以下、本発明に係る内燃機関の制御装置を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本発明に係る内燃機関の制御装置の概略構成について図1に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る内燃機関の制御装置1は、エアクリーナ5と、吸気流量検出装置6と、車両に搭載されたエンジン(例えば、ディーゼルエンジン)10と、主ターボチャージャ21と、副ターボチャージャ22と、ECU80等から構成されている。エンジン10は、左バンク10Lと右バンク10Rを有する多気筒エンジンであり、左バンク10Lには主ターボチャージャ21が設けられ、右バンク10Rには副ターボチャージャ22が設けられている。
また、左バンク10Lには、ECU80の制御信号によって各気筒内に直接燃料を噴射可能な燃料噴射装置15Lが設けられている。右バンク10Rには、ECU80の制御信号によって各気筒内に直接燃料を噴射可能な燃料噴射装置15Rが設けられている。以下、エンジン10への吸気経路とエンジン10からの排気経路を説明しながら、各部材等を説明する。
エアクリーナ5は、外部から取得された空気(吸気)を浄化して、吸気管3に供給する。吸気管3は、途中で吸気管31L、31Rに分岐されている。また、エアクリーナ5の下流側には、エアクリーナ5から吸気管3が分岐されるまでの間に、吸気管3に供給される吸気流量を検出する吸気流量検出装置(例えば、エアフロメータ)6が配置されている。
吸気管31Lの下流側は主ターボチャージャ21の主コンプレッサ21Bの吸入口に接続されている。主コンプレッサ21Bの吐出口は、吸気管32Lの上流側に接続されている。また、吸気管31Rの下流側は副ターボチャージャ22の副コンプレッサ22Bの吸入口に接続されている。副コンプレッサ22Bの吐出口は、吸気管32Rの上流側に接続されている。そして、吸気管32L及び吸気管32Rの下流側は、吸気管33の上流側に接続されている。また、吸気管32Lの主コンプレッサ21Bの吐出口近傍には、主コンプレッサ21Bの出口側の吸気温度、つまり、主コンプレッサ21Bの出口温度を検出する第3温度検出装置(例えば、温度検出センサ)27が設けられている。
吸気管33の下流側は吸気マニホールド34の上流側に接続されている。吸気マニホールド34は、エンジン10の右バンク10Rの各気筒と、左バンク10Lの各気筒と、のそれぞれに吸気を供給する。また、吸気管33と吸気マニホールド34との間には、過給された吸入空気を冷却するインタークーラ38が配置されている。また、吸気管33と吸気マニホールド34との間には、インタークーラ38の下流側において、吸気マニホールド34に導かれる吸入空気の量を調節可能な電子スロットルバルブ39が配置されている。電子スロットルバルブ39は、ECU80からの制御信号によって全閉位置から全開位置まで、その回転位置が連続的に駆動制御されるようになっている。
主コンプレッサ21Bは、排気ガスによって回転駆動される主タービン21Aにて回転駆動され、吸気管31Lから吸入した空気を圧縮して吸気管32L、33、インタークーラ38、及び、電子スロットルバルブ39を経由して吸気マニホールド34へと吐出する。また、副コンプレッサ22Bの吐出口に上流側が接続された吸気管32Rには、吸気管32Rの開口と閉鎖を行う吸気切替弁51が設けられている。吸気切替弁51は、例えば、ダイヤフラム式アクチュエータによって駆動され、ECU80からの制御信号によって開閉されるようになっている。
また、吸気バイパス管36は、一端が副コンプレッサ22Bの吐出口と吸気切替弁51との間、つまり、吸気切替弁51よりも上流側で、吸気管32Rに接続されていると共に、他端が、吸気管31Lの主コンプレッサ21Bの吸入口よりも上流側に接続されている。すなわち、吸気バイパス管36は、副コンプレッサ22Bの吐出口の下流側と、主コンプレッサ21Bの吸入口の上流側とをバイパスする。また、吸気バイパス管36の両端の間には、吸気バイパス管36の開口と閉鎖を行う吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)が設けられている。吸気バイパス弁52は、例えば、ソレノイド式電磁アクチュエータによって駆動され、ECU80からの制御信号によって開閉されるようになっている。
従って、吸気切替弁51が吸気管32Rを開口し、且つ、吸気バイパス弁52が吸気バイパス管36を閉鎖した場合には、副コンプレッサ22Bは、排気ガスによって回転駆動される副タービン22Aにて回転駆動され、吸気管31Rから吸入した空気を圧縮して吸気管32R、33、インタークーラ38、及び、電子スロットルバルブ39を経由して吸気マニホールド34へと吐出する。また、電子スロットルバルブ39よりも下流側の位置に、吸気マニホールド34に供給される吸気の過給圧P5を検出する過給圧センサ55が設けられている。また、副コンプレッサ22Bの吐出口の下流側の位置に、副コンプレッサ22Bの出口圧力P2を検出する圧力センサ23が設けられている。
一方、吸気切替弁51が吸気管32Rを閉鎖し、且つ、吸気バイパス弁52が吸気バイパス管36を開口した場合には、副コンプレッサ22Bは、排気ガスによって回転駆動される副タービン22Aにて回転駆動され、吸気管31Rから吸入した空気を圧縮して吸気管32R及び吸気バイパス管36を経由して、主コンプレッサ21Bの吸入口に接続された吸気管31Lへと吐出する。つまり、副コンプレッサ22Bから吸気管32R、33を経由して吸気マニホールド34に吸気を供給できない。
エンジン10の左バンク10Lの排気側には、排気マニホールド41Lが接続され、右バンク10Rの排気側には、排気マニホールド41Rが接続されている。排気マニホールド41Lの下流側には排気管42Lの上流側が接続されている。排気管42Lの下流側には、主ターボチャージャ21の主タービン21Aの流入口(入口側)に接続された上流側主排気管43Lの上流側が接続されている。
また、排気マニホールド41Rの下流側には排気管42Rの上流側が接続されている。排気管42Rの下流側には、副ターボチャージャ22の副タービン22Aの流入口(入口側)に接続された上流側副排気管43Rの上流側が接続されている。また、連通配管45は、一端側が排気管42Lの下流側に接続されると共に、他端側が排気管42Rの下流側に接続されている。つまり、排気管42Lと排気管42Rは、連通配管45によって連通されている。
また、エンジン10には、エンジン回転数検出装置28等が設けられている。エンジン回転数検出装置28は、例えば、エンジン10のクランク軸の回転数(エンジン回転数)や、クランク軸の回転角度(例えば、各気筒の圧縮上死点タイミング)等を検出可能な回転角度センサである。ECU80は、エンジン回転数検出装置28からの検出信号に基づいて、エンジン10のクランク軸の回転数や回転角度等を検出することが可能である。
主タービン21Aは、上流側主排気管43Lから流入してくる排気ガスによって回転駆動され、直結された主コンプレッサ21Bを回転駆動する。副タービン22Aは、上流側副排気管43Rから流入してくる排気ガスによって回転駆動され、直結された副コンプレッサ22Bを回転駆動する。従って、副ターボチャージャ22は、主ターボチャージャ21に対して並列に接続されている。
また、上流側副排気管43Rには、上流側副排気管43Rの開口と閉鎖を行う排気切替弁53が設けられている。排気切替弁53は、例えば、ダイヤフラム式アクチュエータによって駆動され、ECU80からの制御信号によって開閉されるようになっている。これにより、吸気切替弁51と排気切替弁53が、両方とも開弁され、吸気バイパス弁52が閉弁されたときには、排気ガスが主タービン21Aと副タービン22Aに流入する。その結果、主ターボチャージャ21と副ターボチャージャ22が作動して、主コンプレッサ21Bと副コンプレッサ22Bによって吸気が過給される(以下、「ツインターボモード」と記載する場合もある。)。
一方、吸気切替弁51と排気切替弁53と吸気バイパス弁52とが、全て閉弁されたときには、排気ガスは主タービン21Aに流入するが、副タービン22Aへの流入が阻止される。その結果、主ターボチャージャ21が作動して、主コンプレッサ21Bによって吸気が過給されるが、副ターボチャージャ22が作動せず、副コンプレッサ22Bによる吸気の過給が行われない(以下、「シングルターボモード」と記載する場合もある。)。つまり、吸気切替弁51、吸気バイパス弁52及び排気切替弁53は、連動して開弁・閉弁を切り替えられる。尚、図1は、吸気切替弁51と排気切替弁53が、両方とも開弁され、吸気バイパス弁52が閉弁された際の吸気及び排気の流れを点線の矢印で示す。
また、主タービン21Aには、主タービン21Aへの排気ガスの流速を制御する主可変ノズル機構57が設けられている。主可変ノズル機構57は、複数の可変ノズル(VN:Variable Nozzle)57Aと、アクチュエータ57Bと、ノズル開度センサ57Cとを含む。複数の可変ノズル57Aは、タービンホイールの回転軸を中心とした周囲の排気流入部に配置され、上流側主排気管43Lから流入する排気ガスをタービンホイールに導く。
アクチュエータ57Bは、複数の可変ノズル57Aのそれぞれを回転させることによって隣接する可変ノズル57A間の隙間(以下の説明において、この隙間を「ノズル開度」と記載する。)を調整する。アクチュエータ57Bは、例えば、ステンピングモータ等で構成され、ECU80からの制御信号に応じて可変ノズル57Aのノズル開度を調整する。可変ノズル57Aを閉じる(ノズル開度を大きくする)ことによって、吸気の過給圧Pは上昇し、可変ノズル57Aを開く(ノズル開度を小さくする)ことによって、吸気の過給圧Pは減少する。また、ノズル開度センサ57Cは、可変ノズル57Aのノズル開度を検出して、ECU80に検出信号を出力する。
また、副タービン22Aには、副タービン22Aへの排気ガスの流速を制御する副可変ノズル機構58が設けられている。副可変ノズル機構58は、複数の可変ノズル(VN:Variable Nozzle)58Aと、アクチュエータ58Bと、ノズル開度センサ58Cとを含む。複数の可変ノズル58Aは、上記主可変ノズル機構57を構成する複数の可変ノズル57Aとほぼ同じ構成である。アクチュエータ58B、ノズル開度センサ58Cも、上記主可変ノズル機構57を構成するアクチュエータ57B、ノズル開度センサ57Cとほぼ同じ構成である。
従って、複数の可変ノズル58Aは、アクチュエータ58Bの駆動によりノズル開度が調整され、副タービン22Aに流入する排気ガスの流速を変化させる。これにより、可変ノズル58Aを閉じる(ノズル開度を大きくする)ことによって、吸気の過給圧Pは上昇し、可変ノズル58Aを開く(ノズル開度を小さくする)ことによって、吸気の過給圧Pは減少する。
主タービン21Aの吐出口(出口側)には排気管46Lの上流側が接続されている。また、副タービン22Aの吐出口(出口側)には排気管46Rの上流側が接続されている。排気管46Lの下流側と排気管46Rの下流側とは、排気管47の上流側に接続されている。また、排気管46Lには、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度を検出する第1温度検出装置(例えば、温度検出センサ)25が設けられている。また、排気管46Rには、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度を検出する第2温度検出装置(例えば、温度検出センサ)26が設けられている。
排気管47の下流側は、排気ガス浄化装置61の流入口に接続されている。排気ガス浄化装置61の内部には、上流側から、酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)62、DPF(Diesel Particulate Filter)63が設けられている。酸化触媒62は、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去する。DPF63は、セラミックス材料等からなる多孔質な部材によって円柱状等に形成され、上流側から各小孔に流入する排気ガスを多孔質材料に通すことで粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集し、排気ガスのみを下流側へと流出させる。そして、排気ガス浄化装置61の流出口には、排気管48の上流側が接続されている。
ECU80は、CPU、EEPROM、RAM、タイマ、不図示のバックアップRAM等を備えた公知のものである。CPUは、EEPROMに記憶された各種プログラムや各種パラメータに基づいて、種々の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各検出装置から入力されたデータ等を一時的に記憶し、EEPROM、及び、バックアップRAMは、例えば、エンジン10の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。
ECU80は、燃料噴射装置15L、15R、圧力センサ23、第1温度検出装置25、第2温度検出装置26、第3温度検出装置(出口温度検出装置)27、エンジン回転数検出装置28、吸気切替弁51、吸気バイパス弁52、排気切替弁53、過給圧センサ55、アクチュエータ57B、58B、ノズル開度センサ57C、58C、アクセルペダル踏込量検出装置(例えば、アクセルペダル踏込角度センサ)71、警告ランプ72、大気圧センサ75、電流センサ77、バッテリ電圧センサ78A等が、電気的に接続されている。
ECU80には、吸気流量検出装置6、圧力センサ23、第1温度検出装置25、第2温度検出装置26、第3温度検出装置27、エンジン回転数検出装置28、過給圧センサ55、ノズル開度センサ57C、58C、アクセルペダル踏込量検出装置71、大気圧センサ75、電流センサ77、バッテリ電圧センサ78Aの検出信号が入力される。ECU80は、吸気流量検出装置6からの検出信号に基づいて、エンジン10が吸入した吸気流量を検出することができる。
ECU80は、過給圧センサ55からの検出信号に基づいて、吸気マニホールド34の過給圧P5を検出することができる。ECU80は、圧力センサ23からの検出信号に基づいて、副コンプレッサ22Bの出口圧力P2を検出することができる。ECU80は、第1温度検出装置25からの検出信号に基づいて、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度を検出することができる。ECU80は、第2温度検出装置26からの検出信号に基づいて、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度を検出することができる。ECU80は、第3温度検出装置27からの検出信号に基づいて、主コンプレッサ21Bの出口側の吸気温度(出口温度)を検出することができる。
ECU80は、エンジン回転数検出装置28からの検出信号に基づいて、エンジン10のクランク軸の回転数や回転角度等を検出することが可能である。エンジン回転数検出装置28は、例えば、エンジン10のクランク軸の回転数や、クランク軸の回転角度(例えば、各気筒の圧縮上死点タイミング)等を検出可能な回転角度センサである。ECU80は、ノズル開度センサ57C、58Cからの検出信号に基づいて、複数の可変ノズル57A、58Aのノズル開度を検出することができる。ECU80は、大気圧センサ75からの検出信号に基づいて、大気圧P1を検出することができる。
ECU80は、アクセルペダル踏込量検出装置71からの検出信号に基づいて、運転者によるアクセルペダルの踏込量(運転者の加速要求、減速要求)を検出することが可能である。アクセルペダル踏込量検出装置71は、例えば、アクセルペダル踏込角度センサであり、アクセルペダルに設けられている。ECU80は、電流センサ77からの検出信号に基づいて、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)を駆動する駆動電流値、つまり、不図示のコイルに流れる駆動電流値を検出することができる。
ECU80は、バッテリ電圧センサ78Aからの検出信号に基づいて、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)を駆動するための電力を供給するバッテリ78のバッテリ電圧を検出することができる。ECU80は、吸気切替弁51、吸気バイパス弁52、排気切替弁53のうち、いずれかの開固着又は閉固着を検出した際に点灯する警告ランプ72の点灯/消灯が可能である。警告ランプ72は、例えば、車両のインスツルメントパネルに設けられている。
また、ECU80は、吸気切替弁51、吸気バイパス弁52、及び、排気切替弁53を運転状態に応じて開弁させる開弁信号又は閉弁させる閉弁信号を出力する。また、ECU80は、ノズル開度センサ57C、58Cの検出信号に基づいてアクチュエータ57B、58Bを駆動する駆動信号を出力して、複数の可変ノズル57A、58Aのそれぞれのノズル開度を調整する。また、ECU80は、エンジン回転数検出装置28とアクセルペダル踏込量検出装置71等の検出信号に基づいて、燃料噴射装置15L、15Rを駆動する制御信号を出力して、各気筒内に直接噴射する燃料噴射量を制御する。
次に、上記のように構成された内燃機関の制御装置1において、ECU80によって実行される処理であって、主ターボチャージャ21と副ターボチャージャ22が作動して過給される「ツインターボモード」と、主ターボチャージャ21だけが作動して過給される「シングルターボモード」とを切り替える制御について、図2及び図3に基づいて説明する。先ず、「シングルターボモード」と「ツインターボモード」の選択について図2に基づいて説明する。図2は、シングルターボモードとツインターボモードの動作領域を決定する動作領域マップの一例を示している。
図2において、横軸はエンジン回転数を示し、縦軸は要求トルク(燃料噴射量)を示している。実線81は、「シングルターボモード」の動作特性を示し、破線82は、「ツインターボモード」の動作特性を示す。エンジン回転数及び要求トルク(燃料噴射量)によって定まる動作点が実線81よりも下側にある場合、エンジン10は「シングルターボモード」で動作する。また、エンジン回転数及び要求トルクが増加し、動作点が実線81よりも上側の領域に入った場合、エンジン10は「ツインターボモード」で動作する。即ち、動作点が破線83で囲まれた切替ラインより下側にある場合は、「シングルターボモード」が選択され、上側にある場合は「ツインターボモード」が選択される。
次に、各過給モードにおいて、ECU80によって設定される排気切替弁53と吸気切替弁51と吸気バイパス弁52の設定状態について、図3に示す過給モード設定マップ85に基づいて説明する。尚、過給モード設定マップ85は、予めEEPROMに記憶されており、ECU80は、過給モード設定マップ85に基づいて、排気切替弁53と吸気切替弁51と吸気バイパス弁52の開弁・閉弁を設定する。
図3に示すように、ECU80は、エンジン10を「シングルターボモード」で動作させる場合には、排気切替弁53と吸気切替弁51と吸気バイパス弁52に閉弁の制御信号を出力して、排気切替弁53と吸気切替弁51と吸気バイパス弁52を全て「閉弁状態」に設定する。また、ECU80は、シングルターボモードフラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶する。また、ECU80は、ツイン切替モードフラグ、ツインターボモードフラグ、及び、シングル切替モードフラグをRAMから読み出し、それぞれを「OFF」に設定して再度RAMに記憶する。
また、ECU80は、エンジン10を「シングルターボモード」から「ツインターボモード」へ切り替える場合には、ツインターボモードへの「ツイン切替モード」で約0.5秒~1秒間動作させた後、「ツインターボモード」で動作させる。ECU80は、エンジン10をツインターボモードへの「ツイン切替モード」で動作させる場合には、吸気切替弁51の「閉弁状態」を維持して、排気切替弁53と吸気バイパス弁52に開弁の制御信号を出力して、排気切替弁53と吸気バイパス弁52を「開弁状態」に設定する。
これにより、副ターボチャージャ22を作動させて、副タービン22Aの回転を「ツインターボモード」における回転まで上昇させると共に、副コンプレッサ22Bによって加圧された吸気が、吸気バイパス管36、吸気管31Lを介して主コンプレッサ21Bの入口側に供給される。また、ECU80は、ツイン切替モードフラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶する。また、ECU80は、シングルターボモードフラグ、ツインターボモードフラグ、及び、シングル切替モードフラグをRAMから読み出し、それぞれを「OFF」に設定して再度RAMに記憶する。
その後、ECU80は、エンジン10を「ツインターボモード」で動作させる場合には、排気切替弁53の「開弁状態」を維持して、吸気切替弁51に開弁の制御信号を出力して「開弁状態」に設定すると共に、吸気バイパス弁52に閉弁の制御信号を出力して「閉弁状態」に設定する。また、ECU80は、ツインターボモードフラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶する。また、ECU80は、シングルターボモードフラグ、ツイン切替モードフラグ、及び、シングル切替モードフラグをRAMから読み出し、それぞれを「OFF」に設定して再度RAMに記憶する。これにより、主コンプレッサ21B及び副コンプレッサ22Bによって加圧された吸気が吸気管32L、32R、33を介して吸気マニホールド34に供給される。
また、ECU80は、エンジン10を「ツインターボモード」から「シングルターボモード」へ切り替える場合には、シングルターボモードへの「シングル切替モード」で約2秒~3秒間動作させた後、「シングルターボモード」で動作させる。ECU80は、エンジン10をシングルターボモードへの「シングル切替モード」で動作させる場合には、排気切替弁53と吸気切替弁51に閉弁の制御信号を出力して「閉弁状態」に設定し、吸気バイパス弁52に開弁の制御信号を出力して「開弁状態」に設定する。
これにより、排気切替弁53を「閉弁状態」にしても、副タービン22Aが慣性で回転するが、副コンプレッサ22Bで加圧された吸気は、吸気バイパス管36、吸気管31Lを介して主コンプレッサ21Bの入口側に供給されて、吸気管33には供給されない。その後、副タービン22Aの回転が低下すると、ECU80は、エンジン10を「シングルターボモード」で動作させる。また、ECU80は、シングル切替モードフラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶する。また、ECU80は、シングルターボモードフラグ、ツイン切替モードフラグ、及び、ツインターボモードフラグをRAMから読み出し、それぞれを「OFF」に設定して再度RAMに記憶する。
[故障診断処理]
次に、上記のように構成された内燃機関の制御装置1において、ECU80によって実行される処理であって、吸気バイパス弁52の閉固着の故障診断を行う故障診断処理について図4乃至図13に基づいて説明する。ECU80は、起動されると所定時間間隔(例えば、数ミリ秒~数十ミリ秒間隔)にて、図4に示す処理を起動し、ステップS11へと処理を進める。尚、図4、図5、図10、図11、図13にフローチャートで示されるプログラムは、ECU80のEEPROMに予め記憶されている。
図4に示すように、先ず、ステップS11において、ECU80は、後述のフェイルセーフ処理のサブ処理(図10参照)を実行した後、ステップS12に進む。ステップS12において、ECU80は、エンジン10が「シングルターボモード」から「ツインターボモード」へ切り替える際に経由する「ツイン切替モード」の動作開始であるか否かを判定する。
つまり、ECU80は、吸気切替弁51と排気切替弁53と吸気バイパス弁52を全て閉弁した「シングルターボモード」てあり、且つ、エンジン10の回転数及び要求トルク(燃料噴射量)によって定まる動作領域マップ(図3参照)での動作点が「ツインターボモード」であるか否かを判定する。尚、ECU80は、シングルターボモードフラグ、ツイン切替モードフラグ、ツインターボモードフラグ、及び、シングル切替モードフラグをRAMから読み出す。そして、ECU80は、シングルターボモードフラグが「ON」に設定され、ツイン切替モードフラグ、ツインターボモードフラグ、及び、シングル切替モードフラグが共に「OFF」に設定されている場合に、「シングルターボモード」であると判定する(図3参照)。
また、「シングルターボモード」であると判定した場合には、ECU80は、エンジン回転数検出装置28とアクセルペダル踏込量検出装置71等の検出信号に基づいて、エンジン回転数と要求トルク(燃料噴射量)を取得する。そして、ECU80は、エンジン10の回転数及び要求トルク(燃料噴射量)によって定まる動作領域マップ(図3参照)での動作点が「ツインターボモード」であるか否かを判定する。
そして、エンジン10が「シングルターボモード」から「ツインターボモード」へ切り替える際に経由する「ツイン切替モード」の動作開始であると判定した場合には(S12:YES)、ECU80は、ステップS13の処理に進む。ステップS13において、ECU80は、排気切替弁53に開弁信号を出力して、閉弁状態から開弁状態に設定する。また、ECU80は、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)に開弁信号を出力して、つまり、吸気バイパス弁52のコイルへの通電を開始して、閉弁状態から開弁状態に設定する。一方、ECU80は、吸気切替弁51の閉弁状態を維持する。
また、ECU80は、ツイン切替モードフラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶する。また、ECU80は、シングルターボモードフラグ、ツインターボモードフラグ、及び、シングル切替モードフラグをRAMから読み出し、それぞれを「OFF」に設定して再度RAMに記憶した後、ステップS14の処理に進む。
ステップS14において、ECU80は、吸気バイパス弁(以下、「ABV」と記載する場合もある。)52が閉固着しているか否かを判定する後述の「ABV閉固着判定処理」のサブ処理(図5参照)を実行した後、ステップS15の処理に進む。ここで、「ABV閉固着判定処理」のサブ処理において、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)が閉固着していると判定された場合には、後述のように、ECU80は、ABV閉固着フラグをRAMから読み出し、ONに設定して再度、RAMに記憶する。尚、ABV閉固着フラグは、ECU80の起動時に、OFFに設定されてRAMに記憶される。
ステップS15において、ECU80は、ABV閉固着フラグをRAMから読み出し、ONに設定されているか否かを判定する。そして、ABV閉固着フラグがOFFに設定されていると判定した場合には(S15:NO)、ECU80は、当該故障診断処理を終了する。一方、ABV閉固着フラグがONに設定されていると判定した場合には(S15:YES)、ECU80は、ステップS16の処理に進む。ステップS16において、ECU80は、第1フェイルセーフフラグをRAMから読み出し、ONに設定して再度、RAMに記憶した後、当該故障診断処理を終了する。
後述のように、第1フェイルセーフフラグが「ON」に設定された場合には、上記ステップS11で実行される後述の「フェイルセーフ処理」のサブ処理において、ECU80は、エンジン10を「シングルターボモード」に固定して動作させるように制御する(図10、図11参照)。尚、第1フェイルセーフフラグは、ECU80の起動時に、OFFに設定されてRAMに記憶される。
他方、上記ステップS12で、エンジン10が「シングルターボモード」から「ツインターボモード」へ切り替える際に経由する「ツイン切替モード」の動作開始でないと判定した場合には(S12:NO)、ECU80は、ステップS17の処理に進む。ステップS17において、ECU80は、「ツインターボモード」から「シングルターボモード」へ切り替える際に経由する「シングル切替モード」の動作開始であるか否かを判定する。
つまり、ECU80は、吸気切替弁51と排気切替弁53の両方を開弁し、吸気バイパス弁52を閉弁した「ツインターボモード」であり、且つ、エンジン10の回転数及び要求トルク(燃料噴射量)によって定まる動作領域マップ(図3参照)での動作点が「シングルターボモード」であるか否かを判定する。尚、ECU80は、シングルターボモードフラグ、ツイン切替モードフラグ、ツインターボモードフラグ、及び、シングル切替モードフラグをRAMから読み出す。そして、ECU80は、ツインターボモードフラグが「ON」に設定され、シングルターボモードフラグ、ツイン切替モードフラグ、及び、シングル切替モードフラグが共に「OFF」に設定されている場合に、「ツインターボモード」であると判定する(図3参照)。
また、「ツインターボモード」であると判定した場合には、ECU80は、エンジン回転数検出装置28とアクセルペダル踏込量検出装置71等の検出信号に基づいて、エンジン回転数と要求トルク(燃料噴射量)を取得する。そして、ECU80は、エンジン10の回転数及び要求トルク(燃料噴射量)によって定まる動作領域マップ(図3参照)での動作点が「シングルターボモード」であるか否かを判定する。
そして、エンジン10が「ツインターボモード」から「シングルターボモード」へ切り替える際に経由する「シングル切替モード」の動作開始でないと判定した場合には(S17:NO)、ECU80は、当該故障診断処理を終了する。一方、エンジン10が「ツインターボモード」から「シングルターボモード」へ切り替える際に経由する「シングル切替モード」の動作開始であると判定した場合には(S17:YES)、ECU80は、ステップS18の処理に進む。
ステップS18において、ECU80は、吸気切替弁51と排気切替弁53に閉弁信号を出力して、開弁状態から閉弁状態に設定する。また、ECU80は、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)に開弁信号を出力して、つまり、吸気バイパス弁52のコイルへの通電を開始して、閉弁状態から開弁状態に設定する。また、ECU80は、シングル切替モードフラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶する。また、ECU80は、シングルターボモードフラグ、シングル切替モードフラグ、及び、ツインターボモードフラグをRAMから読み出し、それぞれを「OFF」に設定して再度、RAMに記憶した後、ステップS19の処理に進む。
ステップS19において、ECU80は、上記ステップS14の処理と同様に、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)が閉固着しているか否かを判定する後述の「ABV閉固着判定処理」のサブ処理(図5参照)を実行した後、ステップS20の処理に進む。ステップS20において、ECU80は、ABV閉固着フラグをRAMから読み出し、ONに設定されているか否かを判定する。
そして、ABV閉固着フラグがOFFに設定されていると判定した場合には(S20:NO)、ECU80は、当該故障診断処理を終了する。一方、ABV閉固着フラグがONに設定されていると判定した場合には(S20:YES)、ECU80は、ステップS21の処理に進む。ステップS21において、ECU80は、第2フェイルセーフフラグをRAMから読み出し、ONに設定して再度、RAMに記憶した後、当該故障診断処理を終了する。
後述のように、第2フェイルセーフフラグが「ON」に設定された場合には、上記ステップS11で実行される後述の「フェイルセーフ処理」のサブ処理において、ECU80は、エンジン10を「ツインターボモード」に固定して動作させるように制御する(図10、図13参照)。尚、第2フェイルセーフフラグは、ECU80の起動時に、OFFに設定されてRAMに記憶される。
[ABV閉固着判定処理]
次に、上記ステップS14及びステップS19において、ECU80が実行する「ABV閉固着判定処理」のサブ処理について図5乃至図9に基づいて説明する。図5に示すように、先ず、ステップS111において、ECU80は、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)を開弁状態にしてからの経過時間、つまり、吸気バイパス弁52のコイルへの通電を開始してからの経過時間である開弁時間TSをカウントする。
具体的には、ECU80は、開弁時間TSをRAMから読み出し、ステップS111~ステップS115の処理を実行するために必要な所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)加算して再度、RAMに記憶した後、ステップS112の処理に進む。尚、開弁時間TSは、ECU80の起動時に「0」が代入されてRAMに記憶される。
ステップS112において、ECU80は、電流センサ77を介して吸気バイパス弁52の駆動電流値を検出してRAMに記憶した後、ステップS113の処理に進む。ステップS113において、ECU80は、上記ステップS112で検出した吸気バイパス弁52の駆動電流値と積算電流値AWとをRAMから読み出し、積算電流値AWに吸気バイパス弁52の駆動電流値を加算(積算)して、この積算電流値AWを再度RAMに記憶した後、ステップS114の処理に進む。尚、積算電流値AWは、ECU80の起動時に「0」が代入されてRAMに記憶される。
ここで、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)のコイルに、バッテリ電圧が電圧V1で通電した際の駆動電流値(ABV駆動電流)について図6に基づいて説明する。図6に示すように、吸気バイパス弁52が正常に開弁した場合には、ソレノイドがコイルの内側を移動することによって、コイルには誘導作用により逆起電力が発生する。その結果、実線87で示すように、ABV駆動電流の立ち上がり時に、ABV駆動電流の電流値(駆動電流値)に低下が生じた後、再度、定常値I1まで上昇している。
一方、吸気バイパス弁52が閉固着した場合には、ソレノイドがコイルの内側を移動しないため、コイルには逆起電力が発生しない。その結果、破線88で示すように、ABV駆動電流の立ち上がり時に、ABV駆動電流の電流値(駆動電流値)は低下することなく増加し続けて、定常値I1まで上昇している。尚、定常値I1は、ABV駆動電流の電流値の所定時間内(例えば、0.01~0.1ミリ秒内)の変動量が所定変動閾値ΔI以下(例えば、±0.1~0.2ミリアンペア)となったときの電流値である。
従って、吸気バイパス弁52の駆動開始時間T1から駆動電流値が定常値I1に達する時間T2までの、実線87で示される正常時の駆動電流値を、所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)毎に検出して積算した(積分した)積算電流値AW1は、破線88で示される閉固着時の駆動電流値を、所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)毎に検出して積算した(積分した)積算電流値AW2よりも明らかに少なくなる。これより、吸気バイパス弁52の駆動開始時間T1から駆動電流値が定常値I1に達する時間T2までの、駆動電流値を所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)毎に検出して積算した(積分した)積算電流値AW1が、所定の積算閾値S1(図9参照)以下であれば、正常に開弁したと判定することができる。
また、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)のコイルに通電した場合に、バッテリ78のバッテリ電圧が異なる際の駆動電流値(ABV駆動電流)の上昇について図7に基づいて説明する。図7に示すように、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)のコイルに通電した際に、バッテリ78のバッテリ電圧が電圧V1の場合には、駆動電流値(ABV駆動電流)は、時間T2で定常値I1に達している。一方、吸気バイパス弁52のコイルに通電した際に、バッテリ78のバッテリ電圧が電圧V1よりも低い電圧V2の場合には、駆動電流値(ABV駆動電流)は、時間T2よりも長い時間T3で、定常値I1よりも低い定常値I2まで上昇している。
従って、バッテリ78のバッテリ電圧が電圧V1のときは、駆動開始時間T1から時間T2までを、電流センサ77を介して駆動電流値を所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)毎に検出して積算する規定検出時間TB1とする。また、バッテリ78のバッテリ電圧が電圧V2のときは、駆動開始時間T1から時間T3までを、電流センサ77を介して駆動電流値を所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)毎に検出して積算する規定検出時間TB2とする。
その結果、図8に示すように、ECU80は、各バッテリ電圧Vに対する規定検出時間TBを格納した規定検出時間マップM1を予めEEPROMに記憶している。この規定検出時間マップM1は、先ず、正常に作動する複数個の吸気バイパス弁52のそれぞれについて、駆動電流値が通電開始から定常値に達するまでの検出時間Tを、バッテリ78の種々のバッテリ電圧Vにおいて実機試験等により求める。
そして、バッテリ78の各バッテリ電圧Vにおける、複数の検出時間Tから規定検出時間TBを決定する。例えば、各バッテリ電圧Vにおける、複数の検出時間Tのうちの最大値を各バッテリ電圧Vに対する規定検出時間TBとして決定する。また、例えば、各バッテリ電圧Vにおける、複数の検出時間Tの平均値に標準偏差σの3倍の値(3σ)を加算した値を、各バッテリ電圧Vに対する規定検出時間TBとして決定する。その後、各バッテリ電圧Vに対する規定検出時間TBを格納した規定検出時間マップM1を作成する。
また、図7に示すように、バッテリ78のバッテリ電圧が電圧V2のときは、吸気バイパス弁52の駆動開始時間T1から駆動電流値が定常値I2に達する時間T3までの、実線91で示される正常時の駆動電流値を、所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)毎に検出して積算した(積分した)積算電流値AW3は、破線92で示される閉固着時の駆動電流値を、所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)毎に検出して積算した(積分した)積算電流値AW4よりも明らかに少なくなる。
これより、吸気バイパス弁52の駆動開始時間T1から駆動電流値が定常値I2に達する時間T3までの、駆動電流値を所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)毎に検出して積算した(積分した)積算電流値AW3が、所定の積算閾値S2(図9参照)以下であれば、正常に開弁したと判定することができる。
その結果、図9に示すように、ECU80は、各バッテリ電圧Vに対する積算閾値Sを格納した積算閾値マップM2を予めEEPROMに記憶している。この積算閾値マップM2は、先ず、正常に作動する複数個の吸気バイパス弁52のそれぞれについて、駆動電流値を、通電開始から各バッテリ電圧Vに対する規定検出時間TBまで、所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)毎に検出して積算した(積分した)積算電流値AWを、バッテリ78の種々のバッテリ電圧Vにおいて実機試験等により求める。
そして、バッテリ78の各バッテリ電圧Vにおける、複数の積算電流値AWから積算閾値Sを決定する。例えば、各バッテリ電圧Vにおける、複数の積算電流値AWのうちの最大値を各バッテリ電圧Vに対する積算閾値Sとして決定する。また、例えば、各バッテリ電圧Vにおける、複数の積算電流値AWの平均値に標準偏差σの3倍の値(3σ)を加算した値を、各バッテリ電圧Vに対する積算閾値Sとして決定する。その後、各バッテリ電圧Vに対する積算閾値Sを格納した積算閾値マップM2を作成する。
次に、図5に示すように、ステップS114において、ECU80は、バッテリ電圧センサ78Aからの検出信号に基づいてバッテリ78のバッテリ電圧を検出して、RAMに記憶した後、ステップS115の処理に進む。ステップS115において、ECU80は、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)のコイルへの通電を開始してからの経過時間である開弁時間TSをRAMから読み出す。
また、ECU80は、バッテリ78のバッテリ電圧をRAMから読み出し、このバッテリ電圧に対応する規定検出時間TBをEEPROMに記憶している規定検出時間マップM1(図8参照)から読み出す。続いて、ECU80は、開弁時間TSが、この規定検出時間TB以上であるか否かを判定する。つまり、吸気バイパス弁52の駆動電流値(ABV駆動電流)が定常値Iに達したか否かを判定する。
そして、開弁時間TSが、この規定検出時間TB未満であると判定した場合、つまり、吸気バイパス弁52の駆動電流値(ABV駆動電流)が定常値Iに達していないと判定した場合には(S115:NO)、ECU80は、再度ステップS111以降の処理を実行する。つまり、ECU80は、吸気バイパス弁52の駆動電流値を積算電流値AWに加算(積算)する処理を継続する。一方、開弁時間TSが、この規定検出時間TB以上であると判定した場合、つまり、吸気バイパス弁52の駆動電流値(ABV駆動電流)が定常値Iに達したと判定した場合には(S115:YES)、ECU80は、ステップS116の処理に進む。
ステップS116において、ECU80は、上記ステップS114で検出したバッテリ電圧をRAMから読み出し、このバッテリ電圧に対応する積算閾値SをEEPROMに記憶している積算閾値マップM2(図9参照)から読み出す。続いて、ECU80は、吸気バイパス弁52のコイルへの通電開始から駆動電流値が定常値Iに達するまで、駆動電流値を積算した積算電流値AWをRAMから読み出し、この積算電流値AWが積算閾値S以下であるか否かを判定する。つまり、ECU80は、吸気バイパス弁52が正常に動作して、閉弁状態から開弁状態になったか否かを判定する。
そして、積算電流値AWが積算閾値S以下であると判定した場合、つまり、吸気バイパス弁52が正常に動作して、閉弁状態から開弁状態になったと判定した場合には(S116:YES)、ECU80は、後述のステップS118の処理に進む。従って、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)が閉固着している旨を表すABV閉固着フラグは、「OFF」に設定された状態が維持される。
一方、積算電流値AWが積算閾値Sよりも大きい値であると判定した場合、つまり、吸気バイパス弁52が閉固着していると判定した場合には(S116:NO)、ECU80は、ステップS117の処理に進む。ステップS117において、ECU80は、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)が閉固着している旨を表すABV閉固着フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度、RAMに記憶した後、ステップS118の処理に進む。
ステップS118において、ECU80は、駆動電流値を積算した積算電流値AWをRAMから読み出し、この積算電流値AWに「0」を代入して初期化し、再度RAMに記憶する。また、ECU80は、吸気バイパス弁52のコイルへの通電時間である開弁時間TSをRAMから読み出し、この開弁時間TSに「0」を代入して初期化し、再度RAMに記憶した後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻る。
[フェイルセーフ処理]
次に、上記ステップS11において、ECU80が実行する「フェイルセーフ処理」のサブ処理について図10~図13に基づいて説明する。図10に示すように、先ず、ステップS211において、ECU80は、第1フェイルセーフフラグをRAMから読み出し、「ON」に設定されているか否か、つまり、エンジン10が「ツイン切替モード」の動作状態において、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)が閉固着しているか否かを判定する。
そして、第1フェイルセーフフラグが「ON」に設定されている、つまり、エンジン10が「ツイン切替モード」の動作状態において、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)が閉固着していると判定された場合には(S211:YES)、ECU80は、ステップS212の処理に進む。ステップS212において、ECU80は、後述の「第1フェイルセーフ処理」のサブ処理(図11参照)を実行した後、当該サブ処理を終了してメインフローチャートに戻り、当該故障診断処理を終了する。
一方、上記ステップS211で第1フェイルセーフフラグが「OFF」に設定されていると判定された場合には(S211:NO)、ECU80は、ステップS213の処理に進む。ステップS213において、ECU80は、EEPROMから第2フェイルセーフフラグを読み出し、「ON」に設定されているか否か、つまり、エンジン10が「シングル切替モード」の動作状態において、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)が閉固着しているか否かを判定する。
そして、第2フェイルセーフフラグが「ON」に設定されている、つまり、エンジン10が「シングル切替モード」の動作状態において、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)が閉固着していると判定された場合には(S213:YES)、ECU80は、ステップS214の処理に進む。ステップS214において、ECU80は、後述の「第2フェイルセーフ処理」のサブ処理(図13参照)を実行した後、当該サブ処理を終了してメインフローチャートに戻り、当該故障診断処理を終了する。
一方、上記ステップS213で第2フェイルセーフフラグが「OFF」に設定されていると判定された場合には(S213:NO)、ECU80は、当該サブ処理を終了してメインフローチャートに戻り、上記ステップS12以降の処理を実行する。
[第1フェイルセーフ処理]
次に、第1フェイルセーフ処理のサブ処理について図11及び図12に基づいて説明する。図11に示すように、先ず、ステップS311において、ECU80は、エンジン10を「シングルターボモード」で動作するように設定した後、ステップS312の処理に進む。具体的には、ECU80は、排気切替弁53と吸気切替弁51と吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)に閉弁の制御信号を出力して、排気切替弁53と吸気切替弁51と吸気バイパス弁52を全て「閉弁状態」に設定して固定する。
続いて、ステップS312において、ECU80は、主可変ノズル機構57の可変ノズル57Aを全開に設定した後、ステップS313の処理に進む。これにより、図2に示す動作領域マップにおいて、エンジン回転数及び要求トルク(燃料噴射量)によって定まる動作点がツインターボモードであっても、可変ノズル57Aが全開に設定されているため、高速走行時において、主タービン21Aの過回転による破損や焼き付き等の二次故障を回避することが可能となる。
そして、ステップS313において、ECU80は、大気圧センサ75からの検出信号に基づいて、大気圧P1を検出して、RAMに記憶した後、ステップS314の処理に進む。ステップS314において、ECU80は、エンジン回転数検出装置28によってエンジン回転数を検出してRAMに記憶した後、ステップS315の処理に進む。
ステップS315において、ECU80は、検出した大気圧P1とエンジン回転数との組み合わせに応じた燃料の噴射量制限値をEEPROMに予め記憶する出力制限マップから読み出し、RAMに記憶する。そして、ECU80は、各燃料噴射装置15L、15Rから噴射する燃料噴射量が噴射量制限値を超える場合には、当該噴射量制限値になるように設定した後、ステップS316の処理に進む。
ここで、出力制限マップの一例について図12に基づいて説明する。図12に示すように、出力制限マップは、横軸のエンジン回転数と縦軸の大気圧の各組み合わせに対応する燃料の噴射量制限値が記憶されている。出力制限マップにおいて、エンジン回転数が、例えば、2200(rpm)以上の場合には、燃料の噴射量制限値(mm3/ストローク)が増加しないように設定されている。また、出力制限マップにおいて、大気圧P1が低くなるほど、燃料の噴射量制限値が少なくなるように設定されている。
ここで、大気圧P1が低くなるに従って、つまり、高地では、等ゲージ圧でも主コンプレッサ21Bの入口側圧力に対する主コンプレッサ21Bの出口側圧力の圧力比が、平地の場合よりも高くなる。例えば、平地において、主コンプレッサ21Bの入口側圧力が100(kPa)で、出口側圧力が200(kPa)の場合は、圧力比は、200/100=2である。一方、高地において、主コンプレッサ21Bの入口側圧力が70(kPa)で、出口側圧力が170(kPa)の場合は、圧力比は、170/70=2.43である。
その結果、大気圧P1が低くなるに従って、燃料の噴射量制限値が少なくなるように制御することによって、等ゲージ圧であっても、主ターボチャージャ21のターボ過回転や、主タービン21Aの入口側排気圧が基準圧力を超えないように出力制限を行うことができる。
その後、図11に示すように、ステップS316において、ECU80は、警告ランプ72を点灯させて、不図示のディスプレイに「サービス工場へ行ってください!!」等と表示し、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)に閉固着の故障が発生している旨の警告報知を行った後、当該サブ処理を終了する。これにより、ユーザは、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)に閉固着の故障が発生している旨を迅速に認識することができる。
[第2フェイルセーフ処理]
次に、第2フェイルセーフ処理のサブ処理について図13に基づいて説明する。図13に示すように、先ず、ステップS321において、ECU80は、エンジン10を「ツインターボモード」で動作するように設定した後、ステップS322の処理に進む。具体的には、ECU80は、排気切替弁53と吸気切替弁51に開弁の制御信号を出力して、排気切替弁53と吸気切替弁51を「開弁状態」に設定して固定する。また、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)に閉弁の制御信号を出力して、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)を「閉弁状態」に設定して固定する。
続いて、ステップS322において、ECU80は、主可変ノズル機構57の可変ノズル57Aを全開に設定すると共に、副可変ノズル機構58の可変ノズル58Aを全開に設定した後、ステップS323の処理に進む。これにより、図2に示す動作領域マップにおいて、エンジン回転数及び要求トルク(燃料噴射量)によって定まる動作点がシングルターボモードであっても、各可変ノズル57A、58Aが全開に設定されているため、主タービン21Aと副タービン22Aの過回転による破損や焼き付き等の二次故障を回避することが可能となる。また、エンジン10が低速・中負荷以上で動作しても、動作性能を確保しつつ、サージの発生を防止することができる。
そして、ステップS323において、ECU80は、警告ランプ72を点灯させて、不図示のディスプレイに「サービス工場へ行ってください!!」等と表示し、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)に閉固着の故障が発生している旨の警告報知を行った後、当該サブ処理を終了する。これにより、ユーザは、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)に閉固着の故障が発生している旨を迅速に認識することができる。
ここで、ECU80は、弁切替制御部、積算部、故障診断部、規定検出時間設定部、閾値設定部、積算判定部の一例として機能する。吸気バイパス弁52は、バイパス電磁弁の一例として機能する。電流センサ77は、電流値取得装置の一例として機能する。バッテリ電圧センサ78Aは、バッテリ電圧検出装置の一例として機能する。
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る内燃機関の制御装置1では、ECU80は、ツイン切替モードと、シングル切替モードと、の2つの過給モードの状態のそれぞれにおいて、吸気バイパス弁52(バイパス電磁弁)の切り替え開始から規定検出時間TBに達するまでの駆動電流値を所定時間毎に(例えば、約0.01~0.1ミリ秒毎に)取得して積算する。そして、駆動電流値を積算した積算電流値AWが積算閾値S以下の場合には、ECU80は、吸気バイパス弁52が正常に動作していると判定する。一方、駆動電流値を積算した積算電流値AWが積算閾値Sより大きい値の場合には、ECU80は、吸気バイパス弁52が閉固着していると判定する。
これにより、ECU80は、吸気バイパス弁52間のコイルのインダクタンス等のバラツキにより発生する逆起電力の誤差を吸収して、吸気バイパス弁52の閉固着の故障を確実に検出することができる。その結果、吸気バイパス管36に設けられた吸気バイパス弁52の閉固着の検出精度を向上させて、故障診断の誤判定を抑制することができる。
また、ECU80は、バッテリ電圧センサ78Aによって検出したバッテリ電圧に対応する規定検出時間TBと積算閾値Sを、EEPROMに予め記憶する規定検出時間マップM1と積算閾値マップM2からそれぞれを取得して設定する。これにより、吸気バイパス管36に設けられた吸気バイパス弁52の閉固着の検出精度を更に向上させて、故障診断の誤判定を更に効果的に抑制することができる。
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形、追加、削除が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。尚、以下の説明において上記図1~図13の前記実施形態に係るエンジン10等と同一符号は、前記実施形態に係るエンジン10等と同一あるいは相当部分を示すものである。
(A)例えば、上記特許文献1に記載された内燃機関の制御装置におけるエアバイパスバルブにおいても、閉弁状態から開弁状態へ切り替える際に、コイルへの通電開始から駆動電流値が定常値に達するまで所定時間(例えば、約0.01~0.1ミリ秒)毎に、駆動電流値を検出して積算(積分)するようにしてもよい。そして、積算した(積分した)積算電流値AWが積算閾値S以下であれば、エアバイパスバルブは凍結しておらず、正常に動作したと判定するようにしてもよい。
一方、積算した(積分した)積算電流値AWが積算閾値Sよりも大きい場合には、エアバイパスバルブは凍結しており、閉固着していると判定するようにしてもよい。これにより、エアバイパスバルブ間のコイルのインダクタンス等のバラツキにより発生する逆起電力の誤差を吸収して、エアバイパスバルブの閉固着の故障を確実に検出することができる。その結果、エアバイパス通路に設けられたエアバイパスバルブの閉固着の検出精度を更に向上させて、故障診断の誤判定を効果的に抑制することができる。
(B)また、例えば、吸気バイパス管36は、一端が副コンプレッサ22Bの吐出口と吸気切替弁51との間で、吸気管32Rに接続されていると共に、他端が、吸気流量検出装置6と副コンプレッサ22Bの吸入口との間で、吸気管31Rに接続されているように構成してもよい。これにより、ECU80が、吸気バイパス弁52を開弁状態にしても、副コンプレッサ22Bへの高圧の吸気の流入を防止することができ、副ターボチャージャ22の故障を防止することができる。
(C)前記実施形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。