JP7386371B1 - 防災構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】土石流等の発生が想定される渓流等に、発生した土石流等を堰き止めるための砂防堰堤を構築する上で、隣接する柱部材間に架設される水平材に生じる曲げモーメントを低減する。【解決手段】構築対象のいずれかの方向に間隔を置いて配列する複数個の柱部材2、2と、隣接する柱部材2、2間に、高さ方向に間隔を置いて架設される鋼管コンクリート製の複数本の水平材3から防災構造物1を構成し、水平材3の軸方向両側の端面に、水平材3の軸方向に直交する平面に対し、下流側から上流側へかけて水平材3の軸方向の長さが次第に増す向きに傾斜した傾斜面3aを形成し、この傾斜面3aを受ける柱部材2の支持面2aに水平材3の傾斜面3aに対応した傾斜面を持たせ、水平材3の傾斜面3aを柱部材2の支持面2aに面接触させながら、柱部材2に支持させる。【選択図】図1

Description

本発明は例えば土石流や流木等の発生が想定される渓流その他の構築対象に、発生した場合の土石流等を堰き止める目的で構築される砂防堰堤等の防災構造物に関するものである。
例えば渓流等に土石流等を堰き止める目的で構築される、バットレスを使用する形式の砂防堰堤は渓流の幅方向に隣接するバットレス間に水平材を架設すればよいことから、構造が比較的簡素である他、土石等を受け止めたときの衝撃(運動エネルギ)を、バットレスを通じて渓床や基礎コンクリート等に伝達することができる利点を有する(特許文献1~3参照)。
但し、特許文献1のように水平材(天端スラブ)をバットレス上に構築し、隣接するバットレスに接合する場合、水平材は両端固定梁になるため、土石から集中荷重を受けたときには、軸方向の中央部と両端部で最大になる曲げモーメントを負担する状態になる。
特許文献2、3のように水平材を隣接するバットレス間に架設し、嵌合手段でバットレスに接続する場合には、水平材は単純梁になるため、集中荷重に対しては軸方向の中央部で最大になる曲げモーメントを負担する状態になる。
この他、軸方向に2分割され、それぞれの一方の端部においてバットレスに相当する控え材に接合される水平材の他方の端部間に跨る鞘管を用いて両水平材を接続する方法もある(特許文献4、5参照)。これらの例では水平材は鞘管が跨る他方の端部を自由端とする片持ち梁になるため、水平材の一方の端部に生じる曲げモーメントが最大になる。
特開2002-180441号公報(段落0022~0028、0041~0044、図1、図4) 特開2005-336802号公報(段落0018~0037、図1~図6) 特開2010-84455号公報(段落0025~0040、図1~図8) 特開2013-204272号公報(請求項3、段落0029~0051、図1~図5) 特開2021-156123号公報(請求項1、段落0023~0032、図1、図4、図5)
いずれの例でも、水平材には土石から受ける衝撃力(集中荷重)による反力が材軸に直交する方向にのみ作用するため、水平材は想定される衝撃力に応じた最大曲げモーメントに耐え得る断面性能を持つ必要がある。
本発明は上記背景より、隣接するバットレス等の柱部材間に架設される水平材に生じる曲げモーメントを低減し得る構造の水平材を用いた形態の防災構造物を提案するものである。
請求項1に記載の発明の防災構造物は、構築対象のいずれかの方向に間隔を置いて配列する複数個の柱部材と、前記の方向に隣接する前記柱部材間に、高さ方向に間隔を置いて架設される鉄筋コンクリート製の複数本の水平材とを備え、
前記水平材の軸方向両側の端面が前記水平材の軸方向に直交する平面に対し、前記構築対象の下流側から上流側へかけて前記水平材の軸方向の長さが次第に増す向きに傾斜した傾斜面を持ち、この水平材の前記傾斜面を受ける前記柱部材の支持面が前記水平材の前記傾斜面に対応した傾斜面を持ち、
前記水平材が前記傾斜面において前記柱部材の前記支持面に面接触しながら、前記柱部材に支持されていることを構成要件とする。
防災構造物は前記した砂防堰堤や流木捕捉工等の他、落石・雪崩防止柵等の、災害を引き起こす「移動する物体」を受け止める役目を担う構造物全般を指す。「柱部材」は防災構造物が砂防堰堤等である場合のバットレスや控え部材の他、水平材を支持するための防災構造物の構成部材を指す。バットレス以外の場合、柱部材は軸方向が鉛直方向を向く鉛直材であるとは限らず、軸方向は鉛直方向に対して傾斜した方向を向く場合もある。「移動する物体」とは、土石流や流木等の他、落石や土砂等の災害の原因になる物体を指す。以下では「移動する物体」を「土石流等」と言う。
「構築対象」は防災構造物が構築される場所を指し、砂防堰堤や流木捕捉工等の場合には渓流であり、落石・雪崩防止柵等である場合には法面等、またはそれに準じた場所である。「構築対象のいずれかの方向」は構築対象のいずれか一方向を指し、砂防堰堤等の場合には渓流の幅方向であり、落石防止柵等である場合には法面等に沿った水平方向等を指す。
「水平材の軸方向両側の端面は水平材の軸方向に直交する平面に対し、傾斜した傾斜面を持ち」とは、図5に示すように水平材3の軸方向両側の端面の少なくとも一部が、水平材3の軸方向に直交する平面と角度をなす傾斜面3aを持つことを言う。「水平材」は必ずしも軸方向が完全な水平方向を向いて架設されるとは限らず、軸方向が水平方向に対して傾斜して架設されることもある。
「水平材の軸方向(材軸方向)」は水平材の架設(使用)状態での渓流の幅方向等、構築対象のいずれかの方向でもある。「水平材の軸方向に直交する平面」は、端面に傾斜がない通常の鉄筋コンクリート製の水平材(梁部材)の端面のことであり、架設状態での渓流の方向等、土石流等の流れの方向に平行な平面を指す。水平材3の端面は基本的には平面であるが、必ずしも端面の全面が平面である必要はなく、一部に曲面、あるいは凹凸面を含むこともある。「端面の少なくとも一部」とは、端面の一部に平面以外の面を含むことがあることを意味する。
「構築対象の下流側から上流側へかけて水平材の軸方向の長さが次第に増す向きに傾斜した」とは、図5に示すように架設状態での水平材3を平面(平面図)で見たとき、水平材3の軸方向長さが、構築対象の下流側(図の下側)から上流側(図の上側)へかけて次第に大きくなる向きに傾斜することを言う。構築対象が法面等の場合、「下流側」と「上流側」はそれぞれ下方側と上方側である。「傾斜面3a」は基本的には鉛直面であるが、必ずしも鉛直面である必要はなく、鉛直方向に対して傾斜した面であること、または曲面を含む面であることもある。上記の「土石流等の流れの方向」は「上流側から下流側へ向かう向き」である。
「傾斜面3aを持ち」とは、水平材3を土石流等による衝撃力(荷重)の作用方向に見たとき、水平材3の端面全面が一様な傾斜面3aであるとは限らないことを意味する。図5では水平材3の端面全面が一様な傾斜面3aであるように形成された場合の例を示しているが、傾斜面3aは図6-(a)、(b)に示すように下流側から上流側の途中までの区間にのみ、または(c)に示すように上流側から下流側の途中までの区間にのみ、形成されることもある。図6に示す例の場合、水平材3を衝撃力の作用方向に見たときの上流側寄りの一部、または下流側寄りの一部の軸方向長さは一定になり、その一部は傾斜面3aを持たない端部の形状になる。
「水平材の傾斜面を受ける柱部材の支持面は水平材の傾斜面に対応した傾斜面を持ち」とは、水平材3の傾斜面3aを土石流等の作用方向に支持する柱部材2の支持面2aが水平材3の傾斜面3aに実質的に平行で、傾斜面3aに面接触可能な傾斜面を持つことを言う。「傾斜面を受ける」とは、柱部材2の支持面2aが水平材3の傾斜面3aを土石流等の作用方向に支持することを言う。
「面接触」は水平材3の傾斜面3aと柱部材2の支持面2aが必ずしも完全に面接触する必要はなく、全体的に面接触状態にあればよい。この柱部材2の支持面2aも基本的には平面であるが、必ずしも平面である必要はない。水平材3の軸方向両側の傾斜面3aはそれぞれの側の柱部材2の支持面2aに面接触して土石流等の作用方向に支持される。
「水平材3は傾斜面3aにおいて柱部材2の支持面2aに面接触しながら、柱部材2に支持され」とは、水平材3の傾斜面3aが柱部材2の支持面2aに土石流等の作用方向に面接触した状態で、水平材3が柱部材2に鉛直方向下向きに支持されることを言う。水平材3は後述する柱部材2の「載置面2b」に載置されることで、柱部材2に支持される。
水平材3の傾斜面3aと柱部材2の支持面(傾斜面)2a同士は基本的には単純に接触するだけであるが、設計方針次第では互いに接合されることもある。接触面同士が接合された場合、水平材3の端部に曲げモーメントが生じるが、接触するだけの場合には、水平材3の端部には曲げモーメントは生じない。後述のように柱部材2の支持面2aから受ける反力F2(<W)に起因する曲げモーメントとせん断力が水平材3の軸方向に沿って生じるだけになる。接触面同士が接合された場合でも、後述のように曲げモーメントとせん断力を生じさせる、反力の軸方向に直交する成分F2が傾斜面3aを持たない場合より小さくなるから、曲げモーメントとせん断力も小さくなる。
水平材3の軸方向両側の端面が軸方向に直交する平面に対して傾斜した傾斜面3aを持ち、柱部材2の支持面2aが水平材3の端面の傾斜面3aに対応し、傾斜面3aに面接触可能な傾斜面を持つことで、図5に示すように水平材3が土石流等による衝撃力2Wを受けたとき、水平材3の各傾斜面3aから柱部材2の各支持面2aにWの力が作用する。
傾斜面3aと支持面2aが完全に面接触していると仮定すれば、水平材3の傾斜面3aは柱部材2の支持面2aに作用するWの反力として、柱部材2の支持面2aから支持面2aに垂直な力Pを受ける。この反力Pは水平材3の軸方向と傾斜面3aとのなす角度をθとすれば、P=Wcosθであり、水平材3の軸方向に平行な成分F1=Wcosθ・sinθ(=W/2・sin2θ)と、水平材3の軸方向に直交する成分F2=Wcosθ・cosθ=W(cosθ)とに分けられる。
特許文献1~5ではθ=0°であるから、sinθ=0、cosθ=1であり、F1=0、F2=Wである。これに対し、本発明では0<θ<90°であるから、F1>0、0<F2<Wであり、水平材3には軸方向に直交する方向の、Wより小さい反力F2と共に、軸方向力F1が作用する。
軸方向力F1は水平材3の両傾斜面3a、3aに互いに軸方向中心に向かって作用するため、軸方向圧縮力である。また0<θ<90°であれば、F2<Wであるから、水平材3の端面に傾斜面3aがない場合より軸方向に直交する方向の反力は土石流等による衝撃力Wより小さくなり、曲げモーメントとせん断力は小さくなる。
例えばθ=45°の場合、cosθ=sinθ=1/√2であるから、F1=F2=W/2である。F1/F2=sinθ/cosθよりθ<45°であれば、F1<F2になり、θ>45°であれば、F1>F2になる。因みにF1=W/2・sin2θであるから、F1はθ=45°のときが最大になる。
言い換えれば、水平材3の端面に傾斜面3aを形成することで、水平材3は柱部材2からの反力F1を軸方向圧縮力として受けることができると同時に、軸方向に分布する曲げモーメントとせん断力(応力)を低減できることを意味する。特に水平材3の軸方向に直交する方向の反力F2を小さくする上では、45°<θ<90°であることが望ましく、軸方向力F1を最大にするには、θ=45°であることが望ましい、と言える。
水平材3の端面に傾斜面3aが形成されることで、軸方向に分布する応力(曲げモーメントとせん断力)を低減しながら、水平材3自体が軸方向圧縮力を受けることから、水平材3は圧縮力に対する耐力を有する鉄筋コンクリートで、特には圧縮力に対する耐力の高い鋼管コンクリート(コンクリート充填鋼管(CFT))製作される。後者の場合、鋼管31には円形鋼管と角形鋼管がある。コンクリート32中には軸方向に沿って鉄筋(主筋)やPC鋼材、繊維強化プラスチック等、引張力の導入が可能な材料の引張材が配置されることもある。
水平材3は軸方向両側の傾斜面3a、3aにおいてそれぞれの側にある柱部材2の支持面2a、2aに土石流等の作用方向に支持される。一方、柱部材2、2間への架設状態で水平材3が鉛直方向下向きに支持される上では、図7、図8に示すように柱部材2の上流側の表面等から凹部21が形成されることが必要である(請求項2)。
土石流等の作用方向に見たとき、この凹部21の下流側の側面が、水平材3を土石流等の流動方向に支持する支持面2aになり、支持面2aの下方と上方の凹部21の内周面に、水平材3を上下から挟み込み、保持し得る載置面2bと保持面2cがそれぞれ形成される(請求項2)。「凹部21の下流側の側面」は凹部21を土石流等の流れの方向に(上流側から下流側へ)見たときの奥側の面を指す。
水平材3の軸方向両側の端部は傾斜面3aにおいて柱部材2の支持面2aに土石流等の流動(衝撃力の作用)方向に接触しながら、載置面2bと保持面2cに上下から挟まれる状態になる(請求項2)。「水平材3の端部が載置面2bと保持面2cに上下から挟まれる」とは、水平材3端部の下面は載置面2bに接触するものの、上面が保持面2cに接触しない場合があることを意味する。
構築対象のいずれかの方向(渓流の幅方向等)には、凹部21は水平材3が架設される側に形成されるため、柱部材2の中心に関して両側に形成される部位と、片側にのみ形成される部位がある。「構築対象のいずれかの方向(渓流の幅方向等)」は、柱部材2がバットレスである場合の柱部材2の厚さ方向である。
水平材3は隣接する柱部材2、2間に架設されるため、柱部材2が渓流の幅方向等、構築対象のいずれかの方向の片側に配置される部位では、凹部21は中心の片側にのみ形成される。柱部材2が構築対象のいずれかの方向(渓流の幅方向等)の中間部に配置される部位では、柱部材2を挟んだ両側に水平材3が架設されるため、図7、図8に示すように中心の両側に凹部21、21が形成される。
水平材3が柱部材2に下向きに支持される上では、水平材3は凹部21の載置面2b上に載置されればよく、必ずしも保持面2cに保持される必要はないとも言える。但し、土石流等から衝撃力を受けたときに、保持面2cがなければ、水平材3が浮き上がり易く、凹部21内に留まることが難しいこともあるため、想定される衝撃力の程度次第では、水平材3が衝撃に耐える上で、保持面2cの形成は必要になることが多い。
請求項2では柱部材2の上流側から凹部21が形成されることで、水平材3の軸方向両側の端部は凹部21内に納まるため、水平材3は傾斜面3aにおいて支持面2aに接触しながら、凹部21内で鉛直方向にも拘束され、水平材3の自重が凹部21内の底面(載置面2b)に支持されると同時に、保持面2cにおいて鉛直方向上向きの移動に対しても拘束される。
特に凹部21内に水平材3の端部が納まった状態での水平材3の上流側の、柱部材2の上流側の表面に、水平材3の凹部21内からの脱落を阻止するための拘束部2dを形成すれば(請求項3)、水平材3の端部が凹部21内に納まり、傾斜面3aが支持面2aに面接触しながら、柱部材2に支持された状態での凹部21内からの離脱に対する安定性が確保される。拘束部2dは図7、図9に示すように柱部材2の一部として形成される場合と、図8に示すように別体の拘束材2eとして着脱自在に組み合わせられる場合がある。請求項3における「拘束部2dが配置されている」とは、拘束部2dとしての拘束材2eが配置されていることを意味する。
水平材3は隣接する柱部材2、2間には、基本的に柱部材2の上流側から平行移動するか、軸方向の一方側の端部がその側の柱部材2の凹部21内に差し込まれた後、他方側の端部が一方側の端部を中心として水平方向に回転することで、その側の柱部材2の凹部21内に差し込まれて架設される。この関係で、隣接する柱部材2、2の一方の凹部21の表面側に形成される拘束部2dが柱部材2の一部である場合、原則として他方の拘束部2d(拘束材2e)は別体として形成される。
但し、水平材3の一方側の端部がその側の凹部21内で水平材3の軸方向に移動可能な空間が確保される場合には、他方側の端部を回転させる必要はないため、必ずしも他方の拘束部2dが別体として形成される必要はない。
いずれの場合も、水平材3の断面形状が円形状である場合、または鋼管コンクリートの場合の鋼管31が円形鋼管である場合には、凹部21内に納まり、土石流等の作用方向に支持された水平材3の端部が、衝撃力の反力等、上流側に向かう何らかの力を受けて、または軸回りに回転して凹部21内から脱落することは阻止されるため、水平材3が土石流等を堰き止める機能は維持される。
水平材3の断面形状が方形状である場合、または鋼管コンクリートの場合の鋼管31が角形鋼管である場合には、水平材3が軸回りに回転することは生じにくいため、円形鋼管の場合より凹部21からの離脱の可能性は低いが、凹部21の上流側に拘束部2dが形成されていれば(請求項3)、水平材3が上流側に向かう力を受けた場合でも、凹部21内からの脱落は確実に阻止される。
構築対象のいずれかの方向に隣接する柱部材間に架設される鉄筋コンクリート製水平材の軸方向両側の端面に、水平材の軸方向に直交する平面に対し、構築対象の下流側から上流側へかけて水平材の軸方向長さが次第に増す向きに傾斜した傾斜面を形成すると共に、水平材の傾斜面を受ける柱部材の支持面に、水平材の傾斜面に対応した傾斜面を形成するため、水平材が受ける土石流等による衝撃力の、柱部材からの反力を傾斜面に垂直な方向に受けることができる。この結果、水平材は柱部材からの反力を軸方向圧縮力として受けることができると同時に、軸方向に分布する曲げモーメントとせん断力を低減することができる。
水平材の断面形状が円形状である場合、または鋼管コンクリートの場合の鋼管に円形鋼管を使用した場合に、水平材を柱部材間に架設した様子の上流側を示した斜視図である。 図1の下流側の様子を示した斜視図である。 図1の拡大図である。 (a)は図3の拡大図、(b)は(a)のx-x線断面図である。 水平材が土石流等から衝撃力2Wを受け、水平材の各傾斜面から柱部材の各支持面にWの力が作用したときの各傾斜面が各支持面から受ける反力を示した説明のための平面図である。 (a)、(b)は水平材の傾斜面を下流側から上流側の途中までに形成した場合の、柱部材の支持面との関係を示した平面図、(c)は傾斜面を上流側から下流側の途中までに形成した場合の支持面との関係を示した平面図である。 (a)は隣接する柱部材の両側の凹部内に水平材が収納された様子を示した水平断面図、(b)は(a)のx-x線断面図である。 柱部材の凹部内に納まる水平材を上流側から拘束する拘束材を挿入するための溝を形成した様子を示した斜視図である。 (a)は水平材の断面形状が円形状である場合、または鋼管コンクリートの場合の鋼管に円形鋼管を使用した場合に、柱部材の載置面と保持面の上流側の一部を水平材の表面形状に対応した曲面を含む形状に形成した場合の例を示した斜視図、(b)は(a)の縦断面図である。 水平材の断面形状が方形状である場合、または鋼管コンクリートの場合の鋼管に角形鋼管を使用した場合に、水平材を柱部材間に架設した様子の上流側を示した斜視図である。
図1~図4は構築対象のいずれかの方向(渓流の幅方向等)に配列する複数個(複数本)の柱部材2と、その方向に隣接する柱部材2、2間に、高さ方向に間隔を置いて架設される鉄筋コンクリート製の複数本の水平材3とを備えた防災構造物1の構成例を示す。柱部材2は渓流の渓床等、構築対象の上に直接、または構築対象の上に構築される均しコンクリート等の基礎上に主に鉄筋コンクリート造等で構築される。以下では「構築対象のいずれかの方向」を渓流の幅方向等とも言い、それに直交する方向を「渓流の(流れの)方向」とも言う。
図1~図4、図10は特に防災構造物1が砂防堰堤等である場合の例を示しているが、防災構造物1はこの他、流木捕捉工等、落石・雪崩防止柵等としても構築される。防災構造物1が砂防堰堤等である場合、渓流の幅方向等両側寄りに壁部(袖部)4、4が構築され、両壁部4、4間に柱部材2としての壁状のバットレスが構築される。この場合、壁部4も柱部材2と同様に渓床等、構築対象の上に直接、または構築対象上に構築される基礎上等に鉄筋コンクリート造等で構築される。
防災構造物1が落石防止柵等である場合、柱部材2は円柱状等に形成されるが、柱部材2は凹部21の形成に拘わらず、水平材3が受ける衝撃力に対して十分に抵抗し得、上記基礎等に伝達し得る断面形状と断面性能が与えられる。防災構造物1の構築場所次第で、柱部材2の軸方向は鉛直方向を向く場合と、鉛直方向に対して傾斜する場合がある。
図1~図4は特に水平材3が、鋼管31の内部にコンクリート32を充填した鋼管コンクリート(CFT)製である場合の、水平材3の架設例を示す。水平材3のコンクリート32中には軸方向に、引張抵抗材としての鉄筋やPC鋼材等の引張材33が配置される。引張材33は基本的には図示するように周方向に均等に間隔を置いて配置されるが、土石流等による衝撃力(荷重)の作用時に引張側となる下流側に集中的に配置されることもある。
この他、水平材3が土石流等から衝撃力を受けたときに引張側になる下流側に配置される引張材33としてのPC鋼材には予め緊張力が付与され、引張側のコンクリート32に軸方向にプレストレスが導入されることもある。
水平材3の軸方向両側の端面は図5に示すように水平材3の軸方向に直交する平面に対して傾斜した傾斜面3aを持ち、この水平材3の傾斜面3aを土石流等の方向に受ける柱部材2の支持面2aは水平材3の傾斜面に対応した傾斜面を持つ。水平材3は傾斜面3aにおいて柱部材2の支持面2aに面接触しながら、柱部材2に支持される。傾斜面3aと支持面2aは共に、水平材3の軸方向に直交する平面に対し、渓流等、構築対象の下流側から上流側へかけて水平材3の軸方向の長さが次第に増す向きに傾斜した傾斜面になる。
水平材3の端面は図5、図7に示すように全面が傾斜面3aである場合と、図6-(a)~(c)に示すように一部が傾斜面3aである場合がある。いずれの場合も、傾斜面3aは基本的に鉛直面になるが、鉛直方向に対して傾斜した面をなすこともある。端面の一部が傾斜面3aである場合、端面の鉛直面3a以外の一部は軸方向に直交する垂直面3b等になる。
図6-(a)、(b)は傾斜面3aを構築対象の下流側から上流側の途中までに形成し、上流側に端面としての垂直面3bを形成した場合である。これらの場合、柱部材2を挟んで隣接する水平材3、3の傾斜面3a、3aは柱部材2の支持面2a、2aに接触し、垂直面(端面)3b、3bは互いに接触する。(b)は互いに接触する垂直面3b、3bの下流側に、水平材3の軸方向に平行な垂直面3cを形成した場合の例を示す。この例では水平材3の軸方向に平行な垂直面3cは柱部材2の上流側に形成された垂直面2gに接触する。
図6-(c)は傾斜面3aを構築対象の上流側から下流側の途中までに形成し、傾斜面3aの下流側に垂直面3bを形成した場合である。この場合も、柱部材2を挟んで隣接する水平材3、3の傾斜面3a、3aは柱部材2の支持面2a、2aに接触するが、垂直面3bは柱部材2の、渓流幅方向(厚さ方向)等の側面に接触する。
図3、図4に示すように柱部材2の、水平材3の軸方向の端部が納まる部分には、柱部材2が水平材3を支持するための、水平材3の端部の立体形状に対応した形状の凹部21が形成される。この凹部21の下流側の側面が、水平材3の傾斜面3aを土石流等の方向に支持する支持面2aになる。
支持面2aは水平材3の傾斜面3aに平行な面等、傾斜面3aに対応した傾斜面を有する形状に形成される。水平材3の傾斜面3aが土石流等の方向に接触する、凹部21の支持面2aは基本的に傾斜面3aと実質的に平行な面をなすため、傾斜面3aが鉛直面である場合、支持面2aも鉛直面になる。
凹部21は見かけ上、柱部材2の上流側から下流側へ向けて形成されるため、凹部21は基本的には柱部材2の上流側の表面から形成されるが、柱部材2の、渓流(流れ)の方向等の中間部に形成されることもある。
凹部21の鉛直方向の下面と上面は水平材3端部の下面と上面に接触し得るそれぞれ載置面2bと保持面2cになる。下側の載置面2bには図7-(b)に示すように水平材3の下面が載置され、接触するが、上部の保持面2cには必ずしも水平材3の上面が接触するとは限らない。
水平材3の断面形状が円形状である場合、または鋼管コンクリート製の水平材3を構成する鋼管31が円形鋼管の場合、図9-(a)、(b)に示すように載置面2bと保持面2cは水平材3の表面形状、または円形鋼管の表面形状に対応した円形等の曲面を含む形状に形成されることもある。この場合、載置面2bと保持面2cが支持面2aと共に水平材3(鋼管31)を上下、及び水平方向(土石流等の方向)両側から拘束する状態にすることができる。
水平材3の断面形状が円形状である場合、または鋼管コンクリート製の水平材3の鋼管31が円形鋼管である場合も角形鋼管である場合も、凹部21は形成し易さからは、基本的に図7、図8に示すように柱部材2の渓流幅方向等の中心に関する片側につき、鉛直方向に見たときに、水平材3の端部の形状に応じた三角柱形状、または四角柱形状等に形成される。但し、鋼管コンクリート製の場合を含め、水平材3の断面形状が円形状である場合には、凹部21は上記のように水平材3の軸方向端部の傾斜面3aが形成された部分に対応した曲面を有する形状に形成されることもある。
凹部21内に水平材3が納まった状態での水平材3の上流側の、柱部材2の上流側の表面からは、図7に示すように凹部21内の水平材3の凹部21内からの脱落を防止するための拘束部2dが形成される。拘束部2dは図7-(b)に示すように凹部21の下部側から、もしくは上部側から、あるいは上下から形成される。
図9に示す例の場合、載置面2bと保持面2cが水平材3の表面に応じた曲面状に形成されることで、載置面2bと保持面2cの、柱部材2の表面側(凹部21の上流側)に、図7の例における拘束部2dが凹部21の上下に形成される形になるため、別途、拘束部2dを形成するか、配置する必要はない。
拘束部2dは図7、図9に示すように柱部材2の一部として形成されることもあるが、図8に示すように柱部材2とは別体で、図7に示す拘束部2dに代わる拘束材2eとして鉄筋コンクリート、または鋼で製作されることもある。図8の場合、凹部21の上流側の柱部材2に拘束材2eの上下部が納まる部分に溝2fが形成される。水平材3は主に土石流等の発生時に土石流等から下流側へ向かう衝撃力を受け、平常時には上流側へ向かう荷重を受けることはないため、溝2fは凹部21の下側にのみ形成されることもある。
この他、図示しないが、凹部21に溝2fを形成することなく、凹部21を上下に挟んだ柱部材2の上流側の表面に拘束材2eを重ねて接合する方法もある。その場合、拘束材2eはそれ自身を貫通し、柱部材2内に挿入されて定着されるボルトやアンカーボルト、またはあと施工アンカーで柱部材2に固定される。
図10は水平材3の断面形状が方形状である場合、または鋼管コンクリート製の水平材3の鋼管31が角形鋼管である場合に、水平材3を隣接する柱部材2、2間に架設し、軸方向の端部をそれぞれの凹部21内に収納し、載置面2b上に支持させた場合の防災構造物(砂防堰堤)1の構成例を示す。
この場合、水平材3の傾斜面3aは水平材3の断面形状が円形状である場合と同様の傾斜面であるから、凹部21の支持面2aは基本的には鉛直面になる。鋼管コンクリート製の場合を含め、水平材3の断面形状が方形状の場合に、水平材3の各表面が鉛直面と水平面をなすように水平材3が架設される場合、凹部21の載置面2bと保持面2cは水平面になる。
この例では水平材3の断面形状が方形状であることで、載置面2bと保持面2cを水平面にすることができるため、柱部材2が水平材3を支持した状態での水平材3の安定性が、断面形状が円形状である場合より高まる。従って水平材3を柱部材2に拘束するための拘束部2dを形成すること、または拘束材2eを接合することの必要性が低下し、円形状の場合より柱部材2の構造が簡素化される。
1……防災構造物、
2……柱部材、21……凹部、2a……支持面、2b……載置面、2c……保持面、2d……拘束部、2e……拘束材、2f……溝、2g……垂直面、
3……水平材、3a……傾斜面、3b……垂直面、3c……垂直面、31……鋼管、32……コンクリート、33……引張材、
4……壁部。

Claims (3)

  1. 構築対象のいずれかの方向に間隔を置いて配列する複数個の柱部材と、前記の幅方向に隣接する前記柱部材間に、高さ方向に間隔を置いて架設される鋼管コンクリート製の複数本の水平材とを備え、
    前記水平材の軸方向両側の端面は前記水平材の軸方向に直交する平面に対し、前記構築対象の下流側から上流側へかけて前記水平材の軸方向の長さが次第に増す向きに傾斜した傾斜面を持ち、
    この水平材の前記傾斜面を受ける前記柱部材の支持面は前記水平材の前記傾斜面に対応した傾斜面を持ち、
    前記水平材の前記傾斜面は前記柱部材の前記支持面に面接触しながら、前記柱部材に支持されていることを特徴とする防災構造物。
  2. 前記柱部材の上流側の表面から、前記水平材の軸方向の端部が納まる凹部が形成され、この凹部の下流側の側面が前記支持面になり、この支持面の下方と上方に、前記水平材の軸方向の端部を上下から保持し得る載置面と保持面が形成されており、
    前記水平材の軸方向両側の端部は前記柱部材の前記支持面に面接触しながら、前記載置面と前記保持面に上下から挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の防災構造物。
  3. 前記凹部内に前記水平材の軸方向の端部が納まった状態での前記水平材の上流側の、前記柱部材の上流側の表面に、前記水平材の前記凹部内からの脱落を阻止するための拘束部が形成されている、または配置されていることを特徴とする請求項2に記載の防災構造物。
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