JP5957131B1 - 熱成形装置および熱成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】深絞り成形品を対象とした高低差の大きな成形基材の場合であっても、シートの被覆状態が低下するのを抑え、成形品質の向上を図ることが可能な技術を提供する。【解決手段】基材治具5に成形基材2を保持し、下枠10の枠上縁部10aと上枠20の枠下縁部20aとの間にシート3のシート端縁3aを挟持した状態で、下枠チャンバー10Aを減圧する減圧部が設けられ、制御部6は、枠上縁部10aと枠下縁部20aに挟持されたシート3に対して接触加熱を行い、その後、下枠チャンバー10Aを減圧部により減圧させ、基材治具5及び熱板4を互いに接触させないように上昇させることで、シート3を成形基材2の表面に被覆するように制御する。【選択図】図1

Description

本発明は、接触加熱したシートを成形基材の表面に被覆する熱成形に用いられる熱成形装置および熱成形方法に関する。
従来、接触加熱したシートを成形基材の表面に接着する装置として、真空プレス積層型の熱成形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、特許文献1に示す従来の熱成形装置は、成形基材を保持する基材治具と、この基材治具を収容する下枠と、加熱面を有する熱板を設けた上枠と、を備え、成形基材の表面に、ゴム状弾性膜を介した熱板の加熱によって軟化したシートを被覆し、トリミングするものである。上枠内のチャンバー(上枠チャンバー)は、真空タンクおよび加圧タンクに接続されており、チャンバー内を真空および加圧可能であり、下枠内のチャンバー(下枠チャンバー)は真空タンクに接続されチャンバー内を真空にすることが可能な構成となっている。
シートを接触加熱する熱板を有する熱成形装置を用いてシートを成形基材に被覆する成形方法は、例えば、以下のようにして行われる。
先ず、成形基材を基材治具に保持させておき、シートを下枠チャンバーの周縁部にセットする。続いて、上枠チャンバーを下降させ、上枠チャンバー内を減圧して真空状態とし、熱板の加熱面にシートを吸着させて加熱する。そして、下枠チャンバー内を減圧させ、次に上枠チャンバーを大気開放あるいは加圧することにより、熱板で加熱されて軟化したシートを成形基材に引き付けさせて被覆する。その後、被覆されたシートを適宜なカットラインでカットすることでトリミングを行うと、その成形基材が熱成形品として形成される。
特許第3102916号公報
シートを被覆する成形基材として、深絞り成形品を対象とする場合がある。この場合、基材治具に保持された成形基材のシート被覆面において上端部と下端部で高低差が大きくなる。そのため、熱板で加熱され軟化されたシートと、成形基材の下端部との距離(高さ方向の寸法)が大きくなり、成形基材の下端部分においてシートが引き伸ばされた状態で被覆されてしまい、基材下端部のシートが薄くなった状態で被覆され、破れの発生や剛性が低下するといった問題がある。この点で改善の余地があった。
本発明は、深絞り成形品を対象とした高低差の大きな成形基材の場合であっても、シートの被覆状態が低下するのを抑え、成形品質の向上を図ることが可能な熱成形装置および熱成形方法を提供する目的を有している。
本発明は、成形基材を保持する基材治具と、熱板と、を有し、加熱されたシートを前記成形基材の表面に被覆するための熱成形装置であって、
前記基材治具を枠内で上下移動可能に設けた下枠と、
前記熱板を枠内で上下移動可能に設けた上枠と、
御部と、
を備え、
前記下枠の枠上縁部と前記上枠の枠下縁部との間に、前記シートのシート端縁が挟持される構成とされ、
該シートの挟持状態で、該シートよりも下側の成形基材側領域を減圧する減圧部が設けられ、
前記制御部は、
前記枠上縁部と前記枠下縁部に挟持されたシートに対して前記熱板からの熱による接触加熱を行うように制御し
その後、前記成形基材側領域を前記減圧部により減圧させるように制御し
前記基材治具及び前記熱板を互いに接触させないように上昇させることで、前記シートを前記成形基材の表面に被覆するように制御する、態様を有する。
また、本発明は、成形基材を保持する基材治具と、該基材治具を枠内で上下移動可能に設けた下枠と、熱板と、該熱板を枠内で上下移動可能に設けた上枠と、を用い、
加熱されたシートを前記成形基材の表面に被覆する熱成形方法であって、
前記下枠の枠上縁部と前記上枠の枠下縁部との間にシート端縁が挟持されたシートに対して前記熱板からの熱による接触加熱を行う工程と、
該シートの挟持状態で、該シートよりも下側の成形基材側領域を減圧する工程と、
前記基材治具及び前記熱板を互いに接触させないように上昇させることで、前記シートを前記成形基材の表面に被覆させる工程と、
を有する、態様を有する。
本発明によれば、深絞り成形品を対象とした高低差の大きな成形基材の場合であっても、シートの被覆状態が低下するのを抑え、成形品質の向上を図ることが可能な熱成形装置および熱成形方法を提供することができる。
本発明の実施の形態による熱成形方法を実施するための熱成形装置の構成例を示す縦断面図である。 深絞り成形品を対象とした成形基材の構成例を示す斜視図である。 熱成形方法の動作手順の図であって、シートを下枠に保持させた状態の例を示す図である。 (a)、(b)は、図3に続く動作手順の図であって、下枠の枠上縁部に対して上枠の枠下縁部を密接させた状態の例を示す図である。 図4(b)に続く動作手順の図であって、熱板及び基材治具の上昇を開始した状態の例を示す図である。 図5に続く動作手順の図であって、熱板及び基材治具の上昇途中の状態の例を示す図である。 図6に続く動作手順の図であって、熱板及び基材治具が上昇位置に到達した状態の例を示す図である。 図7に続く動作手順の図であって、成形基材にシートが被覆された状態の例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
まず、図1〜8に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。なお、図1〜8は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。
[態様1]
本態様の熱成形装置1は、成形基材2を保持する基材治具5と、熱板4と、を有し、加熱されたシート3を成形基材2の表面に被覆する。基材治具5は、深絞り成形品を対象とした成形基材2をその深絞り方向を上下方向に向けて保持してもよい。熱成形装置1は、基材治具5を枠内で上下移動可能に設けた下枠10と、熱板4を枠内で上下移動可能に設けた上枠20と、制御部と、を備える。熱成形装置1は、下枠10の枠上縁部10aと上枠20の枠下縁部20aとの間に、シート3のシート端縁3aが挟持される構成とされている。熱成形装置1には、シート3の挟持状態で、該シート3よりも下側の成形基材側領域(例えば下枠チャンバー10A)を減圧する減圧部(例えば真空ポンプ7)が設けられている。制御部6は、枠上縁部10aと枠下縁部20aに挟持されたシート3に対して熱板4からの熱による接触加熱を行うように制御し、その後、成形基材側領域(10A)を減圧部(7)により減圧させるように制御し、基材治具5及び熱板4を互いに接触させないように上昇させることで、シート3を成形基材2の表面に被覆するように制御する。
ここで、「シートに対して熱板からの熱による接触加熱を行う」ことは、シートに熱板を直接接触させて加熱すること、特許文献1に示されるゴム状弾性膜等といった別の部材を介してシートに熱板を間接的に接触させて(前記別の部材を直接接触させて)加熱すること、の両方を含む。
制御部6は、
基材治具5に成形基材2を保持し、シート3が枠上縁部10aと枠下縁部20aに挟持された状態で、熱板4の加熱面4aをシート3に接触する位置に下降させ、シート3を吸着させて加熱するように制御し、
加熱によりシート3を軟化させながら、又は軟化させた後に、成形基材側領域(10A)を減圧部(7)により減圧状態となるように制御し、
基材治具5及び熱板4が互いに接触しないようにそれぞれ上昇させることで、シート3を成形基材2の表面に被覆するように制御してもよい。
[態様2]
本態様の熱成形方法は、成形基材2を保持する基材治具5と、該基材治具5を枠内で上下移動可能に設けた下枠10と、熱板4と、該熱板4を枠内で上下移動可能に設けた上枠20と、を用い、加熱されたシート3を成形基材2の表面に被覆する。本熱成形方法は、以下の工程(A)〜(C)を含む。
(A)下枠10の枠上縁部10aと上枠20の枠下縁部20aとの間にシート端縁3aが挟持されたシート3に対して熱板4からの熱による接触加熱を行う工程。
(B)シート3の挟持状態で、該シート3よりも下側の成形基材側領域(例えば下枠チャンバー10A)を減圧する工程。
(C)基材治具5及び熱板4を互いに接触させないように上昇させることで、シート3を成形基材2の表面に被覆させる工程。
前記工程(A)は、以下の工程(A1)〜(A3)を含んでもよい。
(A1)基材治具5に成形基材2を保持する工程。
(A2)下枠10の枠上縁部10aと上枠20の枠下縁部20aとの間でシート端縁3aを挟持して配置する工程。
(A3)熱板4の加熱面4aにシート3を吸着させて加熱する工程。
上記態様1,2では、枠上縁部10aと枠下縁部20aに挟持されたシート3に対して熱板4からの熱による接触加熱が行われた後、成形基材側領域(10A)が減圧され、基材治具5及び熱板4が互いに接触しないように上昇することで、シート3が成形基材2の表面に被覆される。これにより、基材治具5に保持された成形基材2の上昇とともに、その基材表面にシート3が被覆されることとなる。つまり、加熱されたシートに成形基材2が近接しながら被覆されるので、シート3が引き付けられる移動距離が小さくてすみ、シート3が伸びた状態で移動することが抑制された状態となる。そのため、深絞り成形品で高低差の大きな成形基材であっても、その基材表面に被覆される基材下端部のシートが薄くなり過ぎることが抑制され、破れの発生や剛性の低下が抑えられる。
[態様3]
前記基材治具5は、前記成形基材2を保持する保持部52が上側へ出た平板部51を有してもよい。前記基材治具5の上昇位置は、前記平板部51の上面が前記シート端縁3aの挟持位置となる位置か、前記平板部51の上面が前記シート端縁3aの挟持位置となる位置よりも上側でもよい。本態様は、成形基材の下端位置に被覆されるシートの伸び量が少なくて済み、前述のように被覆される基材下端部のシートが薄くならずに破れの発生や剛性の低下を抑制することができ、品質の向上を図ることができる。
なお、請求項に記載される上下関係の語は、表現上の都合で構成要素の位置関係を相対的に示すために使用している。下枠が上枠から上や左右など下以外に存在したり、基材治具が熱板から上や左右など下以外に存在したり、「上下移動」が水平移動など厳密な上下方向以外の方向への移動であったりすること等も、実施可能であり、請求項に係る発明に含まれる。また、「上」には斜め上が含まれ、「下」には斜め下が含まれる。
次に、本技術の具体例を説明する。図1に示す熱成形装置1は、熱板4の加熱によって軟化したシート3を成形基材の表面に被覆するための装置である。
熱成形品2Aは、図2に示すように、深絞り成形品を対象とした成形基材2の外表面に、加熱により軟化したシート3を密着させて被覆することにより熱成形される。成形基材2は、有頂筒状に形成され、上面2aと、下端外周部2bとの間に、深絞り形状による高低差hを有している。
図1に示すように、熱成形装置1は、成形基材2を収容可能な空間(下枠チャンバー10A)を有する下枠10と、下枠10に対して上方に位置するとともに、成形基材2を収容可能な空間(上枠チャンバー20A)を有する上枠20と、上枠20に設けられた熱板4と、下枠10に設けられて成形基材2をその深絞り方向を上下方向に向けて保持する基材治具5と、基材治具5及び熱板4のそれぞれの上下移動を制御する制御部6と、を備えている。また、図1に示す熱成形装置1は、下枠10と第1シリンダ12を支持する下テーブル(第1テーブル)30と、上枠20と第2シリンダ22を支持する上テーブル(第2テーブル)40と、をさらに備えている。制御部6は、テーブル30,40のそれぞれの上下移動も制御する。
なお、本実施の形態の熱成形装置1には、とくに図示しないが、基材治具5に保持された成形基材2に被覆されたシート3の不要部分をトリミングする切断治具が設けられている。
下枠10は、平面視で正方形状の部材であり、主として金属で形成され、4側面が側壁11によって囲われている。その側壁11の内側には、その内部空間を上下に区画し、双方の空間を気密に区画する前記基材治具5が上下移動可能に設けられている。このように基材治具5によって区画された上下の空間が上述した下枠チャンバー10A(成形基材側領域)となる。下枠10の枠上縁部10aには、上枠20の枠下縁部20aがシート3を挟んで気密に当接し、これにより下枠10と上枠20とが閉止状態となる。
なお、下枠チャンバー10Aのうち、基材治具5を挟んだ上側空間を符号10Aaで示し、下側空間を符号10Abで示している。これら上側空間10Aaと下側空間10Abとは、連通した状態(図では基材治具5によって仕切られた状態)となっている。
基材治具5は、平板状の平板部51と、平板部51の上面から上側へ出た保持部52と、を有する。保持部52は、成形基材2と略同形状である。この保持部52に対して有頂筒状の成形基材2を上方から被着させることで、成形基材2が基材治具5にセットされることになる。この基材治具5は、後述する第1シリンダ12の駆動によって下枠10の内面に沿って上下方向に摺動可能に設けられている。
ここで、図1に示す熱板4及び基材治具5の平板部51は、それぞれの上下が同圧となるように通気性を有している。
基材治具5の下方には、上下方向に伸縮するロッド12aを有する第1シリンダ12が設けられている。このロッド12aが下枠10に挿通され、そのロッド先端が基材治具5の下面に固定されている。
基材治具5の下降位置P1は、少なくとも基材治具5に保持される成形基材2の上面2aが下枠10の枠上縁部10aよりも例えば10mm程度、下方となる位置に設定されている。また、基材治具5の上昇位置P2(図7参照)は、基材治具5の平板部51の上面が枠上縁部10a(シート端縁3aの挟持位置)と一致する位置に設定されている。ただし、上昇位置P2は、枠上縁部10aと一致する位置であることに限定されることはなく、枠上縁部10aよりもさらに上方に突出する位置であってもよい。また、基材下端部までシート3を被覆することができれば、上昇位置P2は枠上縁部10aの下方の位置であってもかまわない。
また、基材治具5の平板部51には、下枠チャンバー10Aに連通する多数の通気孔(図示省略)が適宜な位置に設けられている。これら通気孔は、真空タンクを備えた真空ポンプ7(減圧部)に接続されている。成形時には、真空ポンプ7を駆動させて真空吸引することで下枠チャンバー10Aを減圧することができる。
下枠10と第1シリンダ12は、下テーブル30に取り付けられ、下テーブル30とともに上下移動するようにされている。下テーブル30には、下テーブル30を上下に移動させるための下テーブル駆動部(第1テーブル駆動部)32が設けられている。制御部6は、下テーブル駆動部32の駆動を制御する。
上枠20は、下枠10に対して近接離反可能に昇降するように構成されており、下枠10とほぼ同形状の平面視で正方形状の部材であり、主として金属で形成され、4側面が側壁21によって囲われている。その側壁21の内側には、その内部空間を上下に区画し、双方の空間を気密に区画する前記熱板4が上下移動可能に設けられている。上枠20の枠下縁部20aには、下枠10の枠上縁部10aが密接するようになっている。
熱板4は、下面側に滑らかな平面を有する加熱面4aを備えており、下枠10に対して近接離反するように上下方向に移動可能に設けられている。
熱板4の上方には、上下方向に伸縮するロッド22aを有する第2シリンダ22が設けられている。このロッド22aが上枠20に挿通され、そののロッド先端が熱板4に固定されている。
また、熱板4は、上側に複数のヒーター4bが設けられるとともに、加熱面4aに開口する図示しない通気孔が複数設けられている。加熱面4aの温度として、例えば一般的な熱可塑性シートの軟化温度範囲で80〜250℃に加熱される。熱板4の通気孔は、加熱面4a側を真空吸引する前記真空ポンプ7と、圧縮空気を貯める加圧タンクを備えた加圧ポンプ8と、に上枠20を介して接続されている。
このような構成により、熱成形時には、真空状態に維持された真空タンクを開放してシート3を真空吸引させて加熱面4aに密着させたり、加圧タンクより通気孔を通じて圧縮空気を加熱面4aから上枠チャンバー20A内に向けて供給し、その上枠チャンバー20Aを加圧したりすることが可能になっている。なお、真空タンクを設けずに、真空ポンプ7の駆動によって直接吸引させることで真空度を高めるようにしてもよい。
上枠20において、熱板4を挟んだ上下に前記上枠チャンバー20Aが形成される。熱板4の下降位置P3(図3及び図4参照)は、加熱面4aが上枠20の枠下縁部20aと一致する位置に設定されている。また、熱板4の上昇位置P4(図7参照)は、少なくとも基材治具5の上昇位置P2における成形基材2の上面2aよりも上方となる位置に設定されている。
なお、上枠チャンバー20Aのうち、熱板4を挟んだ下側空間を符号20Aaで示し、上側空間を符号20Abで示している。これら下側空間20Aaと上側空間20Abとは、連通した状態(図では熱板4によって仕切られた状態)となっている。
上枠20と第2シリンダ22は、上テーブル40に取り付けられ、上テーブル40とともに上下移動するようにされている。上テーブル30には、上テーブル40を上下に移動させるための上テーブル駆動部(第2テーブル駆動部)42が設けられている。制御部6は、上テーブル駆動部42の駆動を制御する。
成形基材2の表面に接着されるシート3は、外周部(シート端縁3a)が下枠10の枠上縁部10aと、上枠20の枠下縁部20aとの間に挟持され、水平状態で固定される。シート3の下面は、接着層となっている。なお、成形基材2とシート3との間の隙間は、例えば5mm程度あれば成形可能であり、この隙間を小さくすることにより下枠10の下枠チャンバー10Aを最小限にすることができる。
熱成形装置1は、図1に示すように、基材治具5に成形基材2を保持し、シート3が下枠10の枠上縁部10aと上枠20の枠下縁部20aに挟持された状態で、熱板4の加熱面4aをシート3に接触する位置に下降させシート3を吸着させて加熱するように制御部6で制御し、接触加熱によりシート3を軟化させながら、又は軟化させた後に、下枠チャンバー10Aを真空ポンプ7により真空圧状態(減圧状態)となるように制御部6で制御し、基材治具5及び熱板4が互いに接触しないようにそれぞれ上昇させることで、シート3を成形基材2の表面に被覆するように制御部6で制御する。なお、本実施の形態では、基材治具5及び熱板4を、同時に、又は熱板4が基材治具5よりも速くなるように上昇させるように制御している。
なお、図示しない切断治具は、例えば下枠10に設けられ、刃部を上方に向けて配置し、基材治具5に保持されている成形基材2に対して所定の間隔をあけて上下方向に対向する位置に配置されている。このように切断治具が構成され、切断治具の刃部が成形基材2に被覆したシート3に当たってカットし、トリミングすることができる。
次に、上述した熱成形装置1を使用して熱成形品2Aを成形する際の熱成形方法と、熱成形装置および熱成形方法による作用について、図面に基づいて説明する。
先ず、図3に示すように、下枠10に設けられている基材治具5に、図2に示す深絞り成形品を対象とした成形基材2を保持する。このときの基材治具5は、下降位置P1に位置している。
ここで、図3〜図8において、二重矢印は熱板4及び基材治具5の移動方向を示し、1本線の矢印は熱成形装置1内、すなわち下枠チャンバー10A及び上枠チャンバー20A内での空気の流れを示している。
その後、熱成形装置1は、シート3を下枠10の枠上縁部10aにセットし、図4(a)に示すように、上枠20全体を下降させてシート3を介して枠下縁部20aを枠上縁部10aに密接させるように上テーブル駆動部42を駆動して上枠20と第2シリンダ22とともに上テーブル40を下降させる。つまり、シート3は、そのシート端縁3aが枠上縁部10aと枠下縁部20aとによって挟持された状態で保持される。そして、下枠チャンバー10Aと上枠チャンバー20A(図1参照)とが保持シート3を挟んだ上下に区画されることになる。以後、シート3が成形基材2に被覆されるまで、下枠10と上枠20は移動しない(位置を変えない)。また、図4(a)に示す状態において、上枠20内に設けられている熱板4は、下降位置P3に位置しており、保持されているシート3に対して、僅かな間隔をあけた位置、或いはシート3に沿って加熱面4aの全面をほぼ接触させた状態で配置される。
なお、熱成形装置1は、上テーブル40を下降させる際に、又は、上テーブル40を下降させる代わりに、下テーブル駆動部32を駆動して下枠10と第1シリンダ12とともに下テーブル30を上昇させてもよい。
次に、図4(a)に示すように、加圧タンクを開放することにより下枠チャンバー10A内を圧空にて加圧し、ヒーター4bによって加熱された加熱面4aの側にシート3を移動させる。これとほぼ同時に、真空タンクを開放し、通気孔を介してシート3を熱板4の加熱面4a側に移動する方向(上向き)に真空吸引することにより、上枠チャンバー20Aを減圧する。これにより、シート3が加熱面4aに吸着し、効率良く接触加熱によって軟化する。なお、下枠チャンバー10A内を加圧することと上枠チャンバー20Aを減圧することの一方は、省いてもよい。
その後、熱板4によるシート3の加熱と並行して、図4(b)に示すように、真空タンクを開放することにより下枠チャンバー10Aを真空吸引して減圧する。
次に、熱板4に吸着されたシート3が所定温度に加熱されて軟化したときに、下枠チャンバー10Aを減圧したまま、上枠チャンバー20A内の減圧動作を停止して大気開放することで、シート3を挟んだ上枠チャンバー20Aと下枠チャンバー10Aとの間に圧力差を生じさせる(図示省略)。なお、このタイミングとしては、下枠チャンバー10A及び上枠チャンバー20Aの両方が真空状態(減圧状態)であるため、成形基材2の上昇中、あるいは上昇完了後に圧力差を生じさせても良い。
そして、上枠チャンバー20A内では、大気開放後に圧空にて加圧した状態にする。
そして、図5〜図7に示すように、上枠チャンバー20A内の減圧中、又は減圧を停止した時に熱板4を上昇させる。そして、熱板4を上昇させつつ、成形基材2も基材治具5とともに上昇させる。熱板4と成形基材2(基材治具5)のそれぞれの上昇のタイミングはシート加熱完了からのタイマー設定により行われる。
具体的には、下枠10の第1シリンダ12を伸張させることによって基材治具5を上方の上昇位置P2に移動させ、上枠20の第2シリンダ22を収縮させることによって熱板4を上方に移動させる。熱板4は、成形基材2に対して同時、あるいは先に上昇を開始し、さらに成形基材2に対して上昇速度が同じ、あるいは速くなるように設定されている。要は、熱板4は、上昇する成形基材2に対して干渉しないように、図4(a)、(b)示す下降位置P3から上方(図7に示す上昇位置P4)に退避されていれば良いのである。
なお、熱板4及び基材治具5の上昇させるタイミングは、位置検出やサーボ駆動によって制御することも可能である。
このように、上枠チャンバー20A内の減圧中、又は減圧を停止した時に、成形基材2を上昇させることにより、軟化したシート3が熱板4の加熱面4aから剥離するとともに、成形基材2側に向けて移動し、図8に示すように、成形基材2の外表面に引き付けられて表面全体にわたって一様に被覆される。成形基材2は、上昇位置P2まで一定の速度で上昇される。なお、成形基材2が上昇位置P2まで上昇させる速度は、位置検出がサーボ駆動によって変更することが可能であり、さらに上昇途中に速度を変更させることも可能である。
なお、このとき成形基材2は、軟化したシート3に対して近接しながら被覆されるので、シート3が引き付けられる移動距離が小さくてすみ、シート3が伸びた状態で移動することが抑制された状態となる。そのため、深絞り成形品を対象とした高低差の大きな成形基材2であっても、その基材表面に被覆される基材下端部のシート3が薄くなり過ぎることが抑制され、破れの発生や剛性の低下を抑えることができる。
しかも、本実施の形態では、基材治具5の上昇高さとして、成形基材2の下端位置がシート端部3aの挟持位置と一致しているので、成形基材2の下端位置に被覆されるシート3の伸び量を最小限にすることが可能となり、前述のように被覆される基材端部のシート3が薄くなり過ぎることが抑えられ、破れの発生や剛性の低下を抑制することができ、品質の向上を図ることができる。
なお、図4(b)に示す状態から熱板4と基材治具5を移動させず(位置を変えず)に下枠10と上枠20を下降させると、加熱されたシート3が下降して基材治具5に近付いて成形基材2に被覆されることにはなる。しかし、軟化したシート3が下側へ移動する際にシート3に揺れや乱れが生じ、シート3の伸び量が部分的に大きくなってシート3が部分的に薄くなり過ぎ、シート3に破れや剛性低下が発生し、成形品質が低下することがある。シート3の挟持を下枠10と上枠20の組合せではなく枠内に別途昇降可能に設けたクランプで行って該クランプを下降させる場合も、軟化したシート3が下側へ移動する際にシート3に揺れや乱れが生じ、成形品質が低下することがある。そもそも、クランプを別途設けると、成形基材やシートの脱着が複雑になり、シートを挟持する箇所の密閉構造が複雑になる。本実施形態のように下枠10と上枠20を移動させずに熱板4と基材治具5を上昇させると、シート3が移動しないので、前述の揺れや乱れの発生が抑制され、成形品質が向上する。
また、図4(b)に示す状態から熱板4と基材治具5を移動させずに下枠10と上枠20を下降させる場合、下枠10と上枠20の下降速度を一致させる必要があり、シート3の動きを熱板4と基材治具5との位置関係に応じて制御することができない。本実施形態のように下枠10と上枠20を移動させずに熱板4と基材治具5を別々に上昇させると、先に熱板4を上昇させてから基材治具5を上昇させたり、熱板4の移動を基材治具5の移動よりも速くしたりする等、細かく条件を変えてシート3の動きを制御することができる。
その後、被覆されたシート3に対して切断治具を用いて適宜なカットラインでカットすることでトリミングが行われ、その成形基材2にシート3が被覆された熱成形品2Aとして完成される。
そして、トリミング工程が終了したら、熱成形装置1は、上テーブル駆動部42を駆動して上テーブル40を上昇させ、第2シリンダ22とともに上枠20を上方に移動させることで、熱成形品2A(シート3を被覆・接着した成形基材2)を基材治具5から離脱させ、熱成形装置1から取り出す。
このような熱成形方法では、成形基材2を自動供給することによって、ロールシートによる連続成形の対応が可能となる。
上述のように本実施の形態による熱成形装置および熱成形方法では、深絞り成形品を対象とした高低差の大きな成形基材2の場合であっても、シート3の被覆状態が低下するのを抑え、成形品質の向上を図ることができる。
以上、本発明による熱成形装置および熱成形方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では、本実施の形態では、熱板4及び基材治具5の上下移動手段として、シリンダ12、22を用いているが、これに限定されることはなく、例えば電動モータ等の駆動装置を使用する構造とすることも可能である。
また、本実施の形態では、基材治具5の上昇位置P2として、成形基材2の下端位置がシート端縁3aの挟持位置と一致する位置としているが、この位置であることに制限されることはない。例えば、成形基材2の下端位置がシート端縁3aの挟持位置よりも少し下方の位置としてもよいし、上方の位置であってもよい。
さらに、基材治具5の上昇速度は、一定であることに限らず、可変としてもよい。
また、本発明において、成形基材2に対するシート3の「接着」とは、本実施の形態のようにシート3自体を成形基材2に接着する貼り合わせ成形の場合のみならず、転写トリムレスによりシート最上層のキャリアフィルムを剥離させて加飾層のみ(本発明のシートに相当する)を成形基材に転写させる場合も含んでいる。
また、下枠10、上枠20、熱板4、基材治具5、テーブル30,40、等の形状、大きさ、シート3の固定手段、及び切断手段などの構成は、適宜、設定することができる。
また、本実施の形態では、熱板4によってシート3を軟化させた後に、シート3より下側の成形基材側領域を減圧状態にしているが、このタイミングであることに制限されることはなく、例えばシート3を軟化させながらシート3より下側の成形基材側領域を減圧状態にするようにしてもよい。
下枠10を上下移動させずに上枠20を上下移動させる場合には、下テーブル駆動部32を省いてもよい。上枠20を上下移動させずに下枠10を上下移動させる場合には、上テーブル駆動部42を省いてもよい。
さらに、トリミング工程は、本実施の形態のように成形時と同時でもよいし、成形後、別工程で行うようにしてもよい。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、成形品質の向上を図ることが可能な技術等を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用及び効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。これらの構成等も、本技術に含まれる。
1 熱成形装置
2 成形基材
2A 熱成形品
3 シート
3a シート端縁
4 熱板
4a 加熱面
5 基材治具
6 制御部
7 真空ポンプ(減圧部の例)
8 加圧ポンプ
10 下枠
10A 下枠チャンバー(成形基材側領域の例)
10a 枠上縁部
20 上枠
20A 上枠チャンバー
20a 枠下縁部
P1 下降位置
P2 上昇位置
P3 下降位置
P4 上昇位置

Claims (3)

  1. 成形基材を保持する基材治具と、熱板と、を有し、加熱されたシートを前記成形基材の表面に被覆するための熱成形装置であって、
    前記基材治具を枠内で上下移動可能に設けた下枠と、
    前記熱板を枠内で上下移動可能に設けた上枠と、
    御部と、
    を備え、
    前記下枠の枠上縁部と前記上枠の枠下縁部との間に、前記シートのシート端縁が挟持される構成とされ、
    該シートの挟持状態で、該シートよりも下側の成形基材側領域を減圧する減圧部が設けられ、
    前記制御部は、
    前記枠上縁部と前記枠下縁部に挟持されたシートに対して前記熱板からの熱による接触加熱を行うように制御し
    その後、前記成形基材側領域を前記減圧部により減圧させるように制御し
    前記基材治具及び前記熱板を互いに接触させないように上昇させることで、前記シートを前記成形基材の表面に被覆するように制御することを特徴とする熱成形装置。
  2. 前記基材治具は、前記成形基材を保持する保持部が上側へ出た平板部を有し、
    前記基材治具の上昇位置は、前記平板部の上面が前記シート端縁の挟持位置となる位置か、前記平板部の上面が前記シート端縁の挟持位置となる位置よりも上側である、請求項1に記載の熱成形装置。
  3. 成形基材を保持する基材治具と、該基材治具を枠内で上下移動可能に設けた下枠と、熱板と、該熱板を枠内で上下移動可能に設けた上枠と、を用い、
    加熱されたシートを前記成形基材の表面に被覆する熱成形方法であって、
    前記下枠の枠上縁部と前記上枠の枠下縁部との間にシート端縁が挟持されたシートに対して前記熱板からの熱による接触加熱を行う工程と、
    該シートの挟持状態で、該シートよりも下側の成形基材側領域を減圧する工程と、
    前記基材治具及び前記熱板を互いに接触させないように上昇させることで、前記シートを前記成形基材の表面に被覆させる工程と、
    を有することを特徴とする熱成形方法。
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