JP7407874B2 - 柱状ガラス、柱状ガラスの製造方法、及び柱状ガラスの製造装置 - Google Patents

柱状ガラス、柱状ガラスの製造方法、及び柱状ガラスの製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、断面が小さい柱状ガラス、柱状ガラスの製造方法及び柱状ガラスの製造装置に関する。
光学ガラスは一般的にストリップ材あるいはE-barと呼ばれる細長い板状の材料として得られ、これらは所定の形状を有するガラス製品に成形される。具体的には、まず、目的物と同じガラス体積で、比較的シンプルな形状のガラス小片を作製し、その後、当該ガラス小片を精密に成形する。光学ガラスは産業上の利便性の観点から同じ形状の製品を大量生産できることが望まれるため、このガラス小片の作製においても、同形状のものを大量に製造できることが望まれる。
このガラス小片を製造する方法の例としては、一辺が他の辺よりも十分に長い、細長い直方体ガラスを用意し、この直方体ガラスを円柱状の丸棒ガラスに成形し、その後、円柱の長手方向(高さ)に対して垂直方向に切断することにより、タブレット状(ここでは円盤状あるいは円柱形状を意味する)のガラス小片を得る方法が挙げられる。タブレット状のガラス小片は、形状の類似性から光学レンズの材料として好ましく用いられる。
上記のようなタブレット状のガラス小片を製造する方法としては、例えば、特許文献1の方法が挙げられる。特許文献1は、「互いに平行で同一方向に回転する3本またはそれ以上のロールの間に、軟化温度以上でかつ流動温度未満に加熱したガラス塊を装入し、前記回転するロールの間隔を次第に挟める所定の直径を有するガラス丸棒に形成し、その後、前記ガラス丸棒を切断・成形・研磨して所定の曲率半径を有するレンズにすることを特徴とするレンズの製造方法」を開示している。
また、特許文献2は、「少なくとも表面が1010ポアズ以下の粘度になるように加熱されたガラス素材を、互いに平行に配置され、かつ同一方向に回転する複数のローラーの上に、当該ローラーの回転軸に対して平行に設けられた案内傾斜面(シュート)上を移動させることにより導入し、前記ガラス素材を前記ローラーの回転方向と逆の方向に回転させることにより、前記ガラス素材を円形断面の丸棒形状に成形するガラス丸棒の製造方法であって、前記案内傾斜面(シュート)上の前記ガラス素材の移動が、前記ガラス素材が前記案内傾斜面(シュート)を転がり落下することにより行われることを特徴とするガラス丸棒の製造方法。」が開示されている。
特許文献3は、「ガラス丸棒から複数個のレンズ用小割ガラス素材を製造するに際して、同一方向に回転する2個のローラ間にガラス丸棒を挿入し、2個のローラの間隔を狭めて軟化温度以上に加熱したガラス丸棒を両側から押圧して、2個のローラのうちの少なくともいずれか一方のローラに軸方向に等間隔で設けた複数枚の鍔状ブレードによって、ガラス丸棒に円周方向の溝部を複数同時に形成した後、ガラス丸棒の各溝部で切断してレンズに適した等重量の小割ガラス素材を形成することを特徴とするレンズ用小割ガラス素材の製造方法。」が開示されている。
特開昭54-117514号公報 特開2000-16822号公報 特開2002-114532号公報
特許文献1乃至3に見られるように、タブレット状ガラス小片の材料となる丸棒ガラス(以下、丸棒ガラスともいう)の製造方法の開発は広く進められている。一方、ガラス製品としては、小型化したガラス製品の需要が高く、光学レンズの分野においても、レンズの小径化が求められている。光学レンズの材料である丸棒ガラスの断面の直径を、最終製品である光学レンズの直径に近い径にすることができれば、丸棒ガラス側面のガラスを切削する時間および切削量を少なくすることができるので、ガラス製造コストを抑えることができるとともに、ガラスの切削にともなって排出されるガラスくず(スラッジ)の廃棄量を抑えることができ環境面でも優位である。
丸棒成形直後の丸棒ガラスの直径については、特許文献1に記載はない。また、特許文献2では、段落[0061]において、直径6mmの丸棒ガラスが開示されているが、それより径の小さい丸棒ガラスは開示されていない。さらに、特許文献3では、段落[0029]に直径7mmの丸棒ガラスが開示されているが、それより径の小さい丸棒ガラスは開示されていない。
また、特許文献1乃至3は、上記のとおり、6mm以下の丸棒ガラスは開示されていないが、それは、特許文献1乃至3の技術のみでは、6mm以下(例えば、3.5mm以下)の丸棒ガラスを製造できないからである。3本ローラで成形する場合、ローラ径が40mmの場合は、構造上、最小でも6.5mmの丸棒ガラスしか製造できず、ローラ径が直径20mmの場合は、構造上、最小3.5mmの丸棒ガラスしか製造できない。しかし、ローラ径が20mmではローラ自体が圧力に耐えられ破損することが考えられる。ローラの長さを短くし、圧力に耐えられるようにすることも考えられるが、その場合は長い丸棒ガラスを製造できない。したがって、特許文献1乃至3に記載の技術では、直径3.5mm以下であり、所定の長さの丸棒ガラスを製造することができない。
さらに、特許文献1乃至3の技術では、断面が円形の丸棒ガラスしか製造できないが、断面が三角や四角などの柱状ガラスも製造できると、当該製造装置の適用範囲も広がり、好ましい。
本発明者は上記課題に着目し、検討した結果、塊状の固化したガラスから、断面積が小さい柱状ガラスを、切削することなく製造でき、また、様々な断面形状に成形できる、製造方法を開発し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] ガラス材料から柱状ガラスを製造する製造方法であって、
第一開口と、前記第一開口と連通しており、第一開口の開口面積よりも小さい開口面積を有する第二開口とを有する筒状の胴型を準備する工程と、
ガラス材料を前記胴型内に配置する工程と、
配置された前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程と、
ガラスプレス面を有する第一金型を、前記ガラスプレス面が前記ガラス材料に接するように前記第一開口から挿入する工程と、
前記第一金型及び前記胴型の少なくとも一方を移動させることにより、軟化したガラス材料をプレスして、前記第二開口から柱状ガラスとして、ガラスを排出させる工程とを含む、製造方法。
[2] 前記胴型はガラス通路を有する第二金型を内部に備えており、軟化した前記ガラス材料は、前記ガラス通路を通過し、前記柱状ガラスとして前記第二開口から排出される、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記第二金型は、前記ガラス通路を一つ又は複数個を有する、[2]に記載の製造方法。
[4] 前記柱状ガラスの断面は、多角形、円、又は楕円の断面形状を有する、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の製造方法。
[5] 第一開口と、前記第一開口と連通しており、第一開口の開口面積よりも小さい開口面積を有する第二開口とを有する筒状の胴型と、
前記胴型の内部に配置するガラス材料を押し込むための第一金型であって、前記第一開口部から前記胴型に挿入することができるようなガラスプレス面を有する第一金型と、
前記第一金型をガラス材料にプレスするためのプレス手段と、
前記ガラス材料を軟化させるための加熱手段と、を有する柱状ガラス製造装置。
[6] 前記胴型はガラス通路を有する第二金型を内部に備えており、前記第二金型は、軟化した前記ガラス材料が前記ガラス通路を通過し、前記柱状ガラスとして前記第二開口から排出されるように配置されている、請求項5に記載の柱状ガラス製造装置。
[7] 側面が0.001~0.20μmの算術平均粗さRa、及び0.01~1.2μmの十点平均粗さRzを有する、柱状ガラス。
[8] 結晶化ピーク温度Tcと、logη=5.3となる温度との差((結晶化ピーク温度Tc)-(logη=5.3となる温度))が、0℃以上である、[7]に記載の柱状ガラス。
[9] 長手方向に対する垂直断面の形状が同一又は略同一である、[7]又は[8]に記載の柱状ガラス。
[10] ガラス材料から柱状ガラスを製造する製造方法であって、
少なくとも一つの開口を有する筒状の胴型を準備する工程と、
前記胴型内に前記開口より、ガラスプレス面を有する金型の前記ガラスプレス面と、前記ガラス材料とを接触させた状態で挿入する工程と、
前記ガラス材料を加熱、軟化する工程と、
前記金型又は前記胴型の少なくとも一方を移動させることにより、前記ガラス材料をプレスして、プレスにより、前記金型に設けたガラス排出口から柱状ガラスとして排出する工程とを含む、製造方法。
[11] 前記金型はガラス通路を有し、プレスされたガラスは前記ガラス通路を通過し、前記柱状ガラスとして前記ガラス排出口から排出される、[10]に記載の製造方法。
[12] 前記金型は、前記ガラス通路を一つ又は複数個を有する、[11]に記載の製造方法。
[13] 前記柱状ガラスの断面は、多角形、円、又は楕円の断面形状を有する、[10]に記載の製造方法。
[14] 少なくとも一つの開口を有する筒状の胴型と、
前記胴型の内部に向かってガラス材料を押し込むための金型であって、前記開口から前記胴型に挿入することができるとともに、プレス時にガラスを排出するガラス排出口を有する金型と、
前記金型によりガラス材料をプレスするためのプレス手段と、
前記ガラス材料を軟化させるための加熱手段と、を有する柱状ガラス製造装置。
[15] ガラス材料から柱状ガラスを製造する製造方法であって、
第一開口と、前記第一開口と連通する第二開口とを有する筒状の胴型であって、内部に第二金型を備える胴型を準備する工程と、
ガラス材料を前記胴型内に配置する工程と、
配置された前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程と、
ガラスプレス面を有する第一金型を、前記ガラスプレス面が前記ガラス材料に接するように前記第一開口から挿入する工程と、
前記第一金型及び前記胴型の少なくとも一方を移動させることにより、軟化したガラス材料をプレスして、前記第二開口から柱状ガラスとして、ガラスを排出させる工程とを含む、製造方法。
[16] 前記第二金型はガラス通路を有し、軟化されたガラスは前記ガラス通路を通過し、前記柱状ガラスとして前記第二開口から排出される、[15]に記載の製造方法。
[17] 前記第二金型は、前記ガラス通路を一つ又は複数個を有する、[16]に記載の製造方法。
[18] 前記柱状ガラスの断面は、多角形、円、又は楕円の断面形状を有する、[16]に記載の製造方法。
[19] 第一開口と、前記第一開口と連通する第二開口とを有する筒状の胴型と、
前記胴型の内部に配置するガラス材料を押し込むための第一金型であって、前記第一開口部から前記胴型に挿入することができるようなガラスプレス面を有する第一金型と、
前記第一金型をガラス材料にプレスするためのプレス手段と、
前記胴型の内部に備えられている第二金型と、
前記ガラス材料を軟化させるための加熱手段と、を有する柱状ガラス製造装置。
[20] 前記第二金型は、ガラス材料を排出するガラス通路を有する、[19]に記載の柱状ガラス製造装置。
[21] 前記第二金型は、前記ガラス通路を一つ又は複数個を有する、[20]に記載の柱状ガラス製造装置。
本発明の柱状ガラスの製造方法は、側面を研削することなく、また、研磨することなく、柱状ガラスを製造することができる。また、排出する第二開口やガラス通路の形状を変更することにより、得られる柱状ガラスの断面形状を変更することができる。さらに、第二開口やガラス通路の数を増やすことにより、同時に複数本の柱状ガラスを得ることができる。
このようにして得られた柱状ガラスは、当然のことながら、研削傷がなく、そのまま工場から出荷が可能である。断面を円形にすることにより、柱状ガラスを長さ方向に略垂直に切断することで、切断されたガラスはそのままレンズ材料として使用することができ、ガラスを削る量、すなわち、ガラス廃棄量を抑えながら、所定の大きさのガラスレンズ材料を製造することができる。
さらに、本発明の柱状ガラス製造方法は、結晶化しやすい温度にまで温度を上げることなく、柱状ガラスを製造できるため、ガラス内部に結晶を発生することを抑え、品質の高い柱状ガラスを得ることができる。
図1は、柱状ガラスの製造装置D1の概略断面図を示す。 図2は、柱状ガラスの製造装置D2の概略断面図を示す。 図3は、製造装置D1の長手方向に垂直な線(図1におけるIII)において断面にしたときの断面図を示す。 図4は、柱状ガラスの製造装置D4により柱状ガラスを製造する様子を示す。 図5は、第二金型の例を示す。 図6は、排出された柱状ガラスをローラーガイド7により引っ張る様子を示す。 図7は、柱状ガラス製造装置D3の概略断面図を示す。 図8は、一般的なガラスの示差走査熱量測定(DSC)のグラフを示す。 図9は、実施例1の側面拡大写真である。 図10は、柱状ガラスの製造装置D4の概略断面図を示す。 図11は、柱状ガラスの製造装置D5の概略断面図を示す。
本明細書では特に断らない限り、数値範囲を特定するときに用いる「~」は、上限及び下限のいずれもその範囲に含まれるものとする。
[柱状ガラスの製造方法及び製造装置]
本発明の柱状ガラスを製造する製造方法は、固化しているガラス材料から柱状ガラスを製造する製造方法であって、第一開口と、前記第一開口と連通しており、第一開口の開口面積よりも小さい開口面積を有する第二開口を有する筒状の胴型を準備する工程と、ガラス材料を前記胴型内に配置する工程と、配置された前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程と、ガラスプレス面を有する第一金型を、前記ガラスプレス面が前記ガラス材料に接するように前記第一開口から挿入する工程と、前記第一金型及び前記胴型の少なくとも一方を移動させることにより、軟化したガラス材料をプレスして、前記第二開口から柱状ガラスとして、排出させる工程とを含む、製造方法である。以下、図面を参考にして詳細に説明する。
図1及び図2で示すように、本発明の製造装置D1、D2では、材料である固体状態のガラス材料1を内部に配置することができる胴型3を備える。胴型3は、一体物でもよいし、図1、図2のように、胴型側部31と、胴型排出部32とに分けることができる。なお、胴型排出部32は、製造装置D1、D2のように、第二金型4のガラス通路41に連通しているガラス排出路35を備える部品とすることもできるし、後述する図10の製造装置D4、図11の製造装置D5のように、円筒状の空洞とすることもできる。
胴型3は、図1にように胴型3の内側にコンテナ5を備えてもよいし、図2のようにコンテナを備えなくてもよい。便宜上、コンテナを備えない態様の製造装置D2(図2)について説明し、その後、コンテナ5について図1を用いて説明する。
胴型3は、図2に示すように、第一開口33と、第一開口33に連通しており、第一開口33の開口面積よりも小さい開口面積を有する第二開口34を有する。つまり胴型3は、2つの開口を有し、さらに、第一開口33と第二開口34とを連通させる、材料ガラス1を配置できる内部空間を有する。内部空間の断面形状は、円形、楕円形又は多角形にすることができるが、成形後に内部に残存するガラスを少なくするためには、円形であることが好ましい。なお、胴型3の外側の形状は、特に限定されないが、円筒形状や角筒形状が好ましい。
第一開口33は、固体状態のガラス材料1を挿入するための開口部であり、かつ、ガラス1を挿入した後に、第一金型2を挿入するための開口部でもある。
第二開口34は、軟化したガラス材料1が柱状形状として、胴型3から排出させるための開口部である。したがって、D1及びD2の態様において、第二開口34の形状は、排出される柱状ガラス11の断面形状と同じ形状であることが好ましい。例えば、柱状ガラスを丸棒ガラスにするのであれば、第二開口34の断面形状は、円形であることが好ましい。第二開口34の断面の面積は、材料として投入する材料ガラス1が下方向に落下しない面積であることが好ましい。また、第二開口34は、1つであってもよいし、複数あってもよい。
柱状ガラスを製造するためには、第二開口34に通ずるガラス排出路35を備えることが好ましい。所定の長さのガラス排出路35があることにより、排出時のガラス形状を安定させることができる。
本発明では、必要によりコンテナ5を備えることができる。図1の製造装置D1はコンテナ5を備えた態様である。コンテナ5は、胴型3の内部に、ぴったりとはめた状態で備えることができる。例えば、胴型3の内部の空間断面が円形であれば、コンテナ5の長さ方向に対する垂直する断面の形状も円形であり、図1のようにぴったりはめている状態にする。図3では、図1に示されるIIIの切断したときの断面形状であり、ぴったりとはまっていることがわかる。はまっていることにより外部からの熱を内部の材料ガラス1に伝えやすい。
コンテナ5の内部の断面形状も、胴型3の内部の断面形状と同様に、円形、楕円形又は多角形にすることができ、第一金型2を第二金型4まで押し込むためには、後述する環状切欠き部52以外の部分において、コンテナ5の内部の断面形状はどの位置(高さ)でも略同一であることが好ましい。 材料ガラス1を圧縮する胴型3の内部表面は加熱及び圧力により劣化しやすい。したがって、胴型3に対して分離可能なコンテナ5を内部に配置することにより、損傷してもコンテナ5のみを交換すれば、劣化のない内部表面にすることができる。
なお、コンテナ5は、コンテナ第一開口51を有し、製造装置D2を用いる場合は、第一開口33の内側にあるコンテナ第一開口51(図1参照)から材料ガラス1及び第一金型2を挿入する。
本発明の製造装置D1、D2は、第一金型2を必要とする。第一金型2は、第一金型ガラスプレス面21を有する。第一金型ガラスプレス面21の形状は、第一開口33やコンテナ第一開口51に挿入でき、かつ、材料ガラス1を圧縮したときに、ガラスが漏れにくい程度のクリアランスを有する形状であることが好ましい。クリアランスが適切でない場合、プレス時に第一金型2と、胴型3(またはコンテナ5)との隙間からガラスが漏出してしまうおそれがある。
なお、通常、第一金型2による下方向(図1の矢印方向)へのプレスは、プレス手段(図示されていない)による第一金型2への押圧によって行われるが、第一金型2を固定し、胴型3を上方向へ移動させることにより、内部の材料ガラス1をプレスすることもできるし、製造装置D1、D2を垂直方向から90°回転させ、第一金型2及び/又は胴型3を横方向に移動させることにより、材料ガラス1をプレスすることもできる。このようなプレス方法は、製造装置D1、D2のいずれも実施することができる。ここでは、胴型3を固定し、第一金型2を下方向へ移動させることによるプレスする態様について説明する。
本発明の製造装置D1、D2は、必要により第二金型4を備える。第二金型4は、胴型3の内部の最も下部に位置させて、係止させている。製造装置D1の場合は、コンテナ5があるため、第二金型4はコンテナ5の最も下部に配置する。
第二金型4は、胴型2やコンテナ5と分離可能である。胴型3の内部の最下部に位置させ、第二金型4の上面である第二金型ガラスプレス面43は、ガラス1と接し、大きな圧力がかかるため、損傷の大きい部分の一つであるが、分離可能とすることで、損傷が大きくなった第二金型4は、損傷のないものと交換することができる。
第二金型4は、ガラス通路41を備える。ガラス通路41は、コンテナ5の内部(第二金型ガラスプレス面43)と、ガラス排出路35及び第二開口34とを通じている通路である。ガラス通路41の形状は特に限定されるものではないが、胴型3のガラス排出路35と同じ形状にすることが、ガラスを安定して排出できる点で好ましい。
なお、第二金型4のガラス通路41の断面形状や数は限定されるものでない。図5(a)は、図1で用いた第二金型4であり、中央に断面が円形のガラス通路41が形成されている。また、図5(b)に示す第二金型4には、5個のガラス通路412が形成されている。したがって、図5(b)の第二金型からは、柱状ガラスを5本製造することができる。図5(c)は、ガラス通路413の断面が三角形の形状であり、図5(d)は、ガラス通路414の断面が細長い長方形の形状であり、これらの第二金型を用いることにより、それぞれ三角柱ガラス、板ガラスを製造することができる。
なお、図5(b)-(d)に示す第二金型を使用する場合、ガラス排出路35と第二開口34も対応する形状にするのが好ましい。
第二金型4の第二金型ガラスプレス面43の端部は外周に環状切欠き部42が形成されていて、コンテナ5の内周に形成された環状切欠き部52と係合するようになっていて、ガラスの漏出を抑制している。
本発明の製造装置D1乃至D5は、必要により、2つのローラーガイド7を用いて、排出された柱状ガラス11を下方に引っ張ることができる(図6参照)。ローラーガイド7は、2つの円盤に柱状ガラス11を挟み込み、所定の方向へ誘導する2つの円盤から構成される。ローラーガイド7を用いない場合は、柱状ガラス11の排出初期段階では、排出済みのガラス量が少ないため、下方に引っ張る力が小さい。しかし、排出後期になると、排出されたガラス量が増え、自重が大きくなるため、下方へ引っ張る力が大きくなり、柱状ガラス11が延伸してしまい、細くなる場合がある。しかし、一定速度で回転している2つのローラーガイド7を用いることにより、柱状ガラス11を一定の速度で引っ張ることができるため、柱状ガラス11の断面形状の変形を抑制でき、安定した柱状ガラスの製造を実施できる。
ローラーガイド7は、図6のように二つの円盤を互いにガラスを下方へひっぱるように回転させる。
本発明の別の態様である製造装置D3を図7に示す。D3は、上部が閉じてある筒状の胴型3を用いている。胴型3の内部の上方には、第一金型2が胴型3に一体として備えられている。
胴型3は下部が開放されており、貫通するガラス通路41を備える第二金型4を挿入可能になっている。第二金型4は、ガラス通路41の出口に干渉しないような位置で、一つ又は複数の伸縮部8(第一伸縮部81と、第二伸縮部82から構成される)により支持されている。伸縮部8は、第二金型4及び第二金型4の上に配置されているガラス材料1を上昇させることができるものであれば、この態様に限定されるものではなく、様々な機構の上昇手段を使うことができる。
製造装置D3では、胴型3を固定し、第二金型4を上昇させる態様であるが、別の態様として、第二金型4を伸縮部8により固定させ、胴型3を下降させることで、ガラス材料1を圧縮させる態様にすることも可能である。
なお、製造装置D3についても、製造装置D1、D2と同様に、筒型33の周囲には加熱手段を備え、内部のガラスを加熱することができる。
図10の製造装置D4、及び図11の製造装置D5は、それぞれ製造装置D1及びD2とは異なり、胴型排出部32を部品とせず、円筒状の空洞としたものである。したがって、製造装置D4及D5は、第二開口34の開口面積が大きく、D4の第二開口34の開口形状は、得られる柱状ガラスの長手方向に垂直に切断した際の断面形状と同じ形状である必要がない。第二金型4のガラス排出口44から排出されたガラスは、柱状ガラスとして長手方向に延伸し、胴型排出部32を経由して、第二開口34から排出される。
製造装置D4及びD5を用いて得られる柱状ガラスの断面形状は、ガラス排出口44の形状と同じ形状になる。
また、図5(b)乃至(d)の第二金型変形例及び図6のローラは、製造装置D1乃至D5に適用可能である。
[製造方法]
次に本発明の柱状ガラス11の製造方法について図4を用いて説明する。
図4で用いている製造装置D4では、第一開口から所定の大きさの塊状の材料ガラス1を投入し、その上から第一金型2で下方向にプレスする。
投入した材料ガラス1は、プレスする前は、コンテナ5の内部にぴったり収まるものではなくてもよい。所定の大きさの材料ガラス1をコンテナ5に挿入した後、上部から第一金型2をコンテナ第一開口51に配置する(図4(a))。なお、本発明の製造方法では、材料ガラス1が融着するほどの高温にしないため、粉末状の窒化ホウ素(BN)等の離型剤を添加しない。このため、本発明の製造方法は、ガラス組成の変動に敏感なガラスに対して非常に好適である。なお、離型剤は使用しないことが好ましいが、使用を妨げるものではなく、事情により使用することも可能である。
次に加熱手段(図示しない)により、材料ガラス1を加熱する。加熱手段は、第一金型2及び胴型3の外側からバーナー等の所定の方法で加熱する。それにより材料ガラス1は軟化する。
軟化した材料ガラス1に対し、下方向にプレスすることにより、材料ガラス1は変形する。挿入時が胴型2の内部にぴったりとした形状でない場合であっても、プレスにより長手方向に対して垂直方向(横方向)に広がり、横方には隙間なくガラスが充填されることになる(図4(b))。
このときのガラスの粘度は、1.0×10Pa・s~5.0×10Pa・s程度である。
さらにプレスが進み、柱状ガラス11として排出される(図4(c))。
プレスに適した温度は、プレスすることでガラスが変形できるのであれば特に限定されないが、ガラスの粘度が1.0×10Pa・s~5.0×10Pa・s程度になるような温度であることが好ましく、そのときのガラスの具体的な温度の例としては、500~900℃である。
排出される柱状ガラス11の排出速度、すなわち、プレス速度は、特に限定されるものではないが、例えば、1~30mm/minの速度にすることができ、また例えば1~20mm/minの速度にすることができる。当該範囲よりも早い場合はプレスの圧力が高すぎるため、材料ガラス1が変形する前に破壊されてしまう恐れがあり、当該範囲よりも遅いと、製造速度が遅すぎるため効率的ではない。
材料ガラス1への圧力は、1.5乃至50MPaであることが好ましい。なお、柱状ガラス11を製造する際は一定のプレス速度であることが好ましいため、それに応じて、荷重及び圧力を調整することが好ましい。
図示しないが、第一金型2の第一金型ガラスプレス面21と材料ガラス1との間に耐熱性を有するシート材を配置することが好ましい。これにより、コンテナ5と第一金型2とのクリアランスへのガラスの侵入を抑制することができる。耐熱性を有するシート材としては、カーボンを含むシート、具体的には膨張黒鉛シートなどが挙げられる。
製造装置D1,D2及びD5についても、上記のD4と同様の条件で柱状ガラスを製造することができる。
図7に示される製造装置D3では、下記の方法で製造される。すなわち、製造装置D3による製造方法は、一つの開口を有する筒状の胴型を準備する工程と、ガラスプレス面と、前記ガラスプレス面から金型を貫通するガラス通路とを有する金型の前記ガラスプレス面の上に前記ガラス材料を載置する工程と、前記開口から前記ガラス材料が載置された前記金型を前記胴型内に挿入し、前記金型又は前記胴型の少なくとも一方を移動させることにより、前記ガラス材料を前記金型でプレスする工程と、プレスにより、プレスされたガラスを、前記ガラス通路を通過させ、前記開口から柱状ガラスとして排出させる工程とを含む、製造方法である。
製造装置D3による具体的な製造方法について図7を用いて説明する。第二金型4の上にガラス材料1を載置させる。なお、第二金型4には、第二金型ガラスプレス面43とガラス通路41を有する。ガラス材料1を載置させた状態で、伸縮部8を伸ばすことにより、第二金型4及び第二金型4の上のガラス材料1を上昇させる。
胴型3は下部が開口しており、第二金型4を胴型3に挿入可能になっており、第二金型4及び第二金型4の上のガラス材料1の上昇により、第二金型4及び第二金型4の上のガラス材料1を筒型33に挿入する。図示されていないが、加熱手段により、筒型33の内部のガラスを加熱成形できる温度まで加熱する。
伸縮部8は、第二金型4及び第二金型4の上に配置されているガラス材料1が、胴型3の内部の上部(開口と反対側の位置)に配置される第一金型2に接触させるまでさらに上昇させる。さらに上昇させると、加熱されたガラス材料1が変形し、ガラス通路41に通じるガラス排出口44及び胴型3の開口から柱状ガラス11を排出させる。
[柱状ガラス]
本発明の製造装置及び製造方法により得られる柱状ガラス11について説明する。本発明の一形態では、製造装置に挿入する材料ガラス1つに対して、1本または複数本の柱状ガラス11が得られる。すなわち、材料ガラス1のガラス体積は、得られる柱状ガラス11の体積と実質的に同じである(材料ガラス11の一部が製造装置内に残る場合を除く)。
柱状ガラス11の断面形状は、第二開口34又は第二金型4のガラス排出口44の開口の形状に依存する。すなわち、第二開口34又は第二金型4のガラス排出口44の形状を円形にすれば、断面が円形の柱状ガラス11が得られる。ほかにも、第二開口34又は第二金型4のガラス排出口44の形状を変更することにより、三角形状や、四角形状などの多角形の断面や、楕円形状の断面とすることも可能である。
本発明で得られる柱状ガラス11は断面の面積が非常に小さいことが特徴である。断面積で規定する。断面積は、例えば、50mm以下にすることができ、例えば、40mm以下にすることができ、また、30mm以下にすることができる。
柱状ガラス11は、研削せずに、そのまま工場から出荷できる程度の表面を有することができる。研削しないため、ガラス屑を抑制できる。
本発明の製造方法で得られる柱状ガラス11の表面は、研磨しない状態でも出荷できる。例えば、柱状ガラスを分割するだけで複数個の精密プレス成形のガラス素材(プリフォームと呼ばれることがある)を作製することもできる。研磨しない状態であれば、算術平均粗さRaが0.001~0.20μmであり、十点平均粗さRzが0.01~1.2μmである。本明細書では、算術平均粗さRa,十点平均粗さRzは表面粗さ・輪郭形状測定器(株式会社東京精密製、SURFCOM 2900 SD3-12)で測定した値とする。なお、算術平均粗さRa、十点平均粗さRzの測定は、柱状ガラスの側面を長手方向に平行してスキャンニングして行う。
本発明の製造方法で得られた柱状ガラス11は、長手方向に直線状のスジが形成される場合がある。軟化したガラスを圧力で押し出すからである。長手方向に直線状のスジが入ることにより、柱状ガラスを複数個に分割するために切断するとき、切断刃の滑り止めになる効果を発揮する。なお、上記した通り、離型剤を使用する必要がないため。ガラスの表面及び内部には、離型剤由来の異物が入ることがない。
さらに本発明の製造方法で得られる柱状ガラス11は、断面形状が均一または略均一に製造することできる。1本の柱状ガラス11において、もっとも面積が大きい断面形状と、もっとも面積が小さい断面形状の比(最大面積/最小面積)は、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
さらに本発明の製造方法において、結晶化ピーク温度と、logη=5.3となる温度との差((結晶化ピーク温度(Tc ℃))-(logη=5.3となる温度 ℃))が、200℃以下であるガラス材料が好ましい。また、結晶化ピーク温度と、logη=5.3となる温度との差は、0℃を超えることが好ましく、50℃以上がより好ましく、100℃、150℃、200℃以上の順に一層好ましい。
一般的に、結晶化ピーク温度と、logη=5.3となる温度との差が大きいほうが、成形時に失透しにくい。そのような観点から結晶化ピーク温度と、logη=5.3となる温度との差は前記したように、0℃を超えることが好ましく、50℃以上がより好ましく、100℃、150℃、200℃以上の順に一層好ましい。一方、結晶化ピーク温度と、logη=5.3となる温度との差が200℃以下のガラスであっても本発明によれば成形時の失透を抑制できるので、本発明の方法と、結晶化ピーク温度と、logη=5.3となる温度との差が200℃以下のガラスの組み合わせは好適である。
このようなガラスは、粘性領域で安定性が高く、本発明の製造方法及び製造装置により好適に製造することができる。なお、結晶化ピーク温度は、一般的な光学ガラスの示唆熱分析のグラフを示す図8において、Tcの部分である。
熱的安定性が高く、加熱時に結晶化しにくいガラスは、DSC曲線に明瞭な結晶化ピークが現れないか、結晶化ピークが存在しても、結晶化ピーク温度TcとT(logη=5.3)との差が大きな値となる。一方、Tc-T(logη=5.3)が200℃以下であるガラスは、加熱、軟化して成形する際に失透しやすく、耐失透性が十分でないガラスであるが、本発明によれば失透することなしに高品質の柱状ガラスを得ることができるため、Tc-T(logη=5.3)が200℃以下のガラスの成形方法として、本発明の柱状ガラス製造方法は特に優位である。
常温で固化している22cmの体積を有する下記ガラスについて、図1に記載の製造装置D1を用いて柱状ガラスを製造した。D1において、ガラス通路41、ガラス排出路35の断面は、製造する柱状ガラスの断面の形状に合わせたサイズである。なお、第一金型2の第一金型ガラスプレス面21と、材料ガラス1との間には、1.5mmの厚さの膨張黒鉛シートを配置した。
条件は下記の通りである。なおガラスを軟化するために加熱をしているが、その際の温度は、下記の粘度の範囲内になるように適宜調整した。なお、表1中、結晶化ピーク温度(Tc)-(logη=5.3となる温度)[℃]については、結晶化しやすいガラスの中にあっては比較的結晶化し難く、結晶化ピーク温度のばらつきがやや大きいものに関しては範囲を持たせて記載している。
使用ガラス:光学ガラス1~4(得られる柱状ガラスの形状は下記表1に示すとおりである)
速度:10mm/min
荷重:770~12315N
温度:550~860℃
ガラス粘度:2.0×10Pa・s~1.0×10Pa・s
(結果)
光学ガラス1乃至4のいずれのガラス材料から所定の形状の柱状ガラスを得た。いずれの柱状ガラスの側面にも、長手方向のスジが見られた。
また、実施例1の柱状ガラスについては、Raが0.025μm、Rzが0.845μmであり、3μm以上の結晶等の異物は見つからなかった。なお、実施例1の光学ガラス1の諸特性を表2に記載し、実施例1の拡大写真を図9に示す。
符号の説明
1 材料ガラス
11 柱状ガラス
2 第一金型
3 胴型
4 第二金型
5 コンテナ
7 ローラーガイド

Claims (8)

  1. 第一開口と、前記第一開口と連通する第二開口とを有する筒状の胴型と、
    前記胴型の内部に配置するガラス材料を押し込むための第一金型であって、前記第一開口から前記胴型に挿入することができるようなガラスプレス面を有する第一金型と、
    前記第一金型をガラス材料にプレスするためのプレス手段と、
    前記胴型の内部に備えられており、ガラス通路を有し、軟化した前記ガラス材料が前記ガラス通路を通過し、柱状ガラスとして前記第二開口から排出されるように配置されている第二金型と、
    前記ガラス材料を軟化させるための加熱手段と、を有し、
    前記第二金型は、前記胴型と分離可能の状態で胴型内部で胴型に係止されている、柱状ガラス製造装置。
  2. 前記第二金型は、前記ガラス通路を一つ又は複数個有する、請求項1に記載の柱状ガラス製造装置。
  3. 前記胴型の内部にさらに筒状コンテナを備える、請求項1に記載の柱状ガラス製造装置。
  4. 前記第二金型は環状切欠き部を備え、前記第二金型は前記コンテナと係合している、請求項3に記載の柱状ガラス製造装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の柱状ガラス製造装置を用いたガラス材料から柱状ガラスを製造する製造方法であって、
    前記ガラス材料を前記胴型内に配置する工程と、
    配置された前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程と、
    ガラスプレス面を有する第一金型を、前記ガラスプレス面が前記ガラス材料に接するように前記第一開口から挿入する工程と、
    前記第一金型及び前記胴型の少なくとも一方を移動させることにより、軟化したガラス材料をプレスして、前記第二開口から柱状ガラスとして、ガラスを排出させる工程とを含む、製造方法。
  6. 前記柱状ガラスの側面が0.001~0.20μmの算術平均粗さRa、及び0.01~1.2μmの十点平均粗さRzを有する、請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記柱状ガラスの結晶化ピーク温度Tcと、前記柱状ガラスのlogη=5.3となる温度との差((結晶化ピーク温度Tc)-(logη=5.3となる温度))が、0℃以上である、請求項5に記載の製造方法。
  8. 前記柱状ガラスの長手方向に対する垂直断面の形状が同一又は略同一である、請求項5に記載の製造方法。
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