JP7423336B2 - 多条ねじ継手、継手付き鋼管、構造体、構造体の施工方法、多条ねじ継手の設計方法及び製造方法 - Google Patents

多条ねじ継手、継手付き鋼管、構造体、構造体の施工方法、多条ねじ継手の設計方法及び製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、4条以上の偶数条の雄ねじを有する内側継手管と、4条以上の偶数条の雌ねじを有する外側継手管からなる多条ねじ継手、該多条ねじ継手を取り付けた継手付き鋼管、該継手付き鋼管が複数連結されてなる構造体、構造体の施工方法、及び多条ねじ継手の設計方法及び製造方法に関する。
構造物の基礎や地滑りの抑止などに利用される鋼管による構造体(例えば、鋼管杭、鋼管矢板、鋼管矢板を連結した鋼管矢板壁、鋼管柱、鋼管梁等)は、施工の条件により必要な長さが数十mに及ぶ場合がある。一方、これら鋼管による構造体を施工現場まで搬送する際は、交通制限により長尺のものを搬送できない。そのため、搬送可能な長さである数mづつ運び、施工現場において施工(打設を含む)途中で接合される。
鋼管による構造体を施工現場で接合する方法として、特許文献1に開示されたようなねじ継手が利用される。ねじ継手は接合対象となる鋼管のそれぞれの端部に取り付けられ、施工現場で回転嵌合させることによって鋼管を接合して鋼管による構造体を施工する。
特許文献1に開示のねじ継手は、ねじ部を多条ねじとすることで、嵌合に必要な回転量を低減させ、嵌合時間の低減や施工性の向上を実現できる。特に、隣接する鋼管同士を連結する連結継手を有する鋼管矢板用の鋼管にねじ継手を適用する場合、連結継手の回転半径内にある他の鋼管矢板が干渉することがあるため、嵌合に必要な回転量を低減することは有効である。
特開平10-311028号公報
ねじ継手を鋼管矢板用の鋼管に適用する場合、上側の鋼管と下側の鋼管の連結継手の位置が、上下の鋼管の嵌合完了時点で同じ位置にある必要がある。この点、多条ねじ継手の場合、ねじ条数分だけねじ山の先端部が存在し、ねじ条数と同数の嵌合開始位置が存在する。このため、嵌合完了時に正しい位置となる嵌合開始位置から嵌合を開始する必要がある。そこで、多条ねじ継手には正しい嵌合開始位置に位置合わせマークが設けられており、位置合わせマークに合わせて嵌合を開始することにより、嵌合完了時に上下の連結継手位置が一致する。
なお、上記連結継手は鋼管の外周に180度間隔で同じものが設置されているので、位置合わせマークの位置から180度回転した位置から嵌合を開始しても、嵌合完了時に上下の連結継手位置を一致させることができる。すなわち、上記のような場合には、正しい嵌合開始位置は180度間隔で2箇所存在する。
しかし、位置合わせマークを設けても、ヒューマンエラーによる嵌合開始位置の間違いを完全には排除できず、仮に、間違った嵌合開始位置から嵌合が開始されると、嵌合完了時点で上下の連結継手位置が不一致となり、嵌合開始位置が誤りであったことが分かる。
この場合、嵌合完了したものを、再度逆回転して嵌合を外して、嵌合位置合わせを行って再度嵌合することになり、工事の進行を遅らす原因やねじ部の傷つきによる嵌合不良の原因となる。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、嵌合間違いを排除できる多条ねじ継手、該多条ねじ継手を取り付けた継手付き鋼管、該継手付き鋼管が複数連結されてなる構造体、構造体の施工方法、及び多条ねじ継手の設計方法及び製造方法を提供することを目的としている。
(1)本発明に係る多条ねじ継手は、鋼管の端部に取り付けられ、雄ねじを有する内側継手管と雌ねじを有する外側継手管からなり、前記内側継手管及び前記外側継手管のねじが、4条以上の偶数条の多条ねじである多条ねじ継手であって、前記多条ねじを構成するねじが、以下に規定する要件を満たすことを特徴とするものである。
(1-1)形状の異なる2種類以上のねじを備え、各種類のねじが偶数条であること。
(1-2)全てのねじ山及びねじ底は、ピッチが同じであること。
(1-3)同一種類同士のねじであって隣り合うもの同士の位置を直線で結んで形成される直線又は多角形が、直線は管の中心を通ること、多角形はその重心が管の中心と一致すること、という条件を全ての直線及び多角形が満たすこと。ただし、形成される図形が全て正多角形であるものを除く。
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、全てのねじ山とねじ底の継手軸方向隙間が同じに設定されていることを特徴とするものである。
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、形状の違いは、ねじ山及びこれに対応するねじ底の高さ、幅、角度のいずれか又は複数が異なることであることを特徴とするものである。
(4)本発明に係る継手付き鋼管は、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の多条ねじ継手における内側継手管と外側継手管を、一端と他端に取り付けてなることを特徴とするものである。
(5)本発明に係る構造体は、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の多条ねじ継手と、前記多条ねじ継手で連結された複数の鋼管とを備えることを特徴とするものである。
(6)本発明に係る構造体の施工方法は、上記(5)に記載の構造体の施工方法であって、連結対象となる継手付き鋼管の一方の回転を拘束した状態で、他方の継手付き鋼管の多条ねじ継手を前記一方の継手付き鋼管の多条ねじ継手に位置合わせして回転嵌合することを特徴とするものである。
(7)本発明に係る多条ねじ継手の設計方法は、鋼管の端部に取り付けられ、雄ねじを有する内側継手管と雌ねじを有する外側継手管からなり、前記内側継手管及び前記外側継手管のねじが、4条以上の偶数条の多条ねじである多条ねじ継手の設計方法であって、前記多条ねじを構成するねじが、以下に規定する要件を満たすように設計することを特徴とするものである。
(7-1)形状の異なる2種類以上のねじによって構成し、各種類のねじを偶数条とすること。
(7-2)全てのねじ山及びねじ底は、ピッチを同じに設定すること。
(7-3)同一種類同士のねじであって隣り合うもの同士の位置を直線で結んで形成される直線又は多角形が、直線は管の中心を通ること、多角形はその重心が管の中心と一致すること、という条件を全ての直線及び多角形が満たすこと。ただし、形成される図形が全て正多角形であるものを除く。
(8)本発明に係る多条ねじ継手の製造方法は、鋼管の端部に取り付けられ、雄ねじを有する内側継手管と雌ねじを有する外側継手管からなり、前記内側継手管及び前記外側継手管のねじが、4条以上の偶数条の多条ねじである多条ねじ継手の製造方法であって、前記多条ねじを構成するねじが、以下に規定する要件を満たすことを特徴とするものである。
(8-1)形状の異なる2種類以上のねじを形成し、各種類のねじが偶数条であること。
(8-2)全てのねじ山及びねじ底は、ピッチを同じに形成すること。
(8-3)同一種類同士のねじであって隣り合うもの同士の位置を直線で結んで形成される直線又は多角形が、直線は管の中心を通ること、多角形はその重心が管の中心と一致すること、という条件を全ての直線及び多角形が満たすこと。ただし、形成される図形が全て正多角形であるものを除く。
本発明に係る多条ねじ継手においては、上記のように構成されることにより、対応するねじ山とねじ底が嵌合可能な状態でないと嵌合することができず、誤嵌合を確実に防止することができる。
また、嵌合可能な位置が180度間隔で2箇所あるので、一方の嵌合開始位置から嵌合しようとした際に、例えば、切削精度の不良等で嵌合抵抗力が高い場合などに、180度回転させて他方の嵌合開始位置からも嵌合を行うことができるので、作業性がよい。
本実施の形態に係る多条ねじ継手の嵌合前の状態の側面図である。 本実施の形態に係る多条ねじ継手の嵌合完了時の状態の側面を内部を透視して示す図である。 本実施の形態に係る8条のねじ継手を上部から見た場合の雄ねじ、雌ねじの嵌合開始位置の概念図である。 本実施の形態に係る多条ねじ継手が正しい位置で嵌合している状態の一部を拡大して示す図であって、図4(a)は種類Aのねじ形状の嵌合状態であり、図4(b)は種類Bのねじ形状の嵌合状態である。 図4に示した多条ねじ継手が誤った位置で嵌合しようとしたときに嵌合できなくなることを説明するための説明図である。 本発明の要件1を満たさないことにより本発明に不適合な例を説明する説明図である。 同一種類のねじの位置を直線で結んだときに直線のみが形成される例を説明する説明図であって、図7(a)は本発明の適合例、図7(b)は不適合例を示す図である。 同一種類のねじの位置を直線で結んだときに直線及び多角形が形成される例を説明する説明図であって、本発明に不適合な例を示す図である。 同一種類のねじの位置を直線で結んだときに多角形のみが形成される例を説明する説明図(その1)であって、図9(a)は本発明の適合例、図9(b)は不適合例を示す図である。 同一種類のねじの位置を直線で結んだときに多角形のみが形成される例を説明する説明図(その2)であって、本発明の不適合例を示す図である。 3種類のねじ形状が形成される例を説明する説明図であって、本発明の適合例を示す図である。 3種類のねじ形状が形成される例を説明する説明図であって、本発明の不適合例を示す図である。 ねじ形状の他の態様1を説明する説明図であって、図13(a)は種類Aのねじ形状の嵌合状態であり、図13(b)は種類Cのねじ形状の嵌合状態である。 図13に示した多条ねじ継手が誤った位置で嵌合しようとしたときに嵌合できなくなることを説明するための説明図である。 ねじ形状の他の態様2を説明する説明図であって、図15(a)は種類Aのねじ形状の嵌合状態であり、図15(b)は種類Dのねじ形状の嵌合状態である。 図15に示した多条ねじ継手が誤った位置で嵌合しようとしたときに嵌合できなくなることを説明するための説明図である。
本実施の形態に係る多条ねじ継手1は、図1、図2に示すように、上側の鋼管3の端部に取り付けられ、雄ねじ5を有する内側継手管7と、下側の鋼管9の端部に取り付けられ、雌ねじ11を有する外側継手管13からなり、内側継手管7及び外側継手管13のねじが、4条以上の偶数条の多条ねじである多条ねじ継手1であって、多条ねじを構成するねじが、以下に規定する要件を満たすことを特徴とするものである。
形状の異なる2種類以上のねじを備え、各種類のねじが偶数条であること(要件1)。
全てのねじ山及びねじ底は、ピッチが同じであること(要件2)。
同一種類同士のねじであって隣り合うもの同士の位置を直線で結んで形成される直線又は多角形が、直線は管の中心を通ること、多角形はその重心が管の中心と一致すること、という条件を全ての直線及び多角形が満たすこと。ただし、形成される図形が全て正多角形であるものを除く(要件3)。
図1、図2は上記要件を満たす多条ねじ継手1の一例である。以下に多条ねじ継手1の各構成を詳細に説明する。
<鋼管>
鋼管3、9は、杭を構成するものであり、図中上側の鋼管3が上杭を、下側の鋼管9が下杭を構成する。
本実施の形態では、上側の鋼管3に雄ねじ5を有する内側継手管7が溶接により固定され、下側の鋼管9に雌ねじ11を有する外側継手管13が溶接により固定されている。
もっとも、内側継手管7を下側の鋼管9に固定し、外側継手管13を上側の鋼管3に固定するようにしてもよい。
<内側継手管、外側継手管>
内側継手管7は、4条以上の偶数条の多条ねじからなる雄ねじ5が形成されている。また、外側継手管13は、内側継手管7と同じ条数の4条以上の偶数条の多条ねじからなる雌ねじ11が形成されている。
そして、内側継手管7及び外側継手管13が備える多条ねじは、ねじ山5a、11a及びこれに対応するねじ底11b、5b(種類A)と、ねじ山5as、11as及びこれに対応するねじ底11bs、5bs(種類B)(斜線で示した部分)の、それぞれ形状の異なる2種類のねじを有しており、種類A、種類Bのねじはそれぞれ偶数条形成されている(要件1)。なお、図1は多条ねじ継手1を側面視した図であり、雄ねじ5及び雌ねじ11においても、一側面から見える部分のみ図示している。
また、全てのねじ山及びねじ底はピッチが同じに設定されている(要件2)。
さらに、具体的な例は図3にて詳しく説明するが、種類Aのねじ及び種類Bのねじはそれぞれ、前述した要件3を満たすように形成されており、図1及び図2に示した例は本発明の要件である要件1~3を全て満たすものである。
以上のように構成された本実施の形態の多条ねじ継手1においては、内側継手管7と外側継手管13における、同形状のねじの嵌合開始位置が一致していないと回転嵌合することができない。換言すれば、同形状のねじの嵌合開始位置が一致する場合のみ、図2に示すように、回転嵌合することができる。具体的には、本実施の形態によれば、同形状のねじの嵌合開始位置が一致する位置は180度間隔で2箇所存在するので、この2箇所でのみ、回転嵌合が可能である。
この点について、図3に示す8条ねじを例にあげて、具体的に説明する。
図3は、8条のねじ継手を上部から見た場合の雄ねじ5及び雌ねじ11のねじ開始位置の概念図である。図3(a)は、従来例のようにねじ形状が1種類のものであり、雄ねじ5と雌ねじ11は黒丸印の位置が一致していれば嵌合を開始することができる。すなわち、ねじ条数と同数の8箇所の位置で嵌合が可能である。
これに対し、図3(b)~図3(d)は、本発明例を示すものである。図1、図2と同様に、形状の異なる種類Aと種類Bの2種類のねじ形状を備え、種類Aが6条、種類Bが2条形成されており、要件1を満たしている。図中、種類Aのねじの嵌合開始位置に黒丸印、種類Bのねじの嵌合開始位置に星印を付す。中心にある十字は管の中心15を示すものである。
さらに、同一種類の中で隣り合うもの同士を直線で結び(黒丸印を結ぶ直線を実線、星印を結ぶ直線を破線で示す)、該直線によって多角形が形成される場合にはその重心を図中に示す(多角形の重心17)。後述する図6~図12も同様に図示する。
図3(b)~図3(d)は、黒丸印(種類A)を結んで形成される多角形の重心17が、管の中心15と一致しており、星印(種類B)を結んで形成される直線は、管の中心15を通っているので要件3を満たすものである。なお、雄ねじ5と雌ねじ11に付した矢印は位置合わせマークを示している。
図3(b)は、雄ねじ5と雌ねじ11の位置合わせマークが一致する正しい嵌合開始位置の状態であり、全ての条で相対するねじ形状が一致し、嵌合を開始することができる。
図3(c)は、図3(b)の状態から雌ねじ11を時計回りに45度回転させた状態を示している。図3(c)に示した状態は、8条のねじのうち、4条でねじ形状が一致していない。このように、いずれかのねじにおいて、異なる形状同士が相対しているときには、嵌合を開始することができない。嵌合を開始することができない理由については後述する。
図3(d)は、さらに雌ねじ11を時計回りに回転させて、図3(b)の状態から180度回転させた状態を示している。図3(d)に示した状態では、雄ねじ5と雌ねじ11の位置合わせマークは180度ずれているが、全ての条で雄ねじ5と雌ねじ11のねじ形状が一致するので、図3(b)と同様に、嵌合を開始することができる。
以下に、図3(b)及び図3(d)のように同形状のねじの嵌合開始位置がそれぞれ一致して嵌合したときの状態について、下記に示す形状の異なる2種類のねじを例にあげて説明する。
図4は、形状の異なる2種類のねじの一例として、ねじ山5a、11a及びこれに対応するねじ底11b、5b(種類A)と、ねじ山5as、11as及びこれに対応するねじ底11bs、5bs(種類B)の高さが異なるものを示している。
図4(a)は、種類Aのねじ山5a、11a及びねじ底11b、5bが適切に嵌合している状態であり、一例として、この適切に嵌合する雌ねじ11のねじ山11aの高さhは4.0mmで、雄ねじ5のねじ底5bとの間の径方向のクリアランスc1は0.5mmとする。
また、図4(b)は、種類Bのねじ山5as、11as、ねじ底11b、5bsが適切に嵌合している状態であり、一例として、雌ねじ11のねじ山11asの高さHは2.0mmで、雄ねじ5のねじ底5bsとの間のクリアランスC1は0.5mmとする。
なお、ねじピッチPは種類Aのねじ形状のもの、及び、種類Bのねじ形状のものも共に10mmである。ねじピッチPとは、ある1条における雄ねじ5のねじ底の端から次の1条の雄ねじ5のねじ底の始まる位置までの軸方向の距離、あるいは、ある1条の雌ねじ11のねじ山の端から次の1条のねじ山の始まる位置までの軸方向の距離である。
1条ねじの場合には、ねじピッチは、1回転したときにねじが進む距離を意味するが、多条ねじにおいては、ねじの条数によって1回転したときの進む距離が異なることから、一定の距離としてのねじピッチを定義できないので、上記のように定義している。
図4(a)及び図4(b)に示すように、雄ねじ5と雌ねじ11の各条が、それぞれ同じ種類同士で対応していれば嵌合開始することができ、雄ねじ5を有する内側継手管7と雌ねじ11を有する外側継手管13を回転嵌合することができる。
次に、図3(c)のように、異なる形状のねじの嵌合開始位置が相対して嵌合を開始することができない状態について、図5を用いて説明する。
図5は、図4に示した種類Aと種類Bのねじが嵌合しようとしたときの状態を示している。種類Aと種類Bのように、ねじ山及びねじ底の高さが異なるねじが嵌合しようとすると、図5に示すように、種類Bである雄ねじ5のクリアランスC1を含めて2.5mmのねじ底5bs(H+C1)のところに、種類Aの雌ねじ11であるねじ高さhが4.0mmのねじ山11aが位置することになり、干渉して嵌合を開始することができない。
このように、雄ねじ5と雌ねじ11のいずれかの条が、異なる種類のねじと相対していると嵌合開始することができず、雄ねじ5を有する内側継手管7と雌ねじ11を有する外側継手管13を回転嵌合することができない。
なお、種類Aのねじと種類Bのねじが嵌合できないようにするには、ねじ山の高さの差がクリアランスc1以上ある必要がある。例えば、種類Bのねじ山5as、11asの高さH、種類Bのねじ底5bs、11bsとねじ山11as、5asのクリアランスC1、種類Aのねじ山5a、11aの高さh、種類Aのねじ底5b、11bとねじ山11a、5aのクリアランスc1との関係は、h>H+C1又はH>h+c1の関係となる。
以上、要件1~3を満たす多条ねじ継手1の一例を用いて、多条ねじ継手1の構成と、多条ねじ継手1が正しい嵌合開始位置と、正しい嵌合開始位置から180度回転させた位置の2箇所でのみ嵌合が可能であることを説明した。
次に、各要件が要求される理由を要件ごとに詳しく説明する。
<要件1>
要件1「形状の異なる2種類以上のねじを備え、各種類のねじが偶数条であること」が要求される理由は以下のとおりである。
まず、異なる形状のねじを2種類以上備えるのは、図3で説明したように、誤った嵌合開始位置では異なる形状のねじ同士が相対して嵌合を開始できないようにするためである。異なる形状のねじが嵌合できないことについては、図4、図5で説明したとおりであるので説明を省略する。
また、各種類のねじが偶数条であるのは、正しい嵌合開始位置から180度回転させた位置での嵌合を可能とするためである。この点について、図6を用いて説明する。
図6に示した例は、「各種類のねじが偶数条であること」という条件を満たさないものであり、本発明に不適合なものである。図中には雄ねじ5のみを図示し、同形状である雌ねじ11を省略している(以下、図7~図12も同様)。本例は、種類A(黒丸印)、種類B(星印)の2種類のねじ形状を有する6条ねじであり、種類A、B共に、3条ずつ形成されている。全てのねじ山及びねじ底は、ピッチが同じである(要件2、以下、図7~図12も同様とし、説明を省略する)、黒丸印及び星印をそれぞれ直線で結んで形成される三角形の重心(多角形の重心17)は、いずれも管の中心15と一致している(要件3)。
図6に示した例は黒丸印と星印のどちらも180度対称になっていないため、180度回転させたときに相対するねじの形状が一致せず、嵌合することができない。
本例に限らず、同一種類のねじの条数が奇数であると、180度対称に配置することができないので、各種類のねじは偶数条とする必要がある。
また、各種類のねじが偶数条であると、必然的に多条ねじ全体の条数は4条以上の偶数条となるので、本発明は4条以上の偶数条である多条ねじ継手に適用可能なものである。
<要件2>
次に、要件2「全てのねじ山及びねじ底は、ピッチが同じであること」が要求される理由は以下のとおりである。
本実施の形態における「ピッチ」は、図4で説明した「ねじピッチP」のことであり、前述したように「ねじピッチP」とは、ある1条における雄ねじ5のねじ底の端から次の1条の雄ねじ5のねじ底の始まる位置までの軸方向の距離、あるいは、ある1条の雌ねじ11のねじ山の端から次の1条のねじ山の始まる位置までの軸方向の距離である。
このようなピッチが同じであることは、多条ねじの雄ねじと雌ねじが嵌合するために必要な条件であり、多条ねじに一般的に求められる要件であるため説明を省略する。
<要件3>
次に、要件3「同一種類同士のねじであって隣り合うもの同士の位置を直線で結んで形成される直線又は多角形が、直線は管の中心を通ること、多角形はその重心が管の中心と一致すること、という条件を全ての直線及び多角形が満たすこと。ただし、形成される図形が全て正多角形であるものを除く」が要求される理由について説明する。
要件3は、要件1と同様に、正しい嵌合開始位置から180度回転させた位置での嵌合を可能とするための要件である。これについて、形成される図形が(i)直線のみ、(ii)直線及び多角形、(iii)多角形のみの3パターンに分けて、要件3を満たすものと満たさないものをそれぞれ例示しながら説明する。なお、以下に示す例はすべて要件1と要件2を満たすものである。
≪(i)直線のみ≫
まず、直線のみが形成される例、すなわち、各種類のねじが2条ずつ形成されている例を図7に示す。図7(a)及び図7(b)は共に、種類A(黒丸印)、種類B(星印)の2種類のねじが2条ずつ形成されている4条ねじである。
図7(a)は、全ての直線が管の中心15を通っており、要件3を満たすものである。4条ねじにおいては、ねじの位置が一致する箇所は回転角が0度、90度、180度、270度の4箇所存在するが、そのうち図7(a)に示す例において、全ての条でねじ形状が一致するのは0度と180度の2箇所のみである。これは、2条を結んだ直線が管の中心15を通るとき、その2条が180度対称の関係にあるからである。
図7(a)のように、全ての種類の直線が管の中心15を通れば、すなわち、全ての種類で180度対称の性質を持っているので、180度回転した時に全ての条で形状が一致し、嵌合が可能となる。
一方、図7(b)は、どの直線も管の中心15を通っておらず、要件3を満たしていない。したがって、いずれの種類も180度対称ではなく、嵌合可能な位置は正しい嵌合開始位置の1箇所のみであり、本発明に不適合なものである。
≪(ii)直線及び多角形≫
次に、直線及び多角形が形成される例について説明する。図3(b)~(d)に示した例がその一例であるので、図3を用いて説明する。
図3(b)~(d)は、前述したとおり、種類Aのねじが6条、種類Bのねじが2条形成された8条ねじである。黒丸印(種類A)を直線で結んで形成される六角形の重心(多角形の重心17)は管の中心15と一致している。また、星印(種類B)を結ぶ直線は管の中心15を通っており、図3(b)~(d)は要件3を満たすものである。
種類Bの2条を結んだ直線が管の中心15を通っているので、種類Bの2条が180度対称の関係にあるのは前述したとおりである。
また、180度対称である図形は、その対称点(回転の中心)が重心と一致する性質をもつことから、黒丸印(種類A)を直線で結んで形成された六角形も180度対称の図形といえる。したがって、図3(b)~(d)に示す例は、種類A、Bどちらも180度対称の性質を持っているので、180度回転した時に全ての条でねじ形状が一致し、嵌合が可能となる。
直線及び多角形が形成される場合における本発明に不適合なものの例を図8に示す。
図8に示した例は、図3(b)~(d)と同様に、種類Aのねじが6条、種類Bのねじが2条形成された8条ねじであるが、いずれも直線が管の中心15を通らず、多角形の重心17は管の中心15と一致していない。したがって、いずれの種類も180度対称の関係になく、嵌合可能な位置は正しい嵌合開始位置の1箇所のみであり、本発明に不適合なものである。
≪(iii)多角形のみ≫
次に、多角形のみが形成される例を図9、図10に示す。
図9、図10に示した例はいずれも、種類A(黒丸印)、種類B(星印)の2種類のねじが4条ずつ形成されている8条ねじである。
図9(a)は、実線の長方形(種類A)と破線の長方形(種類B)のどちらの重心(多角形の重心17)も管の中心15と一致しており、要件3を満たすものである。
上述したように、種類A、Bは、共に180度対称の性質を持っているので、180度回転した時に全ての条で形状が一致し、嵌合が可能となる。
一方、図9(b)は、図9(a)と同様に、実線の正方形(種類A)と破線の正方形(種類B)のどちらの重心(多角形の重心17)も管の中心15と一致しているが、「形成される図形が全て正多角形であるもの」に該当するため、本発明に不適合な例である。
次に、要件3において、「形成される図形が全て正多角形であるものを除く」理由を以下に説明する。
図9(b)に示した例は、180度対称の性質を持っているが、さらに、90度または270度回転したときにも、全ての条でねじ形状が一致するものである。すなわち、360度のうち嵌合可能な回転位置が4箇所存在することとなり、正しい嵌合開始位置と180度回転させた位置の2箇所でのみ嵌合可能とする本発明の目的を達成しない。これは、正方形に限らず、他の正多角形においても同様である。
もっとも、多条ねじを構成するねじのねじ形状のうち、直線で結んで形成される図形が直線又は正多角形でない多角形を1種類でも含んでいれば、要件3を満たすことができる。
図10に、多角形のみが形成される場合における本発明に不適合なものの他の例を示す。
図10に示した例は、いずれも図9と同様に、種類Aのねじが4条、種類Bねじが4条形成された8条ねじであるが、ふたつの四角形の重心(多角形の重心17)がどちらも管の中心15と一致していない。したがって、種類A、B共に180度対称の性質を持っておらず、嵌合可能な位置は正しい嵌合開始位置の1箇所のみとなり、本発明には不適合である。
上述したように、本実施の形態における多条ねじ継手1は、180度間隔の2箇所でのみ嵌合を開始することができ、この2箇所以外の位置からは嵌合を開始することができない。したがって、図3(b)のように位置合わせマークを付けておけば、正しい嵌合開始位置のときに回転嵌合することができ、仮に、ヒューマンエラーによって図3(c)のように位置合わせを誤った場合には、嵌合開始ができない。このため、嵌合開始位置が誤りであることが直ぐに分かり、誤嵌合によって、回転嵌合をやり直す場合に比較すると施工効率を向上させることができる。
さらに、嵌合可能な位置が180度間隔で2箇所あるので、鋼管矢板用の鋼管のように連結継手が設けられている場合であっても、2箇所のどちらから嵌合を開始しても上下の鋼管の連結継手の位置が一致するため作業性がよい。
なお、上記では2種類のねじ形状を有する多条ねじ継手1を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上述した各要件を満たすものであれば、3種類以上のねじ形状を有するものでも良く、例えば図11に示すようなものであってもよい。
図11(a)は種類A(黒丸印)のねじが4条、種類B(星印)のねじが2条、種類C(四角印)のねじが2条形成された8条ねじである。黒丸印(種類A)を直線で結んで形成される四角形の重心(多角形の重心17)は管の中心15と一致している。また、星印(種類B)及び四角印(種類C)を結ぶ直線は管の中心15を通っている。
図11(b)は種類A(黒丸印)のねじが6条、種類B(星印)のねじが4条、種類C(四角印)のねじが2条形成された12条ねじである。黒丸印(種類A)を直線で結んで形成される六角形の重心(多角形の重心17)及び星印(種類B)を直線で結んで形成される四角形の重心(多角形の重心17)はどちらも管の中心15と一致している。また、四角印(種類C)を結ぶ直線は管の中心15を通っている。
上述したように、図11(a)及び図11(b)はどちらも本発明の要件を満たす適合例であり、180度回転した時にも全ての条で形状が一致して嵌合が可能である。
一方、図12に示す例は、形成される図形がすべて正方形であるので、「形成される図形が全て正多角形であるもの」に該当し、本発明に不適合なものである。図12は図9(b)と同じく嵌合可能な回転位置が4箇所存在することとなり、正しい嵌合開始位置と180度回転させた位置の2箇所でのみ嵌合可能とする本発明の目的を達成しない。
なお、図11に示した2例においても、図11(a)の黒丸印及び図11(b)の星印のように、形成される図形に正方形を含むものであるが、その他の種類において形成される図形が、直線又は正多角形でない多角形であるので、上記の「形成される図形が全て正多角形であるもの」には該当せず、要件3を満たすものである。
なお、図4及び図5の説明では、ねじ山及びこれに対応するねじ底の高さを他と異なるように設定することで、種類の異なるねじ形状を形成したものであったが、本発明はこれに限られるものではなく、要するにその他のねじと嵌合できないねじ形状を形成すればよく、ねじ形状を他のねじ形状と異なるようにする態様は、例えば、以下に説明する他の態様1、2等が挙げられる。
<他の態様1>
他の態様1は、種類Cのねじ山5ass、11ass及びこれに対応するねじ底11bss、5bssが、種類Aのねじ山5a、11a及びねじ底11b、5bと、ねじピッチは同じであり、ねじ幅が異なるものである。これについて図13、図14に基づいて説明する。
図13(a)は、種類Aのねじ山5a、11a、ねじ底11b、5bを示しており、適切に嵌合している状態である。一例として、この適切に嵌合する雌ねじ11のねじ幅wは3.4mmで、雄ねじ5のねじ底5bとの間の軸方向のクリアランスc2は0.5mmとする。
また、図13(b)は、種類Cのねじ山5ass、11ass、ねじ底11bss、5bssを示しており、適切に嵌合している状態である。一例として、この種類Cの雌ねじ11のねじ幅Wは2.4mmで、雄ねじ5のねじ底5bsとの間の軸方向のクリアランスC2は0.7mmとする。
なお、ねじピッチPは種類A、C共に10mmである。
図13(b)に示すように、種類Cの対応するねじ山5ass、11assとねじ底11bss、5bss同士であれば嵌合することができ、雄ねじ5を有する内側継手管7と雌ねじ11を有する外側継手管13を嵌合させることができる。
しかし、種類Aのねじと種類Cのねじが嵌合しようとすると、図14に示すように、種類Cである雄ねじ5のクリアランスC2を含めて3.1mm(W+C2)のねじ底5bssのところに、種類Aの雌ねじ11であるねじ幅wが3.4mmのねじ山11aが位置することになり、干渉して内側継手管7と外側継手管13の嵌合を開始することができない。
なお、種類の異なるねじが嵌合できないようにするには、ねじ山の幅の差がクリアランスc2以上ある必要がある。例えば、種類Cのねじ山5ass、11assの幅W、種類Cのねじ底11bss、5bssとねじ山5ass、11assのクリアランスC2、種類Aのねじ山5a、11aの幅w、種類Aのねじ底11b、5bとねじ山5a、11aのクリアランスc2との関係は、w>W+C2又はW>w+c2の関係となる。
<他の態様2>
他の態様2は、種類Dのねじ山5asss、11asss及びこれに対応するねじ底11bsss、5bsssは、種類Aのねじ山5a、11a及びねじ底11b、5bと、ピッチは同じであり、ねじ角度が異なるものである。これについて図15、図16に基づいて説明する。なお、ねじ角度が異なるとは、ねじ山における両側のフランク角が異なる場合、片側のフランク角が異なる場合の両方を含む意味である。
図15(a)は、種類Aのねじ山5a、11a、ねじ底11b、5bを示しており、適切に嵌合している状態である。一例として、この適切に嵌合する雌ねじ11のねじ山11a及び雄ねじ5のねじ底5bの図中下側のフランク角αは略10°とする。その結果、雌ねじ11のねじ幅wは3.4mmで、雄ねじ5のねじ底5bとの間の軸方向のクリアランスc2は0.5mmになっている。
また、図15(b)は、種類Dのねじ山5asss、11asss、ねじ底11bsss、5bsssを示しており、適切に嵌合している状態である。一例として、この種類Dの雌ねじ11のねじ山11asss及び雄ねじ5のねじ底5bsssの図中下側のフランク角βは約20°とする。その結果、雌ねじ11のねじ幅Wは2.2mmで、雄ねじ5のねじ底5bsとの間の軸方向のクリアランスC2は0.6mmとなっている。
なお、ねじピッチPは種類A、D共に10mmである。
図15(b)に示すように、種類Dの対応するねじ山5asss、11asssとねじ底11bsss、5bsss同士であれば嵌合することができ、雄ねじ5を有する内側継手管7と雌ねじ11を有する外側継手管13を嵌合させることができる。
しかし、種類Aのねじと種類Dのねじが嵌合しようとすると、図16に示すように、種類Dの雄ねじ5のねじ底5bsssのところに、種類Aの雌ねじ11のねじ山11aが位置すると、フランク角の違いから、両者が干渉して嵌合することができず、内側継手管7と外側継手管13を嵌合させることができない。
なお、本発明においても、嵌合開始の目安がある方がよく、位置合わせマークを設けることが好ましい。位置合わせマークを設けていても、ヒューマンエラーにより誤嵌合が生ずる場合があるが、本発明を適用することで、このようなヒューマンエラーを確実に防止できる。
また、本発明におけるねじ形状の変更は、切削刃や切削プログラムの変更により、従来の切削工程を大幅に増やすことなく製作することができるので、本発明は低コストでねじの誤嵌合を防止できるものであると言える。
なお、上記の例では平行ねじ(ねじ山が円筒の外面又は内面にあるねじ)を対象としていたが、テーパねじ(ねじ山が円すいの外面又は内面にあるねじ)の場合にも適用可能であり、テーパねじにおいても問題なく誤嵌合を防止することができる。
なお、大径で上部から手前側を覗かなければ外側継手管13側の嵌合位置を確認できないような場合には、外側継手管13のねじ山を他と異なるようにすることで上部から目視的な嵌合位置の判別がしやすくなる。
なお、上記の他の形態1において、種類Cのねじ山とこれに対応するねじ底の軸方向クリアランス(隙間)Cが0.7mmで、種類Aのねじ山とこれに対応するねじ底の継手軸方向隙間cが0.5mmの例を示し、また、他の形態2においては、種類Dのねじ山とこれに対応するねじ底の軸方向クリアランス(隙間)Cが0.6mmで、種類Aのねじ山とこれに対応するねじ底の継手軸方向隙間cが0.5mmの例を示した。
しかしながら、本発明の多条ねじ継手は構造体を構成する鋼管の端部に取り付けられるものであり、荷重が作用した際に、軸方向で全てのねじ山が均等に当接して荷重伝達できるのがより好ましい。
そのため、種類C及び種類Dのねじ山とこれに対応するねじ底の軸方向クリアランス(隙間)Cと、種類Aのねじ山とこれに対応するねじ底の継手軸方向隙間cが同じであることがより好ましい。これは、ひとつの多条ねじに異なるねじ形状が3種類以上ある場合にも同様に、全てのねじ山とねじ底の継手軸方向隙間が同じに設定されているのが好ましい。
また、上記の実施の形態では、鋼管の端部に取り付ける多条ねじ継手を説明したが、この多条ねじ継手は予め工場等において、鋼管杭、鋼管矢板、鋼管柱、鋼管梁等を構成する鋼管の端部に溶接等によって取り付けることで、継手付き鋼管を構成することができる。
なお、上記の実施の形態では、鋼管は、管軸方向と直交する断面形状が円である円筒形のもので説明をしたが、これに限定されない。例えば、管軸方向と直交する断面形状が矩形である角形鋼管も本発明の鋼管に含まれる。
そして、施工現場等において、複数の継手付き鋼管の多条ねじ継手を連結することで、鋼管杭、鋼管矢板、鋼管矢板を連結した鋼管矢板壁、鋼管柱、鋼管梁等の構造体を形成することができる。つまり、これら構造体は、上記の実施の形態で説明した多条ねじ継手とこれら多条ねじ継手で連結された複数の鋼管とを備えている。
これら構造体を形成するに際して、連結対象となる一方の継手付き鋼管の回転を拘束した状態で、他方の継手付き鋼管の多条ねじ継手を前記一方の継手付き鋼管の多条ねじ継手に位置合わせして回転嵌合するようにすればよい。
例えば、構造体が鋼管杭又は鋼管矢板の場合には、一方の継手付き鋼管を先に地中に打設して、他方の継手付き鋼管を接合し、さらに打設することを繰り返せばよい。
また例えば、構造体が鋼管矢板壁の場合には、一方の連結継手を備える継手付き鋼管を、既に地中にある別の継手付き鋼管の隣に連結継手で接続しながら、先ず地中に打設して、他方の継手付き鋼管を接合し、連結継手の位置を合わせてから、さらに打設することを繰り返せばよい。
このとき、継手付き鋼管を地中に打設する方法については特に限定されず、中堀り杭工法、鋼管ソイルセメント杭工法、回転杭工法、振動工法、打撃工法等のいずれの工法も適用できる。
そして、本発明の多条ねじ継手は、誤嵌合を確実に防止できるので、鋼管矢板等のように回転嵌合完了時に上下の鋼管矢板の連結継手位置が異なることがなく、回転嵌合のやり直し等がなくなり、施工効率が向上する。
また、上記の説明では、物の発明として多条ねじ継手を説明したが、当該多条ねじ継手は以下のような設計方法によって設計される。
鋼管の端部に取り付けられ、雄ねじを有する内側継手管と雌ねじを有する外側継手管からなり、前記内側継手管及び前記外側継手管のねじが、4条以上の偶数条の多条ねじである多条ねじ継手の設計方法であって、
前記多条ねじを構成するねじが、以下に規定する要件を満たすように設計する。
形状の異なる2種類以上のねじによって構成し、各種類のねじを偶数条とすること(要件4、先の要件1に相当する)。
全てのねじ山及びねじ底は、ピッチを同じに設定すること(要件5、先の要件2に相当する)。
同一種類同士のねじであって隣り合うもの同士の位置を直線で結んで形成される直線又は多角形が、直線は管の中心を通ること、多角形はその重心が管の中心と一致すること、という条件を全ての直線及び多角形が満たすこと。ただし、形成される図形が全て正多角形であるものを除く(要件6、先の要件3に相当する)。
また、物の発明として説明した多条ねじ継手は以下のような製造方法によって製造される。
鋼管の端部に取り付けられ、雄ねじを有する内側継手管と雌ねじを有する外側継手管からなり、前記内側継手管及び前記外側継手管のねじが、4条以上の偶数条の多条ねじである多条ねじ継手の製造方法であって、
前記多条ねじを構成するねじが、以下に規定する要件を満たす。
形状の異なる2種類以上のねじを形成し、各種類のねじが偶数条であること(要件7、先の要件1に相当する)。
全てのねじ山及びねじ底は、ピッチを同じに形成すること(要件8、先の要件2に相当する)。
同一種類同士のねじであって隣り合うもの同士の位置を直線で結んで形成される直線又は多角形が、直線は管の中心を通ること、多角形はその重心が管の中心と一致すること、という条件を全ての直線及び多角形が満たすこと。ただし、形成される図形が全て正多角形であるものを除く(要件9、先の要件3に相当する)。
1 多条ねじ継手
3 上側の鋼管
5 雄ねじ
5a ねじ山(種類A)
5b ねじ底(種類A)
5as ねじ山(種類B)
5bs ねじ底(種類B)
5ass ねじ山(種類C)
5bss ねじ底(種類C)
5asss ねじ山(種類D)
5bsss ねじ底(種類D)
7 内側継手管
9 下側の鋼管
11 雌ねじ
11a ねじ山(種類A)
11b ねじ底(種類A)
11as ねじ山(種類B)
11bs ねじ底(種類B)
11ass ねじ山(種類C)
11bss ねじ底(種類C)
11asss ねじ山(種類D)
11bsss ねじ底(種類D)
13 外側継手管
15 管の中心
17 多角形の重心

Claims (8)

  1. 鋼管の端部に取り付けられ、雄ねじを有する内側継手管と雌ねじを有する外側継手管からなり、前記内側継手管及び前記外側継手管のねじが、4条以上の偶数条の多条ねじである多条ねじ継手であって、
    前記多条ねじを構成するねじが、以下に規定する要件を満たすことを特徴とする多条ねじ継手。
    (1)形状の異なる2種類以上のねじを備え、各種類のねじが偶数条であること。
    (1-1)形状が異なるねじの嵌合開始位置が相対したときには嵌合を開始できず、形状が同じねじの嵌合開始位置が相対したときには嵌合を開始できること。
    (2)全てのねじ山及びねじ底は、ピッチが同じであること。
    (3)同一種類同士のねじであって隣り合うもの同士の位置を直線で結んで形成される直線又は多角形が、直線は管の中心を通ること、多角形はその重心が管の中心と一致すること、という条件を全ての直線及び多角形が満たすこと。ただし、形成される図形が全て正多角形であるものを除く。
  2. 全てのねじ山とねじ底の継手軸方向隙間が同じに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の多条ねじ継手。
  3. 形状の違いは、ねじ山及びこれに対応するねじ底の高さ、幅、角度のいずれか又は複数が異なることであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多条ねじ継手。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の多条ねじ継手における内側継手管と外側継手管を、一端と他端に取り付けてなることを特徴とする継手付き鋼管。
  5. 請求項1乃至3のいずれかに記載の多条ねじ継手と、前記多条ねじ継手で連結された複数の鋼管とを備えることを特徴とする構造体。
  6. 請求項5に記載の構造体の施工方法であって、連結対象となる継手付き鋼管の一方の回転を拘束した状態で、他方の継手付き鋼管の多条ねじ継手を前記一方の継手付き鋼管の多条ねじ継手に位置合わせして回転嵌合することを特徴とする構造体の施工方法。
  7. 鋼管の端部に取り付けられ、雄ねじを有する内側継手管と雌ねじを有する外側継手管からなり、前記内側継手管及び前記外側継手管のねじが、4条以上の偶数条の多条ねじである多条ねじ継手の設計方法であって、
    前記多条ねじを構成するねじが、以下に規定する要件を満たすように設計することを特徴とする多条ねじ継手の設計方法。
    (4)形状の異なる2種類以上のねじによって構成し、各種類のねじを偶数条とすること。
    (4-1)形状が異なるねじの嵌合開始位置が相対したときには嵌合を開始できず、形状が同じねじの嵌合開始位置が相対したときには嵌合を開始できること。
    (5)全てのねじ山及びねじ底は、ピッチを同じに設定すること。
    (6)同一種類同士のねじであって隣り合うもの同士の位置を直線で結んで形成される直線又は多角形が、直線は管の中心を通ること、多角形はその重心が管の中心と一致すること、という条件を全ての直線及び多角形が満たすこと。ただし、形成される図形が全て正多角形であるものを除く。
  8. 鋼管の端部に取り付けられ、雄ねじを有する内側継手管と雌ねじを有する外側継手管からなり、前記内側継手管及び前記外側継手管のねじが、4条以上の偶数条の多条ねじである多条ねじ継手の製造方法であって、
    前記多条ねじを構成するねじが、以下に規定する要件を満たすことを特徴とする多条ねじ継手の製造方法。
    (7)形状の異なる2種類以上のねじを形成し、各種類のねじが偶数条であること。
    (7-1)形状が異なるねじの嵌合開始位置が相対したときには嵌合を開始できず、形状が同じねじの嵌合開始位置が相対したときには嵌合を開始できること。
    (8)全てのねじ山及びねじ底は、ピッチを同じに形成すること。
    (9)同一種類同士のねじであって隣り合うもの同士の位置を直線で結んで形成される直線又は多角形が、直線は管の中心を通ること、多角形はその重心が管の中心と一致すること、という条件を全ての直線及び多角形が満たすこと。ただし、形成される図形が全て正多角形であるものを除く。
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