JP7372598B2 - 車両 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に関する。
特許文献1には、車速が閾値以下およびアクセルの入力値が閾値以下の場合には1輪以上の車輪の操舵装置をトーインまたはトーアウト側へ転舵させることにより車両をヒルホールドさせる制御装置を有する車両が開示されている。このような制御装置によれば、転舵させた車輪と路面との摩擦力によって、車両が不所望に前進または後退することを防止できる。
特開2014-201217号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている制御装置は、各車輪を制動する制動装置が正常に動作している状態で車両の停車状態を保持することが想定されており、車両の走行中に各車輪の制動装置が何らかの理由で動作しなくなった場合に車両を制動することについては想定されていない。このため、特許文献1に開示される制御装置では、4輪のうちの1輪を制動する制動装置が何らかの理由により作動しない場合には、転舵された各車輪の舵角のばらつきに応じた方向に車両が偏向するおそれがある。本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、4輪のうちの1輪を制動する制動装置が走行中に作動しなくなった場合において、制動力の不足を補うとともに車両の偏向を防止または抑制できる車両を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明に係る車両は、
4か所の車輪である右前輪(12RF)、左前輪(12LF)、右後輪(12RR)および左後輪(12LR)と、
前記4か所の車輪(12RF,12LF,12RR,12LR)を互いに独立して操舵可能な操舵装置(右前輪操舵装置13RF,左前輪操舵装置13LF,右後輪操舵装置13RR,左後輪操舵装置13LR)と、
前記4か所の車輪(12RF,12LF,12RR,12LR)を制動するために運転者が操作可能な操作部材(ブレーキペダル(16))と、
前記4か所の車輪(12RF,12LF,12RR,12LR)を互いに独立して制動可能な4つの制動装置(右前輪制動装置14RF,左前輪制動装置14LF,右後輪制動装置14RR,左後輪制動装置14LR))と、
前記4つの制動装置(14RF,14LF,14RR,14LR)が正常であるかを検出できる状態検出装置(右前状態検出装置15RF,左前状態検出装置15LF,右後状態検出装置15RR,左後状態検出装置15LR)と、
前記4か所の車輪(12RF,12LF,12RR,12LR)のうちの1か所の車輪に対応する1つの制動装置が正常ではない状態において前記操作部材(ブレーキペダル(16))が操作された場合には正常ではない前記1つの制動装置に対応する車輪と前記車両の左右方向に関して同じ側に位置し前記車両の前後方向に関して反対側に位置する1つの車輪および正常ではない前記1つの制動装置に対応する車輪と前記車両の左右方向に関して反対側に位置し前記車両の前後方向に関して同じ側に位置する1つの車輪をトーイン側に向けるかまたはトー角をトーイン側に大きくし、正常ではない前記1つの制動装置に対応する車輪と車両の前後方向および左右方向に関して反対側に位置する車輪のトー角を変更しない制御装置(統合ECU(20))と、を有する。
本発明によれば、4つの制動装置(14RF,14LF,14RR,14LR)のうちの1つに異常が発生している状態で操作部材(16)が操作された場合に、車両(10a,10b,10c)を制動させる制動力の低下を防止または抑制できるとともに、車両(10a,10b,10c)が偏向することを防止または抑制できる。すなわち、4つの制動力発生装置(14RF,14LF,14RR,14LR)のうちの1つに異常が発生して制動力を発生させることができなくなると、車両(10a,10b,10c)全体の制動力が低下する。そこで、正常ではない前記1つの制動装置に対応する車輪とは別の所定の2か所の車輪をトーイン側に向けるかまたはトー角をトーイン側に大きくすることで、これら2か所の車輪の回転抵抗を大きくできる。このため、制動力を補うこと(車両(10a,10b,10c)の全体の制動力の低下を防止または抑制すること)ができる。このため、1つの制動装置に異常が発生した場合であっても、制動装置を冗長化(多重化)することなく、制動力を確保できる。そして、所定の2か所の車輪をトーイン側に向けるかまたはトー角をトーイン側に大きくすることによって、車両(10a,10b,10c)の直進安定性を高めることができる。さらに、車両(10a,10b,10c)の左右で1輪ずつの車輪をトーイン側に向けるかまたはトー角をトーイン側に大きくすることにより、車両(10a,10b,10c)の左右で制動力を同じにできる。このため、車両(10a,10b,10c)の直進安定性を高める効果の向上を図ることができる。
図1は、車両の概略構成を示す図である。 図2は、制動装置および操舵装置の制御を説明する図である。 図3は、統合ECUが実行する処理を示すフローチャートである。 図4は、統合ECUが実行する処理を示すフローチャートである。 図5は、統合ECUが実行する処理を示すフローチャートである。 図6は、第一の変形例に掛かる車両の概略構成を示す図である。 図7は、第二の変形例に掛かる車両の概略構成を示す図である。 図8は、統合ECUが実行する処理を示すフローチャートである。
図1は、本発明の実施形態に係る車両10aの概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両10aは、車体11の右前部に配置される右前輪12RF、車体11の左前部に配置される左前輪12LF、車体11の右後部に配置される右後輪12RR、および車体11の左後部に配置される左後輪12LRを有する四輪車である。そして、車両10aは、車体11の4か所の各車輪12RF,12LF,12RR,12LR、各車輪12RF,12LF,12RR,12LRを操舵する4つの操舵装置13RF,13LF,13RR,13LR、各車輪12RF,12LF,12RR,12LRを制動する4つの制動装置14RF,14LF,14RR,14LR、各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRの状態を検出する4つの状態検出装置15RF,15LF,15RR,15LR、運転者が操作可能な操作部材であるブレーキペダル16およびステアリングホイール17、ブレーキペダル16の操作量を検出するブレーキ操作センサ18、ステアリングホイール17の操作量を検出する操舵角センサ19、図略の車速センサ、ならびに統合ECU20を有している。このほか、車両10aは、車輪12RF,12LF,12RR,12LRを回転させる図略の駆動力源および駆動力源が発生させる駆動力を各車輪12RF,12LF,12RR,12LRに伝達する図略の駆動力伝達機構を有している。
4つの操舵装置には、右前輪12RFの向きを変更する右前輪操舵装置13RF、左前輪12LFの向きを変更する左前輪操舵装置13LF、右後輪12RRの向きを変更する右後輪操舵装置13RR、および左後輪12LRの向きを変更する左後輪操舵装置13LRが含まれる。各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRはアクチュエータを有している。そして、各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRは、統合ECU20による制御に基づいてアクチュエータが駆動力を発生させることにより、対応する車輪12RF,12LF,12RR,12LRの舵角およびトー角を変更できるように構成されている。なお、各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRは、対応する車輪12RF,12LF,12RR,12LRの向きを他の車輪から独立して変更できるように構成されている。各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRの具体的な構成は特に限定されるものではなく、公知の各種の操舵装置が適用できる。
4つの制動装置には、右前輪12RFを制動する右前輪制動装置14RF、左前輪12LFを制動する左前輪制動装置14LF、右後輪12RRを制動する右後輪制動装置14RR、および左後輪12LRを制動する左後輪制動装置14LRが含まれる。各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRは、対応する各車輪12RF,12LF,12RR,12LRと一体的に回転する図略のブレーキディスクおよびこのディスクをアクチュエータの駆動力によって挟み込むことによってディスクの回転を制動する図略のキャリパを有している。そして、各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRは、統合ECU20による制御に基づいてアクチュエータに駆動力を発生させることにより、対応する車輪12RF,12LF,12RR,12LRを制動できるように構成されている。なお、各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRは、対応する各車輪12RF,12LF,12RR,12LRを他の車輪から独立して制動できるように構成されている。各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRの具体的な構成は特に限定されるものではなく、公知の各種の制動装置が適用できる。
4つの状態検出装置には、右前輪制動装置14RFの状態を検出する右前状態検出装置15RF、左前輪制動装置14LFの状態を検出する左前状態検出装置15LF、右後輪制動装置14RRの状態を検出する右後状態検出装置15RR、および左後輪制動装置14LRの状態を検出する左後状態検出装置15LRが含まれる。各状態検出装置15RF,15LF,15RR,15LRは、対応する各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRが正常であるか否か、より具体的には、対応する制動装置14RF,14LF,14RR,14LRが制動力を発生させることができるか否かを検出できる。
各状態検出装置15RF,15LF,15RR,15LRは、対応する各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRの動作状態を監視する個別ECU(Electronic Control Unit)を有しており、個別ECUは、対応する制動装置14RF,14LF,14RR,14LRの制動力の発生状況に応じて正常であるか否か(制動力を発生させることができるか否か)を検出できる。各状態検出装置15RF,15LF,15RR,15LRの個別ECUは、統合ECU20に接続されている。そして、各状態検出装置15RF,15LF,15RR,15LRの個別ECUは、対応する制動装置14RF,14LF,14RR,14LRが正常であるか否かの検出結果を所定の周期で継続的に統合ECU20に送信する。
ブレーキペダル16は、運転者が車両10aを制動するために操作する操作部材である。ブレーキペダル16の具体的な構成は特に限定されるものではなく、公知の構成が適用できる。ブレーキ操作センサ18は、ブレーキペダル16の操作量(踏み込み量)を検出する。ブレーキ操作センサ18にはストロークセンサが適用される。ブレーキ操作センサ18は統合ECU20と接続されている。そして、統合ECU20は、ブレーキ操作センサ18により検出されたブレーキペダル16の操作量を取得できる。なお、ブレーキペダル16およびブレーキ操作センサ18の構成は特に限定されるものではなく、公知の構成が適用できる。
ステアリングホイール17は、運転者が車両10aを操舵するために操作する操作部材であり、車体11に対して回転可能に配置されている。操舵角センサ19は、ステアリングホイール17の操作量(回転角度および回転方向)を検出できる。操舵角センサ19には回転角センサが適用される。操舵角センサ19は統合ECU20と接続されている。そして、統合ECU20は、操舵角センサ19により検出されたステアリングホイール17の操作量を取得できる。なお、ステアリングホイール17および操舵角センサ19の構成は特に限定されるものではなく、従来公知の構成が適用できる。
車速センサは、車速を検出し、検出した車速を表す信号を出力するように構成されている。なお、車速センサは、厳密には、車両10aが備える4か所の車輪12RF,12LF,12RR,12LRのそれぞれに設けられる車輪速センサである。そして統合ECU20は、車速センサ(車輪速センサ)が検出する各車輪の車輪速度に基づいて車速を取得することができる。なお、車速センサは、車速(車輪速)を検出し、検出した車速(車輪速)を表す信号を出力できるように構成されていればよく、具体的な構成は限定されない。車速センサには、公知の各種の車速センサ(車輪速センサ)が適用できる。
統合ECU20は、各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRおよび各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRを制御する。具体的には、統合ECU20は、操舵角センサ19により検出されたステアリングホイール17の操作量を取得し、各車輪12RF,12LF,12RR,12LRの向きがステアリングホイール17の操作量に応じた向きになるように各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRを制御する。さらに、統合ECU20は、ブレーキ操作センサ18が検出したブレーキペダル16の操作量を取得し、各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRがブレーキペダル16の操作量に応じた制動力を発生させるように各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRを制御する。
このほか、統合ECU20は、各状態検出装置15RF,15LF,15RR,15LRから取得した各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRが正常であるか否の検出結果に基づいて、異常が発生している制動装置が存在する場合には、異常が発生している制動装置を特定する。なお、統合ECU20は、特定の状態検出装置から検出結果を取得できない(動作状態の検出結果が送信されてこない)場合には、当該特定の状態検出装置に対応する制動装置に異常が発生していると判定する。
統合ECU20は、CPUとROMとRAMとI/Fを有するコンピュータを有している。そして、統合ECU20は、I/Fを介して各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LR、各制動装置14RF,14LF,14RR,14LR、ブレーキ操作センサ18および操舵角センサ19と接続されている。このため、統合ECU20は、各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRおよび各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRと信号を送受信可能である。さらに、統合ECU20は、ブレーキ操作センサ18によるブレーキペダル16の操作量の検出結果、および操舵角センサ19によるステアリングホイール17の操作量(回転方向および回転角度)の検出結果を取得できる。
統合ECU20のコンピュータのROMには、各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRおよび各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRを制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納されている。統合ECU20のコンピュータのCPUは、ROMに格納されているプログラムを読み出し、RAMに展開して実行する。そして、統合ECU20のコンピュータは、I/Fを介して制御信号を各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRおよび各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRに送信する。これにより、各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRおよび各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRの制御が実現する。
なお、統合ECU20は、各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRを個別に制御可能(すなわち、各車輪12RF,12LF,12RR,12LRの舵角およびトー角を互いに独立して変更可能)であるとともに、各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRを個別に制御可能である(すなわち、各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRに互いに独立して制動力を発生させることができる)。
次に、車両10aの動作について説明する。統合ECU20は、すべての制動装置14RF,14LF,14RR,14LRが正常である状態において、ブレーキ操作センサ18から取得したブレーキペダル16の操作量が「0」でなくなると(すなわち、ブレーキペダル16が踏み込まれると)、取得したブレーキペダル16の操作量に応じた制動力をすべての制動装置14RF,14LF,14RR,14LRに発生させる。これにより、統合ECU20は、車両10aを制動する。なお、この場合には、統合ECU20は、各車輪12RF,12LF,12RR,12LRのトー角を変更しない。説明の便宜上、このような制動を「通常の制動」と称する。
一方、4つの制動装置14RF,14LF,14RR,14LRのうちの少なくとも1つに異常が発生している状態では、車両10aに掛かる制動力(トータルの制動力)が減少する。さらに一部の制動装置が制動力を発生させることができないと、異常が発生している制動装置の位置によっては車両10aに偏向させるような力が掛かる。そこで、このような状態でブレーキペダル16が操作された場合には、統合ECU20は、上述の通常の制動ではなく、次に示すような制御を実行する。説明の便宜上、いずれかの制動装置に異常が発生している状態での車両10aの制動を「異常対応制動」と称する。
4つの制動装置14RF,14LF,14RR,14LRのうちの1つに異常が発生している状態では、車両10aの右側と左側で制動力が相違するため、車両10aの直進安定性が低下するおそれがある。そこで、4つの制動装置14RF,14LF,14RR,14LRのうちの1つの制動装置に異常が発生している状態でブレーキペダル16が操作された場合には、統合ECU20は、正常な3つの制動装置に制動力を発生させる。併せて、統合ECU20は、所定の2か所の車輪に対応する2つの操舵装置を制御することにより、当該所定の2個所の車輪をトーインの側に向ける。なお、当該所定の2か所の車輪がすでにトーインの側を向いている場合には、当該所定の2か所の車輪のトー角をトーインの側に大きくする。車輪のトー角が大きくなると(トー角が0ではなくなると)、当該車輪の回転抵抗が大きくなる。このため、所定の2か所の車輪をトーインの側に向ける(またはトー角をトーインの側に大きくする)ことにより、制動力の不足を補うことができる。さらに、車輪がトーインの側を向いていると、車両10aの直進安定性を高めることができる。
ここで、図2を参照して、左前輪制動装置14LFに異常が発生している状態を例に用いてトー角の制御を説明する。図2は、左前輪制動装置14LFに異常が発生している状態での車輪12RF,12LF,12RR,12LRのトー角の制御を示す上面模式図である。図2においては、車両10aの前方を矢印Frで示し、車両10aの後方を矢印Rrで示し、車両10aの右側を矢印Rで示し、車両10aの左側を矢印Lで示し、車両10aの進行方向(前進方向)を矢印Dで示す。さらに、図2においては、ブレーキペダル16の操作の検出の直前の車輪12RF,12LF,12RR,12LRを破線で示し、トー角の変更後の車輪12RF,12LF,12RR,12LRを実線で示す。なお、図2においては、ブレーキペダル16の操作の検出の直前における各車輪12RF,12LF,12RR,12LRのトー角が0である例を示す。
左前輪制動装置14LFに異常が発生している状態でブレーキペダル16が操作されると、統合ECU20は、異常が発生していない3つの制動装置(右前輪制動装置14RF,右後輪制動装置14RR,左後輪制動装置14LR)を制御して左前輪12LF以外の3か所の車輪(右前輪12RF,右後輪12RR,左後輪12LR)を制動する。併せて、統合ECU20は、右前輪操舵装置13RFおよび左後輪操舵装置13LRを制御し、右前輪12RF(異常が発生している左前輪制動装置14LFに対応する左前輪12LFに対して車両10aの前後方向には同じ側に位置し車両10aの左右方向には反対側に位置する車輪)のトー角Taおよび左後輪12LR(左前輪12LFに対して車両10aの前後方向には反対側に位置し車両10aの左右方向には同じ側に位置する車輪)のトー角Tbをトーイン方向に変更する。なお、ブレーキペダル16の操作の直前においてこれらの車輪のトー角が0ではない場合には、統合ECU20は、これらの車輪のトー角Ta,Tbを、ブレーキペダル16の操作の直前に比較してトーイン方向に大きくする。一方で、統合ECU20は、右後輪12RR(異常が発生した左前輪制動装置14LFに対応する左前輪12LFと車両10aの前後方向および左右方向に関して反対側に位置する車輪。換言すると左前輪12LFに対して対角に位置する車輪)のトー角は変更しない。すなわち、この車輪のトー角を、ブレーキペダル16の操作の直前のトー角に維持する。
右前輪12RFおよび左後輪12LRがトーイン側を向くと、または、トー角Ta,Tbがトーイン側に大きくなると、これら右前輪12RFおよび左後輪12LRの回転抵抗が大きくなる。このため、車両10aに対して制動力を加えることができる。すなわち、左前輪制動装置14LFに異常が発生している状態において、制動力の不足を補うことができ、トータルの制動力の低下を防止または抑制できる。このように、車両10aに掛かるトータルの制動力の低下を防止または抑制できるから、制動装置14RF,14LF,14RR,14LRの多重化(冗長化)をしなくてもよい。したがって、車両10aの部品コストを低減することまたは上昇を防止することが可能である。
そして、右前輪12RFおよび左後輪12LRがトーイン側に向けられると(または、トー角Ta,Tbがトーイン側に大きくされる)と、車両10aの直進安定性が向上する。このため、制動の際に車両10aの挙動が不安定になることを防止または抑制できる。さらに、車両10aの左右で1輪ずつ車輪をトーイン側に向ける、またはトー角をトーイン方向に大きくする。これにより、車輪の回転抵抗の増加による制動力を車両10aの左右で同じにできる。したがって、車両10aを偏向させるような力が発生することを防止または抑制できる。このため、車両10aの直進安定性を高める効果をさらに向上できる。
さらに、このような構成であると、異常が発生している制動装置の存在に起因して発生する車両10aを偏向させる力と、トー角の偏向により車両10aを偏向させる力とを打ち消すことにより、車両10aの直進安定性を高めることができる。すなわち、左前輪制動装置14LFに異常が発生している状態で他の3つの制動装置14RF,14RR,14LRに制動力を発生させると、車両10aの左右に掛かる制動力の相違により、車両10aには右方向に変更させる力が掛かる。一方、右前輪12RFおよび左後輪12LRをトーインの側に向けると(右前輪12RFおよび左後輪12LRの向きが、他の2か所の車輪12LF,12RRの向きよりもトーインの側に大きいと)車両10aには左方向に旋回させる力が掛かる。したがって、これらの力が互いに打ち消し合うことにより、車両10aの偏向を防止または抑制する効果をさらに高めることができる。
なお、図2においては、左前輪制動装置14LFに異常が発生している状態を例示したが、他の制動装置14RF,14RR,14LRのいずれか1つに異常が発生した場合であっても、同様の制御が適用できる。すなわち、「異常が発生している制動装置に対応する車輪に対して車両10aの前後方向に同じ側に位置し車両10aの左右方向に反対側に位置する車輪」および「異常が発生している制動装置に対応する車輪に対して車両10aの前後方向に反対側に位置し車両10aの左右方向に同じ側に位置する車輪」をトーインの側に向けるか、または、これらの車輪のトー角をブレーキ操作の直前に比較してトーイン側に大きくする。併せて、「異常が発生した制動装置に対応する車輪と車両10aの前後方向および左右方向に関して反対側に位置する車輪(異常が発生した制動装置に対応する車輪に対して対角に位置する車輪)」のトー角を変更しない(ブレーキペダル16の操作の直前のトー角に維持する)。
具体的には、右前輪制動装置14RFに異常が発生している状態でブレーキペダル16が操作されると、統合ECU20は、右前輪制動装置14RF以外の3つの制動装置(左前輪制動装置14LF,右後輪制動装置14RR,左後輪制動装置14LR)を制御して3か所の車輪(左前輪12LF,右後輪12RR,左後輪12LR)を制動する。併せて、統合ECU20は、左前輪操舵装置13LFおよび右後輪操舵装置13RRを制御することによって左前輪12LFおよび右後輪12RRをトーイン側に向けるか、またはこれらの車輪のトー角をブレーキ操作の直前に比較してトーイン側に大きくするとともに、左後輪12LRのトー角は変更せずにブレーキ操作の検出直前のトー角に維持する。
右後輪制動装置14RRに異常が発生している状態でブレーキペダル16が操作されると、統合ECU20は、右後輪制動装置14RR以外の3つの制動装置(右前輪制動装置14RF,左前輪制動装置14LF,左後輪制動装置14LR)を制御して3か所の車輪(右前輪12RF,左前輪12LF,左後輪12LR)を制動する。併せて、統合ECU20は、左後輪操舵装置13LRおよび右前輪操舵装置13RFを制御することによって左後輪12LRおよび右前輪12RFをトーイン側に向けるか、またはこれらの車輪のトー角をブレーキ操作の直前に比較してトーイン側に大きくするとともに、左前輪12LFのトー角は変更せずにブレーキ操作の検出直前のトー角に維持する。
左後輪制動装置14LRに異常が発生している状態でブレーキペダル16が操作されると、統合ECU20は、左後輪制動装置14LR以外の3つの制動装置(右前輪制動装置14RF,左前輪制動装置14LF,右後輪制動装置14RR)を制御して3か所の車輪(右前輪12RF,左前輪12LF,右後輪12RR)を制動する。併せて、統合ECU20は、右後輪操舵装置13RRおよび左前輪操舵装置13LFを制御することによって右後輪12RRおよび左前輪12LFをトーイン側に向けるか、または、これらの車輪のトー角をブレーキ操作の直前に比較してトーイン側に大きくするとともに、右前輪12RFのトー角は変更せずにブレーキ操作の検出直前のトー角に維持する。
2以上の制動装置に異常が発生している状態でブレーキペダル16が操作された場合における異常対応制動の内容は次のとおりである。車体11に対して互いに対角に位置する2つの車輪に対応する制動装置(右前輪制動装置14RFおよび左後輪制動装置14LR、または左前輪制動装置14LFおよび右後輪制動装置14RR)に異常が発生した状態でブレーキペダル16が操作された場合には、統合ECU20は、異常が発生していない2か所の車輪に対応する2つの制動装置に制動力を発生させるとともに、異常が発生していない2か所の車輪をトーイン側に向けるか、またはこれら2か所の輪のトー角をトーイン側に大きくする。車両10aの前後方向に関して同じ側に位置する2つの車輪に対応する制動装置(右前輪制動装置14RFおよび左前輪制動装置14LF、または右後輪制動装置14RRおよび左後輪制動装置14LR)に異常が発生した状態でも、統合ECU20は、異常が発生していない2つの制動装置に対応する2輪をトーイン側に向けるか、またはこれら2輪のトー角をトーイン側に大きくする。このような制御によれば、車両の左右で1つずつの車輪がトーインの側を向くから、車両の左右で車輪の回転抵抗のバランスがとれる。このため、制動時における車両10aの偏向が防止または抑制される。
一方、車両10aの左右方向について同じ側に位置する2か所の車輪に対応する2つの制動装置(右前輪制動装置14RFおよび右後輪制動装置14RR、または左前輪制動装置14LFおよび左後輪制動装置14LR)に異常が発生している状態では、統合ECU20は、ブレーキペダル16の操作時において各車輪のトー角を変更しない。すなわち、このような状態において異常が発生していない2つの制動装置に対応する2か所の車輪をトーインの側に向かるか、またはこれら2か所の車輪のトー角をトーイン側に大きくすると、車両10aの左右方向の一方に位置する2か所の車輪がトーインの側を向くから、車両10aの左右で制動力が相違して車両10aが偏向するおそれがある。そこで、このような状態では、各車輪のトー角を変更しない。
3つの制動装置に異常が発生している状態でブレーキペダル16が操作された場合には、統合ECU20は、正常な制動装置に制動力を発生させる。4つの制動装置に異常が発生している場合には、統合ECU20は、制動装置以外の手段で車両を停止させる。3つ以上の制動装置に異常が発生している状態でにおいても、統合ECU20は、車両10aを停止させるための他の制御を実行してもよい。また、この状態では、統合ECU20は、トー角の偏向に起因して車両10aに偏向が生じないように、正常な車輪を含めすべての車輪12RF,12LF,12RR,12LRのトー角を変更しない。
なお、具体的なトー角の大きさは、車速やブレーキペダル16の操作量に応じて設定される。具体的には、統合ECU20は、車速とブレーキペダル16の操作量に応じてトー角の値を規定するためのマップを有している。そして、統合ECU20は、ブレーキペダル16が操作された場合には、図略の車速センサによる車速の検出結果およびブレーキ操作センサ18によるブレーキペダル16の操作量の検出結果を取得し、このマップを参照して所定の車輪のトー角を変更する。
次に、図3乃至図5を参照して、統合ECU20のコンピュータが実行する処理について説明する。これらの処理を実行するためのコンピュータプログラムは、あらかじめ統合ECU20のコンピュータのROMにコンピュータが読み取り可能な形式で格納されている。さらに、トー角の値を規定するためのマップも、統合ECUのROMにコンピュータ読み取り可能な形式であらかじめ格納されている。そして、統合ECU20のコンピュータは、図3および図4のそれぞれに示す処理を所定の周期で継続的に繰り返し実行する。これにより、上述の動作が実現する。
ステップS301において、統合ECU20は、各状態検出装置15RF,15LF,15RR,15LRから各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRの状態の検出結果を取得する。ステップS302において、統合ECU20は、取得した各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRの状態の検出結果に基づき、異常が発生している制動装置が存在するか否かを判定する。さらに、統合ECU20は、異常が発生している制動装置が存在する場合には、当該異常が発生している制動装置を特定する。なお、統合ECU20は、ステップS301において状態の検出結果を取得できなかった制動装置が存在する場合には、当該検出結果を取得できなかった制動装置に異常が発生していると判定する。このような処理を実行することにより、統合ECU20は、異常が発生している制動装置についての情報(位置および数)を常時生成して保持する。
ステップS401において、統合ECU20は、ブレーキ操作センサ18によるブレーキペダル16の操作量の検出結果を取得する。ブレーキペダル16の操作量が0である場合(すなわち、ブレーキペダル16が操作されていない場合)には、この一連の処理をいったん終了する。ブレーキペダル16の操作量が0ではない場合(すなわち、ブレーキペダル16が操作されている場合)には、統合ECU20は処理をステップS402に進める。
ステップS402において、統合ECU20は、ステップS302における判定結果を参照し、異常が発生している制動装置が存在しない場合には、処理をステップS403に進める。ステップS403においては、統合ECU20は、車両10aを制動するための上述の通常の制動を実行する。すなわち、上述のとおり、統合ECU20は、各制動装置14RF,14LF,14RR,14LRにブレーキペダル16の操作量に応じた制動力を発生させる。ただし、統合ECU20は、通常の制動においては各車輪12RF,12LF,12RR,12LRのトー角を変更しない。すなわち、統合ECU20は、ブレーキペダル16が操作されている間の各車輪12RF,12LF,12RR,12LRのトー角を、ブレーキペダル16が操作される直前のトー角に維持する。
異常が発生している制動装置が存在する場合には、統合ECU20は、処理をステップS404に進める。図5は、ステップS404の処理を示すフローチャートである。ステップS501乃至S505において、統合ECU20は異常が発生している制動装置の位置および数に応じて処理を分岐させる。
具体的には、1つの制動装置に異常が発生している状態(ステップS501において「Yes」)では、統合ECU20は、処理をステップS506に進める。ステップS506において、統合ECU20は、所定の2か所の車輪(異常が発生している制動装置に対応する車輪に対して車両10aの左右方向には同じ側に位置し前後方向には反対側に位置する車輪、および異常が発生している制動装置に対応する車輪に対して車両10aの前後方向には同じ側に位置し左右方向には反対側に位置する車輪)に対応する2つの操舵装置を制御することにより、当該所定の2個所の車輪をトーインの側に向けるか、または、当該所定の2か所の車輪がすでにトーインの側を向いている場合には、当該所定の2か所の車輪のトー角をトーインの側に大きくする。なお、他の箇所の車輪(異常が発生している制動装置に対応する車輪、および異常が発生している制動装置に対応する車輪に対して車両10aの前後方向および左右方向に反対側に位置する車輪)のトー角は変更しない。併せて、統合ECU20は、正常な3つの制動装置に制動力を発生させる。
車体11に対して互いに対角に位置する2つの車輪に対応する制動装置(右前輪制動装置14RFおよび左後輪制動装置14LR、または左前輪制動装置14LFおよび右後輪制動装置14RR)に異常が発生した状態である場合(ステップS502において「Yes」)には、統合ECU20は、処理をステップS507に進める。ステップS507においては、統合ECU20は、異常が発生していない2か所の車輪をトーイン側に向けるか、またはこれら2か所の輪のトー角をトーイン側に大きくし、異常が発生している2か所の車輪のトー角を偏向せずに維持する。併せて、統合ECU20は、異常が発生していない2か所の車輪に対応する2つの制動装置に制動力を発生させる。
車体11の左右同じ側に位置する2つの車輪に対応する制動装置(右前輪制動装置14RFおよび右後輪制動装置14RR、または左前輪制動装置14LFおよび左後輪制動装置14LR)に異常が発生した状態である場合(ステップS503において「Yes」)には、統合ECU20は、処理をステップS508に進める。ステップS508においては、統合ECU20は、すべての車輪のトー角を偏向せずに維持する。併せて、統合ECU20は、異常が発生していない2か所の車輪に対応する2つの制動装置に制動力を発生させる。
車体11の前後同じ側に位置する2つの車輪に対応する制動装置(右前輪制動装置14RFおよび左前輪制動装置14LF、または右後輪制動装置14RRおよび左後輪制動装置14LR)に異常が発生した状態である場合(ステップS504において「Yes」)には、統合ECU20は、処理をステップS509に進める。ステップS509においては、統合ECU20は、異常が発生していない2か所の車輪をトーイン側に向けるか、またはこれら2か所の輪のトー角をトーイン側に大きくし、異常が発生している2か所の車輪のトー角を偏向せずに維持する。併せて、統合ECU20は、異常が発生していない2か所の車輪に対応する2つの制動装置に制動力を発生させる。
3つ以上の制動装置に異常が発生している状態である場合(ステップS505において「Yes」)には、統合ECU20は、処理をステップS510に進める。ステップS510において、統合ECU20は、すべての車輪のトー角を偏向せずに維持する。また、統合ECU20は、3つの制動装置に異常が発生している場合には、正常な1つの制動装置に制動力を発生させる。4つの制動装置に異常が発生している場合には、統合ECU20は、制動装置以外の手段で車両を停止させる。なお、3つの制動装置に異常が発生している状態である場合においても、統合ECU20は、車両10aを停止させるための他の制御を実行してもよい。
(第一の変形例)
次に、第一の変形例について説明する。第一の変形例は、上述の制御と車輪のサスペンション装置によるトー角の調整が組み合わせられた例である。図6は、第一の変形例に掛かる車両10bの概略構成を示す図である。なお、前記実施形態と共通の構成には、前記実施形態と同じ符号を付し、説明を省略することがる。
図6に示すように、車両10bは、各車輪12RF,12LF,12RR,12LRに対応するサスペンション装置23RF,23LF,23RR,23LRを有している。各サスペンション装置23RF,23LF,23RR,23LRは、対応する各車輪12RF,12LF,12RR,12LRのストローク量を調整可能であり、かつストローク量を調整することによって対応する各車輪12RF,12LF,12RR,12LRのトー角の特性を変更可能に構成されている。統合ECU20は、ブレーキペダル16が操作された場合には、車両10bの重心、制動力の大きさ、車速等に基づき、車両10bに発生するであろう制動偏向の向きと大きさを予測する。そして、統合ECU20は、制動変更を打ち消すヨーモーメントを発生させることができるように、各サスペンション装置23RF,23LF,23RR,23LRのストローク量を変更する。
さらに、統合ECU20は、4つの制動装置の14RF,14LF,14RR,14LRの少なくとも1つ以上に異常が発生している状態でブレーキペダル16が操作された場合には、正常な制動装置に制動力を発生させるとともに、所定の車輪に対応する操舵装置を制御して当該所定の車輪をトーインの側に向けるか、または当該所定の車輪のトー角をトーインの側に大きくする。なお、前述のとおり、トー角の大きさはマップに規定されている。
このため、第一の変形例では、各車輪12RF,12LF,12RR,12LRのトー角は、上述のように制動変更を打ち消すために変更されたストローク量に応じたトー角と、マップに規定されているトー角との合計になる。このような構成によれば、前記実施形態と同様の効果を奏することができるとともに、車両10bの重心の偏りに起因する制動偏向を防止または抑制できる。
なお、車両10bの重心の偏り起因する制動偏向を防止または抑制するためのトー角の調整方法は特に限定されるものではなく、公知の方法が適用できる。例えば、特開2012-040946号公報に開示されている方法が適用できる。このように、制動力の不足を補うとともに車両10bの安定性の低下を防止または抑制するための所定の車輪をトーインの側に向ける制御は、単独で実行される構成であってもよく、他の効果を得るためのトー角の制御と合わせて実行されてもよい。
(第二の変形例)
次に、第二の変形例について説明する。第二の変形例は、前記実施形態と自動操舵との組み合わせの例である。図7は、第二の変形例に掛かる車両10cの概略構成を示す図である。なお、前記実施形態と共通の構成には、前記実施形態と同じ符号を付し、説明を省略することがる。
図7に示すように、第二の変形例に掛かる車両10cは、車両10cの周囲に存在する物体を検出する周囲センサ24を有している。周囲センサ24は、車両10cの周囲(少なくとも車両10cの進行方向前方)に存在する物体(立体物)に関する情報を取得する機能を有している。物体は、例えば、歩行者、自転車および自動車などの移動物、並びに、電柱、樹木およびガードレールなどの静止物である。更に、物体に関する情報には、物体の有無、車両10cと物体との相対関係(車両10cと物体との距離、車両10cに対する物体の方位、および、車両10cと物体との相対速度など)が含まれる。
周囲センサ24は、レーダセンサおよびカメラセンサを備えている。レーダセンサは、例えば、ミリ波帯の電波を車両10cの周囲(少なくとも前方を含む)に照射し、物体が存在する場合には、その物体からの反射波を受信する。レーダセンサは、その電波の照射タイミングと受信タイミングと等に基づいて上述した物体に関する情報を取得する。カメラセンサは、例えば、ステレオカメラを備え、少なくとも車両10cの前方の所定の範囲を撮像して画像データを取得する。そして、カメラセンサは、取得した画像データに基づいて上述した物体に関する情報を取得する。周囲センサ24は取得した物体に関する情報(周囲情報)を統合ECU20に所定の周期で繰り返し送信する。統合ECU20はこの周囲情報を受信(取得)する。なお、周囲センサ24の構成は、上記構成に限定されない。周囲センサ24は、車両10cの周囲に存在する物体を検出できるとともに、車両10cと検出した物体との距離を計測できる構成であればよい。
そして、統合ECU20は、異常が発生している制動装置が存在している状態でブレーキペダル16が操作された場合には、上述のように正常な制動装置に制動力を発生させるとともに、所定の車輪をトーイン側に向けるかまたは所定の車輪のトー角をトーイン側に大きくする(すなわち、上述の異常対応制動を実行する)。
さらに、周囲センサ24により車両10cの進行方向前方に存在する物体が検出された場合には、検出された物体に接触することなく車両10cを停止させることができるか(換言すると、物体に接触することなく車両10cを停止させるために必要な制動力が確保されているか)を判定する。そして、車両10cを物体に接触することなく停止させることができる場合には、車両10cが偏向しないように各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRを制御する。
特に、物体が車両10cの進行方向斜め前方に存在する場合には、車両10cが物体の存在する側に偏向しないように各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRを制御する。すなわち、統合ECU20は、運転者によるステアリングホイール17の操作が物体から離れる方向への操舵操作である場合には、ステアリングホイール17の操作に応じて各操舵装置を制御するとともに、物体に接近する側へ偏向しないように各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRを制御する。
一方、運転者によるステアリングホイール17の操作が物体に接近する方向への操舵操作である場合には、運転者によるステアリングホイール17の操作にかかわらず、操舵装置を制御して車両10cの進行方向を変更し、検出された物体との衝突を回避する。
さらに、検出された物体に接触することなく車両10cを停止させることができない場合には、統合ECU20は、運転者によるステアリングホイール17の操作にかかわらず各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRを制御して車両10cの進行方向を変更し、検出された物体との衝突を回避する。
ここで、第二の変形例に係る統合ECU20の処理について、図8を参照して説明する。図8は、統合ECU20が実行する処理を示すフローチャートである。なお、ステップS401~S404については、前記実施形態と同じである。
正常でない制動装置が存在し(ステップS402において「Yes」)、異常対応制動が実行された場合(ステップS404)には、統合ECU20は、車両10cの進行方向前方に車両10cと衝突するおそれのある物体が存在するか否かを判定する。存在しない場合には、この一連の処理をいったん終了する。したがって、この場合には、統合ECU20は、前記実施形態と同じ処理を実行する。
一方、車両10cと衝突するおそれのある物体が存在する場合には、統合ECU20は、処理をステップS806に進める。ステップS806において、統合ECU20は、検出された物体に衝突することなく車両10cを停止させることができる制動力が確保されているか(車両10cのトータルの制動力が十分であるか否か)を判定する。例えば、統合ECU20は、現在の車両10cの加速度と物体までの距離とに基づいてこの判定を行う。そして、統合ECU20は、検出された物体に衝突することなく車両10cを停止させることができる制動力が確保されている場合には処理をステップS807に進め、確保されていない場合には処理をステップS808に進める。
ステップS807(第一の操舵制御)において、統合ECU20は、車両10cが偏向しないように各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRを制御する。特に、物体が車両10cの進行方向斜め前方に存在する場合には、車両10cが物体の存在する側に偏向しないように各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRを制御する。ステップS808(第二の操舵制御)において、統合ECU20は、運転者によるステアリングホイール17の操作にかかわらず、各操舵装置13RF,13LF,13RR,13LRを制御して車両10cの進行方向を変更し、検出された物体との衝突を回避する。
このように、本実施形態にかかるトー角の制御は、自動操舵と組み合わせて実行することも可能である。
以上、本発明の実施形態および変形例について説明したが、本発明は前記実施形態および変形例に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、前記実施形態では、運転者が車両10a,10b,10cを制動するために操作する操作部材としてブレーキペダル16を示したが、操作部材はブレーキペダルに限定されない。例えば、操作部材としてジョイスティックが適用されてもよい。
10…車両、11…車体、12RF,12LF,12RR,12LR…車輪、13RF,13LF,13RR,13LR…操舵装置、14RF,14LF,14RR,14LR…制動装置、15RF,15LF,15RR,15LR…状態検出装置、20…統合ECU

Claims (1)

  1. 4か所の車輪である右前輪、左前輪、右後輪および左後輪と、
    前記4か所の車輪を互いに独立して操舵可能な操舵装置と、
    前記4か所の車輪を制動するために運転者が操作可能な操作部材と、
    前記4か所の車輪を互いに独立して制動可能な4つの制動装置と、
    前記4つの制動装置が正常であるかを検出できる状態検出装置と、
    前記4か所の車輪のうちの1か所の車輪に対応する1つの制動装置が正常ではない状態において前記操作部材が操作された場合には正常ではない前記1つの制動装置に対応する車輪と前記車両の左右方向に関して同じ側に位置し前記車両の前後方向に関して反対側に位置する1つの車輪および正常ではない前記1つの制動装置に対応する車輪と前記車両の左右方向に関して反対側に位置し前記車両の前後方向に関して同じ側に位置する1つの車輪をトーイン側に向けるかまたはトー角をトーイン側に大きくし、正常ではない前記1つの制動装置に対応する車輪と車両の前後方向および左右方向に関して反対側に位置する車輪のトー角を変更しない制御装置と、を有する車両。
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