<樹脂成形装置1の全体構成>
まず図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る樹脂成形装置1について説明する。なお、図1を用いた説明では、図中に示した矢印X及びYを用いて方向を定義する。樹脂成形装置1は、封止前基板W1を樹脂封止し、樹脂成形品(封止済基板W2)を製造するものである。なお、本実施形態では、樹脂封止される前の基板を封止前基板W1、樹脂封止された後の基板を封止済基板W2とそれぞれ称している。また本実施形態では、圧縮成形法によって樹脂成形を行う樹脂成形装置1を例示している。
樹脂成形装置1は、構成要素として、基板供給・収納モジュール10、成形モジュール20及び材料供給モジュール30を具備する。各構成要素は、他の構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。
基板供給・収納モジュール10は、封止前基板W1を成形モジュール20へと供給し、成形モジュール20から受け取った封止済基板W2を収納するものである。なお、封止前基板W1としては、リードフレームをはじめとして、その他種々の基板(ガラスエポキシ製基板、セラミック製基板、樹脂製基板、金属製基板)を用いることが可能である。基板供給・収納モジュール10は、主として封止前基板供給部11、封止済基板収納部12、基板載置部13及び基板搬送機構14を具備する。
基板載置部13は、封止前基板供給部11、封止済基板収納部12及び基板搬送機構14との間で、封止前基板W1及び封止済基板W2の受け渡しを適宜行うものである。基板載置部13は、基板供給・収納モジュール10内において、Y方向に移動することができる。封止前基板供給部11は、基板載置部13へと封止前基板W1を供給することができる。封止済基板収納部12は、基板載置部13から受け取った封止済基板W2を収納することができる。基板搬送機構14は、基板供給・収納モジュール10及び成形モジュール20内をX方向及びY方向に移動することができる。基板搬送機構14は、封止前基板W1及び封止済基板W2を、基板供給・収納モジュール10及び成形モジュール20に亘って適宜搬送することができる。
成形モジュール20は、樹脂成形を行うものである。本実施形態では、3つの成形モジュール20が設けられた樹脂成形装置1を例示しているが、成形モジュール20の個数は3つに限定するものではない。成形モジュール20は、主として型締め機構100及び成形型200を具備する。
成形型200は、上型200U(図2等参照)と、上型200Uに対して昇降可能な下型200Dと、を具備する。なお、上型200U及び下型200Dは、それぞれ、本願の一方の型及び他方の型の実施の一形態である。下型200Dには、樹脂成形品の形状に対応したキャビティCが形成される。型締め機構100は、下型200Dを昇降させることで、成形型200の型締め、及び、型開きを行うことができる。なお、成形モジュール20のより具体的な構成については、後述する。
材料供給モジュール30は、離型フィルムF及び樹脂材料を成形モジュール20へと供給するものである。材料供給モジュール30は、主として材料載置部31、離型フィルム供給機構32、樹脂材料収容部33、樹脂材料投入機構34及び材料搬送機構35を具備する。
材料載置部31は、離型フィルムF及び樹脂材料収容部33を載置可能なものである。材料載置部31は、材料供給モジュール30内において、X方向及びY方向に移動することができる。離型フィルム供給機構32は、材料載置部31へと離型フィルムFを供給することができる。
樹脂材料収容部33は、略枠状の形状であり、材料載置部31へ供給された離型フィルムFと一体となって、樹脂材料投入機構34から供給される樹脂材料を収容することができる。材料搬送機構35は、材料供給モジュール30及び成形モジュール20内をX方向及びY方向に移動することができる。材料搬送機構35は、一体となった離型フィルムF及び樹脂材料収容部33を、樹脂材料と共に成形モジュール20へ搬送することができる。
<樹脂成形装置1を用いた樹脂成形方法>
以下では、上述の如く構成された樹脂成形装置1による樹脂成形方法の一例について説明する。
本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、主として基板搬入工程、フィルム配置工程、型締め工程、樹脂成形工程、型開き工程及び搬出工程を含む。以下、順に説明する。
まず、基板搬入工程において、成形型200に封止前基板W1が搬入される。具体的には、基板搬入工程において、封止前基板供給部11から基板載置部13へと封止前基板W1が供給される。基板搬送機構14は、基板載置部13に載置された封止前基板W1を受け取り、成形モジュール20の成形型200へと搬送する。
次に、フィルム配置工程において、成形型200(下型200D)に離型フィルムF及び樹脂材料が配置される。具体的には、フィルム配置工程において、離型フィルム供給機構32から材料載置部31へと離型フィルムFが供給される。この際、材料載置部31において、離型フィルムFを適宜切断して所定の大きさにすることも可能である。材料載置部31に載置された離型フィルムFは、その上に載置された樹脂材料収容部33と一体となって樹脂材料を収容可能な箱状を形成する。一体となった離型フィルムF及び樹脂材料収容部33に、樹脂材料投入機構34から樹脂材料が投入され、樹脂材料を収容した離型フィルムF及び樹脂材料収容部33が材料載置部31に載置される。材料搬送機構35は、樹脂材料を収容した離型フィルムF及び樹脂材料収容部33を受け取り、成形モジュール20へと移動し、樹脂材料が収容された離型フィルムF及び樹脂材料収容部33を成形型200(下型200D)に配置する。その後、後述のように、離型フィルムFが下型200Dに保持され、下型200DのキャビティCに樹脂材料が供給される。樹脂材料がキャビティCに供給された後で、材料搬送機構35によって樹脂材料収容部33が成形型200から搬出され、材料供給モジュール30へと戻される。
次に、型締め工程において、成形型200の型締めが行われる。具体的には、型締め工程において、下型200Dに設けられた加熱機構(不図示)によって、キャビティC内に収容された樹脂材料が加熱される。次に、型締め機構100が駆動されることで、下型200Dが上型200Uに向かって上昇する。下型200Dが所定の位置まで上昇すると、下型200Dの上面と上型200Uの下面とが直接的に、又は、封止前基板W1を介して間接的に接触し、下型200Dに形成されたキャビティCが上型200U又は封止前基板W1によって上方から塞がれる。この状態でさらに下型200Dが押し上げられることで、下型200Dに収容された樹脂材料が加圧される。
次に、樹脂成形工程において、樹脂材料が硬化されて樹脂成形が行われる。具体的には、樹脂成形工程において、樹脂材料を加圧した状態で所定時間待機する。これによって樹脂材料を硬化させて、封止前基板W1に対して樹脂成形を行い、樹脂成形品(封止済基板W2)を得ることができる。
次に、型開き工程において、成形型200が開かれる。具体的には、型開き工程において、型締め機構100が駆動されることで下型200Dが上型200Uから離れるように下降する。これによって成形型200が開かれ、封止済基板W2を取り出すことができる状態となる。
次に、搬出工程において、樹脂成形品(封止済基板W2)が成形型200から搬出される。具体的には、搬出工程において、基板搬送機構14は成形型200の封止済基板W2を受け取り、受け取った封止済基板W2を基板供給・収納モジュール10の基板載置部13へと受け渡す。封止済基板収納部12は、基板載置部13から封止済基板W2を受け取り、受け取った封止済基板W2を収納する。
このように樹脂成形装置1においては、成形モジュール20に封止前基板W1、離型フィルムF及び樹脂材料等を供給し、樹脂成形を行うことができる。また複数の成形モジュール20で並行して樹脂成形を行うことができ、効率的に樹脂成形品を製造することができる。なお、上述の樹脂成形装置1の各部の動作は、図示せぬ制御装置によって適宜制御することができる。
<成形モジュール20の構成>
以下では、成形モジュール20の具体的な構成について説明する。図2に示すように、成形モジュール20は、主として型締め機構100及び成形型200等を具備する。
型締め機構100は、下型200Dを昇降させて型締め及び型開き等を行うものである。型締め機構100は、主として基台101、支柱102、下型ベース部材103、上型ベース部材104及び駆動機構105等を具備する。
基台101は、成形型200等を支持するものである。基台101には、複数の支柱102が固定される。複数の支柱102は、基台101から上方に延びるように設けられる。支柱102の上下中途部には、下型ベース部材103が上下に移動可能となるように設けられる。支柱102の上端部には、上型ベース部材104が固定される。なお、支柱102の代わりに、対向して配置される2枚の板状部材が設けられていてもよい。
駆動機構105は、下型200Dを昇降させるためのものである。駆動機構105としては、ボールねじ機構、油圧シリンダ、トグル機構等を用いることができる。駆動機構105は、基台101と下型ベース部材103との間に配置される。駆動機構105は、基台101と下型ベース部材103との間で上下に伸縮することで、下型ベース部材103を上下に昇降させることができる。
成形型200は、上型200U及び下型200Dから構成される。
上型200Uは、適宜の上下方向の厚みを有する。上型200Uの下面は、凹凸のない平面状に形成される。上型200Uは、上型ベース部材104の底面に固定される。上型200Uの下面には、基板(封止前基板W1及び封止済基板W2)を吸着可能な吸着孔(不図示)が適宜形成される。
図2及び図3に示すように、下型200Dは、下型ベース部材103の上面に配置される。下型200Dの上面は、上型200Uの下面と上下方向に対向するように配置される。下型200Dは、主として主面部材210及び側面部材220等を具備する。
主面部材210は、キャビティCの主面を形成するものである。本実施形態では、主面部材210は下型200Dであるため、主面は底面に相当する。主面部材210は、平面視矩形状に形成される。主面部材210は、適宜の上下方向の厚みを有するように形成される。主面部材210は、下型ベース部材103の上面に載せられた状態で配置される。
側面部材220は、キャビティCの側面を形成し、主面部材210を側方から囲むものである。側面部材220は、適宜の上下方向の厚みを有するように形成される。側面部材220は、主として中空部221を具備する。
中空部221は、側面部材220の中央を上下に貫通するように形成される。中空部221は、平面視矩形状に形成される。中空部221は、平面視において、主面部材210の外形と概ね一致するような形状に形成される。
このように側面部材220は、平面視矩形状の枠状に形成される。側面部材220の中空部221には主面部材210が配置される。側面部材220は、弾性部材220aを介して、下型ベース部材103の上面に載せられた状態で配置される。弾性部材220aは、例えば上下に伸縮可能な圧縮コイルばね等により形成される。側面部材220の上面は、主面部材210の上面よりも上方に位置する。このように構成された主面部材210及び側面部材220に囲まれた部分(主面部材210の上方、かつ側面部材220の内側)が、樹脂成形を行うためのキャビティCを形成する。
なお図4に示すように、本実施形態において、側面部材220は上下に分割されて形成されている。具体的には、側面部材220は、上型200Uの下面と対向する面(上面)が形成された上側面部材222と、上側面部材222の下方(上側面部材222に対して、上側面部材222の上面とは反対側)に配置される下側面部材223と、に分割されている。上側面部材222の上面と下面は、平行となるように形成されている。なお、上側面部材222及び下側面部材223は、それぞれ、本願の第1側面部材及び第2側面部材の実施の一形態である。また、上側面部材222の上面及び下面は、それぞれ、本願の第1対向面及び第2対向面の実施の一形態である。なお、「平行」は、厳密な意味だけではなく、実質的な意味を含む。従って、上面及び下面がなす角度が0度ではない場合であっても、上面及び下面がなす角度が誤差の範囲内の値であるとき、上面及び下面は平行である。
このように構成された下型200Dの上面には離型フィルムFが配置され、配置された離型フィルムFの上のキャビティCに対応する部分には樹脂材料が供給されている。その後、離型フィルムFが下型200Dに吸着されることによって樹脂材料がキャビティC内に供給される。また、上型200Uには封止前基板W1が吸着されて保持される。この状態で型締め機構100によって上型200Uと下型200Dを型締めし、封止前基板W1に対して樹脂を圧縮成形し、封止済基板W2を得ることができる。
<下型200Dの構成>
ここで、下型200Dには、離型フィルムFを吸着して保持するための吸着孔等が適宜形成される。以下では、離型フィルムFを吸着するための下型200Dの構造について、具体的に説明する。
図3から図6に示すように、下型200Dには、離型フィルムFを吸着するための第1吸着部232、環状凹部234、第2吸着部236、貫通孔238、連絡部240、吸引管部242、第3吸着部244及び吸引孔部246が設けられている。
第1吸着部232は、側面部材220の上面に離型フィルムFを吸着するためのものである。第1吸着部232は、主として第1吸着孔部232aを具備する。
第1吸着孔部232aは、側面部材220(上側面部材222)の上面と、環状凹部234とを接続するように、上下方向に沿って形成される貫通孔である。第1吸着孔部232aは、平面視円形状に形成される。第1吸着孔部232aは、平面視においてキャビティCの周囲を囲むように複数並べて形成される。複数の第1吸着孔部232aは、平面視において、キャビティCの形状に沿った矩形状に並ぶように形成される。第1吸着孔部232aは、概ね等間隔に並べられる。
なお、第1吸着孔部232aの形状は円形状に限るものではなく、任意の形状に形成することが可能である。また本実施形態では、隣接する第1吸着孔部232a同士の間隔が概ね一定となるように複数の第1吸着孔部232aが形成されているが、複数の第1吸着孔部232aの並べ方は等間隔な並べ方に限定されない。例えば、複数の第1吸着部232を不等間隔に形成することも可能である。また、例えば、側面部材220(上側面部材222)の上面に、複数の第1吸着孔部232aを接続するような凹部(溝部)を形成することも可能である。
図4から図6に示す環状凹部234は、第1吸着孔部232aと吸引管部242とを接続するものである。環状凹部234は、上側面部材222において、第1吸着孔部232aの下方に形成される。環状凹部234は、上側面部材222の上下中途部から、上側面部材222の底面まで亘るように形成される。環状凹部234の上端部は、第1吸着孔部232aに接続される。環状凹部234の下端部は、上側面部材222の底面において開放される。このようにして環状凹部234は、上側面部材222の底面から上方に向かって所定の深さを有する凹状に形成される。底面視において、環状凹部234の幅(環状凹部234が延びる方向に対して垂直な方向の長さ)は、第1吸着孔部232aの直径よりも大きく形成されている。
環状凹部234は、途切れることなく中空部221(キャビティC)を囲むように形成される。すなわち環状凹部234は、底面視において端の無い環状に形成される。環状凹部234は、底面視において第1吸着孔部232aに沿って延びるように形成される。これによって環状凹部234は、底面視略矩形状に形成される。なお、環状凹部234は、本願の環状部の実施の一形態である。
図3、図4及び図6に示す第2吸着部236は、側面部材220の上面に離型フィルムFを吸着するためのものである。第2吸着部236は、主として凹状部236aを具備する。
凹状部236aは、側面部材220の上面、かつ、第1吸着部232よりもキャビティC側に形成された凹状の部分である。凹状部236aは、キャビティCの周囲に複数形成される。本実施形態では、凹状部236aは、平面視において矩形状に形成されたキャビティCの各辺に沿うように、4つ形成される。凹状部236aは、キャビティCの各辺に平行な直線状に形成される。なお、前述したように、「平行」は、厳密な意味だけではなく、実質的な意味も含む。4つの凹状部236aは、互いに接続されないように、適宜の間隔を空けて形成される。凹状部236aは、長手方向断面視において、中央に向かって下方に傾斜するようなV字状に形成される。
なお、凹状部236aの形状は断面視V字状に限るものではなく、任意の形状に形成することが可能である。また本実施形態では、凹状部236aがキャビティCの各辺に沿うように4つ形成された例を示したが、凹状部236aは任意の位置に任意の個数形成することが可能である。
図3から図6に示す貫通孔238は、凹状部236aと連絡部240とを接続するものである。貫通孔238は上下方向に沿って形成される。貫通孔238は、平面視円形状に形成される。貫通孔238は、平面視において凹状部236aの内側に形成される。貫通孔238は、各凹状部236aに複数形成される。貫通孔238の上端部は、凹状部236aに接続される。貫通孔238の下端部は、上側面部材222の底面において開放される。なお、貫通孔238は、本願の第2経路の実施の一形態である。
図4から図6に示す連絡部240は、環状凹部234と貫通孔238とを接続するものである。連絡部240は、上側面部材222の底面に凹状に形成される。連絡部240は、各貫通孔238から外側(キャビティCとは反対側)に向かって延びるように形成される。これによって、連絡部240の一端部は貫通孔238の下端部に接続される。また連絡部240の他端部は環状凹部234の下端部に接続される。言い換えると、連絡部240は、環状凹部234から内側(主面部材210側)に向かって延びるように形成される。連絡部240は、長手方向(連絡部240が延びる方向)に沿った断面視において、略矩形状に形成される。連絡部240は、空気の流通経路を絞るように、空気の流通経路に垂直な面における断面積が比較的小さくなるように形成されている。具体的には、連絡部240の断面積は、貫通孔238の断面積よりも小さく形成されている。また連絡部240の断面積は、第1吸着孔部232aの断面積よりも小さく形成されている。なお、連絡部240は、本願の第1経路の実施の一形態である。
吸引管部242は、第1吸着部232及び第2吸着部236から空気を吸引するためのものである。吸引管部242は、略円管状に形成される。吸引管部242は、長手方向を上下方向に向けた状態で、下側面部材223を上下に貫通するように配置される。吸引管部242の上端面は、下側面部材223の上面と同一位置(面一)となるように配置される。吸引管部242は、環状凹部234の下方に複数配置される。本実施形態では、図5に示すように、略矩形状に形成された環状凹部234の各辺に対応するように、吸引管部242を4つ配置した例を示している。このように吸引管部242を配置することにより、吸引管部242の上端部は、環状凹部234の下端部に接続される。
なお、本実施形態では、吸引管部242を下側面部材223に設けることで、空気の吸引経路を形成しているが、例えば吸引管部242に代えて、下側面部材223に貫通孔を形成することで空気の吸引経路を形成することも可能である。
図3、図4及び図6に示す第3吸着部244は、キャビティCに離型フィルムFを吸着するためのものである。第3吸着部244は、主面部材210の外側面と、側面部材220の内側面(中空部221)との間の隙間によって形成される。主面部材210と側面部材220との間には、平面視において主面部材210の全周に亘るように隙間が形成される。これによって第3吸着部244は、平面視においてキャビティCを囲むような、端の無い環状に形成される。
図4及び図6に示す吸引孔部246は、第3吸着部244から空気を吸引するためのものである。吸引孔部246は、主面部材210に形成される。吸引孔部246の一端部は、主面部材210の外側面において開放される。吸引孔部246の他端部は、主面部材210の底面において開放される。吸引孔部246は、主面部材210に複数形成される。
図6に示すように、吸引管部242及び吸引孔部246には、適宜形成された空気の流通経路を介して真空ポンプ等の吸引装置250が接続される。吸引装置250と吸引管部242との間には、空気の流通の可否を切り替えることが可能な第1開閉弁252が設けられる。また吸引装置250と吸引孔部246との間には、空気の流通の可否を切り替えることが可能な第2開閉弁254が設けられる。吸引装置250を作動させて空気を吸引した状態で、第1開閉弁252及び第2開閉弁254をそれぞれ開閉させることにより、第1吸着部232、第2吸着部236及び第3吸着部244から任意に空気を吸引し、離型フィルムFを吸着することができる。
<吸引経路の構成>
このように本実施形態では、吸引管部242を介して空気を吸引することによって、第1吸着部232及び第2吸着部236から空気を吸引して離型フィルムFを吸着することができる。以下、吸引管部242を介する空気の吸引経路について説明する。
図6及び図7に示すように、第1開閉弁252が開放され、吸引管部242を介して空気が吸引されると、環状凹部234及び第1吸着部232(第1吸着孔部232a)を介して空気が吸引され、側面部材220の上面に離型フィルムFを吸着することができる。また、吸引管部242を介して空気が吸引されると、環状凹部234の下端部に接続された連絡部240及び貫通孔238を介して空気が吸引され、第2吸着部236(凹状部236a)の上面に離型フィルムFを吸着することができる。
以下では説明のため、図7に示すように、環状凹部234を介して吸引される空気と、連絡部240を介して吸引される空気とが合流する部分(言い換えると、吸引管部242からの空気の吸引経路が、環状凹部234と連絡部240とに分岐する部分)を分岐点Pと称する。本実施形態では、環状凹部234の下端部に連絡部240が接続されているため、環状凹部234の下端部(吸引管部242の上端部)が分岐点Pに相当する。
また、吸引装置250から分岐点Pまでの空気の吸引経路を、主経路Lと称する。また、分岐点Pから第1吸着部232(第1吸着孔部232a)の上端部までの空気の吸引経路を、第1分岐経路L1と称する。また、分岐点Pから貫通孔238の上端部までの空気の吸引経路を、第2分岐経路L2と称する。
ここで、第1分岐経路L1における空気の流通方向に対して直交する断面の断面積のうち、最小となる断面積を、以下では最小断面積A1と称する。本実施形態においては、第1分岐経路L1は、環状凹部234と、環状凹部234に接続された複数の第1吸着孔部232a(図5等参照)により構成されている。すなわち第1分岐経路L1は、環状凹部234からさらに複数の第1吸着孔部232aに分岐されている。このように第1分岐経路L1が分岐している場合には、分岐された各経路の断面積の総和を、第1分岐経路L1の断面積とする。本実施形態では、第1分岐経路L1の断面積のうち、第1吸着孔部232aにおける断面積(複数の第1吸着孔部232aの断面積の総和)が最小断面積A1である。すなわち本実施形態では、「最小断面積A1 = 第1吸着孔部232aの断面積 × 第1吸着孔部232aの数」が成り立つ。なお図7には、説明の便宜上、1つの第1吸着孔部232aを用いて最小断面積A1を示しているが、実際には全ての第1吸着孔部232aの断面積の総和が最小断面積A1である。
なお、本実施形態では、第1分岐経路L1の断面積のうち、第1吸着孔部232aにおける断面積が最小断面積A1となるものとしたが、本発明の最小断面積A1は、第1吸着孔部232aの断面積に限らない。例えば、第1吸着孔部232aの断面積の総和が環状凹部234の断面積よりも大きくなる場合には、環状凹部234の断面積が最小断面積A1となる。すなわち、断面積が最小となる部位は第1分岐経路L1の形状に応じて定まるものであり、特に限定するものではない。
また、第2分岐経路L2における空気の流通方向に対して直交する断面の断面積のうち、最小となる断面積を、以下では最小断面積A2と称する。本実施形態においては、第2分岐経路L2は、連絡部240と、貫通孔238により構成されている。連絡部240及び貫通孔238は、環状凹部234から複数分岐するように形成されているため(図5等参照)、第2分岐経路L2は複数形成されていることになる。このように第2分岐経路L2が複数形成されている場合には、複数の第2分岐経路L2の断面積の総和を、第2分岐経路L2の断面積とする。本実施形態では、第2分岐経路L2の断面積のうち、連絡部240における断面積(複数の連絡部240の断面積の総和)が最小断面積A2である。すなわち本実施形態では、「最小断面積A2 = 連絡部240の断面積 × 連絡部240の数」が成り立つ。なお図7には、説明の便宜上、1つの連絡部240を用いて最小断面積A2を示しているが、実際には全ての連絡部240の断面積の総和が最小断面積A2である。
なお、本実施形態では、第2分岐経路L2の断面積のうち、連絡部240における断面積が最小断面積A2となるものとしたが、本発明の最小断面積A2は、第2分岐経路L2の断面積のうちの連絡部240における断面積に限らない。すなわち、第1分岐経路L1の最小断面積A1と同様に、断面積が最小となる部位は第2分岐経路L2の形状に応じて定まるものであり、特に限定するものではない。
本実施形態では、第1分岐経路L1の最小断面積A1よりも、第2分岐経路L2の最小断面積A2の方が小さくなるように構成されている。すなわち、本実施形態では「最小断面積A2 < 最小断面積A1」を満たすように、最小断面積A1等が設定されている。このように構成することによって、第1分岐経路L1を流通する空気の流動抵抗より、第2分岐経路L2を流通する空気の流動抵抗の方が大きくなり、吸引管部242を介して空気を吸引した際に、第2分岐経路L2よりも第1分岐経路L1から優先的に空気が吸引されることになる。これによって本実施形態では、離型フィルムFを段階的に側面部材220に吸着することができる。
<離型フィルムFの吸着>
以下では図8等を用いて、フィルム配置工程において、上述のように構成された下型200Dに離型フィルムFが吸着される様子について説明する。なお、本実施形態では、実際は、前述のように離型フィルムFの上に樹脂材料が載っているが、以下の図、説明では樹脂材料については省略している。
まず図8(a)に示すように、離型フィルムFが下型200D上に配置されると、吸引装置250(図6参照)が作動されると共に、第2開閉弁254は閉じられたまま、第1開閉弁252のみが開放される。これによって、吸引管部242(主経路L)を介する空気の吸引が行われる。
吸引管部242を介して空気が吸引されると、第1分岐経路L1及び第2分岐経路L2のうち、最小断面積が大きい第1分岐経路L1から優先的に空気が吸引される。特に本実施形態では、吸引管部242(主経路L)を介して吸引される空気の吸引経路の延長線上(吸引管部242の鉛直上方)に第1分岐経路L1が形成されているため、第2分岐経路L2よりも第1分岐経路L1から優先的に空気が吸引され易い。これによって、第1吸着孔部232aを介して空気が吸引され、側面部材220の上面に離型フィルムFが吸着される。
この状態でさらに吸引管部242(主経路L)を介する空気の吸引が継続されると、図8(b)に示すように、第1分岐経路L1及び第2分岐経路L2のうち、最小断面積が小さい第2分岐経路L2からも空気が吸引される。特に第1吸着孔部232aによって離型フィルムFが吸着された後は、第1吸着孔部232aが離型フィルムFによって閉塞されることで、第2分岐経路L2に加わる吸引力(負圧)が高くなる。これによって、貫通孔238を介して空気が吸引され、凹状部236aに離型フィルムFが吸着される。このように本実施形態では、第1分岐経路L1を介する空気の吸引と、第2分岐経路L2を介する空気の吸引のタイミングをずらすことができる。凹状部236aに離型フィルムFを引き込むことで、離型フィルムFを引き伸ばして、離型フィルムFに張力を付与することができる。
次に図8(c)に示すように、第1吸着部232及び第2吸着部236による空気の吸引が行われた状態で、第2開閉弁254(図6参照)が開放される。これによって、吸引孔部246を介する空気の吸引が行われる。吸引孔部246を介して空気が吸引されると、第3吸着部244から空気が吸引される。これによって、キャビティCの内面に沿うように離型フィルムFが吸着される。このように離型フィルムFを引き込むことで、離型フィルムFをさらに引き伸ばして、離型フィルムFに張力を付与することができる。なお、実際は、このとき、離型フィルムFと共に樹脂材料(不図示)がキャビティC内に供給される。
このように本実施形態では、第1吸着部232により離型フィルムFを吸着した後で、第2吸着部236及び第3吸着部244による吸着を行うことで、離型フィルムFに張力を付与している。ここで、本実施形態では共通の主経路Lを介して空気の吸引を行うことで、第1分岐経路L1及び第2分岐経路L2を介する空気の吸引を行うことができる。このように空気の吸引経路を共通化することで、吸引経路の省スペース化を図ることができる。吸引経路の省スペース化を図ることで、例えば第1吸着部232及び第2吸着部236をキャビティC側に寄せて形成し易くなる。これに伴って離型フィルムFのサイズの小型化を図ることで、離型フィルムFの使用量を削減することができ、樹脂成形品の製造コストの削減を図ることができる。また離型フィルムFのサイズの小型化と吸引経路の省スペース化により、平面視からみた成形型200の外郭(サイズ)を小さくすることが可能となり、材料コストの削減を図ることができる。
また、空気の吸引経路を共通化し、成形型のサイズを小さくすることで、吸引する(真空にする)空間の体積が小さくなるため、予め設定された真空度に到達するまでの時間が短くなり、型締め完了時までの空間からの脱気量が多くなるため、成形品質の向上を図ることができる。
また本実施形態では、第1分岐経路L1及び第2分岐経路L2の最小面積に差を設けることで、第1分岐経路L1と第2分岐経路L2を介する離型フィルムFの吸着タイミングを異ならせている。これによって、第1分岐経路L1及び第2分岐経路L2のそれぞれに対して、空気の吸引を制御する機構(例えば、吸引管の加工や吸着配管、開閉弁等)を設ける必要がなくなるため、樹脂成形装置1の低コスト化を図ることができる。
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
例えば、本実施形態で説明した樹脂成形装置1の各部の構成(形状、配置、個数等)は特に限定するものではなく、任意に変更することが可能である。
また、本実施形態では、上型200Uに基板(封止前基板W1等)を吸着して保持するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、下型200Dで基板を保持する構成とすることも可能である。この場合、樹脂材料は、基板に直接供給することができる。
また、離型フィルムFを吸着するための吸着孔(第1吸着孔部232a等)や空気の吸引経路の断面形状は特に限定するものではなく、円形状、矩形状、多角形状など、任意の形状に形成することが可能である。例えば、複数の貫通孔238を、環状凹部234と同様にキャビティCを囲むような凹部で接続することも可能である。また、複数の貫通孔238の代わりに、キャビティCを囲むような環状凹部(溝部)とすることも可能である。
また、本実施形態では、第1吸着部232及び第2吸着部236を、平面視においてキャビティCの形状に沿った矩形状に並ぶように形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、任意の形状に並べて形成することが可能である。
また、本実施形態では、第1分岐経路L1と主経路Lとが平面視で上下に重複するように、吸引管部242を環状凹部234の下方に配置した例を示したが(図7参照)、本発明はこれに限るものではない。すなわち、第2分岐経路L2の最小断面積A2が、第1分岐経路L1の最小断面積A1よりも小さくなるように形成されていれば、主経路L、第1分岐経路L1及び第2分岐経路L2の形状や位置関係は特に限定するものではない。
また、本実施形態では、第1分岐経路L1及び第2分岐経路L2を上側面部材222に形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、第1分岐経路L1及び第2分岐経路L2の一部を下側面部材223に形成することも可能である。
また、本実施形態では、側面部材220を上下2つに(上側面部材222と下側面部材223とに)分割した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、側面部材220を3つ以上に分割することや、分割することなく一体の部材として形成することも可能である。
また、本実施形態では、平面視矩形状の成形型200を例に挙げて説明したが、成形型200の形状はこれに限るものではなく、例えば平面視円形状など、任意の形状の成形型200を用いることが可能である。
また、本実施形態で用いた離型フィルムFの形状は特に限定するものではない。離型フィルムFとして、例えば矩形状、円形状等の離型フィルムFを用いることが可能である。また離型フィルムFの形状は、成形型200、キャビティC等の形状に応じて適宜選択することも可能である。
また、本実施形態で用いた離型フィルムFの材質は特に限定するものではない。離型フィルムFとして、例えば樹脂フィルム、金属箔、ゴムシート等、若しくは、これらを複合したものを用いることが可能である。
また、本実施形態では、樹脂材料は離型フィルムFと共に下型200Dに搬送される例を説明したが、本発明はこれに限るものではなく離型フィルムFと樹脂材料とは別々に下型200Dに搬送されることが可能である。
また、本実施形態では、離型フィルムFを下型200Dに吸着して保持させる例を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、上型200Uに離型フィルムFを吸着して保持させることが可能である。
<第2実施形態>
以下では、図9を用いて、第2実施形態に係る下型200Dについて説明する。
第2実施形態に係る下型200Dは、第1実施形態に係る下型200D(図7参照)とは異なる位置に連絡部240が形成されている点で、第1実施形態と異なっている。よって以下では主にこの相違点について説明し、その他の第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、第2実施形態に係る連絡部240は、上側面部材222の底面ではなく、上側面部材222の上下中途部に形成されている。例えば上側面部材222の外側面から環状凹部234を通過して貫通孔238に至るように穴を形成することで、このような位置に連絡部240を形成することができる。この場合、上側面部材222の外側面に形成される開口部を適宜の閉塞部材241によって閉塞することで、気密性を確保することができる。また第2実施形態では、貫通孔238の下端部は上側面部材222の底面まで形成する必要はなく、凹状部236aから上側面部材222の上下中途部(連絡部240と接続される位置)まで形成されていればよい。
第2実施形態においては、環状凹部234の上下中途部(連絡部240と同じ高さの部分)が分岐点Pとなる。したがって、第2実施形態では、吸引装置250から環状凹部234の上下中途部(分岐点P)までの空気の吸引経路が主経路Lとなる。また、環状凹部234の上下中途部(分岐点P)から第1吸着部232(第1吸着孔部232a)の上端部までの空気の吸引経路が第1分岐経路L1となる。また、環状凹部234の上下中途部(分岐点P)から貫通孔238の上端部までの空気の吸引経路が第2分岐経路L2となる。
この場合でも、第1分岐経路L1の最小断面積A1よりも、第2分岐経路L2の最小断面積A2の方が小さくなるように構成されている。すなわち、「最小断面積A2 < 最小断面積A1」を満たすように、最小断面積A1等が設定されている。このように構成することによって、第1分岐経路L1を流通する空気の流動抵抗より、第2分岐経路L2を流通する空気の流動抵抗の方が大きくなり、吸引管部242を介して空気を吸引した際に、第2分岐経路L2よりも第1分岐経路L1から優先的に空気が吸引されることになる。これによって本実施形態では、離型フィルムFを段階的に側面部材220に吸着することができる。
<第3実施形態>
以下では、図10を用いて、第3実施形態に係る下型200Dについて説明する。
第3実施形態に係る下型200Dは、第1吸着部232の形状が第1実施形態(図3参照)と異なっている。よって以下では主にこの相違点について説明し、その他の第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、第3実施形態に係る第1吸着部232は、第1吸着孔部232aに加えて第2吸着孔部232bを具備している。第2吸着孔部232bは、第1吸着部232と同様に、側面部材220の上面と、環状凹部234とを接続するように、上下方向に沿って形成される貫通孔である。第2吸着孔部232bは、平面視において、1つの第1吸着孔部232aから、その第1吸着孔部232aと隣接する他の第1吸着孔部232aまで延びるように形成される。このようにして第2吸着孔部232bは、隣接する第1吸着孔部232a同士を接続するように形成される。平面視における第2吸着孔部232bの幅(第2吸着孔部232bが隣接する第1吸着孔部232a同士を接続するために延びる方向に対して垂直な方向の長さである幅)は、概ね一定となるように形成される。第2吸着孔部232bの幅は、例えば離型フィルムFの厚さの4倍以下になるように形成される。
第2吸着孔部232bの幅は、第1吸着孔部232aの幅(第2吸着孔部232bが隣接する第1吸着孔部232a同士を接続するために延びる方向に対して垂直な方向における第1吸着孔部232aの最大の長さ。本実施形態では、第1吸着孔部232aの直径)よりも小さく形成されている。これによって、第1吸着孔部232aは、第2吸着孔部232bに対して、第2吸着孔部232bの幅方向両側にそれぞれ突出するように形成されている。すなわち、第1吸着孔部232aは、第2吸着孔部232bに対して、下型200Dの内側(キャビティC側)、及び、外側(キャビティCと反対側)に突出するように形成されている。
第1吸着孔部232a及び第2吸着孔部232bは、平面視において交互に連なるように形成される。また第1吸着孔部232a及び第2吸着孔部232bは、キャビティCの周囲を囲むように形成される。本実施形態では、第1吸着孔部232a及び第2吸着孔部232bは、途切れることなくキャビティCを囲むように形成される。すなわち、第1吸着孔部232a及び第2吸着孔部232bは、平面視において、端の無い環状に形成され、第1吸着孔部232a及び第2吸着孔部232bは、連続的に連なってキャビティCの周り全体を囲んでいる。このように、側面部材220の上面に開口する第1吸着孔部232a及び第2吸着孔部232bによって、離型フィルムFを吸着するための吸着孔が形成されている。
なお、上述のように、第1吸着孔部232a、第2吸着孔部232b及び環状凹部234(図5参照)はキャビティCの周囲を途切れることなく、連続的に連なって囲むように形成されている。このため上側面部材222は、第1吸着孔部232a等を挟んで、平面視において第1吸着孔部232a等よりも外側の部分(外側部材222a)と、内側の部分(内側部材222b)と、に分離されている。
第3実施形態のように、第1吸着孔部232aを第2吸着孔部232bで接続することにより、離型フィルムFを吸着するための吸着孔の面積を広く確保することができる。これによって、第1分岐経路L1における最小断面積A1(図7参照)を広くすることができる。第1分岐経路L1における最小断面積A1を広くすることによって、第2分岐経路L2における最小断面積A2との差を大きくすることができるため、第1分岐経路L1を介する空気の吸引と、第2分岐経路L2を介する空気の吸引のタイミングをより明確にずらすことができる。
また第3実施形態のように離型フィルムFを吸着するための吸着孔の面積を広く確保することで、離型フィルムFを強固に保持することができる。これによって、第2吸着部236や第3吸着部244によって離型フィルムFを吸着した際に、離型フィルムFの吸着不良(シワや、滑り等)の発生を防止することができ、離型フィルムFの吸着不良に起因する樹脂成形品の成形不良や離型不良の発生を防止することができる。また第1吸着孔部232aを、比較的幅の狭い第2吸着孔部232bで連結することで、比較的大きい吸着力で離型フィルムFを吸着しながらも、離型フィルムFが第1吸着孔部232aに引き込まれるのを防止することができる。
<第4、第5実施形態>
以下では、図11を用いて、第4実施形態及び第5実施形態に係る下型200Dについて説明する。
第4実施形態及び第5実施形態に係る下型200Dは、主経路L、第1分岐経路L1及び第2分岐経路L2の形状及び位置関係が、第1実施形態(図7参照)と異なっている。よって以下では主にこの相違点について説明し、その他の第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図11(a)には、第4実施形態に係る下型200Dを示している。図11(a)に示すように、第4実施形態に係る吸引管部242は、環状凹部234の下方ではなく、貫通孔238の下方に配置されている。すなわち、吸引管部242の上端部は、貫通孔238の下端部と接続されている。また貫通孔238の下端部は、連絡部240を介して環状凹部234の下端部と接続されている。これによって、第4実施形態では、貫通孔238の下端部が分岐点Pとなる。
なお第4実施形態では、第1実施形態(図7参照)と比較して連絡部240の断面積が大きく形成され、第2分岐経路L2の最小断面積A2が、第1分岐経路L1の最小断面積A1よりも小さくなるように形成される。このように構成することで、吸引管部242から空気を吸引した際に、離型フィルムFを第1吸着部232及び第2吸着部236で段階的に吸着することができる。
図11(b)には、第5実施形態に係る下型200Dを示している。図11(b)に示すように、第5実施形態に係る吸引管部242は、環状凹部234及び貫通孔238からずれた位置に配置されている。吸引管部242の上端部は、上側面部材222の底面に形成された凹部248を介して環状凹部234の下端部と接続されている。さらに環状凹部234の下端部は、第1実施形態と同様に、連絡部240を介して貫通孔238の下端部と接続されている。これによって、第5実施形態では、環状凹部234の下端部が分岐点Pとなる。
第5実施形態では、第1実施形態(図7参照)と同様に、第2分岐経路L2の最小断面積A2が、第1分岐経路L1の最小断面積A1よりも小さくなるように形成される。このように構成することで、吸引管部242から空気を吸引した際に、離型フィルムFを第1吸着部232及び第2吸着部236で段階的に吸着することができる。
<付記>
本開示の第1側面の成形型200は、
上型200U(一方の型)と、前記上型200Uに対向して配置され、離型フィルムFが配置されるキャビティCを有する下型200D(他方の型)と、を具備する成形型200であって、
前記下型200Dは、前記キャビティCの主面を形成する主面部材210と、前記キャビティCの側面を形成する側面部材220と、を具備し、
前記側面部材220は、
前記上型200Uに対向する第1対向面に形成され、前記離型フィルムFを吸着する第1吸着部232と、
前記第1対向面において、前記第1吸着部232よりも前記キャビティC側に形成され、前記離型フィルムFを吸着する第2吸着部236と、
前記第1吸着部232及び前記第2吸着部236から空気を吸引するための吸引経路(主経路L、第1分岐経路L1及び第2分岐経路L2)と、
を具備し、
前記吸引経路は、
空気の流通方向一端側が吸引装置250に接続されると共に、空気の流通方向他端側が前記第1吸着部232に接続される第1分岐経路L1、及び、前記第2吸着部236に接続される第2分岐経路L2に分岐され、
前記第2分岐経路L2における空気の流通方向に対して直交する断面の最小断面積A2は、前記第1分岐経路L1における空気の流通方向に対して直交する断面の最小断面積A1よりも小さい。
本開示の第1側面の成形型200によれば、低コスト化を図ることができる。すなわち、第1吸着部232及び第2吸着部236から空気を吸引するための吸引経路を共通化することで、吸引経路の省スペース化を図ることができる。吸引経路の省スペース化を図ることで、第1吸着部232及び第2吸着部236をキャビティC側に寄せて配置することができ、これに伴って離型フィルムFのサイズの小型化を図ることができ、樹脂成形品の製造コストの削減を図ることができる。また、第1分岐経路L1と第2分岐経路L2の最小断面積の差によって、第1吸着部232と第2吸着部236による離型フィルムFの吸着のタイミングを異ならせることができる。このため、吸着のタイミングを異ならせるための機構(例えば、吸引管の加工や吸着配管、開閉弁等)を設ける必要がなくなるため、樹脂成形装置1の低コスト化を図ることができる。
第1側面に従う第2側面の成形型200において、
前記第2分岐経路L2は、
前記第1分岐経路L1との分岐点Pから、前記主面部材210側に延びる第1経路(連絡部240)と、
前記第1経路から、前記第1対向面へと延びる第2経路(貫通孔238)と、
を具備する。
本開示の第2側面の成形型200によれば、第2分岐経路L2が屈曲するように形成することができ、第2分岐経路L2を流通する空気の流動抵抗を大きくすることができる。これによって、第1吸着部232と第2吸着部236による離型フィルムFの吸着のタイミングを異ならせ易くすることができる。
第2側面に従う第3側面の成形型200において、
前記側面部材220は、前記第1対向面が形成された上側面部材222(第1側面部材)と、前記上側面部材222に対して前記第1対向面とは反対側に配置された下側面部材223(第2側面部材)と、を含み、
前記第1経路(連絡部240)は、前記上側面部材222のうち、前記下側面部材223に対向する第2対向面に形成されている。
本開示の第3側面の成形型200によれば、第1経路(連絡部240)を容易に形成することができ、成形型200の低コスト化を図ることができる。
第1から第3側面に従う第4側面の成形型200において、
前記第1分岐経路L1は、前記第1対向面に垂直な方向から見て、前記キャビティCの周囲を連なって囲むように形成される環状凹部234(環状部)を具備する。
本開示の第4側面の成形型200によれば、第1分岐経路L1を流通する空気の流動抵抗を小さくすることができる。これによって、第1吸着部232と第2吸着部236による離型フィルムFの吸着のタイミングを異ならせ易くすることができる。
第4側面に従う第5側面の成形型200において、
前記第2分岐経路L2は複数形成され、
複数の前記第2分岐経路L2は、前記環状凹部234にそれぞれ接続されている。
本開示の第5側面の成形型200によれば、離型フィルムFをより確実に吸着することができる。すなわち、第1分岐経路L1の最小断面積A1に比べて第2分岐経路L2の最小断面積A2が小さいため、第2分岐経路L2に塵挨等が詰まることが懸念されるが、第2分岐経路L2を複数形成することによって、いずれかの第2分岐経路L2に塵挨等が詰まったとしても、他の第2分岐経路L2によって離型フィルムFの吸着を行うことができる。
第1から第5側面に従う第6側面の成形型200において、
前記第1吸着部232は、複数の第1吸着孔部232aと、隣接する前記第1吸着孔部232a同士を連結する第2吸着孔部232bと、を含み、
前記第1対向面において、前記第2吸着孔部232bが隣接する前記第1吸着孔部232a同士を連結するために延びる方向に垂直な方向における長さについて、前記第1吸着孔部232aが、前記第2吸着孔部232bよりも大きい。
本開示の第6側面の成形型200によれば、第1吸着部232の断面積を広く確保し易くなるため、第1吸着部232と第2吸着部236による離型フィルムFの吸着のタイミングを異ならせ易くすることができる。また、第2吸着孔部232bによって離型フィルムFが第1吸着孔部232aに引き込まれるのを防止することができる。
第6側面に従う第7側面の成形型200において、
前記第1吸着部232は、前記キャビティCの周囲を連なって囲むように形成されている。
本開示の第7側面の成形型200によれば、キャビティCの全周に亘って離型フィルムFを強固に保持することができる。これによって、離型フィルムFの吸着不良を効果的に防止することができる。
本開示の第8側面の樹脂成形装置1は、
第1から第7側面までのいずれかの成形型200を具備する。
本開示の第8側面の樹脂成形装置1によれば、低コスト化を図ることができる。
本開示の第9側面の樹脂成形品の製造方法は、
第8側面の樹脂成形装置1を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記離型フィルムFを前記下型200Dに配置するフィルム配置工程と、
前記離型フィルムFが配置された前記下型200Dを用いて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
を含む。
本開示の第9側面の樹脂成形品の製造方法によれば、低コスト化を図ることができる。