JP7374557B2 - 変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に搭載される変速機に関する。
走行用の駆動源としてエンジンを搭載した車両では、そのエンジンの動力が変速機を介して駆動輪に伝達される。エンジンの搭載方式には、クランクシャフトが車体の前後方向に対して縦向きになる縦置きと横向きになる横置きとがある。FF(Front-engine Front-wheel-drive:フロントエンジン・フロントドライブ)レイアウトが採用された車両では、たとえば、エンジンコンパートメントの前後方向のサイズの縮小による車室長の拡大のため、エンジンが横置きで搭載されることが多い。一方、FR(Front-engine Rear-wheel-drive:フロントエンジン・リヤドライブ)レイアウトが採用された車両では、駆動輪である後輪への動力の伝達のしやすさなどから、エンジンが縦置きで搭載されることがある。
一方、車両に搭載される変速機として、たとえば、ベルト式のCVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)が広く知られている。ベルト式のCVTでは、エンジンからの動力が入力される入力軸が無段変速機構のプライマリ軸に動力を伝達可能に接続されており、入力軸に入力される動力は、入力軸からプライマリ軸に伝達される。無段変速機構では、セカンダリ軸がプライマリ軸と間隔を空けて平行に配置されて、プライマリ軸に支持されるプライマリプーリとセカンダリ軸に支持されるセカンダリプーリとの間に無端状のベルトが巻き掛けられている。これにより、入力軸からプライマリ軸に伝達される動力は、プライマリプーリからベルトに伝達され、ベルトからセカンダリプーリに伝達される。そして、セカンダリプーリに伝達される動力がセカンダリ軸を介して出力軸に伝達され、出力軸からデファレンシャルギヤを介して左右の駆動輪に動力が伝達される。
入力軸は、エンジン側およびその反対側に延びるように配置される。入力軸のエンジン側と反対側の端部は、ボールベアリングなどの軸受を介して、変速機の外殻をなすケースに回転可能に支持される。軸受では、部品同士の摩擦(たとえば、軌道輪と転動体との摩擦)が生じるので、潤滑のためのオイルの供給が不可欠である。そのため、従来は、各部への油圧の供給を制御するためのバルブボディから軸受に至る油路がケースに設けられ、その油路を通して軸受にオイルが供給されることにより、軸受が強制的に潤滑されている(たとえば、特許文献1参照)。
特開2013-257046号公報
ところが、その軸受潤滑用の油路を設ける構成では、ケースの粗材の質量が大きくなり、変速機の質量が大きくなる。また、材料コストがかかるうえ、油路を形成する加工にコストがかかるという問題もある。
本発明の目的は、軽量化および低コスト化を図ることができる、変速機を提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明に係る変速機は、車両に搭載される変速機であって、駆動源側となる第1側およびその反対側の第2側に延び、駆動源からの動力が入力される入力軸と、入力軸を受ける軸受と、軸受を支持する軸受支持部材と、を含み、軸受支持部材には、第1側に開放され、軸受が嵌入される軸受凹部と、下側に凹む凹状をなし、オイルを受けるオイル受部と、軸受凹部内とオイル受部内とを連通する連通穴と、が形成されている。
この構成によれば、軸受支持部材に、第1側に開放される軸受凹部が形成されており、入力軸を受ける軸受は、軸受凹部に嵌入されて支持される。軸受支持部材には、下側に凹む凹状のオイル受部と、このオイル受部内と軸受凹部内とを連通する連通穴とがさらに形成されている。変速機内の各部には、潤滑のためのオイルが供給され、各部に供給されたオイルは、その供給先の部材を伝って、その部材から滴下する。オイル受部は、その上側に配置された部材から滴下するオイルを受けることができる。そして、オイル受部で受けられたオイルが連通穴を通して軸受凹部内に流入することにより、軸受凹部内に嵌入されている軸受が潤滑される。したがって、バルブボディから軸受に潤滑のためのオイルを供給する軸受潤滑用の油路を変速機のケースに形成する必要がない。そのため、ケースの素材の質量を低減でき、これにより、変速機の軽量化を図ることができる。また、軸受潤滑用の油路をケースに形成するのに要する加工コストを削減できるので、変速機の低コスト化を図ることができる。
変速機は、入力軸とそれぞれ平行に延びるプライマリ軸およびセカンダリ軸を有し、プライマリ軸からセカンダリ軸に動力を変速して伝達する無段変速機構と、入力軸と平行に延び、車両の後進時に入力軸から伝達される動力をセカンダリ軸に伝達するリバースアイドラ軸と、をさらに含み、プライマリ軸およびセカンダリ軸は、入力軸の軸線方向から見て、入力軸に対して左右に分かれて配置され、リバースアイドラ軸は、入力軸の上側に配置されている。
この構成によれば、車両の前進時または後進時に、プライマリ軸およびセカンダリ軸が回転すると、プライマリ軸またはセカンダリ軸から遠心力で飛散するオイルの飛沫がリバースアイドラ軸に供給され、そのリバースアイドラ軸に供給されたオイルがリバースアイドラ軸から滴下してオイル受部に受けられる。そのため、オイル受部にオイルを効率的に集めることができる。その結果、オイル受部から連通穴を通して軸受にオイルを良好に供給でき、軸受をオイルで良好に潤滑させることができる。
しかも、入力軸に対して、プライマリ軸とセカンダリ軸とが入力軸の軸線方向から見て左右に分かれて配置されている。これにより、プライマリ軸とセカンダリ軸との上下方向の軸間距離を短くすることができる。その結果、変速機の上下方向のサイズを小さくすることができ、商用車などの車室が低床化された車両であっても、その車両への変速機の搭載を車両の最低地上高を確保しつつ可能とすることができる。変速機の小型化により、変速機の軽量化を図ることができる。
変速機の軽量化により、ひいては、変速機が搭載された車両の燃費の向上を図ることができる。
本発明によれば、変速機の軽量化および低コスト化を図ることができる。
本発明の一実施形態に係る変速ユニットの構成を示す断面図である。 CVTの構成を図解的に示すスケルトン図である。 第2トランスミッションケース内のオイルポンプ付近を前側から見た図である。 図3に示される切断面線A-Aにおける入力軸の後端部、ならびにオイルポンプのポンプケースおよびポンプ軸の断面図である。
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<変速ユニット>
図1は、本発明の一実施形態に係る変速ユニット1の構成を示す断面図である。なお、図1以降の断面図では、断面を表すハッチングの付与が省略されている。
変速ユニット1は、車両に搭載されて、走行用の駆動源としてのエンジン2(E/G)2が発生する動力を変速するユニットである。車両は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)レイアウトを採用している。
エンジン2は、たとえば、3気筒4ストロークエンジンであり、クランクシャフトが車体の前後方向に対して縦向きになる縦置きで搭載される。エンジン2の気筒数は、3気筒に限らず、4気筒以上であってもよいし、2気筒以下であってもよい。また、エンジン2のストローク数は、4ストロークに限らず、2ストロークであってもよい。
変速ユニット1は、外殻をなすユニットケース3内に、トルクコンバータ4およびCVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)5を備えている。
<ユニットケース>
ユニットケース3は、第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13の3分割で構成されている。第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13は、たとえば、アルミ合金製であり、ダイカスト法によって鋳造される。
第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13は、前側(エンジン2側)からこの順に並べられている。第1トランスミッションケース11と第2トランスミッションケース12とがボルト16で締結され、第2トランスミッションケース12と第3トランスミッションケース13とがボルト17で締結されることにより、第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13は、一体化されている。
<トルクコンバータ>
トルクコンバータ4は、第1トランスミッションケース11内に収容されている。トルクコンバータ4は、フロントカバー21、ポンプインペラ22、タービンハブ23、タービンランナ24、ロックアップ機構25およびステータ26を備えている。
フロントカバー21は、車両(車体)の前後方向に延びる回転軸線を中心に略円板状に延び、その外周端部がエンジン2側と反対側(後述する無段変速機構42側)である後側に屈曲した形状をなしている。フロントカバー21の中心部は、前側に膨出している。この膨出した部分には、エンジン2のクランクシャフトが相対回転不能に結合される。
ポンプインペラ22は、フロントカバー21の後側に配置されている。ポンプインペラ22の外周端部は、フロントカバー21の外周端部に接続され、回転軸線を中心にフロントカバー21と一体回転可能に設けられている。ポンプインペラ22の内面には、複数のブレード27が放射状に並べて配置されている。
タービンハブ23は、フロントカバー21とポンプインペラ22との間に配置されている。
タービンランナ24は、タービンハブ23に固定されている。タービンランナ24のポンプインペラ22との対向面には、複数のブレード28が放射状に並べて配置されている。
ロックアップ機構25は、ロックアップピストン31およびダンパ機構32を備えている。
ロックアップピストン31は、略円環板状をなし、その内周端部がタービンハブ23に外嵌されて、フロントカバー21とタービンランナ24との間に位置している。ロックアップピストン31に対してタービンランナ24側の係合側油室33の油圧がフロントカバー21側の解放側油室34の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン31がフロントカバー21側に移動する。そして、ロックアップピストン31がフロントカバー21に押し付けられると、ポンプインペラ22とタービンランナ24とが直結(ロックアップオン)される。逆に、解放側油室34の油圧が係合側油室33の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン31がタービンランナ24側に移動する。ロックアップピストン31がフロントカバー21から離間した状態では、ポンプインペラ22とタービンランナ24との直結が解除(ロックアップオフ)される。
ダンパ機構32は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との直結時にエンジン2からの振動を減衰するための機構である。
ステータ26は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との間に配置されている。
ロックアップオフの状態において、エンジントルクによりポンプインペラ22が回転すると、ポンプインペラ22からタービンランナ24に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ24のブレード28で受けられて、タービンランナ24が回転する。このとき、トルクコンバータ4の増幅作用が生じ、タービンランナ24には、エンジントルクよりも大きなトルクが発生する。
<CVT>
CVT5は、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13内に収容されている。CVT5は、入力軸41、無段変速機構42、出力軸43およびリバース伝達機構44を備えている。変速ユニット1は、エンジン2の後側に、CVT5の入力軸41が車両の前後方向に延びる縦向きとなる縦置きで配置されている。
入力軸41は、中空軸に形成されて、トルクコンバータ4の回転軸線上を延びている。入力軸41の前端部は、トルクコンバータ4内に挿入されて、タービンハブ23とスプライン嵌合している。
なお、以下の説明において、入力軸41の軸線が延びる方向を「軸線方向」という。また、軸線方向と直交する方向、つまり入力軸41の径方向を「軸径方向」という。
入力軸41の後端部は、第2トランスミッションケース12内に配置された機械式のオイルポンプ45に回転可能に支持されている。具体的には、オイルポンプ45は、ポンプケース46と、ポンプケース46に後側から接合されるポンプカバー47と、ポンプケース46内のスペースに配置されるポンプギヤ48と、ポンプギヤ48に相対回転不能に結合されるポンプ軸49とを備えている。ポンプカバー47は、第2トランスミッションケース12に固定され、ポンプケース46内のスペースを後側から閉鎖している。ポンプケース46の前端部には、前側に開放されて、後側に略円柱状に凹んだ軸受凹部51が形成されている。入力軸41の後端部は、軸受凹部51内に挿入されて、入力軸41の周面と軸受凹部51の内周面との間に介在されるラジアルベアリング52を介してポンプケース46に回転可能に支持されている。言い換えれば、入力軸41の後端部にラジアルベアリング52が外嵌され、そのラジアルベアリング52が軸受凹部51に嵌入されることにより、入力軸41の後端部は、ラジアルベアリング52を介してポンプケース46に回転可能に支持されている。
また、入力軸41の後側の端面と軸受凹部51の底面との間には、スラストベアリング53が介在されている。これにより、入力軸41の回転時におけるメカニカルロスが低減される。
ポンプ軸49は、ポンプケース46およびポンプカバー47を貫通して設けられている。ポンプ軸49は、ポンプケース46から前側に延び、入力軸41にその内周面との間に隙間を空けて挿通されている。ポンプ軸49の前端部は、トルクコンバータ4のフロントカバー21に達し、そのフロントカバー21の中心部に相対回転不能に接続されている。これにより、エンジン2の動力によりフロントカバー21が回転すると、フロントカバー21と一体にポンプ軸49およびポンプギヤ48が回転し、オイルポンプ45から油圧が発生する。
無段変速機構42は、プライマリ軸54、セカンダリ軸55、プライマリプーリ56、セカンダリプーリ57およびベルト58を備えている。
プライマリ軸54およびセカンダリ軸55は、第1トランスミッションケース11と第2トランスミッションケース12との間において、入力軸41と平行に延び、その軸心まわりに回転可能に設けられている。
プライマリプーリ56は、プライマリ軸54に固定されたプライマリ固定シーブ61と、プライマリ固定シーブ61にベルト58を挟んで対向配置され、プライマリ軸54に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたプライマリ可動シーブ62とを備えている。プライマリ可動シーブ62は、プライマリ固定シーブ61に対して前側に配置されている。プライマリ可動シーブ62に対してプライマリ固定シーブ61側と反対側、つまり前側には、シリンダ63が設けられ、プライマリ可動シーブ62とシリンダ63との間には、油圧室(ピストン室)64が形成されている。
セカンダリプーリ57は、セカンダリ軸55に固定されたセカンダリ固定シーブ65と、セカンダリ固定シーブ65にベルト58を挟んで対向配置され、セカンダリ軸55に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたセカンダリ可動シーブ66とを備えている。セカンダリ可動シーブ66は、セカンダリ固定シーブ65に対して後側に配置されている。セカンダリ可動シーブ66に対してセカンダリ固定シーブ65と反対側、つまり後側には、ピストン67が設けられ、セカンダリ可動シーブ66とピストン67との間には、油圧室68が形成されている。
ベルト58は、無端状に形成され、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間に挟まれた状態でプライマリプーリ56に巻き掛けられるとともに、セカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間に挟まれた状態でセカンダリプーリ57に巻き掛けられている。
無段変速機構42では、プライマリプーリ56およびセカンダリプーリ57の各油圧室64,68に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ56およびセカンダリプーリ57の各溝幅が変更されることにより、ベルト変速比(プライマリプーリ56とセカンダリプーリ57とのプーリ比)が一定の変速比範囲内で連続的に無段階で変更される。
具体的には、ベルト変速比が小さくされるときには、プライマリプーリ56の油圧室64に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ56のプライマリ可動シーブ62がプライマリ固定シーブ61側に移動し、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ56に対するベルト58の巻き掛け径が大きくなり、セカンダリプーリ57のセカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、ベルト変速比が小さくなる。
ベルト変速比が大きくされるときには、プライマリプーリ56の油圧室64に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト58に対するセカンダリプーリ57の推力がベルト58に対するプライマリプーリ56の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ57のセカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間隔が小さくなるとともに、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間隔が大きくなる。その結果、ベルト変速比が大きくなる。
セカンダリプーリ57の油圧室68には、バイアススプリング69が設けられている。バイアススプリング69は、一端がセカンダリ可動シーブ66に弾性的に当接し、他端がピストン67に弾性的に当接している。バイアススプリング69の弾性力により、セカンダリ可動シーブ66およびピストン67が互いに離間する方向に付勢されている。セカンダリ可動シーブ66には、油圧室68内の油圧およびバイアススプリング69による付勢力が付与され、ベルト58には、それに応じた挟圧が付与される。
また、入力軸41には、軸線方向の中央部に、入力軸ギヤ81が一体に形成されている。これに対応して、プライマリ軸54には、入力軸ギヤ81と噛合するプライマリ入力ギヤ82が相対回転可能に支持されている。これらの互いに噛合する入力軸ギヤ81およびプライマリ入力ギヤ82とオイルポンプ45との間のスペースを利用して、プライマリ軸54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転を許容/禁止する前進クラッチ83が設けられている。前進クラッチ83の一部は、オイルポンプ45と軸径方向に重なっている(軸線方向に見て重なっている)。
前進クラッチ83は、クラッチドラム84、クラッチハブ85およびクラッチピストン86を備えている。クラッチドラム84は、内周端がプライマリ軸54に固定され、プライマリ軸54から軸径方向に延び、外周端部がプライマリ入力ギヤ82側、つまり前側に屈曲して延びている。クラッチハブ85は、プライマリ入力ギヤ82と一体に形成され、プライマリ入力ギヤ82から後側に延出する円筒状をなし、クラッチドラム84の外周端部に対して軸径方向の内側から間隔を空けて対向している。クラッチピストン86は、クラッチドラム84とクラッチハブ85との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン86は、クラッチドラム84に液密的に当接しており、クラッチドラム84とクラッチピストン86との間には、クラッチピストン86に作用する油圧が供給される油圧室87が形成されている。また、クラッチピストン86は、リターンスプリング88により、後側に弾性的に付勢されている。
クラッチドラム84の外周端部とクラッチハブ85とに軸径方向に挟まれる空間において、クラッチドラム84に保持されるクラッチプレートとクラッチハブ85に保持されるクラッチディスクとが軸線方向に交互に並んでいる。油圧室87に供給される油圧により、クラッチピストン86が前側に移動してクラッチプレートを後側から押圧すると、クラッチプレートとクラッチディスクとが圧接し、前進クラッチ83が係合する。前進クラッチ83の係合により、プライマリ軸54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転が禁止され、プライマリ入力ギヤ82が回転すると、プライマリ軸54がプライマリ入力ギヤ82と一体に回転する。前進クラッチ83の係合状態から油圧が開放されると、リターンスプリング88の付勢力により、クラッチピストン86が後側に移動し、クラッチディスクとクラッチプレートとの圧接が解除されて、前進クラッチ83が解放される。前進クラッチ83の解放により、プライマリ軸54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転が許容され、プライマリ入力ギヤ82が回転しても、その回転がプライマリ軸54に伝達されない。
セカンダリ軸55には、セカンダリ入力ギヤ91が相対回転可能に支持されている。セカンダリ入力ギヤ91は、軸線方向において、入力軸ギヤ81とオイルポンプ45との間に配置されている。また、セカンダリ入力ギヤ91とオイルポンプ45との間のスペースを利用して、セカンダリ軸55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転を許容/禁止する後進クラッチ92が設けられている。後進クラッチ92の一部は、オイルポンプ45と軸径方向に重なっている(軸線方向に見て重なっている)。
後進クラッチ92は、クラッチドラム93、クラッチハブ94およびクラッチピストン95を備えている。クラッチドラム93は、内周端がセカンダリ軸55に固定され、セカンダリ軸55から軸径方向に延び、外周端部がセカンダリ入力ギヤ91側、つまり前側に屈曲して延びている。クラッチハブ94は、セカンダリ入力ギヤ91と一体に形成され、セカンダリ入力ギヤ91から後側に延出する円筒状をなし、クラッチドラム93の外周端部に対して軸径方向内側から間隔を空けて対向している。クラッチピストン95は、クラッチドラム93とクラッチハブ94との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン95は、クラッチドラム93に液密的に当接しており、クラッチドラム93とクラッチピストン95との間には、クラッチピストン95に作用する油圧が供給される油圧室96が形成されている。また、クラッチピストン95は、リターンスプリング97により、後側に弾性的に付勢されている。
クラッチドラム93の外周端部とクラッチハブ94とに軸径方向に挟まれる空間において、クラッチドラム93に保持されるクラッチプレートとクラッチハブ94に保持されるクラッチディスクとが軸線方向に交互に並んでいる。油圧室96に供給される油圧により、クラッチピストン95が前側に移動してクラッチプレートを後側から押圧すると、クラッチプレートとクラッチディスクとが圧接し、後進クラッチ92が係合する。後進クラッチ92の係合により、セカンダリ軸55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転が禁止され、セカンダリ入力ギヤ91が回転すると、セカンダリ軸55がセカンダリ入力ギヤ91と一体に回転する。後進クラッチ92の係合状態から油圧が開放されると、リターンスプリング97の付勢力により、クラッチピストン95が後側に移動し、クラッチディスクとクラッチプレートとの圧接が解除されて、後進クラッチ92が解放される。後進クラッチ92の解放により、セカンダリ軸55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転が許容され、セカンダリ入力ギヤ91が回転しても、その回転がセカンダリ軸55に伝達されない。
出力軸43は、入力軸41に対して後側に間隔を空けて、入力軸41と同一軸線上に配置されている。言い換えれば、入力軸41と出力軸43とは、軸線方向に間隔を空けてそれぞれ前後に、車両の前後方向に沿った縦向きに延びる共通の軸線を有するように配置されている。出力軸43には、出力軸ギヤ101が一体に形成されている。これに対応して、セカンダリ軸55には、出力軸ギヤ101と噛合するセカンダリ出力ギヤ102が相対回転不能に支持されている。
リバース伝達機構44は、入力軸41の動力(回転)をセカンダリ入力ギヤ91に伝達する機構である。リバース伝達機構44には、リバースアイドラ軸103、第1リバースギヤ104および第2リバースギヤ105が含まれる。リバースアイドラ軸103は、軸線方向に延び、第1トランスミッションケース11と第2トランスミッションケース12とに跨がって、第1トランスミッションケース11および第2トランスミッションケース12に回転可能に支持されている。第1リバースギヤ104は、リバースアイドラ軸103と一体に形成されて、入力軸ギヤ81と噛合している。第2リバースギヤ105は、第1リバースギヤ104の後側において、リバースアイドラ軸103と一体に形成され、セカンダリ入力ギヤ91と噛合している。
出力軸43とプライマリ軸54との間には、アダプタ111が設けられている。アダプタ111は、たとえば、アルミ合金製であり、ダイカスト法によって鋳造される鋳物である。アダプタ111は、出力軸43とプライマリ軸54との間を軸径方向に延びている。アダプタ111の上端部は、後側に突出しており、その突出した部分には、前側に略円柱状に凹んだ凹部112が形成されている。出力軸43の前端部は、凹部112内に挿入されている。出力軸43の周面と凹部112の内周面との間には、ラジアルベアリング113が介在されている。出力軸43の前端部は、ラジアルベアリング113を介して、アダプタ111に回転可能に支持されている。また、出力軸43には、出力軸ギヤ101が形成されている部分と凹部112内に挿入される部分との間に、軸径方向に沿った円環状の段差面が形成されている。段差面とアダプタ111との間には、スラストベアリング114が介在されている。
アダプタ111には、後側に略円柱状に凹んだ凹部115が形成されている。プライマリ軸54の後端部は、凹部115に挿入されている。プライマリ軸54の周面と凹部115の内周面との間には、ボールベアリング116が介在されている。プライマリ軸54の後端部は、ボールベアリング116を介して、アダプタ111に回転可能に支持されている。
アダプタ111の下端部には、前側からボルト117が挿通される。そして、そのボルト117により、アダプタ111は、第3トランスミッションケース13に取り付けられている。
<動力伝達経路>
図2は、CVT5の構成を図解的に示すスケルトン図である。
車両の前進時には、前進クラッチ83が係合されて、後進クラッチ92が解放される。エンジン2からトルクコンバータ4を介して入力軸41に入力される動力は、前進クラッチ83の係合により、入力軸ギヤ81からプライマリ入力ギヤ82を介してプライマリ軸54に伝達される。一方、入力軸41に入力される動力が入力軸ギヤ81からセカンダリ入力ギヤ91に伝達されて、セカンダリ入力ギヤ91が回転しても、後進クラッチ92の解放により、セカンダリ入力ギヤ91がセカンダリ軸55(セカンダリ軸55)に対して空転し、セカンダリ軸55に動力が伝達されない。
プライマリ軸54に伝達される動力は、プライマリプーリ56とセカンダリプーリ57とのプーリ比に応じたベルト変速比で変速されて、セカンダリ軸55に伝達される。そして、セカンダリ軸55に伝達される動力は、セカンダリ出力ギヤ102から出力軸ギヤ101を介して出力軸43に伝達される。
車両の後進時には、前進クラッチ83が解放されて、後進クラッチ92が係合される。エンジン2からトルクコンバータ4を介して入力軸41に入力される動力は、後進クラッチ92の係合により、入力軸ギヤ81からリバース伝達機構44およびセカンダリ入力ギヤ91を介してセカンダリ軸55に伝達される。このとき、セカンダリ軸55は、車両の前進時と逆方向に回転する。一方、入力軸41に入力される動力が入力軸ギヤ81からプライマリ入力ギヤ82に伝達されて、プライマリ入力ギヤ82が回転しても、前進クラッチ83の解放により、プライマリ入力ギヤ82がプライマリ軸54(プライマリ軸54)に対して空転し、プライマリ軸54に動力が伝達されない。
セカンダリ軸55に伝達される動力は、セカンダリ出力ギヤ102から出力軸ギヤ101を介して出力軸43に伝達される。
そして、出力軸43に伝達される動力は、出力軸43からプロペラシャフト(図示せず)に出力されて、プロペラシャフトからリヤデファレンシャルギヤ(リヤデフ)およびドライブシャフトを介して左右の後輪に伝達される。
<油供給構造>
第2トランスミッションケース12の底部には、図1に示されるように、変速ユニット1の各部へのオイルの供給を制御するためのバルブボディ121が設けられている。
また、第2トランスミッションケース12の底部には、ストレーナ122が設けられている。ストレーナ122は、バルブボディ121と横並びで配置される濾過部123と、濾過部123から延出する管部124とを備えている。管部124は、濾過部123の下部から前側に延出して、バルブボディ121の下側を左側に湾曲しつつ延び、その先端部が第2トランスミッションケース12の中央部に配置されている。管部124は、中空の管状に形成され、その内部は、濾過部123の内部と連通している。また、管部124の先端部の下面は、オイルを吸い込むための吸込口125として開口している。
第2トランスミッションケース12には、オイルパン131が下側から複数のボルト132で固定されている。ストレーナ122の管部124の先端部は、オイルパン131の中央部に位置しており、その先端部の吸込口125は、オイルパン131の中央部と対向している。
オイルポンプ45のポンプギヤ48の回転により吸引力が発生し、その吸引力により、オイルパン131に溜まったオイルが吸込口125から管部124内に吸い込まれる。管部124内に吸い込まれたオイルは、管部124内を濾過部123に向けて流れ、濾過部123内に設けられた濾過材を通過する。オイルが濾過材を通過することにより、オイル中に含まれる異物が濾過材に捕獲されて、オイル中から異物が除去される。濾過材を通過したオイルは、オイルポンプ45を経由して、バルブボディ121に供給される。そして、バルブボディ121から無段変速機構42などのオイルの供給を必要とする各部に作動油または潤滑油としてオイルが供給される。
<各軸の配置>
図3は、第2トランスミッションケース12内のオイルポンプ45付近を前側から見た図である。
入力軸41を前側から見て、プライマリ軸54、セカンダリ軸55およびリバースアイドラ軸103は、入力軸41の周囲に配置されている。具体的には、プライマリ軸54は、入力軸41に対して車両の前側から見て左下方に離間した位置に配置されている。セカンダリ軸55は、入力軸41に対して車両の前側から見て右上方に離間した位置に配置されている。リバースアイドラ軸103は、入力軸41に対して上方に離間した位置に配置されている。
<潤滑構造>
図4は、図3に示される切断面線A-Aにおける入力軸41の後端部、ならびにオイルポンプ45のポンプケース46およびポンプ軸49の断面図である。
ポンプケース46の上部には、下側に凹む凹状のオイル受部141が形成されている。
また、ポンプケース46には、オイル受部141と軸受凹部51の奥部(後部)との間に、連通穴142が上下方向に延びて形成されている。連通穴142の上端は、オイル受部141の底面で開口している。連通穴142の下端は、ラジアルベアリング52とスラストベアリング53との間において、軸受凹部51の奥部の周面で開口している。これにより、連通穴142は、オイル受部141内と軸受凹部51内とを連通している。
オイル受部141内には、オイルを濾過するためのストレーナ143が配置されている。
<作用効果>
以上のように、ポンプケース46に、前側に開放される軸受凹部51が形成されており、入力軸41を受けるラジアルベアリング52およびスラストベアリング53は、軸受凹部51に嵌入されて支持されている。ポンプケース46には、下側に凹む凹状のオイル受部141と、このオイル受部141内と軸受凹部51内とを連通する連通穴142とがさらに形成されている。変速ユニット1内の各部には、潤滑のためのオイルが供給され、各部に供給されたオイルは、その供給先の部材を伝って、その部材から滴下する。オイル受部141は、その上側に配置された部材から滴下するオイルを受けることができる。そして、オイル受部141で受けられたオイルが連通穴142を通して軸受凹部51内に流入することにより、軸受凹部51内に嵌入されているラジアルベアリング52およびスラストベアリング53が潤滑される。したがって、バルブボディ121からラジアルベアリング52およびスラストベアリング53に潤滑のためのオイルを供給する軸受潤滑用の油路を第2トランスミッションケース12に形成する必要がない。そのため、第2トランスミッションケース12の素材の質量を低減でき、これにより、変速ユニット1の軽量化を図ることができる。また、軸受潤滑用の油路を第2トランスミッションケース12に形成するのに要する加工コストを削減できるので、変速ユニット1の低コスト化を図ることができる。
また、無段変速機構42のプライマリ軸54およびセカンダリ軸55は、入力軸41の軸線方向から見て、入力軸41に対して左右に分かれて配置され、リバース伝達機構44のリバースアイドラ軸103は、入力軸41の上側に配置されている。車両の前進時には、プライマリ軸54およびセカンダリ軸55が前側から見て反時計回りに回転する。その回転により、とくには、セカンダリ軸55から遠心力で飛散するオイルの飛沫がリバースアイドラ軸103に供給され、そのリバースアイドラ軸103に供給されたオイルがリバースアイドラ軸103から滴下してオイル受部141に受けられる。そのため、オイル受部141にオイルを効率的に集めることができる。その結果、オイル受部141から連通穴142を通してラジアルベアリング52およびスラストベアリング53にオイルを良好に供給でき、ラジアルベアリング52およびスラストベアリング53をオイルで良好に潤滑させることができる。
しかも、入力軸41に対して、プライマリ軸54とセカンダリ軸55とが入力軸41の軸線方向から見て左右に分かれて配置されている。これにより、プライマリ軸54とセカンダリ軸55との上下方向の軸間距離を短くすることができる。その結果、変速ユニット1の上下方向のサイズを小さくすることができ、商用車などの車室が低床化された車両であっても、その車両への変速ユニット1の搭載を車両の最低地上高を確保しつつ可能とすることができる。変速ユニット1の小型化により、変速ユニット1の軽量化を図ることができる。
変速ユニット1の軽量化により、ひいては、変速ユニット1が搭載された車両の燃費の向上を図ることができる。
また、オイル受部141内には、ストレーナ143が配置されており、オイル受部141から連通穴142に流出するオイルは、ストレーナ143を通過することにより濾過される。これにより、異物(コンタミネーション)が除去された清浄なオイルをラジアルベアリング52およびスラストベアリング53に供給でき、ラジアルベアリング52およびスラストベアリング53の寿命の向上を図ることができる。
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、変速ユニット1は、エンジン2の後側に、CVT5の入力軸41が車両の前後方向に延びる縦向きとなる縦置きで配置されているとした。しかしながら、これに限らず、本発明は、エンジン2の左側または右側に、CVTの入力軸が車両の左右方向に延びるように横置きされる変速ユニットに適用することもできる。
また、無段変速機構42の動力伝達方式は、ベルト式に限らず、チェーン式またはトロイダル式であってもよい。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1:変速ユニット(変速機)
2:エンジン(駆動源)
5:CVT(変速機)
41:入力軸
42:無段変速機構
47:ポンプカバー(軸受支持部材)
51:軸受凹部
52:ラジアルベアリング(軸受)
53:スラストベアリング(軸受)
54:プライマリ軸
55:セカンダリ軸
103:リバースアイドラ軸
141:オイル受部
142:連通穴

Claims (2)

  1. 車両に搭載される変速機であって、
    駆動源側となる第1側およびその反対側の第2側に延び、前記駆動源からの動力が入力される入力軸と、
    前記入力軸を受ける軸受と、
    前記軸受を支持する軸受支持部材と、
    前記入力軸とそれぞれ平行に延びるプライマリ軸およびセカンダリ軸を有し、前記プライマリ軸から前記セカンダリ軸に動力を変速して伝達する無段変速機構と、
    前記入力軸と平行に延び、前記車両の後進時に前記入力軸から伝達される動力を前記セカンダリ軸に伝達するリバースアイドラ軸と、を含み、
    前記軸受支持部材には、
    前記第1側に開放され、前記軸受が嵌入される軸受凹部と、
    下側に凹む凹状をなし、オイルを受けるオイル受部と、
    前記軸受凹部内と前記オイル受部内とを連通する連通穴と、が形成されており、
    前記プライマリ軸、前記セカンダリ軸および前記リバースアイドラ軸は、前記プライマリ軸および前記セカンダリ軸の回転時に、前記プライマリ軸および前記セカンダリ軸の少なくとも一方から遠心力で飛散するオイルの飛沫が前記リバースアイドラ軸に供給される位置に配置され、
    前記オイル受部は、前記リバースアイドラ軸から滴下するオイルを受ける位置に配置されている、変速機。
  2. 記プライマリ軸および前記セカンダリ軸は、前記入力軸の軸線方向から見て、前記入力軸に対して左右に分かれて配置され、
    前記リバースアイドラ軸は、前記入力軸の上方に配置されている、請求項1に記載の変速機。
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