JP7376836B2 - 自動車車体の構造部材 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車車体の構造部材に関する。本願は、2020年7月31日に、日本に出願された特願2020-130554号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、自動車の衝突安全性能の向上および車体軽量化を目的として、自動車部品への高張力鋼板の適用が拡大している。高張力鋼板を適用することで、より優れた衝突安全性能を持つ部品を得たり、または衝突安全性能と薄肉化による軽量化とを両立したりすることが可能となる。
しかしながら素材の板厚が薄くなると、加工前の鋼板の剛性が低下するだけなく、加工後の部品の剛性も低下する。このため、強度が高く、板厚の薄い鋼板を単純に使用するだけでは、衝突安全性能として十分な高強度化の効果が得られない場合がある。
自動車車体部品の衝突安全性能として、側面衝突(側突)におけるサイドシルやBピラー、前面衝突(前突)におけるバンパー等の曲げ圧潰特性がある。これらの部品の曲げ圧潰特性として、局部座屈モードの3点曲げ特性を高め、薄い板厚の素材を用いてもより高い衝突安全性能を発揮することが希求されている。
特許文献1には、本体部の長手方向に沿って本体部の幅方向中央に延在するように凹ビードを設けるように設計された、耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材が開示されている。
特許文献2には、上部ウェブ、下部ウェブの一方又は両方に、車両の前後方向に略平行な凹状又は凸状のビードを有する車両用金属製アブソーバが開示されている。
日本国特許第5119477号公報 日本国特許第4330652号公報
しかしながら、特許文献1、2の技術では、要求される更に高い曲げ圧潰部品の局部座屈モードの3点曲げ特性を十分に発揮することができなかった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、局部座屈モードの変形のストローク初期における耐荷重を向上させることで優れた衝突安全性能を発揮することが可能な構造部材を提供することにある。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
(1)本発明の第一の態様は、長手方向に延びる天板部と、前記天板部の幅方向の両端部に形成された第一コーナ部を介して延在する一対の側壁部と、前記一対の側壁部における前記第一コーナ部とは反対側の端部に形成された第二コーナ部を介して延在する一対のフランジ部と、を有するハット型部材と、前記ハット型部材の前記一対のフランジ部に接合される一対の接合部と、前記ハット型部材の前記天板部に対向する天板対向部と、を有する接合部材と、を備え、前記天板対向部に、前記長手方向に沿って延在する第一ビードが形成され、前記第一ビードが二本以上、前記幅方向に並列して形成され、前記長手方向に垂直な断面において、前記接合部材の前記接合部の内側の端部から、前記幅方向に前記天板対向部の幅の1/4の離間距離となる点までの領域に、前記第一ビードの前記幅方向の中心が位置するように前記第一ビードが形成され、前記一対の側壁部に、前記長手方向に交差する方向に沿って延在する第二ビードが二本以上形成される自動車車体の構造部材である。
)上記()に記載の自動車車体の構造部材では、前記長手方向に垂直な断面において、前記接合部材の前記接合部の内側の端部から、20mmの離間距離となる点までの領域に、前記第一ビードと前記接合部材との境界点が位置するように前記第一ビードが形成されてもよい。
)上記(1)または(2)に記載の自動車車体の構造部材では、前記第二ビードは、前記第二コーナ部から延在してもよい。
)上記(1)~()のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記第二ビードは、前記第一コーナ部まで延在してもよい。
)上記(1)~()のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記第一ビードの幅が5mm~20mmであり、前記第一ビードの深さが5mm~20mmであってもよい。
)上記(1)~()のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記第一ビードの深さ/幅で算出されるアスペクト比が0.25~4.0であってもよい。
)上記(1)~()のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記第二ビードの幅が10mm~60mmであり、前記第二ビードの深さが2mm~10mmであってもよい。
)上記(1)~()のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記第二ビードの深さ/幅で算出されるアスペクト比が0.05~1.0であってもよい。
)上記(1)~()のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記ハット型部材の前記天板部が板厚1.2mm以下の鋼板により形成されていてもよい。
10)上記(1)~()のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記ハット型部材の前記天板部が引張強さ980MPa以上の鋼板により形成されていてもよい。
11)上記(1)~(10)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記ハット型部材が焼き入れ部材であってもよい。
12)上記(1)~(11)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記接合部材が板厚1.2mm以下の鋼板であってもよい。
13)上記(1)~(12)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記接合部材が引張強さ980MPa以上の鋼板であってもよい。
14)上記(1)~(13)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記接合部材が焼き入れ部材であってもよい。
本発明によれば、曲げ圧潰部品の局部座屈モードの3点曲げ特性に関して、部品に生じる長手方向の応力、および高さ方向の応力のそれぞれに対する変形抵抗を高め、薄い板厚の素材を用いても、高い衝突安全性能を得ることができる。
(a)は局部座屈モードの3点曲げ特性を説明するための模式図であり、(b)は壁面座屈モードの3点曲げ特性を説明するための模式図であり、(c)はモーメント曲げ特性を説明するための模式図である。 第一実施形態に係る構造部材100を示す斜視図である。 図2のA-A’断面図である。 第一実施形態に係る構造部材100の概略底面図である。 図4の部分Bの拡大図である。 第一実施形態に係る構造部材100の変形後の状態を示す斜視図である。 第一変形例の構造部材100Aを示す斜視図である。 第二変形例の構造部材100Bを示す斜視図である。 第三変形例の構造部材100Cを示す斜視図である。 本発明の第二実施形態に係る構造部材200を示す斜視図である。 図10のB-B’断面図である。 第二実施形態に係る構造部材200の変形後の状態を示す斜視図である。 三点曲げ条件を説明するための模式図である。 実施例の結果を示すグラフである。
自動車部品の曲げ圧潰特性は、衝突の衝撃が部品の圧潰部に直接的に加わって変形する場合の3点曲げ特性と、衝突の衝撃が部品の圧潰部に間接的に加わって変形する場合のモーメント曲げ特性と、に大別される。
このうち、3点曲げ特性は、局部座屈モードの3点曲げ特性と、壁面座屈モードの3点曲げ特性と、に分類される。
局部座屈モードの3点曲げ特性及び壁面座屈モードの3点曲げ特性は、図1の(a)及び(b)に示すように、インパクタが部品に直接衝突する3点曲げ試験を行うことで得られる3点曲げ特性により評価することが多い。
局部座屈モードの3点曲げ特性では、3点曲げ試験において荷重を支持する支点間の距離が長い条件で、インパクタによる荷重負荷位置での屈曲変形が主体となる。
壁面座屈モードの3点曲げ特性では、3点曲げ試験において荷重を支持する支点間の距離が短い条件で、インパクタによる荷重負荷位置を中心に側壁が部品高さ方向に潰される変形が主体となる。
また、モーメント曲げ特性は、図1の(c)に示すように、部品の圧潰部にインパクタ等が接触しないモーメント曲げ試験を行うことで得られるモーメント曲げ特性で評価することが多い。
本発明者は、図1の(a)に示すような局部座屈モードの変形に対する衝突安全性能を高めるための部品形状について検討し、下記の知見を得た。
(あ)圧潰部がインパクタに接触する3点曲げでは、部品の長手方向の曲げ内側の圧縮応力と曲げ外側の引張応力に加えて、部品の高さ方向に圧縮応力が生じること。
(い)部品の高さ方向の圧縮応力は部品の側壁に生じることから、特に素材の板厚が薄い場合には、高さ方向の圧縮応力により側壁が容易に座屈変形してしまい、局部座屈モードを想定した部品であっても変形の初期において壁面座屈モードに近い変形状態になる場合があること。
(う)壁面座屈モードに近い変形状態になった場合、側壁の座屈変形が容易に生じると、壁面座屈モードとしての良好な3点曲げ特性が得られないだけでなく、側壁が潰れることで圧潰部の部品高さが減少して、長手方向に交差する断面の高さ方向の曲げ剛性が低下するため、その後の変形において局部座屈モードの変形状態になったとしても局部座屈モードとしての良好な3点曲げ特性も得られない場合があること。
(え)従って、曲げ内側の圧縮応力に対する変形抵抗、曲げ外側の引張応力に対する変形抵抗、及び、高さ方向の圧縮応力に対する変形抵抗を同時に高めることができる部品形状とすることで、局部座屈モードの変形における、特にストローク初期における耐荷重を向上することができ、従来よりも更に優れた衝突安全性能を発揮することが可能となること。
以下、上記知見に基づき完成された本発明について、実施形態に基づき詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
以下の説明において、構造部材の軸方向、すなわち、軸線が延びる方向を長手方向Zと呼称する。
また、長手方向Zに垂直な面における、天板部に平行な方向を幅方向Xと呼称し、長手方向Zと幅方向Xに垂直な方向を高さ方向Yと呼称する。
構造部材の軸線から離れる方向を外方と呼称し、その反対方向を内方と呼称する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係る自動車車体の構造部材100(以下、構造部材100と呼称する)について説明する。
まず、図2を参照して、構造部材100の概略構成について説明する。
図2に示すように、構造部材100は、ハット型部材110と接合部材120とにより構成される閉断面構造の部材である。構造部材100の適用例としては、バンパリーンフォース等が挙げられる。
本実施形態に係る構造部材100は、ハット型部材110が車内側に対向し、接合部材120が車外側に対向する姿勢で自動車に設置されることを想定した部品である。
(ハット型部材)
図3は、図2のA-A’断面図である。図3に示すように、ハット型部材110は、長手方向Zに沿って延在する天板部111と、天板部111の幅方向Xの両端に形成された第一コーナ部113,113を介して延在する一対の側壁部115,115と、一対の側壁部115,115における第一コーナ部113,113とは反対側の端部に形成された第二コーナ部117,117を介して延在する一対のフランジ部119,119とを有する。
ハット型部材110は、樹脂板、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)板、又は金属板(アルミ板、アルミ合金板、ステンレス板、チタン板、又は鋼板等)からなる部材であればよい。
ハット型部材110は、例えば、板材に冷間プレス加工又は温間プレス加工を施すことにより容易に成形され得る。
また、ハット型部材110は、鋼板をオーステナイト域の高温まで加熱した後に金型でプレス成形を実施すると同時に、その金型内において焼入れ処理を実施するホットスタンプ加工により成形されてもよい。従って、ハット型部材110は、焼き入れ部材であってもよい。
(天板部)
天板部111は、図1に示す局部座屈モードの3点曲げ試験における、インパクタが直接接触する部位の反対側に相当する。
本実施形態に係る構造部材100は、ハット型部材110が車内側に対向する姿勢で自動車に設置される。このため、車外側からの衝撃荷重が接合部材120に入力されて構造部材100に曲げ変形が生じると、天板部111には長手方向Zに沿う引張応力が発生する。 従って、天板部111により、長手方向Zに沿う引張応力に対する変形抵抗を高めることができるため、高い衝突安全性能を発揮することが可能となる。
天板部111は、軽量化の観点から、板厚1.2mm以下の鋼板により形成されていることが好ましく、板厚1.0mm以下の鋼板により形成されていることがより好ましい。 尚、天板部111の板厚の下限は特に限定されるものではなく、0.3mm以上であればよい。
更に、衝突安全性能の観点からは、天板部111は、引張強さが980MPa以上の鋼板により形成されていることが好ましく、引張強さが1470MPa以上の鋼板で形成されていることがより好ましい。
天板部111の幅は、後述する接合部材120の天板対向部123の幅Wを考慮して適宜設計すればよい。
(側壁部)
一対の側壁部115,115は、天板部111の幅方向Xの両端部に形成された第一コーナ部113,113を介して延在する。尚、第一コーナ部113,113は、例えば1mm~10mmの曲率半径のR部を有する。
本実施形態に係る構造部材100は、ハット型部材110が車内側に対向する姿勢で自動車に設置されるため、車外側からの衝撃荷重が接合部材120に入力されて構造部材100に曲げ変形が生じると、一対の側壁部115,115には長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力、すなわち、構造部材100の長手方向Zに垂直な断面における、側壁部115に沿う圧縮応力が発生する。
側壁部115に形成される第二ビード160については後述する。
側壁部115の板厚及び引張強さは、天板部111の引張強さ及び板厚と同じであればよい。
側壁部115の高さHは、20mm以上150mm以下であればよい。側壁部115の高さHは、図3に示すように、構造部材100の長手方向Zに垂直な断面における、側壁部115と第一コーナ部113との境界点と、側壁部115と第二コーナ部117との境界点との間の、高さ方向Yの離間距離である。尚、第二コーナ部117,117は、例えば1mm~10mmの曲率半径のR部を有する。
(フランジ部)
図2~図5に示すように、一対の側壁部115,115における、第一コーナ部113,113とは反対側の端部には、第二コーナ部117,117が形成される。一対のフランジ部119,119は、第二コーナ部117,117から外方に向けて延在するように形成される。
フランジ部119には、接合部材120に接合するためのスポット溶接部170が長手方向Zに所定のピッチで形成されている。なお、スポット溶接は接合するための手段の一例であり、レーザ溶接やろう付けであってもよい。
(接合部材)
以下、接合部材120について説明する。
接合部材120は、図1に示す局部座屈モードの3点曲げ試験における、インパクタが直接接触する部位に相当する。
接合部材120は、ハット型部材110に接合される部材である。本実施形態に係る構造部材100は、接合部材120が車外側に対向する姿勢で自動車に設置されるため、車外側からの衝撃荷重が接合部材120に入力されて構造部材100に曲げ変形が生じると、接合部材120には長手方向Zに沿う圧縮応力が発生する。
従って、接合部材120により、長手方向Zに沿う圧縮応力に対する変形抵抗を高めることができるため、高い衝突安全性能を発揮することが可能となる。
また、接合部材120は、ハット型部材110に接合されることにより、構造部材100に曲げ変形が生じた際に側壁部115が幅方向Xに開くことを防ぐことができる。従って、3点曲げ特性の低下を防ぎ、高い衝突安全性能を発揮することが可能となる。
図2、図3に示すように、本実施形態に係る構造部材100では、後述する二本の第一ビード150,150が形成された一枚の板材を接合部材120として用いる。
接合部材120は、樹脂板、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)板、又は金属板(アルミ板、アルミ合金板、ステンレス板、チタン板、又は鋼板等)からなる部材であればよい。
接合部材120の引張強さ及び板厚は、軽量化の観点から、板厚1.2mm以下の鋼板により形成されていることが好ましく、板厚1.0mm以下の鋼板により形成されていることがより好ましい。
尚、接合部材120の板厚の下限は特に限定されるものではなく、0.3mm以上であればよい。
更に、衝突安全性能の観点からは、接合部材120は、引張強さが980MPa以上の鋼板により形成されていることが好ましく、引張強さが1470MPa以上の鋼板で形成されていることがより好ましい。
接合部材120は、焼き入れ部材であってもよい。
図3に示すように、接合部材120は、幅方向Xの両端に設けられる一対の接合部121,121と、幅方向Xの中央に設けられる天板対向部123とを有する。
一対の接合部121,121は、スポット溶接等で接合されるハット型部材110の一対のフランジ部119,119が面接触する部位である。
天板対向部123は、接合部材120の接合部121を除く部位であって、ハット型部材110の天板部111に対向する部位である。天板部111は、天板対向部123を内方から支える構造ではない。すなわち、天板部111は、天板対向部123の内方の表面に接触していない。構造部材100の閉断面で囲まれる面積あたりの断面周長を小さくすることができるため、部材重量あたりで得られる3点曲げ特性(例えば最大荷重)を効率よく高めることができる。すなわち、軽量化が実現できる。
本実施形態に係る構造部材100では、接合部材120は一枚の板状の鋼板で構成されるため、接合部121と天板対向部123は面一で互いに隣接する領域である。
天板対向部123に形成される第一ビード150については後述する。
天板対向部123の幅Wは、40mm以上200mm以下であればよい。天板対向部123の幅Wは、天板部111の幅よりも大きいことが好ましい。この場合、一対の側壁部115,115は、第一コーナ部113,113から第二コーナ部117,117にかけて外方へ広がる方向に傾斜する。車外側からの衝撃荷重が接合部材120に入力された場合、第二ビード160が側壁部115に配置された条件では、一対の側壁部115,115は、第一コーナ部113,113の側が接近する方向に倒れやすくなるが、これを第一コーナ部113,113を介して天板部111が支えることができる。このため、ハット型部材110の長手方向Zに垂直な断面が潰れにくくなるとの効果が得られる。また、ハット型部材110をプレス成形する場合、高さ方向Yをプレス方向とした時の負角(アンダーカット)を無くすことができるため、成形加工が容易になるという効果も得られる。また、本実施形態に係る構造部材100は、ハット型部材110と接合部材120とにより構成されるので、閉断面で囲まれる面積あたりの断面周長を小さくすることができ、部材重量あたりで得られる3点曲げ特性(例えば最大荷重)を効率よく高めることができるという効果も得られる。
以下、第一ビードと第二ビードについて説明する。
(第一ビード)
天板対向部123には長手方向Zに沿って二本の第一ビード150,150が並列して形成される。
図3に示すように、第一ビード150は、天板対向部123の幅方向Xの中央部分において、天板対向部123から内方に向けて膨出するように形成される。
第一ビード150は、天板対向部123側の端部に所定の曲率半径のR部を有する場合がある。その場合、第一ビード150は、第一ビード150のR部を介して天板対向部123に繋がる。
このような第一ビード150が設けられることにより、接合部材120に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力に対する変形抵抗を高めることができる。これにより、構造部材100に曲げ変形が付与された際に、接合部材120での早期の座屈変形の発生が抑制されて最大荷重が増加する。
第一ビード150は、板材をプレス成形することにより成形することができる。
図3に示すように、第一ビード150は、一対のビード側壁151,151と、ビード底板152により形成されている。
一対のビード側壁151,151は、天板対向部123から屈曲して内方に向かって延在する。
ビード底板152は、一対のビード側壁151,151における天板対向部123とは反対側の端部間を繋ぐように延在する。
図3に示すように、第一ビード150は、所定の深さd1と所定の幅w1を有する。
第一ビード150の深さd1は、第一ビード150における、天板対向部123の外方の表面からビード底板152の外方の表面までの高さ方向Yの離間距離である。第一ビード150が長手方向Zに沿って深さが変化する形状である場合、天板対向部123からビード底板152までの高さ方向Yの離間距離の最大値を深さd1とする。
第一ビード150の深さd1が大きいほど、接合部材120に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力に対する変形抵抗を高めることができ、接合部材120での早期の座屈変形が抑制されて最大荷重が増加する。従って、第一ビード150の深さd1は5mm以上であることが好ましく、8mm以上であることが更に好ましい。
一方、第一ビード150の深さd1が大き過ぎると、第一ビード150の幅w1が相対的に小さい場合、第一ビード150の成形加工が困難になる場合もある。従って、第一ビード150の深さd1は20mm以下であることが好ましく、16mm以下であることが更に好ましい。
第一ビード150の幅w1は、長手方向Zに垂直な断面の天板対向部123の外方の表面における、第一ビード150の一方のビード側壁151を延長した仮想直線と天板対向部123を延長した仮想直線との交点と、第一ビード150の他方のビード側壁151を延長した仮想直線と天板対向部123を延長した仮想直線との交点と、の間の離間距離である。
第一ビード150が長手方向Zに沿って幅が変化する形状である場合、上記離間距離が最大となる断面における離間距離を幅w1とする。
第一ビード150の幅w1が小さいほど、接合部材120に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力に対する変形抵抗を高めることができ、接合部材120での早期の座屈変形が抑制されて最大荷重が増加する。従って、第一ビード150の幅w1は20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることが更に好ましい。
一方、第一ビード150の幅w1が小さ過ぎると、第一ビード150の深さd1が相対的に大きい場合、第一ビード150の成形加工が困難になる場合がある。このため、第一ビード150の幅w1は5mm以上であることが好ましく、8mm以上であることが更に好ましい。
尚、第一ビード150は、必ずしも天板対向部123の長手方向Zの全長に形成される必要はなく、天板対向部123の全長の一部において形成されていてもよい。第一ビード150が形成される位置としては、構造部材100の曲げ圧潰特性として最も強化すべき位置、例えば、インパクタが接触する位置(衝突荷重が入力する位置)及びその近傍が選択されてもよい。また、第一ビード150は長手方向Zの複数個所に形成されていてもよい。
上述のように、第一ビード150の深さd1と幅w1は、接合部材120に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力に対する変形抵抗に影響する。第一ビード150の幅w1に対する深さd1(深さd1/幅w1)で求められるアスペクト比A1が0.25以上4.0以下である場合、接合部材120に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力に対する変形抵抗を高める効果をより確実に発揮できるため好ましい。アスペクト比A1は0.5以上2.0以下であることが更に好ましい。
(第二ビード)
一対の側壁部115,115には長手方向Zに交差する方向に沿って複数の第二ビード160が並列して形成される。
図4は、本実施形態に係る構造部材100の概略底面図であり、図5は、図4の部分Bの拡大図である。
図4及び図5に示すように、第二ビード160は、側壁部115から内方に向けて膨出するように形成されている。
第二ビード160は、側壁部115側の端部に所定の曲率半径のR部を有する場合がある。その場合、第二ビード160は、第二ビード160のR部を介して側壁部115に繋がる。
このような第二ビード160が設けられることにより、側壁部115に発生する長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力に対する変形抵抗を高めることができる。これにより、側壁部115での早期の座屈変形が抑制されて最大荷重が増加する。
第二ビード160は、一対の側壁部115,115のそれぞれの側壁部115に形成されることが好ましい。これにより、第二ビード160が一方の側壁部115のみに形成される場合と比べて、側壁部115に発生する長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力に対する変形抵抗を更に高めることができる。
本実施形態に係る構造部材100では、第二ビード160は、第二コーナ部117から第一コーナ部113まで延在するように形成されている。
第二ビード160が、第二コーナ部117から延在するように形成されていることにより、第二ビード160が第二コーナ部117の高さ方向Yの変形抵抗にも寄与し、第二コーナ部117が潰れにくくなる。第二コーナ部117及び側壁部115が潰れにくくなることで、構造部材100の高さ減少に伴う、長手方向Zに交差する断面の高さ方向Yの曲げ剛性の低下を抑制し、局部座屈モードの3点曲げ特性の低下を防ぐことができるため、好ましい。
更に、第二ビード160が、第二コーナ部117から第一コーナ部113まで延在するように形成されていることにより、第二ビード160は第一コーナ部113の高さ方向Yの変形抵抗にも寄与し、第一コーナ部113も潰れにくくなる。よって、第一コーナ部113、側壁部115、及び第二コーナ部117が潰れにくくなるため、構造部材100の高さ減少に伴う、長手方向Zに交差する断面の高さ方向Yの曲げ剛性の低下を更に抑制し、局部座屈モードの3点曲げ特性の低下を更に防ぐことができるため、好ましい。尚、このように、第二ビード160が、第一コーナ部113まで延在するように形成されている場合には、第一コーナ部113は、長手方向Zに沿って、後述する第二ビード160のビード底板162の部位と、第二ビード160が形成されていない側壁部115の部位とによる段差が形成されることになる。
第二ビード160は、天板部111、側壁部115、及びフランジ部119をプレス成形する際に同一金型で同時成形してもよく、天板部111、側壁部115、及びフランジ部119をプレス成形する前に別の金型や工具で成形してもよい。
図5に示すように、第二ビード160は、一対のビード側壁161,161と、ビード底板162により形成されている。
一対のビード側壁161,161は、側壁部115から屈曲して内方に向かって延在する。
ビード底板162は、一対のビード側壁161,161における側壁部115とは反対側の端部間を繋ぐように延在する。
図5に示すように、第二ビード160は所定の深さd2と所定の幅w2を有する。
第二ビード160の深さd2は、第二ビード160における、側壁部115の外方の表面からビード底板162の外方の表面までの幅方向Xの離間距離である。第二ビード160が長手方向Zに交差する方向に沿って深さが変化する形状である場合、側壁部115からビード底板162までの幅方向Xの離間距離の最大値を深さd2とする。
第二ビード160の深さd2が大きいほど、側壁部115に発生する長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力に対する変形抵抗をより高めることができる。従って、第二ビード160の深さd2は2mm以上であることが好ましく、4mm以上であることが更に好ましい。
一方、第二ビード160の深さd2が大き過ぎると、構造部材100の幅方向Xの寸法が局所的に小さい値になり、長手方向Zに交差する断面における曲げ剛性が小さくなり過ぎて、所望の3点曲げ特性が得られなくなる場合がある。また、後述するように、第一ビード150を天板対向部123の幅方向Xの端部近傍部分に形成する構成では、第二ビード160の深さd2が大き過ぎると、所望の位置に第一ビード150を形成できなくなる場合がある。更に、第二ビード160の深さd2が大き過ぎると、第二ビード160の幅w2が相対的に小さい場合、第二ビード160の成形加工が困難になる場合もある。従って、第二ビード160の深さd2は10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることが更に好ましい。
複数の第二ビード160は、側壁部115の長手方向Zに50mm以下のビード間距離で形成されていることが好ましく、30mm以下のビード間距離で形成されていることが更に好ましい。この場合、側壁部115に発生する長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力に対する変形抵抗をより高めることができる。尚、ビード間距離とは、図5に示すように、第二ビード160の一方の端部と、隣接する第二ビード160の他方の端部との間の離間距離を意味する。
尚、複数の第二ビード160は、側壁部115の全長に亘り形成される必要はなく、側壁部115の全長の一部において形成されていればよい。複数の第二ビード160が形成される位置としては、構造部材100の曲げ圧潰特性として最も強化すべき位置、例えば、インパクタが接触する位置及びその近傍が選択されてもよい。
また、複数の第二ビード160は、側壁部115に均等のビード間距離で並んで形成される必要はなく、例えば、三本の第二ビード160が形成される場合、二つのビード間距離は異なる値であってよい。
更に、複数の第二ビード160は、一対の側壁部115,115において、必ずしも長手方向Zの同じ位置に形成される必要はない。例えば一方の側壁部115に形成された第二ビード160と同じ長手方向Zの位置において、他方の側壁部115には第二ビード160が形成されていなくてもよい。
第二ビード160の幅w2は、高さ方向Yに垂直な断面の側壁部115の外方の表面における、第二ビード160の一方のビード側壁161を延長した仮想直線と側壁部115を延長した仮想直線との交点と、第二ビード160の他方のビード側壁161を延長した仮想直線と側壁部115を延長した仮想直線との交点と、の間の離間距離である。
第二ビード160が長手方向Zに交差する方向に沿って幅が変化する形状である場合、上記離間距離が最大となる断面における離間距離を幅w2とする。
第二ビード160の幅w2が小さいほど、側壁部115に発生する長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力に対する変形抵抗をより高めることができる。従って、第二ビード160の幅w2は60mm以下であることが好ましく、40mm以下であることが更に好ましい。
一方、第二ビード160の幅w2が小さ過ぎると、第二ビード160の深さd2が相対的に大きい場合、第二ビード160の成形加工が困難になる場合がある。従って、第二ビード160の幅w2は10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることが更に好ましい。
上述のように、第二ビード160の深さd2と幅w2は、側壁部115に発生する長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力に対する変形抵抗に影響する。第二ビード160の幅w2に対する深さd2(深さd2/幅w2)で求められるアスペクト比A2が0.05以上1.0以下である場合、側壁部115に発生する長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力に対する変形抵抗を高める効果をより確実に発揮できるため好ましい。アスペクト比A2は0.1以上0.5以下であることが更に好ましい。
以上説明した本実施形態に係る構造部材100は、長手方向Zに垂直な断面において、第一ビード150、150と、一対の側壁部115,115の少なくとも一方に第二ビード160と、を形成する垂直断面部位を有する。本実施形態に係る構造部材100によれば、車外側からの衝撃荷重が接合部材120に入力されて構造部材100に曲げ変形が生じた際には、図6に示すように、接合部材120に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗と、側壁部115に発生する長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗と、天板部111に発生する長手方向Zに沿う引張応力(C)に対する変形抵抗と、を複合的に発揮することができる。これにより、特にストローク初期における耐荷重が向上し、衝突安全性能を高めることができる。
尚、変形抵抗は板材が薄いほど低くなるため、従来は、薄肉化による変形抵抗の減少が、薄肉高強度の材料利用による軽量化の障壁の一つになっていた。即ち、例えば接合部材120の長手方向Zにおける変形抵抗を高強度化や部品形状の工夫等により高めたとしても、薄肉化により側壁部115が撓み変形等で容易に座屈変形してしまうと、構造部材100は良好な3点曲げ特性を発揮できない。また、逆に側壁部115の長手方向Zに交差する方向における変形抵抗を高強度化や部品形状の工夫等により高めたとしても、薄肉化により接合部材120が撓み変形等で容易に座屈変形してしまうと、構造部材100は良好な3点曲げ特性を発揮できない。本実施形態に係る構造部材100によれば、上記のように、天板部111と側壁部115と接合部材120における変形抵抗を複合的に発揮することができるため、薄肉高強度の材料を利用しても優れた衝突安全性能を発揮することが可能となる。
(第一変形例)
第一実施形態に係る構造部材100では、二本の第一ビードが天板対向部123に形成されているが、図7に示す第一変形例の構造部材100Aのように、一本の第一ビード150Aが天板対向部123に形成されていてもよい。
(第二変形例)
第一実施形態に係る構造部材100では、第二ビード160は、第二コーナ部117から第一コーナ部113に亘り形成されているが、図8に示す第二変形例の構造部材100Bのように、側壁部115の高さ方向の中央のみに第二ビード160Bが形成されていてもよい。
また、第二ビード160は、第二コーナ部117から側壁部115の高さ方向の途中まで延在してもよく、第一コーナ部113から側壁部115の高さ方向の途中まで延在してもよい。
(第三変形例)
第一実施形態に係る構造部材100では、一枚の鋼板に第一ビードを形成したものを接合部材120として用いるが、図9に示す第三変形例の構造部材100Cのように、接合部としての一対のフランジ部121C,121Cと、第一ビードを形成した天板対向部としての天板部123Cと、フランジ部121Cと、天板部123Cとの間に形成された側壁部と、を有するハット型部材を接合部材120Cとして用いてもよい。この場合、接合部材120Cの天板部123Cが、第一実施形態に係る構造部材100における天板対向部123に対応する。尚、図9に示す例では接合部材120Cの側壁部は平面であるが、高さ方向に延びるビードが形成されていてもよい。
尚、図9に示す例では、天板対向部としての天板部123Cに、それぞれの第一ビードの幅方向Xの両端部が存在するが、それぞれの第一ビードの幅方向Xの一方の端部が天板対向部としての天板部123Cに存在し、他方の端部が側壁部に存在するように形成されていてもよい。すなわち、第一ビードの幅方向Xの一部のみが、天板対向部としての天板部123Cに存在してもよい。
本実施形態に係る構造部材100は、長手方向Zに沿って一様の断面を有しているが、長手方向Zに沿って異なる断面を有してもよい。例えば、構造部材100は、長手方向Zに湾曲していてもよく、長手方向Zに垂直な断面が変化してもよい。
本実施形態に係る構造部材100では、第一ビード150及び第二ビード160の断面が台形形状であるが、断面は矩形状、半円形状、又は楔形状であってもよい。
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態に係る構造部材200について説明する。
第一実施形態に係る構造部材100では、接合部材120の天板対向部123の幅方向Xの中央部分に、第一ビード150を形成する構成としている。
本実施形態に係る構造部材200では、接合部材の天板対向部の幅方向Xの端部近傍部分に、第一ビードを形成する点で、第一実施形態に係る構造部材100と異なる。
ハット型部材110など、第一実施形態での説明と重複する構成については同一符号を用いて説明を省略する。
まず、図10を参照して、本実施形態に係る構造部材200の概略構成について説明する。
図10に示すように、構造部材200は、ハット型部材110と接合部材220とにより構成される閉断面構造の部材である。構造部材200の適用例としては、バンパリーンフォース等が挙げられる。
本実施形態に係る構造部材200は、第一実施形態に係る構造部材100と同様、ハット型部材110が車内側に対向し、接合部材220が車外側に対向する姿勢で自動車に設置されることを想定した部品である。
(接合部材)
図11は、図10のB-B’断面図である。図11に示すように、接合部材220は、幅方向Xの両端に設けられる一対の接合部221,221と、幅方向Xの中央に設けられる天板対向部223とを有する。
(第一ビード)
天板対向部223には長手方向Zに沿って二本の第一ビード250,250が幅方向Xに並列して形成される。
図11に示すように、それぞれの第一ビード250,250は、天板対向部223の幅方向Xの両端の近傍部分Pにおいて、第一ビード250の幅方向の中心が配置されるように、且つ、天板対向部223から内方に向けて膨出するように形成される。
より具体的には、近傍部分Pは、構造部材200の長手方向Zに垂直な断面における、接合部材220の接合部221の内側の端部から、幅方向Xに天板対向部223の幅Wの1/4の離間距離となる点までの領域である。尚、接合部221の内側の端部とは、構造部材200の長手方向Zに垂直な断面における、接合部221の幅方向Xの2つの端部のうち、構造部材200の軸線に近い方の端部である。
別の観点からは、それぞれの第一ビード250,250は、長手方向Zに垂直な断面において、接合部材220の接合部221の内側の端部から、20mmの離間距離となる点までの領域に、第一ビード250と接合部材220との境界点が位置するように、天板対向部223から内方に向けて膨出するように形成されてもよい。
(第二ビード)
第一実施形態における説明の通り、ハット型部材110の一対の側壁部115,115には長手方向Zに交差する方向に沿って複数の第二ビード160が並列して形成される。
以上説明した本実施形態に係る構造部材200は、長手方向Zに垂直な断面において、第一ビード250,250と、一対の側壁部115,115の少なくとも一方に第二ビード160と、を形成する垂直断面部位を有する。本実施形態に係る構造部材200によれば、車外側からの衝撃荷重が接合部材220に入力されて構造部材200に曲げ変形が生じた際には、図12に示すように、接合部材220に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗と、側壁部115に発生する長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗と、天板部111に発生する長手方向Zに沿う引張応力(C)に対する変形抵抗と、を複合的に発揮することができる。
特に、第一ビード250は、天板対向部223の幅方向Xの両端の近傍部分Pにおいて形成されていることから、第二コーナ部117と第一ビード250とが近い距離で配置される。従って、第二コーナ部117から第一ビード250までの領域において、長手方向Zに交差する断面の高さ方向Yの曲げ剛性を効果的に向上することができる。また、第二コーナ部117は、接合部材220と同様、構造部材200に曲げ変形が生じた際には長手方向Zの圧縮応力が発生する部位であるため、側壁部115に形成された第二ビード160が第二コーナ部117の近傍まで延びている場合には、第二コーナ部117の長手方向Zの圧縮応力への変形抵抗が弱まる。しかしながら、本実施形態に係る構造部材200によれば、第一ビード250が第二コーナ部117の近傍に形成されていることにより、第二コーナ部117の長手方向Zの圧縮応力への変形抵抗が弱まることを効率よく補うことができる。このため図12に示すように、接合部材220に早期に大きな撓み変形を生じさせることがなく、さらに側壁部115の撓みも抑制することができる。このため、ストローク初期における耐荷重を飛躍的に向上することができ、第一実施形態に係る構造部材100と比較して更に衝突安全性能を高めることができる。
(実施例)
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
実施例1~7として、板厚0.8mm、引張強さ2.5GPa級の鋼板を適用したハット型部材と、板厚0.8mm、引張強さ2.5GPa級の鋼板を適用した接合部材により構成された構造部材のシミュレーションモデルを準備した。
構造部材のシミュレーションモデルについて、第一ビードと第二ビードを適宜付与し、3点曲げを想定したシミュレーションによりストローク初期の最大荷重を評価した。基本条件は下記の通りである。尚、本実施例では、第一ビードのビード側壁の傾斜角は、ハット型部材の側壁部の傾斜角と同じ角度とした。
天板対向部の幅W:130mm
側壁部の高さH:60mm
第一コーナ部の曲率半径(曲げ内側):5mm
第二コーナ部の曲率半径(曲げ内側):5mm
構造部材の全長L:800mm
スポット溶接:40mmピッチ
天板部の幅:90mm
3点曲げ条件は、図13に示すように、インパクタの曲率半径を50mm、支持台の離間距離を700mmに設定した。ビード付与条件とストローク初期の最大荷重の評価結果を表1に示す。
Figure 0007376836000001
実施例1~4では、第一ビードと第二ビードとを複合的に形成させていないため、変形抵抗の向上効果を発揮できなかった。
一方、第一ビードと第二ビードとを複合的に形成している実施例5~7では、接合部材に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力に対する変形抵抗と、側壁部に発生する長手方向Zに交差する方向に沿う圧縮応力に対する変形抵抗と、天板部に発生する長手方向Zに沿う引張応力に対する変形抵抗と、が複合的に発揮され、ストローク初期における耐荷重が向上した。
更に、実施例6と実施例7とを比較すると、両端部に一本ずつ第一ビードを配置した実施例7では、中央部に二本の第一ビードを配置した実施例6と比較してストローク初期における耐荷重が1.2倍以上高まることが示された。
更に、実施例1Aとして、実施例1のハット型部材と接合部材を、板厚1.6mm、引張強さ2.5GPaの鋼板を適用したハット型部材に変更した構造部材のシミュレーションモデルについて、3点曲げを想定したシミュレーションによりストローク初期の最大荷重を評価した。
同様に、実施例4A、6A、7Aとして、実施例4、6、7のハット型部材と接合部材を、板厚1.6mm、引張強さ2.5GPaの鋼板を適用したハット型部材に変更した構造部材のシミュレーションモデルについて、3点曲げを想定したシミュレーションによりストローク初期の最大荷重を評価した。
そして、実施例1Aで得られた最大荷重を基準値1.0とした場合の、実施例4A、6A、7Aで得られた最大荷重の比率を算出した。
更に、実施例1Bとして、実施例1のハット型部材と接合部材を、板厚0.8mm、引張強さ1.5GPaの鋼板を適用したハット型部材に変更した構造部材のシミュレーションモデルについて、3点曲げを想定したシミュレーションによりストローク初期の最大荷重を評価した。
同様に、実施例4B、6B、7Bとして、実施例4、6、7のハット型部材と接合部材を、板厚0.8mm、引張強さ1.5GPaの鋼板を適用したハット型部材に変更した構造部材のシミュレーションモデルについて、3点曲げを想定したシミュレーションによりストローク初期の最大荷重を評価した。
そして、実施例1Bで得られた最大荷重を基準値1.0とした場合の、実施例4B、6B、7Bで得られた最大荷重の比率を算出した。
更に、実施例1Cとして、実施例1のハット型部材と接合部材を、板厚1.6mm、引張強さ1.5GPaの鋼板を適用したハット型部材に変更した構造部材のシミュレーションモデルについて、3点曲げを想定したシミュレーションによりストローク初期の最大荷重を評価した。
同様に、実施例4C、6C、7Cとして、実施例4、6、7のハット型部材と接合部材を、板厚1.6mm、引張強さ1.5GPaの鋼板を適用したハット型部材に変更した構造部材のシミュレーションモデルについて、3点曲げによりストローク初期の最大荷重を評価した。
そして、実施例1Cで得られた最大荷重を基準値1.0とした場合の、実施例4C、6C、7Cで得られた最大荷重の比率を算出した。
評価結果を表2に示す。
Figure 0007376836000002
図14は表2の結果を纏めて示すグラフである。このグラフから、本発明によれば、板厚や強度によらず、ストローク初期において優れた耐荷重が発揮できること、及び、天板対向部の両端部に一本ずつの第一ビードを配置した場合には、薄肉化した場合により高い耐荷重が発揮できることが示された。
また、ハット型部材と接合部材を薄肉化した場合であっても、板厚低下による変形抵抗の減少を抑制することができ、薄肉高強度の素材を用いても優れた衝突安全性能を発揮することが可能となることが示された。
更には、ハット型部材と接合部材を薄肉化した場合において変形抵抗の減少を抑制する効果は、天板対向部の両端部に一本ずつの第一ビードを配置した実施例7と実施例7Bにおいて顕著であることが示された。
本発明によれば、局部座屈モードの変形のストローク初期における耐荷重を向上させることで優れた衝突安全性能を発揮することが可能な構造部材を提供することができる。
100、100A、100B、100C、200 構造部材
110 ハット型部材
111 天板部
113 第一コーナ部
115 側壁部
117 第二コーナ部
119 フランジ部
120、120C 接合部材
121、221 接合部
121C フランジ部
123、223 天板対向部
123C 天板部
150、150A、250 第一ビード
160、160B 第二ビード

Claims (14)

  1. 長手方向に延びる天板部と、
    前記天板部の幅方向の両端部に形成された第一コーナ部を介して延在する一対の側壁部と、
    前記一対の側壁部における前記第一コーナ部とは反対側の端部に形成された第二コーナ部を介して延在する一対のフランジ部と、
    を有するハット型部材と、
    前記ハット型部材の前記一対のフランジ部に接合される一対の接合部と、
    前記ハット型部材の前記天板部に対向する天板対向部と、
    を有する接合部材と、
    を備え、
    前記天板対向部に、前記長手方向に沿って延在する第一ビードが形成され、
    前記第一ビードが二本以上、前記幅方向に並列して形成され、
    前記長手方向に垂直な断面において、前記接合部材の前記接合部の内側の端部から、前記幅方向に前記天板対向部の幅の1/4の離間距離となる点までの領域に、前記第一ビードの前記幅方向の中心が位置するように前記第一ビードが形成され、
    前記一対の側壁部に、前記長手方向に交差する方向に沿って延在する第二ビードが二本以上形成される
    ことを特徴とする自動車車体の構造部材。
  2. 前記長手方向に垂直な断面において、前記接合部材の前記接合部の内側の端部から、20mmの離間距離となる点までの領域に、前記第一ビードと前記接合部材との境界点が位置するように前記第一ビードが形成される
    ことを特徴とする請求項に記載の自動車車体の構造部材。
  3. 前記第二ビードは、前記第二コーナ部から延在する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車車体の構造部材。
  4. 前記第二ビードは、前記第一コーナ部まで延在する
    ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
  5. 前記第一ビードの幅が5mm~20mmであり、
    前記第一ビードの深さが5mm~20mmである
    ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
  6. 前記第一ビードの深さ/幅で算出されるアスペクト比が0.25~4.0である
    ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
  7. 前記第二ビードの幅が10mm~60mmであり、
    前記第二ビードの深さが2mm~10mmである
    ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
  8. 前記第二ビードの深さ/幅で算出されるアスペクト比が0.05~1.0である
    ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
  9. 前記ハット型部材の前記天板部が板厚1.2mm以下の鋼板により形成されている
    ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
  10. 前記ハット型部材の前記天板部が引張強さ980MPa以上の鋼板により形成されている
    ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
  11. 前記ハット型部材が焼き入れ部材である
    ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
  12. 前記接合部材が板厚1.2mm以下の鋼板である
    ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
  13. 前記接合部材が引張強さ980MPa以上の鋼板である
    ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
  14. 前記接合部材が焼き入れ部材である
    ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
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