生物における老化細胞のレベルの指標として機能する種々の生物学的マーカーが提供される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のマーカー(例えば、ある種のエイコサノイド)は、対象における(例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物における)老化細胞の存在及び/又は量の有効な指標を提供することができ、哺乳動物における老化細胞のレベルの上昇を同定する方法が提供される。
本明細書において検討される種々の実施形態は、以下の1つ又は複数を含み得るが、これらに必ずしも限定されない:
実施形態1:哺乳動物における老化細胞のレベルの上昇を同定する方法であって、
哺乳動物由来の生物学的試料における老化細胞の1つ又は複数の指標のレベルを決定する工程
を含み、
前記1つ又は複数の指標が、エイコサノイド、エイコサノイド前駆体、ロイコトリエンA4(LTA4)、ロイコトリエンB4(LTB4)、PGD2及び5-HETEからなる群から選択され;
前記1つ又は複数の指標のレベルの上昇が、前記哺乳動物における老化細胞のレベルの上昇の指標である、方法。
実施形態2:前記指標が、エイコサノイド、エイコサノイド前駆体、ロイコトリエンA4(LTA4)及びロイコトリエンB4(LTB4)からなる群から選択される1つ又は複数の指標を含む、実施形態1の方法。
実施形態3:前記レベルの上昇が、健常哺乳動物との比較である、実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4:レベルの上昇が、統計的に有意な上昇レベルである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5:前記指標がエイコサノイド又はエイコサノイド前駆体を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6:前記指標がエイコサノイドを含む、実施形態5の方法。
実施形態7:前記指標が、1a,1b-ジホモ-15-デオキシ-デルタ12,14-プロスタグランジンJ2(ジホモ-15d-PGJ2)を含む、実施形態6の方法。PGJ2は細胞内にあり、そのため老化細胞除去(senolysis)の結果として老化細胞が溶解された場合に放出されることは注目される。
実施形態8:前記指標がエイコサノイド前駆体を含む、実施形態5の方法。
実施形態9:前記指標が、アラキドン酸(AA)、エイコサペンタン酸(EPA)及びジホモ-ガンマ-リノール酸(DGLA)からなる群から選択されるエイコサノイド前駆体を含む、実施形態8の方法。
実施形態10:前記指標がアラキドン酸(AA)を含む、実施形態9の方法。
実施形態11:前記指標がエイコサペンタン酸(EPA)を含む、実施形態9の方法。
実施形態12:前記指標がジホモ-ガンマ-リノール酸(DGLA)を含む、実施形態9の方法。
実施形態13:前記哺乳動物がヒトである、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
実施形態14:前記哺乳動物が非ヒト哺乳動物である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
実施形態15:前記生物学的試料が、血液又は血液画分、尿、脳脊髄液、組織生検、口腔液及び鼻、頬側スワブ、洗浄液(例えば、気管支肺胞洗浄液)、滑膜液、リンパ、心膜液及び間質液からなる群から選択される試料を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16:前記試料が血液又は血液画分を含む、実施形態15の方法。
実施形態17:前記試料が尿を含む、実施形態15の方法。
実施形態18:前記指標が、イムノアッセイ、質量分析及びHPLCからなる群から選択される1つ又は複数の方法を使用して決定される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
実施形態19:前記指標がELISAを使用して決定される、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
実施形態20:前記指標が、老化細胞のレベルの上昇によって特徴付けられる病態の鑑別診断の構成要素として決定される、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
実施形態21:前記病態が、心血管疾患(例えば、粥状動脈硬化、狭心症、不整脈、心筋症、うっ血性心不全、環状動脈疾患、頸動脈疾患、心内膜炎、冠状動脈血栓症、心筋梗塞、高血圧、大動脈動脈瘤、心臓拡張機能障害、高コレステロール血症、高脂血症、僧帽弁逸脱、末梢血管疾患、心臓のストレス耐性(cardiac stress resistance)、心臓線維症、脳動脈瘤及び卒中)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、認知症、軽度認知障害及び運動ニューロン機能障害)、代謝疾患(例えば、糖尿病、糖尿病性潰瘍、メタボリックシンドローム及び肥満)並びに細胞老化関連疾患からなる群から選択される病態を含む、実施形態20の方法。
実施形態22:前記病態が、肺障害、例えば、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、嚢胞性線維症、肺気腫、気管支拡張症及び肺機能の加齢性喪失を含む細胞老化関連疾患を含む、実施形態21の方法。
実施形態23:前記病態が、眼疾患(例えば、黄斑変性症、緑内障、白内障、老視及び視力喪失)を含む細胞老化関連疾患を含む、実施形態21の方法。
実施形態24:前記病態が、腎疾患、腎不全、フレイル、難聴、筋肉疲労、皮膚状態、皮膚創傷治癒、肝線維症、膵線維症、口腔粘膜下線維症及び筋肉減少症からなる群から選択される加齢性障害を含む細胞老化関連疾患を含む、実施形態21の方法。
実施形態25:前記病態が、皮膚科疾患又は障害(例えば、湿疹、乾癬、色素増加症、母斑、発疹、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、光線過敏症又は光老化に関連する疾患及び障害、シワ(rhytides)、そう痒症、知覚異常、湿疹性皮疹(eczematous eruptions)、好酸球性皮膚症(eosinophilic dermatosis)、反応性好中球性皮膚症、天疱瘡、類天疱瘡、免疫水疱性皮膚症(immunobullous dermatosis)、皮膚の線維組織球性増殖(fibrohistocytic proliferations)、皮膚リンパ腫、皮膚ループス等)を含む細胞老化関連疾患を含む、実施形態21の方法。
実施形態26:前記病態が、粥状動脈硬化、変形性関節症、肺線維症、高血圧、及び慢性閉塞性肺疾患からなる群から選択される細胞老化関連疾患を含む、実施形態21の方法。
実施形態27:哺乳動物における老化細胞のレベルの上昇によって特徴付けられる病態を処置する方法であって、1つ又は複数の老化細胞除去剤の有効量を、老化細胞の1つ又は複数の指標のレベルの上昇を有すると決定された哺乳動物に投与する工程を含み、前記1つ又は複数の指標が、エイコサノイド、エイコサノイド前駆体、ロイコトリエンA4(LTA4)、ロイコトリエンB4(LTB4)及び5-HETEからなる群から選択される、方法。
実施形態28:前記哺乳動物が、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法を使用して1つ又は複数の指標のレベルの上昇を有すると決定される、実施形態27の方法。
実施形態29:投与する工程が、低分子老化細胞除去剤の治療的に有効な一連の治療を投与する工程を含み、老化細胞除去剤が、非老化細胞と比較して老化細胞を選択的に殺滅する、実施形態27又は28に記載の方法。
実施形態30:老化細胞除去剤がMDM2、Bcl-xL又はAktの特異的阻害剤である、実施形態27~29のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31:老化細胞除去剤がBcl-xL又はBcl-2の阻害剤を含む、実施形態27~29のいずれか1つに記載の方法。
実施形態32:老化細胞除去剤が、MDM2の阻害剤を含む、実施形態27~29のいずれか1つに記載の方法。
実施形態33:MDM2阻害剤が、イミダゾリン化合物(例えば、cis-イミダゾリン化合物)、ジヒドロイミダゾチアゾール化合物、スピロ-オキシインドール化合物、ベンゾジアセピン化合物又はピペリジノンを含む、実施形態32の方法。
実施形態34:MDM2阻害剤が、ヌトリン(Nutlin)-1、ヌトリン-2、RG-7112、RG7388、RO5503781、DS-3032b、MI-63、MI-126、MI-122、MI-142、MI-147、MI-18、MI-219、MI-220、MI-221、MI-773、3-(4-クロロフェニル)-34(1-(ヒドロキシメチル)シクロプロピル)メトキシ)-2-(4-ニトロベンジル)イソインドリン-1-オン、セルデメタン、AM-8553、CGM097、RO-2443及びRO-5963からなる群から選択される、実施形態32の方法。
実施形態35:老化細胞除去剤がイミダゾリン化合物を含む、実施形態33の方法。
実施形態36:イミダゾリン化合物が、構造:
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含み;式中:Xはハロゲン化物であり;R1はアルキルであり、R2は-H又はヘテロアルキルであり、R3は-H又は=Oである、実施形態35の方法。
実施形態37:イミダゾリン化合物が、ヌトリン-1、ヌトリン-2及びヌトリン-3からなる群から選択される、実施形態36の方法。
実施形態38:イミダゾリン化合物が、4-[[(4S,5R)-4,5-ビス(4-クロロフェニル)-4,5-ジヒドロ-2-[4-メトキシ-2-(1-メチルエトキシ)フェニル]-1H-イミダゾール-1-イル]カルボニル]-2-ピペラジノン又はその薬学的に許容される塩を含む、実施形態36の方法。
実施形態39:イミダゾリン化合物が、構造:
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、実施形態35の方法。
実施形態40:老化細胞除去剤が、単剤療法として哺乳動物に投与される、請求項27~39のいずれか1つに記載の方法。
実施形態41:投与する工程が、がんを処置するのに有効と予想されるものより少ない量及び/又は投薬頻度の老化細胞除去剤を投与する工程を含む、実施形態27~40のいずれか1つに記載の方法。
実施形態42:投与する工程が、治療期と、それに続く少なくとも2週間の非治療期間とを含む、実施形態27~41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態43:投与する工程が、老化細胞除去剤の少なくとも2回の処置サイクルを含み、各処置サイクルが独立して、1日から3ヵ月間の処置期間と、それに続く非処置期間とを含む、実施形態27~41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態44:投与する工程が、老化細胞除去剤の単一用量と、それ続く非処置期間とを含む、実施形態27~41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態45:前記病態が、心血管疾患(例えば、粥状動脈硬化、狭心症、不整脈、心筋症、うっ血性心不全、環状動脈疾患、頸動脈疾患、心内膜炎、冠状動脈血栓症、心筋梗塞、高血圧、大動脈動脈瘤、心臓拡張機能障害、高コレステロール血症、高脂血症、僧帽弁逸脱、末梢血管疾患、心臓のストレス耐性、心臓線維症、脳動脈瘤及び卒中)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、認知症、軽度認知障害及び運動ニューロン機能障害)、代謝疾患(例えば、糖尿病、糖尿病性潰瘍、メタボリックシンドローム及び肥満)並びに細胞老化関連疾患からなる群から選択される病態を含む、実施形態27から44のいずれか1つに記載の方法。
実施形態46:前記病態が、肺障害(例えば、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、嚢胞性線維症、肺気腫、気管支拡張症及び肺機能の加齢性喪失を含む細胞老化関連疾患を含む、実施形態45の方法。
実施形態47:前記病態が、眼疾患(例えば、黄斑変性症、緑内障、白内障、老視及び視力喪失)を含む細胞老化関連疾患を含む、実施形態45の方法。
実施形態48:前記病態が、腎疾患、腎不全、フレイル、難聴、筋肉疲労、皮膚状態、皮膚創傷治癒、肝線維症、膵線維症、口腔粘膜下線維症及び筋肉減少症からなる群から選択される加齢性障害を含む細胞老化関連疾患を含む、実施形態45の方法。
実施形態49:前記病態が、皮膚科疾患又は障害(例えば、湿疹、乾癬、色素増加症、母斑、発疹、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、光線過敏症又は光老化に関連する疾患及び障害、シワ、そう痒症、知覚異常、湿疹性皮疹、好酸球性皮膚症、反応性好中球性皮膚症、天疱瘡、類天疱瘡、免疫水疱性皮膚症、皮膚の線維組織球性増殖、皮膚リンパ腫、皮膚ループス等)を含む細胞老化関連疾患を含む、実施形態45の方法。
実施形態50:前記病態が、粥状動脈硬化、変形性関節症、肺線維症、高血圧及び慢性閉塞性肺疾患からなる群から選択される細胞老化関連疾患を含む、実施形態45の方法。
実施形態51:老化細胞除去剤が、疾患又は障害の部位に局所的に又は近くに投与される、実施形態27~50のいずれか1つに記載の方法。
実施形態52:老化細胞除去剤が、骨関節炎の関節に投与される、実施形態51の方法。
実施形態53:前記哺乳動物がヒトである、実施形態27~52のいずれか1つに記載の方法。
実施形態54:前記哺乳動物が非ヒト哺乳動物である、実施形態27~52のいずれか1つに記載の方法。
実施形態55:前記方法が、前記哺乳動物において老化細胞のレベルを(優先的に)低減する、実施形態27から54のいずれか1つに記載の方法。
実施形態56:老化細胞の上昇によって特徴付けられる病態の処置の有効性を評価する方法であって、
実施形態1から26のいずれか1つに記載の方法を使用して前記哺乳動物における老化細胞の1つ又は複数の指標の第1のレベルを決定する工程;
実施形態27から55のいずれか1つに記載の方法を使用して前記哺乳動物を処置する工程;及び
実施形態1から26のいずれか1つに記載の方法を使用する前記処置工程の後に又は途中で前記哺乳動物における老化細胞の1つ又は複数の指標の第2のレベルを決定する工程
を含み、
前記指標の第1のレベルと比較した前記指標の第2のレベルにおける減少が、前記処置が有効であることを示し、レベルに変化がない又は前記指標の第1のレベルと比較した前記指標の第2のレベルにおける増加が、前記処置が有効でないことを示す、方法。
実施形態57:前記方法が活発な老化細胞除去を検出する工程を含む、実施形態56の方法。
実施形態58:前記方法が、前記哺乳動物における活発な老化細胞除去のマーカーとして尿中のジホモ-15d-PGJ2、及び/又は15d-PGJ2を検出する工程を含む、実施形態56又は57のいずれか1つに記載の方法。
本明細書に記載の実施形態に関して、老化細胞除去処置の際の老化細胞除去のバイオマーカーとしてのジホモ-15d-PGJ2、及び/又は15d-PGJ2)の使用(例えば、図14を参照されたい)が、本明細書に記載の業績の主要な発見であることは注目される。これらは、この種類の(例えば、尿データにおいて見られるとおり)最初のバイオマーカーであると考えられる。したがって、本明細書に記載の業績の焦点の1つは、老化細胞除去薬が実際に作用していることを示す工程の際の液中での活発な老化細胞除去の検出である。
定義
用語「対象」、「個体」及び「患者」は、互換的に使用されてよく、ヒト及び非ヒト哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ウマ、ネコ、ブタ、ウシ、有蹄動物、ウサギ類等)を指す。種々の実施形態では、対象は、病院において、通院患者として又は他の臨床状況において医師又は他の医療従事者の看護下にあるヒト(例えば、成人男性、成人女性、若い男性、若い女性、男児、女児)であってよい。ある特定の実施形態では、対象は、医師又は他の医療従事者の看護下又は指示下になくてよい。
本明細書において使用される、句「それを必要とする対象」は、以下に記載のとおり、老化細胞のレベルの上昇によって特徴付けられる対象、及び/又は老化細胞のレベルの上昇によって特徴付けられる病態を指す。
例えば、病態又は疾患を処置することを参照して使用される場合、用語「処置」は、病態又は疾患の1つ又は複数の症状の軽減及び/若しくは除去、並びに/又は病態又は疾患の1つ又は複数の症状の発症若しくは重症度の進行の遅延及び/若しくは率の低下、並びに/又は病態又は疾患の予防を指す。用語、処置は、病態又は疾患の発症の遅延又は発症の予防を含む、予防的処置を指す場合がある。
「老化細胞」は、次の7つの特徴のいずれか1つ又は複数を呈する場合がある。(1)老化増殖停止は、本質的に永続的であり、周知の生理学的刺激によって逆戻りされ得ない。(2)老化細胞は、大きさが大きくなり、時に、非老化対応物のサイズと比較して2倍を超えて拡大している。(3)老化細胞は、ライソソームマスの増加を一部反映する老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-gal)を発現している。(4)大部分の老化細胞は、静止状態又は高分化型細胞によって一般に発現されないp16INK4aを発現している。(5)持続的なDNA損傷応答(DDR)シグナル伝達を有して老化する細胞は、老化を強化するクロマチン変化を有するDNAセグメント(DNA-SCARS)と称される持続性の核内フォーカスを有する。これらのフォーカスは、活性化DDRタンパク質を含有し、一過性の損傷フォーカスから区別できる。DNA-SCARSは、機能障害性テロメア又はテロメア機能障害誘導性フォーカス(TIF)を含む。(6)老化細胞は、場合により持続性のDDRシグナル伝達の存在下で観察される場合があり、場合によりそれらの発現について持続性のDDRシグナル伝達に依存する場合がある老化関連分子を発現し、分泌する場合がある。(7)老化細胞の核は、Lamin B1等の構造タンパク質又はヒストン及びHMGB1等のクロマチン関連タンパク質を欠いている(例えば、Freundら、(2012) Mol. Biol. Cell、23: 2066~2075; Davalosら、(2013) J. Cell Biol. 201: 613~629; Ivanovら、(2013) J. Cell Biol. 202(1):129~43を参照されたい)。(8)老化細胞は、増殖因子、プロテアーゼ、サイトカイン(例えば、炎症性サイトカイン)、ケモカイン、細胞関連代謝物、反応性酸素種(例えば、H2O2)並びに、炎症及び/又は、対象の基礎疾患を助長する又は悪化させる場合がある他の生物学的効果又は反応を刺激する他の分子を含む老化細胞関連分泌分子によっても特徴付けられる。老化細胞関連分子は、老化関連分泌表現型(SASP、例えば、老化細胞の炎症誘発性表現型を作る分泌因子を含む)、老化メッセージセクレトーム(senescent-messaging secretome)及びDNA損傷分泌プログラム(DDSP)を含むとして当技術分野において記載されているものを含む。老化細胞関連分子のこれらのグループ分けは、当技術分野において記載されるとおり、共通の分子を含有し、分子の3つの別々の異なるグループ分けを記載することを意図しない。老化細胞関連分子は、ある特定の発現され、分泌される増殖因子、プロテアーゼ、サイトカイン及び、強力な自己分泌及びパラ分泌活性を有し得る他の因子を含む(例えば、Coppeら、(2006) J. Biol. Chem. 281: 29568~29574; Coppeら、(2010) PLoS One、5: 39188; Krtolicaら、(2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、98: 12072~12077; Parrinelloら、(2005) J. Cell Sci. 118: 485~496を参照されたい)。細胞外マトリクス(ECM)関連因子として、老化細胞において強く誘導されている炎症性タンパク質及びECMリモデリングのメディエーターが挙げられる(例えば、Kuilmanら、(2009) Nat. Rev.、9: 81~94を参照されたい)。他の老化細胞関連分子として、DNA損傷分泌プログラム(DDSP)として集合的に記載される細胞外ポリペプチド(タンパク質)が挙げられる(例えば、Sunら、(2012) Nat. Med.、18: 1359~1368を参照されたい)。老化細胞関連タンパク質は、非老化細胞の細胞表面では検出可能な低い量で存在する又は存在しないタンパク質を含む、老化細胞上で発現される細胞表面タンパク質(又は受容体)も含む。老化細胞関連分子として、老化細胞の炎症誘発性表現型(例えば、SASP)を作る場合がある分泌因子が挙げられる。これらの因子として、非限定的に、GM-CSF、GROα、GROα、β、γ、IGFBP-7、IL-1α、IL-6、IL-7、IL-8、MCP-1、MCP-2、MIP-1α、MMP-1、MMP-10、MMP-3、アンフィレグリン、ENA-78、エオタキシン-3、GCP-2、GITR、HGF、ICAM-1、IGFBP-2、IGFBP-4、IGFBP-5、IGFBP-6、IL-13、IL-13、MCP-4、MIF、MIP-3α、MMP-12、MMP-13、MMP-14、NAP2、オンコスタチンM、オステオプロテジェリン、PIGF、RANTES、sgp130、TIMP-2、TRAIL-R3、Acrp30、アンジオゲニン、Axl、bFGF、BLC、BTC、CTACK、EGF-R、Fas、FGF-7、G-CSF、GDNF、HCC-4、1-309、IFN-γ、IGFBP-1、IGFBP-3、IL-1 R1、IL-11、IL-15、IL-2R-α、IL-6 R、I-TAC、レプチン、LIF、MMP-2、MSP-a、PAI-1、PAI-2、PDGF-BB、SCF、SDF-1、sTNF RI、sTNF RII、トロンボポエチン、TIMP-1、tPA、uPA、uPAR、VEGF、MCP-3、IGF-1、TGF-β3、MIP-1-デルタ、IL-4、FGF-7、PDGF-BB、IL-16、BMP-4、MDC、MCP-4、IL-10、TIMP-1、Fit-3リガンド、ICAM-1、Axl、CNTF、INF-γ、EGF、BMP-6が挙げられる。老化メッセージセクレトーム(SMS)因子として当技術分野において時に称されるものを含み、その一部がSASPポリペプチドのリストに含まれる、追加的に同定された因子として、非限定的に、IGF1、IGF2及びIGF2R、IGFBP3、IDFBP5、IGFBP7、PA11、TGF-β、WNT2、IL-1α、IL-6、IL-8並びにCXCR2-結合ケモカインが挙げられる。細胞関連分子として、非限定的に上記Sunら、Nat. Medに記載の因子も挙げられ、例えば、遺伝子、MMP1、WNT16B、SFRP2、MMP12、SPINK1、MMP10、ENPP5、EREG、BMP6、ANGPTL4、CSGALNACT、CCL26、AREG、ANGPT1、CCK、THBD、CXCL14、NOV、GAL、NPPC、FAMI50B、CST1、GDNF、MUCLJ、NPTX2、TMEM155、EDNJ、PSG9、ADAMTS3、CD24、PPBP、CXCL3、MMP3、CST2、PSG8、PCOLCE2、PSG7、TNFSF15、C17orf67、CALCA、FGF18、IL8、BMP2、MATN3、TFP1、SERPINI 1、TNFRSF25及びIL23Aの産生物も含んで挙げられる。老化細胞関連タンパク質は、老化細胞上に発現される細胞表面タンパク質(又は受容体)も含み、非老化細胞の細胞表面に検出可能に少量存在する、又は存在しないタンパク質を含む。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書においてアミノ酸残基のポリマーを指して互換的に用いられる。用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学的類似物であるアミノ酸ポリマー及び天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用する。
用語「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」又は文法的等価物は、本明細書において互いに共有結合的に連結された少なくとも2つのヌクレオチドを指す。本発明の核酸は、好ましくは1本鎖又は2本鎖であり、下に概説するとおり一部の場合では、例えばホスホラミド(Beaucageら、(1993) Tetrahedron 49(10): 1925)及びその中の参考文献; Letsinger (1970) J. Org. Chem. 35:3800; Sprinzlら、(1977) Eur. J. Biochem. 81: 579; Letsingerら、(1986) Nucl. Acids Res. 14: 3487; Sawaiら、(1984) Chem. Lett. 805、Letsingerら、(1988) J. Am. Chem. Soc. 110: 4470及びPauwelsら、(1986) Chemica Scripta 26: 141 9)、ホスホロチオエート(Magら、(1991) Nucleic Acids Res. 19:1437;及び米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briuら、(1989) J. Am. Chem. Soc. 111 :2321、O-メチルホスホロアミダイト連結(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、Oxford University Pressを参照されたい)、並びにペプチド核酸骨格及び連結(Egholm (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:1895; Meierら、(1992) Chem. Int. Ed. Engl. 31: 1008; Nielsen (1993) Nature、365: 566; Carlssonら、(1996) Nature 380: 207を参照されたい)を含む代替骨格を有する場合がある核酸類似体が含まれるが、一般にリン酸ジエステル結合を含有する。他の類似核酸として、陽性骨格(positive backbone)(Denpcyら、(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6097;非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号、第5,637,684号、第5,
602,240号、第5,216,141号及び第4,469,863号; Angew. (1991) Chem. Intl. Ed. English 30: 423; Letsingerら、(1988) J. Am. Chem. Soc. 110: 4470; Letsingerら、(1994) Nucleoside & Nucleotide 13:1597; 2及び3章、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Y.S. Sanghui及びP. Dan Cook編; Mesmaekerら、(1994)、Bioorganic & Medicinal Chem. Lett. 4: 395; Jeffsら、(1994) J. Biomolecular NMR 34:17; Tetrahedron Lett. 37:743 (1996))及び非リボース骨格を有するものが、米国特許第5,235,033号及び第5,034,506号並びに6及び7章、ASC Symposium Series 580、Carbohydrate Modifications in Antisense Research、Y.S. Sanghui及びP. Dan Cook編に記載されているものを含んで、挙げられる。1つ又は複数の炭素環式糖を含有する核酸も核酸の定義内に含まれる(Jenkinsら、(1995)、Chem. Soc. Rev. 169~176頁を参照されたい)。いくつかの核酸類似体は、Rawls、C & E News 1997年6月2日、35頁に記載されている。リボース-リン酸骨格のこれらの修飾は、標識等の追加的成分の付加を促すため、又は生理的環境におけるそのような分子の安定性及び半減期を増加させるために行われてよい。加えて本発明の核酸は、代替的に3本鎖であってよい。
本明細書において使用される「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的にコードされる1つ又は複数のポリペプチドからなるタンパク質を指す。認められる免疫グロブリン遺伝子として、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー定常領域遺伝子並びに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、カッパ又はラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロンとして分類され、次にそれぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを決める。
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含むことが周知である。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対からなり、各対は1本の「軽」鎖(約25kD)及び1本の「重」鎖(約50~70kD)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100から110以上のアミノ酸の可変領域を明確にする。用語、可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)は、これらの軽鎖及び重鎖をそれぞれ指す。
抗体は、未処置免疫グロブリンとして又は種々のペプチダーゼを用いた消化によって産生される多数の十分に特徴付けられた断片として存在する。したがって、例えば、ペプシンは、F(ab)'2、それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1に繋がれている軽鎖であるFabの二量体、を産生するように、ヒンジ領域中のジスルフィド結合下で抗体を消化する。F(ab)'2は、ヒンジ領域中のジスルフィド結合を壊し、それにより(Fab')2二量体をFab'モノマーに転換するように穏やかな条件下で還元され得る。Fab'モノマーは、ヒンジ領域の一部を含んで本質的にFabである(他の抗体断片の更に詳細な記載についてFundamental Immunology、W.E. Paul編、Raven Press、N.Y. (1993)を参照されたい)。種々の抗体断片が未処置抗体の消化に関して定義される一方で、当業者は、そのようなFab'断片が化学的に又は組換えDNA法を利用すること、のいずれかによって新たに合成され得ることを理解する。したがって、本明細書において使用される用語抗体は、全抗体の改変によって産生される又は組換えDNA法を使用して新たに合成される、のいずれの抗体断片も含む。好ましい抗体として、1本鎖抗体(単一ポリペプチド鎖として存在する抗体)、より好ましくは、可変重鎖及び可変軽鎖が合わせて(直接又はペプチドリンカーを通じて)連続するポリペプチドを形成するように繋がれている1本鎖Fv抗体(sFv又はscFv)が挙げられる。1本鎖Fv抗体は、直接繋がれた又はペプチドコードリンカーによって繋がれた、のいずれかのVH-及びVL-コード配列を含む核酸から発現され得る共有結合的に連結されたVH-VLヘテロ二量体である。Huston,ら、(1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA、85: 5879~5883。VHとVLとは互いに単一ポリペプチド鎖として繋がれている一方で、VH及びVLドメインは、非共有結合的に会合している。糸状ファージの表面に発現される第1の機能性抗体分子は、1本鎖Fv(scFv)であるが、代替的発現戦略も成功している。例えばFab分子は、鎖の内の1本(重鎖又は軽鎖)がg3カプシドタンパク質に融合され、相補鎖が可溶性分子としてペリプラズムに輸送される場合にファージ上に提示され得る。2本の鎖は、同じ又は異なるレプリコン上にコードされてよく;重要な点は、各Fab分子中の2本の抗体鎖が翻訳後に会合し、二量体が、鎖の内の1本の連結を介してファージ粒子、例えばg3pに組み込まれることである(例えば、米国特許第5733743号を参照されたい)。天然で凝集しているが、化学的に分かれている抗体V領域由来の軽鎖及び重鎖ポリペプチドを、抗原結合部位の構造に実質的に類似する三次元構造分子にフォールドする分子に転換するscFv抗体及び多数の他の構造は、当業者に周知である(例えば、米国特許第5,091,513号、第5,132,405号及び第4,956,778号を参照されたい)。特に好ましい抗体は、ファージ上に提示されるすべてを含むべきである(例えば、scFv、Fv、Fab及びジスルフィド連結されたFv(Reiterら、(1995) Protein Eng. 8: 1323~1331)。ある特定の実施形態では抗体は、ペプチボディも含む。ペプチボディは、Fcドメインに移植された生物学的に活性なペプチドからなる。この手法は、抗体のある特定の望ましい特性、特に、2つのFcsの二量体化によって与えられた結合活性を通じて明らかな親和性の増加及び長い血漿滞留時間(plasma residency time)を保持する(例えば、Shimamotoら、(2012) Mabs、4(5): 586~591を参照されたい)。
用語「生物学的試料」は、健康な及び/又は病的状態にあり、本明細書に記載の老化細胞の1つ又は複数の指標を含有する生物学的組織、細胞又は液体の試料である試料を指す。そのような試料として、これだけに限らないが、培養細胞、短期間の細胞調製物、痰、羊水、血液、血液細胞(例えば、白血球)、組織又は穿刺生検試料、尿、腹水及び胸水又はそれら由来の細胞が挙げられる。生物学的試料として、組織学的目的のために採取された凍結切片セクション等の組織の切片も挙げられる。試料は、典型的にはヒト患者から採取されるが、アッセイは、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ及びブタ等の任意の哺乳動物由来の試料に使用されてよい。試料は、所望により、適切な緩衝液への希釈によって又は濃縮されて必要に応じて前処置されてよい。リン酸、Tris等の種々の緩衝液の1つを使用する多数の標準的水性緩衝溶液のいずれも生理学的pHで使用されてよい。
用語「低分子有機分子」は、医薬品において一般に使用される有機分子に匹敵するサイズの分子を指す。用語は、生物学的巨大分子(例えば、タンパク質、核酸等)を除外する。ある特定の実施形態では、好ましい低分子有機分子は、約5000Daまで又は約4000kDaまで又は約3,000kDaまで又は約2000Daまで又は約1000Daまでのサイズの範囲である。
細胞老化の際に生じる代謝変化をより良好に理解するために、本発明者らは、増殖性(Proliferating)、静止状態及び電離放射線(IR)誘発性老化線維芽細胞から細胞内脂質及び水性代謝物を抽出し、質量分析によってそれらの相対的存在比を測定した。脂質のある特定のサブセットが老化と共に激しい上昇又は低下を示すことが発見された。これらとして、セラミド、飽和脂肪酸及びレチノイン酸が挙げられた。しかし最も顕著なのは、エイコサノイド、20炭素脂肪酸、最も顕著にはアラキドン酸由来の強力なシグナル伝達脂質のクラスの相対的存在比における著しい上昇であった。これらのエイコサノイドで最も豊富なのは、1a,1b-ジホモ-15-デオキシ-デルタ12,14-プロスタグランジンJ2(ジホモ-15d-PGJ2)であったが、プロスタグランジンD2(PGD2)及びプロスタグランジンE2(PGE2)のジホモバージョンも検出された。追加的に、本発明者らは、特定のロイコトリエン、顕著にはロイコトリエンA4(LTA4)及びB4(LTB4)並びに関連リポキシゲナーゼ産生物、5-HETE(図1、パネルA)における増加を観察した。追加的にエイコサノイド前駆体アラキドン酸(AA)、エイコサペンタン酸(EPA)及びジホモ-ガンマ-リノール酸(DGLA)は、老化細胞において上昇しており、アドレン酸(adrenic acid)、AAの伸長産生物及びジホモプロスタグランジン前駆体も同様であった。したがって、両方のエイコサノイド及びそれらの前駆体は、老化(老化細胞、例えば、SASP表現型によって特徴付けられる細胞の形成)と共に上昇する。
これらの発見の観点から、上に記載の種々のマーカーは、対象における(例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物における)老化細胞の存在及び/又は量の有効な指標を提供できる。したがって、ある特定の実施形態では、哺乳動物において老化細胞のレベルの上昇を同定する方法が提供される。ある特定の実施形態では、方法は、哺乳動物由来の生物学的試料(例えば、血液又は血液画分、尿、脳脊髄液、組織生検、口腔液及び鼻、頬側スワブ等)中の老化細胞の1つ又は複数の指標のレベルを決定する工程を含み、ここで、1つ又は複数の指標は、エイコサノイド、エイコサノイド前駆体、ロイコトリエンA4(LTA4)、ロイコトリエンB4(LTB4)、PGD2及び5-HETEからなる群から選択される。指標のレベルの上昇(例えば、健常哺乳動物におけるレベルと比較して)は、哺乳動物における老化細胞のレベルの上昇の指標である。ある特定の実施形態では、指標は、エイコサノイド、エイコサノイド前駆体、ロイコトリエンA4(LTA4)及びロイコトリエンB4(LTB4)からなる群から選択される1つ又は複数の指標を含む。ある特定の実施形態では、指標は、エイコサノイド又はエイコサノイド前駆体を含む。ある特定の実施形態では、指標は、エイコサノイド(例えば、1a,1b-ジホモ-15-デオキシ-デルタ12,14-プロスタグランジンJ2(ジホモ-15d-PGJ2))を含む。ある特定の実施形態では、指標は、エイコサノイド前駆体(例えば、アラキドン酸(AA)、エイコサペンタン酸(EPA)、及び/又はジホモ-ガンマ-リノール酸(DGLA)を含む。
これらの1つ又は複数の指標単独での、又は鑑別診断の文脈でのレベルの上昇は、老化細胞のレベル/数の上昇によって特徴付けられる病態の指標であり得る。したがって、ある特定の実施形態では、これらの1つ又は複数の指標のレベルの上昇は、哺乳動物が1つ又は複数の老化細胞除去剤を用いて良好に処置されたことの指標となり得る。種々の実施形態では、本明細書に記載のそのような老化細胞除去剤は、選択的に及び/又は優先的に老化細胞を殺滅するように作用し、それにより老化細胞のレベルの上昇を有する対象において予防的及び/又は治療モダリティとして使用され得る。
ある特定の実施形態では、老化細胞のレベル/数の上昇によって特徴付けられる病態として、心血管疾患(例えば、粥状動脈硬化、狭心症、不整脈、心筋症、うっ血性心不全、環状動脈疾患、頸動脈疾患、心内膜炎、冠状動脈血栓症、心筋梗塞、高血圧、大動脈動脈瘤、心臓拡張機能障害、高コレステロール血症、高脂血症、僧帽弁逸脱、末梢血管疾患、心臓のストレス耐性、心臓線維症、脳動脈瘤及び卒中)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、認知症、軽度認知障害及び運動ニューロン機能障害)、代謝疾患(例えば、糖尿病、糖尿病性潰瘍、メタボリックシンドローム及び肥満)又は細胞老化関連疾患等の病態が挙げられるが、必ずしも限定されない。
指標は、当業者に周知の方法を使用して生物学的試料において日常的に決定され得る。そのような方法として、これだけに限らないが、質量分析(例えば、LC-MSI)、クロマトグラフ(例えば、HPLC)等(例えば、本明細書実施例1を参照されたい)が挙げられる。
老化細胞除去剤
上に記載のとおりある特定の実施形態では、本明細書に記載の指標は、老化細胞のレベルの上昇についての代用マーカーである。そのようなレベルの上昇を有する対象は、老化細胞(例えば、SASP表現型によって特徴付けられる細胞)を選択的に/優先的に殺滅及び/又は抑制する1つ又は複数の老化細胞除去剤の投与による介入についての候補である。
したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載の診断方法は、1つ又は複数の老化細胞除去剤の有効量を、本明細書に記載の老化細胞の1つ又は複数の指標のレベルの上昇を有すると決定された対象に(例えば、哺乳動物に)に投与する工程を更に含む。同様に、ある特定の実施形態では、1つ又は複数の老化細胞除去剤の有効量を本明細書に記載の老化細胞の1つ又は複数の指標(例えば、エイコサノイド、エイコサノイド前駆体、ロイコトリエンA4(LTA4)、ロイコトリエンB4(LTB4)、PGD2及び/又は5-HETE)のレベルの上昇を有すると決定された対象に(例えば、哺乳動物に)投与する工程を含む、方法が検討される。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の指標も1つ又は複数の老化細胞除去剤の使用を含む治療レジメンの評価を促す。したがって、ある特定の実施形態では、そのような方法は、対象における老化細胞の1つ又は複数の指標(例えば、エイコサノイド、エイコサノイド前駆体、ロイコトリエンA4(LTA4)、ロイコトリエンB4(LTB4)、PGD2及び/又は5-HETE)の第1のレベルを決定する工程;本明細書に記載の方法(例えば、対象への1つ又は複数の老化細胞除去剤の投与を含む方法)を使用して対象哺乳動物を処置する工程;及び処置の後に又は途中で対象における老化細胞の1つの指標の第2のレベルを決定する工程を含み、ここで指標の第1のレベルと比較した指標の第2のレベルにおける減少(例えば、統計的に有意な減少)は、処置が有効であることを示し、レベルに変化がない又は指標の第1のレベルと比較した指標の第2のレベルにおける増加(例えば、統計的に有意な増加)は、前記処置が有効でないことを示す。ある特定の実施形態では、処置が有効でないと見なされる場合に治療レジメンは変更される。そのような変更は、投与される1つ又は複数の老化細胞除去剤の変更及び/又は投薬レジメンの変更を含み得る。
したがって、種々の実施形態では、本明細書において検討される方法は、検討中の対象への1つ又は複数の老化細胞除去剤の投与を含む。
本明細書において使用される老化細胞除去剤は、「選択的に」(優先的に又は大きな程度で)老化細胞を壊す、殺滅する、除去する又は選択的破壊を促す薬剤である。言い換えると、ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、生物学的に、臨床的に及び/又は非老化細胞を壊す又は殺滅するその能力と比較して統計的に有意な様式で、老化細胞を壊す又は殺滅する。典型的な実施形態では、老化細胞除去剤は、臨床的に重要な又は生物学的に重要な様式で、確立された老化細胞を選択的に殺滅するために十分だが、一方、非老化細胞の殺滅又は破壊を実質的に回避する量及び時間で使用される。ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、老化細胞の死を誘発する(開始させる、刺激する、引き起こす、活性化する及び/又は促進する)並びに生じさせる様式で少なくとも1つのシグナル伝達経路を変更する。老化細胞除去剤は、例えば、細胞生存シグナル伝達経路(例えば、Akt経路)又は炎症性経路のいずれか又は両方を、例えば老化細胞における細胞生存及び/又は炎症性経路内のタンパク質と拮抗することによって変更できる。
特定の理論に束縛されることなく、本明細書に記載の阻害剤及びアンタゴニストが、選択的に老化細胞を殺滅する1つの機序は、細胞死を導くアポトーシス経路の1つ又は複数の成分を誘導する(例えば、活性化する、刺激する、その阻害を除去する)ことによる。ある特定の実施形態では、非老化細胞は、増殖性(Proliferating)細胞であってよく、又は静止状態細胞であってよい。ある特定の場合では、非老化細胞の本明細書に記載の方法において使用される老化細胞除去剤への曝露は、非老化細胞の増殖する(proliferate)能力を一時的に低減する場合があるが、アポトーシス経路は典型的には誘導されず、非老化細胞は典型的には壊されない。
本明細書に記載の方法において使用され得るある特定の老化細胞除去剤は、がんを処置するために有用であると記載されている。しかし、本明細書に記載の方法では、老化細胞除去剤は、がんを処置するためとは異なり、おそらく無効性と考えられる様式で典型的には投与される。本明細書に記載の方法における1つ又は複数の老化細胞除去剤の投与は、一日量、単一の処置サイクルにわたる累積用量、又はがん治療のために必要な薬剤の用量よりも少ない複数回の処置サイクルからの薬剤の累積用量の1つ又は複数を含み得る。したがって、がんを処置するために最適化されたレジメンにより対象を処置することに伴う1つ又は複数の有害作用(例えば、副作用)が生じる可能性は減少する。種々の実施形態では、本明細書に記載の方法において投与される老化細胞除去剤は、がん処置のために当技術分野において現在記載されているよりも低い用量で、及び/又は老化細胞を選択的に殺滅する様式(例えば、断続的な投薬)で投与され得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の老化細胞除去剤は、処置過程又は処置サイクルあたりでより低い累積用量で投与されてよく、がんを有効に処置するためにはがん細胞に不十分に細胞障害性である可能性がある。言い換えると、薬剤が単独で又はがんを処置するための1つ若しくは複数の追加的化学療法薬若しくは放射線療法と共に投与されるかに関わらず、本明細書に記載の方法により、老化細胞除去剤は、がんを処置するための主な治療法として当業者によって理解される様式では使用されない。
しかし、ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用される薬剤が、主ながん治療と見なされるために十分である様式で使用されなくても、本明細書に記載の方法と老化細胞除去との組合せは、転移を阻害するために有用である様式(例えば、短期間コースの治療)で使用されてよい。本明細書において使用される「がんのための主な治療法」は、単独で又は1つ若しくは複数の薬剤と合わせて使用され得る薬剤が、医学及び腫瘍学の分野の当業者によって決定されて、がんのために有効な処置であることが意図されている又はそうであることが周知である場合に、薬剤を使用するがんの処置のための投与プロトコールが適切ながん関連エンドポイントを達成するために設計されていることを意味する。ある特定の実施形態では、毒性を更に低減するために、老化細胞除去剤は、老化細胞(腫瘍細胞ではない)に近位の又は接触する部位に投与されてよい。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の老化細胞除去剤は、細胞の老化工程の際に活性化される1つ又は複数の細胞性経路を変更(例えば、干渉/阻害)する。ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、老化細胞における細胞生存シグナル伝達経路(例えば、Akt経路)及び/又は炎症性経路のいずれかを変更できる。老化の際のある特定の細胞性経路の活性化は、アポトーシスを誘導し、最終的にはアポトーシスを受ける細胞の能力を減少させる又は阻害する。理論に束縛されることなく、老化細胞除去剤が選択的に老化細胞を殺滅する機序は、細胞死を導くアポトーシス経路を誘導する(例えば、活性化する、刺激する、その阻害を除去する)ことによる。種々の実施形態では、老化細胞除去剤は、1つ又は複数の経路における1つ、2つ又はそれ以上の標的タンパク質と相互作用することによって、老化細胞において1つ又は複数のシグナル伝達経路を変更でき、それは、アポトーシス経路等の細胞死経路の抑制の除去又は低減を生じる。老化細胞において1つ、2つ又はそれ以上の細胞性経路を変更するために、老化細胞を老化細胞除去剤に接触又は曝露することは、アポトーシスを開始するための細胞の機構及び経路を回復させ得る。ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、老化細胞においてシグナル伝達経路を変更する薬剤であり、次に老化細胞の生存のために重要な1つ又は複数の遺伝子産生物の分泌及び/又は発現を阻害する。老化細胞除去剤は、老化細胞の生存のために重要な遺伝子産生物の生物学的活性を阻害できる。代替的に、老化細胞における遺伝子産生物のレベルの減少又は低減は、アポトーシス経路を引き起こす、開始する、活性化する若しくは刺激する又は、アポトーシス経路の抑制を除去する若しくは低減する別の細胞性成分の生物学的活性を変更できる。ある特定の実施形態では、本明細書において検討される老化細胞除去剤は、細胞障害性成分(例えば、毒素又は細胞障害性ペプチド又は細胞障害性核酸)への連結又はコンジュゲーションの非存在下で選択的に老化細胞を殺滅できる生物学的に活性な薬剤を含む。ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、老化細胞に選択的に結合する標的化成分(例えば、抗体又はその抗原結合断片;細胞結合ペプチド)への連結又はコンジュゲーションの非存在下で選択的に老化細胞を殺滅することにおいても活性である。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用される老化細胞除去剤は、低分子有機分子である。ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、例えば細胞内の酵素によって、活性化されるもの、又は活性形態に転換されるプロドラッグであるものを含む。ある特定の実施形態では、老化細胞除去プロドラッグは、老化細胞において非老化細胞においてよりも高いレベルで発現されている酵素によってプロドラッグが活性形態に転換されるように設計されている。
種々の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達経路を変更できる本明細書に記載の老化細胞除去剤としてこれだけに限らないが、経路中の標的タンパク質の少なくとも1つの活性を阻害する薬剤が挙げられる。ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、少なくともBCL-xLを阻害する1つ又は複数のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーの特異的阻害剤(例えば、Bcl-2/Bcl-xL/Bcl-w阻害剤;選択的Bcl-xL阻害剤;Bcl-xL/Bcl-w阻害剤)、Aktキナーゼ特異的阻害剤、及び/又はMDM2阻害剤であってよい。ある特定の実施形態では、ケルセチン(及びその類似体)、エンザスタウリン及びダサチニブ等の分子は、除外され、本明細書に記載の方法及び組成物において使用される化合物ではない。他の詳細な実施形態では、本明細書に記載の方法は、少なくとも2つの老化細胞除去剤の使用を含み、少なくとも1つの老化細胞除去剤及び第2の老化細胞除去剤は、それぞれ異なり、老化細胞における生存シグナル伝達経路及び炎症性経路のいずれか1つ又は両方を独立して変更する。
低分子老化細胞除去分子
本明細書に記載の方法において使用され得る老化細胞除去剤として、これだけに限らないが、低分子有機分子が挙げられる。種々の実施形態では、低分子有機分子(本明細書において低分子又は低分子化合物とも称される)は、典型的には約105ダルトン未満、又は約104ダルトン未満、又は約103ダルトン未満の分子量を有する。ある特定の実施形態では、低分子老化細胞除去剤は、次の基準に1回より多く反しない:(1)水素結合ドナー5個以下(窒素-水素及び酸素-水素結合の合計数);(2)水素結合受容体10個以下(すべての窒素又は酸素原子);(3)分子量500ダルトン未満;(4)オクタノール-水分配係数[5]logP、5以下。
MDM2阻害剤
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用される老化細胞除去剤は、MDM2阻害剤を含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得るMDM2(マウス二重微小染色体2)阻害剤は、次のクラスの化合物、例えば、イミダゾリン化合物(例えば、cis-イミダゾリン化合物)、スピロ-オキシインドール化合物、ベンゾジアセピン化合物、ピペリジノン化合物、トリプタミン化合物、CGM097((S)-1-(4-クロロフェニル)-7-イソプロポキシ-6-メトキシ-2-(4-(メチル(((1r,4S)-4-(4-メチル-3-オキソピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)メチル)アミノ)フェニル)-1,2-ジヒドロイソキノリン-3(4H)-オン)及び関連類似体のいずれか1つに属する低分子有機分子化合物であってよい。ある特定の実施形態では、MDM2阻害剤もMDMX(マウス二重微小染色体X、ヒトにおけるHDMXとしても周知である)に結合し、活性を阻害することができる。MDM2のヒトホモログは、当技術分野においてHDM2(ヒト二重微小染色体2)と称される。したがって、本明細書に記載の方法により老化細胞除去阻害剤が投与される対象がヒト対象である場合、本明細書にMDM2阻害剤として記載の化合物は、HDM2の1つ又は複数のそのリガンドへの結合も阻害する。
MDM2は、当技術分野において、26Sプロテアソームを通じたプロテアソーム分解のためのp53等の腫瘍抑制タンパク質を標的化することによって腫瘍形成を促進できるE3ユビキチンリガーゼと記載されている(例えば、Hauptら、(1997) Nature 387: 296~299; Hondaら、(1997) FEBS Lett. 420: 25~27; Kubbutatら、(1997) Nature、387: 299~303;等を参照されたい)。MDM2は、p53のN末端への直接結合によってもp53に影響を与え、p53の転写活性化機能を阻害する(例えば、Momandら、(1992) Cell 69: 1237~1245; Olinerら、(1993) Nature 362: 857~860を参照されたい)。同様にMdm2は、p53によって制御される(例えば、Lahav (2008) Exp. Med. Biol. 641: 28~38を参照されたい)。MDM2活性として、とりわけ、それ自体及びARRB1に向けたユビキチンリガーゼE3としての活性、p53の核外輸送の亢進;網膜芽細胞腫RB1タンパク質のプロテアソーム依存性ユビキチン非依存性分解の促進、そのユビキチン化及び分解を誘発することによるDAXX媒介アポトーシスの阻害、p53を安定化することに関与するTRIM28/KAP1-MDM2-p53複合体の成分としての作用;増殖因子とDNA損傷応答経路とを連結するTRIM28/KAP1-ERBB4-MDM2複合体の成分;ユビキチン化及び続く核内でのDYRK2のプロテアソーム分解の媒介;IGF1R及びSNAI1のユビキチン化並びにこれらの成分のプロテアソーム分解への促進が挙げられる。MDM2は、転写因子FOXO4のモノユビキチン化を誘発するとも報告されている(例えば、Brenkmanら、(2008) PLOS One、3(7): e2819を参照されたい)。種々の実施形態では、本明細書に記載のMDM2阻害剤は、MDM2と任意の1つ又は複数の前述の細胞成分との間の相互作用を破壊することができる。
一実施形態では、本明細書に記載の方法において有用な老化細胞除去剤は、イミダゾリン(例えば、cis-イミダゾリン)を含む。Cis-イミダゾリン化合物として、これだけに限らないが当技術分野においてヌトリンと称されるものが挙げられる。本明細書に記載の他のMDM2阻害剤と同様に、ヌトリンは、MDM2とp53との間の相互作用のcis-イミダゾリン低分子阻害剤である(例えば、Vassilevら、(2004) Science 303(5659): 844~48を参照されたい)。本明細書に記載の方法において使用され得る例示的だが非限定的な例cis-イミダゾリン化合物は、米国特許第6,734,302号;第6,617,346号;及び第7,705,007号並びに米国特許出願公開第2005/0282803号、第2007/0129416号及び第2013/0225603号に記載されている。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヌトリン-1と称されるヌトリン化合物又はヌトリン-2と称されるヌトリン化合物又はヌトリン-3と称されるヌトリン化合物の使用を含む(例えば、CAS登録番号675576-98-4及び548472-68-0を参照されたい)。ヌトリン-3(4-[[4S,5R)-4,5-ビス(4-クロロフェニル)-4,5-ジヒドロ-2-[4-メトキシ-2-(-1-メチルエトキシ)フェニル]-1H-イミダゾール-1-イル]カルボニル]-2-ピペラジノン)の活性鏡像異性体は、当技術分野においてヌトリン-3aと称される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、選択的に老化細胞を殺滅するためのヌトリン-3aの使用を含む。
ヌトリン-3は、当技術分野においてp53経路の非遺伝毒性活性化因子として記載されており、p53の活性化は、マウス二重微小染色体2(MDM2)遺伝子によって調節される。MDM2タンパク質は、E3ユビキチンリガーゼであり、ユビキチン依存性分解の方法によってp53半減期を調節している。ヌトリン-3aは、前臨床研究(例えば、小児がんに関して)及びある特定のがん(例えば、網膜芽細胞腫)の処置のための臨床試験において調査されている。今日までに、ヌトリン-3を用いるin vitro及び前臨床研究は、化合物に曝露された細胞の機能に化合物が種々の生物学的効果を有することを示唆している。例えば、報告によればヌトリン-3は、B細胞悪性腫瘍を含む血液悪性腫瘍においてがん細胞のアポトーシスの程度を増加させ(例えば、Zauliら、(2011) Clin. Cancer Res. 17: 762~770及びこれらにおいて引用される参考文献を参照されたい)、ダサチニブ等の他の化学療法薬との組合せで、細胞障害効果は相乗的であると考えられている(例えば、Zauliら、上記を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、イミダゾリン化合物は、構造:
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含み;式中Xは、ハロゲン化物(例えば、Cl、Fl等)であり;R1はアルキル(例えば、C1~C12アルキル)であり、R2は-H又はヘテロアルキルであり、R3は-H又は=Oである。ある特定の実施形態では、上に記載のとおり、イミダゾリン化合物は、ヌトリン-1、ヌトリン-2及びヌトリン-3からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、イミダゾリン化合物は、4-[[(4S,5R)-4,5-ビス(4-クロロフェニル)-4,5-ジヒドロ-2-[4-メトキシ-2-(1-メチルエトキシ)フェニル]-1H-イミダゾール-1-イル]カルボニル]-2-ピペラジノン又はその薬学的に許容される塩を含む。
ある特定の実施形態では、イミダゾリン化合物は、構造:
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。
本明細書に記載の方法のために有用な別の例示的老化細胞除去cis-イミダゾリン化合物、RG-7112(Roche社)(CAS番号939981-39-2; IUPAC名:((4S,5R)-2-(4-(tert-ブチル)-2-エトキシフェニル)-4,5-ビス(4-クロロフェニル)-4,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-1-イル)(4-(3-(メチルスルホニル)プロピル)ピペラジン- -1-イル)メタノン(例えば、米国特許第7,851,626号; Tovarら、(2013) Cancer Res. 72: 2587~2597を参照されたい)。
別の例示的実施形態では、本明細書に記載の方法において有用なMDM2阻害剤は、RG7338(Roche社)(IPUAC名: 4-((2R,3S,4R,5S)-3-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)-4-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-4-シアノ-5-ネオペンチルピロリジン-2-カルボキシアミド)-3-メトキシ安息香酸)(CAS 1229705-06-9)と称されるcis-イミダゾリン化合物である; Dingら、(2013) J. Med. Chem. 56(14): 5979~5983; Zhaoら、(2013) J. Med. Chem. 56(13): 5553~5561)。更に別の例示的ヌトリン化合物は、RO5503781(イダサヌトリン(idasanutlin)としても周知)である。他の強力なcis-イミダゾリン低分子化合物として、ジヒドロイミダゾチアゾール化合物(例えば、DS-3032b; Daiichi Sankyo社)が挙げられる(同様に、Miyazakiら、(2013) Bioorg. Med. Chem. Lett. 23(3): 728~732; Miyazakiら、(2012) Bioorg. Med. Chem. Lett. 22(20): 6338~6342; PCT公開番号WO2009/151069を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得るcis-イミダゾリン化合物は、ジヒドロイミダゾチアゾール化合物である。
ある特定の実施形態では、MDM2低分子阻害剤は、スピロ-オキシインドール化合物を含む(例えば、これらに記載されるスピロ-オキシインドール化合物について参照により本明細書に組み込まれるDingら、(2005) J. Am. Chem. Soc. 127: 10130~10131; Shangaryら、(2008) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、105: 3933~3938; Shangaryら、(2008) Mol. Cancer Ther. 7: 1533~1542; Hardcastleら、(2005) Bioorg. Med. Chem. Lett. 15: 1515~1520; Hardcastleら、(2006) J. Med. Chem. 49(21): 6209~6221; Watsonら、(2011) Bioorg. Med. Chem. Lett. 21(19): 5916~5919に記載される化合物を参照されたい)。MDM2阻害剤であるスピロ-オキシインドール化合物の他の例は、当技術分野においてMI-63、MI-126; MI-122、MI-142、MI-147、MI-18、MI-219、MI-220、MI-221及びMI-773と称される。別の特異的スピロ-オキシインドール化合物は、3-(4-クロロフェニル)-3-((1-(ヒドロキシメチル)シクロプロピル)メトキシ)-2-(4-ニトロベンジル)イソインドリン-1-オンである。別の化合物は、MI888と称される(例えば、Zhaoら、(2013) J. Med. Chem. 56(13): 5553~5561; PCT公開番号WO2012/065022を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得るMDM2低分子阻害剤は、ベンゾジアセピンジオンを含む(例えば、Grasbergerら、(2005) J. Med. Chem. 48: 909~912; Parksら、(2005) Bioorg. Med. Chem. Lett. 15: 765~770; Raboissonら、(2005) Bioorg. Med. Chem. Lett. 15: 1857~1861; Koblishら、(2006) Mol. Cancer Ther. 5: 160~169を参照されたい)。本明細書に記載の方法において使用され得るベンゾジアセピンジオン化合物として、これだけに限らないが、1,4-ベンゾジアセピン-2,5-ジオン化合物が挙げられる。ベンゾジアセピンジオン化合物の例として、5-[(3S)-3-(4-クロロフェニル)-4-[(R)-1-(4-クロロフェニル)エチル]-2,5-ジオキソ-7-フェニル-1,4-ジアゼピン-1-イル]バレリン酸及び5-[(3S)-7-(2-ブロモフェニル)-3-(4-クロロフェニル)-4-[(R)-1-(4-クロロフェニル)エチル]-2,5-ジオキソ-1,4-ジアゼピン-1-イル]バレリン酸が挙げられる(例えば、Raboissonら、上記を参照されたい)。他のベンゾジアセピンジオン化合物は、当技術分野においてTDP521252(IUPAC名:5-[(3S)-3-(4-クロロフェニル)-4-[(1R)-1-(4-クロロフェニル)エチル]-7-エチニル-2,5- -ジオキソ-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-1-イル]ペンタン酸)及びTDP665759(IUPAC名:(3S)-4-[(1R)-1-(2-アミノ-4-クロロフェニル)エチル]-3-(4-クロロフェニル)-7-ヨード-1-[3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル]-3H-1,4-ベンゾジアセピン-2,5-ジオン)と称される(例えば、Parksら、上記; Koblishら、上記を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、MDM2低分子阻害剤は、テルフェニルを含む(例えば、Yinら、(2005) Angew Chem. Int. Ed. Engl. 44: 2704~2707; Chenら、(2005) Mol. Cancer Ther. 4: 1019~1025を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得るMDM2阻害剤は、キリノール(quilinol)を含む(例えば、Luら、(2006) J. Med. Chem. 49: 3759~3762を参照されたい)。ある特定の実施形態では、MDM2阻害剤は、カルコンを含む(例えば、Stollら、(2001) Biochm. 40: 336~344を参照されたい)。ある特定の実施形態では、MDM2阻害剤はスルホンアミドである(例えば、NSC279287)(例えば、Galatinら、(2004) J. Med. Chem. 47: 4163~4165を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得る化合物は、セルデメタン(JNJ-26854165;化学名:N1-(2-(1H-インドール-3-イル)エチル)-N4-(ピリジン-4-イル)ベンゼン-1,4-ジアミン; CAS番号881202-45-5)(Johnson & Johnson社、New Brunswick、N.J.)等のトリプタミンを含む。セルデメタンは、p53を活性化し、HDM2ユビキチンリガーゼアンタゴニストとして作用するトリプタミン誘導体である(例えば、Chargariら、(2011) Cancer Lett. 312(2): 209~218; Kojimaら、(2010) Mol. Cancer Ther. 9: 2545~2557; Yuanら、(2011) J. Hematol. Oncol. 4:16を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得るMDM2低分子阻害剤として、これだけに限らないがRewら、(2012) J. Med. Chem. 55: 4936~4954; Gonzalez-Lopez de Turisoら、(2013) J. Med. Chem. 56: 4053~4070; Sunら、(2014) J. Med. Chem. 57: 1454~1472)に記載のものが挙げられる。
ある特定の実施形態では、MDM2阻害剤は、ピペリジノン化合物を含む。強力なMDM2ピペリジノン阻害剤の例は、AM-8553({(3R,5R,6S)-5-(3-クロロフェニル)-6-(4-クロロフェニル)-1-[(2S,3S)-2-ヒドロキシ-3- -ペンタニル]-3-メチル-2-オキソ-3-ピペリジニル}酢酸;CAS番号1352064-70-0)(Amgen社、Thousand Oaks、Calif.)である。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得るMDM2阻害剤は、ピペリジンを含む(例えば、PCT公開番号WO2011/046771を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得るMDM2阻害剤は、イミダゾール-インドール化合物を含む(例えば、PCT公開番号WO2008/119741を参照されたい)。
MDM2に及びMDMXに結合し、本明細書に記載の方法において使用され得る化合物の例は、これだけに限らないが、RO-2443及びRO-5963((Z)-2-(4-((6-クロロ-7-メチル-1H-インドール-3-イル)メチレン)-2,5-ジオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)-N-(1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)アセタミド)も含む(例えば、Gravesら、(2012) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、109: 11788~11793; Zhaoら、(2013) BioDiscovery上記を参照されたい)。
別の例示的だが非限定的な実施形態では、当技術分野においてCGM097と称されるMDM2阻害剤は、本明細書に記載の方法において使用され得る。
タンパク質のBCL-2抗アポトーシス性ファミリーの阻害剤
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用される老化細胞除去剤は、BCL-2ファミリーの1つ又は複数のタンパク質の阻害剤であってよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの老化細胞除去剤は、1つ又は複数のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーの阻害剤から選択され、阻害剤は少なくともBCL-xLを阻害する。典型的にはタンパク質のBCL-2抗アポトーシス性ファミリーの阻害剤は、少なくとも細胞生存経路を変更する。アポトーシス活性化は、細胞表面死受容体の活性化によって引き起こされる外的な経路、又は発生上の要因及び多様な細胞内ストレスによって引き起こされる内在性経路を介して生じ得る。ストレス経路又はミトコンドリアの経路としても周知の、この内在性経路は、BH1-BH4ドメインを有する抗アポトーシス性(生存促進性)タンパク質(BCL-2(すなわち、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーのBCL-2タンパク質メンバー)、BCL-xL、BCL-w、A1、MCL-1及びBCL-B); BH1、BH2及びBH3ドメインを有するアポトーシス促進性タンパク質(BAX、BAK及びBOK);並びにアポトーシス促進性BH3のみのタンパク質(BIK、BAD、BID、BIM、BMF、HRK、NOXA及びPUMA)からなるカスパーゼ活性化の重要な制御因子のクラス、BCL-2ファミリーによって主に制御されている(例えば、Coryら、Nature Reviews Cancer 2:647~56 (2002); Coryら、Cancer Cell 8:5~6 (2005); Adamsら、Oncogene 26:1324~1337 (2007)を参照されたい)。BCL-2抗アポトーシス性タンパク質は、アポトーシス促進性マルチドメインタンパク質BAX及びBAKの活性化を遮断する(例えば、Adamsら、Oncogene 26:1324-37 (2007)を参照されたい)。アポトーシス制御の正確な機序な不明だが、細胞内ストレスシグナルによって開放されたBH3のみのタンパク質は、抗アポトーシス性タンパク質上のBH1-3領域によって形成された「受容体」BH3結合溝へのBH3「リガンド」を介して抗アポトーシス性BCL-2様タンパク質に結合し、それにより抗アポトーシス性タンパク質を中和すると仮定されている(例えば、Letaiら、(2002) Cancer Cell、2: 183~192; Adamsら、Oncogene、上記を参照されたい)。次にBAX及びBAKは、ミトコンドリアの膜中でオリゴマーを形成でき、膜透過化、チトクロムCの放出、カスパーゼ活性化及び最終的にはアポトーシスをもたらす(例えば、Adamsら、Oncogene、上記を参照されたい)。
本明細書において使用される場合、種々の実施形態では、本明細書に記載の薬剤によって阻害されるBCL-2ファミリーメンバーは、生存促進性(抗アポトーシス性)ファミリーメンバーである。本明細書に記載の方法において使用される老化細胞除去剤は、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質、BCL-xL(本明細書及び当技術分野においてBcl-xL、BCL-XL、Bcl-xl又はBcl-XLとも記載される)の1つ又は複数の機能を阻害する。ある特定の実施形態ではBCL-xL機能を阻害することに加えて、阻害剤は、BCL-2の1つ又は複数の機能とも相互作用する及び/又は阻害する(例えば、BCL-xL/BCL-2阻害剤)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用される老化細胞除去剤は、それぞれBCL-xL及びBCL-wの阻害剤(すなわち、BCL-xL/BCL-w阻害剤)として分類される。ある特定の実施形態では、BCL-xLを阻害する、本明細書に記載の方法において使用される老化細胞除去剤は、BCL-2(すなわち、BCL-2タンパク質)及びBCL-w(すなわち、BCL-xL/BCL-2/BCL-w阻害剤)のそれぞれとも相互作用し、1つ又は複数の機能を阻害し、それにより老化細胞の選択的死をもたらす。ある特定の実施形態では、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質阻害剤は、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバー(少なくともBCL-xLを含む)と、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーが阻害剤の非存在下で結合する1つ又は複数のリガンド若しくは受容体との間の相互作用を干渉する。ある特定の実施形態では、阻害剤が少なくともBCL-xLを阻害する、1つ又は複数のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーの阻害剤は、BCL-xL、BCL-2、BCL-wの1つ又は複数だけに特異的に結合し、Mcl-1及びBCL2A1等の他のBcl-2抗アポトーシス性Bcl-2ファミリーメンバーにしない。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用される老化細胞除去剤は、BCL-xL選択的阻害剤であり、BCL-xLの1つ又は複数の機能を阻害する。BCL-xL選択的阻害剤であるそのような老化細胞除去剤は、生物学的に又は統計的に有意な様式で1つ又は複数の他のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質の機能を阻害せず、BCL-xLは、本明細書及び当技術分野においてBCL2L1、BCL2-様1、BCLX、BCL2L、BCLxL又はBCL-Xと称される場合もある。一実施形態では、BCL-xL選択的阻害剤は、BCL-xLの1つ又は複数の機能を変更(例えば、低減、阻害、抑制)するが、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリー中の他のタンパク質(例えば、BCL-2又はBCL-w)の1つ又は複数の機能を顕著に阻害しない。ある特定の実施形態では、BCL-xL選択的阻害剤は、BCL-xLと、BCL-xLが阻害剤の非存在下で結合する1つ又は複数のリガンド又は受容体との間の相互作用を干渉する。ある特定の詳細な実施形態では、BCL-xLの機能1つ又は複数を阻害する老化細胞除去剤は、ヒトBCL-xLに選択的に結合するが、老化細胞の選択的殺滅に影響を与えるBCL-2ファミリー中の他のタンパク質にはしない。
BCL-xLは、BCL-2タンパク質ファミリーの抗アポトーシス性メンバーである。BCL-xLは、オートファジーとアポトーシスとの間のクロストークにおいても重要な役割を演じている(例えば、Zhouら、(2011) FEBS J. 278: 403~413を参照されたい)。BCL-xLは、ミトコンドリアのATP産生、Ca2+流及びタンパク質アセチル化を含む生体エネルギー代謝において、並びに有糸分裂、血小板凝集及びシナプス効率(synaptic efficiency)等のいくつかの他の細胞性及び生物的工程において役割を演じているとも考えられている(例えば、Michelsら、(2013) Int. J. Cell Biol.、Vol. 2013、論文番号705294を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のBCL-xL阻害剤は、BCL-xLと、任意の1つ又は複数の前述のBH3のみのタンパク質との間の相互作用を壊すことができ、細胞においてアポトーシスを促進する。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用されるBCL-xL阻害剤は、選択的阻害剤であり、他の抗アポトーシス性BCL2ファミリーメンバー(例えば、BCL-2、MCL-1、BCL-w、BCL-b及びBFL-1/A1)を超えてBCL-xLに優先的に結合することを意味する。ある特定の実施形態では、BCL-XL選択的阻害剤は、BCL-2タンパク質又は核酸を超えて、少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、20000倍又は30000倍の選択性をBCL-XLタンパク質又は核酸への結合に示す。ある特定の実施形態では、BCL-xL選択的阻害剤は、MCL-1タンパク質又は核酸を超えて、少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、20000倍又は30000倍の選択性をBCL-xLタンパク質又は核酸への結合に示す。ある特定の実施形態では、BCL-xL選択的阻害剤は、BCL-wタンパク質又は核酸を超えて、少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、20000倍又は30000倍の選択性をBCL-xLタンパク質又は核酸への結合に示す。ある特定の実施形態では、BCL-xL選択的阻害剤は、BCL-Bタンパク質又は核酸を超えて、少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、20000倍又は30000倍の選択性をBCL-XLタンパク質又は核酸への結合に示す。ある特定の実施形態では、BCL-XL選択的阻害剤は、A1タンパク質又は核酸を超えて、少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、20000倍又は30000倍の選択性をBCL-xLタンパク質又は核酸への結合に示す。本明細書に記載のとおり、ある特定の実施形態では、阻害剤が少なくともBCL-xLを阻害する(例えば、BCL-xL選択的阻害剤)1つ又は複数のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーの阻害剤は、MCL-1へ又はBCL2A1への検出可能な結合を有さない。
BCL-2ファミリータンパク質に対するBCL-xL阻害剤の結合親和性を測定するための方法は、当技術分野において周知である。例示の方法により、BCL-xL阻害剤の結合親和性は、蛍光BAK BH3ドメインペプチドが、これまでに記載されたとおり(例えば、米国特許公開第2014/0005190号; Parkら、(2013) Cancer Res. 73: 5485~5496; Wangら、(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、97: 7124~7129; Zhangら、(2002) Anal. Biochem. 307: 70~75; Brunckoら、(2007) J. Med. Chem. 50: 641~662を参照されたい)、濃度を増加させたBCL-XL阻害剤の存在下又は非存在下で、BCL-xLタンパク質(又は他のBCL-2ファミリータンパク質)とインキュベートされる競合蛍光偏光アッセイを使用して決定され得る。阻害パーセントは、方程式: 1-[(十分に陰性の対照のmP値)/範囲)]×100%によって決定され得る。阻害係数(Ki)値は、Brunckoら、(2007) J. Med. Chem. 50: 641~662 (Wang (1995) FEBS Lett. 360: 111~114も参照されたい)に記載のとおり式: Ki=[I]50/([L]50/Kd+[P]0/Kd+1)によって決定される。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用される老化細胞除去剤(例えば、BCL-xL選択的阻害剤、BCL-xL/BCL-2阻害剤、BCL-xL/BCL-2/BCL-w阻害剤、BCL-xL/BCL-w阻害剤)。
ある特定の実施形態では、BCL-xL阻害剤は、ベンゾチアゾール-ヒドラゾン化合物、アミノピリジン化合物、ベンズイミダゾール化合物、テトラヒドロキノリン化合物、フェノキシル化合物、及び/又は関連類似体である低分子化合物を含む。
一実施形態では、本明細書に記載の方法のために有用なBCL-xL選択的阻害剤は、ベンゾチアゾール-ヒドラゾン阻害剤を含む。ベンゾチアゾール-ヒドラゾン化合物として、これだけに限らないが、WEHI-539(5-[3-[4-(アミノメチル)フェノキシ]プロピル]-2-[(8E)-8-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルヒドラジニリデン)-6,7-ジヒドロ-5H-ナフタレン-2-イル]-1,3-チアゾール-4-カルボン酸)、BCL-xLを選択的に標的化するBH3ペプチド模倣物(例えば、Lesseneら、(2103) Nat. Chem. Biol.、9: 390~397を参照されたい)が挙げられる。
ある特定の実施形態では、BCL-xL選択的阻害剤は、アミノピリジン化合物を含む。選択的BCL-xL阻害剤として使用され得る1つの例示的だが非限定的なアミノピリジン化合物は、BXI-61(3-[(9-アミノ-7-エトキシアクリジン-3-イル)ジアゼニル]ピリジン-2,6-ジアミン)を含む(例えば、Parkら、(2013) Cancer Res. 73: 5485~5496及び米国特許公開第2009/0118135号を参照されたい)。
更に他の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得るBCL-xL選択的阻害剤は、ベンズイミダゾール化合物である。選択的BCL-XL阻害剤として使用され得るベンズイミダゾール化合物の一例は、BXI-72(2'-(4-ヒドロキシフェニル)-5-(4-メチル-1-ピペラジニル)-2,5'-ビ(1H-ベンズイミダゾール-)トリヒドロクロリド)である(例えばParkら、(2013)、上記を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、選択的に老化細胞を殺滅するためにBXI-72を利用する。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用されるBCL-xL選択的阻害剤は、テトラヒドロキノリン化合物を含む(例えば、米国特許公開第2014/0005190号を参照されたい)。選択的BCL-xL阻害剤として使用され得るテトラヒドロキノリン化合物の例は、それに記載される化合物について参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2014/0005190号に記載され、その表1に示されている。それに記載される他の阻害剤は、BCL-xLに加えて他のBCL-2ファミリーメンバー(例えば、BCL-2)を阻害する場合がある。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用されるBCL-xL選択的阻害剤は、フェノキシル化合物を含む。選択的BCL-xL阻害剤として使用され得るフェノキシル化合物の非限定的一例は、2[[3-(2,3-ジクロロフェノキシ)プロピル]アミノ]エタノール(2,3-DCPE)である(例えば、Wuら、(2004) Cancer Res. 64: 1110~1113を参照されたい)。
更に別の実施形態では、少なくともBCL-xLを阻害し、本明細書に記載の方法において使用され得るBcl-2抗アポトーシス性ファミリーメンバーの阻害剤は、米国特許第8,232,273号に記載されている。例示的一実施形態では、阻害剤は、A-1155463と称されるBCL-xL選択的阻害剤を含む(例えば、Taoら、(2014) ACS Med. Chem. Lett. 5(10): 1088~1093を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において有用な老化細胞除去剤は、BCL-xLに加えて他のBCL-2抗アポトーシス性ファミリーメンバーを阻害する。例えば、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、BCL-xL/BCL-2阻害剤、及び/又はBCL-xL/BCL-2/BCL-w阻害剤、及び/又はBCL-xL/BCL-w阻害剤並びにこれらの類似体の使用を含む。ある特定の実施形態では、阻害剤は、BCL-2及びBCL-xLを阻害する化合物を含み、阻害剤は、BCL-wも阻害する。これらの阻害剤の例として、これだけに限らないが、ABT-263(4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチルシクロヘキセン-1-イル]メチル]ピペラジン-1- -イル]-N-[4-[[(2R)-4-モルホリン-4-イル-1-フェニルスルファニルブタン-2-イル]アミノ]-3-(トリ-フルオロメチルスルホニル)フェニル]スルホニルベンズアミド又はIUPAC、(R)-4-(4-((4'-クロロ-4,4-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル-)メチル)ピペラジン-1-イル-N-((4-((4-モルホリノ-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニル)スルホニル)ベンズアミド(例えば、Parkら、(2008) J. Med. Chem. 51: 6902-6915; Tseら、(2008) Cancer Res. 68: 3421-3428; PCT公開番号WO2009/155386号;米国特許第7,390,799号;第7,709,467号;第7,906,505号;第8,624,027号等を参照されたい)及びABT-737(4-[4-[(4'-クロロ[1,1'-ビフェニル]-2-イル)メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)- -3-(ジメチルアミノ)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニル]ベンズアミド、ベンズアミド、4-[4-[(4'-クロロ[1,1'-ビフェニル]-2-イル)メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[4-[[(1R)-3-(ジメチルアミノ)-1-[(フェニルチオ)メチル]プロピル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニル]-又は4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)フェニル]メチル]ピペラジン-1-イル]-N-[4-[[(2R)- -4-(ジメチルアミノ)-1-フェニルスルファニルブタン-2-イル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニルベンズアミド)(例えば、Oltersdorfら、(2005) Nature、435: 677~681;米国特許第7,973,161号及び第7,642,260号を参照されたい)が挙げられる。ある特定の実施形態では、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質阻害剤は、キナゾリンスルホンアミド化合物である(例えば、Sleebsら、(2011) J. Med. Chem. 54:1914~1926を参照されたい)。ある特定の実施形態では、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質阻害剤は、Zhouら、(2012) J. Med. Chem. 55: 4664~4682(例えば、化合物21(R)-4-(4-クロロフェニル)-3-(3-(4-(4-(4-((4-(ジメチルアミノ)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-5-エチル-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボン酸を参照されたい)、及びZhouら、(2012) J. Med. Chem. 55: 6149~6161(例えば、化合物14(R)-5-(4-クロロフェニル)-4-(3-(4-(4-(4-((4-(ジメチルアミノ)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニルスルホンアミドフェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-1-エチル-2-メチル-1H-ピロール-3-カルボン酸;化合物15(R)-5-(4-クロロフェニル)-4-(3-(4-(4-(4-(4-(ジメチルアミノ)-1-(フェニルチオ)ブタン-2-イル)アミノ)-3-ニトロフェニルスルホンアミド)フェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-1-イソプロピル-2-メチル-1H-ピロール-3-カルボン酸を参照されたい)に記載される低分子化合物である。ある特定の実施形態では、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質阻害剤は、BM-1074(例えば、Aguilarら、(2013) J. Med. Chem. 56: 3048~3067を参照されたい);BM-957(例えば、Chenら、(2012) J. Med. Chem. 55: 8502~8514を参照されたい); BM-1197(例えば、Baiら、(2014) PLoS One、9(6):e99404;米国特許公開第2014/0199234号を参照されたい); N-アシルスホンアミド(acylsufonamide)化合物(例えば、PCT公開番号WO2002/024636、WO2005/049593及びWO2005/049594並びに米国特許第7,767,684号及び第7,906,505号を参照されたい)等のBCL-2/BCL-xL阻害剤である。ある特定の実施形態では、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質阻害剤は、低分子大環状化合物である(例えば、PCT公開番号WO2006/127364及び米国特許第7,777,076号を参照されたい)。ある特定の実施形態では、BCL-2抗アポトーシス性タンパク質阻害剤は、イソオキサゾリジン化合物を含む(例えば、PCT公開番号WO2008/060569;米国特許第7,851,637号及び第7,842,815号を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、ABT-263又はABT-737等のBcl-2、Bcl-w及びBcl-xLの阻害剤である化合物を含む。ある特定の具体的な実施形態では、老化細胞除去剤はABT-263の構造を示す下に例示される化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体又はプロドラッグを含む。ABT-263は、当技術分野においてNavitoclaxとしても周知である。
Aktキナーゼ阻害剤
ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、Aktキナーゼ阻害剤を含む。一部の実施形態では、老化細胞除去剤は、他のタンパク質キナーゼと比較してAkt1、Akt2及び/又はAkt3を選択的に阻害する化合物を含む。
Akt阻害剤(Aktキナーゼ阻害剤又はAKTキナーゼ阻害剤としても周知)は、それらの作用の機序に基づいて6つの主なクラスに分類され得る(例えば、Bhutaniら、(2013) Infectious Agents and Cancer、8: 49を参照されたい)。Aktは、当技術分野においてタンパク質キナーゼB(PKB)とも称される。第1のクラスは、AktのATP競合的阻害剤を含有し、Akt2及びAkt1を阻害するCCT128930及びGDC-0068等の化合物を含む。このカテゴリーは、GSK2110183(アフレセルチブ)、GSK690693及びAT7867等のpan-Aktキナーゼ阻害剤も含む。第2のクラスは、PI3KによるPIP3の生成を阻害することによって作用する脂質ベースAkt阻害剤を含有する。この機序は、Calbiochem Akt阻害剤I、II及びIII又はPX-866等の他のPI3阻害剤等のホスファチジルイノシトール類似体によって使用される。このカテゴリーは、ペリフォシン(KRX-0401)(Aeterna Zentaris社/Keryx社)等の化合物も含む。第3のクラスは、偽基質阻害剤と呼ばれる化合物の群を含有する。これらは、AKTide-2 T及びFOXO3ハイブリッド等の化合物を含む。第4のクラスは、AKTキナーゼドメインのアロステリック阻害剤からなり、MK-2206(8-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-2H-[1,2,4]トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3-オン;ジヒドロクロリド)(Merck & Co.社)等の化合物を含む(例えば、これらの記載される化合物について参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,576,209号を参照されたい)。第5のクラスは、抗体からなり、GST-抗Akt1-MTS等の分子を含む。最後のクラスは、AktのPHドメインと相互作用する化合物を含み、トリシリビン(Triciribine)及びPX-316を含む。AKT阻害剤として作用する当技術分野において記載される他の化合物として、例えば、GSK-2141795(GlaxoSmithKline社)、VQD-002、ミルテホシン、AZD5363、GDC-0068及びAPI-1が挙げられる。
例示的だが非限定的な実施形態では、老化細胞除去剤は、下に示す構造を有するAktキナーゼ阻害剤(本明細書及び当技術分野においてMK-2206とも称される)、8-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-2H-[1,2,4]トリアゾオロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3-オン)又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体又はプロドラッグである化合物である。ジヒドロクロリド塩は示される。
老化細胞除去剤の組合せ
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの老化細胞除去剤は、少なくとも1つの他の老化細胞除去剤と共に投与されてよい。ある特定の実施形態では、2つ以上の老化細胞除去剤は、選択的に老化細胞を殺滅するために相加的に又は相乗的に作用する。詳細な実施形態では、本明細書に記載の方法は、老化細胞において細胞生存シグナル伝達経路又は炎症性経路のいずれかを変更する、又は細胞生存シグナル伝達経路及び炎症性経路の両方を変更する老化細胞除去剤を利用する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、少なくとも1つの老化細胞除去剤と第2の老化細胞除去剤とがそれぞれ異なり、老化細胞における生存シグナル伝達経路及び炎症性経路のいずれか1つ又は両方を独立して変更する、少なくとも2つの老化細胞除去剤の使用を含む。便宜上、2つ以上老化細胞除去剤が、組合せで使用されるとして本明細書に記載される場合、一方の老化細胞除去剤は第1の老化細胞除去剤と称される場合があり、別の老化細胞除去剤は、第2の老化細胞除去剤と称される場合がある、等。他の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、少なくとも3つの老化細胞除去剤(第1の老化細胞除去剤、第2の老化細胞除去剤及び第3の老化細胞除去剤)を投与することを含む。形容詞、第1の、第2の、第3の等は、本文脈において便宜上使用されるだけであって、他に明確な記載がない限り、老化細胞除去活性又は他のパラメーターの順序又は投与、優先度又はレベルを記載するとして解釈されない。詳細な実施形態では、2つ以上の老化細胞除去剤が本明細書に記載の方法において使用される場合、各老化細胞除去剤は低分子である。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、少なくとも3つの老化細胞除去剤(第1の老化細胞除去剤、第2の老化細胞除去剤及び第3の老化細胞除去剤)を投与することを含む。ある特定の実施形態では、少なくとも2つの老化細胞除去剤の使用は、各老化細胞除去剤単独の使用と比較して、老化細胞の殺滅の顕著な増加を生じる。他の詳細な実施形態では、少なくとも2つの老化細胞除去剤の使用は、各老化細胞除去剤単独の使用と比較して、老化細胞の顕著な殺滅を生じ、その効果は、相加的又は相乗的である場合がある。ある特定の実施形態では、少なくとも2つの老化細胞除去剤は、それぞれ異なり、(1)1つ又は複数のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーの阻害剤であって、阻害剤は、少なくともBCL-xLを阻害する;(例えば、Bcl-2/Bcl-xL/Bcl-w阻害剤、Bcl-2/Bcl-xL阻害剤、選択的Bcl-xL阻害剤又はBcl-xL/Bcl-w阻害剤); Aktキナーゼ特異的阻害剤; MDM2阻害剤から選択される。詳細な一実施形態では、対象に投与される少なくとも1つの老化細胞除去剤が1つ又は複数のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーの阻害剤であり、阻害剤が少なくともBCL-XLを阻害する(例えば、Bcl-2/Bcl-xL/Bcl-w阻害剤、Bcl-2/Bcl-xL阻害剤、選択的Bcl-xL阻害剤又はBcl-xL/Bcl-w阻害剤)場合、第2の老化細胞除去剤が投与される。他のある特定の実施形態では、2つの老化細胞除去剤の内の1つは、1つ又は複数のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーの阻害剤であり、阻害剤は少なくともBCL-xLを阻害し、第2の老化細胞除去剤はMDM2阻害剤である。更にまたより詳細な実施形態では、対象に投与される少なくとも1つの老化細胞除去剤が選択的Bcl-xL阻害剤である場合、第2の老化細胞除去剤が投与される。更により詳細な実施形態では、対象に投与される少なくとも1つの老化細胞除去剤がMDM2阻害剤である場合、第2の老化細胞除去剤が投与される。更により詳細な実施形態では、対象に投与される少なくとも1つの老化細胞除去剤がAktキナーゼ阻害剤である場合、第2の老化細胞除去剤が投与される。更により詳細な実施形態では、阻害剤が少なくともBCL-xLを阻害する、1つ又は複数のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーの阻害剤は、単独又は、1つ又は複数のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーの阻害剤でもある別の老化細胞除去剤との組合せで使用され、阻害剤は少なくともBCL-xLを阻害する又は本明細書に記載の異なる老化細胞除去剤である。詳細な実施形態では、阻害剤が少なくともBCL-xLを阻害する、1つ又は複数のBCL-2抗アポトーシス性タンパク質ファミリーメンバーの阻害剤は、Aktキナーゼの阻害剤と組み合わされる。非限定的例の方法によって、Bcl-2/Bcl-xL/Bcl-w阻害剤ABT-263は、Aktキナーゼ阻害剤(例えば、MK2206)との組合せで使用され得る。
更に他の詳細な実施形態では、老化細胞除去剤であるMDM2阻害剤は、本明細書に記載の方法において少なくとも1つの追加的老化細胞除去剤との組合せで使用される。追加的老化細胞除去剤(便宜上第2の老化細胞除去剤と称される場合がある)は、別のMDM2阻害剤であってよく、又はMDM2阻害剤ではない老化細胞除去剤であってもよい。一実施形態では、少なくともBcl-xLを阻害するBcl-2抗アポトーシス性ファミリーメンバーの阻害剤は、AKT阻害剤との組合せで使用される。更に具体的な実施形態では、Bcl-2抗アポトーシス性ファミリーメンバーの阻害剤は、ABT-263、ABT-737又はWEHI-539であり、AKT阻害剤はMK-2206である。
他のある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、少なくとも3つの老化細胞除去剤(第1の老化細胞除去剤、第2の老化細胞除去剤及び第3の老化細胞除去剤)を投与することを含む。
mTOR、NFκB及びPI3-k経路阻害剤
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において(例えば、老化細胞を選択的に殺滅するために)本明細書に記載の老化細胞除去剤と共に使用され得る化合物は、mTOR、NFκB及びPI3-k経路の1つ又は複数を阻害する化合物を含み得る。したがって、例えば、本明細書に記載の方法では、老化細胞除去剤の投与(例えば、老化細胞を選択的に殺滅するため)は、少なくとも1つの老化細胞除去剤並びに、mTOR、NFκB及びPI3-k経路の1つ又は複数の阻害剤を問題の対象に投与することを含む。これらの経路の阻害剤は、当技術分野において周知である。
mTOR阻害剤の例として、これだけに限らないが、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、32-デオキソラパマイシン、ゾタロリムス、PP242、INK128、PP30、Torinl、Ku-0063794、WAY-600、WYE-687及びWYE-354が挙げられる。NFカッパB経路の阻害剤として、例えば、TPCA-1(IKK2阻害剤)を通じたNFカッパB活性抑止;BAY 11-7082(IKK1及びIKK2にあまり選択性でないIKK阻害剤);並びにMLN4924(NEDD8活性化酵素(NAE)-阻害剤)並びにMG132が挙げられる。
mTOR及び/又はAKT経路も阻害できるPI3-kの阻害剤の例として、これだけに限らないが、ペリフォシン(KRX-0401)、イデラリシブ、PX-866、IPI-145、BAY 80-6946、BEZ235、RP6530、TGR 1201、SF1126、INK1117、GDC-0941、BKM120、XL147(SAR245408)、XL765(SAR245409)、パロミド(Palomid) 529、GSK1059615、GSK690693、ZSTK474、PWT33597、IC87114、TG100-115、CAL263、RP6503、PI-103、GNE-477、CUDC-907、AEZS-136、BYL719、BKM120、GDC-0980、GDC-0032及びMK2206が挙げられる。
低分子有機分子-塩及び一般的合成手順
老化細胞除去剤として本明細書において検討される種々の低分子有機分子として、老化細胞除去剤の生理学的に許容される塩(すなわち、薬学的に許容される塩)、水和物、溶媒和化合物、多形、代謝物及びプロドラッグが挙げられる。本明細書に開示される化合物の代謝物は、化合物の宿主への投与及び宿主由来の組織試料の分析によって、又はin vitroでの肝細胞との化合物のインキュベーション及び生じた化合物の分析によってのいずれかで同定され得る。両方の方法は、当技術分野において十分周知である。
ある特定の実施形態では、低分子有機分子を含む老化細胞除去剤は、遊離酸又は遊離塩基として一般に使用され得る。代替的に、化合物は、酸又は塩基付加塩の形態で使用され得る。遊離塩基アミノ化合物の酸付加塩は、当技術分野において十分周知の方法によって調製されてよく、有機及び無機酸から形成されてよい。好適な有機酸として、これだけに限らないが、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、ケイ皮酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、グリコール酸、グルタミン酸、マロン酸及びベンゼンスルホン酸が挙げられる。好適な無機酸として、これだけに限らないが塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸及び硝酸が挙げられる。本明細書に記載の化合物の遊離酸化合物の塩基付加塩も当技術分野において十分周知の方法によって調製されてよく、有機及び無機塩基から形成されてよい。付加塩として、対イオンがカチオンであるものが挙げられる。好適な無機塩基として、(これだけに限らないが)ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等の水酸化物又は他の塩、及び置換アンモニウム塩(例えば、ジベンジルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム)等の有機塩基が挙げられる。更に塩は、アジペート、アルギネート、アスコルベート、アスパルテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビスルフェート、ボレート、ブチレート、カンフォレート、カンファースルホネート、サイトレート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルサルフェート、エタンスルホネート、ホルメート、フマレート、グルコヘプトネート、グリセロホスフェート、グルコネート、ヘミサルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ヒドロアイオダイト、2-ヒドロキシ-エタンスルホネート、ラクトビオネート、ラクテート、ラウレート、ラウリルサルフェート、マレート、マレエート、マロネート、メタンスルホネート、2-ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ナイトレート、オレエート、オキサレート、パルミテート、パモエート、ペクチネート、パーサルフェート、3-フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、ステアレート、サクシネート、サルフェート、タートレート、チオシアネート、p-トルエンスルホネート、ウンデカノエート及びバレレート等の対イオンがアニオンであるものを含む。したがって、用語、本明細書に記載の化合物の「薬学的に許容される塩」は、任意の及びすべての薬学的に好適な塩形態を包含することが意図される。
化合物は、アニオン種として時に記される場合がある。当業者は、化合物が等モル比のカチオンと共に存在できることを認識する。例えば、本明細書に記載の化合物は、完全にプロトン化された形態で、又はナトリウム、カリウム、アンモニウム若しくは上に記載の任意の無機塩基との組合せ等の塩の形態で存在できる。1つより多いアニオン種が記される場合、各アニオン種は、プロトン化種として又は塩種として独立して存在できる。一部の具体的な実施形態では、本明細書に記載の化合物は、ナトリウム塩として存在する。他の具体的な実施形態では、本明細書に記載の化合物は、カリウム塩として存在する。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の任意の化合物の一部の結晶性形態は、本開示によって同様に含まれ、検討される多形として存在する場合がある。加えて、一部の化合物は、水又は他の有機溶媒を含む溶媒和化合物を形成する場合がある。結晶化は、開示される化合物の溶媒和化合物をしばしば産生する。本明細書において使用される、用語「溶媒和化合物」は、任意の開示される化合物の1つ又は複数の分子を溶媒の1つ又は複数の分子と共に含む凝集物を指す。溶媒は、水であってよく、その場合溶媒和化合物は、水和物であってよい。代替的に溶媒は、有機溶媒であってよい。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載の老化細胞除去剤は、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物等を含む水和物及び対応する溶媒和化合物形態として存在してよい。ある特定の実施形態では、化合物は、真の溶媒和化合物である場合がある、一方で他の場合では化合物は、不定水を単に保持している場合がある、又は水といくらかの不定溶媒の混合物である場合がある。
一般に、本明細書に記載の方法において使用される化合物は、商業的に入手できる化学物質から、及び/又は化学文献に記載されている化合物から出発して、当業者に周知の有機合成技術により作製され得る。特定の及び類似的反応物は、大部分の公共及び大学の図書館において並びにオンラインデータベースを通じて利用可能であるAmerican Chemical SocietyのChemical Abstract Serviceによって作製された周知の化学物質のインデックスを通じて確認することもできる(さらなる詳細のためにAmerican Chemical Society、Washington、D.C.に連絡を取ることができる)。周知であるが、カタログで商業的に入手できない化学物質は、カスタム化学合成企業によって調製されてよく、多数の標準的な化学物質供給企業(例えば、上に列挙されている社)は、カスタム合成サービスを提供している。本開示の医薬用塩の調製及び選択のための参考文献は、P. H. Stahl及びC. G. Wermuth「Handbook of Pharmaceutical Salts」、Verlag Helvetica Chimica Acta、Zurich、2002である。当業者に周知の方法は、種々の参考図書及びデータベースを通じて確認できる。好適な参考図書及び専門書は、本明細書に記載の化合物の調製において有用な反応物の合成を詳述している、又は調製を記載している論文を参照している。
ポリペプチド、抗体及び核酸
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用される老化細胞除去剤は、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗原結合断片、ペプチボディ、組換えウイルスベクター又は核酸を含み得る。ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA又はペプチドを含む。例えば、ポリペプチド、抗体、核酸等の老化細胞除去剤として、例えば、MDM2阻害剤、BCL-2ファミリー阻害剤又はAktキナーゼ阻害剤が挙げられる。他の実施形態では、ポリペプチド、ペプチド、本明細書に記載の低分子老化細胞除去剤のリガンド又は標的タンパク質に特異的に結合する抗体(その抗原結合断片を含む)は、低分子老化細胞除去剤を特徴付ける又はその使用をモニタリングするためのアッセイ及び方法において使用され得る。
老化細胞である又は疾患微小環境中の細胞である細胞の標的タンパク質(例えば、Bcl-xL、Bcl-2、Bcl-w、MDM2、Akt)をコードするmRNAの部分に、特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、加齢、生物学的に損傷する(すなわち、細胞損傷)医学療法又は環境からの傷害によって、細胞に老化を誘発できる。他の実施形態では、標的タンパク質は、リガンド又は、細胞生存経路又は炎症性経路又はアポトーシス経路の下流又は上流のいずれかのタンパク質であってよい。ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドは、標的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的であってよく(例えば、低分子干渉核酸、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム又はペプチド核酸)、遺伝子及び/又はタンパク質発現を変更するために使用され得る。標的ポリペプチドをコードする核酸分子に特異的に結合する又はハイブリダイズするこれらのポリヌクレオチドは、当技術分野において入手可能なヌクレオチド配列を使用して調製され得る。別の実施形態では、配列特異的でないアプタマー等の核酸分子も遺伝子及び/又はタンパク質発現を変更するために使用され得る。
アンチセンスポリヌクレオチドは、mRNA又はDNA等の核酸に配列特異的様式で結合する。アンチセンス薬剤としての使用のためのオリゴヌクレオチド及びリボザイムの同定、並びに標的化送達のための標的遺伝子をコードしているDNAの同定は、当技術分野において十分周知の方法を含む。例えば、そのようなオリゴヌクレオチドの望ましい特性、長さ及び他の特徴は、十分周知である。アンチセンス技術は、ポリメラーゼ、転写因子又は他の制御分子との結合を干渉することを通じて遺伝子発現を調節するために使用され得る(例えば、Geeら、In Huber and Carr、Molecular and Immunologic Approaches、Futura Publishing Co.(Mt. Kisco、NY; 1994)を参照されたい)。
低分子鎖干渉RNAは、目的の標的ポリペプチドをコードしている遺伝子の発現を調節(減少又は阻害)するために使用され得る。低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)及び低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子等の低分子核酸分子は、標的タンパク質の発現を調節するために本明細書に記載の方法により使用され得る。siRNAポリヌクレオチドは、好ましくは2本鎖RNA(dsRNA)を含むが、1本鎖RNAを含む場合もある(例えば、Martinezら、(2002) Cell 110: 563~574を参照されたい)。siRNAポリヌクレオチドは、他の天然に存在する、組換え又は合成1本鎖若しくは2本鎖ポリマーのヌクレオチド(リボヌクレオチド若しくはデオキシリボ核酸又は両方の組合せ)並びに/又は本明細書で提供される並びに当業者に周知及び使用されるヌクレオチド類似物を含んでよい。
用語「siRNA」は、他に記さない限り、2本鎖干渉RNAを指す。典型的には、siRNAは、各鎖が約19から約28ヌクレオチドを有する(すなわち、約19、20、21、22、23、24、25、26、27又は28ヌクレオチド)、2本のヌクレオチド鎖を含む2本鎖核酸分子である。ある特定の実施形態では、各鎖は19、20、21、22又は23ヌクレオチドである。他の詳細な実施形態では、siRNAは、各鎖が約15、16、17又は18ヌクレオチドを有する、2本のヌクレオチド鎖を含む。他のある特定の実施形態では、2本鎖siRNAの内の1本の鎖は、少なくとも2ヌクレオチド長く、例えば、1本の鎖は、一方の末端、通常3'末端に2塩基オーバーハング(TT等)を有する場合がある。
低分子ヘアピン干渉RNA分子は、ステムループ又はヘアピン構造(例えば、shRNA)内に干渉RNAのセンス及びアンチセンス鎖の両方を含む。shRNAは、センス干渉RNA鎖をコードしているDNAオリゴヌクレオチドが逆相補性アンチセンス干渉RNA鎖をコードしているDNAオリゴヌクレオチドに短いスペーサーによって連結されているDNAベクターから発現されてよい。必要に応じて、3'末端T及び制限部位を形成するヌクレオチドが加えられてもよい。得られたRNA転写物は、ステムループ構造を形成するようにそれ自体の上に折り返されてよい。
siRNA分子に加えて、他の干渉RNA及びRNA様分子は、RISCと相互作用でき、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、1本鎖siRNA、マイクロRNA(miRNA)及びダイサー基質27塩基長二重鎖等の遺伝子発現を発現抑制できる。そのようなRNA様分子は、1つ又は複数の化学的に修飾されたヌクレオチド、1つ若しくは複数の非ヌクレオチド、1つ若しくは複数のデオキシリボ核酸及び/又は1つ若しくは複数の非リン酸ジエステル連結を含有する場合がある。RISCと相互作用でき、遺伝子発現におけるRISC関連変化に関与できるRNA又はRNA様分子は、本明細書において「干渉RNA」又は「干渉RNA分子」と称される場合がある。1本鎖干渉RNAは、ある特定の場合では、mRNA発現抑制に影響を与えるが、2本鎖RNAより効率的でない。
当業者は、siRNA、miRNA、shRNA等のRNA分子が、細胞中に存在する場合がある標的核酸に結合する能力を保持する一方で、ヌクレアーゼ分解に対する安定性の増加を付与するように化学的に修飾され得ることも認識する。RNAは、修飾RNAが目的の標的配列に結合し、酵素分解に抵抗する限り、分子の任意の位置で修飾されてよい。siRNA中の修飾は、ヌクレオチド塩基、リボース又はリン酸においてであってよい。例示の方法によって、リボースのT位置は、修飾されてよく、その修飾は、当技術分野において日常的に実行される多数のさまざまな方法のいずれか1つを使用して達成され得る。RNAは、フッ化等のハロゲン化物の付加によって化学的に修飾され得る。RNA分子を修飾するために使用されている他の化学成分として、メチル、メトキシエチル及びプロピル基が挙げられる(例えば、米国特許第8,675,704号を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド(例えば、shRNAを含む)は、目的のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドが組み込まれた組換えベクターによって送達され得る。他の実施形態では、組換えウイルスベクターは、Bcl-xL、Bcl-2、Bcl-w、MDM2及びAkt等の本明細書に記載のタンパク質を含む、細胞生存経路又は炎症性経路中のタンパク質を阻害する抗体、抗原結合断片、ポリペプチド又はペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が、コード配列が、1つ又は複数の制御調節配列にポリペプチド、抗体、抗原結合断片又はペプチドの発現を駆動するように作動可能に連結されるように挿入される、組換え発現ベクターであってよい。組換えベクター又は組換え発現ベクターは、ウイルス組換えベクター又はウイルス組換え発現ベクターであってよい。例示的ウイルスベクターとして、非限定的に、レンチウイルスベクターゲノム、ポックスウイルスベクターゲノム、ワクチニアウイルスベクターゲノム、アデノウイルスベクターゲノム、アデノウイルス随伴ウイルスベクターゲノム、ヘルペスウイルスベクターゲノム及びアルファウイルスベクターゲノムが挙げられる。ウイルスベクターは、生、弱毒化、複製条件付き(replication conditional)又は複製欠損であってよく、典型的には、非病原性(欠損)複製可能ウイルスベクターである。そのようなウイルスベクターを設計及び産生するための手順及び技術は、当業者に十分周知であり、日常的に実行される。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得る老化細胞除去剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。非限定的例の方法によって、これまでに記載されたBCL-xL特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載の方法において使用され得る(例えば、PCT公開番号WO00/66724; Xuら、(2001) Intl. J. Cancer 94: 268~274; Olieら、(2002) J. Invest. Dermatol. 118: 505~512及びWacheckら、(2003) Br. J. Cancer、89: 1352~1357を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用され得る老化細胞除去剤は、ペプチドを含む。例示の方法によって及びある特定の実施形態では、BCL-xL選択的ペプチド阻害剤は、BH3ペプチド模倣物である。BCL-xL選択的BH3ペプチド模倣物の例として、これまでに記載されたものが挙げられる(例えば、Kutzkiら、(2002) J. Am. Chem. Soc. 124: 11838~11839; Yinら、(2004) Bioorg. Med. Chem. Lett. 22: 1375~1379; Matsumuraら、(2010) FASEB J. 7: 2201を参照されたい)。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において有用な老化細胞除去剤は、エクソヌクレアーゼEXO1をコードするポリヌクレオチド若しくはその断片又は、EXO1酵素をコードするポリヌクレオチドを含むベクター(ウイルスベクターを含む)を含まない(すなわち、EXO1酵素をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの断片又はそのようなポリヌクレオチドを含有するベクターは除外される)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において有用な老化細胞除去剤は、EXO1酵素ポリペプチド又は生物学的に活性なペプチド若しくはそのポリペプチド断片も含まない(すなわち、EXO1酵素は排除される)。ある特定の実施形態では、そのような分子は、炎症性経路又は細胞生存経路等の1つ又は両方の細胞シグナル伝達経路の阻害剤ではなく;代わりにEXO1は、キャップ形成欠損テロメアを分解する5'-3'エクソヌクレアーゼをコードする(例えば、PCT公開番号WO2006/018632を参照されたい)。
本明細書に記載の方法において有用な老化細胞除去は、抗体又は抗原結合断片であるポリペプチドを含み得る。ある特定の実施形態では、抗原結合断片は、F(ab')2、Fab、Fab'、Fv又はFdであってよく、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むペプチド又はポリペプチドも含んでよい。抗体は、標的タンパク質との相互作用を介して老化細胞によって内部移行される内部移行抗体又は抗原結合断片であってよい。
抗体のその同族抗原への結合特性は、当業者によって容易に実施され得る方法を使用して一般に決定及び評価され得る(例えば、Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory (1988)を参照されたい)。本明細書において使用される抗体は、それがポリペプチドと検出可能なレベルで反応する場合、抗原に「免疫特異的」「特異的」又は「特異的に結合する」と述べられる。抗体及びその抗原結合断片の親和性は、従来の技術、例えばScatchardら、(1949) Ann. N.Y. Acad. Sci. USA 51: 660によって記載されているものを使用して、及び表面プラズモン共鳴(SPR; BIAcore.TM.、Biosensor、Piscataway、N.J.)によって容易に決定され得る。
種々の実施形態では、抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであってよい。可変領域又は1つ若しくは複数の相補性決定領域(CDR)は、抗原結合断片又はペプチドライブラリーから同定及び単離されてよい。抗体又は抗原結合断片は、組換えで操作されてよい、及び/又は組換えで産生されてよい。抗体は、任意の免疫グロブリンクラス、例えばIgG、IgE、IgM、IgD又はIgAに属してよく、動物、例えば、家禽(例えば、ニワトリ)及び、これだけに限らないがマウス、ラット、ハムスター、ウサギ又は他のげっ歯類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ヒト又は他の霊長類が挙げられる哺乳動物から得られてよい、又は由来であってよい。ヒト対象における使用のために、抗体及び抗原結合断片は、対象による非ヒトペプチド及びポリペプチド配列への免疫原性応答を低減するために、典型的にはヒト、ヒト化又はキメラである。
種々の実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二特異性抗体又はこれらから調製された又はこれらに由来する抗原結合断片(例えば、F(ab')2、Fab、Fab'、Fv及びFd)であるモノクローナル抗体であってよい。抗原結合断片は、任意の合成又は遺伝子的に操作されたタンパク質(例えば、Haydenら、(1997) Curr. Opin. Immunol. 9: 201~212; Colomaら、(1997) Nat. Biotechnol. 15: 159~163;米国特許第5,910,573号; Holligerら、(1997) Cancer Immunol. Immunother. 45: 128~130; Drakemanら、(1997) Exp. Opin. Investig. Drugs、6: 1169~1178; Koelemijら、(1999) J. Immunother. 22: 514~524; Marvinら、(2005) Acta Pharmacol. Sin. 26:649~658; Dasら、(2005) Meth. Mol. Med. 109: 329~346; PCT公開番号PCT/US91/08694及びPCT/US91/04666を参照されたい)及びファージ又は酵母ディスプレイライブラリー由来(例えば、Scottら、(1990) Science、249: 386~390; Devlinら、(1990) Science 249: 404-406; Cwirlaら、(1997) Science、276: 1696~1699;米国特許第5,223,409号、第5,733,731号、第5,498,530号、第5,432,018号、第5,338,665号及び第5,922,545号、PCT公開番号WO96/40987及びWO98/15833を参照されたい)であってもよい。最小認識単位又はCDR(すなわち、重鎖可変領域に存在する3つのCDRのいずれか1つ若しくは複数、及び/又は軽鎖可変領域に存在する3つのCDRの1つ若しくは複数)であるペプチドは、目的の標的タンパク質に特異的に結合するペプチド配列を比較及び予測するために使用され得るコンピューターモデリング技術によって同定され得る(例えば、Bradleyら、(2005) Science 309: 1868; Schueler-Furmanら、(2005) Science 310: 638を参照されたい)。ヒト化抗体を設計するために有用な戦略は、当技術分野において記載されている(例えば、Jonesら、(1986) Nature 321: 522~525; Riechmannら、(1988) Nature、332: 323~327; Padlanら、(1995) FASEB 9: 133~139; Chothiaら、(1989) Nature、342: 377~383を参照されたい)。
老化細胞除去ウイルス
ある特定の実施形態では、老化細胞除去剤として、特異的に老化細胞を殺滅する操作された老化細胞除去ウイルスが挙げられる。そのようなウイルスは、とりわけ米国特許公開第2015/0064137 A1号に記載されている。
上に記載されている前述の老化細胞除去剤は、例示的及び非限定的である。本明細書で提供する教示を使用して、本明細書に記載の方法において有用な多数の他の老化細胞除去剤は、当業者に周知となる。
老化細胞の増加に伴う病態
上に説明されるとおり、種々の実施形態では、対象における老化細胞のレベルの上昇を同定する方法(例えば、エイコサノイド、エイコサノイド前駆体、ロイコトリエンA4(LTA4)、ロイコトリエンB4(LTB4)、PGD2及び5-HETEの1つ又は複数のレベルを決定することによる)は、老化細胞のレベルの上昇によって特徴付けられる病態の鑑別診断、及び/又は処置モダリティを同定する文脈において使用される。ある特定の実施形態では、ジホモ-15d-PGJ2は、1つ又は複数の最も重要なエイコサノイドマーカーである。ある特定の実施形態では、処置の方法は、本明細書に記載の1つ又は複数のマーカーのレベルの上昇を有するとして同定された対象に(及び老化細胞のレベルの上昇によって特徴付けられる1つ又は複数の病態の暗示によって) 1つ又は複数の老化細胞除去剤を投与することを含んで提供される。ある特定の実施形態では、方法は、老化細胞のレベルの上昇を有する対象(例えば、老化細胞のレベルの上昇によって特徴付けられる病態を有する対象)に1つ又は複数の老化細胞除去剤を投与することを含む、治療レジメンを評価するために提供される。
そのような病態(老化細胞のレベルの上昇によって特徴付けられる)として、対象における加齢性疾患及び障害を含む細胞老化に関連する、伴う又はそれによって生じる種々の疾患又は障害がとりわけ挙げられる。細胞老化関連疾患又は障害は、本明細書において老化細胞関連疾患又は障害と呼ばれる場合もある。細胞老化関連疾患及び障害として、例えば、心血管疾患及び障害、炎症性疾患及び障害、自己免疫疾患及び障害、肺疾患及び障害、眼疾患及び障害、代謝疾患及び障害、神経学的疾患及び障害(例えば、神経変性疾患及び障害)、老化によって誘発される加齢性疾患及び障害、皮膚状態、皮膚科疾患及び障害並びに移植関連疾患及び障害が挙げられる。加齢の顕著な特性は、機能が徐々に失われること又は、分子、細胞、組織及び生物的レベルで生じる変性である。加齢性変性は、筋肉減少症、粥状動脈硬化及び心不全、骨粗鬆症、肺機能不全、腎不全、神経変性(黄斑変性症、アルツハイマー病及びパーキンソン病を含む)並びにその他多数等の十分に認識されている病態を生じる。さまざまな哺乳動物種は、具体的な加齢性病態へのそれらの易罹患性において異なるが、集合的に、加齢性病態は、種特異的寿命のおよそ中間点(例えば、ヒトについては年齢50~60歳)で開始するおおよそ指数関数的な動態で一般に生じる(例えば、Campisi (2013) Annu. Rev. Physiol. 75: 685~705; Naylorら、(2013) Clin. Pharmacol. Ther. 93: 105~116を参照されたい)。
本明細書に記載の方法を使用して処置され得る、及び/又はその処置が本明細書に記載の方法によって評価され得る、及び/又は本明細書に記載の方法を使用して診断され得る老化関連状態、障害又は疾患の例として、これだけに限らないが、認知疾患(例えば、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病及び他の認知症;ハンチントン病)、心血管疾患(例えば、粥状動脈硬化、心臓拡張機能障害、大動脈瘤、狭心症、不整脈、心筋症、うっ血性心不全、環状動脈疾患、心筋梗塞、心内膜炎、高血圧、頸動脈疾患、末梢血管疾患、心臓のストレス耐性、心臓線維症)、代謝疾患及び障害(例えば、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム);運動機能疾患及び障害(例えば、パーキンソン病、運動ニューロン機能障害(MND)、ハンチントン病);脳血管性疾患;肺気腫;変形性関節症;良性前立腺肥大;がんの進行及び転移;肺疾患(例えば、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、閉塞性細気管支炎、喘息)、炎症性/自己免疫疾患及び障害(例えば、変形性関節症、湿疹、乾癬、骨粗鬆症、粘膜炎、移植関連疾患及び障害);眼科疾患又は障害(例えば、加齢性黄斑変性症、白内障、緑内障、視力喪失、老視);糖尿病性潰瘍;転移、化学療法副作用;放射線療法副作用;高活性抗レトロウイルス剤療法(HAART)の副作用;加齢性疾患及び障害(例えば、円背、腎臓機能障害、フレイル、脱毛症、難聴、筋肉疲労、皮膚状態、筋肉減少症及び椎間板ヘルニア、並びに老化によって誘発される他の加齢性疾患(例えば、照射、化学療法、HAART喫煙、高脂肪/高糖食の摂取及び環境因子から生じる疾患/障害);創傷治癒;皮膚母斑;線維性疾患及び障害(例えば、嚢胞性線維症、腎線維症、肝線維症、肺線維症、口腔粘膜下線維症、心臓線維症及び膵線維症)が挙げられる。ある特定の実施形態では、上に又は本明細書に記載される疾患又は障害の任意の1つ又は複数は、除外されてよい。
ある特定の実施形態では、病態は、変形性関節症、骨粗鬆症、筋肉減少症、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、がんの進行又は粥状動脈硬化を含む。
次の実施例は、例示のために提供され、特許請求される発明を限定しない。
(実施例1)
老化細胞は、肺線維症の際の生理活性脂質の供給源である。
導入
細胞老化は、永続的な有糸分裂停止及び強力な生物学的活性を有する多数の因子の分泌の両方を生じる、細胞性ストレス又は損傷への多面的な応答である(Campisi及びd'Adda di Fagagna (2007) Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 8: 729~740; Coppeら、(2008) PLoS Biol. 6: 2853~2868; Acostaら、(2008) Cell、133: 1006~1018; Kuilmanら、(2010) Genes Dev. 24、2463~2479)。この老化関連分泌表現型又はSASPは、分泌タンパク質の文脈で広く研究されており、その多くは、発生、加齢、創傷治癒、関節硬化、がんの進行及び線維症が挙げられるいくつかの工程において重要な役割を有することが示されている(Coppeら、(2008) PLoS Biol. 6: 2853~2868; Munoz-Espinら、Cell、155: 1104~1118; Bakerら、(2016) Nature 530: 184~189; Demariaら、(2014) Dev. Cell、31: 722~733; Childsら、(2016) Science 354: 472~477; Krizhanovskyら、(2008) Cell、134: 657~667)。比較して、脂質及び他の分子の分泌は、老化の文脈では研究されていない。ここで本発明者らは、老化細胞がエイコサノイド-強力な生物学的効果を有するシグナル伝達脂質の生合成を活性化し、この活性が、SASPの炎症性部分を促進し、有糸分裂停止を強化することを示す。更に損傷誘発肺線維症のモデルでは、老化細胞の除外が、特異的エイコサノイドのレベルを低下させ、線維化応答を減弱させる。これらのデータは、細胞老化の新規で潜在的に重要な態様に光を当てており、肺線維症等の老化細胞によって駆動される変性状態のための新規治療標的を提供している。
細胞老化は、細胞肥大、核及びエピジェネティック再編成及び代謝の変化を含むいくつかの表現型の変化を伴う、本質的に永続的な有糸分裂停止を生じる、多面的なストレス応答である(Campisi及びd'Adda di Fagagna (2007) Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 8: 729~740; Kuilmanら、(2010) Genes Dev. 24、2463~2479; Wiley及びCampisi (2016) Cell Metab. 23: 1013~1021)。老化細胞は、炎症性サイトカイン及びケモカイン、マトリクスメタロプロテイナーゼ並びに、組織への強力な局所-及び潜在的に全身性の-効果を有する増殖因子が挙げられる多数の生物学的に活性な分子を分泌することによって、加齢に伴う病態及び他の変性状態を駆動する(Coppeら、(2008) PLoS Biol. 6: 2853~2868; Acostaら、(2008) Cell、133: 1006~1018)。最終的に、老化細胞の蓄積は、自然老化6の際にマウスの寿命及び健康寿命の両方を限定する。これまでのところ、この老化関連分泌表現型(SASP)は、ほとんど分泌タンパク質の文脈のみで研究されてきた。ここで本発明者らは、老化細胞が、多数のエイコサノイド-細胞外環境にしばしば分泌され、炎症、発熱、血管収縮及び血管拡張、疼痛、脱毛症、喘息及び線維症等の多様な応答を促進する生物学的に活性なシグナル伝達脂質のクラス、も合成することを示している(Funk (2001) Science 294:1871~1875; Soberman及びChristmas (2003) J. Clin. Invest. 111: 1107~1113)。
近年の証明は、老化及びSASPの両方が代謝調節の下にあり、潜在的治療介入のための機序を示唆していることを示している(Wiley及びCampisi (2016) Cell Metab. 23: 1013~1021)。細胞老化の際に生じる代謝変化をより良く理解するために、本発明者らは、いずれかの培地(10%FBS又は0.2%FBS)で培養された増殖性(Proliferating)(PRO、10%FBS)、静止状態(QUI、0.2%FBS)、及び電離放射線(IR)誘発性老化(SEN(IR))IMR-90線維芽細胞から細胞内脂質及び水性代謝物を抽出し、質量分析によってそれらの相対的存在量を測定した。それにより、本発明者らは、増殖状態(QUI対PRO対SEN(IR))及び培養培地(0.2%対10%)の両方に起因し得る差異を調節できた。脂質プロファイルから、本発明者らは、脂質のある特定のサブセットが老化と共に強い上昇又は低下を示したことを決定した。これらは、セラミド、飽和脂肪酸及びレチノイン酸を含んでいた。しかし最も顕著なのは、エイコサノイド:20炭素脂肪酸から誘導される強力なシグナル伝達脂質のクラス、最も著しくはアラキドン酸、の相対存在量における著しい上昇であった。これらのエイコサノイドで最も豊富なのは、1a,1b-ジホモ-15-デオキシ-デルタ12,14-プロスタグランジンJ2(ジホモ-15d-PGJ2)であったが、プロスタグランジンD2(PGD2)及びプロスタグランジンE2(PGE2)のジホモバージョンも検出された(図1、パネルA)。追加的に本発明者らは、老化の際に特定のロイコトリエン、著しくはロイコトリエンA4(LTA4)及びB4(LTB4)、並びに関連リポキシゲナーゼ産生物、5-HETEの増加を観察した(図1、パネルA)。追加的に、エイコサノイド前駆体アラキドン酸(AA)、エイコサペンタン酸(EPA)及びジホモ-ガンマ-リノール酸(DGLA)は、老化細胞において上昇していた(図1、パネルB)。アドレン酸、AAの伸長の産生物及びジホモプロスタグランジンの前駆体は、老化の際に同様に上昇していた(図1、パネルB)。したがって、エイコサノイド及びそれらの前駆体の両方が老化と共に上昇する。
アラキドン酸は、ホスホリパーゼ、特に細胞質ホスホリパーゼ2(cPLA2)の活性によって細胞膜から放出される(Linら、(1993) Cell、72: 269~278)。cPLA2は、p38MAPK、老化の際に活性化されるキナーゼ(Freundら、(2011) EMBO J. 30: 1536~1548)によってセリン505でリン酸化される(Kramerら、(1996) J. Biol. Chem. 271: 27723~27729)。老化の誘発に続いて、本発明者らは、p38MAPKの活性化(リン酸化)及び、これまでに報告されたもの(Linら、(1993) Cell、72: 269~278; Kramerら、(1996) J. Biol. Chem. 271: 27723~27729)と同等のcPLA2リン酸化の増加を観察した(図1、パネルC)。加えて、本発明者らは、定量的PCRによって老化細胞中のエイコサノイド合成経路遺伝子のmRNA発現を測定した。老化細胞は、プロスタグランジン合成酵素sPTGS2(COX-2)、PTGES、PTGDSを含むが、PTGIS及びTBXASを含まないいくつかのエイコサノイド合成遺伝子(図1、パネルD)の発現が上昇していた。ALOX5(5-LO)、ALOX15、ALOX5AP、LTC4S及びLTA4Hを含むロイコトリエン合成mRNAは、同様に上昇していた。アドレン酸を合成するこれら3つの脂肪酸エロンガーゼ(ELOVL)の内、ELOVL4だけが老化で上昇した(図1、パネルD)。注目すべきことに、遺伝子発現の経時変化は、プロスタグランジン合成酵素発現が老化細胞において指数関数的に増加した(図1、パネルE、図6、パネルA)一方で、ロイコトリエン合成酵素発現は-照射2日後に大きな増加及びその後、IR後10~20日間での低い応答を伴って、二相性であった(図1、パネルF、図6、パネルB、C)ことを明らかにした。
これまでは理論的な化合物であったジホモ-15d-PGJ2は、老化で高く上昇し、豊富(約1.4μM)であったことから、本発明者らはその同一性を確認した。ジホモ-プロスタグランジン標準物は入手不できないが、ジホモ-15d-PGJ2の同一性を商業的に入手できる15d-PGJ2(Cayman社)を使用して決定した。ジホモ-15d-PGJ2は、28Daの質量シフト(315から343m/zへ)を生じるC2H4付着の付加によって15-PGJ2と異なる。正確な質量に加えて、ジホモ-15d-PGJ2のMS/MS断片化パターンは、28Da質量シフトの添加を有する15d-PGJ2と同一の断片を産生し、2個の追加的なCH2基の存在を確認している(図1、パネルG~I)(Harkewiczら、(2007) J. Biol. Chem. 282: 2899~2910)。これは、cPLA2活性の増加及びアラキドン酸、ELOVL4発現及びアドレン酸、PTGDS発現及びジホモ-PGD2についての証拠との組合せで(図7)、ジホモ-15d-PGJ2が、本発明者らの分析によって検出された最も可能性が高い代謝物であることを確認している。
大部分のプロスタグランジン及びロイコトリエンは分泌される;したがって、これらのエイコサノイドは、SASPの新規脂質成分と考えられる。本発明者らは、多数のエイコサノイドが増殖及び炎症を促進することから(Ricciotti及びFitzGerald (2011) Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 31: 986~1000; Castelloneら、(2005) Science、310: 1504~1510; Dennis及びNorris (2015) Nat. Rev. Immunol. 15: 511~523)、老化関連エイコサノイド生合成が炎症性SASPを促進する可能性も検討した。本発明者らは、したがって、老化(IR)細胞において、CAY-10404(CAY)又はNS-293(NS)(PTGS2/COX-2-特異的阻害剤)を用いてプロスタグランジン合成を、BW-B70C(BW)又はジロートン(Zil)(ALOX5阻害剤)を用いてロイコトリエン合成を、又はCOX-2及びALOX5阻害剤の組合せを使用してプロスタグランジン及びロイコトリエンの両方の合成を阻害し、いくつかのSASP因子のmRNAレベルを測定した(図2、パネルA)。ALOX5阻害剤は、ほとんどのSASP因子のレベルをわずかに減少させただけだったが、COX-2阻害剤は、SASP因子レベルをより強く減少させ、COX-2及びALOX5阻害剤の組合せは、SASPレベルを非老化(DMSO+モック)レベル近くに低下させた。比較して、SASPの血管新生促進成分、VEGFは、阻害剤処置によって減少されなかった(図2、パネルA)。本発明者らは、処置(CAY、BW又はCAY+BW)のサブセットに続いて老化細胞におけるIL-6分泌も測定した。CAYは、老化細胞においてIL-6分泌を約70%まで低下させた一方で、BW-B70Cは、それを約50%まで低下させ、阻害剤の組合せは相加的にIL-6分泌をベースラインレベル近くまで低下させた(図2、パネルB)。阻害剤のこの組合せは、老化細胞において炎症誘発性SASPを促進する主な転写因子、NF-κBのトランス活性化活性も低下させた(図2、パネルC)(Freundら、(2011) EMBO J. 30: 1536~1548)。
ジホモ-15d-PGJ2が本発明者らの分析において最も豊富なプロスタグランジンであり(図1A)、15d-PGJ2がPPARγについての内在性リガンドであることから(Formanら、(1995) Cell、83: 803~812)、本発明者らは、ルシフェラーゼレポーターアッセイによってPPARγトランス活性化も評価した(図8、パネルA)。PPARγ活性は、老化細胞において約18倍上昇しており、この活性化はNS-398への応答において約50%低減し、老化細胞におけるPPARγ活性化が一部プロスタグランジン依存性であることを実証している。
COX-2の阻害が多くのSASPを強く減弱することから(図2、パネルA-B)、本発明者らはどのプロスタグランジンがSASP維持の原因であり得るかを決定することを試みた。したがって本発明者らは、非老化細胞を10μMのPGA2、PGD2、PGE2、PGF2α又はPGJ2を用いて処置した。これらの内、PGA2、PGD2、PGJ2は、PGJ2が最も高い誘導を示して、処置への応答においてIL-6分泌が上昇した(図2、パネルD)。本発明者らは、qPCRによって追加的SASP因子の発現も測定した(図2、パネルE~F)。すべてのプロスタグランジンは、IL1A及びIL1B並びにMMP3のmRNAレベルを上昇させた。老化細胞は、ロイコトリエン受容体発現を失い(図8、パネルB)、ALOX5産生物は、アッセイしたSASP mRNAを強く上昇させなかった(図8、パネルC)。プロスタグランジンもPTGS2(COX-2) mRNAのレベルを上昇させた一方で、PGE2はPTGESを上昇させ(図2、パネルE)、プロスタグランジン合成酵素発現を維持する正のフィードバック機序を示唆している。これと一致して、CAY-10404によるCOX-2活性の阻害は、老化細胞においてそのmRNAレベルを非老化レベルに低下させた(図8、パネルD)。特にPGJ2(図2、パネルF)及び15d-PGJ2(図2、パネルE)は、本発明者らがCOX-2依存性であることを観察した(図2、パネルA)VEGF、及びPDGFを除く大部分のSASP因子を強く誘導した。多数のプロスタグランジンは、いくつかの他のSASP因子のレベルを低下させるが、ジホモ-15d-PGJ2が老化細胞において最も豊富であることから、PGJ2、15d-PGJ2及び関連化合物がSASPを促進するために最も重要であると考えられる。
本発明者らのIL-6 ELISA(図2、パネルB)の標準化のために細胞を計数した際に、本発明者らは、COX-2阻害剤(CAY-10404及びNS-398)の存在下で培養されたSEN(IR)細胞がDMSO処置SEN(IR)細胞と比較して細胞数における増加を一貫して示したことに気がついた。それにより本発明者らは、エイコサノイド生合成が老化の際に有糸分裂停止を強化するように作用する可能性があると仮定した。この可能性に対処するために、本発明者らは、照射された(5Gy)IMR-90線維芽細胞をCAY-10404、NS-398、ジロートン又はそれぞれの組合せを用いて処置した。BW-B70Cは、非老化細胞の増殖を遅らせ、したがって本発明者らの分析から除外された。ジロートンが照射後に細胞の数を穏やかに増加させる一方で、CAY-10404及び更に大きな程度でNS-398の両方は、細胞数を顕著に増加させ、ジロートン及びCAY-10404の両方の組合せは、いずれかの阻害剤それ自体よりも多い細胞を生じた(図3、パネルA)。細胞数におけるこれらの増加は、老化関連ベータ-ガラクトシダーゼ陽性度(図3、パネルB)及びp21WAF1(CDKN1A) mRNAレベル(図3、パネルC)の減少とも相関した。同様の結果が、IL-6分泌(図9、パネルA)、EdU取り込み(拡張データ図9、パネルB)及びコロニー形成(図9、パネルC~D)に関して、癌遺伝子ras誘発性老化について観察された(Serranoら、(`997) Cell、88: 593~602; Catalanoら、(2005) EMBO J. 24: 170~179)。したがって、エイコサノイド生合成の活性化は、老化を促進する。
どのエイコサノイドが老化を促進する可能性があるかを同定するために、本発明者らは、プロスタグランジン(PGA2、PGD2、PGE2、PGF2α、PGJ2又は15d-PGJ2、上記のとおり)又は5-LOX経路産生物(5-HETE、LTB4、LTC4、LTD4又はLTE4)を用いて非老化細胞を処置した。IR-及びras誘発性老化の鈍化におけるジロートンの活性にもかかわらず(図3、パネルA~C、図9、パネルB~C)、ALOX5産生物は、それら自体の老化を誘発しなかった。ロイコトリエン受容体(CYSLTR2及びLTB4R2)のmRNAレベルが、老化と共に低下したことから(図8、パネルB)、老化関連ロイコトリエンの効果は、細胞非自律的である可能性がある。ALOX5は、老化誘導反応性酸素種(ROS)を産生することが周知であることから(Catalanoら、(2005) EMBO J. 24: 170~179)、ALOX5のこの活性が、ロイコトリエン合成それ自体よりも老化の際に有糸分裂停止を強化する可能性がある。
一方、PGF2αを除くすべてのプロスタグランジンは、EdU標識指標によって測定されたとおり細胞分裂を遅延又は停止させた(図3、パネルD)。実際に、PGE2、PGD2、PGJ2及び15d-PGJ2は、すべて老化関連ベータ-ガラクトシダーゼを誘導した(図3、パネルE)。しかし、PGE2によって誘導される老化様表現型は、PGE2を用いて処置された細胞はPGE2が除かれると小さくなり、増殖を再開するがPGD2及びPGJ2ではしないことから、老化である可能性は低い(図10、パネルA~B)。更にプロスタグランジンD2(PGD2)及びその誘導体(PGJ2及び15d-PGJ2)だけがp21遺伝子発現(図3、パネルF、図10、パネルC)及びタンパク質蓄積(図3、パネルG)を誘導した。PGD2又はPGJ2のいずれかを用いる処置は、p53リン酸化又はアセチル化を増加させることなく(図11)p53を安定化させた(図3、パネルG)。PGD2又はPGJ2処置は、老化の2つの追加的バイオマーカー、LMNB1及び細胞性HMGB1のレベルの低減も生じたが(図3、パネルG、図10、パネルD)、PGE2は生じなかった。COX-2がSASPのために必要であることと一致して、本発明者らは、PGD2又はPGJ2の除去がMMP3の発現及びIL-6の分泌を低減したことを見出した(図10、パネルE~F)。それにより、PGD2の誘導体は、老化を特異的に促進した。
p53がPGD2又はPGJ2への応答で安定化されたことから、p21はp53の転写標的であり、本発明者らは、PGD2及びPGJ2による老化の誘発がp53依存性であったかどうかを決定することを試みた。したがって本発明者らは、shRNAによってp53を枯渇させ、PGD2又はPGJ2のいずれかを用いた処置が続いた。p53の減少は、PGD2-又はPGJ2-処置細胞が細胞分裂を続けることを可能にしなかった一方で、Ki67陽性度によって測定されるとおり(図3、パネルH)、処置細胞も老化せず、切断カスパーゼ3に対する陽性度によって決定されるとおり、むしろアポトーシスを受けた(図3、パネルI)。p53-枯渇線維芽細胞が、IR後に同様にアポトーシスを受けることから(Lips及びKaina (2001) Carcinogenesis、22: 579~585)、これらのプロスタグランジンは、放射線類似物質(radiomimetics)と同様の様式で機能すると考えられる。実際に、10μM 15d-PGJ2を用いたp53-変異体乳がん細胞株(MDA-MB-231)の処置は、アポトーシスを誘導し、一方、p53-陽性細胞株(MCF7)の処置はせず(拡張データ図12、パネルA~B)、15d-PGJ2の腫瘍抑制効果が照射と同様の様式で機能することを示唆している。
本発明者らのプロスタグランジン処置が超生理学的であることから、本発明者らは、細胞を老化等価用量(1.4μM)の15d-PGJ2を用いて処置した。この用量は、それ自体は老化を誘発しなかった。COX-2の阻害が、老化を低下させたが完全には妨げなかったことから(図3、パネルA~C)、本発明者らは、15d-PGJ2が、細胞を老化誘発性刺激に感受性にさせ、それにより老化を強化している可能性を検討した。この可能性を検査するために、本発明者らは、DMSO-又は15d-PGJ2-処置細胞をIRの線量を減少させて照射した。10Gy(本発明者らの標準老化誘発線量)では、老化関連ベータ-ガラクトシダーゼ(図3、パネルJ)、EdU取り込み(図3、パネルK)及び細胞数(図3、パネルL)に関して差異は観察されなかった。しかし、低線量のIRでは、15d-PGJ2を用いて処置された細胞は、対照細胞と比較してより老化していた(図3、パネルJ~L)。したがって、生理学的レベルの15d-PGJ2は、老化誘発刺激に細胞を感受性にすることによって老化を強化する。
培養細胞において得られた本発明者らのデータの生物学的重要性に対処するために、本発明者らは、老化関連エイコサノイド生合成がin vivoで生じるかどうかを決定するために周知の老化誘発のモードを利用した。本発明者らは、p16-3MRマウスを化学療法剤ドキソルビシン(DOXO、図13、パネルA)を用いて処置した、又はマウスを21ヵ月間加齢させた(図13、パネルB)。多くのロイコトリエン及びプロスタグランジン合成酵素のRNA発現は、有意に上昇した(p<0.05)。更にp16陽性細胞を除外するためにマウスをガンシクロビル(GCV)を用いて処置した場合、エイコサノイド合成酵素発現は、ドキソルビシン処置マウスにおいて低減された(図13、パネルA)。加齢マウスは、同様の傾向を示したが、結果は統計的に有意でなかった(図13、パネルB)。
本発明者らの最初の結果が老化肺線維芽細胞において観察されたことから、本発明者らは、老化細胞が肺のエイコサノイド駆動障害の原因であるかどうかを決定することを試みた。エイコサノイドが、肺における線維化応答に顕著に寄与することがこれまでに示されていることから(Peters-Goldenら、(2002) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 165: 229~235; Bellerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、101: 3047~3052; Ogaら、(2009) Nat. Med. 15: 1426~1430; Dackorら、(2011) Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 301: L645~655)、本発明者らは、線維症を促進するためにC57BL6/J及び3MRマウスをブレオマイシンを用いて損傷を与えた。加えて、マウスのサブセットに老化細胞を選択的に除外するBCL-XL阻害剤、ABT-263を用いて処置した(Changら、(2016) Nat. Med. 22: 78~83; Yosefら、(2016) Nat. Commun. 7: 11190)。本発明者らは、p16-3MRマウスを使用して重要な発見も繰り返し、ガンシクロビル(GCV)を使用するブレオマイシン処置マウスにおけるp16陽性老化細胞の更に特異的な除去を可能にした(Demariaら、(2014) Dev. Cell、31: 722~733)。老化の2つの主なマーカー、p16INK4a及びp21WAF1のRNAレベルは、ブレオマイシン傷害14日後に増加し、ABT-263及びGCV処置後に顕著に減弱した(図4、パネルA~B)。結果的に、傷害21日後に、コラーゲン含有量の低減(ヒドロキシプロリン、図4、パネルC)及び発現(Col3a1及びCol4a1、図4、パネルD及びE)がABT-263又はGCVを用いて処置されたブレオマイシン傷害マウスにおいて測定され、ピクロシリウスレッドを用いた肺の組織学的染色は、ABT-263による線維化応答の減弱を示した(図4、パネルF)。加えて、Alox5、Ltc4s、Ptgs2、Ptgds及びPtgesのmRNAレベルは、ブレオマイシン傷害マウスの肺において増加しており、ABT-263を用いた老化細胞の除去は、これらのレベルをPBS処置動物のものに低下させた(図4、パネルG、図13、パネルA)。同様に、cPLA2のリン酸化は、ブレオマイシン処置マウスにおいて上昇し、ABT-263後に低下した(図4、パネルH、図13、パネルB~C)。重要なことに、システイニルロイコトリエン及びプロスタグランジンE2の両方のレベルは、ブレオマイシン処置動物由来の気管支肺胞洗浄液(BALF)において上昇しており、ABT-263及びGCV処置後に低減された(図4、パネルI及びJ)。これらのデータは、老化細胞の除去がエイコサノイド生合成及びコラーゲン沈着の両方を減弱し、それにより、ブレオマイシン誘発肺線維症の基礎となる駆動因子であることを示している。
ブレオマイシン誘発肺線維症は、マウスにおいて経時的に回復し(Moellerら、(2008) Int. J. Biochem. Cell Biol. 40: 362~382; Izbickiら、(2002) Int. J. Exp. Pathol. 83: 111~119)、いずれの老化細胞も最終的に排除されるか、又は老化細胞の線維症促進特性が経時的に変化することを示唆している。したがって本発明者らは、p16(老化のバイオマーカー)又はコラーゲン(Col1A2)発現をブレオマイシン投与0、14、21、30及び42日後に分析した。本発明者らは、p16発現が14日目に上昇し、30日目までにピークになり、42日目までを通じて上昇したままであったことを見出した(図5、パネルA、青線)。この上昇にもかかわらず、コラーゲン遺伝子発現は14日目にピークになり、経時的漸進的に減少した(図5、パネルA、赤線)。これらのデータは、老化細胞の線維症誘発特性が経時的に変化することを示している。本発明者らが、培養細胞においてロイコトリエン合成酵素発現の早期の上昇(図1、パネルF)に続くプロスタグランジン合成酵素発現における後の上昇(図1、パネルE)を観察したことから、本発明者らは、老化細胞の活性におけるこのシフトがブレオマイシン処置マウスにおいて観察された回復の根底にある可能性を検討した。実際に、本発明者らは、ブレオマイシン投与後のAlox5発現における早期のスパイク(図5、パネルB、青線)に続く、PGD2を合成するPtgdsの更に漸進的な上昇を観察した。プロスタグランジンD2合成酵素の導入-又はPGD2若しくは15d-PGJ2の投与-は、ブレオマイシン誘発線維症を減弱し(Kidaら、(2016) PLoS One、11: e0167729; Genoveseら、(2005) Eur. Respir. J. 25: 225~234)、そのためPtgdsの上昇は、線維化促進状態からの回復と一致する。
エイコサノイド合成におけるこれらのシフトが線維化応答を変更するかどうかを決定するために、本発明者らは、対照(0日目)又はIR後2日目又は20日目のいずれかのSEN(IR)細胞から条件培地(CM)を生成した。細胞をNS-398、ジロートン(Zil)又はビヒクル(DMSO)のいずれかを用いてCMの生成24時間前に処置した。次に未処置非老化IMR-90線維芽細胞をCM+TGF-ベータ又はCM+BSAを用いて処置し、RNAをqPCRによって24時間後に分析した。2日目の老化細胞由来のCMは、TGF-ベータの存在に関わらずコラーゲン発現を誘導し(図5、パネルC)、ジロートンを用いたロイコトリエン合成の除去はこの効果を妨げた。20日目由来のCMは、TGF-ベータの存在下でのみコラーゲン発現を誘導し、これはジロートンによって再度妨げられた。反対に、ジロートンは、時点に関わらず平滑筋アクチン発現(ACTA2、筋線維芽細胞分化のマーカー)に影響を有さなかった(図5、パネルD)。ACTA2の誘導が2日目と比較して20日目に低下した一方で、NS-398を用いたプロスタグランジン合成の阻害は、この低下を抑制し(図5、パネルD)、プロスタグランジンが筋線維芽細胞形成に拮抗するというこれまでの発見と一致する(Garrisonら、(2013) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 48: 550~558; Penkeら、(2014) J. Biol. Chem. 289: 17151~17162)。合わせてこれらのデータは、早期のロイコトリエン合成が筋線維芽細胞においてコラーゲン合成を刺激する、一方で後期のプロスタグランジン合成は、筋線維芽細胞分化及びコラーゲン発現に拮抗するというモデルを支持する。
これまでのレポートは、特発性肺線維症(IPF)を有する患者由来の線維芽細胞は、プロスタグランジンを合成上昇させず(Baumanら、(2010) J. Clin. Invest. 120: 1950~1960)36、プロスタグランジン処置に応答しない(Liuら、(2005) J. Pharmacol. Exp. Ther. 315: 678~687)ことを示している。したがって本発明者らは、エイコサノイド合成がこれらの細胞において撹乱されるかどうかを決定するために、IPF(LL-29)を有する患者由来の線維芽細胞株を使用した。本発明者らは、ALOX5、PTGS2、PTGDS及びPTGESのRNA発現レベルを対照対SEN(IR) LL-29及びIMR-90線維芽細胞において比較した(図5、パネルE)。両方の細胞株において、ALOX5は上昇していた(図5、パネルE)一方で、老化LL-29線維芽細胞は、いずれのプロスタグランジン合成酵素(PTGS2、PTGDS及びPTGES)も上昇させなかった。これらのデータは、IPFを有する患者がプロスタグランジン合成に関して老化誘発刺激に異なって応答することを示唆している。
結論として、本発明者らは、老化細胞の特徴としてエイコサノイド生合成を同定するために、代謝プロファイリング、遺伝子発現及び機能アッセイの組合せを使用した。プロスタグランジン、特にPGD2-由来代謝物は、タンパク質SASPの一部を促進し、老化を強化するように作用した。比較してロイコトリエンが老化細胞にほとんど影響を有さない一方で、老化関連ロイコトリエン合成はマウスモデルにおいて肺線維症を促進した。合わせて本発明者らのデータは、老化細胞に関する新規活性だけでなく、線維症等のその活性についての重要な表現型的帰結も同定している。
追加材料
材料及び方法
細胞培養
ヒト胎児肺線維芽細胞(IMR-90)を10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で培養した。LL29(AnHa)細胞はATCCから得て、ATCCプロトコールを使用してコンフルエンスまで増殖させ、すべての実験の開始前にIMR-90について記載されたとおり継代培養した。培養培地を0.2%FBSを含む培地に置き換えることによって静止状態を誘導した。MCF-7及びMDA-MB-231乳がん細胞を10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMIで培養した。すべての細胞を3%O2で培養し、25から40集団倍加の間で使用した。すべての細胞は、マイコプラズマ不含有であった。
遺伝子発現
RNAを商業的に入手できるキット(細胞用にIsolate II - Bioline;組織用にDirect-zol - Zymo)を製造者の説明書に従って使用して細胞又は組織から抽出した。cDNA合成をHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Thermo Fisher社)を製造者の説明書に従って使用して実施した。定量的PCRをUniversal Probe Libraryのために設計されたプライマー及びプローブを使用してLightCycler 480 II(Roche社)で実施した。ヒト転写物のために使用したプライマー及びプローブは、ACTB: 5'-CCAACCGCGAGAAGATGA(配列番号1)、5'-TCCATCACGATGCCAGTG(配列番号2)、プローブ番号64; TUBA: 5'-cttcgtctccgccatcag(配列番号3)、5'-ttgccaatctggacacca(配列番号4)、プローブ番号58; ALOX5: 5'-ccacggagatggtagagtgc(配列番号5)、5'-cgatgaaaatgttcccttgc(配列番号6)、プローブ番号64; ALOX5AP: 5'-ggtctgcggggctacttt(配列番号7)、5'-tgcctcacaaacaagtacatcag(配列番号8)、プローブ番号18; ALOX12: 5'-tctcagatggaggaatttttgat(配列番号9)、5'-agccaggtcgtcaggag(配列番号10)、プローブ番号32; ALOX15: 5'-aatcgtgagtctccactataagacag(配列番号11)、5'-gcctgtaaagagacaggaaacc(配列番号12)、プローブ番号76; ALOX15B: 5'-gatcttcaacttccggaggac(配列番号13)、5'-actgggaggcgaagaagg(配列番号14)、プローブ番号51; AKR1C1: 5'-catgcctgtcctgggattt(配列番号15)、5'-agaatcaatatggcggaagc(配列番号16)、プローブ番号49; AKR1C2: 5'-ctatgcgcctgcagaggt(配列番号17)、5'-acctgctcctcattattgtaa
acat(配列番号18)、プローブ番号31; AKR1C3: 5'-cattggggtgtcaaacttca(配列番号19)、5'-ccggttgaaatacggatgac(配列番号20)、プローブ番号78; CYSLTR2: 5'-gacgggtgatttctgcattt(配列番号21)、5'-ctctcttgaagttttcaattgtgc(配列番号22)、プローブ番号18; DPEP1: 5'-gacgtcctgaggctggtg(配列番号23)、5'-ggtgcaggaaatgtaattgttg(配列番号24)、プローブ番号9、ELOVL2: 5'-cacacttctctccgcgtacat(配列番号25)、5'-gttgtagcctccttcccaagt(配列番号26)、プローブ番号53; ELOVL4: 5'-catttggcccatggattc(配列番号27)、5'-ccaatggtcacatggaattg(配列番号28)、プローブ番号31; ELOVL5: 5'-cccttccatgcgtccata(配列番号29)、5'-gattgtcagcacaaactgaagc(配列番号30)、プローブ番号31; EPHX2: 5'-ttctgctggacaccctgaa(配列番号31)、5'-ttcagattagccccgatgtc(配列番号33)、プローブ番号45; GPX4: 5'-ttcccgtgtaaccagttcg(配列番号33)、5'-cggcgaactctttgatctct(配列番号34)、プローブ番号36; LTA4H: 5'-ctgctctcacggtccagtc(配列番号35)、5'-ttttctattgtaaggtcctttgtatcc(配列番号36)、プローブ番号64; LTBR2: 5'-tgctgcttaacctttcagctt(配列番号37)、5'-atccttctgggcctacaggt(配列番号38)、プローブ番号33; LTC4S: 5'-accatgaaggacgaggtagc(配列番号39)、5'-tgcagggagaagtaggcttg(配列番号40)、プローブ番号18; PTGDS: 5'-ccaacttccagcaggacaag(配列番号41)、5'-ccacagacttgcacatggac(配列番号42)、プローブ番号36; PTGES: 5'-agagatgcctgcccacag(配列番号43)、5'-tggccaccacgtacatctt(配列番号44)、プローブ番号4; PTGES2: 5'-gcagggctgagatcaagttc(配列番号45)、5'-gacagaggagtcatttagttgttgc(配列番号46)、プローブ番号49; 5'-ttaacaaaagaaagggcaaagc(配列番号47)、5'-tcagagaaacgatcaaaattagacat(配列番号48)、プローブ番号48; PTGIS: 5'-gatttttgatgtgcagcttcc(配列番号49)、5'-gtgagtgcctggagctctct(配列番号50)、プローブ番号45; PTGR1: 5'-atgatggggcagcaagtg(配列番号51)、5'-cccatcagaaatggagtgc(配列番号52)、プローブ番号64; PTGS1: 5'-tccatgttggtggactatgg(配列番号53)、5'-gtggtggtccatgttcctg(配列番号54)、プローブ番号81; PTGS2: 5'-gatccccagggctcaaac(配列番号55)、5'-tcaccgtaaatatgatttaagtccac(配列番号56)、プローブ番号61; TBXAS1: 5'-ctgccctatctggacatggt(配列番号57)、5'-tgcctcccgtgtgaatct(配列番号58)、プローブ番号73; AREG: 5'-tgatcctcacagctgttgct(配列番号59)、5'-tccattctcttgtcgaagtttct(配列番号60)、プローブ番号73; CCL2: 5'- AGTCTCTGCCGCCCTTCT(配列番号61)、5'- GTGACTGGGGCATTGATTG(配列番号62)、プローブ番号40; CCL27: 5'-taggctgagcaacatgaagg(配列番号63)、5'-gctgggtggcagtaggaat(配列番号64)、プローブ番号18; CXCL1: 5'-gctgaacagtgacaaatccaac(配列番号65)、5'-cttcaggaacagccaccagt(配列番号66)、プローブ番号52; HGF: 5'-gattggatcaggaccatgtga(配列番号67)、5'-ccattctcattttatgttgctca(配列番号68)、プローブ番号49; IL1A: 5'-GGTTGAGTTTAAGCCAATCCA(配列番号69)、5'-TGCTGACCTAGGCTTGATGA(配列番号70)、プローブ番号6; IL1B: 5'-ctgtcctgcgtgttgaaaga(配列番号71)、5'-ttgggtaatttttgggatctaca(配列番号72)、プローブ番号78; IL6: 5'-GCCCAGCTATGAACTCCTTCT(配列番号73)、5'-gaaggcagcaggcaacac(配列番号74)、プローブ番号45; IL8: 5'-agacagcagagcacacaagc(配列番号75)、5'-atggttccttccggtggt(配列番号76)、プローブ番号72; IL10: 5'-gatgccttcagcagagtgaa(配列番号77)、5'-gcaacccaggtaacccttaaa(配列番号78)、プローブ番号67; MMP3: 5'-caaaacatatttctttgtagaggacaa(配列番号79)、5'-ttcagctatttgcttgggaaa(配列番号80)、プローブ番号36; PDGFA: 5'-gcagtcagatccacagcatc(配列番号81)、5'-tccaaagaatcctcactcccta(配列番号82)、プローブ番号80; VEGF: 5'-ggattttggaaaccagcaga(配列番号83)、5'-ccgtctctctcttcctcgac(配列番号84)、プローブ番号50; P21WAF1(CDKN1A): 5'-tcactgtcttgtacccttgtgc(配列番号85)、5'-ggcgtttggagtggtagaaa(配列番号86)、プローブ番号32; and LMNB1: 5'-ttggatgctcttggggttc(配列番号87)、5'-aagcagctggagtggttgtt(配列番号88)、プローブ番号31であった。マウスプライマー及びプローブは、Actb: 5'-CTAAGGCCAACCGTGAAAAG(配列番号89)、5'-ACCAGAGGCATACAGGGACA(配列番号90)、プローブ番号64; Tuba: 5'-ctggaacccacggtcatc(配列番号91)、5'-gtggccacgagcatagttatt(配列番号92)、プローブ番号88; Alox5: 5'-aggcacggcaaaaacagtat(配列番号93)、5'-tgtggcatttggcatcaata(配列番号94)、プローブ番号58; Ltc4s: 5'-ctcttctggctaccgtcacc(配列番号95)、5'-aagcccttcgtgcagagat(配列番号96)、プローブ番号7; Ptgds: 5'-ggctcctggacactacaccta(配列番号97)、5'-atagttggcctccaccactg(配列番号98)、プローブ番号89; Ptges: 5'-agcacactgctggtcatcaa(配列番号99)、5'-cagcctcatctggcctgt(配列番号100)、プローブ番号83; Ptgs2: 5'-gggagtctggaacattgtgaa(配列番号101)、5'-gtgcacattgtaagtaggtggact(配列番号102)、プローブ番号4; Col3a1: 5'-ctcctggtgagcgaggac(配列番号103)、5'-gaccaggttgcccatcact(配列番号104)、プローブ番号1; Col4a1: 5'-tggcacaaaagggacgag(配列番号105)、5'-ggccaggaataccaggaag(配列番号106)、プローブ番号1; p21WAF1(Cdkn1a): 5'-TCCACAGCGATATCCAGACA(配列番号107)、5'-GGACATCACCAGGATTGGAC(配列番号108)、プローブ番号21;及びp16INK4a(Cdkn2a): 5'-AACTCTTTCGGTCGTACCCC(配列番号109)、5'-TCCTCGCAGTTCGAATCTG(配列番号110)、プローブ:カスタム、であった。
老化の誘発
老化を10Gyの電離放射線を用いる照射によって誘発した。非老化対照(増殖性(Proliferating)又は静止状態)は、照射器をつけることなく同一の期間照射器に置いた。癌遺伝子誘発性老化をこれまでに記載されたとおりHRASV12のレンチウイルス過剰発現を介して誘発した(Wileyら、(2016) Cell Metab. 23: 303~314)。
条件培地の生成
条件培地をペニシリン/ストレプトマイシンを補充した血清不含有DMEMの存在下でIMR-90線維芽細胞を収集前に24時間培養することによって生成し、トリプシン処理及び細胞計数が続いた。条件培地の生成に先立って、ドナー細胞を血清不含有培地の添加前に10Gy IRに2又は20日間供した。0日目は、シャム照射プロトコールだけからなる。血清不含有培地の添加前の24時間に、細胞をDMSO、NS-398(XXmg/mL)又はジロートン(XXmg./mL)の存在下で培養し、SFMの添加前に細胞をPBS 4×を用いて連続的に洗浄した。細胞200,000個相当/mLをXXxg/mL TGF-ベータ又は担体(BSA)を補充して誘導研究のために使用した。CM+/-TGF-ベータを血清不足未処置非老化IMR-90線維芽細胞に24時間適用し、得られた細胞をqPCRによって分析した。
老化関連ベータ-ガラクトシダーゼ
SA-Bgal活性をこれまでに記載されたとおり商業的キット(Biovision社)を使用して検出した(Dimriら、(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、92: 9363~9367)。
免疫蛍光
EdU標識のために、細胞をEdU(10μM)を用いて24時間培養し、4%緩衝ホルマリン中で10分間固定し、PBS中で洗浄し、0.5%Triton X-100中で30分間、透過性にした。細胞を製造者Life Technologies社、カタログ番号C10337)による指示のとおり処置した。免疫蛍光のために、細胞を10%正常ヤギ血清中で30分間ブロックし、洗浄し、Ki67(Abcam社)又は切断カスパーゼ3(Cell Signaling社)に対する抗体と一晩インキュベートした。次に細胞を洗浄し、蛍光二次抗体とインキュベートし、DAPIと共にvectashield封入剤を使用してマウントした。
免疫ブロット
細胞を10mM Tris、pH7.4中の5%SDS中で溶解し、タンパク質含有量をBCAアッセイによって決定した。20μgタンパク質を電気泳動によって分離し、PVDF膜に移行させた。膜をTBST+5%BSA中でブロックし、一次抗体と共に一晩インキュベートし、TBST中で洗浄し、HRP-コンジュゲート二次抗体と共に30分間インキュベートし、化学発光によって可視化した。cPLA2に対する抗体(ホスホ-S505及び未修飾)、p53のリン酸化成分、及び全p38MAPKはCell Signaling社からであった。LMNB1及びHMGB1は、Abcam社からであった。ホスホ-p38はPhosphoSolutions社からであった。p21(CDKN1A)はNovus社からであった。
IL-6 ELISA
12ウエルプレート中の細胞3×104個をテキストに示すとおり処置し、0.5~1ml血清不含有DMEM中で24時間培養した。CMを回収し、2,000×g、10分間で清澄化した。上清をチューブに移し;細胞をトリプシン処理し、計数した。CM(2.5μl)を製造者による指示のとおりビーズベースELISA(AlphaLISA、Perkin-Elmer社)によって分析し、細胞数で標準化した。
システイニルロイコトリエンELISA
BALFを抽出し、製造者の説明書に従ってELISA(システイニルロイコトリエン、Cayman Chemical社)及び(Amersham Leukotriene C4/D4/E4 Biotrak、GE Healthcare社)によって分析した。ロイコトリエンをpg/mLとして定量した。
レポーターアッセイ
レンチウイルスNF-κBレポーター構築物(SA Biosciences社)及びバキュロウイルスPPARガンマ構築物(Signosis社)を増殖性(Proliferating)細胞に形質導入した。処置に続いて、ルシフェラーゼをPassive Lysis緩衝液(Promega社)を使用して抽出し、商業的に入手できるキット(Promega社)を使用して、Perkin-Elmer Victor(商標)X3 luminometerを使用して分析した。
動物
動物実験をBuck Institute for Research on AgingのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールを使用して実施した。Doxo処置のために、10~16週齢p16-3MRマウスにPBS中10mg/kgのドキソルビシン塩酸塩の腹腔内(i.p.)注射を1回し、5日後にGCV又はビヒクルを用いて処置した。GCVを毎日のi.p.注射を介して連続5日間PBS中25mg/kgで投与した。対照マウスに等量のPBSを注射した。マウスを安楽死させ、組織をドキソルビシンチャレンジの10日後に回収した。加齢研究のために、p16-3MRマウスを、25mg/kg GCV又は同一量のPBSを毎月5日間、6ヵ月齢から21ヵ月齢まで与えて、21ヵ月まで自然に加齢させ、その時点でマウスを安楽死させ、組織を分析のために回収した。
肺線維症を誘発するために、WT C57BL/6J(WT)及びp16-3MRマウスに2U/体重kgのブレオマイシンを気管内投与した。両コホートからの対照動物にPBSを気管内で与えた。10%未満の体重減少を示すブレオマイシン処置動物は研究から排除した。傷害動物をガンシクロビル(GCV)(PBS中25mg/kg)、ABT-263(10%EtOH中50mg/kg、20%PEG-400及び70%Phosal 40)、又は対応する対照を用いてブレオマイシン傷害の1週間後に開始して7日間処置した。動物をブレオマイシンチャレンジの14又は21日後のいずれかで安楽死させた。気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収するために、1mlのPBSを気管内に注射し、およそ0.8mlを回収した。次に気管支肺胞洗浄液を500×g、10分間遠心分離した。沈殿させた細胞をIsoton溶液に懸濁しBeckman Z1コールターカウンターを使用して計数した。肺を回収し、以下のとおり分けた:左肺はヒドロキシプロリン測定のために使用した又はパラフィン包埋し、他葉はRNA/タンパク質抽出のために使用した。
肺線維症の評価
ブレオマイシンチャレンジマウスの肺における線維症指標の程度を、確立されたマーカーを用いて評価した(Huangら、(2015) Exp. Gerontol. 61:62~75)。コラーゲン沈着をヒドロキシプロリン測定並びにピクロシリウスレッド染色及び定量を使用して定量した。A)ヒドロキシプロリンの測定:肺のヒドロキシプロリン含有量をこれまでに記載されたとおり測定した(Id.)。肺の左葉を1mlの水中で短時間ホモジナイズし、50%TCA(トリクロロ酢酸)中で20分間インキュベートした。次に試料を6N HClを用いて110℃、24時間加水分解した。試料を2mlの水中に再構成し、室温、2時間混合した。インキュベーション後、試料を等量のクロラミンT(1.4%クロラミンT、0.5M酢酸ナトリウム及び10%イソプロパノール中)及びエールリッヒ溶液(70%イソプロパノール及び30%過塩素酸中1M p-ジメチルアミノベンズアルデヒド)に混合し、65℃、15分間加熱した。次に各試料の吸光度を550nmで測定した。標準曲線をヒドロキシプロリン標準物(trans-4-ヒドロ-1-プロリン)を使用して各実験について作成した。結果は、mgヒドロキシプロリン/mL組織として表した。B)ピクロシリウスレッド染色。シリコンコートスライド上に重ねた5枚のμm厚パラフィン切片を、実質部コラーゲン沈着(parenchymal collagen deposition)を定量するためにピクロシリウスレッド(PSR)を用いて染色した。染色レベルをImageProソフトウェアv6.2(Media Cybernetics社、Inc. Bethesda、MD、United States)を用いて評価し、画像分析した総面積の百分率として表した。変動を最小化するために、試料を同じ条件下で処理した。左肺全体の動物あたり5枚のスライドを処置について盲検の操作者によって定量した。
化学物質及び標準物
酢酸アンモニウムは、Sigma Aldrich社(St. Louis、MO)から得た。HPLCグレード溶媒アセトニトリル及びメタノールは、Fisher Scientific社(Pittsburgh、PA、USA)及びVWR社(Radnor、PA、USA)から購入した。脱イオン水は、移動相調製のために所内で生成した。PGA2、PGD2、PGE2、PGF2α、PGJ2、15d-PGJ2、LTB4、LTC4、LTD4、LTE4及び5-HETEは、Cayman Chemical社からであった。
脂質の液体-液体抽出(LLE)
脂質抽出を、これまでに報告されたプロトコールに基づいて一部変更して実施した(Folchら、(1951) J. Biol. Chem. 191: 833~841; Bligh及びDyer (1959) Can. J. Biochem. Physiol. 37: 911~917)。IMR90増殖性(Proliferating)、静止状態及び老化(IR)細胞をリン酸-緩衝生理食塩水(PBS)を用いてリンスし、2μg/mL 13C1-ロイシン及び内部標準として添加した5ηg/mLヘキサンスルホン酸を含む1mL 50%メタノールを使用してクエンチした。1μg/mLヘプタデカン酸を含む体積2mLのクロロホルムを各試料に加え、10分間、4℃で混合した。試料を4,000g、15分間、4℃で遠心分離し、水層と有機層とを完全に分離した。遠心分離後、700μLの水層及び1.5mLの有機層を回収し、speedvac及びN2によってそれぞれ濃縮した。水画分及び有機画分の両方を100μLの50%メタノール及びクロロホルム中に液体-クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)分析の前に再構成した。
脂質の固相抽出(SPE)
脂質抽出を、これまでに報告されたプロトコールに基づいて一部変更して実施した(Harkewiczら、(2007) J. Biol. Chem. 282: 2899~2910)。IMR90増殖性(Proliferating)、静止状態及び老化(IR)細胞をPBSを用いてリンスし、2μg/mL 13C1-ロイシン、1μg/mLヘプタデカン酸及び内部標準として添加した5ηg/mLヘキサンスルホン酸を含む1mLメタノールを使用してクエンチした。体積1mLのPBSを各試料に加え、10分間混合した。試料を4,000g、15分間、4℃で遠心分離した。遠心分離後、エイコサノイドを真空マニホールドに接続したPhenomenex Strata-X polymeric sorbentカラムを使用して分離した。カラムを2mLのメタノールに続いて2mLの水を使用して予洗した。試料をカラムにロードし、2mLの90:10 水:メタノールを用いて洗浄し、次に1mLの100%メタノールを用いて溶出させた。抽出物をspeedvacによって濃縮し、LC-MS分析の前に100μLの100%メタノール中に再構成した。
高圧液体クロマトグラフィー四重極飛行時間型質量分析(HPLC-QTOF-MS)
LC-MS分析を、次のモジュール: u-脱ガス装置(G1322A)、バイナリーポンプ(G1312B)、恒温装置カラムコンパートメント(G1330B)及びHiPALSオートサンプラー(G1367E)からなる、Agilent 1260 Infinity液体クロマトグラフィーシステムと連結したAgilent 6520 QTOF質量分析計で実施した。細胞抽出物のクロマトグラフィー分離をPhenomenex Luna NH2(2.0mm×150mm、3.0μM)カラムで実施した。移動相は、A:20mM酢酸アンモニウム及び5%アセトニトリル、pH9.5並びにB:アセトニトリルを含んでいた。グラジエントは以下のとおり:0から20分、95~10%B、25~30分、10%B、及び30.1~35分、95%B。LC条件は、オートサンプラー温度4℃、注入体積10μL及び溶媒流速0.3mL/分を含む。質量分析は、以下のイオン化パラメーターを使用して実施した:ガス温度(TEM)350℃;乾燥ガス、9L/分; Vcap、2500V;噴霧器、35psig;フラグメンター、125V;及びスキマー、65V。MS1取得を陰イオンスキャンモードで質量範囲50~1000m/zの範囲で操作した。
LC-MSデータを取得し、Agilent MassHunter Workstation(B.05.00)、Agilent MassHunter Qualitative分析ソフトウェア(B.07.00)、Mass Profiler Professional(B.12.0)及びMicrosoft Excel 2007(Redmond、WA、USA)を使用して分析した。代謝物の比較定量を実施するために、ピーク面積をAgilent MassHunter Qualitative分析ソフトウェアをFind by Formula(FBF)アルゴリズムとの組合せで使用してアサインした。ピーク面積は、全タンパク質又は細胞数によって標準化した。
高圧液体クロマトグラフィー四重極イオントラップ質量分析(HPLC-QTRAP-MS)
HPLC-MS定量のために、HPLCを次のモジュール:CBM-20A(コミュニケーションバスモジュール)、DGU-A3(脱ガス装置)、2台のLC-20AD(液体クロマトグラフィー、バイナリーポンプ)、及びPhenomenex Luna NH2(2.0mm×150mm、3.0μM)カラムに連結されたSIL-20AC HT(オートサンプラー)を装着したShimadzu UFLC prominenceシステムを使用して実施した。溶媒系は、A=5%アセトニトリルを含む20mM酢酸アンモニウムpH9.5及びB=アセトニトリルであった。開始グラジエント条件は、95%B、流速0.3mL/分であった。次のグラジエントプログラムを使用した:0から20分、95~10%B、25~30分、10%B及び30.1~35分、95%B。試料は+4℃に維持し、注入体積は10μLであった。
質量分析実験をTurboV(商標)イオン源を装着したAbSciex 4000 QTRAP(Foster City、CA、USA)質量分析計上で複数反応モニタリングモード(MRM)で陰イオンエレクトロスプレーイオン化を使用して実行した。イオン化パラメーターを次のとおり設定した:カーテンガス(CAD); 20psi;衝突ガス:中程度;イオンスプレー電圧(IS): -4500V;温度(TEM): 550℃;イオン源ガス1(GS1); 60psi;及びイオン源ガス2(GS2): 50psi。化合物パラメーターを適切な標準物を使用して確立した。化合物パラメーターを次のとおり設定した:入口電位(entrance potential)(EP): -10.0V;及び衝突出口電位(collision cell exit potential)(CXP): -5V。ABSciex Analyst(登録商標)v1.6.1をすべての形式のデータ取得及び方法開発のために使用した。
ABSCIEX ANALYST(登録商標)v1.6.1をすべての形式のデータ取得及び、HPLC-MSデータの詳細な分析、特に細胞抽出物から同定された特性についてのピーク面積を算出するために使用した。ピーク面積は、全タンパク質によって標準化した。
統計解析
すべてのデータは、平均+/- SEMとして表した。群間の比較を、必要に応じて、両側スチューデントt検定、マン・ホイットニーのU検定(非等価分散(non-equivalent variances)を有するデータセットの比較のため)、又は二元配置ANOVAを使用して実施した。ヒートマップは、すべてのマーカーの有意性についてP<0.05を使用した。他に有意性は*=P<0.05、**=P<0.01、***=P<0.001によって示した。
本明細書に記載の実施例及び実施形態が、例示的目的のみのためであり、その観点から種々の改変又は変更が、当業者に提案され、本出願の精神及び範囲並びに添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることは、理解される。本明細書に引用されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、すべての目的についてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。