JP7390873B2 - コンクリート締固め評価装置、及びコンクリート締固め評価方法 - Google Patents

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Description

本願発明は、コンクリートの締固めに関する技術であり、より具体的には、コンクリート表面の沈下量に基づいて締固めの程度を評価するコンクリート締固め評価装置と、これを用いたコンクリート締固め評価方法に関するものである。
コンクリートは鋼材とともに最も重要な建設材料のひとつであり、ダム、トンネル、橋梁といった土木構造物や、集合住宅、オフィスビルなどの建築構造物をはじめ、様々な構造物に用いられている。このコンクリート構造物は、あらかじめ工場等で製作されて所定の場所まで運搬されることもあるが、土木構造物や建築構造物の場合、所定の場所(現場)で直接構築されることが多い。いずれにしろ、セメントと水、骨材等を練り混ぜた状態のコンクリート(フレッシュコンクリート)を型枠の中に投入し、コンクリートの硬化を待って型枠を外すことでコンクリート構造物は構築される。
フレッシュコンクリートは、アジテータ車からシュートを介して流し込んだり、コンクリートポンプ車によってホースから落下させたり、場合によっては作業者がスコップではねることによって、型枠内に投入される。そして、型枠内に投入されたフレッシュコンクリートは、振動機(振動バイブレータ)によって締め固められる。
振動バイブレータは、コンクリートに振動を与えることができ、当然ながら振動バイブレータに近いコンクリートほど大きな加速度で振動が加えられる。一般にコンクリートは、スランプの値が小さいほど(つまり固いほど)液状化する振動加速度(以下、「液状化限界加速度」という。)は大きくなり、スランプの値が大きいほど液状化限界加速度は小さくなる。そしてコンクリートは、液状化限界加速度で振動が加えられると液状化(流動化)することが知られており、液状化することによって、コンクリート内の気泡が上昇して外部に抜けだすとともに、コンクリート内の骨材とモルタルが再配置され、その結果、コンクリートは締め固められる。すなわち、振動バイブレータを中心とする限られた範囲(液状化限界加速度以上の加速度となる範囲)ではコンクリートが締め固められるものの、それ以外の範囲では十分に締め固められない。
従来、コンクリートの締固めの程度の適否(つまり、十分に締め固められたか否か)を判断するにあたっては、コンクリート表面の微妙な変化や締固め時間など様々な要因に基づくオペレ―タ(作業者)の判断に委ねられていた。つまり、コンクリートの締固め程度の適否判断、ひいてはコンクリート構造物の品質は、振動バイブレータのオペレータの経験や知見に依存していたわけである。しかしながら、締固めの適否判断を正確に行うことができるオペレータは限定的であり、そのうえ近年の慢性的な人手不足の問題もあって、適時にそのようなオペレータを確保することは極めて困難となっている。
そこで、オペレータのいわば定性的な判断に頼ることなく、客観的にコンクリートの締固めを評価する技術が、これまでにもいくつか提案されてきた。例えば特許文献1では、RI計測器によって得られる計測値に基づいて締固め度合を判定する技術について提案しており、特許文献2では、バイブレーター用油圧回路の油量の変化を捉えることによって締固め管理を行う技術について提案している。
特開2019-143399号公報 特開2017-160673号公報
特許文献1が示す技術は、オペレータの定性的な判断に頼ることなく判定できるものの、この文献にも示されるようにRI計測器によって得られる計測値にはばらつきが大きく、必ずしも精度よく判定できるとはいえない。また特許文献2が示す技術も客観的に判断することができるが、比較的大掛かりな装置を必要とするうえ、人の手持ちによる振動バイブレータ作業には適用することができない。
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわちオペレータの判断に頼ることなく客観的にコンクリートの締固め程度を判断することができ、しかも従来に比して容易かつ適切に判断することができるコンクリート締固め評価装置と、これを用いたコンクリート締固め評価方法を提供することである。
本願発明は、図9に示すように、「十分に締め固められたコンクリートの表面は相当の沈下量を示す」、という点に着目してなされたものであり、その沈下量と締固めの程度との関係をあらかじめ把握したうえで沈下量に基づいてコンクリートの締固め程度を判断する、というこれまでにない発想に基づいて行われた発明である。なお図9は、スランプ値が10.5cmのコンクリートにおけるコンクリート沈下量とコンクリート密度比との関係を示すグラフ図である。
本願発明のコンクリート締固め評価装置は、コンクリートの締固めの程度を評価する装置であって、計測手段と密度推定手段、判定手段を備えたものである。このうち計測手段は、「暫定高さ(振動バイブレータによる締固めを行っている最中のコンクリート表面高さ)」を計測する手段である。また密度推定手段は、「初期高さ(振動バイブレータによる締固めを行う前のコンクリート表面高さ)」と「暫定高さ」との差である「表面沈下量」、及び密度推定式に基づいてコンクリートの密度状態を表すコンクリート密度を推定する手段であり、判定手段は、密度推定手段によって推定されたコンクリート密度と密度閾値(あらかじめ設定された値)とを照らし合わせることによって締固めの程度の適否を判定する手段である。なお、密度推定式は次式で与えられる。
R=W÷(A×(H-△H))
R:コンクリート密度
A:振動バイブレータ周辺の単位平面面積
W:単位平面面積の領域内にあるコンクリートの重量
H:初期高さ
△H:表面沈下量
本願発明のコンクリート締固め評価装置は、コンクリート密度比を推定することによってコンクリートの締固めの程度を評価するものとすることもできる。この場合、密度推定式は次式で与えられる。
=R÷R=W÷(A×(H-△H))÷R
:コンクリート密度比
R:コンクリート密度
:理想密度
A:振動バイブレータ周辺の単位平面面積
W:単位平面面積の領域内にあるコンクリートの重量
H:初期高さ
△H:表面沈下量
本願発明のコンクリート締固め評価装置は、密度値補正手段をさらに備えたものとすることもできる。この密度値補正手段は、密度推定手段によって得られる値(コンクリート密度やコンクリート密度比)を、振動バイブレータの挿入深さに応じて低減することによって補正密度値を求める手段である。この場合、判定手段は、密度補正手段によって求められた補正密度値と密度閾値とを照らし合わせることによって締固めの程度の適否を判定する。
本願発明のコンクリート締固め評価装置は、「締固め状況マップ」を表示する表示手段をさらに備えたものとすることもできる。この締固め状況マップは、コンクリートの締固め状況を表すマップであり、コンクリートの打込み範囲を分割した複数の小領域で構成される。この場合、計測手段は、小領域ごとに暫定高さを計測し、密度推定手段は、小領域ごとにコンクリートの密度状態を推定し、判定手段は、小領域ごとに締固めの程度の適否を判定する。そして表示手段は、判定手段によって判定された適否を小領域ごとに表示する。なお締固め状況マップは、小領域ごと(あるいは任意地点ごと)に締固め度の値を表示したものとすることもできるし、同程度(同じレンジ)の締固め度をつなげたいわゆるコンター図(締固め度コンター)とすることもできる。
本願発明のコンクリート締固め評価方法は、コンクリートの締固めの程度を評価する方法であって、初期計測工程と締固め工程、施工時計測工程、密度推定工程、判定工程を備えた方法である。このうち初期計測工程では、「初期高さ」を計測し、締固め工程では、振動バイブレータによってコンクリートの締固めを行い、施工時計測工程では、「暫定高さ」を計測する。また密度推定工程では、表面沈下量と密度推定式に基づいてコンクリートの密度状態を表すコンクリート密度を推定する。そして判定工程では、密度推定工程で推定されたコンクリート密度と密度閾値とを照らし合わせることによって締固めの程度の適否を判定する。なお、密度推定式は次式で与えられる。
R=W÷(A×(H-△H))
R:コンクリート密度
A:振動バイブレータ周辺の単位平面面積
W:単位平面面積の領域内にあるコンクリートの重量
H:初期高さ
△H:表面沈下量
本願発明のコンクリート締固め評価方法は、コンクリート密度比を推定することによってコンクリートの締固めの程度を評価する方法とすることもできる。この場合、密度推定式は次式で与えられる。
=R÷R=W÷(A×(H-△H))÷R
:コンクリート密度比
R:コンクリート密度
:理想密度
A:振動バイブレータ周辺の単位平面面積
W:単位平面面積の領域内にあるコンクリートの重量
H:初期高さ
△H:表面沈下量
本願発明のコンクリート締固め評価装置、及びコンクリート締固め評価方法には、次のような効果がある。
(1)振動バイブレータを操作するオペレータの判断に頼ることなく、客観的にしかも即時的(リアルタイム)にコンクリートの締固め程度を判断することができる。
(2)従来に比して容易かつ適切にコンクリートの締固め程度を判断することができる。
(3)人によって振動バイブレータを操作する場合に限らず、建設機械等に装着した振動バイブレータを操作する場合など、様々なケースに適用することができる。
(a)で振動バイブレータによる振動に伴ってコンクリート内の気泡が上方から排出されていく状況を模式的に示すモデル図、(b)は振動バイブレータを中心にコンクリート表面が沈下していく状況を模式的に示すモデル図。 本願発明のコンクリート締固め評価装置100の主な構成を示すブロック図。 コンクリート締固め評価装置の主な処理の流れを示すフロー図。 密度推定式(第1の密度推定式と第2の密度推定式)の基礎となるモデルを示す部分断面図であり、(a)は締固めを行う前の状態における密度推定式の基礎モデルを示す部分断面図、(b)は締固め作業中の状態における密度推定式の基礎モデルを示す部分断面図。 (a)は振動バイブレータを中心とする直径Lの円を単位平面面積としたモデル図、(b)は振動バイブレータを中心とする幅L×奥行Bの四角形を単位平面面積としたモデル図。 (a)スランプ2cmのコンクリートにおける振動加速度の分布を示したグラフ図、(b)はスランプ6cmのコンクリートにおける振動加速度の分布を示したグラフ図、(c)はスランプ11cmのコンクリートにおける振動加速度の分布を示したグラフ図。 表示手段に表示された締固め状況マップMPを示すモデル図。 本願発明のコンクリート締固め評価方法の主な工程の流れを示すフロー図。 コンクリート(スランプ値が10.5cm)における「コンクリート沈下量-コンクリート密度比」の関係を示すグラフ図。
本願発明のコンクリート締固め評価装置、及びコンクリート締固め評価方法の実施形態の例を図に基づいて説明する。
1.全体概要
本願発明は、型枠内に打込まれたコンクリートの締固めの程度(以下、「締固め度合」という。)を評価するものであり、コンクリート表面の沈下量に基づいて締固め度合の適否を判定することをひとつの技術的特徴としている。そこで、まずはコンクリート表面が沈下する機構について簡単に説明する。
振動バイブレータで締固めていくと、コンクリートは大きく3つの段階を経て変化していく。第1段階は、いわば初期沈下段階である。この段階のコンクリートは、粗骨材がモルタルに包まれた大きな粒子の集合であり、摩擦や粘着力によって支持されている不安定な状態にある。この状態で振動バイブレータによって振動を加えると、粒子の平衡が崩れるとともにコンクリート表面が沈下を開始し、粗骨材を取り巻く連続したモルタル層が形成される。
第2段階は、いわば気泡逸散段階である。この段階では、振動派の通過に伴うせん断作用が、モルタル層中における粗骨材の再配列を促すとともに、エントラップエアを上方に追い出す。そしてこの段階の終盤では、コンクリート表面に水光が見られるようになり、エントラップエアの大きな気泡がコンクリート外に排出されて相当の沈下が生じる。図1(a)では、振動バイブレータVBによる振動に伴ってコンクリート内の気泡(エントラップエア)が上方から排出されていく状況を模式的に示しており、図1(b)では、振動バイブレータVBを中心にコンクリート表面が沈下していく状況を模式的に示している。
第3段階は、相互連携が完了するいわば安定段階である。したがってこの段階で必要以上に振動バイブレータを作動させると、材料分離が生じ、粗骨材など大きな粒子が下方に沈み込み、一方、細粒子やセメントペーストは振動バイブレータに引き寄せられるように移動していく。
このように、第1段階(初期沈下段階)から第2段階(気泡逸散段階)を経て、すなわち気泡がコンクリート外に排出されて第3段階(安定段階)を迎えた状態が、十分に(適切に)締固められた状態であり、換言すれば適切な締固め度合であると判定できる状態である。したがって本願発明は、コンクリート表面の沈下量を観察することによって、コンクリートが第3段階を迎えたと判定する、つまり締固め度合が適切であると判定することとした。
2.コンクリート締固め評価装置
本願発明のコンクリート締固め評価装置の例を、図に基づいて説明する。なお本願発明のコンクリート締固め評価方法は、本願発明のコンクリート締固め評価装置を用いてコンクリートの締固め度合を評価する方法である。したがって、まずは本願発明のコンクリート締固め評価装置について説明し、その後に本願発明のコンクリート締固め評価方法について説明することとする。
図2は、本願発明のコンクリート締固め評価装置100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明のコンクリート締固め評価装置100は、計測手段101と密度推定手段102、判定手段103を含んで構成され、さらに密度値補正手段104やディスプレイといった表示手段105、沈下量算出手段106、密度推定式記憶手段107、密度閾値記憶手段108を含んで構成することもできる。
コンクリート締固め評価装置100を構成する主な要素のうち密度推定手段102と判定手段103、密度値補正手段104、表示手段105、沈下量算出手段106は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、マウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを具備するもので、パーソナルコンピュータ(PC)や、iPad(登録商標)といったタブレット型PC、スマートフォンを含む携帯端末などによって構成することができる。
密度推定式記憶手段107と密度閾値記憶手段108は、例えば密度推定手段102などを実装するコンピュータ装置のメモリに構築することもできるし、あるいはローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)で接続されたデータベースサーバに構築することもできるし、インターネット経由(つまり無線通信や有線通信)で記憶させるクラウドサーバとすることもできる。
計測手段101は、少なくともコンクリート表面の高さを計測することができるものであり、従来用いられている種々の計測技術を採用することができる。例えば、レーザーセンサを用いたレーザー計測によってコンクリート表面の3次元座標を取得することとしたり、画像取得手段(カメラやビデオカメラなど)を用いた写真計測(2枚1組のステレオペア画像を利用した計測)によって3次元座標を取得することとしたり、そのほか任意方向から撮影して得られた多数の画像からモデルを作成するSfM (Structure from Motion)や、トータルステーション(Total Station)を用いたTS計測などによって3次座標を取得することもできる。
以下、おもに図3を参照しながら、コンクリート締固め評価装置100について詳しく説明する。図3は、コンクリート締固め評価装置100の主な処理の流れを示すフロー図であり、中央の列に実行する処理を示し、左列にはその処理に必要な入力情報等を、右列にはその処理から生ずる出力情報等を示している。
まず、型枠内にコンクリートが打込まれた状態の、すなわち振動バイブレータVBによる締固めを行う前の状態のコンクリート表面の高さ(以下、「初期高さ」という。)を計測手段101(図2)によって計測しておく。そして、振動バイブレータVBによる締固めが開始されると、締固めを行っている最中のコンクリート表面の高さ(以下、「暫定高さ」という。)を計測手段101(図2)によって計測する(Step101)。なお、締固めを行っている間は、定期的あるいは断続的、連続的に暫定高さを計測し、その暫定高さに基づいて締固め度合の適否を随時判定していくとよい。
また、暫定高さとともに、その暫定高さを計測した平面位置もあわせて取得するとよい。例えば、計測手段101としてレーザーセンサを用いることによって、計画されたコンクリートの打込み範囲(以下、単に「計画打込み範囲」という。)を網羅するように3次元座標を取得することができる。この場合、いわゆる3次元点群が得られることから、不規則三角形網(TIN:Triangulated Irregular Network)モデルや、DEM(Digital Elevation Model)といったメッシュモデルを生成することができ、締固め作業中におけるコンクリート表面の変化を立体的に把握できて好適となる。
暫定高さを取得すると、初期高さと暫定高さとの差分である「表面沈下量」を沈下量算出手段106(図2)によって算出する(Step102)。このとき、計画打込み範囲における初期高さが一様であれば(つまり、コンクリート表面が水平面であれば)、同一初期高さを用いて算出することができるが、初期高さが場所によって異なるときは当然ながら初期高さと暫定高さの位置をあわせたうえで表面沈下量を求める。
表面沈下量が得られると、密度推定手段102(図2)が密度推定式記憶手段107(図2)から「密度推定式」を読み出すとともに、この密度推定式を用いてコンクリートの密度状態を表すコンクリート密度あるいはコンクリート密度比を算出する(Step103)。なお便宜上ここでは、コンクリート密度とコンクリート密度比を総称して「密度値」ということとする。
密度推定式は、表面沈下量を入力値(変数)として密度値を算出する数式であり、コンクリート密度を求める「第1の密度推定式」と、コンクリート密度比を求める「第2の密度推定式」に大別することができる。以下、第1の密度推定式と第2の密度推定式について詳しく説明する。
図4は、密度推定式(第1の密度推定式と第2の密度推定式)の基礎となるモデルを示す部分断面図であり、(a)は締固めを行う前の状態のコンクリートを示し、(b)は締固め作業中の状態のコンクリートを示している。すなわち、図4(a)では「初期高さH」を示しており、図4(b)では「暫定高さh(t)」と「表面沈下量△H(t)」を示している。暫定高さh(t)と表面沈下量△H(t)に関しては、締固め時間に応じて変化することから時間tの関数として表している。
図4に示す基礎モデルにしたがい、さらに振動バイブレータVB周辺の単位平面面積A、単位平面面積Aの領域内にあるコンクリートの重量W、コンクリート密度R(t)とすると、第1の密度推定式は次式(1)として与えられる。なおコンクリート密度R(t)に関しても、締固め時間に応じて変化することからやはり時間tの関数として表している。すなわち、t=0のときはまだ振動バイブレータVBによる締固めを行っていないことから、R(0)はいわばコンクリートの初期密度となる。
R(t)=W÷[A×{H-△H(t)}] (1)
ここで単位平面面積Aは、振動バイブレータVBを中心としてあらかじめ設定された領域であり、図5(a)に示すように振動バイブレータVBを中心とする直径Lの円を単位平面面積Aとしたり、図5(b)に示すように振動バイブレータVBを中心とする幅L×奥行Bの四角形を単位平面面積Aとしたり、そのほか種々の形状で単位平面面積Aを設定することができる。
第1の密度推定式は、単位平面面積A内にあるコンクリートは、振動バイブレータVBによる振動が与えられたとしても側方(単位平面面積Aの外)には移動しない、すなわち単位平面面積A内にあるコンクリートの重量Wは変化しないということを前提としており、単位平面面積A内にあるコンクリートの体積が減少した分だけコンクリート密度R(t)が上昇すると考えたものである。
また、図4に示す基礎モデルにしたがい、さらに振動バイブレータVB周辺の単位平面面積A、単位平面面積Aの領域内にあるコンクリートの重量W、コンクリート密度R(t)、理想密度R、コンクリート密度比R(t)とすると、第2の密度推定式は次式(2)として与えられる。なおコンクリート密度R(t)とコンクリート密度比R(t)に関しては、締固め時間に応じて変化することから時間tの関数として表している。すなわち、t=0のときはまだ振動バイブレータVBによる締固めを行っていないことから、Rr(0)は、コンクリート初期密度R(0)と理想密度Rとの比であり、いわばコンクリートの初期密度比となる。
(t)=R(t)÷R=W÷[A×{H-△H(t)}]÷R (2)
ここで単位平面面積Aは、第1の密度推定式と同様に設定されるものである。また理想密度Rは、コンクリート配合から得られる密度であって、配合設計で計画された各要素(セメントや水、骨材等)の単位体積当たりの重量の総和として求められる密度である。
第2の密度推定式も第1の密度推定式と同様、単位平面面積A内にあるコンクリートは、振動バイブレータVBによる振動が与えられたとしても側方(単位平面面積Aの外)には移動しない、すなわち単位平面面積A内にあるコンクリートの重量Wは変化しないということを前提としており、単位平面面積A内にあるコンクリートの体積が減少した分だけコンクリート密度R(t)が上昇し、コンクリート密度比R(t)が上昇すると考えたものである。
密度値(コンクリート密度やコンクリート密度比)が求められると、密度値補正手段104(図2)によってこの密度値を補正する(Step104)。図6は、横軸を振動バイブレータVBからの距離、縦軸をコンクリート表面からの深さとしたグラフに、振動バイブレータVBから与えられる振動の加速度の分布を示したグラフ図であり、(a)はコンクリートスランプが2cmのケース、(b)はコンクリートスランプが6cmのケース、(c)はコンクリートスランプが11cmのケースである。この図に示すように、加速度分布が深度方向で相違している。これは、深度が深くなれば振動バイブレータの加速度が低下し、その結果、コンクリートに伝搬する振動加速度も低減されるからである。すなわち、振動バイブレータの上方では加速度が伝播しやすく沈下量が大きくなる傾向にあり、一方、振動バイブレータの下方では加速度が伝播し難く沈下量が小さくなる傾向にある。言い換えれば、振動バイブレータの上方では加速度が大きく液状化範囲は広くなり、振動バイブレータの下方では加速度が小さく液状化範囲は狭くなる。したがって、コンクリート表面の沈下情報のみでは、コンクリート深部での締固め状況を適切に判断することができないこともある。そこで、密度値補正手段104(図2)によって密度値(コンクリート密度やコンクリート密度比)を補正するわけである。
第1の密度推定式と第2の密度推定式は、表面沈下量に基づいて密度値(コンクリート密度やコンクリート密度比)を推定するものであり、コンクリート表面の密度値を推定しているともいえる。そこで、コンクリート深さに応じて密度値を低減(補正)した「補正密度値」を求めるとよい。補正密度値は、コンクリート深さに応じて一様に(つまり直線的に)設定される低減係数を密度値に乗ずることで算出してもよいし、従来知られている補正式を利用して算出することもできる。例えば、「土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造),Vol.73,No2,165-178,2017 棒状バイブレータを用いたフレッシュコンクリート締固め管理法の検討」では、振動バイブレータVBを中心とする任意位置(x,z)における加速度を次式(3)によって推定できるとしており、本願発明でも補正密度値を求める補正式として次式(3)を利用することができる。なお補正密度値を算出するにあたっては、振動バイブレータVBの挿入深度を基準として密度値を低減することもできるし、振動バイブレータVBの挿入深度の1/2位置を基準とするなど、所定位置を基準として密度値を低減することができる。
Figure 0007390873000001
ただし、
α(x,z):振動バイブレータVBを中心とする任意位置(x,z)における加速度
α:コンクリートに挿入したときの振動バイブレータVB先端の加速度
:振動バイブレータVBの有効長
φ:振動バイブレータVBの棒部の径
β:コンクリート中を伝搬する振動加速度の減衰を表す材料減衰定数
γ:指数減衰する加速度から推定した見かけ上の振動バイブレータVB棒部加速度と、実際の振動バイブレータVB棒部加速度の比として定義した境界減衰定数
補正密度値が得られると、判定手段103(図2)によって締固め度合の適否が判定される(Step105)。具体的には、判定手段103があらかじめ定められた「密度閾値」を密度閾値記憶手段108(図2)から読み出すとともに、補正密度値とこの密度閾値とを照らし合わせる。そして、補正密度値が密度閾値を上回ればその位置におけるコンクリートの締固め度合は適切と判定され、逆に補正密度値が密度閾値を下回ればその位置におけるコンクリートの締固め度合は不適(不十分)と判定される。あるいは、段階的に密度閾値を設定することで、コンクリートの締固め度合を複数段階(例えば、極めて良好、概ね良好、不十分など)で判定することもできる。なお本願発明では、必ずしも密度値を補正する必要はなく、密度値に基づいて締固め度合の適否を判定することもできる。換言すれば、判定手段103が「密度値」と密度閾値とを照らし合わせることで締固め度合の適否を判定することもできるし、判定手段103が「補正密度値」と密度閾値とを照らし合わせることで締固め度合の適否を判定することもできる。
判定手段103によって判定された締固め度合の適否は、締固め状況マップを利用して表示するとよい(Step106)。ここで締固め状況マップとは、コンクリートの締固め度合を表すマップであって、計画打込み範囲を分割した複数の小領域(いわゆるメッシュ)で構成されるものである。あるいは、小領域ごと(あるいは任意地点ごと)に締固め度の値を表示した締固め状況マップとすることもできるし、同程度(同じレンジ)の締固め度をつなげたいわゆるコンター図(締固め度コンター)を締固め状況マップとすることもできる。
図7は、携帯端末などの表示手段105(図2)に表示された締固め状況マップMPを示すモデル図である。この図では、締固め状況マップMPを構成する小領域MSごとに、締固め度合(締固め未完/締固め済み)が表示されている。したがってこのケースでは、計測手段101によってすくなくとも小領域MSごとに暫定高さが計測され、沈下量算出手段106によって小領域MSごとに表面沈下量が算出され、そして判定手段103によって小領域MSごとに締固め度合の適否が判定される。またこの図に示すように、振動バイブレータVBの現在位置を計測する手段を備えることとし、振動バイブレータVBの現在位置もあわせて締固め状況マップMPに表示するとよい。
3.コンクリート締固め評価方法
次に、本願発明のコンクリート締固め評価方法ついて図を参照しながら説明する。なお、本願発明のコンクリート締固め評価方法は、ここまで説明したコンクリート締固め評価装置100を用いてコンクリートの締固め度合を評価する方法であり、したがってコンクリート締固め評価装置100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明のコンクリート締固め評価方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.コンクリート締固め評価装置」で説明したものと同様である。
図8は、本願発明のコンクリート締固め評価方法の主な工程の流れを示すフロー図である。この図に示すように、まず型枠内に打込まれたコンクリートの初期高さを計測する(Step201)。そして、振動バイブレータVBによってコンクリートを締め固めていく(Step202)とともに、計測手段101によって暫定高さを定期的(断続的あるいは連続的)に計測していく(Step203)。
暫定高さが得られると、表面沈下量を算出するとともに密度推定式を用いて密度値(コンクリート密度やコンクリート密度比)を推定する(Step204)。このとき、既述したとおりコンクリート深さに応じて密度値を低減(補正)した「補正密度値」を求めることもできる。密度値あるいは補正密度値が得られると、判定手段103が密度値(補正密度値)と密度閾値とを照らし合わせることで締固め度合の適否を判定する(Step205)。そして、締固め度合が適切と判定されると(Step205のYes)、振動バイブレータVBの挿入位置を変えて(Step206)一連の工程(Step202~Step205)を繰り返し行う。一方、締固め度合が不適(不十分)と判定されると(Step205のNo)、振動バイブレータVBの挿入位置を変えることなく同じ場所で一連の工程(Step202~Step205)を繰り返し行う。
本願発明のコンクリート締固め評価装置、及びコンクリート締固め評価方法は、橋梁の上部工・下部工や、擁壁、カルバート、ダム、トンネル覆工コンクリートといった土木構造物、あるいは集合住宅やオフィスビルといった建築構造物、その他種々のコンクリート構造物に利用することができる。本願発明が、適切に締め固まった、いわば高品質のコンクリート構造物を提供することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
100 コンクリート締固め評価装置
101 (コンクリート締固め評価装置の)計測手段
102 (コンクリート締固め評価装置の)密度推定手段
103 (コンクリート締固め評価装置の)判定手段
104 (コンクリート締固め評価装置の)密度値補正手段
105 (コンクリート締固め評価装置の)表示手段
106 (コンクリート締固め評価装置の)沈下量算出手段
107 (コンクリート締固め評価装置の)密度推定式記憶手段
108 (コンクリート締固め評価装置の)密度閾値記憶手段
MP 締固め状況マップ
MS 小領域
VB 振動バイブレータ

Claims (5)

  1. コンクリートの締固めの程度を評価する装置において、
    振動バイブレータによる締固めを行っている最中のコンクリート表面の暫定高さを計測する計測手段と、
    振動バイブレータによる締固めを行う前のコンクリート表面の初期高さと、前記暫定高さと、の差である表面沈下量、及び密度推定式に基づいて、コンクリートの密度状態を表すコンクリート密度を推定する密度推定手段と、
    前記密度推定手段によって得られる前記コンクリート密度を、振動バイブレータの挿入深さに応じて低減することで、補正密度値を求める密度値補正手段と、
    前記密度値補正手段によって求められた前記補正密度値と、あらかじめ定められた密度閾値と、を照らし合わせることによって締固めの程度の適否を判定する判定手段と、を備え、
    振動バイブレータ周辺の単位平面面積A、前記初期高さH、単位平面面積Aの領域内にあるコンクリートの重量W、前記表面沈下量△H、前記コンクリート密度Rとするとき、前記密度推定式が次式で与えられる、
    R=W÷(A×(H-△H))
    ことを特徴とするコンクリート締固め評価装置。
  2. コンクリートの締固めの程度を評価する装置において、
    振動バイブレータによる締固めを行っている最中のコンクリート表面の暫定高さを計測する計測手段と、
    振動バイブレータによる締固めを行う前のコンクリート表面の初期高さと、前記暫定高さと、の差である表面沈下量、及び密度推定式に基づいて、コンクリートの密度状態を表すコンクリート密度比を推定する密度推定手段と、
    前記密度推定手段によって得られる前記コンクリート密度比を、振動バイブレータの挿入深さに応じて低減することで、補正密度値を求める密度値補正手段と、
    前記密度値補正手段によって求められた前記補正密度値と、あらかじめ定められた密度閾値と、を照らし合わせることによって締固めの程度の適否を判定する判定手段と、を備え、
    振動バイブレータ周辺の単位平面面積A、前記初期高さH、単位平面面積Aの領域内にあるコンクリートの重量W、コンクリート配合から得られる理想密度R、前記表面沈下量△H、コンクリート密度R、前記コンクリート密度比Rとするとき、前記密度推定式が次式で与えられる、
    =R÷R=W÷(A×(H-△H))÷R
    ことを特徴とするコンクリート締固め評価装置。
  3. コンクリートの締固め状況を表す締固め状況マップを表示する表示手段を、さらに備え、
    前記締固め状況マップは、コンクリートの打込み範囲を分割した複数の小領域で構成され、
    前記計測手段は、前記小領域ごとに前記暫定高さを計測し、
    前記密度推定手段は、前記小領域ごとにコンクリートの密度状態を推定し、
    前記判定手段は、前記小領域ごとに締固めの程度の適否を判定し、
    前記表示手段は、前記判定手段によって判定された適否を前記小領域ごとに表示する、
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンクリート締固め評価装置。
  4. コンクリートの締固めの程度を評価する方法において、
    振動バイブレータによる締固めを行う前のコンクリート表面の初期高さを計測する初期計測工程と、
    振動バイブレータによってコンクリートの締固めを行う締固め工程と、
    振動バイブレータによる締固めを行っている最中のコンクリート表面の暫定高さを計測する施工時計測工程と、
    前記初期高さと前記暫定高さとの差である表面沈下量、及び密度推定式に基づいて、コンクリートの密度状態を表すコンクリート密度を推定する密度推定工程と、
    前記密度推定工程で得られた前記コンクリート密度を、振動バイブレータの挿入深さに応じて低減することで、補正密度値を求める密度値補正工程と、
    前記密度値補正工程で求められた前記補正密度値と、あらかじめ定められた密度閾値と、を照らし合わせることによって締固めの程度の適否を判定する判定工程と、を備え、
    振動バイブレータ周辺の単位平面面積A、前記初期高さH、単位平面面積Aの領域内にあるコンクリートの重量W、前記表面沈下量△H、前記コンクリート密度Rとするとき、前記密度推定式が次式で与えられる、
    R=W÷(A×(H-△H))
    ことを特徴とするコンクリート締固め評価方法。
  5. コンクリートの締固めの程度を評価する方法において、
    振動バイブレータによる締固めを行う前のコンクリート表面の初期高さを計測する初期計測工程と、
    振動バイブレータによってコンクリートの締固めを行う締固め工程と、
    振動バイブレータによる締固めを行っている最中のコンクリート表面の暫定高さを計測する施工時計測工程と、
    前記初期高さと前記暫定高さとの差である表面沈下量、及び密度推定式に基づいて、コンクリートの密度状態を表すコンクリート密度比を推定する密度推定工程と、
    前記密度推定工程で得られた前記コンクリート密度比を、振動バイブレータの挿入深さに応じて低減することで、補正密度値を求める密度値補正工程と、
    前記密度値補正工程で求められた前記補正密度値と、あらかじめ定められた密度閾値と、を照らし合わせることによって締固めの程度の適否を判定する判定工程と、を備え、
    振動バイブレータ周辺の単位平面面積A、前記初期高さH、単位平面面積Aの領域内にあるコンクリートの重量W、コンクリート配合から得られる理想密度R、前記表面沈下量△H、コンクリート密度R、前記コンクリート密度比Rとするとき、前記密度推定式が次式で与えられる、
    =R÷R=W÷(A×(H-△H))÷R
    ことを特徴とするコンクリート締固め評価方法。
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