JP7416058B2 - 有機エレクトロニクス材料及び電荷輸送性ポリマーの製造方法 - Google Patents

有機エレクトロニクス材料及び電荷輸送性ポリマーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、有機エレクトロニクス材料、電荷輸送性ポリマーの製造方法、液状組成物、有機層、有機エレクトロニクス素子、有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)、表示素子、照明装置、及び表示装置に関する。
有機エレクトロニクス素子は、有機物を用いて電気的な動作を行う素子であり、省エネルギー、低価格、柔軟性等の特長を発揮できると期待されている。有機エレクトロニクス素子の例として、有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ等が挙げられる。
有機EL素子に関しては、各種素子特性において更なる改善が望まれている。有機EL素子の高性能化の一手段として、有機層を多層化し、各層における機能を分離する試みがなされている。湿式プロセスに従い多層化する際には、上層の成膜時に用いる塗布溶液の溶媒に対する、下層の耐溶剤性が求められる。
有機層を多層化するため、例えば、重合性基を少なくとも1つ有する化合物を利用する方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006-279007号公報
本発明の実施形態は、適切なエネルギーレベルを有し、耐溶剤性に優れ、有機エレクトロニクス素子の寿命特性を向上させることができる有機層を形成することができる有機エレクトロニクス材料及び液状組成物を提供することを課題とする。本発明の他の実施形態は、前記有機エレクトロニクス材料に用いられる電荷輸送性ポリマーに適した、電荷輸送性ポリマーの製造方法を提供することを課題とする。本発明の他の実施形態は、適切なエネルギーレベルを有し、耐溶剤性に優れ、有機エレクトロニクス素子の寿命特性を向上させることができる有機層を提供することを課題とする。本発明の更に他の実施形態は、寿命特性が向上した有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、表示素子、照明装置、及び表示装置を提供することを課題とする。
実施形態の例を以下に挙げる。本発明は以下の実施形態に限定されない。
一実施形態は、下記式(1)で表される構造単位と、下記式(2-1)で表される構造単位及び下記式(2-2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位と、1価の構造単位の全量を基準として85~100モル%の下記式(3)で表される構造単位とを含む電荷輸送性ポリマーを含有する、有機エレクトロニクス材料に関する。
Figure 0007416058000001
(式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表し、少なくとも1つのArは、フルオロ基及びフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つを含む置換基を有する芳香族炭化水素基である。)
Figure 0007416058000002
(式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。)
Figure 0007416058000003
(式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。)
Figure 0007416058000004
(式中、nは、0~20の整数を表す。)
他の一実施形態は、前記有機エレクトロニクス材料に用いられる電荷輸送性ポリマーを製造する方法であって、前記式(1)で表される構造単位を有する2官能モノマーと、前記式(2-1)で表される構造単位を有する3官能モノマー及び前記式(2-2)で表される構造単位を有する4官能モノマーからなる群から選択される少なくとも1種の3又は4官能モノマーと、1官能モノマーの全量を基準として85~100モル%の前記式(3)で表される構造単位を有する1官能モノマーとを含有するモノマー混合物を、芳香族エーテルを含有する溶媒中で反応させることを含む、電荷輸送性ポリマーの製造方法に関する。
他の一実施形態は、前記有機エレクトロニクス材料と溶媒とを含有する、液状組成物に関する。
他の一実施形態は、前記有機エレクトロニクス材料、又は、前記液状組成物を用いて形成された、有機層に関する。
他の一実施形態は、前記有機層を少なくとも1つ有する、有機エレクトロニクス素子に関する。
他の一実施形態は、前記有機層を少なくとも1つ有する、有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
他の実施形態は、前記有機エレクトロルミネセンス素子を備える、表示素子;前記有機エレクトロルミネセンス素子を備える、照明装置;及び、前記照明装置と、表示手段として液晶素子とを備える、表示装置に関する。
本発明の実施形態によれば、適切なエネルギーレベルを有し、耐溶剤性に優れ、有機エレクトロニクス素子の寿命特性を向上させることができる有機層を形成することができる有機エレクトロニクス材料及び液状組成物を提供することが可能である。本発明の他の実施形態によれば、前記有機エレクトロニクス材料に用いられる電荷輸送性ポリマーに適した、電荷輸送性ポリマーの製造方法を提供することが可能である。本発明の他の実施形態によれば、適切なエネルギーレベルを有し、耐溶剤性に優れ、有機エレクトロニクス素子の寿命特性を向上させることができる有機層を提供することが可能である。本発明の更に他の実施形態によれば、寿命特性が向上した有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、表示素子、照明装置、及び表示装置を提供することが可能である。
図1は、一実施形態である有機EL素子の一例を示す断面模式図である。
本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
<有機エレクトロニクス材料>
本発明の一実施形態は、式(1)で表される構造単位と、式(2-1)で表される構造単位及び式(2-2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位と、1価の構造単位の全量を基準として85~100モル%の式(3)で表される構造単位とを含む電荷輸送性ポリマーを少なくとも含有する、有機エレクトロニクス材料に関する。有機エレクトロニクス材料は、ドーパント、重合開始剤等の任意の成分を更に含有してもよい。
本開示において、「式(X)で表される構造単位」を、「構造単位(X)」という場合がある。また、「式(Y-1)で表される構造単位及び式(Y-2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位」を、「構造単位(Y)」という場合がある。
[電荷輸送性ポリマー]
電荷輸送性ポリマーは、構造単位(1)と、構造単位(2)と、構造単位(3)とを少なくとも含む。構造単位(3)の含有量は、1価の構造単位の全量を基準として85~100モル%である。電荷輸送性ポリマーは、構造単位(1)~(3)とは異なる任意の構造単位を更に含んでもよい。例えば、電荷輸送性ポリマーは、式(4-1)で表される構造単位及び式(4-2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を更に含んでもよい。
(構造単位(1))
電荷輸送性ポリマーは、構造単位(1)を含む。構造単位(1)は、他の構造単位との結合部位を2つ持つ2価の構造単位である。構造単位(1)を含むことにより、適切なエネルギーレベルを有する有機層を形成することができる。電荷輸送性ポリマーは、構造単位(1)を1種のみ含んでも、2種以上含んでもよい。
Figure 0007416058000005
式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表し、少なくとも1つのArは、フルオロ基及びフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つを含む置換基を有する芳香族炭化水素基である。
本開示において、構造式中の「*」は、他の構造単位又は構造との結合部位を表す。
芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素から1個又は2個の水素原子を除いた原子団である。芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~14であり、更に好ましくは6~10である。芳香族炭化水素の例として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、フェナントレン、9,10-ジヒドロフェナントレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ペリレン、トリフェニレン、ペンタセン、ベンゾピレン等が挙げられる。
Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換のベンゼン基、置換又は非置換のナフタレン基、又は、置換又は非置換のアントラセン基であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン基、又は、置換又は非置換のナフタレン基であることがより好ましい。
芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、-R、-OR、-SR、-OCOR、-COOR、-SiR、及び、ハロゲン原子からなる群から選択される置換基(以下、「置換基Ra」と記す場合がある。)が挙げられる。
は、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群から選択される。ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~22である。アリール基の炭素数は、好ましくは6~30である。ヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは2~30である。アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、置換又は非置換であってよい。
アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が置換基を有する場合の置換基の例として、前記置換基Raが挙げられ、好ましくは-Rである。置換基を有するアルキル基の例として、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、フルオロアルキル基等が挙げられる。置換基を有するアリール基の例として、アルキルアリール基、フルオロアリール基等が挙げられる。置換基を有するヘテロアリール基の例として、アルキルヘテロアリール基等が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
本開示において、アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基は、芳香族複素環化合物から水素原子1個を除いた原子団である。ここでの芳香族炭化水素としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が直接結合を介して結合した多環が挙げられる。ここでの芳香族複素環化合物としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が直接結合を介して結合した多環が挙げられる。
アリール基における芳香族炭化水素の例として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、フェナントレン、9,10-ジヒドロフェナントレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ペリレン、トリフェニレン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニルベンゼン等が挙げられる。ヘテロアリール基における芳香族複素環化合物の例として、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントロリン、カルバゾール、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ピロール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチオフェン、ビチオフェン等が挙げられる。
式(1)中、少なくとも1つのArは、フルオロ基及びフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つを含む置換基を有する芳香族炭化水素基である。フルオロアルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
例えば、深いHOMOレベルとHOMO-LUMO間の大きなエネルギーギャップとを両立する観点からは、構造単位(1)おいて、少なくとも1つのArがフルオロ基を有する芳香族炭化水素基であり、かつ、全てのArがフルオロアルキル基を有しない芳香族炭化水素基であることが好ましい。
一方、例えば、より深いHOMOレベルを得る観点からは、構造単位(1)おいて、少なくとも1つのArがフルオロアルキル基を有する芳香族炭化水素基であることが好ましい。
構造単位(1)に含まれるフルオロ基又はフルオロアルキル基は、1~8個であることが好ましく、1~6個であることがより好ましく、1~4個であることが更に好ましく、1~3個であることが特に好ましい。前記の個数である場合、HOMOレベルを深くする効果が得られやすい傾向がある。また、前記の個数である場合、電荷輸送性ポリマーの溶解性が低くなりすぎることを防止しやすい傾向がある。
構造単位(1)は、例えば、下記構造単位(1a)を含むことが好ましい。
Figure 0007416058000006
式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも1つのRは、フルオロ基又はフルオロアルキル基である。
フルオロアルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。式中、フルオロ基又はフルオロアルキル基であるRの個数は、1~8個であることが好ましく、1~6個であることがより好ましく、1~4個であることが更に好ましく、1~3個であることが特に好ましい。
フルオロ基又はフルオロアルキル基ではないRは、水素原子又は置換基である。置換基の例として、前記置換基Ra(ただし、ここではフルオロ基及びフルオロアルキル基を除く。)が挙げられる。置換基による影響を抑える観点から、フルオロ基又はフルオロアルキル基ではないRの全てが水素原子であってもよい。
構造単位(1)は、例えば、下記構造単位(1b)~(1e)からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含むことが好ましい。
Figure 0007416058000007
電荷輸送性ポリマーが構造単位(1b)及び/又は構造単位(1c)を含む場合、深いHOMOレベルとHOMO-LUMO間の大きなエネルギーギャップとが得られやすい傾向がある。電荷輸送性ポリマーが構造単位(1d)及び/又は構造単位(1e)を含む場合、より深いHOMOレベルが得られやすい傾向がある。電荷輸送性ポリマーが構造単位(1e)を含む場合、電荷輸送性ポリマーの良好な溶解性が得られやすい傾向がある。
(構造単位(2))
電荷輸送性ポリマーは、構造単位(2-1)及び構造単位(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位(2)を含む。構造単位(2-1)は、他の構造単位との結合部位を3つ持つ、3価の構造単位である。構造単位(2-2)は、他の構造単位との結合部位を4つ持つ、4価の構造単位である。構造単位(2)は、他の構造単位との結合部位を3又は4つ持つ、3又は4価の構造単位である。構造単位(2)を含むことにより、電荷輸送性ポリマーは、分岐状ポリマーとなり、1分子中に3個以上の末端を有するポリマーとなる。分岐状ポリマーは、分子量を容易に大きくでき、また、良好な溶解性を示す傾向がある。電荷輸送性ポリマーは、構造単位(2)を1種のみ含んでも、2種以上含んでもよい。
Figure 0007416058000008
式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。
Figure 0007416058000009
式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。
置換又は非置換の芳香族炭化水素基については、前記構造単位(1)における置換又は非置換の芳香族炭化水素基に関する説明を適用することができる。Arは、非置換の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
構造単位(2-1)中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換のベンゼン基、置換又は非置換のナフタレン基、又は、置換又は非置換のアントラセン基であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン基、又は、置換又は非置換のナフタレン基であることがより好ましく、置換又は非置換のベンゼン基であることが更に好ましい。
構造単位(2-2)中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換のベンゼン基、置換又は非置換のナフタレン基、又は、置換又は非置換のアントラセン基であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン基、又は、置換又は非置換のナフタレン基であることがより好ましく、置換又は非置換のベンゼン基であることが更に好ましい。
構造単位(2)は、例えば、下記構造単位(2-1a)、下記構造単位(2-1b)、及び下記構造単位(2-2a)からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含むことが好ましい。
Figure 0007416058000010
式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基の例として、前記置換基Raが挙げられる。
Figure 0007416058000011
式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基の例として、前記置換基Raが挙げられる。
Figure 0007416058000012
式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基の例として、前記置換基Raが挙げられる。
構造単位(2)は、例えば、下記構造単位(2-1c)、(2-1d)、及び(2-2b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含むことが好ましい。
Figure 0007416058000013
(構造単位(3))
電荷輸送性ポリマーは、構造単位(3)を含む。構造単位(3)は、他の構造単位との結合部位を1つ持つ1価の構造単位である。構造単位(3)は、電荷輸送性ポリマーのポリマー鎖の末端部に含まれる。構造単位(3)の含有量は、末端部を形成する1価の構造単位の全量を基準として85~100モル%である。構造単位(3)を85~100モル%含むことにより、耐溶剤性に優れた有機層を得ることができ、有機エレクトロニクス素子の寿命特性を向上させることができる。電荷輸送性ポリマーは、構造単位(3)を1種のみ含んでも、2種以上含んでもよい。
Figure 0007416058000014
式中、nは、0~20の整数を表す。
nは、反応性及び寿命特性の向上の観点から1~8であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~3であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
構造単位(3)は、「*-Ph-O-CH-OXT-C2n+1」で表される構造単位である(Phはフェニレン基であり、OXTはオキセタン基である。以下同様。)。該構造単位は、オキセタン基を含む上記の構造によって優れた反応性を示すため、電荷輸送性ポリマーの硬化反応を効率よく進めることができる。該構造単位は、より良好な耐熱性を有する電荷輸送性ポリマーが得られるという点において、「*-Ph-CH-*」又は「*-Ph-CH-O-CH-*」を含む構造単位よりも好ましい。該構造単位は、より良好な寿命特性を示す有機エレクトロニクス素子が得られるという点において、「*-Ph-*」と「*-OXT-C2n+1」との間に「*-(CH-*(nは2以上の整数)」を含む構造単位よりも好ましい。
構造単位(3)の含有量は、1価の構造単位の全量を基準として85~100モル%である。含有量が85モル%以上である場合、耐溶剤性に優れた有機層を得ることができ、かつ、有機エレクトロニクス素子の寿命特性を向上させることができる。これらのより高い効果が得られる傾向があることから、構造単位(3)の含有量は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。構造単位(3)の含有量の上限は100モル%である。電荷輸送性ポリマーの末端部に他の機能を有する構造単位を導入する場合、構造単位(3)の含有量は100モル%未満であってよく、例えば、95モル%以下又は90モル%以下としてもよい。
構造単位(3)は、例えば、下記構造単位(3a)を含むことが好ましい。
Figure 0007416058000015
(構造単位(4))
電荷輸送性ポリマーは、構造単位(4-1)及び構造単位(4-2)からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位(4)を含んでもよい。構造単位(4-1)、構造単位(4-2)、及び構造単位(4)は、他の構造単位との結合部位を1つ持つ、1価の構造単位である。構造単位(4)は、電荷輸送性ポリマーのポリマー鎖の末端部に含まれる。構造単位(4)の含有量は、末端部を形成する1価の構造単位の全量を基準として0~15モル%であることが好ましい。構造単位(4)を含むことにより、電荷輸送性ポリマーの溶解性が向上する傾向がある。電荷輸送性ポリマーは、構造単位(4)を1種のみ含んでも、2種以上含んでもよい。
Figure 0007416058000016
式中、Rは、それぞれ独立に、ハロゲン基、ハロゲン置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、置換又は非置換のスルホ基(-S(O)-O-R’(R’は水素原子又は炭化水素基))、又は、置換又は非置換のスルフィノ基(-S(O)-O-R’(R’は水素原子又は炭化水素基))を表す。
ハロゲン基は、フルオロ基であることが好ましい。ハロゲン置換アルキル基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。ハロゲン置換アルキル基は、フルオロアルキル基であることが好ましい。フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。スルホ基及びスルフィノ基における各R’は、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、各R’がアルキル基である場合、炭素数は1~4であることが好ましい。
2つのRは、互いに同じでも異なってもよく、互いに同じであることが好ましい。Rは、それぞれ独立に、フルオロ基又はフルオロアルキル基であることが好ましく、フルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。
電荷輸送性ポリマーが構造単位(4-1)を含む場合、より深いHOMOレベルが得られやすい傾向がある。
Figure 0007416058000017
式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖状アルキル基を表し、少なくとも1つのRは直鎖状アルキル基である。
直鎖状アルキル基の炭素数は、4~20であることが好ましく、4~16であることがより好ましく、4~12であることが更に好ましい。
構造単位(4)の含有量は、1価の構造単位の全量を基準として0~15モル%である。すなわち、電荷輸送性ポリマーは、構造単位(4)を含まないか(0モル%)、構造単位(4)を含む場合、その含有量は15モル%以下である。含有量が15モル%以下である場合、構造単位(3)の含有量が十分となり、耐溶剤性に優れた有機層を得ることができる。また、HOMO-LUMO間の大きなエネルギーギャップが小さくなることの防止効果、又は、有機エレクトロニクス素子の寿命特性の向上効果を得ることができる。これらのより高い効果が得られる傾向があることから、構造単位(4)の含有量は、10モル%以下であることが好ましく、7モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが更に好ましい。構造単位(4)の含有量の下限は0モル%である。電荷輸送性ポリマーの溶解性を向上させたい場合、構造単位(4)の含有量は0モル%超であってよく、例えば、5モル%以上又は10モル%以上としてもよい。
構造単位(4)は、例えば、下記構造単位(4-1a)及び(4-2a)からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含むことが好ましい。
Figure 0007416058000018
式中、n及びmは、それぞれ独立に1~4の整数を表す。nとmは、互いに同じであっても異なってもよく、同じであることが好ましい。
Figure 0007416058000019
式中、nは、4~20の整数を表す。nは、4~16であることがより好ましく、4~12であることが更に好ましい。
構造単位(4)は、例えば、下記構造単位(4-1b)及び(4-2b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含むことが好ましい。
Figure 0007416058000020
(任意の構造単位)
電荷輸送性ポリマーは、前記構造単位(1)~(3)とは異なる他の任意の構造単位(以下、「任意の構造単位」という。)を更に含有してもよい。任意の構造単位として、例えば、前記構造単位(4)が挙げられる。
また、任意の構造単位は、例えば、置換又は非置換の芳香族アミン構造、置換又は非置換のカルバゾール構造、置換又は非置換のチオフェン構造、置換又は非置換のフルオレン構造、置換又は非置換のベンゼン構造、置換又は非置換のビフェニル構造、置換又は非置換のターフェニル構造、置換又は非置換のナフタレン構造、置換又は非置換のアントラセン構造、置換又は非置換のテトラセン構造、置換又は非置換のフェナントレン構造、置換又は非置換のジヒドロフェナントレン構造、置換又は非置換のピリジン構造、置換又は非置換のピラジン構造、置換又は非置換のキノリン構造、置換又は非置換のイソキノリン構造、置換又は非置換のキノキサリン構造、置換又は非置換のアクリジン構造、置換又は非置換のジアザフェナントレン構造、置換又は非置換のフラン構造、置換又は非置換のピロール構造、置換又は非置換のオキサゾール構造、置換又は非置換のオキサジアゾール構造、置換又は非置換のチアゾール構造、置換又は非置換のチアジアゾール構造、置換又は非置換のトリアゾール構造、置換又は非置換のベンゾチオフェン構造、置換又は非置換のベンゾオキサゾール構造、置換又は非置換のベンゾオキサジアゾール構造、置換又は非置換のベンゾチアゾール構造、置換又は非置換のベンゾチアジアゾール構造、置換又は非置換のベンゾトリアゾール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。
任意の構造単位は、1価以上であってよく、1~6価であることが好ましく、1~5価であることがより好ましく、1~4価であることが更に好ましい。
任意の構造単位に含まれる置換基について、前記構造単位(1)における置換基の説明を適用することができる。
(各構造単位の含有量)
電荷輸送性ポリマーは、構造単位(1)以外にも2価の構造単位を含んでもよい。構造単位(1)の含有量は、エネルギーレベルを調整する観点から、2価の構造単位の全量を基準として、50モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。構造単位(1)の含有量の上限は100モル%である。
電荷輸送性ポリマーに含まれる2価の構造単位の含有量は、十分な電荷輸送性を得る観点から、全構造単位を基準として、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上が更に好ましい。また、2価の構造単位の含有量は、1価の構造単位及び3価以上の構造単位を考慮すると、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が更に好ましい。
電荷輸送性ポリマーは、構造単位(2)以外にも3価以上の構造単位を含んでもよい。構造単位(2)の含有量は、良好な電荷輸送性を得る観点から、3価以上の構造単位の全量を基準として、50モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。構造単位(2)の含有量の上限は100モル%である。
電荷輸送性ポリマーに含まれる3価以上の構造単位の含有量は、耐溶剤性に優れた有機層を得る観点から、全構造単位を基準として、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。また、3価以上の構造単位の含有量は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点、又は、十分な電荷輸送性を得る観点から、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましく、20モル%以下が特に好ましい。
電荷輸送性ポリマーは、構造単位(3)以外にも1価の構造単位(例えば、構造単位(4))を含んでもよい。構造単位(3)の含有量は、良好な電荷輸送性を得る観点から、1価の構造単位の全量を基準として、85モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上が更に好ましい。構造単位(3)の含有量の上限は100モル%である。
電荷輸送性ポリマーに含まれる1価の構造単位の含有量は、電荷輸送性ポリマーの硬化性及び溶解性の観点、並びに、有機エレクトロニクス素子の特性向上の観点から、全構造単位を基準として、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上が更に好ましい。また、1価の構造単位の含有量は、十分な電荷輸送性を得る観点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。
電荷輸送性ポリマーは、任意の構造単位を含んでもよい。任意の構造単位の含有量は、構造単位(1)~(3)による十分な効果を得る観点から、全構造単位を基準として、50モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、20モル%以下が更に好ましく、10モル%以下又は5モル%以下が特に好ましい。任意の構造単位の含有量の下限は0モル%である。すなわち、電荷輸送性ポリマーは、任意の構造単位を含まなくてもよい。
電荷輸送性ポリマー中には、置換又は非置換の飽和炭化水素鎖を含む置換基を有する構造単位が含まれていてもよい。置換又は非置換の飽和炭化水素鎖の例として、置換又は非置換のアルキレン鎖(*-(CH-*(nは2以上の整数))が挙げられる。置換又は非置換のアルキレン鎖を含む置換基として、置換又は非置換の直鎖状アルキル基(例えば、*-C2n+1(nは2以上の整数))、置換又は非置換の直鎖状アルキレン基を含む1価の基(例えば、*-O-(CH-OXT(nは2以上の整数。OXTは置換基を有してもよいオキセタン基))等が挙げられる。
溶解性向上の観点からは、電荷輸送性ポリマーは、置換又は非置換の飽和炭化水素鎖を含む置換基を有する構造単位(以下、「構造単位C」という場合がある。)を含むことが好ましい。一方で、寿命特性向上の観点から、電荷輸送性ポリマーにおける構造単位Cの含有量は少ないことが好ましい。すなわち、電荷輸送性ポリマーが構造単位Cを含む場合、その含有量は、全構造単位を基準として、50モル%以下であることが好ましい。特に、電荷輸送性ポリマーは、置換又は非置換の炭素数6以上の飽和炭化水素鎖を含む構造単位C(例えば、置換又は非置換のアルキレン鎖(*-(CH-*(nは6以上の整数))を含む置換基を有する構造単位C)を含まないか(0モル%)、又は、該構造単位Cを含む場合、その含有量は、全構造単位を基準として、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることが更に好ましい。電荷輸送性ポリマーに含まれる全構造単位において、より好ましくは、置換又は非置換の炭素数5以上の飽和炭化水素鎖を含む構造単位Cの含有量が前記範囲であり、更に好ましくは、置換又は非置換の炭素数4以上の飽和炭化水素鎖を含む構造単位Cの含有量が前記範囲であり、特に好ましくは、置換又は非置換の炭素数3以上の飽和炭化水素鎖を含む構造単位Cの含有量が前記範囲である。
特に、より優れた寿命特性を得る観点から、電荷輸送性ポリマーは、1価の構造単位が、置換又は非置換の炭素数6以上の飽和炭化水素鎖を含む構造単位C(例えば、置換又は非置換のアルキレン鎖(*-(CH-*(nは6以上の整数))を含む置換基を有する構造単位C)を含まないか(0モル%)、又は、該構造単位Cを含む場合、その含有量は、1価の構造単位の全量を基準として、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが更に好ましい。1価の構造単位において、より好ましくは、置換又は非置換の炭素数5以上の飽和炭化水素鎖を含む構造単位Cの含有量が前記範囲であり、更に好ましくは、置換又は非置換の炭素数4以上の飽和炭化水素鎖を含む構造単位Cの含有量が前記範囲であり、特に好ましくは、置換又は非置換の炭素数3以上の飽和炭化水素鎖を含む構造単位Cの含有量が前記範囲である。
電荷輸送性ポリマーに含まれる2価の構造単位、3価以上の構造単位、及び1価の構造単位の含有量の比(モル比)は、それぞれの構造単位による効果のバランスを考慮し、2価の構造単位:3価以上の構造単位:1価の構造単位=100:5~70:50~150が好ましく、100:10~60:60~135がより好ましく、100:15~50:80~120が更に好ましい。
構造単位の含有量は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、各構造単位に対応するモノマーの使用量を用いて求めることができる。また、構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーのH NMRスペクトルにおける各構造単位に由来するスペクトルの積分値を利用し、平均値として算出することができる。簡便であることから、使用量が明らかである場合は、好ましくは、使用量を用いて求めた値を採用する。
(数平均分子量)
電荷輸送性ポリマーの数平均分子量は、溶媒への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。数平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上が更に好ましく、5,000以上が特に好ましい。また、数平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、液状組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下が更に好ましく、30,000以下が特に好ましい。
(重量平均分子量)
電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量は、溶媒への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。重量平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が更に好ましい。また、重量平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、液状組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、700,000以下がより好ましく、400,000以下が更に好ましく、100,000以下が特に好ましい。
数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。測定条件としては、例えば、実施例に記載の条件が挙げられる。
(電荷輸送性ポリマーの構造例)
電荷輸送性ポリマーは、構造単位(1)を含む2価の構造単位、構造単位(2)を含む3価以上の構造単位、及び構造単位(3)含む1価の構造単位を含む。3価以上の構造単位は電荷輸送性ポリマーの分岐部を形成し、1価の構造単位は電荷輸送性ポリマーの末端部を形成する。
好ましい実施形態によれば、電荷輸送性ポリマーは、1つの構造単位(2)と、該1つの構造単位(2)に結合する3つ以上の構造単位(1)とを少なくとも有する分岐構造を含む。好ましくは、電荷輸送性ポリマーは、1つの構造単位(2)と、該1つの構造単位(2)に結合する3つ以上の構造単位(1)とを有し、更に、前記3つ以上の構造単位(1)のそれぞれにつき、該構造単位(1)に結合する別の1つの構造単位(2)と、該別の1つの構造単位(2)に結合する別の2つ以上の構造単位(1)とを少なくとも有する多重分岐構造を含む。
電荷輸送性ポリマーに含まれる構造の例として、以下が挙げられる。構造中、「L」は2価の構造単位を、「B」は3価以上の構造単位を、「T」は1価の構造単位を表す。以下の構造中、複数のLは、互いに同一の構造単位であっても、互いに異なる構造単位であってもよい。B及びTについても、同様である。なお、電荷輸送性ポリマーは、以下の構造を有するものに限定されない。
Figure 0007416058000021
(電荷輸送性ポリマーの用途等)
電荷輸送性ポリマーは、構造単位(1)を有することにより、HOMOレベルを適切なレベルに調整することが可能であり、構造単位(2)を有することにより、溶解性及び耐久性が優れる。また、電荷輸送性ポリマーは、特定の含有量の構造単位(3)を有するため、硬化性及び寿命特性にも優れる。このような電荷輸送性ポリマーを含む有機エレクトロニクス材料は、例えば、有機EL素子の正孔輸送性層に好ましく用いることができる。良好な溶解性が得られることから、有機エレクトロニクス材料は、芳香族エーテル及び芳香族ハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む溶媒に溶解させて使用することが好ましい。
<電荷輸送性ポリマーの製造方法>
本発明の一実施形態は、前記有機エレクトロニクス材料に用いられる電荷輸送性ポリマーを製造する方法であって、前記式(1)で表される構造単位を有する2官能モノマーと、前記式(2-1)で表される構造単位を有する3官能モノマー及び前記式(2-2)で表される構造単位を有する4官能モノマーからなる群から選択される少なくとも1種の3又は4官能モノマーと、1官能モノマーの全量を基準として85~100モル%の前記式(3)で表される構造単位を有する1官能モノマーとを含有するモノマー混合物を、芳香族エーテルを含有する溶媒中で反応させることを含む、電荷輸送性ポリマーの製造方法に関する。電荷輸送性ポリマーの製造方法は、モノマーを用意すること、モノマー混合物と溶媒とを混合すること、触媒を添加すること、電荷輸送性ポリマーを洗浄すること等の任意の工程を更に含有してもよい。
本開示において、「式(X)で表される構造単位を有するモノマー」を、「モノマー(X)」という場合がある。また、「式(Y-1)で表される構造単位を有するモノマー及び式(Y-2)で表される構造単位を有するモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー」を、「モノマー(Y)」という場合がある。
[モノマー混合物]
モノマー混合物は、モノマー(1)と、モノマー(2)と、モノマー(3)とを少なくとも含む。モノマー(3)の含有量は、1官能のモノマーの全量を基準として85~100モル%である。モノマー混合物は、モノマー(1)~(3)とは異なる任意のモノマーを更に含んでもよい。例えば、モノマー混合物は、式(4-1)で表される構造単位を有する1官能モノマー及び式(4-2)で表される構造単位を有する1官能モノマーからなる群から選択される少なくとも1種の1官能モノマーを更に含んでもよい。
(モノマー(1))
モノマー(1)は、分子内に1つの構造単位(1)を含む。モノマー(1)は、電荷輸送性ポリマーに構造単位(1)を導入するために用いることができる。前記構造単位(1)に関する説明は、モノマー(1)に含まれる構造単位(1)に適用することができる。モノマー(1)は、反応性官能基を2つ持つ2官能モノマーである。
モノマー(1)は、例えば、下記式(1M)で表されるモノマーであることが好ましい。
Figure 0007416058000022
式中、Lは、構造単位(1)を表し、Rは、それぞれ独立に、反応性官能基を表す。
(モノマー(2))
モノマー(2-1)は、分子内に1つの構造単位(2-1)を含み、反応性官能基を3つ持つ3官能モノマーである。モノマー(2-2)は、分子内に1つの構造単位(2-2)を含み、反応性官能基を4つ持つ4官能モノマーである。モノマー(2-1)及びモノマー(2-2)からなる群から選択される1種以上であるモノマー(2)は、電荷輸送性ポリマーに構造単位(2)を導入するために用いることができる。前記構造単位(2)に関する説明は、モノマー(2)に含まれる構造単位(2)に適用することができる。
モノマー(2-1)は、例えば、下記式(2-1M)で表されるモノマーであることが好ましい。
Figure 0007416058000023
式中、Bは、構造単位(2-1)を表し、Rは、それぞれ独立に、反応性官能基を表す。
モノマー(2-2)は、例えば、下記式(2-2M)で表されるモノマーであることが好ましい。
Figure 0007416058000024
式中、Bは、構造単位(2-2)を表し、Rは、それぞれ独立に、反応性官能基を表す。
(モノマー(3))
モノマー(3)は、分子内に1つの構造単位(3)を含む。モノマー(3)は、電荷輸送性ポリマーに構造単位(3)を導入するために用いることができる。前記構造単位(3)に関する説明は、モノマー(3)に含まれる構造単位(3)に適用することができる。モノマー(3)は、反応性官能基を1つ持つ1官能モノマーである。
モノマー(1)は、例えば、下記式(3M)で表されるモノマーであることが好ましい。
Figure 0007416058000025
式中、Tは、構造単位(3)を表し、Rは、反応性官能基を表す。
(モノマー(4))
モノマー(4-1)は、分子内に1つの構造単位(4-1)を含み、反応性官能基を1つ持つ1官能モノマーである。モノマー(4-2)は、分子内に1つの構造単位(4-2)を含み、反応性官能基を1つ持つ1官能モノマーである。モノマー(4-1)及びモノマー(4-2)からなる群から選択される1種以上であるモノマー(4)は、電荷輸送性ポリマーに構造単位(4)を導入するために用いることができる。前記構造単位(4)に関する説明は、モノマー(4)に含まれる構造単位(4)に適用することができる。
モノマー(4-1)は、例えば、下記式(4-1M)で表されるモノマーであることが好ましい。
Figure 0007416058000026
式中、Tは、構造単位(4-1)を表し、Rは、反応性官能基を表す。
モノマー(4-2)は、例えば、下記式(4-2M)で表されるモノマーであることが好ましい。
Figure 0007416058000027
式中、Tは、構造単位(4-2)を表し、Rは、反応性官能基を表す。
(反応性官能基)
反応性官能基は、互いに反応し、構造単位の間に結合を形成し得る基である。結合は、直接結合であることが好ましい。反応性官能基は、目的とする反応に応じて適宜、選択することができる。例えば、反応が後述する鈴木カップリング反応である場合、反応性官能基は、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、及びハロゲン基からなる群から選択されることが好ましい。
モノマー混合物の例として、反応性官能基の全てがボロン酸基又はボロン酸エステル基であるモノマー(1);反応性官能基の全てがハロゲン基であるモノマー(2);及び反応性官能基がハロゲン基であるモノマー(3)を含む混合物が挙げられる。モノマー混合物の他の例として、反応性官能基の全てがハロゲン基であるモノマー(1);反応性官能基の全てがボロン酸基又はボロン酸エステル基であるモノマー(2);及び反応性官能基がボロン酸基又はボロン酸エステル基であるモノマー(3)を含む混合物が挙げられる。これらの例において、モノマー混合物が更にモノマー(4)を含む場合、モノマー(4)は、モノマー(3)と同じ反応性官能基を持つことが好ましい。
モノマーは、公知の方法により合成することができる。また、これらのモノマーは、例えば、東京化成工業株式会社、シグマアルドリッチジャパン合同会社等から入手可能である。
(モノマー混合物の組成)
モノマー混合物における各モノマーの含有量は、電荷輸送性ポリマーにおける、各モノマーに対応する構造単位の含有量に従うことができる。例えば、モノマー混合物におけるモノマー(3)の含有量は、電荷輸送性ポリマーにおける構造単位(3)の含有量と同様に、1官能モノマーを基準として85~100モル%である。例えば、モノマー混合物における2官能モノマーの含有量は、電荷輸送性ポリマーにおける2価の構造単位の含有量と同様に、全モノマーを基準として10モル%以上が好ましい。すなわち、電荷輸送性ポリマーにおける構造単位の含有量(数値範囲)についての説明を、電荷輸送性ポリマーをモノマー混合物に、構造単位をモノマーに置き換えて、モノマー混合物におけるモノマーの含有量(数値範囲)についての説明として用いることができる。
[モノマー混合物の反応]
反応は、カップリング反応であることが好ましく、カップリング反応としては、例えば、鈴木カップリング、根岸カップリング、薗頭カップリング、スティルカップリング、ブッフバルト・ハートウィッグカップリング等の公知の反応を用いることができる。鈴木カップリングは、例えば、芳香族ボロン酸化合物又は芳香族ボロン酸エステル化合物と、芳香族ハロゲン化合物との間で、Pd触媒を用いたクロスカップリング反応を起こさせるものである。鈴木カップリングによれば、所望とする芳香環同士を結合させることにより、電荷輸送性ポリマーを簡便に製造できる。
鈴木カップリングでは、触媒として、例えば、Pd(0)化合物、Pd(II)化合物等のPd化合物、Ni化合物、Ru化合物などが用いられる。Pd化合物の例として、Pd(t-BuP)(ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0))、Pd(t-BuP)(テトラキス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0))、Pd(PPh(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))、Pd(dppf)Cl([1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド)、Pd(dppe)Cl([1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)ジクロリド)等のホスフィン配位子を有するPd化合物などが挙げられる。また、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等を前駆体として使用し、前駆体とホスフィン配位子とを反応系中で混合することにより発生させた触媒種を用いることもできる。この場合のホスフィン配位子の例として、P(t-Bu)(トリス(t-ブチル)ホスフィン)、トリブチルホスフィン、P(c-Hex)(トリシクロヘキシルホスフィン)等が挙げられる。
反応溶媒としては、有機溶媒が挙げられ、水と有機溶媒との混合溶媒を好ましく使用できる。有機溶媒の例として、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。反応には、塩基として、NaCO、KCO等のアルカリ金属の炭酸塩;NaOH、KOH等のアルカリ金属の水酸化物;KPO等のアルカリ金属のリン酸塩;トリエチルアミン、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、TEAH(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)等の水溶性有機塩基などを使用することも可能である。また、相間移動触媒を添加して反応を促進することもできる。相間移動触媒の例として、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)、Aliquat 336(登録商標、SIGMA-ALDRICH製、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドとトリカプリルメチルアンモニウムクロリドとの混合物)等が挙げられる。
目的とする電荷輸送性ポリマーを得るために好適な反応溶媒として、芳香族エーテル及び芳香族ハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む溶媒が挙げられる。
芳香族エーテルは、下記式(A)で表される芳香族エーテルを含むことが好ましい。反応溶媒が芳香族エーテルを含む場合、反応溶媒は、水と芳香族エーテルとを含む混合溶媒であることが好ましい。芳香族エーテルとして、具体的には、アニソール及び/又はフェネトールが好ましく、アニソールがより好ましい。芳香族エーテルを含む溶媒を使用した場合、前記電荷輸送性ポリマーを効率よく、容易に得ることができる。
Figure 0007416058000028
式中、Arは、芳香族炭化水素基を表し、Rは、炭化水素基を表し、nは、1以上の整数を表す。
芳香族炭化水素基については、上述の構造単位(1)における芳香族炭化水素基に関する説明を適用することができる。Arは、ベンゼン基又はナフタレン基であることが好ましく、ベンゼン基であることがより好ましい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。炭化水素基の炭素数は、1~8であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましい。炭化水素基として、具体的には、アルキル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。Arがベンゼン基である場合、nは、1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
反応溶媒が芳香族エーテルを含む混合溶媒である場合、芳香族エーテルの含有量は、反応溶媒の全量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。一方で、芳香族エーテルの含有量は、反応溶媒の全量を基準として、100質量%未満であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
芳香族ハロゲン化物は、下記式(B)で表される芳香族ハロゲン化物を含むことが好ましい。反応溶媒が芳香族ハロゲン化物を含む場合、反応溶媒は、水と芳香族ハロゲン化物とを含む混合溶媒であることが好ましい。芳香族ハロゲン化物として、具体的には、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及び/又はクロロナフタレンが好ましい。クロロベンゼンを含む溶媒を使用した場合、前記電荷輸送性ポリマーを効率よく、容易に得ることができる。
Figure 0007416058000029
式中、Arは、芳香族炭化水素基を表し、Rは、ハロゲン原子を表し、nは、1以上の整数を表す。
芳香族炭化水素基については、上述の構造単位(1)における芳香族炭化水素基に関する説明を適用することができる。Arは、ベンゼン基又はナフタレン基であることが好ましく、ベンゼン基であることがより好ましい。ハロゲン原子は、塩素原子であることが好ましい。Arがベンゼン基である場合、nは、1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
反応溶媒が芳香族ハロゲン化物を含む混合溶媒である場合、芳香族ハロゲン化物の含有量は、反応溶媒の全量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。一方で、芳香族ハロゲン化物の含有量は、反応溶媒の全量を基準として、100質量%未満であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
[ドーパント]
有機エレクトロニクス材料は、任意の添加剤を含むことができ、例えばドーパントを更に含有してよい。ドーパントは、有機エレクトロニクス材料に添加することでドーピング効果を発現させ、電荷の輸送性を向上させ得るものであればよく、特に制限はない。正孔輸送性の向上にはp型ドーピング、電子輸送性の向上にはn型ドーピングを行うことが好ましい。また、1種のドーパントを単独で添加しても、複数種のドーパントを混合して添加してもよい。
p型ドーピングに用いられるドーパントは、電子受容性の化合物であり、例えば、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属化合物、イオン化合物、ハロゲン化合物、π共役系化合物等が挙げられる。具体的には、ルイス酸としては、FeCl、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr等;プロトン酸としては、HF、HCl、HBr、HNO、HSO、HClO等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、1-ブタンスルホン酸、ビニルフェニルスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機酸;遷移金属化合物としては、FeOCl、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、AlCl、NbCl、TaCl、MoF;イオン化合物としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、AsF (ヘキサフルオロ砒酸イオン)、BF (テトラフルオロホウ酸イオン)、PF (ヘキサフルオロリン酸イオン)等のパーフルオロアニオンを有する塩、アニオンとして前記プロトン酸の共役塩基を有する塩など;ハロゲン化合物としては、Cl、Br、I、ICl、ICl、IBr、IF等;π共役系化合物としては、TCNE(テトラシアノエチレン)、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)等が挙げられる。
n型ドーピングに用いられるドーパントは、電子供与性の化合物であり、例えば、Li、Cs等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属;LiF、CsCO等のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩;金属錯体;電子供与性有機化合物などが挙げられる。
有機層の耐溶剤性を向上させるために、ドーパントとして重合性官能基に対する重合開始剤として作用し得る化合物を用いてもよい。
[他の任意成分]
有機エレクトロニクス材料は、電荷輸送性低分子化合物、他のポリマー等を更に含有してもよい。
[含有量]
有機エレクトロニクス材料中の電荷輸送性ポリマーの含有量は、良好な電荷輸送性を得る観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。電荷輸送性ポリマーの含有量の上限は特に限定されず、100質量%とすることも可能である。ドーパント等の添加剤を含むことを考慮し、電荷輸送性ポリマーの含有量を、例えば95質量%以下又は90質量%以下としてもよい。
ドーパントを含有する場合、その含有量は、有機エレクトロニクス材料の電荷輸送性を向上させる観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、成膜性を良好に保つ観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
<液状組成物>
本発明の実施形態である液状組成物は、前記有機エレクトロニクス材料と溶媒とを含有する。溶媒を含有する液状組成物によって、塗布法によって有機層を容易に形成できる。液状組成物はインク組成物として使用することができる。
[溶媒]
溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒など、任意の溶媒を使用できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;シクロヘキサン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル;クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1-クロロナフタレン等の芳香族ハロゲン化物;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。液状組成物は、1種の溶媒を単独で含有しても、又は、2種以上の溶媒を含有してもよい。
電荷輸送性ポリマーの優れた溶解性が得られる観点から、液状組成物は、芳香族エーテル及び芳香族ハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む溶媒を含有することが好ましい。液状組成物が、芳香族エーテル及び/又は芳香族ハロゲン化物を含む溶媒を含有する場合、電荷輸送性ポリマーに溶解性向上のために導入されることがある直鎖状アルキレン基又は直鎖状アルキル基を多く導入することなく、電荷輸送性ポリマーを容易に溶媒に溶解させることができる。電荷輸送性ポリマーにおける直鎖状アルキレン基及び直鎖状アルキル基の含有量が少ないことは、有機エレクトロニクス素子の寿命特性を向上させるうえで好ましい。電荷輸送性ポリマーへ構造単位(1)を導入すると、芳香族炭化水素等の一般的な溶媒への電荷輸送性ポリマーの溶解性が低下する傾向がある。しかし、液状組成物が、芳香族エーテル及び/又は芳香族ハロゲン化物を含む溶媒を含有する場合、電荷輸送性ポリマーが構造単位(1)を含む場合であっても、良好な溶解性が得られやすい。
好ましい例において、液状組成物は、芳香族エーテルを含む溶媒を含有することが好ましい。芳香族エーテルは、上記式(A)で表される芳香族エーテルであることが好ましい。具体的には、芳香族エーテルとしては、アニソール及び/又はフェネトールが好ましく、アニソールがより好ましい。芳香族エーテルを含む溶媒を使用した場合、前記電荷輸送性ポリマーを効率よく、容易に溶解することができる。芳香族エーテルを含む溶媒が混合溶媒である場合、混合溶媒中の芳香族エーテルの含有量は、溶媒の全量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。溶媒は、芳香族エーテルのみからなる溶媒であってもよい。
他の好ましい例において、液状組成物は、芳香族ハロゲン化物を含む溶媒を含有することが好ましい。芳香族エーテルは、上記式(B)で表される芳香族エーテルであることが好ましい。具体的には、芳香族ハロゲン化物としては、クロロベンゼン及び/又はジクロロベンゼンが好ましく、クロロベンゼンがより好ましい。芳香族ハロゲン化物を含む溶媒を使用した場合、前記電荷輸送性ポリマーを効率よく、容易に溶解することができる。芳香族ハロゲン化物を含む溶媒が混合溶媒である場合、混合溶媒中の芳香族ハロゲン化物の含有量は、溶媒の全量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。溶媒は、芳香族ハロゲン化物のみからなる溶媒であってもよい。
[重合開始剤]
電荷輸送性ポリマーに含まれるオキセタン基を反応させるため、液状組成物は、好ましくは、重合開始剤を含有する。重合開始剤として、公知のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等を使用できる。液状組成物を簡便に調製できる観点から、ドーパントとしての機能と重合開始剤としての機能とを兼ねる物質を用いることが好ましい。そのような物質として、例えば、前記イオン化合物が挙げられる。
[添加剤]
液状組成物は、更に、任意成分として添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
[含有量]
液状組成物における溶媒の含有量は、種々の塗布方法へ適用することを考慮して定めることができる。例えば、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、0.1質量%以上となる量が好ましく、0.2質量%以上となる量がより好ましく、0.5質量%以上となる量が更に好ましい。また、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、20質量%以下となる量が好ましく、15質量%以下となる量がより好ましく、10質量%以下となる量が更に好ましい。
<有機層>
本発明の実施形態である有機層は、前記有機エレクトロニクス材料又は前記液状組成物を用いて形成された層である。有機層は、良好な電荷輸送性を示す。液状組成物を用いることによって、塗布法により有機層を良好かつ簡便に形成できる。塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法;キャスト法;浸漬法;凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の有版印刷法;インクジェット法等の無版印刷法などの公知の方法が挙げられる。塗布法によって有機層を形成する場合、塗布後に得られた液状組成物の層を、ホットプレート又はオーブンを用いて乾燥させ、溶媒を除去してもよい。
電荷輸送性ポリマーは重合性官能基を有する構造単位(3)を含むため、光照射、加熱処理等により電荷輸送性ポリマーの重合反応を進行させ、硬化した有機層を得ることができる。硬化した有機層を積層することで、有機エレクトロニクス素子の多層化を容易に図ることが可能となる。
乾燥後又は硬化後の有機層の厚さは、電荷輸送の効率を向上させる観点から、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは1nm以上であり、更に好ましくは3nm以上である。また、有機層の厚さは、電気抵抗を小さくする観点から、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。
<有機エレクトロニクス素子>
本発明の実施形態である有機エレクトロニクス素子は、少なくとも1つの前記有機層を有する。有機エレクトロニクス素子として、例えば、有機発光ダイオード(OLED)等の有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタなどが挙げられる。有機エレクトロニクス素子は、好ましくは、少なくとも一対の電極の間に有機層が配置された構造を有する。
<有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)>
本発明の実施形態である有機EL素子は、少なくとも1つの前記有機層を有する。有機EL素子は、通常、発光層、陽極、陰極、及び基板を備えており、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層等の正孔輸送性層、電子注入層、電子輸送層等の電子輸送性層などの他の機能層を備えている。各層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。有機EL素子は、好ましくは、前記有機層を発光層又は他の機能層として有し、より好ましくは他の機能層として有し、更に好ましくは正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として有する。
図1は、有機EL素子の一実施形態を示す断面模式図である。図1の有機EL素子は、多層構造の素子であり、基板8、陽極2、正孔注入層3及び正孔輸送層6、発光層1、電子輸送層7、電子注入層5、並びに陰極4をこの順に有している。
[発光層]
発光層に用いる材料として、低分子化合物、ポリマー、デンドリマー等の発光材料を使用できる。ポリマーは、溶媒への溶解性が高く、塗布法に適しているため好ましい。発光材料としては、蛍光材料、燐光材料、熱活性化遅延蛍光材料(TADF)等が挙げられる。
[正孔輸送性層]
有機EL素子は、前記有機層を、正孔輸送性層として含むことが好ましく、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として含むことがより好ましい。上述のとおり、有機エレクトロニクス材料を含む液状組成物を用いることにより、これらの層を容易に形成することができる。
有機EL素子が、前記有機層を正孔注入層として有し、更に正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層には公知の材料を使用できる。また、有機EL素子が、前記有機層を正孔輸送層として有し、更に正孔注入層を有する場合、正孔注入層には公知の材料を使用できる。正孔注入層と正孔輸送層とが前記有機層であってもよい。
正孔輸送層が硬化した有機層である場合、その上層にインク組成物を用いて発光層を容易に形成することが可能である。この場合、重合開始剤は、正孔輸送層である有機層に含有させても、又は、正孔輸送層の下層にある有機層に含有させてもよい。
[電子輸送性層]
電子輸送層及び電子注入層等の電子輸送性層に用いる材料としては、例えば、フェナントロリン誘導体、ビピリジン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレン、ペリレンなどの縮合環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、アルミニウム錯体等が挙げられる。また、前記有機エレクトロニクス材料も使用できる。
[陰極]
陰極材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Ba、Mg/Ag、LiF、CsF等の金属又は金属合金が用いられる。
[陽極]
陽極材料としては、例えば、金属(例えば、Au)又は導電性を有する他の材料が用いられる。他の材料として、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)、導電性高分子(例えば、ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸混合物(PEDOT:PSS))が挙げられる。
[基板]
基板として、ガラス、プラスチック等を使用できる。基板は、透明であることが好ましく、また、フレキシブル性を有することが好ましい。石英ガラス、樹脂フィルム等が好ましく用いられる。
樹脂フィルムとしては、光透過性樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムを用いる場合、水蒸気、酸素等の透過を抑制するために、樹脂フィルムへ酸化珪素、窒化珪素等の無機物をコーティングして用いてもよい。
[封止]
有機EL素子は、外気の影響を低減させて長寿命化させるため、封止されていてもよい。封止に用いる材料としては、ガラス、プラスチックフィルム、又は酸化珪素、窒化ケイ素等の無機物を用いることができるが、これらに限定されることはない。
[発光色]
有機EL素子の発光色は特に限定されるものではない。白色の有機EL素子は、家庭用照明、車内照明、時計又は液晶のバックライト等の各種照明器具に用いることができるため好ましい。
<表示素子、照明装置、表示装置>
本発明の実施形態である表示素子は、前記有機EL素子を備える。例えば、赤、緑及び青(RGB)の各画素に対応する素子として、有機EL素子を用いることで、カラーの表示素子が得られる。
また、本発明の実施形態である照明装置は、前記有機EL素子を備える。更に、本発明の実施形態である表示装置は、照明装置と、表示手段として液晶素子とを備える。例えば、表示装置は、バックライトとして前記照明装置を用い、表示手段として公知の液晶素子を用いた表示装置、すなわち液晶表示装置とすることができる。
<実施形態の例>
本発明の好ましい実施形態の例を以下に挙げる。本発明の実施形態は以下の例に限定されない。
[1] 前記式(1)で表される構造単位と、
前記式(2-1)で表される構造単位及び前記式(2-2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位と、
1価の構造単位の全量を基準として85~100モル%の前記式(3)で表される構造単位と
を含む電荷輸送性ポリマーを含有する、有機エレクトロニクス材料。
[2] 前記式(1)で表される構造単位が、前記式(1b)で表される構造単位、前記式(1c)で表される構造単位、前記式(1d)で表される構造単位、及び前記式(1e)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含む、前記[1]に記載の有機エレクトロニクス材料。
[3] 前記式(2-1)で表される構造単位及び前記式(2-2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位が、前記式(2-1c)で表される構造単位、前記式(2-1d)で表される構造単位、及び前記式(2-2b)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含む、前記[1]又は[2]に記載の有機エレクトロニクス材料。
[4] 前記式(3)で表される構造単位が、前記式(3a)で表される構造単位を含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
[5] 前記電荷輸送性ポリマーが、前記式(4-1)で表される構造単位及び前記式(4-2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を更に含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
[6] 前記式(4-1)で表される構造単位及び前記式(4-2)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位が、前記式(4-1b)で表される構造単位及び前記式(4-2b)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含む、前記[5]に記載の有機エレクトロニクス材料。
[7] 前記[1]~[6]のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料に用いられる電荷輸送性ポリマーを製造する方法であって、
前記式(1)で表される構造単位を有する2官能モノマーと、前記式(2-1)で表される構造単位を有する3官能モノマー及び前記式(2-2)で表される構造単位を有する4官能モノマーからなる群から選択される少なくとも1種の3又は4官能モノマーと、1官能モノマーの全量を基準として85~100モル%の前記式(3)で表される構造単位を有する1官能モノマーとを含有するモノマー混合物を、芳香族エーテルを含有する溶媒中で反応させることを含む、電荷輸送性ポリマーの製造方法。
[8] 前記[1]~[6]のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料と、溶媒とを含有する、液状組成物。
[9] 前記溶媒が芳香族エーテルを含む、前記[8]に記載の液状組成物。
[10] 前記[1]~[6]のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料、又は、前記[8]及び[9]のいずれかに記載の液状組成物を用いて形成された、有機層。
[11] 前記[10]に記載の有機層を含む、有機エレクトロニクス素子。
[12] 前記[10]に記載の有機層を含む、有機エレクトロルミネセンス素子。
[13] 前記[10]に記載の有機層を、正孔注入層又は正孔輸送層として含む、有機エレクトロルミネセンス素子。
[14] 前記[12]又は[13]に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を含む、表示素子。
[15] 前記[12]又は[13]に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を含む、照明装置。
[16] 前記[15]に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子とを含む、表示装置。
本発明の実施形態について実施例により具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例に限定されない。
<電荷輸送性ポリマーの調製>
[Pd触媒の調製]
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、サンプル管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(73.2mg、80μmol)を量り取り、アニソール(15mL)を加え、30分間撹拌した。同様に、サンプル管にトリス(t-ブチル)ホスフィン(129.6mg、640μmol)を量り取り、アニソール(5mL)を加え、5分間撹拌した。これらの溶液を混合し、室温で30分間撹拌し、触媒の溶液(以下、「Pd触媒溶液」と記す。)を得た。Pd触媒の調製において、全ての溶媒は30分間以上、窒素バブルにより脱気した後に使用した。
[電荷輸送性ポリマーの調製]
以下に従い、電荷輸送性ポリマー1~22を調製した。使用したモノマーを、表1に示す。
Figure 0007416058000030
Figure 0007416058000031
(電荷輸送性ポリマー1)
三口丸底フラスコに、モノマー(1b)(5.0mmol)、モノマー(2-1c)(2.0mmol)、モノマー(3a)(2.0mmol)、モノマー(4-1b)(2.0mmol)、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロリド(Alfa Aesar社「アリコート336」)(0.04g)、3Mの水酸化カリウム水溶液(7.79g)、及びアニソール(53mL)を加え、更に、前記Pd触媒溶液(1.0mL)を加えて混合した。得られた混合液を2時間、加熱還流した。ここまでの全ての操作は窒素気流下で行った。また、全ての溶媒は、30分間以上、窒素バブルにより脱気した後に使用した。
反応終了後、有機層を水洗し、有機層をメタノール-水(9:1)に注いだ。生じた沈殿を吸引ろ過により回収し、メタノール-水(9:1)で洗浄した。得られた沈殿をトルエンに溶解し、メタノールから再沈殿させた。得られた沈殿を吸引ろ過により回収し、トルエンに溶解し、金属吸着剤(Strem Chemicals社製「Triphenylphosphine, polymer-bound on styrene-divinylbenzene copolymer」、沈殿物100mgに対して200mg)を加えて、80℃で2時間撹拌した。撹拌終了後、金属吸着剤と不溶物とをろ過により取り除いた後に、メタノールからの再沈殿を行った。生じた沈殿を吸引ろ過により回収し、メタノールで洗浄した。得られた沈殿を真空乾燥し、電荷輸送性ポリマー1を得た。電荷輸送性ポリマー1の数平均分子量は15,092、重量平均分子量は56,449であった。
数平均分子量及び重量平均分子量は、溶離液にテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPC(ポリスチレン換算)により測定した。測定条件は以下のとおりである。
装置 :高速液体クロマトグラフ Prominence 株式会社島津製作所
送液ポンプ(LC-20AD)
脱気ユニット(DGU-20A)
オートサンプラ(SIL-20AHT)
カラムオーブン(CTO-20A)
PDA検出器(SPD-M20A)
示差屈折率検出器(RID-20A)
カラム :Gelpack(登録商標)
GL-A160S(製造番号:686-1J27)
GL-A150S(製造番号:685-1J27)日立化成株式会社
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)(HPLC用、安定剤含有)富士フイルム和光純薬工業株式会社
流速 :1mL/min
カラム温度 :40℃
検出波長 :254nm
分子量標準物質:PStQuick A/B/C 東ソー株式会社
(電荷輸送性ポリマー2~22)
使用したモノマーを表2に示すモノマーに変更した以外は、電荷輸送性ポリマー1と同様に、電荷輸送性ポリマー2~22を調製した。
表2に、電荷輸送性ポリマー1~22のモノマー比、モノマー(3)の含有量、数平均分子量、及び重量平均分子量を示す。
Figure 0007416058000032
表2中、各モノマー番号の下に記載の値は、合成に用いたモノマー比である。また、「(3)/(1官能モノマー)」の欄に、1官能モノマーの全量を基準とするモノマー(3)の含有量(モル%)を記した。
<評価>
[耐溶剤性評価]
以下に従い、電荷輸送性ポリマー1~22を用いて有機層A1~22を形成し、残膜率測定により耐溶剤性(すなわち、電荷輸送性ポリマーの硬化性)の評価を実施した。結果を表3に示す。
(残膜率測定)
20mLスクリュー管に、下記重合開始剤(10mg)を量り取り、クロロベンゼン(10mL)を加えて撹拌し、重合開始剤溶液を得た。次いで、9mLスクリュー管に、電荷輸送性ポリマー(10mg)及びクロロベンゼン(792μL)を加え、電荷輸送性ポリマーを溶解させた。その後、前記9mLスクリュー管に、重合開始剤溶液101μLを加え、撹拌し、インク組成物を調製した。インク組成物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタ(孔径0.2μm)にてろ過した後に、石英基板(縦22mm×横29mm×厚0.7mm)上に滴下し、スピンコーターにより塗布膜を成膜した。続いて、200℃、30分間、窒素雰囲気下で加熱硬化を実施し、石英基板上に膜厚30nmの有機層を形成した。
Figure 0007416058000033
分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2700」)を用いて、石英基板上に形成した有機層の吸光度Aを測定した。続いて、測定後の有機層が上面になるように、25℃の環境下で、アニソール(10mL、25℃)に10分間浸漬した。アニソール浸漬後の有機層の吸光度Bを測定し、形成した有機層の吸光度Aとアニソール浸漬後の有機層の吸光度Bから、以下の式を用いて、残膜率を算出した。なお、吸光度の値は、有機層の極大吸収波長における値を用いた。残膜率が大きいほど、耐溶剤性が優れている。
Figure 0007416058000034
[HOMOレベル評価]
(残膜率測定)と同様の方法で、電荷輸送性ポリマー1~22を用いて有機層B1~22を形成し、HOMOレベルを測定した。
HOMOレベルの測定には、大気中光電子分光装置(理研計器株式会社製「AC-5」)を使用した。結果を表3に示す。
[電荷輸送性及び耐熱性評価]
以下に従い、電荷輸送性ポリマー1~22を用いてHOD(ホールオンリーデバイス)A1~B22を作製し、導電性及び耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
20mLスクリュー管に、上記重合開始剤(10mg)を量り取り、クロロベンゼン(1mL)を加えて撹拌し、重合開始剤溶液を得た。次いで、9mLスクリュー管に、電荷輸送性ポリマー(30mg)及びクロロベンゼン(782μL)を加え、電荷輸送性ポリマーを溶解させた。その後、前記9mLスクリュー管に、重合開始剤溶液93μLを加え、撹拌し、インク組成物を調製した。インク組成物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタ(孔径0.2μm)にてろ過した後に、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板(縦22mm×横29mm×厚0.7mm)上に滴下し、スピンコーターにより塗布膜を成膜した。続いて、200℃、30分間、窒素雰囲気下で加熱硬化を実施し、石英基板上に膜厚100nmの有機層を形成した。ガラス基板を、真空蒸着機中に移し、有機層上にAl(100nm)を蒸着法で成膜し、封止処理を行ってHOD Aを作製した。
HOD Aの作製と同様に、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、インク組成物を回転数3,000min-1でスピンコートし、塗布膜を成膜した。続いて、窒素雰囲気下で200℃、30分間にわたって加熱硬化を実施し、更に、窒素雰囲気下で230℃、30分間にわたって追加加熱を行った。以後、HOD Aの作製と同様にして、HOD Bを作製した。
HOD A及びBのそれぞれに電圧を印加し、電流密度300mA/cm時の電圧A及びBを測定した。電圧A及びBの値が小さいほど、正孔注入機能が優れている。また、電圧A及びBの電圧差(電圧の上昇値)を求めた。電圧差が小さいほど、耐熱性が優れている。結果を表3に示す。
電圧A:HOD A(窒素雰囲気下で、200℃で30分加熱)について、電流密度300mA/cm時で測定した値である。
電圧B:HOD B(窒素雰囲気下で200℃で30分加熱し、更に窒素雰囲気下で、230℃で30分加熱)について、電流密度300mA/cm時で測定した値である。
電圧の差:電圧B(V)-電圧A(V)の値である。
[素子特性評価]
以下に従い、電荷輸送性ポリマー1~22を用いて有機EL素子1~22を作製し、駆動電圧、発光効率、及び発光寿命の評価を実施した。結果を表3に示す。
(有機EL素子の作製)
20mLスクリュー管に、上記重合開始剤(10mg)を量り取り、クロロベンゼン(10mL)を加えて撹拌し、重合開始剤溶液を得た。次いで、9mLスクリュー管に、電荷輸送性ポリマー(10mg)及びクロロベンゼン(583μL)を加え、電荷輸送性ポリマーを溶解させた。その後、前記9mLスクリュー管に、重合開始剤溶液309μLを加え、撹拌し、インク組成物を調製した。インク組成物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタ(孔径0.2μm)にてろ過した後に、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板(縦22mm×横29mm×厚0.7mm)上に滴下し、スピンコーターにより塗布膜を成膜した。次いで、ホットプレート上で200℃、30分間、窒素雰囲気下で加熱して、正孔注入層(30nm)を形成した。
9mLスクリュー管に、正孔輸送層用の材料としてポリーTPD(富士フイルム和光純薬株式会社製Poly[N,N'-bis(4-butylphenyl)-N,N'-bis(phenyl)-benzidine])(10mg)及びクロロベンゼン(1794μL)を加え、撹拌し、インク組成物を調製した。インク組成物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタ(孔径0.2μm)にてろ過した後に、正孔注入層上に滴下し、スピンコーターにより塗布膜を成膜した。次いで、ホットプレート上で220℃、30分間、窒素雰囲気下で加熱して、正孔輸送層(40nm)を形成した。
正孔注入層及び正孔輸送層を有するガラス基板を、真空蒸着機中に移し、CBP:Ir(ppy)(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、TPBi(30nm)、LiF(0.8nm)、及びAl(100nm)をこの順に蒸着法で成膜した。その後、封止処理を行って有機EL素子を作製した。
(有機EL素子の評価)
各有機EL素子に電圧を印加したところ、緑色発光が確認された。発光輝度5,000cd/m時の駆動電圧、発光効率、及び初期発光輝度5,000cd/mにおける発光寿命(輝度半減時間)を測定した。測定結果を表3に示す。
Figure 0007416058000035
Figure 0007416058000036
表3に示すとおり、本発明の実施形態である有機層は、適切なエネルギーレベルを有し、耐溶剤性に優れ、かつ、有機エレクトロニクス素子の寿命特性を向上させることができた。
1 発光層
2 陽極
3 正孔注入層
4 陰極
5 電子注入層
6 正孔輸送層
7 電子輸送層
8 基板

Claims (16)

  1. 下記式(1)で表される構造単位と、
    下記式(2-1)で表される構造単位及び下記式(2-2)で表される構造単位からな
    る群から選択される少なくとも1種の構造単位と、
    1価の構造単位の全量を基準として85~100モル%の下記式(3)で表される構造
    単位と
    を含む電荷輸送性ポリマーを含有し、
    前記式(2-1)で表される構造単位及び前記式(2-2)で表される構造単位からな
    る群から選択される少なくとも1種の構造単位が、下記式(2-1c)で表される構造単
    位、下記式(2-1d)で表される構造単位、及び下記式(2-2b)で表される構造単
    位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含む、
    有機エレクトロニクス材料。
    Figure 0007416058000037

    (式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表し、少なくと
    も1つのArは、フルオロ基及びフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくと
    も1つを含む置換基を有する芳香族炭化水素基である。)
    Figure 0007416058000038

    (式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。)
    Figure 0007416058000039

    (式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。)
    Figure 0007416058000040

    (式中、nは、0~20の整数を表す。)
    Figure 0007416058000041
  2. 下記式(1)で表される構造単位と、
    下記式(2-1)で表される構造単位及び下記式(2-2)で表される構造単位からな
    る群から選択される少なくとも1種の構造単位と、
    1価の構造単位の全量を基準として85~100モル%の下記式(3)で表される構造
    単位と
    を含む電荷輸送性ポリマーを含有し、
    前記電荷輸送性ポリマーが、下記式(4-1)で表される構造単位及び下記式(4-2
    )で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を更に含み、
    前記式(4-1)で表される構造単位及び前記式(4-2)で表される構造単位からな
    る群から選択される少なくとも1種の構造単位が、下記式(4-1b)で表される構造単
    位及び下記式(4-2b)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種
    の構造単位を含む、
    有機エレクトロニクス材料。
    Figure 0007416058000042

    (式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表し、少なくと
    も1つのArは、フルオロ基及びフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくと
    も1つを含む置換基を有する芳香族炭化水素基である。)
    Figure 0007416058000043

    (式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。)
    Figure 0007416058000044

    (式中、Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を表す。)
    Figure 0007416058000045

    (式中、nは、0~20の整数を表す。)
    Figure 0007416058000046

    (式中、Rは、それぞれ独立に、ハロゲン基、ハロゲン置換アルキル基、ニトロ基、シア
    ノ基、置換又は非置換のスルホ基、又は、置換又は非置換のスルフィノ基を表す。)
    Figure 0007416058000047

    (式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖状アルキル基を表し、少なくとも1つ
    のRは直鎖状アルキル基である。)
    Figure 0007416058000048
  3. 前記式(1)で表される構造単位が、下記式(1b)で表される構造単位、下記式(1
    c)で表される構造単位、下記式(1d)で表される構造単位、及び下記式(1e)で表
    される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を含む、請求項1又
    は2に記載の有機エレクトロニクス材料。
    Figure 0007416058000049
  4. 前記式(3)で表される構造単位が、下記式(3a)で表される構造単位を含む、請求
    項1~3のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料。
    Figure 0007416058000050
  5. 前記電荷輸送性ポリマーが、下記式(4-1)で表される構造単位及び下記式(4-2
    )で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を更に含む、
    請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料。
    Figure 0007416058000051

    (式中、Rは、それぞれ独立に、ハロゲン基、ハロゲン置換アルキル基、ニトロ基、シア
    ノ基、置換又は非置換のスルホ基、又は、置換又は非置換のスルフィノ基を表す。)
    Figure 0007416058000052

    (式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖状アルキル基を表し、少なくとも1つ
    のRは直鎖状アルキル基である。)
  6. 前記式(4-1)で表される構造単位及び前記式(4-2)で表される構造単位からな
    る群から選択される少なくとも1種の構造単位が、下記式(4-1b)で表される構造単
    位及び下記式(4-2b)で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種
    の構造単位を含む、請求項5に記載の有機エレクトロニクス材料。
    Figure 0007416058000053
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料に用いられる電荷輸送性ポ
    リマーを製造する方法であって、
    前記式(1)で表される構造単位を有する2官能モノマーと、前記式(2-1)で表さ
    れる構造単位を有する3官能モノマー及び前記式(2-2)で表される構造単位を有する
    4官能モノマーからなる群から選択される少なくとも1種の3又は4官能モノマーと、1
    官能モノマーの全量を基準として85~100モル%の前記式(3)で表される構造単位
    を有する1官能モノマーとを含有するモノマー混合物を、芳香族エーテルを含有する溶媒
    中で反応させることを含む、電荷輸送性ポリマーの製造方法。
  8. 請求項1~6のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料と、溶媒とを含有する、液
    状組成物。
  9. 前記溶媒が、芳香族エーテルを含む、請求項8に記載の液状組成物。
  10. 請求項1~6のいずれかに記載の有機エレクトロニクス材料、又は、請求項8及び9の
    いずれかに記載の液状組成物を用いて形成された、有機層。
  11. 請求項10に記載の有機層を含む、有機エレクトロニクス素子。
  12. 請求項10に記載の有機層を含む、有機エレクトロルミネセンス素子。
  13. 請求項10に記載の有機層を、正孔注入層又は正孔輸送層として含む、有機エレクトロ
    ルミネセンス素子。
  14. 請求項12又は13に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を含む、表示素子。
  15. 請求項12又は13に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を含む、照明装置。
  16. 請求項15に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子とを含む、表示装置。
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