JP7389702B2 - プロセスオイル - Google Patents

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Description

本発明は、プロセスオイルに関する。
樹脂は、最終製品の用途及び要求される特性等に応じて、押出成形、射出成形、ブロー成形、及びカレンダー加工等の加工を経て成形品となる。この際、樹脂の成形加工性を向上させる目的で、エラストマーにプロセスオイルを配合することがある。当該プロセスオイルは、いわゆる可塑剤としての役割を発揮する。例えば特許文献1には、プロセスオイルとして、流動パラフィンを用いることが記載されている。
特開2016-199652号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているように、プロセスオイルとして流動パラフィンを用いると、流動パラフィンの分子量が小さい場合、油煙が発生しやすくなり、作業環境の悪化につながる恐れがある。また、流動パラフィンの分子量が大きい場合、油煙の発生を抑えることができたとしても、樹脂との相溶性が悪化し、成形加工体にクモリが発生すること等が懸念される。
ところで、単一留分からなる基油で構成されたプロセスオイルを用いると、当該基油の製造ロット毎の動粘度のばらつきによって、混錬時のムーニー粘度が変化し、成形加工性が安定しないことがある。そこで、高粘度基油と低粘度基油とを混合したプロセスオイルを用い、高粘度基油と低粘度基油との混合割合を調整することによって、プロセスオイルの動粘度を一定範囲に調整し、混錬時のムーニー粘度の変化を抑えて、成形加工性を安定させることが考えられる。
しかしながら、高粘度基油と低粘度基油とを混合したプロセスオイルは、低粘度基油の影響によって、引火点の低下による油煙の発生が起こりやすい。
また、近年、柔軟性及び弾力性に優れ、ゴム的性状に優れる熱可塑性エラストマーとして、スチレン系熱可塑性エラストマーが注目されている。スチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントであるスチレンセグメントと、ソフトセグメントであるエラストマーセグメントとにより構成されるブロック共重合体である。スチレン系熱可塑性エラストマーは、屋外で使用しても、変形、変色、及び劣化等の変質を起こしにくく、耐候性に優れる。また、高温環境下においても塑性変形を起こしにくく、耐熱性にも優れる。プロセスオイルは、スチレン系熱可塑性エラストマーを成形加工する際にも、用いられる。
しかしながら、スチレン系熱可塑性エラストマーにプロセスオイルを配合すると、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下が起こることがある。また、ブリードが起こることもある。
そこで、本発明は、粘度が異なる2種以上の基油からなり、スチレン系熱可塑性エラストマーに配合して用いられるプロセスオイルであって、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下及びブリードを抑制しながらも、油煙の発生を抑制することができるプロセスオイルを提供することを課題とする。
本発明者は、粘度が異なる2種以上の基油からなるプロセスオイルを対象に鋭意検討を重ねた。その結果、SP値(Solubility Parameter)に着目した特定の要件を満たすプロセスオイルが、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]~[6]に関する。
[1] 粘度が異なる2種以上の基油からなり、下記要件(1)及び(2)を満たし、スチレン系熱可塑性エラストマーに配合して用いられる、プロセスオイル。
・要件(1): (SP-1.8)≦SP≦(SP-0.8)
・要件(2): |SPHD-SPLD|<0.4
前記要件(1)中、SPは、前記プロセスオイルのSP値である。SPは、前記スチレン系熱可塑性エラストマーのエラストマーセグメントのSP値である。
前記要件(2)中、SPLDは、前記プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量20体積%までの低沸点留分(LD)のSP値である。SPHDは、前記プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量80体積%までの留出油を除いた高沸点留分(HD)のSP値である。
[2] さらに、下記要件(3)を満たす、[1]に記載のプロセスオイル。
・要件(3): (HD40KV-LD40KV)/P40KV≧0.70
要件(3)中、P40KVは、前記プロセスオイルの40℃動粘度である。LD40KVは、前記低沸点留分(LD)の40℃動粘度である。HD40KVは、前記高沸点留分(HD)の40℃動粘度である。
[3] さらに、下記要件(4)を満たす、[1]又は[2]に記載のプロセスオイル。
・要件(4): 環分析(n-d-M法)による%Cが72.0以上である。
[4] さらに、下記要件(5)を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載のプロセスオイル。
・要件(5): 引火点が240℃以上である。
[5] 粘度が異なる2種以上の基油を、下記要件(1)及び(2)を満たすように混合する工程を含み、スチレン系熱可塑性エラストマーに配合して用いられる、プロセスオイルの製造方法。
・要件(1): (SP-1.8)≦SP≦(SP-0.8)
・要件(2): |SPHD-SPLD|<0.4
要件(1)中、SPは、前記プロセスオイルのSP値である。SPは、前記スチレン系熱可塑性エラストマーのエラストマーセグメントのSP値である。
要件(2)中、SPLDは、前記プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量20体積%までの低沸点留分(LD)のSP値である。SPHDは、前記プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量80体積%までの留出油を除いた高沸点留分(HD)のSP値である。
[6] [1]~[4]のいずれかに記載のプロセスオイルと、スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有する、エラストマー組成物。
本発明によれば、粘度が異なる2種以上の基油からなり、スチレン系熱可塑性エラストマーに配合して用いられるプロセスオイルであって、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下及びブリードを抑制しながらも、油煙の発生を抑制することができるプロセスオイルを提供することが可能となる。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることができる。
また、本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
また、本明細書において、「AA~BB」と記載されている数値範囲は、特にことわりのない限り、「AA以上BB以下」であることを意味する。
また、本発明において、プロセスオイル及びプロセスオイル由来の留分のSP値は、以下の式(f1)により計算される溶解度パラメータを意味する。
(SP値)=4.1×(γ/V1/30.43・・・・(f1)
上記式(f1)中、γはウィルヘルミー法により測定される表面張力である。
Vは分子容(M/d)である。
分子容を規定するMは、環分析(n-d-M法)により算出される平均分子量である。
分子容を規定するdは、JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準拠して測定される、25℃における密度である。
また、本発明において、スチレン系エラストマーのSP値(スチレンセグメントのSP値及びエラストマーセグメントのSP値)は、Smallの方法(P. A. Small, J. Appl. Polym. Sci., 3 (1953) 71.)により計算される溶解度パラメータを意味し、各セグメントの分布の最大値と最小値との合計を2で割ることで、各セグメントのSP値を算出した
Smallの方法では、以下の式(f2)を用いて溶解度パラメータδが算出される。
δ=ΣFi/V=ρΣFi/M・・・・(f2)
上記式(f2)中、Fiは寄与率であり、ρは比重、Mは分子量である。
具体的には、Fi(寄与率)はスチレン含有量(カタログ値)、Mは数平均分子量(カタログ値)、ρ(比重)は、重量と体積からアルキメデスの原理により求められる値を用いる。
[本発明のプロセスオイルの態様]
本発明のプロセスオイルは、粘度が異なる2種以上の基油からなり、下記要件(1)及び(2)を満たし、スチレン系熱可塑性エラストマーに配合して用いられる、プロセスオイルである。
・要件(1): (SP-1.8)≦SP≦(SP-0.8)
・要件(2): |SPHD-SPLD|<0.4
前記要件(1)中、SPは、前記プロセスオイルのSP値である。SPは、前記スチレン系熱可塑性エラストマーのエラストマーセグメントのSP値である。
前記要件(2)中、SPLDは、前記プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量20体積%までの低沸点留分(LD)のSP値である。SPHDは、前記プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量80体積%までの留出油を除いた高沸点留分(HD)のSP値である。
本発明者は、スチレン系熱可塑性エラストマーに配合して用いられ、粘度が異なる2種以上の基油からなるプロセスオイルについて、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下及びブリードを抑制しながらも、油煙の発生を抑制すべく、鋭意検討を行った。
その結果、プロセスオイル自体のSP値(SP)、プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量20体積%までの低沸点留分(LD)のSP値(SPLD)と初留点から留出量80体積%までの留出油を除いた高沸点留分(HD)のSP値(SPHD)との差(|SPHD-SPLD|)に着目することによって、上記課題を解決できることを見出すに至った。
具体的には、粘度が異なる2種以上の基油からなるプロセスオイルにおいて、当該プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量20体積%までの低沸点留分(LD)のSP値(SPLD)と初留点から留出量80体積%までの留出油を除いた高沸点留分(HD)のSP値(SPHD)との差(|SPHD-SPLD|)を特定範囲に調整することによって、プロセスオイルのSP値分布が幅広い分布とはならず、狭い分布となる。
この場合、当該プロセスオイル自体のSP値(SP)が適切な範囲に調整されていれば、プロセスオイルを構成する低粘度成分のSP値が、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレンセグメントのSP値に近接することがなく、スチレンセグメントのガラス転移温度の低下に起因する物性低下(耐熱性低下)を抑制できることがわかった。また、プロセスオイルを構成する高粘度成分のSP値が、スチレン系熱可塑性エラストマーのエラストマーセグメントのSP値から大きくかけ離れることがなく、スチレン系熱可塑性エラストマーのブリードが抑えられ、スチレン系熱可塑性エラストマーとの適度な相溶性を確保できることもわかった。
加えて、当該プロセスオイルのSP値分布を狭くすることで、プロセスオイルを構成する低粘度成分に起因する引火点の低下が起こりにくくなり、油煙の発生も抑えられることがわかった。
これらの知見に基づき、本発明者はさらに種々検討を進め、本発明を完成するに至った。
以下、本発明のプロセスオイルを規定する、上記要件(1)及び(2)について、詳細に説明する。
<要件(1)>
本発明では、要件(1)を、以下のように規定している。
・要件(1): (SP-1.8)≦SP≦(SP-0.8)
要件(1)中、SPは、プロセスオイルのSP値である。SPは、スチレン系熱可塑性エラストマーのエラストマーセグメントのSP値である。
要件(1)は、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下及びブリードを抑制する効果をプロセスオイルに発揮させるための前提となる条件であり、スチレン系熱可塑性エラストマーに対する適切な相溶性をプロセスオイルに発揮させるための要件ともいえる。
SP>(SP-0.8)であると、プロセスオイル自体のSP値(SP)が、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレンセグメントのSP値に近接するため、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下が生じる恐れがある。
また、(SP-1.8)>SPであると、プロセスオイル自体のSP値(SP)が、スチレン系熱可塑性エラストマーのエラストマーセグメントのSP値(SP)から離れすぎるため、スチレン系熱可塑性エラストマーのブリードが生じる恐れがある。
ここで、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、要件(1)は、要件(1α)のように規定されることが好ましく、要件(1β)のように規定されることがより好ましく、要件(1γ)のように規定されることがより更に好ましい。
・要件(1α): (SP-1.6)≦SP≦(SP-1.0)
・要件(1β): (SP-1.5)≦SP≦(SP-1.1)
・要件(1γ): (SP-1.4)≦SP≦(SP-1.2)
<要件(2)>
本発明では、要件(2)を、以下のように規定している。
・要件(2): |SPHD-SPLD|<0.4
要件(2)中、SPLDは、プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量20体積%までの低沸点留分(LD)のSP値である。SPHDは、プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量80体積%までの留出油を除いた高沸点留分(HD)のSP値である。
プロセスオイルが、要件(1)と要件(2)とを満たすことで、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下及びブリードを抑制しながらも、油煙の発生を抑制することができる。
|SPHD-SPLD|≧0.4であると、プロセスオイルのSP値の分布が幅広くなる。そのため、下記(I)もしくは(II)、又は、下記(I)及び(II)の双方の問題が生じる恐れがある。
(I)プロセスオイルを構成する低粘度成分(高SP値成分)が、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレンセグメントのSP値に近接するため、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下が生じる。また、プロセスオイルの低引火点化も生じる。
(II)プロセスオイルを構成する高粘度成分(低SP値成分)が、スチレン系熱可塑性エラストマーのエラストマーセグメントのSP値と大きく離れることにより、スチレン系熱可塑性エラストマーのブリードが生じる。
ここで、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、要件(2)は、要件(2α)のように規定されることが好ましく、要件(2β)のように規定されることがより好ましい。
・要件(2α): |SPHD-SPLD|≦0.3
・要件(2β): |SPHD-SPLD|≦0.2
<要件(3)~(5)>
本発明の一態様では、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、要件(1)及び(2)、に加えて、要件(3)~(5)からなる群から選択される1つ以上を満たすことが好ましく、2つ以上を満たすことがより好ましく、3つすべてを満たすことがより好ましい。
以下、要件(3)~(5)について、詳細に説明する。
(要件(3))
本発明の一態様では、要件(3)を以下のように規定している。
・要件(3): (HD40KV-LD40KV)/P40KV≧0.70
要件(3)中、P40KVは、プロセスオイルの40℃動粘度である。LD40KVは、低沸点留分(LD)の40℃動粘度である。HD40KVは、高沸点留分(HD)の40℃動粘度である。
要件(3)の規定は、プロセスオイルを構成する低粘度基油の40℃動粘度と高粘度基油の40℃動粘度との差を反映している。当該差が適切な大きさを有することによって、低粘度基油及び高粘度基油に製造ロットばらつきが生じていたとしても、これらの混合割合を適切に調整することで、プロセスオイルの40℃動粘度を所定の範囲に調整しやすい。したがって、プロセスオイルの粘度変動に起因する成形加工性の低下を抑制しやすい。
ここで、2種以上の基油のブレンドによる40℃動粘度の調整をより容易にする観点から、要件(3)は、要件(3α)のように規定されることが好ましく、要件(3β)のように規定されることがより好ましい。
・要件(3α): (HD40KV-LD40KV)/P40KV≧0.75
・要件(3β): (HD40KV-LD40KV)/P40KV≧0.80
なお、(HD40KV-LD40KV)/P40KVは、通常、1.15以下である。
(要件(4))
本発明の一態様では、要件(4)を以下のように規定している。
・要件(4): 環分析(n-d-M法)による%Cが72.0以上である。
本発明の一態様のプロセスオイルは、要件(4)を満たすことで、本発明の効果を発揮しやすいものとなる。なお、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、要件(4)で規定する%Cは、好ましくは72.5、より好ましくは73.0である。
(要件(5))
本発明の一態様では、要件(5)を以下のように規定している。
・要件(5): 引火点が240℃以上である。
本発明の一態様のプロセスオイルは、要件(5)を満たすことで、高引火点のプロセスオイルとして、油煙の発生を抑制しやすいものとできる。
なお、要件(1)及び(2)を満たすプロセスオイルは、要件(5)も満たしやすい。
ここで、油煙の発生をより抑制しやすくする観点から、要件(5)で規定する引火点は、好ましくは245℃以上、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは253℃以上である。
[本発明のプロセスオイルの製造方法]
本発明のプロセスオイルの製造方法は、粘度が異なる2種以上の基油を、上記要件(1)及び(2)を満たすように混合する工程を含む。当該工程においては、粘度が異なる2種以上の基油を、上記要件(1)及び(2)に加え、さらに上記要件(3)~(5)からなる群から選択される1つ以上を満たすように混合することが好ましく、2つ以上を満たすように混合することがより好ましく、3つすべてを満たすように混合することが更に好ましい。
例えば、上記要件(1)及び(2)、さらには上記要件(3)~(5)からなる群から選択される1つ以上を満たすプロセスオイルは、以下に説明する低粘度基油と高粘度基油とを混合することで製造される。
<低粘度基油>
(原料の準備)
低粘度基油は、例えば以下の原料(a1)及び原料(a2)から選択される1種以上を用いて製造される。
・原料(a1):メタンを含むガスを利用してフィッシャートロプシュ合成法により液化炭化水素を合成し、当該液化炭化水素を水素化分解した際に得られる残渣ワックス。
・原料(a2):減圧軽油及び高品質ワックス(例えばスラックワックス等)を高度水素化分解(高圧水素化分解ともいう)することにより、脱硫、脱窒素、分解(低分子化)、開環、及び異性化して得られる、粘度指数120以上の液状炭化水素。
原料(a1)及び原料(a2)から選択される1種以上を用いて製造された低粘度基油をプロセスオイルに配合することで、上記要件(1)及び(2)、さらには上記要件(3)~(5)を満たしやすいものとできる。
(水素化異性化脱ろう工程(b))
上記原料(a1)及び原料(a2)は、水素化異性化脱ろう工程(b)に供される。水素化異性化脱ろう工程(b)は、上記原料(a1)及び原料(a2)に含まれる、低温流動性の低いn-パラフィン分を分解することなく異性化し、低温流動性の高いイソパラフィンにする精製処理である。上記原料(a1)及び(a2)の主成分をイソパラフィンとすることによって、粘度指数を良好なものとしつつ、流動点を低下させることができる。
水素化異性化脱ろう工程(b)は、定法により実施される。具体的には、例えば、SAPO(シリカアルミノフォスフェート)やゼオライト等の担体にPtやPd等の貴金属を担持した水素化異性化触媒の存在下、水素化処理を行うことにより実施される。
水素化異性化脱ろう工程(b)における水素化処理の水素分圧については、通常10MPa以上、好ましくは13~22MPa、より好ましくは15~21MPaである。反応温度については、通常250~500℃、好ましくは280~480℃、より好ましくは300~450℃である。液時空間速度(LHSV)については、通常0.1~10hr-1、好ましくは0.3~8hr-1、より好ましくは0.5~2hr-1である。供給水素ガスの割合については、原料1キロリットルに対して、通常100~1,000Nm、好ましくは200~800Nm、より好ましくは250~650Nmである。
(蒸留工程(c1))
水素化異性化脱ろう工程(b)により得られた精製油は、蒸留工程(c1)に供され、軽質留分、さらには必要に応じて重質留分を留去する処理が行われる。これにより、例えば、引火点、粘度、及び分子量分布から選択される1種以上を所定の範囲に調整した低粘度基油が得られる。これにより、上記要件(1)及び(2)、さらには上記要件(3)~(5)を満たすプロセスオイルを調製しやすい低粘度基油が得られる。蒸留工程は、常圧(大気圧)下で行ってもよいが、減圧下で行うことが好ましい。また、常圧蒸留後に減圧蒸留を行うようにしてもよい。
例えば、蒸留工程(c1)において、要件(5)に規定する引火点を有するプロセスオイルを得る場合には、低粘度基油の引火点が、好ましくは240℃以上、より好ましくは245℃以上、更に好ましくは250℃以上であり、また、好ましくは280℃以下となるように減圧蒸留又は常圧蒸留を行い、軽質分さらには必要に応じて重質分を除去することが好ましい。
(その他の工程)
蒸留工程(c1)により得られた低粘度基油は、更に水素化仕上げ工程(d1)に供されることが好ましい。水素化仕上げ工程(d1)は、定法により実施される。具体的には、例えば、シリカ/アルミナ、アルミナ等の非晶質やゼオライト等の結晶質担体にNi/Mo、Co/Mo、Ni/W等の金属酸化物やPt,Pd等の貴金属を担持した水素化触媒の存在下、水素化処理を行うことにより実施される。
水素化仕上げ工程(d1)における水素化処理の水素分圧については、通常10MPa以上、好ましくは13~22MPa、より好ましくは15~21MPaである。反応温度については、通常200~350℃、好ましくは250~330℃、より好ましくは280~320℃である。液時空間速度(LHSV)については、通常0.1~10hr-1、好ましくは0.2~5hr-1、より好ましくは0.4~2hr-1である。供給水素ガスの割合については、供給油1kLに対して、通常100~1,000Nm、好ましくは200~800Nm、より好ましくは250~650Nmである。
また、水素化仕上げ工程(d1)により得られた低粘度基油は、更に蒸留工程(c2)を行い、引火点、粘度、及び分子量分布から選択される1種以上を所定の範囲に調整した低粘度基油とすることが好ましい。この場合の蒸留工程(c2)も、上記蒸留工程(c1)と同様、常圧(大気圧)下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。また、常圧蒸留後に減圧蒸留を行うようにしてもよい。
例えば、蒸留工程(c2)において、粘度を所定範囲にした低粘度基油を得る場合には、低粘度基油の40℃動粘度が、好ましくは20.0mm/s~60.0mm/s、より好ましくは25.0mm/s~55.0mm/s、更に好ましくは28.0~52.0mm/sとなるように減圧蒸留又は常圧蒸留を行い、軽質分さらには必要に応じて重質分を除去することが好ましい。
なお、水素化仕上げ工程(d1)に代えて、スチーム処理工程(d2)を行うようにしてもよい。
以上の工程によって、本発明の一態様のプロセスオイルを構成する低粘度基油を製造し得る。
<高粘度基油>
高粘度基油は、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、又はナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油に対し、減圧蒸留、水素化分解、及び溶剤脱蝋又は水素化異性化脱蝋を順次行い、最終的に500N程度の高粘度留分を採取することにより得られる。これにより、引火点が高く、且つ、一定以上の大きさのSP値が確保された高粘度鉱油が得られる。すなわち、上記要件(1)及び(2)、さらには上記要件(3)~(5)を満たすプロセスオイルを調製しやすい高粘度基油が得られる。
[プロセスオイルの用途]
本発明のプロセスオイルは、スチレン系熱可塑性エラストマーに配合して用いられる。
本発明のプロセスオイルによれば、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下及びブリードを抑えることができ、しかも引火点が高いため油煙の発生が抑えられる。そのため、スチレン系熱可塑性エラストマー用のプロセスオイルとして極めて好適である。
したがって、本発明のプロセスオイルは、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーを含むエラストマー製品、例えばタイヤ等の成形加工用途で用いられるプロセスオイルとして用いられることが好ましい。
また、本発明のプロセスオイルは、リチウム電池セパレータ用ポリエチレン系材料の成形加工用途(具体的には二軸延伸加工用途)で用いられるプロセスオイルとして用いられることが好ましい。本発明のプロセスオイルは、粘度の異なる2種以上の基油を混合していることから、動粘度を一定値に調整しやすい。したがって、リチウム電池セパレータ用ポリエチレン系材料の成形加工用途で用いる場合に、混練時のムーニー粘度の変化を抑えて、製品バラつきを抑制しやすい。しかも引火点が高いため、加工時の油煙の発生を抑制することもできる。また、ブリードも抑えることができ、リチウム電池セパレータ用ポリエチレン系材料を適切に相溶し得る。
<スチレン系熱可塑性エラストマー>
スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレンセグメントとエラストマーセグメントとを有するスチレン系熱可塑性エラストマーであれば特に限定されないが、耐寒性及び耐熱性に優れるエラストマー組成物とする観点から、スチレン系化合物由来の構成単位の含有量が、全構成単位基準で10~35質量%であり、質量平均分子量が5万~50万であることが好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーにおいて、スチレン系化合物由来の構成単位を構成するスチレン系化合物は、スチレン系熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントとして機能する化合物であれば特に限定されないが、例えば下記一般式(I)から選択される1種以上であることが好ましい。

[上記一般式(I)中、Rは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~5の整数である。mが2以上である場合、複数のRは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。]
スチレン系熱可塑性エラストマーが有するスチレン系化合物は、Rが炭素数1~2のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。mは0~1の整数であることが好ましく、m=0であることがより好ましい。Rは水素原子又は炭素数1~2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーが有するスチレン系化合物のより更に好ましい態様としては、m=0であり、且つRが水素原子であるスチレン系化合物が挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン系化合物由来の構成単位の含有量が、スチレン系熱可塑性エラストマーの全構成単位基準で、好ましくは15~35質量%、より好ましくは20~35質量%、更に好ましくは25~35質量%である。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、質量平均分子量(Mw)が、好ましくは5万~30万、より好ましくは5万~20万、更に好ましくは5万~15万、より更に好ましくは6万から13万、更になお好ましくは6.5万~12万、一層好ましくは7万~11万である。
本明細書において、スチレン系熱可塑性エラストマーの質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値であり、詳細には、実施例に記載の方法で測定される値である。
スチレン系熱可塑性エラストマーが有するスチレン系化合物由来の構成単位以外の構成単位、すなわち、スチレン系熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントであるエラストマーセグメントの構成単位としては、例えば、ブタジエン由来の構成単位及びイソプレン由来の構成単位から選択される1種以上が挙げられる。なお、ブタジエン由来の構成単位及びイソプレン由来の構成単位は、水素未添加であってもよく、水素添加されていてもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマーを具体的に例示すると、上記のSEEPSは勿論のこと、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP)等から選択される1種以上を用いることができる。
[エラストマー組成物及び成形品の製造方法]
本発明は、上記要件を満たすプロセスオイルとスチレン系熱可塑性エラストマーとを含むエラストマー組成物も提供し得、さらに、当該エラストマー組成物を成形した成形品も含み得る。
また、本発明の一態様では、以下の工程(Y1)を含む、エラストマー組成物の製造方法が提供される。
・工程(Y1):本発明のプロセスオイルと、スチレン系熱可塑性エラストマーとを混練する工程
さらに、本発明の一態様では、以下の工程(Z1)~(Z2)を含む、成形品の製造方法が提供される。
・工程(Z1):本発明のプロセスオイルと、スチレン系熱可塑性エラストマーとを混練する工程。
・工程(Z2):工程(Z1)において得られた混合物を成形する工程。
上記エラストマー組成物の製造方法及び成形品の製造方法において、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば上記のものを用いることもできる。
なお、本発明の一態様において、エラストマー組成物は、更に添加剤を含有してもよい。
エラストマー組成物に配合される添加剤としては、エラストマー組成物に配合される汎用的な添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材、及び発泡剤等から選択される1種以上が挙げられる。
本発明の一態様の製造方法における工程(Y1)及び工程(Z1)での混練条件は、特に限定されず、エラストマーにプロセスオイルを配合して混練する際の通常の条件を用いることができる。
また、本発明の一態様の製造方法における工程(Y1)及び工程(Z1)でのスチレン系熱可塑性エラストマーに対する本発明のプロセスオイルの配合量は、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、好ましくは40~1000質量部、より好ましくは50~900質量部、更に好ましくは60~800質量部である。
本発明のプロセスオイルを、これらの配合量の範囲でスチレン系熱可塑性エラストマーに配合することで、エラストマー組成物の物性を低下させることなく、ブリードも抑制することができる。加えて、製造過程(混練)での油煙の発生を抑制することもできる。
なお、成形品を得るための成形方法は、特に限定されず、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、及びカレンダー加工等が挙げられる。
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[各種物性値の測定方法]
各実施例及び各比較例で用いた基油の各性状、各実施例及び各比較例のプロセスオイルの性状は、以下に示す要領に従って測定した。
(1)動粘度及び粘度指数
動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
(2)密度(25℃)
JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準拠して測定した。
(3)屈折率(20℃)
JIS K 0062:1992に準拠して測定した。
(4)平均分子量、芳香族分(%C)、ナフテン分(%C)、及びパラフィン分(%C
ASTM D3238:1995に準拠し、環分析(n-d-M法)により算出した。
(5)表面張力
JIS K 2241:2000に準拠して測定した。
(6)アニリン点
JIS K 2256:2013に準拠して測定した。
(7)引火点
JIS K2265-4:2007に準拠し、クリーブランド開放式(COC)法により測定した。
(8)SP値
プロセスオイル及び各留分のSP値は、上記式(f1)により計算した。
また、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレンセグメントとエラストマーセグメントのSP値は、Smallの方法に基づき、上記式(f2)により計算した。
[原料基油]
[製造例1~3:低粘度基油の製造]
<製造例1:低粘度基油LV1>
以下の手順により、低粘度基油LV1を製造した。
原料として、残渣ワックスを準備した。当該残渣ワックスは、メタンを含むガスを利用してフィッシャートロプシュ合成法により合成した液化炭化水素を水素化分解した際に得られたものである。
当該原料を、水素化異性化脱ろう工程(b)、蒸留工程(c1)、水素化仕上げ工程(d)、及び蒸留工程(c2)に供した。
水素化異性化脱ろう工程(b)では、原料に対し、白金-ゼオライト系触媒(担体であるゼオライトに白金が担持した触媒)を用いて、反応温度330℃、水素分圧4MPa、水素と原料との供給量比〔水素/原料〕が422Nm/kL、LHSV1.1hr-1の条件下で、水素化異性化脱ろう処理を実施した。
蒸留工程(c1)では、水素化異性化脱ろう工程(b)で得られた水素化異性化脱ろう油を減圧蒸留し、留出油の引火点が250~280℃となるように軽質留分を留去した。
水素化仕上げ工程(d)では、蒸留工程(c1)で得られた留出油に対し、ニッケル・タングステン-アルミナ系触媒(担体であるアルミナにニッケル及びタングステンが担持した触媒)を用い、水素分圧20MPa、水素と蒸留工程(c1)で得られた留出油との供給量比〔水素/留出油〕が1000Nm/kL、LHSV0.5hr-1の条件下で、水素化仕上げ処理を実施した。
蒸留工程(c2)では、水素化仕上げ工程(d)で得られた水素化仕上げ油を減圧蒸留し、留出油の40℃動粘度が35~60mm/sとなるように調整した。当該留出油を、低粘度基油LV1として用いた。
<製造例2:低粘度基油LV2>
原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留し、減圧残渣油を得た。次いで、当該減圧残渣油をハイドロクラッキング処理した後、溶剤脱蝋処理を行い、溶剤脱蝋油を得た。そして、当該溶剤脱蝋油に対し、ナローカット蒸留を行い、低粘度基油LV2を得た。
<製造例3:低粘度基油LV3>
原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を水素化精製した後、減圧蒸留して高粘度留分(500N)を得た。当該高粘度留分に対し、水素化異性化脱蝋処理を行った後、蒸留を行って重質分をカットし、低粘度基油LV3を得た。
[製造例4~10:高粘度基油の製造]
<製造例4:高粘度基油HV1>
原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を水素化精製した後、減圧蒸留して高粘度留分(500N)を得た。当該高粘度留分に対し、水素化異性化脱蝋処理及び水素化仕上げ処理を行い、高粘度基油HV1を得た。
<製造例5:高粘度基油HV2>
原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を水素化精製した後、減圧蒸留して高粘度留分(500N)を得た。当該高粘度留分に対し、溶剤脱蝋処理及び水素化仕上げ処理を行った後、蒸留して軽質分をカットし、高粘度基油HV2を得た。
<製造例6:高粘度基油HV3>
原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を水素化精製した後、減圧蒸留して高粘度留分(500N)を得た。当該高粘度留分に対し、溶剤脱蝋処理及び水素化仕上げ処理を行った後、蒸留して軽質分をカットし、高粘度基油HV3を得た。
なお、製造例6における水素化精製は、製造例5における水素化精製よりも穏和な条件で実施した。
<製造例7:高粘度基油HV4>
原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を水素化精製した後、減圧蒸留して高粘度留分(500N)を得た。当該高粘度留分に対し、溶剤脱蝋処理を行った後、蒸留して軽質分をカットし、高粘度基油HV4を得た。
<製造例8:高粘度基油HV5>
原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を水素化精製した後、減圧蒸留して高粘度留分(500N)を得た。当該高粘度留分に対し、溶剤脱蝋処理を行い、高粘度基油HV5を得た。
<製造例9:高粘度基油HV6>
原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を水素化精製した後、減圧蒸留して高粘度留分(500N)を得た。当該高粘度留分に対し、溶剤脱蝋処理及び水素化仕上げ処理を行った後、蒸留して軽質分をカットし、高粘度基油HV6を得た。
各実施例及び各比較例で原料として用いた基油の詳細を表1に示す。

[実施例1~9及び比較例1~2]
表2に示す配合で、実施例1~9及び比較例1~2のプロセスオイルを調製し、当該プロセスオイルの各種物性値を測定又は算出した。
次いで、当該プロセスオイルを減圧蒸留し、初留点から留出量20体積%までの低沸点留分(LD)を得た。そして、当該低沸点留分(LD)の各種物性値を測定又は算出した。
さらに、当該プロセスオイルを減圧蒸留し、初留点から留出量80体積%までの留出油を除いた高沸点留分(HD)を得た。そして、当該高沸点留分(HD)の各種物性値を測定又は算出した。
そして、スチレン系熱可塑性エラストマーとして、スチレン-イソプレン・ブタジエン-スチレン型トリブロック共重合体の水添物(SEEPS、株式会社クラレ製、製品名「セプトン(登録商標)4033」、質量平均分子量:10万、スチレン系化合物由来の構成単位の含有量:スチレン系熱可塑性エラストマーの全構成単位基準で30質量%、ガラス転移温度:110℃)を用い、当該スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、実施例1~9及び比較例1~3のプロセスオイルをそれぞれ100質量部配合した後にラボプラストミル(株式会社東洋精機製)を用いて、200℃、150rpmの条件で混錬し、エラストマー組成物を調製した。
そして、当該エラストマー組成物のガラス転移温度(TgS(S4033))を測定し、当該測定値とスチレン系熱可塑性エラストマー自体のガラス転移温度との差(ΔTgS(S4033))を求めた。
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーは、以下のSP値を有する。
スチレンセグメント:8.5(cal/cm1/2~10.3(calJ/cm1/2
エラストマーセグメント:8.1(cal/cm1/2~8.6(cal/cm1/2
表2より、以下のことがわかる。
実施例1~9プロセスオイルは、引火点が高く、油煙の発生が抑えられることがわかる。また、上記要件(1)及び(2)を満たすことから、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下及びブリードも抑えられることがわかる。
これに対し、比較例1~2のプロセスオイルは、上記要件(1)を満たすものの、上記要件(2)を満たさないことから、エラストマー組成物のガラス転移温度が低下してしまい、スチレン系熱可塑性エラストマーの物性低下を抑制できていないことがわかる。

Claims (5)

  1. 粘度が異なる2種以上の基油からなり、下記要件(1)、(2)及び(4)を満たし、スチレン系熱可塑性エラストマーに配合して用いられる、プロセスオイルであって、
    ・要件(1): (SP-1.8)≦SP≦(SP-0.8)
    ・要件(2): |SPHD-SPLD|<0.4
    ・要件(4): 環分析(n-d-M法)による%C が72.0以上
    前記要件(1)中、SPは、前記プロセスオイルのSP値である。SPは、前記スチレン系熱可塑性エラストマーのエラストマーセグメントのSP値で、
    前記要件(2)中、SPLDは、前記プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量20体積%までの低沸点留分(LD)のSP値である。SPHDは、前記プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量80体積%までの留出油を除いた高沸点留分(HD)のSP値であり、
    前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレンセグメントとエラストマーセグメントとを有し、
    前記スチレンセグメントは、下記一般式(1)から選択される1種以上の構成単位であり、

    [上記一般式(I)中、R は炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~5の整数である。mが2以上である場合、複数のR は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。R は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。]
    前記エラストマーセグメントは、ブタジエン由来の構成単位及びイソプレン由来の構成単位から選択される1種以上の構成単位である、プロセスオイル。
  2. さらに、下記要件(3)を満たす、請求項1に記載のプロセスオイル。
    ・要件(3): (HD40KV-LD40KV)/P40KV≧0.70
    要件(3)中、P40KVは、前記プロセスオイルの40℃動粘度である。LD40KVは、前記低沸点留分(LD)の40℃動粘度である。HD40KVは、前記高沸点留分(HD)の40℃動粘度である。
  3. さらに、下記要件(5)を満たす、請求項1又は2に記載のプロセスオイル。
    ・要件(5): 引火点が240℃以上である。
  4. 粘度が異なる2種以上の基油を、下記要件(1)、(2)及び(4)を満たすように混合する工程を含み、スチレン系熱可塑性エラストマーに配合して用いられる、プロセスオイルの製造方法であって、
    ・要件(1): (SP-1.8)≦SP≦(SP-0.8)
    ・要件(2): |SPHD-SPLD|<0.4
    ・要件(4): 環分析(n-d-M法)による%C が72.0以上
    要件(1)中、SPは、前記プロセスオイルのSP値である。SPは、前記スチレン系熱可塑性エラストマーのエラストマーセグメントのSP値で、
    要件(2)中、SPLDは、前記プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量20体積%までの低沸点留分(LD)のSP値である。SPHDは、前記プロセスオイルを減圧蒸留した際の、初留点から留出量80体積%までの留出油を除いた高沸点留分(HD)のSP値であり、
    前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレンセグメントとエラストマーセグメントとを有し、
    前記スチレンセグメントは、下記一般式(1)から選択される1種以上の構成単位であり、

    [上記一般式(I)中、R は炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~5の整数である。mが2以上である場合、複数のR は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。R は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。]
    前記エラストマーセグメントは、ブタジエン由来の構成単位及びイソプレン由来の構成単位から選択される1種以上の構成単位である、プロセスオイルの製造方法。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載のプロセスオイルと、スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有する、エラストマー組成物。
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