JP6657701B2 - 有機エレクトロニクス材料及びその利用 - Google Patents

有機エレクトロニクス材料及びその利用 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、有機エレクトロニクス材料、インク組成物、有機層、有機エレクトロニクス素子、有機エレクトロルミネセンス素子(「有機EL素子」ともいう。)、表示素子、照明装置、及び表示装置に関する。
有機EL素子は、例えば、白熱ランプ、ガス充填ランプ等の代替えとして、大面積ソリッドステート光源用途として注目されている。また、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野における液晶ディスプレイ(LCD)に置き換わる最有力の自発光ディスプレイとしても注目されており、製品化が進んでいる。
有機EL素子は、使用する有機材料から、低分子化合物を用いる低分子型有機EL素子と、高分子化合物を用いる高分子型有機EL素子の2つに大別される。高分子型有機EL素子は、有機材料が高分子材料により構成されており、真空系での成膜が必要な低分子型有機EL素子と比較して、印刷又はインクジェットなどの簡易成膜が可能なため、今後の大画面有機ELディスプレイには不可欠な素子である。
低分子型有機EL素子は蒸着法で製膜を行うため、用いる化合物を順次変更しながら蒸着を行うことで容易に多層化が達成できる。一方、高分子型有機EL素子は、印刷又はインクジェットといった湿式プロセスを用いて製膜を行うため、上層を塗布する際に下層が溶解してしまうという問題が生じる。そのため、高分子型有機EL素子の多層化は、低分子型有機EL素子に比べて困難であり、発光効率の向上及び寿命の改善を図ることが課題となっていた。
上記問題に対処するために、これまでにいくつかの方法が提案されている。一つは、溶解度の差を用いる方法である。例えば、水溶性であるPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸)からなる正孔注入層に、トルエン等の芳香族系有機溶媒を用いて成膜された発光層を積層した素子が検討されている。また、非特許文献1には、溶解度の大きく異なる化合物を利用した3層構造の素子が開示されている。
一方、非特許文献2〜4及び特許文献1には、このような課題を克服するために、シロキサン化合物、又はオキセタン基、ビニル基などの重合反応を利用して化合物の溶解度を変化させ、薄膜を溶剤に対して不溶化する方法が開示されている。
国際公開第2008/010487号公報
Y. Goto, T. Hayashida, M. Noto, IDW ‘04 Proceedings of The 11th International Display Workshop, 1343-1346(2004) H. Yan, P. Lee, N. R. Armstrong, A. Graham, G. A. Evemenko, P. Dutta, T. J. Marks, J. Am. Chem. Soc., 127, 3172-3183(2005) E. Bacher, M.Bayerl, P. Rudati, N. Reckfuss, C. David, K. Meerholz, O. Nuyken, Macromolecules, 38, 1640-1647(2005) M. S. Liu, Y. H. Niu, J. W. Ka, H. L. Yip, F. Huang, J. Luo, T. D. Wong, A. K. Y. Jen, Macromolecules, 41, 9570-9580(2008)
しかし、水溶性のPEDOT:PSSを使用すると、薄膜中に残存する水分を除去する必要があるという問題があった。一方、シロキサン化合物は空気中の水分に不安定であることに加え、素子特性が十分ではないという課題があった。
この求められる素子特性の一つとして、さらなる低消費電力化と長寿命化を図るため、駆動電圧の低減がある。上記材料を用いた従来技術においては、PEDOT:PSS等のように、p型ドーパントの添加により駆動電圧の低減が図られている。しかし、PEDOT分子とPSS分子の比率を任意に制御することは困難であった。
本発明の実施形態は、上記に鑑み、駆動電圧の低減を図ることができる有機エレクトロニクス用材料、及び有機エレクトロニクス素子の多層化に適したインク組成物を提供することを課題とする。本発明の他の実施形態は、有機エレクトロニクス素子の駆動電圧の低減が可能な有機層を提供すること、さらには、低電圧で駆動し得る有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、表示素子、照明装置、及び表示装置を提供することを課題とする。
本発明の実施形態は、炭素数8〜16の置換基を有するアリールアミン構造単位と、重合可能な置換基とを有する電荷輸送性ポリマー又はオリゴマーを含む、有機エレクトロニクス材料に関する。
本発明の他の実施形態は、前記有機エレクトロニクス材料、溶媒、及び重合開始剤を含む、インク組成物に関する。
本発明の他の実施形態は、前記有機エレクトロニクス材料、又は前記インク組成物を用いて形成された、有機層に関する。
本発明の他の実施形態は、前記有機層を少なくとも一つ備える、有機エレクトロニクス素子に関する。
本発明の他の実施形態は、前記有機層を少なくとも一つ備える、有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
本発明の他の実施形態は、前記有機エレクトロルミネセンス素子を備えた、表示素子に関する。
本発明の他の実施形態は、前記有機エレクトロルミネセンス素子を備えた、照明装置に関する。
さらに、本発明の他の実施形態は、前記照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えた、表示装置に関する。
本発明の実施形態である有機エレクトロニクス材料は、有機エレクトロニクス素子の駆動電圧を低減化することができる。本発明の実施形態であるインク組成物は、湿式プロセスを用いた多層化に適している。また、本発明の実施形態である有機層は、有機エレクトロニクス素子の駆動電圧を低下させることができる。さらに、本発明の実施形態である有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、表示素子、照明装置、及び表示装置は、低電圧駆動が可能である。
本発明の実施形態である有機EL素子の一例を示す断面模式図である。 本発明の実施例及び比較例において作成したホールオンリー素子における、印加電圧−電流密度の関係を示したグラフ図である。
本発明の実施形態について説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはない。
<有機エレクトロニクス材料>
本実施形態の有機エレクトロニクス材料は、炭素数8〜16の置換基を有するアリールアミン構造単位と、重合可能な置換基とを有する電荷輸送性ポリマー又はオリゴマーを含むことを特徴とする。この有機エレクトロニクス材料は、電荷輸送性ポリマー又はオリゴマーを、一種のみ含有しても、又は、二種以上含有してもよい。電荷輸送性ポリマー又はオリゴマーは、低分子化合物と比較し、湿式プロセスにおける成膜性に優れるという点で好ましい。
[電荷輸送性ポリマー又はオリゴマー]
電荷輸送性ポリマー又はオリゴマー(以下の記載において、電荷輸送性ポリマー又はオリゴマーを、まとめて「電荷輸送性ポリマー」とも記す。)は、電荷を輸送する能力を有するポリマー又はオリゴマーである。電荷輸送性ポリマーは、直鎖状であっても、又は、分岐構造を有していてもよい。電荷輸送性ポリマーは、好ましくは、電荷輸送性を有する2価の構造単位Lと末端部を構成する1価の構造単位Tとを少なくとも含み、分岐部を構成する3価以上の構造単位Bを更に含んでもよい。電荷輸送性ポリマーは、各構造単位を、それぞれ1種のみ含んでいても、又は、それぞれ複数種含んでいてもよい。電荷輸送性ポリマーにおいて、各構造単位は、「1価」〜「3価以上」の結合部位において互いに結合している。
一実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、上記構造単位Bを含むことにより、3個以上の末端を有する分岐状ポリマー(分岐構造を有するポリマー又はオリゴマー)であることが好ましい。
本実施形態の電荷輸送性ポリマーは、炭素数8〜16の置換基を有するアリールアミン構造単位、及び、1つ以上の重合可能な置換基を有することを特徴的な構造として備えている。
この「アリールアミン構造単位」は、上記の「電荷輸送性を有する2価の構造単位L」及び/又は「分岐部を構成する3価以上の構造単位B」の少なくとも一部として含まれることが好ましく、構造単位Lの少なくとも一部であることが一層好ましい。電荷輸送性ポリマーが、炭素数8〜16の置換基を有するアリールアミン構造単位を含むことにより、有機エレクトロニクス素子の低電圧駆動が可能となり、それにより有機材料の分解が抑制されて、素子の長寿命化に寄与することができる。
また、1つ以上の重合可能な置換基(以下、「重合性官能基」とも記す。)は、上記構造単位L、T、Bのいずれか1以上に含まれていればよく、構造単位Tに含まれることがより好ましい。
(構造)
電荷輸送性ポリマーに含まれる部分構造の例として、以下が挙げられる。電荷輸送性ポリマーは、以下の部分構造を有するものに限定されない。部分構造中、「L」は構造単位Lを、「T」は構造単位Tを、「B」は構造単位Bを表す。本明細書において式中の「*」は、他の構造単位との結合部位を表す。以下の部分構造中、複数のLは、互いに同一の構造単位であっても、互いに異なる構造単位であってもよい。T及びBについても、同様である。
直鎖状の電荷輸送性ポリマー
Figure 0006657701
分岐構造を有する電荷輸送性ポリマー
Figure 0006657701
(構造単位L)
構造単位Lは、電荷輸送性を有する2価の構造単位である。構造単位Lは、電荷を輸送する能力を有する原子団を含んでいればよく、特に限定されない。例えば、構造単位Lは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ビフェニレン構造、ターフェニレン構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、テトラセン構造、フェナントレン構造、ジヒドロフェナントレン構造、ピリジン構造、ピラジン構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キノキサリン構造、アクリジン構造、ジアザフェナントレン構造、フラン構造、ピロール構造、オキサゾール構造、オキサジアゾール構造、チアゾール構造、チアジアゾール構造、トリアゾール構造、ベンゾチオフェン構造、ベンゾオキサゾール構造、ベンゾオキサジアゾール構造、ベンゾチアゾール構造、ベンゾチアジアゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。芳香族アミン構造は、好ましくはトリアリールアミン構造であり、より好ましくはトリフェニルアミン構造である。
一実施形態において、構造単位Lは、優れた正孔輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ピロール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることが好ましく、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることがより好ましい。他の実施形態において、構造単位Lは、優れた電子輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、フルオレン構造、ベンゼン構造、フェナントレン構造、ピリジン構造、キノリン構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることが好ましい。
構造単位Lの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Lは、以下に限定されない。
Figure 0006657701
Figure 0006657701
Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。好ましくは、Rは、それぞれ独立に、−R、−OR、−SR、−OCOR、−COOR、−SiR、ハロゲン原子、及び、後述する重合性官能基を含む基からなる群から選択される。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基;又は、炭素数2〜30個のアリール基又はヘテロアリール基を表す。アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基は、芳香族複素環から水素原子1個を除いた原子団である。アルキル基は、更に、炭素数2〜20個のアリール基又はヘテロアリール基により置換されていてもよく、アリール基又はヘテロアリール基は、更に、炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基により置換されていてもよい。Rは、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基である。Arは、炭素数2〜30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた原子団である。ヘテロアリーレン基は、芳香族複素環から水素原子2個を除いた原子団である。Arは、好ましくはアリーレン基であり、より好ましくはフェニレン基である。
(アリールアミン構造単位)
本実施形態においては、構造単位Lが、炭素数8〜16の置換基を有するアリールアミン構造単位(以下、これを「構造単位L1」とも記す。)を含むことが好ましい。アリールアミン構造単位とは、アミンの窒素原子にアリール基が置換した芳香族アミン構造の単位を意味している。芳香族アミン構造としては、ジアリールアミン構造又はトリアリールアミン構造が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましく、なかでも、トリフェニルアミン構造であることが最も好ましい。
トリフェニルアミン構造単位としては、例えば、次のいずれか1以上を含むことが好ましい。各構造式中、Rは、炭素数8〜16の置換基を示す。アリール基への置換基の位置は、いずれであっても良いが、駆動電圧の低下効果の観点から、窒素原子への結合位置を基準としてパラ位、メタ位、オルト位であること(順に下記式(a1)、(a2)、(a3))が、この順に好ましい。式(a1)と(a2)の組み合わせ等、置換基の置換位置が異なる2以上のアリールアミンを組み合わせることも可能である。
Figure 0006657701
上記置換基の炭素数は、駆動電圧の低下を図る観点から8以上であることが好ましい。また、置換基Rの炭素数が16を超えると、駆動電圧が増加する傾向が見られることから、炭素数は16以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましく、12以下であることが一層好ましい。
なお、アリールアミン構造単位中の炭素数8〜16の置換基の数は、1個であることが好ましいが、アリール基がその他の置換基R(−R、−OR、−SR、−OCOR、−COOR、−SiR、ハロゲン原子等;R〜Rは前記置換基RのR〜Rと同じ)を含んでいてもよい。
より詳細には、炭素数8〜16の置換基としては、例えば、以下の式(1)〜(3)で表される置換基が挙げられる。式(1)〜(3)中、nは7〜15の整数を示す。駆動電圧の低下効果の観点からは、式(1)の置換基であることが最も好ましい。構造単位L1として、互いに異なる置換基を含むアリールアミン構造単位を、複数組み合わせて用いてもよい。
Figure 0006657701
(構造単位T)
構造単位Tは、電荷輸送性ポリマーの末端部を構成する1価の構造単位である。構造単位Tは、特に限定されず、例えば、置換又は非置換の、芳香族炭化水素構造、芳香族複素環構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。構造単位Tが構造単位Lと同じ構造を有していてもよい。一実施形態において、構造単位Tは、電荷の輸送性を低下させずに耐久性を付与するという観点から、置換又は非置換の芳香族炭化水素構造であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン構造であることがより好ましい。また、他の実施形態において、後述するように、電荷輸送性ポリマーが末端部に重合性官能基を有する場合、構造単位Tは重合可能な構造(例えば、ピロール−イル基等の重合性官能基)であってもよい。
構造単位Tの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Tは、以下に限定されない。
Figure 0006657701
上記式の構造単位T中、Rは、構造単位LにおけるRと同様である。
構造単位Tは、重合性官能基を有することが好ましい。すなわち、上記式のRのいずれか少なくとも1つが、重合性官能基を含む基であることが好ましい。
(構造単位B)
構造単位Bは、電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合に、分岐部を構成する3価以上の構造単位である。構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、好ましくは6価以下であり、より好ましくは3価又は4価である。構造単位Bは、電荷輸送性を有する単位であることが好ましい。例えば、構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、縮合多環式芳香族炭化水素構造、及び、これらの1種又は2種以上を含有する構造から選択される。構造単位Bは、構造単位Lと同じ構造を有していても、又は、異なる構造を有していてもよく、また、構造単位Tと同じ構造を有していても、又は、異なる構造を有していてもよい。
構造単位Bの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Bは、以下に限定されない。
Figure 0006657701
Wは、3価の連結基を表し、例えば、炭素数2〜30個のアレーントリイル基又はヘテロアレーントリイル基を表す。上述のとおり、アレーントリイル基は、芳香族炭化水素から水素原子3個を除いた原子団である。ヘテロアレーントリイル基は、芳香族複素環から水素原子3個を除いた原子団である。Arは、それぞれ独立に2価の連結基を表し、例えば、それぞれ独立に、炭素数2〜30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Arは、好ましくはアリーレン基、より好ましくはフェニレン基である。Yは、2価の連結基を表し、例えば、構造単位LにおけるR(ただし、重合性官能基を含む基を除く。)のうち水素原子を1個以上有する基から、更に1個の水素原子を除いた2価の基が挙げられる。Zは、炭素原子、ケイ素原子、又はリン原子のいずれかを表す。構造単位中、ベンゼン環及びArは、置換基を有していてもよく、置換基の例として、構造単位LにおけるRが挙げられる。
構造単位Bとして、「炭素数8〜16の置換基を有するアリールアミン構造単位」を含んでいてもよい。このアリールアミン構造単位については、2価の構造単位L1として上記したが、構造単位Bとしてこの構造単位を含む場合は、前記式(a1)〜(a3)における、置換基Rを含むアリール基も、他の構造単位との結合部位を有することで、3価の構造単位となっていれば良い。
(重合性官能基)
本実施形態の電荷輸送性ポリマーは、重合反応により硬化させ、溶剤への溶解度を変化させる観点から、重合可能な置換基(重合性官能基)を少なくとも1つ有することが好ましい。「重合性官能基」とは、熱及び/又は光を加えることにより、互いに結合を形成し得る官能基をいう。
重合性官能基としては、炭素−炭素多重結合を有する基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エチニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミノ基、ビニルオキシ基、ビニルアミノ基等)、小員環を有する基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基等の環状アルキル基;エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタン基(オキセタニル基)等の環状エーテル基;ジケテン基;エピスルフィド基;ラクトン基;ラクタム基等)、複素環基(例えば、フラン−イル基、ピロール−イル基、チオフェン−イル基、シロール−イル基)などが挙げられる。重合性官能基としては、特に、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、及びオキセタン基が好ましく、反応性及び有機エレクトロニクス素子の特性の観点から、ビニル基、オキセタン基、又はエポキシ基がより好ましく、オキセタン基が最も好ましい。
重合性官能基の自由度を上げ、重合反応を生じさせやすくする観点からは、電荷輸送性ポリマーの主骨格と重合性官能基とが、例えば炭素数1〜8の直鎖状のアルキレン鎖で連結されていることが好ましい。また、例えば、電極上に有機層を形成する場合、ITO等の親水性電極との親和性を向上させる観点からは、エチレングリコール鎖、ジエチレングリコール鎖等の親水性の鎖で連結されていることが好ましい。さらに、重合性官能基を導入するために用いられるモノマーの調製が容易になる観点からは、電荷輸送性ポリマーは、アルキレン鎖及び/又は親水性の鎖の末端部、すなわち、これらの鎖と重合性官能基との連結部、及び/又は、これらの鎖と電荷輸送性ポリマーの骨格との連結部に、エーテル結合又はエステル結合を有していてもよい。前述の「重合性官能基を含む基」とは、重合性官能基それ自体、又は、重合性官能基とアルキレン鎖等とを合わせた基を意味する。重合性官能基を含む基として、例えば、国際公開第WO2010/140553号に例示された基を好適に用いることができる。
重合性官能基は、電荷輸送性ポリマーの末端部(すなわち、構造単位T)に導入されていても、末端部以外の部分(すなわち、構造単位L又はB)に導入されていても、末端部と末端以外の部分の両方に導入されていてもよい。硬化性の観点からは、少なくとも末端部に導入されていることが好ましく、硬化性及び電荷輸送性の両立を図る観点からは、末端部のみに導入されていることが好ましい。また、電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合、重合性官能基は、電荷輸送性ポリマーの主鎖に導入されていても、側鎖に導入されていてもよく、主鎖と側鎖の両方に導入されていてもよい。
重合性官能基は、溶解度の変化に寄与する観点からは、電荷輸送性ポリマー中に多く含まれる方が好ましい。一方、電荷輸送性を妨げない観点からは、電荷輸送性ポリマー中に含まれる量が少ない方が好ましい。重合性官能基の含有量は、これらを考慮し、適宜設定できる。
例えば、電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基数は、十分な溶解度の変化を得る観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、重合性官能基数は、電荷輸送性を保つ観点から、1,000個以下が好ましく、500個以下がより好ましい。
電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基数は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、重合性官能基の仕込み量(例えば、重合性官能基を有するモノマーの仕込み量)、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量等を用い、平均値として求めることができる。また、重合性官能基の数は、電荷輸送性ポリマーのH NMR(核磁気共鳴)スペクトルにおける重合性官能基に由来するシグナルの積分値と全スペクトルの積分値との比、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量等を利用し、平均値として算出できる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
(数平均分子量)
電荷輸送性ポリマーの数平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。数平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上が更に好ましい。また、数平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下が更に好ましい。
(重量平均分子量)
電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。重量平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が更に好ましい。また、重量平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、700,000以下がより好ましく、400,000以下が更に好ましく、300,000以下が最も好ましい。
数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
(構造単位の割合)
電荷輸送性ポリマーに含まれる構造単位Lの割合は、十分な電荷輸送性を得る観点から、全構造単位を基準として、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Lの割合は、構造単位T及び必要に応じて導入される構造単位Bを考慮すると、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が更に好ましい。
構造単位Lが、上記特定のアリールアミン構造単位L1を含む場合、全構造単位L中における構造単位L1の割合は、有機エレクトロニクス素子の駆動電圧低下の観点から、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上である。上限は特に限定されず、100%以下である。構造単位L中における構造単位L1の割合は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量比(モル比)により求めることができる。
また、ポリマー中における、炭素数8〜16の置換基を含むアリールアミン構造単位の割合は、ポリマーを構成する全モノマー中に5〜90モル%の範囲であることが好ましく、15〜75モル%であることがより好ましく、30〜60モル%であることが一層好ましい。
電荷輸送性ポリマーに含まれる構造単位Tの割合は、有機エレクトロニクス素子の特性向上の観点、又は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点から、全構造単位を基準として、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Tの割合は、十分な電荷輸送性を得る観点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。
電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位Bの割合は、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、全構造単位を基準として、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。また、構造単位Bの割合は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点、又は、十分な電荷輸送性を得る観点から、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましい。
電荷輸送性ポリマーに含まれる重合性官能基の割合は、電荷輸送性ポリマーを効率よく硬化させるという観点から、全構造単位を基準として、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、3モル%以上が更に好ましい。また、重合性官能基の割合は、良好な電荷輸送性を得るという観点から、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。なお、ここでの「重合性官能基の割合」とは、重合性官能基を有する構造単位の割合をいう。
電荷輸送性、耐久性、生産性等のバランスを考慮すると、構造単位L及び構造単位Tの割合(モル比)は、L:T=100:1〜70が好ましく、100:3〜50がより好ましく、100:5〜30が更に好ましい。また、電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位L、構造単位T、及び構造単位Bの割合(モル比)は、L:T:B=100:10〜200:10〜100が好ましく、100:20〜180:20〜90がより好ましく、100:40〜160:30〜80が更に好ましい。
構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量を用いて求めることができる。また、構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーのH NMRスペクトルにおける各構造単位に由来するスペクトルの積分値を利用し、平均値として算出することができる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、好ましくは、仕込み量を用いて求めた値を採用する。
特に好ましい一実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、高い正孔注入性、正孔輸送性等を有する観点から、芳香族アミン構造を有する構造単位及び/又はカルバゾール構造を有する構造単位を主要な構造単位(主骨格)とする化合物であることが好ましい。また、電荷輸送性ポリマーは、多層化を容易に行う観点から、少なくとも2個以上の重合可能な置換基を有する化合物であることが好ましい。重合可能な置換基は、優れた硬化性を有する観点から、環状エーテル構造を有する基、炭素−炭素多重結合を有する基等であることが好ましい。
(製造方法)
本実施形態の電荷輸送性ポリマーは、炭素数8〜16の置換基を有するアリールアミン構造単位を含むモノマーと、重合性置換基を含むモノマーとを少なくとも含むモノマーの共重合体であることが好ましい。例えば、構造単位Lを含む一種以上のモノマーと、上記構造単位Tを含む一種以上のモノマーとを含み、任意にその他の一種以上のモノマー(上記構造単位Bを含むモノマー)を含んでもよいモノマー混合物を用いて、これらのモノマーを共重合させることにより、好ましく製造することができる。ここで、上記構造単位Lを含むモノマーのうちの少なくとも一部又は全部は、上記構造単位L1を含む一種以上のモノマーであることが好ましく、構造単位Tを含むモノマーのうちの少なくとも一部又は全部は、上記重合性置換基を含む一種以上のモノマーであることが好ましい。
共重合の形式は、交互、ランダム、ブロック又はグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する共重合体、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。
電荷輸送性ポリマーは、種々の合成方法により製造でき、特に限定されない。例えば、鈴木カップリング、根岸カップリング、園頭カップリング、スティルカップリング、ブッフバルト・ハートウィッグカップリング等の公知のカップリング反応を用いることができる。鈴木カップリングは、芳香族ボロン酸誘導体と芳香族ハロゲン化物の間で、Pd触媒を用いたクロスカップリング反応を起こさせるものである。鈴木カップリングによれば、所望とする芳香環同士を結合させることにより、電荷輸送性ポリマーを簡便に製造できる。
カップリング反応では、触媒として、例えば、Pd(0)化合物、Pd(II)化合物、Ni化合物等が用いられる。また、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等を前駆体とし、ホスフィン配位子と混合することにより発生させた触媒種を用いることもできる。電荷輸送性ポリマーの合成方法については、例えば、国際公開第WO2010/140553号の記載を参照できる。
[ドーパント]
有機エレクトロニクス材料は、任意の添加剤を含むことができ、例えばドーパントを更に含有してよい、ドーパントは、有機エレクトロニクス材料に添加することでドーピング効果を発現させ、電荷の輸送性を向上させ得るものであればよく、特に制限はない。ドーピングには、p型ドーピングとn型ドーピングがあり、p型ドーピングではドーパントとして電子受容体として働く物質が用いられ、n型ドーピングではドーパントとして電子供与体として働く物質が用いられる。正孔輸送性の向上にはp型ドーピング、電子輸送性の向上にはn型ドーピングを行うことが好ましい。有機エレクトロニクス材料に用いられるドーパントは、p型ドーピング又はn型ドーピングのいずれの効果を発現させるドーパントであってもよい。また、1種のドーパントを単独で添加しても、複数種のドーパントを混合して添加してもよい。
p型ドーピングに用いられるドーパントは、電子受容性の化合物であり、例えば、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属化合物、イオン化合物、ハロゲン化合物、π共役系化合物等が挙げられる。具体的には、ルイス酸としては、FeCl、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr等;プロトン酸としては、HF、HCl、HBr、HNO、HSO、HClO等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、1−ブタンスルホン酸、ビニルフェニルスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機酸;遷移金属化合物としては、FeOCl、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、AlCl、NbCl、TaCl、MoF;イオン化合物としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、AsF (ヘキサフルオロ砒酸イオン)、BF (テトラフルオロホウ酸イオン)、PF (ヘキサフルオロリン酸イオン)等のパーフルオロアニオンを有する塩、アニオンとして前記プロトン酸の共役塩基を有する塩など;ハロゲン化合物としては、Cl、Br、I、ICl、ICl、IBr、IF等;π共役系化合物としては、TCNE(テトラシアノエチレン)、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)等が挙げられる。また、特開2000−36390号公報、特開2005−75948号公報、特開2003−213002号公報等に記載の電子受容性化合物を用いることも可能である。好ましくは、ルイス酸、イオン化合物、π共役系化合物等である。
n型ドーピングに用いられるドーパントは、電子供与性の化合物であり、例えば、Li、Cs等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属;LiF、CsCO等のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩;金属錯体;電子供与性有機化合物などが挙げられる。
本実施形態の電荷輸送性ポリマーは重合性官能基を有するので、有機層の溶解度の変化を容易にするために、ドーパントとして重合性官能基に対する重合開始剤として作用し得る化合物を用いることが好ましい。
[他の任意成分]
有機エレクトロニクス材料は、電荷輸送性低分子化合物、他のポリマー等を更に含有してもよい。
[含有量]
有機エレクトロニクス材料中の電荷輸送性ポリマーの含有量は、良好な電荷輸送性を得る観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。電荷輸送性ポリマーの含有量の上限は特に限定されず、100質量%とすることも可能である。ドーパント等の添加剤を含むことを考慮し、電荷輸送性ポリマーの含有量を、例えば95質量%以下、90質量%以下、等としてもよい。
ドーパントを含有する場合、その含有量は、有機エレクトロニクス材料の電荷輸送性を向上させる観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、成膜性を良好に保つ観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
<インク組成物>
本発明の実施形態であるインク組成物は、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料と、該材料を溶解又は分散し得る溶媒と、重合開始剤とを含有する。インク組成物を用いることによって、塗布法といった簡便な方法によって有機層を容易に形成できる。
本発明の別の実施形態であるインク組成物は、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料と、該材料を溶解又は分散し得る溶媒とを含有する。例えば、重合開始剤を含まない該実施形態のインク組成物を用いる際に、その下層の有機層が重合開始剤を含む場合には、上層のインク組成物を硬化させることができるため好ましい。
[溶媒]
溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を使用できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;シクロヘキサン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等である。
[重合開始剤]
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等を使用できる。インク組成物を簡便に調製できる観点から、ドーパントとしての機能と重合開始剤としての機能とを兼ねる物質を用いることが好ましい。そのような物質として、例えば、前記イオン化合物が挙げられる。
[添加剤]
インク組成物は、更に、任意成分として添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
[含有量]
インク組成物における溶媒の含有量は、種々の塗布方法へ適用することを考慮して定めることができる。例えば、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、0.1質量%以上となる量が好ましく、0.2質量%以上となる量がより好ましく、0.5質量%以上となる量が更に好ましい。また、溶媒の含有量は、溶媒に対し電荷輸送性ポリマーの割合が、20質量%以下となる量が好ましく、15質量%以下となる量がより好ましく、10質量%以下となる量が更に好ましい。
インク組成物が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量は、特に限定されず、電荷輸送性ポリマー中に含まれる重合性官能基の種類と量に応じて、適宜定めることができる。例えば、重合開始剤の含有量は、電荷輸送性ポリマーに対し0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
<有機層>
本発明の実施形態である有機層は、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料、又はインク組成物を用いて形成された層である。インク組成物を用いることによって、塗布法により有機層を良好かつ簡便に形成できる。塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法;キャスト法;浸漬法;凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の有版印刷法;インクジェット法等の無版印刷法などの公知の方法が挙げられる。塗布法によって有機層を形成する場合、塗布後に得られた有機層(塗布層)を、ホットプレート又はオーブンを用いて乾燥させ、溶媒を除去してもよい。
本実施形態の電荷輸送性ポリマーは、重合性官能基を有するため、光照射、加熱処理等により電荷輸送性ポリマーの重合反応を進行させ、有機層の溶解度を変化させることができる。溶解度を変化させた有機層を積層することで、有機エレクトロニクス素子の多層化を容易に図ることが可能となる。有機層の形成方法については、例えば、国際公開第WO2010/140553号の記載を参照できる。
乾燥後又は硬化後の有機層の厚さは、電荷輸送の効率を向上させる観点から、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは1nm以上であり、更に好ましくは3nm以上である。また、有機層の厚さは、電気抵抗を小さくする観点から、好ましくは300nm以下であり、より好ましくは200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。
<有機エレクトロニクス素子>
本発明の実施形態である有機エレクトロニクス素子は、少なくとも一つ以上の前記実施形態の有機層を有する。有機エレクトロニクス素子として、例えば、有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ等が挙げられる。有機エレクトロニクス素子は、好ましくは、少なくとも一対の電極の間に有機層が配置された構造を有する。
<有機EL素子>
本発明の実施形態である有機EL素子は、少なくとも一つ以上の前記実施形態の有機層を有する。有機EL素子は、通常、発光層、陽極、陰極、及び基板を備えており、必要に応じて、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等の他の機能層を備えている。各層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。有機EL素子は、好ましくは、前記有機層を発光層又は他の機能層として有し、より好ましくは機能層として有し、更に好ましくは正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として有する。したがって、有機EL素子の好ましい一実施形態は、陽極、正孔注入層及び/又は正孔輸送層としての前記有機層、発光層、及び陰極をこの順に有し、さらにこれらの層の間に任意の層を有していてもよい。
特に好ましくは、前記有機層は、正孔注入層又は透明電極である。
正孔注入層に上記実施形態の有機エレクトロニクス材料を用いると、正孔移動度が高まり、デバイスの駆動電圧を低減することが可能となる。特に、この有機エレクトロニクス材料を重合開始剤と組み合わせて用いることにより、正孔注入層が硬化可能となる。その結果、さらにその上層に、インク等からなる正孔輸送層を塗布した際に、正孔注入層が溶解することを防止できる。
透明電極に上記実施形態の有機エレクトロニクス材料を用いると、正孔注入層への注入障壁が低減することで、デバイスの駆動電圧を低減することが可能となる。また、平坦な表面が得られることで短絡が防止でき、デバイスの歩留まりが向上する。さらに、フレキシブル基板を用いた場合には、可とう性に優れるため、折り曲げ可能なデバイスが作製可能となる。
図1は、有機EL素子の一実施形態を示す断面模式図である。図1の有機EL素子は、多層構造の素子であり、基板8、陽極2、正孔注入層3及び正孔輸送層6、発光層1、電子輸送層7、電子注入層5、並びに陰極4をこの順に有している。以下、各層について説明する。
[発光層]
発光層に用いる材料として、低分子化合物、ポリマー、デンドリマー等の発光材料を使用できる。ポリマーは、溶媒への溶解性が高く、塗布法に適しているため好ましい。発光材料としては、蛍光材料、燐光材料、熱活性化遅延蛍光材料(TADF)等が挙げられる。
蛍光材料として、ペリレン、クマリン、ルブレン、キナクドリン、スチルベン、色素レーザー用色素、アルミニウム錯体、これらの誘導体等の低分子化合物;ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、フルオレンーベンゾチアジアゾール共重合体、フルオレン−トリフェニルアミン共重合体、これらの誘導体等のポリマー;これらの混合物等が挙げられる。
燐光材料として、Ir、Pt等の金属を含む金属錯体などを使用できる。Ir錯体としては、例えば、青色発光を行うFIr(pic)(イリジウム(III)ビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジネート−N,C]ピコリネート)、緑色発光を行うIr(ppy)(ファク トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム)、赤色発光を行う(btp)Ir(acac)(ビス〔2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナート−N,C〕イリジウム(アセチル−アセトネート))、Ir(piq)(トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム)等が挙げられる。Pt錯体としては、例えば、赤色発光を行うPtOEP(2、3、7、8、12、13、17、18−オクタエチル−21H、23H−フォルフィンプラチナ)等が挙げられる。
発光層が燐光材料を含む場合、燐光材料の他に、更にホスト材料を含むことが好ましい。ホスト材料としては、低分子化合物、ポリマー、又はデンドリマーを使用できる。低分子化合物としては、例えば、CBP(4,4’−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル)、mCP(1,3−ビス(9−カルバゾリル)ベンゼン)、CDBP(4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2’−ジメチルビフェニル)、これらの誘導体等が、ポリマーとしては、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン、ポリフルオレン、これらの誘導体等が挙げられる。
熱活性化遅延蛍光材料としては、例えば、Adv. Mater., 21, 4802-4906 (2009);Appl. Phys. Lett., 98, 083302 (2011);Chem. Comm., 48, 9580 (2012);Appl. Phys. Lett., 101, 093306 (2012);J. Am. Chem. Soc., 134, 14706 (2012);Chem. Comm., 48, 11392 (2012);Nature, 492, 234 (2012);Adv. Mater., 25, 3319 (2013);J. Phys. Chem. A, 117, 5607 (2013);Phys. Chem. Chem. Phys., 15, 15850 (2013);Chem. Comm., 49, 10385 (2013);Chem. Lett., 43, 319 (2014)等に記載の化合物が挙げられる。
[正孔注入層、正孔輸送層]
上記の有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層を、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として使用することが好ましく、少なくとも正孔注入層として使用することが一層好ましい。上述のとおり、有機エレクトロニクス材料を含むインク組成物を用いることにより、これらの層を容易に形成することができる。
有機EL素子が、上記の有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層を正孔輸送層として有し、さらに正孔注入層を有する場合、正孔注入層には公知の材料を使用できる。また、有機EL素子が、上記の有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層を正孔注入層として有し、更に正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層には公知の材料を使用できる。
正孔注入層にトリフェニルアミンからなる材料を用いた場合、正孔の移動に対してエネルギー準位の観点から、正孔輸送層に本実施形態の有機エレクトロニクス材料を用いることが好適である。特に、正孔注入層に重合開始剤を含み、かつ正孔輸送層に、上記の電荷輸送性ポリマーとして、重合性置換基を有するポリマーを用いた場合、正孔輸送層を硬化可能となり、よって、さらその上層にインク等からなる発光層を塗布することが可能となる。この場合の正孔輸送層を形成するインク組成物としては、重合開始剤を含まないものを用いることができる。
[電子輸送層、電子注入層]
電子輸送層及び電子注入層に用いる材料としては、例えば、フェナントロリン誘導体、ビピリジン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレン、ペリレンなどの縮合環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、アルミニウム錯体等が挙げられる。また、前記実施形態の有機エレクトロニクス材料も使用できる。
[陰極]
陰極材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Ba、Mg/Ag、LiF、CsF等の金属又は金属合金が用いられる。
[陽極]
陽極材料としては、例えば、金属(例えば、Au)又は導電性を有する他の材料が用いられる。他の材料として、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)、導電性高分子(例えば、ポリチオフェン−ポリスチレンスルホン酸混合物(PEDOT:PSS))が挙げられる。
[基板]
基板として、ガラス、プラスチック等を使用できる。基板は、透明であることが好ましく、また、フレキシブル性を有するフレキシブル基板であることが好ましい。石英ガラス、光透過性樹脂フィルム等が好ましく用いられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルムが挙げられる。
樹脂フィルムを用いる場合、水蒸気、酸素等の透過を抑制するために、樹脂フィルムへ酸化珪素、窒化珪素等の無機物をコーティングして用いてもよい。
[封止]
有機EL素子は、外気の影響を低減させて長寿命化させるため、封止されていてもよい。封止に用いる材料としては、ガラス、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルム、又は酸化珪素、窒化ケイ素等の無機物を用いることができるが、これらに限定されることはない。
封止の方法も、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。
[発光色]
有機EL素子の発光色は特に限定されるものではない。白色の有機EL素子は、家庭用照明、車内照明、時計又は液晶のバックライト等の各種照明器具に用いることができるため好ましい。
白色の有機EL素子を形成する方法としては、複数の発光材料を用いて複数の発光色を同時に発光させて混色させる方法を用いることができる。複数の発光色の組み合わせとしては、特に限定されないが、青色、緑色及び赤色の3つの発光極大波長を含有する組み合わせ、青色と黄色、黄緑色と橙色等の2つの発光極大波長を含有する組み合わせなどが挙げられる。発光色の制御は、発光材料の種類と量の調整により行うことができる。
<表示素子、照明装置、表示装置>
本発明の実施形態である表示素子は、前記実施形態の有機EL素子を備えている。例えば、赤、緑及び青(RGB)の各画素に対応する素子として、有機EL素子を用いることで、カラーの表示素子が得られる。画像の形成方法には、マトリックス状に配置した電極でパネルに配列された個々の有機EL素子を直接駆動する単純マトリックス型と、各素子に薄膜トランジスタを配置して駆動するアクティブマトリックス型とがある。
また、本発明の実施形態である照明装置は、本発明の実施形態の有機EL素子を備えている。さらに、本発明の実施形態である表示装置は、照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えている。例えば、表示装置は、バックライトとして本発明の実施形態である照明装置を用い、表示手段として公知の液晶素子を用いた表示装置、すなわち液晶表示装置とすることができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
<Pd触媒の調製>
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、サンプル管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(73.2mg、80μmol)を秤取り、アニソール(15ml)を加え、30分間攪拌した。同様に、サンプル管にトリス(t−ブチル)ホスフィン(129.6mg、640μmol)を秤取り、アニソール(5ml)を加え、5分間攪拌した。これらの溶液を混合し、室温で30分間攪拌して、触媒とした。
<電荷輸送性ポリマー1〜4の合成>
[実施例1:電荷輸送性ポリマー1の合成]
三口丸底フラスコに、下記モノマー1(5.0mmol)、下記モノマー2(2.0mmol)、下記モノマー3(4.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、更に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。30分撹拌した後、10%テトラエチルアンモニウム水酸化物水溶液(20mL)を加えた。全ての溶媒は30分以上、窒素バブルにより脱気した後、使用した。この混合物を2時間、加熱還流した。ここまでの全ての操作は窒素気流下で行った。
Figure 0006657701
反応終了後、有機層を水洗し、有機層をメタノール−水(9:1)に注いだ。生じた沈殿を吸引ろ過により回収し、メタノール−水(9:1)で洗浄した。得られた沈殿をトルエンに溶解し、メタノールから再沈殿した。得られた沈殿を吸引ろ過により回収し、トルエンに溶解し、金属吸着剤(Strem Chemicals社製「Triphenylphosphine, polymer-bound on styrene-divinylbenzene copolymer」、沈殿物100mgに対して200mg)を加えて、一晩撹拌した。撹拌終了後、金属吸着剤と不溶物とをろ過して取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮液をトルエンに溶解した後、メタノール−アセトン(8:3)から再沈殿した。生じた沈殿を吸引ろ過により回収し、メタノール−アセトン(8:3)で洗浄した。得られた沈殿を真空乾燥し、1.3gの電荷輸送性ポリマー1を得た。
得られた電荷輸送性ポリマー1の数平均分子量は8,900、重量平均分子量は52,300であった。
数平均分子量及び質量平均分子量は、溶離液にテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPC(ポリスチレン換算)により測定した。測定条件は以下のとおりである。
送液ポンプ :L−6050 (株)日立ハイテクノロジーズ
UV−Vis検出器:L−3000 (株)日立ハイテクノロジーズ
カラム :Gelpack(登録商標) GL−A160S/GL−A150S 日立化成(株)
溶離液 :THF(HPLC用、安定剤を含まない) 和光純薬工業(株)
流速 :1mL/min
カラム温度 :室温
分子量標準物質 :標準ポリスチレン
[実施例2:電荷輸送性ポリマー2の合成]
実施例1におけるモノマー1を下記モノマー4に変更した以外は、実施例1と同様にして電荷輸送性ポリマー2を得た。該ポリマー2の数平均分子量は12,000、重量平均分子量は38,400であった。
Figure 0006657701
[実施例3:電荷輸送性ポリマー3の合成]
実施例1におけるモノマー1を下記モノマー5に変更した以外は、実施例1と同様にして電荷輸送性ポリマー3を得た。該ポリマー3の数平均分子量は14,300、重量平均分子量は47,500であった。
Figure 0006657701
[比較例1:電荷輸送性ポリマー4の合成]
実施例1におけるモノマー1を下記モノマー6に変更した以外は、実施例1と同様にして電荷輸送性ポリマー4を得た。該ポリマー4の数平均分子量は14,200、重量平均分子量は49,700であった。
Figure 0006657701
<インク組成物を用いた耐溶剤性の評価>
[実施例4]
電荷輸送性ポリマー1(10.0mg)、下記重合開始剤(0.5mg)、及びトルエン(2.3mL)からなるインク組成物1を調製した。このインク組成物1を3000rpmで石英板上にスピンコートして有機層を形成した。次いで、得られた有機層を、ホットプレート上180℃で10分間加熱した。加熱後の石英板をトルエン中に1分間浸漬し、洗浄を行った。
Figure 0006657701
トルエン溶媒への洗浄前後のUV−VIS(紫外・可視)スペクトルを測定し、得られたスペクトルにおける吸収極大(λmax)の吸光度(Abs)の比(下記)から、残膜率を測定した。
残膜率(%)=洗浄後Abs/洗浄前Abs×100
UV−VISスペクトルの測定は、U−3900H(日立ハイテクノロジーズ)を用いて、測定波長250nm〜600nm、スキャンスピード600nm/分で行った。
[実施例5]
実施例4におけるインク組成物1の電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー2に変更した以外は、実施例4と同様にして有機層を形成し、残膜率を測定した。
[実施例6]
実施例4におけるインク組成物1の電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー3に変更した以外は、実施例4と同様にして有機層を形成し、残膜率を測定した。
[実施例7]
実施例4と同様にして有機層を形成した後、電荷輸送性ポリマー1(10.0mg)、及びトルエン(2.3mL)からなるインク組成物2を3000rpmでスピンコートして有機層を積層し、次いで、ホットプレート上180℃で10分間加熱した。その後、上記と同様にして、得られた有機層の残膜率を測定した。
[参考例1]
実施例4のインク組成物1において、重合開始剤を加えなかった以外は、実施例4と同様にして有機層を形成し、残膜率を測定した。
Figure 0006657701
上記表に示されるとおり、実施例においては得られた有機層が不溶化するので、この有機層を溶解させることなく、さらにその上層に、任意の有機層を塗布積層できることが分かる。実施例7によれば、下層(例えば正孔注入層)に重合開始剤が含まれる場合に、その上に積層する層(例えば正孔輸送層)が不溶化することがわかる。
<ホールオンリー素子の作製>
[実施例8]
窒素雰囲気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、上記電荷輸送性ポリマー1(30.0mg)、前記重合開始剤(1.5mg)、及びトルエン(2.3mL)からなるインク組成物を、回転数3,000min−1でスピンコートした後、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して硬化させ、正孔注入層(90nm)を形成した。
上記で得た基板を、真空蒸着中に移し、上記正孔注入層上にAl(100nm)を蒸着法で成膜し、封止処理を行ってホールオンリー素子を作製した。
[実施例9]
実施例8の電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー2に変更した以外は、全て実施例8と同様にして、ホールオンリー素子を作製した。
[実施例10]
実施例8の電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー3に変更した以外は、全て実施例8と同様にして、ホールオンリー素子を作製した。
[比較例2]
実施例8の電荷輸送性ポリマー1を電荷輸送性ポリマー4に変更した以外は、全て実施例8と同様にして、ホールオンリー素子を作製した。
これらのホールオンリー素子のITOを正極、Alを陰極として電圧を印加した時の印加電圧−電流密度のグラフを図2に示す。図2より、本実施形態の有機エレクトロニクス材料とインク組成物を用いることにより、有機EL素子の駆動電圧を低下可能であることが分かる。
以上に、実施例を用いて本発明の実施形態の効果を示した。実施例において使用した電荷輸送性ポリマー以外にも、上記で説明した、炭素数8〜16の置換基を有するアリールアミン構造単位を含む電荷輸送性ポリマーを用い、駆動電圧の低い有機EL素子を得ることが可能であり、同様に優れた効果を示すものである。
1 発光層
2 陽極
3 正孔注入層
4 陰極
5 電子注入層
6 正孔輸送層
7 電子輸送層
8 基板

Claims (13)

  1. トリフェニルアミン環上に、以下の式(1)〜(3)のいずれかで表される置換基(式(1)〜(3)中、nは8〜15の整数を示す。):
    Figure 0006657701
    を有するトリフェニルアミン構造単位と、重合可能な置換基とを有する電荷輸送性ポリマー又はオリゴマーを含む、有機エレクトロニクス材料。
  2. 前記電荷輸送性ポリマー又はオリゴマーが、3個以上の末端を有する、請求項1に記載の有機エレクトロニクス材料。
  3. 電荷輸送性ポリマー又はオリゴマーは、エステル結合を有する基、カルボニル結合を有する基、アミド結合を有する基、及びイミド結合を有する基からなる群から選択される少なくとも一種の有機基を有さない、請求項1又は2に記載の有機エレクトロニクス材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス材料、溶媒、及び重合開始剤を含む、インク組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載の有機エレクトロニクス材料、又は請求項4記載のインク組成物を用いて形成された、有機層。
  6. 請求項5記載の有機層を少なくとも一つ備える、有機エレクトロニクス素子。
  7. 請求項5記載の有機層を少なくとも一つ備える、有機エレクトロルミネセンス素子。
  8. 樹脂フィルム基板を更に備える、請求項7記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
  9. 前記有機層が正孔注入層である、請求項7又は8記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
  10. 前記有機層が透明電極である、請求項7又は8記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
  11. 請求項7〜10のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた、表示素子。
  12. 請求項7〜10のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた、照明装置。
  13. 請求項12記載の照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えた、表示装置。
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