JP7387246B1 - 揚げ物調製用油脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

揚げ物調製用油脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、油ちょう時の油脂の使用量を低減させるための揚げ物調製用油脂組成物及びその製造方法を提供することである。【解決手段】油脂に乳化剤を添加・溶解してなる油脂組成物であって、水との80℃における界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値になるよう調整されていることを特徴とする、油ちょう時の油脂の使用量を低減させるための揚げ物調製用油脂組成物とする。前記乳化剤はポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。また、前記油脂は菜種油及び/又は大豆油であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、油ちょう時の油脂の使用量を低減させるための揚げ物調製用油脂組成物及びその製造方法に関するものである。
近年、油ちょう時の油脂の使用量を低く抑えるため、フライパン等を用いて、少量の油脂により、油ちょうする機会が増えてきている。少量の油脂を用いることで、油ちょう後の油の処理や調理器具の後片付けがラクになるなど、様々なメリットが得られるためである。
しかし、油ちょう時の油脂の使用量を少なくすると、食材が焦げやすくなり、食材がうまく油脂に浸からないため、おいしい風味やサクサクとした食感を有する揚げ物を得るのがとても難しくなる。そのため、フライパン等を用いて、上手に揚げ物を作るためには、こまめに火を調整し、食材を薄くして、水分をしっかり除く等のコツが必要であった。
一方、廃油の問題は、持続的な社会の実現や地球環境への影響を考えると、大変関心の高いテーマである。また、油ちょう時の油脂の使用量を抑えることができれば、油脂が適温になるまでの時間も短く、エネルギーコストの削減にもつながる。すなわち、電気やガスの使用量をも抑制することができる。また、油ちょう後に残る油脂の量が少なければ、油の処理や調理器具の後片づけがラクになるので、揚げ物調理のハードルが下がり、家庭で揚げ物調理が行われる機会も増え、おいしい揚げたての揚げ物が楽しめるというメリットもある。そのため、油ちょう時の油脂の使用量を低減させても、しっかり油ちょうできる揚げ物調製用油脂組成物が待望されていた。
従来技術では、例えば、シリコーンおよびナトリウム塩を含む加熱調理用油脂組成物であって、加熱温度180℃での連続フライ試験70時間経過時点において、酸価が2.1以下かつ重合物が8.0%以下であることを特徴とする、加熱調理用油脂組成物が知られている(特許文献1)。しかし、これは、約140~200℃での使用時における加熱調理用油脂の劣化を抑制することで、油脂の消費量の低減化を図るものであり、油ちょう時の油脂の使用量自体を低減させるものではない。
また、植物油に乳化剤を添加・溶解して得られた油脂組成物であって、該油脂組成物の水との80℃における界面張力が、界面形成時より3秒後に3mN/m~7mN/m(但し、3mN/mは含まない)の範囲内の値に、そして5秒後に5mN/m以下となるように、乳化剤として、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、エリスリトール脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(但し、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートは除く)からなる群より選ばれる少なくとも一種の多価アルコール型非イオン界面活性剤を用い、かつ該乳化剤が、該液状油脂に対して3.0重量%以下となる量にて添加されてなることを特徴とする揚げ物調製用油脂組成物が知られている(特許文献2)。しかし、この揚げ物調製用油脂組成物は、(1)天ぷらの衣の花咲性(散り状態)を向上させる、(2)衣の水分蒸散速度を促進させて、得られる揚げ物の食感を向上させる、(3)揚げ物調製時(揚げ作業時)での油はねを抑制する、(4)揚げ物調製の加熱時の劣化臭(嫌悪感のある臭い)の発生を抑制する、(5)油脂の劣化を抑制することを目的としており、油ちょう時の油脂の使用量を低減させることについては何ら記載も示唆もされていない。
このように、従来技術では、乳化剤を添加・溶解することで、油ちょう時の油脂の使用量を低減させることは知られていなかった。
特開2021-153443号公報 特許第3655567号公報
そこで、本発明者らは、乳化剤を添加・溶解することで、油ちょう時の油脂の使用量を低減するという新しい課題を発見し、それについて鋭意検討を行った結果、水との80℃における界面張力を、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値に調整することで、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の目的は、油ちょう時の油脂の使用量を低減させるための揚げ物調製用油脂組成物及びその製造方法を提供することである。
そこで、本発明は、以下の態様を含み得る。
(1)油脂に乳化剤を添加・溶解してなる油脂組成物であって、水との80℃における界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値になるよう調整されていることを特徴とする、油ちょう時の油脂の使用量を低減させるための揚げ物調製用油脂組成物。
(2)前記乳化剤が0.01~0.90質量%になるように添加される、(1)に記載の揚げ物調製用油脂組成物。
(3)前記乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステルである、(1)又は(2)に記載の揚げ物調製用油脂組成物。
(4)前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度が12~40であり、水酸基価が180以下である、(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の揚げ物調製用油脂組成物。
(5)前記油脂が菜種油及び/又は大豆油である、(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の揚げ物調製用油脂。
(6)(1)~(5)のいずれか1項に記載の揚げ物調製用油脂組成物の製造方法であって、
油脂に乳化剤を添加・溶解して、水との80℃における界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値になるよう調整する工程
を含む、揚げ物調製用油脂組成物の製造方法。
(7)(1)~(5)のいずれか1項に記載の揚げ物調製用油脂組成物を用いる、揚げ物の調理方法であって、容器に前記油脂組成物を最深さ1~5mmとなるように加えて被調理物を油ちょうする工程を含む、揚げ物の調理方法。
本発明の揚げ物調製用油脂組成物は、油脂に乳化剤を添加・溶解させて、水との80℃における界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値となるように調整することで、油ちょう時の油脂の使用量を低減(半減以下に)させることができる。そして、油ちょう時の油脂の使用量を、例えば、鍋底中央からの厚さが1~5mmに低減できれば、油ちょう調理後の油の処理や調理器具の後片付けがラクになり、これまで揚げ物調理を苦手としていた消費者のニーズにも応えることができる。さらに本発明の揚げ物調理用油脂組成物を用いて、油ちょう時の油脂の使用量を少なくすることで、食材が焦げにくくなり、良好な揚げ色の揚げ物が得られることができる。また、油脂が適温になるまでの時間も短く、電気やガスの使用量を抑制することができる。そして、加熱時間短縮によるCO2排出減効果ももたらされる。このように、本発明の揚げ物調製用油脂組成物は、フードロスの低減や環境保護にも寄与するものであり、貴重な植物資源の有効活用や廃棄する食用油の減少にも貢献するものである。
本発明の揚げ物調製用油脂組成物は、油脂に乳化剤を添加・溶解させたものであり、それによって、水との80℃における界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値となるように調整されることを特徴とする。なお、上記の界面張力の測定基準温度を80℃としたのは、天ぷらなどの揚げ物のたね(調理対象物)を加熱中の油脂に投入した際のたね(衣を含む)と油脂との界面周辺の温度が80℃付近となるためである。
すなわち、本発明者らは、油脂の界面張力がフライパン等の表面における油脂の広がり易さ(濡れ易さ)に関係があるとの新たな知見に基づき、揚げ物のたね(被調理物)を投入したとき(油ちょう時)に、被調理物に油脂が均等に接触し易くなり、熱が均等に伝わって焦げ付きや加熱むらの発生等の問題を低下させることを見出し、本発明を完成したものである。
本発明で用いることのできる乳化剤の例としては、有機酸モノグリセリド、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、エリスリトール脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の乳化剤を挙げることができるが、これらの乳化剤に限定されない。また、これらの種類に含まれる乳化剤であっても、油脂に添加・溶解した場合に、得られる油脂組成物と水との80℃における界面張力が界面形成後、3秒時に1~12mN/mとならない乳化剤は、本発明で用いるのに適切でない。
本発明の揚げ物調製用油脂組成物に用いられる乳化剤の含量としては任意であるが、例えば、前記油脂組成物100質量%に対して、0.01~0.90質量%が挙げられる。好ましくは、0.02~0.80質量%が好ましく、0.03~0.70質量%がより好ましく、0.04~0.60質量%がさらに好ましい。後述するように、乳化剤を入れすぎると、界面張力が小さくなりすぎて、うまく揚げ物ができない。他方、乳化剤が少ないと、界面張力が大きくなって、揚げ物がうまくできない。このような適当な数値範囲とすることで、所望の効果を奏することができる。
本発明で規定した界面張力は、動的界面張力を意味する。この、動的界面張力は、社団法人日本化学会編「新実験化学講座18:界面とコロイド」(87~91頁、昭和58年、第3版、丸善株式会社発行)に記載されているものである。
また、本発明で規定した動的界面張力は、市販の界面張力測定装置(例えば、懸滴法を利用した全自動接触角計DMo-902:協和界面科学(株)製)を用いて測定することができる。測定方法については後述する。
本発明で用いる乳化剤として好ましいものは、ポリグリセリン脂肪酸エステルを挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、単独あるいは他の乳化剤と組合せて用いることができる。 このポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンやグリシドール、エピクロロヒドリン等の縮合で得られたポリグリセリンと特定の脂肪酸とを、水酸化ナトリウム等の触媒存在下でエステル化させて製造することができる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、前記油脂組成物100質量%に対して、0.01~0.90質量%添加される。好ましくは、0.02~0.80質量%が好ましく、0.03~0.70質量%がより好ましく、0.04~0.60質量%がさらに好ましい。
そして本発明では、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度が12~40、好ましくは15~30、より好ましくは16~25である。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価は180以下、好ましくは30~170、より好ましくは40~160である。
ここで、水酸基価は基準油脂分析試験法(2,3,6,2-2013ヒドロキシル価(ピリジン-無水酢酸法))を用いて測定することができる。
平均重合度は、原料となるポリグリセリンの平均重合度をn、平均分子量をm、原料のポリグリセリンの水酸基価をOHVとすると、
m=74n+18
OHV=56110(n+2)/m
の関係にあり、原料となるポリグリセリンの水酸基価を上記基準油脂分析法に従い実測し、上記関係式よりポリグリセリンの平均重合度と平均分子量を算出することができる。
平均重合度が12未満では、十分に効果が発揮できず、一方40を超えると、ポリグリセリンの粘度が高く、ポリグリセリン脂肪酸エステルを製造することが難しくなる。
また、水酸基価が180を超えると十分に効果が発揮できず、油脂へ溶解する上で好ましくない。
このような揚げ物調製用油脂組成物において、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル部分を構成する脂肪酸としては、炭素数16~18の不飽和脂肪酸を含むことが好ましい。炭素数16~18の不飽和脂肪酸としては、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらのトランス異性化物、およびこれらの混合物等が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、上記不飽和脂肪酸の割合が50~90質量%、好ましくは60~90質量%、より好ましくは65~85質量%である。
この量で含有することが、十分に効果を発揮し、油脂へ溶解する上で好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の残部は、他の脂肪酸を含むことができ、例えば炭素数8~24の飽和脂肪酸、炭素数20~24の不飽和脂肪酸を含むことができる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルのけん化価は、特に限定するものではないが、好ましくは100~200、さらに好ましくは120~180である。なお、けん化価は基準油脂分析試験法(2.3.2.1-2013けん化価(その1))で測定することができる。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば以下の方法によって製造することができるがこれに限定されるものではない。
グリセリンと水酸化ナトリウムを混合し、水を除去しながら200℃~270℃で縮合反応させ、ポリグリセリンを得る。このポリグリセリンを、水希釈して活性炭処理やイオン交換樹脂で精製、さらに脱水することで、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いることができる。なお、より平均重合度の高いポリグリセリンを得るために、上記反応後に得られたポリグリセリンを分子蒸留やゲルろ過により低分子部分を除去してもよい。
このポリグリセリンと不飽和脂肪酸および飽和脂肪酸とを適当な比率で反応容器に仕込み、水酸化ナトリウム等の触媒存在下、200℃以上窒素気流下で脱水しながら反応させ、ポリグリセリン脂肪酸エステルとすることができる。
本発明の揚げ物調製用油脂組成物は、油脂に乳化剤が添加・溶解されてなるものである。本発明で用いられる油脂は、天ぷら油などの揚げ油として一般的に使用されているものの中から任意に選んで用いることができる。その例としては、具体的には、例えば、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、菜種油、コーン油、大豆油、米糠油、米油、サフラワー油、綿実油、ひまわり油、小麦胚芽油、落花生油、ごま油、亜麻仁油等の植物油脂の一種、又は2種以上ブレンドしたもの、これらの分別油、硬化油、エステル交換油等が挙げられる。かかる植物油脂としては、20℃で液状の態様のものが好ましい。原料油脂そのものが20℃で固体であっても、他の原料油脂と併用して用いることによって、油脂全体として液状であればよく、好ましくは構成脂肪酸の飽和脂肪酸の割合が15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下の植物油脂である。最も好ましくは菜種油、大豆油である。
本発明の揚げ物調製用油脂組成物における乳化剤以外の植物油脂の含量は、揚げ物調製用油脂組成物の残部を構成するのが好ましい。
本発明に係る揚げ物調製用油脂組成物は、容器中に最深さ1~5mm、好ましくは1~4mm、より好ましくは2~4mm、さらに好ましくは2~3mmとなるように入れて使用される。最深さとは、揚げ物調理用油脂組成物を容器に入れた場合に、揚げ物調理用油脂組成物の最低部から大気と接する表面までの最も高い高さに相当する。
このように少量の油脂を用いて油ちょう調理でき、良好な揚げ色の揚げ物が得られるところが本発明の大事な特徴である。また、本発明に係る揚げ物調製用油脂組成物を用いて油ちょうし、揚げ物を調製する際は、最小限の油脂を使用する。そのため、本発明の調理方法は、いわゆる「パンフライ」と呼ばれる形態に近いものとなる。したがって、揚げ物は両面が適度に調理されるように、少なくとも1回は裏返しにされる。また、調理対象物の内部が適切な温度に達するまで、その外部が過度に加温されることがないように、通常よりも弱い加熱での調理を必要とすることが多い。また、前記調理に用いる容器は、鍋、フライパン等が好ましく用いられる。なお、加熱方法は任意でよく、ガスレンジ(直火)でも、IH調理器でも良い。
本発明に係る揚げ物調製用油脂組成物は、一般の油脂と同様、植物の種子又は果実から搾油された粗油を出発原料として用い、順に、必要に応じて、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程を経て、さらに必要に応じて脱ろう工程を介した後、脱臭工程を経た精製により製造することができる。上記脱ガム工程、脱酸工程、および脱ろう工程は、採油される前の油糧原料に応じて変動し得る粗油の品質に応じて適宜選択される。
このような製造方法において、本発明の製造方法では、油脂に、上記範囲の量の乳化剤を添加する工程を含む。これらの添加する工程は精製工程後であるのが望ましい。
このような製造方法によれば、極めて効果の高く利用価値の高い揚げ物調製用油脂組成物を容易に得ることができる。
なお、本発明の揚げ物調製用油脂組成物中には、本発明の効果を損ねない程度に、その他の成分を加えることができる。これらの成分とは、例えば、一般的な油脂に用いられる成分(食品添加物など)である。これらの成分としては、例えば、酸化防止剤、結晶調整剤、食感改良剤等が挙げられ、脱臭後から充填前に添加されることが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、アスコルビン酸類、フラボン誘導体、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキンおよびそのエステル、フキ酸、ゴシポール、セサモール、テルペン類等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリグリセリン縮合リシノレート、ジアシルグリセロール、ワックス類、ステロールエステル類等が挙げられる。着色成分としては、例えば、カロテン、アスタキサンチン等が挙げられる。油脂に溶解又は分散するものであれば、上記のポリグリセリン脂肪酸エステルの働きを損なわない範囲で他の成分を添加することができる。
また、本発明は、油脂に乳化剤を添加・溶解して、水との80℃における界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値に調整する工程を含む、揚げ物調製用油脂組成物の製造方法にも関する。
種々の乳化剤を油脂に添加・溶解して、上述した公知の方法により、界面張力を測定することで、揚げ物調製用油脂組成物の界面張力を所定の値に調整することができる。
また、本発明は、水との80℃における界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値に調整する揚げ物調製用油脂組成物を用いる、揚げ物の調理方法にも関する。加熱調理用の容器である鍋に前記油脂組成物を鍋底中央からの厚さが1~5mmとなるように加えて被調理物を油ちょうする工程を含む、揚げ物の調理方法に関する。被調理物(揚げ物のたね)は任意であり、好ましくはトンカツ、唐揚げ、コロッケ、かき揚げ、アジフライ、春巻き、餃子などが挙げられる。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に
限定されるものではない。
[ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製]
グリセリンと水酸化ナトリウムとを混合し、90℃に加熱して減圧乾燥した。次いで、200~270℃に加熱し、攪拌して反応させた後に濾過して、ポリグリセリンを得た。ポリグリセリンの平均重合度は、約20であった(水酸基価を測定し、ポリグリセリンの理論水酸基価から算出した)。かかるポリグリセリンと脂肪酸(炭素数16~18の不飽和脂肪酸88質量%(オレイン酸77質量%、リノール酸11質量%)、炭素数8~12の飽和脂肪酸4質量%、炭素数14~24の飽和脂肪酸6質量%)とを混合し、触媒として水酸化ナトリウムを添加して、窒素ガス気流下、200℃で反応させて、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリン部分の平均重合度は約20、構成脂肪酸の組成は、炭素数16~18の不飽和脂肪酸82質量%(オレイン酸80質量%、リノール酸2質量%)、炭素数8~12の飽和脂肪酸4質量%、炭素数14~24の飽和脂肪酸5質量%であった。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのけん化価は145,水酸基価は150であった。
[揚げ物調製用油脂組成物の調製]
表1に示す配合で揚げ物調製用油脂組成物を調製した。まずは、市販の日清キャノーラ油(菜種油に相当:日清オイリオグループ株式会社製)又は日清サラダ油(菜種油と大豆油の混合油に相当:日清オイリオグループ株式会社製)を用意し、それぞれに対し、上記のごとく調製した乳化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を、表1に記載した所定の含量となるように添加・溶解し、実施例1~5及び比較例1の揚げ物調製用油脂組成物を調製した。
また、実施例1~5及び比較例1~2の揚げ物調製用油脂組成物の水との80℃における界面張力を以下の方法にて測定した。その結果を表1にまとめた。
上述した『実験科学講座18:界面とコロイド(p91)』の滴重(容)法に準じて、動的界面張力を測定した。80℃に恒温した油中にJISセッケン試験方法(K3304-1956)の滴数計((株)相互理化学硝子製作所製:型番「1801-001」)で、80℃の蒸留水を滴下速度が1滴/3秒になるように5ml滴下した。別途、2液体間の密度差を測定し、滴数(水滴の体積)、滴数計の外径および補正係数から3秒後の動的界面張力を求めた。
Figure 0007387246000001
[揚げ物調製試験]
次のとおり、トンカツを準備した。豚肩ロース肉100g、バッターミックス業務用(株式会社日清製粉ウェルナ製)、フライ―スターセブン(フライスター株式会社製)を用意した。100gの前記バッターミックスに250gの水を添加し、バッター液を調製した。次に、叩いた肉を前記バッター液にくぐらせ、パン粉を適量まぶしてトンカツを準備した。
上述した試験油1~5、対照油1~2の揚げ物調製用油脂組成物を26cmのフライパンにそれぞれ50gずつ入れて(この場合、鍋底中央からの油の深さ(最深さ)は2mmであった。)、IH調理器で加熱した(実施例1~5、比較例1~2)。なお、参考例1では、対照油2を50gではなく、200gを入れて(この場合、鍋底中央からの油の厚さは7mmであった。)、IH調理器で加熱した。また、参考例2では、対照油2を50gではなく、400gを入れて(この場合、鍋底中央からの油の厚さは11mmであった。)、IH調理器で加熱した。前記油脂組成物の温度が180℃になったことを温度計で確認した後、上記のごとく用意したトンカツ2枚をフライパンに入れて、最初に1分半、油ちょうした。その後、1分ごとに6回トンカツをひっくり返しながら、油ちょうした。その後、フライパンから揚げ上がったトンカツを取り出して、そのときのトンカツの揚げ色を以下の評価基準に基づいて評価した。なお、評価結果は、下記の評価基準に基づき、社内規定に基づいた味覚検査(甘味、うま味、酸味、苦味、及び塩味の識別テスト)に合格した熟練の5名のパネルの合議で決定した。以上の結果を表2にまとめた。
<評価基準>
◎:(少量の油脂で)きれいな揚げ色の揚げ物が得られた。
〇:(少量の油脂で)やや焦げ目があるが問題のない揚げ色の揚げ物が得られた。
×:(少量の油脂で)焦げ目が多くあり、問題がある揚げ色の揚げ物が得られた。
Figure 0007387246000002
表1の結果より、実施例1~5の揚げ物調製用油脂組成物は、水との80℃における動的界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値であることが判明した。他方、比較例1の揚げ物調製用油脂組成物は、上記のごとく調製したポリグリセリン脂肪酸エステル1.0質量%も含んでおり、水との80℃における動的界面張力が、界面形成時より3秒後に0.36mN/mとなり、所定の範囲からは外れていた。さらに、乳化剤を含まない、日清キャノーラ油そのもの(菜種油そのもの)は、水との80℃における動的界面張力が、界面形成時より3秒後に28mN/m以上であり、これも所定の範囲からは外れていた。
表2の結果より、水との80℃における動的界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値にある実施例1~5の揚げ物調製用油脂組成物は、使用量が少ないにも関わらず、いずれも揚げ色の問題がない揚げ物が得られた。他方、水との80℃における動的界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値にない、比較例1~2の揚げ物調製用油脂組成物は、いずれも揚げ色に問題がある揚げ物が得られた。
これにより、水との80℃における動的界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値にあることが、油ちょう時の油の使用量を低減させるために重要であることが判明した。
また、実施例3と実施例5との比較により、油脂の種類を変えても、そん色なく、同様の効果が得られることがわかった。
さらに、実施例4又は5と参考例1との比較により、本発明の揚げ物調製用油脂組成物を使用すると、油の使用量を4分の1にしても、同程度の揚げ色の揚げ物が得られることがわかった。
加えて、実施例2又は3と参考例2との比較により、本発明の揚げ物調製用油脂組成物を使用すると、油の使用量を8分の1にしても、同程度の揚げ色の揚げ物が得られることがわかった。

Claims (7)

  1. 油脂に乳化剤を溶解してなる油脂組成物であって、水との80℃における界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値になるよう調整されていることを特徴とする、油ちょう時の油脂の使用量を低減させるための揚げ物調製用油脂組成物。
  2. 前記乳化剤が0.01~0.90質量%になるように添加される、請求項1に記載の揚げ物調製用油脂組成物。
  3. 前記乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステルである、請求項1又は2に記載の揚げ物調製用油脂組成物。
  4. 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度が12~40であり、水酸基価が180以下である、請求項3に記載の揚げ物調製用油脂組成物。
  5. 前記油脂が菜種油及び/又は大豆油である、請求項1又は2に記載の揚げ物調製用油脂組成物。
  6. 請求項1又は2に記載の揚げ物調製用油脂組成物の製造方法であって、
    油脂に乳化剤を溶解して、水との80℃における界面張力が、界面形成時より3秒後に1mN/m~12mN/mの範囲内の値になるよう調整する工程を含む、揚げ物調製用油脂組成物の製造方法。
  7. 請求項1又は2に記載の揚げ物調製用油脂組成物を用いる、揚げ物の調理方法であって、
    容器に前記油脂組成物を最深さ1~5mmとなるように加えて被調理物を油ちょうする工程を含む、揚げ物の調理方法。
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