JP7407480B1 - 還元部材、分析装置、および分析方法 - Google Patents

還元部材、分析装置、および分析方法 Download PDF

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Abstract

環境汚染の原因となるカドミウムを用いることなく、且つカラムの目詰まりの問題を解決した、試料中の窒素の連続的な分析装置および分析方法を提供する。試料を管路に導入する試料導入工程と、前記管路内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元工程と、前記還元工程で生成した試料中のアンモニウムイオンを分析する分析工程とを含む分析方法により解決する。前記還元工程では、少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管の中を試料が移送されることによって、試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元する。

Description

本発明は、還元部材、分析装置、および分析方法に関する。
従来、海水および汽水の全窒素の測定には、銅・カドミウム還元法が用いられてきた。しかし、銅・カドミウム還元法では、分析後の廃水にカドミウムが混ざるという問題、および銅・カドミウムカラムを特別管理廃棄物として廃棄する必要があるという問題等、環境汚染の観点からの問題があった。
かかる問題を解決する測定方法として、銅被覆した亜鉛粒子を充填したカラムで、海水中に溶存する硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとし、このアンモニウムイオンと元来海水中に溶存するアンモニウムイオンとを定量する、海水中の溶存態窒素の測定方法が開示されている。
日本国特開2009-115758号
特許文献1に開示されている従来技術は、カドミウムを使用しないため、環境負荷の問題は解決される。しかし、当該従来技術は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元に、銅被覆した亜鉛粒子を充填したカラムを用いるため、試料中の懸濁物質等によりカラムが目詰まりを起こすという問題がある。
このような目詰まりを防止する対策として、試料をろ過すること、およびカラムの前にガードカラムを設置すること等が考えられる。しかし、これらの方法では、特許文献1のように、溶存態無機窒素(DIN)として海水試料中の窒素をそのまま分析する方法では、懸濁物質が除かれてしまうため、試料中の懸濁物質をも含む、硝酸態イオン、亜硝酸イオンおよびアンモニウムイオンの合計量を正確に測定できなくなるという問題点がある。
本発明は、環境汚染の原因となるカドミウムを用いることなく、且つカラムの目詰まりの問題を解決した、試料中の窒素の連続的な分析装置および分析方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、これまでにない新規な還元部材を使用することにより、前記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明の一態様は、以下の構成を含むものである。
〔1〕少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管であり、当該管の中を試料が移送されるようになっている、還元部材。
〔2〕試料を管路に導入する試料導入部と、前記管路内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元部と、前記還元部で生成した試料中のアンモニウムイオンを分析する分析部と、を含む、分析装置であって、前記還元部は、〔1〕に記載の還元部材を含む、分析装置。
〔3〕試料を管路に導入する試料導入工程と、前記管路内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元工程と、前記還元工程で生成した試料中のアンモニウムイオンを分析する分析工程と、を含む、分析方法であって、前記還元工程は、少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管の中を試料が移送されることによって、試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元する、分析方法。
本発明の一実施形態によれば、環境汚染の原因となるカドミウムを用いることなく、且つカラムの目詰まりの問題を解決した、試料中の窒素の連続的な分析装置および分析方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る分析装置の概略構成を示す図である。 本発明の一実施形態に係る分析装置の概略構成を示す図である。 本発明の一実施形態に係る分析装置の概略構成を示す図である。 本発明の一実施形態に係る分析装置のガス透過部を模式的に示す図である。 サリチル酸によるインドフェノール青吸光光度法におけるベースラインを示す図である。 サリチル酸によるインドフェノール青吸光光度法におけるベースラインを示す図である。 実施例において、流れ分析を行った結果を示す図である。 還元部材の例を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
[1]還元部材
本発明の一実施形態に係る還元部材は、少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管であり、当該管の中を試料が移送されるようになっている。本発明の一実施形態に係る還元部材は、かかる構成により、当該管内で試料を移送すると同時に、当該移送される試料に含まれうる硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとすることができる。このような還元部材によれば、従来用いられていた、銅被覆した亜鉛粒子を充填したカラムにおける目詰まりの問題がなく、また懸濁物質を含んだ状態で試料を移送し、当該試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元することができるので、試料中に含まれる、硝酸イオン、亜硝酸イオン及びアンモニウムイオンの合計量の正確な分析を行うことができる。
ここで、本明細書において、「試料に含まれうる硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする」、および「試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする」とは、試料中に、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくともいずれかが含まれる場合に、その含まれる、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの少なくともいずれかを還元してアンモニウムイオンとすることを意味する。
本発明の一実施形態に係る還元部材の管の内径は、これに限定されるものではないが、好ましくは0.5mm~1.5mmであり、より好ましくは0.6mm~1.4mmであり、さらに好ましくは0.7mm~1.3mmであり、特に好ましくは0.8mm~1.2mmであり、最も好ましくは0.9mm~1.1mmである。前記内径が0.5mm以上であれば、当該管内に試料を適度な速度で移送することができる。また、前記内径が1.5mm以下であれば、当該管内を移送される試料が、当該管の管壁に接触する頻度が増え、それゆえ試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを十分に還元することができるため好ましい。
本発明の一実施形態に係る還元部材の管の管壁の厚みは、これに限定されるものではないが、好ましくは0.1mm~1.5mmであり、より好ましくは0.2mm~1.0mmであり、さらに好ましくは0.3mm~0.7mmであり、最も好ましくは0.4mm~0.6mmである。前記厚みが、0.1mm以上であれば、還元部材としての強度が十分であるため好ましい。また、前記厚みが1.5mm以下であれば、所望の形状に加工できるため好ましい。
本発明の一実施形態に係る還元部材の管の長さは、これに限定されるものではないが、好ましくは100mm~1000mmであり、より好ましくは200mm~900mmであり、さらに好ましくは300mm~800mmであり、最も好ましくは400mm~700mmである。前記長さが、100mm以上であれば、当該管内を移送される試料が、当該管の管壁に接触する頻度が増え、それゆえ試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを十分に還元することができるため好ましい。また、前記長さが1000mm以下であれば、試料の移送に時間がかかりすぎないため、分析に要する時間を短縮することができる。
本発明の一実施形態に係る還元部材の管の断面形状は通常は円形であるが、楕円形または多角形であってもよい。
本発明の一実施形態に係る還元部材の管の形状は特に限定されるものではなく、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。中でも前記形状は、より好ましくは曲線状であり、さらに好ましくは、円等の図形を描きながら、その図形面に垂直な方向に移動する形状であることがより好ましい。前記図形は特に限定されるものではないが、例えば、円、楕円、8の字形等であり、管の形状としては、例えば、螺旋形、8の字螺旋形等を挙げることができる。図8に還元部材の例を模式的に示す。図8の(a)は螺旋形の還元部材であり、(b)は8の字螺旋形の還元部材である。前記形状によれば、管内を移送される試料が、管内を旋回しながら移送されるため、試料が均一に混合されるとともに、当該管の管壁に接触する頻度が増える。それゆえ試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを十分に還元することができるため好ましい。螺旋形、8の字螺旋形等の螺旋のターン数も特に限定されるものではないが、例えば、1ターン~20ターンであり、より好ましくは2ターン~10ターンであり、さらに好ましくは4ターン~7ターンである。前記ターン数が1ターン以上であれば、試料がより均一に混合されるとともに、当該管の管壁に接触する頻度が増えるため好ましい。また、前記ターン数が20ターン以下であれば装置のコンパクト化を図れるため好ましい。
前記管の形状が、例えば螺旋形である場合、その螺旋形の外直径(「コイル径」という)は、特に限定されるものではないが、例えば、10mm~70mmであり、より好ましくは15mm~60mmであり、さらに好ましくは20mm~50mmであり、最も好ましくは25mm~40mmである。前記コイル径が、10mm以上であれば、安定的に液を送流できるため好ましい。また、前記コイル径が70mm以下であれば、液をより適正に混合できるため好ましい。
前記管の形状が、例えば螺旋形である場合、そのコイルピッチは、特に限定されるものではないが、例えば、0.7mm~40mmであり、より好ましくは0.8mm~30mmであり、さらに好ましくは0.9mm~25mmである。前記コイルピッチが、0.7mm以上であれば、好ましい管径の管を巻いた還元部材を形成できるため好ましい。また、前記コイル径が40mm以下であれば、還元部材のサイズが場所を取らないサイズであるため好ましい。また、前記管の形状が、例えば螺旋形である場合、管の間隔を開けずに管を詰めて巻くことも好ましい。かかる場合も、そのコイルピッチは、特に限定されるものではないが、例えば、0.7mm~5.0mmであり、より好ましくは1.0mm~4.5mmであり、さらに好ましくは1.2mm~4.0mmである。
前記管の形状が、例えば8の字螺旋形である場合、その8の字の最大長さは、螺旋形の場合のコイル径と同様であり、そのピッチは、螺旋形の場合のコイルピッチと同様である。
本発明の一実施形態に係る還元部材の管は、少なくとも内壁面が亜鉛からなる管であればよい。当該構成によれば、亜鉛が還元剤として機能し、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンをアンモニウムイオンまで還元することができる。また、亜鉛を使用することにより、カドミウムを使用しないことが可能となり、環境負荷の問題が解決される。前記還元部材の管は、使用する金属の安全性、製造の容易さ、および還元剤として長期間使用できる点から、当該管全体が亜鉛からなるものであることがより好ましい。
本発明の一実施形態においては、前記管又は管の内壁面を形成する亜鉛は、少なくとも当該管の内側が銅で被覆されていることがより好ましい。前記管の内側が銅で被覆されていることにより、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンのアンモニウムイオンへの還元率を高めることができる。銅による被覆の厚みは特に限定されないが、例えば、0.5μm~300μmであり、より好ましくは10μm~200μmである。銅による被覆の厚みが0.5μm以上であれば、長期間硝酸イオンおよび亜硝酸イオンのアンモニウムイオンへの還元率を高めることができるため好ましい。また、銅による被覆の厚みが300μm以下であれば、当該管の内径が小さくなりすぎないため好ましい。前記管を形成する亜鉛を銅で被覆する方法は特に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤を含む硫酸銅水溶液に、少なくとも内壁面が亜鉛からなる、前記中空の管を浸漬する方法を挙げることができる。当該方法における前記硫酸銅水溶液の全重量に対する前記キレート剤の含有量は、1重量%~10重量%であることが好ましい。また、前記硫酸銅水溶液の全重量に対する硫酸銅の含有量は0.5重量%~5重量%であることが好ましい。前記管を浸漬する前記硫酸銅水溶液のpHは6~8であることが好ましく、浸漬時間は12時間~24時間であることが好ましい。或いは、前記少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管の管内に前記硫酸銅水溶液を流す方法または管内に前記硫酸銅水溶液を滞留させる方法によって、前記管又は管の内壁面を形成する亜鉛を銅で被覆してもよい。
[2]分析装置
本発明の一実施形態に係る分析装置は、試料を管路に導入する試料導入部と、前記管路内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元部と、前記還元部で生成した試料中のアンモニウムイオンを分析する分析部と、を含む、分析装置であって、前記還元部は、前述した、本発明の一実施形態に係る還元部材を含む。
前記分析装置によれば、環境汚染の原因となるカドミウムを用いることなく、且つカラムの目詰まりの問題を解決した、試料(例えば海水・汽水域の試料)中の窒素等(硝酸、亜硝酸、およびアンモニアの合計量)の連続的な分析が可能となる。
本発明の一実施形態において、前記分析装置は流れ分析装置であり得る。流れ分析装置によれば、管路内に、連続的に試料を導入し、管路内で還元を行い、管路内に試薬を導入して反応をさせ、分析部で連続的に分析データを計測することができる。
[2.1]実施形態1
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る流れ分析装置の概略構成を示す。
本発明の実施形態1に係る流れ分析装置は、試料を管路7に導入する試料導入部1と、前記管路7に導入される試料に対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを前記管路7内に作製する気泡分節部4と、前記管路7内を移送される試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部5と、前記管路7内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元部2と、還元部2を経て前記管路7内を移送されるアンモニウムイオンを含む試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部5と、ガス透過部6と、ガス透過部6を経て前記管路7内を移送されるアンモニウムイオンを含む試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部5と、試料中のアンモニウムイオンを分析する分析部3と、を含む。
試料導入部1は、試料をサンプリングして管路7に導入するための装置である。本発明の一実施形態において、試料導入部1は、試料を管路7に導く採取管と、前記採取管に吸引力を付与するサンプリング用ポンプとを備えている。前記サンプリング用ポンプにより、試料が管路7内に所定の流量で導入される。前記試料は分析対象となる物質または元素を含む液体である。
気泡分節部4は、前記管路7に導入された試料に対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを前記管路7内に作製するための装置である。本発明の一実施形態において、気泡分節部4は、気体を管路7に導く気体導入管と、前記気体導入管に吸引力を付与する気体導入用ポンプとを備えている。気泡分節を行うことにより、気泡で分断された分節液内での渦流により試薬等の混合を好適に行うことができるとともに、還元部2において、管内を移送される試料が還元部2の管壁に接触する頻度が増え、それゆえ試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを十分にアンモニウムイオンに還元することができる。また、分節液は、気泡で分断され独立して管路7内を流れるため、試料間相互の拡散を防ぐことができる。このように、試料が気泡によって分節された、管路内の連続的な流れの中に、試薬を導入し、反応操作を行った後、下流に設けた検出器で分析を行う方法は、連続流れ分析法(CFA)と呼ばれる。気泡分節の気体としては、アルゴン及びヘリウム等の不活性ガス;窒素等の様々な気体を用いることができる。これらの気体は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いることもできる。中でも、前記気体は、窒素、および/またはアルゴン及びヘリウム等の不活性ガスであることがより好ましい。前記気体が、窒素、および/またはアルゴン及びヘリウム等の不活性ガスであれば、気体中に酸素が含まれないため、酸素による還元部2の管壁の酸化を防ぐことができる。それゆえ、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンのアンモニウムイオンへの還元率を高く維持することができるため好ましい。
試薬導入部5は、前記管路7内を移送される試料の流れの中に試薬を添加するための装置である。試薬導入部5は、試薬を管路7に導く試薬導入管と、前記試薬導入管に吸引力を付与する試薬導入用ポンプとを備えている。気泡分節部4の下流で、且つ、還元部2の上流に備えられている試薬導入部5にて添加される試薬としては、例えば、EDTA、クエン酸、トランス-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸-水和物(CyDTA)等のキレート剤を挙げることができる。還元部2の上流において、前記キレート剤を添加することにより、後段の還元部2にて、還元部材から亜鉛イオンまたは銅イオンが試料中に溶出する場合に、当該キレート剤が溶出したこれらのイオンと安定的な錯体を形成して、遊離の亜鉛イオンまたは銅イオンの濃度を低下させることができる。それゆえ、亜鉛イオン-亜鉛間、または銅イオン-銅間の電位を低下させて、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンのアンモニウムイオンへの還元を効率的に行うことができる。図1の例では、気泡分節部4の下流で、且つ、還元部2の上流に、試薬導入部5が備えられているが、当該試薬導入部5は、試料導入部1の下流で、且つ、気泡分節部4の上流に備えられていてもよい。
還元部2は、前記管路7内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとするための装置である。還元部2は、前述した、本発明の一実施形態に係る還元部材を含み、その管の中を試料が移送されるようになっている。前記管路7は、還元部2の還元部材の前記管の両端と接続されており、前記管路7内を移送される試料がそのまま連続的に還元部材の前記管内を移送され、前記管を通過した試料は、引き続き連続的に管路7を移送される。言い換えれば、還元部2の還元部材の管が、管路7となる。前記管路7と還元部2の還元部材の前記管の両端との接続部分は、管内を移送される試料および気体が管路内に密閉されるように接続されている。前記管路7の内径と、還元部2の還元部材の前記管の内径とは、試料を連続的に移送できれば、同じであっても異なっていてもよい。
還元部2を経て前記管路7内を移送されるアンモニウムイオンを含む試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部5は、還元部2の下流で、且つ、ガス透過部6の上流に備えられている。試薬導入部5は、試薬を管路7に導く試薬導入管と、前記試薬導入管に吸引力を付与する試薬導入用ポンプとを備えている。還元部2の下流で、且つ、ガス透過部6の上流に備えられている試薬導入部5にて添加される試薬としては、例えば、pHをアルカリ側にする試薬として水酸化ナトリウム等のアルカリを挙げることができる。還元部2の下流で、且つ、ガス透過部6の上流にて、アルカリを添加することにより、試料中のアンモニウムイオンを、ガス化してアンモニアガスとすることができる。また、前記水酸化ナトリウム等のアルカリにホウ酸等を加えた緩衝液を添加してもよい。前記アルカリとしては、水酸化ナトリウムに限定されるものではなく、pHをアルカリ側にする試薬を適宜選択することができる。緩衝液を調製するための試薬についても、ホウ酸に限定されるものではなく、他の緩衝液を適宜選択して添加してもよい。
ガス透過部6は、ガス状となったアンモニアを透過させて分離する装置である。図4は、ガス透過部6を模式的に示す図である。図4に示すように、ガス状のアンモニアを含む試料(図4中、「試料+試薬」と記載)が、ガス透過部6に移送されると、試料中のアンモニアガスのみが、ガス透過部6のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質フィルター12を透過し、試料の残りの部分は廃液として排出される。PTFE多孔質フィルター12を透過した、アンモニアガスは、受流試薬に吸収されて再びアンモニウムイオンとなる。当該アンモニウムイオンを吸収した受流試薬は、ガス透過部6の下流に接続された管路7内を移送され、分析に供される。なお、図4中では、アンモニアガスがPTFE多孔質フィルター12を透過することを示すために、PTFE多孔質フィルター12を透過した後もNHと記載しているが、その後受流試薬に吸収されてNH4となる。前記受流試薬は、ガス状のアンモニアを吸収してアンモニウムイオンに変換することができる試薬であれば特に限定されないが、例えば、硫酸等の酸を使用することができる。前記酸としては、硫酸に限定されるものではなく、ガス状のアンモニアを吸収する試薬を適宜選択することができる。また、硫酸等の酸とともに、アンモニウムイオンの検出に用いる試薬を含めてもよい。かかる試薬としては、例えば、アンモニウムの検出に使用される試薬等を挙げることができる。かかる試薬は特に限定されるものではないが、例えば、インドフェノール青吸光光度法に使用されるニトロプルシッドNa等の試薬を挙げることができる。前記受流試薬は、気泡で分節されて供給されてもよい。当該気泡分節に使用される気体としては、アルゴン及びヘリウム等の不活性ガス;窒素;酸素;及び空気等の様々な気体を用いることができる。また、図4の例では、PTFE多孔質フィルターを用いているが、ガス状のアンモニアを選択的に透過するフィルターであればこれに限定されるものではない。
ガス透過部6により、ガス状となったアンモニアを選択的に透過させて分離することにより、還元部2で還元された試料中のアンモニウムイオンの量、言い換えれば、アンモニアイオンに還元された硝酸イオンの窒素(硝酸態窒素)の量と、アンモニアイオンに還元された亜硝酸イオンの窒素(亜硝酸態窒素)の量と、元来試料中に含まれていたアンモニウムオンの窒素(アンモニア態窒素)の量との合計を正確に分析することができる。
加えて、ガス透過部6を備えることにより、後述する実施例に示すように、サリチル酸を用いたインドフェノール青吸光光度法によるアンモニウムイオンの定量において、測定チャートのベースラインを安定化させることができる。サリチル酸を用いたインドフェノール青吸光光度法は、フェノールを用いたインドフェノール青吸光光度法と比べて、人体に有害な化学物質であるフェノールを使用しない点、フェノールの環境中への排出がない点で好ましい。しかし、本発明者が、ガス透過部6を備えていない装置により、サリチル酸を用いたインドフェノール青吸光光度法による分析を行ったところ、図5に示すようにベースラインが安定しないことを見出した。特に、微量の硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、およびアンモニア態窒素を含む試料では、ベースラインが安定していることが求められる。そこで、本発明者が、ガス透過部6を備える装置を用いて、サリチル酸を用いたインドフェノール青吸光光度法による分析を行ったところ、図6に示すようにベースラインが顕著に安定した。これにより、微量の窒素を含む試料についても、より正確な測定を行うことができる。ここで、ガス透過部6を備える装置を用いることにより、ベースラインが顕著に安定した理由としては、試料中に存在する金属元素および還元部2の還元部材より溶出した金属元素等の阻害物質が、ベースラインが安定しない理由であると考えられるところ、ガス透過部6を備える装置を用いることにより、これらの阻害物質が除去されるためであると考えられる。
ガス透過部6を経て前記管路7内を移送されるアンモニウムイオンを含む試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部5は、ガス透過部6の下流で、且つ、分析部3の上流に備えられている。試薬導入部5は、試薬を管路7に導く試薬導入管と、前記試薬導入管に吸引力を付与する試薬導入用ポンプとを備えている。ガス透過部6の下流で、且つ、分析部3の上流に備えられている試薬導入部5にて添加される試薬としては、例えば、サリチル酸、フェノール等、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元により生成したアンモニウムイオンをインドフェノール青吸光光度法により定量するために使用される試薬が挙げられる。サリチル酸を用いるインドフェノール青吸光光度法では、試薬として、例えば、サリチル酸と次亜塩素酸、例えば次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)とを添加する。この場合、サリチル酸と、NaClOとは、別途異なる2つの試料導入部から添加されることが好ましい。サリチル酸と、NaClO等を添加する順序は、どちらが先に添加されてもよいが、サリチル酸を添加した後、NaClOを添加することがより好ましい。フェノールを用いるインドフェノール青吸光光度法では、サリチル酸がフェノールと置き換わる以外はサリチル酸を用いるインドフェノール青吸光光度法と同様である。試薬として、例えば、フェノールとNaClOとを添加する。この場合、フェノールと、NaClOとは、別途異なる2つの試料導入部から添加されることが好ましい。フェノールと、NaClOを添加する順序は、どちらが先に添加されてもよいが、フェノールを添加した後、NaClOを添加することがより好ましい。
分析部3は、試料中のアンモニウムイオンについて分析を行う装置である。本発明の一実施形態において、分析方法としてインドフェノール青吸光光度法を採用する場合、分析部3は、例えば吸光光度計である。前記吸光光度計としては、フローセル式の吸光光度計がより好ましい。しかし、分析部3は、これに限定されるものではなく、用いる分析方法に応じて適宜選択することができる。例えば、還元部2で還元された留液を分取して、分取した若しくは連続流れ分析装置の流れの中での試料をイオンクロマトグラフで測定することもできる。あるいは、イオン電極法、滴定法、ボルタンメトリー法、およびイオンクロマトグラフにより測定することもできる。分析は、定量分析であるが、定性分析であってもよい。
図1の例では、流れ分析装置は、3か所に試薬導入部5を備えているが、前述した試薬導入部5に加えて、必要に応じてさらなる試薬導入部5が備えられていてもよい。また、試薬を混合して導入できるのであれば、試薬導入部を減らしてもよい。かかる試薬導入部5にて導入される試薬としては、これに限定されるものではないが、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、過酸化水素、及びふっ酸等の酸;過酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸ナトリウム等のアルカリ等を挙げることができる。これらの試薬を添加することにより、試料のpHを調節することができる。また、分析に使用される試薬としても、前述の試薬に限定されるものではなく、分析方法に応じて適宜選択すればよい。
図1の例では、流れ分析装置は、ガス透過部6を備えている。しかし、前記流れ分析装置は、必ずしも、ガス透過部6を備えている必要はなく、ガス透過部6を備えていない構成であってもよい。
図1の例では備えられていないが、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、さらに、試薬導入部5にて添加された試薬と管路7内を流れる試料とを混合するための混合コイルが備えられていてもよい。混合コイルはコイル状に形成された管路7であり、試料が混合コイルを通過するときに、試薬と管路7内を流れる試料とが混合される。混合コイルの形状は特に限定されるものではないが、図8に示される還元部材の形状と同様の形状でありうる。前記混合コイルが備えられる位置は、各試薬導入部5の後、或いは、複数の試薬導入部5の後でありうる。
図1の例では備えられていないが、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、前記管路7を移送される試料に、加熱処理を行う加熱槽を備えていてもよい。前記加熱槽は、ヒーターを備えた恒温槽でありうる。しかし、前記加熱槽の構成はこれに限定されるものではなく、超音波分解装置、マイクロウェーブ、及びオートクレーブ分解装置等であってもよい。また、前記加熱槽内で、前記管路7はコイル又は螺旋を形成している。本発明の一実施形態では、前記加熱槽は、試薬導入部5の下流または前記混合コイルの下流に備えられる。試薬が添加された試料、または試薬と混合された試料を、加熱することにより、試料の試薬との反応を促進させることができる。
図1の例では備えられていないが、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、さらに、管路7の途中に、さらにプール槽(液溜め)が備えられていてもよい。流れ分析装置は密閉空間の中に試料を流し分析を行う方法であるため、圧が高くなる場合がある。かかる場合にも、プール槽を備えることにより、圧を逃がし、各工程に必要な容量を好適に分注して採取することができる。流れ分析装置内の圧を逃がす手段としては、プール槽以外にも、例えば、空気(気体)と液とを適量廃液するデバブラー、減圧弁等を備えることができる。また、流れ分析装置がプール槽、デバブラー、減圧弁等を備える場合、その下流側に新たに気体を管路7に導く気泡分節部4が備えられていてもよい。流れ分析装置には複数のプール槽、デバブラー、減圧弁等が備えられていてもよい。また、流れ分析装置には複数の気泡分節部4が備えられていてもよい。
また、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、加熱槽の下流側から、試料の流れに抗する圧力を付与する加圧装置を備えていてもよい。前記加圧装置は、例えば、コンプレッサーとバルブとを備えている。かかる加圧装置を備えることにより、加熱槽における気泡の膨張の抑制、及び、加熱と加圧との相乗効果により、加熱槽における反応を促進することができる。前記加熱槽により付与される圧力は、特に限定されるものではないが、例えば、0.14MPa以下である。
また、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置では、試料導入部1として、オートサンプラーを使用することができる。また、サンプリングの前に、超音波ホモジナイザー又は攪拌器を備えて、試料の粉砕、及び/又は攪拌を行ってもよい。
或いは、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、管路7の途中に、さらに希釈装置を備えていてもよい。これにより、サンプルの濃度に応じて希釈を行う必要がある場合に、流れ分析装置中で、自動的に所望の希釈を行うことができる。かかる希釈装置としては、市販の自動希釈装置を好適に用いることができる。
本発明の一実施形態に係る流れ分析装置によれば、試料中に含まれる溶存態窒素(硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素)の合計量を定量することができる。さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、試料を前処理して、試料中の全窒素を硝酸イオンとする前処理部を、試料導入部1に組み込んだ装置、又は、試料導入部1の上流に組み込んだ装置であってもよい。試料中の全窒素は、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウムによる酸化分解により、硝酸イオンとすることができる。かかる前処理部を備えることにより、前処理部で試料中の全窒素を硝酸イオンに分解し、その後硝酸イオンをアンモニウムイオンに還元して、定量を行うことができるため、試料の全窒素を連続的に測定することが可能となる。特に、海水および汽水等の試料では、共存する臭化物イオンおよび塩の影響で、これまで、銅・カドミウム還元法等が用いられてきたが、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置によれば、環境汚染の原因となるカドミウムを用いることなく、且つカラムの目詰まりの問題を解決した、試料(例えば海水・汽水域の試料)中の窒素等(硝酸、亜硝酸、全窒素)の連続的な分析を行うことができる。そして、かかる前処理部を本発明の一実施形態に係る流れ分析装置に組み込むことにより、前処理から分析に至るまでを一貫して行うことができる。かかる前処理部としては、全自動で前処理を行う装置がより好ましく、例えば、試薬添加、混合、加熱、メスアップを全自動で行う全自動前処理装置を好適に用いることができる。しかし、当該前処理は、前処理部として流れ分析装置に組み込まずに、別途行い、前処理された試料を試料導入部1から導入する態様であってもよい。
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、固体等の液体以外の試料を前処理して液体試料を調製する装置を、試料導入部1に組み込んだ装置、又は、試料導入部1の上流に組み込んだ装置であってもよい。流れ分析装置は、液体の試料を流れ分析法を用いて分析する装置であり、固体等の液体以外の試料はそのまま測定することばできない。そのため、固体等の液体以外の試料を前処理して液体試料を調製する装置を組み込むことにより、固体等の液体以外の試料の前処理から分析に至るまでを一貫して行うことができる。
[2.2]実施形態2
図2は、本発明の実施形態2に係る流れ分析装置の概略構成を示す。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
本発明の実施形態2に係る流れ分析装置は、気泡で分節されていない試料の管路内の流れの中に、試薬を導入し、反応操作を行った後、下流に設けた検出器で分析を行う、フローインジェクション分析法(FIA)を使用する方法である。
本発明の実施形態2に係る流れ分析装置は、キャリヤーを管路7に導入するキャリヤー導入部8と、試料を管路7に導入する試料導入部1と、前記管路7内を移送される試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部5と、前記管路7内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元部2と、還元部2を経て前記管路7内を移送されるアンモニウムイオンを含む試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部5と、ガス透過部6と、ガス透過部6を経て前記管路7内を移送されるアンモニウムイオンを含む試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部5と、試料中のアンモニウムイオンを分析する分析部3と、を含む。
実施形態2に係る流れ分析装置は、試料を管路7に導入するための試料導入部1の上流にキャリヤー導入部8が備えられており、気泡分節部が設けられていない以外は図1に示す流れ分析装置と同じ構成である。
実施形態2に係る流れ分析装置は、フローインジェクション分析法(FIA)による分析装置であり、キャリヤー導入部8により、キャリヤーを管路7に導入し、キャリヤーが流れる管路7内の流れの中に、試料導入部1により、試料を導入する。
前記キャリヤーは、前処理及び試料の分析に好ましくない影響を及ぼさない液体であれば特に限定されるものではなく、例えば、水、界面活性剤、酸性溶液、及びアルカリ性溶液等を挙げることができる。
実施形態2に係る流れ分析装置のその他の構成については、実施形態1において説明したとおりであるので、説明を省略する。
[3]分析方法
以下に、本発明の一実施形態に係る分析方法について説明する。なお、説明の便宜上、[1]の還元部材、および[2]の分析装置にすでに記載した事項については、その説明を繰り返さない。
本発明の一実施形態に係る分析方法は、試料を管路に導入する試料導入工程と、前記管路内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元工程と、前記還元工程で生成した試料中のアンモニウムイオンを分析する分析工程と、を含み、前記還元工程は、少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管の中を試料が移送されることによって、試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元する。
前記試料導入工程は、試料を管路に導入する工程であり、例えばサンプリング装置により、複数の試料を、それぞれサンプリングして、所定の流量で、順次連続的に管路7に導入する。
前記還元工程は、前記管路内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする工程である。当該工程では、少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管、すなわち前述の還元部材の中を試料が移送されることによって、試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元する。
前記分析工程は、前記還元工程で生成した試料中のアンモニウムイオンを分析する工程である。ここで、前記分析には、分析対象の有無の検出又は濃度の測定が含まれる。また、分析は、定量分析であるか、定性分析であるかを問わない。分析方法も特に限定されるものではなく、どのような分析であってもよいが、例えば、サリチル酸を用いたインドフェノール青吸光光度法、フェノールを用いたインドフェノール青吸光光度法、イオンクロマトグラフ、イオン電極法、滴定法、ボルタンメトリー等を挙げることができる。
〔まとめ〕
本発明の一実施形態は以下の構成を包含する。
[1]少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管であり、当該管の中を試料が移送されるようになっている、還元部材。
[2]試料を管路に導入する試料導入部と、前記管路内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元部と、前記還元部で生成した試料中のアンモニウムイオンを分析する分析部と、を含む、分析装置であって、前記還元部は、[1]に記載の還元部材を含む、分析装置。
[3]前記少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管は、螺旋形または8の字螺旋形である、[2]に記載の分析装置。
[4]前記中空の管の少なくとも内側が銅で被覆されている、[2]または[3]に記載の分析装置。
[5]流れ分析装置である、[2]~[4]のいずれかに記載の分析装置。
[6]前記管路に導入される試料に対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを管路内に作製する気泡分節部が備えられている、[2]~[5]のいずれかに記載の分析装置。
[7]前記気泡は、窒素、アルゴン、又はヘリウムである、[6]に記載の分析装置。
[8]前記還元部で生成したアンモニウムイオンを、サリチル酸を用いたインドフェノール青吸光光度法により定量するための試薬を導入する試薬導入部が備えられている、[2]~[7]のいずれかに記載の分析装置。
[9]前記還元部で生成したアンモニウムイオンをガス化して分離するためのガス透過部が備えられている、[2]~[8]のいずれかに記載の分析装置。
[10]さらに、全窒素を硝酸イオンとする前処理部を備えている、[2]~[9]のいずれかに記載の分析装置。
[11]試料を管路に導入する試料導入工程と、前記管路内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元工程と、前記還元工程で生成した試料中のアンモニウムイオンを分析する分析工程と、を含む、分析方法であって、前記還元工程は、少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管の中を試料が移送されることによって、試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元する、分析方法。
以下に示す実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定解釈されるものではなく、各実施例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれることとする。
[試薬]
実施例において使用した試薬を以下に示す。
(1)EDTA試薬
約600mlの純水にEDTA-2Na(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)7.5gを加えて溶解させ、80g/L水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11とした。得られた溶液に純水を加えて1000mLとした。
(2)ホウ酸試薬
ホウ酸30gと水酸化ナトリウム30gとを純水に溶解させて1000mLとした。
(3)ニトロプルシッドNa試薬
約800mlの純水にペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物0.1gを加えて溶解させた。得られた水溶液に、硫酸1.0mLを加え、さらに純水を加えて1000mLとした。
(4)サリチル酸試薬
約300mlの純水にサリチル酸ナトリウム50g、ホウ酸30g、水酸化ナトリウム30g、および酒石酸ナトリウムカリウム四水和物10gを溶解させた後、さらに純水を加えて500mlとした。
(5)NaClO
有効塩素約10%の市販品を50倍希釈して使用した。
[装置]
図3に示す流れ分析装置(CFA)を使用した。当該流れ分析装置は、試料を管路7に導入する試料導入部と、前記管路7に導入される試料に対して窒素による気泡分節を行う気泡分節部と、前記管路7内を移送される試料の流れの中にEDTA試薬を添加する試薬導入部と、窒素の気泡により分節された各セグメント内で、試料と添加されたEDTA試薬とを混合する混合コイル11と、前記管路7内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元部2と、還元部2を経て前記管路7内を移送されるアンモニウムイオンを含む試料の流れの中に前記ホウ酸試薬(水酸化ナトリウムにホウ酸を加えた緩衝液)を添加する試薬導入部と、窒素の気泡により分節された各セグメント内で、試料と前記ホウ酸試薬を混合する混合コイル11と、前記ホウ酸試薬の添加により発生したガス状のアンモニアを透過させ、透過したガス状のアンモニアを、空気で分節された前記ニトロプルシッドNa試薬(硫酸とニトロプルシッドNaとを含む溶液)に吸収させるガス透過部6と、アンモニアガスを吸収した前記ニトロプルシッドNa試薬の流れの中にサリチル酸試薬を添加する試薬導入部と、空気で分節された各セグメント内で、試料とサリチル酸試薬を混合する混合コイル11と、さらに管路7内を移送される試薬にNaClOを添加する試薬導入部と、空気で分節された各セグメント内で、試料とNaClOを混合する混合コイル11と、試料中のアンモニウムイオンとサリチル酸とNaClOを反応させる加熱槽9と、試料中のアンモニウムイオンを分析する分析部とを含む装置であった。分析部には、フローセル式の吸光光度計(ビーエルテック株式会社製、SCIC3000)を使用した。フローセル10のセル長は50mmであり、波長660nmにて測定を行った。
前記加熱槽9は、混合コイルが加熱槽内に配置されており、加熱槽9内の温度を45℃とした。
また、還元部2の還元部材としては、内側を銅で被覆した中空の亜鉛管を使用した。当該中空の亜鉛管としては、長さ300mm、内径1mm、外径1.5mmの管を螺旋状に巻いたコイルを使用した。銅被覆の厚さは10μm~20μmであった。また、コイル径(外直径)は30mmであった。
[実施例1:標準液の測定]
アンモニア態窒素(アンモニウムイオン)、硝酸態窒素(硝酸イオン)、および亜硝酸態窒素(亜硝酸イオン)を、それぞれの窒素としての濃度が0.25mg/Lとなるように、アンモニア態窒素、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、アンモニア態窒素の順で、流れ分析装置に連続的に導入して、流れ分析を行った。図7に、測定結果を示す。
図7に示すように、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素を導入したときも、アンモニア態窒素を導入したときと同様のピークを得ることが出来た。この結果より、硝酸態窒素(硝酸イオン)および亜硝酸態窒素(亜硝酸イオン)のいずれにおいても、その100%がアンモニウムイオンに還元されて、正確に測定されたことが判る。
[実施例2:標準液の測定]
分節する窒素を、アルゴンに変更した以外は、実施例1と同様にして測定を行った。実施例1と同様に、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素を導入したときも、アンモニア態窒素を導入したときと同様のピークを得ることが出来た(結果の図示は省略する。)。
[実施例3:標準液の測定]
分節する窒素を、ヘリウムに変更した以外は、実施例1と同様にして測定を行った。実施例1と同様に、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素を導入したときも、アンモニア態窒素を導入したときと同様のピークを得ることが出来た(結果の図示は省略する。)。
[実施例4:ガス透過部6を備えない装置を用いた測定]
ガス透過部6を備えず、還元部2で還元された試料に、サリチル酸試薬を添加する試薬導入部から試薬を添加した以外は、実施例1と同様にして測定を行った。図5は得られた測定チャートのベースラインを示す図である。一方、実施例1における測定チャートのベースラインを図6に示す。図5に示されるように、ガス透過部6を備えていない装置により、サリチル酸を用いたインドフェノール青吸光光度法による分析を行ったところ、ベースラインが安定しなかった。これに対して、ガス透過部6を備える装置を用いて、サリチル酸を用いたインドフェノール青吸光光度法による分析を行った実施例1では、図6に示すようにベースラインが安定していた。
[実施例5:添加回収実験]
3重量%塩化ナトリウム水溶液に、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、および硝酸態窒素を、それぞれ0.1mg/Lとなるように添加して添加回収実験を行った。
いずれも略100%の回収率を得ることが出来た。当該結果より、塩化ナトリウム含有試料における、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、および硝酸態窒素の分析が可能であることが分かった。
[実施例6:添加回収実験]
鳥取県沿岸の海水にアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、および硝酸態窒素を、それぞれ0.1mg/Lとなるように添加して添加回収を行った。海水は窒素分が含まれているため、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、および硝酸態窒素を添加しない海水の値をブランクとして差し引いて結果を算出した。
いずれも略100%の回収率を得ることが出来た。当該結果より、海水における、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、および硝酸態窒素における分析が可能であることが分かった。
[実施例7:連続測定における還元率]
海水に硝酸態窒素標準液を添加して、硝酸態窒素の濃度が5mg/Lとなるように調整した。このようにして調製した試料を、60回連続で試料導入部から管路に導入して測定を行った。
その後、硝酸態窒素(硝酸イオン)、および亜硝酸態窒素(亜硝酸イオン)を、それぞれの窒素としての濃度が0.25mg/Lとなるように、流れ分析装置に連続的に導入して、流れ分析を行った。得られた結果より、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元率を算出した。60回の測定を行った後でも、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの還元率は略100%であった。
本発明によれば、環境汚染の原因となるカドミウムを用いることなく、且つカラムの目詰まりの問題を解決した、試料(例えば海水・汽水域の試料)中の窒素等(硝酸、亜硝酸、全窒素)の連続的な分析装置および分析方法を提供することができる。
このような構成によれば、環境への負荷を低減することができる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標14・15の達成に貢献できる。
1 試料導入部
2 還元部
3 分析部
4 気泡分節部
5 試薬導入部
6 ガス透過部
7 管路
8 キャリヤー導入部
9 加熱槽
10 フローセル
11 混合コイル
12 PTFE多孔質フィルター

Claims (11)

  1. 少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管であり、当該管の中を試料が移送されるようになっている、還元部材。
  2. 試料を管路に導入する試料導入部と、
    前記管路内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元部と、
    前記還元部で生成した試料中のアンモニウムイオンを分析する分析部と、を含む、分析装置であって、
    前記還元部は、請求項1に記載の還元部材を含む、分析装置。
  3. 前記少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管は、螺旋形または8の字螺旋形である、請求項2に記載の分析装置。
  4. 前記中空の管の少なくとも内側が銅で被覆されている、請求項2または3に記載の分析装置。
  5. 流れ分析装置である、請求項2~4のいずれか一項に記載の分析装置。
  6. 前記管路に導入される試料に対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを管路内に作製する気泡分節部が備えられている、請求項2~5のいずれか一項に記載の分析装置。
  7. 前記気泡は、窒素、アルゴン、又はヘリウムである、請求項6に記載の分析装置。
  8. 前記還元部で生成したアンモニウムイオンを、サリチル酸を用いたインドフェノール青吸光光度法により定量するための試薬を導入する試薬導入部が備えられている、請求項2~7のいずれか一項に記載の分析装置。
  9. 前記還元部で生成したアンモニウムイオンをガス化して分離するためのガス透過部が備えられている、請求項2~8のいずれか一項に記載の分析装置。
  10. さらに、全窒素を硝酸イオンとする前処理部を備えている、請求項2~9のいずれか一項に記載の分析装置。
  11. 試料を管路に導入する試料導入工程と、
    前記管路内を移送される試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元してアンモニウムイオンとする還元工程と、
    前記還元工程で生成した試料中のアンモニウムイオンを分析する分析工程と、を含む、分析方法であって、
    前記還元工程は、少なくとも内壁面が亜鉛からなる、中空の管の中を試料が移送されることによって、試料中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを還元する、分析方法。
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