JP7370150B2 - 重ね接合構造、及び自動車骨格部品 - Google Patents

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Description

本発明は、重ね接合構造、及び自動車骨格部品に関する。
衝突安全性の向上と燃費の向上とを両立するため、自動車車体を構成するモノコックボディの骨格をなす構造部材(以下、「自動車用構造部材」という)への高強度鋼板の適用が拡大している。現在、自動車用構造部材には引張強さが980MPa級の高張力鋼板が用いられており、さらに、最近は引張強さが1180MPa級以上の高張力鋼板の適用も検討されている。また、プレス成形と同時に焼入れを行うホットスタンプ法を用いることにより引張強さが1500MPa以上の高強度の自動車用構造部材の製造も進められている。ホットスタンプ法によれば、鋼板が高温の軟質な状態でプレス成形を行うために成形後の寸法精度に関する問題の発生が少ないとともに、高温かつ高延性の状態でプレス成形を行うことができることから成形性に優れるという大きなメリットがある。
しかし、引張強さが780MPa以上の鋼板を含むようなスポット溶接継手では、ナゲットの靭性が低下し、剥離方向の応力ではナゲット端部に応力が集中するため、鋼板の引張強さが増加しても、十字引張強さ(CTS)が、増加しないか、又は、減少するという問題がある。
この問題を解決する技術の一つとして、母材を溶融させることなくリベットやスクリューなどの機械的接合手段を用いて複数枚の金属板を機械的に接合する技術がある。この技術を用いることにより、従来よりも強度信頼性の高い、自動車部品が製造できる可能性がある。
また、自動車の車体などでは、軽量化等の目的で、鋼板とアルミニウム板、あるいは鋼板と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)板のような異種材料の組合せを接合する場合がある。このように、組み合わせる材料が、融点や線膨張係数などの物性が異なる材料である場合は、例えば特許文献1、2に記載のように機械的接合手段をもって締結・接合することが行われている。また、電気抵抗の低いアルミニウム板では、抵抗スポット溶接に代えて摩擦撹拌点接合が用いられている場合もある。以下、機械的接合手段と摩擦撹拌点接合手段を総称して非溶融接合手段と記載する場合がある。
この非溶融接合手段を重ね接合構造に設けるにあたり、必然的に、板部材に穴を設ける必要がある。例えば、重ね合わせた複数の板部材の重ね部を、接合部においてブラインドリベットなどの機械的接合手段により接合する場合、板部材の接合部にはリベットが挿通する穴が形成される。また、重ね部を摩擦接合手段により点接合する場合、回転ツール側の板部材の接合部には、回転ツール先端のプローブの圧入痕による穴が残留する。
本発明者の検討では、重ね部を機械的接合手段や摩擦接合手段により接合した重ね接合部材では、重ね接合部材全体が引張変形を受けると、接合部に形成されている穴にひずみが集中して、穴を起点に小さい変形で板部材が破断する問題が生じた。特許文献1及び2等の先行技術においては、この問題に対して何ら検討が行われていない。
特開2000-272541号公報 特開2005-119577号公報
本発明は、複数の板部材を重ね合せて形成された重ね部を、非溶融接合手段によって接合した場合に、非溶融接合部に形成された穴を起点に板部材が破断するのを抑制することが可能な重ね接合部材の重ね接合構造を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)本発明の一態様に係る重ね接合構造は、重ね合わせられた複数の板部材と、前記複数の板部材の重ね部に設けられた、機械的接合手段又は摩擦撹拌点接合手段によって構成された複数の接合部と、を備え、前記複数の接合部は、前記機械的接合手段が挿通される穴、又は摩擦撹拌点接合によって形成された穴を有し、前記複数の板部材のうち1枚以上が、前記重ね部における前記複数の接合部の間に軟質部を有し、前記軟質部の硬さが、前記軟質部が設けられた前記板部材の硬さの80%以下である。
(2)上記(1)に記載の重ね接合構造では、前記軟質部の長さL1、前記軟質部の幅W1、前記軟質部の硬さH1、前記軟質部を有する前記板部材の硬さH2、及び前記穴131の直径Kが、以下の式1及び式2を満たしてもよい。
L1>K (式1)
(H2-H1)×W1>H2×K (式2)
(3)上記(1)又は(2)に記載の重ね接合構造では、前記穴の端部と、前記軟質部の端部との最短距離D、及び前記穴131の直径Kが、以下の式3を満たしてもよい。
D≧K (式3)
(4)上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の重ね接合構造では、前記穴が、前記複数の板部材のうち1枚以上を貫通してもよい。
(5)上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の重ね接合構造では、前記軟質部が、前記穴を有する前記板部材に設けられてもよい。
(6)上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の重ね接合構造では、前記軟質部が、板厚と引張強さとの積が最も大きい主板部材に設けられてもよい。
(7)上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の重ね接合構造では、前記板部材が、前記接合部を囲み、且つ前記軟質部から離隔された第二軟質部を有し、前記軟質部の硬さH1、前記軟質部を有する前記板部材の硬さH2、前記第二軟質部の硬さH3、前記軟質部の幅W1、前記第二軟質部の幅W3、及び前記穴131の直径Kが、以下の式4を満たしてもよい。
(H2-H1)×W1>H2×K+(W3-K)×(H2-H3) (式4)
(8)上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の重ね接合構造では、前記軟質部を有する前記板部材では、引張強さが980MPa以上であり、その金属組織がマルテンサイトを含む鋼板であってもよい。
(9)本発明の別の態様に係る自動車骨格部品は、上記(1)~(8)のいずれか一項に記載の重ね接合構造を有する。
(10)上記(9)に記載の自動車骨格部品は、Aピラー、Bピラー、又はルーフレールであってもよい。
本発明によれば、複数の板部材を重ね合せて形成された重ね部を、非溶融接合手段によって接合した場合に、接合時に形成された穴を起点に板部材が破断するのを抑制することで、板部材が破断するまでの伸び(歪量)を大きくすることが可能な重ね接合部材の重ね接合構造を提供することができる。
本実施形態に係る重ね接合構造の斜視図である。 接合部の断面図である。 レジスタンスエレメントウエルディングによって形成される機械的接合手段の概念図である。 レジスタンスエレメントウエルディングによって形成される機械的接合手段の概念図である。 摩擦撹拌点接合によって形成される摩擦撹拌点接合手段の概念図である。 軟質部及びその周辺の硬さを概略的に説明する図である。 軟質部の長さL1、軟質部の幅W1、及び穴の直径Kを示す概略図である。 第二軟質部を有する重ね接合構造の斜視図である。 第二軟質部の硬さH3及び幅W3の測定方法を説明する概略図である。 軟質部の形状のバリエーションを例示する斜視図である。 軟質部の形状のバリエーションを例示する斜視図である。 軟質部の形状のバリエーションを例示する斜視図である。 軟質部の形状のバリエーションを例示する斜視図である。 本実施形態に係る自動車骨格部品であるBピラーの斜視図である。 図10のBピラーのXI-XI断面図である。 本実施形態に係る自動車骨格部品の一例であるAピラー及びルーフレールの斜視図である。 図12のルーフレールの断面図である。 本実施形態に係る自動車骨格部品の一例であるBピラーのヒンジリンフォースの斜視図である。 従来の重ね接合構造を模擬した試験片の平面図及び側面図である。 本発明の重ね接合構造を模擬した試験片の平面図及び側面図である。 引張試験後の図15の試験片の写真である。
本発明者らは、複数の板部材を重ね合せて形成された重ね部を、非溶融接合手段によって接合した場合に、接合時に形成された穴を起点に板部材が破断するのを抑制することが可能な重ね接合部材の重ね接合構造を提供する方法について検討を重ねた。その結果、接合部に形成されている穴の端部にひずみが集中しないように、ひずみを分散する手段を設けることが良いと着想した。そして、板部材の重ね部において、接合部と該接合に隣り合う接合部との間に軟質部を形成することにより、引張荷重によるひずみを分散させる構造となり、穴を起点とする重ね接合部材の破壊が抑制されるとの知見を得た。
以下、図を適宜参照しながら、本実施形態に係る重ね接合構造1について説明する。なお、重ね接合構造1の例として、図にはフランジ12を有する板部材11を示すが、本実施形態に係る重ね接合構造1がフランジ12を備えなくともよい。また、図において板部材11の枚数が2枚又は3枚である構成を図示しながら本実施形態に係る重ね接合構造を説明するが、板部材11の枚数を4枚以上にしてもよい。
上記知見により得られた本発明の一態様に係る重ね接合構造1は、図1に示されるように、重ね合わせられた複数の板部材11と、複数の板部材11の重ね部に設けられた、機械的接合手段又は摩擦撹拌点接合手段によって構成された複数の接合部13(図1では図示省略)と、を備え、複数の接合部13は、機械的接合手段が挿通される穴131、又は摩擦撹拌点接合によって形成された穴131を有し、複数の板部材11のうち1枚以上が、重ね部における複数の接合部13の間に軟質部14を有し、軟質部14の硬さが、軟質部14が設けられた板部材11の硬さの80%以下である。また、図1において重ね部はフランジ部12とされているが、上述のようにフランジ部12は必須ではない。
(1)板部材11
板部材11の材質は特に限定されない。板部材11は、例えば、樹脂板、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)板、又は、アルミ板、アルミ合金板、ステンレス板、チタン板、若しくは鋼板等の金属板である。板部材11が塗膜及びめっき等の表面処理層を備えてもよい。本実施形態に係る重ね接合構造は、複数の板部材11を重ねて構成されるものであるが、複数の板部材11の材質を同一にしてもよいし、異ならせてもよい。板部材11の板厚及び機械強度(引張強さ、及び硬さ等)も特に限定されない。例えば、板部材11が鋼板である場合、板部材11の厚さを例えば0.5~2.6mmとしてもよい。板部材11がCFRP板である場合、板部材11の厚さを例えば0.3~4.0mmとしてもよい。複数の板部材11の板厚及び機械強度を同一にしてもよいし、異ならせてもよい。
なお、重ね接合構造の機械強度に最も影響するのは、これを構成する複数の板部材11のうち、板厚と引張強さとの積が最も大きい板部材である。本実施形態に係る重ね接合構造では、板厚と引張強さとの積が最も大きい板部材11を主板部材と称し、その他の板部材11を副板部材と称する。重ね接合構造が、板厚と引張強さとの積が等しい板部材11を2枚以上有し、且つこれらの板厚と引張強さとの積が、複数の板部材11のうち最大である場合、これらの両方を主板部材とみなすことができる。
板部材11の最も好適な一例は高強度鋼板、具体的には引張強さ1200MPa以上であり、その金属組織がマルテンサイトを含む鋼板である。マルテンサイトを含む高強度鋼板は、レーザ照射等を用いて局所的な熱処理を施すことによって、後述する軟質部を容易に形成することができる。一方、引張強さが1200MPa以下の鋼板を板部材11とすることも妨げられず、例えば引張強さが1200MPa以上の高強度鋼板と、引張強さが270MPa~980MPaの鋼板とを組み合わせてもよい。
板部材11が鋼板の場合には、鋼板を、表面にめっきがされていない非めっき鋼板としてもよく、合金化溶融亜鉛めっき(GAめっき)、溶融亜鉛めっき(GIめっき)、電気亜鉛めっき(EG)、Zn-Alめっき、Zn-Al-Mgめっき、Zn-Mgめっきなどの亜鉛系めっきで被覆された鋼板としてもよくさらにクロメート、樹脂などが塗装された鋼板としてもよい、さらに、アルミニウムめっき鋼板としてもよい。板部材11がホットスタンプ材である場合には、板部材11を、非めっき鋼板、アルミニウムめっき、鉄とアルミニウムの金属間化合物、若しくは鉄亜鉛固溶層及び酸化亜鉛層から構成される複合層により被覆された鋼板、又は、鉄亜鉛ニッケルの固溶層及び酸化亜鉛層から構成される複合層により被覆された鋼板としてもよい。
後述する機械的接合手段によれば、溶接に適合しない板部材11の接合も可能である。例えば、アルミ材を複数組み合わせた重ね接合構造1、及びアルミ材及び鋼材を組み合わせた重ね接合構造1等にも、機械的接合手段を適用可能である。さらには、金属板に代えてCFRP材を用いた重ね接合構造1にも、機械的接合手段を適用可能である。後述する摩擦撹拌点接合手段によっても、溶接に適合しない材料の接合が可能である。例えば、アルミ材を複数組み合わせた重ね接合構造1、及びアルミ材と鋼材とを組み合わせた重ね接合構造1等にも、摩擦撹拌点接合手段を適用可能である。以上の理由により、板部材11の材質は特に限定されない。
(2)接合部13及び穴131
複数の板部材11は、その一部または全部が重ねられており、重ね部において互いに接合される。接合部13は、非溶融接合手段、即ち機械的接合手段132、及び摩擦撹拌点接合手段133等とされる。
機械的接合手段132は、例えばブラインドリベット、セルフピアシングリベット(自己穿孔リベット、SPR)、中空リベット、平リベット、ドリルネジ、ボルト、EJOWELD(登録商標)、及びFDS(登録商標)等である。これらによれば、板部材11は、冷間もしくは熱間で塑性加工により接合される。これらの記載的接合手段と、通電加熱及び加圧との組み合わせにより、板部材11を接合させてもよい。機械的接合手段132には、ブラインドリベットなどのように重ね合わせた金属板部材11を全て貫通するもの、及び、セルフピアシングリベットなどのように重ね合わせた金属板部材11の一部を貫通しないものがあるが、いずれも本実施形態に係る重ね接合構造1において用いることができる。図2に示される接合部13の例では、機械的接合手段132がリベットから構成されている。
機械的接合手段132として、レジスタンスエレメントウエルディング(Resistance Element Welding;REW)が用いられてもよい。このREWは、図3A及び図3Bに示すように、板厚方向に貫通する穴131が形成された板部材11(例えば、アルミ合金板)と、別の板部材11(例えば、ボロン鋼等の鋼板)とを重ね合わせ、穴131に鋼製のフランジ付きリベットである機械的接合手段132を挿入し、さらに、電極Xを用いて、2枚の板部材11を挟持しながら(図3Aを参照)、所定の電流値にて2枚の板部材11に通電することにより、機械的接合手段132の先端部分と板部材11との接触部分を溶融させてナゲット132’を形成する接合手段である(図3Bを参照)。このように、REWは、部分的に溶融接合手段を利用しているものの、本質的にはフランジ付きリベットという機械的要素を利用した接合手段であるため、このような接合手段も機械的接合手段132として、本発明に好適に用いることができる。
機械的接合手段132によって板部材11を接合する場合、機械的接合手段132を挿通させるための穴131を、板部材11に設ける必要がある。即ち、機械的接合手段132によって構成された接合部13は、機械的接合手段132が挿通される穴131を有する。機械的接合手段132が挿通される穴131は、板部材11を貫通するものであっても、貫通しないものであってもよい。
接合部13は、摩擦撹拌点接合によって形成された接合部である。ここで、摩擦撹拌点接合(FSSW:Friction Stir Spot Welding)とは、図4に示されるように、母材より相対的に硬い回転ツールYを回転させながら母材に圧入し、母材を溶融させることなく接合する固相接合の一種である。摩擦撹拌点接合では、回転ツールYの回転によって生じた摩擦発熱により板部材11の変形抵抗を低下させ、且つ回転ツールY周辺の板部材11を回転ツールYの動きによって塑性流動させ、撹拌し、一体化する(図4(B)を参照)。これら一連の工程において使われる回転ツールYは、通常、先端がネジ加工されたプローブを有する。回転ツールを板部材11に圧入し、摩擦撹拌点接合を実施し、次いで回転ツールYを母材から引き抜いた際、回転ツールYが圧入された板部材11にはプローブの圧入痕が必然的に生じる(図4(C)を参照)。即ち、摩擦撹拌点接合手段によって構成された接合部は、プローブの圧入痕である穴131を有する。本実施形態に係る重ね接合構造1は、プローブの圧入により板厚の80%以上の深さの穴が形成される場合に適用されることが好ましい。
なお、これらの非溶融接合手段と、他の接合手段(例えば樹脂等)とを組み合わせることも妨げられない。例えば、重ね合わせ面に接着剤(例えば、エポキシ樹脂系接着剤等)を介在させて、接着剤による接合を非溶融接合手段と併用してもよい。重ね合わせ面にシール用樹脂(シーラー、及び電着塗装等)を介在させて、合わせ目を防水ないし絶縁してもよい。重ね合わせ面に構造用接着剤及び耐衝撃型の接着剤等を介在させて、接着剤による接合を非溶融接合手段と併用することは、本実施形態に係る重ね接合構造1の好適な形態である。特に、アルミ材と鋼材とを組み合わせた構造部材の場合は、電気的絶縁ができるシール機能を有する樹脂及び接着剤等と、非溶融接合手段とを併用することが好ましい。
接合部13の位置は特に限定されないが、接合部13に形成される穴131の位置を板部材11の端部から離隔させることにより、穴131を起点として破断する可能性を一層抑制することができる。例えば、穴131の端部と板部材11の端部との間の最短距離Lと、穴131の直径Kとが以下の式を満たすことが好ましい。
L≧0.8K
接合部13のピッチ(隣り合う接合部13同士の間の間隔)も特に限定されない。重ね接合構造1が適用される構造物及び適用部位に応じて、ピッチを適宜設定すればよい。重ね接合構造1が自動車部品に適用される場合、例えば接合部13のピッチは20mm~100mm程度としてもよい。
なお、本実施形態に係る重ね接合構造1において、穴131は、板部材11を貫通する穴(通し穴)に限定されず、板部材11を貫通しない穴(止まり穴)、内面に段差がある穴(段付き穴)、内面が円錐状になっている穴(テーパ穴)、及び内面にねじが切ってある穴(めねじ穴)等であってもよい。また、穴131は、主板部材及び副板部材のいずれに設けられてもよい。
(3)軟質部14
上述のように、重ね部を機械的接合手段132や摩擦撹拌点接合手段により接合した重ね接合部材1では、重ね接合部材1の全体が引張変形を受けると、接合部13に形成されている穴131にひずみが集中することにより、穴131を起点とした板部材11の破断が生じる恐れがある。そこで本発明者らは、接合部13に形成されている穴131の端部にひずみが集中しないように、ひずみを分散する手段について検討した。その結果、板部材11の重ね部において、隣り合う接合部13の間に軟質部14を形成することにより、引張荷重によるひずみを分散させる構造となり、穴131を起点とする重ね接合部材1の破壊が抑制されるとの知見を得た。
以上の知見に基づき、本実施形態に係る重ね接合構造1は、重ね部における複数の接合部13の間に軟質部14を有する。軟質部14とは、軟質部14が設けられた板部材11の硬さH2の80%以下の硬さを有する領域である。軟質部14を特定する手段の例を図5に示す。図5は、穴131同士の間における板部材11の硬さ分布を示すグラフである。このグラフにおいて、硬さが板部材11の硬さH2の80%以下である領域が、軟質部である。
軟質部14は、重ね接合構造1を構成する複数の板部材11のうち1枚以上に設けられている必要があるが、いずれの板部材11に配置するかは適宜選択することができる。好ましくは、軟質部14は主板部材に設けられる。上述のように、主板部材は重ね接合構造1の機械的特性に最も影響する部材であるので、軟質部14を主板部材に設けることによって、穴131への歪み集中緩和効果を最大限に発揮させることができる。また、好ましくは、軟質部14は穴131が存在する板部材11に設けられる。以下、軟質部14を、穴131を有する主板部材に設けた構成によって本実施形態に係る重ね接合構造1を説明する。ただし、軟質部14は副板部材に設けられてもよいし、穴131を有しない板部材11に設けられてもよい。
軟質部14の大きさ及び形状は特に限定されないが、例えば、軟質部14の長さL1、軟質部14の幅W1、軟質部14の硬さH1、板部材11の硬さH2、及び穴131の直径Kが、以下の式1及び式2を満たすように、軟質部14の大きさ及び形状を定めることが好ましい。
L1>K (式1)
(H2-H1)×W1>H2×K (式2)
なお、図6に示されるように、軟質部14の長さL1とは、隣り合う穴131の中心を結ぶ線と、軟質部14の外縁との2つの交点間の距離である。L1の測定は、隣り合う穴131の中心を結ぶ線に沿って板部材11の硬さを連続的に測定することにより、図5のような硬さ-位置グラフを作成することにより行う。硬さ-位置グラフにおいて、0.8×H2を下回る領域の幅が、軟質部14の長さL1となる。
図6に示されるように、軟質部14の幅W1とは、隣り合う穴131の中心を結ぶ線と垂直な方向で測定される、軟質部14の幅である。なお、図9(B)に示されるように軟質部が折れ曲がっている場合、軟質部14の幅W1は軟質部14の折り曲げ部に沿って測定された値である。
軟質部14の硬さH1とは、隣り合う穴131の中心を結ぶ線に沿って板部材11の硬さを測定して得られる複数の硬さ値のうち、軟質部14において最も小さい値~3番目に小さい値の平均値である。図5を例に挙げて説明すると、点線で囲まれた3つの測定点における硬さの平均値が、H1である。
板部材11の硬さH2とは、軟質部14が設けられた板部材11のうち、接合部13、軟質部14、及び後述する第二軟質部15以外の領域の硬さである。この領域内の少なくとも3点で測定した硬さの平均値を、板部材11の硬さH2とみなす。
穴131の直径Kは、穴131が円筒状である場合は、板部材11を平面視した場合の穴131の径である。穴131が例えば円錐状等の非円筒状である場合は、穴131の実際の体積及び穴131の実際の深さと同一の体積及び深さを有する円筒の径を、穴131の直径Kとみなす。軟質部14の両隣の穴131の直径が相違する場合、軟質部14の両隣の穴131の径のうち大きいほうを、穴131の直径Kとみなす。例えば図6に示されるように、直径Kの穴と、直径がKより小さいK’である穴131との間にある軟質部14が式2を満たすか否かを評価するにあたっては、式にはKの値を代入する。穴131の平面視での形状が円ではない場合、その円相当径を穴131の直径Kとみなす。めねじ穴の場合は、凹凸ピッチの広いほうの直径をKとみなす。
上述の定義から明らかなように、重ね接合構造1に複数設けられ得る軟質部14のそれぞれが式1及び式2を満たすか否かの評価は、軟質部14と、その両隣の穴131との関係に基づいて行われる。なお、軟質部14と穴131とが異なる板部材11に設けられている場合は、複数の板部材11が接合された状態で板部材11を平面視したときの軟質部14と穴131との位置関係に基づいて上述の値を特定すればよい。硬さの測定は、ビッカース硬さ計で測定することが推奨される。ビッカース硬さ測定時の測定荷重は、板部材11の材質に応じて適宜選択すればよい。式2においては、ビッカース硬さに係数を掛けた値の比較が行われているので、同一の測定荷重でH1及びH2を測定すれば、測定荷重の影響を受けることなく、軟質部14が式2を満たすか否かの評価をすることができる。これは、後述の式4についても同じである。
式1を満たす軟質部14は、穴131の直径Kに対して十分に長いので、重ね接合構造1に応力が付加されたときに、破断に至るまでの重ね接合構造1の伸び量を増大させることができる。この効果を得るために、軟質部14の長さL1は、長ければ長いほど好ましい。例えば、軟質部14の長さL1を、穴131の直径Kの2倍以上(即ちL1≧2×K)、3倍以上(即ちL1≧3×K)、又は4倍以上(即ちL1≧4×K)と規定してもよい。ただし、軟質部14の長さL1が大きすぎると、後述する穴131の端部と軟質部14の端部との最短距離Dが狭まることとなる。穴131の端部と軟質部14の端部との最短距離D、及び穴131同士の間隔などを考慮しながら、軟質部14の長さL1を定めるとよい。
式2の右辺「H2×K」は、穴131による板部材11の強度低下の影響を示し、式2の左辺「(H2-H1)×W」は、軟質部14による強度低下の影響を示す。式2を満たす軟質部14が設けられた重ね接合構造1に引張応力(隣り合う穴131の中心を結ぶ線に沿った引張応力)が付加された場合、穴131の周囲よりも軟質部14の方が優先的に変形する。従って、式2を満たす軟質部14は歪み集中の緩和効果を奏する。
軟質部14と穴131との間隔は特に限定されないが、大きいほうが好ましい。例えば、穴131の端部と軟質部14の端部との最短距離D、及び穴131の直径Kが、以下の式3を満たすことが好ましい。
D≧K (式3)
なお図6に示されるように、穴131の端部と軟質部14の端部との最短距離Dとは、隣り合う穴131の中心を結ぶ線と軟質部14の縁との交点、及び、この線と穴131の縁との交点の間の距離である。軟質部14の両側にある穴131の大きさが、左右で相違することがあり、穴131と軟質部14との間隔も、左右で相違することがあるが、式3が満たされているか否かの判断は穴131ごとに実施すればよい。例えば、図6の例では、軟質部14の右側が式3を満たすか否かはD及びKに基づいて判断し、軟質部14の左側が式3を満たすか否かはD’及びK’に基づいて判断すればよい。
式3が満たされる重ね接合構造1によれば、破断歪み(重ね接合構造1に破断が生じるまでの、重ね接合構造1の歪み量)を一層向上させることができる。何故なら、式3を満たすように軟質部14と穴131との間隔が確保された重ね接合構造1に変形が生じた場合、穴131から軟質部14に向かった亀裂の進展が効果的に防止されるからである。この効果を得るために、軟質部14と穴131との間隔は長ければ長いほど好ましい。例えば、穴131の端部と軟質部14の端部との最短距離Dを、穴131の直径Kの2倍以上(即ちD≧2×K)、穴131の直径Kの3倍以上(即ちD≧3×K)、又は穴131の直径Kの4倍以上(即ちD≧4×K)としてもよい。ただし、穴131の端部と軟質部14の端部との最短距離Dが大きすぎると、上述した軟質部14の長さL1が短くなる。軟質部14の長さL1、及び穴131同士の間隔などを考慮しながら、穴131の端部と軟質部14の端部との最短距離Dを定めるとよい。
図7に示されるように、重ね接合構造1の板部材11が、接合部13(図7では図示省略)を囲み、且つ軟質部14から離隔された第二軟質部15を有してもよく、ここで軟質部14の硬さH1、軟質部を有する板部材11の硬さH2、第二軟質部15の硬さH3、軟質部14の幅W1、第二軟質部15の幅W3、及び穴131の直径Kが、以下の式4を満たしてもよい。
(H2-H1)×W1>H2×K+(W3-K)×(H2-H3) (式4)
なお、第二軟質部15とは、第二軟質部15が設けられた板部材11の硬さH2の80%以下の硬さを有する領域である。第二軟質部15の幅W3とは、接合部が並ぶ方向に対して垂直な方向に沿って測定される第二軟質部15の幅の距離である。
第二軟質部15の硬さH3とは、隣り合う穴131の中心を結ぶ線に沿って板部材11の硬さを測定して得られる複数の硬さ値のうち、第二軟質部15において最も小さい値~3番目に小さい値の平均値である。穴131が直線状に配されていない場合、第二軟質部15の硬さH3とは、図8に示されるB-A-C線に沿って測定される板部材11の複数の硬さ値のうち、第二軟質部15において最も小さい値~3番目に小さい値の平均値である。なお、図8におけるAは、硬さH3を特定しようとする第二軟質部15に囲まれる穴131の中心である。図8におけるBは、硬さH3を特定しようとする第二軟質部15の隣の穴131の中心から前述のAまでを結ぶ線と、第二軟質部15の縁との交点である。図8におけるBは、硬さH3を特定しようとする第二軟質部15の両隣の穴131のうち一方の中心から前述のAまでを結ぶ線と、第二軟質部15の縁との交点である。図8におけるCは、硬さH3を特定しようとする第二軟質部15の両隣の穴131のうち他方の中心から前述のAまでを結ぶ線と、第二軟質部15の縁との交点である。
第二軟質部15は、複数の板部材11同士を接合する前に第二軟質部15を板部材に設けられた場合、接合部13の形成を容易にする効果を有する。例えば、引張強さが1500MPaを超えるホットスタンプ材料が板部材11である場合、板部材11が硬すぎて、セルフピアシングリベット等の機械的接合手段132を打ち込めない場合がある。第二軟質部15を予め板部材11に設けることで、複数の板部材11同士の接合を容易にすることができる。
ここで、穴131から軟質部14に向かった亀裂の進展を効果的に防止するために、軟質部14と第二軟質部15とは互いに離隔されている。また、第二軟質部15は、式4を満たす形状及び硬さを有することが好ましい。式4の左辺「(H2-H1)×W1」は、式2の左辺と同じく、軟質部14による強度低下の影響を示す。式4の右辺「H2×K+(W3-K)×(H2-H3)」は、穴131及び第二軟質部15による板部材11の強度低下の影響を示す。式4を満たす軟質部14及び第二軟質部15が設けられた重ね接合構造1に引張応力(隣り合う穴131の中心を結ぶ線に沿った引張応力)が付加された場合、穴131の周囲(即ち第二軟質部15)よりも、軟質部14の方が優先的に変形する。従って、式4を満たす軟質部14は穴131への一層高い歪み集中緩和効果を奏する。
本実施形態に係る重ね接合構造1の製造方法、特に軟質部14(及び必要に応じて第二軟質部15)の形成方法は特に限定されない。軟質部14及び第二軟質部15を形成する工程は、板部材11を接合する工程の前に行われても、後に行われてもよい。第二軟質部15を形成する工程を、板部材11を接合する工程の前に行う場合、接合部13の形成が容易になるので好ましい。
軟質部14(及び必要に応じて第二軟質部15)を形成する手段は、板部材11の材質に応じて適宜選定することができる。例えば、板部材11がマルテンサイト及びベイナイトなどを含む高強度鋼板である場合、レーザ照射又は高周波加熱による焼戻し(板部材11の局所的な加熱、及び徐冷)によれば、局所的な硬さ低下を容易に生じさせることができる。好適には、レーザビームによる焼戻しが望ましい。レーザビームは、エネルギーが安定しているからである。例えば、レーザビームは、ディスクレーザ、ファイバーレーザ、ダイレクトダイオードレーザ、YAGレーザ、及び炭酸ガスレーザ等のいずれかを用い、ビーム径を5~25mmの範囲とし、出力を1~10kWの範囲として、軟質部14を形成してもよい。さらに好適には、矩形集光が可能で矩形状のエネルギー分布をもつ光学系の適用が望ましい。
また、板部材11がホットスタンプによって成形されるものである場合、ホットスタンプ用の金型を用いて軟質部14及び第二軟質部15を形成することができる。通常のホットスタンプでは、まずA3点以上まで鋼板を加熱し、次いで水冷金型(水などの冷媒を流通させる流路を備え、被加工材を冷却する機能を有する金型)を用いて鋼板を成形し、さらに水冷金型を用いて鋼板を急冷することによりマルテンサイトを生成させる。ここで、水冷金型によって急冷する箇所を、軟質部14及び第二軟質部15以外の箇所に限定し、軟質部14及び第二軟質部15を設ける箇所については徐冷するように、水冷金型を構成することができる。また、鋼板を加熱する際に、軟質部14及び第二軟質部15を設ける箇所については最高加熱温度をA3点以下とし、その他の箇所については最高加熱温度をA3点以上にすることによっても、軟質部14及び第二軟質部15を形成することかできる。
上述された本実施形態に係る重ね接合構造1の具体例を、図9A~図9Dを参照しながら以下に説明する。図9A~図9Dは、板部材11が曲げ部及びフランジ部12を有し、フランジ部12において板部材11同士が重ねられ、接合部13によって接合されている種々の重ね接合構造1を示す。いずれの例においても、接合部13の間には軟質部14が設けられているが、軟質部14の形状は様々なものとすることができる。
図9Aは、軟質部14がフランジ部12の端部に沿った長方形形状を有し、且つフランジ部12の内部にのみ設けられた例である。
図9Bは、軟質部14がフランジ部12の端部に沿った長方形形状を有し、且つ板部材11の曲げ部を超えて延在する例である。具体的には、図9Bに例示された重ね接合構造1においては、軟質部14は、フランジ部12の内部のみならず、曲げ部を超えてフランジ部12の外部に延伸している。この場合、軟質部14の幅W1は、板部材11の屈曲に沿って測定される。また図9Bに例示された重ね接合構造1においては、軟質部14は、フランジ部12の端部にも及んでいる。
図9Cは、軟質部14が曲げ部からフランジ部12の端部に向けて広がる形状を有する例である。この場合、軟質部14の長さL1は、隣り合う穴131の中心を結ぶ線と、軟質部14の外縁との2つの交点間の距離として定義される。
図9Dは、軟質部14が角丸長方形形状(二つの等しい長さの平行線、及びこれら平行線の両端に設けられた二つの半円からなる形状)を有する例である。この場合、上述されたように、軟質部14の長さL1は、隣り合う穴131の中心を結ぶ線と軟質部14の外縁との2つの交点間の距離として定義され、軟質部14の幅W1は、隣り合う穴131の中心を結ぶ線と垂直な方向で測定される軟質部14の幅として定義される。
なお、本実施形態に係る重ね接合構造1において、全ての穴131の間に軟質部14を設ける必要はない。重ね接合構造1において、変形の生じやすさが一様であるとは限らないからである。例えば、変形が特に生じやすく、穴131への歪み集中が危惧される箇所においてのみ軟質部14を設け、その他の箇所には軟質部14を設けないこととしてもよい。即ち、一部の穴131の間にのみ軟質部14が設けられた重ね接合構造1も、本実施形態に係る重ね接合構造1に該当する。
本実施形態に係る重ね接合構造1の用途は特に限定されない。重ね接合構造1の好適な用途の一つとして、接合された複数の鋼板から構成される自動車部品、特に自動車骨格部品が挙げられる。自動車骨格部品は、マルテンサイトを含有する高強度鋼板から構成されるので、本実施形態に係る重ね接合構造1を容易に適用することができ、この場合に自動車の衝突安全性を高めるという顕著な効果が得られる。一方、機械的接合手段132及び/又は摩擦撹拌点接合手段によって接合されるあらゆる板部材11に、本実施形態に係る重ね接合構造1を適用することが可能である。例えば、リベット又は高力ボルトによって接合される橋梁部材、及び摩擦撹拌点接合によって接合されるアルミ製鉄道車両構体等に関しても、本実施形態に係る重ね接合構造1を適用することで、破断の抑制が可能であると考えられる。本実施形態に係る重ね接合構造1を、建築用の建具、梁、リンク部材、簡易倉庫、家具、冷蔵庫、テレビ、コピー機、クーラー室外機などの家電及び什器等に適用することも考えられる。
次に、本発明の別の態様に係る自動車骨格部品について説明する。本実施形態に係る自動車骨格部品は、本実施形態に係る重ね接合構造1を有する自動車骨格部品である。この自動車骨格部品は、例えばAピラー、Bピラー、サイドシル、バンパー、フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー又はルーフレールである。以下、本実施形態に係る自動車骨格部品の例を説明する。
図10は、本実施形態に係る自動車骨格部品の一例であるBピラー2の斜視図である。この図においてサイドパネルアウタは省略されている。図10のBピラー2は、穴131を有する機械的接合部13(図示されていない)と、隣り合う機械的接合部13の間(即ち穴131の間)に設けられた軟質部14を有する。ただし、一部の機械的接合部13の間(図10における、点線で囲まれた領域)には、軟質部は設けられていない。これは、車体の側面衝突時の歪みの発生はBピラーの部位に応じて異なり、衝突時に穴からの破断が発生しにくい、歪み量の小さい部位には必ずしも軟質部を設ける必要がないとの理由による。
図11は、図10のBピラー2のXI-XI断面図である。このBピラー2は、通常の鋼板であるBピラーインナ22と、高強度鋼板であるBピラーリンフォース21と、アルミ又は軟鋼であるサイドパネルアウタ23とから構成される。これらが板部材11に該当し、特にBピラーリンフォース21は主板部材に該当する。Bピラーリンフォース21、Bピラーインナ22、及びサイドパネルアウタ23はその両端で接合され、主板部材に該当するBピラーリンフォース21には軟質部14が設けられている。
図12は、本実施形態に係る自動車骨格部品の一例であるAピラー3及びルーフレール4の斜視図である。図12に示された部品でも、一部の穴の間にのみ軟質部14が設けられる。
図13は、図12に示されたルーフレール4のXIII-XIII断面図である。この自動車骨格部品は、高強度鋼板であるルーフレールインナ42と、高強度鋼板であるルーフレールアウタリンフォース41と、アルミ又は軟鋼であるサイドパネルアウタ43とから構成される。これらが板部材11に該当し、特にルーフレールアウタリンフォース41は主板部材に該当する。ルーフレールインナ42、ルーフレールアウタリンフォース41、及びサイドパネルアウタ43はその両端で接合され、主板部材に該当するルーフレールアウタリンフォース41には軟質部14が設けられている。
図14は、本実施形態に係る自動車骨格部品の一例であるBピラーのヒンジリンフォース5の斜視図である。この自動車骨格部品では、ハット状部材52と、ハット状部材の内側に沿って配された高強度鋼板51とが機械的接合手段である接合部13によって接合されており、高強度鋼板の接合部13の間(即ち穴131の間)には軟質部14が設けられている。フロアメンバーにも、図14に示される構成を用いることができる。
本実施形態に係る重ね接合構造1の説明においては、2枚又は3枚の板部材11を重ね合せた重ね部に接合部を形成した重ね接合構造を例示したが、4枚以上の板部材11を重ね合せてもよい。また、本実施形態に係る重ね接合構造1の説明においては、2枚又は3枚の板部材11のうち1枚の板部材11又は2枚の板部材11に軟質部が形成される場合について説明したが、例えば、4枚以上(複数)の板部材11を重ね合せた重ね部に接合部を形成して、重ね接合構造を構成してもよく、かかる場合、軟質部が形成された板部材11の枚数は、任意に設定することができる。また、板部材11を重ね合せて形成する重ね部をフランジ部とする必要はない。部分補強等を目的として、フランジを有しない板部材11同士を重ね合せて接合する重ね接合構造なども本実施形態に係る重ね接合構造に含まれることはいうまでもない。
図15に示す、軟質部を備えない板部材A及び板部材Bを接合した試料No.1及びNo.8、並びに図16に示す、軟質部を備える板部材A及び軟質部を備えない板部材Bを接合した試料No.2~No.7及びNo.9~No.11を作成した。ここで、図15及び図16の(A)は試料(リベット接合のもの)の平面図であり、図15及び図16の(B)は試料(リベット接合のもの)の側面図である。なお、図15および図16において板部材Aは、幅20mmの平行部と、平行部の両端に設けられた幅35mmの保持部(肩部)を有する、長さ200mmの板(評点間隔50mm)である。図15および図16において板部材Bは、板部材Aの平行部に重ねられた、幅20mm及び長さ60mmの板である。板部材Aの種別、板厚、及び硬さは、全ての試料で同一とし、その内容は表1に示す通りとした。板部材Bの種別、板厚、及び硬さは、表1に示すB1及びB2の2種類とした。板部材Aの金属組織は、ほぼすべてマルテンサイトであった。
Figure 0007370150000001
板部材A及び板部材Bの接合手段は、リベット、SRP(セルフピアシングリベット)、及び摩擦撹拌接合のいずれかとした。接合手段をSRPとした試料のうち、No.6においては、板部材AのSRP部に第二軟質部を形成した。第二軟質部の幅W3は10mmとし、第二軟質部の硬さH3はHV270とした。板部材A及びBの穴の直径K、及び軟質部の形状は、表2に示す通りとした。なお、軟質部は試験片の平行部の両端に沿った長方形形状とされており、軟質部の幅W1は、平行部の両端に垂直な方向に沿って測定される軟質部の幅とし、軟質部の長さL1は、平行部の両端に平行な方向に沿って測定される軟質部の長さとした。
そして、表2の試料No.1~11に引張試験を行い、その破断歪を測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 0007370150000002
表2に示されるように、軟質部を有しない板部材から構成された重ね接合構造の試料No.1及びNo.8と比較して、軟質部を有する板部材Aを含む重ね接合構造の試料No.2~No.7及びNo.9~No.11は、破壊の起点が(接合部の)穴ではなく、軟質部であり、かつ優れた破断歪を有した。
引張試験後の各試料を詳細に確認すると、軟質部を備えない試験片は、図15に破断部Zとして示すように穴を起点として破断していた。参考に、機械的接合部を備えるが軟質部を備えなかったNo.1の試験後の写真を図17に示す。一方、軟質部を備える試験片は、破断部Zとして図16に示すように、軟質部14において破断していた。
本発明によれば、複数の板部材を重ね合せて形成された重ね部を、非溶融接合手段によって接合した場合に、接合時に形成された穴を起点に板部材が破断するのを抑制し、破断するまでの伸びを大きくすることが可能な重ね接合部材の重ね接合構造を提供することができる。例えば、本発明を自動車に適用した場合、その衝突時の乗員保護性能を飛躍的に向上させることができる。従って、本発明は高い産業上の利用可能性を有する。
1 重ね接合構造
11 板部材
12 フランジ部
13 接合部
131 穴
132 機械的接合手段
132’ ナゲット
133 摩擦撹拌点接合手段
14 軟質部
15 第二軟質部
2 Bピラー
21 Bピラーリンフォース
22 Bピラーインナ
23 サイドパネルアウタ
3 Aピラー
4 ルーフレール
41 ルーフレールアウタリンフォース
42 ルーフレールインナ
43 サイドパネルアウタ
5 ヒンジリンフォース
51 高強度鋼板
52 ハット状部材
X 電極
Y 回転ツール

Claims (10)

  1. 重ね合わせられた複数の板部材と、
    前記複数の板部材の重ね部に設けられた、機械的接合手段又は摩擦撹拌点接合手段によって構成された複数の接合部と、
    を備え、
    前記複数の接合部は、前記機械的接合手段が挿通される穴、又は摩擦撹拌点接合によって形成された穴を有し、
    前記複数の板部材のうち1枚以上が、前記重ね部における前記複数の接合部の間に軟質部を有し、
    前記軟質部の硬さが、前記軟質部が設けられた前記板部材の硬さの80%以下である
    ことを特徴とする重ね接合構造。
  2. 前記軟質部の長さL1、前記軟質部の幅W1、前記軟質部の硬さH1、前記軟質部を有する前記板部材の硬さH2、及び前記穴の直径Kが、以下の式1及び式2を満たすことを特徴とする請求項1に記載の重ね接合構造。
    L1>K (式1)
    (H2-H1)×W1>H2×K (式2)
  3. 前記穴の端部と、前記軟質部の端部との最短距離D、及び前記穴の直径Kが、以下の式3を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の重ね接合構造。
    D≧K (式3)
  4. 前記穴が、前記複数の板部材のうち1枚以上を貫通することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の重ね接合構造。
  5. 前記軟質部が、前記穴を有する前記板部材に設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の重ね接合構造。
  6. 前記軟質部が、板厚と引張強さとの積が最も大きい主板部材に設けられることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の重ね接合構造。
  7. 前記板部材が、前記接合部を囲み、且つ前記軟質部から離隔された第二軟質部を有し、
    前記軟質部の硬さH1、前記軟質部を有する前記板部材の硬さH2、前記第二軟質部の硬さH3、前記軟質部の幅W1、前記第二軟質部の幅W3、及び前記穴1の直径Kが、以下の式4を満たすことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の重ね接合構造。
    (H2-H1)×W1>H2×K+(W3-K)×(H2-H3) (式4)
  8. 前記軟質部を有する前記板部材では、引張強さが980MPa以上であり、その金属組織がマルテンサイトを含む鋼板であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の重ね接合構造。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の重ね接合構造を有する自動車骨格部品。
  10. Aピラー、Bピラー、サイドシル、バンパー、フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー又はルーフレールであることを特徴とする請求項9に記載の自動車骨格部品。
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