JP7423218B2 - 組積造構造物の補強構造および補強方法 - Google Patents

組積造構造物の補強構造および補強方法 Download PDF

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本発明は、組積造構造物の補強構造および補強方法に関し、例えばレンガ壁などの既設の組積造構造物に対してPC鋼棒などを設けることにより耐震補強する組積造構造物の補強構造および補強方法に関するものである。
従来、レンガ造、石造、コンクリートブロック造などの組積造構造物の補強構造が知られている。一例としてレンガ造を例にとり説明すると、従来のレンガ造建物の耐震補強において、レンガ壁に頂部から鉛直に孔を堀り、中にPC鋼棒を挿入し、端部を定着し、プレストレスを導入することによりレンガ壁の構造性能を向上させる工法がある。この工法では、レンガ壁下部でPC鋼棒を定着させる方法として、レンガ壁頂部から鉛直下向きに孔をあけ、レンガ壁下部あるいは基礎コンクリートに、鉛直孔につながる横孔を側面から掘り、横孔内でPC鋼棒下端部に定着板を取り付けて定着する方法(例えば、特許文献1を参照)などが提案されている。
これらの工法では側面に大きな横孔をあける必要があり、手間がかかるとともに、建物の外観に影響を与えて文化財的価値を損なうという問題があった。これに対し、本特許出願人は、レンガに大きな損傷を与えない方法として、レンガ壁頂部から鉛直孔に特殊な工具を挿入して鉛直孔を大きく拡径し、端部にナット等の定着部を設けたPC鋼棒を挿入し、孔内にグラウトを充填する方法(特許文献2を参照)、鉛直孔面を削ってシアキーを形成して、端部にナット等の定着部を設けたPC鋼棒を挿入し、孔内にグラウトを充填する方法(特許文献3を参照)を既に提案している。
特開2010-281033号公報 特願2018-233747号(現時点で未公開) 特願2019-075891号(現時点で未公開)
しかし、上記の従来の特許文献2の鉛直孔を拡径する方法や、特許文献3のシアキーを形成する方法では、特殊な工具が必要であり、技術的に難易度が高いという問題があった。このため、特殊な工具を使うことなく、簡易な作業で定着部の周囲の孔壁にシアキーを形成することができる補強技術が求められていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、特殊な工具を使うことなく、簡易な作業で定着部の周囲の孔壁にシアキーを形成することができる組積造構造物の補強構造および補強方法を提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る組積造構造物の補強方法は、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する方法であって、組積造構造物の内部に、緊張材または補強材として機能する棒状材を鉛直方向に挿通配置するための縦孔を設けるステップと、棒状材の下端に対応する高さ位置近傍であって棒状材の下端よりも上における組積造構造物の目地に、目地の表面から縦孔に通じる横孔を設けるステップと、棒状材の下部に定着部を設けた後、この棒状材を縦孔に挿通配置するステップと、少なくとも縦孔内の定着部の周囲と横孔に固化材を充填して定着部を埋設し、定着部の周囲にシアキーを形成するステップと、棒状材の下端を定着するステップとを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法は、上述した発明において、横孔を、異なる位置の目地の表面から縦孔に通じる2つ以上の横孔、または、横方向の目地の表面から縦孔に通じる扁平状の横孔としたことを特徴とする。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法は、上述した発明において、横孔を、上下方向に間隔をあけて複数設けることを特徴とする。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法は、上述した発明において、棒状材は緊張材として機能するものであり、この棒状材の下端を固定端、上端を緊張端として棒状材に緊張力を付与して組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させるステップをさらに備えることを特徴とする。
また、本発明に係る組積造構造物の補強構造は、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する構造であって、組積造構造物の内部に設けられ、緊張材または補強材として機能する棒状材を鉛直方向に挿通配置するための縦孔と、棒状材の下端に対応する高さ位置近傍であって棒状材の下端よりも上における組積造構造物の目地に設けられ、目地の表面から縦孔に通じる横孔と、縦孔に挿通配置される棒状材と、棒状材の下部に設けられる定着部と、定着部の周囲にシアキーを形成するために、少なくとも縦孔内の定着部の周囲と横孔に設けられる固化材とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造は、上述した発明において、横孔を、異なる位置の目地の表面から縦孔に通じる2つ以上の横孔、または、横方向の目地の表面から縦孔に通じる扁平状の横孔としたことを特徴とする。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造は、上述した発明において、横孔を、上下方向に間隔をあけて複数設けたことを特徴とする。
本発明に係る組積造構造物の補強方法によれば、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する方法であって、組積造構造物の内部に、緊張材または補強材として機能する棒状材を鉛直方向に挿通配置するための縦孔を設けるステップと、棒状材の下端に対応する高さ位置近傍であって棒状材の下端よりも上における組積造構造物の目地に、目地の表面から縦孔に通じる横孔を設けるステップと、棒状材の下部に定着部を設けた後、この棒状材を縦孔に挿通配置するステップと、少なくとも縦孔内の定着部の周囲と横孔に固化材を充填して定着部を埋設し、定着部の周囲にシアキーを形成するステップと、棒状材の下端を定着するステップとを備えるので、特殊な工具を使うことなく、簡易な作業で定着部の周囲の孔壁にシアキーを形成することができ、PC鋼棒等の棒状材の定着耐力を向上させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法によれば、横孔を、異なる位置の目地の表面から縦孔に通じる2つ以上の横孔、または、横方向の目地の表面から縦孔に通じる扁平状の横孔としたので、棒状材の定着耐力をより向上させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法によれば、横孔を、上下方向に間隔をあけて複数設けるので、棒状材の定着耐力をより向上させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法によれば、棒状材は緊張材として機能するものであり、この棒状材の下端を固定端、上端を緊張端として棒状材に緊張力を付与して組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させるステップをさらに備えるので、組積造構造物に圧縮力を作用させる場合において、掘削量が少なくて済み、組積造構造物の外観に与える影響を小さく抑えることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る組積造構造物の補強構造によれば、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する構造であって、組積造構造物の内部に設けられ、緊張材または補強材として機能する棒状材を鉛直方向に挿通配置するための縦孔と、棒状材の下端に対応する高さ位置近傍であって棒状材の下端よりも上における組積造構造物の目地に設けられ、目地の表面から縦孔に通じる横孔と、縦孔に挿通配置される棒状材と、棒状材の下部に設けられる定着部と、定着部の周囲にシアキーを形成するために、少なくとも縦孔内の定着部の周囲と横孔に設けられる固化材とを備えるので、特殊な工具を使うことなく、簡易な作業で定着部の周囲の孔壁にシアキーを形成することができ、PC鋼棒等の棒状材の定着耐力を向上させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造によれば、横孔を、異なる位置の目地の表面から縦孔に通じる2つ以上の横孔、または、横方向の目地の表面から縦孔に通じる扁平状の横孔としたので、棒状材の定着耐力をより向上させることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造によれば、横孔を、上下方向に間隔をあけて複数設けたので、棒状材の定着耐力をより向上させることができるという効果を奏する。
図1は、本発明に係る組積造構造物の補強方法および補強構造の実施の形態1を示すレンガ壁の図であり、(1)は平断面図、(2)は正断面図、(3)は側断面図、(4)、(5)は他の平断面図である。 図2は、本発明に係る組積造構造物の補強方法および補強構造の実施の形態2を示すレンガ壁の図であり、(1)は平断面図、(2)は正断面図、(3)は側断面図である。 図3は、本発明に係る組積造構造物の補強方法および補強構造の実施の形態3を示すレンガ壁の図であり、(1)は平断面図、(2)は正断面図、(3)は側断面図である。 図4は、本発明に係る組積造構造物の補強方法および補強構造の実施の形態4を示すレンガ壁の図であり、(1)は平断面図、(2)は正断面図、(3)は側断面図である。 図5は、本発明に係る組積造構造物の補強方法および補強構造の実施の形態5を示すレンガ壁の図であり、(1)は平断面図、(2)は正断面図、(3)は側断面図、(4)は変形例の平断面図である。 図6は、本発明に係る組積造構造物の補強方法および補強構造の実施の形態6を示すレンガ壁の図であり、(1)は平断面図、(2)は正断面図、(3)は側断面図である。 図7は、本発明に係る組積造構造物の補強方法および補強構造の実施の形態7を示すレンガ壁の図であり、(1)は平断面図、(2)は正断面図、(3)は側断面図である。 図8は、本発明に係る組積造構造物の補強方法および補強構造の実施の形態8を示すレンガ壁の図であり、(1)は平断面図、(2)は正断面図、(3)は側断面図である。
以下に、本発明に係る組積造構造物の補強構造および補強方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
<実施の形態1>
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
本実施の形態1では、補強対象の組積造構造物として、図1に示すようなレンガ壁10を例にとり説明する。このレンガ壁10は、組積材としてのレンガ12を積み上げて形成した壁体であり、図示しない地中に設けたコンクリート基礎上に構築されている。レンガ12は、粘土や頁岩と泥を焼き固めて、または圧縮して作られた直方体状の建築材である。上下および左右に隣り合うレンガ12間には、モルタルやグラウトなどからなる目地14が設けられている。なお、本発明の組積造構造物はレンガ壁に限るものではなく、例えば、コンクリートブロックを組積材として積み上げたコンクリート壁や、石材などを組積材として積み上げた壁であってもよい。
また、本実施の形態1では、棒状材がPC鋼棒(緊張材)である場合を例にとり説明するが、本発明の棒状材はこれに限るものではない。例えばPC鋼線、FRP製のより線、ロッドなどの緊張材でもよいし、鉄筋などの補強材であってもよい。
本実施の形態1の補強方法は、ステップ1~5の施工手順で行われる。以下、各ステップの施工内容について説明する。
(ステップ1)
まず、図1(1)~(3)に示すように、レンガ壁10の上端16(頂部)から下部に向けて鉛直方向に孔を掘る。以下、この孔を鉛直孔と呼ぶことにする。この鉛直孔18は、円形断面の縦孔であり、レンガ壁10あるいは図外のコンクリート基礎の下まで貫通させず、レンガ壁10下部あるいはコンクリート基礎内のPC鋼棒20の下部を定着させる位置まで穿孔する。鉛直孔18の孔径は、後述するように、PC鋼棒20の下端部に取り付ける定着部22の直径あるいは最大寸法よりも若干大径に設定する。なお、特に図示しないが、鉛直孔18は、レンガ壁10の長さ方向Xに沿って間隔をあけて複数形成するものとする。鉛直孔18は、例えば図1(4)や(5)に示すように壁厚方向Yに間隔をあけて2列配置してもよい。
(ステップ2)
次に、図1(1)~(3)に示すように、PC鋼棒20の下端を定着する高さ位置近傍の横方向の目地14(水平目地)に、横孔を削孔する。以下、この孔を目地横孔と呼ぶことにする。この目地横孔24は、レンガ壁10の正面から、鉛直孔18に交差あるいは到達するように延びる円形断面の小径の孔である。図の例では、同じ横方向の目地14の左右方向(壁の長さ方向X)に若干間隔をあけた2か所の位置から、それぞれ鉛直孔18の左右の孔壁に向けて水平に目地横孔24を削孔している。目地横孔24は、それぞれ平面視でレンガ壁10の正面に対して直交する向きに直線状に延びている。目地横孔24の奥端は鉛直孔18よりも奥側に位置する。目地横孔24と鉛直孔18が繋がる位置は、PC鋼棒20の定着部22の少し上に来るような位置に設定する。目地横孔24は設置箇所数を増やすことで、定着耐力をより大きくすることが可能である。目地横孔24の形状は円形断面に限るものではなく、いかなる形状でもよい。目地横孔24は、いかなる方法で形成してもよく、例えばドリルで形成してもよい。
(ステップ3)
次に、PC鋼棒20の下端部に定着部22を取り付けた後、このPC鋼棒20をレンガ壁10の上端16から鉛直孔18に挿入する。定着部22の大きさ・形状は、上述したように、鉛直孔18の径よりも小さく、鉛直孔18の上端16から挿入できる大きさ・形状に設定する。なお、本発明の定着部はこれに限るものではなく、PC鋼棒20等の棒状材に定着用の頭部を付加するものであればいかなるものでもよい。例えばPC鋼棒に螺合するタイプの定着ナットでもよいし、定着ナットの上に鋼板などを設けてもよい。緊張材や補強材に定着部を溶接や摩擦圧接やネジ接合により取り付けてもよいし、緊張材や補強材自体を加熱等により成形してこぶ状の頭部を作ってもよい。また、定着部22は、鉛直方向に間隔をあけてPC鋼棒20の下端部に複数設けてもよい。この場合は、最上部に配置した定着部22よりも上側に目地横孔24が少なくとも1か所あるように設定する必要がある。
(ステップ4)
次に、鉛直孔18内および目地横孔24内に固化材26を注入して、鉛直孔18とPC鋼棒20の間の隙間、目地横孔24に充填する。固化材26は、鉛直孔18の全長に充填する必要はないが、少なくとも鉛直孔18の最下部から最上部の目地横孔24の上までの範囲には必ず充填する。固化材26は既設のレンガ壁10よりも圧縮強度の大きい材料を使用することが望ましい。固化材26としては、例えばモルタル、グラウト、コンクリートなどの無機材料、エポキシ樹脂などの有機材料など、PC鋼棒20の定着部から作用する力を鉛直孔18の孔壁に伝達できるものなら何でもよい。
(ステップ5)
次に、固化材26が固化した後、PC鋼棒20の下端を固定端、上端を緊張端としてPC鋼棒20に緊張力を付与して、PC鋼棒20の上端をレンガ壁10の上端16に設けた図外の定着板等に定着する。定着部22からシアキーを介して圧縮力がレンガ壁10に伝達され、PC鋼棒20が鉛直孔18内に定着されることになる。ここで、目地横孔24の部分が固化材26とレンガ12との界面でシアキーとして働き、固化材26とレンガ12の付着耐力を高めるので、PC鋼棒20の定着耐力を高めることができる。これにより、レンガ壁10の上端16と下部の定着部22、レンガ壁10との間に上下方向の圧縮力を作用させてレンガ壁10を補強し、本実施の形態1に係る組積造構造物の補強構造100を得ることができる。
本実施の形態1によれば、拡径工具等の特殊な工具を使うことなく、簡易な作業で定着部22の周囲の孔壁にシアキーを形成することができ、PC鋼棒20のような棒状材の定着耐力を向上させることができる。また、PC鋼棒20を鉛直方向に挿入するレンガ壁10の補強において、レンガ壁10の壁面に大きな横孔をあけることなく、大きな定着耐力を有する下定着部を形成することが可能となる。これにより、既存のレンガ壁10の外観の損傷が小さくなり、文化財としての価値低下が少なくなる。
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図2に示すように、本実施の形態2の組積造構造物の補強構造200は、上記の実施の形態1のステップ2で形成する目地横孔24を、平面視で壁厚方向Yに対して斜め方向に設けたものである。図の例では、同じ横方向の目地14の左右方向(壁の長さ方向X)に大きく間隔をあけた2か所の位置から、それぞれ鉛直孔18の左右の孔壁に向けて水平に目地横孔24を削孔している。このように、目地横孔24は、鉛直孔18に交差あるいは到達するならば、孔の角度は壁面に垂直でもよいし、水平や鉛直に対して角度がついていてもよい。このようにしても、上記の実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図3に示すように、本実施の形態3の組積造構造物の補強構造300は、上記の実施の形態1において、目地横孔24を複数段設けたものである。図の例では、上下方向に間隔をあけた3段の横方向の目地14に対してそれぞれ目地横孔24を設けている。各段の目地横孔24の構造は、上記の実施の形態1の目地横孔24と同様である。このように目地横孔24を上下方向に間隔をあけて複数設けると、PC鋼棒20の定着耐力をより向上させることができる。
<実施の形態4>
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
図4に示すように、本実施の形態4の組積造構造物の補強構造400は、上記の実施の形態1において、2つの目地横孔24をレンガ壁10の正面10Aと背面10Bの両壁面からそれぞれ設けたものである。図の例では、レンガ壁10の正面10Aの横方向の目地14の左側の位置から、鉛直孔18の左の孔壁に向けて水平に目地横孔24を削孔している。また、レンガ壁10の背面10Bの同じ横方向の目地14の右側の位置から、鉛直孔18の右の孔壁に向けて水平に目地横孔24を削孔している。各目地横孔24は、平面視でレンガ壁10の正面10A、背面10Bに対してそれぞれ直交する向きに直線状に延びている。このように目地横孔24はレンガ壁10の片面のみから削孔してもよいし、両面から削孔してもよい。いずれにしても上記の実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
<実施の形態5>
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
図5(1)~(3)に示すように、本実施の形態5の組積造構造物の補強構造500は、上記の実施の形態1のステップ2で形成する目地横孔24を扁平状にし、かつ、上下方向に間隔をあけて2段設けたものである。この目地横孔24Aは、レンガ壁10の正面視で横に細長く内部奥側に向けて水平に延びる扁平断面の孔であり、平面視で正面10A側が方形で背面10B側が円形の形状である。この目地横孔24Aは、鉛直孔18に交差し、その奥端は鉛直孔18よりも奥側に位置する。この目地横孔24Aは、いかなる方法で形成してもよく、例えばドリルで並べて孔をあけて形成してもよいし、チェーンソーのような切削機械で目地14を水平に削って形成してもよい。このようにしても、上記の実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
なお、目地横孔の平面形状については、図5(1)のような形状に限るものではなく、様々な形状に設定可能である。例えば図5(4)の目地横孔24Bに示すように、平面視で略扇状の扁平孔としてもよい。この目地横孔24Bを形成する場合には、例えば水平目地14から鉛直孔18に向けてドリルで丸孔を直線状に削孔し、水平目地14内を左右に動かしてレンガ壁10内部に広い面を削るようにすればよい。この目地横孔24Bに固化材26を充填すると大きなシアキーを形成することができる。しかも、外観上は小径の孔しか開かないので、レンガ壁10の外観に与える影響を小さく抑えることができる。
<実施の形態6>
次に、本発明の実施の形態6について説明する。
図6に示すように、本実施の形態6の組積造構造物の補強構造600は、上記の実施の形態1において、目地横孔24の中に補強材28を設けたものである。補強材28としては、例えば鉄筋、鋼板、FRP、その他金属材などの材料を用いることができる。補強材28は、鉛直孔18を横切るように配置してもよいし、あるいは到達するように挿入してもよい。このようにすることで、PC鋼棒20の定着耐力をより向上させることができる。固化材26は、補強材28を目地横孔24の中に配置した後で充填することができる。
<実施の形態7>
次に、本発明の実施の形態7について説明する。
図7に示すように、本実施の形態7の組積造構造物の補強構造700は、上記の実施の形態5において、扁平状の目地横孔24Aの中に、先端にフック30が付いたフック付き鉄筋32を設けたものである。フック付き鉄筋32のフック30は鉛直孔18の周囲を囲むように配置する。このようにすることで、PC鋼棒20の定着耐力をより向上させることができる。なお、目地横孔24Aにフック付き鉄筋32を設ける代わりに、例えば鋼板、FRP、その他金属材などの補強材を、鉛直孔18の周囲を囲むように配置してもよい。
<実施の形態8>
次に、本発明の実施の形態8について説明する。
図8に示すように、本実施の形態8の組積造構造物の補強構造800は、上記の実施の形態1~4、6のステップ2で形成する目地横孔24を、縦方向の目地14(縦目地)の表面から鉛直孔18に交差または到達するように形成したものである。図の例では、PC鋼棒20の下端を定着する高さ位置近傍の左右方向に若干間隔をあけた縦方向の目地14(縦目地)から、それぞれ鉛直孔18の左右の孔壁に向けて水平に目地横孔24を削孔している。目地横孔24は、それぞれ平面視で壁厚方向Yに対して斜め方向に直線状に延びている。このようにしても、上記の実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。このように、本発明において目地横孔を設ける目地14は、縦目地でも横目地でもよい。
以上説明したように、本発明に係る組積造構造物の補強方法によれば、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する方法であって、組積造構造物の内部に、緊張材または補強材として機能する棒状材を鉛直方向に挿通配置するための縦孔を設けるステップと、棒状材の下端に対応する高さ位置近傍であって棒状材の下端よりも上における組積造構造物の目地に、目地の表面から縦孔に通じる横孔を設けるステップと、棒状材の下部に定着部を設けた後、この棒状材を縦孔に挿通配置するステップと、少なくとも縦孔内の定着部の周囲と横孔に固化材を充填して定着部を埋設し、定着部の周囲にシアキーを形成するステップと、棒状材の下端を定着するステップとを備えるので、特殊な工具を使うことなく、簡易な作業で定着部の周囲の孔壁にシアキーを形成することができ、PC鋼棒等の棒状材の定着耐力を向上させることができる。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法によれば、横孔を、異なる位置の目地の表面から縦孔に通じる2つ以上の横孔、または、横方向の目地の表面から縦孔に通じる扁平状の横孔としたので、棒状材の定着耐力をより向上させることができる。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法によれば、横孔を、上下方向に間隔をあけて複数設けるので、棒状材の定着耐力をより向上させることができる。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法によれば、棒状材は緊張材として機能するものであり、この棒状材の下端を固定端、上端を緊張端として棒状材に緊張力を付与して組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させるステップをさらに備えるので、組積造構造物に圧縮力を作用させる場合において、掘削量が少なくて済み、組積造構造物の外観に与える影響を小さく抑えることができる。
また、本発明に係る組積造構造物の補強構造によれば、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する構造であって、組積造構造物の内部に設けられ、緊張材または補強材として機能する棒状材を鉛直方向に挿通配置するための縦孔と、棒状材の下端に対応する高さ位置近傍であって棒状材の下端よりも上における組積造構造物の目地に設けられ、目地の表面から縦孔に通じる横孔と、縦孔に挿通配置される棒状材と、棒状材の下部に設けられる定着部と、定着部の周囲にシアキーを形成するために、少なくとも縦孔内の定着部の周囲と横孔に設けられる固化材とを備えるので、特殊な工具を使うことなく、簡易な作業で定着部の周囲の孔壁にシアキーを形成することができ、PC鋼棒等の棒状材の定着耐力を向上させることができる。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造によれば、横孔を、異なる位置の目地の表面から縦孔に通じる2つ以上の横孔、または、横方向の目地の表面から縦孔に通じる扁平状の横孔としたので、棒状材の定着耐力をより向上させることができる。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造によれば、横孔を、上下方向に間隔をあけて複数設けたので、棒状材の定着耐力をより向上させることができる。
以上のように、本発明に係る組積造構造物の補強構造および補強方法は、例えばレンガ壁などの既設の組積造構造物に対してPC鋼棒などでプレストレスを導入することにより耐震補強したり、また、既設の組積造構造物に鉄筋を挿入して補強する際に、手間を要さずに施工するのに有用であり、特に、既設の組積造構造物の外観に与える影響を小さく抑えて耐震補強するのに適している。
10 レンガ壁(組積造構造物)
10A 正面
10B 背面
12 レンガ(組積材)
14 目地
16 上端(頂部)
18 鉛直孔(縦孔)
20 PC鋼棒(棒状材)
22 定着部
24,24A,24B 目地横孔(横孔)
26 固化材
28 補強材
30 フック
32 フック付き鉄筋
100~800 組積造構造物の補強構造
X 壁の長さ方向
Y 壁厚方向

Claims (7)

  1. 組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する方法であって、
    組積造構造物の内部に、緊張材または補強材として機能する棒状材を鉛直方向に挿通配置するための縦孔を設けるステップと、
    棒状材の下端に対応する高さ位置近傍であって棒状材の下端よりも上における組積造構造物の目地に、目地の表面から縦孔に通じる横孔を設けるステップと、
    棒状材の下部に定着部を設けた後、この棒状材を縦孔に挿通配置するステップと、
    少なくとも縦孔内の定着部の周囲と横孔に固化材を充填して定着部を埋設し、定着部の周囲にシアキーを形成するステップと、
    棒状材の下端を定着するステップとを備え
    横孔が、縦孔に交差あるいは到達するように延びる小径の孔であることを特徴とする組積造構造物の補強方法。
  2. 横孔を、異なる位置の目地の表面から縦孔に通じる2つ以上の横孔としたことを特徴とする請求項1に記載の組積造構造物の補強方法。
  3. 横孔を、上下方向に間隔をあけて複数設けることを特徴とする請求項1または2に記載の組積造構造物の補強方法。
  4. 棒状材は緊張材として機能するものであり、この棒状材の下端を固定端、上端を緊張端として棒状材に緊張力を付与して組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させるステップをさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の組積造構造物の補強方法。
  5. 組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する構造であって、
    組積造構造物の内部に設けられ、緊張材または補強材として機能する棒状材を鉛直方向に挿通配置するための縦孔と、
    棒状材の下端に対応する高さ位置近傍であって棒状材の下端よりも上における組積造構造物の目地に設けられ、目地の表面から縦孔に通じる横孔と、
    縦孔に挿通配置される棒状材と、棒状材の下部に設けられる定着部と、
    定着部の周囲にシアキーを形成するために、少なくとも縦孔内の定着部の周囲と横孔に設けられる固化材とを備え
    横孔が、縦孔に交差あるいは到達するように延びる小径の孔であることを特徴とする組積造構造物の補強構造。
  6. 横孔を、異なる位置の目地の表面から縦孔に通じる2つ以上の横孔としたことを特徴とする請求項5に記載の組積造構造物の補強構造。
  7. 横孔を、上下方向に間隔をあけて複数設けたことを特徴とする請求項5または6に記載の組積造構造物の補強構造。
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