一のAl系めっき鋼板のAl系めっき鋼板の第二のAl系めっき鋼板と接する面1aについて酸洗(5%塩酸)することで、明度を下げる処理をした。水準A16については、第一のAl系めっき鋼板のAl系めっき鋼板の第二のAl系めっき鋼板と接する面1a及び接しない面1bの両方を、酸洗(5%塩酸)することで、明度を下げる処理をした。また、水準A17、A18については、550℃で加熱することで、表面のAl系めっき層を溶融化させ、明度を上げる処理をした。
第二のAl系めっき鋼板2も、第一のAl系めっき鋼板1と同様に作製し、炭素系黒色皮膜を膜厚0.5~8.0μmでAl系めっき表面に塗装した。
本ブランクを、表1の加熱温度にてホットスタンプ加熱することで重ね合わせ部の昇温速度を調査し、重ね合わせ部を表1の時間で加熱した後、8秒後に30℃/秒以上の冷速で金型冷却することで、重ね合わせホットスタンプ成形体12を得た。重ね合わされていない部分(一枚部)のフランジ部11を2枚切り出し、同種板組みでスポット溶接性を調査した。
表1における各水準は、本願発明例(以下、単に「発明例」と記載する。)をA2~A4、A7、A8、A11、A16、A17、A19、A20、A23~A25、A27とし、比較例をA1、A5、A6、A9、A10、A12~A15、A18、A21、A22、A26、A28~A30として示した。
鋼板の板厚t1、t2は、上述の通り、JIS B7502:2016に準拠したマイクロメーターを用いて測定した。また、明度L1a、L1b、L2bは、試験片を50×50mmを切り出し、分光測色計(スガ試験機製SC-T-GV5、正反射光を含む。)を用いて、測定ビームの直径φ=15mmとして測定した。炭素系黒色皮膜の膜厚は、上述の通り断面観察から測定した。
また、得られた重ね合わせホットスタンプ成形体の拡散層の厚みD1、D2は、上述の通り、光学顕微鏡による断面観察により測定した(いずれも、3個所測定し、その平均値を求めた。)。
重ね合わせホットスタンプ成形体の硬度を測定するため、厚手のため最も加熱速度が遅く、金型による冷速も遅いため硬度が低くなる可能性のある、重ね合わせ部の第二のAl系めっき鋼板の硬度を、断面からマイクロビッカース硬度計を用いて、荷重9.8107Nで測定した。その評価基準は、以下の通りであり、評価Gを良好と判定し、評価NG(No Good)を不良と判定した。
<評価基準>
G :硬度400HV以上
NG:硬度400HV未満
重ね合わせホットスタンプ成形体のスポット溶接性を調査するため、図1の重ね合わせホットスタンプ成形体12の重ね合わされていない部分(一枚部)のフランジ部11を2枚切り出し、同種板組みでスポット溶接性を、以下に示す溶接条件にて調査した。その評価基準は、スポット溶接時の溶接ナゲットが4√t(tは板厚)の直径を得られる溶接電流値と、チリ(Splash)が発生する溶接電流値との範囲(適正電流範囲と呼ぶ)に関して、評価G(Good)を良好、VG(Very Good)を更に良好と判定し、評価NG(No Good)を不良と判定した。
<評価基準>
VG:適正電流範囲1.5kA以上
G :適正電流範囲1.0kA以上1.5kA未満
NG:適正電流範囲1.0kA未満
溶接電源:直流インバーター、電極加圧力:3.9kN
電極形状:DR、先端径6φ(R40)(材質:クロム銅)
初期加圧時間:60cycle、溶接時間22cycle、保持時間10cycle
溶接電流値:4kA~15kA、0.2kAピッチで溶接
表1に、ブランクの重ね合わせ部の昇温速度、及び、ホットスタンプ(HS)後のスポット溶接性について調査した評価結果をまとめた。
Figure 0007425392000002


発明例であるA2~A4、A7、A8、A11、A16、A17、A19、A20、A23~A25、A27は、板厚が本発明の範囲内にあり、炭素系黒色皮膜を有し、加熱温度と加熱時間の関係が式(a)~式(f)を満足するため、ホットスタンプ後の重ね合わせ部の硬度、スポット溶接性は良好であった。特に、発明例のA2、A3、A7は、加熱時間が式(d)、(e)、及び、好ましい式(f’)を満足するため、スポット溶接性がVGとより好ましい評価結果が得られる。
比較例であるA1、A5、A6、A9、A10、A12は、加熱温度と時間の関係が式(a)~(f)を満足しないため、重ね合わせ部の硬度又はスポット溶接性が不良であった。比較例であるA13、A14、A30は、炭素系黒色皮膜を有さないため、昇温速度が遅く重ね合わせ部の硬度が不良であった。比較例であるA15は、L1の値が、(Lb+20)を超えなかったため、一枚部の過加熱が抑制されずスポット溶接性が不良あった。比較例であるA18は、L1の値が80を超えるため、スポット溶接性が不良であった。比較例であるA21では、明度Lbの値が60を超えるため、重ね合わせ部の硬度が不良であった。比較例であるA22は、第一のAl系めっき鋼板と第二のAl系めっき鋼板の合計板厚が2.5mm未満であるため、過剰な加熱時間となり一枚部のスポット溶接性が不良であった。比較例であるA26、A28、A29は、第一のAl系めっき鋼板と第二のAl系めっき鋼板の合計板厚が4.8mm超であるため、重ね合わせ部の昇温速度が遅く、重ね合わせ部の硬度が不良であった。
(実施例2)
実施例1の水準A16と同様の製造条件にて、第一のAl系めっき鋼板、第二のAl系めっき鋼板を作製し、第二のAl系めっき鋼板のAl系めっき鋼板の上に炭素系黒色皮膜を形成させ、膜厚を15μmにした水準を作製した結果、明度L2bの値が10、Lbの値が39となった。テープ剥離(テープ:ニチバン株式会社製CT405AP-24)した結果、皮膜の剥離が認められ実用的では無かった。同様の試験にて、A16やA19では剥離は認められなかった。
(実施例3)
実施例1の水準A3と同様の製造条件にて、第一のAl系めっき鋼板、及び、第二のAl系めっき鋼板を作製し、第二のAl系めっき鋼板のAl系めっき層の上に、炭素系黒色皮膜を形成させた。この時、第二のAl系めっき鋼板のめっき付着量を、片側当たり55g/m、45g/m、30g/mとした水準A31、A32、A33を作成した。
得られた水準A3、A31、A32、A33を、実施例1における水準A3の条件で加熱し、焼入れした重ね合わせホットスタンプ成形体を得た。得られた重ね合わせホットスタンプ成形体から、第二のAl-Fe系合金めっき鋼板を切り出し、実施例1に記載したものと同様の条件でスポット溶接し、第二のAl-Fe系合金めっき鋼板のスポット溶接性を評価した。
その結果、水準A3とA31の評点はVGであり、水準A32とA33の評点はGであった。この理由は、水準A3とA31は、第一のAl系めっき鋼板のめっき付着量W1から、第二のAl系めっき鋼板のめっき付着量W2を差し引いた値|W1-W2|が25g/m以下と好ましい範囲内であった一方で、水準A32とA33は、第一のAl系めっき鋼板のめっき付着量から、第二のAl系めっき鋼板のめっき付着量を差し引いた値|W1-W2|が35g/m以上と、上記の好ましい範囲から外れていたためと考えられる。なお、水準A31、A32、A33の重ね合わせ部の硬度、第一のAl-Fe系合金めっき鋼板の一枚部のスポット溶接性は、水準A3と同じく、それぞれ評点G、評点VGであった。
(実施例4)
表2に示す、実施例1と同様の製造条件にて、第一のAl系めっき鋼板と第二のAl系めっき鋼板それぞれの、重ね合わされていないAl系めっき表面に、炭素系黒色皮膜を膜厚0.5~8.0μmで塗装した。本ブランクを表1の加熱温度にてホットスタンプ加熱することで重ね合わせ部の昇温速度を調査し、重ね合わせ部を表1の時間で加熱した後、8秒後に30℃/秒以上の冷速で金型冷却することで重ね合わせホットスタンプ成形体12を得た。重ね合わされていない部分(一枚部)のフランジ部11を2枚切り出し、同種板組みでスポット溶接性を調査した。表2における各水準は、本願発明例をB1~B7として示した。
Figure 0007425392000003
表1の比較例の水準A1では同じ板厚、加熱温度、加熱時間で重ね合わせ部の硬度が不良だったが、発明例B1では、重ね合わせ部の硬度が良好な結果を示した。発明例B4も重ね合わせ部の硬度、一枚部のスポット溶接性は良好であるが、B2、B3は、表1の比較例の水準A10では同じ板厚、加熱温度、加熱時間で重ね合わせ部の硬度が不良だったが、発明例B2~B4では、重ね合わせ部の硬度が良好な結果を示した。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
なお、本出願は、2022年5月19日付で出願した、以下のような要旨を有する発明を基礎として、優先権を主張するものである。
[a]
重ね合わせブランクを加熱炉で加熱する重ね合わせブランク加熱工程と、
加熱された前記重ね合わせブランクを、前記加熱炉から搬出してプレス装置に搬送する加熱ブランク搬送工程と、
前記加熱された重ね合わせブランクを前記プレス装置に設けられた金型でプレス加工して、重ね合わせホットスタンプ成形体を得るホットスタンプ工程と、
からなる、重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法であって、
前記重ね合わせブランクは、板厚d1(mm)の第一の鋼板と、前記第一の鋼板上に重ね合わされて溶接された、少なくとも一枚の、前記第一の鋼板よりも面積の小さな板厚d2(mm)の第二の鋼板と、からなり、
前記第一の鋼板及び前記第二の鋼板は、それぞれ鋼板の両面にAl系めっき層を有するAl系めっき鋼板であり、
前記第二の鋼板は、前記第一の鋼板と接しない側の前記Al系めっき層の少なくとも一部の上層として、炭素系黒色皮膜を有し、
前記第一の鋼板の表面のJIS Z 8781-4に定める明度Lについて、前記第二の鋼板と接する側の表面においてL1aとし、前記第二の鋼板と接しない側の表面においてL1bとし、前記第二の鋼板の表面のJIS Z 8781-4に定める明度Lについて、前記第一の鋼板と接しない側の表面においてL2bとしたときに、
1bとL2bの平均値Lbは、40以上60以下であり、かつ、L1aとL1bの平均値L1は、(Lb+20)以上80以下であり、
前記第一の鋼板と前記第二の鋼板とが重ね合わされた部分の合計板厚d=(d1+d2)は、2.5mm以上5.0mm以下であり、
前記重ね合わせブランク加熱工程において、前記重ね合わせブランクを、温度T1(℃)の加熱炉で、時間t(分)で加熱する際、前記加熱炉において、加熱時間t(分)、及び、加熱温度T1(℃)で定義される座標平面において、下記式(1)~(9)のグラフで定まる時間t1(分)以上、(t2+△t2)(分)以下の加熱時間で、前記重ね合わせブランクを加熱する、重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法。
ここで、T1、t1、t2、△t2は下記で示される。
T1=A1・t1+B1・t1+C1 ・・・式(1)
A1=-0.3645d+6.343d-43.822d
+151.71d-268.89d+205.68 ・・・式(2)
B1=+2.9347d-47.313d+298.84d
-936.35d+1518.1d-1197.6 ・・・式(3)
C1=1381.57 ・・・式(4)
T1=A2・t2+B2・t2+C2 ・・・式(5)
A2=-0.4367d1+7.3789d1-49.107d1
+161.95d1-269.2d1+188.97 ・・・式(6)
B2=+1.8594d1-31.034d1+204.62d1
-675.11d1+1159.2d1-964.59 ・・・式(7)
C2=1367.39 ・・・式(8)
△t2=2.6960×1013×e(-0.03205×T1) ・・・式(9)
[b]
前記△t2が、下記式(10)を満足する、[a]に記載の重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法。
△t2=1.498×1013×e(-0.03198×T1) ・・・式(10)
[c]
重ね合わせブランクを加熱炉で加熱する重ね合わせブランク加熱工程と、
加熱された前記重ね合わせブランクを、前記加熱炉から搬出してプレス装置に搬送する加熱ブランク搬送工程と、
前記加熱された重ね合わせブランクを前記プレス装置に設けられた金型でプレス加工して、重ね合わせホットスタンプ成形体を得るホットスタンプ工程と、
からなる、重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法であって、
前記重ね合わせブランクは、板厚d1(mm)の第一の鋼板と、前記第一の鋼板上に重ね合わされて溶接された、少なくとも一枚の、前記第一の鋼板よりも面積の小さな板厚d2(mm)の第二の鋼板と、からなり、
前記第一の鋼板及び前記第二の鋼板は、それぞれ鋼板の両面にAl系めっき層を有するAl系めっき鋼板であり、
前記第一の鋼板は、前記第二の鋼板と接しない側の前記Alめっき層の少なくとも一部の上層として、炭素系黒色皮膜を有し、
前記第二の鋼板は、前記第一の鋼板と接しない側の前記Al系めっき層の少なくとも一部の上層として、炭素系黒色皮膜を有し、
前記第一の鋼板の表面のJIS Z 8781-4に定める明度Lについて、前記第二の鋼板と接する側の表面においてL1aとし、前記第二の鋼板と接しない側の表面においてL1bとし、前記第二の鋼板の表面のJIS Z 8781-4に定める明度Lについて、前記第一の鋼板と接しない側の表面においてL2bとしたときに、
1bとL2bの平均値Lbは、20以上40未満であり、かつ、L1aとL1bの平均値L1は、(Lb+20)以上60以下であり、
前記第一の鋼板と前記第二の鋼板とが重ね合わされた部分の合計板厚d=(d1+d2)は、2.5mm以上5.0mm以下であり、
前記重ね合わせブランク加熱工程において、前記重ね合わせブランクを、温度T3(℃)の加熱炉で、時間t(分)で加熱する際、前記加熱炉において、加熱時間t(分)、及び、加熱温度T3(℃)で定義される座標平面において、下記式(11)~(20)のグラフで定まる時間t3(分)以上、(t4+△t4)(分)以下の加熱時間で、前記重ね合わせブランクを加熱する、重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法。
ここで、T3、t3、t4、△t4は下記で示される。
T3=A3・t3+B3・t3+C3 ・・・式(11)
A3=-0.5693d+9.8168d-67.002d
+228.11d-394.85d+291.77 ・・・式(12)
B3=+3.0472d-49.829d+320.43d
-1026.6d+1706.7d-1374.3 ・・・式(13)
C3=1394.21 ・・・式(14)
T3=A4・t4+B4・t4+C4 ・・・式(15)
A4=-0.3645d1+6.343d1-43.822d1
+151.71d1-268.89d1+205.68 ・・・式(16)
B4=+2.9347d1-47.313d1+298.84d1
-936.35d1+1518.1d1-1197.6 ・・・式(17)
C4=1381.57 ・・・式(18)
△t4=2.6960×1013×e(-0.03205×T3) ・・・式(19)
[d]
前記△t4が、下記式(20)を満足する、請求項3に記載の重ね合わせホットスタンプ成形体の製造方法。
△t4=1.498×1013×e(-0.03198×T3) ・・・式(20)
1 第一のAl系めっき鋼板
1a 第一のAl系めっき鋼板の中の、第二のAl系めっき鋼板と接する面
1b 第一のAl系めっき鋼板の中の、第二のAl系めっき鋼板と接しない面
2 第二のAl系めっき鋼板
2a 第二のAl系めっき鋼板の中の、第一のAl系めっき鋼板と接する面
2b 第二の鋼板の中の、第一のAl系めっき鋼板と接しない面
3 溶接部
4 ホットスタンプ用重ね合わせブランク
4a ホットスタンプ用重ね合わせブランクの中の、重ね合わせ部
4b ホットスタンプ用重ね合わせブランクの中の、一枚部
5 ホットスタンプのための加熱炉
6 ホットスタンプのためのプレス金型
7 頭頂部
8 頭頂部側の曲げ部
9 フランジ側の曲げ部
10 縦壁部
11 フランジ部
12 重ね合わせホットスタンプ成形体
13 Al系めっき鋼板の片側の表面
14 Al系めっき層
15 母材鋼板
16 Al系めっき層の上層に炭素系黒色皮膜を有するAl系めっき鋼板の片側の表面
17 炭素系黒色皮膜
18 Al-Fe系合金めっき鋼板の片側の表面
19 Al-Fe系合金めっき層
20 拡散層
21 母材鋼板

Claims (4)

  1. 板厚d1の第一のAl系めっき鋼板と、
    前記第一のAl系めっき鋼板上に重ね合わされて溶接された、前記第一のAl系めっき鋼板よりも面積の小さく、かつ、前記第一のAl系めっき鋼板と接しない側のAl系めっき上層に炭素系黒色被膜を有する、板厚d2の第二のAl系めっき鋼板と、
    を備えたホットスタンプ用重ね合わせブランクを、温度T1の加熱炉にて加熱する加熱方法であって、
    前記ホットスタンプ用重ね合わせブランクが、下記式(a)~式(c)を満足し、
    加熱時間をt1以上、かつ、t2+△t2以下とする、ホットスタンプ用重ね合わせブランクの加熱方法。
    ここで、T1は加熱炉の温度であり、t1は下記式(d)の2次方程式の解のうち小さい方の値であり、t2は下記式(e)の2次方程式の解のうち小さい方の値であり、△t2は下記式(f)であり、d、d1及びd2の単位はmmとし、T1の単位は℃とし、t1、t2及び△t2の単位は分とする。
    40≦Lb≦60 ・・・式(a)
    (Lb+20)≦L1≦80 ・・・式(b)
    2.5≦d≦4.8 ・・・式(c)
    T1=A1・t1+B1・t1+C1 ・・・式(d)
    T1=A2・t2+B2・t2+C2 ・・・式(e)
    △t2=2.6960×1013×e(-0.03205×T1) ・・・式(f)
    ただし、Lb、L1、L1a、L1b、L2b、A1、B1、C1、A2、B2及びC2は、下記とする。
    b=0.5×(L1b+L2b) ・・・式(a-1)
    1=0.5×(L1a+L1b) ・・・式(b-1)
    d=d1+d2 ・・・式(c-1)
    1a:第一の鋼板の第二の鋼板と接する側の表面の明度L
    1b:第一の鋼板の第二の鋼板と接しない側の表面の明度L
    2b:第二の鋼板の第一の鋼板と接しない側の表面の明度L
    A1=-0.3645d+6.343d-43.822d
    +151.71d-268.89d+205.68 ・・・式(d-1)
    B1=2.9347d-47.313d+298.84d
    -936.35d+1518.1d-1197.6 ・・・式(d-2)
    C1=1381.57 ・・・式(d-3)
    A2=-0.4367d1+7.3789d1-49.107d1
    +161.95d1-269.2d1+188.97 ・・・式(e-1)
    B2=1.8594d1-31.034d1+204.62d1
    -675.11d1+1159.2d1-964.59 ・・・式(e-2)
    C2=1367.39 ・・・式(e-3)
  2. 前記加熱時間を、t2+△t2’以下とする、請求項1に記載のホットスタンプ用重ね合わせブランクの加熱方法。
    ここで、△t2’は下記式(f’)であり、その単位は分である。
    △t2’=1.498×1013×e(-0.03198×T1) ・・・式(f’)
  3. 板厚d1の第一のAl系めっき鋼板と、
    前記第一のAl系めっき鋼板上に重ね合わされて溶接された、前記第一のAl系めっき鋼板よりも面積の小さく、かつ、前記第一のAl系めっき鋼板と接しない側のAl系めっき上層に炭素系黒色被膜を有する、板厚d2の第二のAl系めっき鋼板と、
    を備えたホットスタンプ用重ね合わせブランクを、温度T3の加熱炉にて加熱する加熱方法であって、
    前記第一のAl系めっき鋼板は、前記第二のAl系めっき鋼板と接しない側の表面に炭素系黒色皮膜を有し、
    前記ホットスタンプ用重ね合わせブランクが、下記式(A)~式(C)を満足し、
    加熱時間をt3以上、かつ、t4+△t4以下とする、ホットスタンプ用重ね合わせブランクの加熱方法。
    ここで、T3は加熱炉の温度であり、t3は下記式(D)の2次方程式の解のうち小さい方の値であり、t4は下記式(E)の2次方程式の解のうち小さい方の値であり、△t4は下記式(F)であり、d、d1及びd2の単位はmmとし、T3の単位は℃とし、t3、t4及び△t4の単位は分とする。
    20≦Lb<40 ・・・式(A)
    (Lb+20)≦L1≦60 ・・・式(B)
    2.5≦d≦4.8 ・・・式(C)
    T3=A3・t3+B3・t3+C3 ・・・式(D)
    T3=A4・t4+B4・t4+C4 ・・・式(E)
    △t4=2.6960×1013×e(-0.03205×T3) ・・・式(F)
    ただし、Lb、L1、L1a、L1b、L2b、A3、B3、C3、A4、B4及びC4は、下記とする。
    b=0.5×(L1b+L2b) ・・・式(A-1)
    1=0.5×(L1a+L1b) ・・・式(B-1)
    d=d1+d2 ・・・式(C-1)
    1a:第一の鋼板の第二の鋼板と接する側の表面の明度L
    1b:第一の鋼板の第二の鋼板と接しない側の表面の明度L
    2b:第二の鋼板の第一の鋼板と接しない側の表面の明度L
    A3=-0.5693d+9.8168d-67.002d
    +228.11d-394.85d+291.77 ・・・式(D-1)
    B3=3.0472d-49.829d+320.43d
    -1026.6d+1706.7d-1374.3 ・・・式(D-2)
    C3=1394.21 ・・・式(D-3)
    A4=-0.3645d1+6.343d1-43.822d1
    +151.71d1-268.89d1+205.68 ・・・式(E-1)
    B4=2.9347d1-47.313d1+298.84d1
    -936.35d1+1518.1d1-1197.6 ・・・式(E-2)
    C4=1381.57 ・・・式(E-3)
  4. 前記加熱時間を、t4+△t4’以下とする、請求項3に記載のホットスタンプ用重ね合わせブランクの加熱方法。
    ここで、△t4’は下記式(F’)であり、その単位は分である。
    △t4’=1.498×1013×e(-0.03198×T3) ・・・式(F’)
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