JP7373528B2 - Bmpをコードするrnaの送達による骨形成誘導 - Google Patents

Bmpをコードするrnaの送達による骨形成誘導 Download PDF

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Description

本発明は、患者の(i)骨疾患、骨障害、または骨損傷の治療または予防、および/ま
たは(ii)骨形成分化、骨形成、骨化作用、骨再生、および/または骨の形態形成の誘
発または増強、に用いる骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein:BMP)をコ
ードする配列を有するポリリボヌクレオチド(polyribonucleotide:RNA)を含む医薬
組成物に関する。本発明は、BMPをコードするRNA(BMP・RNA)にも関し、特
に化学修飾された形態でのBMP・RNAに関する。本発明は、BMP・RNAを含む、
またはBMP・RNAと複合体化された複合体にも関し、特にリポフェクション、マグネ
トフェクション、およびマグネトリポフェクション複合体のようなトランスフェクション
複合体に関する。本発明は、さらに、RNAまたは複合体が配合されたキャリアおよびキ
ャリア体と、このキャリアまたはキャリア体を含む医薬組成物に関する。本発明は、さら
に、持続性mRNA送達のためのマトリクスまたは足場と、インビボ、エキソビボ、およ
びインビトロでの骨再生におけるその利用に関する。
骨組織は、主にコラーゲンとヒドロキシアパタイトからなる密性結合組織の一種である
。骨組織は、骨芽細胞、破骨細胞、および骨細胞という主に3つの細胞型によって定着し
ており、他の器官を保護するとともに、身体を支持し、動作を可能する(非特許文献1)
。骨は、また、骨髄中に赤血球および白血球を生成し、生命に不可欠なすべてのミネラル
分を保存する(非特許文献2)。骨組織が損傷した場合、組織の通常機能を回復しようと
骨化作用が生じる。一般に、治癒作用には、細胞の増殖・移動・分化の制御といった、骨
髄、骨皮質、骨膜、および周囲の軟組織の協調応答が必要となる(非特許文献3、非特許
文献4)。線維芽細胞成長因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、血小板由来の
成長因子、血管内皮成長因子(VEGF)といった多くのシグナリング分子が新しい骨の
形成の制御に関わっている。サイトカインの放出、低酸素症、および血管破裂を通して、
細胞は骨折部位に動員される。
骨折治癒は複雑な生理的過程である。様々な理由からこの過程が進まないことがあり、
例えば癒着が遅れたりまたは癒着不能になったりする。治療の選択肢は、骨折修復に至る
細胞の過程を増強するよう主に設計されている。同時に、骨折部位を機械的に支持するた
めの生体材料(非特許文献5、非特許文献6)および必要とされる成長因子を送達するた
めのプラットフォーム(非特許文献7、非特許文献8)がたびたび用いられる。
BMPはおそらく骨再生に関わる最も重要な成長因子である(非特許文献9、非特許文
献10、非特許文献11)。BMPは、(1)骨格前駆細胞の関与、(2)生後発育にお
ける骨芽細胞の成熟、という2つの異なるレベルで骨形成を制御する(非特許文献12)
。具体的には、BMP‐2は、インビトロとインビボの両方において骨形成誘導に効果的
であることが証明されている(非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15)。し
かしながら、BMPタンパク質(特に組み換え型BMP‐2)を用いた骨欠損の治療は高
価であり、また、構造異常のある骨の形成や炎症などの深刻な副作用を伴いうる超生理的
濃度を必要とする(Zara, Tissue Engineering: Part A 17 (9 & 10), 2011, 1389-1399
)。
現在、治療目的で遺伝子を骨組織に導入する可能性を探求している研究者が数名存在す
る。タンパク質送達よりも遺伝子送達の方が優れている点が既に実証されている。利点と
しては、タンパク質を局所的かつ集中的に、または必要に応じて散在的に発現させられる
という柔軟性が挙げられる。加えてタンパク質は細胞内で生成される。したがって、これ
により治療的経路の発生が促進される。遺伝子導入を介して送達されたタンパク質は、そ
の組み換え型同等物とは違い、発生初期段階にあり、さまざまな割合で存在する不正確に
折り畳まれた抗原性を有しうる分子によって汚染されていない(非特許文献16)。さら
に、より長期間タンパク質を発現させることができ、導入遺伝子の発現レベルを制御する
こともできる。したがって、治療時に用いる治療用タンパク質の用量を減らすことができ
る(非特許文献16)。特に、BMP‐2をコードするプラスミドDNAを用いた遺伝子
導入には、骨の治癒および再生を行う潜在可能性があることが示されている(非特許文献
17、18、19)。
しかしながら、利点があるにもかかわらず、現在の遺伝子送達用のウイルスベクターは
、強力な免疫原性や挿入突然変異といった安全性の問題と関連している。非ウイルスベク
ターには、遺伝子導入効率が低いという制限がある(非特許文献16)。後者は、プラス
ミドDNAを核へ十分に搬送できないことの主な原因とされている。
DNAに基づく遺伝子治療に代わるものとして、メッセンジャーRNA(mRNA)に
よる送達がある。近年、mRNAを用いた転写治療は、遺伝子および組み換え型タンパク
質治療に代わるより安全な治療法として大きな関心を集めている。mRNAには、組み換
え型タンパク質に伴う免疫原生のリスクも遺伝子治療に伴う突然変異のリスクもない。さ
らなる技術的な利点は、DNAの場合は活性化するには核に到達する必要がある一方、m
RNAであれば細胞質に到達するだけで活性化することである(Yamamoto, European Jou
rnal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 71, 2009, 484-489、Tavernier, Journal
of Controlled Release 150, 2011, 238-247)。したがって、mRNAは、幅広い医療
分野において先駆的治療法として台頭してきている(Yamamoto, European Journal of Ph
armaceutics and Biopharmaceutics 71, 2009, 484-4891、Tavernier, Journal of Contr
olled Release 150, 2011, 238-247、Kormann, Nature Biotechnology 29, 2011, 154-15
7、Esteller, Nature Review Genetics 12, 2011, 861-874)。特に、mRNAは近年非
ウイルス遺伝子療法の代替手段として台頭してきている。mRNAは細胞質でその機能を
発揮するため、核膜を横切ることに関する制限を克服している。すなわち、mRNAに基
づく転写治療はそのような制限とは無関係である。
mRNAは多くの治療法に対して潜在的なツールを提供することが明らかだが、強力な
免疫原生と従来のmRNAの限定的な安定性により臨床での利用は今のところ(癌ワクチ
ンなどに)限られている(非特許文献20)。
非特許文献21では、長さ120ヌクレオチドのポリA鎖を加えることによるmRNA
の安定性の向上が実証されている。非特許文献21ではさらに、UTRを最適化して安定
性と翻訳効率を実現することについての研究が報告されている。さらに、mRNAの化学
修飾も報告されており、これにより安定性の向上と自然免疫系の活性低下がもたされる。
特に、治療用マウスエリスロポエチン(therapeutic mouse erythropoietin:EPO)と
サーファクタントタンパク質B(surfactant protein B:SP‐B)をコードする化学修
飾mRNA(chemically modified RNA:cmRNA)の生成と治療能が報告されており
、前者は血液形成を誘導し、後者には致命的な先天性肺疾患を治療できる可能性がある(
非特許文献22)。加えて、DNAまたはcmRNAを配合し、細胞を播種するための3
Dマトリックスとしてコラーゲンスポンジが用いられている。(Chevallay, Medical and
Biological Engineering and Computing 38, 2000, 211-218、Reckhenrich, Biomateria
ls 32, 2011, 1996-2003、Scherer, The Journal of Gene Medicine 4, 2002, 634-643、
Elangovan, Journal of Controlled Release 218, 2015, 22-28、特許文献1)。近年の
研究によれば、3D足場内での培養は、細胞の形状、細胞のシグナリング、および細胞の
性状に関して、「ペトリ皿」に基づく2D細胞培養よりもインビボ環境により類似してい
る。これは細胞内での遺伝子発現に影響しうる(Mueller-Klieser, American Journal of
Pysiology-Cell Physiology, 273, 1997, C1109-C1123)。コラーゲンスポンジは、細胞
の移動、付着、粘着、場合によっては分化を修飾することができる3Dマトリックスのう
ちの1つである(Chevallay, Medical and Biological Engineering and Computing 38,
2000, 211-218)。また、Tのすべての転写因子FOXP3をコードするcmRNAによ
ってアレルギー性喘息を治療することが非特許文献23によって提案されている。cmR
NAは、欠陥・欠損遺伝子またはタンパク質関連疾患の優れた治療ツールとしても特許文
献2に開示されている。一般に、cmRNAを用いた転写治療は、遺伝子治療および組み
換え型タンパク質治療において、より安全かつ有望な代替的治療法として台頭してきてい
る。しかしながら、翻訳が一時的であること、安定性がDNAと比べて低いことから、c
mRNAの利用範囲は限られている。さらに、例えばEPO・cmRNAを使用した場合
、治療を成功させるには反復的利用/投与が必要となることが想定される(ヘマトクリッ
トの恒常的適応が必要とされる)。
より進んだ遺伝子治療手法では、欠損組織を修復するため、遺伝子的に修飾された自家
組織移植片を使用する。この治療方針では、前駆細胞を含み、かつ空間充填性や誘導性足
場または導電性足場という性質を有する、最小限の操作が行われた自家組織を通して遺伝
子を送達することで治癒工程が促進される(参考文献25、参考文献32)。例えば、脂
肪組織には骨芽前駆細胞が含まれることが知られており、天然の足場材料として機能する
能力があるとともに容易に採種可能である(参考文献25、参考文献33)。参考文献2
5では、骨および軟骨の欠損を修復するために、アデノウイルスを搬送するヒトBMP‐
2・cDNAが形質導入された脂肪・筋肉組織の移植片が用いられている。しかしながら
この手法にも上述の欠点が伴う。
遺伝子または薬品の持続性送達系は反復投与を必要としないため、長年の間、高い関心
を集め続けている。結果として、患者は処方された医薬品をより容易に使用でき、これに
より治療手法がより良好に受け入れられるようになる(Bartus, Science 281, 1998, 116
1)。RNA治療の場合、骨疾患などにより長期間にわたるタンパク質の発現が望ましい
とき、このような遅延送達系が特に適している。にもかかわらず、RNAを持続的に送達
する効率的な方法はこれまでのところ見出されていない。
国際公開第01/00708号パンフレット 国際公開第2011/012316号パンフレット
Balmayor, Stem Cell Therapy for Bone Disorders. In: Chase LG, Vemuri MC (eds.) Mesenchymal Stem Cell Therapy. Humana Press, New York 2012, 101-116 Carmona, Bone Health and Osteoporosis: A Report of the Surgeon General 2004, U.S. Department of Health and Human Services, Office of the Surgeon General., Rockville, MD Dimitriou, Injury 36(12), 2005,1392-1404 Einhorn, Clin Orthop Relat Res 355, 1998, 7-21 Tanner, J R Soc Interface 5, 2010, 541-557 Tanner, Proc Inst Mech Eng H 224(12), 2010, 1359-1372 Mourino, Expert Opin Drug Deliv 10(10), 2013, 1353-1365 Romagnoli, Clin Cases Miner Bone Metab 10(3), 2013, 155-161 Bessa, J Tissue Eng Regen Med 2(2-3), 2008, 81-96 Bessa, J Tissue Eng Regen Med 2(1), 2008, 1-13 Urist, Clin Orthop Relat Res 53, 1967, 243-283 Yamaguchi, Endocr Rev 21(4), 2000, 393-411 Keibl, Injury 42(8), 2011, 814-820 Katagiri, J Cell Biol 127(6 Pt 1), 1994, 1755-1766 Shekaran, Bone regeneration using an alpha 2 beta 1 integrin-specific hydrogel as a BMP-2 delivery vehicle. Biomaterials, 2014 Evans, Adv Drug Deliv Rev 64(12), 2012, 1331-1340 Lu, J Biomater Sci Polym Ed 23(1-4), 2012, 509-526 Chang, Neurosurgery 65, 2009, 75-81 Park, Gene Ther 10(13), 2003, 1089-1098 Van Tendeloo, Curr Opin Mol Ther 9(5), 2007,423-431 Holtkamp, Blood 108(13), 2006, 4009-4017 Kormann, Nat Biotechnol 29(2), 2011, 154-157 Mays, J Clin Invest 123(3), 2013, 1216-1228
したがって、本発明の基礎をなす技術課題は、骨に関する医療行為において改善手段お
よび方法を提供することである。
特許請求の範囲によって特徴づけられる実施形態を提供することにより上記技術課題は
解決される。
したがって、本発明は、骨形成タンパク質(BMP)をコードする配列を有するポリリ
ボヌクレオチド(RNA)を含み、患者の
(i)骨疾患、骨障害、または骨損傷の治療または予防、および/または
(ii)骨形成分化、骨形成、骨化作用、骨再生、および/または骨の形態形成の誘導ま
たは増強に用いられる医薬組成物に関する。
本発明は、(必要とする患者に対する)
(i)骨疾患、骨障害、または骨損傷を治療または予防する方法、および/または、
(ii)骨形成分化、骨形成、骨化作用、骨再生、および/または骨の形態形成を誘導ま
たは増強する方法にも関し、
上記方法は、必要とする患者に、骨BMPをコードする配列を有するRNAを(含む医
薬組成物を)薬学的に有効な量投与するステップを含む。
本明細書および以下の実施例に記載されるように、驚くべきことに、BMPをコードす
るRNA、特にヒトBMP‐2をコードするcmRNA(配列番号1によってコードされ
る配列番号3、すなわちhBMP‐2・cmRNA)またはヒトBMP‐7をコードする
cmRNA(配列番号2によってコードされる配列番号4、すなわちhBMP‐7・cm
RNA)によって骨形成が誘導/増強されるということが見出されたため、本発明は上記
特定した技術課題を解決する。したがって、本発明の文脈では、BMPをコードするRN
Aの使用により、骨再生の転写治療、および骨関連の疾患、障害、または損傷の治療また
は予防を達成できることが原理的に証明された。
さらに、本発明の文脈では、BMPをコードするRNA(BMP・RNA)を用いると
、一度の治療のみで骨関連の疾患、障害、または損傷の適切な/完全な治療(または予防
)が十分行われることが証明される。したがって、本発明の手段および方法による利点の
1つは、BMP・RNAの投与が一度きりでよいことである。
本発明の手段および方法のもう1つの利点は、例えばウイルスベクターおよび非ウイル
スベクターによる制限、ならびに安全性の問題および/または限られた安定性/発現性と
いう欠点とは無関係に、DNAに基づく遺伝子治療および従来の転写治療に代わる治療法
を適用できることである。
本発明にかかるRNAの使用の別の利点は、治療の持続期間を(例えばDNAベクター
の使用と比べて)調整可能であることである。例えば幹細胞を誘導する場合、体細胞を幹
細胞に再プログラム化するためには、転写因子の活性化が一時的であることが基本的に望
ましい。BMPをコードする関連RNAの投与を通じ、活性は時間経過とともに制御可能
となる。これに対し、以前の方法では、投与遺伝子の共適応というリスクがあり、これは
例えば腫瘍形成などの合併症を生じるおそれがある上、持続期間の制御を不可能にする場
合もある。
以下の限定的図目的ではない図面および実施例を参照しつつ、本発明をさらに記載する
天然アガロースゲルの電気泳動を用いた修飾mRNAの完全性およびサイズの測定を示す図である。cmRNAおよびRiboRuler RNA ladder High Rangeをローディングダイを含むRiboRulerホルムアミドと混ぜ、70℃で10分間培養した。その後、試料を氷上で冷却し、アガロースゲルに適用した。臭化エチジウム染色とIntas Gel Imaging System上での視覚化とによって検出を行った。 (A)は、cmRNA用量20pg/cellで、Lipofectamine2000(LF)、Dogtor、DF-Gold、またはbPEIをエンハンサーとして用いて形成したMetLuc・cmRNA複合体によってトランスフェクトされたAMSCにおけるMetridiaルシフェラーゼの発現の動態を示す図であり、(B)は、トランスフェクトから5時間後および24時間後の細胞生存率を示す図である。非トランスフェクト対照(細胞生存率100%)とトランスフェクト細胞の間の有意差を(*)で示す。(C)は、ともにMetLucをコードするpDNAまたはcmRNAが、DF-Goldリポプレックスでトランスフェクトされた後のAMSCにおけるレポーターの発現のタイムプロファイルを比較した図である。「pDNA」と「cmRNA」曲線下面積、AUCpDNAとAUCcmRNAは、0時間と120時間の時点の間のデータを積分することによって算出した。pDNAとcmRNAデータの間の有意差を(*)で示す。 DF-Gold/cmRNAリポプレックスおよびDF-Gold/SO-Mag6-115/cmRNA磁気トリプレックスでトランスフェクト後のAMSCおよびBMSCにおけるTomato、eGFP、およびMetLucレポーターの発現を示す図である。適用したcmRNA用量は20pg/cellである。(A)tomato N1・cmRNA複合体、または(B)eGFP・cmRNA複合体でトランスフェクト後24時間に撮影した蛍光顕微鏡写真である。スケールバーは250μmを表す。(C)は、eGFP・cmRNAの複合体でトランスフェクトした24時間後にeGFPを発現した細胞の割合を表したファックス分析の結果である。非トランスフェクト細胞とリポフェクト(*)またはマグネトフェクト(**)を行った細胞との間の有意差、およびリポフェクションとマグネトフェクションとの間(‡)の有意差を図に示した。(D)は、MetLuc・cmRNAの複合体でトランスフェクトした両細胞型のMetridiaルシフェラーゼの発現の時間経過を示す図である。AMSCとBMSCにおけるマグネトフェクションとリポフェクションの間の有意差を(*)および(**)でそれぞれ表した。MAIを算出するために、BMSCとAMSCの両方について、「マグネトフェクション」曲線下面積、AUCMFを「リポフェクション」曲線下面積、AUCLFに正規化した。 DF-Gold/cmRNAリポプレックスまたはDF-Gold/SO-Mag6-115/cmRNA磁気トリプレックスでトランスフェクト後、様々な時点でAMSCにおいて生成されたhBMP‐2を示す図である。生成されたhBMP‐2は、適用したhBMP‐2・cmRNA用量(20pg/cell)に正規化した。(A)は、上清において計測された分泌hBMP‐2の含有量でのトランスフェクション時に用いられた培地(骨形成培地vsOpti-MEM)の影響を示す図であり、(*)は比較群間における有意差を示す。(B)は、トランスフェクト後、1、2、3日目の上清(分泌hBMP‐2)および細胞可溶化物(細胞内hBMP‐2)で計測した、内生hBMP‐2(cmRNA(-))およびトランスフェクトが行われた細胞(cmRNA(+))によって生成されたhBMP‐2の含有量である。(*)は、非処理細胞とトランスフェクト細胞の間の分泌hBMP‐2における有意差を示す。(**)は、所与の観測時間におけるトランスフェクト細胞についての分泌hBMP‐2と内生hBMP‐2の間の有意差を示す。(♯)は、リポフェクションとマグネトフェクションの間の分泌hBMP‐2における有意差を示す。(C)は、トランスフェクト細胞内のhBMP‐2の合計含有量(分泌hBMP‐2+細胞内hBMP‐2)の時間経過を示す。MAI=6.0を算出するために、内生hBMP‐2のレベルを示す「非処理細胞」曲線下面積AUCrefを減算後、「マグネトフェクション」曲線下面積AUCMFを「リポフェクション」曲線下面積AUCLFに正規化した。 DF-Gold/cmRNAリポプレックスでトランスフェクトした細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性を示す図である。(A)は、トランスフェクト後12日目のALP染色である。(B)は、トランスフェクト後3、7、12日目のALP活性を示す図である。(*)は非トランスフェクト細胞とトランスフェクト細胞の間の有意差を示し、(**)はトランスフェクト後3日目と12日目の間の有意差を示す。適用cmRNA用量20pg/cellにおけるhBMP‐2・cmRNAの複合体を用いてAMSCにリポフェクションとマグネトフェクションを施した後の骨関連遺伝子の発現増加が確認された。トランスフェクト後、3、7、14、および21日目における(C)RunX2、(D)Osx、(E)ALP、(F)Coll I、(G)OPN、(H)OCNの発現の倍率増加が確認された。グレーのバーはDF-Fold/cmRNA複合体によるリポフェクションを示し、斜線のバーはSO-Mag6-115/DF-Gold/cmRNAトリプレックスによるマグネトフェクションを示す。(*)は、同じ観測時間におけるリポフェクション群とマグネトフェクション群の間の有意差を示す。(**)は、リポフェクション群とマグネトフェクション群(‡)について、トランスフェクト後の時間経過が異なるものを比較した場合の有意差を示す。 リポフェクションおよびマグネトフェクション後のAMSCの無機化を示す図である。トランスフェクト後21日目にアリザリン・レッド染色を行った。(A)は非トランスフェクト細胞、(B)はマグネトフェクション後の細胞、(C)はリポフェクション後の細胞である。(D)はトランスフェクト後、14日目および21日目のアリザリン・レッド染色を定量化した図である。非トランスフェクト細胞とトランスフェクト細胞の間の有意差を(*)で示し、異なるトランスフェクトが施された細胞間の比較を(‡)で示す。 エンハンサー対cmRNAの容積/重量比を4とし、1ディスク当たりのhBMP‐2・cmRNAまたはtomato N1・cmRNA用量を5μgとして得た、DF-Gold/cmRNAリポプレックスでトランスフェクトした3mmの脂肪ディスク体を示す図である。(A)は、tomato N1・cmRNA複合体でトランスフェクト後24時間に撮影した脂肪ディスク体の蛍光顕微鏡写真である。スケールバーは500μmを表す。DF-Gold/hBMP‐2・cmRNA複合体で脂肪ディスク体にリポフェクションを行った後の骨関連遺伝子の発現の誘導である。(B)hBMP‐2、(C)RunX2、(D)ALP、および(E)Coll Iの発現における倍率増加を示す。全てのRNAが抽出され、トランスフェクト後3日目と7日目にRT-PCRを行った。発現は、非トランスフェクト対照と比べた誘導倍率として報告する。全ての値をβ‐チュービュリンに正規化した。(*)は、ALPとColl Iの発現についてのトランスフェクト後3日目と7日目の間の有意差を示す。 DF-Gold/cmRNAリポプレックスまたはDF-Gold/SO-Mag6-115/cmRNA磁気トリプレックスでトランスフェクト後のさまざまな時点においてAMSCに生成されたhBMP‐7を示す図である。生成されたhBMP‐7は、適用したhBMP‐7・cmRNA用量(20pg/cellおよび32pg/cell)に正規化した。 DF-Gold/hBMP-7・cmRNAリポプレックスでリポフェクションを行った後のAMSCの無機化、およびSO-Mag6-115/DF-Gold/hBMP‐7・cmRNAトリプレックスでマグネトフェクションを行った後のAMSCの無機化を示す図である。用いたcmRNAの用量は20pg/cellおよび32pg/cellである。トランスフェクト後21日目にアリザリン・レッド染色を行った。(A)は非トランスフェクト細胞、(B)~(C)はリポフェクション後の細胞、(C)~(D)はマグネトフェクション後の細胞である。 DF-Gold/MetLuc・mRNAリポプレックスでAMSCをトランスフェクトした後のさまざまな時点におけるMetLucの発現を示す図である。試験を行ったDF-Gold対mRNAの容積/重量比は、適用したmRNA用量2.5、5、10、20pg/cellで、mRNA1μgにつき、DF-Goldが0.5~5μlである。 DF-Gold/MetLuc・mRNAリポプレックスでBMSCをトランスフェクトした後のさまざまな時点におけるMetLucの発現を示す図である。試験を行ったDF-Gold対mRNAの容積/重量比は、適用したmRNA用量2.5、5、10、20pg/cellで、mRNA1μgにつき、DF-Goldが0.5~5μlの範囲である。 DF-Gold対mRNAの容積/重量比4でDF-Gold/eGFP・mRNAリポプレックスを用いたトランスフェクト後(リポフェクション)24時間、およびFe対mRNAの重量/重量比0.5でDF-Gold/SO-Mag6-115/eGFP・mRNA磁気トリプレックスを用いたトランスフェクト後(マグネトフェクション)24時間の、(A)AMSCおよび(B)BMSCについてのフローサイトメトリーのヒストグラムである。 骨移植片材料に移植されたBMP‐2・RNAである(骨全体のμ‐CT結果)。処置から2週間後にすべての群についてμCTによる3D再現の縦断面を得た。(A)はフィブリン、(B)はC12-(2-3-2)/FFL・cmRNA、(C)C12-(2-3-2)/hBMP-2・cmRNAである。すべての試料についてImageJソフトウェアで同じ閾値(2500~4500)を設定することにより、仮骨形成領域をハイライトした。(D)ImageJによって定量化した仮骨形成量である。 コラーゲンスポンジへの複合体の配合および細胞播種を示す図である。(A)Luc・SNIM・RNAリポプレックス(リポプレックスの平均流体力学的径:65.8nm)を配合した場合と配合していない場合の真空乾燥させたコラーゲンスポンジの走査型電子顕微鏡写真である。(B)tdTomato・mRNAを配合したコラーゲンスポンジ上に播種後30時間のNIH3T3細胞の蛍光顕微鏡写真であり、tdTomato・mRNAの10%がFITCでラベルされた。(C)コラーゲンスポンジ上に播種後7日のNIH3T3細胞のヘマトキシリン染色である。細胞核はヘマトキシリンで濃青色に染色された。スケールバーは100μmを示す。上側の図の左端がコラーゲンスポンジの表面を示す。 eGFP・mRNA複合体を配合したコラーゲンスポンジ上にNIH3T3細胞を播種後48時間のトランスフェクション効率と細胞生存率を示す図である。(A)4倍に拡大した蛍光顕微鏡写真(JULYTM)であり、NIH3T3細胞におけるeGFP・mRNAの発現が見られる。(B)ファックス分析を示す図であり、100pg/cellのeGFP・mRNAでトランスフェクトしたNIH3T3細胞では、非トランスフェクト細胞と比べて、平均蛍光強度の明らかなシフトが確認できた。(C)ファックス分析を示す図であり、mRNA用量はトランスフェクション効率と相関関係にある。(D)および(E)は、それぞれPI染色とWSTアッセイのファックス分析を示す図であり、細胞生存率はおよそ60~70%を示している。示したデータはすべて3連の値からの平均±標準偏差である。 NIH3T3細胞を用いた2D培養対3D培養におけるMetridiaルシフェラーゼ・mRNAの発現の動態を示す図である。トランスフェクト後24時間おきに上清を回収し、直後にMet Lucの発現を計測した。示したデータはすべて3連の値からの平均±標準偏差である。Y軸は対数目盛である。 さまざまな細胞密度のMSCを用いた場合の、コラーゲンスポンジでのMetridiaルシフェラーゼの発現の動態を示す図である。この実験で用いたmRNAリポプレックスの量は50pg/cellである。トランスフェクト後24時間おきに上清を回収し、-20℃で保管した。8日後、すべての時点においてMetridiaルシフェラーゼの発現が計測された。示したデータは3連の値からの平均±標準偏差である。Y軸は対数目盛である。 インビボでの骨再生について免疫組織化学分析を行った図である。(A)無機化された骨組織の染色を行った写真である。赤色の長方形により、大腿骨の欠損部位におけるスポンジの配置箇所を示す。黒色の領域が高度に無機化された領域である。(B)骨膜領域における仮骨形成である。(C)線維組織形成の割合である。(D)類骨形成の割合である。t検定(n=9)を用いて値を比較した。 hBMP2・mRNAを配合したコラーゲンスポンジ上に播種されたMSCによるhBMP2の発現を示す図である。3つの異なる用量を試験した。示したデータは3連の値からの平均±標準偏差である。 インビトロでの骨分化を示す図である。RT‐qPCRの結果であり、hBMP2・cmRNAを配合したコラーゲンスポンジ上に細胞を播種後7日目と14日目における骨芽細胞マーカーの発現を倍率増加で表した図である。値は3連の平均±標準偏差である。(A)MC3T3-E1細胞:値はGAPDHの発現に正規化した。データは3Dにおける非トランスフェクト細胞に対する倍率増加として表した。(B)MSC:値はβ‐チュービュリンの発現に正規化した。データは、2Dにおける非トランスフェクト細胞に対する倍率増加として表し、多重t検定を用いて比較した。 インビボでの骨再生を示す図である。(A)移植後2週間のラットの大腿骨のμ‐CT画像である。赤色部分は新たに形成された骨を表す。(B)移植後2週間の骨形成領域を評価するμ‐CT分析である。値はt検定(n=9)を用いて比較した。 真空乾燥されたmRNAリポプレックスのコラーゲンスポンジ上での安定性を示す図である。MetLuc・mRNA配合のコラーゲンスポンジを2時間真空乾燥し、次いで真空封止を行い室温で保管した。真空乾燥後さまざまな時点において、プレートを開け、スポンジ上にNIH3T3細胞を播種した。細胞播種後24時間でMetLucの発現を計測した。示したデータはすべて3連の値からの平均±標準偏差である。Y軸は対数目盛である。 真空乾燥前後のコラーゲンスポンジのSEM画像である。スケールバーは200μmを示す。 コラーゲンスポンジ上のNIH3T3細胞に、SNIM MetLuc・mRNAまたは非修飾MetLuc・mRNAのいずれかをトランスフェクトした後のMetLucの発現の動態を示す図である。トランスフェクト後24時間おきに上清を回収し、-20℃で保管した。10日後、すべての時点においてMetridiaルシフェラーゼの発現が計測された。示したデータは3連の平均±標準偏差である。Y軸は対数目盛である。 コラーゲンスポンジ上のNIH3T3細胞におけるMetLucの発現の動態に基づいてスポンジの真空乾燥の効果を示す図である。トランスフェクト後24時間おきに上清を回収し、-20℃で保管した。5日後、すべての時点においてMetridiaルシフェラーゼの発現が計測された。示したデータは3連の平均±標準偏差である。Y軸は対数目盛である。 ファックス分析であり、ラットの脂肪組織から分離後のMSCの陽性マーカー(CD90およびCD29)と陰性マーカー(CD45、CD106、およびCD31)を研究した図である。IgM、K‐FITC、lgG1、K‐FITC、およびlgG1、K‐PEは対照として用いた。 分化時のスポンジ形態の巨視的変化を示す図である。写真は、スポンジ上にMSCを播種後7日目に96ウェルプレートから撮影したものである。 骨のさまざまな箇所におけるhBMP2・cmRNAリポプレックスを配合したコラーゲンスポンジのインビボでの骨形成効果を示す図である。t検定を用いて値を比較した。 μ‐CT写真であり、術後2週間における、インビボでの骨再生に用いたhBMP2・cmRNA配合のコラーゲンスポンジの効果を確認できる。黄色い部分が新たに形成された骨である。 (A)ラットの大腿骨の骨髄において、hBMP‐2をコードするcmRNAを配合した移植片では組織の無機化が有意に増加している。(B)hBMP‐2をコードするcmRNAを配合したコラーゲンスポンジを移植した結果として、骨膜組織の形成が有意に増加している。(C)hBMP‐2をコードするcmRNAを配合したコラーゲンスポンジで処置した場合、全容積に対する線維組織(fb.V/TV)が有意に増加している。(D)hBMP‐2をコードするcmRNAを配合したコラーゲンスポンジで処置した場合、全容積に対する類骨(OV/TV)の形成が増加している。(E)hBMP‐2をコードするcmRNAを配合したコラーゲンスポンジを移植した結果、骨の再吸収はより少なかった。
本発明は特に後述の実施例に記載された実験に基づく。
これらの実施例から、BMP・RNA(例えばhBMP‐2・cmRNAまたはhBM
P‐7・cmRNA)でトランスフェクトされた細胞(例えばBMSCやAMSCのよう
なMSC)を用いると、生物学的に活性なBMP(例えばBMP‐2またはBMP‐7)
の分泌レベルが、特に長期間的に(例えば7日超)、上昇することが特に分かる。これら
の分泌タンパク質のレベルは、(インビトロ実験において)骨形成分化の誘導に有効であ
った。これは、特にトランスフェクト細胞において現れたアルカリホスファターゼ(alka
line phosphatase:ALP)レベルの上昇を測定することによる骨形成マーカーの発現、
およびRunX2、ALP、オステリックス(Osterix)、オステオカルシン(Osteocalc
in)、オステオポンチン(Osteopontin)、およびI型コラーゲン(Collagen Type I)(
定量的RT‐PCRによって検出)の発現が増強することによって明らかとなった。これ
はさらに無機化(堆積した無機化マトリックス)によって(インビトロで)確認された。
無機化は、トランスフェクト後(cmRNAを含むMSC)2週間で得られたアリザリン
・レッド染色陽性によって確認された。hBMP‐2・cmRNAおよびhBMP‐7・
cmRNAのようなBMP・RNAの骨形成における潜在能力もBMP・RNAでトラン
スフェクトされたヒト脂肪/脂肪質組織に対して(エキソビボ)で実証された。hBMP
‐2、RunX2、ALP、およびI型コラーゲンの発現によって示されるように、ヒト
脂肪/脂肪質組織は(インビトロでの)骨形成反応も生じた。
トランスフェクション条件を最適化して、細胞毒性を最小化しつつも、より高いトラン
スフェクション効率を得られることも本発明の文脈において実証された。この文脈におい
て、cmRNAを用いたMSCのトランスフェクションは、当初、数種類のトランスフェ
クション試薬とさまざまなリポーターcmRNA(蛍光タンパク質)を用いて研究された
。高トランスフェクション効率が達成され、結果的に持続性タンパク質発現(最長5日)
が得られた。発現ピークは、通常、トランスフェクションから24~48時間後に見られ
た。
さらに、細胞毒性スクリーニングを行って、MSCのトランスフェクトに用いた複合体
の生体適合性を試験した。発現と細胞生存率の結果から、最も良好なトランスフェクショ
ン・プロトコルを選択し、BMP・RNA(例えばhBMP‐2・cmRNAまたはhB
MP‐7・cmRNA)を用いて細胞(MSC)をさらにトランスフェクトした。特に、
レポーター系としてMetridiaルシフェラーゼを用いることにより、DreamFect Gold(DF-G
old)が、(cm)RNAを細胞内へ送達させるのに非常に適した非ウイルス性の脂質エ
ンハンサーであることが確認された。DF-Gold/(cm)RNAの複合体は、(cm)R
NAのトランスフェクションに対しては非常に効率的でありつつも、細胞に対して非常に
穏やかに作用する。
トランスフェクションを行う目的で、本発明の文脈および後述の実施例では、リポフェ
クションおよびマグネトフェクション処置を用いた。それにより、さまざまな(cm)R
NAを用いて、特に2つの異なる主要な細胞型であるAMSCとBMSCにおいて、トラ
ンスフェクション効率の強固な増強が得られた。特に、リポフェクションとマグネトフェ
クションによる細胞(例えばBMSCやAMSCのようなMSC)内へのBMP・RNA
(例えばhBMP‐2・cmRNAまたはhBMP‐7・cmRNA)の導入は、インビ
トロでの骨形成をサポートしたことが確認された。
最高トランスフェクション効率はマグネトフェクションによって得られ、特にマグネト
フェクションをMSC(例えばBMSCまたはAMSC)に適用した場合に得られた。
BMSCにトランスフェクトを行うのは特に難しいとされている。(Lakshmipathy, St
em cells 22(4), 2004, 531-543)。しかしながら、BMSCであっても、eGFP・cm
RNAの磁気リポプレックスを用いたマグネトフェクションを介した効率的なトランスフ
ェクションを達成でき、24時間後に陽性細胞80%という結果が得られることが本発明
の文脈において確認された。同様に、hBMP‐2・cmRNAを用いた場合、AMSC
では、マグネトフェクション優位指数(Magnetofection Advantage Index:MAI)にお
ける6倍増が定量化された。特に、hBMP‐2でトランスフェクトされたAMSCは、
7日間にわたり、非トランスフェクト細胞と比べて非常に大量のhBMP‐2を分泌する
ことができた。この場合、タンパク質発現における平衡状態が24~72時間の間に認め
られた。本発明によれば、この効果は、hBMP‐2・cmRNA(または別のBMP・
RNA)の治療効果においても利益となりうる。実際、トランスフェクト細胞によるhB
MP‐2(または別のBMP)の定常的生成の結果、骨形成遺伝子の発現および無機化も
増強された。
さらに、マグネトフェクションを介してトランスフェクトされたAMSCは、転写因子
RunX2、オステオポンチン、アルカリホスファターゼの発現を高めるとともに無機物
の堆積も高めることが確認された。理論に縛られることなく、RunX2の発現は、骨形
成分化の進行の制御における転写因子RunX2の役割を反映している。マグネトフェク
ションを介してhBMP‐2・cmRNAでトランスフェクトされたAMSCは、Run
X2を最も多く持続的に発現し、インビトロにおけるそれら試料で認められる、より顕著
な骨形成とうまく相関する。
原則的には、BMP‐2について上述した内容は、BMP‐7についても本発明の文脈
において同様に示された。特に、hBMP‐7でトランスフェクトされたAMSCは、3
日間にわたり、非トランスフェクト細胞と比べてかなり大量のhBMP‐7を分泌するこ
とができた。この場合、タンパク質発現の最大値はトランスフェクション後24時間に見
られた。2つの異なるhBMP‐7・cmRNA用量、すなわち20pg/cellと3
2pg/cellについて試験を行った。20pg/cellでトランスフェクトされた
細胞は、用量32pg/cellの場合と比べてhBMP‐7の分泌量が有意に多かった
。トランスフェクトされたAMSCは無機化されたマトリクスを堆積することができ、こ
れは、インビトロでのそれらの試料における骨形成の増強を示す。
上述したように、hBMP‐2・cmRNA(または別のBMP・RNA)でトランス
フェクトされた脂肪組織の生検で発現したhBMP‐2のレベル(または別のBMPのレ
ベル)は増強することが本発明の文脈において実証されており、それにより最長7日間イ
ンビトロで培養された場合のいくつかの骨形成のマーカーの発現が上方制御された。これ
らの結果に基づき、hBMP‐2でトランスフェクトされた脂肪移植片(または他のBM
Pでトランスフェクトされた脂肪移植片)は、効率のよいhBMP‐2(または別のBM
P)源および自家組織修復用の前駆細胞として作用すると結論付けることができる。した
がって、本発明の文脈で得られたこのインビトロでの結果は、BMP・RNA、特にhB
MP‐2・cmRNおよびhBMP‐7・cmRNAは、骨再生のための自家組織移植技
術の利用における一歩前進を示すものである。これによりウイルスベクターおよびそれに
関連する欠点(安全性の問題など上記参照)を回避できる。
後述の実施例および本明細書の開示では、臨床的に関連する動物モデルを用いた骨形成
の研究への堅実な基礎が記載される。したがって、当業者であれば容易にそのような研究
を行うことができる。
非限定的な例として、hBMP‐2・cmRNAを骨の移植片材料に移植し、ラットの
大腿骨の非致命的なサイズの骨欠損にインビボで投与した。得られたマイクロ・コンピュ
ータ・トモグラフィ(Micro Computer Tomography:μCT)の結果は、骨治癒における
hBMP‐2・cmRNAの治療効果を支持するものである。hBMP‐2・cmRNA
で治療されたそれら動物においては、インビボでの骨形成の刺激が認められた。これに対
して、不特定のcmRNA(例えばホタル由来のルシフェラーゼ(firefly luciferase:
FFL)をコードするcmRNA)で治療された動物では骨形成は確認されなかった。こ
れにより、hBMP‐2・cmRNAは骨欠損部位におけるインビボでのhBMP‐2の
治療的発現を仲介し、骨形成を生じることが実証される。
キャリア/キャリア体(例えばコラーゲンスポンジまたはフィブリン塊)にRNA、特
にBMPをコードするRNAを配合した場合、およびトランスフェクトされるべき細胞が
そこに播種された場合も、該キャリア/キャリア体は効率的なトランスフェクション系の
一部となりうることが本発明の文脈においてさらに実証された。そのため、キャリア/キ
ャリア体は骨再生において3Dマトリクスとして機能することができる。加えて、キャリ
ア/キャリア体(例えばコラーゲンスポンジまたはフィブリン塊)は、細胞を播種する3
D足場としてだけでなく、RNA(特にBMPをコードするRNA、例えばcmRNA、
または非化学修飾BMPをコードするRNA)を持続的に送達するためのデポーとしても
使用可能であることが本発明の文脈において証明された。
特に、後述の実施例でも実証されるように、まず、リポプレックスを含む(m)RNA
をコラーゲンスポンジに予備配合し、真空乾燥させた。次いで、その乾燥および配合が行
われたスポンジを細胞を播種するための3Dマトリクスとして用いた。したがって、本発
明は、細胞播種と(m)RNAのトランスフェクション工程を単一工程として組み合わせ
簡素化した送達系にも関する。加えて、(m)RNAが配合されたコラーゲンスポンジは
遅延送達性を示した。そのため、このコラーゲンスポンジにより、古典的な2DのmRN
Aトランスフェクションに伴う急速かつ一時的なタンパク質生成という問題を克服するこ
とができる。臨床応用での例として、hBMP2・(m)RNA配合のコラーゲンスポン
ジを用いてインビトロとインビボでの骨再生を調査した。さらに、真空乾燥され(m)R
NAが配合されたコラーゲンスポンジの、すぐ使用できるバイオ製品としての可能性を調
査するために、その貯蔵寿命を成功裏に終わった長期間安定性試験において評価した。し
たがって、本発明は、持続性のある(m)RNA送達デポーをさらに提供するものである
。これにより、臨床的手法において遺伝子治療用の便利かつ安全な代替手段への新たな道
が開かれた。
驚くべきことに、非修飾(m)RNAですらも、特に本明細書に開示される持続性送達
系/デポーの一部であり、かつ該系/デポーによって投与される場合、遺伝子治療目的に
使用できることが本発明の文脈において実証された。
本発明の別の利点は、細胞のトランスフェクション効率が高い(100%に近い)こと
と細胞の毒性が低いことである。上述したように、安定性の問題を考慮し、特にコラーゲ
ンスポンジに配合された場合の真空乾燥したRNAは、長期間(例えば室温で最短で6カ
月)の安定性を保った。さらに、本発明の文脈では、hBMP2・RNAを用いた、(M
C3T3‐E1細胞およびMSCによる)インビトロと(ラットの大腿骨欠損での)イン
ビボでの骨再生により、前臨床応用における上記系の能力が確認された。
結論的には、本発明は、特に、長期間にわたってタンパク質を発現させるための安定的
かつ効率的なRNA送達系としてRNAを配合した(真空乾燥した)キャリア(コラーゲ
ンスポンジ)を提供し、それにより転写治療を臨床手法へと一歩近づけるものである。特
に、すぐ使用できるバイオ製品としての、RNAが配合され真空乾燥されたコラーゲンス
ポンジの安全性、効率性、および安定性が本発明により明らかとなった。ウイルスも遺伝
子も用いない技術によりRNA持続性送達系が実現され、この系はRNA修飾にも細胞型
にも細胞密度にも依存しない。この技術を用いてインビトロおよびインビボで骨分化を調
査したことで、長期間にわたるタンパク質の送達が治療の目的である場合、RNA配合し
た真空乾燥コラーゲンスポンジの臨床利用における能力が確認された。この研究により、
メッセンジャーRNAの容易かつ有望な利用への新たな道が開かれた。これは安全性の面
においてDNAに基づく遺伝子治療に勝るものである。
本発明はさらに以下の項目に関する。
1.骨形成タンパク質(BMP)をコードする配列を有するポリリボヌクレオチド(RN
A)を含む医薬組成物であって、患者の
(i)骨疾患、骨障害、または骨損傷の治療または予防、および/または
(ii)骨形成における分化、骨形成、骨化作用、骨再生、および/または骨の形態形成
の誘導または増強に用いられる医薬組成物。
2.上記BMPがBMP‐2またはBMP‐7である、項目1に記載の医薬組成物。
3.上記RNAがカプセル化されている、項目1または2に記載の医薬組成物。
4.上記RNAがリポフェクションによってトランスフェクトされる、項目1~3のいず
れか一項に記載の医薬組成物。
5.上記RNAがマグネトフェクションによってトランスフェクトされる、項目1~4の
いずれか一項に記載の医薬組成物。
6.磁気ナノ粒子(magnetic nanoparticle:MNP)をさらに含む、項目5に記載の医
薬組成物。
7.リポソームトランスフェクション試薬(liposomal transfection reagent:LTR)
をさらに含む項目4~6のいずれか一項に記載の医薬組成。
8.上記RNAに対する上記LTRの重量/重量比が、上記RNA1μgにつき、上記L
TRが2~20μgである、項目7に記載の医薬組成物。
9.上記MNP:上記LTR:上記RNAの比が、約0.5(鉄重量):約2~5または
4~7(重量):約1(重量)である、項目7または8に記載の医薬組成物。
10.上記RNAがインビボで送達される、項目1~9のいずれか一項に記載の医薬組成
物。
11.上記RNAが上記患者の骨または骨組織内に直接投与される、項目10に記載の医
薬組成物。
12.上記RNAが、上記患者に導入される細胞にエキソビボで送達される、項目1~9
のいずれか一項に記載の医薬組成物。
13.上記RNAが上記患者の細胞にエキソビボで送達され、かつ、上記RNAが送達さ
れた上記細胞が、上記患者に再導入される、項目12に記載の医薬組成物。
14.上記細胞が骨芽前駆細胞である、項目12または13に記載の医薬組成物。
15.上記細胞が間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)である、項目12~
14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
16.上記MSCが、脂肪質由来の間葉系幹細胞(adipose-derived mesenchymal stem c
ell:AMSC)、または骨髄由来のMSC(bone marrow-derived MSC:BMSC)であ
る、項目15に記載の医薬組成物。
17.BMP‐2またはBMP‐7をコードする配列を有するRNAであって、このRN
Aのシチジンの25%は5‐メチルシチジン(m5C)であり、このRNAのウリジンの
25%は2‐チオウリジン(s2U)である、RNA。
18.上記RNAが項目17のRNAである、項目1~16のいずれか一項に記載の医薬
組成物。
原則的には、本発明の医薬組成物は、骨に関連する、骨に関係がある、骨と生理的に連
結している、または骨に影響を与える任意の疾患、障害、欠損、または損傷(本明細書で
は単に骨疾患とも称される)の治療または予防に用いられる。この文脈では、本発明にか
かるRNAは治療または予防に用いられるうるため、RNAが導入される細胞または組織
において、天然では所望する程度まで発現しないか、まったく発現しないBMPを形成す
ることができる。RNAは、(i)遺伝子欠陥や疾患のせいでBMPが形成されない場合
と(ii)BMPの導入が身体にとって有益な場合の両方において使用されうる。このR
NAは、適切な程度まで発現しないBMPを補うためにも用いることができる。
特に、本発明にしたがって治療または予防される骨疾患は、例えばBMP‐1、BMP
‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6、BMP‐7、BMP‐8a、
BMP‐8b、BMP‐10、および/またはBMP‐15、好ましくはBMP‐7、よ
り好ましくはBMP‐2、のような1種類以上のBMPの(機能)に関連する、関係があ
る、または生理的に連結している。より具体的には、本発明にしたがって治療される骨疾
患は、1種類以上のBMPの(機能)の送達、誘導、および/または増加によって(その
症状が)治療、予防、または改善できる骨疾患である。
本発明の医薬組成物は、特には患者における、より具体的には本発明の文脈での骨疾患
の治療または予防の文脈における、骨形成分化(例えば骨形成細胞へのMSCの分化)、
骨生成、骨化作用、骨再生、骨形態形成、骨形成、骨成長、無機化、および/または石灰
化の誘導または増強にも用いられる。
本分野では、多くの種類の骨疾患が知られており、それらは例えば参考文献16の特に
表1に記載されている。本発明の文脈において治療または予防される骨疾患の例としては
、骨形成不全(単一遺伝子性、ドミナント・ネガティブ性、遺伝子性)、(変性)骨粗鬆
症、(骨粗鬆症による)骨折、癒着不能、骨欠損、分節性欠損、骨嚢腫、脊椎固定、虚血
壊死、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、ユーイング肉腫)、骨溶解(例えば、がん誘導の骨溶解
、無菌性弛緩)が挙げられる。
本発明にしたがってBMP・RNAが用いられうる特定の分野の一つとして、骨関連の
再生医療分野がある。疾患経過または加齢の文脈では、特に、疾患または老化作用のせい
でBMPの生成が減少し過ぎたり、もしくはまったく作られなくなった場合、BMPの導
入によって治療、緩和、予防、または治癒すら可能な変性骨疾患が発生する。BMPをコ
ードする関連BMP・RNAの導入により、変性作用は停止、あるいは再生し始めること
すらある。しかがって、一態様では、本発明にしたがって治療または予防される骨疾患は
変性骨疾患である。変性骨疾患の例としては、変性骨粗鬆症、ページェット病、脊椎症(
進行性変性関節炎としても知られる)、骨軟化症、くる病などが特に挙げられる。
一態様では、本発明の医薬組成物は骨治癒に用いられる。例えば、(骨粗鬆症による)
骨折、癒着不能、分節性欠損、骨嚢腫、脊椎固定、虚血壊死などが本文脈では治癒される
具体的には、癒着不能、分節性欠損、および骨折、より具体的には骨粗鬆症による骨折
を本発明にしたがって治療、予防、および/または治癒することが想定される。
本発明にしたがって用いられるRNAは、骨疾患の進行にも影響を及ぼしうる。例とし
ては、直接的に遺伝子欠損に起因するわけではないが、BMP・RNA発現から良い影響
を受ける疾患経過を伴う骨疾患が挙げられる。例として、「組織工学」のための因子とし
ての骨治癒用のBMPが挙げられる。
本発明にしたがってRNAによってコードされるBMPは、BMP‐1、BMP‐2、
BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6、BMP‐7、BMP‐8a、BMP
‐8b、BMP‐10、および/またはBMP‐15、好ましくはBMP‐7、より好ま
しくはBMP‐2、であってもよい。本発明にしたがって用いられる好ましいBMPはヒ
トBMP(hBMP)である。BMPは本分野では周知であり、例えば参考文献9、参考
文献10、参考文献11に記載されている。(h)BMPのヌクレオチド配列およびアミ
ノ酸配列は、本分野では既知のデータベース(例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/で閲
覧可能なNCBI)を介して入手可能である。各データベースのエントリーの例は後述の
表5に挙げられる。
hBMP-2の特定のヌクレオチド配列を配列番号1に記載する。hBMP‐7の特定
のヌクレオチド配列を配列番号2に記載する。hBMP‐2の特定のアミノ酸配列を配列
番号3に記載する。hBMP‐7の特定のアミノ酸配列を配列番号4に記載する。
「BMP」(または「BMP・RNA」)という用語は、各BMP(または各BMP・
RNA)の機能的断片および変異型も包含することが本発明の文脈においては想定されて
いる。
BMP・RNA自体とは別に、BMP・RNAの変異型も本発明にしたがって用いられ
うる。BMP・RNAの変異型は、構造的にはBMP・RNA自体とは異なることもある
が、機能的にはBMP・RNA自体と同じような活性を有する。特に、BMP・RNAの
変異型は、BMP自体として機能する、すなわち骨形成作用を呈することができるタンパ
ク質をコードすることが意図されている。より具体的には、BMP・RNAの変異型は、
骨形成を制御可能なタンパク質をコードすることが意図されている。この文脈では、骨形
成は、(i)骨格前駆細胞の関与、および/または(ii)生後発育における骨芽細胞の
成熟という2つの異なるレベルにおいて制御されうる。そのため、BMP・RNAの変異
型は、骨形成分化、骨形成、骨化作用、骨再生、および/または骨形態形成を誘導または
増強することができるタンパク質をコードすることが意図されている。当業者であれば、
所与のBMP・RNAの変異型がBMP・RNA自体として機能するか、例えば骨形態形
成作用を呈することができるタンパク質をコードするかを容易に判断することができる。
この目的で、当業者は、従来技術(例えば参考文献12で開示されるもの)や後述の実施
例に記載される手段および方法を参照する場合もある。例えば、当業者は、所与のBMP
・RNAの変異型が、インビトロ、エキソビボ、および/またはインビボで(例えば以下
の実施例5または実施例7で測定したように)骨形成を誘導するかを判断しうる。
原則的には、BMP・RNAの変異型はBMP・RNA自体に類似しているほど好まし
い。
本発明にかかる特定のBMP・RNAまたはBMP・RNAの変異型は、以下の群から
選択されるRNAとしてもよい。
(a)BMP‐1、BMP‐2(特に好ましい)、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5
、BMP‐6、BMP‐7(好ましい)、BMP‐8a、BMP‐8b、BMP‐10、
またはBMP‐15のアミノ酸配列をコードする、例えば配列番号3または配列番号4に
記載されるアミノ酸配列をコードする、RNA。
(b)1つ以上のアミノ酸残基を置換、挿入、および/または削除したBMP‐1、BM
P‐2(特に好ましい)、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6、BMP‐
7(好ましい)、BMP‐8a、BMP‐8b、BMP‐10、またはBMP‐15のア
ミノ酸配列をコードする、例えば1つ以上のアミノ酸残基を置換、挿入、および/または
削除した配列番号3または配列番号4に記載されるアミノ酸配列をコードする、RNA(
このRNAは骨形態形成作用を呈することができるタンパク質をコードする)。
(c)BMP‐1、BMP‐2(特に好ましい)、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5
、BMP‐6、BMP‐7(好ましい)、BMP‐8a、BMP‐8b、BMP‐10、
またはBMP‐15のアミノ酸配列をコードする、例えば配列番号3または配列番号4に
記載されるアミノ酸配列をコードする、ヌクレオチド配列の相補鎖とハイブリダイズする
(ヌクレオチド配列によってコードされた)RNA(このRNAは骨形態形成作用を呈す
ることができるタンパク質をコードする)。
(d)BMP‐1、BMP‐2(特に好ましい)、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5
、BMP‐6、BMP‐7(好ましい)、BMP‐8a、BMP‐8b、BMP‐10、
またはBMP‐15の(全長)アミノ酸配列、例えば配列番号3または配列番号4に記載
される(全長)アミノ酸配列と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70
%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少な
くとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なく
とも99%同一であるアミノ酸配列をコードするRNA(このRNAは骨形態形成作用を
呈することができるタンパク質をコードする)。
本発明の文脈では、「1つ以上のアミノ酸残基を置換、挿入、および/または削除した
」は、具体的には、最大で500、最大で400、最大で300、最大で200、最大で
100、最大で50、最大で30、最大で20、最大で10、最大で9、最大で8、最大
で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2、または1のアミノ酸残基を
置換、挿入、および/または削除したことを意味する。ある1つの具体的態様では、この
用語は、1つ以上のアミノ酸、好ましくは保存アミノ酸、が交換されることを意味し、例
えば、最大で500、最大で400、最大で300、最大で200、最大で100、最大
で50、最大で30、最大で20、最大で10、最大で9、最大で8、最大で7、最大で
6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2、または1の(保存)アミノ酸が交換され
ることを意味する。
本発明の文脈では、「ハイブリダイズする」は、ある核酸分子と別の(相補的)核酸分
子との間でハイブリダイゼーションが起こり得ることを意味している。2つの核酸分子の
ハイブリダイゼーションは、通常、従来のハイブリダイゼーション条件下で行われる。本
発明の文脈では、最も厳しいハイブリダイゼーション条件が好ましい。ハイブリダイゼー
ション条件は、例えば、Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning1: A Laborat
ory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USAに記載されている。特定の実施形
態では、「ハイブリダイズする」は、以下の(もっとも厳しい)ハイブリダイゼーション
条件下でハイブリダイゼーションが行われることを意味する。
ハイブリダイゼーション・バッファ:
2×SSC、好ましくは1×SSC;10×デンハート液(Fikoll+PEG+BSA、比
率1:1:1);0.1%SDS;5mM EDTA;50mM NaHPO、25
0μg/mlのニシン精子DNA;50μg/mlのtRNA;または0.25Mのリン
酸ナトリウムバッファ、pH7.2;1mM EDTA
7%SDS
ハイブリダイゼーション温度T:60℃、好ましくは65℃
洗浄バッファ:2×SSC、好ましくは1×SSC、より好ましくは0、1×SSC;0
.1%SDS
洗浄温度T:60℃、好ましくは65℃
上述したように、BMPの機能的断片をコードするRNAも本発明にしたがって用いて
もよい。この文脈における「機能的」とは、上記断片が、全長BMP・RNAと同じよう
に機能的に活性であることを意味する。特に、BMPの機能的に活性な断片は、骨形成作
用をなおも呈することができるBMP断片である。BMP・RNAの変異型の機能的活性
について上述した内容は、必要な変更を加えて、BMPの機能的断片にも適用される。
BMPの特定の(機能的)断片は、各BMPの少なくとも50個、少なくとも100個
、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも500個
、または少なくとも700個の(連続)アミノ酸残基のアミノ酸長さであってもよい。
本明細書に記載されたBMP・RNAの変異型のいずれかによってコードされたタンパ
ク質の機能的断片をコードするBMP・RNAも本発明の文脈において用いてもよい。ま
たそのようなBMP・RNAは、各BMPとして機能することができる、すなわち骨形成
作用を呈することができるタンパク質をコードすることを特に意図している。BMP・R
NAの変異型およびBMP断片の機能活性について上述した内容は、必要な変更を加えて
、そのようなBMP・RNAにも適用される。
原則的には、本明細書で用いられる「BMP・RNA」という用語の意味は、(i)B
MP自体および全長BMPをコードする本明細書に記載されるすべてのRNAと、(ii
)BMP変異型をコードする本明細書に記載されるすべての変異型RNAと、(iii)
BMPの機能的断片(の変異型)をコードする本明細書に記載されるすべてのRNAとを
包含する。
本発明にしたがって用いられるBMP・RNA構成の例示的ヌクレオチド配列を、配列
番号29または30(ともにhBMP‐2・(cm)RNA)と配列番号29(hBMP
‐7・(cm)RNA)に記載する。
本発明の文脈では、RNAは、細胞に進入した際、タンパク質もしくはその機能的断片
の発現に適している、またはタンパク質もしくはその機能的断片に翻訳可能である任意の
ポリリボヌクレオチド分子を意味すると理解されるべきである。「タンパク質」という用
語は、本明細書では任意の種類のアミノ酸配列、すなわち2つ以上のアミノ酸残基の鎖で
あって、それぞれがペプチド結合を介して結合し、かつペプチドおよび融合タンパク質を
含むもの、を包含する。
特に好ましい態様では、本発明にしたがって用いられるRNA、例えば本発明の医薬組
成物に含まれるRNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)である。この態様によれば
、これは本明細書で定義されるどのRNAもmRNAの形態をとりうることを意味する。
用いられるRNAは二本鎖RNA(例えば分子間または分子内ハイブリダイゼーション
に起因する)、または好ましくは一本鎖RNAであってもよい(しかしながら一本鎖RN
Aは分子内ハイブリダイゼーションに起因する二本鎖部分を少なくとも含むこともあり、
例えばヘアピン構造が挙げられる)。
一態様では、本発明にしたがって用いられるRNAは非天然RNAであり、特に非天然
mRNAである。
本発明にしたがって用いられるRNAは、化学修飾されたRNA(cmRNA)であっ
てもよい。原則的にはこれが好ましい。cmRNAは本分野では既知であり、例えば参考
文献22、参考文献23、および特許文献2に記載されている。特に、用いられるcmR
NAは特許文献2に記載されるcmRNAであってもよい。
本発明にしたがって用いられるRNAおよび特にcmRNAは、高安定性および/また
は低免疫原生を有していると好ましい。特に、上記RNAおよび特にcmRNAにより、
トール様受容体および/またはレチノイド誘導遺伝子I(RIG-I)とのRNA相互作
用が阻害されることが想定される。これは原則的には本明細書で定義するどの(cm)R
NAにもあてはまる。
免疫原生および安定性はそれ自体知られているやり方で測定することができる。
RNAの免疫原生の測定については、当業者に周知の種々の方法を用いることができる
。非常に適している方法は、RNAの投与に対する反応として生じる、細胞内における炎
症マーカーの測定である。例えば、TNF‐α、IFN‐α、IFN‐β、IL‐8、I
L‐6、IL-12、または当業者に知られる他のサイトカインなど、炎症に関連するサ
イトカインが通常計測される。DC活性化マーカーの発現も免疫原生の評価に用いること
ができる。免疫反応の別の表示は、トール様受容体であるTLR‐3、TLR‐7、およ
びTLR‐8とヘリカーゼRIG‐Iへの結合によって検出される。
免疫原生は、通常、対照と関連して測定される。一般的な方法では、本発明にしたがっ
て用いられるRNAが細胞に投与され、RNA投与への反応としての一定の時間間隔での
炎症マーカーの分泌が計測される。比較に用いる基準として、免疫反応をほとんどまたは
まったく生じないことで知られるRNAを用いてもよく、その場合、本発明にしたがって
用いられるRNAへの免疫反応は同じ範囲にとどまり、上昇しないはずである。本発明に
したがって用いられるRNAでは、例えば、免疫反応は、少なくとも30%、通常少なく
とも50%、さらには75%、またはさらには完全に抑えられるまで低下することが想定
される。
免疫原生は上記因子の計測、特に、TNF‐αレベルおよびIL‐8レベルと、TLR
‐3、TLR-7、TLR-8、およびヘリカーゼRIG‐Iへの結合能の計測によって
測定することができる。それによって(m)RNAが所望の低免疫原生を有しているかを
確認するために、関与するポリリボヌクレオチドを投与した後の、上記因子のうちの1以
上の因子の量を計測することができる。したがって、例えば、試験される一定量の(m)
RNAを静脈または腹腔内を介してマウスに投与することができ、所定の期間(例えば7
日または14日)が経過したのち、上記因子のうちの1つ以上を血液内で計測することが
できる。次いで、一定量の因子は、処置を行わなかった動物の血液に存在する一定量の因
子と関連付けられる。免疫原生の測定については、TLR‐3、TLR‐7、TLR‐8
および/またはヘリカーゼRIG-1との結合能を測定することが非常に有益であること
が見出された。TNF‐αのレベルおよびIL‐8のレベルからも非常に良好な目安が得
られる。本発明にしたがって用いられる(m)RNAでは、例えば、TLR‐3、TLR
‐7、TLR‐8およびRIG‐1との結合能を、非修飾RNAと比較して少なくとも5
0%低下させることが可能である。通例、それら因子との結合は少なくとも75%、また
はさらに80%まで低下させることが可能である。好適な実施形態では、TLR‐3、T
LR‐7、TLR‐8、およびRIG‐1との結合能は、本発明にしたがって用いられる
(m)RNAおよびmRNAが投与されていない動物のものと同じ範囲にある。言い換え
れば、ある特定の態様では、本発明にしたがって用いられる(m)RNAでは炎症反応も
免疫反応も事実上まったく生じないことが想定される。
特に、本発明にしたがって用いられるRNAはそのような低免疫原生を示すため、患者
の一般的状態には影響を及ぼさないことが想定される。したがって、上記因子の僅かな増
加は、結果的に一般的状態が悪化しない限り許容されうる。
本発明にしたがって用いられる(m)RNAのさらなる性質はその効率性と安定性であ
る。このため、転写効率、トランスフェクション効率、翻訳効率、およびタンパク質発現
の持続期間は重要であり、それ自体が知られている方法によって測定される。
転写効率は、RNAがどの程度効率よくDNAから生成できるかを示すものである。
ここで、修飾ヌクレオチドを多く用いた場合、問題が生じうる。本発明にしたがって修
飾されたRNAは高転写効率で生成されうる。
本発明にしたがって用いられる特定のRNAは、(化学的に)修飾されたシチジンヌク
レオチドおよび/または(化学的に)修飾されたウリジンヌクレオチドを有するRNAで
ある。そのようなRNAは例えば特許文献2に記載されている。
適した(化学)修飾の例を表4に挙げる。好ましい修飾シチジンは5‐メチルシチジン
(m5C)である。好ましい修飾ウリジンは2‐チオウリジン(s2C)である。
特に、本発明にしたがって用いられるcmRNAは、修飾シチジンヌクレオチドを5~
50%および/または修飾ウリジンヌクレオチドを5~50%、ならびに、非修飾シチジ
ンヌクレオチドを50~95%および/または非修飾ウリジンヌクレオチドを50~95
%有しうる。アデノシンヌクレオチドとグアノシンヌクレオチドは非修飾であってもよい
し、部分的に修飾されていてもよいが、非修飾の状態で存在しているのが好ましい。7、
5~35%のシチジンヌクレオチドおよび/またはウリジンヌクレオチドが修飾されてい
ると好ましく、修飾シチジンヌクレオチドの含有量が15%~25%の範囲にあり、かつ
/または修飾ウリジンヌクレオチドの含有量が15%~25%の範囲にあるとより好まし
い。
本発明にしたがって用いられるcmRNAの非限定的な例の1つとして、RNAのシチ
ジンの約25%が修飾されたシチジンであり(例えば5‐メチルシチジン(m5C))、
かつ/またはRNAのウリジンの約25%が修飾されたウリジン(例えば2‐チオウリジ
ン(s2U))であるRNA(m5C(0.25)s2U(0.25)RNA)が挙げら
れる。アデノシンヌクレオチドとグアノシンヌクレオチドは非修飾の状態で存在するのが
好ましい。
しかしながら、別の態様では、本発明にしたがって用いられるRNAはcmRNAでな
い場合もある。すなわち、RNAは非化学修飾RNAであってもよい。この態様について
、非化学修飾RNAは非天然RNAでもよいし、または好ましくは天然RNAであっても
よい。本発明の文脈で用いられる非化学修飾RNAは、修飾されていない、すなわち天然
のヌクレオチド残基、すなわち天然のアデノシン、グアノシン、シチジン、およびウリジ
ンのみを含むことが特に想定される。他の天然のヌクレオチドも原則的には含まれる(例
えばイノシンやチミジンなど)。特に、RNAは、上述したようなcmRNA、例えば特
許文献2に記載されたcmRNAでない場合もある。しかしながら、本発明にしたがって
用いられる非化学修飾RNAであっても低免疫原生を有し、例えばトール様受容体および
レチノイド誘導遺伝子I(RIG-I)との(m)RNA相互作用を阻害しうる。特に、
本発明にしたがって本明細書の別の箇所に記載されているように、マトリクスまたは足場
、すなわちキャリアに配合した場合、非化学修飾RNAは有利に用いることができる。そ
のため、非化学修飾RNAも、例えば、長寿命を示す。これにより、非化学修飾RNAが
配合されたキャリアは、持続性/遅延性RNA送達を行うための望ましいデポーとなる。
非化学修飾RNAの別の利点は、用いられるRNAを化学修飾する工程が不要なことであ
る。
したがって、本明細書の文脈では、マトリクスまたは足場、すなわちキャリアで用いら
れる医薬組成物および本明細書に開示される医薬組成物は、RNA、特に本発明にしたが
って用いられる非化学修飾RNAを持続的かつ/または遅延的に送達するために製造され
ることも想定される。より具体的には、上記医薬組成物またはマトリクス/足場は、RN
Aの持続性/または遅延性送達を行うための系、例えばデポーとして製造してもよい。以
下でより詳細に説明するが、この態様についても、RNAが本発明にかかる複合体の形態
をとり、マトリクス/足場は、真空乾燥または凍結乾燥されている場合があるとともにR
NAが配合されたコラーゲンスポンジであることが好ましい。
原則的には、本発明にしたがって用いられる(m)RNAはそのまま直接用いてもよい
。しかしながら、例えば(さらに)有益な性質を導入するために、mRNAを(さらに)
修飾する可能性もある。第1に、他のコード配列または非コード配列をコーディング鎖に
付すことによってmRNAを修飾してもよい。第2に、修飾ヌクレオチドに供給された官
能基に別の分子を結合させることによって修飾してもよい。
この文脈では、本発明にしたがって用いられるRNAには、別の機能的領域および/ま
たは3’もしくは5’非コード領域があってもよい。3’および/または5’非コード領
域は、コードされたタンパク質(BMP)、またはRNAの安定化に貢献するそれ以外の
人工的配列の側面に位置する領域であってもよい。当業者であれば、日常的な実験によっ
て毎回これに適した配列を見出すことができる。
好適な実施形態では、RNAは、特に翻訳を向上させるために、m7GpppGキャッ
プ、内部リボソーム侵入部位(IRES)、および/または3’端にあるポリA鎖を含む
。RNAには翻訳を促進するさらなる領域があってもよい。
必須なのは、BMPまたはその機能的断片の機能である、(m)RNAが用いられる骨
疾患の治療、緩和、または予防が実現できることである。
一実施形態では、用いられる(m)RNAを、標的細胞に特異の表面受容体と結合する
標的リガンドを組み合わせて、受容体を介して標的細胞のトランスフェクトを可能にして
もよい。この目的で、まず(m)RNAの細胞への導入に適したビヒクルを、あるいは(
m)RNA自体をリガンドで修飾してもよい。(m)RNAの細胞への導入に適したビヒ
クルの例としてカチオン剤が挙げられる。カチオン剤としては、カチオン脂質、カチオン
ポリマー、または、ナノ粒子、ナノカプセル、磁気ナノ粒子、およびナノエマルションも
挙げられる。適したビヒクルは当業者には既知であり、専門書に記載されている。適した
リガンドも当業者には周知であり、文献に記載されるとともに入手可能である。リガンド
としては、例えば、トランスフェリン、ラクトフェリン、クレンブテロール、糖、ウロン
酸、抗体、アプタマーなどを用いることができる。このようなビヒクルおよびリガンドの
例は本明細書の別の箇所にも記載した。
上述したように、(m)RNA自体をリガンドで修飾してもよい。この目的で、リボー
スの2’位置に一級アミノ基またはアジド基をもつ修飾ヌクレオチドを有する(m)RN
Aが好ましい。表4に例を挙げた。このような修飾は、それらは生物活性に貢献するため
特に好ましい。これらの修飾を介して、アミド生成または「クリック・ケミストリ」、例
えば生体共役技術、によってリガンドを容易に組み込むことができる。
特定の実施形態では、タンパク質、例えば受容体(アプタマー)、に結合できるRNA
配列が(m)RNAの5’端に導入される。この作業には、DNAレベルでリガンドを既
にマトリクス内に直接導入でき、さらにクローン化して、例えばインビトロ翻訳(in vit
ro translation:IVT)によって、(m)RNA内に導入できるという利点がある。し
たがってリガンドを用いてさらに(m)RNAを修飾する必要がなくなる。
さらなる実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG)等の不活性ポリマーを用い
て(m)RNAに追加的修飾を行う。これを行う方法は当業者に周知であり、リガンドに
関して知られている工程を用いることができる。したがって、例えば、転写後にポリエチ
レングリコールが結合されることになるポリエチレングリコール用結合部は、(m)RN
Aに用いられる修飾ヌクレオチドのごく一部とすることができる。ポリエチレングリコー
ルは(m)RNAの細胞外での安定化に役立つ。すなわち、ポリエチレングリコールはポ
リリボヌクレオチド分子が細胞に到達するまで保護する役目を果たす。細胞に進入する際
、PEGは切断される。したがって、PEGとRNAの間の結合は、細胞進入時の切断が
促進されるように設計されていると好ましい。このため、例えば、pHに依存して切断さ
れる官能基を用いることができる。RNAを安定化させるその他の分子も修飾ヌクレオチ
ドの適切な活性部を介して提供されうる。このようにして、(m)RNAは立体安定化に
よって酵素分解から守られ、生体液成分との相互作用を阻止することができる。このよう
に修飾された(m)RNAは、「ステルス」(m)RNAと表すことができる。
RNAの好ましい保護および安定化方法は欧州特許第1198489号明細書に記載さ
れ、その内容は参照によって本明細書に明白に援用される。本発明にしたがって用いられ
るRNAは、欧州特許第1198489号明細書に記載の方法で保護することができる。
RNAはまずこの方法によって有利に安定化および保護され、次にこのように処置された
RNAの活性は制限されない、またはそれほど制限されないことが見出された。したがっ
て、本発明の好ましい実施形態では、RNAは欧州特許第1198489号明細書にした
がって処置される。
一実施形態では、本発明にしたがって用いられるRNA(mRNA、cmRNA等)は
カプセル化してもよい。すなわちカプセルで包んでもよい。例えば、カプセルはナノカプ
セルとしてもよい。適したカプセルは本分野では既知であり、本明細書の別の箇所にも記
載した。
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、標的細胞内または標的組織内にRNAを送達
および/または導入するための1つ以上の薬剤または1つ以上の試薬をさらに含む。特に
、これらの薬剤または試薬は、細胞内または組織内へのRNAの送達および/または導入
を支持することが想定される。これら薬剤または試薬はRNAとともに投与してもよい。
送達/導入されるRNAは、これら薬剤または試薬と(例えば共有結合や錯体化によって
)結合させてもよいし、(例えば単に混ぜ合わせるのみで)結合させなくてもよい。それ
ら薬剤または試薬は本分野では既知であり(例えばTavernier, J Control Release 150(3
) (2011), 238-47)、例えば、脂質・リポソーム、ミセル、ポリマー、およびデンドリマ
ーからなる群から特に選択される。上記薬剤または試薬の具体例としては、DOTAP(
1,2‐ジオレオイル‐3‐トリメチルアンモニウムプロパン)、DODAP(1,2‐
ジオレオイル‐3‐ジメチルアンモニウムプロパン)、DOTMA(1,2‐ジ‐0‐オ
クタデセニル‐3‐トリメチルアンモニウムプロパン)、XTC (2,2‐ジリノレイ
ル‐4-ジメチルアミノエチル‐[1,3]-ジオキソラン)とMC3(((6Z,9Z
,28Z,31Z)‐ヘプタトリアコンタ‐6,9,28,31‐テトラエン‐19‐イ
ル4-(ジメチルアミノ)ブタノアート)、ALNY‐100((3aR,5s,6aS
)‐N,N-ジメチル‐2,2‐ジ((9Z,12Z)‐オクタデカ‐9,12‐ジエニ
ル)テトラヒドロ‐3aH‐シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール‐5‐アミン)
)、NC98‐5(4,7,13‐トリス(3‐オキソ‐3‐(ウンデシルアミノ)プロ
ピル)‐NI,N16-ジウンデシル‐4,7,10,13‐テトラアザヘキサデカン‐
1,16‐ジアミド)、C12‐200、DLin-KC2‐DMA、DODAP、1,
2‐ジステアリルオキシ‐N,N‐ジメチル‐3‐アミノプロパン(DSDMA)、1,
2‐ジオレイルオキシ‐N,N-ジメチル‐3‐アミノプロパン(DODMA)、1,2
‐ジリノレイオキシ‐N,N‐ジメチル‐3‐アミノプロパン(DLinDMA)、1,
2ジリノレニルオキシN,Nジメチル‐3‐アミノプロパン(DLenDMA)、N,N
ジオレイルN,Nジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,NジステアリルN
,Nジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N‐(1,2‐ジミリスチルオキシプ
ロパ‐3‐イル)‐N,N-ジメチル‐N‐ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DM
RIE)、3‐ジメチルアミノ‐2‐(コレスタ‐5‐エン‐3‐β‐オキシブタン‐4
-オキシ)‐l‐(cis,cis-9,12‐オクタデカジエノキシ)プロパン(CL
inDMA)、2‐[5’‐(コレスタ‐5‐エン‐3β‐オキシ)‐3’‐オキサペン
トキシ]‐3‐ジメチル 1‐1‐(cis,cis-9’,1‐2’‐オクタデカジエ
ノキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル‐3,4-ジオレイルオキシ
ベンジルアミン(DMOBA)、1,2‐N,N’‐ジオレイルカルバミル‐3‐ジメチ
ルアミノプロパン(DOcarbDAP)、2,3‐ジリノレオイル‐N,N‐3‐ジメ
チルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2‐N,N’‐ジリノレイルカルバミル‐
3‐ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、1,2‐ジリノレイルカルバ
ミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinCDAP)、2,2‐ジリノレイル‐4‐ジ
メチルアミノメチル‐[1,3]-ジオキソラン(DLin‐K‐DMA)、2,2‐ジ
リノレイル‐4‐ジメチルアミノエチル‐[1、3]‐ジオキソラン(DLin‐K‐X
TC2‐DMA)、またはそれらの混合物が挙げられる(Heyes, J Controlled Release
107 (2005), 276-287、Morrissey, Nat. Biotechnol. 23(8) (2005), 1003-1007、国際公
開第2005/121348号パンフレット)。例としてさらにDC-Chol(N,N
‐ジメチル‐N‐エチルカルボキシアミドコレステロール)や1,4-ビス(3‐N‐オ
レイルアミノ‐プロピル)ピペラジンが挙げられる(Gao, Biochem. Biophys. Res. Comm
. 179 (1991), 280、Wolf, et al BioTechniques 23 (1997), 139、米国特許第5744
335号明細書)。さらに別の例として、LIPOFECTIN(DOTMA:DOPE
)(Invitrogen社、カリフォルニア州、カールズバッド)LIPOFECTAMINE(
DOSPA:DOPE)(Invitrogen社)、LIPOFECTAMINE2000(Invi
trogen社)、FUGENE、TRANSFECTAM(DOGS)、およびEFFECT
ENEが挙げられる。さらに別の例として、ポリアクリレート、ポリアルキシアノアクリ
レート、ポリラクチド、ポリラクチド‐ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン
、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルギン酸塩、コラーゲン、キトサン、シクロ
デキストリン、ポリリシン、ポリアルギニン、オリゴ/ポリアミン、およびポリエチレン
イミンが挙げられる。これらは修飾されていてもよいし、非修飾でもよい。
薬剤または試薬は、オリゴマー、ポリマー、またはリピドイドでもよい。それらは、例
えば、国際特許出願PCT/EP2014/063756に記載される特徴的なオリゴ(
アルキレンアミン)部分のようなオリゴ(アルキレンアミン)部分を含んでいてもよい。
特に、薬剤または試薬は、国際特許出願PCT/EP2014/063756に記載され
たオリゴマー、ポリマー、またはリピドイドでもよい。これらの特定の薬剤または試薬の
主な特徴の1つは、以下の式(I)で表わされる一般的な構造実体を含むことである。
このような薬剤または試薬は、以下のa)、b)、およびc)から選択されるオリゴ(
アルキレンアミン)(を含む成分)であってもよい。
a)側鎖としてかつ/または末端基として式(II)で表わされる複数の基を含むオリ
ゴマーまたはポリマー。
ここで、変数a、b、p、m、n、およびR~Rは、式(II)で表わされる複数の
基において、基毎に独立して以下のように定義される。
aは1であり、かつbは2~4の整数である;またはaは2~4の整数であり、かつbは
1である。
pは1または2である。
mは1または2であり、nは0または1であり、m+nは2以上である。
~Rは互いに独立して、水素;‐CH‐CH(OH)‐R基、‐CH(R
‐CH‐OH基、‐CH-CH‐(C=O)‐O‐R基、‐CH-CH‐(
C=O)‐NH‐R基、または‐CH‐R基(RはC3~C18アルキルまたは
C‐Cの二重結合を1つ有するC3~C18アルケニルから選択される);アミノ基の保
護基;およびポリ(エチレングリコール)鎖から選択される。
は、水素;‐CH‐CH(OH)‐R基、‐CH(R)‐CH‐OH基、‐
CH-CH‐(C=O)‐O‐R基、‐CH-CH‐(C=O)‐NH‐R
基、または‐CH‐R基(RはC3~C18アルキルまたはC‐Cの二重結合を1
つ有するC3~C18アルケニルから選択される);アミノ基の保護基;‐C(NH)‐
NH;ポリ(エチレングリコール)鎖、および受容体リガンドから選択される。
さらにここで、式(II)に示される1つまたは複数の窒素原子をプロトン化して、式(
II)のカチオン基を提供してもよい。
b)反復単位として式(III)で表わされる複数の基を含むオリゴマーまたはポリマ
ー。
ここで、変数a、b、p、m、n、およびR~Rは、式(III)で表わされる複数
の基において、基毎に独立して以下のように定義される。
aは1であり、かつbは2~4の整数である;またはaは2~4の整数であり、かつbは
1である。
pは1または2である。
mは1または2であり、nは0または1であり、m+nは2以上である。
~Rは互いに独立して、水素;‐CH‐CH(OH)‐R基、‐CH(R
‐CH‐OH基、‐CH-CH‐(C=O)‐O‐R基、‐CH-CH‐(
C=O)‐NH‐R基、または‐CH‐R基(RはC3~C18アルキルまたは
C‐Cの二重結合を1つ有するC3~C18アルケニルから選択される);アミノ基の保
護基;‐C(NH)‐NH;およびポリ(エチレングリコール)鎖から選択される。
さらにここで、式(III)に示される1つまたは複数の窒素原子をプロトン化して、式
(III)のカチオン基を提供してもよい。
c)式(IV)で表わされる構造を有するリピドイド。
ここで、変数a、b、p、m、n、およびR~Rは以下のように定義される。
aは1であり、かつbは2~4の整数である;またはaは2~4の整数であり、かつbは
1である。
pは1または2である。
mは1または2であり、nは0または1であり、m+nは2以上である。
~Rのうち少なくとも2つの残基が、‐CH‐CH(OH)‐R基、‐CH(
)‐CH‐OH基、‐CH‐CH‐(C=O)‐O‐R基、‐CH‐CH
‐(C=O)‐NH‐R基、または‐CH‐R基(RはC3~C18アルキル
またはC‐Cの二重結合を1つ有するC3~C18アルケニルから選択される)である場
合、R~Rは互いに独立して、水素;‐CH‐CH(OH)‐R基、‐CH(R
)‐CH‐OH基、‐CH-CH‐(C=O)‐0‐R基、‐CH-CH
‐(C=0)‐NH‐R基、または‐CH‐R基(RはC3~C18アルキルま
たはC‐Cの二重結合を1つ有するC3~C18アルケニルから選択される);アミノ基
の保護基;‐C(NH)‐NH;ポリ(エチレングリコール)鎖、および受容体リガン
ドから選択される。
さらにここで、式(IV)に示される1つまたは複数の窒素原子をプロトン化して、式(
IV)のカチオンリピドイドを提供してもよい。
より具体的な態様では、このような薬剤または試薬は、以下のa)およびb)から選択
されるオリゴ(アルキレンアミン)(を含む成分)であってもよい。
a)は、側鎖としてかつ/または末端基として式(IIa)で表わされる複数の基を含む
オリゴマーまたはポリマーである。
‐NR{CH‐(CH‐NR‐CH‐(CH‐NR‐[C
‐(CH‐NR-R (IIa)
ここで、a、b、m、n、およびR~Rは、上記したように定義され、式(IIa
)に示される窒素原子のうち1つまたは複数をプロトン化して、カチオン性オリゴマー構
造またはカチオン性ポリマー構造を提供してもよい。
b)は、反復単位として式(IIIa)で表わされる複数の基を含むオリゴマーまたは
ポリマーである。
‐NR{CH‐(CH‐NR‐CH‐(CH‐NR‐[C
‐(CH‐NR‐ (IIIa)
ここで、a、b、m、n、およびR~Rは、上記したように定義され、式(III
a)に示される窒素原子のうち1つまたは複数をプロトン化して、カチオン性オリゴマー
構造またはカチオン性ポリマー構造を提供してもよい。
別のより具体的な態様では、このような薬剤または試薬は、式(IVa)で表わされる
構造を有するリピドイドから選択されるオリゴ(アルキレンアミン)(を含む成分)であ
ってもよい。
‐NR{CH‐(CH‐NR‐CH‐(CH‐NR
[CH‐(CH‐NR-R (IVa)
ここで、a、b、m、n、およびR~Rは、上記したように定義され、式(IVa
)に示される窒素原子のうち1つまたは複数をプロトン化して、カチオン性リピドイドを
提供してもよい。
そのような薬剤または試薬について、式(II)、(lla)、(III)、(III
a)、(IV)、または(IVa)において、nは1あってもよく;またはmが1であり
、かつnが1であってもよい。
さらに、そのような薬剤または試薬について、式(II)、(lla)、(III)、
(IIIa)、(IV)、または(IVa)において、aは1であり、かつbが2であっ
てもよく;またはaが2であり、かつbが1であってもよい。
ある特定の一態様では、上記オリゴマー、ポリマー、またはリピドイドは、カチオン性
(例えばプロトン化された)オリゴマー、ポリマー、またはリピドイドであってもよい。
本発明の文脈で用いられるそのようなオリゴマー、ポリマー、またはリピドイドの一例
として、限定はしないが、100mgのN,N’‐ビス(2‐アミノエチル)‐1,3‐
プロパンジアミン(0.623mmol)と575.07mgの1,2‐エポシキドデカ
ン(3.12mmol、(N-1)eq.、ここで、Nはオリゴ(アルキレンアミン)1
単位につき、一級アミンの2×量に2級アミンの1×量を足したものである)を混ぜ、8
0℃で96時間常に振動させて混合することで調製したカチオン性脂質が挙げられる。こ
のようなオリゴマー、ポリマー、またはリピドイドは、リピドイド「C12-(2-3-2)」とも
称される。
本発明にしたがって用いられる薬剤または試薬、特にポリマーは、コポリマー、特に統
計コポリマーであってもよい。そのようなコポリマーは、(例えば、長さが互い違いでな
いアルキレンアミン反復単位からなる類似配列を含むあまり好ましくないポリマーとは対
照的に)長さが互い違いのアルキレンアミン反復単位からなる統計/ランダム配列を含む
コポリマーであってもよい。コポリマーはカチオン性(例えばプロトン化された)コポリ
マーであってもよい。本発明にしたがって用いられるコポリマーは本分野では既知であり
、例えば、欧州特許出願番号14199439.2、特許文献1、欧州特許第11984
89号明細書、カナダ特許公開第2377207に記載されている。
特に、コポリマーは、以下の式(a1)および(a2)の反復単位から独立して選択さ
れる複数の反復単位(a)と、
以下の式(b1)~(b4)の反復単位から独立して選択される複数の反復単位(b)と
を含む統計コポリマーであってもよい。
ここで、反復単位(b)の合計に対する反復単位(a)の合計のモル比は0.7/1.0
~1.0/0.7の範囲にあり、
コポリマーに含まれる反復単位(a)および/または反復単位(b)の窒素原子のうちの
1つまたは複数をプロトン化してカチオン性コポリマーを提供してもよい。
コポリマーは、任意の反復単位(a)と任意の反復単位(b)をコポリマー高分子中に
統計的に分布させた統計コポリマーであってもよい。それは、重合反応中に反復単位(a
)を生じるモノマーと、重合反応中に反復単位(b)を生じるモノマーの混合物の共重合
から通常得られる。コポリマーは、任意の反復単位(a)と任意の反復単位(b)がポリ
マー高分子中にランダムに分布したランダムコポリマーだと好ましい。
本発明に係るコポリマーは、線状、分岐、または樹状コポリマーとすることができる。
当業者であれば分かることだが、2原子価(すなわち隣接単位への空き結合)を有する式
(a1)、(b1)、または(b3)の反復単位の存在は、コポリマー構造が線状に発達
することにつながる。したがって、本発明の線状コポリマーは、式(a1)の反復単位と
1つまたは複数のタイプの式(b1)および(b3)の反復単位を含むが、式(a2)、
(b2)、および(b4)の反復単位は含まない。さらに分かることだが、3原子価を有
する式(a2)、(b2)、または(b4)の反復単位の存在により、コポリマー構造に
おける分岐点がつくられる。したがって、分岐コポリマーは1つまたは複数のタイプの式
(a2)、(b2)、および(b4)の反復単位を含み、さらに、1つまたは複数のタイ
プの式(a1)、(b1)、および(b3)の反復単位も含みうる。
本発明に係るコポリマーは、上記定義した式(a1)および(a2)の反復単位から独
立して選択される複数の反復単位(a)と、上記定義した式(b1)~(b4)の反復単
位から独立して選択される複数の反復単位(b)を含む。好ましいのは、上記定義した式
(a1)および(a2)の反復単位から独立して選択される複数の反復単位(a)と、上
記定義した式(b1)および(b2)の反復単位から独立して選択される複数の反復単位
(b)を含むコポリマーである。
本発明に係るコポリマーは、反復単位(a2)、(b2)、および(b4)から選択さ
れた1つまたは複数のタイプの反復単位を含み、任意でさらに1つまたは複数のタイプの
式(a1)、(b1)、および(b3)の反復単位を含む分岐コポリマーだと好ましく、
なかでも、式(a2)の反復単位と、1つまたは複数のタイプの反復単位(b2)および
(b4)とを含み、任意でさらに1つまたは複数のタイプの式(a1)、(b1)、およ
び(b3)の反復単位を含むコポリマーだと好ましい。上記にしたがうと、より好ましい
コポリマーは、式(a2)の反復単位と式(b2)の反復単位とを含み、任意でさらに1
つまたは複数のタイプの式(a1)と(b1)の反復単位を含む分岐コポリマーである。
本発明に係るコポリマーでは、反復単位(a)と反復単位(b)合計数は通常20以上
であり、好ましく50以上、より好ましくは100以上である。通常、反復単位(a)と
反復単位(b)の合計数は10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは1
000以下である。
さらに、本発明に係るコポリマーでは、コポリマーに含まれるすべての反復単位のうち
反復単位(a)と反復単位(b)が占める割合は、80モル%以上だと好ましく、90モ
ル%以上だとより好ましい。さらに好ましいのは、コポリマーに含まれるすべての反復単
位のうち、反復単位(a1)および(a2)から選択された反復単位(a)と反復単位(
b1)および反復単位(b2)から選択された反復単位(b)が占める割合が80モル%
以上、より好ましくは90モル%以上のコポリマーである。最も好ましいのは、コポリマ
ーに含まれるすべての反復単位が反復単位(a)または(b)であることであり、なかで
も、コポリマーに含まれるすべての反復単位が反復単位(a1)および(a2)から選択
された反復単位(a)であるか、または反復単位(b1)および(b2)から選択された
反復単位(b)であると好ましい。
本発明に係るコポリマーの重量平均分子量は、例えば、線状ポリ(酸化エチレン)基準
に対するサイズ排除クロマトグラフィで測定した場合、一般的に1,000~500,0
00Daの範囲、好ましくは2,500~250,000Daの範囲、より好ましくは5
,000~50,000より少ない範囲にある。
本発明に係るコポリマーの末端基は、以下の式(c1)~(c3)で表わされる基、好
ましくは式(c1)および(c2)表わされる基から独立して選択される1つまたは複数
のタイプの基(c)を通常含む。
好ましくは、コポリマーに含まれる末端基は、以下の式(c1)~(c3)ので表わさ
れる基、好ましくは式(c1)および(c2)で表わされる基から独立して選択される1
つまたは複数のタイプの基(c)からなる。当業者であれば分かることだが、末端基の数
は本発明に係るコポリマーの構造に依存する。線状コポリマーには末端は2つしかないが
、分岐コポリマーには多くの末端基が含まれ、特に樹状コポリマーには多く含まれる。こ
れも分かることだが、コポリマーに含まれる末端基(c)の1つまたは複数の窒素原子を
プロトン化してカチオン性コポリマーを提供してもよい。
本発明に係るコポリマーでは、反復単位(b)の合計に対する反復単位(a)の合計の
モル比は、0.7/1.0~1.0/0.7の範囲にあり、好ましくは0.8/1.0~
1.0/0.8の範囲にある。このモル比は例えばNMRによって測定することができる
。したがって、上記比は、本発明に係るコポリマーの複数の高分子に対して通常測定され
、複数の高分子に含まれる反復単位(b)の合計に対する反復単位(a)の合計の全体比
を通常示すということがわかるであろう。
上記で示したように、本発明に係るコポリマーの1つまたは複数の窒素原子をプロトン
化して、オリゴカチオンまたはポリカチオンの形態を通常示すカチオンの形態のコポリマ
ーを得てもよい。反復単位(a)もしくは(b)または末端基(c)に含まれる第一級、
第二級、または第三級アミノ基が、特に、生理的流体を含めた水や水溶液において、プロ
トン受容体として作用しうる。したがって、本発明のコポリマーは、pH7.5未満の水
溶液において通常は全体として正電荷を示す。本明細書でいう水溶液は、溶媒が50%(
容積/容積)以上、好ましくは80%または90%以上、最も好ましくは100%の水を
含む溶液である。また、本発明に係る組成物は、例えば血液や肺液などを含むpH7.5
未満の生理的流体と接している際、窒素原子がプロトン化された状態にある反復単位(a
)および(b)を通常含む。本発明に係る組成物に用いられるコポリマーのpK値は、
自動pK滴定装置を用いた中和摘定によって測定することができる。そして所定のpH
値における実効電荷は、例えばヘンダーソン・ハッセルバルヒの式から算出することがで
きる。塩基中心のいくつかによって任意の電荷が共有されてもよいし、そのような電荷は
必ずしも一点に起因するものではない。生理的pHを有する溶液では、本発明に係る組成
物に用いられるコポリマーは、通常、プロトン化された状態のアミノ基を有する反復単位
とプロトン化されていない状態のアミノ基を含む反復単位とを含む。
しかしながら、当業者であれば分かることだが、本発明に係るコポリマーも本発明に係
る組成物も、カチオンの形態でコポリマーを含む乾燥塩の形態としても得られうる。
これも分かることだが、コポリマーおよび核酸、特にRNA、好ましくはmRNAなど
の一本鎖RNA、を含む本発明に係る組成物に含まれるプロトン化されたアミノ基の正電
荷に対する対イオン(アニオン)は、核酸に含まれるアニオン部分から通常得られる。核
酸中のアニオン部分に対して正電荷を帯びた基の存在が過多だった場合、正電荷は他のア
ニオン、特にClやHCO -などの生理的流体において通常生じるアニオンによって
打ち消すことができる。
上記にしたがって、本発明に係る好ましいコポリマーはランダムポリマーであり、
すべての反復単位の80mol%以上、より好ましくはすべての反復単位が、
以下の式(a1)および(a2)で表わされる反復単位から独立して選択される複数の反
復単位(a)と、
以下の式(b1)および(b2)で表わされる反復単位から独立して選択される複数の反
復単位(b)とから形成され、
反復単位(b)の合計に対する反復単位(a)の合計のモル比が、0.7/1.0~1.
0/0.7の範囲にあり、好ましくは0.8/1.0~1.0/0.8の範囲にあり、
コポリマーの末端基は、
式(c1)および(c2)で表わされる基から独立して選択される基(c)から形成され

コポリマーに含まれる反復単位(a)および/もしくは(b)ならびに/または末端基(
c)の1つまたは複数の窒素原子をプロトン化してカチオン性コポリマーを提供してもよ
い。コポリマーが、単位(a2)および(b2)と、任意で単位(a1)および/または
(b1)とを含む分岐コポリマーだとさらに好ましい。
本発明に係るコポリマーは、分岐または線状ポリエチレンイミン(PEI)などのポリ
アルキレンイミンの調製に用いられる既知の手順と類似する手順によって調製できると都
合がよい。コポリマーの生成に用いられるモノマーはそのように調整される必要があるこ
とが分かるであろう。本発明の文脈では、モノマーは定量的な手法で都合よく反応させる
ことができ、コポリマーに含まれる単位(a)と(b)の比は、重合されるモノマー混合
物においてモノマー比をそのように調整することによって調整できることが見出された。
ポリエチレンイミンは例えばアジリジンの開環重合によって調製できる一方、本発明に係
るコポリマーは、アジリジンと、アゼチジンと、必要に応じてピロリジンとを含む、また
はそれらからなるモノマー混合物の開環重合によって、あるいは好適な実施形態では、ア
ジリジンおよびアゼチジンを含む、またはそれらからなるモノマー混合物の開環重合によ
って調製することができる。「必要に応じて」という表現は、ピロリジンによって形成さ
れるはずの反復単位(b3)および(b4)、または末端基(c3)の存在有無を表すこ
とは分かるであろう。置換されていない環状アミンを開環重合すると、通常は分岐コポリ
マーが生成する。本発明に係る線状コポリマーは、例えば適切なN置換アジリジン、N置
換アゼチジン、およびN置換ピロリジンの重合、またはN置換アジリジンとN置換アゼチ
ジンの重合によって調製することができ、これに次いで、例えば、結果物であるポリアル
キレンイミン鎖に結合しているN置換基の加水分解開裂を行ってよい。これは例えば、Ka
trien F. Weyts, Eric J. Goethals, New synthesis of linear polyethyleneimine, Pol
ymer Bulletin, January 1988, Volume 19, Issue 1, pp. 13-19に公開される手順と類似
するものである。
デンドリマー(樹状コポリマー)の調製には、ポリエチレンイミン・デンドリマーまた
はポリプロピレンアミン・デンドリマーの生成で知られる合成手法と類似の方法が適用さ
れる。ポリプロピレンイミン・デンドリマーは、一級アミンにマイケル付加の反復配列を
用い、次いで不均一触媒水素化を行うことでアクリロニトリルの構成要素から合成するこ
とができ、(Newkome and Shreiner, Poly(amidoamine), polypropylenimine, and relat
ed dendrimers and dendrons possessing different 1→2 branching motifs; An overvi
ew of the divergent procedures. Polymer 49 (2008) 1-173、De Brabander-Van Den Be
rg et al. Large-scale production of polypropylenimine dendrimers, Macromolecular
Symposia (1994) 77 (1 ) 51-62)。ポリエチレンイミン・デンドリマーは、第一級アミ
ンに対する臭化ビニルの構成要素のマイケル付加の反復配列を用い、次いでガブリエルア
ミン合成法を用いて臭化アルキルをアミンに変換することで生成することができる(Yemu
l & Imae, Synthesis and characterization of poly(ethyleneimine) dendrimers, Coll
oid Polym Sci (2008) 286:747-752)。したがって、当業者が生成可能なのは、例えばプ
ロピレンイミンとエチレンイミンが厳密に交互に層をなすデンドリマーだけではないだろ
う。同様に、式(a2)、(b2)、および(b4)の反復単位のランダム組成物、好ま
しくは反復単位(a2)および(b2)のランダム組成物を含む、またはそれらからなる
層を有するデンドリマーも生成することができる。
アジリジンとアゼチジンの開環重合、またはアジリジンとアゼチジンとピロリジンの開
環重合は、水などの溶液中で行うことができる。全モノマー濃度は特に限定されないが、
通常の濃度範囲は10%重量/重量~80%重量/重量、好ましくは30%重量/重量~
60%重量/重量である。通常、重合はプロトンによって開始されるため、反応系にはブ
レンステッド酸、特に硫酸等の無機酸を加えることが好ましい。加える酸は一般に、モノ
マーの全濃度に対して当量0.001~0.01などの少量で十分である。反応は、例え
ば50℃~150℃、特に90℃~140℃の温度範囲などの都合よい速度で進行する。
これらの範囲では、分子量の大きいコポリマーは通常高温にあり、分子量の小さいコポリ
マーは低温にある。
原則的には、リピドイドは本発明にしたがって用いられる好ましい薬剤または試薬であ
り、特にオリゴマーと、さらに特にはポリマーと比較して好ましい。
RNAを標的細胞または標的組織内に送達および/または導入するための1つ以上の薬
剤または1つ以上の試薬のさらなる例として、リポソームトランスフェクション試薬(L
TR)や磁性粒子(MP)などが本発明の別の箇所で挙げられている。
RNAを標的細胞または標的組織内に送達および/または導入するためのある特定の方
式の一つとして、トランスフェクションが挙げられる。したがって、一態様では、用いら
れるRNAは、((標的)細胞または組織内へ)トランスフェクトされ、トランスフェク
ションによって送達/投与され、かつ/またはトランスフェクション用に調製されること
が想定されている。RNAをトランスフェクトするための手段および方法は本分野で周知
であり、例えばTavernier, J Control Release 150(3) (2011), 238-47、Yamamoto (Eur
J Pharm Biopharm. 71(3) (2009), 484-9)、参考文献22に記載されている。
トランスフェクションの特定の方式は、リポフェクション、マグネトフェクション、ま
たはマグネトリポフェクションである。本発明の文脈では、これらの種類のトランスフェ
クションにより良好な結果が達成された。結果はマグネトフェクションを用いた場合に特
に良好であり、マグネトリポフェクションを用いた場合には非常に良好であった。
したがって、一態様では、用いられるRNAは、リポフェクション用に調製され、リポ
フェクションによってトランスフェクトされるために調製され、リポフェクションによっ
て送達/導入され、かつ/またはリポフェクションによって投与されてもよい。
この態様によれば、本発明の医薬組成物には、少なくとも1種類の脂質またはリポソー
ムトランスフェクション試薬またはエンハンサーを(さらに)含めてもよい(LTR:リ
ポソーム型トランスフェクション試薬)。用いられるRNAは、LTRに含まれ、LTR
と複合体化し、かつ/またはLTRによって送達されてもよい。特に、用いられるRNA
は、RNAとLTRを含むリポフェクション複合体に含まれ、かつ/またはRNAとLT
Rを含むリポフェクション複合体によって送達されてもよい。本発明の医薬組成物にはリ
ポフェクション複合体を(さらに)含めてもよい。
LTRは本分野では既知であり、例えばOzBiosciences社(フランス、マルセイユ)の
ものが流通している。本発明にしたがって用いられるLTRは、標的細胞または標的組織
内にRNAを送達および/または導入するための上記薬剤または試薬からなる群から選択
してもよい。例えば、そのようなLTRは脂質またはリピドイドであってもよく、好まし
くは国際特許出願PCT/EP2014/063756号明細書に開示されるリピドイド
のようなカチオン性脂質またはカチオン性リピドイド(例えばC12-(2-3-2))、欧州特許
第2285772号明細書に開示される脂質(例えばDogtor)、欧州特許第100371
1号明細書に開示されるリポポリアミン(例えばDreamFect(商標)やDreamFect Gold(
商標))などが挙げられる。具体的なLTRとしては以下よりなる群から選択してもよい

(i)C12-(2-3-2)
(ii)DreamFect(商標)、好ましくはDreamFect Gold(商標)(DF(商標)/DF-Gold
(商標)、OzBiosciences社、フランス国、マルセイユ)
(iii)Dogtor(OzBiosciences社、フランス国、マルセイユ)
(iv)例えばLipofectamine 2000のようなLipofectamine(Invitrogene社、米国、カリ
フォルニア)
原則として、LTRとしては、Dogtorが好ましいが、DreamFect(商標)だとより好ま
しく、DF-Gold(商標)とC12-(2-3-2)であればさらにより好ましい。
DogtorのようなLTRは例えば欧州特許第2285772号明細書に記載されている。
DF(商標)やDF-Gold(商標)のようなLTRは例えば欧州特許第1003711号明細
書に記載されている。原則として、国際特許出願PCT/EP2014/063756号
明細書に開示されるオリゴマーやポリマー、リピドイド、欧州特許第2285772号明
細書に開示される特定のカチオン性脂質、欧州特許第1003711号明細書に開示される特定
のリポポリアミンが本発明に係る好ましいLTRである。C12-(2-3-2)やDF-Gold(商標)
のようなLTRだと最も好ましい。
限定はしないが、リポフェクション複合体の例として、DF-Gold(商標)/RNAリポ
プレックスと、C12-(2-3-2)/RNAリポプレックスが挙げられる。
標的細胞内または標的組織内にRNAを送達および/または導入するための本明細書に
記載された薬剤および試薬と、本明細書に記載されたLTRは、1種類または複数種類の
(例えば2種類、3種類、または4種類の)別の脂質(例えばコレステロール、DOPE
、および/またはPEG‐脂質(例えばDMPE-PEG)など)と組み合わせてもよい
。これらの別の脂質は、薬剤/試薬およびLTRの所望の機能をサポートし(細胞内また
は組織内へのRNAの送達および/または導入をサポートおよび/または増強し、トラン
スフェクション効率を向上させる)、「ヘルパー脂質」として機能しうる。このような「
ヘルパー脂質」の具体例として、コレステロール、DPPC、DOPE、および/または
PEG脂質(例えばDMPE‐PEG、DMG‐PEG(例えばDMG-PEG2k))
が挙げられる。別の脂質(例えば「ヘルパー脂質」)は、本明細書に開示する複合体/粒
子の一部であってもよい。当業者であれば本発明に係る複合体/粒子を容易に調製するこ
とができる。別の脂質(例えば「ヘルパー脂質」)の例も本分野で既知である。当業者で
あれば、適した別の脂質(例えば「ヘルパー脂質」)、薬剤/試薬/LTRと上記別の脂
質(例えば「ヘルパー脂質」)の比を容易に選択することができる。そのような比は、薬
剤/試薬/LTR対別の脂質のモル比が、1~4:1~5、3~4:4~6、約4:約5
、約4:約5.3であってもよい(より狭い範囲のものが好ましい)。例えば、薬剤/試
薬/LTRを、コレステロール、DOPE、DMPE‐PEGのような3種類の別の脂質
と組み合わせてもよく、そのモル比は8:5.3:4.4:0.9、またはより具体的に
は8:5.29:4.41:0.88としてもよい。
別の態様では、用いられるRNAは、マグネトフェクション用に調製され、マグネトフ
ェクションによってトランスフェクトされるために調製され、マグネトフェクションによ
って送達/導入され、かつ/またはマグネトフェクションによって投与されてもよい。マ
グネトフェクションの原則は本分野で既知であり、例えば、国際公開第02/00870
号パンフレットに記載されている。
この態様によれば、本発明の医薬組成物には、少なくとも1種類の磁性粒子(MP)、
特に少なくとも1種類の磁性ナノ粒子(MNP)を(さらに)含めてもよい。用いられる
RNAは、MPに含まれ、MPと複合体化し、かつ/またはMPによって送達されてもよ
い。特に、用いられるRNAは、RNAとMPを含むマグネトフェクション複合体に含ま
れ、かつ/またはRNAとMPを含むマグネトフェクション複合体によって送達されても
よい。本発明の医薬組成物には、マグネトフェクション複合体を(さらに)含めてもよい
用いられるMP(またはMNP)は、コアシェルMP、酸化鉄シリカMP、および/ま
たは(分岐)PEIで装飾されたMPであってもよい。具体的なMP(またはMNP)と
して、SiOx/ホスホネート‐PEIコーティングが施されたMP(またはMNP)が
挙げられ、これはSO-Mag6-115MP(またはMNP)とも称される。MP(またはMNP
)は後述する実施例にしたがって生成してもよく、例えば参考文献27、28にしたがっ
て生成してもよい。
限定はしないが、マグネトフェクション複合体の一例として、SO-Mag6-115MP(また
はMNP)/RNAマグネトフェクション複合体が挙げられる。別のMP(またはMNP
)およびマグネトフェクション複合体は国際公開第02/00870号パンフレットに記
載されている。
より具体的な態様では、マグネトフェクション複合体には第3の成分を含めてもよく、
したがってその場合、磁気トリプレックスの形態をとりうる。第3の成分は(例えば上で
定義したような)LTRであってもよい。そうすると、磁気トリプレックスはマグネトリ
ポフェクション複合体と称することができ、例えば、以下で定義するマグネトリポフェク
ション複合体であってもよい。
さらに別のより具体的な態様では、用いられるRNAは、マグネトリポフェクション用
に調製され、マグネトリポフェクションによりトランスフェクトされるために調製され、
マグネトリポフェクションによって送達/導入され、かつ/またはマグネトリポフェクシ
ョンによって投与されてもよい。
原則的には、マグネトリポフェクションはリポフェクションとマグネトフェクションと
組み合わせたものであり、特に、両トランスフェション手法の利点を組み合わせたもので
ある。したがって、原則的には、リポフェクションとマグネトフェクションについて本明
細書で述べてきたことは、必要な変更を加えて、マグネトリポフェクションにも適用され
る。
マグネトリポフェクションの態様によれば、本発明の医薬組成物には、少なくとも1種
類のマグネトリポフェクション複合体(磁気リポプレックスとも称される)を(さらに)
含めてもよい。用いられるRNAは、そのような複合体に含まれ、そのような複合体と複
合体化され、かつ/またはそのような複合体によって送達されてもよい。マグネトリポフ
ェクション複合体は磁気トリプレックスであってもよく、例えば、RNAと、少なくとも
1種類の(上で定義したような)MPと、少なくとも1種類の(上で定義したような)L
TRとを含んでいてもよい。
限定はしないが、マグネトリポフェクション複合体の一例として、SO-Mag6-115MP(
またはMNP)/DF-Gold/RNAのマグネトリポフェクション複合体が挙げられる。
原則的には、本発明にしたがって用いられるトランスフェクション複合体の成分(例え
ばRNA、LTR、MP)間の適切な比は、当業者であれば容易に判断することができる
。要領は例えば参考文献22、23、国際公開第02/00870号パンフレット、およ
び後述の実施例に記載されている。
しかしながら、既に述べたように、ある特定の比を採用すると非常に有用であること、
例えば高度に効果的かつ/または効率的なトランスフェクションを得られること、が本発
明の文脈において見出された。
そのような特定の比は、上記RNA1μgにつき上記LTRがおよそ1~40μg、5
~35μg、10~30μg、15~25μg、17~23μg、18~22μg、19
~21μg、1~20μg、2~20μg、3~20μg、1~15μg、2~15μg
、3~15μg、1~10μg、2~10μg、3~10μg、4~10μg、5~10
μg、4~12μg、5~11μg、6~10μg、または7~9μgの範囲にあるRN
Aに対するLTRの重量/重量比である。同様に、特に、(例えば後述の実施例にあるよ
うに)LTRがLTR溶液として調製された場合、そのような比は、上記RNA1μgに
つき上記LTR溶液が0.5~15μl、0.5~10μl、0.5~8μl、1~15
μl、1~10μl、1~8μl、1~6μl、1.5~5.5μl、2~5μl、3~
4μl、1~3μl、4~6μl、1.5~2.5μl、4.5~5.5μl、1.7~
2.3μl、または4.7~5.3μlの範囲にあるRNAに対するLTR溶液の容積/
重量比である。原則的にはより狭い範囲のものが好ましい。この文脈では、好ましいLT
RはDreamFect(商標)であり、より好ましいのはDF-Gold(商標)またはC12-(2-3-2)で
ある。好ましいRNAはBMP‐7・RNAであり、より好ましいのはBMP‐2・RN
Aである。
RNAに対するLTRの別の特定の比はN/P比(N/Pは、RNAのリン酸塩基に対
するLTRのアミノ基のモル比の略)であり、約4~12、好ましくは約6~10、好ま
しくは約9~11、より好ましくは約8である。
特に、脂肪由来の間葉系幹細胞(AMSC)のような細胞をトランスフェトする場合、
そのような特定の比は、上記RNA1μgにつき上記LTRがおよそ5~35μg、10
~30μg、15~25μg、17~23μg、18~22μg、または19~21μg
の範囲にあるRNAに対するLTRの重量/重量比である。同様に、特に、(例えば後述
の実施例にあるように)LTRがLTR溶液として調製された場合、そのような特定の比
は、上記RNA1μgにつき上記LTR溶液が4~6μl、4.5~5.5μl、または
4.7~5.3μlの範囲にあるRNAに対するLTR溶液の容積/重量比である。原則
的にはより狭い範囲のものが好ましい。最も好ましい比は(これにより高度に効果的かつ
効率的なAMSCのトランスフェクションがもたらされる)、上記RNA1μgにつき上
記LTRが約20μgであるRNAに対するLTRの重量/重量比、および/または上記
RNA1μgにつき上記LTR溶液が約5μlであるRNAに対するLTR溶液の容積/
重量比である。好ましいLTRおよび/またはRNAについて上述した内容は、必要な変
更を加えて、ここでも適用される。
特に、骨髄由来のMSC(BMSC)のような細胞をトランスフェトする場合、そのよう
な特定の比は、上記RNA1μgにつき上記LTRがおよそ4~12μg、5~11μg
、6~10μg、または7~9μgの範囲にあるRNAに対するLTRの重量/重量比で
ある。同様に、特に、(例えば後述の実施例にあるように)LTRがLTR溶液として調
製された場合、そのような特定の比は、上記RNA1μgにつき上記LTR溶液が1~3
μl、1.5~2.5μl、または1.7~2.3μlの範囲にあるRNAに対するLT
R溶液の容積/重量比である。原則的にはより狭い範囲のものが好ましい。最も好ましい
比は(これにより高度に効果的かつ効率的なBMSCのトランスフェクションがもたらさ
れる)、上記RNA1μgにつき上記LTRが約8μgであるRNAに対するLTRの重
量/重量比、および/または上記RNA1μgにつき上記LTR溶液が約2μlであるR
NAに対するLTR溶液の容積/重量比である。好ましいLTRおよび/またはRNAに
ついて上述した内容は、必要な変更を加えて、ここでも適用される。
別のそのような特定の比は、上記RNA1μgにつき上記MPが、0.05~5μg、
0.05~3μg、0.05~1μg、0.07~5μg、0.1~5μg、0.1~1
μg、0.2~0.8μg、0.3~0.7μg、または0.4~0.6μg(鉄重量)
の範囲にあるRNAに対するMPの鉄重量/重量比である。原則的にはより狭い範囲のも
のが好ましい。最も好ましい比は、上記RNA1μgにつき上記MPが約0.5μgであ
るRNAに対するMPの鉄重量/重量比である。この文脈では、好ましいMPはSO-Mag6-
115MP(またはより好ましくはMNP)である。好ましいRNAはBMP‐7であり、
より好ましいのはBMP‐2・RNAである。
別のそのような特定の比は、上記LTR約12~20μgにつき(好ましくは約16μ
gにつき)上記MPが、およそ0.05~5μg、0.05~3μg、0.05~1μg
、0.07~5μg、0.1~5μg、0.1~1μg、0.2~0.8μg、0.3~
0.7μg、または0.4~0.6μg(鉄重量)の範囲にあるLTRに対するMPの鉄
重量/重量比である。同様に、特に、(例えば後述の実施例にあるように)LTRがLT
R溶液として調製された場合、そのような特定の比は、上記LTR溶液4μlにつき上記
MPが0.05~5μg、0.05~3μg、0.05~1μg、0.07~5μg、0
.1~5μg、0.1~1μg、0.2~0.8μg、0.3~0.7μg、または0.
4~0.6μg(鉄重量)の範囲にあるLTR溶液に対するMPの鉄重量/容積比である
。原則的にはより狭い範囲のものが好ましい。最も好ましい比は、上記LTR約12~2
0μgにつき(好ましくは約16μgにつき)上記MPが約0.5μgであるLTRに対
するMPの鉄重量/重量比、および/または上記LTR溶液4μlにつき上記MPが約0
.5μgであるLTR溶液に対するMPの鉄重量/容積比である。この文脈では、好まし
いMPはSO-Mag6-115MP(またはより好ましくはMNP)である。好ましいLTRはDre
amFect(商標)であり、より好ましいのはDF-Gold(商標)またはC12-(2-3-2)である。
さらに、そのような特定の比は、上記MPが0.05~5μg、0.05~3μg、0
.05~1μg、0.07~5μg、0.1~5μg、0.1~1μg、0.2~0.8
μg、0.3~0.7μg、または0.4~0.6μg(鉄重量):上記LTRが1~4
0μg、5~35μg、10~30μg、 15~25μg、17~23μg、18~2
2μg、19~21μg、1~20μg、2~20μg、3~20μg、1~15μg、
2~15μg、3~15μg、1~10μg、2~10μg、3~10μg、4~10μ
g、5~10μg、4~12μg、5~11μg、6~10μg、または7~9μg:上
記RNAが0.1~10μg、0.1~7μg、0.1~4μg、0.4~10μg、0
.7~10μg、0.7~4μg、0.8~3μg、0.9~2μg、0.5~1.5μ
g、または0.7~1.3μgの範囲にあるMP:LTR:RNAの鉄重量/重量/重量
比である。同様に、特に、(例えば後述の実施例にあるように)LTRがLTR溶液とし
て調製された場合、そのような比は、上記MPが0.05~5μg、0.05~3μg、
0.05~1μg、0.07~5μg、0.1~5μg、0.1~1μg、0.2~0.
8μg、0.3~0.7μg、または0.4~0.6μg(鉄重量):上記LTR溶液が
0.4~40μl、0.4~20μl、0.4~10μl、0.8~40μl、2~40
μl、2~10μl、2~8μl、2~6μl、または3~5μl:上記RNAが0.1
~10μg、0.1~7μg、0.1~4μg、0.4~10μg、0.7~10μg、
0.7~4μg、0.8~3μg、0.9~2μg、0.5~1.5μg、または0.7
~1.3μgの範囲にあるMP:LTR溶液:RNAの鉄重量/容積/重量比である。原
則的にはより狭い範囲のものが好ましい。最も好ましい比は、上記MPが約0.5μg:
上記LTRが約12~20μg(好ましくは約16μg):上記RNAが約1μgである
MP:LTR:RNAの鉄重量/重量/重量比、および/または上記MPが約0.5μg
:上記LTR溶液が約4μl:上記RNAが約1μgであるMP:LTR溶液:RNAの
鉄重量/容積/重量比である。好ましいLTR、RNA、および/またはMPについて上
述した内容は、必要な変更を加えて、ここでも適用される。
本発明にしたがって用いられるLTR溶液の濃度は、1μlにつきLTRが約0.1~
10、0.5~8、1~7、2~6、3~5、または1~2μgの範囲としてもよい(よ
り狭い範囲のものが好ましい)。限定はしないが、特定の濃度の例として、1μlにつき
LTRが0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、または8μgのものが挙げられ
る。1μlにつきLTRが2または4μgだと好ましい。
本発明の文脈で用いられる複合体の形成は、RNA濃度が例えば約50μg/ml~約
350μg/ml、好ましくは約100μg/ml~約300μg/ml、より好ましく
は約150μg/ml~約250μg/ml、最も好ましくは約200μg/mlのとき
に生じ得る。
RNAによってコードされるタンパク質の安定的かつ適切な発現を実現するには、十分
なRNAが所望の細胞に辿り着くことが重要である。これと、ゆえにトランスフェクショ
ンの効率性は、ラベルしたRNAの投与後、細胞に辿り着いたRNAの内容がラベリング
の計測によって測定してもよい。ラベリングの測定にはフローサイトメトリーを用いるこ
とができる。蛍光分子を用いてラベリングを実行した場合、トランスフェクション効率は
、細胞集団のパーセンテージなどとして算出することができ、PBSで処理されただけの
対照細胞と比べて蛍光強度が高い。本発明にしたがって用いられたRNAは効果的に生成
することができ、トランスフェクション効率もが高い。
翻訳効率により、RNAがタンパク質に翻訳される効率が指定される。翻訳効率が高い
ほど、治療に使わなくてはならないRNAの投与量を減らすことができる。翻訳効率は、
用いられるRNAに対する翻訳の割合と対照RNAに対する翻訳比を比べることによって
測定することができる。原則的には、本発明で用いられるRNAを使用した場合の翻訳効
率はいくらか低い可能性がある。しかしながら、これは、タンパク質発現の持続期間に示
されるはるかに高い安定性によって十分に補償されうる。
原則的には、本発明の活性化合物/医薬組成物の投与計画は、臨床学的因子などに基づ
いて主治医が決定することができる。医療分野で知られているように、任意の一患者に対
する投薬は、患者の大きさ、体重、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投
与時間と経路、全体的な健康状態などの多くの因子と、同時投与されうる他の薬とに依存
する。しかしながら、当業者/主治医であれば、(治療上)効果的な濃度および/または
投与量を、例えば、インビボまたはエキソビボで容易に導き出すことができる。骨などか
ら(例えば適したプローブによって)対応試料を採種し、活性化合物(BMPおよび/ま
たは適したマーカー)を検出し、それらに対応する濃度を上記試料中で例えばHPLCに
よって測定してもよい。
活性化合物濃度の測定は、実験動物や非ヒト・トランスジェニック動物(例えばトラン
スジェニック・ネズミ、ラット、ブタなど)のような動物のみならず、人間の患者、健康
な(人間の)個人においても得ることができる。骨などにおける活性化合物濃度の測定は
、(健康な)ボランティアに対して例えば導き出して、(人間の)患者のための対応する
投与計画を作成してもよいことが想定される。例えば、用量依存性(例えば投与用量対骨
の様々な領域で検出された濃度/投与量)は、本分野で既知の標準的な方法で測定しても
よい。別の方法では、限定はしないが、ラベリングしたペプチドをインビボで検出するか
(例えば、放射性ラベリングや蛍光ラベリングのような対応するラベリング技術によって
)、または生理学的/生化学的アッセイが行われる。骨のある一部において活性化合物の
所望濃度を得るために投与される活性化合物の用量はこのように導き出してもよい。その
ような濃度を導き出すためのこれらの方法または他の方法も本分野では既知である。
特に、本発明にしたがってトラスフェクトされるRNAの適した用量(例えば1細胞当
たりのμgRNA)は当業者であれば容易に設定することができる。要領は例えば参考文
献22、23、国際公開第02/00870号パンフレット、および後述の実施例に記載
されている。
各場合に用いられる用量は、BMP・RNAが果たさなければならない機能に依存する
。上述したように、RNA活性の持続期間は熟考の上調整することができる。用量および
/または治療の継続期間も特定の徴候に依存しうる。例えば、BMP遺伝子の欠陥に起因
する骨疾患の長期治療にRNAを使用する場合は、活性の継続期間は可能な限り長期にわ
たることになる。一方、他の徴候がある場合は、熟考の上、適した期間に調整することも
できる。各場合における用量はそのように設定してもよい。
しかしながら、既に述べたように、ある特定の用量を採用すると非常に有用であること
、特に、高度に効果的かつ/または効率的なトランスフェクションを得られること、が本
発明の文脈において見出された。
トランスフェクトされるRNAのそのような特定の用量は、(トランスフェクトされる
)1細胞につきRNAが0.5~100pg、0.5~70pg、0.5~40pg、5
~100pg、10~100pg、1~50pg、5~40pg、10~30pg、また
は15~25pgの範囲にある。原則的にはより狭い範囲のものが好ましい。最も好まし
い用量は、(トランスフェクトされる)1細胞につきRNAが約20pgという用量であ
る。上記(範囲の)用量は、RNAがエキソビボまたはインビトロで(細胞または組織に
)送達される場合に特に有用である。
一態様では、本発明の医薬組成物はマトリクスまたは足場(本明細書の別の箇所および
本分野では「キャリア」とも称される)を含む。この態様では、用いられるRNAはキャ
リアに既に添加されているか、またはキャリア内/上に既に配合されていることが特に想
定される。より具体的には、本発明の医薬組成物には、キャリアと本明細書に記載される
複合体の組み合わせが含まれることが想定されており、この組み合わせは、用いられるR
NAを含み、かつ上記と同様にキャリアに既に添加されているか、またはキャリア内/上
に既に配合されていてもよい。言い換えると、RNAはこの複合体の形態でキャリア内/
上に配合されるか、または既に添加されていることが想定される。本明細書の別の箇所で
複合体およびRNAについて記載される内容は、必要な変更を加えて、ここでも適用され
る。
本発明の文脈では、キャリアは、変換/トランスフェクトされる細胞または組織とイン
ビボ、エキソビボ、またはインビトロで接触可能な物体または物質である。キャリアは、
本発明にしたがって用いられるRNAを運搬し、かつ任意で、変換/トランスフェクトさ
れる細胞がキャリアに播種されることが想定される。それゆえ、本明細書に記載されるよ
うに、RNAは複合体に含まれることが特に想定される。本発明にしたがって用いられる
キャリアは本分野で既知であり、例えば特許文献1や参考文献10~12に記載されてい
る。RNAに加え、キャリア内/上には、小分子および/またはサイトカインなどのよう
な化合物も配合してよい。これは、例えば、(キャリア内に)播種される細胞の移動を増
強し、かつ/またはトランスフェクションの有効性を向上させうる。
キャリアは密着して結合する材料、すなわち固体物質、特に好ましくは、ゲル、スポン
ジ、ホイル、粉末、顆粒、または筋膜などのプラスチックまたは変形可能な固形物質であ
ってもよい。キャリアは、生物学的に非吸収性または好ましくは生物学的に再吸収性を有
する材料からなりうる。
キャリアは、好ましくはRNAの存在下で、本発明に係る(コ)ポリマーの架橋反応に
よって生成されたキャリアであってもよい。したがって、例えば、本発明に係る架橋され
たポリマーにおいて、化学的に修飾されていてもいなくてもよい既知の遺伝子ベクター(
裸のRNA、リポプレックス、ポリプレックス等)を導入する可能性がある。この目的で
、水性溶媒中または有機溶媒中で架橋反応を引き起こす薬剤を加えることにより、オリゴ
ヌクレオチド等の遺伝子ベクターの存在下で例えばインサイチュで架橋反応が生じる。架
橋剤の性質はコポリマーの構造に依存する。したがって、例えばポリマー骨格(特許文献
1の図2に例えば示されるように)は、システイニル‐、システインまたは非アミノ酸様
ジチオール等のジチオールを加えることによって架橋することができる。カルボン酸を含
む(コ)ポリマーの架橋は、カルボン酸が活性化している間に任意のジアミンを加えるこ
とによって生じさせることができる(例えばインサイチュでの活性化エステルに対するカ
ルボン酸の反応)(Nathan et al. Macromolecules 25 (1992), 4476-4484)。一級または
二級アミンを有するポリマー骨格は、例えば、活性化ジカルボン酸を加えることによって
生じさせることができる。架橋後、調製物は膜が形成するまで乾燥させることができる。
生物学的に非再吸収性の材料の一例としてシリコン(例えばカテーテル用)が挙げられ
る。しかしながら、移植して体内に導入することができ、かつ/または例えば形成手術で
既に用いられている、別の生物学的に非再吸収性の材料を用いることも可能である。それ
らの例として、PTFE(例えば血管置換用)、ポリウレタン(例えばカテーテル用)、
金属材料(例えば医療用スチール、内部人工器官用のチタン合金、血管支持体として用い
られる金属メッシュ(ステント))が挙げられる。
キャリアは生物学的に再吸収性の材料であることが好ましい。その例としては、(例え
ばトロンビンまたはフィブリノゲンから生成される)フィブリン接着剤またはフィブリン
塊、キチン、オキシセルロース、ゼラチン、ポリエチレングリコールカーボネート、例え
ばポリ乳酸やポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ポリアミドおよびポリウレタ
ンまたはポリエーテルのようなそれに由来するアミノ酸化合物、ならびに対応する混合重
合化物である。さらに、任意の他の生物学的に分解可能なポリマー、特にヒドロゲルに基
づくいわゆる自己硬化性接着剤をキャリアとして用いることができる。特に、体内で酵素
的にかつ/または加水分解プロセスによって分解することができる任意の材料が、生物学
的に再吸収性の材料として適している。それらの例として、また、生体再吸収性を有する
化学的に定義された硫酸カルシウム、燐酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ無
水物、精製蛋白質または部分精製細胞外マトリクスからなるキャリアが挙げられる。キャ
リア・コラーゲンが特に好ましく、特に、例えばシグマ社またはコラーゲンコーポレーシ
ョン社によって販売されている軟骨および皮膚コラーゲンから生成されたコラーゲンマト
リクスが好ましい。コラーゲンマトリクス生成の例は、例えば米国特許第4,394,37
0号および第4,975,527号に記載されている。キャリアはフィブリン、特にフィブ
リン塊とすることもできる。
キャリアは、コラーゲンに由来することが非常に好ましく、特にコラーゲンスポンジで
あることが好ましい。コラーゲンスポンジは本分野で既知であり(例えば特許文献1、Le
e, Biomaterials 32, 2011, 744-752、Meinel, Biomaterials 27, 2006, 4993-5002、Kem
pen, Biomaterials 30, 2009, 2816-2825)、例えば、Resorba社(ドイツ国、ニュルンベ
ルク)の「KOLLAGEN resorb(商標)」として購入することができる。
一般的に、グルコサミノグリカンのよう負電荷を持つ多糖類は、イオン的相互作用によ
ってコラーゲンに結合する。結合は、コラーゲン細繊維における正電荷を持つアミノ酸(
リジン、ヒドロキシリジンおよびアルギニン)に、またはカルシウムのような二価陽イオ
ンによって媒介されると負電荷を持つアミノ酸にも生じうる。さらに、コラーゲンのイオ
ン結合特性には、酸またはアルカリ溶液による前処理およびその後の凍結乾燥によって意
図的に影響を及ぼすことができる。コラーゲン化学における既知のこれらの技術によって
、本発明に係るRNA(例えば本明細書に記載する複合体)の懸濁液を用いてコラーゲン
材料を浸漬して、本発明にしたがって用いられるキャリア材料としてのコラーゲンとRN
AとRNA複合体との間にイオン結合を生成することが可能になる。
コラーゲンにおいて、正電荷を持つアミノ酸は短いカチオン部分に濃縮されない。しか
しながら、キャリアのそのような構造的特徴は、RNAの効率的な結合には有益である。
キャリア材料とのより強固な結合を実現するために、ペプチド(Plank et al. Human Gen
e Therapy 10 (1999), 319-333)またはポリエチレンイミン(PEI)などのカチオン物
質結合RNAを用いてコラーゲンを誘導体化することができる。この目的で、コラーゲン
スポンジを例えば二官能能カップリング試薬であるスクシニミジル・ピリジル・ジチオプ
ロピオネート(succinimidyl-pyridyl-dithiopropionate:SPDP)によって修正する
。ポリエチレンイミンはイミノチオランによって誘導体化され、これによりチオール基の
導入が生じる。カップリング対象のカチオン性ペプチドは、C末端にシステインを有する
。チオール基はジスルフィド架橋を形成することによってSPDPで誘導体化されたコラ
ーゲンスポンジと反応する。そのようにして得られたスポンジ誘導体は、RNAに強固に
結合するはずであり、RNAの放出は所望の長時間の遅れをもって生じると予想される。
本発明にしたがって用いられる、RNAが配合されたマトリクス/足場(すなわちキャ
リア)を生成するために、例えば、乾燥(コラーゲン)材料を、約5%、好ましくは約2
%グルコースの凍結乾燥保護剤溶液中でRNA/(ポリマー)複合体と共に培養すること
ができる。次いで、配合が行われたキャリア、例えばスポンジを凍結乾燥および/または
真空乾燥してもよい。
一般に、本発明に係るRNA配合キャリアは、対応するキャリアを、特に本発明に記載
する複合体に含まれるようにRNAと接触させることによって生成することができ、キャ
リアは、RNAまたは複合体が好ましくは遅れて再放出されるように、RNAもしくは複
合体を吸収する、またはRNAもしくは複合体と結合する。対応する方法は、当業者に既
知である(Bonadio et al. (1999), Nat. Med. 5(7): 753-759、Shea, L.D. et al. (199
9), Nat. Biotechnol. 17(6): 551-554)。例えば、本明細書では、キャリアとしてのコ
ラーゲンスポンジまたはフィブリン塊とRNA/LTR複合体の組み合わせの生成を記載
する。
原則的には、本発明にしたがって用いられるRNAは、任意の適した送達/投与経路ま
たはモードによって送達/投与することができる。
本発明にしたがって用いられるRNAは、RNAによってコードされたタンパク質また
はタンパク質断片を必要とする、例えば遺伝子欠陥に起因する疾患を患う患者にそれ自体
が知られている手法で投与してもよい。このため、RNAは、一般的な薬学的忍容性のあ
る添加剤を含む医薬品として製造してもよい。医薬品の形態は投与箇所および性質に依存
する。一態様では、本発明に用いられるRNAは安定性が非常に高いという特徴を有する
ため、使用される箇所および形態に応じて様々な方法で製造することができる。例えば、
RNAを凍結乾燥させてこの形態で(例えば破砕または粉砕)処理および保存して、その
後必要な時に再構成され、RNAの生物活性は維持される。
一態様では、本発明の医薬組成物(またはそれに含まれるRNA)は、遺伝子治療によ
って送達/投与されるか、または遺伝子治療用に調製される。特に、遺伝子治療は、転写
治療、より具体的には転写置換治療であると想定されている。
RNAは、例えばキャリアに(例えば複合体として)配合した場合、インビボまたはエ
キソビボで送達/投与してもよい。送達/投与の適した経路またはモードは本分野で既知
であり、例えばMitragotri (Nat Rev Drug Discov 13(9) (2014), 55-72)、Tavernier G
(Journal of Controlled Release 150, 2011, 238-247)、およびYin (Nat Rev Genet 15(
8) (2014), 541-55)に記載されている。例えば、RNAは、例えばキャリアに(例えば複
合体として)配合された場合、細胞内に、好ましくは高等真核生物の細胞内に、好ましく
は脊椎動物の細胞内に、特には哺乳類の細胞内に、インビトロ、インビボ、およびエキソ
ビボで導入することができる。本発明によれば、記載する手段および方法は、インビボお
よびエキソビボの送達/投与方法の文脈において特に有用であることが実証された。
一態様では、RNAはインビトロで送達/投与してもよい。この態様によれば、RNA
(またはRNAを含む医薬組成物)は、インビボでの送達/投与用に調製してもよいし、
かつ/またはインビボで送達/投与される。
インビボでの使用に関連して、例えばキャリアに(例えば複合体として)配合したRN
Aを、スポンジまたは塊などの形態で、または関節置換術などのコーティングとして、ま
たは内部人工器官として、移植片として直接導入することが例えば可能である(例えば、
組織の組み込みを向上させるため)。さらに、コーティングした材料の加工は、一般的な
組織接着剤系(例えばフィブリン接着剤)によって生物において意図的に導入され、固定
され、デポーの形で有効となる(トランスフェクション)粉末の形態で可能となる。
特に、RNAは患者の組織内、特に、骨成長、骨再生、骨成形、骨形成、骨化などの誘
導が望まれる組織内、またはその近傍に送達/投与されることが想定される。そのような
組織は例えば骨組織自体であってもよい。したがって、RNAは患者の骨内部または骨組
織内部に直接送達/投与してもよい。例えば、RNAは骨欠損部またはその近傍に直接適
用してもよい。組織は例えば筋肉組織のような他の組織であってもよい。そのような場合
、例えば異所性骨形成がRNAによって誘導されうる。これらの目的およびインビボでの
送達/投与における他の目的で、例えば本明細書に記載する複合体の形態のRNAは、本
明細書で既に記載したマトリクスまたは足場、すなわちキャリア(例えばコラーゲン/コ
ラーゲンスポンジ、フィブリン/フィブリン塊、チタン膜、ヘパリン・キトサンマトリク
ス、ヒドロキシアパタイト)に添加または配合してもよい。これは移植前に行われること
が特に想定される。しかしながら、RNAはマトリクスまたは足場を用いずに送達/投与
してもよい。原則的には、骨疾患(例えば骨欠損または骨折)の治療(予防または治癒)
に対するRNAの(直接)利用は、例えば組み換え型hBMP‐2および組み換え型hB
MP‐7のような組み換え型タンパク質の(直接)投与における手順と同じ手順を用いて
行ってもよい(例えばKatanec, Coll Antropol 38(1) (2014), 325-30、Cicciu, Open De
nt J 6 (2012), 51-5、Docherty Skogh, Plast Reconstr Surg 123(6) (2009), 192e-3e
、Baltzer, Orthop Rev (Pavia) 4(1) (2012), e4、Heliotis M, Int J Oral Maxillofac
Surg 35(3) (2006), 265-9、van den Bergh JP, J Clin Periodontol 27(9) (2000), 62
7-36)参照)。RNAは、骨セメントまたは骨充填材に添加してもよい。この文脈では、
ペイスト状の製品を生成してもよい。これは骨欠損にも利用してよい。原則的には、RN
Aは、例えばマトリクスまたは足場を用いずに、骨内部に直接注入してもよい。しかしな
がら、マトリクスまたは足場を用いた直接注入も原則的には可能である。
別の態様では、エキソビボでRNAを送達/投与してもよい。この態様によれば、RN
A(またはRNAを含む医薬組成物)は、エキソビボでの送達/投与用に調製してもよい
し、かつ/またはエキソビボで送達/投与される。例えば、RNAは、患者に導入される
細胞(例えば骨細胞)、すなわちトランスフェクトされた(遺伝子的に修飾された)形態
で患者に導入されうる細胞にエキソビボで送達/投与してもよい。一具体的実施形態では
、RNAは、患者の細胞(例えば骨細胞)にエキソビボで送達/投与され、このRNAが
送達/投与された細胞は、上記患者すなわち同じ患者に再導入される。すなわち、RNA
が送達/投与された細胞は、トランスフェクトされた(遺伝子的に修飾された)形態で上
記患者に再導入してもよい。したがって、一つの好適な実施形態では、細胞はまさに治療
を受ける患者自身に由来する。
患者に(再)導入される細胞は、この目的に適した任意の細胞としてよい。細胞は例え
ば骨芽前駆細胞であってもよい。細胞は間葉系幹細胞(MSC)であってもよく、例えば
筋肉由来の間葉系幹細胞(MMSC)、または好ましくは脂肪由来の間葉系幹細胞(AM
SC)または骨髄由来のMSC(BMSC)であってもよい。
エキソビボでの送達/投与のより具体的な実施形態では、RNA(またはRNAを含む
医薬組成物)は、自家組織移植片による送達/投与用に調製される、かつ/または自家組
織移植片によって送達/投与される。自家組織移植片、特にそれに含まれる細胞は、本明
細書に記載される手段および方法にしたがってトランスフェクトされ、ゆえに遺伝子的に
修飾される、すなわち、本発明に係るRNA(またはRNAを含む医薬組成物)のエキソ
ビボでの送達/投与の結果として1種類または複数種類の本明細書に記載されるBMPを
発現することが特に想定される。より具体的には、自家組織移植片、特にそれに含まれる
細胞は、本発明にしたがってトランスクフェクトされる、すなわち、1種類または複数種
類の本明細書に記載されるBMP・RNAとそのトランスフェクト手段および方法とによ
ってトランスフェクトされることが想定される。本明細書の別の箇所でこれらの手段およ
び方法について記載した内容は、必要な変更を加えて、ここでも適用される。
本発明にしたがって用いられる自家組織移植片には、前駆細胞を含めてもよい。骨芽前
駆細胞が含まれることが特に想定される。自家組織移植片には、筋肉細胞または(AMS
Cのような)脂肪細胞を含めてもよい。自家組織移植片には、例えば骨芽細胞、破骨細胞
、および/または骨細胞(osteocyte)のような骨細胞を含めてもよい。具体的な態様で
は、自家組織移植片は骨組織パルプであるか、または骨組織パルプを含む。骨組織パルプ
には、本明細書で定義される任意の(骨)細胞、特に、本発明にしたがってトランスフェ
クトされるまたはされた、すなわち、BMPを発現するために本発明にしたがって遺伝子
的に修飾されるまたはされた本明細書で定義される任意の(骨)細胞を含めてよい。
原則的には、BMP・RNAをエキソビボで送達/トランスフェクトするための適した
手段および方法は本分野で既知であり、また後述する実施例からも明らかである。しかし
ながら、本発明の一具体的実施例の文脈では、BMP・RNAはOpti-MEM培地(Gibco(
商標)、Invitrogen社、米国、カリフォルニア州)において送達/トランスフェクトされ
る。既に述べたように、この種の送達/トランスフェクション培地を用いた場合、非常に
良好な送達/トランスフェクション有効性が達成された。
これもまたエキソビボで送達/投与する目的で、例えば複合体の形態でのRNAは、マ
トリクスまたは足場に、すなわち本明細書で既に記載したキャリア(例えばコラーゲン/
コラーゲンスポンジ、フィブリン/フィブリン塊、チタン膜、ヘパリン・キトサンマトリ
クス、ヒドロキシアパタイト)に添加または配合してもよい。
この文脈において、キャリア/キャリア体には、第1工程では、RNAまたは好ましく
はRNA複合体が予備配合され、任意で乾燥され(例えば真空乾燥および/または凍結乾
燥)、第2工程では、RNAが送達/投与(例えばトランスフェクト)される細胞が播種
される。
乾燥目的で、適した濃度(例えば約1%~約6%、好ましくは約2%~約5%、または
特には約5%、約3%、または最も好ましくは約2%濃度)の凍結乾燥防止剤(例えばス
クロース)をRNA/RNA複合体に加えてもよい。
RNA配合キャリアにおけるトランスフェクション有効性および/または細胞生存率を
(例えば後述の実施例に記載されるように)モニタリングしてもよい。この点において働
きが弱いキャリアは仕分けしてもよい。
RNA配合キャリアを、特に良好な働きを示す場合は、患者に投与してもよい。原則的
には、次いで、本明細書に開示されるエキソビボでの目的の文脈においてRNAでトラン
スフェクトされた細胞を、インビボでの目的に関連して本明細書で既に記載したのと同じ
やり方で、好ましくは該細胞が配合されたマトリクス/足場とともに送達/投与してもよ
い。例えば、細胞は患者の組織内、特に、骨成長、骨再生、骨成形、骨形成、骨化などの
誘導が望まれる組織内、またはその近傍に投与してもよい。この組織もまた骨組織自体で
あってもよいが、筋肉組織のような他の組織でもよい。一特定態様では、骨欠損内に、ま
たは骨欠損に隣接する部位に直接配置/移植してもよい。
上記のRNA配合キャリアと、その送達/投与および生成の手段および方法は、自家組
織移植、特に本明細書に記載される自家組織移植において特に有用である。この点につい
て本明細書の他の箇所で述べた内容は、必要な変更を加えて、ここでも適用される。特に
、キャリアには、例えば骨芽前駆細胞のような前駆細胞、例えば骨芽細胞、破骨細胞、お
よび/または骨細胞(osteocyte)のような骨細胞、MMSCまたはAMSC等のような
MSCを播種してもよい。
本明細書に記載されたRNA配合キャリアは、持続性かつ/または遅延性RNA送達に
おいて特に有用であり、例えば、RNA送達のデポーおよび(持続性/遅延性)RNA送
達系として有用である。上記キャリアは原則的にはインビボ、インビトロ、およびエキソ
ビトロでの送達/投与に適用されるが、特には本明細書に記載されるインビボでの送達/
投与の目的に適用される。
持続性/遅延性送達の意味は本分野で既知であり、本発明の文脈において個々適用され
る。例えば、持続性/遅延性RNA送達は、特に、少なくとも1日、2日、3日、4日、
5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、また
は6ヵ月の期間にわたって薬学的に有効な量のRNAを送達することとしてもよい。原則
的には長期間であるほど好ましい。
当業者であれば、本発明の観点に適したRNA配合キャリア/キャリア体を容易に生成
することができる。この目的で、当業者は本分野で既知の手段および方法(Chevally, Me
dical and Biological Engineering and Computing 38, 2000, 211-218)と、本明細書お
よび後述の実施例に記載した手段および方法を利用してもよい。例えば、当業者であれば
上記方法における工程を適用することができる。例えば、RNA配合キャリアを本明細書
に記載されたインビボでの送達/投与の目的で生成する場合は、細胞播種の工程(および
おそらくそれに関連する工程)を省略してもよい。本発明は、RNA配合キャリアを生成
するための手段および方法にも関する。
例えば、本発明に係るRNAまたはキャリア/キャリア体に配合されたRNAの量は、
1キャリア/キャリア体につき、約0.1μg~約10μg、好ましくは約0.5μg~
約8μg、好ましくは約1μg~約6μg、好ましくは約1.5μg~約5μg、最も好
ましくは約2μg~約3.5μgの範囲であってもよい。キャリア/キャリア体に播種さ
れる細胞の量は、例えば、1キャリア/キャリア体につき、約5,000~約50,00
0個、好ましくは約7,500~約40,000個、好ましくは約10,000~約30
,000個としてもよい。特定の例としては、1キャリア体につき、約10,000個、
約20,000個、および約30,000個が挙げられる。
限定的な例ではないが、上記値は、本発明の文脈において例示されるキャリア体に特に
適用される(すなわち直径5~7mm、厚さ約1~2mm、容積おおよそ約50mm
。本発明で用いられるキャリア体は、治療対象である骨破片などの形と直径に応じて、例
えば、直径約1mm~数センチメートル(例えば直径約5cm)、厚さ約2mm~2cm
のディスク体としてもよい。これはおおよそ容積数mm~cmと見積もられる、原則
的には、キャリア体の形状(例えばディスク形状)は、例えば、骨破片の形状に適合させ
てもよいし、またはそうでなければ適した形状としてもよい。例えば、円形ではなく不規
則な形状であってもよい。
一般に、キャリア体(例えば(コラーゲン)スポンジ)はその特定の用途に適合させて
もよい。例えば、その形状は、治療対象の骨破片、骨傷害、骨空洞(例えば骨破片、骨損
傷、(歯)嚢胞などによって生じる)、骨損傷などに適合させてもよい。一態様では、キ
ャリア体の形状は骨破片/骨空洞に適合することが想定される。言い換えると、キャリア
体の形状は骨破片/骨空洞と同じであってもよい。特に、キャリア体は、いったん骨の損
傷部位(例えば骨破片/骨傷害)内に/近傍に移植されると、骨の残余部分とともに骨の
元の形状に似通ることが想定される。
典型的にはキャリア体は圧搾可能である(例えば(コラーゲン)スポンジ)。したがっ
て、キャリア体の当初の形状は、治療対象の骨破片や骨空洞等と比べていくらか膨らんだ
状態にあるが、移植後に骨の元の形状に似通るよう、骨破片や骨空洞などの形状に合わせ
て圧搾されうる。
また、これらの態様について、キャリア体は例えば(例えば本明細書に記載するような
)コラーゲンスポンジまたはフィブリン塊としてもよい。当業者/主治医であれば、ある
キャリア体に配合するRNAおよび/または細胞の量などは容易にそのキャリア体に適合
させることができる。
さらなる実施形態では、RNAは、例えば移植片のコーティング用のキャリアとして、
遅延放出性ポリマー中に含まれる。この目的で、RNAはそのように用いてもよいし、ま
たは例えばコーティングポリマーおよび/またはポリマー複合体で保護されたRNAとし
て用いてもよい。
しかも、移植片はRNAを投与する際の別の選択肢である。移植片の表面には、例えば
その移植片が内方成長するための有益な因子として、BMPをコードするRNAを含む遅
延放出性ポリマーのコーティングを施してもよい。本発明によれば、1因子(BMP)の
みをコードする(m)RNAを含むコーティングと、いくつかの因子(BMP)をコード
する(m)RNAを含むコーティングの両方が想定される。時差式で放出される様々な因
子(BMP)も含めてもよい。
「1種類または複数種類の因子(BMP)をコードするRNA」という表現は、個別の
形態で、または融合タンパク質として、2種類以上のタンパク質をコードするRNA配列
と、様々な(BMP)タンパク質をコードする様々なRNA配列の組み合わせ(その場合
、各RNA配列が1つのタンパク質をコードする)との両方を意味すると理解されるべき
である。
本発明にしたがって用いられる(m)RNAは、移植されたプロテーゼの内方成長を促
進するために用いられると有利となりうる。プロテーゼの表面に、義歯、臀部内プロテー
ゼ、膝内プロテーゼ、または脊椎融合体などを挿入可能な場合、本発明にしたがって用い
られる(m)RNAが、内方成長および新たに挿入されたプロテーゼに必要な他の機能を
促進することができるBMPを放出するようにしてもよい。したがって、例えば、プロテ
ーゼの移植という文脈におけるBMP‐2やBMP‐7等の成長因子等の生物学的に活性
な物質の投与、またはその後の処置は、本発明にしたがって適用してもよい。この実施形
態では、本発明にしたがって用いられるBMPをコードするRNAは、RNAを放出する
コーティングにおいて移植片に(慎重に)加え、次いで、そこから徐々に(慎重に)放出
させてもよい。それにより、例えば、移植片の近傍の細胞が継続的または間欠的に生成し
、必要ならば所望の因子を放出することができる。(m)RNAは全身投与も可能である
。望まない副作用の発生などを回避するため、遺伝子欠損による影響を受けない細胞では
(m)RNA翻訳を望まない場合もありうる。コードされたタンパク質を必要とする細胞
、例えば遺伝子欠損がある細胞においてのみ(m)RNAが選択的に翻訳されるために、
例えばリガンドを介して、影響を受ける組織のアドレス指定を可能にする配列によって対
応ベクターを補足してもよい。さらなる実施形態では、標的細胞に発現しない内因性のミ
クロRNAが結合する配列に(m)RNAを含むベクターを加えてもよい。それにより(
m)RNAは、標的細胞では維持されつつも関連する内因性ミクロRNAを含むすべての
細胞においては劣化する。したがって副作用を最小限に抑えることができる。
RNAを全身投与する場合、RNAは通常、毒性を調整する薬剤や安定剤などの標準的
な添加剤が加えられた注入可能な液体として、好ましくは1回分の投与量単位で作製され
る。安定剤としては、例えば脂質、ポリマー、およびナノシステム、またはリポソームな
どの通常知られているものが用いられる。好適な実施形態では、非経口的投与に適した組
成物が提供される。
通例生体忍容性を有する一般的なキャリア、すなわち薬学的忍容性を有する、合成、天
然、または天然・合成混合ポリマー(その放出性は個別に調整することができる)は、周
知であり、したがってここではこれ以上の説明は不要である。例えば、ポリラクチドまた
はポリラクチド/グリコライドポリマーが用いられる。このようにして、例えば、長期間
または短時間にわたって継続的・間欠的に所望の因子を選択的に所望の部位で放出するこ
とが可能になる。
本発明にしたがって用いられるRNAを用いると高安定性が特に得られ、これにより長
期間にわたる継続的なタンパク質発現がもたらされる。例えば、遺伝子欠損に起因する骨
疾患の治療または予防を意図してRNAを用いる場合、RNAが細胞に残存する期間が長
いほどその価値は高まりうる。RNAの分解スピードが速いほどタンパク質発現の終了も
速まり、場合によってはRNAをより頻繁に投与しなくてはならなくなる。反対に、細胞
内に長期間留まる安定したRNAならば投与の頻度は非常に少なくなりうる。本発明にし
たがって用いられるRNA(特にcmRNA)は最大で4週間安定して発現することが確
認された。したがって、これを必要とする場合、非常に長期間作用するRNAを用いても
よい。したがって、最大で4週間継続するRNA発現は慢性骨疾患の治療に理想的に適し
ている。このRNAは、たまに(例えば4週間おき)、またはたった一回投与するのみで
よい。
この文脈において、BMP・RNAを用いて一回治療すれば、骨関連の疾患、障害、ま
たは損傷の適切かつさらには完全な治療(または予防)を行うのに十分であるという事実
が本明細書には記載されている。したがって、具体的な実施形態では、本発明の医薬組成
物は、一回の投与/治療用に調製され、かつ/または一度のみ/一回の治療としてのみ投
与されることになる。この具体的な実施形態によれば、後続の二回目の投与/治療(また
は三回目以降の投与/治療)を行う必要はない。
他の実施形態については、例えばRNAの発現が一時的でよい場合、タンパク質の発現
の持続期間は安定性に影響を与えることにより調整してもよい。用いられるRNAのさら
なる有益な性質は、所望の期間生じるよう、タンパク質の発現の持続期間を調節できるよ
うに、安定性によって作用の持続期間を選択的に調整できることである(上記参照)。
本発明にしたがって用いられるmRNAの安定性は、それ自体が既知の方法によって測
定することができる。特に適しているのは、RNAを含まない細胞と比較した場合のRN
Aを含む細胞の生存率を測定する方法である。コードされたタンパク質(BMP)の一定
期間における生成をモニタしてもよい。ここでは、RNAの安定性は、RNAを細胞に導
入した場合、所望のタンパク質を発現することができるか、あるいはタンパク質に翻訳可
能なRNA、またはその機能的断片が、長い期間発現可能で有り続け、すぐに分解、不活
性化されないことを意味していると理解される。
したがって、細胞内のRNAの安定性および生存期間を試験する方法は、RNAによっ
てコードされたタンパク質がどのくらい長く細胞内で検出可能か、またはその機能を発揮
するかを測定することからなる。この方法は実施例に記載する。したがって、例えば、レ
ポーター分子をコードする配列を有する(m)RNAと、任意で所望のタンパク質をコー
ドするRNAとを細胞内に導入することができ、所定の期間経過後、レポーター分子の存
在と、任意でコードされたタンパク質とが測定される。適したレポーター分子は最新技術
では周知であり、一般的に用いられるものをここでも用いることができる。好適な実施形
態では、RFP(赤色蛍光タンパク質)がレポーター分子として用いられる。
本発明の医薬組成物は、患者、好ましくはヒト患者/ヒトが投与対象である。しかしな
がら、本明細書に記載される骨疾患(および関連する状態)は、例えば、ペット(例えば
イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、およびマウス)、家畜類(例えば乳牛、ブタ、ヒツジ)、
ウマ、ポニー、またはトリ(例えばニワトリ、シチメンチョウ、オウム)のような非ヒト
動物対象/患者において治療または予防してもよい。
本発明のどの医薬組成物も、使用説明書または指示リーフレットと併せて提供してもよ
い。使用説明書/指示リーフレットには、本発明にしたがって、本明細書に記載された疾
患または障害(骨疾患)の治療または予防方法について当業者/主治医への指導を含めて
もよい。特に、使用説明書/指示リーフレットには、本明細書に記載された送達/投与の
モードおよび送達/投与計画(例えば送達/投与の経路、投与計画、送達/投与の期間、
送達/投与の頻度)についての指導を含めてもよい。特に、使用説明書/指示リーフレッ
トには、医薬組成物は一回の投与/治療用に調製され、かつ/または一度のみ/一回の治
療としてのみ投与されるという指示を含めてもよい。使用説明書/指示リーフレットには
、後続の二回目の投与/治療(または三回目以降の投与/治療)を行う必要はないという
指示をさらに含めてもよい。原則的には、送達/投与のモードおよび送達/投与計画につ
いて、例えばエキソビボまたはインビボでの送達/投与、MP、LTRおよび/またはR
NAの比、用量について本明細書の別の箇所で述べた内容は、使用説明書/指示リーフレ
ット中に指示として含めてもよい。
本発明は、本明細書に記載および定義されるBMP・(cm)RNAにさらに関する。
本明細書の別の箇所でBMPおよびRNAについて記載した内容は、必要な変更を加えて
、ここでも適用される。
限定はしないが、本発明の(cm)BMP/RNAの好適な例として、BMP(例えば
BMP‐2またはBMP‐7)、またはBMPの機能的断片をコードする配列を有するR
NAが挙げられ、このRNAのシチジンの5~50%、7、5~30%、15~25%、
または好ましくは約25%が化学的に修飾されたシチジン(例えば5‐メチルシチジン:
m5C)および/またはこのRNAのウリジンの5~50%、7、5~30%、15~2
5%、または好ましくは約25%が化学的に修飾されたウリジン(例えば2‐チオウリジ
ン:s2U)である。
一態様では、本発明は医薬組成物に関し、好ましくは本明細書に記載される複合体の形
態、より好ましくは本明細書に記載されるRNAが配合されたキャリアの形態をした、B
MPをコードするRNA、特に上記BMPをコードするRNAを含む本明細書に記載され
る医薬組成物に特に関する。
本発明は、本明細書に記載および定義された複合体、すなわち本明細書に記載される(
cm)RNAを含む、または本明細書に記載される(cm)RNAと複合体化された複合
体にも関する。特に、本発明は、本明細書に記載および定義されたトランスフェクション
複合体(例えばリポフェクション、マグネトフェクション、およびマグネトリポフェクシ
ョン複合体)に関する。原則的には、本明細書の別の箇所でBMP、RNA、LTR、M
P、および複合体の他の必須要素について記載した内容は、必要な変更を加えて、ここで
も適用される。
限定はしないが、本発明の複合体の好適な例として、BMP(例えばBMP‐2または
BMP‐7)、またはBMPの機能的断片をコードする配列を含む/該配列と複合体化す
る複合体が挙げられ、このRNAのシチジンの5~50%、7、5~30%、15~25
%、または好ましくは約25%が化学的に修飾されたシチジン(例えば5‐メチルシチジ
ン:m5C)であり、かつ/またはこのRNAのウリジンの5~50%、7、5~30%
、15~25%、または好ましくは約25%が化学的に修飾されたウリジン(例えば2‐
チオウリジン:s2U)である。より具体的には、そのような複合体には、本明細書に記
載および定義される、1種類または複数種類のLTR(例えば、Lipofectamine 2000、Do
gtor、DreamFect(商標)、または好ましくはDF-Gold(商標)もしくはC12-(2-3-2))お
よび/またはMP(例えば、コアシェルMP、酸化鉄シリカMP、および/またはSiO
x/ホスホン酸塩‐PEIコーティング(例えばSO‐Mag6‐115MP)のような
(分岐)PEI装飾MPを含めてもよい。さらに具体的には、MP、LTR、および/ま
たはRNAは、本明細書で上記した各比でそのような複合体(または本発明の他の複合体
)に含めてもよい。特に、これらの比は、上記RNA1μgにつき、上記LTRが約8μ
gまたは約20μgというRNAに対するLTRの重量/重量比、上記RNA1μgにつ
き、上記LTR溶液が約2μlまたは約5μlというRNAに対するLTR溶液の容積/
重量比、
上記RNA1μgにつき、上記MPが約0.5μgというRNAに対するMPの鉄重量/
重量比、上記LTR約2~20μgにつき(好ましくは約16μgにつき)、上記MP約
0.5μgというLTRに対するMPの鉄重量/重量比、
上記LTR溶液4μlにつき、上記MPが約0.5μgというLTR溶液に対するMPの
鉄重量/容積比、
本明細書の別の箇所に記載される鉄重量/重量/重量比、例えば、上記MP約0.5μg
:上記LTR約12~20μg(好ましくは約16μgにつき):上記RNA約1μgと
いう鉄重量/容積/重量比、および/または、
本明細書の別の箇所に記載される重量/容積/重量比、例えば、上記MP約0.5μg:
上記LTR溶液約4μl:上記RNA約1μgという鉄重量/容積/重量比、としてもよ
い。
そのような複合体(または本発明の他の複合体)には、1種類または複数種類の別の脂質
(例えば「ヘルパー脂質」)も含めてよい。本明細書で既に述べた上記別の脂質(例えば
「ヘルパー脂質」)について記載した内容は、必要な変更を加えて、ここでも適用される
また、上記のRNAまたは複合体は、本発明の手段および方法にしたがって用いること
が意図される。この文脈では、RNAまたは複合体は、本発明の医薬組成物に含まれるこ
とが意図される。本発明は、本明細書に記載および定義されるBMP・(cm)RNAま
たは複合体を含む医薬組成物にも関する。
BMP・RNAおよび複合体は、本分野で既知の手段および方法と、本明細書に記載お
よび後述の実施例に記載する手段および方法とによって容易に調製することができる。例
えば、BMP・RNAは、インビトロでの転写系によって調製することができ、ゆえにイ
ンビトロ転写BMP・RNA(IVT・BMP/RNA)とすることができる。この文脈
では、BMP・RNAが、ATP、CTP、GTP、およびUTPの混合物からインビト
ロでの転写によって生成される方法が例えば適している。インビトロでの転写を行うのに
必要な材料は当業者には周知であり、特に、緩衝剤、酵素、およびヌクレオチド混合物は
商業的に入手可能である。本発明にしたがって用いられるRNAの生成に用いられるDN
Aの性質も重要ではない。通例、それはクローン化DNAとしてもよい。
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるマトリクスまたは足場/キャリア/キ
ャリア体に関する。すなわち、例えば、本明細書に記載の複合体の形態をとり、任意で本
明細書に記載の細胞がさらに播種された、本発明にしたがって用いられるRNA配合マト
リクス/足場/キャリア/キャリア体に関する。
別の態様では、本発明は、本明細書に定義されたRNA配合マトリクス/キャリア/キ
ャリア体を含む医薬組成物にも関する。
本発明は、特に骨再生および/または本明細書に記載の骨疾患で使用可能な、すぐに使
えるバイオ製品としての本明細書に記載されたRNA配合キャリアにも関する。
本発明は、持続性かつ/または遅延性送達用、および持続性送達系/デポーとして製造
されたマトリクス/足場/キャリア/キャリア体、医薬組成物、またはバイオ製品の使用
にもさらに関する。
本明細書では特許文献を含む多くの文献が引用されている。これら文献の内容はすべて
、本発明の特許性と関連するわけではないが、参照により本明細書に援用する。より具体
的には、各文献それぞれが具体的かつ個別に示されて参照により援用されるのと同じ程度
にすべての参考文献が参照により援用される。
以下に実施例を参照しつつ本発明を記載する。各実施例は例示に過ぎないため、本発明
の範囲の限定事項と解釈せぬよう留意されたい。
(実施例1)
材料および方法(特に実施例1~7に関する)
材料:ダルベッコ・変法イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium:DME
M)と、カルシウム・マグネシウム非含有ダルベッコ・リン酸緩衝塩類溶液(Dulbecco's
Phosphate-Buffered Saline without Calcium and Magnesium:DPBS)と、ウシ胎児
血清(FBS)と、ペニシリン/ストレプトマイシン(Penicillin/Streptomycin:P/
S)と、アクターゼ溶液(Accutase solution)は、PAA Laboratories GmbH社(オースト
リア、パージング)から購入した。Opti-MEM培地と、コラゲナーゼ・タイプII(Collag
enase type II)はGibco(商標)(Invitrogen社、米国カリフォルニア州)から得た。Fi
coll-Paque(商標)はGE Healthcare Ltd社(米国、コネティカット州)から購入した。
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)と、3‐(トリヒドロキシシリル)プロピル
メチル・ホスホネート(THPMP)と、分岐ポリエチレンイミン(bPEI)はSigma-
Aldrich社(米国、ミズーリ州)から得た。他の試薬および材料は、特に規定がない限りS
igma-Aldrich社から得た。24ウェル磁気プレート(OzBiosciences社、フランス国、マ
ルセイユ)を用いてマグネトフェクションの実験を行った。
動物:メスのSDラット(250~300g)をCharles River Laboratories社(ドイ
ツ国、ズルツフェルト)から購入し、脂質と骨髄の両方の間葉系幹細胞分離に用いた。組
織採種の直前に二酸化炭素窒息により動物を安楽死させた。用いた処置は地方倫理委員会
により許可されており、ドイツの動物保護法に従って行われた。
ラット由来の間葉系幹細胞の分離と培養:以前から知られるプロトコル(参考文献24
)を用いて骨髄由来の間葉系幹細胞(BMSC)を分離した。手短に述べると、大腿骨と
脛骨をすべての周囲組織から清浄し、両骨端において切断し、2.5mg/mlのコラゲ
ナーゼ・タイプIIを含む無菌DMEM中で37℃、5%COで2時間培養した。骨髄
をいったん完全DMEM(すなわち10%のFBSと1%のP/Sが追加されているもの
)で洗い流したら、新しい完全DMEM中に細胞を沈殿させ再懸濁させた。その後、Fico
ll-Paque(商標)を用いて密度勾配遠心分離法で単核細胞破片を収集し(500g、30
分)、完全DMEMで洗浄し再懸濁させた。3000cell/cmで細胞を蒔いた。
24時間培養後、培地を交換して非接着性細胞を除去した。
脂肪由来の間葉系幹細胞(AMSC)を分離するために、腹腔領域から採取した脂肪組
織をmmサイズの小片に切断し、無菌DPBSが入ったfalconチューブに移した。DPB
Sを用いて脂肪片を複数回洗浄した後、0.5mg/mlのコラゲナーゼ・タイプII溶
液中において37℃で30分間培養した。次に、完全DMEM培地を加えてコラゲナーゼ
の作用を停止させ、600gで10分間遠心分離にかけた。得られた細胞ペレットを完全
DMEM培地に再懸濁させ、その細胞懸濁液を40μmセルストレーナー(BD Falcon社
、米国、ニュージャージー州)を用いて濾過し、3000cell/cmで蒔いた。
完全DMEMを用いて37℃、5%COで、BMSCとAMSCの両タイプの細胞を
増殖させ培養した。トランスフェクションおよび分化実験のために細胞は最大6継代まで
使用した。培養時、培地は3日おき交換し、37℃、5%COで細胞を維持した。分離
した両MSCの特性評価は参考文献24に公開されたプロトコルにしたがって行った。
エキソビボでのヒト脂肪組織培養:ドイツ国ミュンヘンの工科大学にある「Klinikum r
echts der Isar」大学病院の地方倫理委員会によって承認された書面による患者のインフ
ォームド・コンセントを基に、再建手術を受ける健康な患者から新鮮なヒト皮下脂肪組織
を得た。
無菌状態で皮膚および血管からヒト脂肪組織を切り出した。次いで、およそ1mmの厚
さのスライス片になるよう組織を慎重に切断した。その後、皮膚用の生検パンチ(3mm
)を用いて参考文献25に記載のプロトコルにしたがって3mm×1mmの均一な円形外
植片を型抜きした。得られた組織外植片を無菌DPBSを用いて3回洗浄し、直径35m
mのペトリ皿に入れた。その後、最大7日間、完全DMEM中で37℃、5%CO2で培
養した。最初は2時間後、その後は培養中24時間おきに培地交換を行い、十分な酸素供
給状態を維持した(参考文献26)。
酸化鉄シリカ磁気ナノ粒子の合成:以前より知られるやり方で(参考文献27、28)
酸化鉄シリカ・コアシェル磁気ナノ粒子を合成した。はじめに、鉄塩の水溶液からFe(
II)/Fe(III)水酸化物を沈殿させ、磁鉄鉱「コア」ナノ粒子への変換を行った
。その後、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)と3‐(トリヒドロキシシリル)
プロピルメチルホスホネート(THPMP)の共縮合によって表面にホスホン酸基を有す
る酸化ケイ素コーティングを生じさせ、ナノ粒子の表面を安定させた。最後に、pH7.
0の25-kD分岐ポリエチレンイミン水溶液を、PEI対鉄の重量/重量比11.5%で適
用して粒子表面を装飾した。得られたSiOx/ホスホネート‐PEIコーティングが施
された磁気ナノ粒子は、今後、SO-Mag6-115MNPまたはMNPと称される。これらのナ
ノ粒子の物理化学的特性評価の詳細は参考文献27、28に報告されている。簡単に説明
すると、Malvern Instruments社(ドイツ国、ヘレンベルク)のゼータサイザーナノZS
を用いて動的光散乱法(DLS)によって測定したところ、水に懸濁した状態の粒子の平
均流体学的径はDh=97±14(PDI=0.32±0.03)、導電学的電位はζ=
+34.1±2.7である。
MetLuc、eGFP、tomato、ヒトBMP‐2をコードする化学修飾メッセンジャーRN
Aの生成:Metridiaルシフェラーゼ(Metridia longa)とヒトBMP-2・mRNAのコ
ドン最適化された読み枠を含むプラスミドベクターを合成し、GeneArt(Life Technologi
es社、米国、カリフォルニア州)によるpVAXA120のBamHI-EcoRI部位にクローニ
ングした。eGFPは、EcoRI-HindIIIを用いてpeGFP‐N1(Clontech社、米国、
カリフォルニア州)から切除し、セミブラント法によるライゲーションによってpVAX
A120のEcoRI-HindIIIにクローニングした。Tomatoのコード配列は、ptd Tomato-N1(
Clontech社、米国、カリフォルニア州)からNotI-KpnIとともに切除し、セミブラント法
によるライゲーションによってpVAXA120のEcoRI-KpnI部位に結紮した。ベクター
pVAXA120は以前から知られており(参考文献22)、pVAX1(Invitrogen社
、米国、カリフォルニア州)のPstI-NotI部位同士の間に120Aをひと続きクローニン
グすることにより作製した。
インビトロでの転写(in vitro transcription:IVT)用のテンプレートを生成する
ために、上記プラスミドDNA(pDNA)(すなわちpVAXA120‐MetLuc、pV
AXA120‐eGFP、pVAXA120‐Tomato、またはpVAXA120‐hBM
P‐2)をNotIを用いた制限消化によって線状化した。クロロホルム・エタノール沈殿に
よってテンプレートpDNAをさらに精製した。IVTは、RiboMAXTM Large Scale RNA
Production System-T7(Promega社、米国、ウィスコンシン州)を用いて行った。キャッ
プmRNAを合成する際、反転防止キャップアナログ(anti-reverse cap analogue:ARC
A、m7,3'-OGpppG、Jena Biosciences社、ドイツ国、イエナ)を用いて所望の方向のみを
向くキャップを組み込むことを確実にした。修正mRNAを生成する際、シチジン‐5
‐トリホスフェートとウリジン‐5‐トリホスフェートの25%を5‐メチルシチジン
‐5’‐トリホスフェートと2‐チオウリヂン‐5’‐トリホスフェートで置換した(Je
na Biosciences社、ドイツ国、イエナ)。酢酸アンモニウム沈殿物によって得られた修正
mRNAの精製を行った。天然アガロースゲル電気泳動法によって生成した修正mRNA
の完全性およびサイズを確認した。
トランスフェクション複合体の形成および特性評価:リポプレックスとポリプレックス
は、Lipofectamine2000(Invitrogene社、米国、カリフォルニア州)、DreamFect Gold(
DF-Gold)、Dogtor(OzBiosciences社、フランス国、マルセイユ)、bPEIなどの選択
された脂質トランスフェクション試薬をcmRNAと混合することにより常に新たに調製
した。用いたリポソーム・トランスフェクション試薬対cmRNAの容積対重量比は、製
造業者の指示にしたがって選択した(すなわち、mRNA1μgにつき、Lipofectamine2
000なら2μl、DF-Goldなら4μl、Dogtorなら4μl)。bPEIの場合、10mg/
ml水溶液となるよう調製し、使用前pHは7.0に調整した。N/P=8でbPEIと
cmRNA溶液を混合することによって複合体を形成し、次いで室温で20分間培養して
複合体をアセンブリングさせた。磁気リポプレックスを調製するために、SO-Mag6-115M
NPの水性懸濁液(0.1μgFe/μl)とDF-Gold希釈液(80μlのDF-Goldを10
0μlの水で希釈したもの)を同容量ずつ混合した。その後、cmRNAの希釈液(水1
μlにつき、またはNaClもしくは無添加Opti-MEM150mMにつき0.2μg)を加
え、慎重に混合し、室温で20分間保存した。得られたSO-Mag6-115/DF-Gold/cmRN
A複合体に含まれる成分比は、0.5:4:1(鉄重量/容積/重量)であった。複合体
は、DLS法を用いて、平均流体学的径(Hydrodynamic diameter:Dh)、多分散性指
数(polydispersity index:PDI)、およびゼータ電位(ζ)について特性評価を行っ
た(表1)。
AMSCおよびBMSCにおけるトランスフェクションプロトコル:トランスフェクシ
ョンを行うために、24ウェルプレートに1.25×10cell/cmでAMSC
とBMSCを播種した。24時間培養後、細胞培地は新たな無添加Opti-MEMと交換した。
上述の方法で、cmRNAを20pg/cell含むリポプレックスまたはbPEI複合
体(すなわちMetLuc・cmRNA、eGFP・cmRNA、またはtomato・cmRNA)
を100μl調製し、細胞に加えた。トランスフェクションから5時間後、培地は完全D
MEMと交換した。結果を評価するまで、標準条件下で最大10日間細胞をさらに培養し
た。トランスフェクションの有効性をさらに高めるため、SO-Mag6-115MNPを脂質トラ
ンスフェクション試薬およびcmRNAと関連させて、鉄重量/容積/重量比が上述のよ
うに0.5:4:1となる磁気SO-Mag6-115粒子/DF-Gold/cmRNAリポプレックスを
作製した。トランスフェクションを行う際、20pgのcmRNA/cellを含む磁気
リポプレックス100μl(すなわち、MetLuc・cmRNA、eGFP・cmRNA、ま
たはtomato・cmRNA)を、培養中のAMSCまたはBMSCに加え、細胞培養プレー
トを24ウェル磁気プレートの上に30分間載置することで磁場を印加した。次に、磁気
プレートを取り除き、トランスフェクションを継続させた。全研究においてすべてのトラ
ンスフェクションを3連で行った。トランスフェクションの有効性の観点からマグネトフ
ェクションの効果の定量的特性評価を行うために、以下のようにMAIを算出した。
(1)
(AUCは、それぞれ、マグネトフェクション(magnetofection:MF)後とリポフェク
ション(lipofection:LF)後の標的タンパク質(MetLucおよびhBMP‐2)の発現
の動態についての曲線下面積値を表す。)
本研究の目的の一つは、トランスフェクション効率の観点からAMSCとBMSCを比
較することである。したがって、用いたリポソームトランスフェクション試薬対mRNA
の容積対重量比は、製造業者の指示にしたがって両細胞型とも同じになるように選択した
。しかしながら、2.5、5、10、および20pg/cellの用量で、核酸1μgに
つきトランスフェクション試薬0.5~5μlのDF-Gold対cmRNA比を用いて、両細
胞についてトランスフェクションプロトコルの最適化をさらに行った。詳細は図10~図
12および対応する実施例箇所を参照されたい。
トランスフェクトされた細胞におけるMetridiaルシフェラーゼ活性の評価:Metridiaル
シフェラーゼは、セレンテラジンの酸化を触媒し、セレンテラミド、CO、および光(
λmax480nm)を生成する。この反応に基づき、セレンテラジンはさまざまな分泌
ルシフェラーゼを検出するための基質として用いることができる(参考文献29)。本研
究では、天然セレンテラジン(Synchem OHG社、ドイツ国、フェルスベルク)を用いてMet
Luc活性のアッセイを行った。手短に述べると、上清50μl(トランスフェクト後、5
時間、1、2、3、5、7日にトランスフェクトされた細胞から収集)当たりの同容量と
、セレンテラジン溶液(pH7.0の脱気リン酸ナトリウム・バッファ中50μM)を白
色不透明な96ウェルプレート内で混合した。発光強度は、Perkin Elmer社(米国、マサ
チューセッツ州)のWallac Victor 1420 multilabel counterを用い、室温で、単位時間
当たりの発光単位または相対発光単位(relative light units:RLU)によって計測し
た。すべての試料について3連で計測を行った。MetLuc活性は、以下の式を用いて算出し
た正規化相対発光単位によって表した。
(2)
(RLUは上述の器機によって得られた値であり、Vは計測を行うために収集された上
清の容積に対応し、Vはmlで表した上清の容積の総量である。)
増強された緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein:eGFP)陽性細胞:
eGFP陽性細胞のパーセンテージの観点からトランスフェクション効率を評価するため
に、eGFP・cmRNAでトランスフェクトされた細胞をフローサイトメトリーによっ
て分析した。このために、トランスフェクトから24時間後、DPBSを用いて細胞を2
回洗浄し、24ウェルプレートの1ウェルにつきアクターゼを100μl用いて取り外し
を行った。次いで、細胞培養プレートを500gで10分間遠心分離にかけ、細胞をDP
BS(2%FBS)中に再懸濁させた。MACSQuant Analyzer(Miltenyi Biotech社、ドイ
ツ国、ベルギッシュグラートバハ)を用い、1試料につき少なくとも5000イベント収
集してフローサイトメトリーを行った。
増強された緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein:eGFP)細胞およびt
omato発現細胞:蛍光顕微鏡(Biorevo BZ9000、Keyence社、日本国、大阪)を用い、eG
FPとtomato・cmRNAでトランスフェクトされたAMSCとBMSCをトランスフェ
クトから24時間後に撮像した。
化学修飾mRNAの複合体の細胞毒性スクリーニング:細胞毒性スクリーニングは、A
MSCをさまざまなMetLuc・cmRNA複合体でトランスフェクトし、製造業者指示にし
たがって3連で行った標準MTSアッセイ(CellTiter 96、Promega社、米国、ウィスコ
ンシン州)を用いて、トランスフェクト後5時間、24時間の細胞呼吸活性(生存率)を
分析することにより行った。実験の詳細については本明細書の他の箇所を参照されたい。
トランスフェクト細胞によるBMP‐2の生成:上記のリポフェクション・プロトコル
およびマグネトフェクション・プロトコルを用いて、hBMP‐2・cmRNAをAMS
Cに送達した。1細胞につき、20または32pgのhBMP‐2・cmRNAを用いて
トランスフェクションを行った。規定した時点において、酵素結合免疫吸着測定法(EL
ISA)(Quantikine、R&D Systems社、米国、ミネソタ州)を用いて製造業者の指示に
したがって上清および細胞溶解物中の分泌・細胞関連ヒトBMP‐2のレベルを測定した
。吸光度は、PerkinElmer社(米国、マサチューセッツ州)のWallac Victor 1420 multil
abel counterを用いて450nmで計測した。波長補正は570nmに設定した。実験は
3連行い、タンパク質含有量は標準曲線を用いて測定した(範囲:0~4000pg/m
l hMBP-2)。
加えて、骨形成培地(すなわち、2%FBS、βグリセロリン酸10mM、アスコルビ
ン酸200μM)の存在下においても細胞のトランスフェクトを行った。骨形成培地はデ
キサメタゾンを用いずい調製した。したがって、別の実験において、細胞放出hBMP‐
2の骨形成能に関する関連情報を得ることができる。
ヒト一次組織へのhBMP‐2・cmRNAのトランスフェクション:参考文献25に
記載された以前から知られるプロトコルを僅かに変更したものにしたがって外植片をトラ
ンスフェクトした。手短に述べると、洗浄したヒト脂質組織のディスク体を48ウェルプ
レートに入れ、DF-Goldリポプレックス(cmRNA1μgにつき、DF-Gold4μl)を用
いて5μgのhBMP‐2・cmRNAまたはtomato・cmRNAを用いてトランスフェ
クトを行った。複合体を含む80μlの懸濁液を組織のディスク体に直接注入した。プレ
ートを1時間、培養器に戻した。そのあと、500μlの新たな無添加Opti-MEMをトラン
スフェクトされた外植片が入った各ウェルに加え、培養をさらに5時間続けた。その後培
地を骨形成培地に変え、外植片を以前より知られる方法でさらに3日間と7日間培養した
。組織外植片のトランスフェクトはすべて新たに採種した組織を用いて無菌状態で行った
蛍光顕微鏡(Biorevo BZ9000、Keyence社、日本国、大阪)を用い、トランスフェクト
から24時間後にtomato・cmRNAでトランスフェクトされた脂肪質組織ディスク体を
撮像した。
インビトロでの骨形成:hBMP‐2・cmRNAでトランスフェクトされたAMSC
を骨形成刺激下で培養して、hBMP‐2・cmRNAのインビトロでの骨形成誘導能を
評価した。リポフェクションの方法とマグネトフェクションの方法の両方を用いて、以前
から知られるやり方でhBMP‐2・cmRNAを細胞に導入した。トランスフェクショ
ンから5時間後、培地をデキサメタゾンを含まない骨形成培地と交換した。トランスフェ
クトされた細胞は最長21日まで骨形成培地に維持し、その培地は3日おきに部分的に交
換した(すなわち、容積の半分を新たな骨形成培地と置換した)。同じ条件下で培養した
非トランスフェクト細胞を対照として用いた。インビトロでの骨形成後、骨関連遺伝子の
発現および無機化の発生を評価した。
アルカリホスファターゼ(Alkaline phosphatase:ALP)活性:トランスフェクト後
3、7、12日目にアルカリホスファターゼ活性を評価した。この目的で、アルカリホス
ファターゼ比色分析アッセイ(Abeam社、英国、ケンブリッジ)を製造業者の指示にした
がって用いた。
このアッセイは、p‐ニトロフェニルリン酸(p-nitrophenyl phosphate:pNPP)
をホスファターゼ基質として用いることに基づく。pNPPはALPの存在下で脱リン化
する。結果として、黄色のp‐ニトロフェノール(p-nitrophenol:pNP)化合物が形
成され、それは405nmにおける最大吸光度によって特徴付けられる。ALPアッセイ
は製造業者のプロトコルに基づいて行った。手短に述べると、トランスフェクト細胞をD
PBEで2回洗浄し、次いでアッセイ・バッファを用いて室温で20分間培養した。細胞
単層が良好に均質化された後、試料を遠心分離して不溶性材料を除去した。pNPP溶液
を試料および対照試料に加え、室温で60分培養し、光から保護した。pNP生成は、上
述したように、multilabel counterを用いて405nmで吸光度を計測することで測定し
た。pNP含有量の値は標準曲線に基づいて算出した。すべての場合において3連の評価
を行った。
さらに、ALPはFast blue B saltとNaphthol AS-MX phosphate(参考文献30)の染
色混合物と37℃で30分間培養することにより固定細胞内で染色した。染色溶液はDP
BSで洗い落し、顕微鏡下で細胞を分析した。紫色に染色された領域が陽性と考えられる
定量的リアルタイムPCR:hBMP‐2・cmRNAをトランスフェクト後3、7、
14、21日目に、細胞をDPBSで2回洗浄し、次いでTRIzol(Life technology社、
米国、カリフォルニア州)によって溶解した。全RNAをフェノール/クロロホルム法に
基づいて分離した。BioPhotometer plus UV spectrophotometer(Eppendorf AG社、ドイ
ツ国、ハンブルグ)を用いて、分光光度法によりRNA濃度および純度を測定した。Firs
t Strand cDNA Synthesis Kit(Thermo Scientific社、米国、マサチューセッツ州)を用
いて、製造業者の指示にしたがって全RNAからファーストストランドcDNAを逆転写
した。骨関連遺伝子の発現は、リアルタイムでの定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(re
verse transcription polymerase chain reaction:RT‐PCR)によって測定した。
表2に増幅プライマーを列挙する。SsoFast Eva Green Supermix(Bio-Rad Laboratories
Inc.社、米国、カリフォルニア州)を用いて、Bio-Rad CFX96サーマルサイクラー(Bio-
Rad Laboratories Inc.社、米国、カリフォルニア州)に基づいてリアルタイムでのPC
Rを行った。
トランスフェクト脂肪質組織の場合、全RNAはトランスフェクト後、3、7日目に抽
出した。洗浄した組織は、RNAlater試薬(Qiagen GmbH社、ドイツ国、ヒルデン)中に製
造業者のプロトコルにしたがって回収した。RNA抽出の前に、手持ち式ホモジナイザ(
PT1200E Polytron、Kinematica GmbH社、ドイツ国、エシュバッハ)を用いてTRIzolにお
いて組織を均質化した。RNA抽出、cDNA合成、およびRT‐PCRは、細胞につい
て上述した同じプロトコルを用いて行った。hBMP‐2、RunX2、ALP、およびColl
Iの発現レベルを分析した。表3に増幅プライマーを列挙する。
全体として、β‐チュービュリンを参照遺伝子として選択した。データは対照、すなわ
ち非トランスフェクト細胞および組織、と比べた誘導倍率として表した。
アリザリンレッド染色および定量化:トランスフェクト後14日目と21日目にアリザ
リンレッド染色を行い、hBMP‐2・cmRNA複合体を用いてトランスフェクトした
細胞におけるカルシウム沈着を評価した。このカルシウム沈着は、AMSCの骨形成分化
の指標となる。手短に述べると、アリザリンレッド溶液(DPBS中5mg/mL)を用
いて、室温で15分間、エタノール固定細胞を培養した。染色細胞を広範囲にわたって洗
浄して非特異的な染色および/または、存在した場合は沈殿物を除去した。無機化された
小結節およびカルシウム沈着は赤斑として染色され、骨形成を示す。その後アリザリンレ
ッド染料は、100mMの塩化セチルピリジニウムを用いて室温で3時間かけて抽出した
。次いで570nmで吸光度を計測した。実験は3連で行い、結果は、非トランスフェク
ト対照細胞と比較して報告する。
統計的分析:すべての得られた値は平均±標準偏差として報告する。統計的分析は、Gr
aphPad Prism version 6.00(GraphPad Software社、米国、カリフォルニア州)を用いて
行った。データの正規分布は、シャピロ‐ウィルク検定を適用して分析した。One-way AN
OVAとそれに引き続いてTukeyの多重比較検定を行って、さまざまなトランスフェクション
試薬(図2A)およびフローサイトメトリー結果(図3C)を用いて、トランスフェクト
細胞のMetLuc発現を分析した。加えて、2つの独立した試料の分析を行う場合はスチュー
デントのt検定を用いた。すべての統計的分析は、用いたソフトウェアの勧めにしたがっ
て行った。確率がp<0.05であれば有意差とみなした。曲線下面積(Area under the
curve:AUC)値は、Origin Pro 9G Software(Microcal1 software、OriginLab Corp
社、米国、マサチューセッツ州)を用いて算出した。
化学修飾mRNAの生成:公開されているプロトコル(参考文献22)を用いて、eG
NP、Tomato、MetLuc、およびヒトBMP‐2をコードするcmRNAを生成した。生成
したcmRNAの分子サイズと品質は、アガロースゲル電気泳動法(図1)によって分析
した。すべてのcmRNAが所期のサイズをしており、劣化(しみ)や追加的副産物(予
期しないサイズの余分なバンド)は検出されなかった。
MTSアッセイ:細胞単層を、200μl/wellのMTS試液(フェノールレッド
を含まない無血清MEM中で5:1の比)で処理し、標準培養条件下において光から保護
した状態で3時間培養した。各ウェルから得た100μlの培地を96ウェルプレートに
移し、PerkinElmer社(米国、マサチューセッツ州)のWallac Victor 1420 multilabel c
ounterを用いて吸光度を490nmで測定した。ラテックスゴムを用いて細胞死の誘導(
陽性対照)を行った(参考文献24)。非処理細胞は陰性対照(すなわち細胞生存率10
0%)として用いた。
インビボ試験用cmRNAの製造
C12-(2-3-2)/cmRNAリポイドの製造:100mgのN,N’‐ビス(2‐アミノエ
チル)‐1,3‐プロパンジアミン(0.623mml)と、575.07mgの1,2
‐エポキシドデカン(3.12mmol、(N-1)eq.、ここでNは、1オリゴ(ア
ルキレンアミン)につき一級アミンの2倍量+二級アミン1倍量)を混ぜ、常に振動を与
えつつ80℃で96時間混合してカチオン性脂質(C12-(2-3-2)と称される)を調製した
。カチオン性脂質C12-(2-3-2)、ヘルパー脂質DOPE、コレステロール、PEG‐脂質
DMPE‐PEG 2kをモル比8:5.29:4.41:0.8を用いてリポイド粒子
を製造した。手短に述べると、無水エタノールにおいて各脂質貯蔵液を適切な容積だけ組
み合わせて、それぞれの濃度を、50、20、20、20mg/mlとした。容積は最終
的には200μlに調整した。迅速な溶液交換によってリポソームを形成することができ
た。その後、クエン酸塩バッファ中で200μlのリポソーム混合物を800μlのcm
RNAと混ぜた(すなわちhBMP-2・cmRNAまたはFFL・cmRNA)。最終
的なcmRNA濃度は、N/P比17で200μg/mlに固定した。室温で30分培養
後、リポプレックスを水で一晩透析した。
C12-(2-3-2)/cmRNAリポイドを含むインビボ試験用フィブリン塊:C12-(2-3-2)/
cmRNA複合体を含むフィブリン塊の調製は移植の直前に行った。したがって、ともに
2.5μgのcmRNAを含むC12-(2-3-2)/hBMP-2・cmRNA複合体とC12-(2-
3-2)/FFL・cmRNA複合体をそれぞれ独立して50μlのフィブリノゲン(300
0KIU/mL、Tissucol、Baxter社、ドイツ国、ウンターシュライスハイム)と混ぜ、
凍結乾燥させた。
フィブリノゲン‐cmRNA粉末を30分間無菌水で戻した後に外科手術を始めた。完
全に均質化した後、フィブリノゲン‐C12-(2-3-2)/cmRNAを50μlのトロンビン
(4U/mL、Tissucol、Baxter社、ドイツ国、ウンターシュライスハイム)と混ぜ、2
分間凝固させた。対照として、cmRNAをまったく使用せずに上記と同じ手順にしたが
ってフィブリン塊を作製した。
hBMP‐2・cmRNA利用における非致命的なサイズ欠損(インビボ試験用):無菌
状態において、3mmという非致命的なサイズの超皮質性の骨欠損を形成した。骨欠損は
、18匹のオスのSDラット(Charles River Laboratories社、ドイツ国、ズルツフェル
ト)の大腿骨幹の中央部に左右相称で形成した。重量が650~750gのラットを無作
為に選び、フィブリン(すなわち対照群)、フィブリン+2.5μgFFL・cmRNA
、フィブリン+2.5μghBMP‐2・cmRNAの3つの群(それぞれn=6)に分
けた。
110mg/kgのケタミン(Ketanest S、25mg/ml、Pfizer社、ドイツ国、カ
ールスルーエ)と12mg/kgのキシラジン(Rompun、20mg/ml、Bayer社、ドイ
ツ国、レバークーゼン)の混合物を筋肉注射して麻酔導入を行った。大腿骨幹の中央部に
3mmのドリル孔をあけ、0.9%塩化ナトリウム溶液(B-Braun社、ドイツ国、メルズ
ンゲン)を用いて灌注を行った。各群によれば、上記欠損は、移植直前に生成された10
0μlのフィブリン塊で埋められた。したがって、塊は鉗子を用いてエッペンドルフ・チ
ューブから移され、完全に骨欠損を埋めた状態で配置した。
ラットには鎮痛処置として4日間にわたり一日一回カルプロフェン(rimadyl、Pfizer
社、ドイツ国、カールスルーエ)(4mg/kg)を皮下注射して与えた。
手術から2週間後、ラットは全身麻酔をして心臓内注射を行うことによりペントバルビ
タールを過量服用させて(120mg/kg、Eutha77、Essex Pharma社、ドイツ国、ハ
ンブルグ)死亡させた。大腿骨を採取し、ホルマリン溶液(中性緩衝ホルマリン、10%
、Sigma-Aldrich社、米国、ミズーリ州)で24時間保存した。その後、次の処理を行う
まで、80%エタノールへ移して保管した。
インビボ試験のためのマイクロコンピュータ断層撮影法(Micro Computer Tomography
:μCT):すべての外植大腿骨についてマイクロコンピュータ断層撮影法(μCT)に
よる分析を行った(mCT 40、Scanco Medical AG社、スイス国、バッサースドルフ)。計
測に用いた設定を以下に記す。増分は角度0°で157μmに設定した。画像の3D画素
サイズは全スライス数665で8000μmに設定した。したがって、各試料は縦方向に
おける間隔の計が5.32mmで調査された。ビームの積分時間は最大300msに設定
し、各計測点につき3つのデータセットを検出した(それらの平均値がその後の計算に用
いられる)。μCT装置はヒドロキシアパタイト・ファントムを用いて1週間に一度較正
した。
ソフトウェアImageJ(国立衛生研究所、米国、メリーランド州)を用いて、3Dセグメ
ンテーション・アルゴリズムによって、無機化された骨と注状仮骨構造の分析を行った。
μCTデータのセットは、Karl Heinz Kunzelmann教授(ドイツ国、ルートヴィヒ・マク
シミリアン大学ミュンヘン、充填/修復歯科学科)が親切にも提供して下さったKHK_micr
oCTと称されるプラグインによって設定される3D層に変換した。無機化された骨と仮骨
の密度レベルを分離するために、グレイスケール閾値を導入し、既に調査された2つの密
度間隔用に値を2500~4500に設定した。その後、BoneJ(登録商標)と称される
別のプラグインを仮骨構造の3D撮像および定量化に用いた。考慮した数値は骨量(bone
volume:BV)のみであり、それを用いて各標本の新たに形成された仮骨の量を比較し
た。上記量は、上記のKHK_microCTと称されるプラグインによって、自動的にメートル法
の数値に変換された。仮骨構造の詳細な3D画像は、「3Dビューアー」と称される内蔵
プラグインによって得た。
(実施例2)AMSCおよびBMSCでのトランスフェクションにおけるDF-Gold対mR
NA比の最適化
DF-Goldを含むmRNAリポプレックスを用いたAMSCおよびBMSC用のトランスフ
ェクション・プロトコルをさらに最適化するため、さまざまなパラメータを考慮した。用
量2.5、5、10、20pg/cellにおいて、核酸1μgにつき、エンハンサーが
0.5~5μlの場合のDF-Gold対mRNAの容積/重量比を調査した。結果を図10お
よび図11に示した。両細胞型について、用量は1細胞当たり20pgのmRNAが最適
であることが確認された。また、用いられるエンハンサーの量としては、AMSCの場合
は1μgのmRNAにつき5μlのDF-Goldが、BMSCの場合は1μgのmRNAにつ
き2μlのDF-Goldが最も良好であることが確認できた。
(実施例3)リポフェクションおよびマグネトフェクションによる幹細胞へのcmRNA
の効率的な送達
まず、cmRNAを含む脂肪質由来の幹細胞(adipose-derived stem cells:AMSC
)をトランスフェクトするさまざまな試薬の効率性を調査した。図2Aに、トランスフェ
クトから120時間後までのMetridiaルシフェラーゼの発現の動態を示す。試験を行った
すべての試薬において、最大発現はトランスフェクトから24時間後に得られた。bPE
Iがすべての試薬中最も効率的でない試薬であり、どの計測時点においてもbPEIでは
有意差のある発現を確認できなかった(p>0.05)。試薬は、基づく脂質が違うと、
得られるMetLuc発現の動態も違った。24時間後時点では、Lipofectamine2000において
最高発現が見られたが(p<0.0001)、Lipofectamine2000は最も短命であり、4
8時間後以降の時点ではMetLuc活性は低レベルであった。一方、DreamFect Gold(DF-Gol
d)とDogtorは、24時間後の時点ではLipofectamine2000と比べていくらか非効率的であ
ったが、120時間後までMetLuc発現を維持した。トランスフェクション効率以外にも、
AMSCにおけるさまざまなトランスフェクション試薬の細胞毒性も試験した。Lipofect
amine2000を含むMetLuc・cmRNA複合体の毒性がもっとも高く、細胞生存率は5時間
以内で75%未満まで低下した(図2B)。DF-Goldの複合体とbPEIの複合体の細胞
毒性は弱いという結果であり、両計測時点において80%以上の細胞生存率が見られた。
トランスフェクト後24時間では、DF-Goldでトランスフェクトされた細胞と非トランス
フェクト対照細胞との間に統計学的な有意差は見られなかった(p=0.06)。
導入遺伝子の発現期間が長いこと(トランスフェクト後120時間まで)と弱毒性であ
るという所望の特徴に基づき、cmRNAを含む間葉系幹細胞(AMSCおよびBMSC
)をトランスフェクトするものとしてDF-Goldを選択した。両細胞型について1細胞当た
りのcmRNAの用量を最適化した。結果として、20pg/cellがトランスフェク
ションに最適な用量だと判明した。図10および図11にデータを示す。AMSCとBM
SCの比較をより正確に行うため、DF-Gold対cmRNAの容積/重量比は4に固定した
(製造業者の指示)。しかしながら、この比も両細胞型について精緻した。結果として、
AMSCの場合は容積/重量比5、BMSCの場合は2であった(図10および図11)
プラスミドDNA(pDNA)は遺伝子導入において一般的に用いられる非ウイルス性
ベクターであるため、MetLucの発現は、MetLuc・cmRNAまたはそのプラスミド等価物
(pVAXA120‐MetLuc)のいずれかとトランスフェクトした後に比較した。標的タ
ンパク質の発現は、細胞をpDNAでリポフェクトしてから24時間後は多いようだが、
48時間後から観測終了時間である120時間後までを見た場合、cmRNAの発現は、
大幅に低下したpDNAと比べて、この文脈においては高発現を維持していた。理論に縛
られることなく、上記永続的な発現は、例えば、本発明にしたがって用いたリポプレック
ス(例えばDF-Gold(商標)/cmRNA)を用いたことによって、mRNAを分解から
より良好に保護できることを示す証拠であるとともにcmRNAが安定化したことを証明
するものでもある。
pDNAとcmRNA(両方ともMetLucをコードする)にリポフェクションを行った後
の標的タンパク質発現の有効性を比較した(図2C)。トランスフェクトから24時間後
、pDNAでトランスフェクトしたAMSCのトランスフェクション効率は、ほぼ2倍高
かった(p=0.005)。しかしながら、トランスフェクト後48時間~120時間の
MetLucの発現レベルは、cmRNAでトランスフェクトした細胞の方が有意差(p=0.
0002)を持って上回っており、トランスフェクト後120時間まで有意差(p=0.
007)をもって上回り続けた。0~120時間後時点のデータを積分することによって
算出した「pDNA」と「cmRNA」の曲線下面積、AUCpDNA=1.71・10
(正規化RLU・h)とAUCcmRDNA=1.68・10(正規化RLU・h)
から、cmRNA送達は、pDNA送達後に達成される標的タンパク質の「生物学的利用
能」と類似する標的タンパク質の「生物学的利用能」をもたらしうることが確認できた。
cmRNAトランスフェクションの効率性をさらに高めるため、マグネトフェクション
を用いた。この目的で、PEI装飾された酸化鉄コアシリカシェル磁気ナノ粒子(すなわ
ちSO-Mag6-115)を用いた。SO-Mag6-115ナノ粒子の特徴は、流体力学的径がおよそ96±
14nmであり、正のゼータ電位が34±3mVと高いことであった。目視では、磁気ナ
ノ粒子は水性懸濁液中で安定しているようであった。水中、150mMのNaCl中、ま
たは細胞培地中では沈降は見られなかった。さらに、ナノ粒子は外部から印加された磁場
に対して明らかな反応を見せた。
マグネトフェクション実験では、BMSCとAMSCを並列的に比較しながらトランス
フェクトを行った。マグネトフェクションは、リポフェクションと比べ、両細胞型におい
て有意差のある高いトランスフェクション効率をもたらした(図3)。eGFPでトラン
スフェクトされた細胞のトランスフェクトから24時間後のフローサイトメトリー分析で
は、陽性細胞の割合は59.7%(AMSC)と73.2%(BMSC)であった(図3
C)。これに対し、リポフェクションを行った場合(すなわちDF-Goldをトランスフェク
ション試薬として用いた場合)、37.5%(AMSC)と38.9%(BMSC)の細
胞がeGFPについて陽性を示した。代表的なヒストグラムを図12に示す。このフロー
サイトメトリーのデータは、蛍光顕微鏡検査とMetLucアッセイのデータと一致する(図3
A、3B、3D)。図3Aでは、tomato・cmRNAの細胞導入にマグネトフェクション
を用いた場合、tomatoタンパク質を発現するトランスフェクト済みBMSCの割合が明ら
かに高かったことがわかる。eGFPをコードするcmRNAの送達後も類似のパターン
が見られた。図3Bは、eGFPを発現しているAMSCとBMSCの蛍光顕微鏡写真で
ある。同様に、図3Dは、MetLuc・cmRNAを用いたマグネトフェクションによってト
ランスフェクトされたAMSCとBMSC両方の場合ともに、トランスフェクションから
24時間後に、MetLucの発現が有意差(p<0.0001)をもって高まったことを示し
ている。
マグネトフェクションのより顕著な影響がBMSCに対して明らかに得られた。図3D
に両細胞型についてのMAIを示す。BMSCとAMSCではそれぞれ4.4倍(MAI
)と2.4倍(MAI)のMetLuc活性増加が測定された。これらのデータから、マグネト
フェクションを用いた場合、両MSC型においてタンパク質発現が有意差をもって増強さ
れたことが証明される。
(実施例4)トランスフェクトされた幹細胞によるhBMP-2の分泌増強
Opti-MEM培地において、またさらに、次に行う実験での骨形成状態の重要性を考慮して
骨形成培地の存在下において、hBMP‐2・cmRNAのトランスフェクションを行っ
た。興味深いことに、Opti-MEMを用いてトランスフェクションを行い、さらに5時間後に
培地を骨形成培地に交換した場合、トランスフェクション効率が低下したようすはなかっ
た(図4A)。有意差をもってhBMP‐2の発現低下が確認されたのは、骨形成培地の
存在下でトランスフェクションが行われたときであった(p<0.05)。図4Bに、ト
ランスフェクション後のさまざまな時点における、トランスフェクト済み細胞の細胞可溶
化物および上清において定量化された、分泌され、細胞と関連するhBMP‐2の含有量
を示す。非トランスフェクト対照細胞と比べ、トランスフェクトが行われた細胞から得た
試料では、有意差のある高いhBMP‐2レベルが検出された(p<0.001)。hB
MP‐2の発現の最大値は、トランスフェクトから48時間後に見られた。hBMP‐2
の細胞内レベルは48時間後以降、有意差をもって低下した(p=0.007)。hBM
P‐2の高細胞内レベルにもかかわらず、トランスフェクトされたAMSCは、トランス
フェクト後最大7日まで有意差をもって高hBMP‐2レベルを分泌した(図4B、図4
C)(p=0.0008)。図4Bおよび図4Cに、マグネトフェクションを行った細胞
の試料におけるhBMP‐2レベルを示す。細胞によって生成されたhBMP-2の全量
は、cmRNA1μgにつき、およそ700pgであった(図4C)。これは、リポフェ
クション後に得られたhBMP-2レベルと比較して6倍の増加(MAI)である(図4
C)。マグネトフェクションにおいて確認された高hBMP‐2レベルは、eGFPレポ
ーター(図3B、図12)、MetLuc(図3D)、Tomato(図3A)をコードするcmRN
Aについて確認されたトランスフェクションにおける高効率および高発現と一致する。ト
ランスフェクト細胞におけるhBMP‐2の細胞内レベルもマグネトフェクションによっ
てかなりの上昇がみられたことは特筆に値する事実である(p<0.0003)。図4B
では、トランスフェクト後24時間のhBMP‐2の細胞内量は、分泌hBMP‐2とほ
ぼ同じであることが確認された(p=0.8)。この時点より後では、トランスフェクト
細胞のhBMP‐2の分泌量は、細胞可溶化物中で定量化されたレベルと比べて有意差を
もって多かった(p<0.001)。
(実施例5)hBMP‐2・cmRNA送達によりAMSCにおけるインビトロでの骨形
成が誘導された:
インビトロでの骨形成の最初の徴候を確認するために、hBMP‐2でトランスフェク
トされたAMSCのアルカリホススファターゼ(alkaline phosphatase:ALP)活性を
評価した。hBMP‐2・cmRNAの導入から12日後、トランスフェクト細胞におい
てALP発現の増加を確認することができた(図5A、図5B)。ALP活性の定量化に
よれば、対照群と比べ、トランスフェクト細胞では早くも7日目に有意な増加がみられ、
12日目までそれが継続したことが実証された(図5B、p<0.01)。
その後、リアルタイムPCRを用いて、さまざまな時点における骨形成関連遺伝子の発
現を定量化した(図5C~図5H)。リポフェクション群とマグネトフェクション群の両
方について、非トランスフェクトクト細胞と比べ、Runx2、Osterix、ALP、Coll I、Os
peopontin、およびOsteocalcinの発現が時間経過とともに増加した。興味深いことに、Ru
nX2、ALP、およびOPNのマグネトフェクション群は、トランスフェクションから1
4日後、リポフェクション群と比べて有意に高い発現を示した。特にOPNにおけるマグ
ネトフェクションが14日後でも継続的な高発現を示した。一方、RunX2の発現の低下が
、マグネトフェクション群においてたった14日後に見られた。
アリザリンレッド染色(図6B、図6C)を行ったところ、トランスフェクトを行った
群での灰化結節の数は、非トランスフェクト細胞(図6A)よりも明らかに多かった。ま
た、リポフェクション後、染色強度はhBMP‐2・cmRNA用量が少ない場合(すな
わち20pg/cell、図6C)の方が明らかに強かった。これは、MetLuc・cmRN
Aを用いた滴定実験(図10)で得た最適用量と合致する。32pg/cellという高
用量では、無機化は目視で低下していた(図6C右側)。しかしながら、cmRNA導入
にマグネトフェクションを用いた場合、無機化は高まった(図6B)。アリザリンレッド
染色の定量的分析によりこれらの結果が確認された。図6Dでは、リポプレックスを用い
た場合、低用量群(20pg/cell)の方が高用量群(32pg/cell)の場合
よりも有意に無機化が高まることが示されている(p<0.0001)。20pgのhB
MP‐2・cmRNAでトランスフェクトした細胞では、培養時間が経つにつれて無機化
が高まった。高用量群に対してマグネトフェクションを用いると、無機化が有意に高まっ
たことが検出された(14日目ではp=0.04、21日目ではp=0.007、図6D
)。さらに、それはトランスフェクト後14日目という早い段階で明らかに認められた。
(実施例6)ヒト脂肪質組織のトランスフェクションによりインビトロでの遺伝子発現が
誘導された:
DF-Gold/tomato N1・cmRNA複合体またはDF-Gold/hBMP-2・cmRNA
複合体を用いてヒト脂肪質組織のトランスフェクトを行った。図7Aに示すように、トラ
ンスフェクト後、脂肪ディスク体内部の多くの細胞がtomato N1陽性となった。hBM
P‐2でトランスフェクトされたディスク体について、RT‐PCRを用いて、トランス
フェクトされた組織は、処置されていない外植片と比べ、4倍以上のhBMP‐2発現増
加があることが分かった(図7B)。また、骨形成条件下で培養されたトランスフェクト
組織においては、対照と比べ、RunX2、Osterix、Coll Iなどの骨関連遺伝子の発現増加が
はっきりと認められた。ALPおよびColl Iの発現は、トランスフェクト後3日目~7日
目、有意差をもって増加した(p<0.001)。
(実施例7)BMP‐2・cmRNAは、インビボにおいて、2週間で骨形成をおよそ2
倍にした:
図13A~図13Cには、すべての研究対象群について、処置から2週間後のμCT3
Dによる再現および縦断面を示す。C12-(2-3-2)/hBMP‐2・cmRNA群のμCT
断面において、新しい骨が形成される徴候が確認できる。対して、フィブリンまたはC12-
(2-3-2)/FFL・cmRNA群では新たな骨が形成される徴候は認められなかった。こ
のモデルを用いて、自然発生的な骨治癒過程におけるhBMP‐2・cmRNAの影響を
測定した。図3Dに、すべて群について仮骨の形成量の定量的分析を示す。このμCTデ
ータによれば、C12-(2-3-2)/hBMP-2・cmRNAを含むフィブリンで処置した動
物では、対照群と比べ、2週間後の仮骨形成に有意な増加が見られた(P<0.05)。
フィブリン群と、C12-(2-3-2)/FFL・cmRNAを含むフィブリン群との間に有意差
は見られなかった。それらの群では、有意な仮骨形成は確認できなかった。
得られたμCT結果によれば、hBMP‐2・cmRNAの骨治癒に対する治療効果が
実証された。hBMP‐2・cmRNAで処置された動物では、インビボでの骨形成の刺
激が明らかに確認された。対して、非特異的なcmRNA(すなわちFFL/cmRNA
)で処置された動物では骨形成は確認できなかった。これは、hBMP‐2・cmRNA
により、骨欠損部位におけるhBMP‐2の治癒的効果をもたらす発現が仲介され、骨形
成が生じることを実証するものである。
さらなる材料および方法(特に実施例8~14に関する)
材料:ダルベッコ・変法イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium:DMEM
)と、α最小必須培地(alpha Minimum essential medium:α‐MEM)と、カルシウム
・マグネシウム非含有ダルベッコ・リン酸緩衝塩類溶液(Dulbecco's Phosphate-Buffere
d Saline without Calcium and Magnesium:DPBS)と、ウシ胎児血清(FBS)と、
ペニシリン/ストレプトマイシン(Penicillin/Streptomycin:P/S)と、0.05%
のTrypsine-EDTAと、コラゲナーゼ・タイプIおよびタイプII(collagenase type I an
d II)は、Life Technologies GmbH社(ドイツ国、ダルムシュタット)のGibcoから購入
した。
1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホコリン(1,2-dipalmitoyl-sn-g
lycero-3-phosphocholine:DPPC)を含むヘルパー脂質と、コレステロールは、Avant
i Polar Lipids社(米国、アラスカ州)から提供を受けた。エタノールや1,2‐ジミリ
ストイル‐sn‐グリセロール・メトキシポリエチレングリコール(1,2-Dimyristoyl-sn
-glycerol, methoxypolyethylene Glycol:DMG‐PEG)2kDなど、複合体の調製
に必要な他の材料はCarlRoth社(ドイツ国、カールスルーエ)とNof America Corporatio
n社(米国、ニューヨーク州)から購入した。「KOLLAGEN resorbTM」という商品名のコラ
ーゲンスポンジは、Resorba社(ドイツ、 ニュルンベルク)より提供を受けた。他の試薬
および材料は、特に規定がない限りSigma-Aldrich社から得た。
複合体の調製:ヘルパー脂質としてのDPPCおよびコレステロールと、ペグ化脂質とし
てのDMG‐PEG2kとともに、カチオン性脂質であるC12-(2-3-2)(ethris GmbH社よ
り提供、「C12EPE」としても知られる)を非ウイルス性トランスフェクション剤と
して用いた。
RNA濃度200μg/ml、N/P比(RNAのリン酸基に対する脂質のアミノ基の
モル比を表す)8でRNA複合体を形成した。複合体を誘導して、脂質相のエタン酸溶液
をcmRNAを含む水相の内側にインシュリン注射器で素早く注入することにより自己組
織化させ、次いで高速で15秒間渦動させ、室温で30分間培養した。分画分子量が7k
Daの透析カセット(Pierce、米国)を用いて、合成したリポプレックスを再蒸留水で透
析した。30分後に1回水を交換し、その後一晩透析した。
粒径およびゼータ電位の計測:リポプレックスの粒径は、Zetasizer(Malvern Instrumen
ts社、英国、ウースター)を用いてレーザー光散乱によって計測した。清潔な使い捨ての
キュベット・セルを複合体750μlで満たし、粒径の場合は全部で30回、表面電荷の
評価の場合は300回、操作を行った。
Metridiaルシフェラーゼによるアッセイ:レポーターmRNAであるMetridiaルシフェラ
ーゼの発現の動態を用いて、持続性mRNA送達におけるコラーゲンスポンジの性質を試
験した。このために、細胞培養上清をトランスフェクト後24時間おきに回収し、新しい
培地と交換した。回収した培地は、すぐに計測を行うか、または実験の最終日に試料をま
とめて計測するまで-20℃で凍結した。Met lucの発現を定量化するために、黒色の9
6ウェルプレート(Costar社、米国、ニューヨーク州)中で80μlの上清と30μlの
0.05mMセレンテラジン(Synchem社、ドイツ国、フェルスベルク)を丁寧に混ぜ、
発光読取器(Wallac Victor、Perkin-Elmer Life Sciences社)を用いて3連で計測した
ラットの間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells:MSC)の分離および増殖:ラットの
骨髄間葉系幹細胞(bone marrow mesenchymal stem cells:BMSC)はethris GmbH社
から提供を受けた。脂肪質間葉系幹細胞(Adipose mesenchymal stem cells:AMSC)
は、オスのラットの脂肪組織から分離した。この処置では、脂肪組織をミリメートルサイ
ズの小片に切断し、無菌DPBSが入ったファルコンチューブ(Corning Inc社、米国、
ニューヨーク州)に移し、DPBSで何度か洗浄した。次に、コラゲナーゼ・タイプII
溶液(0.4mg/ml)中で脂肪片を加湿された37℃条件下で30分間培養した。次
いで、完全DMEM培地(10%容積/容積FBSと1%容積/容積ペニシリン/ストレ
プトマイシンを含むDMEM)を加えてコラゲナーゼ活性を停止させ、600gで10分
間遠心分離した。上部の脂肪層を回収し、完全DMEM培地に再懸濁させた。次の工程で
は、細胞懸濁液を40μmセルストレーナー(Corning Inc.社、米国、ニューヨーク州)
で濾過し、T75cmフラスコ(Corning Inc.社、米国、ニューヨーク州)に蒔き、加湿
された37℃、5%COの完全DMEM(参考文献20)に配置した。非接着細胞を除
去するために、翌日、培地交換を行った。細胞密度1500~3000cell/cm
で細胞を増殖させ、培地は3日おきに交換した。本研究では、MSCは6継代まで使用し
た。
実験設定:パンチャー(VBS Lochzange, Nr. 19970181)を用いてコラーゲンスポンジを
小片(6mm径)に切断した。それら小片を、無菌状況下にある、底が平らでポリプロピ
レンコーティングを施していない96ウェルプレート(Eppendorf社、ドイツ国、ハンブ
ルグ)のウェルに入れた。分散保護剤(lyoprotective)として、スクロース(2%)中
の50μlのリポプレックスを各片に滴下し、室温で90分間培養してスポンジに完全に
浸漬させた。次いで、配合スポンジを高真空環境(Martin Christ Gefriertrocknungsanl
agen GmbH社、ドイツ国、オステローデ・アム・ハルツ)に移し、そこで0.05mba
rで少なくとも2時間乾燥させた。その後、スポンジは細胞播種に用いるか、真空封止さ
れて使用まで室温で保管した。細胞播種を行う場合、50μlの完全培地(NIH3T3
およびMSC細胞用の完全DMEM)における所望の細胞密度を各スポンジに加え、その
後、加湿された37℃、5%COの条件下で30分間培養した。ポリプロピレンのコー
ティングが施されていないプレート上では成長できないため、細胞は、培養時、コラーゲ
ンスポンジ上に播種する必要があった。次いで、200μlの完全培地をウェルに加えて
、プレートを細胞培地インキュベータで培養した。
laminar hood(BDK Luft und reinraumtechnik GmbH社、ドイツ国、Sonnenbuhl-Genkin
gen)を用いてすべての処置を無菌状態で行った。さらに、コラーゲンスポンジが高い静
電荷を有するため、プラスチック材料は回避した。
cmRNA導入の効果:ファックス分析を行って、3D系におけるcmRNAトランスフ
ェクションの効果を特性評価した。このため、各スポンジを、カルシウムとマグネシウム
を含むハンクのバランス電解液(Hanks' balanced salt solution:HBSS)中で、3
00U/mlコラゲナーゼ・タイプIとともに4~7時間培養した。培養時、数回スポン
ジを目視で観察して、完全なコラーゲンの消化を確認した。細胞を500gで5分間遠心
分離にかけ、DPBSで洗浄した。次の工程では、10μlの0.05%Trypsin-EDTAと
ともに細胞を37℃で5分間培養して細胞の剥離を促進させた。各ウェルに、2%FBS
を含むDPBSを90μl加えて剥離を停止させた。
Attune NxTフローサイトメトリー(Life technologies社、米国、ニューヨーク州)を
用いてファックス分析を行った。各実験の前に、キャリブレーション用ビーズ(Molecula
r probes、Life technologies社、米国、ニューヨーク州)を用いて機械を較正した。細
胞破片は、前方散乱・側方散乱ゲ―ティング(forward- and side-scatter gating)を用
いて分析から除いた。2Dおよび3D条件下で培養された非トランスフェクト細胞を陰性
対照として用いて、eGFPの蛍光発光を検出するために蛍光チャネルを調整した。3連
で得たデータを、FlowJo_V10ソフトウェアで分析した。
細胞死/生存の測定:ヨウ化プロピジウム染色およびWSTアッセイを用いて細胞生存率
を評価した。両アッセイにおいて、さまざまな用量のeGFP・cmRNA複合体が配合
された真空乾燥コラーゲンスポンジを使用した。1スポンジにつき10,000個のNI
H3T3細胞を完全DMEM培地に播種し、加湿された37℃、5%CO条件下で48
時間培養した。
生死染色を行うために、前述したやり方で細胞をファックス分析用に調製した。次いで
、ヨウ化プロピジウム溶液の1mg/mlの貯蔵液の1:1000希釈物を計測の直前に
各ウェルに加えた。
細胞生存は、製造業者(colorimetric cell viability kit II (WST-1)、Promokine社
、ドイツ国、ハイデルベルク)の指示にしたがってWST反応アッセイによっても評価し
た。WST試薬を加える前に、3回ピペットを上下させて上清を取り、各ウェルにおいて
スポンジから均質な溶液を得た。次いで、100μlの上清を新しい細胞培養96ウェル
プレート(Corning Inc.社、米国、ニューヨーク州)に移し、計測を行った。トランスフ
ェクトを行わなかったウェルから得た上清をブランクとして用いた。多重分光光度読取装
置(multiple spectrophotometric reader)(Wallac Victor、Perkin-Elmer Life Scien
ces社、米国。マサチューセッツ州)を用いて、450nmで3連で吸光度を計測した。
hBMP‐2・cmRNA配合のコラーゲンマトリクスで培養されたMSCによるhBM
P‐2の分泌:さまざまな用量のhBMP‐2・cmRNAリポプレックスでトランスフ
ェクトされたMSCから得た培地試料をトランスフェクトから24時間後に回収し、ヒト
BMP-2ELISAキット(R&D Systems社、ミネソタ州、ミネアポリス)を製造業者
の指示にしたがって用いてhBMP‐2の濃度を計測した。実験は3連で行い、標準曲線
(r=0.99)を用いてタンパク質含有量を測定した。
走査型電子顕微鏡:走査型電子顕微鏡(Scanning electron microscopy:SEM)を用い
てコラーゲンスポンジのモフォロジーの特性評価を行い、スポンジ上に配合されたmRN
A複合体を評価した。スパッタ装置(sputter coater)(Edwards sputter coater S150B
、HHV Ltd社、英国、ウェストサセックス)を用いて、金とパラジウムを60/40の比
で用いてすべての試料にコーティングを施した。次いで、Zeiss-Leo DSM 982 Gemini(FE
LMI-ZFE社、オーストリア、グラーツ)を1.2kVで用いてSEMを行った。
コラーゲンスポンジに播種した細胞のヘマトキシリン染色:コラーゲンスポンジにNIH
3T3細胞を播種してから24時間後、リン酸緩衝塩類溶液(phosphate-buffered salin
e:PBS)中の4%ホルムアルデヒド(pH7.4)で細胞を固定し、室温で一晩おい
た。次いで、コラーゲンスポンジを脱水し、パラフィンに埋め込んだ。コラーゲン部(7
μmm)を脱パラフィンし、標準プロトコルにしたがってヘマトキシリンで染色した。
RNA分離およびリアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcriptas
e real-time polymerase chain reaction:RT‐PCR):hBMP‐2配合のコラー
ゲンスポンジに細胞を播種後7日目と14日目に、ハンクのバランス電解液(Hanks' bal
anced salt solution:HBSS)中の適切な量のコラゲナーゼ・タイプIを各ウェルに
加えて、コラゲナーゼ・タイプIの最終濃度が300U/mlになるようにした。次いで
、加湿された37℃、5%CO条件下で、プレートを4~7時間培養した。コラーゲン
スポンジが完全に溶けたら、細胞を500gで5分間遠心分離にかけた。RNAを完全を
分離するため、上清を取り除き、細胞はその後、製造業者に指示にしたがい、TRIzol試薬
(Ambion、life technologies社、ドイツ国、ダルムシュタット)で溶解した。
RNA濃度と純度は、NanoDrop 2000C分光測定器(Thermo Scientific社、米国、デラ
ウェア州)で測定した。First Strand cDNA Synthesis Kit(Thermo Scientific社、ドイ
ツ国、ダルムシュタット)を製造業者の指示にしたがい使用して、450ngの全RNA
から第一鎖(first-strand)cDNAを逆転写した。hBMP‐2でトランスフェクトを
行った群と行わなかった群それぞれについて、スポンジを15個使用し、RNA分離を行
うために溶解した細胞と一緒にプールした。
骨関連遺伝子の発現を評価するために、soAdvanced Universal SYBR Green Supermix(
Bio-Rad社、ドイツ国、ミュンヘン)を用いて定量的リアルタイムPCR(n=3)を行
った。PCRはLight Cycler 96 thermal cycler(Roche社、ドイツ国、マンハイム)に
対し行った。標的遺伝子の発現レベルはGAPDH(MC3T3-E1細胞の場合)とβ
‐チュービュリン(MSCの場合)の発現レベルに正規化した。データは、対照(すなわ
ち、トランスフェクトされていない3D培養でのMC3T3-E1細胞およびトランスフ
ェクトされていない2D培養でのMSC)に対する誘導倍率として表してある。プライマ
ー配列は以下のように5’~3’まで列挙した。
MC3T3-E1細胞に対する骨再生実験用のマウスのプライマー
MSCに対する骨再生実験用のラットのプライマー
インビトロでの骨分化:以前から知られているやり方で、2%スクロース中でコラーゲン
スポンジに3μgのhBMP2・mRNAリポプレックスを配合し、真空乾燥させた。次
の工程では、50μlのDMEM中にある新たに分離したラットのAMSCを各コラーゲ
ンスポンジに30,000個ずつ播種し、5%COの加湿雰囲気下において37℃で3
0分間培養して、コラーゲンスポンジへの細胞の接着を確実にした。次いで、250μl
の骨形成培地(DMEM+2%FBS+β‐グリセロリン酸10mM+L‐アスコルビン
酸200μM+1%ペニシリン‐ストレプトマイシン(Pen-Strp)を各ウェルに加えた。
培地の半分は2、3日おきに新しいものと交換した。3D(コラーゲンスポンジに播種)
および2D(通常の細胞培養フラスコに播種)下の非トランスフェクト細胞を含む陰性対
照も、3D下のトランスフェクト細胞とまったく同様に処置した。播種後から7日目およ
び14日目、RT‐PCRによって骨形成マーカーの発現について細胞を調査した。
インビボでの骨分化:インビボでの移植実験は、Care and Use of Laboratory Animalsに
規定されるガイドライン(米国National Research Council Committee、National Academ
ies Press(米国)、2011)にしたがって計画した。全部で9匹のSDラット(6ヵ月の
オス、平均体重:600~700g、Janvier社、フランス国、ル・ジュネスト=サン=
ティスル)を用いた。各ラットにおいて、左足の大腿骨欠損は空のコラーゲンスポンジで
処置し(陰性対照)、右足の大腿骨欠損は2.5μgのhBMP2・cmRNAが配合さ
れたスポンジで治癒を行った。術中術後の感染症を回避し、痛みを和らげるため、日常的
に用いられている抗生物質と鎮痛剤を処方し、動物には、Medetomidin(Domitor(登録商
標)、Orion pharma社、フィンランド国、エスポー:135μg/kg)とMidazolam(D
ormicum(登録商標)、ドイツ国、Unterhaching:2.5mg/kg)と、Fentanyl(Dur
agesic(登録商標)、ベルギー国、ベーアセ:5μg/kg)との混合薬を用いて麻酔を
かけた。
剃毛と消毒後、横方向外部領域に小さく皮膚切開を行った。2mm外径の骨用ドリルを
用いて、大腿骨の中央部に全層骨欠損を作製した。
欠損部に足場を適用後、ポリビニル膜を用いて移植領域を覆い、頭蓋骨膜の自己再生能
の影響を最小限に抑えた。最後に4-0バイクリル縫合糸を用いて頭蓋骨膜とそれを覆っ
ている皮膚を閉じた。ナトリウムペントバルビタール(Narcoren(登録商標)、Merial G
mbH社、ドイツ国、ハルベルクモース:400mg/kg)を用いてラットの皮膚を乱切
りし、試料を回収してμCTおよび組織学的分析を行った。
マイクロCT(μ‐CT)分析:μCT40(Scanco Medical社、スイス国、バッサース
ドルフ)を用いて、3次元X線マイクロCT(μ‐CT)画像処理を行って骨形成を定量
化した。骨の容積を計測して、各標本(空のコラーゲンスポンジで処置した欠損とhBM
P2・cmRNA配合コラーゲンスポンジで処置した欠損)において新たに形成された仮
骨の量を比較した。
ラット大腿骨欠損の組織学的考察:組織プレパラートによって骨再生の性質的側面および
形態学的側面を分析した。40%~100%のグレードシリーズのエタノール中で大腿骨
を脱水し、メタクリル樹脂(Technovit 7200、Heraeus Kulzer GmbH社、ドイツ国、ヴェ
ールハイム)に包埋した。薄く削った小片(およそ30μm)をプレパラートにし、Leva
i Laczko染色で染色し、光顕微鏡下で評価した(Donath K. and Breuner G., J. Oral Pa
thology (11), 1982, 318-326、Laczko J. and Levai G. (31), Mikroskopie, 1975, 1-4
)。
統計学的分析:すべての統計学的分析は、ウィンドウズ用GraphPad Prism version 6.05
(GraphPad Software Inc.社、カリフォルニア州、サンディエゴ)を用いて行った。統計
学的有意差は、t検定および多重t検定を用いて測定した。P<0.05の場合、有意差
があるとみなした。
(実施例8)C12-(2-3-2)を用いた、さらなる代替的なcmRNA複合体形成:
Ethris GmbH社より提供を受けたカチオン性脂質を非ウイルスベクターとして用いて、脂
質の陽性アミノ基とcmRNAの陰性リン酸基との静電的相互作用に基づいて、cmRN
Aをもちいて安定したリポプレックスを作製した(Anderson, Human amino groups of li
pid and negative phosphate groups of cmRNA, Human Gene Therapy 14, 2003, 191-202
)。リポプレックス構造を安定化させ漏洩を抑制するために、1,2‐ジパルミトイル‐
sn‐グリセロ‐3‐ホスホコリン(1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphocholine:
DPPC)およびコレステロールと名付けられた2種類のヘルパー脂質をEthris脂質に混
合した(Anderson, Drug Delivery 11, 2004, 33-39、Liang, Journal of Colliod and I
nterface Science 278, 2004, 53-62)。最後に、上記脂質混合物に1,2‐ジミリスト
イル‐sn‐グリセロール、メトキシポリエチレングリコール(1,2-Dimyristoyl-sn-gly
cerol, methoxypolyethylene Glycol:DMG‐PEG)2kDを加えてPEG化(PEGyl
ated)リポソームを得た。これは既に周知のことだが、PEG化(PEGylation)を行うこ
とで、水溶性が増し、酵素分解を回避でき、免疫および抗原反応を制限することができる
ため、リポソーム製造の物理化学的特性が向上する(Milla, Current Drug Metabolism 1
3, 2012, 105-119)。エタン酸脂質混合物全体における最終的なN/P比は8/5.29
/4.41/0.88であり、これは、cmRNA分子の1リン酸基に対する、C12-(2-3
-2)/DPPC/コレステロール/DMG‐PEGのアミノ基のモル比をそれぞれ表す。
cmRNAリポプレックスの生物物理学的特性を表6にまとめた。すべての生成物の流体
力学的径は概略でおよそ50nmであり、多分散性指標は0.1に近似である。これは生
成物が均質であることを示している。また、すべての複合物の合計表面電荷は中性に近い
が僅かに陽性である。
(実施例9)コラーゲンスポンジ上へのcmRNA複合体の配合と細胞播種
コラーゲンスポンジへの配合を行う前に、cmRNAリポプレックス溶液に凍結乾燥防
止剤として2%のスクロースを加えた。凍結乾燥防止剤は、真空乾燥処理における脱水時
に生物学的系の完全性を維持するものである(Kannan, Journal of Liposome Research,
2014, 1-9)。走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy:SEM)によってスポン
ジを可視化することにより、2%スクロースを含む真空乾燥済みコラーゲンスポンジは、
真空乾燥前(図23)と比較して、小さな孔を有する閉じた鳥かごに似た形状を呈するこ
とが確認できた。
cmRNAリポプレックスがスポンジに配合されている可能性を確実にするために、c
mRNA配合スポンジをSEMによって調査し、cmRNAを含むリポプレックスをコラ
ーゲンスポンジ上に検出した(図14A)。
コラーゲン上のcmRNA配合だけでなく細胞のトランスフェクションも調査するため
に、スポンジにtdTomato/cmRNAリポプレックスを2μg配合した。tdTomato・cm
RNAの10%は共有結合によってFITCと共役している。NIH3T3細胞の播種か
ら30時間後、Leica DMi8蛍光顕微鏡(Leica microsystems社、スイス国、ヘーアブルー
ク)を用い、スポンジ上における細胞およびcmRNAリポプレックスの分散度とトラン
スフェクション有効性を視覚化した。図14Bに見られるように、細胞はトランスフェク
トされ、主にcmRNAを高蓄積した箇所(緑色斑)においてtdTomatoタンパク質が発現
した(赤色斑)。
3Dマトリクス上での細胞挙動を調査するために、NIH3T3細胞を播種してから7日後に、縦長に切断したスポンジにヘマトキシリン染色を行うことにより、NIH3T3細胞のコラーゲンスポンジ内への移動を確認した。図14Cから、細胞はスポンジ内へ移動でき、マトリクス全体を成長およびシグナリングに使用できることが明らかとなった。これはインビボでの環境により酷似している。
第一に、細胞はコラーゲンスポンジの3Dマトリクス内で成長できることが確認できた
。他の研究によっても、コラーゲンスポンジが細胞培養に適した3D足場であることが証
明されており、それにより細胞シグナリングや細胞挙動が向上し、細胞における遺伝子発
現に影響がもたらされる(Chevallay, Medical and Biological Engineering and Comput
ing 38, 2000, 211-218)。次いで、cmRNAリポプレックスおよび細胞が均一に分散
していることが、蛍光標識されたcmRNAによってSEMおよび蛍光顕微鏡を用いて可
視化された(図14)。
(実施例10)コラーゲンスポンジ上でのトランスフェクション有効性と細胞生存率
コラーゲンスポンジ上での細胞トランスフェクションの有効性と安全性を確認するため
、トランスフェクトから48時間後にNIH3T3細胞系におけるeGFP・cmRNA
の発現を評価した。第一に、JULY(商標)蛍光顕微鏡(Baker and Baker Ruskinn社、米
国)を用いて、陽性eGFPを発現している細胞を視覚化した(図15A)。これらの結
果を定量化するため、ファックス分析を行ったところ、トランスフェクトされた細胞にお
ける平均蛍光強度の有意な増加が見られた(図15B)。用量反応実験において、1細胞
当たりのcmRNA量を増加させた場合、最大で100%のトランスフェクション効率が
確認された(図15C)。
臨床環境では、トランスフェクション効率だけでなく細胞毒性も決定要因となる。した
がって、GFPの発現に加えて細胞生存率についても、2つの異なる方法を用いて(すな
わちPI染色とそれに続くファックス分析およびWSTアッセイ)、2つの独立した実験
においてトランスフェクトから48時間後に定量化を行った。どちらの方法においても細
胞生存率60~70%という類似する結果が得られた(図15Dおよび15E)。トラン
スフェクション効率とは違い、有効性について用量依存的な増加が見られた場合でも、細
胞生存率は用量に依存するものではないようであった。
コラーゲンスポンジ上のeGFP・cmRNAのトランスフェクション有効性をファッ
クス分析で定量化することにより、トランスフェクトされた細胞率が100%に到達する
という著しく高い有効性をわれわれの技術は達成することが証明された(図15Bおよび
図15C)。この技術を臨床アプローチで立証するために、細胞生存率も評価し、60~
70%という用量依存的な細胞生存率が確認された。これはわれわれのインビトロ手法お
よびインビボ手法の両方で忍容されるものであった(図15Dおよび図15E)。細胞生
存率のアッセイにおける用量非依存性は、3Dマトリクス内に細胞が均一に分布している
ことの結果と言え、これはインビボ環境に酷似しており、より多いcmRNA複合体の用
量の場合でも細胞は耐性があるという点で細胞シグナリングおよび細胞増殖を向上させる
こともできる(Mueller-Klieser、American Journal of Physiology-Cell Physiology 27
3, 1997, C1109-C1123)。この細胞生存率が用量に依存しない動向は、全体的に有効性が
低くcmRNAの用量を増やす必要がある場合に特に有益である。
(実施例11)コラーゲンスポンジは、持続性cmRNA送達のためのデポーとしての機
能する:コラーゲンスポンジが持続性cmRNA送達系を実現できるかどうかを調査する
ために、NIH3T3細胞中のMetridiaルシフェラーゼ(Met luc)・cmRNAの発現
動態を24時間おきに計測し、2D培養および3D培養において比較した(図16)。
結果を見ると、最初の6日間はタンパク質の発現が安定していたことから、コラーゲン
スポンジには持続性cmRNA送達系としての性質があることが確認できた。加えて、8
日後の発現がほぼゼロである2Dでの細胞培養と比較して、cmRNAを配合したコラー
ゲンスポンジでは、cmRNA用量が多くても、11日後でも比較的高いタンパク質の発
現レベルがみられた。
非修飾mRNAを含むリポプレックスをコラーゲンスポンジに配合した場合も同様の結
果が得られた(図24)。しかしながら、真空乾燥を行わなかったコラーゲンスポンジを
用いた場合、この系では遅延送達効率は得られなかった(図25)。このことから、持続
的なcmRNA送達系を本設定において実現するには、真空乾燥は必須かつ重要な工程で
あることが証明された。
次の工程では、骨髄組織(BMSC)と脂肪質組織(AMSC)から分離したラットの
間葉系幹細胞(MSC)を用いて、初代培養細胞について系を試験した。両方の細胞型を
用い、リポプレックスを配合したコラーゲンスポンジに播種する細胞数を増やしつつ、Me
t lucの発現の動態を測定した。図17に示すように、細胞密度にかかわらず、複合体を
配合したコラーゲンスポンジに播種されたMSCでは、少なくともその後4日間はタンパ
ク質の発現が続いた。細胞密度が高くても(>10000細胞/スポンジ)Met lucの発
現における有意な増加は見られなかったため、これより先の実験は1スポンジ当たり10
~20000個の細胞を用いて行った。
Metridiaルシフェラーゼ・cmRNAの発現の動態を計測して、細胞系(図16)およ
びさまざまな細胞密度の初代培養細胞(図17)と、修正mRNAおよび非修正mRNA
(図24)も用いて、持続性cmRNA送達用のコラーゲンスポンジの能力を評価した。
動態の結果を見ると、真空乾燥を行ったcmRNA配合のコラーゲンスポンジでは、cm
RNAについて強固な持続性送達系が実現されており、これはRNAの修正、細胞型、お
よび細胞密度から独立したものである。接触阻止および細胞密度に対してより敏感な初代
培養細胞についても強固な持続性送達系が実現されている(参考文献21)。そのような
系は、低細胞密度への切り替えも実現可能な場合、細胞源や患者の試料がない場合に非常
に有利となるだろう。このような遅延送達系を実現するために、乾燥を行っていないスポ
ンジにおけるcmRNAの発現レベルはすぐに下降してしまうことから(図25)、真空
乾燥は重要な役割を果たしていると思われる。真空乾燥するとcmRNA送達が長期間可
能になるのは、治療に縛られることなく、真空乾燥されたコラーゲンスポンジは閉じた鳥
かごのような構造(図23)をしていることに起因すると考えられる。この場合、閉じ込
められたリポプレックスは、細胞と接触するときもマトリクスから放出されるときも時間
が必要となる(参考文献10)。コラーゲンスポンジにおいて真空乾燥済みのcmRNA
リポプレックスが均一に分布していることは(図14A)、数日間の間、トランスフェク
ションの有効性のピークやバースト放出なしに、安定して発現が続くもう1つの理由でも
ある(Lee, Biomaterials 32, 2011, 744-752)。
真空乾燥にはもう1つの実質的影響がある。真空乾燥を行ったコラーゲンスポンジ上の
cmRNA複合体は室温で少なくとも6ヵ月間安定しているということである(図22、
実施例14も参照)。非常に敏感なmRNA分子におけるこのかなり長い貯蔵寿命は本研
究において初めて達成された。これにより、cmRNAを用いた潜在的治療法を使用する
利用価値および容易性が高まり、cmRNAの臨床利用は実現に一歩近づくことができる
われわれの技術が、レポーターcmRNAを細胞系内および初代培養細胞内への送達に
最適化した場合、われわれの系は、hBMP2を用いて生理学的効果(すなわち骨形成)
について調査するために試験された。
(実施例12)インビトロでの細胞分化
生理学的効果について、持続性cmRNA送達系の性能を実証するために、hBMP2
・cmRNAリポプレックスを用いて、2つの異なる細胞(すなわちMC3T3-E1と
MSC)で2つのインビトロでの骨分化実験を計画した(Lee, Biomaterials 32, 2011,
744-752; Meine, Biomaterials 27, 2006, 4993-5002、Kim, Biomaterials 28, 2007, 18
30-1837)。
骨芽細胞様の細胞(MC3T3-E1)における骨分化を確認するために、hBMP2
・cmRNA配合コラーゲンスポンジ上に細胞を播種後7日目と14日目に逆転写ポリメ
ラーゼ連鎖反応(reverse transcription polymerase chain reaction:RT‐qPCR
)を行って、骨形成マーカー(OCNとALP)の発現を定量化した。配合のないコラー
ゲンスポンジに播種された非トランスフェクト細胞を陰性対照として用いた。図20Aに
示すように、両マーカーとも両時点において強く発現し、発現は14日目まで増加した。
次の工程では、同じ設定を用いてMSCを用いてインビトロでの骨分化を行った。まず
、新たに分離したMSCを陽性マーカーと陰性マーカーについてファックス分析を用いて
評価した(図26)。次いで、hBMP2・cmRNAリポプレックスを配合したコラー
ゲンスポンジにMSCを播種した。トランスフェクトから24時間後、ELISAを用い
て上清中でhBMP2の発現を定量化した(図19)。7日後と14日後に、RT‐qP
CRを用いて骨形成マーカー(RUNX2、OSX、OCN、ALP)の発現を検出した
。予想外なことに、3Dコラーゲン足場に播種されたトランスフェクトされたMSCだけ
でなく、トランスフェクトされていないMSCにおいても、すべてのマーカーが強く発現
した。したがって、(培地および洗浄について)3Dにおける細胞とまったく同様に処置
した従来の2D環境(ペトリ皿での標準的な細胞培養)での非トランスフェクトMSC培
養を陰性対照として選択して、3Dでの細胞に見られる分化マーカーの発現を正規化した
。図20Bに示すように、3Dコラーゲンマトリクスでのみ行った培養は、MSCにおけ
る骨形成マーカーの発現を有意差をもって上方制御した。
hBMP2・cmRNAを配合したコラーゲンスポンジに播種された骨芽細胞様の細胞
系(MC3T3-E1)とMSCを用いてインビトロでの骨分化を行った(参照文献10
、19)(図20)。MC3T3-E1細胞の場合、トランスフェクトされた細胞では、
骨形成マーカーの発現が3Dコラーゲン足場に播種された非トランスフェクト細胞と比べ
て数倍多かったことから(図20A)、hBMP‐2・cmRNAは、骨形成の誘発に有
意な影響を及ぼしたといえる。
これに対して、コラーゲンスポンジ上の、hBMP2でトランスフェクトされたMSC
とされていないMSCの間では、骨形成マーカーの発現において有意差はほぼなかった(
図20B)。しかしながら、hBMP2・cmRNAが配合されたコラーゲンスポンジ上
に播種されたMSCに由来するhBMP2の発現は、ELISAによって既に検出されて
いる(図19)。このデータによれば、コラーゲンスポンジ自体がインビトロでMSCに
おける骨再生を誘発することができる。以前より、コラーゲンスポンジにより軟骨形成が
開始されうることが示されている(Bosnakovski, Biotechnology and Bioengineering 93
, 2006, 1152-1163)。この現象について別の説明の仕方をすると、MSCを含むトラン
スフェクトされたコラーゲンスポンジとされていないコラーゲンスポンジでは、劇的な巨
視的変化がみられる(図27)。7日目まで、hBMP2が配合されたスポンジはふんわ
りとしサイズも膨らんでいるように見えたが、配合されていないスポンジは時間経過とと
もに縮合し縮んでいるように見えた。配合のない収縮スポンジではMSCの融合性が強く
なり過ぎるため、MSCは多能性を失い、最終分化細胞へと再プログラム化を始めてしま
う(Sekiya, Stem Cells 20, 2002, 530-541、Coulter, PNAS 97, 2000, 3213-3218)。
MSCが骨形成培地で成長するにつれて、骨形成分化が行われる可能性が最も高くなるは
ずである。
(実施例13)インビボでの細胞分化
ラットの大腿骨欠損モデルによってインビボ骨再生作用を評価した。実験群と対照群として、hBMP2・cmRNAを配合した真空乾燥コラーゲンスポンジと、配合していな
い真空乾燥コラーゲンスポンジを2つの群の動物の欠損に適用した。詳細には、ラットの大腿骨の中央部に作製した2mm径の骨欠損内に用意したスポンジを移植した。骨治癒を視覚化および定量化するために、手術から2週間後にマイクロCT(μ‐CT)スキャンを撮影した。図21Aに示すように、hBMP2・cmRNAで処置した群の方が新たに形成された骨が多く見られた。定量化された結果により、hBMP2・cmRNA配合のコラーゲンスポンジは、空のコラーゲンと比較して有意差をもって骨再生を増進させたことも証明された(図21B)。仮骨形成に対するhBMP2の効果も、μ‐CTの3Dスキャンモデルにおいて良好に視覚化されている(図29)。さらに詳細には、骨のさまざまな箇所(骨膜、皮質、骨髄)をμ‐CTでさらに分析することにより、骨再生は骨髄領域において最も多く得られたことが判明した(図28)。骨髄領域には大量の骨髄幹細胞が確かに存在する。
新たに形成された骨の有効性を確認するため、免疫組織化学も2週間後に行い、hBM
P2・cmRNAで処置した群により高度な無機化骨組織が見られた。μ‐CTの結果と
同様に、高度に無機化された領域(免疫組織学画像中、真黒い箇所)は、主に骨の骨髄部
分に見れらた(図18A)。さらに、骨膜領域における組織学的分析によれば、hBMP
2・cmRNAで処置した群は、対照群と比較して、仮骨形成が有意に増加していた(図
18B)。別の分析でも、hBMP2・cmRNA配合のスポンジで処置した群では、空
のスポンジで処置した群と比べ、有意に多くの線維組織が形成されたことが証明された(
図18C)。骨治癒過程では、線維組織の形成により、類骨形成さらには骨再生への動向
が誘引されうる(Luellmann-Rauch, De BoeckSuperrieur, 2008)。それゆえに、図18
Dでは、hBMP・cmRNAで処置した群においてより多くの類骨形成が見られる。
前臨床レベルでわれわれのcmRNA送達系を試験するため、hBMP2・cmRNA
を用いてcmRNA配合のコラーゲンスポンジをインビボでの骨形成に適用した。PEI
を用いて化学修正を行ったBMP2・cmRNA複合体のインビボでの骨形成効果が最近
公開された(Elangovan, Journal of Controlled Release 218, 2015, 22-28)。
しかしながら、この研究では、半分のサイズのPEI複合体を用いたhBMP2・cm
RNAリポプレックス複合体が用いられており(表6)、これはインビボでの薬物動態お
よび体内分布だけでなくインビトロでの細胞接種が向上させることができる(Lee, Bioma
terials 32, 2011, 744-752、Albanese, Annual Review of Biomedical Engineering 14,
2012, 1-16)。その後、hBMP2・cmRNAリポプレックスは真空乾燥によりコラ
ーゲンスポンジに固定され、すぐに使えるバイオ製品として形成される。最後に、われわ
れのバイオ製品の有効性を動物モデルによって評価し、インビボで骨再生を行うためのh
BMP2・cmRNA送達での本技術の機能性を証明した。
さまざまな研究により、さまざまなキャリアを用いて骨組織工学におけるBMP2タン
パク質の効果が証明されている(Meinel, Biomaterials 27, 2006, 4993-5002、Kempen,
Biomaterials 30, 2009, 2816-2825)。しかしながら、現在のところ、FDAによって承
認されている組み換え型hBMP2用のキャリアはコラーゲンのみである。したがって、
固定されたhBMP2・cmRNAのキャリアとしてのコラーゲンの効率は本研究では調
査した。
インビボでの実験を行うために、配合済みのコラーゲンスポンジと配合のないコラーゲ
ンスポンジをラットの大腿骨欠損に移植した。2週間後、ラットを死亡させ、μ‐CTと
免疫組織化学を用いて骨形成を評価した。得られた結果は、MC3T3-E1細胞のイン
ビトロでの骨再生における結果と類似するものであった。μ‐CT結果と免疫組織化学の
両方により、hBMP2・cmRNA配合コラーゲンで処置した欠損における骨形成は、
空のコラーゲンと比べ有意に高レベルであったことが示された(図21、図18A、図1
8B、図29)。骨のさまざまな部分(骨膜、皮質、骨髄)をさらに分析することで、最
大の骨形成は骨髄領域で生じたことが証明された(図28、図21A、図18A)。しか
しながら、理想とする再生医療のためには新たな骨は主に皮質領域で生じるべきであり、
このような骨髄部での骨形成は、骨欠損にコラーゲンスポンジを配置したことに起因する
。われわれの研究では、配合が行われたコラーゲンスポンジと行われなかったコラーゲン
スポンジを(皮質部分だけでなく)骨欠損全体に配置した。骨髄領域には、骨の他の部分
と比べてはるかに多くのBMSCが含まれるため、骨形成は骨髄領域で最も多く生じた。
言い換えると、皮質骨形成を実現するには、hBMP2・cmRNA配合コラーゲンスポ
ンジは皮質領域にのみ配置されるべきであるが、これは骨が小さすぎるラットモデルでは
実現不可能である。同じ動物を組み換え型BMP2タンパク質で処置している他の公表文
献でも、2週間経過後、皮質領域よりも骨髄領域で多くの骨形成が確認されている。しか
しながら、4週間経過後では、より多くの皮質骨形成が見られた(Keibl, Injury 42, 20
11, 814-820)。したがって、皮質領域での骨再生の調査には、後の時点で追加実験を行
うことが有用となりうる。
さらに行った組織学的分析により、hBMP2で処置を行った群では有意に多くの線維
組織が生じたことが証明された(図18C)。これは骨組織形成のサインとも考えられる
。骨治癒過程では、線維組織の形成は、機能的線維組織から類骨形成へ向かう動きを辿る
ことがあるためである(Luellmann-Rauch, De Boeck Superrieur, 2008)。同様に、hB
MP・cmRNAで処置された群においては、より多くの類骨形成が検出された(図18
D)。
これらの結果は、MSCを用いたインビトロでの骨再生で確認された内容(hBMP2
・cmRNAが配合されたコラーゲンスポンジと配合されていないコラーゲンスポンジが
骨形成においてほぼ同じ働きをする)とは異なるものである。この違いはインビトロ環境
とインビボ環境の違いに起因しうる。インビボでの骨再生においては、小分子、成長因子
やサイトカインの存在など、多くの因子がBMPおよびコラーゲンスポンジの効果に影響
しうるからである。(Lynch, Journal of Periodontology 62, 1991, 710-716、Wan, PNA
SA 105, 2008, 868-691、Mountziaris, Tissue Engineering Part B: Reviews 14, 2008,
179-186)。このような因子はインビトロ環境では欠けており、したがって、インビボで
の結果はインビトロでの場合を正確に辿るものではない。それゆえ、コラーゲンスポンジ
および本明細書に記載される他のキャリアは、所望のcmRNAリポプレックスだけでな
く、スポンジ内部でのMSCの移動を増強することができる小分子やサイトカインを前も
って配合することで(Xu, Oncology Reports 23, 2010, 1561-1567、Wu, Stem Cell Revi
ews and Reports 8, 2012, 243-250)、トランスフェクションの有効性を向上させること
もある。
骨組織形態計測のさらなる結果:解剖後、大腿骨を採取して周囲軟組織を除去し、その
後4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde:PFA)で24時間固定した。次に、
段階的なアルコールとキシレンに浸漬させることによって試料を脱水し、最終的にメタク
リル酸メチル(methylmethacrylate:MMA)に埋め込んだ。その後、微細粉砕して断面
を作製し、トルジイン青と酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(Tartrate Resistant Acid Ph
osphatase:TRAcP)を用いてコッサ染色のプロトコルにしたがった染色を行った。
ドリル孔領域は、組織形態計測を行うために、4つの理論的領域に分割した。すなわち

・ドリル孔周囲の骨膜領域(M1)
・移植片が配置された緻密骨質内部の可視可能なドリル孔の領域(M2)
・移植片の一部も配置された骨髄内部のドリル孔の領域(M3)
・移植片が配置された骨髄内部のドリル孔領域の周囲の画定領域(M4)
コッサ染色されたスライス片について、新たな骨の形成を示唆する組織の無機化が生じ
ているかを検査した。この手順により、単位組織容積当たりの無機化組織量(BV/TV
)が、hBMP‐2をコードするcmRNAが配合されたコレーゲンスポンジを移植した
ドリル孔内の領域M4において、有意差をもって多いことが確認され(マン‐ホイットニ
ーのU検定を用いてp=0.01)、骨髄内部で移植片の外側表面における骨形成が増強
したことが示された。周囲表面において移植片に最も集中的に接触するのは造血幹細胞と
思われるが、骨形成はこの骨髄内部において生じることが予想された(図30A)。
ドリル孔周囲の骨膜領域(M1)では、空のスポンジを単に移植した骨と比べ、hBM
P2をコードするcmRNAを配合したスポンジを移植した骨の方が合計組織量が多く、
機能的hBMP‐2の過剰発現の結果として骨形成作用が増加したことが示された(図3
0B)。
トルオール・ブルー染色を行ったスライス片の検査では、hBMP‐2をコードするc
mRNAが配合されたコラーゲンスポンジを移植した場合、緻密骨質内部のドリル孔の領
域(M2)において線維組織の生成が有意に多かったことが示された(図30C)。さら
に、線維組織の増加だけでなく、類骨形成を指向する線維組織形成の増加も生じ(図30
D)、新たに発達する骨組織の前駆体として、細胞外マトリクスが多く形成されたことが
示された。
TRAcP染色では、hBMP‐2をコードするcmRNAが配合されたコラーゲンス
ポンジで処置した場合、緻密骨質領域内部(M2)において、骨周囲のミリメートル当た
りの破骨細胞(N.Oc/B.Pm)が有意に少ないことが確認され、ドリル孔の骨表面
での炎症過程に起因して骨の再吸収が少なかったことが示された(図30E)。
(実施例14)真空乾燥されたcmRNAリポプレックスのコラーゲンスポンジ上での安定性についてのアッセイ
長期間安定性評価を行って、コラーゲンスポンジ上の真空乾燥させたバイオ製品としてのcmRNAリポプレックスの貯蔵寿命を評価した。この目的で、コラーゲンスポンジ上に真空乾燥したMet Luc・cmRNAリポプレックスを含む96ウェルプレートを真空封止し、室温で保存した。所定の時点において、プレートのうちの1つを用いてスポンジ上にNIH3T3細胞を播種した。細胞播種から24時間後、Metridiaルシフェラーゼの発現が計測された。次いで、さまざまな時点における保存プレートでの発現を、真空乾燥後すぐに使用したプレートでの発現(時点=0)と比較した。図22に示すように、適用したcmRNA用量にかかわらず、コラーゲンスポンジ上の真空乾燥したcmRNA複合体は室温で少なくとも6ヵ月間安定していた。
本発明は以下の表を参照するものである。
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Claims (23)

  1. (i) 骨形成タンパク質(BMP)をコードする配列を有するポリリボヌクレオチド(RNA);及び
    (ii) 式(IV)で表される構造を有するリピドイドであるオリゴ(アルキレンアミン)を含む構成成分:
    ここで、変数a、b、p、m、n及びR1からR6を、以下のように定義する:
    aは1である及びbは2である;
    pは1である;
    mは1である;及びnは1である;並びに
    R1からR6は互いに独立して、水素; -CH2-CH(OH)-R7基;-CH(R7)-CH2-OH基,ここでR7はC10アルキルである;但し、R1からR6のうちの少なくとも2つは、-CH2-CH(OH)-R7基, -CH(R7)-CH2-OH基、ここでR7はC10である;
    並びにここで、式(IV)で示される窒素原子の1つ以上をプロトン化して式(IV)のカチオンリピドイドを得ることがある
    含む医薬組成物であって、
    患者の骨疾患、骨障害、又は骨損傷の治療又は予防に使用するための医薬組成物。
  2. 前記BMPがBMP-2又はBMP-7である、請求項1に記載の使用するための医薬組成物。
  3. 前記RNAが、非化学修飾RNA又は化学修飾RNAである、請求項1又は2に記載の使用するための医薬組成物。
  4. 前記RNAが一本鎖のRNAである、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  5. 前記医薬組成物が、コレステロール、DPPC、DOPE及びPEG-脂質の1種以上を更に含む、請求項1からのいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  6. 前記医薬組成物が更に
    (i) DOPE、コレステロール及びDMPE-PEG;又は
    (ii) DPPC、コレステロール及びDMG-PEG(2k)、
    を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  7. 前記リピドイド及び(i)又は(ii)のモル比が、8 : 5.3 : 4.4 : 0.9又は8 : 5.29 : 4.41 : 0.88である、及びここで、前記RNAのリン酸基に対する前記リピドイドのアミノ基のモル比は8である、請求項に記載の使用するための医薬組成物。
  8. 前記RNAが、前記リピドイドと複合体を形成する、請求項1からのいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  9. 前記RNAがインビボで送達される、請求項1からのいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  10. 前記RNAが、前記患者に導入される細胞内にエキソビボで送達される、請求項1からのいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  11. 前記RNAは、前記患者の細胞内にエキソビボで送達され、前記RNAが送達された前記細胞は、前記患者に再導入される、請求項10に記載の使用するための医薬組成物。
  12. 前記RNA及び/又は前記細胞は、前記患者の組織内又は前記患者の組織近傍に投与され、前記患者においては骨成長の誘導が望まれている、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  13. 前記細胞が骨芽前駆細胞である、請求項10から12のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  14. 前記細胞が間葉系幹細胞(MSC)である、請求項10から13のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  15. 前記MSCが、脂肪質由来の間葉系幹細胞(AMSC)又は骨髄由来のMSC(BMSC)である、請求項14に記載の使用するための医薬組成物。
  16. 前記RNAが添加された又は前記RNAが配合された、マトリクス又は足場を更に含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  17. 前記マトリクス又は足場が、コラーゲン及び/又はフィブリンを含む、請求項16に記載の使用するための医薬組成物。
  18. 前記マトリクス又は足場が、コラーゲンスポンジ、及び/又はフィブリン塊若しくはフィブリン接着剤である、請求項16又は17に記載の使用するための医薬組成物。
  19. 前記マトリクス又は足場が真空乾燥されている、請求項16から18のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  20. 前記細胞が、請求項16から19のいずれか一項に規定されるマトリクス又は足場に播種されている、請求項10から15のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  21. 前記マトリクス又は足場は、前記患者の骨又は骨組織内に移植される、請求項16から20のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  22. 前記化学修飾RNAのシチジンの25%は5‐メチルシチジン(m5C)であり、前記化学修飾RNAのウリジンの25%は2‐チオウリジン(s2U)である、請求項3から21のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
  23. 前記RNAの持続性及び/又は遅延性送達のために、製造される及び/又は使用されるものである、請求項1から22のいずれか一項に記載の使用するための医薬組成物。
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