JP7417787B1 - 車両用シート - Google Patents
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Abstract
Description
シートパッド、および該シートパッド内に設けられた前方インサートワイヤおよびシートパッド内であって前方インサートワイヤよりも当該車両用シートの前後方向後方に設けられた後方インサートワイヤを含む座と、
回動支点を中心としたリクライニング動作が可能な背もたれと、
シートパッドに形成された前吊り込み溝および後吊り込み溝にシートカバーの被吊り込み部を係止させて当該シートカバーを吊り込み支持するための吊り込み構造と、
を備え、
複数の屈曲部にて屈曲した形状である前方インサートワイヤは、周辺部分よりも後方に突出した形状の前方主荷重受け部を有し、
複数の屈曲部にて屈曲した形状である後方インサートワイヤは、周辺部分よりも前方に突出した形状の後方主荷重受け部を有し、
後方インサートワイヤは、少なくとも後方主荷重受け部が後吊り込み溝よりも前方となる位置に配置され、
前方インサートワイヤは、少なくとも前方主荷重受け部が前吊り込み溝よりも後方となる位置に配置されている、
車両用シートである。
前方インサートワイヤ40は、エリア1とエリア2の境目の近傍であって本実施形態の場合には大部分がエリア2に入る位置に、左右方向に延びる状態で配置されている(図1、図3等参照)。前方インサートワイヤ40は、複数の屈曲部42にて屈曲し、かつ、所定の屈曲部42と屈曲部42の間に、左右に延びる前方ストレート部41を左右1か所ずつ計2つ有する左右対称形状となっている(図5等参照)。前方ストレート部41は、当該前方ストレート部41の周辺の部分(図7において符号48で示す)よりも後方に突出した形状となっていて、さらに、本実施形態においては、前方ストレート部41の周辺の部分48が、吊り込み構造70にて吊り込み支持される部分よりも後方に向けて突出するように設けられていて、これら前方ストレート41を中心とした部分が、乗員の荷重の多くを受ける前方主荷重受け部として機能する(図7等参照)。なお、本実施形態にて前方ストレート部41と便宜的に呼んでいる部分は、前方主荷重受け部として機能する部分の好適な一例にすぎない。たとえば緩やかに湾曲しているといったようなストレートではない形状であっても、以下において説明するような前方主荷重受け部としての同等の機能を果たしうるものであればよく、この点で、ストレートであることは好適例ではあるがこれには限られないということができる。
吊り込み構造70の一例を示す。本実施形態の吊り込み構造70は、シートカバー22の被吊り込み部22a(22b)をインサートワイヤ(前方インサートワイヤ40、後方インサートワイヤ50)に吊り込むための吊り部材74とホグリング(Cリング)76を備えている(図4B参照)。吊り部材74は、その一端側をシートカバー22の被吊り込み部22a(22b)に縫合される等して固定されている。吊り部材74の他端側には樹脂部74rが設けられている。この吊り部材74の樹脂部74rとインサートワイヤとをホグリング76でリング止めすることによって、シートカバー22がシートクッション20の前吊り込み溝71(または後吊り込み溝72)に吊り込まれるようになっている(図4B参照)。なお、特に図示してはいないが、他のインサートワイヤ(本実施形態の場合、右方外側ワイヤ61、左方外側ワイヤ62、右方内側ワイヤ63、左方内側ワイヤ64)における吊り込み構造も同様に構成されている。これら吊り込み構造70の位置や個数は特に限定されるものではない。一例として、本実施形態の車両用シート10においては、図1において丸印(〇)で示す箇所にそれぞれ吊り込み構造70を設けている。
本実施形態の車両用シート10において、前方インサートワイヤ40は、車両用シート10の側面視において、後方に向かうにつれて下がるように傾斜した状態で設けられている(図3等参照)。また、後方インサートワイヤ50は、車両用シート10の側面視において、後方ストレート部51の周辺部分58から、該後方ストレート部51へ向け前方に向かうにつれて下がるように傾斜して設けられている(図3参照)。このように、これら前方インサートワイヤ40と後方インサートワイヤ50を、側面視において下方ほど互いが近接するにように絞られた形状(いわば逆ハの字形状)に配置することで、乗員が着座する際、沈み込む尻部H1をより適切な着座ポイントへ誘導することができ、前ズレを抑え、座り心地を向上させるのに役立つ。また、このような前方インサートワイヤ40と後方インサートワイヤ50によれば、所定の着座位置にて着座した乗員を前後から挟み支え、安定した姿勢を保持できるようにするという面でも役立つ。後方ストレート部51は、後方インサートワイヤ50の中で最下点に位置していてもよい(図4A等参照)。
本実施形態の車両用シート10においては、前方ストレート部41の左右方向の長さが、後方ストレート部51の左右方向の長さより長くなっている(図7、とくに図中の破線部分参照)。このような前方インサートワイヤ40を乗員の骨盤H2の前方~大腿部付け根付近となる位置に配置し、乗員の尻部H1の前ズレやせん断感が発生した際あるいは発生しようとする際、比較的に広い幅の前方ストレート部41でもって安定した支持ができるようにしている(図8等参照)。
また、本実施形態の車両用シート10においては、後方ストレート部51の前方に、前方ストレート部41の少なくとも一部が位置するようにこれら前方インサートワイヤ40と後方インサートワイヤ50を配置している(図9等参照)。これは、別言すれば、前方インサートワイヤ40と後方インサートワイヤ50とが幅方向にて重なり合う(ラップしている)エリアが設けられているということであり(図9中の破線部分を参照)、このような重なり合うエリアをできだけ確保することにより、乗員支持の安定性を高めることが可能となっている。また、乗員の骨盤H2の体圧を多く受ける部位である前方ストレート部41、後方ストレート部51をこのように重なり合わせることで、座り心地をよりよくすることができる。
前方インサートワイヤ40の屈曲部42の数と後方インサートワイヤ50の屈曲部52の数はそれぞれとくに限定されることはないが、一例として本実施形態では、これらの数(別言すれば曲げ点数)を同数としている(図10A参照)。これにより、左右全体のバランス均一化を実現できる。なお、本明細書ではインサートワイヤの曲げ部分を「屈曲部」と表現し、図10Aの中では破線の丸印で当該部分を示しているが(図10A参照)、この他にも、図10Bの中で破線の楕円印で示す部分を「屈曲部」と解釈したり、図10Cの中で破線の楕円印で示す別の部分を「屈曲部」と解釈したりすることも考えられる(図10B、図10C参照)。ただ、いずれの解釈をしようとも、本実施形態では前方インサートワイヤ40の屈曲部42の数と後方インサートワイヤ50の屈曲部52の数が同数となっている。
屈曲部42,52における曲げの角度は鈍角になっていてもよい。本実施形態では、後方インサートワイヤ50の屈曲部52の一部を鈍角とし、中央付近から側部付近に至る部分をS字状といったような緩やかに曲折ないしは湾曲する形状としている(図11等参照)。後方インサートワイヤ50をこのような形状とすることで、たわみ感の均一化、体圧バランス均一化に効果がある。
前方インサートワイヤ40と後方インサートワイヤ50のそれぞれの端末部(右方外側ワイヤ61や左方外側ワイヤ62に近い部分)44,54の形状もまた特に限定されるものではなく、ここまで図示した形状の別の一例して、これら端末部44,54に曲げを追加した形状としてもよい(図12参照)。こうした場合には、たとえばパッドの発砲型(図示省略)において前方インサートワイヤ40や後方インサートワイヤ50をセットする際、発泡型内にて内側に向き突出した当て板(図示省略)等に当該端末部44,54を宛がうようにすることで、前方ストレート部41や後方ストレート部51が狙いどおりの位置、深さ、角度となるように姿勢を制御ないしは管理することが可能となる。
車両用シート10にヒーター(図示省略)と一体化されたまたは空調マット90を搭載する場合、以下のことに留意して前方インサートワイヤ40と後方インサートワイヤ50を配置するとよい(図13参照)。まず、シートカバー22に備えられた吊り部材74と、インサートワイヤ(前方インサートワイヤ40など)との間に空調マット90が挟まれると、ヒーターの断線に繋がりかねないので、これらの位置に前方インサートワイヤ40や後方インサートワイヤ50を配置することは控える。また、前吊り込み溝71よりも前方の位置P3や、後吊り込み溝72よりも後方の位置P4は、これまで説明した座り心地性能及び姿勢安定性の向上などの観点から、これらの位置に前方インサートワイヤ40や後方インサートワイヤ50を配置することも控える。また、シートパッド21の上面に空調マット90を設けるための凹部21sが形成されている場合には、シートパッド21の厚みが大きいほど人を支持する力(人を押し返す力)は強い。一方で、空調マット90があるとシートパッド21がその分薄くなるので、空調マット90の後端91よりも後方部分におけるシートパッド21の厚みがある部分ではなく、空調マット90の下(シートパッド21の厚みが薄い領域)にインサートワイヤを配置することで、空調マット90分のパッドの厚みの支持力をインサートワイヤで補うことができる。
車両用シート10のスタイリングデザインに合わせ、後方インサートワイヤ50の全幅(左右方向の長さ)W50が、前方インサートワイヤ40の全幅W40よりも狭くなるように設定することができる(図14参照)。
空調マット90の通気孔92のうち、乗員の尻部H1の下方に位置するものは、図15中の破線矩形部の内側に配置されることがある(図15参照)。ただし、インサートワイヤが従前の位置にあると(図16~図18参照)、乗員の骨盤H2の落ち込み(尻落ち)が比較的大きく、前ズレやせん断感が生じ、狙いどおりの位置に配置された通気孔92と実際の着座位置との間にズレが生じる可能性があった。この点、ここまで説明したごとき車両用シート10によれば、座り心地を向上させつつ着座位置を安定させることによって、空調マット90の通気孔92に期待される空調機能が発揮される状態とすることができる。
10C…車両用シートの中心線
20…シートクッション(座)
21…シートパッド
21s…凹部
22…シートカバー
22a,22b…被吊り込み部
30…シートバック(背もたれ)
31…回動支点
40…前方インサートワイヤ
41…前方ストレート部(前方主荷重受け部)
42…屈曲部
44…端末部
48…周辺部分
50…後方インサートワイヤ
51…後方ストレート部(後方主荷重受け部)
52…屈曲部
54…端末部
58…周辺部分
61…右方外側ワイヤ
62…左方外側ワイヤ
63…右方内側ワイヤ
64…左方内側ワイヤ
70…吊り込み構造
71…前吊り込み溝
72…後吊り込み溝
74…吊り部材
74r…樹脂部
76…ホグリング
90…空調マット
91…後端
92…通気孔
L1…シートバック30の回動支点31から後方ストレート部(後方主荷重受け部)51までの距離
L2…後方ストレート部(後方主荷重受け部)51と前方ストレート部(前方主荷重受け部)41との離間距離
H1…乗員の尻部
H2…骨盤
H3…座骨
P1~P6…インサートワイヤのストレート部の仮想位置
W40…前方インサートワイヤの全幅
W50…後方インサートワイヤの全幅
Claims (12)
- 車両用シートであって、
シートパッド、および該シートパッド内に設けられた前方インサートワイヤおよび前記シートパッド内であって前記前方インサートワイヤよりも当該車両用シートの前後方向後方に設けられた後方インサートワイヤを含む座と、
回動支点を中心としたリクライニング動作が可能な背もたれと、
前記シートパッドに形成された前吊り込み溝および後吊り込み溝にシートカバーの被吊り込み部を係止させて当該シートカバーを吊り込み支持するための吊り込み構造と、
を備え、
複数の屈曲部にて屈曲した形状である前記前方インサートワイヤは、周辺部分よりも後方に突出した形状の前方主荷重受け部を有し、
複数の屈曲部にて屈曲した形状である前記後方インサートワイヤは、周辺部分よりも前方に突出した形状の後方主荷重受け部を有し、
前記後方インサートワイヤは、少なくとも前記後方主荷重受け部が前記後吊り込み溝よりも前方となる位置に配置され、
前記前方インサートワイヤは、少なくとも前記前方主荷重受け部が前記前吊り込み溝よりも後方となる位置に配置され、
前記前方主荷重受け部と前記後方主荷重受け部の少なくとも一方が、当該車両用シートの左右方向の中心線を中心にして左右対称に形成されている、
車両用シート。 - 前記前方主荷重受け部と前記後方主荷重受け部の少なくとも一方が、当該車両用シートの左右方向に延びるストレート部で構成されている、請求項1に記載の車両用シート。
- 前記前方インサートワイヤは、当該車両用シートの側面視において、後方に向かうにつれて下がるように傾斜している、請求項1に記載の車両用シート。
- 前記後方インサートワイヤは、当該車両用シートの側面視において、前記後方主荷重受け部の周辺部分から該後方主荷重受け部へ向け前方に向かうにつれて下がるように傾斜して設けられている、請求項3に記載の車両用シート。
- 前記後方主荷重受け部は、前記後方インサートワイヤの中で最下点に位置している、請求項4に記載の車両用シート。
- 前記前方主荷重受け部の左右方向の長さは、前記後方主荷重受け部の左右方向の長さよりも長い、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用シート。
- 前記後方主荷重受け部の前方に前記前方主荷重受け部の少なくとも一部が位置するように前記後方インサートワイヤおよび前記前方インサートワイヤが配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用シート。
- 前記前方インサートワイヤの前記屈曲部の数と前記後方インサートワイヤの前記屈曲部の数とが同数である、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用シート。
- 前記後方インサートワイヤの前記屈曲部が鈍角である、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用シート。
- 前記前方インサートワイヤは、前記前吊り込み溝よりも後方に配置され、
前記後方インサートワイヤは、前記後吊り込み溝よりも前方に配置されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用シート。 - 前記後方インサートワイヤは、前記回動支点から前記後方主荷重受け部までの距離が170mm以上となる位置に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用シート。
- 前記前方インサートワイヤは、前記後方主荷重受け部と前記前方主荷重受け部との離間距離が60mm以上70mm以下となる位置に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用シート。
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