JP4982908B2 - 歯周病菌プロテアーゼ阻害剤ならびに抗歯周病菌剤 - Google Patents

歯周病菌プロテアーゼ阻害剤ならびに抗歯周病菌剤 Download PDF

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Description

本発明は、可食性に優れたイネ種子に由来し、歯周病の治療や予防に有効な、タンパク質性ならびにペプチド性のプロテアーゼ阻害剤ならびに抗菌剤に関する。
歯周病は成人の80%以上が罹患している感染症であり、う蝕と並んで二大口腔疾患に数えられている。歯周病の発症には様々な嫌気性細菌が関わっているが、その中で最も重要な病原菌とされているのがポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)である。ポルフィロモナス・ジンジバリスは嫌気性のグラム陰性桿菌であり、糖発酵性を持たない。従って、その増殖には蛋白質の分解が必要不可欠であり、その役割を担っているのが、ポルフィロモナス・ジンジバリスが産生するプロテアーゼ群である。特に、トリプシン様システインプロテアーゼであるアルギニン−ジンジパイン(Rgp)とリジン−ジンジパイン(Kgp)は本菌種が産生する主要プロテアーゼとして、その増殖と病原性に必須な役割を担っていることが明らかとなっている(非特許文献1、2)。また、歯周病のみならず、ポルフィロモナス・ジンジバリスが動脈硬化の危険因子であること(非特許文献3)、アルギニン−ジンジパインがそこでも重要な役割を果たしていることが知られている(非特許文献4)。
このように、口腔疾患や動脈硬化の予防におけるポルフィロモナス・ジンジバリスの管理の重要性が認知され、本菌種の感染生理におけるアルギニン−ジンジパインやリジン−ジンジパインの役割が明らかになるに従い、歯周病の治療や予防を目的としたプロテアーゼ阻害剤の開発に注目が集まるようになってきた。そのための合成薬剤や抗生物質としては、1−(3−フェニルプロピオニル)ピペラジン−3(R,S)−カルボン酸−[4−アミノ−1(S)−(ベンゾチアゾ−ル−2−カルボニル)ブチル]アミド(非特許文献5)、ベンザミジン誘導体(非特許文献6)、テトラサイクリンとその誘導体(非特許文献7)が報告されており、アルギニン−ジンジパインやリジン−ジンジパインによるヒト唾液ヒスタチンの切断部位に基づいて設計されたペプチド系化合物、KYT−1とKYT−36がそれぞれアルギニン−ジンジパインとリジン−ジンジパインを特異的に阻害することが示されている(非特許文献8)。更には、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)FA−70株が産生するアンチパインアナログ、FA−70C1がアルギニン−ジンジパインを強く阻害するとの結果も見いだされている(非特許文献9)。KYT−1、KYT−36やFA−70C1がポルフィロモナス・ジンジバリスの増殖や病原性を抑えるという知見も同時に得られており、このことからもジンジパイン阻害剤が歯周病の予防に有効であるのは確実である。
同時に、安全性の観点から、植物に由来するジンジパイン阻害剤を見いだそうとする試みが行われている。例えば、特許文献1や非特許文献10は、カテキン又はカテキン混合物がアルギニン−ジンジパインやリジン−ジンジパインの活性を阻害することを報告している。特許文献2では赤霊芝と黒霊芝が、特許文献3では黄杞葉、緑茶、ヨモギ、カリン、刺梨、ギムネマ、ルイボス茶、サンザシ、ウコン、ラカンカ、シリマリン、枸杞子、紫玄米、エレウテロコック、月桃葉、ドクダミ、大棗、霊芝がジンジパイン阻害剤として記載されている。また、特許文献4では、ニンニク、チンピ、カンゾウ、カミツレ、シャゼンソウ、キキョウ、ケイヒ、ウイキョウ、ホップ、カノコソウ、オウゴン、シコン、セ−ジ、イチョウ、竹およびソウハクヒが歯周病の予防あるいは治療に有用なプロテアーゼ阻害剤として挙げられている。発明者らも、米タンパク質ならびに米に含まれるオリザシスタチン類がジンジパイン阻害剤として有効であることを見いだしている(特許文献5)。
特開2004−143127号公報 特開2005−35909号公報 特開2003−335648号公報 特開平6−25000号公報 特開2007−16002号公報 Infect. Immun. 69, 2972−2979, 2001 J. Biol. Chem. 274, 17955−17960, 1999 J. Periodontol. 78, 677−682, 2007 J. Biochem. (Tokyo) 140, 713−723, 2006 Infect. Immun. 70, 6968−6975, 2002 Biol. Chem. 383, 1193−1198, 2002 Antimicrob. Agents Chemother. 45, 2871−2876, 2001 Mol. Pharmacol. 66, 1599−1606, 2004 Biol. Chem. 384, 911−920, 2003 Oral. Microbiol. Immunol. 19, 118−120, 2004
しかしながら、合成薬物や抗生物質は医薬品としての利用には適しているものの、食品を介した歯周病の予防目的には適切ではない。また、特許文献2〜4に挙げられたプロテアーゼ阻害剤は、植物組織抽出物としての利用に留まっており、プロテアーゼ阻害剤としての分子実体が明らかになっていない。そのため、健康に及ぼす影響が解明されているとは言い難く、安全性の点で不安が残るものも少なくない。従って、食品から医薬品までの幅広い利用が可能なジンジパイン阻害剤は限られており、歯周病予防に適した様々な機能性食品を具現化するためには、分子実体が明らかであり、安全性に優れた天然物由来の新たな阻害剤が求められている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、イネに含まれ、ジンジパイン阻害活性を有する成分を同定することに成功した。そして、それがポルフィロモナス・ジンジバリスのプロテアーゼ活性のみならず、その増殖をも抑制できることを確認し、本発明を完成するに至った。
なお、本発明において明らかとなったジンジパイン阻害活性を有する成分とは、配列番号1〜33に示されるいずれかのアミノ酸配列からなる蛋白質であり、これらの蛋白質が歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリスのプロテアーゼ活性や増殖に対する阻害作用を有することはこれまで全く知られていなかった。
本発明の歯周病菌プロテアーゼ阻害剤は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質の、54番目から60番目までのアミノ酸残基に相当するペプチド配列(Arg−Thr−Leu−Val−Arg−Arg−Gln)、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質の、14番目から25番目までのアミノ酸残基に相当するペプチド配列(Arg−Arg−Leu−Met−Ala−Ala−Lys−Ala−Glu−Ser−Arg−Lys)を有効成分として含有する
また、歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)プロテアーゼに対する阻害活性を有する。
本発明の抗歯周病菌剤は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質の、14番目から25番目までのアミノ酸残基に相当するペプチド配列(Arg−Arg−Leu−Met−Ala−Ala−Lys−Ala−Glu−Ser−Arg−Lys)を有効成分として含有する
また、歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)に対する抗菌作用を有する
本発明による歯周病菌プロテアーゼ阻害剤ならびに抗歯周病菌剤は、古くから食用穀類として摂食しているイネに由来する蛋白質やその部分配列であるペプチドを有効成分とするため、機能面での有効性のみならず安全性にも大変優れたものである。従って、薬剤や医薬部外品における利用だけでなく、食品成分としての利用が可能である。従って、歯周病の治療や予防に幅広く使用することができ、オ−ラルケアを中心とした健康管理に大きく貢献することができる。
以下、本発明のプロテアーゼ阻害剤ならびに抗菌剤の一実施形態について詳細に説明する。
本発明のプロテアーゼ阻害剤ならびに抗菌剤は、イネ(Oryza sativa)に含まれる等電点5.0〜6.5の蛋白質又はその部分ペプチドを有効成分として含有する。
そして、本発明のプロテアーゼ阻害剤に含有される有効成分として好適に用いることのできる蛋白質又はその部分ペプチドとしては、(a)配列表の配列番号1〜33のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する蛋白質、(b)配列表の配列番号1〜33のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する蛋白質であって、1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含み、かつプロテアーゼ阻害活性を有する蛋白質、(c)配列表の配列番号1〜33のいずれか1つに記載のアミノ酸配列の部分配列を有するペプチドであって、プロテアーゼ阻害活性を有するペプチド、(d)配列表の配列番号1〜33のいずれか1つに記載のアミノ酸配列の部分配列を有するペプチドであって、1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含み、かつプロテアーゼ阻害活性を有するペプチド、が例示される。そして、これらの1種又は複数種の混合物を本発明のプロテアーゼ阻害剤とすることができる。
また、本発明の抗菌剤に含有される有効成分として好適に用いることのできる蛋白質又はその部分ペプチドとしては、(a)配列表の配列番号1〜33のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する蛋白質、(b)配列表の配列番号1〜33のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する蛋白質であって、1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含み、かつ抗菌作用を有する蛋白質、(c)配列表の配列番号1〜33のいずれか1つに記載のアミノ酸配列の部分配列を有するペプチドであって、抗菌作用を有するペプチド、(d)配列表の配列番号1〜33のいずれか1つに記載のアミノ酸配列の部分配列を有するペプチドであって、1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含み、かつ抗菌作用を有するペプチド、が例示される。そして、これらの1種又は複数種の混合物を本発明の抗菌剤とすることができる。
また、本発明のプロテアーゼ阻害剤ならびに抗菌剤は、特に、歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)プロテアーゼに対する阻害活性と、抗菌作用、すなわち、ポルフィロモナス・ジンジバリス増殖阻害活性を有する。
なお、アミノ酸配列の「部分配列」とは全アミノ酸配列の一部分のことをいい、「部分ペプチド」とは、アミノ酸配列の「部分配列」を有するペプチドのことをいう。そして、本発明のプロテアーゼ阻害剤ならびに抗菌剤として用いることのできる部分ペプチドは、本発明の有効成分である蛋白質の全アミノ酸配列のうち、プロテアーゼ阻害活性や抗菌作用を示しうる活性部位の領域を含んでなるものである。
本発明においては、蛋白質やペプチドのプロテアーゼ阻害活性や抗菌作用を利用することが目的であるから、これらのプロテアーゼ阻害活性や抗菌作用を保持している限り、蛋白質やペプチドの誘導体も本発明のプロテアーゼ阻害剤ならびに抗菌剤に用いることができる。ここで、蛋白質やペプチドの誘導体とは、歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリスのプロテアーゼ活性や増殖阻害活性を有するものであって、かつ、該当する蛋白質やペプチドのアミノ酸配列のアミノ末端のアミノ基または各アミノ酸の側鎖のアミノ基の一部または全部、および/または該当する蛋白質やペプチドのアミノ酸配列のカルボキシル末端のカルボキシル基または各アミノ酸の側鎖のカルボキシル基の一部または全部、および/または、該当する蛋白質やペプチドの各アミノ酸の側鎖のアミノ基およびカルボキシル基以外の官能基(水酸基やチオ−ル基など)の一部若しくは全部が、適当な他の置換基(リン酸基やアセチル基など)によって修飾を受けた場合をいう。さらには、ポルフィロモナス・ジンジバリスのプロテアーゼ阻害活性や増殖阻害活性を保持できる範囲で、該当する蛋白質やペプチドのアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、又は付加を行うこともできる。これらの修飾やアミノ酸配列の改変は、例えば、蛋白質中に存在する官能基の保護、安全性および組織移行性の向上、または活性の増強等を目的として行われる。
上述の蛋白質やペプチドの誘導体には、本発明のプロテアーゼ阻害剤ならびに抗菌剤に用いることのできる蛋白質やペプチドの薬学上許容されうる塩も包含されうる。このような塩の好ましい例としては、ナトリウム塩またはカルシウム塩のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、フッ化水素酸塩、塩酸塩のようなハロゲン化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルキルスルホン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酢酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。さらには、蛋白質やペプチドを溶媒和物としてもよい。このような溶媒和物としては、水和物、エタノール和物などのアルコール和物、およびエーテル和物などが挙げられる。
本発明によるプロテアーゼ阻害剤ならびに抗菌剤は、古くから食用穀類として摂食しているイネに由来する蛋白質やその部分ペプチドを有効成分とするため、機能面での有効性のみならず安全性にも大変優れたものである。そして、本発明の口腔用組成物又は食品は、本発明のプロテアーゼ阻害剤又は抗菌剤を添加してなり、有効成分である蛋白質やペプチドを有効量含むものであるから、歯周病の治療や予防に幅広く使用することができ、オ−ラルケアを中心とした健康管理に大きく貢献することができる。
本発明の口腔用組成物の種類は特に限定されず、例えば歯磨きやマウスウォッシュのように口腔内で用いられるものを含み、具体的には、練り状、液体状、粉末状の歯磨剤、マウススプレーなどの口中清涼剤、トローチ剤、うがい剤、シロップ剤等の医薬品または医薬部外品が挙げられる。また、本発明の食品の種類は特に限定されず、例えば、飴、チューインガム、トローチ、ジャムや飲料等が挙げられる。
なお、本発明の口腔用組成物又は食品において、有効成分である蛋白質やペプチドの配合割合は、口腔用組成物、食品の種類および該当する口腔用組成物や食品に配合される他の成分の種類や量に応じて適宜選択することができる。
本発明において、有効成分である蛋白質はイネの葉、茎、皮、根、種子などの抽出物から、慣用の方法に従って、蛋白質画分を分離して得ることができるが、特に可食部である種子からの分離が望ましい。ここで、抽出物の製造方法は、蛋白質の抽出に適用できるものである限り、特に限定されないが、例えば、葉、茎、皮、根、種子などの組織部分を水またはリン酸緩衝液のような溶媒中で磨砕した後、ろ過または遠心分離により上清を集め、必要に応じて希釈や濃縮することにより得ることができる。
そして、等電点電気泳動によって等電点5.0〜6.5の範囲の蛋白質を取得することにより、有効成分である蛋白質を分離精製することができる。なお、抽出物から有効成分である蛋白質を分離精製する方法は等電点電気泳動に限定されず、例えば、イオンクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法など、蛋白質の分離精製に一般に用いられる方法を使用してもよい。
また、有効成分である蛋白質の製造において加熱処理を行うこともできる。この加熱処理はイネ組織中に含まれるプロテアーゼの失活に有効である。加熱方法や加熱条件は特に限定されないが、好ましくは60〜120℃の温度範囲で加熱を行う。
本発明において、有効成分である部分ペプチドは、有効成分である蛋白質の製造過程において得られるか、または、得られた蛋白質を慣用のアミノ酸配列切断手段によって切断し、活性測定によって活性の有無を確認することによって得ることができる。慣用のアミノ酸配列切断手段としては、特に蛋白質分解酵素を用いた酵素的切断方法が有効である。この場合に使用する酵素は、蛋白質のプロテアーゼ阻害活性や抗菌作用を消失させない酵素であれば、特に限定されないが、アルギニン残基やリジン残基に対して特異性を持たない蛋白質分解酵素を用いるのが望ましい。このような酵素としてはエンドプロテイナーゼAsp−Nなどが挙げられる。
なお、有効成分である蛋白質やペプチドは、分離精製して用いてもよいが、有効成分である蛋白質やペプチドを有効量含むものであれば、植物体組織またはその乾燥品、粉砕品、抽出物そのままを使用してもよい。乾燥品や粉砕品の調製方法も本発明による有効成分を含んで得ることができる限り、特に限定されない。
また、有効成分である蛋白質やペプチドは、慣用の化学的合成法により製造されたものであってもよい。有効成分である蛋白質は配列番号1〜33に示されるいずれかのアミノ酸配列からなるもので、有効成分であるペプチドはその部分配列であることから、これら蛋白質やペプチドの修飾物や配列改変物を含めて、これらの有効成分は化学的に合成して得ることができる。
また、有効成分である蛋白質やペプチドは、遺伝子工学的手法によっても製造できる。すなわち、有効成分である蛋白質ならびにその部分配列であるペプチドは、配列番号34〜66に示されるいずれかの塩基配列によってコードされるものであるから、そのDNAによって形質転換することで得られた形質転換細胞において製造することができる。すなわち、有効成分である蛋白質やペプチドは、それを示すアミノ酸配列をコードするDNA断片を、宿主細胞内で複製可能でかつ発現可能な状態で含むDNA、特に組換えベクターの形態とし、それを用いて宿主細胞の形質転換を行い、得られた形質転換体を培養することによって製造することができる。有効成分である蛋白質やペプチドをコードするDNA断片を取得する方法は特に限定されず、PCRや化学合成など、慣用の方法を使用することができる。該当する蛋白質やペプチドの製造に際しては、所謂宿主−ベクター系を利用してもよい。なお、このような宿主−ベクター系を使用するに当たっては、慣用される各種の発現ベクターの作成法および形質転換法を用いることができる。
このような遺伝子工学的手法に用いることのできる核酸は、(1)配列表の配列番号34に記載の塩基配列のうち、24〜515番目、(2)配列表の配列番号35に記載の塩基配列のうち、128〜610番目、(3)配列表の配列番号36に記載の塩基配列のうち、98〜1990番目、(4)配列表の配列番号37に記載の塩基配列のうち、111〜2967番目、(5)配列表の配列番号38に記載の塩基配列のうち、93〜966番目、(6)配列表の配列番号39に記載の塩基配列のうち、87〜587番目、(7)配列表の配列番号40に記載の塩基配列のうち、89〜682番目、(8)配列表の配列番号41に記載の塩基配列のうち、31〜507番目、(9)配列表の配列番号42に記載の塩基配列のうち、53〜532番目、(10)配列表の配列番号43に記載の塩基配列のうち、97〜579番目、(11)配列表の配列番号44に記載の塩基配列のうち、51〜539番目、(12)配列表の配列番号45に記載の塩基配列のうち、435〜899番目、(13)配列表の配列番号46に記載の塩基配列のうち、116〜585番目、(14)配列表の配列番号47に記載の塩基配列のうち、6〜770番目、(15)配列表の配列番号48に記載の塩基配列のうち、35〜2562番目、(16)配列表の配列番号49に記載の塩基配列のうち、48〜2752番目、(17)配列表の配列番号50に記載の塩基配列のうち、31〜2721番目、(18)配列表の配列番号51に記載の塩基配列のうち、43〜507番目、(19)配列表の配列番号52に記載の塩基配列のうち、24〜497番目、(20)配列表の配列番号53に記載の塩基配列のうち、96〜3933番目、(21)配列表の配列番号54に記載の塩基配列のうち、19〜579番目、(22)配列表の配列番号55に記載の塩基配列のうち、50〜550番目、(23)配列表の配列番号56に記載の塩基配列のうち、118〜570番目、(24)配列表の配列番号57に記載の塩基配列のうち、118〜570番目、(25)配列表の配列番号58に記載の塩基配列のうち、46〜902番目、(26)配列表の配列番号59に記載の塩基配列のうち、53〜499番目、(27)配列表の配列番号60に記載の塩基配列のうち、71〜754番目、(28)配列表の配列番号61に記載の塩基配列のうち、54〜403番目、(29)配列表の配列番号62に記載の塩基配列のうち、598〜1532番目、(30)配列表の配列番号63に記載の塩基配列のうち、62〜4479番目、(31)配列表の配列番号64に記載の塩基配列のうち、1〜1104番目、(32)配列表の配列番号65に記載の塩基配列のうち、1〜2159番目、(33)配列表の配列番号66に記載の塩基配列のうち、111〜782番目のいずれかの塩基配列を有する。これら(1)〜(33)の塩基配列は、それぞれ配列表の配列番号1〜33に記載のアミノ酸配列に対応しており、これら(1)〜(33)の塩基配列により、それぞれ配列表の配列番号1〜33に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質をコードすることができる。したがって、これらの塩基配列を有する核酸を用いることにより、本発明のプロテアーゼ阻害剤ならびに抗菌剤に使用することのできる、プロテアーゼ阻害活性又は抗菌作用を有する蛋白質をコードすることができる。
以下に本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明の有効性を述べるために例示するものであって、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(精白米からの蛋白質抽出)
コシヒカリ精白米をサンプルミルで粉砕し、これに10倍量の50mM トリス−HCl(pH8.0)/500mM NaCl緩衝液を加えて4℃で30分撹拌した。撹拌後、10,000rpm×15分間の遠心分離によって固形分を除去し、上清に対して80℃で10分間の加熱処理を行った。更に、10,000rpm×15分間の遠心分離で沈殿物を除去し、その上清を蛋白質抽出液とした。
(歯周病菌プロテアーゼ阻害活性の測定)
酵素標品には歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis ATCC33277)から精製したアルギニン−ジンジパインを用いた。阻害活性測定用の緩衝液は、100mM HEPES(pH7.5)/150mM NaCl/5mM CaCl/0.05% Brij35/4mM ジチオスレイトール(DTT)とし、反応は2ml容積で行った。所定濃度のサンプルとアルギニン−ジンジパイン40pMを40℃で5分間プレインキュベーションした後、酵素基質としてZ−Phe−Arg−MCAを50μMの濃度になるように加えて、酵素反応を開始した。反応の進行は蛍光分光光度計(励起波長380nm;蛍光波長440nm)を用いて、蛍光強度の増加としてモニタリングし、酵素反応の強さは基質から遊離するアミノメチルクマリン(AMC)量で評価した。酵素阻害活性1ユニット(U)は、酵素基質から1分間に1μmolのAMC遊離を阻害する量と定義した。
(等電点電気泳動による精白米蛋白質の分画)
上記蛋白質抽出液を限外ろ過膜(分画分子量5,000Da)を用いて濃縮すると共に、緩衝液を7M 尿素/2M チオ尿素に置換した。このサンプルを7M 尿素/2M チオ尿素/4% CHAPS/20mM DTT/1% ZOOMキャリアアンフォライト(pH3〜10;インビトロジェン製)溶液とした後、10,000rpm×15分間の遠心分離によって沈殿物を除去し、等電点電気泳動(IEF)を行った。電気泳動にはpH3.0、pH5.4、pH6.2とpH10.0のディスクを装着したIEFフラクショネーター(インビトロジェン製)を用いた。IEFで得られた各pH画分の試料について、歯周病菌プロテアーゼに対する阻害活性を上述の方法により測定した(表1)。歯周病菌プロテアーゼ阻害活性は、その約80%がpH5.4〜6.2の等電点範囲で回収することができた。歯周病菌プロテアーゼに対して阻害活性を有する蛋白質は、その多くが等電点5.0〜6.5の範囲の蛋白質であることは明らかである。
(歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質の分離)
上述の等電点電気泳動におけるpH5.4〜6.2の画分から、歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質を、歯周病菌プロテアーゼを固定化したアフィニティ−ビーズを用いて分離した。
ポルフィロモナス・ジンジバリスの培養上清より精製したアルギニン−ジンジパインを20mM HEPES緩衝液(pH7.0)中で、磁性ビーズ(MagnaBind Amine Derivatized Beads;Pierce製)と混合し、更に1mM リンカー(BS3;NHS ester;Pierce製)を添加した後、緩やかに攪拌しながら4℃で2時間インキュベートした。次いで、トリス−HCl(pH7.5)を50mMになるよう加え、30分間のインキュベーションにより未反応の官能基をブロックすることで、アルギニン−ジンジパイン固定化ビーズを作製した。
上述のpH5.4〜6.2のIEF画分を、ゲルろ過カラム(HiTrap Desalting;GEヘルスケア製)を用いて脱塩した後、50mM HEPES(pH7.5)/150mM NaCl/5mM CaCl/4mM DTT/0.05% CHAPS溶液において、50℃で15分の還元処理を行った。還元した試料をアルギニン−ジンジパイン固定化ビーズと4℃で20分間反応させ、磁気分離でビーズを回収後、50mM HEPES(pH7.5)/500mM NaCl/5mM CaCl/4mM DTT/0.05% CHAPSにて洗浄した。次いで、100mM グリシン−HCl(pH2.7)/4mM DTTを用い、アルギニン−ジンジパイン固定化ビーズに結合した歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質を溶出させた。
(歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質の同定)
分離した歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質にトリフルオロ酢酸(TFA)を0.1%になるよう加え、ZipTip C18(Millipore製)に結合・洗浄し、50% アセトニトリル/0.1% TFA溶液で溶出した。溶出液は80℃で乾固させた後、50mM NHHCOにて溶解し、0.2mM DTT存在下で50℃、15分間の還元処理、次いで0.27mM ヨードアセトアミド存在下でのアルキル化処理を行った。その後、トリプシン(Promega製)を0.5ng/μlになるよう加えて、37℃で15時間のインキュベーションによる酵素消化を行った。
酵素消化サンプルは、ODSカラム(Inertsil Peptides C18 0.2×150mm;GLサイエンス製)を分離カラムとし、液体クロマトグラフィーシステム(nanoLC 1200;Agilent製)を用いて、流速2μl/分で30分のリニアグラジェント(4〜40%アセトニトリル/0.1% TFA)により分離した。グラジェントの間に、分離サンプルを、30秒間隔でターゲットプレート(Prespotted AnchorChip;Bruker Daltonics製)にスポットした。スポッティングには、サンプルスポッター(PROTEINEER fc;Bruker Daltonics製)を用いた。
ターゲットプレート上のサンプルスポットは10mMリン酸アンモニウム/0.1% TFAで洗浄し、マトリックス支援レーザーイオン化(MALDI)−飛行時間型(TOF)質量分析計(autoflex III;Bruker Daltonics製)を用いてMS/MS分析した。得られたMS/MSデーターから、MASCOT(Matrix Science製)データベースにより蛋白質を同定した。これらの検討により、配列番号1〜33のそれぞれに示されるアミノ酸配列からなる蛋白質が、イネ由来の歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質であることがわかった。配列番号1〜33のそれぞれに示され、歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質をコードする塩基配列は、データベース(Rice Annotation Project DataBase(http://rapdb.dna.affrc.go.jp/index.html))における配列検索により明らかにした。
(歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質に由来するペプチドの歯周病菌プロテアーゼ阻害活性)
配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質の、54番目から60番目までのアミノ酸残基に相当するペプチド配列(Arg−Thr−Leu−Val−Arg−Arg−Gln)をRA17(27−33)、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質の、14番目から25番目までのアミノ酸残基に相当するペプチド配列(Arg−Arg−Leu−Met−Ala−Ala−Lys−Ala−Glu−Ser−Arg−Lys)をCH(14−25)として、それぞれ化学合成し(シグマアルドリッチジャパン)、上述の方法に従って歯周病菌プロテアーゼ阻害活性を測定した(図1)。この結果から、歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質の部分ペプチドが、歯周病菌プロテアーゼに対して阻害活性を有することがわかった。従って、歯周病予防を目的とした機能因子として有用であることは明らかである。
(歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質に由来するペプチドの歯周病菌増殖阻害活性)
上述のペプチドCH(14−25)について、歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する増殖阻害活性を測定した。
ポルフィロモナス・ジンジバリス(JCM8525株)を波長655nmでの初発吸光度が0.005になるように変法GAMブイヨン(日水製薬製)に接種し、これを96ウェルマイクロプレートに、1ウェル当たり100μL分注した。同時に、CH(14−25)を最終濃度が0,5,20あるいは100μMになるように添加し、37℃で嫌気培養した。嫌気培養にはアネロパック(三菱ガス化学製)を用い、培養開始から0,24,48ならびに72時間後に655nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定して、ポルフィロモナス・ジンジバリスの増殖をモニタリングした(図2)。図2から明らかなように、ペプチドCH(14−25)は、歯周病菌プロテアーゼ阻害活性に加えて、その濃度に依存する歯周病菌増殖阻害活性を示した。
以上の試験例からも、イネ由来の歯周病菌プロテアーゼ阻害蛋白質とその部分ペプチドが、天然物由来の歯周病予防因子として有用であることは明確である。
ペプチドRA17(27−33)とペプチドCH(14−25)について、歯周病菌プロテアーゼ阻害活性を測定した結果を示すグラフである。 ペプチドCH(14−25)について、歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する増殖阻害活性を測定した結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質の、54番目から60番目までのアミノ酸残基に相当するペプチド配列(Arg−Thr−Leu−Val−Arg−Arg−Gln)、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質の、14番目から25番目までのアミノ酸残基に相当するペプチド配列(Arg−Arg−Leu−Met−Ala−Ala−Lys−Ala−Glu−Ser−Arg−Lys)を有効成分として含有することを特徴とする歯周病菌プロテアーゼ阻害剤。
  2. 歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)プロテアーゼに対する阻害活性を有することを特徴とする請求項に記載の歯周病菌プロテアーゼ阻害剤。
  3. 配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質の、14番目から25番目までのアミノ酸残基に相当するペプチド配列(Arg−Arg−Leu−Met−Ala−Ala−Lys−Ala−Glu−Ser−Arg−Lys)を有効成分として含有することを特徴とする抗歯周病菌剤。
  4. 歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)に対する抗菌作用を有することを特徴とする請求項に記載の抗歯周病菌剤。
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