JP5282204B2 - ホルムアルデヒドの測定方法及びホルムアルデヒドの測定装置 - Google Patents
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Description
また近年、工場内の金属処理工程で生成するホルムアルデヒドの工場排水管理が問題となっている。平成16年度において、水道水中のホルムアルデヒド濃度の基準が0.08mg/L以下に制定され、排水中のホルムアルデヒドの濃度監視が重要となってきている。
(1)塩化アンモニウム法:試料溶液を水酸化ナトリウムで中和し、塩化アンモニウムと一定量の水酸化ナトリウムを加え、生成するアンモニアがホルムアルデヒドと反応してヘキサメチレンテトラミンとなるので、残っているアンモニアを酸で滴定する。
(2)塩酸ヒドロキシルアミン法:ホルムアルデヒドは塩酸ヒドロキシルアミンと反応して塩酸を遊離するので、これをアルカリで滴定し定量する。
(3)ガスクロマトグラフィ(GC)法:試料をそのまま、あるいは2,4−ジニトロフェニルヒドラジン誘導体化して分析する。
(4)ラウリルアミン法:試料溶液をアルコール・ベンゼン混液に溶解し、ラウリルアミンのエチレングリコール・イソプロピルアルコール溶液を加え、サリチル酸で電位差滴定する。
(5)アセチルアセトン法:ホルムアルデヒドはアセチルアセトン及びアンモニアあるいはアンモニウム塩と反応してジアセチルジヒドロルチジンを生じる。これは黄色を示し、412nmに吸収があるのでその強度を測定して定量される。
また、例えば特許文献1には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又は水酸化リチウムを主成分とする固体状のアルカリ試薬組成物、4−アミノ−3−ヒドラジノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾールを主成分とする固体状の発色試薬組成物及び、メタ過ヨウ素酸塩を主成分とする固体状又は液体状の酸化試薬組成物を構成試薬として含んでなるホルムアルデヒド測定用キットが提案されている。しかし、この提案では、溶液中の微量のホルムアルデヒドを測定することができたとしても、効率よく連続分析し、ホルムアルデヒド濃度をモニタリングすることは困難である。
<1> 試料溶液をバブリングにより気化して試料ガスを生成する気化工程と、
前記試料ガスをマイクロガス捕集装置で捕集し、濃縮する捕集工程と、
アセチルアセトン法により試料中のホルムアルデヒドを蛍光分析する蛍光分析工程と、を含むことを特徴とするホルムアルヒドの測定方法である。
<2> 試料溶液を予め次亜塩素酸処理する前記<1>に記載のホルムアルデヒドの測定方法である。
<3> ホルムアルデヒドの検出範囲が、0.1mg/L〜10mg/Lである前記<1>から<2>のいずれかに記載のホルムアルデヒドの測定方法である。
<4> 工場排水中のホルムアルデヒド濃度の連続モニタリングが可能である前記<1>から<3>のいずれかに記載のホルムアルデヒドの測定方法である。
<5> 試料溶液をバブリングにより気化する気化手段と、
気化した試料ガスを捕集し濃縮するマイクロガス捕集装置からなる捕集手段と、
アセチルアセトン法により試料中のホルムアルデヒドを蛍光分析する蛍光分析手段と、を有することを特徴とするホルムアルヒドの測定装置である。
本発明のホルムアルデヒドの測定方法は、気化工程と、捕集工程と、蛍光分析工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明のホルムアルデヒドの測定装置は、気化手段と、捕集手段と、蛍光分析手段とを有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明においては、ホルムアルデヒドの分析に、従来のアセチルアセトン法を採用する。ただし、従来のアセチルアセトン法では、共存金属の妨害をなくすために蒸留法がとられているが、分析時間を大幅に短縮するため液体試料をバブリングによって気化し、気体試料をマイクロガス捕集装置で捕集濃縮する。これにより、微量のホルムアルドヒド濃度を連続的にリアルタイムに高感度で測定することができる。
また、従来のアセチルアセトン法では吸光光度分析が行われているが、本発明においては、蛍光分析によりホルムアルデヒドを測定することで感度の大幅な改善が図れる。
以下、本発明のホルムアルデヒドの測定方法及びホルムアルデヒドの測定装置について詳細に説明する。
前記気化工程は、試料溶液をバブリングにより気化して試料ガスを生成する工程であり、気化手段により好適に行うことができる。
前記試料溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば工場排水、水道水、農業用水、井水、河川水、湖沼、海水などが挙げられる。
前記バブリングとは、被処理水中に空気を通気し、排水中のホルムアルデヒドガス蒸気を発生させる方法である。バブラーとしての50mLの試験管に試料溶液を設置し、そこに多孔質のガラス球から空気又は窒素ガスを通じさせる。空気の場合あらかじめ活性炭カラムやシリカゲルカラムで清浄化と乾燥をしておく。このバブラーから排出したホルムアルデヒド蒸気を直ちに清浄空気もしくは窒素などの不活性ガスと混合し、湿度を飽和状態から低減しておくことにより、水との親和性の高いホルムアルデヒドの配管への吸着を防ぐことができる。
前記捕集工程は、前記試料ガスをマイクロガス捕集装置で捕集し、濃縮する工程であり、捕集手段により好適に実施することができる。
前記マイクロガス捕集装置(マイクロチャンネルスクラバー)は、例えば図1に示すように、ポリジメチルシロキサン(PDMS)製基板3の表面にハニカム構造のマイクロチャネル2を形成し、反応溶液(アセチルアセトン溶液)を蓄える場とする。該ハニカム構造のマイクロチャネル2上にはガス透過性膜1を固着する。マイクロチャネル2に反応溶液を流し、ガス透過性膜1の外側に大気試料を導入し、目的成分を、ガス透過性膜1を介して取り込む。図1中、4は反応溶液入り口、5は反応溶液出口である。
前記ハニカム構造のマイクロチャネルによって、極薄の液層を一定の厚みで得ることができる。しかもガスの吸収面積を広くすることが可能である。また、反応溶液ハニカム構造の溝に従って反応溶液の分岐と集合を繰り返しながら、吸収面に一様に広がっていくので、マイクロチャネルのどこかに欠陥があってもその周りのマイクロチャネルに反応溶液が回り込んで流れるので全体の特性に与える影響も少ない。
前記ハニカム構造とは、マイクロチャネルの流路が六角形を並べた形状に広がっており、分岐と合流を繰り返しながらマイクロチャネル部全体に広がって流れる構造のことを意味する。10μm〜200μmの浅い流路を広い面積に達成できることに特徴がある。前記ハニカム構造により、高い捕集濃縮効果を目的に、広い捕集面積と高いガス透過性の両立が期待できる。
前記マイクロチャネルには、ポリジメチルシロキサン(PDMS)製基板を用いるので、PDMSの重合固化の過程でガス透過性膜を固着することができる。そのため、接着剤を用いずに固定することができる。
前記マイクロチャンネルの流路の深さは、10μm〜200μmであることが好ましい。
前記マイクロチャンネルの流路の幅は、40μm〜1,000μmであることが好ましい。
前記ガス透過性膜としては、例えば多孔性のテフロン(登録商標)膜が好ましい。
前記蛍光分析工程は、アセチルアセトン法により試料中のホルムアルデヒドを蛍光分析する工程であり、蛍光分析手段により好適に実施することができる。
物質を構成する分子に光照射(励起光)すると、光を吸収したのちその光エネルギーを光として放出することがあり、これを蛍光と呼んでいる。前記蛍光分析は、この蛍光強度を測定することにより試料の性質や濃度を調べることができる。吸光分析法に比べて感度が高く、蛍光を出す分子種が比較的限られていることから目的成分を選択的に検出することが可能である。また蛍光を出さない物質については化学反応により蛍光物質へ導き分析することが可能である。本発明においても、ホルムアルデヒドとアセチルアセトンとを反応させ、蛍光分析を行った。
前記その他の工程としては、前記制御工程などが挙げられる。
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
また、濃度演算システムを設けることにより、検出器の信号をリアルタイムに濃度に換算することが可能となる。また、警報システムを設けることにより、例えば、水中のホルムアルデヒド量の管理をしている場合、排出基準超過の防止など、管理値内での運用管理が可能となる。
このようにホルムアルデヒド濃度が0.1〜2.0mg/Lを十分に測定可能と判断できる。S/N=3から得た検出限界は0.03mg/Lであった。
ホルムアルデヒドを微量含む工場排水試料について、下記気化捕集AA蛍光法(本発明方法)と、下記蒸留−アセチルアセトン−吸光光度法(比較方法1)と、下記PFBOA誘導体化GC−MS分析法(比較方法2)との、三法による測定を行った。なお、すべての分析法で次亜塩素酸による処理は行っていない。
図3に示すホルムアルデヒドの測定装置を用いて、下記の表2に示す分析条件で測定した。結果を表3に示す。
図2Aに示すように、ハニカム状マイクロチャネルは、スライドガラスサイズ(26mm×76mm)のPDMSブロック中央部に位置する。図2Bに示すように、ハニカム構造は一辺0.6mmの正6角形から構成され、溶液は枝分かれを繰り返して進んでいき、チャネル深さは60μmであり、チャネル幅はAの部分で500μm、Bの部分で400μm、Cの部分で300μm、ガス捕集部分(GCA)で200μmと徐々に細くなるように形成した。ガス捕集部分でのチャネル面積は、142.2mm2、体積は10.9μLである。
ガス透過膜として、pPTFEメンブラン(厚み30μm、孔径0.45μm、Poreflon(登録商標)、HP−045−30、住友電工ファインポリマー社製)あるいはpPPメンブラン(厚み94μm、Accurel(登録商標)、PPIE、Membrana社製)を用いた。
図2Cは、マイクロチャネルスクラバーを示す写真である。
まず、試料溶液を加熱し沸騰させ、このとき溶存しているホルムアルデヒドも水の蒸発とともに気化した。これを冷却して再び液化して集めた。試料溶液のほとんどが蒸発すれば、ホルムアルデヒドの気化を完全に行うため純水を追加して蒸留を繰り返す。蒸留して得た水をアセチルアセトンと酢酸アンモニウムと混合し、得られた黄色の生成物の吸光度を測定した。結果を表3に示す。
分液ロートに50mLの検水を取り、1mg/mLのペンタフルオロベンジルヒドロキシルアミン(PFBOA)塩酸塩溶液3mLを添加し、混合した。2時間静置の後に硫酸(1+1)0.8mL、塩化ナトリウム20g、及びn−ヘキサン5mLを5分間激しく混合した。静置分相後にn−ヘキサン相を分取し、適量の無水硫酸ナトリウムで脱水した。次に、脱水処理したn−ヘキサン相から1mLを分取し、100mg/Lの1−クロロデカン1μLを添加して、これをGC−MS分析した。結果を表3に示す。
この原因について検討したところ、ヘキサミンが残存しているのではないかと考え、本発明方法(気化捕集AA蛍光法)及び比較方法2(PFBOA−GCMS法)については次亜塩素酸による処理を行った。
処理条件は、試料水及び検量線用標準溶液50mLに8.5〜13.5%のNaClOを百倍に希釈したものを1mL加え、30分間反応させたあと10%チオ硫酸ナトリウム溶液1滴で中和し、以下前法と同じように操作を行った。その結果も同じように比較方法1(蒸留AA吸光法)が高い値を示した。しかも、本発明方法(気化捕集AA蛍光法)及び比較方法2(PFBOA−GCMS法)は双方で検量線が下に凸の曲線となり、低濃度領域での信頼性に欠けた。この原因については、チオ硫酸ナトリウムを使用すると、亜硫酸のコンタミネーションがあるのではないかと考えられる。ホルムアルデヒドは亜硫酸イオンと錯体を形成することが知られている。このため、次亜塩素酸による処理による測定結果が良くなかったのではないかと考えている。
実施例1と同じホルムアルデヒドを微量含む工場排水試料について、チオ硫酸ナトリウムによる過剰次亜塩素酸の中和をせず、酸化分解処理のみで分析を行った。結果を表4に示す。
図6に、本発明方法(気化捕集AA蛍光法)による検量線を示す。次亜塩素酸を加えても影響はないが、チオ硫酸を加えると定量性に劣ることが分かった。
−バッチ式アセチルアセトン反応における共存金属イオンの検討−
アセチルアセトン反応を用いるHCHO測定においてなぜ蒸留や気化捕集が必要か、それは共存金属イオンとアセチルアセトンが錯体を形成し呈色するからである。鉄IIIイオン、銅IIイオン、銀Iイオンについて、吸光光度法、蛍光光度法双方についてその影響について確認を行った。結果を表5に示す。
−HCHO気化における塩効果−
NaClを添加して塩の効果を調べた。
HCHO 2mg/Lの溶液に1,000mg/LのNa+が存在しないときと、存在するときでの結果を図7に示す。
図7の結果から、5回の応答強度の平均は、それぞれ0.104±0.004V、0.103±0.005Vであり、有意な差は見られなかった。なお、ナトリウムイオンはNaClとして添加した。
−ヘキサミンの分解実験(次亜塩素酸)−
残留ヘキサミンを次亜塩素酸によってHCHOに分解する際の化学量論的及び速度論的な検討を行った。
まず、0μM、10μM、及び20μMのHCHO溶液50mLに百倍希釈の次亜塩素酸ナトリウム溶液1mLを加え、30分間放置した。これに、10%チオ硫酸ナトリウム溶液1滴を滴下し、その後アセチルアセトン反応を用いて蛍光分析を行った。結果を図8及び図9に示す。
図8は、HCHOについて検量線を描いたもので、それぞれそのまま測定を行ったもの(バツ(×))と次亜塩素酸/チオ硫酸で処理を行ったもの(三角(▲))である。次亜塩素酸/チオ硫酸処理により検量線の傾きが約2/3になっているが、直線性は保たれていた。また、ヘキサミンについても同様の試験を行い、直接測定(四角(■))と次亜塩素酸/チオ硫酸処理(丸(●))の結果を得た。ヘキサミンの直接測定でも、自己分解の分があるのである程度の蛍光シグナルが得られているが、分解処理で3倍のシグナルになっている。この次亜塩素酸/チオ硫酸処理を行ったものについて、HCHOとヘキサミン濃度の横軸を1:6でとると、HCHOとヘキサミンの検量線が重なっているのが分かった。即ち、ヘキサミン1molからHCHOが6mol生成したことが分かった。
次に、図9は、1.66μM、及び3.33μMのHMTA溶液に、次亜塩素酸ナトリウムを添加し、チオ硫酸ナトリウムを添加して分解反応を止めるまでの反応時間を変化させて蛍光シグナルをモニターした。その結果、1分間以内に分解が完了していることが分かった。分解時間を長くすると、逆に蛍光シグナルが若干減少(10% per 2時間)する傾向もみられた。HCHOの酸化反応もゆっくり進んでいるものと思われる。
2 マイクロチャネル
3 基板
4 反応溶液入口
5 反応溶液出口
Claims (5)
- 試料溶液をバブリングにより気化して試料ガスを生成する気化工程と、
前記試料ガスをマイクロガス捕集装置で捕集し、濃縮する捕集工程と、
アセチルアセトン法により試料中のホルムアルデヒドを蛍光分析する蛍光分析工程と、を含むことを特徴とするホルムアルヒドの測定方法。 - 試料溶液を予め次亜塩素酸処理する請求項1に記載のホルムアルデヒドの測定方法。
- ホルムアルデヒドの検出範囲が、0.1mg/L〜10mg/Lである請求項1から2のいずれかに記載のホルムアルデヒドの測定方法。
- 工場排水中のホルムアルデヒド濃度の連続モニタリングが可能である請求項1から3のいずれかに記載のホルムアルデヒドの測定方法。
- 試料溶液をバブリングにより気化する気化手段と、
気化した試料ガスを捕集し濃縮するマイクロガス捕集装置からなる捕集手段と、
アセチルアセトン法により試料中のホルムアルデヒドを蛍光分析する蛍光分析手段と、を有することを特徴とするホルムアルヒドの測定装置。
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