JP7391738B2 - ペプチド、及び苦味付与剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ペプチド、及び苦味付与剤に関する。
ゴマペプチドは、ゴマから抽出されるタンパク質の酵素分解物であり、血圧降下作用等を有することが知られる(例えば、特許文献1)。
特開平8-231588号公報
他方で、新規なゴマペプチドの探索や、ゴマペプチドが有し得る上記以外の作用について研究が進められている。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、新規なゴマペプチドを提供することを目的とする。
本発明者らは、所定の配列からなる新規なゴマペプチドを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) 配列番号1、配列番号2、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる、ペプチド。
(2) (1)に記載のペプチドからなる、苦味付与剤。
本発明によれば、新規なゴマペプチドが提供される。
各種試料を用いた、苦味に関する官能評価の結果を示す図である。 各種試料を用いた、辛味に関する官能評価の結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
<本発明のペプチド>
本発明のペプチドは、下記の配列番号1~3のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチドである。なお、以下、アミノ酸配列は、N末端を左端に置き、N末端からC末端にかけて記載する。
配列番号1:VIRAMP
配列番号2:FNVPQET
配列番号3:ILKY
本発明者らは、ゴマペプチドの酵素(特に、サーモライシン)分解物について検討した結果、飲食品等への苦味付与効果を示すペプチドとして、上記の新規なゴマペプチドを発見した。
本発明において「苦味付与」とは、本発明のペプチドを配合する対象(飲食品等)に対して、本発明のペプチドに由来する苦味を付与したり、対象が有する苦味を向上又は強化させたりできることを意味する。
本発明のペプチドを配合する対象が苦味を有しないものである場合(乳製品、飲料(ジュース等)、調味料、パン、菓子、デザート類(甘味料を含む飲食品等)、介護食等)、本発明のペプチドを配合することで該対象に苦味を付与し、嗜好性を高めることができる。
本発明のペプチドを配合する対象が苦味を有するものである場合(茶飲料、酒類(ビール、日本酒等)、栄養ドリンク、コーヒー、苦味香辛料等)、本発明のペプチドを配合することで、該対象が有する苦味を強化し、嗜好性を高めることができる。
本発明によって奏される苦味は、実施例に示した官能評価によって、その有無や程度を特定できる。
(本発明のペプチドの製造方法)
本発明のペプチドは、植物タンパク質(ゴマタンパク質等)の加水分解や、化学合成等によって得られる。
植物タンパク質の原料としては、タンパク質を含む植物組織(種子等)であれば特に限定されないが、ゴマ、穀類(米、小麦、大麦、オート麦、トウモロコシ等)、豆類(インゲン、ソラマメ、大豆、緑豆等)等が挙げられる。
上記のうち、本発明のペプチドが得られやすいという観点から、植物タンパク質の原料としては、ゴマが好ましい。
植物タンパク質は、原料の種類等に応じ、従来知られる方法で抽出できる。例えば、破砕、脱脂、加熱、溶媒への溶解等を経て、原料から植物タンパク質を得ることができる。
植物タンパク質の加水分解の方法としては、加水分解酵素を用いた方法、強酸又は強塩基を用いた方法等が挙げられる。
加水分解酵素を用いた方法においては、任意の生物(動物、植物、微生物等)由来の加水分解酵素を使用できる。例えば、好ましい加水分解酵素として、サーモライシン等が挙げられる。
加水分解酵素を用いた加水分解の条件としては、特に限定されず、用いる酵素に応じて適切なpH、温度、反応時間を設定できる。
強酸を用いた方法においては、任意の強酸(塩酸、硝酸、硫酸等)を使用できる。
強塩基を用いた方法においては、任意の強塩基(アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)等)を使用できる。
加水分解の条件としては、特に限定されず、用いる酵素、強酸又は強塩基に応じて適切なpH、反応温度、反応時間を設定できる。
加水分解後、得られた反応液から、本発明のペプチドを任意の方法によって精製してもよい。精製方法としては、各種クロマトグラフィー(イオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等)を用いた方法が挙げられる。
あるいは、加水分解後、得られた反応液を、本発明のペプチドを含む分解産物として精製せずにそのまま任意の用途に用いてもよい。
化学合成の方法としては、特に限定されないが、ペプチド合成に通常用いられる方法である液相法又は固相法のいずれであってもよい。具体的には、Fmoc法、Boc法等が挙げられる。
化学合成されたペプチドは、精製してもよい。精製方法としては、各種クロマトグラフィー(イオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等)を用いた方法が挙げられる。
各種方法によって得られたペプチドのアミノ酸配列は、GC-MS等で分析できる。
(本発明のペプチドの形態)
本発明のペプチドは、任意の形態(固体、液体等)に調製できる。例えば、本発明のペプチドは乾燥物として調製してもよいし、溶媒(水等)に溶解させて溶液として調製してもよい。
<苦味付与剤>
本発明のペプチドは、上記のとおり、本発明のペプチドを配合する対象に対して、苦味を付与したり、苦味を向上させたりすることができる。したがって、本発明のペプチドは、苦味付与剤として好ましく用いることができる。
本発明のペプチドを配合する対象としては、苦味の付与を要する任意の対象であり得る。本発明のペプチドを配合する対象は、例えば、飲食品、医薬品等であってもよい。本発明のペプチドを配合する対象は苦味を有するものであってもよく、苦味を有さないものであってもよい。
本発明のペプチドを配合できる飲食品としては、特に限定されないが、任意の形態のもの(固体、液体、ゲル、ゼリー等)であってもよい。
例えば、飲料類(茶飲料(緑茶、紅茶、烏龍茶)、コーヒー、ジュース、乳飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料等)、デザート類、菓子類、パン類、調味料類、介護食、等が挙げられる。
本発明のペプチドを配合できる医薬品としては、特に限定されないが、任意の形態(粉末状、溶液状、懸濁液状等)の経口投与剤であってもよい。
本発明のペプチドを配合する対象への、本発明のペプチドの配合量は特に限定されず、得ようとする苦味の程度等に応じて適宜設定できる。
例えば、本発明のペプチドを飲料類に配合する場合、良好な苦味を付与しやすいという観点から、飲料類全体に対して、本発明のペプチドを、好ましくは1.0×10-5mg/ml以上、より好ましくは1.0×10-4mg/ml以上配合してもよい。
また、本発明のペプチドを飲料類に配合する場合、その上限は過度でなくともよく、飲料類全体に対して、本発明のペプチドを、好ましくは10mg/ml以下、より好ましくは1.0mg/ml以下配合してもよい。
本発明のペプチドは、任意のタイミングで対象に配合できる。
例えば、本発明のペプチドを、配合しようとする対象の材料とともに混合して対象を製造・成形してもよいし、配合しようとする対象を製造・成形した後に本発明のペプチドを添加(対象の表面にふりかける等)してもよい。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<ゴマタンパク質の作製>
液体窒素にて凍結破砕されたゴマ100mgを、SDSサンプルバッファー(1ml)に溶解させた。得られた溶液を15,000rpm、4℃で、5分間遠心分離後、その上清を、種々のゴマタンパク質を含む溶液として回収した。
<ゴマペプチド由来の短ペプチドの作製>
上記で得られたゴマタンパク質を酵素(サーモライシン)で加水分解した。得られた加水分解物(種々のペプチドの混合物)に対して、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC-MS/MS)によるショットガン解析を行い、該加水分解物に含まれるペプチドを網羅的に同定した。その同定結果に基づき、検出強度等の情報から、加水分解物中に相対的に多く含まれる候補ペプチドを選択した。
次いで、これらの候補ペプチドが加水分解物中に含まれる量を、逆相カラムを使用したLC-MS/MS(使用装置「API4000」、ABSciex社製)で特定し、上記加水分解産物には、下記の6種類のペプチド(ゴマペプチド由来の短ペプチド)が実際に含まれることを特定した。
(ペプチド1)配列番号1で表されるアミノ酸配列(VIRAMP)からなるペプチド
(ペプチド2)配列番号2で表されるアミノ酸配列(FNVPQET)からなるペプチド
(ペプチド3)配列番号3で表されるアミノ酸配列(ILKY)からなるペプチド
(ペプチド4)配列番号4で表されるアミノ酸配列(VIY)からなるペプチド
(ペプチド5)配列番号5で表されるアミノ酸配列(IVY)からなるペプチド
(ペプチド6)配列番号6で表されるアミノ酸配列(MLPAY)からなるペプチド
酵素によって加水分解される前の主要なゴマタンパク質(11S globulin seed storage protein 2 (11SG))の全長配列(配列番号7)を表1に示す。全長配列中、ペプチド1、2、3、5についてはそれぞれに対応する部分に下線を付した。なお、VIYやMLPAYは他の種類のゴマタンパク質に含まれている。
Figure 0007391738000001
<ゴマペプチド由来の短ペプチドの官能評価>
上記で得られたゴマペプチド由来の短ペプチド、及び、ゴマペプチドを下記の官能評価に供した。
(ペプチド試料の調製)
各ペプチドを純水に溶解させ、ペプチド試料を調製した。なお、対照試料としてアルギニン(苦味の強いアミノ酸として知られる。)を純水に溶解させたアルギニン試料も調製した。なお、各試料の濃度は下記のとおりである。
(試料A)アルギニン:1mg/ml
(試料B)アルギニン:10mg/ml
(試料C)ペプチド1(VIRAMP):1mg/ml
(試料D)ペプチド2(FNVPQET):1mg/ml
(試料E)ペプチド3(ILKY):1mg/ml
(試料F)ペプチド4(VIY):1mg/ml
(試料G)ペプチド5(IVY):1mg/ml
(試料H)ペプチド6(MLPAY):1mg/ml
(試料I)ゴマペプチド:1mg/ml
(試料J)ゴマペプチド:10mg/ml
(官能評価)
15名のパネルによって、各試料の苦味、渋味、辛味、生臭さ、及び悪臭を評価した。評価基準は以下のとおりである。
[苦味の評価基準]
試料A(アルギニン:1mg/ml)の結果を「3」とした場合の、5段階の相対評価として評価した。数字が高いほど苦味が強いことを意味する。
[苦味以外の評価基準]
渋味、辛味、生臭さ、及び悪臭の強さを5段階評価した。数字が高いほど渋味等が強いことを意味する。
(結果)
各評価項目に関する結果の平均値を図1及び2に示す。図1は苦味の評価結果であり、図2は辛味の評価結果である。なお、統計処理は一元配置分散分析によって行った(**P<0.01、*P<0.05)。
図1に示されるとおり、試料C、D、E(いずれも本発明のペプチドを含む)は、いずれもアルギニンと同等の苦味を有していた。これらの試料の苦味は、ゴマペプチドよりも高い傾向にあった。他方で、試料F、G、Hは、試料C、D、E同様にゴマペプチド由来の短ペプチドを含むにもかかわらず、苦味がほぼ認められなかった。
図2に示されるとおり、いずれのゴマペプチド由来の短ペプチドも、辛味の強さにおいて違いがほぼ認められなかった。図を示していないが、辛味以外(渋味、生臭さ、及び悪臭)の評価結果も、辛味同様の結果であった。
以上から、本発明のペプチドは、強い苦味を呈し、嗜好性の高い食品素材等として利用できることがわかった。
<参考試験:ゴマペプチド由来の短ペプチドのアンジオテンシン変換酵素阻害活性評価>
上記で得られた様々なゴマペプチドの酵素分解物(上記ペプチド1~3、5を含む)のそれぞれについて、アンジオテンシン変換酵素阻害活性(以下、「ACE阻害活性」)を評価した。
(ACE阻害活性の測定)
本発明におけるACE阻害活性(IC50)の測定において使用した試薬、及び測定方法は以下のとおりである。
[使用試薬]
ACE阻害性活性測定キット、商品名「ACE Kit-WST(Code:A502)」、同仁化学研究所製
該キットは、「Substrate buffer」、「Enzyme A」、「Enzyme B」、「Enzyme C」、「Coenzyme」、「Indicator solution」を含む。
取扱説明書に基づき、以下の試薬を調製した。
(1)「Enzyme working solution」
「Enzyme B」にシリンジで滅菌水2mlを加えて「Enzyme B」溶液を調製した。次いで、「Enzyme A」に「Enzyme B」溶液1.5mlを加えて、「Enzyme working solution」を調製した。
(2)「Indicator working solution」
「Enzyme C」及び「Coenzyme」のそれぞれにシリンジで滅菌水3mlを加えて「Enzyme C」溶液及び「Coenzyme」溶液を調製した。次いで、「Indicator solution」に、「Enzyme C」溶液、及び「Coenzyme」溶液を2.8mlずつ加えて、「Indicator working solution」を調製した。
[測定方法]
以下の方法で、下記3種の試料のそれぞれについてACE阻害活性(IC50)を算出した。
「sample」:各ペプチド試料を含む溶液
「blank 1」:「Substrate buffer」を含む溶液(各ペプチド試料を含まない)
「blank 2」:滅菌水(各ペプチド試料及び「Substrate buffer」を含まない)
微量遠心管に、各ペプチド溶液、又は滅菌水を20μlずつ入れた後、さらに、「Substrate buffer」を20μlずつ加えた。なお、この際に、「blank 2」には「Substrate buffer」の代わりに滅菌水を20μlずつ加えた。
次いで、各ペプチド溶液、及び「blank 1」に、「Enzyme working solution」を20μlずつ加え、37℃で60分間インキュベートした。
インキュベート後、各微量遠心管に、「Indicator working solution」を200μlずつ加え、室温で10分間インキュベートした。
「Enzyme working solution」によって、3-Hydroxybutyryl-GlyGly-Gly(3HB-GGG)から生じた3-Hydroxybutyric acid(3HB)量を、450nmの吸光度で測定した。測定結果に基づき、以下の式により各試料の阻害率を求め、ACE阻害活性(IC50)を算出した。
ACE阻害活性値(阻害率)(%)=[(「blank 1」-「sample」)/(「blank 1」-「blank 2」)]×100
(結果)
各ペプチドのACE阻害活性(IC50)を表2に示す。表2に示されるとおり、本発明のペプチド(上記ペプチド1~3)は、いずれもアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有することを確認した。したがって、本発明のペプチドは、血圧降下作用を有することがわかった。
Figure 0007391738000002

Claims (2)

  1. 配列番号1、配列番号2、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる、ペプチド。
  2. 請求項1に記載のペプチドからなる、苦味付与剤。
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