JP6936613B2 - 組積造の補強構造及び補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、レンガ、コンクリートブロック、石が組み上げられて形成される組積造の補強構造及び補強方法に関する。
レンガ、コンクリートブロック、石などが組み上げられて形成された建造物は組積造と呼ばれている。明治から昭和初期にかけては洋風のレンガ造りの組積造が多く建てられ、現在その文化的価値が高まるとともに観光資源としても貴重であり保全が求められている。
図6の一部として例示するように、組積造500は地中の既存のコンクリート基礎502の上に設けられ、レンガの根積部504及び組積造壁505を有する。根積部504は組積造壁505よりも幅広に形成されており地中に設けられることがある。図6において組積造壁505は紙面に垂直な方向に延在しており左右の一方が室外側、他方が室内側となる。なお、組積造500及びコンクリート基礎502は、図面が煩雑となるのを避けるために断面ハッチングを省略しており、後述する他図における対応する要素についても同様である。
このような古い組積造は現行の耐震基準からみて必ずしも十分な強度を有しているとは言えず、なんらかの補強が必要でありながらも外観上の文化財としての価値を大きく損なう補強方法は好ましくない。また、将来的に補強部材を撤去して元の状態に戻す可逆性が要求されることがある。
そこで、特許文献1には図6に示すような工法が提案されている。すなわち、地面から根積部504及びコンクリート基礎502の一方の面を露呈させるだけの領域の作業エリア506を予め掘削しておき、組積造壁505の上端部からコンクリート基礎502の下端まで貫通する貫通孔508を形成するとともに、コンクリート基礎502の側面から貫通孔508に達する横穴510を形成する。そして形成した貫通孔508に緊張材516を挿入し、その下端に横穴510から定着板520を取り付けるとともに補強用のスパイラル522を挿入する。横穴510は比較的深くて作業性が悪いため、緊張材516の先端にはあらかじめナットが取り付けられており、貫通孔508もそれに応じてやや大径に設定されている。また、緊張材516に取り付けやすいように定着板520には深い挿入切欠きが設けられている。
さらに、横穴510を充填剤で充填して緊張材516を定着板520とともに固定した後に、緊張材516の壁上端から突出した部分を上方に引っ張ることにより張力を付与し、緊張材516に張力が付与された状態で組積造壁505の壁上端に固定する。
このような工法では、緊張材516の張力により組積造壁505に対して鉛直圧縮力がプレストレスとして加わることになり、組積造壁505のせん断応力や曲げ耐力を向上させることができて耐震性が向上し、しかも外観がそのまま維持される。
特開2011−6947号公報
ところで、上記の図6に示す補強構造及び補強方法では、既存のコンクリート基礎502に横穴510を形成する必要から作業エリア506の範囲を掘削しなければならず、掘削機の用意、掘削工程、土砂の保管及び埋戻し工程を要することから大規模工事となって、コスト増と工期の長期化が避けられない。作業エリア506は比較的広く且つ深いため崩落防止の養生と、土砂粉塵の飛散防止対策が必要である。
比較的深い横穴510を削孔するためには用いる削孔機はやや大型となり、それだけ作業エリア506も広くしなければならない。
また、コンクリート基礎502は強度上重要であり横穴510を形成することは本来好ましくなく、必要な強度に復帰させるためにはスパイラル522を設置するなどの対処が必要となる。
横穴510は比較的深いため充填剤の充填が困難であり、しかも土砂の混入防止を図るとともに充填剤が外部に無駄に漏出することのないように横穴510の開口部をある程度塞いでおかなければならない。また充填剤が十分硬化するまでの養生期間は作業エリア506を埋め戻すことができない。
また、作業者は狭く暗い作業エリア506での作業を強いられ、しかも横穴510は比較的深くなるため、定着板520の装着は目視できない手探り作業となってしまう。さらに、仮にコンクリート基礎502がRC構造であるとすれば横穴510の形成はかなり困難である。
古い組積造500が立設している地面は同様に古いタイル張り構造であって組積造500と一体的な文化的価値のある場合もあり、その部分を作業エリア506として比較的広く掘削することには問題もあり、施工後に原状復帰させるにしても十分な注意が必要である。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、地面を掘削することなく、または少ない掘削量で緊張材の下端を適切に固定することができ、あるいは基礎部に対する削孔量が少なくて済む組積造の補強構造及び補強方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる組積造の補強構造は、組積造又は該組積造を支える地中の基礎部の側面に形成された横穴と、前記組積造の一部である組積造壁の壁上端から下方に向かって形成されて前記横穴に連通する貫通孔と、前記貫通孔より下方で、前記横穴からさらに下方に向かって形成された前記貫通孔より広い緊張材固定穴と、前記壁上端から前記緊張材固定穴まで延在する緊張材と、を有し、前記緊張材は、その下端が前記緊張材固定穴の中で前記貫通孔より広い定着部材とともに充填剤により固定され、張力が付与された状態で上方部分が前記壁上端に固定されていることを特徴とする。これにより、地面を掘削することなく、または少ない掘削量で緊張材の下端を適切に固定することができる。横穴、貫通孔は埋め戻しておいてもよい。
前記横穴は、前記組積造壁に形成されていると地面の掘削は不要であるとともに、地下作業がなくなり作業性が向上する。
前記緊張材固定穴及び前記緊張材は、前記基礎部まで達していると緊張材を強固に固定でき、十分な張力を付与することができる。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる組積造の補強方法は、組積造又は該組積造を支える地中の基礎部の側面から、所定の交差箇所まで横穴を形成する横穴形成工程と、前記組積造の一部である組積造壁の壁上端から下方に向かって前記交差箇所まで連通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記交差箇所からさらに下方に向かって前記貫通孔より広い緊張材固定穴を形成する緊張材固定穴形成工程と、前記壁上端から前記緊張材固定穴まで緊張材を挿入し、前記緊張材の下端を前記緊張材固定穴の中で前記貫通孔より広い定着部材とともに充填剤により固定する緊張材下部固定工程と、前記緊張材の上方部分を上方に引っ張ることにより張力を付与する張力付与工程と、前記緊張材に張力が付与された状態で前記緊張材の上方部分を前記壁上端に固定する緊張材上部固定工程と、を有することを特徴とする。これにより、地面を掘削することなく、または少ない掘削量で緊張材の下端を適切に固定することができる。
前記貫通孔及び前記緊張材固定穴は削孔機によって削孔され、前記貫通孔形成工程では、前記削孔機の工具軸の先端に前記貫通孔の径に対応した第1工具が設けられ、該第1工具により前記貫通孔が削孔され、前記緊張材固定穴形成工程では、前記工具軸の先端に前記緊張材固定穴の径に対応した第2工具が設けられ、該第2工具により前記緊張材固定穴が削孔され、前記第2工具は前記横穴内で前記工具軸の先端に設けられてもよい。これにより、貫通孔は緊張材の径に応じた細径にすることができる一方、緊張材固定穴は緊張材に定着部材を設ける程度に大径にすることができる。
前記貫通孔形成工程で前記削孔機により前記貫通孔を形成した後、前記横穴内で前記工具軸から前記第1工具を取り外し前記第2工具に交換する工具交換工程を有してもよい。これにより前記貫通孔形成工程の後に削孔機の工具軸を貫通孔から抜き取ることなく緊張材固定穴形成工程に移行することができる。
前記横穴の開口部の少なくとも一部は、前記組積造の表面を形成するブロック体の目地に沿った形状とすると横穴の施工跡が目立たなくなる。
前記緊張材固定穴の内側面を削って表面を粗くし又は溝部を設ける穴側面加工工程により、充填剤の付着強度を高めてもよい。
前記緊張材固定穴に補強筋を設ける穴補強工程を有してもよい。
本発明にかかる組積造の補強構造及び補強方法では、組積造又は該組積造を支える地中の基礎部の側面に横穴を形成し、組積造壁の壁上端から下方に向かって貫通孔を形成し、さらに貫通孔より下方に緊張材固定穴を形成している。横穴は組積造の側面に形成すると基礎部に横穴を形成するのに比べて地面を掘削することなく、または少ない掘削量で緊張材の下端を適切に固定することができる。また、横穴は比較的浅くて済み、横穴の削孔や横穴内での作業が容易となる。組積造を支える地中の基礎部に横穴を形成する場合においても、該基礎部に対する削孔量は少なくて済む。
図1は、本実施の形態にかかる組積造の補強構造を示す側面断面図である。 図2は、本実施の形態にかかる組積造の補強方法で、横穴から工具軸のビットを交換する様子を示す一部断面斜視図である。 図3は、本実施の形態にかかる組積造の補強方法で、横穴から緊張材に定着板を取り付ける様子を示す一部断面斜視図である。 図4は、本実施の形態の第1の変形例にかかる組積造の補強構造を示す側面断面図である。 図5は、本実施の形態の第2の変形例にかかる組積造の補強構造を示す側面断面図である。 図6は、従来技術にかかる組積造の補強構造を示す側面断面図である。
以下に、本発明にかかる組積造の補強構造及び補強方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
図1に示すように、本実施の形態にかかる補強構造10は組積造12を補強するものである。組積造12は地面13より下(つまり地中)のコンクリート基礎(基礎部)14の上に設けられ、地中の根積部16とほぼ全部が地上の組積造壁18とを有し、例えば、レンガ、コンクリートブロック、石が組み上げられて形成されている。
根積部16はコンクリート基礎14の上に固定され、下部になるに従って幅広となり上部の重みを分散させる構造である。組積造壁18は、根積部16の上に固定され、そのほとんどは地上にあって建造物の壁を形成している。組積造壁18は紙面に垂直な方向に延在しており左右の一方が室外側、他方が室内側となる。組積造壁18が紙面に垂直な方向に幅広である場合には、補強構造10はその幅に応じて複数設けられる。
組積造12の補強構造10は、組積造壁18の比較的下方における側面に形成された横穴20と、組積造壁18の壁上端22から下方に向かって形成されて横穴20に連通する貫通孔24と、貫通孔24より下方で、横穴20からさらに下方に向かって形成された緊張材固定穴26と、壁上端22から緊張材固定穴26まで延在する緊張材28とを有する。貫通孔24は組積造壁18の厚み方向(図1の左右方向)における略中央に設けられ、緊張材固定穴26は貫通孔24と同軸状に設けられる。緊張材固定穴26は貫通孔24よりも広い断面積を有し、その底部は根積部16に達している。
緊張材28は防錆処理が施された高強度のPC鋼棒であり、下端近傍にはワッシャ付きのナット30に支えられた定着板(定着部材)32が設けられている。緊張材28は、例えばワイヤなどの耐高張力部材であってもよい。定着板32は貫通孔24よりも広い断面積である。横穴20は非貫通の比較的浅い有底穴であり、その開口は後述する第1ビット42(図2参照)、第2ビット44、定着板32(図3参照)及びナット30が挿入できる程度の比較的狭い面積で足りる。横穴20は条件によって室内側又は室外側のいずれに設けてもよいが、建物の外観保全が特に重視される場合には室内側に設けるとよい。横穴20は定着板32を設ける位置よりも上方であればよいがなるべく下方に設け、貫通孔24が長くなるように設定すると好適である。
貫通孔24は細径であり緊張材28との隙間は十分小さく設定されている。緊張材固定穴26は貫通孔24よりも十分に大径であり、定着板32よりもやや大径である。
定着板32は緊張材固定穴26の略中央に配置され、緊張材28の下端部とともに緊張材固定穴26の中で充填剤(グラウドともいう。)としてのモルタルやコンクリートにより固定されている。緊張材固定穴26には補強筋である縦スパイラル50及び/又は穴補強鉄筋52が設けられている。補強筋はこれ以外の形態のものでもよい。
壁上端22には組積造壁18の紙面垂直方向のほぼ全長にわたって鋼材又は他の適切な強度部材の補強梁34が配設されている。緊張材28の上端は補強梁34の貫通孔を通って上方に突出しており、固定具37によって補強梁34を介して壁上端22に固定されている。補強構造10が1つの組積造壁18に対して複数設けられる場合には補強梁34は共用できる。後述するように緊張材28は張力が付与された状態で壁上端22に固定されている。
次に、このような補強構造10を設けることによる組積造12の補強方法について説明する。最初に組積造12に支えられている屋根は必要に応じて一部または全部を一時的に取り外しておく。屋根が貫通孔24の形成に支障がなければこの限りではない。また、壁上端22に補強梁34を設けておく。
そして、横穴形成工程として、組積造壁18の比較的下方の側面から、所定の交差箇所38まで横穴20を形成する。交差箇所38は貫通孔24、緊張材固定穴26及び横穴20が交差する箇所である。
図2に示すように、横穴20の開口部は、組積造壁18の表面を形成するブロック体36の目地に沿った形状となっている。後述の緊張材下部固定工程後には、横穴20は取り外して保管しておいてブロック体36またはそれと同色、同質の別のブロック体で埋め戻すことにより施工跡が目立たなくなる。横穴20の開口部は全周をブロック体36の目地に沿った形状とすることが好ましいが、条件によっては例えば矩形穴とし、横方向だけを目地に沿った形状としても施工跡をあまり目立たなくすることができる。
次いで、貫通孔形成工程として、ドリル(削孔機)の工具軸40(図2参照)の先端に貫通孔24の径に応じた第1ビット(第1工具)42を取り付けておき、補強梁34及び壁上端22から下方に向かって交差箇所38まで連通する貫通孔24を第1ビット42で削孔する。この工程では、無水工法として工具軸40や第1ビット42に対して冷却気体(例えば、固定二酸化炭素を気化させたガス)を噴きかけながら削孔をしてもよい。貫通孔24は組積造壁18内の配管、配線を避けて形成される。横穴形成工程と貫通孔形成工程の順序は問わない。
そして、図2に示すように、工具交換工程として、横穴20内で工具軸40から第1ビット42を取り外し、緊張材固定穴26の径に対応した第2ビット(第2工具)44に交換する。これにより、貫通孔形成工程の後に工具軸40を貫通孔24から抜き取ることなく次の緊張材固定穴形成工程に移行することができる。また、図2から明らかなように横穴20は比較的浅くて足り、作業性が良好であり、第1ビット42から第2ビット44への交換は容易である。
ただし、組積造壁18に対して補強構造10を複数設ける場合であって、作業者が複数人でドリルも2台用意されているときには、一台を貫通孔24の削孔用とし別の一台を緊張材固定穴26の削孔用として区別してもよい。そうすると、貫通孔24の削孔用の第1のドリルは第1ビット42を装着したまま複数の貫通孔24を先行的に順次削孔することができる。第2ビット44は横穴20から第2のドリルの工具軸40に対して着脱される。
次いで、緊張材固定穴形成工程として、横穴20の交差箇所38からさらに下方に向かって第2ビット44により掘り下げ、緊張材固定穴26を削孔する。緊張材固定穴26は根積部16まで達し、例えばその底部は根積部16の高さの略半分の位置に設定される。図1の例では、根積部16が4段のブロック体36で積層されているのに対して、緊張材固定穴26の底部は2段目まで達している。緊張材固定穴形成工程では貫通孔24にドリルの工具軸40を配設しているが、条件によってはフレキシブルジョイント式工具軸を用いて横穴20から緊張材固定穴26を削孔してもよい。
さらに、穴側面加工工程として、電動ピックやウォータジェットなどによって緊張材固定穴26の内側面を削って表面を粗くし、及び/又はシアキーとなる溝部を設ける。このような目荒らしや溝形成により充填剤の付着強度が向上する。図1、図4及び図5においては目の荒れた緊張材固定穴26の内側面を鋸刃形状で示している。緊張材固定穴26は鉛直穴とは限らず、例えばこの工程において底部周辺を削り、下に向かって拡径する払底部48を設けてもよい。払底部48により充填剤が一層強固に固定されることになる。
穴補強工程として、補強筋である縦スパイラル50及び/又は穴補強鉄筋52を緊張材固定穴26に設ける。縦スパイラル50は緊張材固定穴26に同軸状に挿入される。縦スパイラル50は定着板32よりも大径である場合には該定着板32の挿入に前後して配置すればよく、定着板32よりも小径である場合には、後述する緊張材下部固定工程の第1段階後に、回転させながら緊張材28に対して巻きかけるようにして挿入すればよい。
穴補強鉄筋52は、組積造壁18の下方端付近又は横穴20の下面から緊張材固定穴26を貫通するように斜めに設けられた穴に挿入される。穴補強鉄筋52は高強度材とし、その上部は横穴20の内部に突出していてもよい。穴側面加工工程と穴補強工程の順序は問われないし、条件によっては省略してもよい。
そして、緊張材下部固定工程として、補強梁34及び壁上端22から緊張材固定穴26まで緊張材28を挿入し、緊張材28の下端を緊張材固定穴26の中で充填剤としてのモルタルやコンクリートにより固定する。緊張材28が短い場合には複数本をカプラー又は溶接によって延長接続してもよい。
このとき、図3に示すように、まず緊張材下部固定工程の第1段階として緊張材28の下端を横穴20まで挿入しておき、定着板32及びワッシャ付きのナット30を取り付ける。定着板32は中心孔が緊張材28の下端に挿入され、螺合されたナット30によって下から支えられる。定着板32は2つのナット30によって上下から固定すると、充填剤の充填を安定的に行うことができる。定着板32には充填剤を充填しやすいようにいくつかの孔や周辺切欠きがバランスよく設けられていてもよい。定着板32は複数枚設けてもよい。
横穴20は比較的浅くて足り、作業性が良好であることから定着板32の挿入は容易であり、該定着板32には特許文献1記載の発明のような深い挿入切欠が不要であり、良好な強度が得られる。同様に、横穴20内でのナット30の取付けは容易であることから緊張材28を壁上端22から挿入するときにあらかじめナット30を設けておく必要がなく、したがって貫通孔24をその分だけ細径にすることができる。緊張材28は定着板32が緊張材固定穴26の半分深さ程度となるまで下降させておく。
そして、緊張材下部固定工程の第2段階として、緊張材固定穴26に充填剤を横穴20から流し込み、緊張材28を定着板32とともに固定する。このとき緊張材固定穴26は上方に開口していることから充填剤が漏出することがなく、簡便な流し込みが可能である。また、横穴20は比較的浅い穴であって緊張材固定穴26への充填剤の流し込み作業が容易である。
緊張材下部固定工程では、緊張材固定穴26とともに横穴20を充填剤で埋め戻すものとする。横穴20の表面はブロック体36又は代替品で覆うようにしてもよい。緊張材固定穴26及び横穴20は、特許文献1記載の発明におけるコンクリート基礎502(図6参照)に設けた横穴510よりも浅く且つ小容量であり、充填剤の充填が容易である。
緊張材固定穴26に充填した充填剤は適切に養生し固化させる。こうして緊張材28の下端は定着板32とともに緊張材固定穴26及び根積部16に強固に固定される。根積部16は組積造壁18よりも厚く高強度となっており緊張材28の固定は相当に強固となる。
次に、張力付与工程として、緊張材28の壁上端22及び補強梁34から突出した上端部分に対してジャッキなどを用いて上方に引っ張ることにより張力を付与する。この張力により組積造12に対して適切な鉛直圧縮力がプレストレスとして加わることになる。
さらに、緊張材上部固定工程として、緊張材28に張力が付与された状態で、緊張材28の上部を固定具37によって補強梁34を介して壁上端22に固定する。固定具37は取り外し可能なものとし、事後的な再調整として張力付与工程及び緊張材上部固定工程を再実施してもよい。張力付与工程における張力付与機構が簡便構成である場合には、そのまま取り外すことなく緊張材上部固定工程を省略してもよい。
上記したような本実施の形態に係る組積造12の補強構造10及び補強方法によれば、緊張材28によるプレストレスにより組積造壁18のせん断応力や曲げ耐力を向上させることができて耐震性が向上し、しかも外観がほとんどそのまま維持される。
また、横穴20は組積造壁18の側面に形成することから地面13を掘削することなく緊張材28の下端を適切に固定することができる。掘削機の用意、掘削工程、土砂の保管及び埋戻し工程が不要であって工事が簡便となり、コストの低減と工期の短縮化が図られる。古い組積造12が立設している地面13は同様に古いタイル張り構造であって組積造12と一体的な文化的価値のある場合もあるが、そのような場合にもタイル張り構造に支障を及ぼさない。横穴20は比較的浅くて済み、該横穴20の削孔や横穴20内での作業が容易となる。
また、強度上重要なコンクリート基礎14には手を加える必要がなく強度が維持される。やや大径の緊張材固定穴26は横穴20よりも下方だけに設けられ、貫通孔24は緊張材28が挿通可能な程度であれば足り、相当に小径にすることができて組積造壁18に与える損傷が小さい。特に、ナット30(図3参照)は横穴20から装着するため、その分貫通孔24を小径にすることができる。
組積造12の補強構造10では、将来的に補強部材を撤去して元の状態に戻す可逆性が要求される場合には、横穴20を再度設けて露呈した緊張材28を切断することにより該緊張材28を壁上端22から引き抜くこともできる。この場合も地面13の掘削は不要である。
図4に示すように、補強構造10の第1の変形例として、横穴20は地下の根積部16の側面に設けてもよい。この場合には地面13を掘削して作業エリア46を確保する必要があるが、該作業エリア46は従来技術における作業エリア506(図6参照)よりも浅くかつ小さいため、少ない掘削量で足りる。また、横穴20は従来技術における横穴510(図6参照)と比較して十分に浅くて作業性がよい。作業エリア46を埋め戻すことにより横穴20は地下となり施工跡が視認されず、組積造壁18の外観が保全される。
さらに、図4における仮想線で示すように、緊張材固定穴26はコンクリート基礎14まで達する深さとしてもよい。これにより、緊張材28の下端を定着板32とともに一層堅固に固定できる。この場合、コンクリート基礎14に対する緊張材固定穴26の削孔量は従来技術における横穴510(図6参照)よりも相当に少なく、コンクリート基礎14の強度はあまり低下しない。緊張材固定穴26の深さは、強度上の検討から定着板32が好ましい配置となるように決定するとよい。また、図示を省略するが上記と同様の縦スパイラル50、穴補強鉄筋52を設けてもよい。
図5に示すように、補強構造10の第2の変形例として、基礎部14が浅い場合には横穴20は基礎部14の側面に設けてもよい。この場合には地面13を掘削して作業エリア46を確保する必要があるが、該作業エリア46は従来技術における作業エリア506(図6参照)よりも浅くかつ小さいため、少ない掘削量で足りる。また、図6に示す従来技術と定着板32の位置が同じであったとしても、緊張材固定穴26及び横穴20の削孔量は横穴510よりも相当に少なく、コンクリート基礎14の強度はあまり低下しない。
緊張材固定穴26には上記と同様の縦スパイラル50、穴補強鉄筋52(図示せず)を設けても良いし、横穴20には補強筋として横スパイラル54を設けて補強してもよい。この場合も作業エリア46を埋め戻すことにより横穴20は地下となり施工跡が視認されず、組積造壁18の外観が保全される。
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
10 補強構造、 12,500 組積造、 13 地面、 14,502 コンクリート基礎(基礎部)、 16,504 根積部、 18,505 組積造壁、 20,510 横穴、 22 壁上端、 24,508 貫通孔、 26 緊張材固定穴、 28,516 緊張材、 30 ナット、 32,520 定着板(定着部材)、 34 補強梁、 36 ブロック体、 37 固定具、 38 交差箇所、 40 工具軸、 42 第1ビット(第1工具)、 44 第2ビット(第2工具)、 46,506 作業エリア、 48 払底部、 50 縦スパイラル、 52 穴補強鉄筋、 54 横スパイラル、 522 スパイラル。

Claims (7)

  1. 組積造又は該組積造を支える地中の基礎部の側面に形成された横穴と、
    前記組積造の一部である組積造壁の壁上端から下方に向かって形成されて前記横穴に連通する貫通孔と、
    前記貫通孔より下方で、前記横穴からさらに下方に向かって形成された前記貫通孔より広い緊張材固定穴と、
    前記壁上端から前記緊張材固定穴まで延在する緊張材と、
    を有し、
    前記緊張材は、その下端が前記緊張材固定穴の中で前記貫通孔より広い定着部材とともに充填剤により固定され、張力が付与された状態で上方部分が前記壁上端に固定されており、
    前記横穴は、前記組積造壁に形成されていることを特徴とする組積造の補強構造。
  2. 請求項1に記載の組積造の補強構造において、
    前記緊張材固定穴及び前記緊張材は、前記基礎部まで達していることを特徴とする組積造の補強構造。
  3. 組積造又は該組積造を支える地中の基礎部の側面から、所定の交差箇所まで横穴を形成する横穴形成工程と、
    前記組積造の一部である組積造壁の壁上端から下方に向かって前記交差箇所まで連通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
    前記交差箇所からさらに下方に向かって前記貫通孔より広い緊張材固定穴を形成する緊張材固定穴形成工程と、
    前記壁上端から前記緊張材固定穴まで緊張材を挿入し、前記緊張材の下端を前記緊張材固定穴の中で前記貫通孔より広い定着部材とともに充填剤により固定する緊張材下部固定工程と、
    前記緊張材の上方部分を上方に引っ張ることにより張力を付与する張力付与工程と、
    前記緊張材に張力が付与された状態で前記緊張材の上方部分を前記壁上端に固定する緊張材上部固定工程と、
    を有し、
    前記貫通孔及び前記緊張材固定穴は削孔機によって削孔され、
    前記貫通孔形成工程では、前記削孔機の工具軸の先端に前記貫通孔の径に対応した第1工具が設けられ、該第1工具により前記貫通孔が削孔され、
    前記緊張材固定穴形成工程では、前記工具軸の先端に前記緊張材固定穴の径に対応した第2工具が設けられ、該第2工具により前記緊張材固定穴が削孔され、
    前記第2工具は前記横穴内で前記工具軸の先端に設けられることを特徴とする組積造の補強方法。
  4. 請求項3に記載の組積造の補強方法において、
    前記貫通孔形成工程で前記削孔機により前記貫通孔を形成した後、前記横穴内で前記工具軸から前記第1工具を取り外し前記第2工具に交換する工具交換工程を有することを特徴とする組積造の補強方法。
  5. 組積造又は該組積造を支える地中の基礎部の側面から、所定の交差箇所まで横穴を形成する横穴形成工程と、
    前記組積造の一部である組積造壁の壁上端から下方に向かって前記交差箇所まで連通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
    前記交差箇所からさらに下方に向かって前記貫通孔より広い緊張材固定穴を形成する緊張材固定穴形成工程と、
    前記壁上端から前記緊張材固定穴まで緊張材を挿入し、前記緊張材の下端を前記緊張材固定穴の中で前記貫通孔より広い定着部材とともに充填剤により固定する緊張材下部固定工程と、
    前記緊張材の上方部分を上方に引っ張ることにより張力を付与する張力付与工程と、
    前記緊張材に張力が付与された状態で前記緊張材の上方部分を前記壁上端に固定する緊張材上部固定工程と、
    を有し、
    前記横穴の開口部の少なくとも一部は、前記組積造の表面を形成するブロック体の目地に沿った形状にすることを特徴とする組積造の補強方法。
  6. 請求項のいずれか1項に記載の組積造の補強方法において、
    前記緊張材固定穴の内側面を削って表面を粗くし又は溝部を設ける穴側面加工工程を有することを特徴とする組積造の補強方法。
  7. 請求項のいずれか1項に記載の組積造の補強方法において、
    前記緊張材固定穴に補強筋を設ける穴補強工程を有することを特徴とする組積造の補強方法。
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