JP7407615B2 - ステンレス鋼、接点用部材およびステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

ステンレス鋼、接点用部材およびステンレス鋼の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はステンレス鋼、接点用部材およびステンレス鋼の製造方法に関する。
従来、電気・電子部品に組み込まれる電気接点用部材、あるいは弱電流の制御信号が流れる配線端子に、ステンレス鋼を基材として用いることが検討されている。ステンレス鋼は、耐熱性について銅など他の金属と比較して劣る点があるが、電気接点用部材、あるいは配線端子では、流れる電流がわずかであるため、接続部品の内部抵抗に起因する発熱を考慮する必要がない。また、このような電気接点用部材および配線端子は、耐食性およびばね性に優れていることが好ましい。ステンレス鋼は、耐食性およびばね性について優れているため、電気接点用部材として好適であると考えられる。
しかしながら、一般的なステンレス鋼表面には、Crを主体とした不働態皮膜が存在する。これにより、ステンレス鋼表面の接触抵抗は高く、電気接点用部材としては不向きである。また、不働態皮膜は、酸洗または機械研磨等によって除去することができるが、大気中では短時間で再生する。
そのため、ステンレス鋼を電気接点用部材として用いるために、特許文献1または2には、Cuリッチ層を表層に析出させた、あるいは導電性のある析出物を表層に形成したステンレス鋼が開示されている。
特開2001-89865号公報 特開2001-32056号公報
しかしながら、上述のようなステンレス鋼は、表層にCuリッチ相を析出させるためには多量のCu添加を要する。また、上述のようなステンレス鋼は、表面に露出する硬質な析出物によって圧延時の表面キズ、プレス加工時の割れ発生、およびプレス負荷の増大を招き、加工性が低いという問題がある。
本発明の一態様は、加工性が高く表面接触抵抗が低いステンレス鋼を実現することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るステンレス鋼は、表面粗さRaが0.17μm以上であり、表面に皮膜を有するステンレス鋼であって、上記皮膜の厚さは20nm以下であり、上記皮膜の最表面から2nmの位置において、上記皮膜を構成する成分の割合が酸化Cr:15~45%、金属Cr:3~20%、酸化Fe:8~25%、金属Fe:10~40%、および特定元素:5~56%を含み、上記特定元素は、電気陰性度1.5以上2.5以下の少なくとも1種類の元素である。
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るステンレス鋼の製造方法は、電気陰性度が1.5以上2.5以下の少なくとも1種類の元素である特定元素を含む水溶液中にステンレス鋼を浸漬する浸漬工程と、上記水溶液中で上記ステンレス鋼にレーザ照射を行う照射工程と、を含み、上記照射工程では、波長が1080~1090nmであり、0.2J・cm-2以上5.0J・cm-2以下のエネルギーを有するレーザを照射する。
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るステンレス鋼の製造方法は、電気陰性度が1.5以上2.5以下の元素である少なくとも1種類の特定元素を含む溶液を、ステンレス鋼に滴下する滴下工程と、上記溶液が滴下された上記ステンレス鋼にレーザ照射を行う照射工程と、を含み、上記照射工程では、波長が1080~1090nmであり、0.2J・cm-2以上5.0J・cm-2以下のエネルギーを有するレーザを照射する。
本発明の一態様によれば、加工性が高く表面接触抵抗が低いステンレス鋼を実現することができる。
本発明の実施形態1に係るステンレス鋼を用いたステンレス鋼製接点用部材の概略断面図である。 ステンレス鋼製接点用部材が用いられている、嵌合状態の端子を示す概略断面図である。 各条件により製造したステンレス鋼について行った測定の結果を示すグラフである。
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をよりよく理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものでは無い。また、本出願において、「A~B」とは、A以上B以下であることを示している。本明細書において、「ステンレス鋼」との用語は、「ステンレス鋼板」および「ステンレス鋼帯」を含む意味で用いる。また、以下に示す成分の割合は、質量%の値を示している。
<実施形態1に係るステンレス鋼10の構成>
図1は、本発明の実施形態1に係るステンレス鋼10を用いたステンレス鋼製接点用部材1の概略断面図である。また、図2は、ステンレス鋼製接点用部材1が用いられている、嵌合状態の端子11を示す概略断面図である。図1に示すように、ステンレス鋼製接点用部材1は、ステンレス鋼10によって形成されている。ステンレス鋼製接点用部材とは、電気・電子機器等に組み込まれる銅やアルミニウム電線を接続するハーネス等のコネクター等配線端子として用いられる部材である。また、ステンレス鋼製接点用部材1は、押しボタンスイッチ等に組み込まれるメタルドーム等の接点材料としても用いられる。図2に示すように、ステンレス鋼製接点用部材1は、例えば端子11の部材として用いられる。なお、図2において、斜線によって示される部分はステンレス鋼製接点用部材1が用いられている部分である。
また、図1に示すように、本発明の実施形態1に係るステンレス鋼10では、基材2の表面に皮膜3を有する。また、皮膜3の最表面から2nmの位置(図1において破線4で示す位置)において、皮膜3を構成する成分の割合が酸化Cr:15~45%、金属Cr:3~20%、酸化Fe:8~25%、金属Fe:10~40%、および特定元素:5~56%である。さらに、ステンレス鋼10の表面粗さRaは、0.17μm以上である。皮膜3の最表面から2nmの位置における元素(成分)の組成は、光電子分光分析装置を用いることで測定することができる。より詳細には、例えばArイオンでエッチングし、その後X線を照射して放出される光電子のスペクトルを解析することにより、皮膜3の最表面から2nmの位置における成分濃度を求めることができる。また、ステンレス鋼10の表面粗さRaは、触針式表面粗さ測定器を用いることで測定することができる。
また、皮膜3全体の厚さ(図1において矢印5で示す長さ)は、20nm以下である。皮膜3の厚さは、光電子分光分析装置を用いることで測定することができる。具体的には、光電子分光分析装置によって測定されたO(酸素)最大ピークの1/2を皮膜3の厚さとする。
ステンレス鋼10の基材2として用いられるステンレス鋼は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト・フェライト(2相系)、または析出硬化系ステンレス鋼等であることが好ましい。具体例としては、SUS301、SUS304、SUS316、SUS410、またはSUS430等が挙げられる。また、基材2に施される表面仕上げの方法は、光輝焼鈍仕上げ、酸洗仕上げ、酸洗後軽圧延仕上げ、および調質圧延仕上げ、HL仕上げ(研磨目を付与したもの)、ダル仕上げ(調質圧延時に目の粗いロールを使用して基材に転写したもの)、および鏡面仕上げ(バフ研磨にて表面光沢を高めたもの)等が挙げられる。
皮膜3に含まれる酸化Crとは、例えば、Cr、またはCr(OH)等である。また、酸化Feとは、例えばFe、Fe等である。また、特定元素は、電気陰性度1.5~2.5の少なくとも1種類の元素である。電気陰性度が2.5を超えると、皮膜中の元素がイオン結合状態となる。また、電気陰性度が1.5未満の元素は、安定した共有結合状態となる。そのため、電気陰性度が1.5未満、または2.5を超える元素を特定元素として用いた場合、電気伝導度が著しく劣るようになる。特定元素は、Al、Si、Sn、Ti、Ag、およびCuのうち少なくとも1種であることが特に好ましい。
本発明者らは、皮膜3が上記組成を有することにより表面接触電気抵抗が低くなることを見出した。
ここで、皮膜3に含まれる成分の割合および表面粗さについて説明する。まず、ステンレス鋼10の皮膜3中には、金属Cr、金属Fe、酸化Cr、酸化Fe、および特定元素が存在すると考えられる。また、特定元素の多くは酸化物の状態で存在すると考えられる。また、酸化物(特定元素の酸化物、酸化Crおよび酸化Fe)は、電気伝導性が低い電気を通しにくいため、皮膜3中における割合が増加するとステンレス鋼10の接触抵抗が上昇する。また、金属元素(金属Crおよび金属Fe)は、電気伝導性が高いため、皮膜3中における割合が増加するとステンレス鋼10の接触抵抗が低下する。
皮膜3中において、特定元素が56%を超える、酸化Crが45%を超える、あるいは酸化Feが25%を超える場合、皮膜3中において導電性が非常に低い部分の割合が高くなる。また、皮膜3に含まれる金属Crが3%未満である、あるいは金属Feが10%未満である場合、皮膜3中において導電性が高い部分の割合が低くなる。従って、皮膜3に含まれる成分の割合および表面粗さが上述の範囲から外れたステンレス鋼10は、接点用部材として適さない。
一方、皮膜3中において、金属Crが20%を超える、あるいは金属Feが10%を超える場合、ステンレス鋼10は、接点用部材としてはより好ましいステンレス鋼となる。しかしながら、下記に示すステンレス鋼10の製造方法では、金属Crおよび金属Feについて設定の範囲を超える皮膜3を形成することは困難である。
なお、皮膜3に含まれる酸化Crについて、皮膜3形成時に照射されるレーザのフルエンスエネルギーが低い場合、Cr(OH)よりもCrの割合が高くなる。反対に当該レーザのフルエンスエネルギーが高い場合、CrよりもCr(OH)の割合が高くなる。ここで、皮膜3中のCrの割合が高い場合、皮膜3中の特定元素の割合も高くなる。従って、皮膜3に含まれる酸化Crにおいて、CrよりもCr(OH)の割合が高い方が好ましい。
また、ステンレス鋼10の表面粗さは、粗いほど(数値が高いほど)接触抵抗が低下するため好ましい。従って、上述したように、本実施形態におけるステンレス鋼10の表面粗さRaは、0.17μm以上となっている。一方、ステンレス鋼10の表面粗さが0.17未満である場合、皮膜3の構造が均一になっていると考えられる。この場合、ステンレス鋼10の接触抵抗は高くなるため、接点用部材として適さない。
以上のように、本発明の実施形態1に係るステンレス鋼10は、ステンレス鋼製接点用部材1として用いられるステンレス鋼である。また、ステンレス鋼10において基材2の表層に特定元素を主体とする皮膜3が形成されている。また、好ましくは、皮膜3にはCrのほかに、特定元素として、Al、Cu、Si、Ti、Sn、Ag、またはNi等のうち、少なくとも1種以上の金属元素が含まれている。
<実施形態1に係るステンレス鋼10の効果>
本発明の実施形態1に係るステンレス鋼10では、基材2の表層に、さらに皮膜3を有する。また、皮膜3の表層から2nmの位置において、皮膜3を構成する元素の割合がCrO:15~45%、金属Cr:3~20%、FeO:8~25%、金属Fe:10~40%、および特定元素:5~56%である。さらに、皮膜3の表面粗さRaは、0.17μm以上である。
実施形態1に係るステンレス鋼10およびステンレス鋼10を用いるステンレス鋼製接点用部材1は、上記構成を有している。そのため、特許文献1または特許文献2に記載のステンレス鋼のようにCu等硬質な物質を析出させることなく接触抵抗を小さくすることができる。従って、ステンレス鋼製接点用部材1では、接触抵抗を改善しつつ加工性に関する問題が発生する可能性を抑制することができる。
また、皮膜3に、Crのほかに、Al、Cu、Si、Ti、Sn、Ag、またはNi等の金属元素が少なくとも1種以上含まれている場合、特にステンレス鋼製接点用部材1表面の接触抵抗を改善することができる。
<実施形態1に係るステンレス鋼10の製造方法>
本発明の一態様におけるステンレス鋼10の製造方法(以下、単に「本製造方法」と称することがある)について、以下に説明する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、レーザ誘起湿式改質法をステンレス鋼に適用することが可能であるという知見を得て、本製造方法を想到した。
本製造方法は、一般的な製造工程(後述の説明を参照)によって製造された、ステンレス鋼にレーザ誘起湿式改質法(後述の浸漬工程および照射工程)を施すことを特徴とする。上記方法により、ステンレス鋼の表層に形成された酸化被膜(不働態皮膜)が改質され、皮膜3となる。
まず、一般的なステンレス鋼の製造方法について説明する。一般的なステンレス鋼の製造方法では、溶解工程、鋳造工程、およびスラブ表面研削工程を行った後、1100℃~1300℃に加熱されたスラブを熱間圧延することで熱延鋼帯とする熱間圧延工程、焼鈍・酸洗工程、冷間圧延工程、および仕上げ工程を行う。なお、熱間圧延工程の後、焼鈍・酸洗工程および冷間圧延工程を繰り返し、最終板厚とした焼鈍材を基材2として用いてもよい。他には、光輝焼鈍仕上げ材、あるいは調質圧延仕上げ材を基材2として用いてもよい。
次に、浸漬工程および照射工程について説明する。浸漬工程では、仕上げ工程を行った後の基材2を、特定元素を含有する溶液中に浸漬する。ここで、特定元素とは、基材2の表層に形成される皮膜3に含有されることによって、表面接触抵抗を改善することが可能な元素である。接触抵抗を改善するとは、接触抵抗を低くすることであり、ステンレス鋼製接点用部材1表面の電気伝導度を向上させることを意味する。
特定元素を含む溶液は、室温(約25℃)であり、また濃度が40質量%以下であることが好ましい。具体的には、特定元素を含む溶液として、硝酸アルミニウム水溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液、硫酸スズ水溶液、硫酸チタン水溶液、硝酸銀水溶液、または硝酸銅水溶液等を用いることができる。
続いて、基材2を溶液中に浸漬した状態において、基材2表面にレーザ照射処理を行う(照射工程)。照射工程では、波長1080~1090nmのパルス波、または連続波のレーザを用いる。また、照射するレーザのフルエンスエネルギーは0.2~6.6J・cm-2、好ましくは0.2~5.0J・cm-2とする。照射するレーザのフルエンスエネルギーが0.2J・cm-2を下回る場合、基材2の表面に含有される特定元素の量が不足するため、所望の組成を有する皮膜3を得ることができない。一方、照射するレーザのフルエンスエネルギーが6.6J・cm-2を上回る場合、当該レーザを照射された薄ゲージの基材2は著しく変形する、あるいは外観が著しく悪化するため、接点用部材として使用不可となる。また、照射するレーザのフルエンスエネルギーの上限を5.0J・cm-2とすることにより、熱の影響等により基材2が変形すること防止することができるので好ましい。
<実施形態1に係るステンレス鋼10の製造方法の効果>
本発明の実施形態1に係る製造方法は、ステンレス鋼を浸漬する浸漬工程と、上記溶液中で上記ステンレス鋼にレーザ照射を行う照射工程と、を含み、上記照射工程では、波長が1080~1090nmであり、0.2J・cm-2以上6.0J・cm-2以下のエネルギーを有するレーザを照射する。当該製造方法によって、本発明の実施形態1に係るステンレス鋼10が製造される。
従来、ステンレス鋼を接点用部材として用いる場合、ステンレス鋼表面の不働態皮膜を除去した後、密着性の優れる下地めっき処理を施し、さらに上層に電気伝導性に優れるスズや金、または銀などの貴金属のめっきを施す方法が用いられることがあった。当該方法を用いた場合、ステンレス鋼表面の接触抵抗は改善する。また、金属めっき以外では、カーボン質被覆層などを形成する場合もある。
但し、上述の方法によって製造されたステンレス鋼には、以下の問題が存在した。例えばスズめっきが施されたステンレス鋼ではウィスカーが発生しやすく、絶縁不良を招きやすい。また、ウィスカーの発生しにくいスズ‐鉛合金では鉛の廃液処理が問題となる。
また、貴金属によるめっきが施されたステンレス鋼では、例えば銀を用いた場合、イオンマイグレーションが発生しやすいため接触不良を招きやすい。また、金を用いた場合、めっき液にシアンを用いるため廃液処理の問題があり、環境に対する負荷が大きい。
本発明の実施形態1に係るステンレス鋼10の製造方法では、上述の方法のようにめっきを施す、あるいはカーボン質被覆層を形成する必要なく接触抵抗を低くすることができる。従ってステンレス鋼製接点用部材1では絶縁不良、接触不良、および廃液処理等の問題が発生する可能性が低減されている。
また、ステンレス鋼10の製造時には、製造時に鉛およびシアン等環境負荷の大きい廃液が発生する物質を使用しないため、廃液処理の問題が少ない。また、製造されたステンレス鋼10は、部品として組み込んだ後もめっき皮膜に起因するイオンマイグレーション、接触不良、あるいは絶縁不良を起こす可能性が低い。
さらに、ステンレス鋼10の製造時には、多量の合金添加およびめっき処理が不要であるため、コスト性に優れ、かつリサイクル性を合わせ持つ製品を提供することができる。
上述の実施形態1では、基材2に浸漬工程および照射工程を施すことによってステンレス鋼10を製造した。しかし、浸漬工程に代えて滴下工程を基材2に施してもよい。滴下工程とは、特定元素を含有する溶液を、基材2に滴下する工程である。なお、溶液は、基材2の表面全体が濡れる程度に滴下されればよい。その後、溶液が滴下された基材2に照射工程を施すことによって実施形態1に係るステンレス鋼10が製造される。
本発明の一実施例について以下に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。図3は、各条件により製造したステンレス鋼について行った測定の結果を示すグラフである。
本実施例においては、板厚1.0mmのステンレス鋼(SUS410)を基材2として作製し、使用した。また、表1に示す条件の溶液を作製し使用した。
Figure 0007407615000001
続いて、各条件の溶液に基材2を浸漬し、浸漬したステンレス鋼に対してレーザ照射を行い、本発明の実施例としてのステンレス鋼A1~A16および比較例としてのステンレス鋼B1~B4を作製した。使用したレーザの条件は表2に示す通りである。
Figure 0007407615000002
また、東京精密製;SURFCOM2900DXを用いてカットオフ0.8、評価長さ4.0mm、算出規格JIS2001にて各ステンレス鋼の表面粗さ(Ra)を測定した。また、山崎精機研究所製;電気接点シミュレータORS-1を用いて、作製した各ステンレス鋼表面の接触抵抗の値を測定し、測定荷重100gでの抵抗値(mΩ)が60以下のものを合格とした。また、作製したステンレス鋼に対して、光電子分光分析装置(アルバックファイ社製;Quantera SXM)を用いて分析を行い、各ステンレス鋼の皮膜に含まれる物質の比率を測定した。測定に用いた装置の仕様は表3に示す通りである。
Figure 0007407615000003
Figure 0007407615000004
表4には、各ステンレス鋼の製造条件および各測定の結果を示している。図3および表4に示す通り、実施例として本発明に係る条件に基づいて製造されたステンレス鋼(A1~A16)は、所定の条件(表面粗さ(Ra)が0.17μm以上であり、皮膜を構成する元素の割合がCrO:15~45%、金属Cr:3~20%、FeO:8~25%、金属Fe:10~40%、および特定元素:5~56%)を満たしていた。また、ステンレス鋼A1~A16は、全て優れた接触抵抗の値(60mΩ以下)を示した。これに対して、比較例のステンレス鋼(B1~B4)は、表面粗さ、あるいは皮膜を構成する元素の割合のうちのいずれかが所定の条件を満たしておらず、また、実施例のステンレス鋼と比較すると接触抵抗が劣り、60mΩを超える結果となった。
具体的には、B1では、皮膜に含まれる酸化Cr、金属Cr、およびAlの割合が所定の条件を下回り、また、皮膜に含まれる酸化Feの割合が所定の条件を超えていた。これは、照射工程におけるレーザのフルエンスエネルギーが過剰であったことが原因であると考えられる。また、B2では、表層に形成された皮膜に酸化Crおよび金属Crが十分に含まれなかったと考えられる条件を下回り、また、皮膜に含まれるAlの割合が所定の条件を上回った。これは、照射工程におけるレーザのフルエンスエネルギーが低すぎたことにより、表層に形成された皮膜に酸化Crおよび金属Crが十分に含まれなかったことが原因と考えられる。
また、B3では、基材2としてのステンレス鋼について測定を行った。B3では、表層に含まれる酸化Cr、金属Cr、およびAlの割合が所定の条件を下回り、酸化Feの割合が所定の条件を上回っていた。また、B4では、浸漬工程のみを行い、照射工程を行わない基材2について測定を行った。その結果、表層に含まれる酸化CrおよびAlの割合が所定の条件を下回り、金属Feの割合が所定の条件を上回った。特にAlはB4の表層において検出されなかった。B3およびB4では、照射工程が行われなかったため、ステンレス鋼表層の改質が行われず、皮膜3が形成されなかったことが原因と考えられる。
1 ステンレス鋼製接点用部材
2 基材
3 皮膜
10 ステンレス鋼

Claims (7)

  1. 表面粗さRaが0.17μm以上であり、表面に皮膜を有するステンレス鋼であって、
    上記皮膜の厚さは20nm以下であり、
    上記皮膜の最表面から2nmの位置において、上記皮膜を構成する成分の割合が酸化Cr:15~45%、金属Cr:3~20%、酸化Fe:8~25%、金属Fe:10~40%、および特定元素:5~56%を含み、
    上記特定元素は、電気陰性度1.5以上2.5以下の少なくとも1種類の元素であり、
    光電子分光分析装置によって測定されたO(酸素)最大ピークの1/2を前記皮膜の厚さとする、ステンレス鋼。
  2. 上記特定元素は、Al、Si、Cu、Sn、Ti、およびNiのうち、少なくとも1種を含む、請求項1に記載のステンレス鋼。
  3. 上記ステンレス鋼は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、二相系、または析出硬化系ステンレス鋼である、請求項1または2に記載のステンレス鋼。
  4. 上記ステンレス鋼は、光輝焼鈍、酸洗仕上げ、または調質圧延仕上げを施されたステンレス鋼である、請求項1~3のいずれか1項に記載のステンレス鋼。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のステンレス鋼を接点に適用した接点用部材。
  6. 電気陰性度が1.5以上2.5以下の元素である少なくとも1種類の特定元素を含む溶液中に、ステンレス鋼を浸漬する浸漬工程と、上記溶液中で上記ステンレス鋼にレーザ照射を行う照射工程と、を含み、
    上記照射工程では、波長が1080~1090nmであり、0.2J・cm-2以上5.0J・cm-2以下のエネルギーを有するレーザを照射する、ステンレス鋼の製造方法。
  7. 電気陰性度が1.5以上2.5以下の元素である少なくとも1種類の特定元素を含む溶液を、ステンレス鋼に滴下する滴下工程と、上記溶液が滴下された上記ステンレス鋼にレーザ照射を行う照射工程と、を含み、
    上記照射工程では、波長が1080~1090nmであり、0.2J・cm-2以上5.0J・cm-2以下のエネルギーを有するレーザを照射する、ステンレス鋼の製造方法。
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