JP7412714B1 - 金属粉末及び該金属粉末の製造方法並びに金属ペースト - Google Patents

金属粉末及び該金属粉末の製造方法並びに金属ペースト Download PDF

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Abstract

【課題】接合・電極形成・封止等の各種プロセスに供される金属粉末及び金属ペーストに関し、より高品位なもの及びその製造方法を提供する。【解決手段】平均粒子径が0.1μm以上0.4μm以下であり、純度99.9質量%以上のAu、Ag、Cuの金属又はこれらの合金からなる金属粉末において、短径aと長径bとの比(b/a)が3以上である非球形の金属粉末の粒子数基準の存在比率が1%以下である。また、好ましい態様として、0.5μm以上の粒子径の粗大粒子の粒子数基準の存在比率が10%以下である。かかる金属粉末の製造方法としては、金属コロイド合成工程と金属コロイド粒子を造粒して金属粉末とする金属粉末造粒工程とからなる湿式還元法において、金属コロイド合成工程及び金属粉末造粒工程で使用される第1・第2の分散剤として、所定範囲の炭素数のアルキル基を有する界面活性剤を使用することが好ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、半導体デバイス、半導体素子等のエレクトロニクス分野における電極・配線形成、接合、封止等の用途に供される金属粉末及びその製造方法に関する。特に、非球状粒子の存在比率が低減された金属粉末とその製造方法に関する。
近年、電気・電子部品、半導体デバイス、半導体素子、パワーデバイス、MEMS等の各種用途における、素子接合や、電極・配線の形成、気密封止の各プロセスに、金属ペーストの利用が拡大している。かかる用途の金属ペーストについて、本願出願人は、高純度(99.9質量%以上)の金属(金、銀、パラジウム、銅等)からなり、サブミクロンオーダー(1μm以下)の金属粉末を有機溶剤に混合した金属ペーストが前記用途に有用であることを従来から提案している。(例えば、特許文献1~3)。
例えば、半導体デバイスの製造工程において、半導体チップを基材(基板やICドライバ等)に接合する際のダイボンディングやフリップチップ接合等の接合プロセスでは、フォトエッチング法等を利用して基材上に所望の形状・パターンが形成されるように金属ペーストを塗布する。そして、前記金属ペーストを乾燥して適宜に仮焼結してバンプ形成し、このバンプ上に半導体チップを載置する。その後、加熱・加圧することでバンプを構成する金属粉末が焼結し、接合媒体である金属粉末焼結体となる。このような接合プロセスにおいて、本願出願人による金属ペーストは、上記のように金属粉末の純度と平均粒子径を規定することによって低温焼結性を確保し、接合プロセスの低温化に寄与している。金属ペーストに適用される金属粉末の焼結温度は、金属粉末の粒径と相関関係を有し、粒径が粗大となるに従って焼結温度が上昇する傾向がある。また、金属粉末の純度は、焼結の際の金属粉末の塑性変形能に影響を及ぼして、焼結後の金属粉末焼結体の緻密性に影響を及ぼす。そのため、平均粒子径を規定しつつ高純度の金属粉末を適用することで、低温焼結性を確保すると共に、導電体である接合媒体の抵抗上昇を抑制する。
そして、このように平均粒子径を制御しながら金属粉末を製造する方法として、湿式還元法に基づく方法も公知となっている。例えば、特許文献4の湿式還元法による金属粉末(金粉末)の製造方法では、金の超微粒子(コロイド粒子)を核粒子として分散させた溶液に還元剤と金属塩を供給し、核粒子の表面上に金を析出させて金粉末としている。この方法では、核粒子の粒径と個数、及び供給する金化合物溶液の濃度や量の調整により、サブミクロンオーダーの金粉末を製造が可能である。
特許第5613253号明細書 特開2013-206765号公報 特開2021-025091号公報 特開平9-20903号公報
上記のように、これまでに明らかとなった金属ペースト及び金属粉末は、低温焼結性や電気導電性(低抵抗性)といった基本的な要求特性を具備する。もっとも、エレクトロニクス分野における金属ペーストの利用が拡大している状況においては、より高品位・多様性に富むものも求められる。例えば、金属ペーストを塗布したときの金属粉末の挙動は、形成されるバンプ・接合部の電気抵抗等の特性に直接影響を与えるものではないが重要な事項といえ、検討すべき点が多い。そこで本発明は、エレクトロニクス分野での接合・電極形成・封止等の各種プロセスに供される金属粉末及び金属ペーストについて、より高品位なもの、及びその製造方法について明らかにする。
上記課題に関し、本発明者等は湿式還元法により製造される金属粉末の構成として、以下の理由から、金属粉末の粒径分布の改善について検討することとした。即ち、低温接合が要求されるエレクトロニクス分野の接合プロセスにあっても、金属粉末の平均粒子径の大小のみが評価されるべきではない。本発明者等の検討では、湿式還元法により製造される金属粉末は、その大部分が球状で整った形状の金属粒子であるが、一部に非球形(ロッド状、プレート状、矩形状等)の粒子が含まれていることがある。こうした異形粒子は、平均粒子径には影響を及ぼすことはないし、焼結温度等への影響も少ないと考えられる。但し、周囲の球状粒子と異なる形状の非球形粒子の存在比率が大きくなると、金属粉末全体の電子顕微鏡撮影像において外観異常と判定されることとなる。そして、外観上の問題に加え、金属ペーストの塗布・焼結の過程で金属粉末の挙動に影響を及ぼす可能性も生じる。例えば、ホール・トレンチを有する基材へ金属ペーストを塗布する際、異形粒子がホール・トレンチへの金属粉末の充填を妨げることがある。また、金属粉末により形成される電極やバンプ等の形状への影響やロッド状の粒子がバンプ等をブリッジすることによる不適合の可能性もある。
以上の検討から、本発明者等は、より高品位の金属ペースト・金属粉末の構成要素として、非球形粒子の生成を抑制して球状粒子で構成されていることが挙げられる。そこで本発明者等は、かかる方針のもと、従来の湿式還元法に基づく金属粉末の製造方法について、原料や製造条件等の最適化を行うこととした。そして、その結果として、非球形粒子の存在比率が適切に抑制された金属粉末を見出し本発明に想到した。
上記課題を解決する本発明は、平均粒子径が0.1μm以上0.4μm以下であり、純度99.9質量%以上のAu、Ag、Cuの金属又はこれらの合金からなる金属粉末において、短径aと長径bとの比(b/a)が3以上となる非球形の金属粉末の粒子数基準の存在比率が1%以下であることを特徴とする金属粉末である。以下、本発明に係る金属粉末及びその製造方法、並びにこの金属粉末を適用する金属ペーストについてより詳細に説明する
A.本発明に係る金属粉末の構成
上記のとおり、本発明に係る金属粉末は、高純度(99.9質量%以上)のAu、Ag、Cuの金属又はこれらの合金からなる。金属粉末の構成金属をAu、Ag、Cuとするのは、微細粉末とすることで比較的低温で焼結可能な金属であると共に、いずれも良好な導電性を有する金属だからである。金属粉末は、上記金属の合金からなるものでも良く、Au、Ag、Cuが相互に合金化した合金やAu、Ag、Cuを主成分(80質量%以上)とする合金からなる金属粉末が適用できる。特に好ましいのは、Auである。Auは、比較的軟質で焼結の際の塑性変形で緻密な焼結体を形成でき、導電性に優れることから低抵抗の接合部・バンプ等を形成できる。
金属粉末の純度を99.9質量%以上とするのは、不純物を含む低純度の金属は硬度が高くなり、接合材料等になる焼結体を形成する際の塑性変形が進行し難くなるからである。尚、ここでの純度とは、Au、Ag、Cuのいずれかの金属からなる金属粉末については当該金属元素濃度であり、Au、Ag、Cuの合金からなる金属粉末ついては、当該金属及び合金元素の濃度である。
金属粉末の平均粒子径を0.1μm以上0.4μm以下とするのは、金属粉末の焼結温度の最適化を図るためである。金属粉末の焼結温度は、その平均粒子径の増大と共に上昇する傾向がある。本発明では、特に低温焼結性が良好な範囲として、平均粒子径の上限を0.4μmとする。一方、0.1μmを下限とするのは、この値未満の平均粒子径の金属粉末は、ペーストとしたときに凝集しやすくなるからである。そして、本発明においては、平均粒子径の上限値(0.4μm)を超えた0.5μm以上の粒子径の金属粉末を粗大粒子と判定する。
尚、本発明における金属粉末の平均粒子径は、個数平均粒子径(M)である。金属粉末の平均粒子径の測定は、顕微鏡(光学顕微鏡、電子顕微鏡(SEM、TEM)等)により金属粉末を観察及び撮影し、その写真・画像中の金属粉末を任意に複数選定して粒子径を測定する。この観察・粒子径測定においては、複数の観察領域(5箇所以上が好ましい)を設定し、各領域で複数個(N=100個以上が好ましい)の金属粉末を観察し測定するのが好ましい。観察倍率は、10000倍以上が好ましく、より好ましくは20000倍以上30000倍以下とする。金属粉末の粒子径の測定は、写真・画像中の個々の金属粉末の粒子径を測定しても良いし、画像解析ソフトウエア等の計算機ソフトウエアを使用しても良い。粒子径は、画像中の粒子の長軸及び短軸から算出する二軸法による粒子径や、画像中の粒子に外接する長方形の辺の長さによるフェレ径(キャリパー径)等を採用することができる。フェレ径については、最小フェレ径、最大フェレ径、平均フェレ径の少なくともいずれかを求めるのが好ましい。
そして、本発明では、非球形粒子の存在比率が所定の値以下となる。本発明では、粒子の短径aと長径bとの比(b/a)が3以上となる金属粉末を非球形粒子として定義する。本発明に係る金属粉末は、非球形粒子の粒子数基準の存在比率が1%以下とする。1%という僅かな存在比率であっても非球形粒子は、金属粉末全体の外観上の不具合に加え、金属ペーストの塗布・焼結の過程での問題を生じ得る。短径aと長径bとの比の測定による非球形粒子の判定は、上記した金属粉末の粒子径の測定及び平均粒子径の測定に合わせて行うことができる。このとき、金属粉末の粒子径の算出方法として二軸法を適用する場合、測定された短軸及び長軸をそれぞれ短径a及び長径bとする。また、フェレ径を粒子径とする場合には、最小フェレ径及び最大フェレ径それぞれ短径a及び長径bとする。
また、本発明に係る金属粉末は、非球形粒子と共に粗大な金属粉末の存在比率も制限されていることが好ましい。平均粒子径が規定されている本発明の金属粉末においては、当然に当該平均値以上の粒子径の金属粉末も含まれてるので、粗大粒子の存在を完全に排除することは困難である。しかし、平均粒子径よりかけ離れて粗大な金属粉末の存在比率が大きくなると焼結性に影響を及ぼし得る。よって、金属粉末の品位に影響を及ぼし得る要因としては、異形粒子と共に粗大粒子の存在も考慮することが好ましい。本発明においては、粗大粒子とは0.5μm以上の粒子であり、かかる粗大粒子の粒子数基準の存在比率が10%以下であることが好ましい。尚、粗大粒子の粒子径の算出は、上記と同じ方法が適用できる。
また、本発明に係る金属粉末は、後述する湿式還元法による本発明の製造工程を経たものである場合、表面に分散剤である界面活性剤に由来する化合物・誘導体が結合していることがある。この界面材活性は、金属粉末を金属ペーストとする前の段階から粉末表面に存在している。具体的には、炭素数が14以上18以下のアルキル基を有するアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩が、金属粉末表面の少なくとも一部に結合していることがある。これらの化合物は、金属粉末の特性に影響を及ぼすものではないが、その製造過程(後述する金属コロイド合成工程)で所定の界面活性剤が適用されていることを示す。金属粉末にこれらの界面活性剤が結合している場合、その量は質量比で0.01%以上5%以下が好ましく、0.03%以上3%以下がより好ましい。過剰の化合物の付着は、その後の金属粉末の焼結に影響を生じさせる可能性があるからである。
B.本発明に係る金属粉末の製造方法
上述したように、本発明者等は、従来よりも高品質の金属粉末を見出すという課題に対し、その製造方法である湿式還元法の改良を図っている。湿式還元法による金属粉末の製造方法では、金属のコロイド粒子を核粒子として分散させた溶液に還元剤と金属塩を供給し粒成長させて金属粉末を形成(造粒)している。また、金属コロイド粒子の合成も、基本的に湿式還元法に基づき、原料となる金属塩を溶媒中で還元剤と混合して金属を還元析出させて金属コロイド粒子とする。そして、金属コロイド粒子の合成工程では、金属塩と還元剤と共に分散剤を混合する。分散剤は、還元析出した金属コロイド粒子の表面に結合し、粒子の過剰な凝集による粗大化を抑制する添加剤である。本発明においては、各種金属への結合性等を考慮し、分散剤としてアルキル基を有する界面活性剤(カチオン界面活性剤)を適用する。
湿式還元法による金属粉末の製造方法において、金属コロイド合成工程で分散剤は必須の添加剤であり、還元析出して生成した金属コロイド粒子と結合し、その状態でその後の金属粉末造粒工程に供されることとなる。また、金属粉末造粒工程でも、成長過程の金属粉末の凝集を抑制する上で、金属コロイド合成工程でしようした分散剤と同じ又は異なる分散剤を添加することが多い。更に、後述するように、金属コロイド粒子の合成工程で得られた反応液は、その全部又は一部を使用されることが想定されている。この場合、金属コロイド合成工程で金属コロイド粒子と結合しなかった分散剤が、金属粉末造粒工程の反応液中に残留することとなる。
従って、金属のコロイド粒子の合成工程及び金属粉末の造粒工程の両工程の反応液には分散剤が含まれているといえる。本発明者等は、金属コロイド合成工程及び金属粉末造粒工程のそれぞれの工程における、分散剤である界面活性剤のアルキル基の炭素数が金属コロイド粒子及び金粉末に与える影響について検討し、以下の(i)、(ii)の知見を得ている。
(i)金属コロイド合成工程において、アルキル基の炭素数が小さい界面活性剤の使用の下では、粗大な金属コロイド粒子が生成されやすく、粒度分布が広くする傾向がある。
そして、使用する界面活性剤のアルキル基の炭素数が大きくなるに従って、金属コロイド粒子の粒子径は小さくなる傾向がある。また、炭素数の増大と共に粒径分布が狭くなり、粒径のばらつきが少ない金属コロイド粒子が生成される。生成する金属コロイド粒子の粒子径が小さいということは、その粒子数は増加することとなる。小粒径の金属コロイド粒子が多数生成することにより、その後の金属粉末造粒工程で金属コロイド粒子が触媒作用を有効に発揮し、均一な粒成長を促して良好な形状の金属粉末を形成すると考えられる。
(ii)一方、金属粉末造粒工程でアルキル基の炭素数が大きい界面活性剤を使用すると、金属粉末の形状に影響を及ぼして非球形粒子の成長が促進される。
これに対して、アルキル基の炭素数が小さい界面活性剤が金属粉末造粒工程で使用されても、金属粉末の粒子形状に及ぼす影響は少ない。
本発明に係る金属粉末は、非球形粒子の存在比率が低減されており、好ましくは粗大粒子の存在比率も低減されている。そのような金属粉末の製造のためには、粒度分布のばらつきを低減しながら、非球形粒子の成長を抑制することが必要となる。上記の2つの知見を参照すると、金属コロイド合成工程では炭素数の大きいアルキル基を有する界面活性剤を分散剤とし、金属粉末造粒工程で炭素数の小さいアルキル基を有する界面活性剤を分散剤として適用することが好ましいと考えられる。
本発明者等は、上記考察に基づき、粒度分布の改善及び粗大粒子の生成抑制の作用と、非球形粒子の生成抑制の作用とを区分する界面活性剤のアルキル基の炭素数の閾値として、炭素数14が好適であることを見出した。そして、金属コロイド合成工程では炭素数14以上のアルキル基を有する界面活性剤を必須の分散剤とする一方、金属粉末造粒工程では、炭素数14未満のアルキル基を有する界面活性剤が含まれるようにすることで、本発明に係る金属粉末を製造することができるとした。
即ち、本発明に係る金属粉末の製造方法は、第1の分散剤を含む第1の溶媒中で、金属塩と還元剤とを反応させることで金属コロイド粒子を合成する金属コロイド合成工程と、前記金属コロイド合成工程で合成した前記金属コロイド粒子を含む第2の溶媒に、金属塩と還元剤と任意の第2の分散剤を添加し、前記金属コロイド粒子を金属粉末とする金属粉末造粒工程と、を含む金属粉末の製造方法であって、前記金属コロイド合成工程の第1の溶媒は、前記第1の分散剤として、少なくとも炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤を含み、前記金属粉末造粒工程の第2の溶媒は、前記第2の分散剤として炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤を含む方法である。以下、本発明に係る金属粉末の製造方法の各工程について説明する。
(a-1)金属コロイド合成工程
上記のとおり、金属コロイド合成工程は、金属粉末の核となる金属コロイド粒子を湿式還元法に基づき合成する工程である。金属コロイド合成工程では、第1の溶媒中で分散剤の共存下で金属塩と還元剤とを反応させて金属を還元析出する。原料となる金属塩としては、Auについては、塩化金酸塩、亜硫酸金、シアン化金等が挙げられる。また、Agについては、塩化銀、硝酸銀、酢酸銀が、Cuについては、塩化銅、硝酸銅、硫酸銅が挙げられる。また、還元剤としては塩化ヒドロキシルアンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボロン、クエン酸三ナトリウム二水和物等を適用することができる。これらは溶液の形態で混合することができる。第1の溶媒は、金属塩、還元剤、分散剤を溶解できる溶媒であれば制限されるところではない。好ましくは極性溶媒が使用され、具体的には水又はアルコール等の有機溶媒、若しくは水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい溶媒である。
そして、金属コロイド合成工程においては、溶媒(反応液)中に第1の分散剤として、炭素数が14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤を含む分散剤が必須的に含まれている。炭素数14未満のアルキル基を有する界面活性剤は、金属コロイド合成工程で金属コロイド粒子の粒子径のばらつきを大きくし、粒子径の粗大化にも繋がる。かかる金属コロイド粒子を金属粉末造粒工程で成長させると、非球状の金属粉末の存在比率を高くするおそれがある。一方、金属コロイド合成工程で炭素数18を超えるアルキル基を有する界面活性を分散剤にすると、当該分散剤が金属粉末造粒工程の反応液に存在した場合、ロッド状粒子等の非球形粒子の成長を促し、非球形粒子の存在比率を高める。これらの理由から、本発明では、まず、金属コロイド合成工程における第1の分散剤として、炭素数が14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤を含む分散剤を適用する。この第1の分散剤の具体的な構成については、後に第2の分散剤の構成と共に詳細に説明する。
尚、金属コロイド粒子合成工程の反応液には、第1の分散剤(炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤)が含まれていれば良く、それのみでなく炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤が存在していても良い。
第1の溶媒に金属塩と還元剤と第1の分散剤とを混合することで金属コロイド粒子が合成される。これらの混合の順序は特に限定されず、例えば、分散剤と還元剤との混合溶液に金属塩(溶液)を添加する等ができる。
金属コロイド合成工程における好ましい反応液の構成としては、反応液に含まれる金属濃度を0.01g/L以上1g/L以下とするのが好ましく、0.01g/L以上0.1g/L以下とするのがより好ましい。反応液の金濃度を低くすることで均一な金属コロイド粒子を形成できるが、金属濃度が低過ぎるとコロイド生成反応が進行し難くなることから前記範囲が好ましい。また、還元剤の量は、反応液中の金属のモル濃度に対して2.5倍以上10倍以下とするのが好ましい。還元剤濃度については、高濃度とすることで均一な金属コロイド粒子が合成される傾向があるものの、過剰に高濃度とすると未反応の還元剤が生じて粒子の凝集を引き起こすおそれがある。そして、分散剤の濃度は、0.1g/L以上10g/L以下とするのが好ましい。0.1g/L未満では、分散剤としての作用が発揮されず、10g/Lを超えても分散剤としての作用に影響はない。分散剤の濃度は、1g/L以上10g/L以下とするのがより好ましい。
また、金属コロイド粒子合成の反応条件については、反応温度は80℃以上90℃以下とするのが好ましい。80℃未満では金属コロイド粒子の生成反応が進行し難くなり、90℃を超えても反応性に変化はなく、反応液の蒸発が顕著になる等の製造上の問題が生じるおそれがある。
(a-2)金属粉末造粒工程
金属粉末造粒工程は、上記金属コロイド合成工程で合成した金属コロイド粒子を成長させて金属粉末を生成する工程である。金属粉末造粒工程では、金属コロイド粒子を含む第2の溶媒に、金属塩と還元剤を添加して金属コロイド粒子を成長させて金属粉末を造粒する。この工程で添加する金属塩及び還元剤は、上記した金属コロイド合成工程で使用する金属塩及び還元剤として同じものが使用できる。但し、同じ種類(組成)の金属塩及び還元剤でなくともよい。
金属粉末造粒工程で金属コロイド粒子を第2の溶媒に分散させる際には、金属コロイド合成工程で合成した反応液をそのまま全部を金属粉末造粒工程で使用しても良い。また、金属コロイド合成工程で合成した反応液の一部を抜き出し、抜き出された反応液を金属粉末造粒工程に供しても良い。この場合、第2の溶媒は第1の溶媒と同じものとなる。
また、金属コロイド合成工程で合成した反応液の一部又は全部を使用しつつ、これに新たな溶媒を追加的に添加しても良い。こうした溶媒の追加添加は、金属塩、還元剤等の濃度調整や、反応液の取扱い性の確保のための液量調整等を目的として行うことができる。この場合に添加する溶媒としては、上記第1溶媒と同種の溶媒が使用でき、第1溶媒と同じ溶媒を使用しても良い。ここで添加した溶媒と第1の溶媒との混合溶媒が第2の溶媒となる。ここで第1の溶媒と同じ溶媒を添加することも当然可能である。更に、金属コロイド合成工程で合成した反応液から、金属コロイド粒子のみを分離回収し、この金属コロイド粒子を新たな溶媒に分散させても良い。この場合の第2の溶媒も、第1溶媒と同じく、水、アルコール等の極性溶媒が好ましい。
そして、金属粉末造粒工程では、第2の溶媒中に、第2の分散剤として炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤が含まれていることを要する。上記のとおり、炭素数が大きいアルキル基を有する界面活性剤は、非球形粒子の成長を促す作用があるため、炭素数14を超える界面活性剤は積極的に使用されない。但し、金属コロイド粒子を金属粉末に成長させる過程で分散剤は共存していることが好ましい。炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤であれば、非球形粒子の成長を促進することなく、金属粉末の分散剤として作用することから、この工程における必須の分散剤(第2の分散剤)とした。
もっとも、金属粉末造粒工程で、第2の分散剤(炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤)の添加することは必須ではない。金属粉末造粒工程で金属コロイド合成工程の反応液の一部又は全部を使用する場合であって、その反応液に炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤が含まれている場合には、当該界面活性剤が第2の分散剤として作用する。この場合には、第2の分散剤の添加操作は不要になる。特に、後述する混合分散剤を使用する場合には、第2の分散剤の添加操作が不要となる場合がある。本発明では、金属粉末造粒工程で反応液に、炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤が含まれているという状態を要件とする。この第2の分散剤の詳細については、第1の分散剤と共に後に詳説する。
また、金属粉末造粒工程の反応液には、第2の分散剤(炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤)が含まれていれば良く、それのみでなく炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤が存在していても良い。
以上説明した第2の溶媒に金属塩と還元剤と任意の第2の分散剤を混合することで金属粉末が生成される。これらの混合の順序は特に限定されない。金属粉末造粒工程における反応液の好ましい構成は、金属濃度は10g/L以上150g/L以下とするのが好ましい。金属粉末造粒工程で添加する金属塩は、微細な金属コロイド粒子を所定の平均粒子径の金属粉末に成長させるための前駆体である。よって、金属粉末造粒工程における金属濃度は、製造目的の金属粉末の平均粒子径に応じて設定できる。但し、過剰の金属濃度は、不均一な核生成を生じさせるおそれがあることから前記の範囲が好ましい。尚、金属粉末造粒工程の反応液における金属濃度とは、金属粉末造粒工程で添加する金属塩中の金属の質量と核となる金属コロイド粒子の質量の合計とする。また、還元剤量は、反応液中の金属のモル濃度に対して2.5倍以上5倍以下で混合することが好ましい。還元剤が少な過ぎる場合、未反応の金属塩が残留するおそれがある。また、還元剤が多過ぎると、急激な反応になり易く、粒子径を制御しにくくなるだけでなく安全で安定した製造にも支障をきたすことがある。
そして、金属粉末造粒工程の反応液における分散剤の濃度は、反応液中の金属濃度に対して、1/80倍以上1/6倍以下とするのが好ましい。また、金属コロイド合成工程の反応液における分散剤の濃度値を基準とする場合には、それに対して1/50倍以上2倍以下とするのが好ましい。金属粉末造粒工程における分散剤は、粒子の凝集抑制の効果よりも粒度分布の維持にあり、分散剤の濃度が金属濃度を超える必要はない。この点において、金属コロイド合成工程における分散剤濃度とは相違する。但し、粒度分布の維持のためにはある程度の分散剤濃度は必要である。特に、金属粉末造粒工程では、微細な金属コロイド粒子をサブミクロンオーダーの金属粉末に成長させるために、相当量の金属塩を添加して金属濃度を高くしているので、分散剤の添加が好ましい。そして、本発明で特定する炭素数14以上16以下のアルキル基の界面活性剤は、非球形粒子・粗大粒子の抑制が可能であるので、金属粉末造粒工程での積極的な添加が許容される。これらの理由から、反応液中の分散剤濃度を前記範囲にすることが好ましい。
尚、金属粉末造粒工程の反応液における分散剤の濃度は、反応液に含まれる分散剤の全量を基準として算出され、金属コロイド粒子との結合の有無は問わない。
金属粉末造粒工程の反応温度は80℃以上90℃以下とするのが好ましい。その理由は、80℃未満では金属塩や還元剤の量等の条件が好適であっても未反応の金属塩が残ることがある。90℃以上の温度では、急激な反応になり易くなり、安定した金属粉末の製造に支障をきたすことがあるためである。
(b)第1、第2の分散剤の具体的構成
上記した通り、本発明に係る金属粉末の製造方法においては、金属コロイド合成工程と金属粉末造粒工程のそれぞれについて、反応液に必須的に含まれる第1、第2の分散剤(界面活性剤)のアルキル基の炭素数を特定する。
本発明において、アルキル基を有する界面活性剤として具体的に好ましいものとしては、カチオン界面活性剤であるアルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩が挙げられる。
第1の分散剤として好ましい界面活性剤としては、そのアルキル基の炭素数(14以上18以下)に基づくと、アルキルアミン塩としては、テトラデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数14)、ペンタデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数15)、ヘキサデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数16)、へプタデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数17)、オクタデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数18)や、テトラデシルアミン塩酸塩(アルキル基炭素数14)、ペンタデシルアミン塩酸塩(アルキル基炭素数15)、ヘキサデシルアミン塩酸塩(アルキル基炭素数16)、へプタデシルアミン塩酸塩(アルキル基炭素数17)、オクタデシルアミン塩酸塩(アルキル基炭素数18)等が挙げられる。また、第四級アンモニウム塩としては、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩(アルキル基炭素数14)ペンタデシルトリメチルアンモニウム塩(アルキル基炭素数15)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩(アルキル基炭素数16)、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム塩(炭素数17)、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩(炭素数18)等が挙げられる。
また、第2の分散剤として好ましい界面活性剤としては、そのアルキル基の炭素数(12以上14未満)に基づくと、アルキルアミン塩としては、ドデシルアミン酢酸塩(炭素数12)、トリデシルアミン酢酸塩(炭素数13)や、ドデシルアミン塩酸塩(炭素数12)、トリデシルアミン塩酸塩(炭素数13)等が挙げられる、また、第四級アンモニウム塩としては、ドデシルトリメチルアンモニウム塩(アルキル基炭素数12)、トリデシルトリメチルアンモニウム塩(アルキル基炭素数13)が挙げられる。
本発明において、金属コロイド合成工程の第1の溶媒が、炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤を含むとは、炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤の少なくともいずれかを含んでいれば良く、全てを含んでいる必要はない。前記炭素数の範囲内で複数種の界面活性剤を含んでいても良い。例えば、炭素数14のアルキル基の界面活性剤(テトラデシルアミン酢酸塩等)と炭素数16のアルキル基の界面活性剤(ヘキサデシルアミン酢酸塩等)の2種を含んでいても良い。同様の趣旨で、金属粉末造粒工程の第2の溶媒は、炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤の少なくともいずれかを含んでいれば良い。尚、第1、第2の分散剤に関する前記のアルキル基の炭素数の範囲について、好ましいのは、第1の分散剤では、炭素数14以上16以下であり、第2の分散剤では炭素数12である。
これらの第1、第2の分散剤(界面活性剤)の使用態様としては、金属コロイド合成工程で、上記の炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤を第1の分散剤として第1の溶媒に混合する。そして、金属粉末造粒工程で、炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤を第2の分散剤として第2の溶媒に添加することが挙げられる。
また、本発明において有用な分散剤の形態として、炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤と炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤とを混合した混合分散剤が挙げられる。そして、この混合分散剤を、金属コロイド合成工程のみ、若しくは金属コロイド合成工程及び金属粉末造粒工程の双方で使用することができる。これまで述べたとおり、金属コロイド合成工程の反応液の一部又は全部を金属粉末造粒工程に供するとき、金属コロイド合成工程の分散剤も金属粉末造粒工程に含まれることとなる。金属コロイド合成工程では、炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤を必須的に添加するが、この段階における分散剤が炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤を含んでいれば、これが金属粉末造粒工程の反応液に含まれることとなり有効に作用する。これにより、金属粉末造粒工程での分散剤の添加を不要とすることができる。また、金属粉末造粒工程で分散剤を添加する場合でも、工程毎に分散剤を使い分ける必要がなくなり薬液管理の便宜を図ることができる。
もっとも、金属粉末造粒工程では、炭素数の多いアルキル基を有する界面活性剤は、非球形粒子の成長を促すおそれがあるので、混合分散剤の組成を適切にすることが好ましい。具体的には、混合分散剤は、炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤を質量%で50%以上80%以下含み、炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤を質量%で20%以上50%以下含むものが好ましい。混合分散剤は、各炭素数範囲の界面活性剤が及ぼす影響を考慮したとき、炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤の割合を高くすることが好ましい。
尚、混合分散剤は、炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤及び炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤以外に、炭素数10以上12未満のアルキル基を有する界面活性剤を含むことができる。炭素数10以上12未満のアルキル基を有する界面活性剤は、金属コロイド合成工程では好ましくない分散剤であるが、金属粒子造粒工程では分散剤として機能し得る。また、炭素数10以上12未満のアルキル基を有する界面活性剤は、各種溶媒への溶解度が高く、金属ペースト焼成の際により低温で消失しやすい。これらから、炭素数10以上12未満のアルキル基を有する界面活性剤は、混合分散剤の溶媒への溶解性や揮発性を調整する上で有用であり、混合分散剤を使用する場合に限って分散剤として使用できる。混合分散剤が、炭素数10以上12未満のアルキル基を有する界面活性剤を含むとき、その含有量は質量%で10%以下とすることが好ましい。
更に、上記の混合分散剤においては、炭素数12以上14未満のアルキル基を有する界面活性剤を質量%で50%以上80%以下含み、炭素数14以上16以下のアルキル基を有する界面活性剤を20%以上50%以下のものがより好ましい。炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤中でも、炭素数が18以上のアルキル基を有する界面活性剤は、金属粉末造粒工程において非球形粒子を成長させる傾向があるので、その含有量を制限するためである。
尚、混合分散剤を使用して金属粉末を製造したとき、製造された金属粉末には、炭素数14以上18以下のアルキル基を有する界面活性剤が結合しているが、金属粉末と結合している界面活性剤における各炭素数の界面活性剤の存在比率は、混合分散剤の各炭素数の界面活性剤の混合比と異なることが多い。これは、金属粉末造粒工程では、炭素数の少ない界面活性剤が炭素数の大きい界面活性剤より優先的に金属粉末に結合する傾向があるである。
以上の金属粉末造粒工程により、目的とする平均粒子径・粒度分布の金属粉末が製造される。その後は、金属粉末を回収し、アルコール等で適宜に洗浄することで金属粉末を得ることができる。また、この金属粉末については、特許文献2に記載された塩素除去のためのシアン溶液による処理の後処理を行っても良い。
C.本発明に係る金属粉末による金属ペースト
上記した金属粉末と分散媒である有機溶剤と混合することで、本発明に係る金属ペーストを形成する。金属ペーストの製造において、金属粉末と有機溶剤との混合は、室温下で行うことができる。また、上記の添加剤を添加する場合には、金属粉末と有機溶剤と同時又は金属粉末と有機溶剤とを混合した後に添加すれば良い。
金属ペースト中における金属粉末の含有量は、質量基準(ペースト全体の質量を基準とする)で80質量%以上99質量%以下であることが好ましい。80質量%未満であると、ペースト塗布時等の工程でペーストから溶剤が滲み出るブリードが発生する可能性があり、更に、昇温中にボイドが発生することで好適な結合状態の接合部が得難くなる。また、99質量%を超えると金属粉末の凝集が生じる場合がある。金属粉末の含有量は、87~96質量%がより好ましい。
分散媒となる有機溶剤として好ましいのは、沸点200~400℃(大気圧下)のも有機溶剤である。有機溶剤の沸点が200℃未満であると、蒸発速度が速すぎて金属粒子が凝集する可能性があり、また、ペースト塗布の段階から揮発する可能性があり取り扱いが難しくなる。一方、沸点が400℃を超える有機溶剤は、加熱後であっても接合部に残留する可能性がある。
本発明で利用可能な有機溶剤の具体例としては、分岐鎖状飽和脂肪族2価アルコール類、モノテルペンアルコール類が好ましい。より具体的には、分岐鎖状飽和脂肪族2価アルコールとしては、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールといったこれらの誘導体等が用いられる。また、モノテルペンアルコールとしては、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、メントール、テルピネオール(α、β)、カルベオール、ツイルアルコール、ピノカンフェオール、β-フェンチルアルコール、ジメチルオクタノール、ヒドロキシシトロネロール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、及び、これらの誘導体等が用いられる。また、一価のカルボン酸と多価アルコールとの縮合反応より得られる化合物も有効であり、例えば、トリエチレングリコール・ジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール・ジ-2-エチルプタノエートがある。尚、有機溶剤の沸点は、その炭素数に依存する傾向があるため、適用する溶剤はそれぞれ炭素数5~20であるものが好ましい。この観点から、芳香族炭化水素でも良く、例えばアルキルベンゼンも機能的に問題ない。
有機溶剤は、1種類の有機溶剤を適用しても良いが、沸点の相違する2種以上の有機溶剤を混合したものを適用しても良い。有機溶剤を低沸点と高沸点の溶剤で構成することで、金属粒子の含有率調整の処理において、低沸点側の有機溶剤を揮発除去させて、調整を容易なものとすることができるからである。
尚、本発明に係る金属ペーストは、基本的構成として金属粉末と有機溶剤の2つの構成要素からなるが、適宜に添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、アルキッド樹脂から選択される一種以上を含有することがある。これらの樹脂等を更に加えるとペースト中の金属粉末の凝集が防止されてより均質な接合部が形成できる。尚、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル重合体を、セルロース系樹脂としては、エチルセルロースを、アルキッド樹脂としては、無水フタル酸樹脂を、それぞれ挙げることができる。そして、これらの中でも特にエチルセルロースが好ましい。
本発明に係る金属ペーストは、エレクトロニクス分野等における接合、封止、電極・バンプ・配線形成の各種用途に有効である。これらの用途に供するとき、本発明に係る金属ペーストを基板や被接合材等の対象物に塗布及び乾燥する。この金属粉末からなる乾燥体が接合材料、封止材料、バンプの前駆体となる。
そして金属粉末の乾燥体をその用途に応じた状態にした後、加熱・加圧することで金属粉末を焼結させる。例えば、金属ペーストの塗布・乾燥でバンプ状の接合材料を形成し、その上に半導体素子・チップを載置して、加熱・加圧することで金の焼結体による接合部が形成される。この焼結のための加熱温度は150℃以上300℃以下とするのが好ましい。
以上説明したように、本発明に係る金属粉末は、ロッド状・プレート状等の比球形粒子の存在比率が低減された金属粉末である。本発明によれば、金属ペーストとした後の特性や接合・封止等の用途に供する際に必要となる焼結性を良好なものとすることができる。本発明に係る金属粉末は、湿式還元法における分散剤の最適化により製造可能である。
第1実施形態でアルキル基の炭素数が異なる界面活性剤により合成した金コロイド粒子の外観を示すSEM像。 第1実施形態で製造した実施例1と比較例の金粉末の外観を示すSEM像。 第2実施形態の実施例2、3で混合分散剤を使用して製造した金粉末の外観を示すSEM像。
第1実施形態:以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態では、湿式還元法(金属コロイド合成工程と金属粉末造粒工程)で金属粉末として金(Au)粉末を製造した。ここでは、金属コロイド合成工程で分散剤となる界面活性剤のアルキル基の炭素数の好適範囲を見出した後、金属粉末造粒工程における炭素数の異なる界面活性剤を適用したときの非球形粒子の含有量を評価した。
[金コロイド合成工程における好適条件の検討]
純水20mLに、分散剤としてアルキルアミン酢酸塩を混合した。この分散剤溶液に、還元剤である塩化ヒドロキシルアンモニウム2mgを加え、80℃で加熱・撹拌して溶解した。そして、この分散剤及び還元剤を含む溶液に塩化金酸水溶液0.45mL(Au量0.32mg(3.6mM))を混合し2時間、80℃を保持して撹拌して金コロイド粒子を合成した。
上記のコロイド合成工程において、本実施形態では分散剤であるアルキルアミン酢酸塩として、デシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数10)、ドデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数12)、テトラデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数14)、ヘキサデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数16)、オクタデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数18)の5種のアルキルアミン酢酸塩を使用した。上記で分散剤溶液を作製する際には、各アルキルアミン酢酸を0.13mmol混合した。
そして、各アルキルアミン酢酸塩を使用して合成した金コロイド粒子について、SEM観察と粒度分布及び平均粒径(M)の測定を行った。作製した金コロイド粒子の溶液5μLを分取しグリッドに載せて乾燥させた後、TEM(透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製 JEM-1400))で観察した(加速電圧120V、倍率150000倍)。そして、TEM観察の際に複数枚撮影した写真をもとにサンプル毎に200個ずつ垂直フェレ径を測定して粒度分布を作成た。金コロイド粒子の平均粒径にはメジアン径を適用した。尚、デシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数10)については、沈殿発生と析出粒子の反応容器壁面への貼り付きがあり、回収が困難であったため、SEM観察及び粒度分布の測定ができなかった。図1に、各アルキルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数12、14、16、18)により合成した金コロイド粒子のSEM像を示す。また、各アルキルアミン酢酸塩により合成した金コロイド粒子の粒度分布について、粒径10nm以下の金コロイド粒子の割合と平均粒径の測定結果を表1に示す。
Figure 0007412714000002
図2と表1を参照すると、分散剤であるアルキルアミンの炭素数が大きくなるに従って、金コロイド粒子の平均粒径は小さくなる傾向がある。そして、炭素数の増加と共に小粒径側(10nm以下)の金コロイド粒子の割合が増大し、粒度分布が狭くなっていくことが確認される。これらの傾向は、上述した(i)(ii)の知見に良く符号している。そして、アルキルアミンの炭素数について炭素数12と炭素数14とを対比すると、炭素数14において小粒径側の金コロイド粒子の割合の急増がみられることから、炭素数の閾値を14と設定することが適切であると考えられる。上述のとおり、金属コロイド合成工程後の金属粉末造粒工程における金属粉末へ成長のためには、粒度分布のばらつきが低減されていることが好ましいと考えられる。以上の検討結果から、金属コロイド合成工程においては、炭素数の大きいアルキル基の界面活性剤が好適であることを確認した。
[金粉末造粒工程における好適条件の検討]
そこで、上記金コロイド合成工程で炭素数18のアルキル基を有する分散剤(オクタデシルアミン酢酸塩)を用いて合成した金コロイド粒子を基にして金粉末の造粒することとした(実施例1)。
上記の金コロイド合成工程後の反応液を3mL(15%)分取し、分散剤を70mLの純水に溶解した分散剤溶液を添加し、更に、
還元剤である塩化ヒドロキシルアンモニウム5gを8mLの純水に溶かしてた溶液を添加した。その後、液温が80℃に安定した状態で、造粒用の金塩となる塩化金酸水溶液20mL(Au量2.25g(571mM))を添加し、30分間撹拌して金粉末を製造した。その後、金粉末を回収した。
上記の金粉末造粒工程において、本実施形態では分散剤として、ドデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数12)、オクタデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数18)の2種のアルキルアミン酢酸塩を使用した。上記で分散剤溶液を作製する際には、各アルキルアミン酢酸を1mmol混合した。
金粉末造粒工程で金粉末を製造後、金粉末を遠心分離で回収し、SEM観察を行いつつ粒度分布及び平均粒径を測定した。このとき、SEM像を画像解析ソフトウエア(使用ソフトウエア:格式会社ライトストーン製 MIPAR)で画像内の金粉末粒子(400個以上)の粒子径(最大フェレ径)を測定した。そして、金粉末の数平均粒子径(M)を算出した。また、同時に最小フェレ径を短径a、最大フェレ径を長径bとして非球形粒子の判定を行い、非球形粒子の存在比率を算出した。
金粉末造粒工程での分散剤としてドデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数12)を用いて製造した金粉末(実施例1)と、オクタデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数18)を用いて製造した金粉末(比較例)のSEM像を図2に示す。図2のSEM像を参照すると、ドデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数12)により製造した金粉末は、大部分が球形状の良好な形状を有することがわかる。これに対してオクタデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数18)を用いて製造した金粉末は、非球形(ロッド状)の粒子が散見される。これらの金粉末について、非球形粒子の存在比率を測定したところ、金粉末造粒工程でドデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数12)を使用した金粉末で0%、オクタデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数18)で製造した金粉末で8.15%であった。
以上説明した本実施形態の結果から、金属コロイド合成工程と金属粉末造粒工程とからなる金属粉末の製造方法においては、前者の工程で炭素数の大きいアルキル基を有する界面活性剤を、後者の工程では炭素数の小さいアルキル基を有する界面活性剤を適用することが好ましいことが確認された。
第2実施形態:本実施形態では、分散剤として2種の混合分散剤を金属コロイド合成工程及び金属粉末造粒工程の双方で使用して金粉末を製造した(実施例2、3)。本実施形態で使用した分散剤は、デシルアミン塩酸塩(アルキル基炭素数10)、ドデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数12)とテトラデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数14)、ヘキサデシルアミン塩酸塩(アルキル基炭素数16)
との混合分散剤であり、以下の構成とした。
・実施例2の混合分散剤
テトラデシルアミン酢酸塩(炭素数14):27質量%
ドデシルアミン酢酸塩(炭素数12):残部
・実施例3の混合分散剤
デシルアミン塩酸塩(アルキル基炭素数10):5質量%
ドデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数12):60質量%
テトラデシルアミン酢酸塩(アルキル基炭素数14):25質量%
ヘキサデシルアミン塩酸塩(アルキル基炭素数16):10質量%
[金コロイド合成工程]
純水147.2mLに、上述の混合分散剤0.32gを純水12.8mLに溶解させたものを加えた。そして、この分散剤溶液に、還元剤である塩化ヒドロキシルアンモニウム0.016gを5.0mLの純水に溶かしたものを加え、80℃で加熱・撹拌して溶解した。この溶液に塩化金酸の水溶液4.5mL(Au量0.0064g(7.2mM))を混合し1時間、80℃を保持して撹拌した。これにより、赤色透明の金コロイド粒子の溶液を得た。
[金粉末造粒工程]
上記の金コロイド粒子の溶液(反応液)の全量に、分散剤として上記と同じ界面活性剤の混合物2.56gを102.4mLの純水に溶解した溶液を添加し、
還元剤である塩化ヒドロキシルアンモニウム20gを約200mLの純水に溶かして添加した。その後、液温が80℃に安定した状態で、造粒用の金塩である塩化金酸の水溶液100mL(Au量22g(1120mM))を添加し、30分間撹拌して金粉末を製造した。その後、金粉末を回収した。
回収した金粉末について、第1実施形態と同様にSEM観察して平均粒径を測定すると共に、非球形粒子の存在比率を算出した。本実施形態では、更に、粗大粒子の存在比率も測定・算出した。図3は、本実施形態で製造した実施例2、3の金粉末のSEM像である。そして、平均粒径等の測定結果を表1に示す。表1には、第1実施形態(実施例1)の結果を併せて示した。
Figure 0007412714000003
表2から、アルキル基炭素数の範囲の異なる界面活性剤を混合した混合分散剤を使用しても非球形粒子のない好適な金粉末を製造可能であることが分かる。実施例2、3は、金属コロイド合成工程と金属粉末造粒工程の双方で同じ混合分散剤を使用している。混合分散剤中の各炭素数の分散剤が各工程で有効に作用していると考えられる。また、混合分散剤を使用する場合においては、アルキル基炭素数10のアルキルアミン塩を混合しても良いことも確認された。
尚、粗大粒子の存在比率の観点からみても、実施例1~3のように、分散剤である界面活性剤のアルキル基の炭素数を適切にすることで、粗大粒子の生成を抑制することができるといえる。
[金属ペーストの特性評価]
次に、第2実施形態の実施例2、3で製造し金粉末を使用した金ペーストを製造した。金ペーストは、有機溶剤としてメンタノール(ジヒドロターピネオール)を金粉末に混合して製造した。有機溶剤の配合割合は10重量%とした。そして、作製した金ペーストを基板に塗布し焼結させてバンプを形成し、その形態と抵抗値測定を行った。金ペーストの塗布では、基板として直径2インチの円盤状のAlプレートを使用し、この基板に厚さ350μmで5mm×20mmの矩形の孔を備えるメタルマスク(ステンレス製)を被せた後に基板全面に塗布した。この塗布工程では、メタルマスク上に金ペーストを滴下してスキージで塗り広げ、メタルマスクの孔内部に金ペーストを充填されるようにし。金ペースト塗布後は、余分なペーストを拭き取り、メタルマスクを取り除いた後に100℃で1時間加熱して乾燥させ、その後に230℃で30分加熱して焼結した。
焼結後の金バンプについて、断面を金属顕微鏡で観察したところメタルマスクの孔形状に追従した矩形であり、バンプ表面も荒れのない良好な形状であった。この金バンプについて、抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製 ロレスタGP MCP-T610)で体積抵抗値を測定した結果、いずれの実施例でも7.0μΩ・cm程度であり良好な導電材料であることが確認された。非球形粒子及び粗大粒子の排除した金粉末の適用により、塗布特性が良好となり、焼結の際にも均質な焼結体となることが確認された。
本発明に係る金粉末は、非球形粒子の存在比率が抑制された球形粒子の金粉末で構成される。本発明の金粉末は、粒子形状と粗大粒子の排除により、顕微鏡観察時の外観性の良化に加え、金属ペースト塗布時の安定性・充填性に優れる。そして、本発明に係る金粉末の製造方法は、金粉末の核となる金コロイド粒子を合成する際の分散剤の好適化により達成される。本発明に係る金ペーストは、低温焼結性は維持しながら、前記特性を有する。そして、本発明に係る金ペーストは、電気・電子部品、半導体デバイス、半導体素子、パワーデバイス、MEMS等の各種用途における接合・封止・電極・配線形成の各プロセスに有用である。

Claims (9)

  1. 平均粒子径が0.1μm以上0.4μm以下であり、純度99.9質量%以上のAu、Ag、Cuの金属又はこれらの合金からなる金属粉末において、
    前記金属粉末の少なくとも一部に、アルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩のみからなる界面活性剤が分散剤成分として結合しており、
    前記分散剤成分として、炭素数14以上18以下のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩の少なくとも1種と、炭素数12以上14未満のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩の少なくとも1種が結合しており、
    短径aと長径bとの比(b/a)が3以上である非球形の金属粉末の粒子数基準の存在比率が1%以下であることを特徴とする金属粉末。
  2. 請求項1記載の金属粉末と有機溶剤とからなる金属ペースト。
  3. 第1の分散剤を含む第1の溶媒中で、金属塩と還元剤とを反応させることで金属コロイド粒子を合成する金属コロイド合成工程と、
    前記金属コロイド合成工程で合成した前記金属コロイド粒子を含む第2の溶媒に、金属塩と還元剤と任意の第2の分散剤を添加し、前記金属コロイド粒子を金属粉末とする金属粉末造粒工程と、を含む金属粉末の製造方法であって、
    前記金属コロイド合成工程の第1の溶媒は、前記第1の分散剤として、少なくとも炭素数14以上18以下のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤を含み、
    前記金属粉末造粒工程の第2の溶媒は、前記第2の分散剤として炭素数12以上14未満のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤を含む、金属粉末の製造方法。
  4. 金属粉末造粒工程の第2の溶媒は、金属コロイド合成工程で生成した反応液の一部又は全部を含むものである請求項3記載の金属粉末の製造方法。
  5. 金属コロイド合成工程で、炭素数14以上18以下のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤を第1の分散剤として第1の溶媒に混合し、
    金属粉末造粒工程で、炭素数12以上14未満のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤を第2の分散剤として第2の溶媒に添加する請求項3又は請求項4記載の金属粉末の製造方法。
  6. 金属コロイド合成工程で、炭素数12以上14未満のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤と炭素数14以上18以下のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤とを含む混合分散剤を第1の分散剤として第1の溶媒に混合する請求項3又は請求項4記載の金属粉末の製造方法。
  7. 金属粉末造粒工程で、炭素数12以上14未満のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤と炭素数14以上18以下のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤とを含む混合分散剤を第2の分散剤として第2の溶媒に混合する請求項6記載の金属粉末の製造方法。
  8. 混合分散剤は、
    炭素数12以上14未満のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤を質量%で50%以上80%以下含み、
    炭素数14以上18以下のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤を質量%で20%以上50%以下含み、
    残部が炭素数10以上12未満のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤である請求項6記載の金属粉末の製造方法。
  9. 混合分散剤は、
    炭素数12以上14未満のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤を質量%で50%以上80%以下含み、
    炭素数14以上18以下のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤を質量%で20%以上50%以下含み、
    残部が炭素数10以上12未満のアルキルアミン塩又は第四級アンモニウム塩からなる界面活性剤である請求項7記載の金属粉末の製造方法。
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