JP7402335B2 - 包装体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は包装体に関し、特に、紙基材がホットメルト接着剤によって固定されている包装体に関する。
エチレン酢酸ビニル(EVA)系ホットメルト接着剤は、紙基材で構成されている、食品、飲料や子供用玩具等の包装体や製本などの分野において、高速作業性、広範囲の被着体に対する接着性、経済性などに優れる事から生産性向上に大きく貢献できるとして多く使用されている。
一方で、EVA系ホットメルト接着剤は独特の臭気を有しており、ホットメルト接着剤を使用している包装容器等から食品への臭い移りなどの懸念がある。また、製造現場ではホットメルト接着剤を加熱することで多量の悪臭が発生するため劣悪な環境となっており、EVA系ホットメルト接着剤の低臭気化の要望が強い。
その臭気の原因は、EVA系ホットメルト接着剤の主成分であるエチレン酢酸ビニル共重合体に含まれる未反応モノマーである酢酸ビニルや、製造時・塗工時の高温でアセトキシ基が分解(脱酢酸)して発生する酢酸、解重合で発生する酢酸ビニルのモノマーや低重合度化合物などである。
これら臭気の原因物質は、精製度の高いエチレン酢酸ビニル共重合体を用いてもホットメルト接着剤を製造する際に高温に加熱することで常に生成されるため、EVA系ホットメルト接着剤では避ける事のできない問題である。特に、食品や菓子、子供用玩具の包装体においては、独自の臭気(主に酢酸臭)を持つEVA系ホットメルト接着剤を使用すると、食品や菓子等の腐敗をイメージさせるおそれがあり大きな問題となる。よって、これらの製品のためのパッケージ用包装体における、臭気成分の低減が求められている。
これまでにも、ホットメルト接着剤に含まれる臭気成分を低減する方法として、例えば、ポリオレフィンを単軸または2軸の押出機へ供給する際に、0.15重量%以上の水を供給する方法(特許文献1)や、特定のアルデヒドスカベンジャーを添加する方法(特許文献2)などが報告されている。
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、水とホットメルト接着剤原料との接触時間が短く、十分な脱臭効果は得られていない。また、特許文献2に記載の方法では、アルデヒドスカベンジャーとして使用されるアミノベンズアミドに特有の臭気があり、また、添加剤の添加量に上限があるため脱臭効果にも限度がある。
また、構造・物性などがエチレン酢酸ビニル共重合体に近いエチレンアクリル酸エチル共重合体への代替も提案されたが、酢酸や酢酸ビニルモノマーとは違う特有の臭気を持ち、かつ多彩なホットメルト接着剤の設計に応えるには品種が少なく自由度が乏しい上に価格も高い。
特開平10-193436号公報 特開2017-125181号公報
本発明の課題は、前記問題点を解決することにある。すなわち、本発明は、接着剤の臭気(特に酢酸臭)が大きな問題となる食品等の製品用包装体において、優れた接着性能を示すホットメルト接着剤を使用しているにもかかわらず低臭気である包装体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、下記構成によって、上記目的を達することを見出し、この知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
すなわち、本発明の一局面に係る包装体は、紙基材がホットメルト接着剤によって固定されている包装体であって、前記ホットメルト接着剤が、液状のホットメルト接着剤用材料を混練する間若しくは混練した後に、加熱混練機に水またはアルコールのうち少なくともいずれかからなる液体を前記ホットメルト接着剤用材料100質量部に対して0.03質量部以上の量で導入し、前記ホットメルト接着剤用材料と前記液体が接するように加熱撹拌または分散を行いながら、脱気を行うことを含む製造方法によって得られるホットメルト接着剤であること、並びに、残存酢酸量が17ppb以下であることを特徴とする。
本発明に関する包装体は、紙基材が、ホットメルト接着剤によって固定されている包装体である。本発明の包装体において、紙基材の固定に使用するホットメルト接着剤は、液状のホットメルト接着剤用材料を混練する間若しくは混練した後に、加熱混練機に水またはアルコールのうち少なくともいずれかからなる液体を前記ホットメルト接着剤用材料100質量部に対して0.03質量部以上の量で導入し、前記ホットメルト接着剤用材料と前記液体が接するように加熱撹拌または分散を行いながら、脱気を行うことを含む製造方法によって得られるホットメルト接着剤である。前記ホットメルト接着剤は接着剤として優れた性能を維持しつつ、低臭気であることが特徴である。それにより、本発明の包装体は、残存酢酸量が17ppb以下と、従来使用されているホットメルト接着剤を用いた包装体よりも臭気が抑制されている。
このような構成とすることによって、優れた接着性能を示すホットメルト接着剤を使用して紙基材を固定しているにもかかわらず、低臭気の包装体を提供することが可能となる。よって、本発明によれば、従来の多彩なホットメルト接着剤の性能を制限する事がなく、多くのホットメルト接着剤に対応できる技術で各種包装体の臭気低減を行うことができる。また、特殊な材料を用いる必要もなくなるため、コストの抑制にもつながる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、ホットメルト接着剤について説明する。本実施形態で使用できるホットメルト接着剤は限定されないが、特に、本実施形態では酢酸臭を抑制することが可能であるため、接着剤として、作業性、接着性、経済性等に優れるEVA系ホットメルト接着剤を使用することが好ましい。
そのような接着剤用のホットメルト接着剤材料としては、従来からホットメルト接着剤に使用されているベース樹脂、粘着性付与剤、ワックス、その他添加剤を特に限定なく使用することができる。本実施形態によれば、どのようなEVA系ホットメルト接着剤材料を使用しても、低臭気の包装体を提供することができるという利点がある。
具体的な材料としては、ベース樹脂としては、例えば、EVA系ホットメルト接着剤を構成する成分として用いられる熱可塑性樹脂を特に限定なく使用することができる。
前記EVA系の熱可塑性樹脂は、ホットメルト接着剤における、EVA系の熱可塑性樹脂として用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、エチレンと酢酸ビニルから合成される共重合体等が挙げられる。
上述したようなEVA系ベース樹脂は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
さらに、本実施形態では、上記以外にバイオマス系ホットメルト接着剤を使用することもできる。バイオマス系ホットメルト接着剤とは、バイオマス由来原料を配合した接着剤のことであり、例えば、松脂などの植物由来樹脂を配合した接着剤などが挙げられる。
また、粘着性付与剤についても、ホットメルト接着剤に一般的に使用される合成樹脂系粘着付与剤、例えば芳香族系、脂肪族系、脂環族系の石油樹脂、または天然樹脂系粘着付与剤、およびその水素添加物等を特に限定なく用いることが可能である。例えば、バイオマス原料として使用される天然系樹脂では、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、合成樹脂系では、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。上述したような粘着付与剤は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ワックスは、ホットメルト接着剤に含有されるワックスであれば、特に限定されない。ワックスとしては、例えば、合成ワックス、石油ワックス、及び天然ワックス等が挙げられる。また、合成ワックスとしては、例えば、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス等の、ポリオレフィンワックス等が挙げられる。石油ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びペトラタム等が挙げられる。天然ワックスとしては、例えば、モンタンワックスなどが挙げられる。バイオマス原料として使用される天然ワックスとしては、例えば、木ロウ、カルバナロウ、ミツロウ、及びカスターワックス等が挙げられる。これらのワックスは、上記例示したワックスを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他、添加剤として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填材、界面活性剤、カップリング剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、及び可塑剤等を用いてもよい。
例えば、酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤や有機硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。有機硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、上記例示した酸化防止剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
可塑剤としては、例えば、鉱物油類、合成油類、植物油類が挙げられる。
鉱物油類の具体例としては、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイルなど)、流動パラフィンが挙げられる。パラフィン系プロセスオイルの具体例としては、n-パラフィン(ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタデコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタン、ヘンプタコンタンなど);イソパラフィン(イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3-ジメチルブタン、メチルヘキサン類、3-エチルペンタン、ジメチルペンタン類、2,2,3-トリメチルブタン、3-メチルヘプタン、ジメチルヘキサン類、トリメチルペンタン類、イソノナン、2-メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサン、4-エチル-5-メチルオクタンなど);これらの飽和炭化水素の誘導体;などが挙げられる。ナフテン系プロセスオイルの具体例としては、ナフテン系プロセスオイルとは、プロセスオイルの中でもナフテン環炭素数が高いものを言う。ナフテン系プロセスオイルに含まれているナフテン環化合物としては、炭素数が3以上の環状化合物が挙げられる。ナフテン環化合物のより具体的な例を挙げると、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどである。
合成油類の具体例としては、エーテル油、エステル油、リン酸エステル、塩素化パラフィンが挙げられる。
植物油類の具体例としては、オリーブ油、米胚芽油、コーン油、サザンカ油、ツバキ油、ヒマシ油、ホホバ種子油、ユーカリ葉油が挙げられる。
本実施形態の包装体に用いられるホットメルト接着剤は、上述の通り、液状のホットメルト接着剤用材料を混練する間若しくは混練した後に、加熱混練機に水またはアルコールのうち少なくともいずれかからなる液体を前記ホットメルト接着剤用材料100質量部に対して0.03質量部以上の量で導入し、前記ホットメルト接着剤用材料と前記液体が接するように加熱撹拌または分散を行いながら、脱気を行うことを含む製造方法によって得られるホットメルト接着剤である。
本発明者らは、前記プロセス(製造方法)を経て得られるホットメルト接着剤を用いることにより、驚くべきことに、包装体の酢酸臭を大きく低減できることを見出した。以下に、当該製造方法についてより具体的に説明する。
本実施形態で使用するホットメルト接着剤の製造方法は、液状状態のホットメルト接着剤用材料を混練する間若しくは混練した後に、加熱混練機に液体を導入する工程と、加熱撹拌または分散を行い、脱気を行う工程を含む。
加熱混練機に液体を導入する工程は、ホットメルト接着剤用材料を加熱混練機に投入した後であれば、ホットメルト接着剤用材料を混練する間に行ってもよいし、混練が完了した後に行ってもよい。好ましくは、材料の混練が完了した後に行う。本実施形態において、「混練が完了した」とは、ホットメルト接着剤の材料(例えば、ベース樹脂と粘着性付与剤)が一様の流動性を示した状態を意味する。
加熱混練機については、ホットメルト接着剤の撹拌混練に使用されている一般的な製造装置を使用することができる。例えば、ホットメルト接着剤の一般的な製造方式において、連続処理方式とバッチ処理方式がある。連続処理方式として使用される加熱混錬機として、ルーダー、エクストルーダー、二軸テーパースクリュー等を用いることができる。また、バッチ処理方式として使用される加熱混錬機として、撹拌混練機やバンバリーミキサー、ニーダー等を用いることができる。
加熱混練機に導入する液体は、水またはアルコールのうち少なくともいずれかからなる液体である。すなわち、本実施形態の液体は、水単独であってもよく、アルコール単独であってもよく、さらに、水およびアルコールの両方であるアルコール水溶液であってもよい。
前記液体としてアルコール水溶液を使用する場合、そのアルコール濃度については特に限定はないが、濃度が高いと低臭効果が得られるという観点から、10質量%以上の希アルコール水溶液であることが好ましい。なお、前記液体としてアルコール水溶液を使用する場合は、アルコール水溶液からなる液体を導入した後、水でEVA系ホットメルト接着剤用材料を洗浄する必要がある。水での洗浄方法は特に限定されず、アルコール水溶液を接着剤材料に接触させた時間と同等の時間、水を加熱混練機に導入することによって洗浄できる。
前記液体の加熱混練機への導入は、前記ホットメルト接着剤用材料100質量部に対して0.03質量部以上の量で行う。導入量が0.03質量部未満となると、低臭効果が得られない。前記液体導入量は0.35質量部以上であることがより好ましい。
また、導入量の上限については、導入量が多ければ、低臭効果が高くなるため特に設ける必要はない。しかしながら、コストや工程時間などを考慮すると、好ましくは前記ホットメルト接着剤用材料100質量部に対して50質量部以下、さらには25質量部以下であることが望ましい。
なお、液体を加熱混練機へ導入する速度は特に限定はされないが、ホットメルト接着剤用材料に対して50ppm/分~12500ppm/分程度の導入速度で行うことが好ましい。
本実施形態における液体の導入方法は特に限定されず、加熱混練機の上方、側面、下方のいずれから導入してもよい。具体的には、例えば、加熱混練機の下方および/または側面から導入することによってホットメルト内に十分拡散させた状態で液体を導入することができる。
前記液体を加熱混練機に導入した後、前記ホットメルト接着剤用材料と前記液体が接するように加熱撹拌または分散を行いながら、脱気を行う。このときの加熱温度は、ホットメルト接着剤用材料の溶融温度以上であれば特に限定はなく、ホットメルト接着剤用材料として使用しているベース樹脂の種類などによって適宜設定することができる。
加熱撹拌や分散は、従来、本技術分野で公知の手段によって行うことができる。例えば、パドル、タービン、プロペラ、アンカー、ヘリカルリボン、マックスブレンド、フルゾーン、スクリュー、ブレード、MR-205、Hi-Fミキサー、サンメラー等を使用できる。これらは、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
脱気は、前記加熱混練機容積に対し0.25倍容積以上の分速排気速度で、ゲージ圧が-60kPaより高い真空度となるまで行うことが好ましい。このような条件で脱気を行うことによって、残留酢酸および残留酢酸ビニル量をより十分に抑えることができる。
本実施形態の脱気の手段は特に限定されないが、具体的には、例えば、前記分速排気速度となるように調整した真空ポンプを用いて、前記真空度となるまで減圧することによって脱気することができる。
前記分速排気速度は、より好ましくは、加熱混練機容積に対し等倍容積以上である。前記分速排気速度の上限は特に規定する必要はないが、設備の大型化、コスト抑制の観点から、前記加熱混練機容積に対し17.5倍容積以下とすることが好ましい。
前記脱気はゲージ圧が-90kPaより高い真空度であることがより好ましい。上限値については特に設ける必要はないが、設備の破損、設備の大型化、コストアップなどの観点からゲージ圧-101kPaより低い真空度であることが望ましい。
以上のように、特定の条件下において、ホットメルト接着剤用材料中に液体を導入する事で、通常の気体を分散させることにより接触面積を増加させ、吸着効果をより向上できると考えられる。その結果、低臭気および無臭のホットメルト接着剤を提供することができる。
さらに、本実施形態の製造方法では、前記加熱混練機から排気した排気ガスを、冷却凝集させ、揮発性有機化合物を含んだ液体を回収する工程を含んでいてもよい。
それにより、真空ポンプの潤滑性や防錆性を損なうことなく長寿命化が図れるといった利点がある。
また、前記回収工程における液体の回収率は60%以上であることが好ましい。それにより、環境大気汚染をより抑制することができると考えられる。
本実施形態の製造方法によって得られるホットメルト接着剤は、残存酢酸の量が少なく、非常に低臭気である。このようなホットメルト接着剤は、材料中に含まれる臭気成分が少ないポリマー材料を選択して製造された低臭気を特徴として市販されている従来のホットメルト接着剤よりもさらに残存臭気成分が少ないことが特徴である。
本実施形態の包装体に使用する紙基材としては、従来、各製品の包装体として使用されている紙基材を特に限定なく使用することができる。具体的には、紙基材としては、例えば、板紙、クラフト紙、コート紙、カートン紙、ダンボール合紙等を用いることができる。また、板紙としては、例えば、コートボール紙、白ボール紙、マニラボール紙、チップボール紙、黄板紙、色板紙等を用いることができる。上述したような紙基材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
また、紙基材は少なくとも片面に、絵柄層または印刷層を備えていてもよい。それによって、包装体表面に商品名や説明といった印刷や、各種意匠等を施すことができる。さらには、包装体の表面保護や、紙基材の表面に耐汚染性、セロハンテープ剥離性、耐薬品性等の耐性および意匠性やエンボス加工、光沢等を付与するために、樹脂フィルムなどで構成される保護層をさらに設けてもよい。
本実施形態における包装体の形状もまた特に限定はされず、箱形、筒型、多面体型など、包装する商品によって適宜選択できる。
本実施形態の包装体は、特に限定はされないが、例えば、以下のような製法で得ることができる。まず、上述したような紙基材に必要に応じて印刷層や保護層などを設け、所望する包装体の形状に基づく展開図に合わせてカットし、型紙を得る。当該型紙を折りたたむ等して、所望の形状の包装体とし、固定すべき箇所に加熱溶解した上述のホットメルト接着剤を塗布する。塗布方法は特に限定されず、ホットメルトガンや各種アプリケータを使用できる。その後、型紙を貼り合わせ、冷却(放冷)することによってホットメルト接着剤を硬化させ、型紙を接着固定し、包装体を得ることができる。
本実施形態の包装体は、残存酢酸量が17ppb以下と、非常に低臭気である。よって、本実施形態の包装体は、様々な商品・製品の包装体として使用することができるが、臭気が非常に低減されているため、例えば、食品用、菓子用、玩具用、医療用、医薬用等の各種パッケージなどに好適に使用できる。
なお、本実施形態において、前記残存酢酸量とは、後述の実施例で示す方法で測定する値を意味する。また、本実施形態の包装体において、より好ましい残存酢酸量は14ppb以下である。
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
すなわち、本発明の一局面に係る包装体は、紙基材がホットメルト接着剤によって固定されている包装体であって、前記ホットメルト接着剤が、液状のホットメルト接着剤用材料を混練する間若しくは混練した後に、加熱混練機に水またはアルコールのうち少なくともいずれかからなる液体を前記ホットメルト接着剤用材料100質量部に対して0.03質量部以上の量で導入し、前記ホットメルト接着剤用材料と前記液体が接するように加熱撹拌または分散を行いながら、脱気を行うことを含む製造方法によって得られるホットメルト接着剤であること、並びに、残存酢酸量が17ppb以下であることを特徴とする。
上記構成によれば、優れた接着性能を示すホットメルト接着剤を使用しているにもかかわらず低臭気である包装体を提供できる。
また、前記包装体において、前記紙基材が、板紙、クラフト紙、コート紙、カートン紙、及びダンボール合紙からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
さらに、前記紙基材が少なくとも片面に、絵柄層または印刷層を備えていてもよい。
また、前記包装体において、前記ホットメルト接着剤がエチレン酢酸ビニル系ホットメルト接着剤であることが好ましい。それにより、作業性、接着性、経済性等に優れるという利点がある。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、本実施例で使用したホットメルト接着剤用材料を以下に示す。
・ホットメルト接着剤1(EVA系ホットメルト1):
「モレスコメルト(登録商標) ME-125」、軟化点83℃、160℃における粘度2100mPa・s
・ホットメルト接着剤2(EVA系ホットメルト2):
「モレスコメルト(登録商標) K-1183」、軟化点100℃、160℃における粘度3900mPa・s
・ホットメルト接着剤3(EVA系ホットメルト3):
「モレスコメルト(登録商標) PK-100S」、軟化点112℃、160℃における粘度1500mPa・s
・ホットメルト接着剤4(バイオマス系ホットメルト1):
「モレスコメルト(登録商標) PK-150Y」、軟化点103℃、160℃における粘度1850mPa・s
・ホットメルト接着剤5(バイオマス系ホットメルト2):
「モレスコメルト(登録商標) V-21」、軟化点90℃、160℃における粘度7000mPa・s
(ホットメルト接着剤の製造方法A)
容量4Lのステンレス鋼(SUS)製の攪拌混錬機中に、ホットメルト接着剤の材料を2kg投入し、各ホットメルト接着剤の溶融点以上の温度で攪拌、溶融させた。
そして、ホットメルト接着剤用材料100質量部に対して3.50質量部以上の希エタノール水溶液(10%)を前記混錬機の側面または/および下方から導入した。前記混練機容積に対し0.45倍容積以上の分速排気速度(排気速度/タンク容積)で、前記混練機のゲージ圧が-60kPaの真空度になるまで脱気し、ホットメルト接着剤を得た。
(ホットメルト接着剤の製造方法B)
容量4Lのステンレス鋼(SUS)製の攪拌混錬機中に、ホットメルト接着剤の材料を2kg投入し、各ホットメルト接着剤の溶融点以上の温度で攪拌、溶融させた。
そして、ホットメルト接着剤用材料100質量部に対して0.35質量部以上の蒸留水を前記混錬機の側面または/および下方から導入した。前記混練機容積に対し0.45倍容積以上の分速排気速度(排気速度/タンク容積)で、前記混練機のゲージ圧が-90kPaの真空度になるまで脱気し、ホットメルト接着剤を得た。
(ホットメルト接着剤の製造方法C)
容量4Lのステンレス鋼(SUS)製の攪拌混錬機中に、ホットメルト接着剤の材料を2kg投入し、各ホットメルト接着剤の溶融点以上の温度で攪拌、溶融させた。
そして、ホットメルト接着剤用材料100質量部に対して21.00質量部以上の希メタノール水溶液(10%)を側面または/および下方から導入した。前記混練機容積に対し2.25倍容積以上の分速排気速度(排気速度/タンク容積)で、前記混練機のゲージ圧が-98kPaの真空度になるまで脱気し、ホットメルト接着剤を得た。
(実施例1~15用サンプルの作成)
まず、紙基材として以下の紙材料を用意した:
・グリコ社「ビスコ」菓子箱用紙(板紙(コートボール紙))
・カルビー社「ポテトチップス クリスプ」菓子箱用紙(クラフト紙)
・モロゾフ社「PLAIN CHOCOLATE」菓子箱用紙(板紙(コートボール紙))
・エポック社「シルバニアファミリー」玩具箱用紙(ダンボール合紙)
・板紙表紙(コクヨ社製、板紙表紙)
・コート紙(王子製紙社製、トップコート)
・カートン紙(シモジマ社製、白色カートン)
・クラフト紙(レンゴー社製、K6ライナ表面のクラフト紙)
そして、表1~表3に示す紙基材各種2枚を被着体として用意し、ホットメルトガン(白光社No.806-1)を用いて、塗工温度180℃、塗布量3g/mで一方の被着体の片面にホットメルト接着剤を塗布した。塗布後2秒経過した後、もう一方の被着体を積層し、7.8kPaの荷重で2秒間プレスして得た積層体を、以下の評価試験の試験片(包装体サンプル)とした。
(比較例のサンプル)
比較例1:グリコ社「ビスコ」菓子箱の紙基材(板紙(コートボール紙))が2枚積層(接着)されている部分を比較例1の包装体サンプルとして使用した。
比較例2:紙基材として、カルビー社「ポテトチップス クリスプ」菓子箱の紙基材(クラフト紙)を用いて、ホットメルト接着剤1を何も加工せずにそのまま使用して、上記サンプル作成方法と同様の方法で積層体を作り、試験片(包装体サンプル)とした。
比較例3:紙基材として、カルビー社「ポテトチップス クリスプ」菓子箱の紙基材(クラフト紙)を用いて、ホットメルト接着剤3を何も加工せずにそのまま使用して、上記サンプル作成方法と同様の方法で積層体を作り、試験片(包装体サンプル)とした。
〔評価試験1:残存酢酸量の測定〕
上記試験片における酢酸の量の測定は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC アジレント社製7890B GCシステム、MS アジレント社製5977Bシリーズ GC/MSDシステム、DHS ゲステル社製DHSシステム)を用い、ダイナミックヘッドスペース法に基づいて行った。前処理として、各試料を160℃で60分間加熱した。キャピラリーカラムは内径0.25mm、5%フェニル/95%ジメチルポリシロキサンコーティング(コーティング厚0.25μm)、長さ30mを使用した。カラムの昇温プログラムは40~300℃まで10℃/分で加熱し、その後15分間保持した。この操作によって、質量分析器で検出した酢酸を検量線から定量した。
〔評価試験2:臭気の官能評価〕
140mLのガラス瓶に、ホットメルト接着剤で貼り合せた試験片(包装体サンプル)を10mm×80mmの大きさにして4つ入れた。そのサンプルを80℃雰囲気下で30分加温し、室温10分静置したのち、1~2cmの距離でにおいを嗅いだ。
上記官能試験の評価基準は以下の通りである。
◎:残存酢酸量6ppb以下 酢酸の臭気を感じない
○:残存酢酸量7~17ppb 低臭効果がある
△:残存酢酸量18~24ppb 若干の低臭効果があるが、明らかな臭気が残っている
×:残存酢酸量25ppb以上 明らかに臭気を感じる
なお、上記◎の根拠は公益社団法人におい・かおり環境協会が公開の嗅覚閾値に準拠している。また、表において「<1」とは残量酢酸量が1ppb未満であったことを示し、「>25」とは25ppbを超えていたことを示す(検出限界)。
〔評価試験3:剥離試験〕
試験片を25℃24時間放置後、試験片中の一方の被着体を手で剥がし、被着体の材料破壊率(%)を算出した。なお、被着体の材料破壊率とは、2枚の被着体同士が接着している面全体の面積に対する、被着体が破壊した部分の面積の比率(百分率)である。本試験の評価基準は以下の通りとした。
◎:材料破壊率80%以上
○:材料破壊率60%以上80%未満
△:材料破壊率40%以上60%未満
×:材料破壊率40%未満
それぞれの結果を表1~3に示す。
Figure 0007402335000001
Figure 0007402335000002
Figure 0007402335000003
(考察)
表1~3の結果から明らかなように、本発明に関する包装体(実施例1~15)では、紙基材の種類に関わらず、酢酸の量がいずれも17ppb以下となっており、臭気も低減されていた。また、剥離試験の結果からもわかるように、紙基材がしっかりと固定されており、材料破壊することも確認できた。
これに対し、市販されている一般的な紙基材の菓子箱をそのまま使用した比較例1では、包装体の残存酢酸量が多く、臭気が感じられた。また、一般的な紙基材の菓子箱の接着に、ホットメルト接着剤1を加工せずそのまま使用した比較例2、並びに、ホットメルト接着剤3を加工せずそのまま使用した比較例3においても、包装体の残存酢酸量が多く、臭気が感じられた。
この出願は、2020年6月11日に出願された日本国特許出願特願2020-101366を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
本発明を表現するために、前述において具体例等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
本発明は、ホットメルト接着剤を用いた、紙媒体で構成される包装体に関する技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。

Claims (4)

  1. エチレン酢酸ビニル系ベース樹脂および粘着性付与剤を含む液状のホットメルト接着剤用材料を加熱混練する間若しくは加熱混練した後に、加熱混練機に水またはアルコールのうち少なくともいずれかからなる液体を前記ホットメルト接着剤用材料100質量部に対して0.03質量部以上の量で導入し、前記ホットメルト接着剤用材料と前記液体が接するように加熱撹拌または分散を行いながら脱気を行い、ホットメルト接着剤を生成し、
    前記ホットメルト接着剤を用いて紙基材を固定する、包装体の製造方法
  2. 前記紙基材が、板紙、クラフト紙、コート紙、カートン紙、及びダンボール合紙からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の包装体の製造方法
  3. 前記紙基材が少なくとも片面に、絵柄層または印刷層を備えている、請求項1または2に記載の包装体の製造方法
  4. 前記液体を前記加熱混練機容積に対し、0.25倍容積以上の分速排気速度で脱気を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装体の製造方法。
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