JP7369544B2 - アルミニウム板状構造体を含む建築部材及び改修排水ドレン並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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アルミニウム板状構造体を含む建築部材であって、
前記アルミニウム板状構造体は、Fe、Si及びCuを含み、純度が99.99質量%以上であり、
前記アルミニウム板状構造体は、切断部と当該切断面に隣接する表面とを有し、
前記切断面の少なくとも一部について、下記(1)式で表わされる切断面近傍の加工硬化率が110%以下である、建築部材である。
(前記表面と前記切断面との境界から0.3mm以内の位置で無作為に選択した前記表面上の4箇所のビッカース硬度の平均値)÷(前記境界から10.0mmの位置で無作為に選択した前記表面上の4箇所のビッカース硬度の平均値)×100 (1)
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム圧延板を準備する工程と、
レーザー切断により前記アルミニウム圧延板の少なくとも一部を切断して前記アルミニウム板状構造体を得る切断加工工程と
を含む、建築部材の製造方法である。
本発明の実施形態に係る建築部材は、
アルミニウム板状構造体を含み、
純度が99.99質量%以上であり、
アルミニウム板状構造体は、切断部と当該切断面に隣接する表面とを有し、
切断面の少なくとも一部について、下記(1)式で表わされる切断面近傍の加工硬化率が110%以下である、建築部材である。
(上記表面と上記切断面との境界から0.3mm以内の位置で無作為に選択した上記表面上の4箇所のビッカース硬度の平均値)÷(当該境界から10.0mmの位置で無作為に選択した上記表面上の4箇所のビッカース硬度の平均値)×100 (1)
なお、純度を示す質量パーセント表記における先頭から連続する9の数の後にナインの頭文字であるNを付して、例えば純度99.99質量%を「4N」と記載し、「フォーナイン」と呼ぶことがある。純度4Nのアルミニウムを「4N-Al」と記載する場合がある。
すなわち、本発明の実施形態に係る建築部材において、アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上である。これにより、アルミニウム板状構造体の強度を抑制し、塑性変形を容易にし、且つ加工硬化による強度上昇を小さくすることができる。
そこで、Fe、Cu及びSiの合計の含有量を用いて、高純度アルミニウムの純度を求めてよい。すなわち、高純度アルミニウムの純度[質量%]を、(100-(Fe、Cu及びSiの合計の含有量[質量%])としてよい。例えば、Fe、Cu及びSiの合計の含有量が0.01質量%以下である場合の高純度アルミニウムの純度を、99.99%以上(4N以上)としてよい。
すなわち、本発明の実施形態に係る建築部材において、アルミニウム板状構造体は、切断面と切断面に隣接する表面とを有し、切断面の少なくとも一部について、下記(1)式で表わされる切断面近傍の加工硬化率が110%以下である。
(上記表面と上記切断面との境界から0.3mm以内の位置で無作為に選択した上記表面上の4箇所のビッカース硬度の平均値)÷(当該境界から10.0mmの位置で無作為に選択した上記表面上の4箇所のビッカース硬度の平均値)×100 (1)
JIS Z 2244:2009では、試験力によって硬さ記号を変えることが定められている。本発明の実施形態において、ビッカース硬度として、例えば試験力が0.01kgf(=0.0981N)のときのビッカース硬度HV0.01を用いてよい。
また、試験力は、他の測定条件を考慮して適切に選択してよい。例えばJIS Z2244:2009に記載のように、試験片(すなわち、アルミニウム板状構造体)の厚みが圧痕の対角線の長さの1.5倍以上となるように、試験片の厚みと試験力を選択してよい。試験力の好適な例として、アルミニウム板状構造体の厚みが300μm以上の場合は0.001~0.05kgf、アルミニウム板状構造体の厚みが300μm未満の場合は0.005~0.01kgfが挙げられる。試験力及び試験片の硬度により、圧痕サイズを調整することができる。
また、アルミニウム板状構造体の板厚は、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.8mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。これにより、例えば本発明の実施形態に係る建築部材が改修排水ドレンである場合、アルミニウム板状構造体の柔軟性を確保することがより容易となり、改修排水ドレンの施工性を向上させることがより容易となる。
本発明の実施形態に係る改修排水ドレンは、本発明の実施形態に係る建築部材の一態様であり、アルミニウム板状構造体に設けられた開口部と流体連通するように中空管の一方の端部がアルミニウム板状構造体に固着されている。
中空管が樹脂製又は螺旋状に巻かれた金属若しくは金属メッシュを樹脂で被覆してなるものである場合、中空管の一方の端部は、例えば接着剤等によりアルミニウム板状構造体に固着されていてよい。
い。中空管としてアルミニウム中空管を用いることにより、耐食性が向上し、長時間雨水に曝されても改修排水ドレンが劣化しにくくなる。
中空管がアルミニウム中空管である場合、アルミニウム中空管の一方の端部はアルミニウム板状構造体に溶接されていてよい。
本発明の実施形態に係るアルミニウム板状構造体を含む建築部材の製造方法は、
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム圧延板を準備する工程と、
レーザー切断によりアルミニウム圧延板の少なくとも一部を切断してアルミニウム板状構造体を得る切断加工工程とを含む。
以下、各工程について説明する。
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム圧延板を準備する。
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム材からなる圧延素材を作製する工程と、
圧延素材を圧延してアルミニウム圧延板を得る圧延工程と
を含む方法により、アルミニウム圧延板を準備してよい。
上述した組成を有するアルミニウム材からなる圧延素材は、例えば以下のような方法で得ることができる。すなわち、後述する精製方法により得られる高純度アルミニウムに対して、不純物の侵入を抑制しつつ溶解した溶湯から所定形状の鋳塊を作製する。その後、鋳塊を所定形状に切削加工することで圧延素材を得ることができる。なお、圧延素材の作成方法は上述の方法に限定されるものではなく、従来公知の方法(例えばダイキャスティング、押出等)を用いてもよい。また、圧延素材に熱処理を施す工程(均質化熱処理工程)が含まれていてもよい。
三層電解法では純度99.999質量%以上の高純度アルミニウムを得ることができる。またアルミニウム中のFeの濃度を比較的容易に10質量ppm(0.001質量%)以下に抑制することができる。
圧延工程は、得られた圧延素材を圧延する工程であり、例えば圧延加工率90%以上の圧延を施す工程である。ここでいう圧延加工率は、圧延素材の厚さ(つまり、圧延前の厚さ)から圧延により得られた最終板材の厚さを差し引いた値(つまり、圧延により減少した厚さ)を、圧延素材の厚さで除した値の百分率であって、次式:
圧延加工率(%)=[(圧延前の厚さ-圧延後の厚さ)÷圧延前の厚さ]×100
により算出される。例えば厚さ10mmの圧延素材を圧延して厚さ1mmの板材とすれば、圧延加工率は90%となる。
レーザー切断により、上述のようにして準備したアルミニウム圧延板の少なくとも一部を切断してアルミニウム板状構造体を得る。アルミニウム圧延板の少なくとも一部にレーザー切断を施してアルミニウム板状構造体を作製することにより、レーザー切断により形成した切断面近傍の加工硬化を低減することができる。すなわち、アルミニウム板状構造体は、レーザー切断により形成した切断面について、切断面近傍の加工硬化率が110%以下である。一方、シャー切断やプレス加工等のように機械的な力を用いる方法で形成した切断面は、その近傍が加工硬化しており、切断面近傍の加工硬化率が高い。
より具体的には、例えば以下の態様[a]~[f]が挙げられる。
[a]アルミニウム板状構造体の外周部の一部をレーザー切断により形成し、残りの外周部をプレス加工により形成する。
[b]アルミニウム板状構造体の外周部の一部をレーザー切断により形成し、残りの外周部及び開口部をプレス加工により形成する。
[c]アルミニウム板状構造体の外周部の一部及び開口部をレーザー切断により形成し、残りの外周部をプレス加工により形成する。
[d]アルミニウム板状構造体の外周部の全部をプレス加工により形成し、開口部をレーザー切断により形成する。
[e]アルミニウム板状構造体の外周部の全部をレーザー切断により形成し、開口部をプレス加工により形成する。
[f]アルミニウム板状構造体の外周部の全部及び開口部をレーザー切断により形成する、すなわち、アルミニウム圧延板の全ての切断をレーザー切断により行う。
本発明の実施形態に係る建築部材の製造方法は、アルミニウム圧延板又はアルミニウム板状構造体を焼鈍する焼鈍工程を含んでよい。焼鈍工程は、切断工程前のアルミニウム圧延板に施してよく、あるいは、切断工程で未焼鈍のアルミニウム圧延板を切断して得られたアルミニウム板状構造体に施してもよい。焼鈍工程により、アルミニウム板状構造体を調質処理材とすることができる。
焼鈍温度を300℃以上とすることで、より優れた柔軟性を有するアルミニウム板状構造体を得ることができる。一方、その温度を600℃以下とすることで、焼鈍の際、アルミニウム圧延板同士又はアルミニウム板状構造体同士の貼り付きを抑制でき、外観品質の良好な建築部材が得られる。従って、焼鈍温度は、好ましくは300℃以上であり、好ましくは600℃以下である。
また、焼鈍時間を1時間以上とすることで、より柔軟性に優れた改修排水ドレン用板状構造体が得られる。焼鈍時間は長くしても特性上の問題は生じないが、コスト上の観点から24時間程度までで充分である。従って、焼鈍時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
本発明の実施形態に係る改修排水ドレンの製造方法は、本発明の実施形態に係る建築部材の製造方法の一態様であり、アルミニウム板状構造体に、開口部と流体連通するように中空管の一方の端部を固着する中空管固着工程を含む。
上記高純度アルミニウムからなる圧延素材を準備し、圧延素材を厚さ20mmから室温で圧延し、厚さ0.8mmのアルミニウム圧延板を得た。アルミニウム圧延板を430℃で6時間焼鈍し、次いで、レーザー切断により、中央部に直径10mmの略円形の開口部を有する、実施例1~3のアルミニウム板状構造体A~C(縦60mm×横60mm×板厚0.8mm)を得た。
また、上記と同様にして工業用純アルミニウム(純度99.5質量%)製のアルミニウム圧延板を得た。アルミニウム圧延板を430℃で6時間焼鈍し、次いで、レーザー切断により、中央部に直径10mmの略円形の開口部を有する、比較例1のアルミニウム板状構造体D(縦60mm×横60mm×板厚0.8mm)を得た。
また、上記と同様にして工業用純アルミニウム(純度99.5質量%)及び高純度アルミニウム(4N-Al、5N-Al、6N-Al)製のアルミニウム圧延板を得た。アルミニウム圧延板を430℃で6時間焼鈍し、次いで、シャー切断による外周加工及びプレス加工による開口部形成により、中央部に直径10mmの略円形の開口部を有する、比較例2~5のアルミニウム板状構造体E~H(縦60mm×横60mm×板厚0.8mm)を得た。
0.1mm~5.0mmの位置におけるビッカース硬度HV0.01の平均値を10.0mmの位置におけるビッカース硬度HV0.01の平均値でそれぞれ除することにより加工硬化率を求めた。加工硬化率を表2に示す。
表2から分かるように、レーザー切断により作製した実施例1~3及び比較例1のアルミニウム板状構造体A~Dは、開口部の切断加工端部から0.3mm以内の位置である切断部近傍の加工硬化率が110%以下と低かった。一方、プレス加工により作製した比較例2~5のアルミニウム板状構造体E~Hは、開口部の切断加工端部から0.3mm以内の位置である切断部近傍の加工硬化率が110%を超えて高かった。
(目標寸法1)
外周部:一辺300.00mm
開口部:直径52.50mm
辺と開口部との最短の直線距離:123.75mm
(目標寸法2)
外周部:一辺400.00mm
開口部:直径52.50mm
辺と開口部との最短の直線距離:173.75mm
(目標寸法3)
外周部:一辺300.00mm
開口部:直径45.00mm
辺と開口部との最短の直線距離:127.50mm
(目標寸法4)
外周部:一辺400.00mm
開口部:直径45.00mm
辺と開口部との最短の直線距離:177.50mm
また、比較例4と同様にしてアルミニウム圧延板を得た後、シャー切断による外周加工及びプレス加工による開口部形成により、目標寸法3で比較例6のアルミニウム板状構造体K、及び目標寸法4で比較例7のアルミニウム板状構造体Lを得た。
図1中、xは外周部12の辺の長さ、yは開口部14の直径、zは外周部12の辺から開口部14までの最短の直線線距離である。x、y及びzの実測の長さと目標寸法との差の絶対値(以下、「ズレ量」と呼ぶことがある)を比較することにより、アルミニウム板状構造体10の寸法精度を評価することができる。
12:外周部
14:開口部
20:改修排水ドレン
22:板状構造体
24:中空管
30:排水口
32:排水ドレン下地
34:排水ドレン下地平坦部
36:排水ドレン下地窪み部
38:既設ドレン管
Claims (20)
- アルミニウム板状構造体を含む建築部材であって、
前記アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上であり、
前記アルミニウム板状構造体は、切断面と当該切断面に隣接する表面とを有し、
前記切断面の少なくとも一部について、下記(1)式で表わされる切断面近傍の加工硬化率が110%以下である、建築部材。
(前記表面と前記切断面との境界から0.3mm以内の位置で無作為に選択した前記表面上の4箇所のビッカース硬度の平均値)÷(前記境界から10.0mmの位置で無作為に選択した前記表面上の4箇所のビッカース硬度の平均値)×100 (1) - 前記下記(1)式で表わされる切断面近傍の加工硬化率が105%以下である、請求項1に記載の建築部材。
- 前記アルミニウム板状構造体の板厚が、0.7mm以上1.5mm以下である、請求項1に記載の建築部材。
- 前記純度が99.997質量%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の建築部材。
- 前記アルミニウム板状構造体が調質処理材である請求項1~4のいずれか1項に記載の建築部材。
- 前記切断面の全てについて、前記加工硬化率が105%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の建築部材。
- 前記切断面の前記少なくとも一部が開口部を規定する請求項1~6のいずれか1項に記載の建築部材。
- 前記アルミニウム板状構造体が、一辺200mm以上600mm以下の略四角形又は直径200mm以上600mm以下の略円形であり、且つ前記開口部が直径30mm以上200mm以下の略円形である請求項7に記載の建築部材。
- 請求項7又は8に記載の建築部材である改修排水ドレンであって、前記開口部と流体連通するように中空管の一方の端部が前記アルミニウム板状構造体に固着されている改修排水ドレン。
- 前記中空管であるアルミニウム中空管の一方の端部が前記アルミニウム板状構造体に溶接されている請求項9に記載の改修排水ドレン。
- アルミニウム板状構造体を含む建築部材の製造方法であって、
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム圧延板を準備する工程と、
レーザー切断により前記アルミニウム圧延板の少なくとも一部を切断して前記アルミニウム板状構造体を得る切断加工工程と
を含む、建築部材の製造方法。 - 前記純度が99.997質量%以上である請求項11に記載の建築部材の製造方法。
- 前記アルミニウム圧延板又は前記アルミニウム板状構造体を、300℃以上600℃以下の温度で、1時間以上24時間以下保持する焼鈍工程を含む請求項11又は12に記載の建築部材の製造方法。
- 前記切断加工工程において、前記アルミニウム圧延板の全ての切断をレーザー切断により行う請求項11~13のいずれか1項に記載の建築部材の製造方法。
- 前記切断加工工程において、1つの前記アルミニウム圧延板から2つ以上の前記アルミニウム板状構造体を得る請求項11~14のいずれか1項に記載の建築部材の製造方法。
- 前記切断加工工程において、レーザー切断により前記アルミニウム板状構造体に開口部を設ける請求項11~15のいずれか1項に記載の建築部材の製造方法。
- 前記切断加工工程において、一辺200mm以上600mm以下の略四角形又は直径200mm以上600mm以下の略円形であり、且つ前記開口部が直径30mm以上200mm以下の略円形である前記アルミニウム板状構造体を得る請求項16に記載の建築部材の製造方法。
- 請求項16又は17に記載の建築部材である改修排水ドレンの製造方法であって、前記アルミニウム板状構造体に、前記開口部と流体連通するように中空管の一方の端部を固着する中空管固着工程を含む、改修排水ドレンの製造方法。
- 前記中空管固着工程において、前記中空管としてアルミニウム中空管を用い、前記アルミニウム板状構造体と前記アルミニウム中空管の一方の端部とを溶接することにより、前記アルミニウム板状構造体に前記アルミニウム中空管の一方の端部を固着する請求項18に記載の改修排水ドレンの製造方法。
- 前記溶接がレーザー溶接である請求項19に記載の改修排水ドレンの製造方法。
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