JP7394033B2 - 建物の損傷状況把握システム - Google Patents
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例えば特許文献1には、構造物の構造フレームを形成する複数の構造部材の接合部に振動センサを設置し、接合部に接合した各構造部材の一端部の反対側の他端部が接合する他の接合部に設置した振動センサの検出情報を入力、接合部の振動センサを出力として、接合部と接合部を構成する複数の構造部材からなる各部分構造の動特性の入出力関係をシステム同定し、時刻的に前後の部分構造のシステムを比較し、部分構造を構成する構造部材の損傷の有無及び損傷の程度を検出する構成が開示されている。
特許文献1に開示されたような構成では、構造部材の損傷の有無及び損傷の程度を検出するのに手間がかかり、建物の損傷状況を、より容易に確認することが望まれる。
例えば、特許文献2には、センサで測定されたコンクリート構造体の状態量を、無線通信により送信する無線通信モジュールが、全体が樹脂で覆われて樹脂の一部が露出した状態でコンクリート構造体内に配置され、樹脂が露出した露出部分とコンクリート構造体の表面とが面一となるように配置されている構成が開示されている。
また、特許文献3には、ひずみを計測する計測装置として、コンクリートを打設する前に、鉄筋等にひずみ計測用のセンサを設け、センサにつながる配線をまとめて型枠の外側に配置し、打設後に、データロガ等に配線を接続することによって、鉄筋等のひずみを計測する構成が開示されている。また、この構成において、ひずみセンサは、金属板に装着され、構造物に取り付けた金属板とひずみセンサからの構造物のひずみ情報を、RFIDタグを介する無線通信で送信する。
特許文献2、3に開示されたようなセンサを、特許文献1に開示された構成に適用したとしても、構造部材の損傷の有無及び損傷の程度を検出するのに手間がかかり、建物の損傷状況を容易に確認するのが難しい場合もある。
すなわち、本発明の建物の損傷状況把握システムは、建物の損傷状況把握システムであって、前記建物を構成する鉄筋コンクリート柱の柱主筋の応力負担状態を計測する、鉄筋の軸歪計測手段と、前記鉄筋の軸歪計測手段で得られた計測結果を外部に送信する、前記鉄筋コンクリート柱の外側に設けられる無線通信装置と、柱主筋の応力負担状態と建物の損傷状況との関係を記憶したデータベースと、当該無線通信装置から受信した前記計測結果を基に、前記データベースを参照して、前記建物の前記損傷状況を推定するクラウドコンピュータと、前記損傷状況を閲覧するための利用者端末と、を備えることを特徴とする。
このような構成によれば、鉄筋の軸歪計測手段で計測された鉄筋コンクリート柱の柱主筋の応力負担状態の計測結果は、無線通信装置によって外部に送信される。クラウドコンピュータは、無線通信装置から受信した計測結果を基に、柱主筋の応力負担状態と建物の損傷状況との関係が記憶されたデータベースを参照することによって、建物の損傷状況を推定する。このように、データベースに記憶された柱主筋の応力負担状態と建物の損傷状況との関係を参照することによって、軸歪計測手段で計測した柱主筋の応力負担状態から、建物の損傷状況を、より正確に推定することができる。したがって、利用者は、クラウドコンピュータで推定した建物の損傷状況に基づいて、実際の建物の損傷状況を、遠方からであっても、より正確に把握することができる。したがって、地震発生後、柱主筋の軸歪の計測値から柱主筋、及び建物の損傷度を早期にかつ容易に把握することが可能となる。
このような構成によれば、軸歪計測手段の表面貼付け歪ゲージ部に接続される配線は、鉄筋コンクリート柱のコンクリート部に設けられた穴を通るように設けられる。配線は、無線通信装置に接続される。配線を穴に通すことで、この配線がコンクリート部の表面に露出するのを抑えることができる。配線に余長がある場合であっても、配線の余長を穴の内部に収めることで、配線の露出が抑えられる。さらに、穴を利用して無線通信装置を固定することも可能となる。無線通信装置を穴に固定した場合、配線の全体を穴の中に収めることも可能となる。また、配線を穴に通すことによって、表面貼付け歪ゲージ部の上下方向の位置の自由度が高まる。これにより、表面貼付け歪ゲージ部を、上下方向で互いに接続される柱主筋同士の継手位置に限定することなく、柱主筋の下端、中央付近、上端等の位置に配置してもよい。
このような構成によれば、柱主筋同士を連結する鉄筋用継手の筒体のゲージ穴内に、歪ゲージ部が設けられている。筒体には、筒体を介して接続される柱主筋の応力が伝達される。これにより、歪ゲージ部によって柱主筋の軸歪を計測することができる。したがって、柱主筋の応力負担状態から、建物の損傷状況を、より正確に推定することができる。歪ゲージ部は、筒体のゲージ穴内に、周囲をゲージ穴の壁面に囲繞されて、筒体の内部に埋設されるように設けられているので、歪ゲージ部が筒体によって保護され、コンクリート部へのコンクリート打設時、及び打設後のコンクリートのひびわれ等の影響が歪ゲージ部に及ぶのを低減できる。このようにして、柱主筋の表面に歪ゲージ部を直接貼り付けることなく、柱主筋の応力負担状態を計測することが可能となる。
以下、添付図面を参照して、本発明による建物の損傷状況把握システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
本発明の実施形態に係る建物の損傷状況把握システムの機能的な構成を示すブロック図を図1に示す。図2は、本実施形態における鉄筋の軸歪計測手段が設けられた鉄筋コンクリート柱の立断面図である。図3は、図2のI-I矢視断面図である。
図1に示されるように、建物の損傷状況把握システム10は、鉄筋の軸歪計測手段20Aと、無線通信装置30と、クラウドコンピュータ50と、データベース40と、利用者端末60と、を備える。
鉄筋の軸歪計測手段20Aは、建物の損傷状況把握システム10における損傷状況の把握対象となる建物1に設置される。図2、図3に示すように、鉄筋の軸歪計測手段20Aは、建物1を構成する鉄筋コンクリート柱2の柱主筋4の応力負担状態を柱主筋4の表面、または後に説明する第2の実施形態のように柱主筋4同士を連結する鉄筋用継手の筒体内部に埋設させた歪ゲージで計測する。鉄筋の軸歪計測手段20Aで計測された計測結果は、無線通信装置30に出力される。本実施形態において、鉄筋の軸歪計測手段20Aとしては、後に詳述するように、柱主筋4の軸歪を計測する表面貼付け歪ゲージ部21が用いられる。表面貼付け歪ゲージ部21は、鉄筋コンクリート柱を構成する複数の柱主筋4に貼り付ける。表面貼付け歪ゲージ部21の貼付位置は、柱に対して地震力が多方向から加わることを考慮すると、対角線位置に配筋される複数の柱主筋に設けることが好ましい。よって、柱主筋4の応力負担状態は、図4に示すデータベース(後述)を参照し、鉄筋コンクリート柱の柱主筋4に生じる軸歪の各計測値のうち、最大値または最小値から推定する。
データベース40は、クラウドコンピュータ50とともに設置されている。データベース40は、柱主筋4の応力負担状態と建物1の損傷状況との関係を、予め記憶している。
図4は、建物の損傷状況把握システムのデータベースに記憶された、柱主筋の応力負担状態と建物の損傷状況との関係についてのテーブルの一例を示す。なお、図4に示すデータベース40は、日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針・同解説(1999年9月発行)と、一般社団法人、日本建築構造技術者協会:JSCA版RC建築構造の設計(第2版、2019年2月発行)を参考とし、柱主筋の軸歪と、柱主筋の応力負担状態、及び建物の損傷状況を連携付けたものである。
この図4に示すように、データベース40に記憶されたテーブルTには、柱主筋4の軸歪と、柱主筋4の応力負担状態と、建物1の損傷状況とが、互いに関連付けて登録されている。図4のテーブルTにおいて、柱主筋4の軸歪は、引張方向の軸歪を「正」、圧縮方向の軸歪を「負」としている。図4の例では、例えば、軸歪μが「-2000≦μ≦2000」であれば、柱主筋4の応力負担状態は「健全レベル」であり、建物1の損傷状況は「健全(被害無し)」であるとしている。軸歪μ(の絶対値)が、より大きくなり、「2000<μ≦5000」、「-5000≦μ<-2000」である場合、柱主筋4の応力負担状態は「過大引張レベル」、「過大圧縮レベル」であり、建物1の損傷状況は、いずれも「軽微」であるとしている。軸歪μ(の絶対値)が、さらに大きくなり、「5000<μ≦10000」、「-10000≦μ<-5000」である場合、柱主筋4の応力負担状態は「引張損傷破壊レベル」、「圧縮損傷破壊レベル」であり、建物1の損傷状況は、いずれも「小破」であるとしている。軸歪μ(の絶対値)が、より一層大きくなり、「10000<μ」、または「μ<-10000」である場合、柱主筋4の応力負担状態は「引張破壊レベル」、「圧縮破壊レベル」であり、建物1の損傷状況は、いずれも「中破」であるとしている。なお、ここで図4のテーブルTに示した軸歪μの閾値、柱主筋4の応力負担状態のレベル数は、一例に過ぎず、適宜変更可能である。
識別処理部51は、外部ネットワーク100を介して外部から受信した鉄筋の軸歪計測手段20Aでの計測結果に基づいて、各計測結果の計測時刻、計測を行った鉄筋の軸歪計測手段20Aの識別情報を取得する。
損傷状況判定部56は、データベース40に記憶されたテーブルTを参照し、軸歪データ処理部55で取得された柱主筋4の応力負担状態のレベルに対応する、建物1の損傷状況(「健全」、「軽微」、「小破」、「中破」のいずれか一つ)を判定する。損傷状況判定部56による判定結果は、データベース40に記憶される。
図2に示すように、互いに上下に位置するプレキャスト柱材5同士は、柱主筋4同士が継手部J1で接合されている。本実施形態においては、接手部J1は鉄筋用継手11である。この鉄筋用継手11は、柱主筋4同士を連結する。鉄筋用継手11は、鋼製で、上下方向に延びる筒状をなしている。鉄筋用継手11には、両端にそれぞれ柱主筋4の挿入口11aが設けられている。鉄筋用継手11の側面には、鉄筋用継手11の内部空間と外部を連通させるグラウト孔11gが設けられている。鉄筋用接手11には、上方から、柱主筋4が挿入されている。鉄筋用継手11の下面は、プレキャスト柱材5のコンクリート部3の下面に露出するように設けられている。
下方に位置するプレキャスト柱材5Aにおいて、柱主筋4Aの上端部は、コンクリート部3から上方に突出している。この柱主筋4Aの上端部は、上方に位置するプレキャスト柱材5Bのコンクリート部3の下面から露出する、鉄筋用接手11の内部空間に挿入されている。
コンクリート部3の側面には、穴8が設けられている。穴8は、機械式接手11のグラウト孔11gと連通するように形成されている。下方に位置するプレキャスト柱材5Aの柱主筋4Aの上端部が、上方に位置するプレキャスト柱材5Bの鉄筋用接手11の内部空間に挿入された後に、穴8とグラウト孔11gを介して、鉄筋用接手11の内部空間にグラウト材が充填される。これにより、互いに上下に位置する柱主筋4A、4Bが接合されている。
表面貼付け歪ゲージ部21は、コンクリート部3に埋設された部分で、柱主筋4の表面に貼り付けられている。表面貼付け歪ゲージ部21の、柱主筋4に貼り付けられた表面以外の、他の表面は、樹脂等によってコーティングされており、表面貼付け歪ゲージ部21は、コンクリート部3を形成するコンクリートの打設養生時の影響から保護されている。表面貼付け歪ゲージ部21は、柱主筋4の軸歪を計測する。
配線22は、その一端が表面貼付け歪ゲージ部21に接続されている。配線22は、柱主筋4と鉄筋用接手11の表面に沿って設けられた後に、穴8を通るように配置されている。配線22の他端は、無線通信装置30に接続されている。
ここで、無線通信装置30は、例えばRFID(radio frequency identifier)タグである。無線通信装置30は、例えば、穴8を塞ぐように配置されている。このため、配線22は、穴8内に収容され、鉄筋コンクリート柱2の外部に露出していない。
この図5に示すように、建物の損傷状況把握システム10における、建物の損傷状況把握方法は、柱主筋4の応力負担状態の計測結果を受信するステップS1と、識別情報を取得するステップS2と、柱主筋4の応力負担状態を取得するステップS3と、建物1の損傷状況を判定するステップS4と、判定結果を出力するステップS5と、を含む。
利用者端末60から、建物の損傷状況把握システム10における、建物1での鉄筋の軸歪計測手段20Aによる計測開始指令が出力されると、クラウドコンピュータ50は、図5に示す一連の建物の損傷状況把握処理を開始する。
建物1に設けられた鉄筋の軸歪計測手段20Aでは、表面貼付け歪ゲージ部21で、柱主筋4に生じる軸歪を計測する。表面貼付け歪ゲージ部21における計測結果は、配線22を介して無線通信装置30に転送される。無線通信装置30は、計測結果のデータを、外部ネットワーク100を介してクラウドコンピュータ50に送信する。
続いて、クラウドコンピュータ50では、識別処理部51が、外部ネットワーク100を介して外部から受信した鉄筋の軸歪計測手段20Aでの計測結果に含まれる、各計測結果の計測時刻、計測を行った鉄筋の軸歪計測手段20Aの識別情報を取得する(ステップS2)。これにより、クラウドコンピュータ50では、どの鉄筋コンクリート柱2の柱主筋4Aについての軸歪の計測結果を受信したのかを特定(識別)する。
さらに、クラウドコンピュータ50では、損傷状況判定部56が、データベース40に記憶されたテーブルTを参照し、軸歪データ処理部55で取得された柱主筋4の応力負担状態のレベルに対応する、建物1の損傷状況を判定する(ステップS4)。損傷状況判定部56による判定結果は、データベース40に記憶される。
このような構成によれば、鉄筋の軸歪計測手段20Aで計測された鉄筋コンクリート柱2の柱主筋4の応力負担状態の計測結果は、無線通信装置30によって外部に送信される。クラウドコンピュータ50は、無線通信装置30から受信した計測結果を基に、柱主筋4の応力負担状態と建物1の損傷状況との関係が記憶されたデータベース40を参照することによって、建物1の損傷状況を推定する。このように、データベース40に記憶された柱主筋4の応力負担状態と建物1の損傷状況との関係を参照することによって、鉄筋の軸歪計測手段20Aで計測した柱主筋4の応力負担状態から、建物1の損傷状況を、より正確に推定することができる。したがって、利用者は、クラウドコンピュータ50で推定した建物1の損傷状況に基づいて、実際の建物1の損傷状況を、遠方からであっても、より正確に把握することができる。このようにして、建物1の損傷状況を、より容易に確認することが可能となる。
このような構成によれば、鉄筋の軸歪計測手段20Aの表面貼付け歪ゲージ部21に接続される配線22は、鉄筋コンクリート柱2のコンクリート部3に設けられた穴8を通るように設けられる。配線22は、無線通信装置30に接続される。配線22を穴8に通すことで、この配線22がコンクリート部3の表面に露出するのを抑えることができる。配線22に余長がある場合であっても、配線22の余長を穴8の内部に収めることで、配線22の露出が抑えられる。さらに、穴8を利用して無線通信装置30を固定することも可能となる。無線通信装置30を穴8に固定した場合、配線22の全体を穴8の中に収めることも可能となる。また、配線22を穴8に通すことによって、表面貼付け歪ゲージ部21の上下方向の位置の自由度が高まる。これにより、表面貼付け歪ゲージ部21を、上下方向で互いに接続される柱主筋4同士の継手位置に限定することなく、柱主筋4の下端、中央付近、上端等の位置に配置してもよい。
次に、本発明にかかる建物の損傷状況把握システムの第2の実施形態について説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態においては、上記第1の実施形態に対し、鉄筋の軸歪計測手段の構成のみが異なる。そこで、以下の説明では、上記第1の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
図6は、第2の実施形態における鉄筋の軸歪計測手段が設けられた鉄筋コンクリート柱の立断面図である。図7は、鉄筋の軸歪計測手段が設けられた部分における鉄筋コンクリート柱の拡大断面図である。
図6、図7に示すように、鉄筋コンクリート柱2において、互いに上下に位置するプレキャスト柱材5同士は、柱主筋4同士が継手部J2で接合されている。本実施形態においては、接手部J2は鉄筋用継手24である。この鉄筋用継手24は、柱主筋4同士を連結し、かつ柱主筋4の軸歪が計測可能である。鉄筋用継手24は、筒体25と、歪ゲージ部26と、外周貼付け歪ゲージ部27と、配線23、29と、を備えている。
筒体25は、鋼製で、上下方向に延びる筒状をなしている。筒体25には、両端にそれぞれ柱主筋4の挿入口25aが設けられている。筒体25の側面には、筒体25の内部空間と外部を連通させるグラウト孔25gが設けられている。筒体25には、上方から、柱主筋4が挿入されている。筒体25の下面は、プレキャスト柱材5のコンクリート部3の下面に露出するように設けられている。
下方に位置するプレキャスト柱材5Aにおいて、柱主筋4Aの上端部は、コンクリート部3から上方に突出している。この柱主筋4Aの上端部は、上方に位置するプレキャスト柱材5Bのコンクリート部3の下面から露出する、筒体25の内部空間に挿入されている。
コンクリート部3の側面には、穴8が設けられている。穴8は、筒体25のグラウト孔25gと連通するように形成されている。下方に位置するプレキャスト柱材5Aの柱主筋4Aの上端部が、上方に位置するプレキャスト柱材5Bの筒体25の内部空間に挿入された後に、穴8とグラウト孔25gを介して、筒体25の内部空間にグラウト材が充填される。これにより、互いに上下に位置する柱主筋4A、4Bが接合されている。
配線23は、その一端がゲージ穴25h内で歪ゲージ部26に接続されている。ゲージ穴25hの上端は、配線23との隙間が不図示のシール材等によって封止されている。配線29は、その一端が各外周貼付け歪ゲージ部27に接続されている。配線23、29は、柱主筋4と筒体25の表面に沿って設けられた後に、穴8を通るように配置されている。配線23、29の他端は、無線通信装置30に接続されている。
無線通信装置30は、例えば、穴8を塞ぐように配置されている。このため、配線23、29は、穴8内に収容され、鉄筋コンクリート柱2の外部に露出していない。
このような構成によれば、柱主筋4同士を連結する鉄筋用継手の筒体25のゲージ穴25h内に、歪ゲージ部26が設けられている。筒体25には、筒体25を介して接続される柱主筋4の応力が伝達される。これにより、歪ゲージ部26によって柱主筋4の軸歪を計測することができる。したがって、柱主筋4の応力負担状態から、建物1の損傷状況を、より正確に推定することができる。歪ゲージ部26は、筒体25のゲージ穴25h内に、周囲をゲージ穴25hの壁面に囲繞されて、筒体25の内部に埋設されるように設けられているので、歪ゲージ部26が筒体25によって保護され、コンクリート部3へのコンクリート打設時、及び打設後のコンクリートのひびわれ等の影響が歪ゲージ部26に及ぶのを低減できる。このようにして、柱主筋4の表面に歪ゲージ部26を直接貼り付けることなく、柱主筋4の応力負担状態を計測することが可能となる。
なお、本発明の建物の損傷状況把握システムは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、鉄筋の軸歪計測手段20A、20Bを、プレキャスト柱材5Bの下端部における、柱主筋4同士の継手部J1、J2近傍に設けるようにしたが、これに限らない。例えば、第1の実施形態において、鉄筋の軸歪計測手段20Aを、各プレキャスト柱材5の上端部や中間部に設け、これらの部分で、柱主筋4の軸歪を計測するようにしてもよい。この場合においては、プレキャスト柱材5のコンクリート部3に、配線22を通すための穴を特別に形成するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、柱主筋の応力負担状態、及び建物の損傷状況は、RC柱の柱主筋に生じる軸歪の各計測値のうち、最大値または最小値から推定しているが、例えば、壁の場合などでは、各計測値の平均値から鉄筋の応力負担状態や建物の損傷状況を推定しても良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
次に、本発明の関連技術について説明する。
上記実施形態のような建物の損傷状況把握システムに関して、次のような特徴を備えた建物の損傷状況把握システムが考えられる。
すなわち、本関連技術の建物の損傷状況把握システムにおいては、鉄筋の軸歪計測手段は、柱主筋ではなく、壁、梁等の、建物を構成する、柱以外の他の構造部材に配筋される主筋に設けられる。
このような構成では、上記実施形態の建物の損傷状況把握システムと同様に、建物の損傷状況を容易に確認可能である。
2 鉄筋コンクリート柱 25 筒体
3 コンクリート部 25a 挿入口
4、4A、4B 柱主筋 25h ゲージ穴
8 穴 26 歪ゲージ部
10 損傷状況把握システム 30 無線通信装置
20A、20B 鉄筋の軸歪計測手段 40 データベース
21 表面貼付け歪ゲージ部 50 クラウドコンピュータ
22、23 配線 60 利用者端末
Claims (2)
- 建物の損傷状況把握システムであって、
前記建物を構成する鉄筋コンクリート柱の柱主筋の応力負担状態を計測する、鉄筋の軸歪計測手段と、
前記鉄筋の軸歪計測手段で得られた計測結果を外部に送信する、前記鉄筋コンクリート柱の外側に設けられる無線通信装置と、
柱主筋の応力負担状態と建物の損傷状況との関係を記憶したデータベースと、
当該無線通信装置から受信した前記計測結果を基に、前記データベースを参照して、前記建物の前記損傷状況を推定するクラウドコンピュータと、
前記損傷状況を閲覧するための利用者端末と、を備え、
前記鉄筋の軸歪計測手段は、
前記柱主筋の表面に貼り付けられて、前記柱主筋の軸歪を計測する表面貼付け歪ゲージ部と、
一端が前記表面貼付け歪ゲージ部に接続され、他端が前記無線通信装置に接続されている配線と、
を備え、
前記鉄筋コンクリート柱のコンクリート部には穴が設けられ、
前記配線は前記穴を通るように設けられ、
前記鉄筋コンクリート柱は、プレキャストコンクリート造であり、
前記穴は、前記鉄筋コンクリート柱の前記柱主筋同士を接合する鉄筋用継手のグラウト孔と連通するように形成されていることを特徴とする建物の損傷状況把握システム。 - 建物の損傷状況把握システムであって、
前記建物を構成する鉄筋コンクリート柱の柱主筋の応力負担状態を計測する、鉄筋の軸歪計測手段と、
前記鉄筋の軸歪計測手段で得られた計測結果を外部に送信する、前記鉄筋コンクリート柱の外側に設けられる無線通信装置と、
柱主筋の応力負担状態と建物の損傷状況との関係を記憶したデータベースと、
当該無線通信装置から受信した前記計測結果を基に、前記データベースを参照して、前記建物の前記損傷状況を推定するクラウドコンピュータと、
前記損傷状況を閲覧するための利用者端末と、を備え、
前記鉄筋の軸歪計測手段は、前記柱主筋同士を連結し、かつ前記柱主筋の軸歪が計測可能な鉄筋用継手であって、
両端に前記柱主筋の挿入口が設けられた鋼製の筒体と、
当該筒体に設けられたゲージ穴内に、周囲を前記ゲージ穴の壁面に囲繞されて、前記筒体の内部に埋設されるように設けられた歪ゲージ部と、
一端が前記歪ゲージ部に接続され、前記ゲージ穴の内部を通って、他端が外部に位置するように設けられて前記無線通信装置に接続された配線と、を備えることを特徴とする建物の損傷状況把握システム。
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