JP7377434B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、特に、Ni基耐熱合金の切削加工に用いても、硬質被覆層が優れた耐剥離性、耐チッピング性を有し、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関するものである。
被覆工具として、例えば、WC基超硬合金等の工具基体にTiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層(以下、TiAlCN層とも云う)等の硬質被覆層を形成したものが知られており、切削性能の改善を目的として種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、化学蒸着法により、組成式:(Ti1-UAl)(C1-V)で組成を表した場合、Al含有割合Uの値が0.7~0.95である、立方晶構造を有する素地相と、組成式:(Ti1-αAlα)(Cβ1-β)で組成を表した場合、Al含有割合αの値が0.78~1.0である、立方晶構造を有する分散粒子相の2相からなる硬質被覆層を有する被覆工具が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、TiCl、AlCl、Ar、NH、H、N、Cの混合反応ガス中で、700℃~900℃の温度範囲にて化学蒸着を行うことにより、Al含有割合Xの値が0.75超えとなるTi1-XAl層を有する被覆工具が記載されている。
さらに、例えば、非特許文献1には、TiCl、AlCl、NH、H、Nの混合反応ガス中で、800℃または850℃の温度にて化学蒸着を行うことにより、Al含有割合Xの値が0.82~0.90である(Ti1-XAl)N層を蒸着形成した被覆工具が記載されている。
特開2014-121747号公報 特表2013-510946号公報
I. Endler et al., Novel aluminum-rich Ti1-xAlxN coatings by LPCVD,Surface & Coatings Technology 203 (2008) 530-533
耐熱性を要求される構造部材にNi基耐熱合金の使用が増加しており、Ni基耐熱合金に対する優れた切削性能を有する被覆工具が求められている。しかし、Ni基耐熱合金は、熱伝導性が低く高温せん断強度が高いため切削加工時の温度や抵抗が高くなりやすく、そのため、能率の悪い切削条件下の切削となり、被覆工具へのNi基耐熱合金の溶着が起こりやすく、チッピングや剥離が生じるという問題がある。
特許文献1に記載された被覆工具は、特許文献1に記載されたとおり合金鋼の高速断続切削加工においては優れた性能を発揮するものの、Ni基耐熱合金の切削に用いると早期にチッピングや剥離が発生し工具寿命に至ってしまう。
また、特許文献2および非特許文献1に記載された被覆工具も、Ni基耐熱合金の切削に用いるとすくい面が早期にチッピングや剥離し工具寿命に至ってしまう。
そこで、本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであって、Ni基耐熱合金の切削加工に供しても、優れた耐剥離性、耐チッピング性を示し、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する切削工具を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決すべく、Ni基耐熱合金の切削における硬質被覆層の剥離やチッピングの発生について鋭意検討したところ、TiAlCN層を硬質被覆層として用いたとき、母相と分散相のAl濃度の差を大きくし、Al濃度の低い母相(高Ti含有相)中にAl濃度の高い分散相(高Ti含有相)を所定の割合で分散させたとき、Ni基耐熱合金の切削において、被覆工具が優れた切削性能を発揮するという新規な知見を得た。
なお、特許文献2は、NaCl型の面心立方構造を有するTiN相との複合相の生成について何ら言及されておらず、また、非特許文献1には、成膜に当たり、原料ガスの供給比AlCl/TiClを1.7以下にすることで、(Ti1-XAl)N相と共にTiN相が生成するとされているが、この文献では(Ti1-XAl)N相とTiN相の複合相の生成によって、切削性能へ如何なる影響があるかについて説明されておらず、いずれも前記知見を示唆すらしないものである。
本発明は、この知見に基づくものであって、次のとおりのものである。
「(1)工具基体と、該工具基体の表面に、平均層厚が1.0~20.0μmを有するTiとAlとの複合窒化物または複合炭窒化物からなる硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具であって、
(a)前記硬質被覆層は、分散相であるAl高含有相と母相であるTi高含有相の2つの相を有し、
(b)前記Al高含有相は、その組成を組成式:(Ti(1-X)Al)(C(1-Y))で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める割合Xの平均値XavgとCのCとNの合量に占める割合Yの平均値Yavg(ただし、X、Y、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xavg≦0.90、0.000≦Yavg≦0.005を満足するとともに、NaCl型の面心立方構造の結晶粒子を70面積%以上含み、前記母相中に20~60面積%で分散し、
(c)前記Ti高含有相は、その組成を組成式:(Ti(1-a)Al)(C(1-b))で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める割合aの平均値aavgとCのCとNの合量に占める割合bの平均値bavg(ただし、a、b、aavg、bavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.00≦aavg≦0.30、0.000≦bavg≦0.005を満足するとともに、NaCl型の面心立方構造の結晶粒子を70面積%以上含む、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記Al高含有相に含まれる前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒について、X線回折測定による回折ピーク強度を求めたとき、(111)面の回折ピーク強度をIAl(111)とし、(200)面の回折ピーク強度をIAl(200)とした場合、IAl(111)/(IAl(111)+IAl(200))≧0.50を満足することを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記Ti高含有相に含まれる前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒について、X線回折測定による回折ピーク強度を求めたとき、(111)面の回折ピーク強度をITi(111)とし、(200)面の回折ピーク強度をITi(200)とした場合、ITi(200)/(ITi(111)+ITi(200))≧0.60を満足することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
本発明の表面被覆切削工具は、Ni基耐熱合金の切削加工においても、優れた耐剥離性、および、耐チッピング性を発揮する。
本発明の表面被覆切削工具における硬質被覆層の工具基体に垂直な断面(縦断面)の模式図である。
以下、本発明の被覆工具について、より詳細に説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲の記載において、数値範囲を「A~B」を用いて表現する場合、その範囲は上限(B)および下限(A)の数値を含むものである。また、上限(B)および下限(A)は同じ単位である。
硬質被覆層構造:
硬質被覆層は、図1に模式的に示すように、分散相であるAl高含有相と母相であるTi高含有相の2つの相を有し、その平均層厚は、1.0~20.0μmが好ましい。この範囲とした理由は、1.0μm未満となると、早期に磨滅してしまい、耐チッピング性の向上効果が発揮されず、また、20.0μmを超えると、結晶粒が大きくなり硬質被覆層の耐チッピング性が低下するためである。より好ましい平均層厚範囲は、3.0μm~15.0μmである。
以下、各相について説明する。
1.Al高含有相
Al高含有相は分散相であり、硬質被覆層の母相(後述する)に分散し、NaCl型の面心立方構造の結晶粒を有する。その組成を組成式:(Ti(1-X)Al)(C(1-Y))で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める割合Xの平均値XavgとCのCとNの合量に占める割合Yの平均値Yavg(ただし、X、Y、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xavg≦0.90、0.000≦Yavg≦0.005である。
前記Xavgをこの範囲とする理由は、0.60未満であると、Al高含有相は耐酸化性に劣るため、Ni基耐熱合金等の高速断続切削に供した場合には、耐摩耗性が十分でなく、一方、Xavgが0.90を超えると、硬さに劣る六方晶の析出量が増大し硬さが低下し、耐摩耗性が低下するためである。
また、前記Yavgをこの範囲とする理由は、Cが含有されていても、この範囲の微量であれば耐チッピング性を保ちつつ硬さを向上させることができるためである。
なお、他の成分として、微量のOやCl等の不可避的不純物を含んでいてもよい。
Al高含有相にはNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が存在することが必要であり、その面積割合として70面積%以上が好ましい。これにより、高硬度であるNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の面積比率が高くなり、硬質被覆層の硬さが向上する。さらに、この面積率は、より好ましくは80面積%以上であり、100面積%であってもよい。
ここで、面積%は、縦断面を観察して求めたものであり(以下、面積%については同様である)、すなわち、
硬質被覆層を集束イオンビーム装置(FIB:Focused Ion Beam system)、クロスセクションポリッシャー(CP:Cross section Polisher)等を用いて、研磨した縦断面を作製し、この縦断面において、縦方向を硬質被覆層全体の層厚、横方向を工具基体に平行に100μmとした四角形を測定領域とし、電子線後方散乱解析装置を用いて、前記測定領域に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流にて、0.01μmの間隔で照射して得られる電子線後方散乱回折像に基づき、個々の結晶粒の結晶構造を解析することにより求める。
隣接する測定点(測定点で代表させた正方形等の領域であり、以下、ピクセルということがある)間で5度以上の方位差があるピクセル間の境界を粒界と定義する。ただし、隣接するピクセルすべてと5度以上の方位差がある単独に存在するピクセルは結晶粒とは扱わず、2ピクセル以上連結しているものを結晶粒と扱う。
このようにして、各結晶粒を決定し、その結晶構造を鑑別することにより、前記各層の特定がなされ、各層におけるウルツ鉱型の六方晶構造またはNaCl型の面心立方構造の結晶粒の面積率を求めることができる。
Al高含有相が母相全体に占める面積率は、20~60面積%が好ましい。面積率をこの範囲とする理由は、20面積%未満であると、高硬度であるAl高含有相の析出量が十分でないため、硬質被覆層の耐摩耗性が低下し、一方、60面積%を超えると、硬質被覆層の靭性が不十分となり、切削中に硬質被覆層中をクラックが進展して優れた耐チッピング性を発揮することができないためである。さらに、この面積率は、より好ましくは30~50面積%である。
Al高含有相の面心立方構造を有する結晶粒について、X線回折測定により(111)面の回折ピーク強度IAl(111)と、(200)面の回折ピーク強度IAl(200)を求めた場合、IAl(111)/(IAl(111)+IAl(200))≧0.5を満足すると、稠密面である(111)面の配向性が高いために、硬質被覆層が一層優れた耐チッピング性、耐摩耗性を備えるようになる。さらに、この強度比は、は0.6以上であることがより一層好ましい。
2.Ti高含有相
Ti高含有相は母相であり、Al高含有相が分散し、NaCl型の面心立方構造の結晶粒を有する。その組成を組成式:(Ti(1-a)Al)(C(1-b))で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める割合aの平均値aavgとCのCとNの合量に占める割合bの平均値bavg(ただし、a、b、aavg、bavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.00≦aavg≦0.30、0.000≦bavg≦0.005である。
前記aavgをこの範囲とする理由は、aavgが0.30を超えると、Ti高含有相の靭性が不十分となり、Ni基耐熱合金の切削中に硬質被覆層中をクラックが進展して優れた耐チッピング性を発揮することができないためである。
また、前記bavgをこの範囲とする理由は、Cが含有されていても、この範囲の微量であれば硬さを向上させ、耐チッピング性を保ちつつ硬さを向上させることができるためである。
なお、他の成分として微量のOやCl等の不可避的不純物を含んでいてもよい。
Ti高含有相にはNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が存在することが必要であり、その面積割合として70面積%以上が好ましい。これにより、高硬度であるNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の面積比率が高くなり、硬さが向上する。さらに、この面積率は、より好ましくは80面積%以上であり、100面積%であってもよい。
Ti高含有相の面心立方構造を有する結晶粒について、X線回折測定により(111)面の回折ピーク強度ITi(111)と、(200)面の回折ピーク強度ITi(200)を求めた場合、ITi(200)/(ITi(111)+ITi(200))≧0.6を満足すると、Ti高含有相の結晶粒が微粒となり、硬質被覆層が一層優れた耐チッピング性を備えるようになる。さらに、この強度比は、より一層好ましくは0.7以上である。
3.各相の組成、回折ピーク強度の測定
(1)組成
組成は、各相の縦断面(工具基体の表面に垂直な断面)を観察して求めたものである。すなわち、硬質被覆層を集束イオンビーム装置(FIB:Focused Ion Beam system)、クロスセクションポリッシャー(CP:Cross section Polisher)等を用いて、研磨した縦断面を作製し、この縦断面において、透過型電子顕微鏡を用いて観察視野内の当該相をエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によって調査し、各相毎に5測定点の結果を平均してXavg,Yavgとaavg、bavgをそれぞれ求める。
(2)回折ピーク強度
ここで、回折ピーク強度IAl(111)、IAl(200)、ITi(111),ITi(200)は、以下のようにして測定する。すなわち、X線回折装置を用い、Cu-Kα線を線源としてX線回折を行って得られる回折ピークを用いる。
すなわち、Al高含有相の面心立方構造を有する結晶粒の格子定数αが、立方晶TiN(JCPDS00-038-1420)の格子定数aTiN:4.24173Åと立方晶AlN(JCPDS00-046-1200)の格子定数aAlN:4.045Åに対して、0.40aTiN+0.60aAlN≦α≦0.10aTiN+0.90aAlNの関係を満足するものの中から、(111)面、(200)面のピーク強度を求め、IAl(111)/(IAl(111)+IAl(200))を算出する。
また、Ti高含有相の面心立方構造を有する結晶粒の格子定数βが、立方晶TiN(JCPDS00-038-1420)の格子定数aTiN:4.24173Åと立方晶AlN(JCPDS00-046-1200)の格子定数aAlN:4.045Åに対して、aTiN≦β≦0.70aTiN+0.30aAlNの関係を満足するものの中から、(111)面、(200)面のピーク強度を求め、ITi(200)/(ITi(111)+ITi(200))を算出する。
工具基体:
工具基体は、この種の工具基体として従来公知の基材であれば、本発明の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。一例を挙げるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、さらに、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの等)、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、またはcBN焼結体のいずれかであることが好ましい。
製造方法:
アルカリを含む反応ガスとハロゲンを含む反応ガスの2種を位相差をもたせて供給すると、NHとAlClとの反応、NHとTiClとの反応、のぞれぞれの反応速度が異なるため、Al高含有相とTi高含有相が分離生成する。また、各相の組成は反応ガス組成によって制御でき、TiClに対するAlClの比が高くなると、Al含有量が増加する。さらに、結晶構造、配向性は、成膜温度に依存し、成膜温度が高いとNaCl型の面心立方構造をとなる結晶粒が増加し、回折ピーク強度比が高くなる。加えて、Ti高含有相に対するAl高含有相の面積率は、供給周期が長くなると高くなる。
これらの事項を考慮して、本発明の硬質被覆層は、例えば、NHとHからなるガス群Aと、AlCl、TiCl、N、Hからなるガス群Bと、からなる2種の反応ガスをそれぞれ以下のように供給することによって製造できる。
反応ガスの組成、一例として、次のようなものがある。ここで、%は容量%(体積%)であり、ガス群Aとガス群Bの和を100%としている。
ガス群A:NH:0.30~0.80%、H:45~55%
ガス群B:AlCl:0.20~0.40%、TiCl:0.10~0.20%、
:0.0~10.0%、H:残
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa
反応雰囲気温度:700~900℃
供給周期:1.00~5.00秒
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒
ガス群Aとガス群Bとの供給の位相差:0.10~0.20秒
次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明の被覆工具の具体例として、工具基体としてWC基超硬合金を用いたインサート切削工具に適用したものについて述べるが、工具基体は前述のとおりWC基超硬合金に限定されることはなく、また、工具としてドリル、エンドミル等に適用した場合も同様である。
まず、原料粉末として、Co粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、TiN粉末、および、WC粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形し、これらの圧粉成形体を焼結し、所定寸法となるように加工して、ISO規格CNMG120412のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A~Fを作製した。
次に、この工具基体A~F上に、表2に示す条件により、表3に示す本発明被覆工具1~18を得た。これら各層の成膜条件は、概ね次のとおりである。ここで、%は容量%(体積%)であり、ガス群Aとガス群Bの和を100%としている。
ガス群A:NH:0.30~0.80%、H:45~55%
ガス群B:AlCl:0.20~0.40%、TiCl:0.10~0.20%、
:0.0~10.0%、H:残
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa
反応雰囲気温度:700~900℃
供給周期:1.00~5.00秒
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒
ガス群Aとガス群Bとの供給の位相差:0.10~0.20秒
また、比較の目的で、工具基体A~Fの表面に、表2に示される成膜条件により、表3に示された比較例1~7を製造した。
表3に記載されている平均層厚は、本発明被覆工具1~18、比較被覆工具1~7の各構成層の縦断面を、走査型電子顕微鏡を用いて適切な倍率(例えば倍率5000倍)を選択して観察し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して求めたものである。
Figure 0007377434000001
Figure 0007377434000002
Figure 0007377434000003
続いて、本発明被覆工具1~10、比較被覆工具1~5について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてクランプした状態で、以下に示す、Ni基耐熱合金の外径湿式切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗を測定した。
以下の切削試験を行った。結果を表4に示す
被削材:Ni-19Cr-19Fe-3Mo-0.9Ti-0.5Al-5.1(Nb+Ta)合金
回転速度:160 rpm
切削速度:100 m/min
切り込み:0.75 mm
送り量:0.3 mm
切削時間:8分
Figure 0007377434000004
表4に示される結果から、本発明被覆工具1~18は、いずれも硬質被覆層が優れた耐剥離性、耐チッピング性を有しているため、Ni基耐熱合金鋼の切削加工に用いた場合であってもチッピングの発生がなく、長期にわたって優れた切削性能を発揮する。これに対して、本発明の被覆工具に規定される事項を一つでも満足していない比較被覆工具1~7は、Ni基耐熱合金切削加工に用いた場合にはチッピングが発生し、短時間で使用寿命に至っている。
本発明の表面被覆切削工具は、特に高熱発生を伴うとともに、切刃部に対して大きな負荷がかかるNi基耐熱合金の切削加工において、優れた耐剥離性、および、耐チッピング性を発揮し、長期にわたって優れた切削性能を示すものであるから、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (3)

  1. 工具基体と、該工具基体の表面に平均層厚が1.0~20.0μmを有するTiとAlとの複合窒化物または複合炭窒化物からなる硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具であって、
    (a)前記硬質被覆層は、分散相であるAl高含有相と母相であるTi高含有相の2つの相を有し、
    (b)前記Al高含有相は、その組成を組成式:(Ti(1-X)Al)(C(1-Y))で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める割合Xの平均値XavgとCのCとNの合量に占める割合Yの平均値Yavg(ただし、X、Y、Xavg、Yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xavg≦0.90、0.000≦Yavg≦0.005を満足するとともに、NaCl型の面心立方構造の結晶粒子を70面積%以上含み、前記母相中に20~60面積%で分散し、
    (c)前記Ti高含有相は、その組成を組成式:(Ti(1-a)Al)(C(1-b))で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める割合aの平均値aavgとCのCとNの合量に占める割合bの平均値bavg(ただし、a、b、aavg、bavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.00≦aavg≦0.30、0.000≦bavg≦0.005を満足するとともに、NaCl型の面心立方構造の結晶粒子を70面積%以上含む、
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記Al高含有相に含まれる前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒について、X線回折測定による回折ピーク強度を求めたとき、(111)面の回折ピーク強度をIAl(111)とし、(200)面の回折ピーク強度をIAl(200)とした場合、IAl(111)/(IAl(111)+IAl(200))≧0.50を満足することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記Ti高含有相に含まれる前記NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒について、X線回折測定による回折ピーク強度を求めたとき、(111)面の回折ピーク強度をITi(111)とし、(200)面の回折ピーク強度をITi(200)とした場合、ITi(200)/(ITi(111)+ITi(200))≧0.60を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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