1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(1,1A)は、モータ(50)の目標回転速度を指示する速度指令信号(Sc)に基づいて、前記モータの回転速度を制御するための駆動制御信号(Sca1,Sca2)を生成する駆動制御回路(20)と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータに通電する制御を行うとともに、前記モータの実回転数に対応する周波数を有する第1のFG信号(FG1)を出力する第1のモータ駆動回路(10_1,10A_1)と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータに通電する制御を行うとともに、前記モータの実回転数に対応する周波数を有し、前記第1のFG信号に対して位相がずれた第2のFG信号(FG2)を出力する第2のモータ駆動回路(10_2,10A_2)と、前記第1のFG信号と前記第2のFG信号を入力し、入力された信号を合成した合成信号(Si)を生成する合成信号生成回路(21,21A)と、を備えることを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置(1,1A)において、前記第1のFG信号(FG1)および前記第2のFG信号(FG2)は、所定のデューティ比を有する矩形波状の信号であり、前記合成信号生成回路は、前記第1のFG信号と前記第2のFG信号の論理積に基づいて前記合成信号を生成してもよい。
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置(1)において、前記第1のモータ駆動回路(10_1)は、前記第1のFG信号(FG1)を出力するための第1の出力端子(FG1)と、前記第1の出力端子と第1の固定電位(グラウンド電圧GND)との間に接続された第1の出力トランジスタ(Q1)とを含み、前記第2のモータ駆動回路(10_2)は、前記第2のFG信号(FG2)を出力するための第2の出力端子(FG2)と、前記第2の出力端子と前記第1の固定電位との間に接続された第2の出力トランジスタ(Q2)とを含み、前記合成信号生成回路は、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子とが共通に接続された接続点(N1)と前記第1の固定電位とは異なる第2の固定電位(電源電圧Vcc)との間に接続された負荷(R1)を含んでもよい。
〔4〕上記〔2〕または〔3〕モータ駆動制御装置(1)において、前記駆動制御回路(20)は、前記合成信号(Si)を入力し、前記合成信号が前記第1のFG信号と前記第2のFG信号との位相差(例えば、90度)に応じたデューティ比の信号である場合に、前記モータが正常に駆動していると判定してもよい。
〔5〕上記〔4〕に記載のモータ駆動制御装置(1)において、前記駆動制御回路(20)は、前記合成信号を入力し、前記合成信号が前記所定のデューティ比である場合に、前記第1のモータ駆動回路および前記第2のモータ駆動回路の何れか一方が開放故障であると判定してもよい。
〔6〕上記〔4〕または〔5〕に記載のモータ駆動制御装置(1)において、前記駆動制御回路は、前記合成信号を入力し、前記合成信号が所定の論理値である場合に、前記第1のモータ駆動回路および前記第2のモータ駆動回路の少なくとも一方が短絡故障である、または前記モータがロック状態であると判定してもよい。
〔7〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記第1のモータ駆動回路(10A_1)は、前記モータがロックしている状態であるか否かを示す2値信号である第1のロック検出信号(LD1)を出力し、前記第2のモータ駆動回路(10A_2)は、前記モータがロックしている状態であるか否かを示す2値信号である第2のロック検出信号(LD2)を出力し、前記合成信号生成回路は、前記第1のFG信号、前記第2のFG信号、前記第1のロック検出信号、および前記第2のロック検出信号を合成して、前記合成信号を生成してもよい。
〔8〕上記〔7〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記第1のFG信号(FG1)および前記第2のFG信号(FG2)は、所定のデューティ比を有する矩形波状の信号であり、前記合成信号生成回路(21A)は、前記第1のFG信号(FG1)と前記第2のFG信号(FG2)の論理積に基づく信号と、前記第1のロック検出信号(LD1)と前記第2のロック検出信号(LD2)の論理積に基づく信号との論理積に基づいて、前記合成信号(Si)を生成してもよい。
〔9〕上記〔8〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記第1のモータ駆動回路(10A_1)は、前記第1のFG信号(FG1)を出力するための第1の出力端子(FG1)と、前記第1のロック検出信号(LD1)を出力するための第2の出力端子(LD1)と、前記第1の出力端子と第1の固定電位(グラウンド電圧GND)との間に接続された第1の出力トランジスタ(Q1)と、前記第2の出力端子と前記第1の固定電位との間に接続された第2の出力トランジスタ(Q1A)とを含み、前記第2のモータ駆動回路(10A_2)は、前記第2のFG信号(FG2)を出力するための第3の出力端子(FG2)と、前記第2のロック検出信号(LD2)を出力するための第4の出力端子(LD2)と、前記第3の出力端子(FG2)と前記第1の固定電位(GND)との間に接続された第3の出力トランジスタ(Q2)と、前記第4の出力端子(LD2)と前記第1の固定電位(GND)との間に接続された第4の出力トランジスタ(Q2A)とを含み、前記合成信号生成回路(21A)は、前記第1の出力端子と前記第3の出力端子とが共通に接続された第1の接続点(N1)と前記第1の固定電位とは異なる第2の固定電位(Vcc)との間に接続された第1の負荷(R1)と、前記第2の出力端子と前記第4の出力端子とが共通に接続された第2の接続点(N2)と前記第2の固定電位(Vcc)との間に接続された第2の負荷(R2)と、一端が前記第2の固定電位に接続された第3の負荷(R3)と、前記第1の固定電位(GND)と前記第3の負荷の他端との間に接続され、前記第1の接続点の電圧に基づいてオン・オフが制御される第1のスイッチ素子(SW1)と、前記第1の固定電位(GND)と前記第3の負荷の他端との間に接続され、前記第2の接続点の電圧に基づいてオン・オフが制御される第2のスイッチ素子(SW2)とを含んでもよい。
〔10〕上記〔8〕または〔9〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記駆動制御回路(20)は、前記合成信号(Si)が前記第1のFG信号と前記第2のFG信号との位相差に応じたデューティ比である場合に、前記モータが正常に駆動していると判定してもよい。
〔11〕上記〔10〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記駆動制御回路(20)は、前記合成信号(Si)が前記所定のデューティ比である場合に、前記第1のモータ駆動回路および前記第2のモータ駆動回路の何れか一方が開放故障であると判定してもよい。
〔12〕上記〔11〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記駆動制御回路(20)は、前記合成信号(Si)が前記第1の論理レベル(ハイレベル)である場合に、前記第1のモータ駆動回路および前記第2のモータ駆動回路の何れか一方が短絡故障であると判定してもよい。
〔13〕上記〔12〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記駆動制御回路(20)は、前記合成信号(Si)が前記第1の論理レベルと異なる第2の論理レベル(ローレベル)である場合に、前記モータがロック状態であると判定してもよい。
〔14〕本発明の代表的な実施の形態に係るファン(100,100A)は、上記〔1〕乃至〔13〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置(1,1A)と、第1の系統のコイル(80_1)と第2の系統のコイル(80_2)を含む前記モータ(50)とを備え、前記第1のモータ駆動回路(10_1,10A_1)は、前記第1の系統のコイル(80_1)の通電を制御し、前記第2のモータ駆動回路(10_2,10A_2)は、前記第2の系統のコイル(80_2)の通電を制御してもよい。
〔15〕本発明の代表的な実施の形態に係るファン(100B,100C)は、上記〔1〕乃至〔13〕の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置(1,1A)と、少なくとも一つのコイル(80B_1,80B_2)を含む2つの前記モータ(50B_1,50B_2)とを備え、前記第1のモータ駆動回路(10A_1)は、一方の前記モータ(50B_1)の前記コイル(80B_1)の通電を制御し、前記第2のモータ駆動回路(10A_2)は、他方の前記モータ(50B_2)の前記コイル(80B_2)の通電を制御してもよい。
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
図1は、実施の形態1に係るファンの構成を示すブロック図である。
実施の形態1に係るファン(ファンモータ)100は、インペラ(羽根車)を回転させることによって風を発生させる装置である。ファン100は、機器の内部で発生する熱を外部へ排出し、その機器の内部を冷却する冷却装置の一つとして利用可能であり、例えば、サーバ等の情報処理装置の他に、オイルミスト、切削屑、煙、埃などが発生する環境下で使用される工作機械等に搭載可能である。ファン100は、例えば、軸流ファンである。
図1に示すように、ファン100は、モータ50と、インペラ90と、位置検出器41_1、41_2と、モータ駆動制御装置1とを備えている。
本実施の形態において、モータ50は、例えば、ティース(図示せず)に巻回された2系統のコイル80_1,80_2を備えた単相のブラシレスモータである。インペラ90は、モータ50の回転力によって回転可能に構成されている。例えば、インペラ90は、モータ50の出力軸(不図示)に接続されている。
モータ駆動制御装置1は、モータ50の回転を制御するための装置である。モータ駆動制御装置1は、モータ50を構成する各単相のコイル80_1,80_2に周期的に駆動電流を流すことで、モータ50を回転させる。
位置検出器41_1,41_2は、モータ50のロータの位置に応じて位置検出信号を出力する。位置検出器41_1,41_2は、例えば、ホール素子である。ホール素子は、位置検出信号として、正の極性を有するホール信号を出力する。
位置検出器41_1は、第1の系統のコイル80_1に対応する位置に配置され、後述するモータ駆動回路10_1の制御回路12_1に位置検出信号を出力する。位置検出器41_2は、第2の系統のコイル80_2に対応する位置に配置され、後述するモータ駆動回路10_2の制御回路12_2に位置検出信号を出力する。位置検出器41_1と位置検出器41_2は、例えば、相対位置が電気角でπ/2(90度)になる位置に配置される。
モータ駆動制御装置1には、外部から直流の電源電圧Vdcが供給される。
モータ駆動制御装置1は、上位装置500に接続されている。モータ駆動制御装置1には、上位装置500から出力された速度指令信号Scが入力される。モータ駆動制御装置1は、入力された速度指令信号Scに応じてモータ50を駆動させる。また、モータ駆動制御装置1は、上位装置500に対して、モータ50の状態に関する情報を出力する。例えば、後述するように、モータ駆動制御装置1は、モータ50の実回転数に応じた信号や後述するモータの異常状態を示す信号を状態信号Soとして上位装置500に対して出力する。これにより、上位装置500は、モータ50の回転状態やモータ50の異常の有無等を知ることができる。
具体的に、モータ駆動制御装置1は、2系統のモータ駆動回路10_1,10_2と、モータ駆動回路10_1,10_2の動作を制御する駆動制御回路20と、合成信号生成回路21とを備えている。
駆動制御回路20は、各モータ駆動回路10_1,10_2を介してモータ50の駆動を制御するための回路である。駆動制御回路20は、例えば、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等の各種メモリ、タイマ(カウンタ)、A/D変換回路、入出力I/F回路、およびクロック生成回路等のハードウェア要素を有し、各構成要素がバスや専用線を介して互いに接続されたプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ:MCU)によって構成されている。
本実施の形態において、駆動制御回路20は、一つの半導体装置(IC:Integrated Circuit)としてパッケージ化されているが、これに限られるものではない。
駆動制御回路20は、上位装置500からの速度指令信号Scに基づいて、モータ50の回転速度を制御するための駆動制御信号Sca1,Sca2を生成し、各モータ駆動回路10_1,10_2にそれぞれ供給する。なお、駆動制御回路20は、1つの駆動制御信号を出力し、2つの線路に分岐して駆動制御信号をモータ駆動回路10_1,10_2に供給するようにしてもよい。この場合、モータ駆動回路10_1,10_2に供給する駆動制御信号のそれぞれを地絡することで、駆動制御信号を無効とするスイッチを設けるようにしてもよい。
ここで、速度指令信号Scは、モータ50の目標回転速度(目標回転数)を指示する信号であり、例えば、モータの目標回転速度に対応するデューティ比のPWM(パルス幅変調)信号である。なお、速度指令信号Scは、例えば、目標回転速度に対応する周波数のPFM信号など、他の形式の信号であってもよい。
駆動制御信号Sca1,Sca2は、速度指令信号Scと同様に、モータ50の目標回転速度(目標回転数)を指示する信号であり、例えば、モータの目標回転速度に対応するデューティ比のPWM信号である。
また、駆動制御回路20は、上位装置500からの速度指令信号Scに従ってモータ50の駆動制御を行う機能に加えて、ファン100(モータ50およびモータ駆動回路10_1,10_2)の異常の有無を判定し、判定結果を出力する機能を有している。駆動制御回路20は、合成信号生成回路21によって生成された合成信号Siに基づいて、ファン100の異常の有無を判定し、判定結果に基づいて、ファン100の状態を示す状態信号Soを上位装置500に対して出力する。
モータ駆動回路10_1,10_2は、駆動制御信号Sca1,Sca2に基づいてモータ50に通電する制御を行う回路である。モータ駆動回路10_1およびモータ駆動回路10_2は、例えば、互いに同一の回路構成を有している。
モータ駆動回路10_1は、制御回路12_1と、制御回路12_1による制御に基づいてコイル80_1に通電するインバータ回路(通電回路)15_1を有している。モータ駆動回路10_2は、制御回路12_2と、制御回路12_2による制御に基づいてコイル80_2に通電するインバータ回路(通電回路)15_2を有している。このとき、制御回路12_1,12_2は、それぞれインバータ回路15_1,15_2を含んでも良い。
モータ駆動回路10_1,10_2は、一端が電源電圧Vdcに接続されたヒューズ19をそれぞれ有している。モータ駆動回路10_1,10_2において、電源電圧Vdcは、ヒューズ19を経由して各モータ駆動回路10_1,10_2のインバータ回路15_1,15_2および制御回路12_1,12_2にそれぞれ供給される。
インバータ回路15_1は、制御回路12_1から出力された駆動信号Sdr1に基づいて、出力端子16_1,17_1に接続されたモータ50のコイル80_1に通電する。インバータ回路15_2は、インバータ回路15_1と同様に、制御回路12_2から出力された駆動信号Sdr2に基づいて、出力端子16_2,17_2に接続されたモータ50のコイル80_2の通電を制御する。駆動信号Sdr1,Sdr2は、例えば、PWM(パルス幅変調)信号である。
図1に示すように、インバータ回路15_1,15_2は、例えば、Hブリッジ回路であり、電源電圧Vdcの両端に設けられた2つのスイッチ素子(例えばトランジスタ)の直列回路の対を2つ有している。各直列回路における2つのスイッチ素子同士の接続点がそれぞれ、コイル80_1,80_2に通電するための出力端子16_1,17_1,16_2,17_2となっている。インバータ回路15_1,15_2を構成する各スイッチ素子は、制御回路12_1,12_2からそれぞれ出力される駆動信号(PWM信号)Sdr1,Sdr2によって、オン・オフが制御される。これにより、インバータ回路15_1の出力端子16_1,17_1に接続されたコイル80_1の通電と、インバータ回路15_2の出力端子16_2,17_2に接続されたコイル80_2の通電が、それぞれ制御される。
制御回路12_1は、駆動制御回路20から供給される駆動制御信号Sca1と、位置検出器41_1から出力された位置検出信号とに基づいて、駆動信号Sdr1を生成し、インバータ回路15_1を制御する。制御回路12_2は、駆動制御回路20から供給される駆動制御信号Sca2と、位置検出器41_2から出力された位置検出信号とに基づいて、駆動信号Sdr2を生成し、インバータ回路15_2を制御する
例えば、制御回路12_1は、位置検出信号に基づいてモータ50の実回転数を検出し、モータ50の実回転数が駆動制御信号Sca1で指定された回転数と一致するようにデューティ比を調整したPWM信号を生成し、駆動信号Sdr1としてインバータ回路15_1に供給することにより、インバータ回路15_1の各スイッチング素子のオン、オフ動作を制御する。また、制御回路12_2も同様に、位置検出信号に基づくモータ50の実回転数が駆動制御信号Sca2で指定された回転数と一致するようにPWM信号を生成し、駆動信号Sdr2としてインバータ回路15_2に供給する。なお、制御回路12_1,12_2は、それぞれ、実回転数に関わらず、駆動制御信号Sca1,Sca2で指定された回転数に対応したデューティ比のPWM信号を生成し、駆動信号Sdr1,Sdr2としてインバータ回路15_1,15_2に供給するようにしてもよい。
更に、制御回路12_1は、位置検出器41_1からの位置検出信号に基づいて、モータ50の実回転数に対応する第1のFG信号(以下、「信号FG1」と称する。)を生成して出力する。制御回路12_2は、位置検出器41_2からの位置検出信号に基づいて、モータ50の実回転数に対応する第2のFG信号(以下、「信号FG2」と称する。)を生成して出力する。
信号FG1,FG2は、例えば、所定のデューティ比を有する矩形波状の信号であり、位相が互いに相違している。例えば、信号FG1,FG2は、モータ50の実回転速度に対応する周波数を有し、回転数が一定の場合にデューティ比が50%になるように生成される2値信号(デジタル信号)である。
信号FG1と信号FG2との位相差は、例えば、π/2(90度)である。この場合、位置検出器41_1からの位置検出信号と位置検出器41_2からの位置検出信号の位相差はπ/2(90度)となっている。なお、信号FG1と信号FG2との位相差は、π/2(90度)に限られず、π/2(90度)の近傍(例えば、π/2±10%)であってもよい。
合成信号生成回路21は、制御回路12_1,12_2によって生成された信号FG1,FG2をそれぞれ入力し、入力した信号を合成した合成信号Siを生成する。例えば、合成信号生成回路21は、信号FG1と信号FG2との論理積に基づいて合成信号Siを生成する。以下、合成信号生成回路21とその周辺回路について、詳細に説明する。
図2は、実施の形態1に係る合成信号生成回路21とその周辺回路の構成を示す図である。なお、図2には、合成信号生成回路21の周辺の構成のみが図示されている。
制御回路12_1と制御回路12_2は、1つの集積回路(IC)によってそれぞれ実現されている。本実施の形態において、制御回路12_1と制御回路12_2はともに、ハードウェアとして同一の回路構成を有する汎用ICを用いて構成されている。なお、制御回路12_1と制御回路12_2は、汎用ICによる構成に限定されない。例えば、マイクロコントローラ(MCU)で構成してもよい。
制御回路12_1と制御回路12_2は、それぞれ、制御回路12_1,12_2としての機能を実現するための内部回路120_1,120_2と、内部回路120_1,120_2と外部(本実施の形態では、駆動制御回路20)との間で信号の入出力を行うための複数の外部端子と、を有している。
制御回路12_1,12_2は、上記外部端子として、例えば、第1の固定電位としてのグラウンド電圧GNDを入力するためのグラウンド端子と、電源電圧Vdc(>GND)を入力するための電源端子と、駆動制御信号Sca1,Sca2を入力するための制御信号入力端子と、FG信号としての信号FG1,FG2を出力するためのFG信号出力端子と、位置検出器41_1,41_2からの位置検出信号を入力するための位置検出信号入力端子や駆動信号Sdr1,Sdr2を出力するための駆動信号出力端子等を有している。
なお、以下の説明では、信号FG1,FG2が出力されるFG信号出力端子を端子FG1,端子FG2と称する。また、説明の便宜上、図2には、制御回路12A_1,12A_2の外部端子として、端子FG1,FG2のみが図示されている。
図2に示すように、制御回路12_1は、内部回路120_1が位置検出器41_1からの位置検出信号に基づいて生成した第1のFG信号FG1を端子FG1から出力するための出力トランジスタQ1を有している。出力トランジスタQ1は、端子FG1と第1の固定電位としてのグラウンド電圧GNDとの間に接続されている。
制御回路12_2は、制御回路12_1と同様に、内部回路120_2が位置検出器41_2からの位置検出信号に基づいて生成した第2のFG信号FG2を端子FG2から出力するための出力トランジスタQ2を有している。出力トランジスタQ2は、端子FG2とグラウンド電圧GNDとの間に接続されている。出力トランジスタQ1,Q2は、例えば、FET(Field Effect Transistor)である。
合成信号生成回路21には、回路を駆動するための電源電圧Vcc(≦電源電圧Vdc;第2の固定電位の一例)が印加されている。合成信号生成回路21は、第1のFG信号FG1と第2のFG信号FG2の論理積に基づいて合成信号Siを生成する回路である。本実施の形態において、合成信号生成回路21は、例えば、制御回路12_1,12_2としての汎用ICおよび駆動制御回路20としてのMCUが搭載される同一の回路基板上に形成されている。
合成信号生成回路21は、例えば、負荷R1を有する。負荷R1は、例えば、抵抗である。負荷R1は、制御回路12_1の端子FG1と制御回路12_2の端子FG2とが共通に接続されたノード(接続点)N1と電源電圧Vccとの間に接続されている。合成信号生成回路21のノードN1の電圧は、合成信号Siとして、駆動制御回路20に入力される。
合成信号Siは、ファン100(モータ50およびモータ駆動回路10_1,10_2)の状態に応じてその波形が変化する。以下、合成信号Siについて詳細に説明する。
図3は、実施の形態1に係るファン100の状態と合成信号Siの態様との関係を示す図である。
図4は、実施の形態1に係るファンにおいて、モータ50が正常に回転しているときの信号FG1,FG2および合成信号Siを示すタイミングチャートである。
先ず、ファン100が正常に駆動している場合、すなわちモータ50が正常に回転している場合について考える。この場合、図4に示すように、制御回路12_1,12_2の各端子FG1,FG2から、デューティ比50%の信号FG1,FG2(2値信号)が夫々出力される。また、上述したように、信号FG1と信号FG2とは90度の位相差がある。したがって、図4に示すように、合成信号生成回路21から出力される合成信号Siは、信号FG1,FG2と同じ周期でデューティ比25%の2値信号となる。
次に、モータ駆動回路10_1,10_2の端子FG1,FG2の何れか一方が開放状態となる故障が発生した場合を考える。例えば、制御回路12_1の端子FG1に接続されている出力トランジスタQ1が故障し、出力トランジスタQ1がオンしない場合や、端子FG1と出力トランジスタQ1とを接続する配線が断線した場合等において、端子FG1が開放故障となる。また、例えば、制御回路12_1に接続されている位置検出器41_1が故障し、内部回路120_1から出力される信号fg1がローレベルに固定された場合においても、出力トランジスタQ1がオンしないため、端子FG1が開放故障となる。以下、モータ駆動回路10_1,10_2の端子FG1,FG2が開放状態となる故障を、モータ駆動回路10_1,10_2の開放故障とも称する。
図5は、実施の形態1に係るファン100において、モータ駆動回路10_1の端子FG1に開放故障が発生したときの信号FG1,FG2および合成信号Siを示すタイミングチャートである。
図5に示すように、端子FG1が開放状態となった場合、端子FG1が高インピーダンス状態(Hi-Z)となる。一方、モータ駆動回路10_1は正常に動作しているため、端子FG2から出力される信号FG2は、デューティ比50%の2値信号となる。したがって、図5に示すように、合成信号生成回路21から出力される合成信号Siは、デューティ比50%の2値信号となる。
なお、モータ駆動回路10_2の端子FG2が開放故障となっている場合も同様に、合成信号生成回路21からデューティ比50%の合成信号Siが出力される。
次に、モータ駆動回路10_1,10_2の端子FG1,FG2の何れか一方が短絡状態となる故障が発生した場合を考える。例えば、制御回路12_1の端子FG1に接続されている出力トランジスタQ1が故障し、出力トランジスタQ1のエミッタ電極とコレクタ電極が短絡した場合等において、端子FG1が短絡故障となる。また、例えば、制御回路12_1に接続されている位置検出器41_1が故障し、内部回路120_1から出力される信号fg1がハイレベルに固定された場合においても、出力トランジスタQ1がオフしないため、端子FG1が短絡故障となる。以下、モータ駆動回路10_1,10_2の端子FG1,FG2が短絡状態となる故障を、モータ駆動回路10_1,10_2の短絡故障とも称する。
図6は、実施の形態1に係るファン100において、モータ駆動回路10_1の端子FG1に短絡故障が発生したときの信号FG1,FG2および合成信号Siを示すタイミングチャートである。
図6に示すように、端子FG1が短絡状態となった場合、端子FG1の電圧(信号FG1)はグラウンド電圧GND(ロー(Lo)レベル)となる。一方、モータ駆動回路10_2は、正常に動作しているため、端子FG2からデューティ比50%の信号FG2を出力しようとするが、ノードN1が端子FG1を介して短絡しているため、合成信号生成回路21から出力される合成信号Siは、ローレベル(第2の論理レベルの一例)となる。
次に、モータ50がロック状態になった場合を考える。
図7Aおよび図7Bは、実施の形態1に係るファン100において、モータ50がロック状態になったときの信号FG1,FG2および合成信号Siを示すタイミングチャートである。
モータ50がロック状態になったとき、内部回路120_1,120_2から出力される信号fg1,fg2は、ローレベル(グラウンド電圧GND)またはハイ(Hi)レベル(電源電圧Vcc)の何れか一方に固定されることになる。
例えば、モータ50がロック状態になり、内部回路120_1,120_2から出力される信号fg1,fg2がともにローレベルとなった場合、図7Aに示すように、信号FG1,FG2がともにハイレベル(第1の論理レベルの一例)となり、合成信号生成回路21から出力される合成信号Siは、ハイレベル(電源電圧Vcc)となる。
また、例えば、モータ50がロック状態になり、内部回路120_1,120_2から出力される信号fg1,fg2がともにハイレベルとなった場合、図7Bに示すように、信号FG1,FG2がともにローレベルとなり、合成信号生成回路21から出力される合成信号Siは、ローレベル(グラウンド電圧GND)となる。また、モータ50がロック状態になり、内部回路120_1,120_2から出力される信号fg1,fg2が互いに異なるレベルとなった場合には、信号FG1,FG2の何れか一方がローレベルとなるため、合成信号生成回路21から出力される合成信号Siは、ローレベル(グラウンド電圧GND)となる。
以上のように、合成信号Siは、ファン100(モータ50およびモータ駆動回路10_1,10_2)の駆動状態に応じて、その波形が変化するので、合成信号Siを見れば、ファン100の駆動状態を判定することが可能となる。
本実施の形態において、駆動制御回路20は、合成信号生成回路21によって生成された合成信号Siを入力し、合成信号Siに基づいてファン100の駆動状態を判定する。
図8は、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1による、ファン100の駆動状態の判定処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、先ず、駆動制御回路20は、合成信号Siのデューティ比が25%であるか否かを判定する(ステップS10)。合成信号Siのデューティ比が25%である場合(ステップS10:Yes)、駆動制御回路20は、ファン100(モータ50およびモータ駆動回路10_1,10_2)が正常に駆動していると判定する(ステップS11)。その後、駆動制御回路20は、ファン100(モータ50)が正常に駆動していることを示す状態信号Soを上位装置500に対して出力する(ステップS12)。例えば、駆動制御回路20は、信号FG1,FG2から生成された合成信号Siに基づいて、モータ50の実回転数に応じた周波数でデューティ50%のFG信号を状態信号Soとして上位装置500に対して出力する。
次に、駆動制御回路20は、合成信号Siのデューティ比が変化したか否かを判定する(ステップS13)。合成信号Siのデューティ比が変化していない場合(ステップS13:No)、ファン100(モータ50およびモータ駆動回路10_1,10_2)が継続して正常に駆動していると判定し(ステップS11)、ファン100が正常に動作していることを示す状態信号Soを継続して上位装置500に対して出力する(ステップS12)。
一方、合成信号Siのデューティ比が変化した場合(ステップS13:Yes)、またはステップS10において合成信号Siのデューティ比が25%でない場合(ステップS10:No)、駆動制御回路20は、合成信号Siの波形を判別する(ステップS14)。
具体的には、駆動制御回路20は、合成信号Siのデューティ比が50%の場合に、モータ駆動回路10_1,10_2の何れか一方が開放故障であると判定する(ステップS15、図5参照)。
また、駆動制御回路20は、合成信号Siがハイレベル(電源電圧Vccと同等なレベル)である場合には、モータ50がロック状態であると判定する(ステップS16、図7A参照)。一方、合成信号Siがローレベル(グラウンド電圧と同等なレベル)である場合には、駆動制御回路20は、モータ駆動回路10_1,10_2の少なくとも一方が短絡故障である、またはモータ50がロック状態であると判定する(ステップS17、図7B参照)。
その後、駆動制御回路20は、ステップS15、S16、S17の判定結果に基づいて、ファン100の状態を示す状態信号Soを生成し、上位装置500に対して出力する(ステップS18)。例えば、駆動制御回路20は、状態信号Soを電源電圧Vcc(ハイ(Hi)レベル)またはグラウンド電圧GND(ロー(Lo)レベル)として上位装置500に対して出力する。これにより、上位装置500は、ファン100の駆動状態を知ることが可能となる。
以上、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1は、モータ50の目標回転速度を指示する速度指令信号Scに基づいてモータの回転速度を制御するための駆動制御信号Sca1,Sca2を生成する駆動制御回路20と、駆動制御信号Sca1,Sca2に基づいてモータ50に通電する制御を行うとともに、モータ50の実回転数に対応する周波数を有し、互いに位相の異なる信号FG1,FG2をそれぞれ出力するモータ駆動回路10_1,10_2と、信号FG1,FG2を合成した合成信号Siを生成する合成信号生成回路21とを備えている。
これによれば、互いに位相が相違し、且つモータの駆動状態に応じて態様(波形)が変化する2つのFG信号を合成して合成信号Siを生成しているので、合成信号Siの波形を判定することにより、ファン100(モータ50およびモータ駆動回路10_1,10_2)の駆動状態を判定することが可能となる。
具体的には、信号FG1,FG2が所定のデューティ比を有する矩形波状の信号(例えば、デューティ比50%の2値信号)であり、且つ互いの位相差が90度である場合に、合成信号生成回路21は、信号FG1,FG2の論理積に基づいて合成信号Siを生成する。
これによれば、合成信号Siが信号FG1と信号FG2との位相差に応じたデューティ比(例えば、25%)の2値信号であるとき、モータ50が正常に駆動していると判定することが可能となる。また、合成信号Siが所定のデューティ比、すなわち信号FG1,FG2と同一のデューティ比(例えば、50%)であるとき、モータ駆動回路10_1,10_2(信号FG1,FG2を出力するための端子FG1,FG2)の何れか一方が開放故障であると判定することが可能となる。また、合成信号Siがグラウンド電圧GNDに固定されている場合(ローレベル)、モータ駆動回路10_1,10_2(端子FG1,FG2)の少なくとも一方が短絡故障である、またはモータ50がロック状態であると判定することが可能となる。更に、合成信号Siが電源電圧Vccに固定されている場合(ハイレベル)、モータ50がロック状態であると判定することが可能となる。
このように、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1によれば、外部(例えば、上位装置500)に対してモータ50(ファン100)の駆動状態を通知することが可能となる。また、モータ駆動制御装置1は、合成信号生成回路21を構成したことにより、モータ駆動回路10_1,10_2から駆動制御回路20に出力される信号線の本数を削減するとともに、駆動制御回路20における信号処理を軽減することが可能となる。
≪実施の形態2≫
図9は、本発明の実施の形態2に係るファンの構成を示すブロック図である。
実施の形態2に係るファン100Aにおけるモータ駆動制御装置1Aは、FG信号のみならず、モータがロック状態であるか否かを示すロック検出信号も利用して合成信号Siを生成する点において、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1と相違し、その他の点においては実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1と同様である。
図9に示すように、モータ駆動制御装置1Aにおける各モータ駆動回路10A_1,10A_2の制御回路12A_1,12A_2は、信号FG1,FG2に加えて、ロック検出信号LD1,LD2をそれぞれ生成して出力する。
ここで、ロック検出信号LD1,LD2は、モータ50が回転不能となる状態、すなわち、ロックされている状態であるか否かを示す信号である。ロック検出信号LD1,LD2は、例えば、2値信号である。例えば、ロック検出信号LD1がローレベル(グラウンド電圧GND)である場合にモータ50がロックされていない状態(正常状態)であることを示し、ロック検出信号LD1がハイレベル(電源電圧Vcc)である場合にモータ50がロックされている状態(ロック状態)であることを示す。
例えば、制御回路12A_1,12A_2として汎用ICを用いる場合には、その汎用ICのロック検出機能に基づいて出力される信号をロック検出信号LD1,LD2として用いることができる。
図10は、実施の形態2に係る合成信号生成回路21Aとその周辺回路の構成を示す図である。
なお、説明の便宜上、図10には、合成信号生成回路21Aの周辺の構成のみが図示されている。
制御回路12A_1と制御回路12A_2は、それぞれ、制御回路12A_1,12A_2としての機能を実現するための内部回路120A_1,120A_2と、内部回路120A_1,120A_2と外部(本実施の形態では、駆動制御回路20)との間で信号の入出力を行うための複数の外部端子と、を有している。
内部回路120A_1,120A_2は、実施の形態1に係る内部回路120_1,120_2と同一の機能に加えて、位置検出信号に基づいてロック検出信号LD1,LD2をそれぞれ生成する機能を備えている。
制御回路12A_1,12A_2は、実施の形態1に係る制御回路12_1,12_2と同一の外部端子に加えて、ロック検出信号LD1,LD2を出力するためのLD信号出力端子を更に有している。
なお、以下の説明では、ロック検出信号LD1,LD2が出力されるLD信号出力端子を端子LD1,端子LD2と称する。また、説明の便宜上、図10には、制御回路12A_1,12A_2の外部端子として、端子FG1,FG2および端子LD1,LD2のみが図示されている。
図10に示すように、制御回路12A_1は、内部回路120A_1が位置検出器41_1からの位置検出信号に基づいて生成した第1のロック検出信号LD1を端子LD1から出力するための出力トランジスタQ1Aを有している。出力トランジスタQ1Aは、端子LD1と第1の固定電位としてのグラウンド電圧GNDとの間に接続されている。
制御回路12A_2は、内部回路120A_2が位置検出器41_2からの位置検出信号に基づいて生成した第2のロック検出信号LD2を端子LD2から出力するための出力トランジスタQ2Aを有している。出力トランジスタQ2Aは、端子LD2と第1の固定電位としてのグラウンド電圧GNDとの間に接続されている。出力トランジスタQ1A,Q2Aは、例えば、FETである。
合成信号生成回路21Aは、制御回路12A_1,12A_2によって生成された信号FG1,FG2とロック検出信号LD1,LD2をそれぞれ入力し、入力した信号を合成した合成信号Siを生成する。例えば、合成信号生成回路21Aは、信号FG1と信号FG2との論理積およびロック検出信号LD1,LD2との論理積に基づいて合成信号Siを生成する。
実施の形態2において、合成信号生成回路21Aは、例えば、実施の形態1に係る合成信号生成回路21と同様に、制御回路12A_1,12A_2としての汎用ICおよび駆動制御回路20としてのMCUが搭載される同一の回路基板上に形成されている。
合成信号生成回路21Aは、例えば、負荷R1~R3とスイッチ素子SW1,SW2を有している。負荷R1~R3は、例えば、抵抗である。負荷R1は、制御回路12A_1の端子FG1と制御回路12A_2の端子FG2とが共通に接続されたノード(接続点)N1と電源電圧Vccとの間に接続されている。負荷R2は、制御回路12A_1の端子LD1と制御回路12A_2の端子LD2とが共通に接続されたノード(接続点)N2と電源電圧Vccとの間に接続されている。負荷R3は、その一端が電源電圧Vccに接続されている。
スイッチ素子SW1は、グラウンド電圧GNDと負荷R3の他端との間に接続され、ノードN1の電圧に基づいてオン・オフが制御される。スイッチ素子SW1は、例えば、トランジスタ(バイポーラトランジスタ)を含む。スイッチ素子SW1としてのトランジスタにおいて、エミッタ電極がグラウンド電圧GNDに接続され、コレクタ電極が抵抗R3の他端(ノードN3)に接続されている。
スイッチ素子SW2は、グラウンド電圧GNDと負荷R3の他端との間に接続され、ノードN2の電圧に基づいてオン・オフが制御される。スイッチ素子SW2は、例えば、トランジスタ(バイポーラトランジスタ)を含む。スイッチ素子SW2としてのトランジスタにおいて、エミッタ電極がグラウンド電圧GNDに接続され、コレクタ電極が抵抗R3の他端(ノードN3)に接続されている。
なお、図10に示すように、スイッチ素子SW1,SW2を構成するトランジスタにおいて、エミッタ電極とベース電極との間に抵抗が接続されていてもよいし、ベース電極とノードN1,N2との間に抵抗が接続されていてもよい。
合成信号生成回路21Aにおいて、ノードN3は出力端子であり、ノードN3の電圧が合成信号Siとして駆動制御回路20に入力される。
図11は、実施の形態2に係るファン100Aの状態と合成信号Siの態様との関係を示す図である。
図12は、実施の形態2に係るファン100Aにおいて、モータ50が正常に回転しているときの信号FG1,FG2、信号SF1、ロック検出信号LD1,LD2、信号SL1、および合成信号Siを示すタイミングチャートである。
先ず、ファン100Aが正常に駆動している場合、すなわちモータ50が正常に回転している場合について考える。この場合、図12に示すように、各制御回路12A_1,12A_2の各端子FG1,FG2から、デューティ比50%の信号FG1,FG2(2値信号)が夫々出力される。また、上述したように、信号FG1と信号FG2とは90度の位相差がある。したがって、図12に示すように、ノードN1の電圧(信号SF12)は、デューティ比25%の2値信号となる。
また、モータ50が正常に回転している場合、各制御回路12A_1,12A_2の内部回路120A_1,120A_2は、モータ50がロック状態であるか否かを示す信号ld1,ld2をハイレベル(電源電圧Vcc)としてそれぞれ出力する。これにより、図12に示すように、各端子LD1,LD2から出力されるロック検出信号LD1,LD2はそれぞれローレベル(グラウンド電圧GND)となり、ノードN2の電圧(信号SL12)は、ローレベルとなる。
このとき、スイッチ素子SW2は、入力信号としてのノードN2がローレベルであるので、オンしない。一方、スイッチ素子SW1は、ノードN1から入力信号としてデューティ比25%の2値信号が入力されるので、そのデューティ比に応じてオン・オフが制御される。したがって、モータ50が正常に回転している場合には、図12に示すように、ノードN3の電圧、すなわち合成信号Siは、デューティ比75%の2値信号となる。
次に、モータ駆動回路10A_1,10A_2の端子FG1,FG2の何れか一方が開放状態となる故障(開放故障)が発生した場合を考える。ここでは、モータ駆動回路10A_1における制御回路12A_1の端子FG1に接続されている出力トランジスタQ1が故障し、端子FG1が開放故障となった場合を例にとり、説明する。
図13は、実施の形態2に係るファン100Aにおいて、モータ駆動回路10A_1の端子FG1に開放故障が発生したときの信号FG1,FG2、信号SF1,ロック検出信号LD1,LD2、信号SF1,および合成信号Siを示すタイミングチャートである。
図13に示すように、端子FG1が開放状態となった場合、端子FG1が高インピーダンス状態(Hi-Z)となる。一方、モータ駆動回路10A_2は正常に動作しているため、端子FG2から出力される信号FG2は、デューティ比50%の2値信号となる。したがって、図13に示すように、ノードN1から出力される信号SF12は、デューティ比50%の2値信号となる。
また、このとき、モータ駆動回路10A_1の端子LD1から出力されるロック検出信号LD1の態様は、モータ駆動回路10A_1の故障内容に依存する。例えば、上述したように、制御回路12A_1の出力トランジスタQ1のみが故障している場合には、内部回路120A_1がハイレベルの信号ld1を出力するので、端子LD1から出力されるロック検出信号LD1は、ローレベルとなる。
一方、制御回路12A_1の内部回路120A_1が故障し、信号ld1がローレベルとなっている場合には、端子LD1は高インピーダンス状態(Hi-Z)となる。
このように、端子FG1が開放状態となった場合、端子LD1は、ローレベルまたは高インピーダンス状態となる(図11参照)。
一方、モータ駆動回路10A_2は正常に動作しているため、端子LD2から出力されるロック検出信号LD2は、モータ50が正常に回転している場合と同様に、ローレベル(グラウンド電圧GND)となる。これにより、図13に示すように、ノードN2から出力される信号SL12は、端子LD1の状態によらず、ローレベルとなる。
このとき、スイッチ素子SW2は、入力信号としてのノードN2がローレベルであるので、オンしない。一方、スイッチ素子SW1は、ノードN1から入力信号としてデューティ比50%の2値信号が入力されるので、そのデューティ比に応じてオン・オフが制御される。
したがって、モータ駆動回路10A_1の端子FG1が開放故障し、モータ駆動回路10A_2が正常である場合には、図13に示すように、合成信号Siは、デューティ比50%の2値信号となる。
なお、モータ駆動回路10A_2の端子FG2が開放故障し、モータ駆動回路10A_1が正常である場合も同様に、合成信号Siは、デューティ比50%の2値信号となる(図11参照)。
次に、モータ駆動回路10A_1,10A_2の端子FG1,FG2の何れか一方が短絡状態となる故障(短絡故障)が発生した場合を考える。ここでは、モータ駆動回路10A_1における制御回路12A_1の端子FG1に接続されている出力トランジスタQ1が故障し、出力トランジスタQ1のエミッタ電極とコレクタ電極が短絡した場合を例にとり、説明する。
図14は、実施の形態2に係るファン100Aにおいて、モータ駆動回路10A_1の端子FG1に短絡故障が発生したときの信号FG1,FG2、信号SF1、ロック検出信号LD1,LD2、信号SL1、および合成信号Siを示すタイミングチャートである。
図14に示すように、端子FG1が短絡状態となった場合、端子FG1の電圧(信号FG1)はグラウンド電圧GND(ローレベル)となる。一方、モータ駆動回路10_2は、正常に動作しているため、端子FG2からデューティ比50%の信号FG2を出力しようとするが、ノードN1が端子FG1を介して短絡しているため、ノードN1から出力される信号SF12はグラウンド電圧GND(ローレベル)となる。
また、このとき、モータ駆動回路10A_1の端子LD1から出力されるロック検出信号LD1の態様は、上述したようにモータ駆動回路10A_1の故障内容に依存するため、端子LD1は、ローレベルまたは高インピーダンス状態となる(図11参照)。
一方、モータ駆動回路10A_2は正常に動作しているため、モータ50が正常に回転している場合と同様に、端子LD2から出力されるロック検出信号LD2は、ローレベル(グラウンド電圧GND)となる。これにより、図14に示すように、ノードN2から出力される信号SL12は、端子LD1の状態によらず、ローレベルとなる。
このとき、スイッチ素子SW2は、ノードN2から出力される信号SL12がローレベルであるので、オンしない。同様に、スイッチ素子SW1は、ノードN1から出力される信号SF12がローレベルであるので、オンしない。
したがって、モータ駆動回路10A_1の端子FG1が開放故障し、モータ駆動回路10A_2が正常である場合には、図13に示すように、合成信号Siは、ハイレベル(電源電圧Vcc)固定となる。また、モータ駆動回路10A_2の端子FG2が短絡故障し、モータ駆動回路10A_1が正常である場合も同様に、合成信号Siは、ハイレベル(電源電圧Vcc)固定となる(図11参照)。
次に、モータ50がロック状態になった場合を考える。
図15は、実施の形態2に係るファン100Aにおいて、モータ50がロック状態になったときの信号FG1,FG2、信号SF1、ロック検出信号LD1,LD2、信号SL1、および合成信号Siを示すタイミングチャートである。
モータ50がロック状態になったとき、内部回路120A_1,120A_2から出力される信号fg1,fg2は、ローレベル(グラウンド電圧GND)またはハイレベル(電源電圧Vcc)の何れか一方に固定されることになる。
例えば、モータ50がロック状態になり、内部回路120A_1,120A_2から出力される信号fg1,fg2がともにハイレベルに固定された場合、図15に示すように、信号FG1,FG2がともにローレベルとなり、ノードN1から出力される信号SF12はローレベルとなる。
一方で、内部回路120A_1,120A_2は、モータ50がロック状態であると判定し、ローレベルの信号ld1,ld2を出力する。これにより、図15に示すように、信号LD1,LD2がともにハイレベルとなり、ノードN2から出力される信号SL12はハイレベル(電源電圧Vcc)となるので、スイッチ素子SW2は、オンする。これにより、スイッチ素子SW1がオンしているか否かに関わらず、合成信号Siは、ローレベルとなる(図11参照)。このように、モータ50がロック状態である場合には、合成信号Siは、ローレベルとなる。
以上のように、合成信号Siは、ファン100A(モータ50およびモータ駆動回路10A_1,10A_2)の駆動状態に応じて、その波形が変化するので、ファン100Aの駆動状態を判定することが可能となる。
本実施の形態において、駆動制御回路20は、合成信号生成回路21Aによって生成された合成信号Siに基づいて、ファン100Aの駆動状態を判定する。
図16は、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置1Aによる、ファン100Aの駆動状態の判定処理の流れを示すフローチャートである。
図16に示すように、先ず、駆動制御回路20は、合成信号Siのデューティ比が75%であるか否かを判定する(ステップS10A)。合成信号Siのデューティ比が75%である場合(ステップS10A:Yes)、駆動制御回路20は、ファン100A(モータ50およびモータ駆動回路10A_1,10A_2)が正常に駆動していると判定する(ステップS11)。その後、駆動制御回路20は、ファン100A(モータ50)が正常に駆動していることを示す状態信号Soを上位装置500に対して出力する(ステップS12A)。例えば、駆動制御回路20は、信号FG1,FG2および信号LD1,LD2から生成された合成信号Siに基づいて、モータ50の実回転数に応じた周波数でデューティ50%のFG信号を状態信号Soとして上位装置500に対して出力する。
次に、駆動制御回路20は、合成信号Siのデューティ比が変化したか否かを判定する(ステップS13A)。合成信号Siのデューティ比が変化していない場合(ステップS13A:No)、ファン100A(モータ50およびモータ駆動回路10A_1,10A_2)が継続して正常に駆動していると判定し(ステップS11A)、ファン100Aが正常に動作していることを示す状態信号Soを継続して上位装置500に対して出力する(ステップS12A)。
一方、合成信号Siのデューティ比が変化した場合(ステップS13A:Yes)、またはステップS10Aにおいて合成信号Siのデューティ比が75%でない場合(ステップS10A:No)には、駆動制御回路20は、合成信号Siの波形を判別する(ステップS14A)。
具体的には、駆動制御回路20は、合成信号Siのデューティ比が50%の場合には、モータ駆動回路10A_1,10A_2の何れか一方が開放故障であると判定する(ステップS15A、図13参照)。また、駆動制御回路20は、合成信号Siがローレベル(グラウンド電圧GND)である場合には、モータ50がロック状態であると判定する(ステップS17A、図15参照)。また、合成信号Siがハイレベル(電源電圧Vcc)である場合には、駆動制御回路20は、モータ駆動回路10A_1,10A_2の何れか一方が短絡故障であると判定する(ステップS16A、図14参照)。
その後、駆動制御回路20は、ステップS15A、S16A、S17Aの判定結果に基づいて、ファン100Aの状態を示す状態信号Soを生成し、上位装置500に対して出力する(ステップS18A)。例えば、駆動制御回路20は、モータ駆動回路10A_1,10A_2の何れか一方が開放故障または短絡故障である場合は、状態信号Soをグランド電圧GND(ロー(Lo)レベル)として上位装置500に対して出力し、モータ50がロック状態である場合は、状態信号Soを電源電圧Vcc(ハイ(Hi)レベル)として上位装置500に対して出力する。これにより、上位装置500は、ファン100Aの駆動状態をより詳細に知ることが可能となる。
以上、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置1Aにおいて、モータ駆動回路10A_1,10A_2は、モータ50がロックしている状態であるか否かを示す2値信号のロック検出信号LD1,LD2をそれぞれ出力し、合成信号生成回路21Aは、信号FG1,FG2およびロック検出信号LD1,LD2を合成して合成信号Siを生成する。
これによれば、2つのFG信号FG1,FG2のみならず、2つのロック検出信号LD1,LD2を更に合成して合成信号Siを生成しているので、合成信号Siの波形を判定することにより、ファン100A(モータ50およびモータ駆動回路10A_1,10A_2)の駆動状態をより詳細に判定することが可能となる。
具体的には、信号FG1と信号FG2との論理積と、ロック検出信号LD1とロック検出信号LD2との論理積との論理積に基づいて合成信号Siを生成することにより、モータ駆動回路10A_1,10A_2の何れか一方が開放故障している場合と、モータ駆動回路10A_1,10A_2の何れか一方が短絡故障している場合と、モータ50がロックしている状態とを正確に判定することが可能となる。
例えば、合成信号Siが信号FG1と信号FG2との位相差に応じたデューティ比(例えば、75%)の2値信号であるとき、モータ50が正常に駆動していると判定することが可能となる。また、合成信号Siが所定のデューティ比、すなわち信号FG1,FG2と同一のデューティ比(例えば、50%)であるとき、モータ駆動回路10A_1,10A_2(信号FG1,FG2を出力するための端子FG1,FG2)の何れか一方が開放故障であると判定することが可能となる。また、合成信号Siが電源電圧Vccに固定されている場合(ハイレベル)、モータ駆動回路10A_1,10A_2(端子FG1,FG2)の何れか一方が短絡故障であると判定することが可能となる。更に、合成信号Siがグラウンド電圧GNDに固定されている場合(ローレベル)、モータ50がロック状態であると判定することが可能となる。
このように、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置1Aによれば、外部(例えば、上位装置500)に対して、ファン100A(モータ50)のより正確な駆動状態を通知することが可能となる。また、モータ駆動制御装置1Aは、合成信号生成回路21Aを備えることにより、モータ駆動回路10A_1,10A_2から駆動制御回路20に出力される信号線の本数を削減するとともに、駆動制御回路20における信号処理を軽減することが可能となる。
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施の形態では、モータ駆動制御装置1,1Aを、2系統のコイル80_1,80_2を備えた単相のブラシレスモータを有するファンシステムに適用する場合を例示したが、これに限られない。例えば、モータ駆動制御装置1,1Aを、1系統のコイルを備えた単相のブラシレスモータを2つ有するファンシステムに適用してもよい。
例えば、図17に示すように、モータ駆動制御装置1を、1系統のコイルをそれぞれ有するモータ50B_1,50B_2によって2つのインペラ90_1,90_2をそれぞれ個別に回転させるシステム構成を有するファン100Bに適用してもよい。この場合、駆動制御回路20は、各モータ駆動回路10_1,10_2(制御回路12_1,12_2)から出力される信号FG1,FG2の位相が互いに相違する(例えば、位相差:90度)ように、駆動制御信号Sca1,Sca2を生成する。モータ駆動回路10_1は、駆動制御信号Sca1に基づいて、一方のモータ50B_1のコイル80B_1の通電を制御し、モータ駆動回路10_2は、駆動制御信号Sca2に基づいて、他方のモータ50B_2のコイル80B_2の通電を制御する。
これによれば、実施の形態1に係るファン100と同様に、ファン100B(モータ50B_1,50B_2)の駆動状態を判定し、上位装置500に通知することが可能となる。
また、例えば、図18に示すように、モータ駆動制御装置1Aを、1系統のコイルをそれぞれ有するモータ50B_1,50B_2によって2つのインペラ90_1,90_2をそれぞれ個別に回転させるシステム構成を有するファン100Cに適用してもよい。この場合、駆動制御回路20は、各モータ駆動回路10A_1,10A_2(制御回路12A_1,12A_2)から出力される信号FG1,FG2の位相が互いに相違する(例えば、位相差:90度)ように、駆動制御信号Sca1,Sca2を生成する。モータ駆動回路10A_1は、駆動制御信号Sca1に基づいて、一方のモータ50B_1のコイル80B_1の通電を制御し、モータ駆動回路10A_2は、駆動制御信号Sca2に基づいて、他方のモータ50B_2のコイル80B_2の通電を制御する。
これによれば、実施の形態2に係るファン100Aと同様に、ファン100C(モータ50B_1,50B_2)の駆動状態を判定し、上位装置500に通知することが可能となる。
また、上記実施の形態において、モータ50,50B_1,50B_2が単相のブラシレスモータである場合を例示したが、モータ50,50B_1,50B_2の種類や相数等はこれに限定されない。例えば、3相のブラシレスモータであってもよい。
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。