JP5412080B2 - 粒子状ポリウレタン樹脂組成物、その製造方法および成形品 - Google Patents

粒子状ポリウレタン樹脂組成物、その製造方法および成形品 Download PDF

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Description

本発明は、粒子状ポリウレタン樹脂組成物、その製造方法および成形品、詳しくは、スラッシュ成形に好適な粒子状ポリウレタン樹脂組成物、その製造方法およびその粒子状ポリウレタン樹脂組成物から成形される成形品に関する。
スラッシュ成形は、複雑な形状の製品を容易に成形できること、肉厚を均一にできること、材料の歩留まりが良好であることから、自動車内装品などの成形に、広く利用されている。
スラッシュ成形用材料には、長年、軟質のポリ塩化ビニルの粉末が使用されているが、可塑剤の凝固点以下では風合いが損なわれ、また、経年による可塑剤の脱去により、表皮収縮による寸法変化が大きくなるなどの不具合もあり、そのため、軟質のポリ塩化ビニルの粉末に代替して、ポリウレタン樹脂の粉末を使用することが、種々検討されている。
例えば、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムを含む水分散液中で合成された、熱可塑性ポリウレタン樹脂の水分散液に、ビニル単量体の水分散液を混合して重合し、熱可塑性ポリウレタン樹脂から形成されるコア層と、ビニル単量体の重合体から形成されるシェル層とを有するコアシェル粒子を含む、スラッシュ成形用パウダー組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−96432号公報
しかるに、自動車内装品などとして用いられるスラッシュ成形用材料には、通常、顔料を配合することにより、着色している。しかし、意匠性を向上させるため、様々な顔料を配合し、さらには、発色性を向上させるため、顔料濃度を高くする傾向がある。しかし、特許文献1のスラッシュ成形用パウダー組成物において、顔料濃度を高くすると、溶融性が不十分となる場合がある。
本発明の目的は、成形性に優れ、さらに、機械物性および耐寒性に優れる成形品を成形することのできる、粒子状ポリウレタン樹脂組成物、その製造方法および成形品を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物は、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ビニルモノマー重合体および熱架橋性モノマーを含有し、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水系分散媒中で合成されていることを特徴としている。
また、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物では、さらに、顔料を含有することが好適である。
また、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物では、前記ポリオキシアルキレンエーテル化合物は、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩であることが好適である。
また、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物では、前記ポリオキシアルキレンエーテル化合物は、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムであることが好適である。
また、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物では、前記ポリオキシアルキレンエーテル化合物が、オキシブチレン基およびオキシエチレン基を有していることが好適である。
また、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物では、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリテトラメチレンエーテル鎖を有していることが好適である。
また、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物では、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂および前記ビニルモノマー重合体の水系分散液と、前記熱架橋性モノマーの水分散液とを混合した後、噴霧乾燥することにより、得られることが好適である。
また、本発明の成形品は、上記した粒子状ポリウレタン樹脂組成物を、スラッシュ成形することにより得られることを特徴としている。
また、本発明の成形品は、自動車内装品であることが好適である。
また、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物の製造方法は、イソシアネートとポリオールとを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程、ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水系分散媒中において、前記イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂を合成する工程、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂の水系分散液中において、ビニルモノマーを反応させることにより、ビニルモノマー重合体を合成する工程、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂および前記ビニルモノマー重合体の水系分散液と、熱架橋性モノマーの水分散液とを混合した後、噴霧乾燥する工程を備えることを特徴としている。
本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物によれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水系分散媒中で合成されていることにより、溶融性を向上させることができる。とりわけ、粒子状ポリウレタン樹脂組成物に顔料を含有させる場合でも、優れた溶融性を確保することができるので、その結果、成形性を向上させることができる。
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水系水分散媒中で合成されているので、成形品からのブリードを有効に防止することができる。
さらに、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物は、成形性に優れ、その粒子状ポリウレタン樹脂組成物から成形される成形品は、機械物性および耐寒性に優れる。
また、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性ポリウレタン樹脂およびビニルモノマー重合体の水系分散液と、熱架橋性モノマーの水分散液とを混合した後、噴霧乾燥することにより、容易に各成分が均一に分散した粒子状ポリウレタン樹脂成物を製造することができる。
本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物は、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ビニルモノマー重合体および熱架橋性モノマーを含有している。
本発明において、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを、ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水系分散媒中で反応させることにより、得ることができる。
イソシアネート基末端プレポリマーは、イソシアネート、ポリオール、必要によりモノオールおよび/またはモノアミンから合成される。
イソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に用いられる有機イソシアネートであれば、特に制限されないが、好ましくは、脂環族ポリイソシアネートおよび/または脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンまたは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよびそれらの異性体混合物、1,3−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサンまたは1,4−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサンおよびそれらの異性体混合物などが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートのうち、好ましくは、トランス−トランス、トランス−シス、シス−シスの3種類の異性体が混合されている4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トランス−トランス異性体比が高い4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンまたは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよびそれらの異性体混合物が挙げられる。
また、脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートなどが挙げられる。
さらに、イソシアネートとして、成形品の長期耐熱性を損なわない範囲で、モノイソシアネートを併用することもできる。モノイソシアネートとしては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、2−エチルヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどが挙げられる。
これらイソシアネートは、単独使用または2種以上併用してもよく、好ましくは、脂環族ポリイソシアネートを単独使用する。また、イソシアネートを併用する場合には、併用するイソシアネートの総モルに対して、脂環族ポリイソシアネートを、好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは、80モル%以上含有する。
本発明において、ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、これらのポリオール中でスチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステルなどのビニルモノマーを重合させたポリマーポリオールなどの、数平均分子量400〜5000、もしくは、水酸基価が10〜125mgKOH/gの高分子量ポリオールが挙げられる。高分子量ポリオールの数平均分子量は、好ましくは、1400〜3000、さらに好ましくは、1500〜2500である。一方、ポリマーポリオールを用いる場合は、その水酸基価が、好ましくは、20〜80mgKOH/g程度である。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
ポリプロピレングリコールとしては、例えば、低分子量ポリオールまたは低分子量ポリアミンを開始剤とする、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加重合物(2種以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む。)が挙げられる。
なお、低分子量ポリオールは、ヒドロキシル基を2つ以上有する数平均分子量60以上400未満の化合物であって、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(7〜22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,4−シクロヘキサンジオール、アルカン−1,2−ジオール(C17〜20)、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスフェノールAなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどのヒドロキシル基を4つ以上有する多価アルコールなどが挙げられる。
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物や、テトラヒドロフランの繰り返し単位にネオペンチルグリコールなどの上記した2価アルコールを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した2価アルコールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのジカルボン酸、および、それらジカルボン酸から誘導される酸無水物、酸ハライドなどが挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した2価アルコールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記した2価アルコールを共重合したラクトン系ポリオールなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した2価アルコールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールや1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
これらのうち、ポリオールとして、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテル鎖を有しているポリエーテルポリオールが挙げられ、具体的には、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。ポリテトラメチレンエーテル鎖を熱可塑性ポリウレタン樹脂に導入することにより、触感が向上し、また、成形品の低温特性が向上する利点がある。
さらに、ポリオールとして、上記した低分子量ポリオールを併用することができる。
モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、その他のアルカノール(C5〜38)および脂肪族不飽和アルコール(9〜24)、アルケニルアルコール、2−プロペン−1−オール、アルカジエノール(C6〜8)、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オールなどが挙げられる。
モノアミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン)、3−(ドデシルオキシ)プロピルアミン、N,N−ジメチル1,3−プロパンジアミン、モルホリンなどが挙げられる。
なお、モノオールおよび/またはモノアミンは、熱可塑性ポリウレタン樹脂の分子量調整のために、必要により配合される。
イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、ポリオール、および、必要によりモノオールおよび/またはモノアミンの活性水素基(ヒドロキシル基およびアミノ基)に対する、イソシアネートのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、1.1〜4、好ましくは、1.4〜2.5となる割合で、それらを配合して反応させる。上記当量比が1.1未満であると、熱可塑性ポリウレタン樹脂が過度に高分子量となり、成形性を低下させる場合がある。一方、当量比が4を超過すると、粒子状ポリウレタン樹脂組成物の成形品が硬くなり、その触感を損なう場合がある。
この反応は、例えば、窒素雰囲気下、反応温度60〜95℃、好ましくは、70〜90℃で、反応時間2.0〜7時間、好ましくは、3〜5時間継続し、反応系において、所望のイソシアネート基含有量(例えば、2〜6重量%)となった時点で反応を終了する。
また、この反応では、必要により、アミン類や有機金属化合物などの触媒を添加することができる。触媒としては、好ましくは、有機金属化合物が挙げられ、そのような有機金属化合物として、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの錫系触媒、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、オクテン酸銅、ビスマス系触媒などが挙げられる。触媒は、単独使用または2種類以上併用することができ、例えば、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.001〜5質量部、好ましくは、0.01〜3質量部添加される。
そして、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを、ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水系分散媒中において、鎖伸長反応させて、熱可塑性ポリウレタン樹脂を得る。
本発明において、鎖伸長剤としては、例えば、脂環族ジアミン、脂肪族ジアミンなどのジアミン、例えば、上記した2価アルコール、上記した3価アルコールなどの低分子量ポリオールなどが挙げられる。
脂環族ジアミンとしては、例えば、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン(1,6−ヘキサメチレンジアミン)、ヒドラジン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタンなどが挙げられる。
これら鎖伸長剤のうち、ジアミンとして、好ましくは、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物、ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。また、低分子量ポリオールとして、好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物などが挙げられる。
ポリイソシアネートとして、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を用いる場合は、最も好ましくは、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミン、および、エチレングリコールが挙げられる。
鎖伸長剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
鎖伸長剤は、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.1〜1.1、好ましくは、0.4〜1.05となる割合で、配合される。
水系分散媒は、イソシアネート基末端プレポリマーおよび熱可塑性ポリウレタン樹脂を実質的に溶解しない水または水性溶剤であって、水性溶剤としては、例えば、水およびアルコール類(例えば、メタノール、エタノールなど)の混合溶液などが挙げられる。
そして、本発明において、水系分散媒は、ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物を含んでいる。
ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物は、アニオン性またはノニオン性の反応性乳化剤である。
また、ポリオキシアルキレンエーテル化合物は、アニオン性の反応性乳化剤として、ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル塩などが挙げられ、ノニオン性の反応性乳化剤として、ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテルモノオールなどが挙げられる。
ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル塩は、例えば、下記一般式(1)で示される。
O−(RO)−A (1)
(式(1)中、Rは二重結合を末端に有するアルケニル基、ROはオキシアルキレン基、Aは塩を示し、mは整数を示す。)
で示されるアルケニル基としては、例えば、ビニル、2−プロペニル(アリル)、メタリル(2−メチルアリル)、3−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプチニルなどの炭素数2〜7のアルケニル基が挙げられる。好ましくは、ビニル、3−メチル−3−ブテニルが挙げられる。
Oで示されるオキシアルキレン基としては、例えば、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシiso−プロピレン、オキシブチレン、オキシiso−ブチレン、オキシsec−ブチレン、オキシペンチレン、オキシiso−ペンチレン、オキシsec−ペンチレン、オキシヘキシレンなどの炭素数1〜6のオキシアルキレン基が挙げられる。ROで示されるオキシアルキレン基としては、種類が異なるオキシアルキレン基を2種類以上併用することもできる。その場合には、相異なるオキシアルキレン基は、ブロック型、ランダム型、交互型のいずれであってもよい。
Aは、ポリオキシアルキレンエーテル塩を形成する塩であって、例えば、硫酸塩(亜硫酸塩を含む。)、リン酸塩、塩酸塩、硝酸塩などが挙げられ、好ましくは、硫酸塩が挙げられる。このような塩を形成するカチオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属などの無機カチオン、例えば、アンモニウム(NH)、4級アミンなどの有機カチオンなどが挙げられる。好ましくは、有機カチオン、さらに好ましくは、アンモニウムが挙げられる。アンモニウムであれば、粒子状ポリウレタン樹脂組成物の溶融性をより一層向上させることができる。
mは、例えば、1〜50、好ましくは、3〜30である。
好ましくは、ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル塩として、下記一般式(2)で示される。
O−(RO)−(CO)−A (2)
(式(2)中、Rは二重結合を末端に有するアルケニル基、ROはオキシアルキレン基、Aは塩を示し、mおよびnは整数を示す。)
式(2)において、nは、例えば、1〜50、好ましくは、3〜30である。
、RO、Aおよびmは、上記と同様である。とりわけ、ROとして、好ましくは、オキシブチレンが挙げられる。ROがオキシブチレンである場合には、ポリオキシアルキレンエーテル塩は、オキシエチレン鎖およびオキシブチレン鎖を併有するので、溶融性をより向上させることができる。
また、ポリオキシアルキレンエーテル塩は、一般に市販されているものを用いることができ、例えば、ラテムルPDシリーズ(花王社製)や、アクアロンKHシリーズ(第一工業製薬社製)、アクアロンHSシリーズ(第一工業製薬社製)などが用いられる。
ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテルモノオールとしては、例えば、下記一般式(3)で示されるポリオキシアルキレンアルケニルエーテルが挙げられる。
O−(RO)−H (3)
(式(3)中、Rは二重結合を末端に有するアルケニル基、ROはオキシアルキレン基を示し、mは整数を示す。)
式(3)において、R、RO、mは、上記と同様である。
好ましくは、ポリオキシアルキレンエーテルモノオールとして、下記一般式(4)で示される。
O−(RO)−(CO)−H (4)
(式(4)中、Rは二重結合を末端に有するアルケニル基、ROはオキシアルキレン基を示し、mおよびnは整数を示す。)
式(4)において、nは、上記と同様である。
このようなポリオキシアルキレンエーテルモノオールは、そのHLBが、例えば、8〜18、好ましくは、10〜18である。
これらポリオキシアルキレンエーテル化合物のうち、好ましくは、アニオン性の反応性乳化剤、さらに好ましく、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、とりわけ好ましくは、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムが挙げられる。
これらポリオキシアルキレンエーテル化合物は、単独使用または併用することができる。
鎖伸長反応では、好ましくは、まず、イソシアネート基末端プレポリマーに、ポリオキシアルキレンエーテル化合物を配合し、次いで、水系分散媒を配合して、イソシアネート基末端プレポリマーを、ポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水系分散媒中に分散させる。これにより、ポリオキシアルキレンエーテル化合物を含むプレポリマー水分散液(乳化液)を調製する。
また、ポリオキシアルキレンエーテル化合物は、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、例えば、0.1〜5質量部、好ましくは、0.3〜3質量部、さらに好ましくは、0.5〜1.5質量部配合する。
また、水系分散媒は、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、例えば、60〜400質量部、好ましくは、80〜120質量部配合する。
その後、プレポリマー水分散液に、鎖伸長剤を配合する。鎖伸長剤は、イソシアネート基末端プレポリマーに対して、一括または分割して添加してもよく、あるいは、滴下することもできる。また、鎖伸長剤は、水に溶解後、鎖伸長剤の水溶液として添加することもできる。
鎖伸長反応は、例えば、1〜90質量%、好ましくは、10〜50質量%に調整した鎖伸長剤の水溶液を、例えば、10〜100℃、好ましくは、10〜60℃の温度に調整したプレポリマー水分散液に添加し、その後、さらに、例えば、20〜100℃、好ましくは、20〜60℃で、例えば、スケールにもよるが、0.5〜48時間反応させることにより、実施することができる。なお、必要により、上記した触媒を適宜添加することもできる。
これによって、熱可塑性ポリウレタン樹脂を水分散液(ポリウレタンディスパージョン)として得ることができる。
本発明において、ビニルモノマー重合体は、例えば、芳香族ビニルモノマーとα、β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルとの共重合体であって、芳香族ビニルモノマーとα、β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルとをラジカル共重合反応させることにより、得ることができる。
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー、例えば、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼンなどのアルキルビニルベンゼン、例えば、ビニルナフタレンなどの多環芳香族モノビニルモノマーが挙げられる。
これら芳香族ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、スチレンが挙げられる。
α,β―エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらα,β―エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレートが挙げられる。
なお、上記した芳香族ビニルモノマーやα、β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルの他に、これらと共重合可能な共重合性モノマーを必要により配合して、芳香族ビニルモノマーとα、β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルと共重合性モノマーの共重合体とすることができる。
共重合性モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニルまたはシアン化ビニリデンなどが挙げられる。
そして、芳香族ビニルモノマーとα、β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルと必要により配合される共重合性モノマーとをラジカル共重合反応させるには、それらモノマー総量に対して、芳香族ビニルモノマーを、例えば、35〜70質量%、好ましくは、45〜65質量%、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルを、例えば、30〜65質量%、好ましくは、35〜55質量%、共重合性モノマーを、例えば、30質量%以下の割合で配合するとともに、ラジカル重合開始剤を添加する。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ系化合物などが挙げられる。
過硫酸塩としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類、例えば、ジラウロイルパーオキサイド、ジ−(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類などが挙げられる。
アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロ二トリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロ二トリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス((2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、メチルプロパンイソ酪酸ジメチル、2,2,7−アゾビス〔N−(2−カルボキシル)−2−メチルプロピオンアミジン〕テトラハイドレート、2,2’‐アゾビス[2‐メチル‐N‐[1,1‐ビス(ヒドロキシメチル)‐2‐ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’‐アゾビス[N‐(2‐ヒドロキシエチル)‐2‐メチルプロパンアミド]、2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチル‐4‐メトキシバレロニトリル)、1,1’‐アゾビス[シクロヘキサン‐1‐カルボニトリル]などが挙げられる。
これらラジカル重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、過硫酸ナトリウムや過硫酸アンモニウムが挙げられる。
ラジカル重合開始剤は、モノマー総量100質量部に対して、例えば、0.1〜2.0質量部、好ましくは、0.2〜1.2質量部添加する。
また、ラジカル共重合反応では、ビニルモノマー重合体の分子量調整のために、連鎖移動剤を添加してもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシルなどのメルカプタン類、例えば、α−メチルスチレンダイマーなどのスチレンダイマー類などが挙げられる。
これら連鎖移動剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
連鎖移動剤は、モノマー総量100質量部に対して、例えば、0〜10質量部、好ましくは、0.01〜5質量部、より好ましくは、0.01〜2質量部添加する。
さらに、ラジカル共重合反応では、必要により、重合用乳化剤や緩衝剤などの公知の添加剤を添加することができる。
そして、ラジカル共重合反応では、上記したモノマーを、例えば、反応温度20〜90℃、好ましくは、60〜90℃で、反応時間0.5〜20時間、好ましくは、1〜10時間反応させる。
ビニルモノマー重合体は、水分散媒中で合成した熱可塑性ポリウレタン樹脂とは、別途上記条件にて合成し、それを、熱可塑性ポリウレタン樹脂の水分散液に配合することができる。また、熱可塑性ポリウレタン樹脂の水分散液またはイソシアネート基末端プレポリマーの水分散液に、上記したモノマー、ラジカル重合開始剤および必要により連鎖移動剤、乳化剤(重合用乳化剤)、緩衝剤を、予め混合したモノマー乳化液として添加することにより、合成することもできる。後者の方法であれば、より均一に熱可塑性ポリウレタン樹脂とビニルモノマー重合体とを配合することができ、また、製造工程におけるハンドリングを向上させることができる。
ビニルモノマー重合体は、熱可塑性ポリウレタン樹脂100質量部に対して、例えば、5〜40質量部、好ましくは、15〜30質量部配合する。
本発明において、熱架橋性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を複数有する化合物であって、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネートなどの不飽和カルボン酸ジアリルエステル例えば、ウレタンジ(メタ)アクリレート、例えば、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これら熱架橋性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。熱架橋性モノマーは、熱可塑性ポリウレタン樹脂100質量部に対して、例えば、2〜10質量部、好ましくは、4〜8質量部配合する。
熱架橋性モノマーは、好ましくは、乳化剤および後述する添加剤とともに、水分散液として調製し、その水分散液を、熱可塑性ポリウレタン樹脂およびビニルモノマー重合体を含む水分散媒に配合、混合することができる。
乳化剤としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン型界面活性剤などが挙げられる。さらに、上記したビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物を用いることもできる。乳化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。また、乳化剤は、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは、0.5〜5質量部配合する。
そして、上記各成分が配合された水分散媒を、例えば、噴霧乾燥することにより、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
このような製造方法によれば、容易に各成分が均一に分散した粒子状ポリウレタン樹脂組成物を製造することができる。
得られる粒子状ポリウレタン樹脂組成物の体積平均粒子径は、例えば、50〜300μm、好ましくは、80〜200μmである。体積平均粒子径が50μm未満であると、粉体流動性の低下により、成形時にむらを生じる場合がある。一方、体積平均粒子径が300μmを超過すると、成形品表面にピンホールが発生する場合がある。
その後、粒子状ポリウレタン樹脂組成物には、顔料や添加剤などを添加することができる。
顔料は、粒子状ポリウレタン樹脂組成物を着色して、成形品の意匠性の向上を図るために添加され、特に限定されず、例えば、酸化チタン、亜鉛華などの白色顔料、例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、チタンイエロー、カドミウムイエロー、ジンククロメートなどの黄色顔料、例えば、ベンガラ、セレンレッド、モリブデンレッドなどの赤色顔料、例えば、紫ベンガラなどの紫色顔料、例えば、フタロシアニンブルー、インジゴ、スレンブルー、紺青、群青、コバルトブルーなどの青色顔料、例えば、フタロシアニングリーン、酸化クロムなどの緑色顔料、例えば、カーボンブラック、鉄黒などの黒色顔料などが挙げられる。顔料の配合割合は、粒子状ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、通常、5質量部以下である。
添加剤としては、例えば、重合防止剤、さらに、必要に応じて、その他の公知の添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、さらには、酸化防止剤、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などが挙げられる。
重合防止剤としては、溶融性の向上を図るために添加され、特に限定されず、例えば、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、トルキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノンなどのキノン類、例えば、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、モノ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノンなどのハイドロキノン類、例えば、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル・パラクレゾールハイドロキノンモノメチルエーテルなどのフェノール類などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、ハイドロキノン、p−メトキシフェノールが挙げられる。
添加剤の配合割合は、特に限定されず、通常、熱架橋性モノマー100質量部に対して、例えば、10質量部以下である。
これら顔料や添加剤は、各成分の合成時に添加してもよく、あるいは、各成分の混合・分散時に添加してもよく、さらには、粒子状ポリウレタン樹脂組成物の分離・乾燥後に添加することもできる。
そして、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物によれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水分散媒中で合成されているので、溶融性を向上させることができる。とりわけ、顔料を含有させる場合でも、優れた溶融性を確保することができる。
つまり、通常、顔料を含有させると、その分、溶融性が低下して、成形性が低下するところ、本発明では、熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水分散媒中で合成されているため、顔料を含有させる場合でも、良好な溶融性を、あるいは、顔料を含有しない程度のレベルの溶融性を確保することができる。その結果、意匠性の向上を図りつつ、成形性を向上させることができる。
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水分散媒中で合成されているので、成形品からのブリードを有効に防止することができる。
また、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性ポリウレタン樹脂およびビニルモノマー重合体の水分散液と、熱架橋性モノマーの水分散液とを混合した後、噴霧乾燥することにより、容易に各成分が均一に分散した粒子状ポリウレタン樹脂組成物を製造することができる。
さらに、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物は、成形性に優れ、その粒子状ポリウレタン樹脂組成物から成形される成形品は、機械物性および耐寒性に優れる。
そのため、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物は、トナーバインダーに用いることができる他、スラッシュ成形に好適であり、スラッシュ成形が実施される、家具類のシート、ソファーや玩具など種々の分野において使用される。とりわけ、本発明の粒子状ポリウレタン樹脂組成物は、スラッシュ成形(スラッシュ成型)により成形される自動車内装品に好適に使用することができる。
スラッシュ成形により成形品を得るには、例えば、予め加熱した、成形品に対応する形状の金型に、粒子状ポリウレタン樹脂組成物をふりまく。その後、金型を静置させる。次いで、溶融しなかった余分の粒子状ポリウレタン樹脂組成物を払い落とし、その後、金型を加熱し、その後、冷却する。なお、スラッシュ成形における各種条件は、公知のスラッシュ成形の条件が採用される。
実施例1
<熱可塑性ポリウレタン樹脂の合成>
窒素導入管および攪拌棒を取り付けた重合容器中に、PTG2000(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量2000、保土ヶ谷化学社製)43.47質量部
PTG1000(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量1000、保土ヶ谷化学社製)26.74質量部、エチレングリコール0.65質量部および2−エチルヘキサノール0.74質量部を投入し、80℃で1時間攪拌混合した。この混合液に、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名:デスモジュールW)25.51質量部を加え、さらに、80℃で2時間攪拌混合した。そして、この混合液に、さらにスタノクト(商品名 APIコーポレーション社製 錫系触媒)0.003質量部を加え、90℃以下の温度で2時間攪拌混合を継続した。その後、NCO質量%が3.07質量%まで低下していることを確認した後、冷却し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。
イソシアネート基末端プレポリマー97.12質量部を、ステンレス製ビーカーに投入し、60℃に温調して、ラテムルPD−104(商品名 反応性乳化剤 ポリオキシエチレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム 20質量%水溶液 花王社製)5.00質量部を添加し、TKホモディスパー(商品名 高速攪拌機 特殊機化工業社製)を用いて10分攪拌した。この混合物に、脱イオン水11.53質量部を加えた後、30分間攪拌混合した。さらに、脱イオン水59.55質量部を加え、イソシアネート基末端プレポリマーの水分散液を得た。そして、2.88質量部の1,6−ヘキサメチレンジアミンの20質量%水溶液(水溶液として14.4質量部)を加えた後、50℃に昇温し、一晩熟成して、熱可塑性ポリウレタン樹脂の水分散液(乳化液)(固形分50質量%)を得た。
<ビニルモノマー重合体の合成>
スチレンおよびメチルメタクリレートが、それぞれ60質量%、40質量%となるように混合した後、それらのモノマー総量100質量部に対して、0.5質量部となるα−メチルスチレンダイマーを添加し、さらに、25質量%アクアロンHS−1025水溶液(商品名 反応性乳化剤 ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム 第一工業製薬社製)0.48質量部、2質量%炭酸水素ナトリウム水溶液1.0質量部、脱イオン水11.12質量部を添加して、均一に混合してモノマー乳化液を調製した。
還流冷却機、窒素導入管および攪拌棒を備えた重合容器中に、上記で得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂の水分散液200質量部(固形分として100質量部)を投入し、80℃に加熱昇温した。80℃に昇温後、2質量%過硫酸ナトリウム水溶液8.0質量部を添加して、10分間攪拌した。
そして、熱可塑性ポリウレタン樹脂100重量部に対してモノマー総量が20重量部となるように、モノマー乳化液を、熱可塑性ポリウレタン樹脂の水分散液に対して、3時間かけて連続フィードした。
フィード終了後、脱イオン水1.6質量部にてフィードラインを洗浄し、さらに80℃で2時間熟成して、熱可塑性ポリウレタン樹脂およびビニルモノマー重合体を含む水系媒体(固形分50質量%)を得た。
<熱架橋性モノマーの配合>
熱可塑性ポリウレタン樹脂およびビニルモノマー重合体を含む水系媒体の固形分(つまり、熱可塑性ポリウレタン樹脂およびビニルモノマー重合体)100質量部に対して、カヤラッドDPHA(商品名 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタリスリトールペンタアクリレートの混合物 日本化薬社製)6質量部、p−メトキシフェノール0.06質量部(つまり、熱架橋性モノマー100質量部に対して1質量部)、イルガノックス245(商品名 耐熱安定剤 チバスペシャリティーケミカルズ社製)1質量部、チヌビン765(商品名 耐光安定剤 チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.5質量部、チヌビン213(商品名 紫外線吸収剤 チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.5質量部、シリコンTSF−451−3000(離型剤 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)0.5質量部、サンノールTD−3130 0.19質量部、脱イオン水11.12質量部を配合して水分散液(添加剤水分散液)を調製した。
そして、その水分散液(添加剤水分散液)を、熱可塑性ポリウレタン樹脂およびビニルモノマー重合体を含む水系媒体に配合して、10分間攪拌した。攪拌後、スプレードライヤ(L−12 大川原化工機社製)にて、アトマイザ回転数5000min−1、熱風温度100℃で噴霧乾燥して、粒子状ポリウレタン樹脂組成物を得た。
<顔料の配合>
得られた粒子状ポリウレタン樹脂組成物100質量部、顔料として、1.3質量部のカーボンブラック/炭酸カルシウム分散体(商品名:PV−817 住化カラー社製)および0.2質量部のベンガラ/炭酸カルシウム分散体(商品名:PV−936 住化カラー社製)を、ヘンシェルミキサーに投入し、回転速度700min−1で1分間攪拌して、粒子状ポリウレタン樹脂組成物を着色した。
実施例2〜10および比較例1〜3
表1および表2に示す組成および配合割合とした以外は、実施例1と同様の方法により、粒子状ポリウレタン樹脂組成物を製造し、着色させた。
物性評価
各実施例および各比較例で得られた粒子状ポリウレタン樹脂組成物(以下、各パウダーと略する)を、スラッシュ成形により成形して、成形品(シート)を得た。
すなわち、スラッシュ成形では、150mm×150mm×3mmサイズのシボつきのシート状の金型を240℃に加熱した後、各パウダー300gを金型上に、坪量13333g/mでふりまき、8秒間静置させた後、溶融しなかった余分のパウダーを払い落とした。次いで、250℃で60秒間静置した後、水冷して、シートを成形した。
その後、以下の方法で、成形品の物性を測定した。その結果を表1〜表3に示す。
なお、各パウダーの体積平均粒子径は、100〜130μm程度であった。各パウダーの体積平均粒子径は、粒度分析計(日機装(株)製、型式:MICROTRAC HRA)を用いた。
<溶融性(裏面グロス)>
光沢度計(型式:Gloss Meter VG2000 日本電色工業社製)を用いて、シートの裏面(シボが無い面)のグロスを測定した。グロスが高いほど、パウダーの溶融性が高く、グロスが低いほど、パウダーの溶け残りが生じたと判断した。
<引張強度(弾性率)および破断伸び>
シートの引張試験を実施し、破断時のそれぞれの弾性率(MPa)、および、破断時の標線間の伸び(%)を測定した。具体的には、JIS K−6251に記載の方法に準じて、試験片をJIS−4号ダンベルにて打ち抜き、引張試験機(商品名:万能引張試験装置RTA−500型 オリエンテック社製)にて、引張速度300mm/分の条件で測定した。なお、破断伸びについては、伸びの%を数値として示した。
<耐寒性(外観変化)>
成形したシートを5℃の冷蔵庫に72時間静置後、冷却処理前後のシートの外観を目視により観察した
シートの外観を、以下の基準に従って、評価した。
(評価基準)
「○」:変化が確認されなかった
「×」:液状ブリード物が確認された
Figure 0005412080
Figure 0005412080
なお、表1および表2中、組成の略号を下記に示す。
PTG2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量2000、保土ヶ谷化学社製)
PTG1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1000、保土ヶ谷化学社製)
U−2720:アジペート系ポリエステルポリオール(数平均分子量2000、三井化学ポリウレタン社製)
U−2710:アジペート系ポリエステルポリオール(数平均分子量1000、三井化学ポリウレタン社製)
EG:エチレングリコール
2−EtHA:2−エチルヘキシルアルコール
1,6−HDA:1,6−ヘキサメチレンジアミン
PD−104:ラテムルPD−104(商品名、反応性乳化剤、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム、固形分20%、花王社製)
PD−104−Na:ラテムルPD−104−Na(商品名、反応性乳化剤、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸ナトリウム、固形分20%、花王社製)
KH−5:アクアロンKH−05(商品名、反応性乳化剤、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム、固形分97.0%以上、第一工業製薬社製)
KH−10:アクアロンKH−10(商品名、反応性乳化剤、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム、固形分97.0%以上、第一工業製薬社製)
TD3130:サンノールTD3130(商品名 非反応性乳化剤 ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 31質量%水溶液 ライオン社製)
St:スチレン
MMA:メチルメタクリレート
MSD:α−メチルスチレンダイマー
DPHA:カヤラッドDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物、日本化薬社製)
MQ:p−メトキシフェノール

Claims (8)

  1. イソシアネートとポリオールとを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程、
    ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水系分散媒中において、前記イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂を合成する工程、
    前記熱可塑性ポリウレタン樹脂の水系分散液中において、ビニルモノマーを反応させることにより、ビニルモノマー重合体を合成する工程、
    前記熱可塑性ポリウレタン樹脂および前記ビニルモノマー重合体の水系分散液と、熱架橋性モノマーの水分散液とを混合した後、噴霧乾燥する工程
    を備える方法により製造され
    前記ポリオキシアルキレンエーテル化合物は、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩であることを特徴とする、粒子状ポリウレタン樹脂組成物。
  2. さらに、顔料を含有することを特徴とする、請求項1に記載の粒子状ポリウレタン樹脂組成物。
  3. 前記ポリオキシアルキレンエーテル化合物は、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムであることを特徴とする、請求項1または2に記載の粒子状ポリウレタン樹脂組成物。
  4. 前記ポリオキシアルキレンエーテル化合物が、オキシブチレン基およびオキシエチレン基を有していることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の粒子状ポリウレタン樹脂組成物。
  5. 前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリテトラメチレンエーテル鎖を有していることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の粒子状ポリウレタン樹脂組成物。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の粒子状ポリウレタン樹脂組成物を、スラッシュ成形することにより得られることを特徴とする、成形品。
  7. 自動車内装品であることを特徴とする、請求項に記載の成形品。
  8. イソシアネートとポリオールとを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得る工程、
    ビニル基を分子末端に有するポリオキシアルキレンエーテル化合物を含む水系分散媒中において、前記イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂を合成する工程、
    前記熱可塑性ポリウレタン樹脂の水系分散液中において、ビニルモノマーを反応させることにより、ビニルモノマー重合体を合成する工程、
    前記熱可塑性ポリウレタン樹脂および前記ビニルモノマー重合体の水系分散液と、熱架橋性モノマーの水分散液とを混合した後、噴霧乾燥する工程
    を備え
    前記ポリオキシアルキレンエーテル化合物は、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩であることを特徴とする、粒子状ポリウレタン樹脂組成物の製造方法。
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