JP7373722B2 - 衝撃吸収材 - Google Patents

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Description

本開示は、一般に衝撃吸収材に関し、より詳細には、粘着性を有するシリコーン組成物に遮光性が付与された衝撃吸収材に関する。
特許文献1には、積層体を有する衝撃吸収フィルムが記載されている。該積層体は、第1の伸縮性フィルムと発泡体とが積層されている。第1の伸縮性フィルムは、引張強度10%モジュラスが0.15~0.5N/10mmであり、且つ引張る力がなくなったときに元の長さに戻る伸縮性を有する。発泡体は、厚さが0.05mm以上0.5mm以下の発泡体であって、該発泡体のみからなるシートを複数重ねて1cmの厚みにし、50%の厚みに圧縮したときに測定する前記シートの反発応力が0.02MPa以上3.0MPa以下である。
このような衝撃吸収フィルムは、特に、スマートフォン、タブレット型端末、ノートパソコンなどの製品のディスプレイパネル、電子回路、電池等を保護するために使用される。すなわち、上記のような衝撃吸収フィルムは、スマートフォン、タブレット型端末などの製品が、落下などによる衝撃を受けた際に、そのディスプレイパネルが破壊しないように、衝撃を吸収する材料として使用される。
特許文献1の衝撃吸収フィルムは、衝撃吸収フィルム自体に遮光性を付与することが困難であり、粘着層を介して遮光フィルムを衝撃吸収フィルムに貼り付ける必要があった。すなわち、上記の衝撃吸収フィルムは、発泡体を有しているので、その表面空孔により表面散乱が発生するため、発泡体自体に遮光性を付与することが困難であり、別途、遮光フィルムを衝撃吸収フィルムに貼り付ける必要があった。
また特許文献1の衝撃吸収フィルムをディスプレイパネル等に貼り付ける場合、衝撃吸収フィルムとディスプレイパネル等とを接着するための粘着層が必要であった。しかも、上記の遮光フィルムを必要とする場合には、遮光フィルムと衝撃吸収フィルムとを接着するための粘着層も必要であった。したがって、遮光フィルムと衝撃吸収フィルムとを貼り付けたディスプレイパネル等は積層体として剛直となり、ディスプレイパネル等に本来求められている自由に曲げ伸ばしできるなどの機能を発現することを妨げられやすくなる。
衝撃吸収材料としては、ウレタン、アクリル、シリコーンのフォームまたはゴム状のものが多く使用されているが、繰り返し使用時の性能安定性を必要とすることの多いディスプレイ用途の場合はシリコーンが有利である。また衝撃吸収材料は保護対象に接触して効果を発揮するため、繰り返し衝撃を受けた際に衝撃吸収材と保護対象とが剥離しないように粘着性を有している必要がある。さらに部品が高価であるディスプレイではリワーク性を求められることから、衝撃吸収材料の粘着性のコントロールは重要である。
特許文献2には、遮光性を有した付加硬化型シリコーン組成物の接着シートが記載されている。この接着シートは、電極の遮光及び保護を目的としたものである。但し、この接着シートは、半硬化(Aステージ)シートの状態で保護対象に圧着させ、熱で硬化させることで接着性を得ることから、生産工程が複雑になる。また、この半硬化状態のシートを保持するためには低温保管を要し、生産上管理が難しい。
特許文献3には、付加硬化型のシリコーン組成物でありシート化可能な材料が記載されている。この材料は、添加材によって、遮光性、熱伝導性、振動吸収性を付与することが可能であるが、材料の粘着力に関する記述がない。
特許文献4及び5には、接着性を保有したシリコーン組成物が記載されている。このシリコーン組成物は保護対象と接触した上で熱を介して接着するものである。特許文献4には遮光性に関して記載されていない。このようなシリコーン組成物ではリワーク時にディスプレイを破損してしまう可能性が高いため、有用ではない。
特開2016-30394号公報 特開2010-90363号公報 特開2010-144133号公報 特開2002-173661号公報 特開昭62-240361号公報
本開示は、上記事由に鑑みてなされており、粘着性及び遮光性を有する衝撃吸収材を提供することを目的とする。
また本開示は、常温保管が可能でポストキュアを必要としない衝撃吸収材を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る衝撃吸収材は、粘着性および応力緩和性を有するシリコーン組成物中に、絶縁無機黒色顔料が含有されている。前記衝撃吸収材は、厚み40μm以上500μm以下である。前記衝撃吸収材は、ガラス板に対する粘着力が2N/20mm以上である。また前記衝撃吸収材は、波長が300nm以上850nm以下の光の透過率が0.1%以下である。さらに前記衝撃吸収材は、JIS K 2207に準拠した25℃における針入度が50以上110以下である。加えて、前記衝撃吸収材は、衝撃吸収率が20%以上である。
図1Aは、本開示に係る一実施形態の衝撃吸収材を示す模式図である。図1Bは、比較例の衝撃吸収積層体を示す説明図である。 図2は、本開示に係る一実施形態の衝撃吸収材の粘着力を測定する試験を示す模式図である。 図3は、本開示に係る一実施形態の衝撃吸収材の衝撃加速度を測定する試験を示す模式図である。
(衝撃吸収材の概要)
図1Aは、本実施形態に係る衝撃吸収材1を示している。衝撃吸収材1は、粘着性および応力緩和性を有するシリコーン化合物の反応物であるシリコーン組成物2中に、絶縁無機黒色顔料3を含有している。また衝撃吸収材1の厚みは40μm以上500μm以下である。さらに、衝撃吸収材1は、シリコーン組成物2中に、放熱微粒子4を含有している。なお、放熱微粒子4は、衝撃吸収材1の必須の構成要素ではなく、必要に応じて、使用される。
図1Bは、衝撃吸収材1と同等程度の衝撃吸収性、遮光性及び貼付性を得ようとした場合の衝撃吸収積層体100を示している。衝撃吸収積層体100では、衝撃吸収性を得るために多孔構造層101を有している。多孔構造層101は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリル、ポリウレタンなどの発泡体を素材として形成され、厚みが50~1000μmに形成されている。また衝撃吸収積層体100は、遮光性を得るために、光の透過率が小さい遮光基材102を備えている。遮光基材102は厚み5~50μmに形成され、厚み3~50μmの粘着層103により、多孔構造層101の片面に貼り付けられている。さらに衝撃吸収積層体100は、貼付性を得るために、厚み3~50μmの二つの粘着層104、105を有している。貼付性は、衝撃吸収積層体100と他の部材とを貼り付けることを可能する性能である。したがって、一方の粘着層104は多孔構造層101の他の片面(遮光基材102がない面)に設けられている。もう一方の粘着層105は遮光基材102の片面(粘着層103がない面)に設けられている。
このように衝撃吸収積層体100は、衝撃吸収性を得るための多孔構造層101と、遮光性を得るための遮光基材102と、貼付性を得るための二つの粘着層104,105、及び遮光基材102と多孔構造層101とを粘着(接着)するための粘着層103とで構成されているため、厚みが非常に大きくなる。一方、本実施形態に係る衝撃吸収材1は、粘着性および応力緩和性を有するシリコーン組成物2中に、絶縁無機黒色顔料3を含有しているため、シリコーン組成物2により衝撃吸収性と貼付性が得られ、絶縁無機黒色顔料3により遮光性が得られる。したがって、遮光基材102及び三つの粘着層103、104,105がなくても衝撃吸収積層体100と同程度の衝撃吸収性、遮光性及び貼付性を有するものである。よって、本実施形態に係る衝撃吸収材1は、衝撃吸収性、遮光性及び貼付性を有しながら、衝撃吸収積層体100よりも厚みを薄くする(薄型化を図る)ことができる。具体的には、本実施形態に係る衝撃吸収材1は、多孔構造層101と同等の厚みか、それよりも薄い40μm以上500μm以下の厚みで形成することが可能である。衝撃吸収材1の厚みは50μm以上450μm以下であることが、好ましい。衝撃吸収材1の厚みは100μm以上400μm以下であることが、より好ましい。
本実施形態に係る衝撃吸収材1は、例えば、表示パネルの遮光及び衝撃吸収のために使用されることが好ましい。これにより、表示パネルは衝撃吸収材1により衝撃から保護されやすい。また表示パネルは衝撃吸収材1により遮光されて表示が鮮明になりやすい。表示パネルは、液晶パネルや有機ELパネルなどである。
本実施形態に係る衝撃吸収材1は、単層からなることが好ましい。すなわち、衝撃吸収材1は、他の層と積層されずに、一層で、粘着性、遮光性及び衝撃吸収性を有することが好ましい。これにより、本実施形態に係る衝撃吸収材1は薄く形成しやすい。粘着性とは、他の部材と粘着することが可能な機能をいう。本実施形態に係る衝撃吸収材1の粘着性は、ガラス板に対する粘着力で規定される。また遮光性とは、光を遮ることが可能な機能をいう。本実施形態に係る衝撃吸収材1の遮光性は、波長が300nm以上850nm以下の光の透過率で規定される。衝撃吸収性とは、衝撃を吸収できる機能をいう。本実施形態に係る衝撃吸収材1の衝撃吸収性は、衝撃吸収率で規定される。
本実施形態に係る衝撃吸収材1は、表示パネルの表面に配置された状態で使用される。すなわち、衝撃吸収材1は、フラットパネルディスプレイなどに使用されている液晶パネルなどの表示パネルの表面に積層されて用いられる。本実施形態に係る衝撃吸収材1は、表示パネルの表面に配置された状態で、熱及び紫外線によるポストキュアを必要としない。ここで、ポストキュアとは、製造工程の最終段階での硬化工程を意味する。したがって、本実施形態に係る衝撃吸収材1は、表示パネルの表面に配置した状態で、熱及び紫外線により最終的に硬化させる工程を必要としない。すなわち、本実施形態に係る衝撃吸収材1は、熱及び紫外線によるポストキュアを行わなくても、表示パネルの表面に粘着可能である。したがって、本実施形態に係る衝撃吸収材1は、表示パネルが熱及び紫外線による悪影響を受けることを少なくして、粘着が可能である。
本実施形態に係る衝撃吸収材1は、常温保管が可能である。すなわち、衝撃吸収材1は、低温にすることなく、長期間にわたって性状をほとんど変化させることなく、保管が可能である。ここで、常温とは25℃のことをいう。また衝撃吸収材1は、常温で、粘着性、遮光性、針入度及び衝撃吸収性をほとんど変化させないで6ヶ月間保管が可能である。
(シリコーン組成物)
シリコーン化合物の反応物であるシリコーン組成物2は、衝撃吸収材1の主体を構成する。すなわち、シリコーン組成物2は、絶縁無機黒色顔料3を内在して保持するマトリックスのような機能を有する。また衝撃吸収材1は、主に、シリコーン組成物2により、多孔構造を用いずに物理的に衝撃エネルギーを緩和することができる。
本実施形態に係る衝撃吸収材1において、シリコーン組成物2はシート状、板状及びフィルム状の形態を有する。これらの形態のシリコーン組成物2は厚みが50μm以上450μm以下である。すなわち、シリコーン組成物2の厚みが衝撃吸収材1の厚みとなる。
シリコーン組成物2は粘着性を有する。ここで、粘着性とは、シリコーン組成物2と他の部材とを粘着(接着)することを可能とする機能をいう。具体的には、JIS Z0237に準拠した粘着力試験の90度引きはがしモードにおいて、ソーダガラスに対して剥離に要する力で規定される。このとき、シリコーン組成物2の粘着力は2N/20mm以上であることが好ましい。なお、本開示における粘着性に関する測定方法は、引張り速度300mm/minであり、試験片は、幅20mm、長さは100mm、厚み150μmの短冊状である。また、試験片とソーダガラスとの貼合条件は、2kgのローラーで1往復とし、その後23℃で24h放置としている。
シリコーン組成物2は応力緩和性を有する。ここで、応力緩和性とは、シリコーン組成物2に応力が加わったときに、その応力による衝撃エネルギーを変形や熱エネルギーに変換して吸収し、応力が伝達されにくくする機能をいう。具体的には、シリコーン組成物2の応力緩和性は0℃から200℃の間の動的粘弾性測定(捻り剪断モード)における複素弾性率が、10Pa以上10Pa以下の範囲で、かつ、tanδが10-2以上1以下の範囲で規定される。複素弾性率及びtanδの測定にはφ25mm(直径25mm)、厚み2mmの円盤状試験片を用い、ひずみは1%、振動周波数は10Hzの条件で測定する。
動的弾性率には貯蔵弾性率G’(Pa)と損失弾性率G”(Pa)がある。貯蔵弾性率G’(Pa)は物体に外力とひずみにより生じたエネルギーのうち物体の内部に保存する成分であり、損失弾性率G”(Pa)は外部へ拡散する成分である。複素弾性率G*(Pa)はG*=(G‘+G“1/2で表され、物体の硬さを示す。また、tanδは損失係数といい、G”とG’の比である(tanδ=G”/G’=損失弾性率/貯蔵弾性率)。
複素弾性率G*(Pa)が、0℃から200℃の間において、10Pa以上10Pa以下の範囲、かつtanδが10-2以上1以下の範囲であることによって、シリコーン組成物2は、外力やひずみなどが与えられた場合に、シリコーン組成物2の内部にエネルギーを保存したうえで、徐々に外部に熱エネルギーとして拡散させる特性を発現することができ、衝撃吸収特性を発現する。上記以外の範囲においては、シリコーン組成物2は外力やひずみなどによるエネルギーを内部に蓄えることなく弾性的な反発力を外部に向けて発生させるか、塑性変形をしてしまい、衝撃吸収材1は当初の形状を維持しにくくなる。
シリコーン組成物2は、複素弾性率G*(Pa)が、0℃から200℃の間において、20,000Pa以上80,000Pa以下の範囲、かつtanδが0.1以上0.9以下であることが、より好ましい。
なお、複素弾性率G*(Pa)の測定装置としては、例えば、TAインスツルメンツ株式会社製の「ARES G2」が使用される。
本実施形態で用いられるシリコーン組成物は、所望の緩衝吸収性能が得られれば公知のゴム弾性や粘弾性を有するものを適用でき、緩衝吸収性の観点からシリコーンゲルをシリコーン組成物として用いることが好ましく、硬化性等の観点から付加反応型(又は架橋)シリコーンゲルをシリコーン組成物として用いることが特に好ましい。付加反応型シリコーンゲルは、特に限定されないが、通常は、シリコーン化合物の一例として、後述するオルガノハイドロジエンポリシロキサンとアルケニルポリシロキサンとを原料とし、両者を触媒の存在下でハイドロシリル化反応(付加反応)させることにより得られる。すなわち、本実施形態においてシリコーンゲルの原料物質に成り得るシリコーン化合物とは、多くの場合、オルガノハイドロジエンポリシロキサンとアルケニルポリシロキサンを指す。原料の1つとして用いられるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記の一般式(1)で表されるものが好ましい。
Figure 0007373722000001
式中、Rは、同一又は異種の置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し、R、R及びRは、R又は-Hを表し、R、R及びRの少なくとも2つは、-Hを表し、x及びyは、各単位の数を示す整数であり、各単位は、ブロックあるいはランダムに配置されており、ランダムが好ましく、xは、0以上の整数であるが10~30が好ましく、yは、0以上の整数であるが1~10が好ましい。x+yは、5~300の整数であるが30~200が好ましい。また、y/(x+y)≦0.1の範囲が好ましい。この範囲を超えると架橋点が多くなり、衝撃緩衝性が低下する場合がある。
の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、或いは、これらの水素原子が部分的に塩素原子、フッ素原子などで置換されたハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
ケイ素原子に直接結合した水素(Si-H)は、ケイ素原子に直接または間接的に結合したアルケニル基と付加反応(ハイドロシリル反応)を行うために必要であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中に少なくとも2個有することが好ましい。
また、本実施形態で使用する架橋シリコーンゲルを製造する際に用いられるもう1つの原料であるアルケニルポリシロキサンは、下記の一般式(2)で表されるものが好ましい。
Figure 0007373722000002
式中、Rは、同一又は異種の置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を表し、R、R及びRは、R又はアルケニル基を表し、R、R及びRの少なくとも2つはアルケニル基を表し、s及びtは、各単位の数を示す整数であり、各単位はブロックあるいはランダムに配置されており、ランダムが好ましく、sは、0以上の整数を表し、tは、0以上の整数を表し、s+tは、10~600の整数であり、かつt/(s+t)≦0.1ある。また、t/(s+t)≦0.1の範囲が好ましい。この範囲を超えると架橋点が多くなり、衝撃緩衝性が低下する場合がある。
の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、或いはこれらの水素原子が部分的に塩素原子、フッ素原子などで置換されたハロゲン化炭化水素などが挙げられる。ケイ素原子に直接または間接的に結合したアルケニル基(ビニル基、アリル基等)は、ケイ素原子に直接結合した水素(Si-H)と付加反応(ハイドロシリル反応)を行うために必要であり、アルケニルポリシロキサン分子中に少なくとも2個有することが好ましい。
本実施形態において、一般式(1)で表されるハイドロジェンポリシロキサンは、珪素原子に直結した-H(水素基)を有しており、一般式(2)で表されているアルケニルポリシロキサンは、炭素-炭素二重結合を有しているので、炭素-炭素二重結合と-H(水素基)が付加反応をおこすが、これをハイドロシリル化反応という。そして、一般式(1)で表されるハイドロジェンポリシロキサンは、珪素原子に直結した-H(水素基)と一般式(2)で表されているアルケニルポリシロキサンのアルケニル基との当量比を調整することによって、シリコーン組成物2の硬度や緩衝性能を調整することができる。上記ハイドロシリル化反応は、公知の技術を用いて行うことができ、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールより得られる錯体、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体、白金-リン錯体等の触媒を用い反応させることができる。触媒の使用量は、アルケニルポリシロキサンに対して、白金原子として通常1ppm以上500ppm以下であり、硬化性及び硬化後の製品の物理的特性を考慮して、3ppm以上250ppm以下が好ましい。
(絶縁無機黒色顔料)
絶縁無機黒色顔料3は、主に、衝撃吸収材1に遮光性を付与するためにシリコーン組成物2に含有される。すなわち、衝撃吸収材1は、絶縁無機黒色顔料3により所望の遮光性が得られる。
絶縁無機黒色顔料3は、電気的な絶縁性を有する。本開示において、電気的な絶縁性とは、電気抵抗値が大きく電気を通しにくい機能をいう。絶縁無機黒色顔料3の抵抗率は1×10Ω・cm以上1×1019Ω・cm以下の範囲とすることが好ましく、これにより、衝撃吸収材1の電気的な絶縁性が得やすくなる。絶縁無機黒色顔料3の抵抗率は1×1011Ω・cm以上1×1019Ω・cm以下の範囲とすることが、より好ましく、1×1015Ω・cm以上1×1019Ω・cm以下の範囲とすることが、さらに好ましい。
絶縁無機黒色顔料3は、無機材料を含む。本開示において、無機材料は、絶縁性を有する金属、金属酸化物、金属窒化物及びセラミックスなどが例示される。具体的には、絶縁無機黒色顔料3は、チタン、鉄、亜鉛、酸化チタン、窒化チタン、アルミナ、から選ばれる少なくとも一種の元素を含む金属の単体または合金や、酸化物、窒化物及びセラミックスが使用可能である。無機材料を含む絶縁無機黒色顔料3は脱色しにくく性状が安定しており、これにより、衝撃吸収材1の遮光性が低下しにくくなる。
絶縁無機黒色顔料3は、黒色である。本開示において、黒色とはカラーコードがCIE1976 L*a*b*色空間(測定用光源C:色温度6774K)を用いた座標において、0≦L*≦14、6≦a*≦8、-10≦b*≦-5の範囲のものをいい、L*が1.26、a*が6.9、b*が-8.12であることが最も好ましい。絶縁無機黒色顔料3は、例えば、カラーコードが#0d0015の漆黒である。絶縁無機黒色顔料3が黒色であれば、衝撃吸収材1の所望の遮光性が得られる。絶縁無機黒色顔料3は、粒子である。絶縁無機黒色顔料3はほぼ球形であるが、様々な形状を有している。絶縁無機黒色顔料3は、平均一次粒子径が10nm以上300nm以下の範囲であることが好ましい。これにより、絶縁無機黒色顔料3は、シリコーン化合物中及びシリコーン組成物2中に均一に分散させやすくなる。ここで、均一とは、単位体積あたりの衝撃吸収材1を構成する組成がほぼ同じであることをいう。絶縁無機黒色顔料3の平均一次粒子径は20nm以上150nm以下の範囲であることが、より好ましい。
なお、本開示において、平均一次粒子径は、次の方法で特定される。シリコーン組成物2に含まれる、顔料の粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率5000倍以上にて観察する。TEMまたはSTEMで得られた像又はSEMで観察された複数の粒子の中で、凝集体を形成していない顔料の粒子を、一次粒子とみなす。この一次粒子の長径を、一次粒子径とみなす。百個の一次粒子について、一次粒子径を測定する。一次粒子径の個数基準の算術平均値を算出した結果を、平均一次粒子径とする。
衝撃吸収材1における絶縁無機黒色顔料3の含有量は、シリコーン組成物2の100質量部に対して、2.5質量部以上80質量部以下の範囲である。絶縁無機黒色顔料3の含有量がこの範囲であれば、シリコーン組成物2の粘着性及び応力緩和性を損なわずに、衝撃吸収材1の遮光性が得やすくなる。絶縁無機黒色顔料3の含有量は、シリコーン組成物2の100質量部に対して、5質量部以上40質量部以下の範囲であることが、より好ましい。
また絶縁無機黒色顔料3は、シリコーン化合物中及びシリコーン組成物2中への分散性を向上させるためにシリコーン系処理剤で表面処理をされたものが好ましい。
絶縁無機黒色顔料3は、チタン酸窒化物(酸窒化チタン)が挙げられる。チタン酸窒化物は、窒素の含有量が多く、一般式TiOにおいて、x=0.05以上0.50以下、y=0.6以上1.0以下の組成を有する。酸素量xが0.05より少ないと絶縁性が不十分となりやすく、0.50より多いと遮光性が低下しやすいので好ましくない。窒素量yが0.60より少ないと遮光性が低下しやすく、1.0より多いと絶縁性が不足しやすいので、好ましくない。
また、衝撃吸収材1には、本発明の効果を阻害しない範囲で、放熱微粒子や難燃剤、熱安定化剤などの成分を配合してもよい。
(放熱微粒子)
放熱微粒子4は、主に、衝撃吸収材1に放熱性を付与するために含有され、例えば、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、無水炭酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素のような無機材料が使用できる。
放熱微粒子4の添加によって、衝撃吸収材1の硬度や粘弾性特性が変化するので、放熱微粒子4の粒子径や含有量は、所望の衝撃吸収材1の遮光性と衝撃緩衝性が得られる範囲で適宜設定すればよい。
(衝撃吸収材の製造方法)
衝撃吸収材1は、シリコーン化合物と、絶縁無機黒色顔料3とを混合及び混練し、押出成形法などの成形方法で成形し、この後、シリコーン化合物を乾燥及び反応・硬化することでシリコーン組成物を形成することによって製造される。
(衝撃吸収材の物性)
衝撃吸収材1は、ガラス板に対する粘着力が2N/20mm以上である。この粘着力は以下のようにして測定される。JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠した粘着力試験における90度引きはがしの剥離強度を粘着力とし、90度ピール試験機で引張り速度300mm/minの速さにて衝撃吸収材とガラス板との粘着力を測定した。粘着力評価用の試験試料は、図2に模式的に示すように、衝撃吸収材1の一方の表面にガラス板300を貼合し、次いで、他方の面(裏面)に樹脂フィルム(ユニチカ社製PET、エンブレット)301を、プライマー(信越化学工業製 プライマーA)302を介して貼合することによって作製した。前記貼合条件は、2kgのローラーで1往復とし、その後23℃で24時間放置した。また、ガラス板300は、厚さ1mmのソーダガラス製のガラス板(平岡ガラス社製)とした。
衝撃吸収材1は、ガラス板に対する粘着力が2N/20mm以上であるため、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示パネルを構成するガラス板に貼り付けやすく、容易に脱落しないように粘着(接着)される。また衝撃吸収材1は、表示パネルへの貼り直し(リワーク)など、作業性の観点から、衝撃吸収材1のガラス板に対する粘着力は5N/20mm以下であることが好ましい。
衝撃吸収材1は、波長が300nm以上850nm以下の光の透過率が0.1%以下である。この透過率は、JIS K 7136に準拠し、分光光度計等を用いて測定される。
衝撃吸収材1の光の透過率は低いほうが好ましいので、その下限は0%である。
衝撃吸収材1は、JIS K 2207に準拠した25℃における針入度が50以上110以下である。衝撃吸収材1の針入度が50未満であると、衝撃吸収材1が硬質すぎて、曲げたり伸ばしたりしにくくなり、柔軟な変形に対応しにくくなる。衝撃吸収材1の針入度が110より大きいと、衝撃吸収材1が軟質すぎて、他部材への貼り付けしにくくなるなどの取扱性が低下する。衝撃吸収材1の上記条件の針入度が60以上100以下の範囲であることが好ましく、70以上90以下の範囲が更に好ましい。
衝撃吸収材1は、衝撃吸収率が20%以上である。この衝撃吸収率は以下のようにして測定される。神栄テストマシナリー製の振子式衝撃試験装置PST-300を用いてJISC 60068-2-27に準拠して衝撃加速度を測定したうえで、次の式により衝撃吸収率を算出した。
衝撃吸収率(%)=(1-(衝撃吸収材付きの試験片の衝撃加速度))/(PC板単体の衝撃加速度)×100
衝撃加速度を測定するための試験片は、厚みが1.0mmのポリカーボネートの板(PC板)400に衝撃吸収材1を貼り合わせ、さらにその上にΦ20mm(=直径20mm)、厚みが4mmの金属円柱401を貼り合わせて作製した。この試験片を図3に模式的に示す。
衝撃吸収材1の衝撃吸収率は高いほうが好ましいので、その上限は100%であるが、現状で得られる衝撃吸収材1の衝撃吸収率の上限は85%であり、少なくとも80%である。
(衝撃吸収材の使用)
本実施形態に係る衝撃吸収材1は、他の部材に貼り付けて使用される。この場合、衝撃吸収材1は粘着性を有しているので、他の部材の表面に衝撃吸収材1の表面を接触させて貼り付けることが可能である。ただし、他の部材へ衝撃吸収材1を強固に貼り付けたい場合は、接着剤や粘着剤を併用してもよい。
他の部材としては、衝撃が加わると破損しやすい部材であり、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示パネルが例示される。衝撃吸収材1は表示パネルの裏面(文字や画像が表示される側と反対側の面)に貼り付けられる。表示パネルとしては、フレキシブル有機液晶ディスプレイ(OLCD)、電子ペーパー(E Paper)、有機ELディスプレイ(OLED)、量子ドットディスプレイ(QLED)、マイクロLEDディスプレイ(μLED)が例示される。
本実施形態に係る衝撃吸収材1は、従来技術よりも、薄く柔軟な可撓性をもち、軽量で折り畳むなどの機能を有し、遮光性も有する。よって、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示パネルに貼り付けた場合に、使用時は大画面でありながら、持ち運ぶときなどは折りたたんで小型になるというような光学表示セルを得ることも可能となる。
(実施例1)
シリコーン組成物としては、信越化学工業株式会社製の2液付加反応型シリコーンゲル(型式:X32-3443)を使用した。このシリコーン組成物の原料となり得るシリコーン化合物は、主剤(A)と硬化剤(B)とを含んでおり、主剤(A)に対する硬化剤(B)の配合割合が少ないほど、得られるシリコーン組成物の針入度が大きくなる(すなわち、柔らかくなる)。
絶縁無機黒色顔料としては、三菱マテリアル株式会社製の品番13M-Cを使用した。
表1及び表2に示す配合量により、これらの材料を混合及び混練し、押出成形によりシート状に成形し、この後、乾燥及び硬化させることによってシリコーン組成物を形成し、厚み150μmの衝撃吸収材を形成した。
(実施例2~9、比較例1~5)
表1及び表2に示すように、実施例1において、使用する材料の配合量を変更し、物性の異なる複数種類の衝撃吸収材を形成した。
(物性)
上記の各実施例及び各比較例について、ガラス板に対する粘着力、波長が300nm以上850nm以下の光の透過率、JIS K 2207に準拠した25℃における針入度、衝撃吸収率を測定した。
(有機EL表示素子の作製と評価)
各実施例及び各比較例の衝撃吸収材を有機EL表示素子の裏面に貼り付けて評価した。有機EL表示素子の作成方法と、評価項目は以下の通りである。
(有機EL表示素子の作製)
無アルカリガラス基板(厚さ3.0mm)にポリイミドテープにて半面マスクし、スパッタリングにより厚さ1000ÅのITO透明電極を成膜したものを透明支持基板とし、真空蒸着により、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)を蒸着速度15Å/sで基板に堆積させ、膜厚600Åの正孔輸送層を成膜した。次に、トリス(8-ヒドロキシキノリラ)アルミニウム(Alq3)を15Å/sの蒸着速度で膜厚600Åに堆積し、発光層を形成した。その後、この基板を別の真空蒸着装置に移し、フッ化リチウムを0.2Å/sの蒸着速度で5Å成膜した後、アルミニウムを20Å/sの速度で1000Å成膜し、最後にポリイミドテープを除去することで、基材の半面に対し有機発光材料層を有する積層体を得た。
得られた積層体が配置された基板の、該積層体全体を覆うように、開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて無機材料膜を形成し、表示部分と非表示部分を有する有機EL表示素子を得た。プラズマCVD法は、原料ガスとしてSiHガス及び窒素ガスを用い、各々の流量をSiHガス10sccm、窒素ガス200sccmとし、チャンバー内温度を100℃、チャンバー内圧力を120Pa(0.9Torr)とする条件で行った。形成された無機材料膜の厚さは、約1μmであった。
(評価)
実施例および比較例で得られた衝撃吸収材を、上記方法で得られた有機EL表示素子のガラス基板側へ貼付けて評価した。評価項目は以下の通りである。
衝撃吸収性の観点から、落下させた場合の有機EL表示素子の破損の程度として保護性を評価した。保護性は、作製した有機EL表示素子を、ガラス基材を下側に、衝撃吸収材を上側にした状態で、ポリカーボネート板(PC板)の上に載せ、250mmの高さから、直径33.3mm、重さ150.8gの金属製の鋼球を有機EL表示素子に落下させ、以下のように評価した。
OK:10回試験を行い、全ての有機EL表示素子に剥がれや割れによる外観変化なし。
NG:10回試験を行い、1個の有機EL表示素子でも剥がれや割れによる外観変化あり。
また遮光性の観点から、有機EL表示素子の表示の見やすさとして表示性を評価した。表示性は、有機EL表示素子に10Vの電圧を印加し、表示部分と非表示部分を目視で観察し、以下のように判定した。
OK:表示部分と非表示部分との境界が明確であり、コントラストが高い表示素子である。
NG:表示部分と非表示部分との境界が不明確であり、コントラストが低い表示素子である。
また衝撃吸収材の常温保管性を評価した。常温保管性は、以下のように判定した。
OK:常温で6ヶ月間保管した後に、保管前と比較して、性状がほとんど変化していないものである。
NG:常温で6ヶ月間保管した後に、保管前と比較して、使用上問題が生じる程度の性状変化があったものである。
表3、4に各実施例及び各比較例の常温保管性と、6ヶ月保管後の衝撃吸収材の粘着力、透過率、針入度、及び衝撃吸収率を示す。
Figure 0007373722000003
Figure 0007373722000004
Figure 0007373722000005
Figure 0007373722000006
1 衝撃吸収材
2 シリコーン組成物
3 絶縁無機黒色顔料

Claims (6)

  1. 粘着性および応力緩和性を有するシリコーン組成物中に、絶縁無機黒色顔料が含有された、厚み40μm以上500μm以下である衝撃吸収材であって、
    ガラス板に対する粘着力が2N/20mm以上であり、
    波長が300nm以上850nm以下の光の透過率が0.1%以下であり、
    JIS K 2207に準拠した25℃における針入度が50以上110以下であり、
    衝撃吸収率が20%以上である、
    衝撃吸収材。
  2. 前記シリコーン組成物100質量部に対して、前記絶縁無機黒色顔料の含有量が2.5質量部以上80質量部以下である、
    請求項1に記載の衝撃吸収材。
  3. 表示パネルの表面に配置された状態で使用され、
    熱及び紫外線によるポストキュアを必要としない、
    請求項1又は2に記載の衝撃吸収材。
  4. 常温保管が可能である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の衝撃吸収材。
  5. 単層からなる、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の衝撃吸収材。
  6. 表示パネルの遮光及び衝撃吸収のために使用される、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の衝撃吸収材。
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